JP3363788B2 - ピストンリング - Google Patents

ピストンリング

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JP3363788B2 JP14550198A JP14550198A JP3363788B2 JP 3363788 B2 JP3363788 B2 JP 3363788B2 JP 14550198 A JP14550198 A JP 14550198A JP 14550198 A JP14550198 A JP 14550198A JP 3363788 B2 JP3363788 B2 JP 3363788B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はピストンリングに関
し、特に、ピストン周面に周方向に形成されたリング溝
に配置されるとともにピストンが往復動するシリンダ内
周面に押圧されることで、ピストンとシリンダとにより
区画された空間に存在する高温気体の漏出を阻止する樹
脂製のピストンリングに関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関において、シール性の向上を意
図して、合口を有さない樹脂製のピストンリングが使用
されている。例えば、特開平9−159023号公報に
は、樹脂製ピストンリング、このピストンリングよりも
弾力性のある樹脂製の弾性リングおよびコイルエキスパ
ンダからなるピストンリング構造体が記載されている。
【0003】このような樹脂製のピストンリングは、合
口を形成しないようにできるばかりでなく、その変形性
の高さからシリンダボアの熱変形に対する追従性も高い
ので、燃焼室の密閉性が金属製ピストンリングに比較し
て極めて高いものとなり、燃費の向上に効果がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような密
閉性の高さから、ピストンリングを境にして、燃焼室側
とクランクケース側との温度差が、金属製ピストンリン
グに比較して大きなものとなってしまう。
【0005】このように温度差が大きくなると、ピスト
ンリングの熱膨張も、燃焼室側とクランクケース側とで
は、大きく異なることになる。このため、図(A)に
示すごとく、ピストンリング202の摺動面204,2
06をシリンダの内周面208に対して適切に当接する
ように形成したにもかかわらず、実際に、内燃機関に適
用し場合には、燃焼室側の熱膨張量がクランクケース側
の熱膨張量よりも極端に大きくなるために、図(B)
に示すごとく、燃焼室側の摺動面204はシリンダ内周
面208に当接するが、クランクケース側の摺動面20
6はシリンダ内周面208から浮き上がるといった現象
が生じる。
【0006】このようにクランクケース側が浮き上がる
と、シリンダ内周面208からオイルを掻き取る作用が
低下して、燃焼室内にオイルが侵入してしまい、結果と
してシール性が低下するという問題が生じる。
【0007】なお、合口が存在するピストンリングで
も、樹脂製ピストンリングの場合は、前述したごとく、
シリンダボアに対する追従性が高いので、金属製ピスト
ンリングよりも燃焼ガスに対するシール性が高いことか
ら、同様に燃焼室側とクランクケース側とで熱膨張差が
大きくなり、オイルシール性に問題を生じる。
【0008】本発明は、このような樹脂製ピストンリン
グにおける熱膨張差によるシール性の低下を防止するこ
とを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1のピストンリン
グは、ピストン周面に周方向に形成されたリング溝に配
置されるとともにピストンが往復動するシリンダ内周面
に押圧されることで、ピストンとシリンダとにより区画
された空間に存在する高温気体の漏出を阻止する樹脂製
のピストンリングであって、前記シリンダ側へ突出して
先端面が前記シリンダ内周面に当接される少なくとも2
本の突条を全周にわたって形成するとともに、前記空間
側の前記突条先端面での外径は、前記空間とは反対側の
前記突条先端面での外径よりも小さく形成されているこ
とを特徴とする。
【0010】
【0011】
【0012】このように、少なくとも2本の突条が配置
されて、その各先端面が摺動面とされている場合、空間
側の突条先端面の外径の方が反対側の突条先端面の外径
よりも小さく形成されていることにより、温度差による
