JPH10267134A - 密封装置及び密封装置の製造方法 - Google Patents

密封装置及び密封装置の製造方法

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JPH10267134A
JPH10267134A JP9085587A JP8558797A JPH10267134A JP H10267134 A JPH10267134 A JP H10267134A JP 9085587 A JP9085587 A JP 9085587A JP 8558797 A JP8558797 A JP 8558797A JP H10267134 A JPH10267134 A JP H10267134A
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JP
Japan
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annular
sealing device
seal member
annular seal
sealing
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JP9085587A
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Inventor
Noboru Matsushima
昇 松島
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Nok Corp
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Nok Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 樹脂材を使用したシール部材の軸の偏心追随
性を向上させ、良好な密封性能を維持する密封装置を提
供する。また、シール部材の安定したアール形状の曲折
部を形成すことの可能な密封装置の製造方法を提供す
る。 【解決手段】 樹脂材よりなる環状シール部材4と、こ
の環状シール部材4の径方向部4a(周縁部)に接合し
て一体的に形成されるゴム状弾性材よりなる固定環部5
と、この固定環部5の周壁面5a(一方の周壁面)をラ
ジアル方向に付勢し、外周固定部5c(他方の周壁面)
をハウジング2(取付け部材)に圧着させる金属環6
(環状付勢部材)を備える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は樹脂材による環状シ
ール部材を備えた密封装置及びこの密封装置の製造方法
に関するもので、偏心追随性を改善し、良好な密封性能
を維持することを可能とする技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の密封装置を図10に示
す。図10に示す密封装置100は、互いに同軸的に相
対移動するハウジング110と軸111の隙間を大気側
Oと密封側Mとに隔てて密封するもので、その概略構成
として密封装置100の形状を保持する断面L字状の金
属性の補強環101、補強環101に加硫成形されるゴ
ム状弾性体の第1シール部材102、及び補強環101
と第1シール部材102に挟まれるように固定される樹
脂材による第2シール部材103とを備えている。
【0003】補強環101はハウジング110の内周面
に密封装置100を固定するはめ合い部101aとはめ
合い部101aから径方向内向きに延びたフランジ部1
01bとを備え、はめ合い部101aの外周表面には第
1シール部102と一体的に成形された外周密封部10
2aが備えられている。
【0004】またこの密封装置100は、シール部とし
ては2つの部材を複合的に構成したものであり、一般的
なゴム状弾性体によるリップだけでは長期間に渡り高い
密封性能を満足させることが難しい過酷な条件で用いら
れることを可能としているものである。
【0005】すなわち、シール部には第1シール部材1
02の第1シールリップ102bと、第2シール部材1
03の第2シールリップ103aが備えられ、それぞれ
