JP2004162632A - 組合せピストンリング - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シリンダ2の内周面2aと摺動する外側リング5と、外側リング5を半径方向外方に押圧する内側リング6とからなる組合せピストンリング4において、内側リング6が合い口の突き当たった状態で熱膨張により張力が上昇する樹脂製リングで、樹脂がある一定温度で材料の弾性率が急激に降下する変曲点を持つ樹脂材からなる。外側リングと内側リングとの間に中間リングを入れ、内側リングが合い口の突き当たった状態で熱膨張により張力が上昇する樹脂製リングで、樹脂が温度による弾性率が略一定である樹脂材からなり、中間リングがある一定温度で材料の弾性率が急激に降下する変曲点を持つ樹脂材又は温度上昇により弾性率が低下する樹脂材で作られてもよい。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリンダ内周面と摺動する外側リングと、その内側に、合い口の突き当たった状態で熱膨張により張力が上昇する構造の樹脂製リングを備える往復動機関用の組合せピストンリングに関する。
【0002】
【従来の技術】
往復動機関でのシール性と低摩擦の両立のため、外側に金属製リングを配置し、内側に樹脂製リングを配置し、樹脂製リングの合い口が所定温度以上において熱膨張により突き当たり、金属製リングを半径方向外方に押圧する張力を発生する組合せピストンリングが提案されている(特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−130583号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記組合せピストンリングでは、樹脂製リングは張力が温度によって変化し、温度上昇とともに張力が高くなるが、エンジンの回転数が上昇して油温が上がった高温時に張力が過大となり、焼き付きが発生したり、摩擦が過大になる場合がある。
【0005】
本発明は上記点に鑑みてなされたものであり、その課題は、外側リングを押圧する樹脂製リングを備えた組合せピストンリングにおいて、焼き付きや摩擦過大を発生せず、高温時のシール性を良好に保持でき、また、エンジン性能を維持できる組合せピストンリングを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、次の手段を採る。すなわち、
本発明は、シリンダ内周面と摺動する外側リングと、この外側リングを半径方向外方に押圧する内側リングとからなる組合せピストンリングにおいて、
前記内側リングが、合い口の突き当たった状態で熱膨張により張力が上昇する樹脂製リングであり、前記樹脂がある一定温度で材料の弾性率が急激に降下する変曲点を持つ樹脂材からなっていることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、内側リングは張力が温度上昇に伴って増加するが、ある一定温度で弾性率が急激に降下して張力上昇率が低下する。そのため、高温時に張力が過大にならないので、焼き付きの発生を防ぐことができ、高温時のシール性を良好に保持できる。また、摩擦過大を防ぐことができ、エンジン性能を維持できる。
【0008】
本発明は、次のように構成することもできる。すなわち、シリンダ内周面と摺動する外側リングと、この外側リングを半径方向外方に押圧する内側リングと、前記外側リングと内側リングとの間に配置された1本の中間リングとからなる組合せピストンリングにおいて、
前記内側リングが、合い口の突き当たった状態で熱膨張により張力が上昇する樹脂製リングであり、前記樹脂が温度による弾性率が略一定である樹脂材からなっており、
前記中間リングが、ある一定温度で材料の弾性率が急激に降下する変曲点を持つ樹脂材で作られていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、内側リングは張力が温度上昇に伴って増加するが、中間リングはある一定温度で弾性率が急激に降下して張力上昇率が低下する。また、中間リングの弾性率が温度上昇に伴ってある値まで低下すると、中間リングは内側リングの押圧力で変形し、中間リング断面半径寸法が減少するので、内側リングの張力上昇率が低下する。その結果、内側リングと中間リングの合計張力の上昇率が低下する。そのため、高温時に張力が過大にならないので、焼き付きの発生を防ぐことができ、高温時のシール性を良好に保持できる。また、摩擦過大を防ぐことができ、エンジン性能を維持できる。また、外側リングを押圧するリングを2本構成とすることで合計張力を高く設定することができる。
