JP3564001B2 - ピストンリング - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はピストンリングに関し、特に、ピストン周面に周方向に形成されたリング溝に配置されるとともにピストンが往復動するシリンダ内周面へ押圧されることで、ピストンとシリンダとにより区画された空間に存在する高圧気体の漏出を阻止する樹脂製のピストンリングに関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関において、シール性の向上を意図して、合口を有さない樹脂製のピストンリングが使用されている。例えば、特開平9−159023号公報、特開平8−226542号公報には、樹脂製ピストンリング、このピストンリングよりも弾力性のある樹脂製の弾性リング、およびコイルエキスパンダを備えたピストンリング構造体が記載されている。
【0003】
このような樹脂製のピストンリングは、合口を形成しないようにできるばかりでなく、その変形性の高さからシリンダボアの熱変形に対する追従性も高いので、燃焼室の密閉性が金属製ピストンリングに比較して極めて高いものとなり、燃費の向上に効果がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような密閉性の高さから、ピストンリングには燃焼室側からの燃焼圧力が特に高い状態でかかってくる。このため、図13(A)に示すごとく、ピストンリング702の摺動面704,706をシリンダの内周面708に対して適切に当接するように配置したにもかかわらず、実際に、内燃機関が運転されると、燃焼室側から大きな燃焼圧力がかかってくるため、図13(B)に示すごとく、ピストンリング702の摺動面704,706側がクランクケース側へ押圧されることにより、ピストンリング702(ここでは特にアウターリング)がクランクケース側に捻れるように揺動して、クランクケース側の摺動面706がシリンダ内周面708から浮き上がったり、シリンダ内周面708に対する圧力が低下したりするといった現象が発生する。
【0005】
このようにピストンリング702のクランクケース側が浮き上がったり圧力が低下すると、クランクケース側の摺動面706が主に行っているシリンダ内周面708に付着しているオイルをクランクケース側に掻き下げるという作用が低下する。更に、逆に燃焼室側の摺動面704に燃焼室側へオイルを掻き上げるという作用が発生して、燃焼室内にオイルが侵入してしまい、オイルシール性が低下するという問題が生じる。
【0006】
なお、合口が存在する樹脂製ピストンリングであっても、前述したごとく、シリンダボアに対する追従性が高いので、金属製ピストンリングよりも燃焼ガスに対するシール性が高い。このことから、合口が存在する場合も樹脂製ピストンリングの場合は同様に上述した捻れが生じやすく、オイルシール性に問題を生じるおそれがある。
【0007】
金属製ピストンリングの場合は、ピストンリング自体が剛体であるので、上述した樹脂製ピストンリングの場合のような捻れの問題自体が起きないし、また、燃焼圧力が影響しないオイルリングとして用いられていたりするので、金属製のピストンリングにおいて種々の形態(特開平7−239031号、特開平8−42693号)が存在するが、上述した樹脂製ピストンリングの問題点の対策の参考にはならない。
【0008】
本発明は、このような樹脂製ピストンリングに対する燃焼圧力等の圧力の作用によるシール性の低下を防止することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1のピストンリングは、ピストン周面に周方向に形成されたリング溝に配置されるとともにピストンが往復動するシリンダ内周面へ押圧されることで、ピストンとシリンダとにより区画された空間に存在する高圧気体の漏出を阻止する樹脂製のピストンリングであって、前記押圧により生じる圧力は、リング溝内に配置されてピストンリングをシリンダ内周面へ押圧するエキスパンダーにより与えられるとともに、該エキスパンダーの押圧中心は、ピストンリングの中心よりも前記空間とは反対側へ偏っていることにより、前記圧力が、前記シリンダ内周面に当接される摺動面の内、前記空間側よりも前記空間とは反対側の方が高くされていることを特徴とする。
【0010】
本ピストンリングでは、シリンダ内周面への圧力が、シリンダ内周面に当接される摺動面の内、前記空間側よりも前記空間とは反対側の方が高くされている。前記空間側の高圧気体の圧力は、ピストンリングに作用して、ピストンリングの摺動面側を前記空間とは反対側に下げようとするが、ピストンリングの摺動面からシリンダ内周面への圧力が前記空間とは反対側の方に偏っているため、高圧気体により生じる捻りのモーメントと逆方向のモーメントがピストンリングに発生する。このため、高圧気体による捻りのモーメントが弱められて、前記空間とは反対側の摺動面が浮き上がったり圧力が低下する現象が阻止される。したがって、オイル等を前記空間とは反対側へ掻き取る機能が阻害されることなく、シール性の低下を防止することができる。
【0015】
さらに、前記圧力は、リング溝内に配置されてピストンリングをシリンダ内周面へ押圧するエキスパンダーにより与えられるとともに、該エキスパンダーの押圧中心は、ピストンリングの中心よりも前記空間とは反対側へ偏っていることにより、前記圧力が、前記シリンダ内周面に当接される摺動面の内、前記空間側よりも前記空間とは反対側の方が高くされている。
【0016】
このように、エキスパンダーの押圧中心は、ピストンリングの中心よりも前記空間とは反対側へ偏っていることにより、圧力の高さばかりでなく、押圧力のトータルとしての力も、前記空間とは反対側の摺動面に多く分配されることとなり、高圧気体による捻れも阻止でき、また、シリンダ内周面との密着性も高くなり、シール性をより一層良好なものとすることができる。
【0017】
請求項のピストンリングは、請求項記載の構成に対して、前記シリンダ側へ突出して先端面が前記シリンダ内周面に摺動面として当接される少なくとも2本の突条が全周にわたって形成されたことを特徴とする。
【0018】