のリップに異なる特徴を持たせて高機能化しているもの
である。
【0006】この従来技術においては、第2シールリッ
プ103aに樹脂材として例えばPTFE(4フッ化エ
チレン)による高い耐摩耗性や耐熱特性及び耐薬品特性
を備えた材料を採用して、密封装置100の稼動中(主
として軸111の回転運動)に密封側Mの高い圧力によ
り第2シールリップ103aが軸111の摺動表面に付
勢されても自己潤滑特性により摩耗や変形が少なく、ま
た第1シールリップ102bの返転や移動等を防止する
保持機能をも発揮する。
【0007】また、耐久性向上を目的として種々の添加
薬品が配合された特殊潤滑油を使用する機器において
は、添加薬品の種類によっては従来の合成ゴムでは化学
的な劣化や異常な摩耗を生じる場合があり、PTFEに
代表されるフッ素樹脂を用いた密封装置では材料的に化
学変化が少なく、このような使用環境においても密封性
能を長期間に渡り維持することが可能である。
【0008】第2シールリップ103aの軸111の摺
動表面との対向面にはポンプ作用を発生するねじ溝10
3bが形成され、軸111の回転中は軸111の摺動表
面から大気側Oへと流出しようとする密封流体を密封側
Mに押し戻すように作用させて高い密封性能を維持して
いる。
【0009】一方、ゴム状弾性体の第1第1シールリッ
プ102bは、軸111の回転中においてもこれ自体に
よる密封性も必要ではあるが、この従来技術においては
むしろ、軸111の停止時における密封流体のシールを
行うことも大事な機能となっている。
【0010】従って、このような従来技術においては2
つの異なる材料の特性を引き出して上手に利用可能な構
成とし、高性能な密封性を達成している。
【0011】図11は、図10で説明した複合シール部
を備えた密封装置100の製造工程を説明する図であ
る。詳細に関しては、出願人による特願平2−2738
6号を参照することができる。
【0012】図11(a)において、成形型200は概
略構成として下型201と上型210とから構成されて
いる。下型201は底面を形成する第1型202と、外
径側壁面を形成する第2型203と、内径側の壁面を形
成する中子204とから分割構成されている。そして、
中子204の外周面には雄ねじ部204aが刻設されて
いる。
【0013】一方、上型210の下面には、下型201
内に挿入される環状の突部211が形成されている。そ
して型閉めした際に、この突部211と下型201との
間に環状のキャビティ220が形成されることになる。
【0014】次に、密封装置100の加硫成形は、以下
のようにして行われる。
【0015】まず、下型201の中に補強環101と第
2シール部材103及び第1シール部材102の素材と
してゴム生地102’を所定の順に配設する。
【0016】また第2シール部材103としてはPTF
E等の樹脂材を前もって切削加工等により断面L字状に
形成しておく。断面L字状に形成せず、例えば平板状の
ワッシャ形状あるいはロート状のワッシャ形状の素材か
らなる第2シール部材130を利用し、型閉めにより断
面L字状に形成することも考えられるが、この場合には
第2シール部材103はゴム生地102’を介して補強
環101と中子204の雄ねじ部204aに付勢される
ので、成形位置のずれや、ねじ溝103bを形成するた
めの圧力が断面L字状に形成することで消費され十分に
加圧されなくなる等の問題を考慮する必要がある。
【0017】そして、図11(b)のように型閉めし、
加熱及び加圧を行う。キャビティ220内でゴム生地1
02’は流動化し、第2シール部材103の第2シール
リップ103a、補強環101の表面に沿って流れてキ
ャビティ220内の全域にまで拡がる。
【0018】すると、熱により軟化した第2シール部材
103の第2シールリップ103aは流動化したゴム生
地102’の圧力によって雄ねじ部204aの表面に押
しつけられ、雄ねじ部204aに対応するねじ溝103
bが形成される。
【0019】加硫成形が終了すると、型開きして成形品
を取り出し、第1シール部材102の余剰部分を適宜切
断して密封装置100を完成させる。
【0020】一方、図12(a)のように、加硫成形に
