JP2004019779A - 密封型転がり軸受およびその密封板の製造方法 - Google Patents

密封型転がり軸受およびその密封板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】長時間の使用においても摺接面に潤滑剤を保持し、磨耗を軽減した密封型転がり軸受を提供する。
【解決手段】外輪と内輪との間に複数の転動体を配設し、外輪と内輪のいずれか一方の軌道輪に密封板を取付け、潤滑剤を封入した密封型転がり軸受において、一方の軌道輪に取付けた密封板に他方の軌道輪と当接して摺動するリップ部を設け、リップ部の他方の軌道輪との摺接面に微細な凹凸を形成した。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、封入した潤滑剤の漏洩を防止する接触型の密封板を有する密封型転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の密封型転がり軸受の例を、図10を用いて説明する。
1は密封型転がり軸受である。
2は軌道輪としての外輪であり、その内周面に転動軌道が設けられている。
3は軌道輪としての内輪であり、その外周面に転動軌道が設けられている。
【0003】
4は保持器であり、プレス成形または樹脂成形等で製作され、転動体としての玉5を所定のピッチで係止する。本実施の形態においてはプレス成形されたの保持器4が用いられている。
玉5は、互いの接触を防止する保持器4に係止されて複数個設けられ、外輪2に設けられた転動軌道とこれに対向する内輪3に設けられた転動軌道との間に転動自在に配設される。
【0004】
6は密封板であり、外輪2に嵌合して固定されて転動体としての玉5の両側に設けられ、外輪2と内輪3および密封板6で形成される空間8にグリース等の潤滑剤を封止している。
また、弾性体からなるリップ部7は、その弾性を利用して適度な締め力をもって内輪3と当接して摺動する摺接面9によって内部からの潤滑剤の洩れを防止すると共に外部からの塵芥や泥水の浸入を防止する。
【0005】
10は補助リップであり、塵芥や泥水の浸入が多い等の場合に必要に応じて設けられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の技術においては、リップ部の摺接面が滑らかな面に成形されているため、長時間の使用において摺接面の潤滑剤が徐々に消耗し、摺接面の磨耗が進行してシールとしての機能が劣化するという問題がある。
また、磨耗の進行に伴って、摺接面と内輪との摩擦が大きくなり転がり軸受の駆動トルクを増大させるという問題がある。
【0007】
更に、摺接面と内輪との摩擦力の増大に伴い、弾性体である密封板のリップ部が摩擦力に引き摺られて変形し、これがリップ部の弾性力によって元に復帰することによる振動現象(以下、スティックスリップという。)を起こしてシール音を発生させる場合があるという問題がある。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、長時間の使用においても摺接面に潤滑剤を保持し、磨耗を軽減した密封型転がり軸受を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、外輪と内輪との間に複数の転動体を配設し、前記外輪と内輪のいずれか一方の軌道輪に密封板を取付け、潤滑剤を封入した密封型転がり軸受において、前記一方の軌道輪に取付けた密封板に、他方の軌道輪と当接して摺動するリップ部を設け、該リップ部の少なくとも前記他方の軌道輪との摺接面に微細な凹凸を形成したことを特徴とする。
【0009】
また、前記摺接面に形成した微細な凹凸が、凹部によって形成される場合はその凹部の深さが0.01mm以上であり、かつ0.2mm以下、または凸部によって形成される場合はその凸部の高さが0.01mm以上であり、かつ0.1mm以下、もしくは前記摺接面に形成した微細な凹凸の表面の表面あらさが10μmRy以上であり、かつ100μmRy以下であることを特徴とする。
【0010】
更に、外輪と内輪との間に複数の転動体を配設し、前記外輪と内輪のいずれか一方の軌道輪に取付けられる密封型転がり軸受の密封板の製造方法において、前記一方の軌道輪に取付けられ、他方の軌道輪と当接して摺動するリップ部の少なくとも摺接面を成形する金型の該当部位を予め微細な凹凸に加工し、これを加硫成形時に転写して前記リップ部の少なくとも摺接面に微細な凹凸を形成することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して本発明による密封型転がり軸受の実施の形態について説明する。
