JPWO2019124389A1 - 内燃機関用ピストンリング - Google Patents

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Abstract

本開示の内燃機関用ピストンリングは、樹脂組成物からなり、且つ、合口部を有しており、合口部を閉じた状態における当該ピストンリングの外径寸法d1に対する、自由状態における合口部の隙間寸法mの比率(m/d1)が0.05〜0.8であり、樹脂組成物の弾性率が0.3〜50GPaである。

Description

本開示は内燃機関用ピストンリングに関する。
自動車等の内燃機関にはピストンリングが用いられている。ピストンリングは、ピストンの外周面に設けられた複数の溝にそれぞれ装着される。ピストンリングには、シリンダボア内壁のオイルがクランク室側から燃焼室側に入り込むこと(オイルアップ)と、ガスが燃焼室側からクランク室側に入り込むこととを抑制するシール機能が求められる。オイルアップはオイル消費の増加につながり、他方、燃焼室側からクランク室側に入り込むガス(ブローバイガス)の増加は燃費の低下につながる。
特許文献1はガソリンエンジン用ピストンリングの組合せを開示している。特許文献1によれば、複数のピストンリングの張力が所定の条件を満たすことで、ピストンリングとシリンダボア壁面との間のフリクション性能のばらつきを抑制し、オイル消費の低減及びフリクション低減の効果を安定して得られるとされている。
特開2012−215238号公報
特許文献1の実施例1を参照すると、13Cr鋼からなるトップリングの張力を5.6Nに設定し、10Cr鋼からなるセカンドリングの張力を4.9Nに設定したことが記載されている。更なる低フリクション化を実現するため、これらのリングの張力を更に小さくすると、シリンダボア内壁に対する追従性が低下し、これにより上記シール機能が不十分となり、オイル消費量が増加するという課題があった。
本開示は、低フリクション性を有しつつ、オイル消費量が少ない内燃機関用ピストンリングを提供することを目的とする。
本開示の一側面は、内燃機関用のピストンリングであって樹脂組成物からなるピストンリングに関する。このピストンリングは、合口部を有しており、合口部を閉じた状態における当該ピストンリングの外径寸法d1に対する、自由状態における合口部の隙間寸法mの比率(m/d1)が0.05〜0.8であり、樹脂組成物の弾性率が0.3〜50GPaである。なお、本開示における「弾性率」はJIS K7162に規定される方法に準拠して測定される値を意味する。本開示において「合口部が閉じた状態」とは、ピストンリングがシリンダボア内に挿入された状態にあるときと同様に合口部が閉じた状態を意味し、必ずしも、合口部が完全に閉じた状態(合口部の端面同士が当接した状態)を意味する訳ではない(例えば、図1(b)参照)。また、本開示において、ピストンリングが「樹脂組成物からなる」の意味は、ピストンリングが樹脂組成物のみからなる態様の他に、ピストンリングが樹脂組成物以外の構成(例えば、外周面や側面等にDLC、金属化合物又は合金からなる表面処理膜)を有する態様も包含する。
金属製のピストンリングは、金属自体が高い弾性率を持つため、上述のとおり、張力を小さくするとシリンダボア内壁に対する追従性が低下する。これに対し、本発明者らの検討によれば、合口部を有し且つ弾性率が0.3〜50GPaの範囲である樹脂組成物からなるピストンリングは、低い張力であっても、シリンダボア内壁に対する優れた追従性を有する。すなわち、本開示に係るピストンリングによれば、背景技術に開示されたものよりも優れた追従性によって高いシール機能を達成でき、十分に少ないオイル消費量を実現できる。
本開示に係るピストンリングは、自己張力を有するものであってもよい。ピストンリングが自己張力を有する場合、シリンダボア内壁に対する追従性の観点から、その値は0.5N以上あることが好ましく、1N以上あることがより好ましい。本開示における「自己張力」はJIS B8032−2「内燃機関−小径ピストンリング−第2部:測定方法」に規定される方法に準拠して測定される値を意味する。
本開示の他の側面は、樹脂組成物からなる上記ピストンリングをピストンリング本体とし、このピストンリング本体に補助部材(金属製もしくはゴム製のリング、バネ及びコイルエキスパンダ)を備えたピストンリングに関する。すなわち、本開示の他の側面に係る内燃機関用ピストンリングは、樹脂組成物からなるピストンリング本体と、ピストンリング本体の張力を高めるための補助部材とを備え、上記ピストンリング本体は、合口部を有しており、合口部を閉じた状態における当該ピストンリング本体の外径寸法d1に対する、自由状態における合口部の隙間寸法mの比率(m/d1)が0.05〜0.8であり、樹脂組成物の弾性率が0.3〜50GPaである。なお、補助部材は、ピストンリング本体の内周に配置されてもよいし、ピストンリング本体の合口部に装着され、合口部を拡げる力を発生させるものであってもよい。
従来の鉄製のピストンリングは、比重が7〜9程度のものが一般的である。これに対し、本開示に係るピストンリング又はピストンリング本体は、比重が1.0〜3.0であることが好ましい。ピストンリング又はピストンリング本体の比重が十分に小さい(ピストンリングが十分に軽い)ことで、ピストンの往復動に伴う慣性力による影響をピストンリングが受けにくい。すなわち、ピストンの往復動に伴って、ピストンの溝内においてピストンリングが移動することが抑制され、より一層優れたシール性を実現できる。