このように、2本あるいはそれ以上設けた突条の先端面を摺動面とするピストンリングであっても、請求項に述べた作用効果を生じる。しかも、この場合の前記空間側の突条の先端面は、圧力が低くても高圧気体の漏出阻止については十分に果たすことができ、反対側の突条の先端面は圧力が高いことで、オイルの掻き落としの作用を十分に発揮できる。このように、それぞれ役割を十分に果たすことができ、2つ以上の突条の間の空間によりラビリンス効果も生じるので、シール性をより一層良好なものとすることができる。
【0019】
請求項のピストンリングは、ピストン周面に周方向に形成されたリング溝に配置されるとともにピストンが往復動するシリンダ内周面へ押圧されることで、ピストンとシリンダとにより区画された空間に存在する高圧気体の漏出を阻止する樹脂製のピストンリングであって、前記シリンダ側へ突出して先端面が前記シリンダ内周面に摺動面として当接される少なくとも2本の突条が全周にわたって形成されるとともに、実機運転状態での前記空間側の前記突条先端面での外径は、前記空間とは反対側の前記突条先端面での外径よりも小さくなるように形成されていることにより、前記押圧により生じる圧力が、前記シリンダ内周面に当接される摺動面の内、前記空間側よりも前記空間とは反対側の方が高くされていることを特徴とする。
【0020】
このような突条先端面での外径の違いにより、前記空間とは反対側の突条の摺動面の圧力が高くされることによって、請求項1に準じた作用効果を生じさせることができる。しかも、前記空間側の突条の先端面は、圧力が低くてもあるいはシリンダ内周面に接触していなくても高圧気体の漏出阻止の役割を果たすことができるとともに、反対側の突条の先端面は圧力が高いことで、オイルの掻き落としの作用を十分に発揮できる。したがって、各突条先端面はそれぞれの役割を十分に果たすことができ、シール性をより一層良好なものとすることができる。
【0021】
請求項のピストンリングは、請求項記載の構成に対して、前記空間とは反対側の前記突条先端面の幅は、前記空間側の前記突条先端面の幅よりも大きく形成されていることを特徴とする。
【0022】
このようにシリンダの内周面に十分に押圧されている方の突条先端面の幅が大きく形成されていることにより、請求項の作用効果に加えて、ピストンリングの姿勢が安定し、より一層良好なシール性を確保することができる。
請求項5のピストンリングは、ピストン周面に周方向に形成されたリング溝に配置されるとともにピストンが往復動するシリンダ内周面へ押圧されることで、ピストンとシリンダとにより区画された空間に存在する高圧気体の漏出を阻止する樹脂製のピストンリングであって、前記押圧により生じる圧力が、前記シリンダ内周面に当接される摺動面の内、前記空間側よりも前記空間とは反対側の方が高くされ、前記シリンダ側へ突出して先端面が前記シリンダ内周面に摺動面として当接される3本の突条が全周にわたって形成されたことを特徴とする。
このように、3本設けた突条の先端面を摺動面とするピストンリングであっても、請求項1に述べた作用効果を生じる。しかも、この場合の前記空間側の突条の先端面は、圧力が低くても高圧気体の漏出阻止については十分に果たすことができ、反対側の突条の先端面は圧力が高いことで、オイルの掻き落としの作用を十分に発揮できる。しかも、中央の突条はこの中間的な機能により、高圧気体の漏出阻止およびオイルの掻き落とし作用を補助する。したがって、それぞれ役割を十分に果たすことができ、突条間の2つの空間によりラビリンス効果も存在するので、シール性をより一層良好なものとすることができる。
【0023】
請求項のピストンリングは、請求項1〜のいずれか記載の構成に対して、合口が形成されていないことを特徴とする。
このように合口が存在しないタイプの樹脂製ピストンリングは、前述したごとく、特に、高圧がかかりやすいので捻られやすくなるが、このようなものもシール性の低下防止が可能となり、作用効果が顕著である。
【0024】
請求項のピストンリングは、請求項1〜のいずれか記載の構成に対して、複数のリング状部材からなるピストンリング構造体の内の外側のリング状部材として形成されていることを特徴とする。
【0025】
上述したピストンリングは、単独で用いられるものばかりでなく、他のリング状部材と共に、ピストンリング構造体として用いられるものでもよく、前述したごとく、シール性の低下を防止することができる。しかも、このようにピストンリング構造体の一部に用いられる場合は、径方向の幅が小さく、高圧気体からの圧力により捻りを生じやすくなるが、このようなものもシール性の低下防止が可能となり、作用効果が顕著である。
【0028】
請求項のピストンリングは、請求項1〜のいずれかの構成に加えて、リング溝内には前記樹脂製のピストンリングに対して前記空間とは反対側に隣接して配置され、シリンダ内周面と摺動するサイドレールを備えたことを特徴とする。
【0029】
このように前記空間とは反対側に隣接してサイドレールを備えたことにより、本ピストンリングによるオイルの掻き落とし作用を大きくすることができる。
請求項のピストンリングは、請求項記載の構成に対して、オイルリングとコンプレッションリングとを兼ねていることを特徴とする。
【0030】
このことにより、オイルリングを省略することが可能となる。このためオイルリング用のリング溝も不要となり、ピストンの強度が向上するのでピストンを薄肉化できる。このようにして、内燃機関の軽量化と生産性の向上が可能となる。
【0031】
請求項10のピストンリングは、請求項1〜のいずれかの構成に対して、トップリングとして形成されていることを特徴とする。
このようにコンプレッションリングの内でもトップリングとして形成されていることにより、このピストンリングが内燃機関に適用されると、ピストンリングよりも前記空間側の間隙部に溜まる未燃焼ガスや不完全燃焼ガスの量が減少し、あるいはこれらのガスの異常燃焼が少なくなりノッキング等を減少することができる。
【0032】
なお、請求項1〜10のいずれかの構成において、前記ピストンおよび前記シリンダを内燃機関のピストンおよびシリンダとし、前記高圧気体を燃焼ガスとして、内燃機関に適用することができる。内燃機関においては、高圧の燃焼ガスによるピストンリングの捻れに対する対策が必要となるので、内燃機関に用いてオイルシール性の低下防止に顕著な作用効果を生じる。