膨張差を相殺して、反対側の突条先端面がシリンダ内周
面から浮き上がることが防止される。したがって、シー
ル性の低下を防止することができる。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】請求項のピストンリングは、請求項1の
構成に対して、合口が形成されていないことを特徴とす
る。このように合口が存在しないタイプの樹脂製ピスト
ンリングは、前述したごとく、特に、熱膨張差が生じや
すいが、このようなものもシール性の低下防止が可能と
なり、作用効果が顕著である。
【0018】請求項のピストンリングは、請求項1
は2の構成に対して、複数のリング状部材からなるピス
トンリング構造体の内の外側のリング状部材として形成
されていることを特徴とする。
【0019】上述したピストンリングは、単独で用いら
れるものばかりでなく、他のリング状部材と共に、ピス
トンリング構造体として用いられるものでもよく、同様
に、温度差による膨張差を相殺して、シール性の低下を
防止することができる。
【0020】なお、請求項1〜のいずれかの構成にお
いて、前記ピストンおよび前記シリンダを内燃機関のピ
ストンおよびシリンダとし、前記高温気体を燃焼ガスと
して、内燃機関に適用することができる。内燃機関にお
いては、熱膨張差によりオイルシール性の対策が必要と
なるので、内燃機関に用いてオイルシール性の低下防止
に顕著な作用効果を生じる。
【0021】
【発明の実施の形態】[実施の形態1]図1は、本発明
のピストンリングの一実施の形態としてのアウターリン
グ2の断面図を示している。
【0022】ここで、アウターリング2は樹脂製であ
り、合口のないシームレスなリングとして形成されてい
る。樹脂としては例えば、ポリイミド等の比較的硬くて
耐摩耗性のある樹脂が選択される。
【0023】アウターリング2の内周面4は短円筒面と
して平滑に形成されているが、外面6側には、2本の突
条8,10がアウターリング2の全周面にわたって配置
されている。各突条8,10の先端には、短円筒状の周
面を形成する先端面8a,10aと、燃焼室側の角部の
位置にテーパー面8b,10b(請求項4の外周面に相
当する)とが形成されている。
【0024】2つの突条8,10の内、燃焼室側の上部
突条8の先端面8aは、クランクケース側の下部突条1
0の先端面10aに比較して、その突出量が小さく形成
されている。なお、図1では突出量差dで表されてい
る。この突出量差dは、例えば、数十μのオーダーであ
り、このアウターリング2を内燃機関に用いた場合にお
ける燃焼室側の温度とクランクケース側の温度との温度
差により生じる上部突条8と下部突条10との熱膨張差
に基づいて決定される値である。すなわち、この突出量
差dは、アウターリング2の使用時の熱膨張差によって
上部突条8の先端面8aと下部突条10の先端面10a
とが同一面となる値に、アウターリング2の成形時に設
定されている。
【0025】このアウターリング2は、使用時に、図2
に示すごとく、インナーリング12およびコイルエキス
パンダ14と組み合わされてピストンリング構造体とし
て用いられる。なお、このピストンリング構造体は、本
実施の形態1では、ピストン16の頂部から2番目のリ
ング溝18内に配置されたセカンドリングとして用いら
れている。
【0026】ここで、ピストン16のリング溝18内に
は、内側からコイルエキスパンダ14、インナーリング
12およびアウターリング2が配置されている。コイル
エキスパンダ14は断面矩形のスチール線材(いわゆる
角線材)をコイル状に巻いたものであり、この中にはス
チールの芯材14aが貫通しており、スチール線材は芯
材14aに沿って円形に曲げられている。
【0027】コイルエキスパンダ14から、シリンダ2
0側へ押圧されているインナーリング12はコイルエキ
スパンダ14側に開く略V形の溝を有し、その斜面12
a,12bにてコイルエキスパンダ14からの圧力を受
けている。このため、インナーリング12は外側に隣接
するアウターリング2を、シリンダ20側に押圧する。
【0028】更に、インナーリング12は比較的弾力性
のある樹脂、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(P
TFE)にて形成されているため、コイルエキスパンダ
14の圧力により、インナーリング12自身は、斜面1
2a,12bを開くようにして、燃焼室側とクランクケ