本開示に係るピストンリング又はピストンリング本体は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、及び、液晶ポリマー(LCP)からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂成分と、ガラス繊維、合成繊維及びカーボン繊維からなる群から選ばれる少なくとも一種の繊維とを含む樹脂組成物からなることが好ましい。例えば、ピストンリングのサイズ、用途及び使用環境等に適した樹脂成分を選択するとともに、これに配合する繊維の種類、繊維の長さ及び/又は配合量を適宜設定することで、弾性率が0.3〜50GPaの樹脂組成物を得ることができる。なお、同じ樹脂成分であってもその重合度が異なるものを使用することで樹脂組成物の弾性率を調整してもよい。
上記樹脂成分のうち、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)及びポリアミド(PA)は吸水性を有し、空気中の水分を吸収することで、寸法変化(膨張)が起こる傾向がある。したがって、ピストンリング又はピストンリング本体を構成する樹脂組成物は、これらの樹脂成分を主成分として含まないことが好ましい。すなわち、樹脂組成物におけるポリイミド、ポリアミドイミド及びポリアミドの合計の含有率は50質量%未満であることが好ましい。
上記樹脂組成物は充填材を更に含んでもよい。充填材として、モリブデン、銅、鉄、ブロンズ、グラファイト、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、マイカ、酸化亜鉛及びタルクからなる群から選ばれる少なくとも一種の材料からなる粉体が挙げられる。充填材の種類、粒径及び/又は配合量を調整することで、樹脂組成物の弾性率を調整することができる。
本開示に係るピストンリング又は補助部材を備えたピストンリングは、オイル消費量低減、フリクションロス低減の観点から、バレル状又はテーパ状に形成された外周摺動面を有することが好ましい。
本開示に係るピストンリング又は補助部材を備えたピストンリングの合口部は、ブローバイガスの低減の観点から、例えば、ピストンリングを自由状態から合口部を閉じた状態とする際、互いに摺動するように相対的に移動する第1の一対の面を有し、第1の一対の面が当該ピストンリングの厚さ方向に延びている態様とすることができる。あるいは、合口部は、ピストンリングを自由状態から合口部を閉じた状態とする際、互いに摺動するように相対的に移動する第2の一対の面を有し、第2の一対の面が当該ピストンリングの径方向に延びている態様であってもよい。合口部は上記第1及び第2の一対の面の両方を有した態様であってもよい。
本開示に係るピストンリング又は補助部材を備えたピストンリングは、内周面、外周面、一方の側面、他方の側面及び合口部の合わせ面からなる群から選ばれる少なくとも一つの面上に形成された表面処理膜を有してもよい。表面処理膜は、比較的低温度条件で形成され、例えば、無電解めっき及びメッキ(無電解の後に電解)、硬質塗料コーティング、物理的蒸着法(PVD)、化学的蒸着法(CVD)、スパッタ法、イオンプレーティング法、溶射等によって形成することができる。また、材質としては、非晶質炭素膜、窒化クロム膜(CrN)、窒化チタン膜(TiN)、炭化チタン(TiC)、窒化アルミチタン(TiAlN)、窒化クロム(CrN)、ニッケルリン(NiP)、TiCN、AlCrNなどが好ましい。
本開示によれば、低フリクション性を有しつつ、オイル消費が少ない内燃機関用ピストンリングが提供される。
図1(a)はストレート形状の合口部を有するピストンリングの自由状態を示す斜視図であり、図1(b)は合口部を閉じた状態を示す斜視図である。 図2は図1(a)に示すピストンリングの変形例を示す斜視図である。 図3はダブルステップ形状の合口部を有するピストンリングの一例を示す斜視図である。 図4は図3に示したピストンリングの合口部の要部拡大斜視図である。 図5は図3に示したピストンリングの合口部を一側面側から示す要部拡大斜視図である。 図6は図3に示したピストンリングの合口部を他側面側から示す要部拡大斜視図である。 図7はトリプルステップ形状の合口部を有するピストンリングの一例を示す斜視図である。 図8は図7に示したピストンリングの合口部の要部拡大斜視図である。 図9(a)はトリプルステップ形状の合口部の平面図であり、図9(b)はトリプルステップ合口の正面図である。 図10(a)は樹脂製ピストンリング本体と、その内周側に配置された補助部材(コイルエキスパンダ)とによって構成されるピストンリングを示す断面図であり、図10(b)は樹脂製ピストンリング本体と、その内周側に配置された補助部材(断面が矩形状の部材)とによって構成されたピストンリングを示す断面図である。 図11は本発明の実施形態及び比較例に係るピストンリングのオイル消費量の推定評価結果を示すグラフである。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
<第一実施形態>