図1(a)は実施の形態の密封板を示す部分断面図、図1(b)は図1(a)のA矢視図、図2はその密封板を取付けた密封型転がり軸受を示す部分断面図である。
【0012】
なお、上記従来例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。図1(a)、図2において、11は密封板であり、外輪2に設けられた溝部に圧入または接着によって固定され、芯金12およびシール部材13から構成される。
芯金12は、低炭素鋼板等の金属板をプレス加工等の加工手段を用いて打抜き加工および塑性加工によって成形され、ドーナツ板状の曲折部材または中央に穴を有する缶状の部材として一体に成形される。本実施の形態ではドーナツ板状の曲折部材が用いられている。
【0013】
シール部材13は、ニトリルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム等の弾性を有するゴム材料を加硫成形等のインサート成形等の成形手段によって芯金12と一体に成形して固着される。
14はシール部材13に設けられたリップ部であり、リップ部14は内輪3に形成された段部15の側面に当接してシール部を構成している。
【0014】
このシール部を構成するリップ部14の内輪3との摺接面20とその周囲の表面、つまり図1(a)に領域Bで示す摺接面20の周囲に存在する円錐面を含む領域には凹凸面21が形成される。
凹凸面21は、図1(b)に示すように不定形な形状をした多数のディンプル状の微細なへこみを不規則に配置して凹部によって微細な凹凸を形成したものである。
【0015】
この凹凸面21をリップ部14に形成するには、加硫成形に用いる金型の摺接面20とその周囲を成形する金型表面の該当する部位に、放電加工等によって予め上記多数のディンプル状のへこみとは逆の多数のピンプル状の突起を形成しておき、加硫成形時の圧力によってシール部材13のゴム材料をこの形状に倣わせて転写し、凹凸面21をシール部材13の成形時にリップ部14と一体に成形する方法を用いる。
【0016】
上述した構成の作用について説明する。
密封板11の芯金12は、密封型転がり軸受1の外輪2に設けられた溝部に圧入または接着によって固定され取付けられる。
この時、シール部材13のリップ部14は、内輪3の段部15の側面にシール部材13の弾性を利用した適度な押付け力によって当接し、密封型転がり軸受1の内輪3の回転に伴い、摺接面20が摺動して接触型の運動用シールとして機能する。
【0017】
密封板11のリップ部14の摺接面20は、密封型転がり軸受1の空間8に封入されたグリース等の潤滑剤が摺接面20と段部15の側面の間に僅かににじみ出して潤滑される。
この時、摺接面20とその周囲に形成された微細な凹凸を有する凹凸面21には、僅かににじみ出た潤滑剤が保持されて常に良好な潤滑状態を維持する。
【0018】
なお、本実施の形態では、密封板11の製作をインサート成形等により芯金12とシール部材13とを一体成形する方法を用いるとして説明したが、シール部材13に上記と同様にして凹凸面21を形成し、別に製作した芯金12と接着やカシメ等の手段によって固着するようにしてもよい。
以上によって、摺接面20は適切な潤滑状態を維持し、摩擦トルクを低く抑えてシール機能を発揮する。
【0019】
以上説明したように、本実施の形態では、摺接面とその周囲に微細な凹凸を有する凹凸面を形成して潤滑剤を保持することができるようにしたことによって、摺接面を常に良好な潤滑状態に保つことができ、長時間の使用においても摺接面の磨耗を防止することができ、もって駆動トルクの増大やスリップスティックによるシール音の発生を防止することができる。
【0020】
また、加硫成形用の金型に予め凹凸面の逆形状を形成しておくことによって、ゴム材料を加硫成形してシール部材を成形する際に、摺接面とその周囲に転写により微細な凹凸を一体に成形することが可能となり、通常の製造工程を変更することなく耐久性と経済性に優れた密封板を製造することができる。
以下に、摺接面とその周囲に形成する凹凸面21の他の態様を示す。
【0021】
図3(a)は凹凸面21の他の態様1を示す。これは多数の不定形の長円状のへこみを不規則に配置して凹部によって微細な凹凸を形成した例であり、加硫成形用の金型の該当部位はこの逆形状を放電加工等によって形成する。
この場合に、凹部の深さが0.01mm未満の場合は潤滑剤の保持機能が損なわれて磨耗が発生し、また深さが0.2mmよりも大きい場合は潤滑剤の密封機能が損なわれる。
【0022】
また、図1(b)に示す凹部によって微細な凹凸を形成した凹凸面21においても、その凹部の深さが0.01mm未満の場合は潤滑剤の保持機能が損なわれて磨耗が発生し、また深さが0.2mmよりも大きい場合は潤滑剤の密封機能が損なわれる。
