JP2010276091A - ピストンリング - Google Patents

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Abstract

【課題】ピストンのリング溝の上下面とピストンリングの上下面の側面シール性及び耐スティック性に優れ、且つシリンダ壁への追従性に優れたピストンリングを提供することである。
【解決手段】樹脂からなるリング本体1の弾性と形状、及びレール部材2と張力リング3により、ピストン動作時においてピストン4のリング溝5及びシリンダ壁7との間に適切な圧力を発生させた状態で接触させることにより、ピストンのリング溝5の上下面との側面シール性、耐スティック性を確保し、更にシリンダ壁への追従性に優れたピストンリングを提供する。
【選択図】図2

Description

本発明はピストンリングに関し、特に内燃機関エンジンやコンプレッサ等のシールに使用されるピストンリングに関する。
トラック及びバスを含めた自動車等の内燃機関エンジンや、往復動式コンプレッサに使用されるピストンリングには、例えば図5のように、上下に配された一対のレール部材2と前記一対のレール部材2間に配置され、レール部材2を外周方向に押圧する張力を有するスペーサエキスパンダ9とからなる3ピース型オイルリング(ピストンリング)や、図6のように、シリンダ内壁と接するように外周側に配置されたピストンリング本体と、前記ピストンリング本体の内周側に配置され、ピストンリング本体を外周方向に押圧する張力を有するコイルエキスパンダ10とからなる2ピース型オイルリング(ピストンリング)が使用されている。
また、シリンダ内壁及びリング溝とのシール性を向上させたピストンリングが提案されている。例えば特許文献1では、ピストンのリング溝の上下面に当接して介在させた弾性リングの内周面に上下二つの傾斜面を形成し、前記弾性リングの内周側に配したリング状のバネ部材(コイルエキスパンダ)を前記二つの傾斜面に当接させ、バネ部材の張力を弾性リングの外周方向及び上下方向への押圧力に分散させ、シリンダ内壁及びリング溝とのシール性を確保させたピストンリングとしている。また、特許文献2では、ピストンのリング溝内部にリング溝の上下幅よりも大きな弾性リングを介在させ、リング溝の上下面と弾性リングの上下面を密着させることでリング側面のシール機能を確保し、前記弾性リングの内周側に配したリング状バネ部材が、弾性リングを介して弾性リング外周側に配されたピストンリング本体を外周方向に押圧させ、シリンダ内壁とのシール性を確保したピストンリングとしている。
特開平9−280373号公報 特開平9−159023号公報
従来の3ピース型ピストンリングは、ピストンのリング溝の上下面とピストンリングの上下レール部材2とが当接することでリング溝とのシール機能を発揮する。しかし、エンジンオイルの汚れや劣化等により、レール部材2とスペーサエキスパンダ9の間にカーボン等が堆積すると、ピストンのリング溝内部でスティック(固着)が発生して、シリンダ内壁及びリング溝との間のシール機能が著しく損なわれることがある。一方、従来の2ピース型ピストンリングは、シリンダ内壁とのシール機能を果たすピストンリング本体が単体で形成されているため耐スティック性は良好であるが、ピストンのリング溝との側面シール性は十分に確保できていない。
また、特許文献1によるピストンリングは、弾性リング内周側に配したリング状のバネ部材の外周方向への張力を弾性リングの外周方向及び上下方向への押圧力に分散させるため、外周方向への押圧力が不足し、シリンダ内壁とのシール性が不十分となることがある。更に、特許文献2によるピストンリングは、リング溝の上下幅よりも大きな弾性リングを用いているため、断面積が大きく剛性が高いことが考えられ、ピストンのリング溝の周方向のうねりや変形に追従ができず、リング溝の上下面とのシール性が十分発揮できない。また、弾性リングの剛性が高すぎることでシリンダの変形に対してもリングが十分に追従できず、シリンダ壁とのシール性能も十分に確保できない問題がある。更に、ピストンリングの軸方向幅がリング溝の上下幅よりも大きいため、ピストンリングのリング溝への組み付け性に問題を有している。