図1(a)は第一実施形態に係るピストンリングの自由状態を示す斜視図であり、図1(b)は図1(a)に示すピストンリングの合口部を閉じた状態を示す斜視図である。これらの図に示すピストンリング1は、内燃機関のピストンに装着されるものであって、コンプレッションリング(トップリング又はセカンドリング)として使用される。ピストンリング1は樹脂組成物からなるとともにストレート形状の合口部1aを有する。なお、ピストンリング1はコンプレッションリングとして使用された場合であってもオイルをかき落とす役割も果たす。
ピストンリング1が内燃機関のシリンダボアへ挿入された時に、ピストンリング1の弾性変形により自己張力が発生するものであっても、あるいは、自己張力が発生しないものであってもよいが、より好ましくは、内燃機関のシリンダボアへの挿入時にピストンリング1自体が自己張力を発生させるものの方が好ましい。また、自己張力が発生しない場合又は自己張力が発生しても必要な大きさの張力には足りていない場合には、後述する補助部材を適用してピストンリングとして必要な張力を有するようにしてもよい。
ピストンリング1が内燃機関のシリンダボア内に挿入された時に、ピストンリング1の合口部1aの隙間寸法mは小さくなる。この状態を「合口部1aを閉じた状態」と称する。また、後述する補助部材との併用によって張力を発生させるピストンリング1の場合は、補助部材により合口部1aの隙間が開かれた状態が「自由状態」であり、他方、シリンダボア内に挿入されることで合口部1aの隙間寸法mが小さくなった状態が「合口部1aを閉じた状態」となる。本実施形態では、シリンダボア内でピストンリングが熱膨張しても合口部の端面同士が当接しないように、ピストンリングは設計されている。なお、ピストンリングの外径寸法d1は、そのピストンリングが挿入されるシリンダボアの内径とほぼ同じ寸法である。
合口部1aを閉じた状態におけるピストンリング1の外径寸法d1(図1(b)参照)に対する、自由状態における合口部1aの隙間寸法m(図1(a)参照)の比率(m/d1)は0.05〜0.8の範囲である。ピストンリングの断面形状や内燃機関の圧縮比にもよるが、この比率が0.05以上であることで、ピストンリング1の張力を、圧縮比が小さい内燃機関にとって必要な大きさにできる傾向にあり、また、ピストンリング1の外周面の摩耗が進行しても、摩耗量に応じて合口部1aの隙間がシリンダボアの中で開くことができ、追従性を確保することができる傾向にある。他方、この比率が0.8以下であることでピストンの溝にピストンリング1を装着した状態でピストンをシリンダボア内に挿入する際にピストンリング1に過度な応力が加わることを抑制できる傾向にあり、また、シリンダボア内におけるピストンリング1の折損を低減できる傾向にある。この比率(m/d1)の範囲は0.07〜0.5であることが好ましく、0.12〜0.3であることがより好ましい。
ピストンリング1を構成する樹脂組成物は弾性率が0.3〜50GPaである。弾性率がこの範囲内の樹脂組成物からなるリングは、低い張力であっても、シリンダボア内壁に対する優れた追従性を有する。高い自己張力及び適度な追従性を実現する観点から、ピストンリング1を構成する樹脂組成物の弾性率は5〜50GPaであることが好ましく、5〜20GPaであることがより好ましく、10〜16GPaであることが更に好ましい。かかる樹脂組成物からなるピストンリング1を採用することにより、優れた低フリクション性を達成できるとともに、より一層優れたシール性能を達成できる。
なお、樹脂組成物の弾性率が低くければ低いほど、シリンダボアに対するピストンリング1の追従性が向上する。しかし、弾性率が低すぎることに起因してピストンリング1の追従性が必要以上に向上すると、一度燃焼室側に掻き上げられたオイルがクランク室側に排出される機会が失われ、その結果、オイル消費量が増加する傾向となる。かかる観点から、樹脂組成物は弾性率の下限値は、5GPaが好ましく、10GPaがより好ましい(図11参照)。
ピストンリング1は、上述のとおり、自己張力を有することが好ましい。ピストンリング1が自己張力を有していれば、シリンダボア内壁に対するより良好な追従性を確保できる。ピストンリング1の自己張力は、0.5N以上であることが好ましく、1N以上であることがより好ましく、2N以上であることが更に好ましく、5N程度であることが更に好ましい。自己張力の上限値は、求められる摺動抵抗の大きさによるが、例えば、8N程度である。
ピストンリングが自己張力を有する場合、高い自己張力及び適度な追従性を実現する観点から、ピストンリングを構成する樹脂組成物の弾性率は5〜50GPaであることが好ましく、5〜20GPaであることがより好ましく、10〜16GPaであることが更に好ましい。これにより、張力を補助する補助部材の使用の有無にかかわらず、5GPa以上の弾性率を有した樹脂組成物からなるピストンリング1を採用することにより、優れた低フリクション性を達成できるとともに、オイル消費をより一層低減できる。
ピストンリング1は、ピストンリング1に必要な張力を与えるための補助部材と併用されるものであってもよい。この場合、ピストンリング本体をなすピストンリング1に補助部材を備える内燃機関用ピストンリングが構成される。補助部材は、例えば、金属製もしくはゴム製のリング、バネ及びコイルエキスパンダからなる群から選ばれる。より具体的には、ピストンリング1の内周側から外周側に向けて弾性力を有する部材を樹脂単体からなるピストンリング1の内周側に設けたり、合口部1aを拡張する力を生ずる弾性体を合口部1aに設けたりすればよい。その際にも、ピストンリング1の合口部1aはわずかながらでも隙間を有していることが好ましい。補助部材は、例えば内側からピストンリング1に張力を加えるものであってもよいし、合口部1aの合い口隙間を拡げる力を発生するものであってもよい。ピストンリング1をシリンダボア内に挿入するに際し、ピストンリング1に対して補助部材を装着する前後において、ピストンリング1を過度に変形させない態様が好ましい。これにより、樹脂組成物からなるピストンリング1の塑性変形を抑制することができる。