よらずに、フッ素樹脂材によるシールリップ201とゴ
ム状弾性材によるガスケットシール202をL字状の外
側補強環203と内側補強環204により挟み込み、外
側補強環203の外周固定部側の端部203aを折り曲
げて内側補強環204を固定している密封装置200も
従来技術としてあった。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】このような従来技術に
おいて、フッ素樹脂による第2シール部材103やシー
ルリップ201の固定方法は、その径方向部を金属環と
共に成形されたり、あるいは金属環により挟持すること
で行われていることから、径方向部の柔軟性がなくな
り、軸の偏心に対する追随性が低下するという問題があ
る。
【0022】これは、樹脂材料を使用したシール部の弾
性変形率がゴム状弾性材を使用したシール部のそれより
も小さいこととも関係するものであるが、例えば図12
(b)で説明すると、軸210の偏心に対する追随性を
発揮させる部分は、軸の摺動表面と密封接触するシール
リップ201の軸方向部201a及び金属環203,2
04で挟持されている径方向部201bよりも、むしろ
この軸方向部201aと径方向部201bを接続する曲
折部201cが撓んで弾性変形することによるものと考
えられている。
【0023】従って、弾性変形率の小さい樹脂材料で、
ゴム状弾性材を使用したものと同じ偏心追随性を求める
には、一つの解決方法としてこの曲折部201cを大き
くしたり、曲折部201cの厚みを薄くしたりすれば良
いことが理解できる。
【0024】しかしながら、従来の金属環等により樹脂
材料を使用したシール部を挟持して固定する方法では、
密封装置の大きさを変えない場合には挟持する領域が減
少することになり、シール部の固定強度が不足してしま
う。また、曲折部201cの厚みを薄くした場合には、
この部分に応力が集中して折れや破損し易くなり、耐久
性が低下してしまうことが予想される。
【0025】また、図10及び図11により説明した密
封装置100,200は、リップ部を形成する為に、軸
の直径に合わせた治具を事前に挿入する作業や、また、
それぞれ軸111,210の挿入時に拡径される場合が
ある。そしてこの場合に、第2シール部材103の曲折
部P101やシールリップ201の曲折部201cに大
きなストレスが加わることがある。
【0026】すなわち、従来の密封装置では挿入される
治具や軸との摩擦抵抗により発生する引っ張り応力に従
って曲折部の大きさが変化することになり、形成され曲
折部の大きさの管理が難しい状態であった。
【0027】そして、挿入する軸がズレたりするとズレ
方向で小さいアール曲折部が形成されてしまうことがあ
り、破損したり耐久性が低下したりする問題があった。
【0028】本発明は上記従来技術の問題を解決するた
めになされたもので、その目的とするところは、樹脂材
を使用したシール部材の軸の偏心追随性を向上させ、良
好な密封性能を維持する密封装置を提供する。また、シ
ール部材の安定したアール形状の曲折部を形成すことの
可能な密封装置の製造方法を提供する。
【0029】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明の密封装置においては、樹脂材よりなる環状シー
ル部材と、この環状シール部材の周縁部に接合して一体
的に形成されるゴム状弾性材よりなる固定環部と、この
固定環部の一方の周壁面をラジアル方向に付勢し、他方
の周壁面を取付け部材に圧着させる環状付勢部材と、を
備える。
【0030】これによると、密封装置はその固定環部が
環状付勢部材により取付け部材に圧着させられて固定さ
れる。そして樹脂材よりなる環状シール部材は、ゴム状
弾性材よりなる固定環部に接合しているので撓み易く、
偏心追随性が向上する。
【0031】また、前記環状シール部材は、一方の周縁
部に前記固定環部と接合する径方向部と、他方の周縁部
に密封する表面に当接するリップ部と、前記径方向部と
リップ部の間にリップ部を密封する表面に倣うよう曲折
させる曲折部と、を備えたことも好適である。
【0032】従って、密封する表面の偏心により移動す