ース側とへそれぞれ広がる。したがって、クランクケー
ス側のインナーリング側面12cがリング溝18のクラ
ンクケース側の側面18aに密着し、燃焼室側のインナ
ーリング側面12dがリング溝18の燃焼室側の側面1
8bに密着する。このことにより、リング溝18の側面
18a,18bとインナーリング12との間は、燃焼ガ
スに対して完全なシール性を生じる。
【0029】更に、インナーリング12とアウターリン
グ2とは共に合口が存在しないシームレスなリングであ
り、アウターリング2はインナーリング12を介したコ
イルエキスパンダ14の圧力により、シリンダ20の内
周面20aの全周に接触しているので、燃焼室の燃焼ガ
スは完全に密閉される。
【0030】更に、アウターリング2の上部突条8は燃
焼室側からの燃焼ガスにほぼ直接的に曝され、下部突条
10は曝されないので、両突条8,10の温度は大きな
差が存在し、その熱膨張差も大きなものとなる。しか
し、図1に示したごとく、使用時の熱膨張差を相殺でき
る突出量差dが形成されているので、図2に示したごと
く、両突条8,10の先端面8a,10aは、両方とも
全面でシリンダ20の内周面20aに密着する。したが
って、ピストン16が燃焼室側に移動する時は、テーパ
ー面8b,10bの働きにより先端面8a,10aがシ
リンダ20表面のオイルに乗り上げ、ピストン16がク
ランクケース側に移動する時は、テーパー面のない角部
8c,10cが先頭となるので、シリンダ20表面のオ
イルをクランクケース側に戻すことができる。そして、
このようなピストン16の往復動の全行程においても、
先端面8a,10aはシリンダ20の内周面20aに密
着している。
【0031】以上説明した本実施の形態1によれば、以
下の効果が得られる。 (イ).アウターリング2に設けられた2つの突条8,
10の内、燃焼室側の上部突条8の外径が、クランクケ
ース側の下部突条10の外径よりも小さく形成されてい
る。このため、燃焼室からの高温の燃焼ガスにほぼ直接
的に曝される上部突条8の外径は下部突条10の外径よ
りも大きく膨張するが、上記外径の差によりこの膨張差
が相殺されるので、両突条8,10の先端面8a,10
aは共にシリンダ20の内周面20aに密着し、下部突
条10がシリンダ20の内周面20aから浮き上がるこ
とが無い。したがって、オイルをクランクケース側に掻
き下げる作用が十分となり、熱膨張差によるシール性の
低下を防止することができる。
【0032】(ロ).両方の突条8,10の先端面8
a,10aには、燃焼室側にテーパー面8b,10bが
連続して形成されているとともに、クランクケース側に
はテーパー面は存在していないので、前述した作用によ
り、特にオイルの掻き下げ効果が大きい。
【0033】(ハ).前述したごとく、アウターリング
2もインナーリング12も共に合口が形成されていない
ことと、インナーリング12はコイルエキスパンダ14
の押圧力によりリング溝18の両側面18a,18bに
密着するので、燃焼ガスのクランクケース側への漏出は
完全に防止される。そして、この燃焼ガスの漏出が完全
に防止されることから、アウターリング2の燃焼室側と
クランクケース側との温度差が特に大きくなるが、この
ようなピストンリング構造体でもシール性の低下防止が
可能となり、前記(イ)の効果が顕著なものとなる。
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】その他の実施の形態] ・前記実施の形態1において、合口の無いアウターリン
グやインナーリングの例を示したが、合口のあるものを
用いても同様にシール性の低下を防止することができ
る。
【0039】・前記実施の形態1においては、ピストン
リング構造体に用いられるアウターリングとして本発明
が具現化されていたが、前記実施の形態1,2のアウタ
ーリングと同形状のものを、インナーリング無しでコイ
ルエキスパンダと組み合わせて用いる形態でもよく、ま
た、インナーリングもコイルエキスパンダも無くしてア
ウターリングと同形状のものを単独で用いる形態でもよ
い。このような構造でも、熱膨張差を相殺するように燃
焼室側の外径を小さくすることにより、シール性の低下
を防止することができる。
【0040】・前記実施の形態1では、燃焼室側にテー
パー面8b,10b,110が形成されているが、例え
ば、前記実施の形態1では突出量差dさえあれば、燃焼
室側のテーパー面8b,10bは存在しなくても、シー