ピストンリング1が上記補助部材と併用されるものである場合、ピストンリング1は自己張力を有していなくてもよく、また、自己張力が低くても(例えば、0.1N程度)であってもよい。この場合、ピストンリング1を構成する樹脂組成物の弾性率は、0.5〜50GPaであることが好ましく、シリンダボアに対する追従性の観点から、0.5〜5GPaであることがより好ましい。
ピストンリング1を構成する樹脂組成物は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、及び、液晶ポリマー(LCP)からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂成分と、ガラス繊維、合成繊維及びカーボン繊維からなる群から選ばれる少なくとも一種の繊維とを含む樹脂組成物からなることが好ましい。例えば、ピストンリングのサイズ、用途及び使用環境等に適した樹脂成分を選択するとともに、これに配合する繊維の種類及びその配合量を適宜設定することで、弾性率が0.3〜50GPaの樹脂組成物を得ることができる。上記樹脂組成物は充填材を更に含んでもよい。充填材として、モリブデン、銅、鉄、ブロンズ、グラファイト、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、マイカ、酸化亜鉛及びタルクからなる群から選ばれる少なくとも一種の材料からなる粉体が挙げられる。
なお、上記材料のうち、ポリイミド、ポリアミドイミド及びポリアミドは吸水性を有し、空気中の水分を吸収することで、寸法変化(膨張)が起こる傾向がある。したがって、ピストンリング1を構成する樹脂組成物は、これらの樹脂成分を主成分として含まないことが好ましい。すなわち、樹脂組成物におけるポリイミド、ポリアミドイミド及びポリアミドの合計の含有率は50質量%未満であることが好ましい。
ピストンリング1は、比重が1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましい。比重が十分に小さい(ピストンリングが十分に軽い)ことで、ピストンの往復動に伴う慣性力による影響をピストンリング1が受けにくい。すなわち、ピストンの往復動に伴って、ピストンの溝内においてピストンリング1が移動することが抑制され、より一層優れたシール性を実現できる。
ピストンリング1は、樹脂組成物からなる本体部と、本体部の表面の少なくとも一部を覆うように形成された表面処理膜とによって構成されるものであってもよい。表面処理膜は、例えば、硬質クロムめっき層、PVD処理層、鉄又はクロム等の窒化物層あるいはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜などの硬質膜である。表面処理膜が設けられることにより、本体部の耐摩耗性の向上が図られる。表面処理膜は、ピストンリングの内周面、外周面、一方の側面、他方の側面及び合口部の合わせ面からなる群から選ばれる少なくとも一つの面上に形成することが好ましい。
図1(a)に示されたとおり、ピストンリング1はストレート形状の合口部1aを有する。合口部1aは、環状の本体部1bの一部に形成されている。本体部1bは、幅方向の端面である一方の側面1c及び他方の側面1dと、厚さ方向の端面である内周面1e及び外周面1fとによって、厚さ方向が長辺且つ幅方向が短辺となる断面略長方形状をなしている。合口部1aは、本体部1bの一方の端面1gと他方の端面1hとによって構成されている。
ところで、本発明者らは、前述の知見を基にピストンリング1の樹脂成分としてポリエーテルエーテルケトンを、繊維としてカーボン繊維を選択し、カーボン繊維をおよそ20質量%加えた樹脂組成物で、射出成形法によりピストンリングを製作した場合、そのピストンリングが170℃近傍の熱負荷によりどのように張力が変化するかを検討した。その結果、合口部1aを閉じた状態におけるピストンリング1の外径寸法d1に対する自由合口隙間mの比率m/d1が0.12以上であると、熱負荷後であっても張力が残存できることを確認することができた。なお、ピストンリングに与えた熱負荷は、熱ヘタリ試験(JIS B 8032−5:2015「5.2温度影響下での接線張力減退」)に基づいた条件を想定している。上述の熱負荷を与えたピストンリングは、他にも比率m/d1が0.20のもの、0.45のもの、0.56のものも熱負荷後に張力が残存していることが確認された。特に、射出成形時の形状を楕円形状やカム形状にすることで熱負荷後の張力減退率が小さくなっていた。図2に射出成形時の形状が楕円形状になるように成形したピストンリングを示す。図2に示すピストンリング1Aは、合口部とその反対側の間の径D1が短く、また、径D1と直交する方向の径D2が長い形状を有している。このような形状を有するピストンリング1Aは、内燃機関のボアに模した円筒部材に装着した際に、円筒部材の内周面とリング外周面との隙間がより小さくなることが確認できた。なお、楕円形状のピストンリング1Aの場合、自由合口隙間mは、径D1と径D2の平均値をピストンリング1の外径寸法d1とし、外径寸法d1に対する自由合口隙間mの値(m/d1)が0.12以上であること好ましく、更に0.20以上のものであってもよい。
