JP2004161834A - 金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量の抑制が優れており、特にアルミ電解コンデンサー封口板等の用途に有用な金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を得ることを課題とする。
【解決手段】(a)PPS樹脂100重量部に対して、(b)繊維状無機充填材40〜170重量部および(c)非繊維状無機充填材20〜170重量部を配合してなり、かつ(b)成分および(c)成分の合計が100〜240重量部であるPPS樹脂組成物であって、該PPS樹脂組成物を窒素雰囲気中で320℃、1時間加熱処理した場合の発生ガス中のN−メチル−2−ピロリドン含有量が2ppm以下であり、かつ該PPS樹脂組成物をクロロホルムで85℃、5時間全還流抽出するソックスレー抽出法による抽出量が0.2重量%以下である金属複合成形体用PPS樹脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】(a)PPS樹脂100重量部に対して、(b)繊維状無機充填材40〜170重量部および(c)非繊維状無機充填材20〜170重量部を配合してなり、かつ(b)成分および(c)成分の合計が100〜240重量部であるPPS樹脂組成物であって、該PPS樹脂組成物を窒素雰囲気中で320℃、1時間加熱処理した場合の発生ガス中のN−メチル−2−ピロリドン含有量が2ppm以下であり、かつ該PPS樹脂組成物をクロロホルムで85℃、5時間全還流抽出するソックスレー抽出法による抽出量が0.2重量%以下である金属複合成形体用PPS樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば電解液を伴い、アルミニウム端子が複合される電解コンデンサー用部品などのような金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に関するものであり、複合している金属の耐腐食性が大幅に改善された金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に関する物である。
【0002】
【従来の技術】
電解コンデンサーは、アルミニウムやタンタルなどの金属箔に酸化アルミニウムなどの絶縁性酸化被膜を形成して誘電体とした陽極箔と導電性金属からなる陰極箔との間に電解紙を介在させて巻いたコンデンサー素子をケース中の電解液中に含浸し、外部端子を有する封口板を封着して製造される。電解コンデンサー用部品の内、特に封口板用材料には、その使用環境から優れた耐熱性と耐薬品性の両立が期待されている。耐熱性と耐薬品性を両立させたコンデンサー封口板用材料として、シンジオタクティックポリスチレン樹脂を使用した封口板(特許文献1参照)、フッ素樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂などを使用した封口板(特許文献2、3参照)などが提案されている。
【0003】
しかしながら上記材料の中で、シンジオタクティックポリスチレン樹脂は耐熱性が不十分であり、かつ、靭性が不足しており、フッ素樹脂は高価であり、ナイロン樹脂は吸水による寸法変化が著しく、フェノール樹脂は射出成形が不可能であり成形加工性が悪い。一方、ポリフェニレンスルフィド樹脂は、極めて優れた耐熱性と耐薬品性の両立を実現せしめているのみならず、比較的安価であり、また機械的特性、耐水性、成形加工性の各性能においても、非常にバランスが良い材料である。
【0004】
しかしながら、通常のポリフェニレンスルフィド樹脂はN−メチル−2−ピロリドン、およびクロロホルムで抽出されるオリゴマー成分などの副生成物が多く含有され、封口板に複合される金属端子の腐食が問題となる。上記特許文献3には溶融成形時のガス発生、金型腐蝕の低減のため、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を有機溶媒洗浄することの他、酸性水溶液などによる洗浄を施して用いる技術が開示されているが、具体的に開示された方法で処理されたポリフェニレンスルフィドにおいても上記副生成物の含有が多く、複合される金属電極が腐食するため、導電性が損なわれ電極としての実用性に優れた封口板を得るにはこの点に対する改善が重要な問題であることがわかった。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−157668号公報(第2頁)
【特許文献2】
特開平11−162796号公報(第5頁)
【特許文献3】
特開2002−231591号公報(第3〜4頁、実施例1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決するため、ポリフェニレンスルフィド樹脂の耐熱性および耐薬品性を損なうことなく、特定条件下で発生するガス中に含まれるN−メチル−2−ピロリドン含有量、およびクロロホルム抽出量を極限レベルまで低減し、複合される金属電極の腐食を抑制可能とした金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を提供せんとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、
