JP2004161893A - ポリエーテルポリオール類の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】反応速度が大きく、生成ポリマーの分子量を調節することができ、廃酸量が少なく、加アルコール分解が不要なポリエーテルポリオール類の製造方法を提供する。
【解決手段】液相中、触媒の存在下に環状エーテルを開環重合反応させてポリエーテルポリオール及び/又はそのエステル誘導体を製造するに当たり、該開環重合反応を、固体酸触媒及びスルホン酸基含有化合物の存在下かつカルボン酸無水物の不存在下に行うポリエーテルポリオール類の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】液相中、触媒の存在下に環状エーテルを開環重合反応させてポリエーテルポリオール及び/又はそのエステル誘導体を製造するに当たり、該開環重合反応を、固体酸触媒及びスルホン酸基含有化合物の存在下かつカルボン酸無水物の不存在下に行うポリエーテルポリオール類の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエーテルポリオール類の製造方法に関する。詳しくは本発明は、環状エーテルを開環重合してポリエーテルポリオール及び/又はそのエステル誘導体を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエーテルポリオールは、弾性繊維や熱可塑性エラストマーなどを構成するポリマーのソフトセグメントの原料として有用なポリマーである。中でもテトラヒドロフラン(THF)の重合により合成されるポリテトラメチレンエーテルグリコールは、伸縮性、弾性等の面で優れており、注目されている。
【0003】
ポリテトラメチレンエーテルグリコールは、THFの開環重合反応によって製造することができる。例えば、(1)フルオロ硫酸を触媒としてTHFを重合させた後に温水で加水分解する方法(特公昭49−15074号公報、特公平6−15609号公報)、(2)ヘテロポリ酸を用いてTHFを重合させる方法(特公昭63−30931号公報)、(3)過塩素酸やHF・BF3等の均一系酸触媒を用いて無水酢酸を分子量制御のために共存させてTHFを重合させた後に加水分解する方法(特公昭35−13940号公報、特開昭50−126799号公報)、(4)固体酸触媒を用いて無水酢酸を分子量制御のために共存させてTHFを重合させた後に加アルコール分解する方法(特公昭61−11969号公報、特公昭62−19452号公報、特開平10−158386号公報)等が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記(1)の方法においては、用いたフルオロ硫酸が重合後の加水分解の際に硫酸と弗化水素とに加水分解されるために再利用できず、多量の廃酸の処理が必要となるばかりでなく、有毒で腐食性の強い弗化水素を取り扱う必要が生じる。上記(2)の方法においては、一段で末端水酸基を有するポリテトラメチレンエーテルグリコールが得られるが、触媒であるヘテロポリ酸が溶出してしまうため、特別な回収方法が必要となる(特開昭61−118420号公報、特表平10−507217号公報)。上記(3)の方法は、無機酸及び有機酸の混合物が廃酸として大量に生成するため、廃水処理の負荷が多大となる。また、上記(4)の方法は、重合触媒はリサイクル可能であるが、加アルコール分解が必須であり、コスト面での負荷が大きい。
【0005】
他の方法として、安価な発煙硫酸を触媒に用いたTHFの重合方法(特公昭48−25438号公報)も報告されているが、数平均分子量が1000前後のポリマーしか得ることができないという欠点を有するだけでなく、THFに対する発煙硫酸の使用量が多いために大量の廃酸の処理が必要となる。そのためポリマーの数平均分子量を増大させる方法として、過塩素酸やトリフルオロメタンスルホン酸等の酸の共存下に発煙硫酸を用いてTHFを重合させる方法(特公昭48−25439号公報、特公昭59−1293号公報)、過塩素酸マグネシウム等の過塩素酸塩の共存下に発煙硫酸を用いてTHFを重合させる方法(特公昭52−5080号公報)、塩化第二銅等の金属塩化物の共存下に発煙硫酸を用いてTHFを重合させる方法(特開昭50−80399号公報)、三酸化クロムやモリブデン酸ナトリウム等の金属化合物の共存下に発煙硫酸を用いてTHFを重合させる方法(特公昭49−28918号公報)等が報告されているが、いずれの方法もポリマーの数平均分子量を増大させる効果は充分でなく、またTHFに対する発煙硫酸の使用量が多いために大量の廃酸の処理が必要であるという問題は解決されていない(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−158386号公報
【特許文献2】
特公昭49−28918号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、廃酸量が少なく、加アルコール分解が不要であり、かつ分子量の調節が容易であるポリエーテルポリオール類の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来技術の状況に鑑み鋭意検討を重ねた結果、テトラヒドロフラン等の環状エーテルを重合させる際に、特定の触媒系を用いると、工業的に有意な高い反応速度で重合反応が進行すること、また触媒系の制御により生成するポリマーの分子量を調節できることを見出し、この知見に基づいて本発明に到達した。
【0009】
即ち本発明の要旨は、液相中、触媒の存在下に環状エーテルを開環重合反応させてポリエーテルポリオール及び/又はそのエステル誘導体を製造するに当たり、該開環重合反応を、固体酸触媒及びスルホン酸基含有化合物の存在下かつカルボン酸無水物の不存在下に行うことを特徴とするポリエーテルポリオール類の製造方法、に存する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明する。
本発明は、環状エーテルの開環重合反応の際に、固体酸触媒及びスルホン酸基含有化合物を存在させること、かつカルボン酸無水物を存在させないこと、を特徴としている。
【0011】
ここで使用されるスルホン酸基含有化合物は、重合開始剤および重合停止剤として作用し、生成するポリエーテルポリオールの末端にスルホン酸エステルの形で取り込まれる。スルホン酸基含有化合物の使用量は、従来の発煙硫酸を使用する方法(特公昭48−25438号公報、特公昭48−25439号公報、特公昭59−1293号公報)、三酸化クロムやモリブデン酸ナトリウム等の金属化合物の共存下に発煙硫酸を用いてTHFを重合させる方法(特公昭49−28918号公報)に比べて少なくてよく、かつ、その使用量を制御することにより生成するポリエーテルポリオール及び/又はそのエステル誘導体の分子量を調節することができる。また、固体酸触媒とスルホン酸基含有化合物の存在下に環状エーテルを開環重合させる際に、三酸化硫黄を共存させると反応が促進される。
【0012】
以下、各項目についてさらに説明する。
[スルホン酸基含有化合物]
本発明において使用されるスルホン酸基含有化合物は、スルホン酸基を有する有機及び無機の化合物である。該スルホン酸基含有化合物としては、例えばアルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、硫酸モノアルキルエステル、硫酸などが挙げられる。好ましくはメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、及び硫酸が挙げられる。なかでも硫酸は、価格及び入手の容易さの両面から好ましい。上記スルホン酸基含有化合物としては、反応液に可溶なものが好ましく、例えばスルホン酸系カチオン交換樹脂等の反応液中に溶解しないものは、共に用いる固体触媒との分離が困難なため一般には好ましくない。
【0013】
三酸化硫黄を共存させて環状エーテルの開環重合反応を実施する際には、発煙硫酸を使用するのが便利である。発煙硫酸を使用する場合、三酸化硫黄濃度が余りに高い発煙硫酸の使用は、生成するポリエーテルポリオール及び/又はそのエステル誘導体の着色原因となる。従って、通常、三酸化硫黄濃度が60重量%以下、好ましくは40重量%以下の発煙硫酸を使用する。
【0014】
[固体酸触媒]
本発明において使用される固体酸触媒は、特に限定されないが、例えば周期表2〜14族の金属元素を含む酸化物からなる固体酸、酸性ゼオライトからなる固体酸、活性白土や酸性白土からなる固体酸、パーフルオロアルキルスルホン酸をペンダント側鎖として有する樹脂を含む固体酸等が挙げられる。なかでも周期表2〜14族の金属元素を含む酸化物からなる固体酸は、安定な触媒性能を有する触媒を容易に調製し得るので好ましい。各固体酸触媒について以下に説明する。
【0015】
(a)周期表2〜14族の金属元素を含む酸化物からなる固体酸
周期表2〜14族の金属元素を含む酸化物からなる固体酸としては、ケイ素(Si)を含有する複合酸化物が好ましく、Mg、Ca、Sc、Y、希土類元素、Zr、W、Fe、Al及びSnからなる群から選ばれた金属とSiとの複合酸化物がより好ましく、Mg、Zr及びAlからなる群から選ばれた金属とSiとの複合酸化物がさらに好ましい。好適な複合酸化物としては、例えば酸化マグネシウム−シリカ複合酸化物、酸化カルシウム−シリカ複合酸化物、酸化スカンジウム−シリカ複合酸化物、酸化イットリウム−シリカ複合酸化物、希土類金属酸化物−シリカ複合酸化物、酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物、酸化タングステン−シリカ複合酸化物、酸化鉄−シリカ複合酸化物、酸化アルミニウム−シリカ複合酸化物、酸化スズ−シリカ複合酸化物等が挙げられる。これらの中では、触媒の活性や安定性の観点から酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物が最も好ましい。シリカと複合化される金属酸化物の量は、複合化される金属とケイ素との合計モル数に対して金属酸化物の金属が、通常、0.1〜70mol%、好ましくは1〜50mol%、より好ましくは3〜30mol%である。
【0016】
これら複合酸化物の調製は、酸化物触媒調製の常法に従って行うことができる。例えば、触媒成分の金属の化合物を含む水溶液若しくは有機溶媒溶液又はスラリーより調製する方法、一方の成分を水溶液又は有機溶媒溶液とし、他の成分を固体として用いて調製する方法、複数の成分を混合して高温固相反応により調製する方法などがある。通常は、活性に優れた触媒が得やすい点で、触媒成分を含む溶液またはスラリーを調製し、これを乾燥、成形、及び焼成する方法、溶液又はスラリーから固体を析出させ、これを乾燥、成形、及び焼成する方法、溶液又はスラリーを固体に含浸させ、乾燥、及び焼成する方法などが好ましい。乾燥方法としては、蒸発乾燥法、噴霧乾燥法、凍結乾燥法、真空乾燥法等を採用することができる。焼成方法は、焼成に供する乾燥物の性状や量に応じて適宜の方法を選択することができ、大規模には管状炉、回転炉、ベルト炉、流動焼成炉等を用いて行うのが一般的である。また、これらの処理をいくつか組み合わせてもよい。焼成条件は、焼成方法により異なるが、通常、温度は500〜1150℃、好ましくは600〜1000℃である。一般に高温で焼成すると、複合酸化物触媒の活性、及び安定性が向上する。焼成時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜30時間である。また、焼成は、空気のような酸素含有ガス雰囲気中で行う方法が一般的であるが、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気中または真空中で実施してもよい。
【0017】
