JP3890756B2 - 密封装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は樹脂材によるシールリップとゴム状弾性材によるシール部との複合材料による密封装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の密封装置を図3に示す。詳細に関しては、出願人による特願平2−27386号を参照することができる。
【0003】
図3に示す密封装置100は、互いに同軸的に相対移動するハウジング110と軸111の隙間を大気側Oと密封側Mとに隔てて密封するもので、その概略構成として密封装置100の形状を保持する断面L字状の金属性の補強環101と、補強環101に加硫成形されるゴム状弾性体の第1シール部材102と、及び補強環101と第1シール部材102に挟まれるように固定される樹脂による第2シール部材103とを備えている。
【0004】
補強環101はハウジング110の内周面に密封装置100を固定するはめ合い部101aとはめ合い部101aから径方向内向きに延びたフランジ部101bとを備え、はめ合い部101aの外周表面には第1シール部102と一体的に成形された外周密封部102aが備えられている。
【0005】
また、この密封装置100は、シール部としては2つの部材を複合的に構成したものであり、一般的なゴム状弾性体によるリップだけでは長期間に渡り高い密封性能を満足させることが難しい過酷な条件で用いられることを可能としているものである。
【0006】
すなわち、シール部には第1シール部材102の第1シールリップ102bと、第2シール部材103の第2シールリップ103aが備えられ、それぞれのリップに異なる特徴を持たせて高機能化しているものである。
【0007】
この従来技術においては、第2シールリップ103aに樹脂として例えばPTFE(4フッ化エチレン)による高い耐摩耗性や耐熱特性を備えた材料を採用して、密封装置100の稼動中(主として軸111の回転運動)に密封側Mの高い圧力により第2シールリップ103aが軸111の摺動表面に付勢されても摩耗や変形が少なく、また第1シールリップ102bの返転や移動等を防止する保持機能を備え、密封性能を長期間に渡り維持することが可能である。
【0008】
第2シールリップ103aの軸111の摺動表面との対向面にはポンプ作用を発生するねじ溝103bが形成され、軸111の回転中は軸111の摺動表面から大気側Oへと流出しようとする密封流体を密封側Mに押し戻すように作用させて高いシール性能を維持している。
【0009】
一方、ゴム状弾性体の第1シールリップ102bは、軸111の回転中においてもこれ自体による密封性も必要ではあるが、この従来技術においてはむしろ、軸111の停止時における密封流体のシールを行うことも大事な機能となっている。
【0010】
従って、このような従来技術においては2つの異なる材料の特性を引き出して上手に利用可能な構成とし、高性能なシール性を達成している。
【0011】
図4は、図3で説明した複合シール部を備えた密封装置100の製造工程を説明する図である。
【0012】
図4(a)において、成形型200は概略構成として下型201と上型210とから構成されている。下型201は底面を形成する第1型202と、外径側壁面を形成する第2型203と、内径側の壁面を形成する中子204とから分割構成されている。そして、中子204の外周面には雄ねじ部204aが刻設されている。
【0013】
一方、上型210の下面には、下型201内に挿入される環状の突部211が形成されている。そして型閉めした際に、この突部211と下型201との間に環状のキャビティ220が形成されることになる。
【0014】
次に、密封装置100の加硫成形は、以下のようにして行われる。
【0015】
まず、下型201の中に補強環101と第2シール部材103及び第1シール部材102の素材としてゴム生地102’を所定の順に配設する。
【0016】
また第2シール部材103としてはPTFE等の樹脂を前もって切削加工等により断面L字状に形成しておく。断面L字状に形成せず、例えば平板状のワッシャ形状あるいはロート状のワッシャ形状の素材からなる第2シール部材130を利用し、型閉めにより断面L字状に形成することも考えられるが、この場合には第2シール部材103はゴム生地102’を介して補強環101と中子204の雄ねじ部204aに付勢されるので、成形位置のずれや、ねじ溝103bを形成するための圧力が断面L字状に形成することで消費され十分に加圧されなくなる等の問題を考慮する必要がある。