【0033】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
図1は、本発明のピストンリングの一実施の形態としてのアウターリング2の断面図を示している。
【0034】
ここで、アウターリング2は樹脂製であり、合口のないシームレスなリングとして形成されている。樹脂としては例えば、ポリイミド等の比較的硬くて耐摩耗性のある樹脂が選択される。
【0035】
アウターリング2の内周面4は短円筒面として全体が平滑に形成されているが、外面6側には、2本の突条8,10がアウターリング2の全周にわたって配置されている。各突条8,10の先端には、短円筒状の外周面を形成する先端面8a,10aと、燃焼室側の角部の位置にテーパー面8b,10bとが形成されている。
【0036】
2つの突条8,10の内、燃焼室側の上部突条8の先端面8aは、クランクケース側の下部突条10の先端面10aに比較して、その幅(円筒の高さ)が大きく形成されている。なお、図1では、上部突条8の先端面8aが、下部突条10の先端面10aの1.2〜3倍の幅に設定されている。すなわち、面積においても上部突条8の先端面8aは下部突条10の先端面10aの1.2〜3倍に設定されている。
【0037】
このアウターリング2は、使用時に、図2に示すごとく、インナーリング12およびコイルエキスパンダ14と組み合わされてピストンリング構造体として用いられる。なお、このピストンリング構造体は、本実施の形態1では、コンプレッションリングの内でも、ピストン16の頂部から2番目のリング溝18内に配置されたセカンドリングとして用いられている。
【0038】
ここで、ピストン16のリング溝18内には、内側にコイルエキスパンダ14、中間にインナーリング12、および外側にアウターリング2が配置されている。コイルエキスパンダ14は断面丸あるいは断面矩形のスチール線材をコイル状に巻いたものであり、この中にはスチールの芯材14aが貫通しており、スチール線材は芯材14aに沿って円形に曲げられている。
【0039】
コイルエキスパンダ14からの押圧力により、シリンダ20側へ押圧されているインナーリング12は、コイルエキスパンダ14側に開く略V形の溝を有し、その斜面12a,12bにてコイルエキスパンダ14からの押圧力を受けている。このため、インナーリング12は、外側にて隣接するアウターリング2をシリンダ20側に押圧している。
【0040】
また、インナーリング12は、比較的弾力性のある樹脂、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)にて形成されているため、コイルエキスパンダ14の圧力により、インナーリング12自身は、斜面12a,12bを開くようにして、燃焼室側とクランクケース側とへそれぞれ広がる。したがって、クランクケース側のインナーリング側面12cがリング溝18のクランクケース側の側面18aに密着し、燃焼室側のインナーリング側面12dがリング溝18の燃焼室側の側面18bに密着する。このことにより、リング溝18の側面18a,18bとインナーリング12との間は、燃焼ガスに対して完全なシール性を発揮している。
【0041】
更に、インナーリング12とアウターリング2とは共に合口が存在しないシームレスなリングであり、アウターリング2はインナーリング12を介したコイルエキスパンダ14の押圧力により、シリンダ20の内周面20aの全周に接触している。このため、燃焼室の燃焼ガスは完全に密閉される。
【0042】
ここで、コイルエキスパンダ14からの押圧力は、上部突条8の先端面8aと下部突条10の先端面10aとのほぼ中間当たりに加わることから、コイルエキスパンダ14の押圧力は、ほぼ均等に両先端面8a,10aに与えられる。前述したごとく、下部突条10の先端面10aは、上部突条8の先端面8aの面積の1/1.2〜1/3の広さに設定されているので、下部突条10の先端面10aがシリンダ20の内周面20aに加える圧力は、上部突条8の先端面8a側よりも1.2〜3倍の圧力となっている。
【0043】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(イ).本アウターリング2では、前述したごとく、下部突条10の先端面10aの幅は上部突条8の先端面8aの幅よりも小さく形成されていることにより、コイルエキスパンダ14の押圧力により生じるシリンダ20の内周面20aに対する圧力は、下部突条10の先端面10aの方が上部突条8の先端面8aよりも高くされている。
【0044】
燃焼室側の高圧の燃焼ガスの圧力は、発明が解決しようとする課題の欄でも述べたごとく、アウターリング2に作用して、アウターリング2の摺動面側、すなわち先端面8a,10a側をクランクケース側に下げる方向に捻るように働く。しかし、前述したごとく、燃焼ガスの高圧をほぼ直接、燃焼室側から受ける上部突条8の先端面8aは、下部突条10の先端面10aよりも幅が大きいことにより安定した姿勢を維持する作用が高く、高圧によるアウターリング2の捻れを防止することができる。したがって、下部突条10の先端面10aがシリンダ20の内周面20aから浮き上がったり圧力が低下するのを阻止できる。
【0045】
更に、下部突条10の先端面10aの圧力は上部突条8の先端面8a側よりも高いので、シリンダ20の内周面20aとの密着性が高くなり、エンジンオイルがクランクケース側から燃焼室側へ侵入するのを阻止する効果が高くなる。
【0046】
これらのことからシール性の低下を十分に防止することができる。
(ロ).アウターリング2およびインナーリング12は共に合口を有していないので、特に、燃焼ガスの高圧がかかりやすいが、このようなものもシール性の低下防止が可能となり、作用効果が顕著である。
【0047】
(ハ).また、アウターリング2は、複数のリング状部材からなるピストンリング構造体の内の外側のリング状部材として形成されているため、単独のリング状部材がピストンリングとして用いられている場合よりも径方向の幅が小さく、燃焼ガスの圧力により捻りを生じやすくなるが、このようなものもシール性の低下防止が可能となり、作用効果が顕著である。
【0048】
[実施の形態2]