これら複合酸化物触媒の製造に用いられる金属化合物としては、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、カルボン酸塩、炭酸塩、アセチルアセトン塩、アルコキシド、有機金属化合物、オキソ酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩、酸化物、水酸化物、含水酸化物、酸化物ゲル、酸化物ゾルなどが挙げられる。例えばSiであれば、ケイ酸ナトリウムや水ガラス等のケイ酸塩、四塩化ケイ素等のハロゲン化物、テトラエトキシシラン等のアルコキシド、シリカ、シリカゲル、シリカゾルなどが挙げられ、Mgであれば、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のハロゲン化物、酢酸マグネシウム等のカルボン酸塩、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、マグネシウムジエトキシド等のアルコキシド、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムなどが挙げられ、Caであれば、硝酸カルシウム、塩化カルシウム等のハロゲン化物、酢酸カルシウム等のカルボン酸塩、カルシウムアセチルアセトナート、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウムなどが挙げられ、Scであれば、硝酸スカンジウム、硫酸スカンジウム、塩化スカンジウム等のハロゲン化物、酢酸スカンジウム等のカルボン酸塩、スカンジウムイソプロポキシド等のアルコキシド、酸化スカンジウムなどが挙げられ、Yであれば、硝酸イットリウム、硫酸イットリウム、塩化イットリウム等のハロゲン化物、酢酸イットリウム等のカルボン酸塩、イットリウムアセチルアセトナート、イットリウムイソプロポキシド等のアルコキシド、酸化イットリウムなどが挙げられ、希土類元素であれば、硝酸ランタンや硝酸セリウム等の硝酸塩、硫酸ランタンや硫酸セリウム等の硫酸塩、塩化ランタンや塩化セリウム等の塩化物、酢酸ランタンや酢酸セリウム等のカルボン酸塩、ランタンアセチルアセトナートやセリウムアセチルアセトナート等のアセチルアセトナート塩、炭酸ランタンや炭酸セリウム等の炭酸塩、水酸化ランタンや水酸化セリウム等の水酸化物、酸化ランタンや酸化セリウム等の酸化物などが挙げられ、Zrであれば、硝酸ジルコニル、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニウムや塩化ジルコニル等のハロゲン化物、酢酸ジルコニル等のカルボン酸塩、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムブトキシド等のアルコキシド、ジルコノセンジクロライド、ジルコニア、含水酸化ジルコニウム、ジルコニアゲル、ジルコニアゾルなどが挙げられ、Wであれば、塩化タングステン、パラタングステン酸アンモニウムやメタタングステン酸アンモニウム等のタングステン酸塩、ケイタングステン酸、タングステン酸、酸化タングステン、タングステンヘキサカルボニルなどが挙げられ、Feであれば、硝酸鉄、硫酸鉄、硫酸アンモニウム鉄、塩化鉄等のハロゲン化物、酢酸鉄等のカルボン酸塩、鉄アセチルアセトナート、オキシ水酸化鉄、酸化鉄などが挙げられ、Alであれば、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等のハロゲン化物、酢酸アルミニウム等のカルボン酸塩、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムエトキシド等のアルコキシド、アルミン酸ナトリウム、ギブサイトやベーマイト等のアルミナの水酸化物や水和物、アルミナゾル、アルミナなどが挙げられ、Snであれば、硫酸錫、塩化錫等のハロゲン化物、酢酸錫等のカルボン酸塩、錫酸ナトリウム、酸化錫などが挙げられる。
【0018】
例えば、ZrとSiからなる複合酸化物であれば、市販のシリカ担体に硝酸ジルコニル等のZrを含む溶液を含浸させた後、乾燥、熱分解、中和等の操作を組み合わせることにより、ジルコニウム成分を担体に担持し、焼成することにより得ることができる。
【0019】
(b)酸性ゼオライトからなる固体酸
酸性ゼオライトからなる固体酸としては、単位重量当たりの酸量が多いH型ゼオライトが好ましいが、H型ゼオライトのプロトンの一部がアルカリ土類金属イオンや希土類金属イオンで交換されているものでもよい。ゼオライト構造を有する化合物としてはアルミノシリケート、アルミノホスフェート、シリコアルミノホスフェート等が挙げられるが、酸強度や構造安定性を考慮するとアルミノシリケートが好ましい。具体的な酸性ゼオライトとしては、例えばH型モルデナイト、H型Y−ゼオライト、USY−ゼオライト、H型ベータ、H型ZSM−5が挙げられ、なかでもUSY−ゼオライト、及びH型ベータが好ましい。これらゼオライトのシリカ/アルミナのモル比は通常4/1〜100/1、好ましくは10/1〜100/1、より好ましくは15/1〜90/1である。これら酸性ゼオライトは、粉末で使用することもできるが、シリカやアルミナ等のバインダーを用いて成形したものを使用してもよい。
【0020】
(c)活性白土や酸性白土からなる固体酸
酸性白土とはモンモリロナイトを主とする白色粘土で粘土粒子自身の塩基未飽和により酸性を示すものであり、活性白土とは粘土鉱物を酸処理して吸着能や脱色能を高めたものである。 本発明で使用される活性白土や酸性白土からなる固体酸としては、モンモリロナイト系粘土の酸処理により得られる活性白土、フラー土やフロリダ土といった天然酸性白土が挙げられるが、モンモリロナイト系粘土の酸処理により得られる活性白土が好ましい。これらの活性白土や酸性白土は、粉末で使用することもできるが、シリカやアルミナ等のバインダーの存在下または不在下に成形して使用してもよい。
【0021】
(d)パーフルオロアルキルスルホン酸をペンダント側鎖として有する樹脂を含む固体酸
パーフルオロアルキルスルホン酸をペンダント側鎖として有する樹脂を含む固体酸としては、例えばデュポン社で開発された「ナフィオン」等の弗素系強酸性イオン交換樹脂や、「ナフィオン」等の弗素系強酸性イオン交換樹脂を担持したシリカ成形体が挙げられる。
【0022】
[環状エーテル]
本発明の開環重合反応に供する環状エーテルとしては、例えばテトラヒドロフラン、トリオキサン、テトラオキサン、1,3−ジオキソラン等が挙げられる。本発明は、テトラヒドロフランの重合によるポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造に特に有効である。また本発明においては、上記テトラヒドロフラン等の環状エーテルの単独重合だけでなく、テトラヒドロフラン等の環状エーテルとそれと共重合可能な環状エーテルとを共重合させることもできる。上記テトラヒドロフラン等の環状エーテルと共重合可能な環状エーテルとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、グリシジルイソプロピルエーテル、エピクロロヒドリン等のオキシラン類、オキセタン、3,3−ジメチルオキセタン、3−エチル−3−メトキシエチルオキセタン等のオキセタン類、3−メチルテトラヒドロフラン、3−ブチルテトラヒドロフラン、8−オキサビシクロ[4.3.0]ノナン等のTHF誘導体が挙げられる。
【0023】
[開環重合反応]
本発明においては、開環重合反応によって、環状エーテルからポリエーテルポリオール及び/又はそのエステル誘導体を製造する。本発明の開環重合反応は、液相中、固体酸触媒及びスルホン酸基含有化合物の存在下で、かつカルボン酸無水物の不存在下に行われる。
【0024】
本発明における環状エーテルの開環重合反応は、本質的に水により抑制される特性を有するため、使用する環状エーテルやスルホン酸基含有化合物、固体酸触媒等は水を含まないことが好ましい。これらに水が含まれている場合は、例えば環状エーテル及びスルホン酸基含有化合物であれば、蒸留精製、共沸脱水精製、加熱乾燥、脱水剤による脱水等により、また、固体酸触媒であれば、加熱乾燥、焼成、脱水剤による処理等により、開環重合反応に供する前に水を除去しておくことが好ましい。発煙硫酸を用いる場合のように三酸化硫黄を共存させて環状エーテルの開環重合を実施する際には、三酸化硫黄が反応促進作用をするだけでなく脱水剤としても働いて水を硫酸に転化させるので、少量の水(三酸化硫黄と等モル量以下)の影響であれば緩和することができる。
【0025】
スルホン酸基含有化合物は、原料の環状エーテル1モルに対して通常0.0001〜0.2モル、好ましくは0.001〜0.1モルが用いられる。反応の促進を目的に添加される三酸化硫黄は、原料環状エーテル1モルに対して通常0.1モル以下、好ましくは0.05モル以下が用いられる。スルホン酸基含有化合物及び三酸化硫黄は、反応原料の環状エーテルと混合すると発熱し、場合によっては着色の原因となるので、混合する際には急激な添加を避け、除熱や攪拌を十分に行いながら、着色することのないようにゆっくりと添加することが望ましい。
【0026】
環状エーテルの開環重合反応は、回分方式でも連続方式でも行うことができる。
回分反応の場合には、反応器に原料のテトラヒドロフラン、スルホン酸基含有化合物(三酸化硫黄を共存させる場合にはスルホン酸基含有化合物及び三酸化硫黄)、及び固体酸触媒を導入した後に、攪拌下に反応させればよい。共重合反応を行わせる場合には、共重合可能な環状エーテルを、テトラヒドロフランと共に導入するか、或いは重合反応の進行中に連続的または間欠的に導入すればよい。固体酸触媒は、液相に対して通常0.01〜0.5重量倍、好ましくは0.05〜0.35重量倍になるように用いる。触媒量が少なすぎると重合反応が遅くなり、逆に多すぎると、重合熱の除去が困難となり、また反応系におけるスラリー濃度が高くなって攪拌が困難となり、重合反応終了後の分液にも問題を生じ易くなる。反応時間は特に限定されないが、触媒量、重合物の収率、及び経済性を考慮して、通常0.1〜30時間の範囲、好ましくは0.5〜20時間の範囲から選ばれる。ここで反応時間とは、反応系が反応温度まで上昇した時点から反応が終了して冷却を開始するまでの時間、或いは反応温度下で触媒を除去するまでの時間を指す。
【0027】
連続反応の場合には、固体酸触媒の収容された反応器に、原料のテトラヒドロフラン(共重合反応をさせる場合は、テトラヒドロフラン及びそれと共重合可能な環状エーテル)、及びスルホン酸基含有化合物(三酸化硫黄を共存させる場合には、スルホン酸基含有化合物及び三酸化硫黄)を連続的に導入して反応させ、反応液を連続的に反応器から抜き出せばよい。固体酸触媒は、単位時間当たりの液相供給量に対して、通常0.001〜100重量倍、好ましくは0.01〜10重量倍の範囲から選ばれる。連続反応は、懸濁床方式及び固定床流通方式のいずれでも行うことができる。懸濁床方式の場合には、連続反応中における固体酸触媒の反応器への追加導入や部分抜き出しが可能である。
【0028】
開環重合反応の温度は、通常0〜85℃、好ましくは0〜80℃である。反応圧力は、反応系が液相を保持できるような圧力であればよく、通常は常圧から10MPaの範囲、好ましくは常圧から5MPaの範囲から選択される。
開環重合反応は通常、無溶媒で行うが、必要により溶媒を用いることもできる。溶媒としては、反応基質、生成物の溶解性、及び本反応条件下での安定性を考慮し、通常の有機化学反応に用いられる有機溶媒を使用することができる。例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類などが挙げられ、1種類でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
[重合反応終了後の処理]
本発明の開環重合反応の終了後は、例えば以下の操作によりポリエーテルポリオール及び/又はそのエステル誘導体を得ることができる。
先ず、重合反応で得られた反応液中に固体酸触媒が含まれている場合には、濾過や遠心分離等の固体除去操作で固体酸触媒を除去する。
【0030】
この固体酸触媒を除去した反応液には、末端がスルホン酸エステル構造のポリエーテルポリオール誘導体が含まれており、用途によっては、かかるポリエーテルポリオール誘導体の形のままで、次の反応に供することができる。
両末端にアルコール性水酸基を有するポリエーテルポリオールを取得する場合には、上記の反応液に水を添加して加熱することにより、ポリマー末端のスルホン酸エステル構造を加水分解し、両末端にアルコール性水酸基を有するポリエーテルポリオールに変換した後、未反応の環状エーテルを蒸留分離する。こうして得られたポリエーテルポリオールと水及び酸とを含む液にトルエン、ブタノール等の有機溶媒を添加して、有機層と水層とに分液する。有機層に酸が残存している場合には、水洗処理や水酸化カルシウム等の塩基での中和処理により酸を除去した後、残存する水及び有機溶媒を留去して、ポリエーテルポリオールを得る。
【0031】
水層は通常、廃酸水溶液として処理されるが、従来の発煙硫酸を使用する方法(特公昭48−25438号公報、特公昭48−25439号公報、特公昭59−1293号公報)、過塩素酸塩マグネシウム等の過塩素酸塩の共存下に発煙硫酸を用いてTHFを重合させる方法(たとえば 特公昭52−5080号公報、特開昭50−80399号公報、特公昭49−28918号公報等)に比べて、含有される酸の量が少ないために処理が容易である。
【0032】
上記固体除去操作で回収された固体酸触媒は、付着した有機物を有機溶媒による洗浄処理や加熱焼成処理によって除去することにより、再び重合反応に使用することができる。
また、蒸留分離された環状エーテル類は、回収して再度重合反応に供することができる。
【0033】
【実施例】
次に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、Mn及びMwはそれぞれ次の意味を表す。
【0034】
【表1】
