JP2004161958A - トレッド用ゴム組成物及びタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】DMSO抽出物量が3質量%未満のオイルを用い、しかも、従来の高芳香族系油配合の場合に比べて、破壊特性及び耐摩耗性の大幅な改良と共に、弾性率の低下が抑制されたトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いたタイヤを提供すること。
【解決手段】ゴム成分100質量部に対して、(a)IP346法によるジメチルスルホキシド(DMSO)抽出物量が3質量%未満に制御されたオイルを含む軟化剤5〜40質量部と、(b)粘度平均分子量が45,000〜100,000の液状ポリマー5〜40質量部とを配合してなることを特徴とするトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いたタイヤである。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トレッド用ゴム組成物及びタイヤに関し、詳しくは、ジメチルスルホキシド(DMSO)抽出物量が3質量%未満のオイルと特定液状ゴムを配合してなるトレッド用ゴム組成物、及びこれを用いたタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ゴム組成物の軟化剤及び合成ゴム伸展油としては、高ロス特性(高ヒステリシスロス特性)付与やゴムとの親和性などの観点から、高芳香族系油(アロマティックオイル)が、タイヤ用ゴム組成物やその他の領域で好んで用いられてきた。
また近年は、石油を原料として製造される高芳香族系油を処理して得られるTreated Distilled Aromatic Extracts (T−DAE)やMild Extracted Solvates (MES)などと称されるDMSO抽出分が3質量%未満のプロセスオイルが使用され始めている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
しかし、上記T−DAEやMESなどの代替オイルを使用したゴム組成物は、従来の高芳香族系油を使用した場合に比べ、破壊特性や耐摩耗性が低く、また、オイル自身の軟化点及び粘度が低いことから、ゴム組成物の粘弾性特性の温度依存性は低温側にシフトする傾向がある。そのため、タイヤのウェットスキッド性や操縦安定性が低下するという不具合が生じる問題があった。また、アクリルニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体をブレンドすることにより、破壊特性と耐摩耗性とを改善する考えもあるが、この場合、弾性率の低下を抑制しようとすると低発熱性の悪化が大きいという問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−302459号公報(第2頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、DMSO抽出物量が3質量%未満のオイルを用い、しかも、従来の高芳香族系油配合の場合に比べて、破壊特性及び耐摩耗性の大幅な改良と共に、低発熱性を低下させずに弾性率の低下が抑制されたトレッド用ゴム組成物、及びこれを用いたタイヤを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討の結果、DMSO抽出物量が3%以下のオイルの一部を液状ポリマーと置換して用いることが有効なことを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ゴム成分100質量部に対して、(a)IP346法によるジメチルスルホキシド(DMSO)抽出物量が3質量%未満に制御されたオイルを含む軟化剤5〜40質量部と、(b)粘度平均分子量が45,000〜100,000の液状ポリマー5〜40質量部とを配合してなることを特徴とするトレッド用ゴム組成物を提供するものである。
また本発明は、上記ゴム組成物を用いたタイヤを提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるゴム成分としては、天然ゴム及び合成ゴムのいずれでもよいが、合成ゴムとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR),ブタジエンゴム(BR),イソプレンゴム(IR),ブチルゴム(IIR),ブタジエン−アクリルニトリル共重合体ゴム(NBR),エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)及びこれらの混合物などが挙げられる。この中でも、タイヤトレッドにおける各種性能のバランスを考慮すれば、乳化重合法により製造されたスチレン−ブタジエン共重合体ゴムが好ましい。