本発明の目的は、ピストンのリング溝の上面及び下面との側面シール性及び耐スティック性に優れ、且つシリンダ内壁への追従性にも優れたピストンリングを提供することである。
本発明によるピストンリングは、樹脂からなるリング本体の弾性と形状、及びレール部材と張力リングにより、ピストンのリング溝及びシリンダ壁との間に適切な圧力を発生させることができる。そして、この状態でピストンリングを接触させることで、ピストンのリング溝の上下面及びシリンダ内壁とのシール性を確保するとともに耐スティック性を有し、更にピストンの動作時のシリンダ内壁への追従性に優れることを特徴とする。
すなわち、本発明のピストンリングは、リング本体が外周側の基体部と、その基体部の上側及び下側にそれぞれリング本体の内周側に向かって延びる上下薄幅部、及びその薄幅部の間の内周側に凹部を備える樹脂又は合成ゴムにより形成されたリングであり、リング本体の軸方向の断面における上側面及び下側面の少なくとも一部に、それぞれ軸方向の上方及び下方に向かって突出する凸状の曲面部を有し、薄幅部の上下側面とリング溝の上下面とが当接することを特徴とする。そして、リング本体の外周側に配置される摺動部材が、リング本体に一体化された単一又は複数のレール部材であり、且つリング本体の内周側の凹部に、リング本体を介してレール部材をシリンダ内壁に押圧する張力リングを備えた構成を特徴とする。
本発明のピストンリングのリング本体の薄幅部とは、リング本体の内周側に形成された凹部の最大径部からリング軸方向に伸ばした線がリング本体の上下側面と交差する位置と、リング本体の上下側面の内周側端部の間である。このリング本体の薄幅部をピストンのリング溝の上下面と接触させることで、ピストンの動作時にリング本体の薄幅部の弾性によりピストンのリング溝への追従性を顕著に向上させることができる。
また、リング本体と、リング本体の外周側に配されたレール部材との間に、リング本体よりも弾性率の低い樹脂を配置して用いることができる。これにより、ピストンリングのシリンダ壁への追従性をより向上させることが可能となる。
本発明のピストンリングの樹脂からなるリング本体の上下側面に構成される薄幅部は、金属に比べて弾性率の低い樹脂の特性により、ピストンのリング溝の周方向のうねりや変形に対する追従性が一層向上し、シール性能をさらに向上させることができ、特にオイル消費量の低減が可能となる。
本発明のピストンリングは、樹脂又は合成ゴムのリングで弾性率が低く、且つ上下側面に薄幅部を有する形状であるため、ピストンのリング溝上面及び下面と、ピストンリングの上面及び下面の間の側面シール性能に優れる。そのため、ディーゼルエンジン及びガソリンエンジンを搭載した自動車の走行時、特に減速時の吸気負圧の影響によるオイル消費量の低減が可能となる。また、リング本体及びレール部材が隙間なく一体に組み合わされているため、各部材間にカーボン等が堆積して固着することがなく高い耐スティック性能が得られる。更に、リング本体の上下側面に軸方向に向かって上方及び下方に突出した凸状の曲面部をそれぞれ形成し、上下側面の内周側をリング溝の上下面と当接する薄幅部として、リング本体の断面積、特にリング本体の内周側の断面積を小さくしたことにより、シリンダの変形に対するピストンリングの追従性を向上し、ピストンリングとシリンダ内壁との間のシール性能を向上させることができ、特にオイル消費量の低減が可能となる。
本発明のピストンリングは、金属に比べて弾性率の低い樹脂製のリング本体により、ピストンのリング溝の上面及び下面とピストンリングの上面及び下面の間の側面シールを行っているため、常に安定した側面シール性能を発揮することができるため、オイル消費量の低減、ブローバイ量の低減ができる。