【0017】
そして、図4(b)のように型閉めし、加熱及び加圧を行う。キャビティ220内でゴム生地102’は流動化し、第2シール部材103の第2シールリップ103a、補強環101の表面に沿って流れてキャビティ220内の全域にまで拡がる。
【0018】
すると、熱により軟化した第2シール部材103の第2シールリップ103aは流動化したゴム生地102’の圧力によって雄ねじ部204aの表面に押しつけられ、雄ねじ部204aに対応するねじ溝103bが形成される。
【0019】
加硫成形が終了すると、型開きして成形品を取り出し、第1シール部材102の余剰部分を適宜切断して密封装置100を完成させる。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来技術において、上記のような複合シール部を備えた密封装置100は、第1シール部材102から第1シールリップ102bが連続してゴム状弾性体で形成されているため、連続するためのゴム状弾性体を必要とし、密封装置100の重量を増加させていた。
【0021】
また、ゴム状弾性体製の第1シールリップ102bと樹脂製の第2シールリップ103aとは、それぞれ独立しているため、軸111の偏心が大きい場合等に使用条件に合わせて、第1シールリップ102bの軸111に対して接触する締めしろの領域を大きくする必要があり、このようにすると、緊迫力が高まり、第1シールリップ102bが接触により発熱や摩耗してしまい、密封装置100の寿命を低下させる虞があった。
【0022】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、軸偏心に対してシール性を向上し、さらに装置の長寿命化及び軽量化を図る密封装置を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明にあっては、軸とハウジングとの間の環状隙間を密封する密封装置において、補強環と、補強環の外周に一体的に成形され、ハウジング内周に密封性を保ちながら嵌め込まれる外周密封部と、補強環に一体的に組み付けられ、軸表面に摺動自在に当接する当接面を有し、その先端は軸表面から離隔された樹脂製の環状シールリップと、前記環状シールリップの先端にのみ、前記外周密封部とは別体に焼付けられ、該環状シールリップの先端から軸表面に延びたゴム状弾性体製のシールリップと、を備え、前記環状シールリップは、平ワッシャ形状であり、かつねじ溝を備えていることを特徴とする。
【0024】
従って、2つの異なる樹脂製及びゴム状弾性体製のシールリップによる高性能なシール性を備えつつ、ゴム状弾性体製のシールリップを別体で付加することからゴム状弾性体の使用量を減少させて軽量化を図ることができる。
【0025】
また、高偏心の使用条件でも環状シールリップが偏心を吸収するため、ゴム状弾性体製のシールリップのシール対象部材に対する締めしろを大きくしなくても、偏心に安定して追従することができる。
【0027】
また、環状シールリップの先端は軸表面から離隔されているので、ゴム状弾性体製のシールリップの変形が環状シールリップのシール性に影響することはない。
【0029】
また、ゴム状弾性体製のシールリップは、軸表面から離隔された環状シールリップの先端から軸表面に延びているので、ゴム状弾性体製のシールリップは環状シールリップの先端でリップとしての作用を十分に行うことができる。
【0031】
また、環状シールリップはねじ溝を備えているので、環状シールリップの可撓性が高まり、密封装置の稼動時において、ねじ溝によるポンプ作用と一緒に環状シールリップのシール性を向上させると共に、密封装置に軸等を組み付ける際の作業性が向上する。
【0033】
また、環状シールリップは平ワッシャ形状であるので、環状シールリップは容易に製作可能である。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0039】
図1は本発明を適用した密封装置1の断面説明図である。この密封装置1はハウジング10とシール対象部材としての軸11との隙間に配置される環状を呈するものであり、外環側がはめ合い部2としてハウジング10の内周に嵌着され、内環側が運動する軸11の摺動表面を密封するシールリップ部3となる。
【0040】