【0010】
本発明は、次のように構成することもできる。すなわち、シリンダ内周面と摺動する外側リングと、この外側リングを半径方向外方に押圧する内側リングと、前記外側リングと内側リングとの間に配置された1本の中間リングとからなる組合せピストンリングにおいて、
前記内側リングが、合い口の突き当たった状態で熱膨張により張力が上昇する樹脂製リングであり、前記樹脂が温度による弾性率が略一定である樹脂材からなっており、
前記中間リングが、温度上昇により弾性率が低下する樹脂材で作られていることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、内側リングは張力が温度上昇に伴って増加するが、中間リングの弾性率が温度上昇に伴ってある値まで低下すると、中間リングが内側リングの押圧力で変形し、中間リング断面半径寸法が減少するので、内側リングの張力上昇率が低下する。その結果、内側リングと中間リングの合計張力の上昇率が低下する。そのため、高温時に張力が過大にならないので、焼き付きの発生を防ぐことができ、高温時のシール性を良好に保持できる。また、摩擦過大を防ぐことができ、エンジン性能を維持できる。また、外側リングを押圧するリングを2本構成とすることで合計張力を高く設定することができる。
【0012】
本発明は次のように構成することもできる。すなわち、シリンダ内周面と摺動する外側リングと、この外側リングを半径方向外方に押圧する内側リングと、前記外側リングと内側リングとの間に配置された内側及び外側の2本の中間リングとからなる組合せピストンリングにおいて、
前記内側リングが、金属製のエキスパンダリングからなり、
前記内側の中間リングが、合い口の突き当たった状態で熱膨張により張力が上昇する樹脂製リングであり、前記樹脂が温度による弾性率が略一定である樹脂材からなっており、
前記外側の中間リングが、ある一定温度で材料の弾性率が急激に降下する変曲点を持つ樹脂材で作られていることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、内側の中間リングは張力が温度上昇に伴って増加するが、外側の中間リングはある一定温度で弾性率が急激に降下して張力上昇率が低下する。また、外側の中間リングの弾性率が温度上昇に伴ってある値まで低下すると、外側の中間リングは内側リングと内側の中間リングとの押圧力で変形し、外側の中間リング断面半径寸法が減少するので、内側リングと内側の中間リングの合計張力の上昇率が低下する。その結果、内側リングと内側及び外側の中間リングの合計張力の上昇率が低下する。そのため、高温時に張力が過大にならないので、焼き付きの発生を防ぐことができ、高温時のシール性を良好に保持できる。また、摩擦過大を防ぐことができ、エンジン性能を維持できる。また、外側リングを押圧するリングを3本構成とすることで合計張力を高く設定することができる。また、内側リングのエキスパンダリングの形状も種々選択できることから、張力設定の自由度も増す。また、樹脂の劣化時、張力を確保でき、オイル消費の増加を抑制できる。
【0014】
本発明は、次のように構成することもできる。すなわち、シリンダ内周面と摺動する外側リングと、この外側リングを半径方向外方に押圧する内側リングと、前記外側リングと内側リングとの間に配置された内側及び外側の2本の中間リングとからなる組合せピストンリングにおいて、
前記内側リングが、金属製のエキスパンダリングからなり、
前記内側の中間リングが、合い口の突き当たった状態で熱膨張により張力が上昇する樹脂製リングであり、前記樹脂が温度による弾性率が略一定である樹脂材からなっており、