本発明の第1実施形態によるピストンリングの概略断面図である。 本発明の第1実施形態によるピストンリングをピストンのリング溝に装着した状態を示す概略断面図である。 本発明の第2実施形態によるピストンリングをピストンのリング溝に装着した状態を示す概略断面図である。 比較例3のピストンリングをピストンのリング溝に装着した状態を示す概略断面図である。 従来の3ピース型ピストンリング(比較例1)をピストンのリング溝に装着した状態を示す概略断面図である。 従来の2ピース型ピストンリング(比較例2)をピストンのリング溝に装着した状態を示す概略断面図である。 本発明の実施例と比較例の評価試験におけるオイル消費量の比を示した図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るピストンリングの断面形状の概略を示した図である。図2は、第1の実施形態に係るピストンリングを、ピストン4のリング溝5に装着した状態を示した概略断面図である。
本発明の第1の実施形態に係るピストンリングは、ピストンのリング溝の上下面との間のシール機能を有した樹脂からなるリング本体1と、シリンダ内壁7との間でシール機能を備えた金属材料からなる2本のレール部材2と、前記レール部材2が適正にシリンダ内壁7に押圧されるようにリング本体1を介して内周側から張力を生じさせる矩形断面の張力リング3から構成される。
樹脂からなるリング本体1は、上下側面Eがその断面における内外周間(径方向)で軸方向に突出した凸状の曲面からなり、リング本体1の内周側に張力リング3が配される凹部を有し、前記凹部の上下に薄幅部を備える。樹脂製リング本体1の上面1aとピストン4のリング溝5の上面5aとの間のシール機能、及び樹脂製リング本体1の下面1bとピストン4のリング溝5の下面5bとの間のシール機能は、リング本体1の形状と樹脂の弾性とにより、リング溝5の上下面とリング本体1の上下側面Eとの間に適切な押圧力を生じさせた状態で接触させることで確保される。そして、樹脂製リング本体1の上下側面は、リング本体1の内周側の凹部の内周部Fの最大径の位置Aからリングの軸方向に伸ばした線がリング本体1の上下の側面Eと交差する交差位置Bと、リング本体側面内端部Cとの間でリング溝5の上下面と当接し、優れた側面シール性を確保することができる。
樹脂製リング本体1の上下の側面Eは、その断面において内外周間全体を凸状の曲面部としてもよく、曲面部と平面とを組み合わせた複合面としてもよい。上下の側面Eの凸状の曲面部は、単一曲率の曲面又は連続する複数の曲率を有する複合曲面で形成してもよく、曲面と平面を組み合わせることもできる。また、リング本体1の内周側に形成された凹部の内周部Fも、その断面において単一曲率の曲面又は複数の曲率からなる複合曲面、曲面と平面を組み合わせた複合面で形成することができる。更に、樹脂製のリング本体1には、外周側と内周側を貫通するオイル通路孔を設けてもよい。オイル通路孔の形状、数及び位置は任意に設定することが可能である。
リング本体1の材料には、例えば合成樹脂、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフォン(PPS)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリアミドイミド(PAI)等の樹脂を好ましく用いることができる。また、合成ゴムを用いることもできる。更に、リング本体1は、単一の樹脂から構成してもよく、複数の樹脂を組み合わせ複合化した構造としたものを用いてもよく、カーボンファイバー等を含む強化樹脂等を用いることもできる。
レール部材2は、接合成形や嵌め合い等の手段により、リング本体1の外周側にレール部材2の内周側が埋め込まれ一体化されている。一方、リング本体1の内周側に配される張力リング3も、接合成形や嵌め合い等の手段によりリング本体1の内周側で一体化されている。リング本体1と、レール部材2及び張力リング3とは、接合成形と嵌め合い等の手段を組み合せて一体化してもよく、例えば、樹脂製のリング本体1とレール部材2が一体に接合成形され、樹脂製のリング本体1と張力リング3が嵌め合いにより一体化される構成としてもよい。リング本体1とレール部材2は、例えば射出成形法でレール部材2を鋳ぐるむ等の手段により一体化することが好ましい。