るリップ部により、環状シール部材の曲折部の大きさが
変化する場合に、径方向部の弾性変形により、曲折部の
大きさが変化することを制限せず、撓み易くなり、偏心
追随性が向上する。
【0033】また、前記環状付勢部材は、前記環状シー
ル部材の周壁面に当接する軸方向部と、この軸方向部の
一端から断面略L字状に折れ曲がったフランジ部とから
なるもので、前記フランジ部は、前記環状シール部材の
曲折部に倣ったアール形状を有することも好適である。
【0034】これによると、環状シール部材の曲折部を
形成する際に、環状付勢部材のフランジ部のアール形状
に倣って形成できるので、スムーズに曲折部を形成する
と共に曲折部のアール形状の大きさを整えるガイドとな
り、また、環状シール部材の曲折部と環状付勢部材のフ
ランジ部が接触しても曲折部に傷や折れ等の破損が発生
することを防止する。
【0035】また、前記環状シール部材の少なくとも一
方の表面に、前記固定環部が形成される周縁部から他方
の周縁部に延びるゴム状弾性材よりなる薄膜を備えてい
ることを特徴とすることも好適である。
【0036】これによると、環状シール部材を薄膜が被
覆して、環状シール部材の部分的な破損等による密封性
能の低下を抑える。
【0037】また、前記環状シール部材のリップ部にポ
ンピング作用を発揮するねじ溝を備えていることも好適
である。
【0038】これによると、環状シールリップの可撓性
が高まり、密封装置の稼動時において、環状シールリッ
プの密封性が向上すると共に、密封装置に軸等を組み付
ける際の作業性が向上し、また、ねじ溝によるポンピン
グ作用により密封流体の漏れが防止される。
【0039】また、前記樹脂材よりなる環状シール部材
は、フッ素樹脂を材料としていることを特徴とすること
も好ましい。
【0040】密封装置の製造方法にあっては、樹脂材よ
りなる平ワッシャ形状の環状シール部材を成形型に装着
し、この環状シール部材の一方の周縁部に接合して一体
となるゴム状弾性材よりなる固定環部を加硫成形し、前
記成形型より取り出した固定環部の形成された前記環状
シール部材の一方の周壁面に、環状シール部材の曲折部
に倣ったアール形状を有するフランジ部を備えた環状付
勢部材を取付け、この環状付勢部材のフランジ部のアー
ル形状に倣うように前記環状シール部材の他方の周縁部
を押圧し、環状シール部材の曲折部及び曲折部に続くリ
ップ部を形成する。
【0041】但し、前記成形型は環状シール部の表面に
ねじ溝を形成するねじ溝形成部を備え、前記固定環部の
加硫成形と同時に該ねじ溝を形成することも好ましい。
【0042】
【発明の実施の形態】以下に本発明を図示の実施の形態
に基づいて説明する。
【0043】(実施の形態1)図1は第1の実施の形態
としての本発明を適用した密封装置1の断面説明図であ
る。図2は密封装置1をハウジング2と軸3の隙間に配
置した状態の図である。本実施の形態における密封装置
1は環状を呈するものであり、フッ素樹脂材料(例えば
PTFE(4フッ化エチレン))よりなる環状シール部
材4と、この環状シール部材4に接合するゴム状弾性体
によりなる固定環部5と、固定環部5の内側の周壁面5
aに当接してラジアル方向に外向きに付勢する環状付勢
部材としての金属環6を主たる構成としている。
【0044】環状シール部材4は、厚さ0.5から0.
8mmの平ワッシャ形状のPTFEシートからなり、周
縁部である径方向部4aに固定環部5が加硫成形により
一体化されている。そして、環状シール部材4の密封摺
動表面とは反対側の面に固定環部5と同一材料(ゴム状
弾性体)による厚さ0.1から0.3mmの内周薄膜部
5bが形成されている。
【0045】環状シール部材4の密封摺動表面となるリ
ップ部4bは、径方向部4aから曲折部4cを介して軸
3の外周摺動面に倣うようにロート状に傾斜しているも
のであり、その密封摺動表面にはねじ溝4dが形成され
ている。このねじ溝4dは、軸3の外周摺動面が回転し
た場合に、動水力学的作用により密封される流体をポン
ピング作用により密封側に押し戻し、密封流体の漏れを
防止するという効果と、曲折部4c及びリップ部4bの
可撓性が高まり、シール性が向上すると共に軸3を組み