前記外側の中間リングが、温度上昇により弾性率が低下する樹脂材で作られていることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、内側の中間リングは張力が温度上昇に伴って増加するが、外側の中間リングの弾性率が温度上昇に伴ってある値まで低下すると、外側の中間リングは内側リングと内側の中間リングとの押圧力で変形し、外側の中間リング断面半径寸法が減少するので、内側リングと内側の中間リングの合計張力の上昇率が低下する。その結果、内側リングと内側及び外側の中間リングの合計張力の上昇率が低下する。そのため、高温時に張力が過大にならないので、焼き付きの発生を防ぐことができ、高温時のシール性を良好に保持できる。また、摩擦過大を防ぐことができ、エンジン性能を維持できる。また、外側リングを押圧するリングを3本構成とすることで合計張力を高く設定することができる。また、内側リングのエキスパンダリングの形状も種々選択できることから、張力設定の自由度も増す。また、樹脂の劣化時、張力を確保でき、オイル消費の増加を抑制できる。
【0016】
上述した本発明における樹脂材料において、ある一定温度で材料の弾性率が急激に降下する変曲点を持つ樹脂材としては、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)やPPS(ポリフェーレンサルファイド)等の樹脂があり、温度による弾性率が略一定である樹脂材としては、例えばPI(ポリイミド)樹脂等があり、温度上昇により弾性率が低下する樹脂材としては、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂等がある。
【0017】
上述した本発明における1本の中間リング、及び2本の中間リングのうちの外側の中間リングの断面形状は、矩形でもよいが、管状、U字形、I字形、X字形、あるいは王形等にすると、変形しやすくなる。
【0018】
上述した本発明における内側リングのエキスパンダリングは、コイルエキスパンダ、軸方向波形エキスパンダ、板バネ等を使用することができる。また、エキスパンダリングの材質としては、バネ鋼、ステンレス鋼の他、内側の温度も低いことから、軽量化を考慮して、アルミニウムやチタン及びその合金等も使用できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1において、1はピストン、2はシリンダで、ピストン1の外周に形成されているリング溝3に組合せピストンリング4が装着されている。組合せピストンリング4は2ピースタイプのピストンリングで、外側リング5と、その内周側に配置され外側リング5をシリンダ2の内周面2aに押圧する内側リング6とからなっている。
【0021】
外側リング5は、合い口を有する矩形断面の金属製リングで、張力を有しており、外周面には窒化、クロムめっき、複合めっき、PVD皮膜等の所定の表面処理が施される。シリンダと摺動する外側リング5を金属製リングとしたことで、高寿命化を図れる。また、剛性も高いことから、薄幅化も可能になる。外周面に窒化、クロムめっき、複合めっき、PVD皮膜等の表面処理を施すことにより、耐摩耗性を向上できる。
【0022】
内側リング6は、合い口を有する矩形断面の樹脂製リングで、外側リング5の内周側に配置し、外側リング5と軸方向幅が略同じ厚さを備えている。この内側リング6は、合い口の突き当たった状態で熱膨張により張力が上昇する構造のリングである。すなわち、内側リング6の張力は温度によって変化し、温度が高くなるに伴って張力が増加するようになっている。ただし、内側リング6は、ある一定温度で材料の弾性率が急激に降下する変曲点を持つ樹脂材(例えばPEEKやPPS樹脂、図16参照)からなっているので、図2に示されているように、内側リングは張力が温度上昇に伴って増加するが、ある一定温度で弾性率が急激に降下して張力上昇率が低下する。そのため、高温時に張力が過大にならないので、焼き付きの発生を防ぐことができ、高温時のシール性を良好に保持できる。また、摩擦過大を防ぐことができ、エンジン性能を維持できる。
【0023】
図3は、本発明の別の実施形態2を示している。
【0024】
図3において、1はピストン、2はシリンダで、ピストン1の外周に形成されているリング溝3に組合せピストンリング4が装着されている。組合せピストンリング4は3ピースタイプのピストンリングで、外側リング5と、その内周側に配置され外側リング5をシリンダ2の内周面2aに押圧する内側リング6Aと、外側リング5と内側リング6Aとの間に配置する中間リング7とからなっている。