前記実施の形態1では先端面の幅が異なる2本の突条を設けたアウターリングの例を挙げたが、本実施の形態2における樹脂製のアウターリング102では、図3に示すごとく突条は存在せず、シリンダ120の内周面120aに当接される摺動面108が1つのみ形成されている。そして、摺動面108の燃焼室側縁部108aに連続して、燃焼室側には、テーパー面110が形成されている。
【0049】
ここで、インナーリング112のV形溝113は、インナーリング112の中央部ではなくクランクケース側に偏って形成されている。このため、コイルエキスパンダ114も、クランクケース側に偏って配置され、その押圧力Eは、図4に示すごとく、アウターリング102の中心Pよりもクランクケース側に押圧力中心がある。このため、アウターリング102に対して燃焼室側の燃焼ガスの圧力によりアウターリング102に与えられるモーメントDMとは反対方向のモーメントUMを、コイルエキスパンダ114からインナーリング112に与えることができる。
【0050】
以上説明した本実施の形態2によれば、以下の効果が得られる。
(イ).アウターリング102に押圧力を与えるエキスパンダー114は、その押圧力の中心位置がアウターリング102の中心Pよりもクランクケース側へ偏っている。このことにより、アウターリング102がシリンダ120の内周面120aに与える圧力は、図4に示すごとく、摺動面108の内で燃焼室側の領域UAよりもクランクケース側の領域DAの方が高くされている。
【0051】
このように、コイルエキスパンダ114の押圧中心がクランクケース側に偏っていることにより、圧力の高さばかりでなく、押圧力のトータルとしての力も、クランクケース側に多く分配されることとなる。このため、コイルエキスパンダ114の押圧力は、燃焼ガスによる捻れのモーメントDMを打ち消す反対方向のモーメントUMを発生することになり、燃焼ガスによる捻れが阻止できる。更に、摺動面108におけるクランクケース側の領域DAにおけるシリンダ120の内周面120aとの密着性も高くなり、シール性をより一層良好なものとすることができる。
【0052】
(ロ).また、コイルエキスパンダ114の押圧中心がクランクケース側に偏っていることにより、シリンダ120の内周面120aに対してアウターリング102を主に支持している部分は摺動面108の内でクランクケース側の領域DAとなる。すなわち、燃焼室からの燃焼ガスの影響(温度や圧力)の少ない位置で支持しているため、アウターリング102の姿勢が安定し、シール性を一層確実なものとできる。
【0053】
(ハ).前記実施の形態1の(ロ)および(ハ)と同様な作用効果を生じる。
[実施の形態3]
本実施の形態3が、前記実施の形態1と異なる点は、図5に示すごとく、アウターリング202における下部突条210の先端面210aの幅が上部突条208の先端面208aより大きい点である。更に、前記実施の形態1と異なる点は、上部突条208の先端面208aでの外径が下部突条210の先端面210aでの外径よりも小さくされて、実際に内燃機関の運転時においても、下部突条210の先端面210aは、コイルエキスパンダ214の押圧力によりシリンダ220の内周面220aに接触しているが、上部突条208の先端面208aはシリンダ220の内周面220aには接触していない点である。
【0054】
以上説明した本実施の形態3によれば、以下の効果が得られる。
(イ).本アウターリング202は、内燃機関の運転状態での上部突条208の先端面208aの径は、下部突条210の先端面210aの径よりも小さいので、下部突条210の先端面210aのみがシリンダ220の内周面220aに接触する。したがって、コイルエキスパンダ214の押圧力はすべて下部突条210の先端面210aが受けることになる。この結果、上部突条208の先端面208aの圧力(=0)よりも下部突条210の先端面210aの圧力の方が当然に高くなる。
【0055】
このため、実施の形態1の場合と同じ作用効果を生じる。
(ロ).上部突条208の先端面208aは、シリンダ220の内周面220aには接触していないが、その間隙は非常に狭く、更に、その背後に膨張できる空間211が下部突条210との間に存在するため、ラビリンス効果が生じて、燃焼ガスの漏出を阻止する役割を果たすことができる。
【0056】
(ハ).十分な圧力でシリンダ220の内周面220aに接触してアウターリング202を支持している下部突条210の先端面210aの幅は、上部突条208の先端面208aよりも大きく形成されている。このことから、アウターリング202の姿勢が更に安定し、より一層良好なシール性を維持することができる。
【0057】
(ニ).前記実施の形態1の(ロ)および(ハ)、前記実施の形態2の(ロ)の作用効果を有する。
[実施の形態4]
本実施の形態4の構成を図6の断面図に示す。本実施の形態4では、前記実施の形態1と異なり、アウターリング302は3つの突条308,309,310を備えている。この3つの突条308〜310は各先端面308a,309a,310aでシリンダ320の内周面320aに摺動状態で接触している。前記先端面308a〜310aによるシリンダ320の内周面320aへの圧力は、コイルエキスパンダ314によりインナーリング312を介して与えられている。
【0058】
ここで、インナーリング312において、コイルエキスパンダ314側には、コイルエキスパンダ314よりも内径の大きな半円形の溝312aが形成されている。このためコイルエキスパンダ314は溝312aの中心部(この場合は、インナーリング312の中心部でもある)にて、インナーリング312をアウターリング302側に押圧している。
【0059】
インナーリング312とアウターリング302とは、ピストン316の軸方向において同じ幅に形成されているので、コイルエキスパンダ314はアウターリング302の全幅の中心を押圧中心Fとしている。しかし、アウターリング302の外周面の内で、クランクケース側には、突条が形成されていないアンダーカット領域313が形成されている。このアンダーカット領域313の存在により、突条308〜310の先端面308a〜310aの分布は、燃焼室側に偏ったものとなっている。
【0060】
したがって、前記押圧中心Fは、突条308〜310の先端面308a〜310aがシリンダ320の内周面320aから受ける反力中心Gに対してクランクケース側に距離d分ずれている。
【0061】