ところで、上述の樹脂組成物で構成されたピストンリングに対し熱負荷後の張力減退量を考察したところ、選択した樹脂成分のガラス転移点温度よりも高い温度で熱処理した後に熱負荷を掛けたピストンリングは、熱処理を施さなかったピストンリングに比べ、張力の減退量が相対的に小さいことが確認された。熱処理については、具体的には断面が楕円形状の内側形状を有する円筒治具に射出成形されたピストンリングを挿入し、ピストンリングの熱処理を行うことで張力減退率が小さくなる。
<第二実施形態>
図3〜6を参照しながら、第二実施形態に係るピストンリングについて説明する。これらの図に示すピストンリング2は合口部2aの形状が異なる以外は第一実施形態に係るピストンリング1又はその変形例に係るピストンリング1Aと同様である。以下、合口部2aについて主に説明する。
合口部2aは、ダブルステップと称される形状である。合口部2aは、環状の本体部2bの一部に形成されている。本体部2bは、幅方向の端面である一方の側面2c及び他方の側面2dと、厚さ方向の端面である内周面2e及び外周面2fとによって、厚さ方向が長辺且つ幅方向が短辺となる断面略長方形状をなしている。なお、ピストンリング2は、側面2cが燃焼室側となり、側面2dがクランク室側となるように、ピストンに対して取り付けられる。
合口部2aにおいては、図4〜6に示すように、本体部2bの側面2c側には、一方の合口端部11から他方の合口端部12に向かって突出する第1の突出部13と、他方の合口端部12において第1の突出部13を受ける第1の受け部14とが設けられている。また、本体部2bの側面2c側には、他方の合口端部12から一方の合口端部11に向かって突出する第2の突出部15と、一方の合口端部11において第2の突出部15を受ける第2の受け部16とが設けられている。
より具体的には、第1の突出部13では、一方の合口端部11から本体部2bの側面2c側の略半分部分が断面略長方形状に突出した状態となっている。また、第1の突出部13において、第1の受け部14に対向する側面2d側の先端角は切り欠かれている。これにより、第1の突出部13において第1の受け部14に対向する側面2d側の先端には、切欠面S1が形成されている。加えて、第1の受け部14では、他方の合口端部12において本体部2bの側面2c側の略半分部分が第1の突出部13の形状に対応して断面略長方形状に切り欠かれた状態となっている。したがって、第1の突出部13における第1の受け部14との対向面である先端面13a、及び第1の受け部14における第1の突出部13との対向面である先端面14aは、それぞれ周方向に対して垂直又は略垂直に延在する略長方形状である。
同様に、第2の突出部15では、他方の合口端部12から本体部2bの側面2d側の略半分部分が断面略長方形状に突出した状態となっている。また、第2の突出部15において、第2の受け部16に対向する側面2c側の先端角は切り欠かれている。これにより、第2の突出部15において第2の受け部16に対向する側面2c側の先端には、切欠面S2が形成されている。加えて、第2の受け部16では、一方の合口端部11において本体部2bの側面2d側の略半分部分が第2の突出部15の形状に対応して断面略長方形状に切り欠かれた状態となっている。
更に、本体部2bの側面2d側において、本体部2bの内周面2e側には、第2の突出部15から第2の受け部16に向かって突出する第1のオス部21と、第2の受け部16において第1のオス部21を受ける第1のメス部22とが設けられている。また、本体部2bの側面2d側において、本体部2bの外周面2f側には、第2の受け部16から第2の突出部15に向かって突出する第2のオス部23と、第2の突出部15において第2のオス部23を受ける第2のメス部24とが設けられている。このため、側面2d側においては、第1のオス部21、第1のメス部22、第2のオス部23、及び第2のメス部24によって、いわゆるステップ合口が形成されている。
<第三実施形態>
図7〜9を参照しながら、第三実施形態に係るピストンリングについて説明する。この図に示すピストンリング3は合口部3aの形状が異なる以外は第一実施形態に係るピストンリング1又はその変形例に係るピストンリング1Aと同様である。以下、合口部3aについて主に説明する。
合口部3aは、トリプルステップと称される形状である。合口部3aは、環状の本体部3bの一部に形成されている。本体部3bは、幅方向の端面である一方の側面3c及び他方の側面3dと、厚さ方向の端面である内周面3e及び外周面3fとによって、厚さ方向が長辺且つ幅方向が短辺となる断面略長方形状をなしている。ただし、断面形状はこの形状に限定されない。なお、ピストンリング3は、側面3cが燃焼室側となり、側面3dがクランク室側となるように、ピストンに対して取り付けられる。
合口部3aは、環状の本体部3bの両端部に設けられた合口端部31,32を含む。合口端部31,32は、ピストンリング3をリング溝に装着する前の状態において、所定の間隔をもって対向した状態となっている。