レール部材2には、例えばJIS規格によるSUS材、SWRH材、SWRS材などの金属材料を用いることが好ましい。また、前記金属材料からなるレール部材2の摺動面に、例えば、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、イオンプレーティング、クロムメッキ、窒化処理等の各種表面処理を施して用いることがより好ましい。尚、レール部材2に耐摩耗性や耐熱性に優れた樹脂等の非金属材料、例えば、耐摩耗性に優れるPEEK等を用いてもよい。
リング本体1の外周側に一体化されるレール部材2は2本に限定されず、1本のレール部材もしくは2本以上のレール部材で構成してもよく、複数のレール部材を組み合わせて一体構造に構成してもよい。また、レール部材2の断面形状は、矩形に限定されず、レール部材2が一体接合成形又は嵌め合いにより結合される際の結合強度の向上や、ピストンの二次動作時におけるレール部材2のシリンダ内壁7への追従性能を一層向上できる断面形状に設定することもできる。
レール部材2の外周摺動部の形状は、バレルフェイス形状、テーパー形状、スクレーパ形状等ピストンリングに用いられる各種形状を適用することができる。特にバレルフェイス形状とすることでシリンダ内壁との接触圧力を高く設定できるため、一層優れた外周シール性能を発揮できるためより好ましい。また、レール部材2の側面には、レール部材2が一体接合成形または嵌め合いにより結合される際の結合強度を向上させたり、レール部材2のシリンダ内壁7への追従性能を一層向上させるために、貫通孔、スリット等を設けることができる。
リング本体1の内周側の凹部に配される張力リング3は、断面が矩形のものに限定されることなく、リング本体1に一体接合成形、嵌め合い又は組み付け等の手段により組み合わせることが可能な形状であればよく、ソリッド状、エキスパンダ形状、コイル形状のもの等を、リング本体1と一体化又はリング本体1に組み付けて用いることができる。ソリッド状のリングをリング本体1と一体化して用いるのがより好ましい。
図3は、第2の実施形態に係るピストンリングを、ピストン4のリング溝5に装着した状態を示した概略断面図である。第1の実施形態とは、樹脂製リング本体1の外周側に配置され、本体中に挿入されるレール部材2との間に、リング本体1よりも弾性率の低い樹脂を配置したことのみ異なる。第2の実施形態とすることで、樹脂製のリング本体1の外周側でレール部材2とシリンダ内壁7をより適切に押圧させ、レール部材2のシリンダ内壁7への追従性能を一層向上させることができる。
以下に、本発明の実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明によるピストンリングの実施例1として、図1に示す構成のピストンリングを作製した。上下側面の少なくとも一部に軸方向に向かって突出した凸状の曲面部を形成し、内周側に凹部を備え、凹部の上下部にリング溝5と当接する断面が略円弧状の薄幅部を形成した樹脂製のリング本体1と、リング本体1の外周側にリング本体1と一体化された2本のレール部材2を備え、リング本体1の内周側の凹部に凹部の軸方向幅よりも小さい軸方向幅を有した1本の矩形断面の張力リング3を一体化したピストンリングを作製した。樹脂製のリング本体1の材料には合成樹脂のポリベンゾイミダゾール(PBI)、張力リング3の材料にはMC63(JISB−8032規格材)相当材、2本のレール部材2の材料にはMC68(JIS B−8032規格材)相当材を使用し、呼び径71.0mmのピストンリングを樹脂射出成形機での鋳ぐるみによる一体成形法により作製した。実施例1において、上下側面に形成される曲面部の半径は15mmとし、上下面に形成される曲面は単一の曲面で構成した。内周部に形成される凹部は、リング本体1の径方向寸法の1/2とした。ピストンリングの軸方向寸法は2.5mm、径方向の寸法は3.0mm、張力は5Nとし、レール部材2の軸方向寸法は0.35mm、径方向の寸法は1.5mmとした。そして、シリンダ内壁7と接する2本のレール部材2の外周摺動部には、耐摩耗性に優れるイオンプレーティング被膜を被覆したものを用いた。