Mn: Gel Permeation Chromatography(GPC)により測定された数平均分子量
Mw: GPCにより測定された重量平均分子量
また、分析条件を以下に示す。
【0035】
【表2】
<GPCの分析条件>
カラム:東ソー社製、TSK−GEL GMHXL−N(7.8mmID×30.0cmL)
溶媒:テトラヒドロフラン
質量較正:ポリマーラボラトリーズ社製、POLYTETRAHYDRO
FURAN CALIBRATION KIT(Mp=547000、283000、99900、67500、35500、15000、6000、2170、1600、1300)
【0036】
【表3】
<H−NMRの分析条件>
装置:BRUKER社製、AVANCE400
溶媒:クロロホルム−d
【0037】
[実施例1]
(a)酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の調製
5.85gの硫酸ジルコニウム・4水和物を9.85gの脱塩水に溶解した水溶液を、シリカ(富士シリシア社製品、キャリアクトQ−15、平均細孔径150Å、粒径約75〜500μm)10.0gに加え、よく振り混ぜて含浸させた(ZrとSiのモル数の和に対してZrが9mol%)。これを90℃の恒温乾燥機に入れて16時間乾燥させた後、乾燥機の温度を140℃まで上昇させて140℃にて4時間乾燥させた。乾燥機から取り出し室温まで放冷した固体を12重量%のアンモニア水100gに室温下にて添加し、1時間攪拌した後に濾過して固体を回収した。回収した固体に100mlの脱塩水を加えて10分間攪拌した後、濾過して固体を回収する洗浄操作を4回繰り返した後、回収固体を塩化カルシウムの入ったデシケーター中にて乾燥した。こうして得られた見かけ上乾燥した固体を、空気流通下に一定の昇温速度で1時間かけて120℃まで昇温し、引き続いて2時間30分かけて800℃まで昇温した。800℃で4時間保持した後、放冷した。
【0038】
(b)テトラヒドロフランの開環重合反応
ガラス製容器に窒素雰囲気下、44.5gのテトラヒドロフランを入れ、攪拌しながら0.869gの20重量%発煙硫酸をゆっくり添加した(テトラヒドロフラン/硫酸/三酸化硫黄(モル比)=100/1.15/0.35)。これに上記の方法により調製した焼成直後の酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物13.4gを加え、予め温度を調節しておいた油浴へ入れ、常圧、60℃で6時間反応を行った。反応終了後、攪拌を止め、反応液の上澄みを触媒が混入しないように0.1g取り、テトラヒドロフラン8.9gで希釈し、水酸化カルシウムを添加して残存する酸を除去した後、濾過してGPC試料とした。
【0039】
この試料のGPC溶出曲線の面積を用いて、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(Mn=1842、 Mw=4115)の0.5重量%テトラヒドロフラン溶液を標準試料としてそのGPCの溶出曲線の面積を基準として重合物の重量を求め、これより下式に従って収率(仕込みのテトラヒドロフラン重量に対する重合物の重量%)を計算した。結果を表−1に示した。
【0040】
【数1】
重合物の重量/g=(重合物の溶出曲線面積/標準試料の溶出曲線面積)×0.005×(8.9+0.1)×((テトラヒドロフラン、スルホン酸基含有化合物及び三酸化硫黄の仕込み重量の和/g)/0.1)
【0041】
【数2】
収率/%=(重合物の重量/g)/(テトラヒドロフランの仕込み重量/g)×100
[比較例1]
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物を添加せずに開環重合反応を行ったこと以外は実施例1と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−1に示した。
【0042】
[比較例2]
ガラス製容器に窒素雰囲気下、0.869gの20重量%発煙硫酸と0.0434gのモリブデン酸ナトリウムを入れて攪拌しながら溶解した後、44.5gのテトラヒドロフランを添加した(テトラヒドロフラン/硫酸/三酸化硫黄/モリブデン酸ナトリウム(モル比)=100/1.15/0.35/0.034)。これを予め温度を調節しておいた油浴へ入れ、常圧、60℃で6時間反応を行った。反応終了後の操作は実施例1と同様の方法で分析を実施した。結果を表−1に示した。
【0043】
[実施例2]
20%発煙硫酸の代わりに95%硫酸0.956gを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−1に示した。
[比較例3]
20%発煙硫酸の代わりに95%硫酸0.956gを用い、酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物を添加せずに開環重合反応を行ったこと以外は実施例1と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−1に示した。
【0044】
【表4】
【0045】
[実施例3]
ガラス製容器に窒素雰囲気下、44.5gのテトラヒドロフランを入れ、攪拌しながら0.869gの20重量%発煙硫酸をゆっくり添加した(テトラヒドロフラン/硫酸/三酸化硫黄(モル比)=100/1.15/0.35)。これに実施例1で調製した焼成直後の酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物6.68gを加え、予め温度を調節しておいた油浴へ入れ、常圧、55℃で6時間反応を行い、実施例1と同様の方法で分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0046】
[実施例4]
(a)酸化アルミニウム−シリカ複合酸化物の調製
12.35gの硝酸アルミニウム・9水和物を23.8gの脱塩水に溶解した水溶液を、シリカ(富士シリシア社製品、キャリアクトQ−15、平均細孔径150Å、粒径約75〜500μm)20.0gに加え、よく振り混ぜて含浸させた(AlとSiのモル数の和に対してAlが9mol%)。これを50℃の恒温乾燥機に入れて16時間乾燥させた。乾燥機から取り出し室温まで放冷した固体を6重量%のアンモニア水100gに室温下にて添加し1時間攪拌した後に濾過して固体を回収した。回収した固体に100mlの脱塩水を加えて10分間攪拌した後、濾過して固体を回収する洗浄操作を4回繰り返した後、回収固体を塩化カルシウムの入ったデシケーター中にて乾燥した。こうして得られた見かけ上乾燥した固体を、空気流通下に一定の昇温速度で1時間かけて120℃まで昇温し、引き続いて2時間30分かけて800℃まで昇温した。800℃で4時間保持した後放冷した。
【0047】
(b)テトラヒドロフランの開環重合反応
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに上記の方法により調製した焼成直後の酸化アルミニウム−シリカ複合酸化物6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0048】
[実施例5]
(a)酸化錫−シリカ複合酸化物の調製
3.71gの塩化第一錫・2水和物を11.9mlのエタノール23.8gに溶解した液を、シリカ(富士シリシア社製品、キャリアクトQ−15、平均細孔径150Å、粒径約75〜500μm)10.0gに加え、よく振り混ぜて含浸させた(SnとSiのモル数の和に対してSnが9mol%)。これを窒素流通下に室温にて乾燥させた後、6重量%のアンモニア水50gに室温下にて添加し1時間攪拌した後に濾過して固体を回収した。回収した固体に50mlの脱塩水を加えて10分間攪拌した後、濾過して固体を回収する洗浄操作を4回繰り返した後、回収固体を塩化カルシウムの入ったデシケーター中にて乾燥した。こうして得られた見かけ上乾燥した固体を、空気流通下に一定の昇温速度で1時間かけて120℃まで昇温し、引き続いて2時間30分かけて800℃まで昇温した。800℃で4時間保持した後放冷した。
【0049】
(b)テトラヒドロフランの開環重合反応
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに上記の方法により調製した焼成直後の酸化錫−シリカ複合酸化物6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0050】
[実施例6]
(a)酸化タングステン−シリカ複合酸化物の調製
7.56gのメタタングステン酸アンモニウム水溶液(日本新金属社製品、酸化タングステン換算でタングステンを50.5重量%含有)を8.15gの脱塩水で希釈した液を、シリカ(富士シリシア社製品、キャリアクトQ−15、平均細孔径150Å、粒径約75〜500μm)10.0gに加え、よく振り混ぜて含浸させた(WとSiのモル数の和に対してWが9mol%)。これを窒素流通下に50℃にて乾燥させた後、空気流通下に一定の昇温速度で1時間かけて120℃まで昇温し、引き続いて2時間30分かけて800℃まで昇温した。800℃で4時間保持した後放冷した。
【0051】
(b)テトラヒドロフランの開環重合反応
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに上記の方法により調製した焼成直後の酸化タングステン−シリカ複合酸化物6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0052】
[実施例7]
(a)酸化イットリウム−シリカ複合酸化物の調製
6.30gの硝酸イットリウム・6水和物を11.9gの脱塩水に溶解した水溶液を、シリカ(富士シリシア社製品、キャリアクトQ−15、平均細孔径150Å、粒径約75〜500μm)10.0gに加え、よく振り混ぜて含浸させた(YとSiのモル数の和に対してYが9mol%)。これを50℃の恒温乾燥機に入れて16時間乾燥させた。乾燥機から取り出し室温まで放冷した固体を6重量%のアンモニア水50gに室温下にて添加し1時間攪拌した後に濾過して固体を回収した。回収した固体に50mlの脱塩水を加えて10分間攪拌した後、濾過して固体を回収する洗浄操作を4回繰り返した後、回収固体を塩化カルシウムの入ったデシケーター中にて乾燥した。こうして得られた見かけ上乾燥した固体を、空気流通下に一定の昇温速度で1時間かけて120℃まで昇温し、引き続いて2時間30分かけて800℃まで昇温した。800℃で4時間保持した後放冷した。
【0053】
(b)テトラヒドロフランの開環重合反応
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに上記の方法により調製した焼成直後の酸化イットリウム−シリカ複合酸化物6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0054】
[実施例8]
(a)酸化ランタン−シリカ複合酸化物の調製
7.13gの硝酸ランタン・6水和物を11.9gの脱塩水に溶解した水溶液を、シリカ(富士シリシア社製品、キャリアクトQ−15、平均細孔径150Å、粒径約75〜500μm)10.0gに加え、よく振り混ぜて含浸させた(LaとSiのモル数の和に対してLaが9mol%)。これを50℃の恒温乾燥機に入れて16時間乾燥させた。乾燥機から取り出し室温まで放冷した固体を6重量%のアンモニア水50gに室温下にて添加し1時間攪拌した後に濾過して固体を回収した。回収した固体に50mlの脱塩水を加えて10分間攪拌した後、濾過して固体を回収する洗浄操作を4回繰り返した後、回収固体を塩化カルシウムの入ったデシケーター中にて乾燥した。こうして得られた見かけ上乾燥した固体を、空気流通下に一定の昇温速度で1時間かけて120℃まで昇温し、引き続いて2時間30分かけて800℃まで昇温した。800℃で4時間保持した後放冷した。
【0055】
(b)テトラヒドロフランの開環重合反応
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに上記の方法により調製した焼成直後の酸化ランタン−シリカ複合酸化物6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0056】
[実施例9]
(a)酸化セリウム−シリカ複合酸化物の調製
7.15gの硝酸セリウム・6水和物を11.9gの脱塩水に溶解した水溶液を、シリカ(富士シリシア社製品、キャリアクトQ−15、平均細孔径150Å、粒径約75〜500μm)10.0gに加え、よく振り混ぜて含浸させた(CeとSiのモル数の和に対してCeが9mol%)。これを50℃の恒温乾燥機に入れて16時間乾燥させた。乾燥機から取り出し室温まで放冷した固体を6重量%のアンモニア水50gに室温下にて添加し1時間攪拌した後に濾過して固体を回収した。回収した固体に50mlの脱塩水を加えて10分間攪拌した後、濾過して固体を回収する洗浄操作を4回繰り返した後、回収固体を塩化カルシウムの入ったデシケーター中にて乾燥した。こうして得られた見かけ上乾燥した固体を、空気流通下に一定の昇温速度で1時間かけて120℃まで昇温し、引き続いて2時間30分かけて800℃まで昇温した。800℃で4時間保持した後放冷した。