【0025】
外側リング5は、上記実施形態1で説明したのと同じ構成を備えている。
【0026】
内側リング6Aは、合い口を有する矩形断面の樹脂製リングで、外側リング5と軸方向幅が略同じ厚さを備えている。この内側リング6Aは、合い口の突き当たった状態で熱膨張により張力が上昇する構造のリングであり、温度による弾性率が略一定である樹脂材(例えばポリイミド樹脂、図16参照)からなっている。すなわち、内側リング6Aの張力は温度によって変化し、温度が高くなるに伴って張力が略一定の割合で増加するようになっており、温度上昇に伴う張力上昇率は略一定である。
【0027】
中間リング7は、合い口を有する矩形断面の樹脂製リングで、外側リング5の軸方向幅よりも少し小さい軸方向幅を備えている。この中間リング7は、合い口の突き当たった状態で熱膨張により張力が上昇する構造のリングである。すなわち、中間リング7の張力は温度によって変化し、温度が高くなるに伴って張力が増加するようになっている。ただし、中間リング7は、ある一定温度で材料の弾性率が急激に降下する変曲点を持つ樹脂材(例えばPEEKやPPS樹脂、図16参照)からなっている。
【0028】
したがって、内側リング6Aは張力が温度上昇に伴って増加するが、中間リング7はある一定温度で弾性率が急激に降下して張力上昇率が低下する。また、中間リング7の弾性率が温度上昇に伴ってある値まで低下すると、中間リング7は内側リング6Aの押圧力で変形し、中間リング断面半径寸法が減少するので、内側リング6Aの張力上昇率が低下する。その結果、図4に示されているように、内側リング6Aと中間リング7の合計張力の上昇率が低下する。そのため、高温時に張力が過大にならないので、焼き付きの発生を防ぐことができ、高温時のシール性を良好に保持できる。また、摩擦過大を防ぐことができ、エンジン性能を維持できる。
【0029】
上記実施形態2では、中間リング7は矩形断面のものを使用したが、中間リング7を変形しやすくするために、中間リング7の断面形状を管状(図5)、X字形(図6)、U字形(図7)、I字形、王形等に形成してもよい。
【0030】
図8は、本発明の更に別の実施形態3を示している。本実施形態3は、上記実施形態2とは中間リング7の樹脂材料が相違しているだけで、他の構成は上記実施形態2と同じである。
【0031】
本実施形態3では、中間リング7は、温度上昇により弾性率が低下する樹脂材(例えばPTFE樹脂、図16参照)からなっている。
【0032】
上記構成によれば、内側リング6Aは張力が温度上昇に伴って増加するが、中間リング7の弾性率が温度上昇に伴ってある値まで低下すると、中間リング7は内側リング6Aの押圧力で変形し、中間リング断面半径寸法が減少するので、内側リング6Aの張力上昇率が低下する。その結果、図8に示されているように、内側リング6Aと中間リング7の合計張力の上昇率が低下する。そのため、高温時に張力が過大にならないので、焼き付きの発生を防ぐことができ、高温時のシール性を良好に保持できる。また、摩擦過大を防ぐことができ、エンジン性能を維持できる。
【0033】
図9は、本発明の更に別の実施形態4を示している。
【0034】
図9において、1はピストン、2はシリンダで、ピストン1の外周に形成されているリング溝3に組合せピストンリング4が装着されている。組合せピストンリング4は4ピースタイプのピストンリングで、外側リング5と、その内周側に配置され外側リング5をシリンダ2の内周面2aに押圧する内側リング6Bと、外側リング5と内側リング6Bとの間に配置する内側及び外側の2本の中間リング7A,7Bとからなっている。
【0035】
外側リング5は、前記実施形態1で説明したのと同じ構成を備えている。
【0036】
内側リング6Bは、コイルエキスパンダリングである。
【0037】
内側の中間リング7Aは、合い口を有し、矩形断面の内側を上下一対の傾斜面とした断面形状を備えた樹脂製リングで、外側リング5と軸方向幅が略同じ厚さを備えている。この内側の中間リング7Aは、合い口の突き当たった状態で熱膨張により張力が上昇する構造のリングであり、温度による弾性率が略一定である樹脂材(例えばポリイミド樹脂、図16参照)からなっている。すなわち、内側の中間リング7Aの張力は温度によって変化し、温度が高くなるに伴って張力が略一定の割合で増加するようになっており、温度上昇に伴う張力上昇率は略一定である。