また、実施例1のピストンリングの合い口部の形状はストレート形状とした。合い口部の形状は、ストレート形状に限定することなく、斜め合い口や段付合い口等、ピストンリングやシールリングに一般的に適用される形状とすることもできる。実施例1において合口隙間は0.3mmに設定した。
本発明によるピストンリングの実施例2として、図3に示す構成のピストンリングを作製した。リング本体1、張力リング3、レール部材2とも実施例1と同じ材料を使用し、呼び径および各部形状が同じピストンリングを樹脂射出成形機での鋳ぐるみによる一体成型法で作製した。実施例1とは、樹脂製のリング本体1と2本のレール部材2との間に、ポリベンゾイミダゾール(PBI)よりも弾性率の低い樹脂材8としてポリアミドイミド(PAI)を配したことが相違する。実施例2のピストンリングの構造は、シリンダ内壁7と接する2本のレールのシリンダ内壁7への追従性能を一層向上し、実施例1より一層優れたシール性能となる。
本発明によるピストンリングのシール性能及び追従性の効果を確認するため、従来技術によるピストンリングを比較例として製作した。比較例1及び比較例2として、実施例1と同呼称径(呼び径)の3ピース型ピストンリング及び2ピース型ピストンリングを製作した。
比較例1の3ピース型ピストンリングは、張力を発生させるためのスペーサエキスパンダの材料としてMC67(JISB−8032規格材)相当材を使用し、スペースエキスパンダの上下に配される2本のレール部材の材料として実施例1と同様にMC68(JIS B−8032規格材)相当材を使用し、シリンダ内壁7と接する前記2本のレール部材の外周摺動部には実施例と同じイオンプレーティング被膜を施工したものを用いた。尚、比較例1の3ピース型ピストンリングの軸方向寸法は2.5mm、径方向の寸法は2.8mm、張力は5Nとし、レール部材2の軸方向寸法は0.35mm、径方向の寸法は2.0mmとした。また、合い口部の形状はストレート形状とし合口隙間は0.3mmに設定した。
比較例2の2ピース型ピストンリングは、張力を発生させるためのコイルエキスパンダの材料としてMC63(JISB−8032規格材)相当材を使用し、外周リングの材料としてMC68(JIS B−8032規格材)相当材を使用し、シリンダ内壁7と接する外周リングの外周摺動部には実施例と同じ耐摩耗性に優れるイオンプレーティング被膜を施工したものを用いた。尚、比較例2の2ピース型ピストンリングの軸方向寸法は2.5mm、径方向の寸法は2.5mm、張力は5Nとした。また、合い口部の形状はストレート形状とし合口隙間は0.3mmに設定した。
比較例3として、図4に示す構成のピストンリングを作製した。比較例3のピストンリングは、実施例1によるピストンリングと同呼称径で、同材料、同被膜、同合い口部形状、同合い口部隙間とし、ピストン4のリング溝5の上面5a及び下面5bと、樹脂製リング部材1の上面1a及び下面1bの間の接触部がリング本体1の内周側に形成された凹部のリング内周部Fの最大径の位置Aからリングの軸方向に伸ばした線がリング本体1の上下の側面Eと交差する交差位置Bと、樹脂製のリング部材1の外周側先端部Dの間に存在するピストンリングを実施例1と同様に樹脂射出成形機での鋳ぐるみによる一体成型法にて製作した。比較例3のピストンリングの構造では、樹脂製のリング本体1の変形が、シリンダ内壁7と接する2本のレール部材2の姿勢に大きく影響し、2本のレール部材2の外周摺動部がシリンダ内壁に適切な力や適切な姿勢で接することができない状態となり十分なシール性能を発揮できないことがある。