【0057】
(b)テトラヒドロフランの開環重合反応
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに上記の方法により調製した焼成直後の酸化セリウム−シリカ複合酸化物6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0058】
[実施例10]
(a)酸化鉄−シリカ複合酸化物の調製
6.65gの硝酸鉄・9水和物を11.9gの脱塩水に溶解した水溶液を、シリカ(富士シリシア社製品、キャリアクトQ−15、平均細孔径150Å、粒径約75〜500μm)10.0gに加え、よく振り混ぜて含浸させた(FeとSiのモル数の和に対してFeが9mol%)。これを50℃の恒温乾燥機に入れて16時間乾燥させた。乾燥機から取り出し室温まで放冷した固体を6重量%のアンモニア水50gに室温下にて添加し1時間攪拌した後に濾過して固体を回収した。回収した固体に50mlの脱塩水を加えて10分間攪拌した後、濾過して固体を回収する洗浄操作を4回繰り返した後、回収固体を塩化カルシウムの入ったデシケーター中にて乾燥した。こうして得られた見かけ上乾燥した固体を、空気流通下に一定の昇温速度で1時間かけて120℃まで昇温し、引き続いて2時間30分かけて800℃まで昇温した。800℃で4時間保持した後放冷した。
【0059】
(b)テトラヒドロフランの開環重合反応
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに上記の方法により調製した焼成直後の酸化鉄−シリカ複合酸化物6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0060】
[実施例11]
(a)酸化カルシウム−シリカ複合酸化物の調製
3.89gの硝酸カルシウム・4水和物を11.9gの脱塩水に溶解した水溶液を、シリカ(富士シリシア社製品、キャリアクトQ−15、平均細孔径150Å、粒径約75〜500μm)10.0gに加え、よく振り混ぜて含浸させた(CaとSiのモル数の和に対してCaが9mol%)。これを50℃の恒温乾燥機に入れて16時間乾燥させた。こうして得られた固体を、空気流通下に一定の昇温速度で1時間かけて120℃まで昇温し、引き続いて2時間30分かけて800℃まで昇温した。800℃で4時間保持した後放冷した。
【0061】
(b)テトラヒドロフランの開環重合反応
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに上記の方法により調製した焼成直後の酸化カルシウム−シリカ複合酸化物6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0062】
[実施例12]
(a)酸化マグネシウム−シリカ複合酸化物の調製
56.36gの酢酸マグネシウム・4水和物を56.36gの脱塩水に溶解した水溶液を、シリカ(富士シリシア社製品、キャリアクトQ−15、平均細孔径150Å、粒径約75〜500μm)50.0gに加え、よく振り混ぜて含浸させた(MgとSiのモル数の和に対してMgが24mol%)。これを100℃の恒温乾燥機に入れて16時間乾燥させた。こうして得られた固体を、窒素流通下に一定の昇温速度で2時間かけて120℃まで昇温し、引き続いて2時間かけて550℃まで昇温した。550℃において流通させている窒素を発熱に注意しながら少しずつ空気に置換した後、空気流通下に1時間かけて800℃まで昇温した。800℃で4時間保持した後放冷した。
【0063】
(b)テトラヒドロフランの開環重合反応
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに上記の方法により調製した焼成直後の酸化マグネシウム−シリカ複合酸化物6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0064】
[実施例13]
H−USYゼオライト(Zeolyst社製品、CBV760、シリカ/アルミナ=55)を空気流通下に550℃にて2時間焼成した後放冷した。この焼成直後のゼオライト6.68gを酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0065】
[実施例14]
アンモニウム型ベータゼオライト(東ソー社製品、HSZ930NHA、シリカ/アルミナ=55)を空気流通下に550℃にて10時間焼成してH型に変換したものを更に800℃にて2時間焼成した後放冷した。この焼成直後のゼオライト6.68gを酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0066】
[実施例15]
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに活性白土(ジュート・ヘミー社製品、トンシルオプティマムFF)を200℃にて乾燥したもの6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0067】
[実施例16]
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに酸処理されたモンモリロナイトK10(アルドリッチケミカル社製品)を200℃にて乾燥したもの6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0068】
[実施例17]
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに弗素系強酸性イオン交換樹脂である「ナフィオン」をシリカ担体に担時した「ナフィオン」担持シリカ成形体(エヌ・イーケムキャット社製品、ナフィオンSAC−13)を120℃にて乾燥したもの6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0069】
【表5】
【0070】
[実施例18]
ガラス製容器に窒素雰囲気下、44.5gのテトラヒドロフランを入れ、攪拌しながら0.869gの20重量%発煙硫酸をゆっくり添加した(テトラヒドロフラン/硫酸/三酸化硫黄(モル比)=100/1.15/0.35)。これに実施例1で調製した焼成直後の酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物6.68gを加え、予め温度を調節しておいた油浴へ入れ、常圧、60℃で10時間反応を行った。反応液から複合酸化物を濾過により分離し、付着する重合物を回収するために約50mlのテトラヒドロフランで複合酸化物を洗浄した。生成した重合物の末端の硫酸エステルを水酸基に変換するため、濾液と洗浄液をあわせたものに脱塩水50mlを加えて緩やかに3時間還流加熱して加水分解を行った。未反応のTHFを蒸留により分離した後、水層の上に浮いたオイル状の重合物を回収するために20mlのトルエンで3回抽出した。得られたトルエン溶液に残存する酸成分を除去するために0.26gの水酸化カルシウムを添加して室温にて2時間攪拌した後に固体成分を濾別した。濾液のトルエンを留去した後、真空下に60℃で処理して揮発成分を除去し、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを得た。取得収量6.19g、収率14%。得られた重合物をGPCにて分析したところ、Mw3,261、Mn1,925、Mw/Mn1.69であった。
【0071】
[実施例19]
ガラス製容器に1.347gのパラトルエンスルホン酸・1水和物を入れ、窒素流通下に120℃にて1時間加熱して脱水処理を行った。ガラス製容器を室温まで放冷し、44.5gのテトラヒドロフランを入れ、窒素雰囲気下で攪拌しながらパラトルエンスルホン酸を溶解した後、実施例1で調製した焼成直後の酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物6.68gを加え、予め温度を調節しておいた油浴へ入れ、常圧、55℃で6時間反応を行った。反応液から複合酸化物を濾過により分離し、付着する重合物を回収するために約50mlのテトラヒドロフランで複合酸化物を洗浄した。生成した重合物の末端のパラトルエンスルホン酸エステルを水酸基に変換するため、濾液と洗浄液をあわせたものに脱塩水50mlを加えて緩やかに3時間還流加熱して加水分解を行った。未反応のTHFを蒸留により分離した後、水層の上に浮いたオイル状の重合物を回収するために20mlのトルエンで3回抽出した。得られたトルエン溶液に残存する酸成分を除去するために0.26gの水酸化カルシウムを添加して室温にて2時間攪拌した後に固体成分を濾別した。濾液のトルエンを留去した後、真空下に60℃で処理して揮発成分を除去し、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを得た。取得収量6.87g、収率15%。得られた重合物をGPCにて分析したところ、Mw8,626、Mn4,078、Mw/Mn2.12であった。
【0072】
[実施例20]
ガラス製容器に窒素雰囲気下、534gのテトラヒドロフランを入れ、攪拌しながら10.43gの20重量%発煙硫酸をゆっくり添加した(テトラヒドロフラン/硫酸/三酸化硫黄(モル比)=100/1.15/0.35)。これに実施例12で調製した焼成直後の酸化マグネシウム−シリカ複合酸化物80.1gを加え、予め温度を調節しておいた油浴へ入れ、常圧、55℃で8時間反応を行った。反応液から複合酸化物を濾過により分離し、付着する重合物を回収するために約300mlのテトラヒドロフランで複合酸化物を洗浄した。生成した重合物の末端の硫酸エステルを水酸基に変換するため、濾液と洗浄液をあわせたものに脱塩水215mlを加えて緩やかに3時間還流加熱して加水分解を行った。未反応のTHFを蒸留により分離した後、水層の上に浮いたオイル状の重合物を回収するために150mlのトルエンで3回抽出した。得られたトルエン溶液に残存する酸成分を除去するために8.23gの水酸化カルシウムを添加して室温にて2時間攪拌した後に固体成分を濾別した。濾液のトルエンを留去した後、真空下に60℃で処理して揮発成分を除去し、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを得た。取得収量112.1g、収率21%。得られ重合物をGPCにて分析したところ、Mw11,287、Mn5,419、Mw/Mn2.08であった。
【0073】
[実施例21]
ガラス製容器に窒素雰囲気下、26.7gのテトラヒドロフランおよび2.57gの3−エチル−3−メトキシメチルオキセタンを入れ、攪拌しながら0.509gの20重量%発煙硫酸をゆっくり添加した(テトラヒドロフラン/3−エチル−3−メトキシメチルオキセタン/硫酸/三酸化硫黄(モル比)=100/5.4/1.12/0.34)。これに活性白土(水沢化学社製品 ガレオンアースNS)を空気流通下に800℃にて4時間焼成したものを10.8g加え、予め温度を調節しておいた油浴へ入れ、常圧、44℃で8時間反応を行った。反応液から複合酸化物を濾過により分離し、付着する重合物を回収するために約30mlのテトラヒドロフランで複合酸化物を洗浄した。生成した重合物の末端の硫酸エステルを水酸基に変換するため、濾液と洗浄液をあわせたものに脱塩水30mlを加えて緩やかに3時間還流加熱して加水分解を行った。未反応のTHFを蒸留により分離した後、水層の上に浮いたオイル状の重合物を回収するために40mlのトルエンで3回抽出した。得られたトルエン溶液に残存する酸成分を除去するために0.40gの水酸化カルシウムを添加して室温にて2時間攪拌した後に固体成分を濾別した。濾液のトルエンを留去した後、真空下に60℃で処理して揮発成分を除去し、テトラヒドロフランと3−エチル−3−メトキシメチルオキセタンの共重合ポリエーテルグリコールを得た。取得収量5.8g、収率20%(仕込みの環状エーテル重量をベースに算出)。得られた重合物をGPCにて分析したところ、Mw5,098、Mn2,112、Mw/Mn2.41であった。また、得られた重合物のH−NMRスペクトルより、テトラヒドロフランユニットの酸素に隣接しないメチレン基のピークと3−エチル−3−メトキシメチルオキセタンユニットのメチル基のピークから、ポリエーテルグリコール中のテトラヒドロフランユニットと3−エチル−3−メトキシメチルオキセタンユニットのモル組成比を計算したところ、16.4mol%の3−エチル−3−メトキシメチルオキセタンユニットを含んでいた。
【0074】
【発明の効果】