従って、微細な凹凸を凹部によって形成する場合は、その深さを0.01mm以上で0.2mm以下の範囲とすることによって、潤滑剤の保持機能と密封機能を両立させた密封板を得ることができ、実施の形態例で示した効果を具現化することができる。
【0023】
図3(b)は凹凸面21の他の態様2を示す。これは図1(b)とは逆に不定形の多数のピンプル状の突起を不規則に配置して凸部によって微細な凹凸を形成した例であり、加硫成形用の金型の該当部位はこの逆形状を放電加工等によって形成する。
この場合に、凸部の高さが0.01mm未満の場合は潤滑剤の保持機能が損なわれて磨耗が発生し、また高さが0.1mmよりも大きい場合は潤滑剤の密封機能が損なわれる。
【0024】
図3(c)は凹凸面21の他の態様3を示す。これは図3(b)とは逆に不定形の多数の長円状の突起を不規則に配置して凸部によって微細な凹凸を形成した例であり、加硫成形用の金型の該当部位はこの逆形状を放電加工等によって形成する。
この場合に、凸部の高さが0.01mm未満の場合は潤滑剤の保持機能が損なわれて磨耗が発生し、また高さが0.1mmよりも大きい場合は潤滑剤の密封機能が損なわれる。
【0025】
従って、微細な凹凸を凸部によって形成する場合は、その高さを0.01mm以上で0.1mm以下の範囲とすることによって、潤滑剤の保持機能と密封機能を両立させた密封板を得ることができ、実施の形態例で示した効果を具現化することができる。
なお、この場合に凸部の高さを0.01mm以上で0.05mm以下の範囲とすることによって、更に密封機能を高めた密封板を得ることができる。
【0026】
図3(d)は凹凸面21の他の態様4を示す。これは凹凸面21を所定の表面あらさとして微細な凹凸を形成した例であり、加硫成形用の金型の該当部位はこの逆形状を放電加工やショットブラスト等によって表面あらさを粗くして形成する。
この場合に、凹凸面21の表面あらさが10μmRy未満の場合は潤滑剤の保持機能が損なわれて磨耗が発生し、また表面あらさが100μmRyよりも大きい場合は潤滑剤の密封機能が損なわれる。
【0027】
従って、微細な凹凸を表面あらさによって形成する場合は、表面あらさを10μmRy以上で100μmRy以下の範囲とすることによって、潤滑剤の保持機能と密封機能を両立させた密封板を得ることができ、実施の形態例で示した効果を具現化することができる。
ここに、表面あらさは日本工業規格のJIS B 0601−1994による表記である。
【0028】
なお、摺接面に形成する凹凸面21の形状は上記に限らず、へこみまたは突起を円や楕円、長円等の定形な形状としてもよく、その配置を規則的に配列するようにしてもよい。また、凹凸面を同心円状またはらせん状の溝によって形成するようにしてもよい。
図4は密封板の他の態様を示す部分断面図、図5はそれを取付けた密封型転がり軸受を示す部分断面図である。
【0029】
なお上記実施の形態例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
この場合に周囲に凹凸面21を形成する摺接面20は、図5において内輪3に設けられた段部15の側面に当接するリップ部14の面である。そして凹凸面21を形成する面は、図4に領域Cで示す摺接面20の周囲に存在する円錐面、および内周面を含む領域である。
【0030】
なお、本密封板11には中央に穴を有する缶状の部材として成形された芯金12が用いられている。
図6〜図9は密封型転がり軸受の他の態様を示す部分断面図である。なお上記実施の形態例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
図6は密封型転がり軸受の他の態様1を示す部分断面図である。
【0031】
31は内輪3の外側に設けられた鍔部である。
この場合に、周囲に凹凸面21を形成する摺接面20は内輪3に設けられた鍔部31の内側の側面に当接するリップ部14の面である。
なお、本態様1においては樹脂製の保持器4が用いられている。
図7は密封型転がり軸受の他の態様2を示す部分断面図である。
【0032】
この場合に、周囲に凹凸面21を形成する摺接面20は内輪3の外周面に当接するリップ部14の面である。
図8は密封型転がり軸受の他の態様3を示す部分断面図である。
32は内輪3の外側に設けられた内輪3の中心側に凹の球面に成形された内輪切欠部である。
【0033】
この場合に、周囲に凹凸面21を形成する摺接面20は内輪3に設けられた内輪切欠部32の球面に当接するリップ部14の面である。
図9は密封型転がり軸受の他の態様4を示す部分断面図である。