付ける際の作業性をも向上させる。
【0046】固定環部5は、ハウジング2の取付け孔2
aに嵌合される外周固定部5cを備え、密封装置1を取
付け孔2aに対して固定するものである。また、内側の
周壁面5aの端部には内向きに突出した環状突起5dが
形成されており、金属環6の抜け止めとして機能してい
る。
【0047】この固定環部5は、前述したように金属環
6により矢印A1(図2)のように付勢されることで取
付け孔2aに強固に固定される。そして、接合されてい
る環状シール部材4は、取付け孔2aに対していわゆる
弾性保持(固定環部5の材料がゴム状弾性体によりなる
ことから)された状態となっている。
【0048】金属環6は、内側の周壁面5aに当接する
軸方向部6aと、軸方向部6aの一端から断面略L字状
に折れ曲がったフランジ部6bとからなり、このフラン
ジ部6bは環状シール部材4の曲折部4cに倣ったアー
ル形状となるように形成されている。また、内側の周壁
面5aと内周薄膜部5bとが接続する隅肉部5eのアー
ル形状に対しても倣うようにアールが形成されている。
【0049】このような構成の密封装置1を稼働させた
時における特徴的な作用を説明すると、環状シール部材
4の径方向部4aが従来技術によるものと異なり、固定
された状態で保持されていないので柔軟性に富み、軸3
の偏心に対して追随性が高まり、良好な密封性能を維持
することが可能となる。
【0050】また、金属環6のフランジ部6bの形状的
特徴から、曲折部4cの大きさを大きくすることがで
き、単位長さ当たりの弾性変形が少なく撓みやすくな
り、耐久性も高まる。
【0051】環状シール部材4と固定環部5の間の密封
性に関しては、両者が接合されているため、従来のよう
に金属環6の組立状態に依存することはなく、信頼性が
向上する。
【0052】また、内周薄膜部5bにより、万一環状シ
ール部材4が部分的に破損してもゴム状弾性材からなる
内周薄膜部5bが残り、貫通したリークパスとならな
い。同様に万一環状シール部材4にミクロ的な微細なポ
ーラスがあっても、密封対象流体及びガス状化した密封
対象流体は、ゴムの薄膜により分子レベルでの浸透をも
防止されて透過漏出することなく、気密性を保持するこ
との可能な信頼性の高い密封装置となる。
【0053】(実施の形態2)次に、第2の実施の形態
として、密封装置1の製造工程を図3から図6までを使
用して説明する。
【0054】図3及び図4は密封装置1の成形工程を説
明する図である。成形工程としては固定環部5の材料に
従って加硫成形や、モールド成形等が行われる。
【0055】成形型の基本的構成は従来のものと同様で
あり、下型21と上型22とから構成されている。下型
21は外径側壁面を形成する外型21aと、中型21b
及び下型21の中央部に位置する内型21cとにより構
成されている。また内型21cには環状シール部材4の
表面にねじ溝4dを形成するねじ溝形成部21dが刻設
されている。
【0056】一方、上型22の下面には、下型21内に
挿入される環状の突部22aが形成されている。そして
型閉めした際に、この突部22aと下型21との間に環
状のキャビティ23が形成されることになる。
【0057】密封装置1の成形工程は次の通りである。
まず、型を開き下型21の中型21bに平ワッシャ形状
の環状シール部材4を装着する。
【0058】そして、成形時に流動化して拡がり、キャ
ビティ23内に充填される固定環部5の素材としてのゴ
ム生地5’を所定位置に載置する。
【0059】開いた状態の上型22’を矢印A2の方向
に型閉めし、加熱及び加圧を行う。成形時には、熱によ
り軟化した環状シール部材4の摺動表面にゴム生地5’
の圧力(内周薄膜部5b)によりねじ溝4dを形成す
る。成形が終了したら型開きして成形品を取り出し、固
定環部5の余剰部分やバリを適宜切断して密封装置1を
完成させれば良い。
【0060】この成形工程においては、成形圧力とし
て、200〜400kgf /cm2程度の圧力と、成形温
度として180〜200℃の温度で行うため、フッ素樹
脂材料の溶融温度までは到達しないでかつ、ねじ溝4d
及びリップ部4bの寸法精度をだすことができる。
【0061】また、成形型の平坦面において、ねじ溝4