本発明により、高い反応速度で重合反応が進行し、触媒系の制御により生成するポリマーの分子量を調節することができ、かつ、廃酸量が少なく、加アルコール分解が不要であるポリエーテルポリオール類の製造方法が提供される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエーテルポリオール類の製造方法に関する。詳しくは本発明は、環状エーテルを開環重合してポリエーテルポリオール及び/又はそのエステル誘導体を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエーテルポリオールは、弾性繊維や熱可塑性エラストマーなどを構成するポリマーのソフトセグメントの原料として有用なポリマーである。中でもテトラヒドロフラン(THF)の重合により合成されるポリテトラメチレンエーテルグリコールは、伸縮性、弾性等の面で優れており、注目されている。
【0003】
ポリテトラメチレンエーテルグリコールは、THFの開環重合反応によって製造することができる。例えば、(1)フルオロ硫酸を触媒としてTHFを重合させた後に温水で加水分解する方法(特公昭49−15074号公報、特公平6−15609号公報)、(2)ヘテロポリ酸を用いてTHFを重合させる方法(特公昭63−30931号公報)、(3)過塩素酸やHF・BF3等の均一系酸触媒を用いて無水酢酸を分子量制御のために共存させてTHFを重合させた後に加水分解する方法(特公昭35−13940号公報、特開昭50−126799号公報)、(4)固体酸触媒を用いて無水酢酸を分子量制御のために共存させてTHFを重合させた後に加アルコール分解する方法(特公昭61−11969号公報、特公昭62−19452号公報、特開平10−158386号公報)等が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記(1)の方法においては、用いたフルオロ硫酸が重合後の加水分解の際に硫酸と弗化水素とに加水分解されるために再利用できず、多量の廃酸の処理が必要となるばかりでなく、有毒で腐食性の強い弗化水素を取り扱う必要が生じる。上記(2)の方法においては、一段で末端水酸基を有するポリテトラメチレンエーテルグリコールが得られるが、触媒であるヘテロポリ酸が溶出してしまうため、特別な回収方法が必要となる(特開昭61−118420号公報、特表平10−507217号公報)。上記(3)の方法は、無機酸及び有機酸の混合物が廃酸として大量に生成するため、廃水処理の負荷が多大となる。また、上記(4)の方法は、重合触媒はリサイクル可能であるが、加アルコール分解が必須であり、コスト面での負荷が大きい。
【0005】
他の方法として、安価な発煙硫酸を触媒に用いたTHFの重合方法(特公昭48−25438号公報)も報告されているが、数平均分子量が1000前後のポリマーしか得ることができないという欠点を有するだけでなく、THFに対する発煙硫酸の使用量が多いために大量の廃酸の処理が必要となる。そのためポリマーの数平均分子量を増大させる方法として、過塩素酸やトリフルオロメタンスルホン酸等の酸の共存下に発煙硫酸を用いてTHFを重合させる方法(特公昭48−25439号公報、特公昭59−1293号公報)、過塩素酸マグネシウム等の過塩素酸塩の共存下に発煙硫酸を用いてTHFを重合させる方法(特公昭52−5080号公報)、塩化第二銅等の金属塩化物の共存下に発煙硫酸を用いてTHFを重合させる方法(特開昭50−80399号公報)、三酸化クロムやモリブデン酸ナトリウム等の金属化合物の共存下に発煙硫酸を用いてTHFを重合させる方法(特公昭49−28918号公報)等が報告されているが、いずれの方法もポリマーの数平均分子量を増大させる効果は充分でなく、またTHFに対する発煙硫酸の使用量が多いために大量の廃酸の処理が必要であるという問題は解決されていない(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−158386号公報
【特許文献2】
特公昭49−28918号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、廃酸量が少なく、加アルコール分解が不要であり、かつ分子量の調節が容易であるポリエーテルポリオール類の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来技術の状況に鑑み鋭意検討を重ねた結果、テトラヒドロフラン等の環状エーテルを重合させる際に、特定の触媒系を用いると、工業的に有意な高い反応速度で重合反応が進行すること、また触媒系の制御により生成するポリマーの分子量を調節できることを見出し、この知見に基づいて本発明に到達した。
【0009】
即ち本発明の要旨は、液相中、触媒の存在下に環状エーテルを開環重合反応させてポリエーテルポリオール及び/又はそのエステル誘導体を製造するに当たり、該開環重合反応を、固体酸触媒及びスルホン酸基含有化合物の存在下かつカルボン酸無水物の不存在下に行うことを特徴とするポリエーテルポリオール類の製造方法、に存する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明する。
本発明は、環状エーテルの開環重合反応の際に、固体酸触媒及びスルホン酸基含有化合物を存在させること、かつカルボン酸無水物を存在させないこと、を特徴としている。
【0011】
ここで使用されるスルホン酸基含有化合物は、重合開始剤および重合停止剤として作用し、生成するポリエーテルポリオールの末端にスルホン酸エステルの形で取り込まれる。スルホン酸基含有化合物の使用量は、従来の発煙硫酸を使用する方法(特公昭48−25438号公報、特公昭48−25439号公報、特公昭59−1293号公報)、三酸化クロムやモリブデン酸ナトリウム等の金属化合物の共存下に発煙硫酸を用いてTHFを重合させる方法(特公昭49−28918号公報)に比べて少なくてよく、かつ、その使用量を制御することにより生成するポリエーテルポリオール及び/又はそのエステル誘導体の分子量を調節することができる。また、固体酸触媒とスルホン酸基含有化合物の存在下に環状エーテルを開環重合させる際に、三酸化硫黄を共存させると反応が促進される。
【0012】
以下、各項目についてさらに説明する。
[スルホン酸基含有化合物]
本発明において使用されるスルホン酸基含有化合物は、スルホン酸基を有する有機及び無機の化合物である。該スルホン酸基含有化合物としては、例えばアルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、硫酸モノアルキルエステル、硫酸などが挙げられる。好ましくはメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、及び硫酸が挙げられる。なかでも硫酸は、価格及び入手の容易さの両面から好ましい。上記スルホン酸基含有化合物としては、反応液に可溶なものが好ましく、例えばスルホン酸系カチオン交換樹脂等の反応液中に溶解しないものは、共に用いる固体触媒との分離が困難なため一般には好ましくない。
【0013】
三酸化硫黄を共存させて環状エーテルの開環重合反応を実施する際には、発煙硫酸を使用するのが便利である。発煙硫酸を使用する場合、三酸化硫黄濃度が余りに高い発煙硫酸の使用は、生成するポリエーテルポリオール及び/又はそのエステル誘導体の着色原因となる。従って、通常、三酸化硫黄濃度が60重量%以下、好ましくは40重量%以下の発煙硫酸を使用する。
【0014】
[固体酸触媒]
本発明において使用される固体酸触媒は、特に限定されないが、例えば周期表2〜14族の金属元素を含む酸化物からなる固体酸、酸性ゼオライトからなる固体酸、活性白土や酸性白土からなる固体酸、パーフルオロアルキルスルホン酸をペンダント側鎖として有する樹脂を含む固体酸等が挙げられる。なかでも周期表2〜14族の金属元素を含む酸化物からなる固体酸は、安定な触媒性能を有する触媒を容易に調製し得るので好ましい。各固体酸触媒について以下に説明する。
【0015】
(a)周期表2〜14族の金属元素を含む酸化物からなる固体酸
周期表2〜14族の金属元素を含む酸化物からなる固体酸としては、ケイ素(Si)を含有する複合酸化物が好ましく、Mg、Ca、Sc、Y、希土類元素、Zr、W、Fe、Al及びSnからなる群から選ばれた金属とSiとの複合酸化物がより好ましく、Mg、Zr及びAlからなる群から選ばれた金属とSiとの複合酸化物がさらに好ましい。好適な複合酸化物としては、例えば酸化マグネシウム−シリカ複合酸化物、酸化カルシウム−シリカ複合酸化物、酸化スカンジウム−シリカ複合酸化物、酸化イットリウム−シリカ複合酸化物、希土類金属酸化物−シリカ複合酸化物、酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物、酸化タングステン−シリカ複合酸化物、酸化鉄−シリカ複合酸化物、酸化アルミニウム−シリカ複合酸化物、酸化スズ−シリカ複合酸化物等が挙げられる。これらの中では、触媒の活性や安定性の観点から酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物が最も好ましい。シリカと複合化される金属酸化物の量は、複合化される金属とケイ素との合計モル数に対して金属酸化物の金属が、通常、0.1〜70mol%、好ましくは1〜50mol%、より好ましくは3〜30mol%である。
【0016】
これら複合酸化物の調製は、酸化物触媒調製の常法に従って行うことができる。例えば、触媒成分の金属の化合物を含む水溶液若しくは有機溶媒溶液又はスラリーより調製する方法、一方の成分を水溶液又は有機溶媒溶液とし、他の成分を固体として用いて調製する方法、複数の成分を混合して高温固相反応により調製する方法などがある。通常は、活性に優れた触媒が得やすい点で、触媒成分を含む溶液またはスラリーを調製し、これを乾燥、成形、及び焼成する方法、溶液又はスラリーから固体を析出させ、これを乾燥、成形、及び焼成する方法、溶液又はスラリーを固体に含浸させ、乾燥、及び焼成する方法などが好ましい。乾燥方法としては、蒸発乾燥法、噴霧乾燥法、凍結乾燥法、真空乾燥法等を採用することができる。焼成方法は、焼成に供する乾燥物の性状や量に応じて適宜の方法を選択することができ、大規模には管状炉、回転炉、ベルト炉、流動焼成炉等を用いて行うのが一般的である。また、これらの処理をいくつか組み合わせてもよい。焼成条件は、焼成方法により異なるが、通常、温度は500〜1150℃、好ましくは600〜1000℃である。一般に高温で焼成すると、複合酸化物触媒の活性、及び安定性が向上する。焼成時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜30時間である。また、焼成は、空気のような酸素含有ガス雰囲気中で行う方法が一般的であるが、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気中または真空中で実施してもよい。
【0017】
これら複合酸化物触媒の製造に用いられる金属化合物としては、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、カルボン酸塩、炭酸塩、アセチルアセトン塩、アルコキシド、有機金属化合物、オキソ酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩、酸化物、水酸化物、含水酸化物、酸化物ゲル、酸化物ゾルなどが挙げられる。