なお、図7に示すごとく、本実施の形態4のピストンリングは、コンプレッションリングの内でもセカンドリング350として用いられている。したがって、ピストン316の外周面上には燃焼室側にトップリング352が設けられ、クランクケース側にオイルリング354が設けられている。
【0062】
ここでトップリング352は合口を有する金属製のリング状に形成されている。また、オイルリング354は図8の斜視図に示すごとく、一対のサイドレール356,358と1つのエキスパンダ360とから構成されている。各サイドレール356,358は図9の斜視図に示すごとく、一部に合口356a,358aを形成した金属製のリング状に形成されている。この2つの合口356a,358aは、オイルリング354として組み合わされて、ピストン316のリング溝に配置される際には、エキスパンダ360を間にして、180°の位相差(図9の配置状態)で配置されている。また、エキスパンダ360は、その内周側に存在する環状に配列された突出部360aにより、これら一対のサイドレール356,358をシリンダ320側に付勢している。このことにより、サイドレール356,358の外周側がシリンダ320の内周面に摺動状態で接触して、クランク室側のオイルが燃焼室側に侵入するのを阻止している。
【0063】
以上説明した本実施の形態4によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態2とは異なり、押圧中心Fはセカンドリング350の中心である。更に、突条308〜310の先端面308a〜310aがシリンダ320の内周面320aから受ける反力中心Gは燃焼室側に偏っている。すなわち、押圧中心Fは反力中心Gに対してクランクケース側にずれている。
【0064】
このため、コイルエキスパンダ314の押圧力は、燃焼ガスによる捻れのモーメントを更に強く打ち消す反対方向のモーメントを発生する。したがって、燃焼ガスによる捻れが一層強力に阻止できる。
【0065】
更に、このモーメントによりクランクケース側の突条310に特に強い圧力が作用するので、シリンダ320の内周面320aに付着しているオイルをクランクケース側に掻き下げるという作用が向上し、オイルシール性をより一層良好なものとすることができる。
【0066】
(ロ).また、燃焼室側と中央との2つの突条308,309によりクランクケース側の突条310の前に2つの空間308b,309bが形成されるので、ラビリンスとしての作用が高まり、燃焼ガスの漏出を阻止する役割を一層強めることができる。しかも中央の突条309は、高圧気体の漏出阻止ばかりでなくオイルの掻き落とし作用も補助する。したがって、シール性をより一層良好なものとすることができる。
【0067】
(ハ).前記実施の形態1の(ロ)および(ハ)と同様な作用効果を生じる。
[実施の形態5]
本実施の形態5の構成を図10に示す。本実施の形態5では、前記実施の形態4と異なり、セカンドリング450においては、リング溝418内にはアウターリング402およびインナーリング412に隣接して、クランクケース側に金属製のサイドレール440が配置されている。このサイドレール440は、前記実施の形態4の図9にて示したオイルリング354に用いられているサイドレール356,358とサイズは異なるが同形状のものが用いられている。他の構成は前記実施の形態4と同じである。
【0068】
サイドレール440はサイドレール440の内側に配置されているインナーリング412の係合部412aを介して、コイルエキスパンダ414からシリンダ420の内周面に対する圧力を与えられている。更にサイドレール440自身の弾性力によっても、シリンダ420の内周面に対する圧力を生じている。
【0069】
以上説明した本実施の形態5によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態4の(イ)〜(ハ)の作用効果を生じる。
(ロ).セカンドリング450は、クランクケース側にサイドレール440を備えている。このため、オイルが燃焼室側に侵入するのを、一層強力に阻止できる。したがって、シール性をより一層良好なものとすることができる。
【0070】
[実施の形態6]
本実施の形態6は、図11に示すごとく、前記実施の形態5のセカンドリング450と同じ構成のセカンドリング550を用いたシール構造において、オイルリングおよびそのリング溝を省略した構成である。すなわち、トップリング552とセカンドリング550との2つのピストンリングにて、ピストン516とシリンダ520との間をシールした構成である。セカンドリング550が図10に示した構成と同じであることにより、コンプレッションリングとオイルリングとの機能を兼ね備えている。
【0071】
以上説明した本実施の形態6によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態4の(イ)〜(ハ)の作用効果を生じる。
(ロ).オイルリングを省略しても、クランクケース側にサイドレール540を有するセカンドリング550がオイルリングを兼ねることができるので、オイルが燃焼室側に侵入するのを阻止でき、オイルシール性を維持することができる。このため、オイルリングを省略できる。したがって、オイルリング用のリング溝も不要となり、ピストン516の強度が向上するのでピストン516を薄肉化できる。このようにして、内燃機関の軽量化と生産性の向上が可能となる。
【0072】
[実施の形態7]
本実施の形態7は、図12に示すごとく、トップリング652として前記実施の形態4のセカンドリング350と同じ構成のコンプレッションリングを用いている。また、セカンドリング650として前記実施の形態4のトップリング352と同じ構成のコンプレッションリングを用いている。すなわち、前記実施の形態4とはトップリングとセカンドリングとが入れ替わった構成をなしている。
【0073】
以上説明した本実施の形態7によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態4の(イ)〜(ハ)の作用効果を生じる。