はめ合い部2は密封装置1をハウジング内周に固定すると共に密封性を保つもので、金属製の補強環4によりはめ合い剛性が備えられ、また補強環4の外環部4aにはゴム状弾性体からなるシール部5の外周密封部5aが一体的に成形されている。
【0041】
シールリップ部3は、樹脂としてPTFE樹脂(4フッ化エチレン)を材料とする樹脂製の平ワッシャ形状の環状シールリップ6と、環状シールリップ6の先端に付加されたゴム状弾性体製のシールリップとしての第1シールリップ7と、シール部5の一部として一体的に形成されたダストリップ5bが備えられ、異なる材料より構成された複合リップとなっている。
【0042】
シール部5は、補強環4と環状シールリップ6とを一体的に組み付けるゴム状弾性体である。
【0043】
環状シールリップ6は、補強環4の折り曲げ断面であるところの外環部4aの一端から径方向内向きに延びたフランジ部4bにゴム状弾性体を介して周端部を強固に固定されており、また軸11の摺動表面と当接する当接面6aにはねじ溝6bが形成されている。
【0044】
そして、環状シールリップ6の先端は軸11から離隔しており、その先端にゴム状弾性体製の第1シールリップ7が成形焼付されており、シール部5とは別体に付加されている。
【0045】
そして、従来技術と同様に第1シールリップ7によって、軸11との相対回転がない停止時における密封流体のシールを行うようになっいる。
【0046】
このような構成の密封装置1は、第1シールリップ7がシール部5から連続して形成されることなく環状シールリップ6の先端に設けられるので、密封装置1に使用されるゴム状弾性体の量を減少して軽量化が図れる。
【0047】
また、第1シールリップ7は、シール部5と別体に形成されるため、第1シールリップ7だけを容易に付加することもできる。
【0048】
そして、軸11が高偏心する場合でも、環状シールリップ6が偏心を吸収するため、ゴム状弾性体製の第1シールリップ7の軸11に対する締めしろを大きくしなくても、軸11の偏心に安定して追従することができる。このため、第1シールリップ7の締めしろを大きくして緊迫力が高まり、発熱や摩耗して寿命を低下することを防ぐことができる。
【0049】
また、環状シールリップ6の先端が軸11から離れており、その先端に第1シールリップ7が設けられているので、第1シールリップ7はリップ作用を十分に行うことができ、また、第1シールリップ7の変形が環状シールリップ6のシール性に影響することもない。
【0050】
尚、ねじ溝6b、ダストリップ5bの作用については従来技術によるものと同様である。また、環状シールリップ6は補強環4に直接取付けられてもよいし、補強環4で挟み付けてもよく、種々の方法が適用できる。
【0051】
次に、密封装置1の成形工程を図2により説明する。図2は本実施の形態の密封装置を成形する成型工程を示す断面図である。成形工程としてはシール部5の材料に従って加硫成形や、モールド成形等が行われる。
【0052】
本実施の形態では、流動化したゴム状弾性体を注入して成形する方法で、成形型の基本的構成は下型21と上型22とから構成されている。下型21は外径側壁面を形成する外型21aと、密封装置1となる組立部材(補強環4及び環状シールリップ6)を保持する中型21b及び下型21の中央部に位置する内型21cとにより構成されている。
【0053】
そして、内型21cにはシール部5及び第1シールリップ7をそれぞれ別体に形成するために各々のゴム注入口を連通する通路21dが設けてある。また、内型21cには環状シールリップ6の当接面6aにねじ溝6bを形成するねじ溝形成部21eが刻設されている。
【0054】
そして型閉めした際に、この上型22と下型21との間に環状のキャビティ23が形成されることになる。
【0055】
密封装置1の成形工程は次の通りである。まず、型を開き下型21の中型21bに補強環4及び環状シールリップ6からなる組立部材を装着する。
【0056】
そして、開いた状態(不図示)の上型22を型閉めし、流動化して拡がるゴム状弾性体が注入口を介してキャビティ23内に充填され、シール部5及び第1シールリップ7が成形される。
【0057】
成形時には、熱により軟化した環状シールリップ6の当接面6aに型閉めの圧力によりねじ溝6bを形成する。成形が終了したら型開きして成形品を取り出し、シール部5及び第1シールリップ7の余剰部分やバリを適宜切断して密封装置1を完成させれば良い。
【0058】