例えばSiであれば、ケイ酸ナトリウムや水ガラス等のケイ酸塩、四塩化ケイ素等のハロゲン化物、テトラエトキシシラン等のアルコキシド、シリカ、シリカゲル、シリカゾルなどが挙げられ、Mgであれば、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のハロゲン化物、酢酸マグネシウム等のカルボン酸塩、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、マグネシウムジエトキシド等のアルコキシド、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムなどが挙げられ、Caであれば、硝酸カルシウム、塩化カルシウム等のハロゲン化物、酢酸カルシウム等のカルボン酸塩、カルシウムアセチルアセトナート、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウムなどが挙げられ、Scであれば、硝酸スカンジウム、硫酸スカンジウム、塩化スカンジウム等のハロゲン化物、酢酸スカンジウム等のカルボン酸塩、スカンジウムイソプロポキシド等のアルコキシド、酸化スカンジウムなどが挙げられ、Yであれば、硝酸イットリウム、硫酸イットリウム、塩化イットリウム等のハロゲン化物、酢酸イットリウム等のカルボン酸塩、イットリウムアセチルアセトナート、イットリウムイソプロポキシド等のアルコキシド、酸化イットリウムなどが挙げられ、希土類元素であれば、硝酸ランタンや硝酸セリウム等の硝酸塩、硫酸ランタンや硫酸セリウム等の硫酸塩、塩化ランタンや塩化セリウム等の塩化物、酢酸ランタンや酢酸セリウム等のカルボン酸塩、ランタンアセチルアセトナートやセリウムアセチルアセトナート等のアセチルアセトナート塩、炭酸ランタンや炭酸セリウム等の炭酸塩、水酸化ランタンや水酸化セリウム等の水酸化物、酸化ランタンや酸化セリウム等の酸化物などが挙げられ、Zrであれば、硝酸ジルコニル、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニウムや塩化ジルコニル等のハロゲン化物、酢酸ジルコニル等のカルボン酸塩、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムブトキシド等のアルコキシド、ジルコノセンジクロライド、ジルコニア、含水酸化ジルコニウム、ジルコニアゲル、ジルコニアゾルなどが挙げられ、Wであれば、塩化タングステン、パラタングステン酸アンモニウムやメタタングステン酸アンモニウム等のタングステン酸塩、ケイタングステン酸、タングステン酸、酸化タングステン、タングステンヘキサカルボニルなどが挙げられ、Feであれば、硝酸鉄、硫酸鉄、硫酸アンモニウム鉄、塩化鉄等のハロゲン化物、酢酸鉄等のカルボン酸塩、鉄アセチルアセトナート、オキシ水酸化鉄、酸化鉄などが挙げられ、Alであれば、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等のハロゲン化物、酢酸アルミニウム等のカルボン酸塩、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムエトキシド等のアルコキシド、アルミン酸ナトリウム、ギブサイトやベーマイト等のアルミナの水酸化物や水和物、アルミナゾル、アルミナなどが挙げられ、Snであれば、硫酸錫、塩化錫等のハロゲン化物、酢酸錫等のカルボン酸塩、錫酸ナトリウム、酸化錫などが挙げられる。
【0018】
例えば、ZrとSiからなる複合酸化物であれば、市販のシリカ担体に硝酸ジルコニル等のZrを含む溶液を含浸させた後、乾燥、熱分解、中和等の操作を組み合わせることにより、ジルコニウム成分を担体に担持し、焼成することにより得ることができる。
【0019】
(b)酸性ゼオライトからなる固体酸
酸性ゼオライトからなる固体酸としては、単位重量当たりの酸量が多いH型ゼオライトが好ましいが、H型ゼオライトのプロトンの一部がアルカリ土類金属イオンや希土類金属イオンで交換されているものでもよい。ゼオライト構造を有する化合物としてはアルミノシリケート、アルミノホスフェート、シリコアルミノホスフェート等が挙げられるが、酸強度や構造安定性を考慮するとアルミノシリケートが好ましい。具体的な酸性ゼオライトとしては、例えばH型モルデナイト、H型Y−ゼオライト、USY−ゼオライト、H型ベータ、H型ZSM−5が挙げられ、なかでもUSY−ゼオライト、及びH型ベータが好ましい。これらゼオライトのシリカ/アルミナのモル比は通常4/1〜100/1、好ましくは10/1〜100/1、より好ましくは15/1〜90/1である。これら酸性ゼオライトは、粉末で使用することもできるが、シリカやアルミナ等のバインダーを用いて成形したものを使用してもよい。
【0020】
(c)活性白土や酸性白土からなる固体酸
酸性白土とはモンモリロナイトを主とする白色粘土で粘土粒子自身の塩基未飽和により酸性を示すものであり、活性白土とは粘土鉱物を酸処理して吸着能や脱色能を高めたものである。 本発明で使用される活性白土や酸性白土からなる固体酸としては、モンモリロナイト系粘土の酸処理により得られる活性白土、フラー土やフロリダ土といった天然酸性白土が挙げられるが、モンモリロナイト系粘土の酸処理により得られる活性白土が好ましい。これらの活性白土や酸性白土は、粉末で使用することもできるが、シリカやアルミナ等のバインダーの存在下または不在下に成形して使用してもよい。
【0021】
(d)パーフルオロアルキルスルホン酸をペンダント側鎖として有する樹脂を含む固体酸
パーフルオロアルキルスルホン酸をペンダント側鎖として有する樹脂を含む固体酸としては、例えばデュポン社で開発された「ナフィオン」等の弗素系強酸性イオン交換樹脂や、「ナフィオン」等の弗素系強酸性イオン交換樹脂を担持したシリカ成形体が挙げられる。
【0022】
[環状エーテル]
本発明の開環重合反応に供する環状エーテルとしては、例えばテトラヒドロフラン、トリオキサン、テトラオキサン、1,3−ジオキソラン等が挙げられる。本発明は、テトラヒドロフランの重合によるポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造に特に有効である。また本発明においては、上記テトラヒドロフラン等の環状エーテルの単独重合だけでなく、テトラヒドロフラン等の環状エーテルとそれと共重合可能な環状エーテルとを共重合させることもできる。上記テトラヒドロフラン等の環状エーテルと共重合可能な環状エーテルとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、グリシジルイソプロピルエーテル、エピクロロヒドリン等のオキシラン類、オキセタン、3,3−ジメチルオキセタン、3−エチル−3−メトキシエチルオキセタン等のオキセタン類、3−メチルテトラヒドロフラン、3−ブチルテトラヒドロフラン、8−オキサビシクロ[4.3.0]ノナン等のTHF誘導体が挙げられる。
【0023】
[開環重合反応]
本発明においては、開環重合反応によって、環状エーテルからポリエーテルポリオール及び/又はそのエステル誘導体を製造する。本発明の開環重合反応は、液相中、固体酸触媒及びスルホン酸基含有化合物の存在下で、かつカルボン酸無水物の不存在下に行われる。
【0024】
本発明における環状エーテルの開環重合反応は、本質的に水により抑制される特性を有するため、使用する環状エーテルやスルホン酸基含有化合物、固体酸触媒等は水を含まないことが好ましい。これらに水が含まれている場合は、例えば環状エーテル及びスルホン酸基含有化合物であれば、蒸留精製、共沸脱水精製、加熱乾燥、脱水剤による脱水等により、また、固体酸触媒であれば、加熱乾燥、焼成、脱水剤による処理等により、開環重合反応に供する前に水を除去しておくことが好ましい。発煙硫酸を用いる場合のように三酸化硫黄を共存させて環状エーテルの開環重合を実施する際には、三酸化硫黄が反応促進作用をするだけでなく脱水剤としても働いて水を硫酸に転化させるので、少量の水(三酸化硫黄と等モル量以下)の影響であれば緩和することができる。
【0025】
スルホン酸基含有化合物は、原料の環状エーテル1モルに対して通常0.0001〜0.2モル、好ましくは0.001〜0.1モルが用いられる。反応の促進を目的に添加される三酸化硫黄は、原料環状エーテル1モルに対して通常0.1モル以下、好ましくは0.05モル以下が用いられる。スルホン酸基含有化合物及び三酸化硫黄は、反応原料の環状エーテルと混合すると発熱し、場合によっては着色の原因となるので、混合する際には急激な添加を避け、除熱や攪拌を十分に行いながら、着色することのないようにゆっくりと添加することが望ましい。
【0026】
環状エーテルの開環重合反応は、回分方式でも連続方式でも行うことができる。
回分反応の場合には、反応器に原料のテトラヒドロフラン、スルホン酸基含有化合物(三酸化硫黄を共存させる場合にはスルホン酸基含有化合物及び三酸化硫黄)、及び固体酸触媒を導入した後に、攪拌下に反応させればよい。共重合反応を行わせる場合には、共重合可能な環状エーテルを、テトラヒドロフランと共に導入するか、或いは重合反応の進行中に連続的または間欠的に導入すればよい。固体酸触媒は、液相に対して通常0.01〜0.5重量倍、好ましくは0.05〜0.35重量倍になるように用いる。触媒量が少なすぎると重合反応が遅くなり、逆に多すぎると、重合熱の除去が困難となり、また反応系におけるスラリー濃度が高くなって攪拌が困難となり、重合反応終了後の分液にも問題を生じ易くなる。反応時間は特に限定されないが、触媒量、重合物の収率、及び経済性を考慮して、通常0.1〜30時間の範囲、好ましくは0.5〜20時間の範囲から選ばれる。ここで反応時間とは、反応系が反応温度まで上昇した時点から反応が終了して冷却を開始するまでの時間、或いは反応温度下で触媒を除去するまでの時間を指す。
【0027】
連続反応の場合には、固体酸触媒の収容された反応器に、原料のテトラヒドロフラン(共重合反応をさせる場合は、テトラヒドロフラン及びそれと共重合可能な環状エーテル)、及びスルホン酸基含有化合物(三酸化硫黄を共存させる場合には、スルホン酸基含有化合物及び三酸化硫黄)を連続的に導入して反応させ、反応液を連続的に反応器から抜き出せばよい。固体酸触媒は、単位時間当たりの液相供給量に対して、通常0.001〜100重量倍、好ましくは0.01〜10重量倍の範囲から選ばれる。連続反応は、懸濁床方式及び固定床流通方式のいずれでも行うことができる。懸濁床方式の場合には、連続反応中における固体酸触媒の反応器への追加導入や部分抜き出しが可能である。
【0028】
開環重合反応の温度は、通常0〜85℃、好ましくは0〜80℃である。反応圧力は、反応系が液相を保持できるような圧力であればよく、通常は常圧から10MPaの範囲、好ましくは常圧から5MPaの範囲から選択される。
開環重合反応は通常、無溶媒で行うが、必要により溶媒を用いることもできる。溶媒としては、反応基質、生成物の溶解性、及び本反応条件下での安定性を考慮し、通常の有機化学反応に用いられる有機溶媒を使用することができる。例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類などが挙げられ、1種類でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
[重合反応終了後の処理]
本発明の開環重合反応の終了後は、例えば以下の操作によりポリエーテルポリオール及び/又はそのエステル誘導体を得ることができる。
先ず、重合反応で得られた反応液中に固体酸触媒が含まれている場合には、濾過や遠心分離等の固体除去操作で固体酸触媒を除去する。
【0030】
この固体酸触媒を除去した反応液には、末端がスルホン酸エステル構造のポリエーテルポリオール誘導体が含まれており、用途によっては、かかるポリエーテルポリオール誘導体の形のままで、次の反応に供することができる。
両末端にアルコール性水酸基を有するポリエーテルポリオールを取得する場合には、上記の反応液に水を添加して加熱することにより、ポリマー末端のスルホン酸エステル構造を加水分解し、両末端にアルコール性水酸基を有するポリエーテルポリオールに変換した後、未反応の環状エーテルを蒸留分離する。こうして得られたポリエーテルポリオールと水及び酸とを含む液にトルエン、ブタノール等の有機溶媒を添加して、有機層と水層とに分液する。有機層に酸が残存している場合には、水洗処理や水酸化カルシウム等の塩基での中和処理により酸を除去した後、残存する水及び有機溶媒を留去して、ポリエーテルポリオールを得る。
【0031】
水層は通常、廃酸水溶液として処理されるが、従来の発煙硫酸を使用する方法(特公昭48−25438号公報、特公昭48−25439号公報、特公昭59−1293号公報)、過塩素酸塩マグネシウム等の過塩素酸塩の共存下に発煙硫酸を用いてTHFを重合させる方法(たとえば 特公昭52−5080号公報、特開昭50−80399号公報、特公昭49−28918号公報等)に比べて、含有される酸の量が少ないために処理が容易である。
【0032】
上記固体除去操作で回収された固体酸触媒は、付着した有機物を有機溶媒による洗浄処理や加熱焼成処理によって除去することにより、再び重合反応に使用することができる。
また、蒸留分離された環状エーテル類は、回収して再度重合反応に供することができる。
【0033】
【実施例】
次に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、Mn及びMwはそれぞれ次の意味を表す。
【0034】
【表1】
Mn: Gel Permeation Chromatography(GPC)により測定された数平均分子量
Mw: GPCにより測定された重量平均分子量
また、分析条件を以下に示す。
【0035】
【表2】
<GPCの分析条件>
カラム:東ソー社製、TSK−GEL GMHXL−N(7.8mmID×30.0cmL)
溶媒:テトラヒドロフラン
質量較正:ポリマーラボラトリーズ社製、POLYTETRAHYDRO
FURAN CALIBRATION KIT(Mp=547000、283000、99900、67500、35500、15000、6000、2170、1600、1300)
【0036】
【表3】
<H−NMRの分析条件>
装置:BRUKER社製、AVANCE400
溶媒:クロロホルム−d
【0037】
[実施例1]
(a)酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の調製