ル性の低下防止効果は存在する。また、前記実施の形態
2において、アウターリング102の摺動面108に角
度αがあれば、燃焼室側のテーパー面110が存在しな
くても同様にシール性の低下防止効果が存在する。
【0041】・前記実施の形態1では、セカンドリング
として用いられている例を挙げたが、各実施の形態の構
成を、一番上に存在するトップリングとして適用するこ
ともできる。
【0042】以上、本発明の実施の形態について説明し
たが、本発明の実施の形態には、特許請求の範囲に記載
した技術的事項以外に次のような各種の技術的事項の実
施形態を有するものであることを付記しておく。
【0043】(1).前記ピストンおよび前記シリンダ
は、内燃機関のピストンおよびシリンダであり、前記高
温気体は燃焼ガスであることを特徴とする請求項1〜
のいずれか記載のピストンリング。
【0044】
【発明の効果】請求項1のピストンリングは、少なくと
も2本の突条が配置されて、前記空間側の突条先端面の
外径の方が反対側の突条先端面の外径よりも小さく形成
されていることにより、温度差による膨張差を相殺し
て、反対側の突条先端面がシリンダ内周面から浮き上が
ることが防止される。したがって、シール性の低下を防
止することができる。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】請求項のピストンリングは、合口が存在
しないタイプの樹脂製ピストンリングであるが、このよ
うな特に熱膨張差が生じやすいものもシール性の低下防
止が可能となり、作用効果が顕著である。
【0049】請求項のピストンリングのように、他の
リング状部材と共に、ピストンリング構造体として用い
られるものであっても、同様に、温度差による膨張差を
相殺して、シール性の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態1としてのアウターリングの断面
図。
【図2】 実施の形態1のアウターリングを内燃機関に
適用した状態を示す断面図。
【図3】 従来のピストンリングの状態を示す断面図。
【符号の説明】
2…アウターリング、4…内周面、6…外面、8…上部
突条、8a…先端面、8b,10b…テーパー面、8
c,10c…角部、10…下部突条、10a…先端面、
12…インナーリング、12a,12b…斜面、12
c,12d…インナーリング側面、14…コイルエキス
パンダ、14a…芯材、16…ピストン、18…リング
溝、18a,18b…リング溝の側面、20…シリン
ダ、20a…シリンダの内周面。
フロントページの続き (72)発明者 岡本 道生 東京都中央区八重洲1丁目9番9号 帝 国ピストンリング 株式会社 内 (56)参考文献 特開 平9−159023(JP,A) 特開 平7−332496(JP,A) 特開 昭53−129725(JP,A) 特開 平10−169778(JP,A) 特開 平11−37293(JP,A) 特開 昭59−224446(JP,A) 実開 昭61−131561(JP,U) 実開 昭62−52258(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16J 9/28 F02F 5/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ピストン周面に周方向に形成されたリン
    グ溝に配置されるとともにピストンが往復動するシリン
    ダ内周面に押圧されることで、ピストンとシリンダとに
    より区画された空間に存在する高温気体の漏出を阻止す
    る樹脂製のピストンリングであって、前記シリンダ側へ突出して先端面が前記シリンダ内周面
    に当接される少なくとも2本の突条を全周にわたって形
    成するとともに、前記空間側の前記突条先端面での外径
    は、前記空間とは反対側の前記突条先端面で の外径より
    も小さく形成されていることを特徴とするピストンリン
    グ。
  2. 【請求項2】 合口が形成されていないことを特徴とす
    る請求項1に記載のピストンリング。
  3. 【請求項3】 複数のリング状部材からなるピストンリ
    ング構造体の内の外側のリング状部材として形成されて
    いることを特徴とする請求項1又は2に記載のピストン
    リング。
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