【0008】
本発明のゴム組成物においては、IP346法によるDMSO抽出物量〔PCA成分(多環芳香族化合物)〕が3質量%未満に制御されたオイルを含む軟化剤(a)を、ゴム成分100質量部に対して5〜40質量部配合することが必要とされる。DMSO抽出物量が3質量%未満のオイルとしては、例えばT−DAE(前出)やMES(前出)などが好ましく用いられる。
さらに、軟化剤(a)においては、水添ナフテン系オイルを配合することが好ましい。この水添ナフテン系オイルは、予め高温高圧水素化精製技術によりナフテン系オイルを水素化精製することにより得ることができる。また、水素化されるナフテン系オイルとしては、ASTM D2140に準拠して測定された(つまり、通称環分析による)ナフテン系炭化水素の含有量(%C)が30以上のものが好ましい。
【0009】
この水添ナフテン系オイルの量は、前記DMSO抽出物量が3質量%未満のオイルの量に対して20〜70質量%の範囲で添加することが好ましい。このような水添ナフテン系オイルは、具体的には、三共油化工業(株)製のSNH8,SNH46,SNH220,SNH440(いずれも商標)などの市販品として入手可能である。
さらに、軟化剤(a)にはアスファルトを含むことができる。このアスファルトは、使用する合成ゴムとの相溶性や、軟化剤としての効果を考慮すれば、アスファルテン成分が5質量%以下であることが好ましい。なお、アスファルテン成分は、JPI法(日本石油学会法)に準拠して測定した組成分析より定量される。このようなアスファルトは、特にナフテン系ストレートアスファルトであることが好ましく、また、120℃における動粘度が300mm/秒以下であることが好ましい。
上記アスファルトの配合量は、水添ナフテン系オイルとアスファルトとの配合質量比として、95/5から5/95の範囲であることが好ましい。アスファルトが95質量%を超えると使用する合成ゴムとの相溶性に問題が生じ、効果が小さくなる場合がある。
【0010】
アスファルトの混合方法は特に制限されず、アスファルトを予め水添ナフテン系オイルに混合するか、或いは従来の水添ナフテン系オイルの精製過程において、アスファルトの主要成分を水添ナフテン系オイル中に適正比率に存在させることにより調製した軟化剤を用いてもよいが、該軟化剤の調製の容易さや経済性の観点からは、アスファルトを水添ナフテン系オイル(伸展油、配合油を含む)に溶解させて調製する方法が好ましい。
本発明のゴム組成物において、軟化剤(a)は、▲1▼DMSO抽出物量が3質量%未満のオイル、▲2▼水添ナフテン系オイル、及び▲3▼アスファルトの合計量として、ゴム成分100質量部に対して5質量部から40質量部を配合することが必要とされる。この範囲を満足しない場合は破壊特性と摩耗特性の両方について優れた性能を得ることが困難となる。
【0011】
次に、本発明のゴム組成物においては、前記軟化剤(a)と共に、粘度平均分子量45,000〜100,000の液状ポリマー(b)を配合することが必要である。粘度平均分子量が、45,000未満であれば破壊特性が劣り、一方100,000を超えれば硬度が硬くなりグリップ特性が低下する。この観点から、粘度平均分子量は、さらに55,000〜85,000であることが好ましい。
液状ポリマーの種類としては、例えば液状スチレン−ブタジエン共重合体,液状ポリブタジエンなどのポリジエン系ポリマー、ポリイソブチレンなどのポリオレフィン系ポリマー及びこれらポリマーにOH基やCOOH基などの官能基を有する変性ポリマーなどが挙げられるが、これらの中では、破壊強度と摩耗性の双方の改良効果が大きい点から、特に液状スチレン−ブタジエン共重合体及びその変性ポリマーが好ましい。
本発明における液状ポリマーの配合量は、ゴム成分100質量部に対して5〜40質量部の範囲であることが必要である。さらに、前記軟化剤に対する配合質量比としては、5/95から95/5の範囲であることが好ましい。
【0012】
本発明のゴム組成物においては、補強性充填剤として、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウムなどを用いることができる。例えばカーボンブラックとしてはFEF,SRF,HAF,ISAF,SAF等が挙げられるが、これらの中で、特に耐摩耗性に優れるHAF,ISAF,SAFが好適である。
上記以外にも、本発明のゴム組成物には、亜鉛華,ステアリン酸,シランカップリング剤,加硫促進剤,老化防止剤など、通常ゴム業界で用いられる各種成分を適宜配合することができる。
本発明におけるゴム組成物は、通常のアロマティックオイルを用いた場合に比べて、破壊強度と摩耗性の双方に優れていると共に、弾性率の低下を抑制することができる。このために、上記ゴム組成物をタイヤのトレッド用ゴム組成物として好適に用いることができる。