5.85gの硫酸ジルコニウム・4水和物を9.85gの脱塩水に溶解した水溶液を、シリカ(富士シリシア社製品、キャリアクトQ−15、平均細孔径150Å、粒径約75〜500μm)10.0gに加え、よく振り混ぜて含浸させた(ZrとSiのモル数の和に対してZrが9mol%)。これを90℃の恒温乾燥機に入れて16時間乾燥させた後、乾燥機の温度を140℃まで上昇させて140℃にて4時間乾燥させた。乾燥機から取り出し室温まで放冷した固体を12重量%のアンモニア水100gに室温下にて添加し、1時間攪拌した後に濾過して固体を回収した。回収した固体に100mlの脱塩水を加えて10分間攪拌した後、濾過して固体を回収する洗浄操作を4回繰り返した後、回収固体を塩化カルシウムの入ったデシケーター中にて乾燥した。こうして得られた見かけ上乾燥した固体を、空気流通下に一定の昇温速度で1時間かけて120℃まで昇温し、引き続いて2時間30分かけて800℃まで昇温した。800℃で4時間保持した後、放冷した。
【0038】
(b)テトラヒドロフランの開環重合反応
ガラス製容器に窒素雰囲気下、44.5gのテトラヒドロフランを入れ、攪拌しながら0.869gの20重量%発煙硫酸をゆっくり添加した(テトラヒドロフラン/硫酸/三酸化硫黄(モル比)=100/1.15/0.35)。これに上記の方法により調製した焼成直後の酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物13.4gを加え、予め温度を調節しておいた油浴へ入れ、常圧、60℃で6時間反応を行った。反応終了後、攪拌を止め、反応液の上澄みを触媒が混入しないように0.1g取り、テトラヒドロフラン8.9gで希釈し、水酸化カルシウムを添加して残存する酸を除去した後、濾過してGPC試料とした。
【0039】
この試料のGPC溶出曲線の面積を用いて、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(Mn=1842、 Mw=4115)の0.5重量%テトラヒドロフラン溶液を標準試料としてそのGPCの溶出曲線の面積を基準として重合物の重量を求め、これより下式に従って収率(仕込みのテトラヒドロフラン重量に対する重合物の重量%)を計算した。結果を表−1に示した。
【0040】
【数1】
重合物の重量/g=(重合物の溶出曲線面積/標準試料の溶出曲線面積)×0.005×(8.9+0.1)×((テトラヒドロフラン、スルホン酸基含有化合物及び三酸化硫黄の仕込み重量の和/g)/0.1)
【0041】
【数2】
収率/%=(重合物の重量/g)/(テトラヒドロフランの仕込み重量/g)×100
[比較例1]
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物を添加せずに開環重合反応を行ったこと以外は実施例1と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−1に示した。
【0042】
[比較例2]
ガラス製容器に窒素雰囲気下、0.869gの20重量%発煙硫酸と0.0434gのモリブデン酸ナトリウムを入れて攪拌しながら溶解した後、44.5gのテトラヒドロフランを添加した(テトラヒドロフラン/硫酸/三酸化硫黄/モリブデン酸ナトリウム(モル比)=100/1.15/0.35/0.034)。これを予め温度を調節しておいた油浴へ入れ、常圧、60℃で6時間反応を行った。反応終了後の操作は実施例1と同様の方法で分析を実施した。結果を表−1に示した。
【0043】
[実施例2]
20%発煙硫酸の代わりに95%硫酸0.956gを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−1に示した。
[比較例3]
20%発煙硫酸の代わりに95%硫酸0.956gを用い、酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物を添加せずに開環重合反応を行ったこと以外は実施例1と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−1に示した。
【0044】
【表4】
【0045】
[実施例3]
ガラス製容器に窒素雰囲気下、44.5gのテトラヒドロフランを入れ、攪拌しながら0.869gの20重量%発煙硫酸をゆっくり添加した(テトラヒドロフラン/硫酸/三酸化硫黄(モル比)=100/1.15/0.35)。これに実施例1で調製した焼成直後の酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物6.68gを加え、予め温度を調節しておいた油浴へ入れ、常圧、55℃で6時間反応を行い、実施例1と同様の方法で分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0046】
[実施例4]
(a)酸化アルミニウム−シリカ複合酸化物の調製
12.35gの硝酸アルミニウム・9水和物を23.8gの脱塩水に溶解した水溶液を、シリカ(富士シリシア社製品、キャリアクトQ−15、平均細孔径150Å、粒径約75〜500μm)20.0gに加え、よく振り混ぜて含浸させた(AlとSiのモル数の和に対してAlが9mol%)。これを50℃の恒温乾燥機に入れて16時間乾燥させた。乾燥機から取り出し室温まで放冷した固体を6重量%のアンモニア水100gに室温下にて添加し1時間攪拌した後に濾過して固体を回収した。回収した固体に100mlの脱塩水を加えて10分間攪拌した後、濾過して固体を回収する洗浄操作を4回繰り返した後、回収固体を塩化カルシウムの入ったデシケーター中にて乾燥した。こうして得られた見かけ上乾燥した固体を、空気流通下に一定の昇温速度で1時間かけて120℃まで昇温し、引き続いて2時間30分かけて800℃まで昇温した。800℃で4時間保持した後放冷した。
【0047】
(b)テトラヒドロフランの開環重合反応
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに上記の方法により調製した焼成直後の酸化アルミニウム−シリカ複合酸化物6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0048】
[実施例5]
(a)酸化錫−シリカ複合酸化物の調製
3.71gの塩化第一錫・2水和物を11.9mlのエタノール23.8gに溶解した液を、シリカ(富士シリシア社製品、キャリアクトQ−15、平均細孔径150Å、粒径約75〜500μm)10.0gに加え、よく振り混ぜて含浸させた(SnとSiのモル数の和に対してSnが9mol%)。これを窒素流通下に室温にて乾燥させた後、6重量%のアンモニア水50gに室温下にて添加し1時間攪拌した後に濾過して固体を回収した。回収した固体に50mlの脱塩水を加えて10分間攪拌した後、濾過して固体を回収する洗浄操作を4回繰り返した後、回収固体を塩化カルシウムの入ったデシケーター中にて乾燥した。こうして得られた見かけ上乾燥した固体を、空気流通下に一定の昇温速度で1時間かけて120℃まで昇温し、引き続いて2時間30分かけて800℃まで昇温した。800℃で4時間保持した後放冷した。
【0049】
(b)テトラヒドロフランの開環重合反応
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに上記の方法により調製した焼成直後の酸化錫−シリカ複合酸化物6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0050】
[実施例6]
(a)酸化タングステン−シリカ複合酸化物の調製
7.56gのメタタングステン酸アンモニウム水溶液(日本新金属社製品、酸化タングステン換算でタングステンを50.5重量%含有)を8.15gの脱塩水で希釈した液を、シリカ(富士シリシア社製品、キャリアクトQ−15、平均細孔径150Å、粒径約75〜500μm)10.0gに加え、よく振り混ぜて含浸させた(WとSiのモル数の和に対してWが9mol%)。これを窒素流通下に50℃にて乾燥させた後、空気流通下に一定の昇温速度で1時間かけて120℃まで昇温し、引き続いて2時間30分かけて800℃まで昇温した。800℃で4時間保持した後放冷した。
【0051】
(b)テトラヒドロフランの開環重合反応
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに上記の方法により調製した焼成直後の酸化タングステン−シリカ複合酸化物6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0052】
[実施例7]
(a)酸化イットリウム−シリカ複合酸化物の調製
6.30gの硝酸イットリウム・6水和物を11.9gの脱塩水に溶解した水溶液を、シリカ(富士シリシア社製品、キャリアクトQ−15、平均細孔径150Å、粒径約75〜500μm)10.0gに加え、よく振り混ぜて含浸させた(YとSiのモル数の和に対してYが9mol%)。これを50℃の恒温乾燥機に入れて16時間乾燥させた。乾燥機から取り出し室温まで放冷した固体を6重量%のアンモニア水50gに室温下にて添加し1時間攪拌した後に濾過して固体を回収した。回収した固体に50mlの脱塩水を加えて10分間攪拌した後、濾過して固体を回収する洗浄操作を4回繰り返した後、回収固体を塩化カルシウムの入ったデシケーター中にて乾燥した。こうして得られた見かけ上乾燥した固体を、空気流通下に一定の昇温速度で1時間かけて120℃まで昇温し、引き続いて2時間30分かけて800℃まで昇温した。800℃で4時間保持した後放冷した。
【0053】
(b)テトラヒドロフランの開環重合反応
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに上記の方法により調製した焼成直後の酸化イットリウム−シリカ複合酸化物6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0054】
[実施例8]
(a)酸化ランタン−シリカ複合酸化物の調製
7.13gの硝酸ランタン・6水和物を11.9gの脱塩水に溶解した水溶液を、シリカ(富士シリシア社製品、キャリアクトQ−15、平均細孔径150Å、粒径約75〜500μm)10.0gに加え、よく振り混ぜて含浸させた(LaとSiのモル数の和に対してLaが9mol%)。これを50℃の恒温乾燥機に入れて16時間乾燥させた。乾燥機から取り出し室温まで放冷した固体を6重量%のアンモニア水50gに室温下にて添加し1時間攪拌した後に濾過して固体を回収した。回収した固体に50mlの脱塩水を加えて10分間攪拌した後、濾過して固体を回収する洗浄操作を4回繰り返した後、回収固体を塩化カルシウムの入ったデシケーター中にて乾燥した。こうして得られた見かけ上乾燥した固体を、空気流通下に一定の昇温速度で1時間かけて120℃まで昇温し、引き続いて2時間30分かけて800℃まで昇温した。800℃で4時間保持した後放冷した。
【0055】
(b)テトラヒドロフランの開環重合反応
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに上記の方法により調製した焼成直後の酸化ランタン−シリカ複合酸化物6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0056】
[実施例9]
(a)酸化セリウム−シリカ複合酸化物の調製
7.15gの硝酸セリウム・6水和物を11.9gの脱塩水に溶解した水溶液を、シリカ(富士シリシア社製品、キャリアクトQ−15、平均細孔径150Å、粒径約75〜500μm)10.0gに加え、よく振り混ぜて含浸させた(CeとSiのモル数の和に対してCeが9mol%)。これを50℃の恒温乾燥機に入れて16時間乾燥させた。乾燥機から取り出し室温まで放冷した固体を6重量%のアンモニア水50gに室温下にて添加し1時間攪拌した後に濾過して固体を回収した。回収した固体に50mlの脱塩水を加えて10分間攪拌した後、濾過して固体を回収する洗浄操作を4回繰り返した後、回収固体を塩化カルシウムの入ったデシケーター中にて乾燥した。こうして得られた見かけ上乾燥した固体を、空気流通下に一定の昇温速度で1時間かけて120℃まで昇温し、引き続いて2時間30分かけて800℃まで昇温した。800℃で4時間保持した後放冷した。
【0057】
(b)テトラヒドロフランの開環重合反応
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに上記の方法により調製した焼成直後の酸化セリウム−シリカ複合酸化物6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0058】
[実施例10]
(a)酸化鉄−シリカ複合酸化物の調製