dの加圧加工を行うので、型の平坦部への突起加工が容
易であることはもとより、平坦面での加圧のため、テー
パ面(傾斜面)や型の型閉め方向に平行な面にねじ溝を
形成するよりも、滑りなどによる誤差の少ない精度の高
い形状寸法が得られる。さらに、平坦面での加工である
ため、各種の複雑で微細な溝形状を容易に形成すること
ができる。
【0062】図3ではねじ溝4dを図において下側にの
み形成したものであったが、環状シール部材4の柔軟性
を増加させる目的で両面に形成することも可能であり、
図4にその構成を例示する。4d’は環状シール部材4
のねじ溝4dの反対側の面に形成されたねじ溝である。
このねじ溝4d’は上型22の環状の突部22aに設け
られたねじ溝形成部22bにより形成されるが、ポンプ
作用を目的としないのでねじ溝でなく複数の同心円状の
溝でも構わない。
【0063】両面にねじ溝を付けると、環状シール部材
4の柔軟性が増加して軸の偏心に対する追随性が向上す
ると共に、緊迫力を低下させた場合には発熱や摩耗を低
減することになり寿命を延ばすことが可能となる。
【0064】また、固定環部5の成形方法として、射出
成形を行う場合には、上型22の中央部のランナーゲー
ト22cから矢印A3方向にゴム生地5’に相当するモ
ールド材料を流入させることも可能である。
【0065】尚、フッ素樹脂材料による環状シール部材
4は、ゴム状弾性材との成形工程の前に予め、金属ソジ
ウム(ナトリウム)を用いた化学処理または機械的は表
面処理により接合のための最適な表面状態となるように
下地調整処理を行った後、ゴム状弾性材を表面に接合
(この場合には接着)させるための接着剤を浸漬やスプ
レー処理によりコーティングするとより強固な接合が得
られることが知られているが、このような公知技術を適
用することも、より強固な接合を行う上で適宜に行えば
良い。
【0066】図5は成形型から取り出した密封装置1の
仕上げ方法を説明する図である。図5(a)は、密封装
置1を成形型から取り出し、固定環部5の外周部のバリ
を取り除いた状態である。そして、この状態の密封装置
1を回転する仕上げ治具24に取付けて回転させ、刃物
25をスライドさせて内周薄膜部5bの内側に形成され
る不必要な余肉部分5fを切り落とすと同時に、リップ
部4bの内径を切削仕上げ加工する。この時、刃物25
をリップ部4bの内径端部にゴム状弾性材が少し残るよ
うな位置P1でスライドさせても、ゴム状弾性材が残ら
ない位置P2でスライドさせても良く、あるいは、成形
が精度良く行われる場合には切削仕上げを省くことも可
能である。
【0067】僅かでも、リップ部4bの先端部にゴム状
弾性材による部分を備えていることで、軸の摺動表面の
微細な凹凸やリップ部4bの表面に形成されたねじ溝4
dを介して密封対象流体の漏れの発生することが低減
し、初期の静的な状態での密封性を安定させ、信頼性も
向上する。
【0068】また、従来技術の説明における図10の密
封装置100にあるように、樹脂材による第2シール部
材103の先端部に第1シールリップ102bが配設さ
れる構成の密封装置に本発明を適用する場合には、余肉
部分5fの形状をリップ形状とすれば良い。
【0069】図5(c)は上記のように仕上げ加工が施
された密封装置1に、金属環6を装着した状態である。
金属環6は、固定環部5の環状突起5dを乗り上げて装
着されるので、装着後に容易にはずれることはない。
【0070】図6は、密封装置1を使用装置への組立
(主として軸の挿入)を容易にするために、予め環状シ
ール部材4の曲げ加工を行っている状態の図である。2
6はリップの曲げ治具であり、密封装置1に挿入される
使用装置の軸とほぼ同径である。この曲げ治具26の挿
入と共に、必要であれば加熱して環状シール部材4の曲
げ加工を行う。
【0071】そして、この曲げ加工において、環状シー
ル部材4の曲折部4cの内側の形状は、金属環6のアー
ル形状に形成されたフランジ部6bがガイドとなり倣う
ので、曲げ治具26の挿入時に引きずられて曲折部4c
が大きくなり過ぎたりすることはなく、安定した大きさ
の曲折部が得られる。
【0072】また、曲折部4cのアール形状が小さくな