なお、タイヤ内に充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を変えた空気、又は窒素などの不活性なガスを用いることができる。
【0013】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
(a)破壊特性
JIS K6301−1995に準拠し、加硫ゴムシート(150mm×150mm×2mm)よりJIS−3号の刃型を用い試験片を準備した。この試験片を引張試験機を用いて25℃における破断強度を測定し指数表示した。指数は値が大きいほど破壊特性が良好であることを示す。
(b)弾性率(E’)
スペクトロメータ[東洋精機(株)製]を用い、室温で、動的歪み1%、周波数15Hzの条件下で測定した。指数は値が大きいほど良好であることを示す。
【0014】
(c)耐摩耗性
ランボーン型摩耗性試験機により、スリップ率60%での摩耗量を測定し、その逆数を指数表示した。指数は値が大きいほど良好であることを示す。
実施例1〜3及び比較例1,2
第1表に記載の配合組成に従い、乳化重合SBR及びBRからなるゴム成分100質量部に対し、各種軟化剤と液状ポリマーの合計量を50質量部とすると共に、各配合剤を混練りしてゴム組成物を調製し、得られたゴム組成物について、加硫ゴムの破壊特性、弾性率(E’)、及び耐摩耗性を測定した。結果を第1表に示す。
【0015】
【表1】
Figure 2004161958
【0016】
(注)
*1 SBR;スチレン含量40%の乳化重合SBR
*2 BR01;「商標」〔ジェイエスアール(株)製、シス−1,4−ポリブタジエン〕
*3 オイルA(T−DAE);(Treated Distilled Aromatic Extracts、DMSO抽出物量3質量%未満のプロセスオイル)
*4 オイルB;水添ナフテン系オイル〔三共油化工業(株)製〕〕とアスファルト(アスファルテン分含量5%以下)の質量比50/50ブレンド物
*5 液状ポリマー;粘度平均分子量85,000のスチレン−ブタジエン共重合体
*6 老化防止剤6C;N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン
*7 加硫促進剤DPG;ジフェニルグアニジン
*8 加硫促進剤NS;N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
*9 加硫促進剤DM;ジベンゾチアジルスルフェンアミド
上記の結果より、本発明に係る実施例1〜3の組成物は、比較例1,2に比べて引張り強力及び耐摩耗性は著しく向上しており、かつ弾性率の低下は抑制されていることが分かる。特に、軟化剤(オイルAとオイルBの合計量)に対する液状ポリマーの配合質量比が5/95〜95/5の範囲にある実施例1では顕著な効果が認められる。
【0017】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、ゴム組成物にDMSO抽出物量が3質量%未満に制御されたオイルと、特定液状ポリマーを配合することにより、従来のアロマティックオイルを用いたゴム組成物に比べて、引張り強力及び耐摩耗性が著しく優れると共に、弾性率の低下が抑制されたトレッド用ゴム組成物、及びこれを用いた改良されたタイヤを製造することができる。

Claims (8)

  1. ゴム成分100質量部に対して、(a)IP346法によるジメチルスルホキシド(DMSO)抽出物量が3質量%未満に制御されたオイルを含む軟化剤5〜40質量部と、(b)粘度平均分子量が45,000〜100,000の液状ポリマー5〜40質量部とを配合してなることを特徴とするトレッド用ゴム組成物。
  2. 液状ポリマーの粘度平均分子量が、55,000〜85,000である請求項1記載のトレッド用ゴム組成物。
  3. 液状ポリマーが、液状スチレン−ブタジエン共重合体である請求項1又は2に記載のトレッド用ゴム組成物。
  4. オイルが、T−DAE及びMESから選ばれた少なくとも一種のプロセスオイルである請求項1記載のトレッド用ゴム組成物。
  5. 軟化剤(a)が、さらに、水添ナフテン系オイルを含むものである請求項1記載のトレッド用ゴム組成物。
  6. 水添ナフテン系オイルが、ASTM D2140に準拠して測定されたナフテン系炭化水素の含有量(%C)が30以上のナフテン系オイルを水素添加することにより得られたものである請求項5記載のトレッド用ゴム組成物。
  7. 軟化剤(a)が、さらに、120℃の動粘度が300mm/秒以下で、かつアスファルテン分5質量%以下のアスファルトを、水添ナフテン系オイル/アスファルトの質量比として95/5から5/95の範囲で含有するものである請求項5又は6に記載のトレッド用ゴム組成物。
  8. 請求項1ないし7のいずれか一項に記載のゴム組成物をトレッドに用いたことを特徴とするタイヤ。
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