【0038】
外側の中間リング7Bは、合い口を有する矩形断面の樹脂製リングで、外側リング5の軸方向幅よりも少し小さい軸方向幅を備えている。この外側の中間リング7Bは、合い口の突き当たった状態で熱膨張により張力が上昇する構造のリングである。すなわち、外側の中間リング7Bの張力は温度によって変化し、温度が高くなるに伴って張力が増加するようになっている。ただし、外側の中間リング7Bは、ある一定温度で材料の弾性率が急激に降下する変曲点を持つ樹脂材(例えばPEEKやPPS樹脂、図16参照)からなっている。
【0039】
したがって、内側の中間リング7Aは張力が温度上昇に伴って増加するが、外側の中間リング7Bはある一定温度で弾性率が急激に降下して張力上昇率が低下する。また、外側の中間リング7Bの弾性率が温度上昇に伴ってある値まで低下すると、外側の中間リング7Bは内側リング6Bと内側の中間リング7Aとの押圧力で変形し、外側の中間リング断面半径寸法が減少するので、内側リング6Bと内側の中間リング7Aの合計張力の上昇率が低下する。その結果、図10に示されているように、内側リング6Bと内側及び外側の中間リング7A,7Bの合計張力の上昇率が低下する。そのため、高温時に張力が過大にならないので、焼き付きの発生を防ぐことができ、高温時のシール性を良好に保持できる。また、摩擦過大を防ぐことができ、エンジン性能を維持できる。
【0040】
上記実施形態4では、外側の中間リング7Bは矩形断面のものを使用したが、外側の中間リング7Bを変形しやすくするために、外側の中間リング7Bの断面形状をX字形(図11)、I字形(図12)、王形(図13)、管状、U字形等に形成してもよい。なお、図14は、外側の中間リング7Bの断面形状はX字形であるが、内側リング6Bを軸方向波形エキスパンダとした例を示しており、内側の中間リング7Aは矩形断面を有している。
【0041】
図15は、本発明の更に別の実施形態5を示している。本実施形態5は、上記実施形態4とは外側の中間リング7Bの樹脂材料が相違しているだけで、他の構成は上記実施形態4と同じである。
【0042】
本実施形態5では、外側の中間リング7Bは、温度上昇により弾性率が低下する樹脂材(例えばPTFE樹脂、図16参照)からなっている。
【0043】
上記構成によれば、内側の中間リング7Aは張力が温度上昇に伴って増加するが、外側の中間リング7Bの弾性率が温度上昇に伴ってある値まで低下すると、外側の中間リング7Bは内側リング6Bと内側の中間リング7Aの押圧力で変形し、外側の中間リング断面半径寸法が減少するので、内側リング6Bと内側の中間リング7Aの合計張力の上昇率が低下する。その結果、図15に示されているように、内側リング6Bと内側及び外側の中間リング7A,7Bの合計張力の上昇率が低下する。そのため、高温時に張力が過大にならないので、焼き付きの発生を防ぐことができ、高温時のシール性を良好に保持できる。また、摩擦過大を防ぐことができ、エンジン性能を維持できる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、シリンダ内周面と摺動する外側リングを押圧する樹脂製リングを備えた組合せピストンリングにおいて、高温時に張力が過大にならないので、焼き付きの発生を防ぐことができ、高温時のシール性を良好に保持できる。また、摩擦過大を防ぐことができ、エンジン性能を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】本発明の組合せピストンリングの温度−張力特性を示すグラフである。
【図3】本発明の別の実施形態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の組合せピストンリングの温度−張力特性を示すグラフである。
【図5】上記実施形態において、中間リングの断面形状を変えた例であり、(a)は常温時、(b)は温度上昇時、(c)は中間リングが完全に潰れた状態を示す。
【図6】上記実施形態において、中間リングの断面形状を変えた別の例であり、(a)は常温時、(b)は温度上昇時、(c)は中間リングが完全に潰れた状態を示す。
【図7】上記実施形態において、中間リングの断面形状を変えた更に別の例であり、(a)は常温時、(b)は温度上昇時、(c)は中間リングが完全に潰れた状態を示す。