ると、この部位に応力集中が発生して破損し易くなる
が、フランジ部6bに当接した以上に小さくなることは
ないので、耐久性が高まる。
【0073】環状シール部材4の曲げ加工を行う際は、
環状シール部材4の径方向部4aは固定されていた方が
よいので、複数個数の密封装置1を重ねて圧縮するよう
に保持しつつ、曲げ治具26を挿入すると良い。
【0074】もっとも、曲げ加工を事前に行わないで使
用装置への組立と同時に使用装置の軸により曲げても良
いが、環状シールリップ6の緊迫力の調整をとることが
難しいことと、組立に伴い環状シールリップ6に傷を付
けたり損傷させてしまう恐れがあるので好ましい方法で
はない。
【0075】さらに、図6の成形型の形状を変更して、
成形時に環状シールリップ6をある程度の曲げを伴うよ
うに成形させるようにすることで、曲げ加工をし易くし
たり、あるいは不要とすることも考えられる。
【0076】(実施の形態3)次に、第3の実施の形態
として、密封装置1の応用例を図7から図9までを使用
して説明する。
【0077】図7(a)は、ゴム状弾性材による固定環
部5を大気側Oに連続的に延ばした延長部51を備え、
さらにダストリップ52を形成した密封装置1Aであ
る。図7(b)はハウジング2と軸3の隙間に密封装置
1Aを配置した状態である。
【0078】この図7の応用例として、複数のダストリ
ップや、大気側Oに向かって軸方向に延長させてサイド
リップ状としたダストリップとすることも可能である。
【0079】図8の密封装置1Bは、延長部51に不織
布状のダストシール53を貼り付けたものである。
【0080】図9の密封装置1Cは、図4の成形型で製
作されたものであり、環状シール部材4のリップ部bの
両面にねじ溝4d,4d’を形成したものである。
【0081】
【発明の効果】上記の実施の形態により説明された本発
明によると、樹脂材を使用した環状シール部材の軸の偏
心追随性が向上し、良好な密封性能を維持する密封装置
が得られる。
【0082】環状シール部材の径方向部は弾性変形可能
となり、曲折部の大きさが変化することを制限せず、撓
み易くリップ部の偏心追随性を向上させる。
【0083】環状付勢部材のフランジ部は、環状シール
部材の曲折部を形成する際の加工性を向上させると共
に、環状シール部材の曲折部と環状付勢部材のフランジ
部が接触しても曲折部に傷や折れ等の破損が発生するこ
とを防止する。
【0084】ゴム状弾性材よりなる薄膜は、環状シール
部材の部分的な破損等による密封性能の低下を抑える。
【0085】ポンピング作用を発揮するねじ溝は、環状
シールリップの可撓性が高まり、密封装置の稼動時にお
いて、環状シールリップの密封性が向上すると共に、密
封装置に軸等を組み付ける際の作業性が向上し、また、
ねじ溝によるポンピング作用により密封流体の漏れが防
止する。
【0086】環状シール部材を、フッ素樹脂を材料とす
ることで、摩擦抵抗が低く、摩耗量が低減し、しかも化
学的安定性に優れた密封装置が得られる。
【0087】密封装置の製造方法にあっては、環状シー
ル部材の曲折部を環状付勢部材のフランジ部に添った滑
らかなアール形状とした曲折部と、この曲折部に続くリ
ップ部を形成することができ、柔軟で弾性変形し易く、
偏心追随性の高い密封装置を製造することができる。
【0088】また、平ワッシャ形状の環状シール部材に
ねじ溝を形成するので、平坦面での加圧が行え、加工性
が向上して高い寸法精度のねじ溝や複雑な形状のねじ溝
を容易に形成可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の第1の実施の形態に係る密封装
置の断面説明図。
【図2】図2は本発明の第1の実施の形態に係る密封装
置の使用形態の断面説明図。
【図3】図3は密封装置の成形の説明図。
【図4】図4は密封装置の成形の説明図。
【図5】図5は密封装置の成形後の加工工程の説明図。
【図6】図6はリップ部の曲げ加工工程を説明する図。
【図7】図7は本発明を適用した密封装置の応用例を示
す図。
【図8】図8は本発明を適用した密封装置の応用例を示
す図。
【図9】図9は本発明を適用した密封装置の応用例を示
す図。