(ロ).トップリング652を構成するアウターリング602は樹脂製であり、シリンダ620の内周面に対する密着性が高い。またトップリング652を構成するインナーリング612も樹脂製でありリング溝618に対する密着性が高い。このため、内燃機関の運転時に燃焼室の未燃混合気や不完全燃焼ガスが溜まり易いのは、トップリング652より上の間隙部670までである。トップリング652よりクランクケース側の間隙部672にはほとんど未燃混合気や不完全燃焼ガスは到達しない。すなわちクレビスボリュームが少なくなる。
【0074】
したがって、排気行程にて、間隙部670からの未燃混合気や不完全燃焼ガスの吹き出しは、トップリングが前記実施の形態4に示した単一の金属リングである場合には比較して少なくなる。このため未燃混合気や不完全燃焼ガスによる吸入空気量の低下やエミッションの悪化を抑制することができる。
【0075】
また、爆発行程時に燃焼室に存在する混合気の膨張と燃焼波により、間隙部670にある未燃混合気や不完全燃焼ガスが断熱圧縮されても、未燃混合気や不完全燃焼ガスの量が少ないので、ノッキング等の異常燃焼を抑制することができ、内燃機関の耐久性を高めることができる。
【0076】
[その他の実施の形態]
・前記実施の形態1〜7において、合口の無いアウターリングやインナーリングの例を示したが、合口のあるものを用いても同様にシール性の低下を防止することができる。
【0077】
・前記実施の形態1〜7においては、ピストンリング構造体に用いられるアウターリングとして本発明が具現化されていたが、前記実施の形態1〜7のアウターリングと同形状のものを、インナーリング無しでコイルエキスパンダと組み合わせて用いる形態でもよく、また、インナーリングもコイルエキスパンダも無くしてアウターリングと同形状のものを単独で用いる形態でもよい。このような構造でもシール性の低下を防止することができる。
【0078】
・前記実施の形態1〜7では、アウターリングの先端の燃焼室側にテーパー面(8b,10b,110,208b,210b等)が形成されているが、これらの燃焼室側のテーパー面は存在しなくても、シール性の低下防止効果は存在する。
【0079】
・前記実施の形態1〜6では、セカンドリングとして用いられている例を挙げたが、各実施の形態の構成を、一番上に存在するトップリングとして適用することもできる。
【0080】
・前記実施の形態3において、上部突条208の先端面208aはシリンダ220の内周面220aに接触してないが、下部突条210の先端面210a側の圧力以上とならなければ、上部突条208の先端面208aはシリンダ220の内周面220aに接触させてもよい。
【0081】
・前記実施の形態5,6のセカンドリング450,550においては、リング溝内においてクランクケース側にサイドレール440,540を配置した例を示したが、リング溝内において燃焼室側に配置しても良く、同様な効果を生じる。
【0082】
・前記実施の形態7において、インナーリング612として、樹脂製のリングの代わりに、合口のあるスチールリングを用いても良い。この場合も、アウターリング602は樹脂製であり、シリンダ620の内周面に対する密着性が高いことから、前記実施の形態7にて述べた効果を生ずる。
【0083】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態には、特許請求の範囲に記載した技術的事項以外に次のような各種の技術的事項の実施形態を有するものであることを付記しておく。
【0084】
(1).ピストン周面に周方向に形成されたリング溝に配置されるとともにピストンが往復動するシリンダ内周面へ押圧されることで、ピストンとシリンダとにより区画された空間に存在する高圧気体の漏出を阻止する樹脂製のピストンリングであって、前記シリンダ側へ突出して先端面が前記シリンダ内周面に摺動面として当接される2本の突条が全周にわたって形成されるとともに、前記空間側の前記突条先端面の幅は、前記空間とは反対側の前記突条先端面の幅よりも大きく形成され、前記空間側の前記突条先端面と前記空間とは反対側の前記突条先端面とには、前記押圧による力がほぼ均等に分配されていることにより、前記押圧により生じる圧力が、前記シリンダ内周面に当接される摺動面の内、前記空間側よりも前記空間とは反対側の方が高くされていることを特徴とするピストンリング。
【0085】
(2).ピストン周面に周方向に形成されたリング溝に配置されるとともにピストンが往復動するシリンダ内周面へ押圧されることで、ピストンとシリンダとにより区画された空間に存在する高圧気体の漏出を阻止する樹脂製のピストンリングであって、前記押圧により生じる圧力は、リング溝内に配置されてピストンリングをシリンダ内周面へ押圧するエキスパンダーにより与えられるとともに、
該エキスパンダーの押圧中心は、前記シリンダ内周面に当接される摺動面の中心よりも前記空間とは反対側へ偏っていることにより、前記圧力が、前記シリンダ内周面に当接される摺動面の内、前記空間側よりも前記空間とは反対側の方が高くされていることを特徴とするピストンリング。
【0086】
(3).前記ピストンおよび前記シリンダは、内燃機関のピストンおよびシリンダであり、前記高温気体は燃焼ガスであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載のピストンリング。
【0087】
【発明の効果】
請求項1のピストンリングは、シリンダ内周面への圧力が、シリンダ内周面に当接される摺動面の内、前記空間側よりも前記空間とは反対側の方が高くされている。前記空間側の高圧気体の圧力は、ピストンリングに作用して、ピストンリングの摺動面側を前記空間とは反対側に下げようとするが、ピストンリングの摺動面からシリンダ内周面への圧力が前記空間とは反対側の方に偏っているため、高圧気体により生じる捻りのモーメントと逆方向のモーメントがピストンリングに発生する。このため、高圧気体による捻りのモーメントが弱められて、前記空間とは反対側の摺動面が浮き上がったり圧力が低下する現象が阻止される。したがって、オイル等を前記空間とは反対側へ掻き取る機能が阻害されることなく、シール性の低下を防止することができる
【0089】
上記請求項のピストンリングは、エキスパンダーの押圧中心がピストンリングの中心よりも前記空間とは反対側へ偏っていることにより、圧力の高さばかりでなく、押圧力のトータルとしての力も、前記空間とは反対側の摺動面に多く分配されることとなり、高圧気体による捻れも阻止でき、また、シリンダ内周面との密着性も高くなり、シール性をより一層良好なものとすることができる。