この成形工程においては、それぞれ別体のシール部5及び第1シールリップ7が一度に成形することができ手間もかからず容易に密封装置1を完成させることができる。
【0059】
また、環状シールリップ6が平面状であるので、成形時に圧力を加えることが容易であり、ねじ溝6bの成形加工性が良い。
【0060】
尚、本実施の形態に限られず、シール部5及び第1シールリップ7をそれぞれ別材料を注入して成形することもできる。
【0061】
また、環状シールリップ6の内径端部6dの仕上げ方法は、矢印30のように刃先等によりシール部5及び第1シールリップ7の余剰部分やバリを切削加工により除去して仕上げることができる。
【0062】
さらに、密封装置1は使用装置への組立を容易にするために、予め環状シールリップ6の曲げ加工を行ってもよい。もっとも、曲げ加工を事前に行わないで使用装置への組立と同時に使用装置の軸により曲げても良いが、環状シールリップ6の緊迫力の調整をとることが難しいことと、組立に伴い環状シールリップ6に傷を付けたり損傷させてしまう恐れがあるので好ましい方法ではない。また、用いる成形型の形状を変更して、成形時に環状シールリップ6をある程度の曲げを伴うように成形させるようにすることで、曲げ加工を不要とすることも考えられる。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、環状シールリップの先端にのみゴム状弾性体製のシールリップを外周密封部とは別体として焼付けたことで、2つの異なる樹脂製及びゴム状弾性体製のシールリップによる高性能なシール性を備えつつ、ゴム状弾性体製のシールリップを別体で付加することからゴム状弾性体の使用量を減少させて軽量化を図ることができる。
【0064】
また、高偏心の使用条件でも環状シールリップが偏心を吸収するため、ゴム状弾性体製のシールリップのシール対象部材に対する締めしろを大きくしなくても、偏心に安定して追従することができる。このため、締めしろを大きくして緊迫力が高まり、発熱や摩耗して寿命を低下することを防ぐことができる。
【0065】
環状シールリップの先端を軸表面から離隔したことで、ゴム状弾性体製のシールリップの変形が環状シールリップのシール性に影響することがなくなる。
【0066】
ゴム状弾性体製のシールリップは環状シールリップの先端から軸表面へ延びることで、ゴム状弾性体製のシールリップは環状シールリップの先端でリップとしての作用を十分に行うことができる。
【0067】
環状シールリップはねじ溝を備えていることで、環状シールリップの可撓性が高まり、密封装置の稼動時において、ねじ溝によるポンプ作用と一緒に環状シールリップのシール性を向上させると共に、密封装置に軸等を組み付ける際の作業性が向上する。
【0068】
環状シールリップは平ワッシャ形状であることで、環状シールリップは容易に製作可能でコストも低く、またねじ溝形成の際の成形加工性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施の形態に係る密封装置を示す断面図である。
【図2】図2は実施の形態に係る密封装置の成型工程を説明する断面図である。
【図3】図3は従来の密封装置を示す断面図である。
【図4】図4は従来の密封装置の成形方法を説明する断面図である。
【符号の説明】
1 密封装置
2 はめ合い部
3 シールリップ部
4 補強環
4a 外環部
4b フランジ部
5 シール部
5a 外周密封部
5b ダストリップ
6 環状シールリップ
6a 当接面
6b ねじ溝
7 第1シールリップ
10 ハウジング
11 軸
21 下型
21a 外型
21b 中型
21c 内型
21d 通路
21e ねじ溝形成部
22 上型
23 キャビティ
Claims (1)
- 軸とハウジングとの間の環状隙間を密封する密封装置において、
補強環と、
補強環の外周に一体的に成形され、ハウジング内周に密封性を保ちながら嵌め込まれる外周密封部と、
補強環に一体的に組み付けられ、軸表面に摺動自在に当接する当接面を有し、その先端は軸表面から離隔された樹脂製の環状シールリップと、
前記環状シールリップの先端にのみ、前記外周密封部とは別体に焼付けられ、該環状シールリップの先端から軸表面に延びたゴム状弾性体製のシールリップと、
を備え、
前記環状シールリップは、平ワッシャ形状であり、かつねじ溝を備えていることを特徴とする密封装置。
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