【図8】本発明の更に別の実施形態を示し、組合せピストンリングの温度−張力特性を示すグラフである。
【図9】本発明の更に別の実施形態を示す縦断面図である。
【図10】本発明の組合せピストンリングの温度−張力特性を示すグラフである。
【図11】上記実施形態において、外側の中間リングの断面形状を変えた例を示す組合せピストンリングの縦断面図である。
【図12】上記実施形態において、外側の中間リングの断面形状を変えた別の例を示す組合せピストンリングの縦断面図である。
【図13】上記実施形態において、外側の中間リングの断面形状を変えた更に別の例を示す組合せピストンリングの縦断面図である。
【図14】上記実施形態において、内側リングの構造及び外側の中間リングの断面形状を変えた例を示す組合せピストンリングの縦断面図である。
【図15】本発明の更に別の実施形態を示し、組合せピストンリングの温度−張力特性を示すグラフである。
【図16】PEEK,PPS,PI,PTFE樹脂の温度−弾性率特性の代表例を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ピストン
2 シリンダ
2a シリンダ内周面
3 リング溝
4 組合せピストンリング
5 外側リング
6,6A,6B 内側リング
7 中間リング
7A 内側の中間リング
7B 外側の中間リング
Claims (5)
- シリンダ内周面と摺動する外側リングと、この外側リングを半径方向外方に押圧する内側リングとからなる組合せピストンリングにおいて、
前記内側リングが、合い口の突き当たった状態で熱膨張により張力が上昇する樹脂製リングであり、前記樹脂がある一定温度で材料の弾性率が急激に降下する変曲点を持つ樹脂材からなっていることを特徴とする組合せピストンリング。 - シリンダ内周面と摺動する外側リングと、この外側リングを半径方向外方に押圧する内側リングと、前記外側リングと内側リングとの間に配置された1本の中間リングとからなる組合せピストンリングにおいて、
前記内側リングが、合い口の突き当たった状態で熱膨張により張力が上昇する樹脂製リングであり、前記樹脂が温度による弾性率が略一定である樹脂材からなっており、
前記中間リングが、ある一定温度で材料の弾性率が急激に降下する変曲点を持つ樹脂材で作られていることを特徴とする組合せピストンリング。 - シリンダ内周面と摺動する外側リングと、この外側リングを半径方向外方に押圧する内側リングと、前記外側リングと内側リングとの間に配置された1本の中間リングとからなる組合せピストンリングにおいて、
前記内側リングが、合い口の突き当たった状態で熱膨張により張力が上昇する樹脂製リングであり、前記樹脂が温度による弾性率が略一定である樹脂材からなっており、
前記中間リングが、温度上昇により弾性率が低下する樹脂材で作られていることを特徴とする組合せピストンリング。 - シリンダ内周面と摺動する外側リングと、この外側リングを半径方向外方に押圧する内側リングと、前記外側リングと内側リングとの間に配置された内側及び外側の2本の中間リングとからなる組合せピストンリングにおいて、
前記内側リングが、金属製のエキスパンダリングからなり、
前記内側の中間リングが、合い口の突き当たった状態で熱膨張により張力が上昇する樹脂製リングであり、前記樹脂が温度による弾性率が略一定である樹脂材からなっており、
前記外側の中間リングが、ある一定温度で材料の弾性率が急激に降下する変曲点を持つ樹脂材で作られていることを特徴とする組合せピストンリング。 - シリンダ内周面と摺動する外側リングと、この外側リングを半径方向外方に押圧する内側リングと、前記外側リングと内側リングとの間に配置された内側及び外側の2本の中間リングとからなる組合せピストンリングにおいて、
前記内側リングが、金属製のエキスパンダリングからなり、
前記内側の中間リングが、合い口の突き当たった状態で熱膨張により張力が上昇する樹脂製リングであり、前記樹脂が温度による弾性率が略一定である樹脂材からなっており、
前記外側の中間リングが、温度上昇により弾性率が低下する樹脂材で作られていることを特徴とする組合せピストンリング。
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