図8及び図9は合口部3aの構造を説明する図である。図8は、合口部3aの構造を説明する斜視図であり、図9(a)は、合口部3aの平面図(側面3c側から見た図)であり、図9(b)は、合口部3aの正面図(外周面3f側から見た図)である。合口部3aは、所謂トリプルステップ形状を呈している。トリプルステップ形状とは、合口部3aを三方向から見た際にステップ形状を呈しているものである。ピストンリング3の場合、上側の側面3c側から見たとき、下側の側面3d側から見たとき、及び、外周面3f側から見たときに、合口部3aがステップ形状となっている。
より具体的には、図8,9に示すように、合口端部31及び合口端部32の対向面は、本体部3bの内周面3e側の略半分における対向面31a,32aと比較して、本体部3bの外周面3f側の略半分では、側面3c側において合口端部32が合口端部31側に突出し、側面3d側において合口端部31が合口端部32側に突出するように凹凸が形成されている。
具体的には、本体部3bの外周面3f側の略半分且つ側面3c側の略半分(図8において略上半分となる部分)において、合口端部32には対向面31aよりも合口端部31側に突出する第1突出部33が設けられる一方、合口端部31には、第1突出部33を受ける第1受け部34が設けられる。第1突出部33の先端面33aと、第1受け部34の受け面34aとが対向する。また、本体部3bの外周面3f側の略半分且つ側面3d側の略半分(図8において略下半分となる部分)において、合口端部31には対向面31aよりも合口端部32側に突出する第2突出部35が設けられる一方、合口端部32には、第2突出部35を受ける第2受け部36が設けられる。第2突出部35の先端面35aと、第2受け部36の受け面36aとが対向する。
この結果、側面3c側から見たときには、図9(a)に示すように、対向面31a,32aが設けられる位置と、第1突出部33の先端面33a及び第1受け部34の受け面34aが設けられる位置と、が本体部3bの長手方向に沿って互いに異なるため、ステップ形状となる。また、外周面3f側から見たときには、図9(b)に示すように、第1突出部33の先端面33a及び第1受け部34の受け面34aが設けられる位置と、第2突出部35の先端面35a及び第2受け部36の受け面36aが設けられる位置と、が本体部3bの長手方向に沿って互いに異なるため、ステップ形状となる。更に、側面3d側から見たときも、図8に示すように、対向面31a,32aが設けられる位置と、第2突出部35の先端面35a及び第2受け部36の受け面36aが設けられる位置と、が本体部3bの長手方向に沿って互いに異なるため、ステップ形状となる。各面でのステップ形状の段差となる領域(ステップの割位置)は、それぞれ略中央付近となっている。
なお、ピストンリング3がピストンのピストン溝に装着され、且つシリンダーライナーの内周に挿入されると、第1突出部33の側面3d側の面33bと、第2突出部35の側面3c側の面35bとが互いに摺動するように相対的に移動して、図8及び図9に示すように合口部3aが閉じられる。合口部3aが閉じられた状態では、対向面31aと対向面32aとの間、第1突出部33の先端面33aと第1受け部34の受け面34aとの間、及び、第2突出部35の先端面35aと第2受け部36の受け面36aとの間にはそれぞれ空隙が存在する程度に近接する状態で、シリンダーライナーの内周面に0.5N以上の張力で持って、ピストンリング3が張った状態を維持することができる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、断面形状が略長方形状のピストンリングを例示したが、オイル消費量低減、フリクションロス低減の観点から、外周摺動面(外周面1f,2f,3f)の形状をバレル状又はテーパ状としてもよい。また、合口部についても上述の他に、特許4114849号公報に開示されたダブルカット形状などの他の特殊合い口形状であってもよい。
また、上記実施形態に係るピストンリングをピストンリング本体とし、これと補助部材とによってピストンリングを構成してもよい。図10(a)に示すピストンリング10Aは、ピストンリング1と実質的に同一のものに対し、その内周面に半円筒状の凹部を形成したピストンリング本体101aと、上記凹部に装着されたコイルエキスパンダ102(補助部材)とによって構成されている。コイルエキスパンダ102は、例えば、バネ鋼の線材をコイル状に加工したものであり、ピストンリング1と同様に合口を有する円環状の形状を有している。補助部材は、コイルエキスパンダ102の態様に限定されず、図10(b)に示す部材であってもよい。すなわち、図10(b)に示すピストンリング10Bは、断面形状が略矩形形状でピストンリング本体101と、ピストンリング本体101の内周面と当接する部分に配置されたエキスパンダ103とによって構成されている。エキスパンダ103は、バレル状の外周面形状を有し、その材質は金属でも樹脂又はカーボンファイバー、グラスファイバーであってもよい。なお、これらの補助部材から発生する張力は、ピストンリング本体から発生する張力に対して、大きくても小さくてもどちらでもよい。なお、補助部材から発生する張力が大きければ、シリンダーライナーの内周面に対してピストンリング本体の外周面が沿いやすくなり、シール性が向上するので、シール性を重要視する場合、補助部材から発生する張力はピストンリング本体から発生する張力よりも大きい方が良い。
以下、本発明について実施例に基づいて説明する。本発明は以下の実施例の内容に限定されるものではない。
<摺動抵抗の評価>
(実施例1)