【0090】
請求項のピストンリングは、請求項記載の構成に対して、前記シリンダ側へ突出して先端面が前記シリンダ内周面に摺動面として当接される少なくとも2本の突条が全周にわたって形成されている。このように、2本あるいはそれ以上設けた突条の先端面を摺動面とするピストンリングであっても、請求項に述べた作用効果を生じる。しかも、この場合の前記空間側の突条の先端面は、圧力が低くても高圧気体の漏出阻止については十分に果たすことができ、反対側の突条の先端面は圧力が高いことで、オイルの掻き落としの作用を十分に発揮できる。
このように、それぞれ役割を十分に果たすことができ、2つ以上の突条の間の空間によりラビリンス効果も生じるので、シール性をより一層良好なものとすることができる。
【0091】
請求項のピストンリングは、ピストン周面に周方向に形成されたリング溝に配置されるとともにピストンが往復動するシリンダ内周面へ押圧されることで、ピストンとシリンダとにより区画された空間に存在する高圧気体の漏出を阻止する樹脂製のピストンリングであって、前記シリンダ側へ突出して先端面が前記シリンダ内周面に摺動面として当接される少なくとも2本の突条が全周にわたって形成されるとともに、実機運転状態での前記空間側の前記突条先端面での外径は、前記空間とは反対側の前記突条先端面での外径よりも小さくなるように形成されていることにより、前記押圧により生じる圧力が、前記シリンダ内周面に当接される摺動面の内、前記空間側よりも前記空間とは反対側の方が高くされている。このような突条先端面での外径の違いにより、前記空間とは反対側の突条の摺動面の圧力が高くされることによって、請求項1に準じた作用効果を生じさせることができる。しかも、前記空間側の突条の先端面は、圧力が低くてもあるいはシリンダ内周面に接触していなくても高圧気体の漏出阻止の役割を果たすことができるとともに、反対側の突条の先端面は圧力が高いことで、オイルの掻き落としの作用を十分に発揮できる。したがって、各突条先端面はそれぞれの役割を十分に果たすことができ、シール性をより一層良好なものとすることができる。
【0092】
請求項のピストンリングは、請求項記載の構成に対して、前記空間とは反対側の前記突条先端面の幅は、前記空間側の前記突条先端面の幅よりも大きく形成されている。このようにシリンダの内周面に十分に押圧されている方の突条先端面の幅が大きく形成されていることにより、請求項の作用効果に加えて、ピストンリングの姿勢が安定し、より一層良好なシール性を確保することができる。
請求項5のピストンリングは、ピストン周面に周方向に形成されたリング溝に配置されるとともにピストンが往復動するシリンダ内周面へ押圧されることで、ピストンとシリンダとにより区画された空間に存在する高圧気体の漏出を阻止する樹脂製のピストンリングであって、前記押圧により生じる圧力が、前記シリンダ内周面に当接される摺動面の内、前記空間側よりも前記空間とは反対側の方が高くされ、前記シリンダ側へ突出して先端面が前記シリンダ内周面に摺動面として当接される3本の突条が全周にわたって形成されている。このように、3本設けた突条の先端面を摺動面とするピストンリングであっても、請求項1に述べた作用効果を生じる。しかも、この場合の前記空間側の突条の先端面は、圧力が低くても高圧気体の漏出阻止については十分に果たすことができ、反対側の突条の先端面は圧力が高いことで、オイルの掻き落としの作用を十分に発揮できる。しかも、中央の突条はこの中間的な機能により、高圧気体の漏出阻止およびオイルの掻き落とし作用を補助する。したがって、それぞれ役割を十分に果たすことができ、突条間の2つの空間によりラビリンス効果も存在するので、シール性をより一層良好なものとすることができる。
【0093】
請求項のピストンリングは合口が形成されていない。このように合口が存在しないタイプの樹脂製ピストンリングは、前述したごとく、特に、高圧がかかりやすいので捻られやすくなるが、このようなものもシール性の低下防止が可能となり、作用効果が顕著である。
【0094】
請求項のピストンリングは、複数のリング状部材からなるピストンリング構造体の内の外側のリング状部材として形成されている。上述したピストンリングは、単独で用いられるものばかりでなく、他のリング状部材と共に、ピストンリング構造体として用いられるものでもよく、前述したごとく、シール性の低下を防止することができる。しかも、このようにピストンリング構造体の一部に用いられる場合は、径方向の幅が小さく、高圧気体からの圧力により捻りを生じやすくなるが、このようなものもシール性の低下防止が可能となり、作用効果が顕著である。
【0096】
請求項のピストンリングは、請求項1〜のいずれかの構成に加えて、リング溝内には前記樹脂製のピストンリングに対して前記空間とは反対側に隣接して配置され、シリンダ内周面と摺動するサイドレールを備えている。このように前記空間とは反対側に隣接してサイドレールを備えたことにより、本ピストンリングによるオイルの掻き落とし作用を大きくすることができる。
【0097】
請求項のピストンリングは、請求項記載の構成に対して、オイルリングとコンプレッションリングとを兼ねている。このことにより、オイルリングを省略することが可能となる。このためオイルリング用のリング溝も不要となり、ピストンの強度が向上するのでピストンを薄肉化できる。このようにして、内燃機関の軽量化と生産性の向上が可能となる。
【0098】
請求項10のピストンリングは、請求項1〜のいずれかの構成に対して、トップリングとして形成されている。このようにコンプレッションリングの内でもトップリングとして形成されていることにより、このピストンリングが内燃機関に適用されると、ピストンリングよりも前記空間側の間隙部に溜まる未燃焼ガスや不完全燃焼ガスの量が減少し、あるいはこれらのガスの異常燃焼が少なくなりノッキング等を減少することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1としてのアウターリングの断面図。
【図2】実施の形態1のアウターリングを内燃機関に適用した状態を示す断面図。
【図3】実施の形態2のアウターリングを内燃機関に適用した状態を示す断面図。