6.65gの硝酸鉄・9水和物を11.9gの脱塩水に溶解した水溶液を、シリカ(富士シリシア社製品、キャリアクトQ−15、平均細孔径150Å、粒径約75〜500μm)10.0gに加え、よく振り混ぜて含浸させた(FeとSiのモル数の和に対してFeが9mol%)。これを50℃の恒温乾燥機に入れて16時間乾燥させた。乾燥機から取り出し室温まで放冷した固体を6重量%のアンモニア水50gに室温下にて添加し1時間攪拌した後に濾過して固体を回収した。回収した固体に50mlの脱塩水を加えて10分間攪拌した後、濾過して固体を回収する洗浄操作を4回繰り返した後、回収固体を塩化カルシウムの入ったデシケーター中にて乾燥した。こうして得られた見かけ上乾燥した固体を、空気流通下に一定の昇温速度で1時間かけて120℃まで昇温し、引き続いて2時間30分かけて800℃まで昇温した。800℃で4時間保持した後放冷した。
【0059】
(b)テトラヒドロフランの開環重合反応
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに上記の方法により調製した焼成直後の酸化鉄−シリカ複合酸化物6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0060】
[実施例11]
(a)酸化カルシウム−シリカ複合酸化物の調製
3.89gの硝酸カルシウム・4水和物を11.9gの脱塩水に溶解した水溶液を、シリカ(富士シリシア社製品、キャリアクトQ−15、平均細孔径150Å、粒径約75〜500μm)10.0gに加え、よく振り混ぜて含浸させた(CaとSiのモル数の和に対してCaが9mol%)。これを50℃の恒温乾燥機に入れて16時間乾燥させた。こうして得られた固体を、空気流通下に一定の昇温速度で1時間かけて120℃まで昇温し、引き続いて2時間30分かけて800℃まで昇温した。800℃で4時間保持した後放冷した。
【0061】
(b)テトラヒドロフランの開環重合反応
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに上記の方法により調製した焼成直後の酸化カルシウム−シリカ複合酸化物6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0062】
[実施例12]
(a)酸化マグネシウム−シリカ複合酸化物の調製
56.36gの酢酸マグネシウム・4水和物を56.36gの脱塩水に溶解した水溶液を、シリカ(富士シリシア社製品、キャリアクトQ−15、平均細孔径150Å、粒径約75〜500μm)50.0gに加え、よく振り混ぜて含浸させた(MgとSiのモル数の和に対してMgが24mol%)。これを100℃の恒温乾燥機に入れて16時間乾燥させた。こうして得られた固体を、窒素流通下に一定の昇温速度で2時間かけて120℃まで昇温し、引き続いて2時間かけて550℃まで昇温した。550℃において流通させている窒素を発熱に注意しながら少しずつ空気に置換した後、空気流通下に1時間かけて800℃まで昇温した。800℃で4時間保持した後放冷した。
【0063】
(b)テトラヒドロフランの開環重合反応
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに上記の方法により調製した焼成直後の酸化マグネシウム−シリカ複合酸化物6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0064】
[実施例13]
H−USYゼオライト(Zeolyst社製品、CBV760、シリカ/アルミナ=55)を空気流通下に550℃にて2時間焼成した後放冷した。この焼成直後のゼオライト6.68gを酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0065】
[実施例14]
アンモニウム型ベータゼオライト(東ソー社製品、HSZ930NHA、シリカ/アルミナ=55)を空気流通下に550℃にて10時間焼成してH型に変換したものを更に800℃にて2時間焼成した後放冷した。この焼成直後のゼオライト6.68gを酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0066】
[実施例15]
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに活性白土(ジュート・ヘミー社製品、トンシルオプティマムFF)を200℃にて乾燥したもの6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0067】
[実施例16]
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに酸処理されたモンモリロナイトK10(アルドリッチケミカル社製品)を200℃にて乾燥したもの6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0068】
[実施例17]
酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物の代わりに弗素系強酸性イオン交換樹脂である「ナフィオン」をシリカ担体に担時した「ナフィオン」担持シリカ成形体(エヌ・イーケムキャット社製品、ナフィオンSAC−13)を120℃にて乾燥したもの6.68gを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合反応及び分析を実施した。結果を表−2に示した。
【0069】
【表5】
【0070】
[実施例18]
ガラス製容器に窒素雰囲気下、44.5gのテトラヒドロフランを入れ、攪拌しながら0.869gの20重量%発煙硫酸をゆっくり添加した(テトラヒドロフラン/硫酸/三酸化硫黄(モル比)=100/1.15/0.35)。これに実施例1で調製した焼成直後の酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物6.68gを加え、予め温度を調節しておいた油浴へ入れ、常圧、60℃で10時間反応を行った。反応液から複合酸化物を濾過により分離し、付着する重合物を回収するために約50mlのテトラヒドロフランで複合酸化物を洗浄した。生成した重合物の末端の硫酸エステルを水酸基に変換するため、濾液と洗浄液をあわせたものに脱塩水50mlを加えて緩やかに3時間還流加熱して加水分解を行った。未反応のTHFを蒸留により分離した後、水層の上に浮いたオイル状の重合物を回収するために20mlのトルエンで3回抽出した。得られたトルエン溶液に残存する酸成分を除去するために0.26gの水酸化カルシウムを添加して室温にて2時間攪拌した後に固体成分を濾別した。濾液のトルエンを留去した後、真空下に60℃で処理して揮発成分を除去し、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを得た。取得収量6.19g、収率14%。得られた重合物をGPCにて分析したところ、Mw3,261、Mn1,925、Mw/Mn1.69であった。
【0071】
[実施例19]
ガラス製容器に1.347gのパラトルエンスルホン酸・1水和物を入れ、窒素流通下に120℃にて1時間加熱して脱水処理を行った。ガラス製容器を室温まで放冷し、44.5gのテトラヒドロフランを入れ、窒素雰囲気下で攪拌しながらパラトルエンスルホン酸を溶解した後、実施例1で調製した焼成直後の酸化ジルコニウム−シリカ複合酸化物6.68gを加え、予め温度を調節しておいた油浴へ入れ、常圧、55℃で6時間反応を行った。反応液から複合酸化物を濾過により分離し、付着する重合物を回収するために約50mlのテトラヒドロフランで複合酸化物を洗浄した。生成した重合物の末端のパラトルエンスルホン酸エステルを水酸基に変換するため、濾液と洗浄液をあわせたものに脱塩水50mlを加えて緩やかに3時間還流加熱して加水分解を行った。未反応のTHFを蒸留により分離した後、水層の上に浮いたオイル状の重合物を回収するために20mlのトルエンで3回抽出した。得られたトルエン溶液に残存する酸成分を除去するために0.26gの水酸化カルシウムを添加して室温にて2時間攪拌した後に固体成分を濾別した。濾液のトルエンを留去した後、真空下に60℃で処理して揮発成分を除去し、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを得た。取得収量6.87g、収率15%。得られた重合物をGPCにて分析したところ、Mw8,626、Mn4,078、Mw/Mn2.12であった。
【0072】
[実施例20]
ガラス製容器に窒素雰囲気下、534gのテトラヒドロフランを入れ、攪拌しながら10.43gの20重量%発煙硫酸をゆっくり添加した(テトラヒドロフラン/硫酸/三酸化硫黄(モル比)=100/1.15/0.35)。これに実施例12で調製した焼成直後の酸化マグネシウム−シリカ複合酸化物80.1gを加え、予め温度を調節しておいた油浴へ入れ、常圧、55℃で8時間反応を行った。反応液から複合酸化物を濾過により分離し、付着する重合物を回収するために約300mlのテトラヒドロフランで複合酸化物を洗浄した。生成した重合物の末端の硫酸エステルを水酸基に変換するため、濾液と洗浄液をあわせたものに脱塩水215mlを加えて緩やかに3時間還流加熱して加水分解を行った。未反応のTHFを蒸留により分離した後、水層の上に浮いたオイル状の重合物を回収するために150mlのトルエンで3回抽出した。得られたトルエン溶液に残存する酸成分を除去するために8.23gの水酸化カルシウムを添加して室温にて2時間攪拌した後に固体成分を濾別した。濾液のトルエンを留去した後、真空下に60℃で処理して揮発成分を除去し、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを得た。取得収量112.1g、収率21%。得られ重合物をGPCにて分析したところ、Mw11,287、Mn5,419、Mw/Mn2.08であった。
【0073】
[実施例21]
ガラス製容器に窒素雰囲気下、26.7gのテトラヒドロフランおよび2.57gの3−エチル−3−メトキシメチルオキセタンを入れ、攪拌しながら0.509gの20重量%発煙硫酸をゆっくり添加した(テトラヒドロフラン/3−エチル−3−メトキシメチルオキセタン/硫酸/三酸化硫黄(モル比)=100/5.4/1.12/0.34)。これに活性白土(水沢化学社製品 ガレオンアースNS)を空気流通下に800℃にて4時間焼成したものを10.8g加え、予め温度を調節しておいた油浴へ入れ、常圧、44℃で8時間反応を行った。反応液から複合酸化物を濾過により分離し、付着する重合物を回収するために約30mlのテトラヒドロフランで複合酸化物を洗浄した。生成した重合物の末端の硫酸エステルを水酸基に変換するため、濾液と洗浄液をあわせたものに脱塩水30mlを加えて緩やかに3時間還流加熱して加水分解を行った。未反応のTHFを蒸留により分離した後、水層の上に浮いたオイル状の重合物を回収するために40mlのトルエンで3回抽出した。得られたトルエン溶液に残存する酸成分を除去するために0.40gの水酸化カルシウムを添加して室温にて2時間攪拌した後に固体成分を濾別した。濾液のトルエンを留去した後、真空下に60℃で処理して揮発成分を除去し、テトラヒドロフランと3−エチル−3−メトキシメチルオキセタンの共重合ポリエーテルグリコールを得た。取得収量5.8g、収率20%(仕込みの環状エーテル重量をベースに算出)。得られた重合物をGPCにて分析したところ、Mw5,098、Mn2,112、Mw/Mn2.41であった。また、得られた重合物のH−NMRスペクトルより、テトラヒドロフランユニットの酸素に隣接しないメチレン基のピークと3−エチル−3−メトキシメチルオキセタンユニットのメチル基のピークから、ポリエーテルグリコール中のテトラヒドロフランユニットと3−エチル−3−メトキシメチルオキセタンユニットのモル組成比を計算したところ、16.4mol%の3−エチル−3−メトキシメチルオキセタンユニットを含んでいた。
【0074】
【発明の効果】
本発明により、高い反応速度で重合反応が進行し、触媒系の制御により生成するポリマーの分子量を調節することができ、かつ、廃酸量が少なく、加アルコール分解が不要であるポリエーテルポリオール類の製造方法が提供される。
Claims (3)
- 液相中、触媒の存在下に環状エーテルを開環重合反応させてポリエーテルポリオール及び/又はそのエステル誘導体を製造するに当たり、該開環重合反応を、固体酸触媒及びスルホン酸基含有化合物の存在下かつカルボン酸無水物の不存在下に行うことを特徴とするポリエーテルポリオール類の製造方法。
- 固体酸触媒が、ケイ素を含有する複合酸化物からなる固体酸触媒である、請求項1に記載のポリエーテルポリオール類の製造方法。
- 三酸化硫黄の共存下に開環重合反応を行う、請求項1又は2に記載のポリエーテルポリオール類の製造方法。
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