【図10】図10は従来の密封装置の断面説明図。
【図11】図11は従来の密封装置の成形方法を説明す
る図。
【図12】図12は従来の密封装置の断面説明図。
【符号の説明】
1 密封装置 2 ハウジング 2a 取付け孔 3 軸 4 環状シール部材 4a 径方向部 4b リップ部 4c 曲折部 4d,4d’ ねじ溝 5 固定環部 5a 周壁面 5b 内周薄膜部 5c 外周固定部 5d 環状突起 5e 隅肉部 5f 余肉部分 5’ ゴム生地 6 金属環(環状付勢部材) 6a 軸方向部 6b フランジ部 21 下型 21a 外型 21b 中型 21c 内型 21d ねじ溝形成部 22 上型 22a 突部 22b ねじ溝形成部 22c ランナーゲート 23 キャビティ 24 仕上げ治具 25 刃物 26 曲げ治具

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 樹脂材よりなる環状シール部材と、 この環状シール部材の周縁部に接合して一体的に形成さ
    れるゴム状弾性材よりなる固定環部と、 この固定環部の一方の周壁面をラジアル方向に付勢し、
    他方の周壁面を取付け部材に圧着させる環状付勢部材
    と、 を備えたことを特徴とする密封装置。
  2. 【請求項2】 前記環状シール部材は、一方の周縁部に
    前記固定環部と接合する径方向部と、他方の周縁部に密
    封する表面に当接するリップ部と、前記径方向部とリッ
    プ部の間にリップ部を密封する表面に倣うよう曲折させ
    る曲折部と、 を備えたことを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
  3. 【請求項3】 前記環状付勢部材は、前記環状シール部
    材の周壁面に当接する軸方向部と、この軸方向部の一端
    から断面略L字状に折れ曲がったフランジ部とからなる
    もので、 前記フランジ部は、前記環状シール部材の曲折部に倣っ
    たアール形状を有することを特徴とする請求項2に記載
    の密封装置。
  4. 【請求項4】 前記環状シール部材の少なくとも一方の
    表面に、前記固定環部が形成される周縁部から他方の周
    縁部に延びるゴム状弾性材よりなる薄膜を備えているこ
    とを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の
    密封装置。
  5. 【請求項5】 前記環状シール部材のリップ部にポンピ
    ング作用を発揮するねじ溝を備えていることを特徴とす
    る請求項1乃至4のいずれか1項に記載の密封装置。
  6. 【請求項6】 前記樹脂材よりなる環状シール部材は、
    フッ素樹脂を材料としていることを特徴とする請求項1
    乃至5のいずれか1項に記載の密封装置。
  7. 【請求項7】 樹脂材よりなる平ワッシャ形状の環状シ
    ール部材を成形型に装着し、 この環状シール部材の一方の周縁部に接合して一体とな
    るゴム状弾性材よりなる固定環部を加硫成形し、 前記成形型より取り出した固定環部の形成された前記環
    状シール部材の一方の周壁面に、環状シール部材の曲折
    部に倣ったアール形状を有するフランジ部を備えた環状
    付勢部材を取付け、 この環状付勢部材のフランジ部のアール形状に倣うよう
    に前記環状シール部材の他方の周縁部を押圧し、環状シ
    ール部材の曲折部及び曲折部に続くリップ部を形成する
    ことを特徴とする密封装置の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記成形型は環状シール部の表面にねじ
    溝を形成するねじ溝形成部を備え、前記固定環部の加硫
    成形と同時に該ねじ溝を形成することを特徴とする請求
    項7に記載の密封装置の製造方法。
JP9085587A 1997-03-21 1997-03-21 密封装置及び密封装置の製造方法 Pending JPH10267134A (ja)

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