【図4】実施の形態2のアウターリングにおける押圧力の関係説明図。
【図5】実施の形態3のアウターリングを内燃機関に適用した状態を示す断面図。
【図6】実施の形態4のアウターリングを内燃機関に適用した状態を示す断面図。
【図7】実施の形態4におけるピストンリングの配置状態を示す断面図。
【図8】実施の形態4におけるオイルリングの構成を示す斜視図。
【図9】実施の形態4におけるオイルリングに用いられるサイドレールの構成を示す斜視図。
【図10】実施の形態5のピストンリングを内燃機関に適用した状態を示す断面図。
【図11】実施の形態6におけるピストンリングの配置状態を示す断面図。
【図12】実施の形態7におけるピストンリングの配置状態を示す断面図。
【図13】従来のピストンリングの状態を示す断面図。
【符号の説明】
2…アウターリング、4…内周面、6…外面、8…上部突条、8a…先端面、8b,10b…テーパー面、10…下部突条、10a…先端面、12…インナーリング、12a,12b…斜面、12c,12d…インナーリング側面、14…コイルエキスパンダ、14a…芯材、16…ピストン、18…リング溝、18a,18b…側面、20…シリンダ、20a…内周面、102…アウターリング、108…摺動面、108a…燃焼室側縁部、110… テーパー面、112…インナーリング、113…V形溝、114… コイルエキスパンダ、120…シリンダ、120a…内周面、202…アウターリング、208…上部突条、208a…先端面、210…下部突条、210a…先端面、211…空間、214…コイルエキスパンダ、220…シリンダ、220a…内周面、302…アウターリング、308,309,310…突条、308a,309a,310a…先端面、308b,309b…空間、312…インナーリング、312a…溝、313…アンダーカット領域、314…コイルエキスパンダ、316…ピストン、320…シリンダ、320a…内周面、350…セカンドリング、352…トップリング、354…オイルリング、356,358…サイドレール、356a,358a…合口、360…エキスパンダ、360a…突出部、402…アウターリング、412…インナーリング、412a…係合部、414…コイルエキスパンダ、418…リング溝、420…シリンダ、440…サイドレール、450…セカンドリング、516…ピストン、520…シリンダ、540…サイドレール、550…セカンドリング、552…トップリング、602…アウターリング、612…インナーリング、618…リング溝、620…シリンダ、650…セカンドリング、652…トップリング、670,672…間隙部。

Claims (10)

  1. ピストン周面に周方向に形成されたリング溝に配置されるとともにピストンが往復動するシリンダ内周面へ押圧されることで、ピストンとシリンダとにより区画された空間に存在する高圧気体の漏出を阻止する樹脂製のピストンリングであって、
    前記押圧により生じる圧力は、リング溝内に配置されてピストンリングをシリンダ内周面へ押圧するエキスパンダーにより与えられるとともに、
    該エキスパンダーの押圧中心は、ピストンリングの中心よりも前記空間とは反対側へ偏っていることにより、前記圧力が、前記シリンダ内周面に当接される摺動面の内、前記空間側よりも前記空間とは反対側の方が高くされていることを特徴とするピストンリング。
  2. 前記シリンダ側へ突出して先端面が前記シリンダ内周面に摺動面として当接される少なくとも2本の突条が全周にわたって形成されことを特徴とする請求項1記載のピストンリング。
  3. ピストン周面に周方向に形成されたリング溝に配置されるとともにピストンが往復動するシリンダ内周面へ押圧されることで、ピストンとシリンダとにより区画された空間に存在する高圧気体の漏出を阻止する樹脂製のピストンリングであって、
    前記シリンダ側へ突出して先端面が前記シリンダ内周面に摺動面として当接される少なくとも2本の突条が全周にわたって形成されるとともに、実機運転状態での前記空間側の前記突条先端面での外径は、前記空間とは反対側の前記突条先端面での外径よりも小さくなるように形成されていることにより、前記押圧により生じる圧力が、前記シリンダ内周面に当接される摺動面の内、前記空間側よりも前記空間とは反対側の方が高くされていることを特徴とするピストンリング。
  4. 前記空間とは反対側の前記突条先端面の幅は、前記空間側の前記突条先端面の幅よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項3記載のピストンリング。
  5. ピストン周面に周方向に形成されたリング溝に配置されるとともにピストンが往復動するシリンダ内周面へ押圧されることで、ピストンとシリンダとにより区画された空間に存在する高圧気体の漏出を阻止する樹脂製のピストンリングであって、
    前記押圧により生じる圧力が、前記シリンダ内周面に当接される摺動面の内、前記空間側よりも前記空間とは反対側の方が高くされ、
    前記シリンダ側へ突出して先端面が前記シリンダ内周面に摺動面として当接される3本の突条が全周にわたって形成されたことを特徴とするピストンリング。
  6. 合口が形成されていないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のピストンリング。
  7. 複数のリング状部材からなるピストンリング構造体の内の外側のリング状部材として形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載のピストンリング。
  8. 請求項1〜7のいずれかの構成に加えて、
    リング溝内には前記樹脂製のピストンリングに対して前記空間とは反対側に隣接して配置され、シリンダ内周面と摺動するサイドレールを備えたことを特徴とするピストンリング。
  9. オイルリングとコンプレッションリングとを兼ねていることを特徴とする請求項8記載のピストンリング。
  10. トップリングとして形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載のピストンリング。
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