比較例4として、特許文献2の図1に示された構成のピストンリングを実施例1によるピストンリングと同呼称径となるように製作した。弾性リングの材料には、実施例1と同材料のポリベンゾイミダゾール(PBI)を用い、弾性リングと組み合わされるピストンリング本体にはMC68(JISB−8032規格材)相当材を使用し、ピストンリング本体のシリンダ内壁7と接する外周摺動部には、実施例1と同じ耐摩耗性に優れるイオンプレーティング被膜を施工したものを用いた。弾性リングの内周側に配されるリング状バネ部材は、実施例及び比較例と同じMC63(JISB−8032規格材)相当材によるものを用いた。比較例4のピストンリングの構造では、樹脂製のリングの剛性が高すぎるため、ピストンのリング溝の周方向のうねりや変形に対する追従性不足、及びシリンダ変形に対する追従性不足が考えられるため十分なシール性能を発揮できないことがある。
上記の様に製作した実施例及び比較例の各ピストンリングをピストン4に組み付けた後、4サイクルガソリンエンジンに組込み、シール性能及び追従性評価のための試験をそれぞれについて実施した。実施例及び比較例の各々のピストンリングの張力は、同等になるように調整した。評価のためのエンジンの運転条件は、高速道路等での走行条件を模擬した毎分のエンジン回転数が3500回転とする一定速度による評価条件と、市街地における走行条件を模擬した毎分のエンジン回転数が600回転から4000回転まで上昇しその後600回転まで降下する、加速及び減速パターンによる評価条件の2つの条件により所定時間試験を行うことで評価を行った。
上記4サイクルガソリンエンジンによるシール性能及び追従性評価の結果を図7に示す。図7は比較例1を基準とし、比較例1に対してのオイル消費量の比で示している。評価結果を総合的に判断すると、本発明によるピストンリングの実施例1及び実施例2は、各比較例に比べてオイル消費が顕著に低減され、スティックが生じることなく、側面シール性及びシリンダ内壁との追従性に優れている。
1 樹脂製リング本体
1a 樹脂製リング本体の上側面
1b 樹脂製リング本体の下側面
1c 樹脂製リング本体の基体部
1b 樹脂製リング本体の薄幅部
2 レール部材
3 張力リング
4 ピストン
5 リング溝
5a リング溝上面
5b リング溝下面
6 ピストンのオイル逃がし孔
7 シリンダ内壁
8 樹脂材
9 スペーサエキスパンダ
10 コイルエキスパンダ
A リング本体内周部の最大径の位置
B 交差位置
C リング本体側面の内端部
D リング本体側面の外端部
E リング本体の側面
F リング本体の内周部

Claims (4)

  1. リング本体と、前記リング本体の外周側に配置され、シリンダ内壁と摺接する摺動部材、及び前記リング本体の内周側に配置され、前記リング本体を拡径させる方向に付勢する張力リングとを備え、ピストンのリング溝に組み付けられるピストンリングにおいて、
    前記リング本体は、外周側に基体部と、前記基体部の上側及び下側よりそれぞれリング本体の内周側に向かって延びる上下薄幅部と、前記上下薄幅部の間の内周側に凹部を備える樹脂又は合成ゴムにより形成されたリングであって、前記リング本体の上側面及び下側面の少なくとも一部に、それぞれ軸方向の上方及び下方に向かって突出する凸状の曲面部を有し、前記薄幅部の上下側面とリング溝の上下面とが当接することを特徴とするピストンリング。
  2. 前記リング本体の外周側に配置される摺動部材が、リング本体に一体化されたレール部材であり、且つ前記リング本体の内周側の凹部に、リング本体を介してレール部材をシリンダ内壁に押圧する張力リングを備えたことを特徴とする請求項1に記載のピストンリング。
  3. 前記リング本体の前記薄幅部が、リング本体の内周側に形成された凹部の最大径部からリング軸方向に伸ばした線がリング本体の上下側面と交差する位置からリング本体内周端部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のピストンリング。
  4. 前記リング本体と、前記リング本体中に挿入された前記レール部材との間に、リング本体よりも弾性率の低い樹脂を配置したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のピストンリング。
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