樹脂成分(ポリエーテルエーテルケトン)に対しておよそ20wt%のカーボン繊維を混合することによって、弾性率15GPa及び比重1.5の樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を2mm四方の矩形に切断して、摺動抵抗を測定するためのテストピースを得た。バレル形状の外周面を円筒ドラムに当接させた状態で加重20Nを加え、摺動速度3m/秒で摺動抵抗の値を測定した。
(比較例1)
実施例1に係るテストピースと同様の形状であって金属材料(ねずみ鋳鉄材、FC200相当材)からなるテストピースを準備した。これの摺動抵抗を実施例1と同様にして測定した。
(比較例2)
実施例1に係るテストピースと同様の形状であって金属材料(SWOSC−V相当材)に硬質皮膜(Cr−Ni皮膜)を形成してなるテストピースを準備した。これの摺動抵抗を実施例1と同様にして測定した。
(結果)
実施例1の摺動抵抗は、比較例1と比較して約8割低減し、比較例2と比較して約7割低減した。
<ブローバイガス量及びオイル消費量の評価>
(実施例2)
実施例1と同じ樹脂組成物(弾性率:15GPa、比重:1.5)からなるピストンリングを作製した。実施例2に係るピストンリングの特徴及び物性は以下のとおりである。
・自己張力:2N(補助部材:不使用)
・合口部:ストレート形状
・外周面:テーパフェイス
・比率(m/d1):0.26
実施例2に係るピストンリングをセカンドリングとして使用し且つ以下の条件でガソリンエンジンを運転させてブローバイガス量及びオイル消費量の評価を行った。
・回転数:4000rpm
・全負荷(Wide Open Throttle)
・運転時間:10時間
・トップリング:鋼製のリング(合口部:ストレート形状、外周面:バレル形状)
・オイルリング:鋼製の3ピースオイルリング
(比較例3)
比較例1と同じ材質(ねずみ鋳鉄材、FC200相当材、弾性率:93GPa、比重:7)からなるピストンリングをセカンドリングとして使用したことの他は、実施例2と同様にしてブローバイガス量及びオイル消費量の評価を行った。比較例3に係るピストンリングの特徴及び物性は以下のとおりである。
・自己張力:4N(補助部材:不使用)
・合口部:ストレート形状
・外周面:テーパフェイス
・比率(m/d1):0.13
(結果)
比較例3のブローバイガス量を100とすると、実施例2のブローバイガス量は85であった。比較例3のオイル消費量を100とすると、実施例2のオイル消費量は48であった。
<ピストンリングの弾性率とオイル消費量の関係>
(実施例3〜9)
上記実施例2に係るピストンリングに加え、表1に示す7種類の樹脂組成物からなるピストンリングを作製した。実施例3〜7に係るピストンリングは、ベース材として、PTFE樹脂、ポリイミド樹脂、PPS樹脂又はPEEK樹脂を使用するとともに、配合するカーボン繊維又はガラス繊維の量及びこれらの繊維長を調整することで、所望の弾性率を得た。
Figure 2019124389
実施例3〜9に係るピストンリングはいずれも以下の形状を有するものとした。
・合口部:ストレート形状
・外周面:テーパフェイス
・張力:2N(張力が2Nとなるように各ピストンリングの比率(m/d1)を調整した。)
実施例3〜9に係るピストンリングを実際に作製することが可能であることを確認した後、実施例2〜9及び比較例3に係るピストンリングのオイル消費量を過去のデータから得られた評価特性パラメータ情報に基づき評価した。すなわち、これらのピストンリングを2リッターエンジンのセカンドリングとして適用したときのオイル消費量を推定評価した。
図11は、実施例2〜9に係るオイル消費量の評価結果を示すグラフであって、縦軸は評価されたオイル消費量の相対比(比較例3に係るピストンリング使用時のオイル消費量基準)を示し、横軸に弾性率(GPa)を示す。このグラフより、弾性率が0.3〜50GPaの樹脂材料で構成することにより、鉄製のピストンリングよりもオイル消費量を低減できることがわかる。特に、鉄製のピストンリングで発生した張力よりも低い張力であっても、オイル消費量の低減効果が発生することがわかる。オイル消費量の更なる低減の点から、ピストンリングの弾性率は5〜50GPaが好ましく、5〜20GPaがより好ましく、10〜16GPaが更に好ましいことを図11のグラフから読み取ることができる。
本開示によれば、低フリクション性を有しつつ、オイル消費が少ない内燃機関用ピストンリングが提供される。
1,1A,2,3,10A,10B…ピストンリング、1a,2a,3a…合口部、1c,2c,3c…側面(一方の側面)、1d,2d,3d…側面(他方の側面)、1e,2e,3e…内周面、1f,2f,3f…外周面(外周摺動面)、101,101a…ピストンリング本体、102…コイルエキスパンダ(補助部材)、103…エキスパンダ(補助部材)
<ピストンリングの弾性率とオイル消費量の関係>
参考例3,4及び実施例〜9)
上記実施例2に係るピストンリングに加え、表1に示す7種類の樹脂組成物からなるピストンリングを作製した。参考例3,4及び実施例に係るピストンリングは、ベース材として、PTFE樹脂、ポリイミド樹脂、PPS樹脂又はPEEK樹脂を使用するとともに、配合するカーボン繊維又はガラス繊維の量及びこれらの繊維長を調整することで、所望の弾性率を得た。
Figure 2019124389
参考例3,4及び実施例〜9に係るピストンリングはいずれも以下の形状を有するものとした。
・合口部:ストレート形状
・外周面:テーパフェイス