33は外輪2の外側に設けられた円錐面に成形された外輪切欠部である。
この場合に、周囲に凹凸面21を形成する摺接面20は外輪2に設けられた外輪切欠部33の円錐面に当接するリップ部14の面である。
【0034】
なお、本態様4においては、密封板11は内輪3に設けられた溝部に圧入または接着によって取付けられている。
上記のように、密封板は外輪と内輪のどちらか一方の軌道輪に取付けられ、他方の軌道輪に設けられた段部の側面等に当接して摺動するリップ部の面が摺接面となる。そしてその摺接面の周囲に凹凸面が形成されている。
【0035】
なお、リップ部が摺動する部位は内輪や外輪に設けられた上記の段部等に限らず、スリンガを設けてこれに当接させて摺動させるようにしてもよい。
また、密封板は転動体の両側に取付けるものに限らず、複列式転がり軸受のように転動体の片側のみに密封板が取付けられるものであってもよい。
以上のように、本発明は様々な態様の密封板に適用することができる。
【0036】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は、少なくとも摺接面に微細な凹凸を形成して潤滑剤を保持することができるようにしたことによって、摺接面を常に良好な潤滑状態に保つことができ、長時間の使用においても摺接面の磨耗を防止することができ、もって駆動トルクの増大やスリップスティックによるシール音の発生を防止することができるという効果が得られる。
【0037】
また、微細な凹凸を凹部、凸部または表面あらさによって形成し、その凹凸の程度を適切な範囲とすることによって、潤滑剤の保持機能と密封機能を両立させた密封板を得ることができ、上記効果を具現化することができる。
更に、加硫成形用の金型に予め凹凸面の逆形状を形成しておくことによって、シール部材を成形する際に、摺接面とその周囲に転写することにより微細な凹凸を一体に成形することが可能となり、通常の製造工程を変更することなく耐久性と経済性に優れた密封板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態の密封板を示す部分断面図
【図2】実施の形態の密封型転がり軸受を示す部分断面図
【図3】凹凸面の他の態様を示す図1のA矢視図
【図4】密封板の他の態様を示す部分断面図
【図5】図4の密封板を取付けた密封型転がり軸受を示す部分断面図
【図6】密封型転がり軸受の他の態様1を示す部分断面図
【図7】密封型転がり軸受の他の態様2を示す部分断面図
【図8】密封型転がり軸受の他の態様3を示す部分断面図
【図9】密封型転がり軸受の他の態様4を示す部分断面図
【図10】従来例を示す部分断面図
【符号の説明】
1  密封型転がり軸受
2  外輪
3  内輪
4  保持器
5  玉
6  密封板
7  リップ部
8  空間
9  摺接面
10 補助リップ
11 密封板
12 芯金
13 シール部材
14 リップ部
15 段部
20 摺接面
21 凹凸面
31 鍔部
32 内輪切欠部
33 外輪切欠部

Claims (5)

  1. 外輪と内輪との間に複数の転動体を配設し、前記外輪と内輪のいずれか一方の軌道輪に密封板を取付け、潤滑剤を封入した密封型転がり軸受において、
    前記一方の軌道輪に取付けた密封板に、他方の軌道輪と当接して摺動するリップ部を設け、該リップ部の少なくとも前記他方の軌道輪との摺接面に微細な凹凸を形成したことを特徴とする密封型転がり軸受。
  2. 請求項1において、
    前記摺接面に形成した微細な凹凸が、凹部によって形成され、その凹部の深さが0.01mm以上であり、かつ0.2mm以下であることを特徴とする密封型転がり軸受。
  3. 請求項1において、
    前記摺接面に形成した微細な凹凸が、凸部によって形成され、その凸部の高さが0.01mm以上であり、かつ0.1mm以下であることを特徴とする密封型転がり軸受。
  4. 請求項1において、
    前記摺接面に形成した微細な凹凸の表面に、10μmRy以上であり、かつ100μmRy以下である表面あらさを形成したことを特徴とする密封型転がり軸受。
  5. 外輪と内輪との間に複数の転動体を配設し、前記外輪と内輪のいずれか一方の軌道輪に取付けられる密封型転がり軸受の密封板の製造方法において、
    前記一方の軌道輪に取付けられ、他方の軌道輪と当接して摺動するリップ部の少なくとも摺接面を成形する金型の該当部位を予め微細な凹凸に加工し、これを加硫成形時に転写して前記リップ部の少なくとも摺接面に微細な凹凸を形成することを特徴とする密封型転がり軸受の密封板の製造方法。
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