・張力:2N(張力が2Nとなるように各ピストンリングの比率(m/d1)を調整した。)
参考例3,4及び実施例〜9に係るピストンリングを実際に作製することが可能であることを確認した後、実施例2、参考例3,4、実施例5〜9及び比較例3に係るピストンリングのオイル消費量を過去のデータから得られた評価特性パラメータ情報に基づき評価した。すなわち、これらのピストンリングを2リッターエンジンのセカンドリングとして適用したときのオイル消費量を推定評価した。
図11は、実施例2、参考例3,4、実施例5〜9に係るオイル消費量の評価結果を示すグラフであって、縦軸は評価されたオイル消費量の相対比(比較例3に係るピストンリング使用時のオイル消費量基準)を示し、横軸に弾性率(GPa)を示す。このグラフより、弾性率が0.3〜50GPaの樹脂材料で構成することにより、鉄製のピストンリングよりもオイル消費量を低減できることがわかる。特に、鉄製のピストンリングで発生した張力よりも低い張力であっても、オイル消費量の低減効果が発生することがわかる。オイル消費量の更なる低減の点から、ピストンリングの弾性率は5〜50GPaが好ましく、5〜20GPaがより好ましく、10〜16GPaが更に好ましいことを図11のグラフから読み取ることができる。

Claims (16)

  1. 樹脂組成物からなる、内燃機関用ピストンリングであって、
    合口部を有しており、前記合口部を閉じた状態における当該ピストンリングの外径寸法d1に対する、自由状態における合口部の隙間寸法mの比率(m/d1)が0.05〜0.8であり、
    前記樹脂組成物の弾性率が0.3〜50GPaである、ピストンリング。
  2. 自己張力を有する、請求項1に記載のピストンリング。
  3. 0.5N以上の自己張力を有する、請求項1に記載のピストンリング。
  4. 1N以上の自己張力を有する、請求項1に記載のピストンリング。
  5. ピストンリング本体と、前記ピストンリング本体の張力を高めるための補助部材とを備える内燃機関用ピストンリングであって、
    前記ピストンリング本体が、樹脂組成物からなり、且つ合口部を有しており、前記合口部を閉じた状態における当該ピストンリング本体の外径寸法d1に対する、自由状態における合口部の隙間寸法mの比率(m/d1)が0.05〜0.8であり、
    前記樹脂組成物の弾性率が0.3〜50GPaである、ピストンリング。
  6. 前記ピストンリング本体の比重が1.0〜3.0である、請求項5に記載のピストンリング。
  7. 前記樹脂組成物の弾性率が5〜50GPaである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のピストンリング。
  8. 前記樹脂組成物の弾性率が5〜20GPaである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のピストンリング。
  9. 前記樹脂組成物の弾性率が10〜16GPaである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のピストンリング。
  10. 前記樹脂組成物は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン及び液晶ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂成分と、
    ガラス繊維、合成繊維及びカーボン繊維からなる群から選ばれる少なくとも一種の繊維とを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のピストンリング。
  11. 前記樹脂組成物は、ポリイミド、ポリアミドイミド及びポリアミドの合計の含有率が50質量%未満である、請求項10に記載のピストンリング。
  12. 前記樹脂組成物は、モリブデン、銅、鉄、ブロンズ、グラファイト、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、マイカ、酸化亜鉛及びタルクからなる群から選ばれる少なくとも一種の材料からなる粉体を更に含む、請求項10又は11に記載のピストンリング。
  13. バレル状又はテーパ状に形成された外周摺動面を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載のピストンリング。
  14. 前記合口部は、当該ピストンリングを自由状態から前記合口部を閉じた状態とする際、互いに摺動するように相対的に移動する第1の一対の面を有し、
    前記第1の一対の面は、当該ピストンリングの厚さ方向に延びている、請求項1〜13のいずれか一項に記載のピストンリング。
  15. 前記合口部は、当該ピストンリングを自由状態から前記合口部を閉じた状態とする際、互いに摺動するように相対的に移動する第2の一対の面を有し、
    前記第2の一対の面は、当該ピストンリングの径方向に延びている、請求項1〜14のいずれか一項に記載のピストンリング。
  16. 内周面、外周面、一方の側面、他方の側面及び前記合口部の合わせ面からなる群から選ばれる少なくとも一つの面上に形成された表面処理膜を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載のピストンリング。
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