1.(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(b)繊維状無機充填材40〜170重量部および(c)非繊維状無機充填材20〜170重量部を配合してなり、かつ(b)成分および(c)成分の合計が100〜240重量部であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、該ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を窒素雰囲気中で320℃、1時間加熱処理した場合の発生ガス中のN−メチル−2−ピロリドン含有量が2ppm以下であり、かつ該ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物をクロロホルムで85℃、5時間全還流抽出するソックスレー抽出法による抽出量が0.2重量%以下である金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
2.繊維状無機充填材が(b−1)ガラス繊維である上記1記載の金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
3.非繊維状無機充填材が(c−1)炭酸カルシウム、(c−2)酸化マグネシウム、(c−3)マグネシウム・アルミニウム酸化物から選択される1種以上である上記1または2記載の金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
4.複合成形される金属がアルミニウムである上記1〜3のいずれか記載の金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、および
5.金属複合成形体が電解コンデンサー用部品である上記1〜4のいずれか記載の金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂と称す)100重量部に対して、(b)繊維状無機充填材40〜170重量部および(c)非繊維状無機充填材20〜170重量部を配合してなり、かつ(b)成分および(c)成分の合計が100〜240重量部であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、該PPS樹脂組成物を窒素雰囲気中で320℃、1時間加熱処理した場合の発生ガス中のN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと称す)含有量(以下NMP発生量と称する場合がある)が2ppm以下であり、かつ該PPS樹脂組成物をクロロホルムで85℃、5時間全還流抽出するソックスレー抽出法による抽出量が0.2重量%以下であることが必要である。PPS樹脂組成物の上記NMP発生量、およびクロロホルム抽出量を上記範囲内とすることにより、はじめて実用性に優れた金属複合成形体に適した組成物が得られるものである。上記NMP発生量が2ppm以下、およびクロロホルム抽出量が0.2重量%以下のPPS樹脂組成物は、加熱処理時の発生ガス中のNMP含有量、ならびにクロロホルム抽出量が低減されたPPS樹脂を用い、繊維状無機充填材および非繊維状無機充填材の種類および配合量を適宜選択することにより調製される。
【0009】
(1)PPS樹脂
本発明で使用するPPS樹脂とは、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
【0010】
【化1】
【0011】
上記構造式で示される繰り返し単位を70モル%以上、特に90モル%以上含む重合体であることが耐熱性の点で好ましい。またPPS樹脂は、その繰り返し単位の30モル%未満を、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成することが可能である。
【0012】
【化2】
【0013】
本発明のPPS樹脂組成物の加熱時の発生ガス中のNMP発生量を本発明で規定する範囲とするためには、配合に供するPPS樹脂として、加熱時の発生ガス中のNMP発生量が低減されたものを用いるが、窒素雰囲気中で320℃、1時間加熱処理した場合に発生するガス中のNMP発生量が5ppm以下であることが好ましく、3ppm以下であることが特に好ましく、2ppm以下であることがさらに好ましい。あわせて本発明中のPPS樹脂組成物のクロロホルム抽出量を本発明で規定する範囲とするためには、配合に供するPPS樹脂として、クロロホルム抽出量が低減されたものを用いるが、クロロホルムで85℃、5時間全還流抽出するソックスレー抽出法による抽出量が0.5重量%以下であることが好ましく、0.4重量%以下であることが特に好ましく、0.3重量%以下であることがさらに好ましい。なお、上記NMP発生量および抽出量は、後述するPPS樹脂組成物におけるNMP発生量、抽出量と同様の方法で測定することができる。
【0014】
(PPS樹脂の重合)
一般に、PPS樹脂は、通常NMPなどの極性溶媒中でジハロゲン芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とを重合反応させることによって得られ、基本的な重合反応は特公昭45−3368号公報、特公昭52−12240号公報に開示されている。実用上、上記アルカリ金属硫化物として硫化ナトリウム、水硫化ナトリウム等のナトリウムを含有するアルカリ金属硫化物(ナトリウム系アルカリ金属硫化物)を用いる方法(製法1)(例えば特公昭45−3368号公報記載の実施例で代表される製造法(重合助剤であるアルカリ金属カルボン酸塩を添加しないため、重合度が上がらず比較的分子量が小さくオリゴマー成分も多分に含有している重合体が得られる)、特公昭52−12240号公報記載の実施例で代表される製造法(重合助剤であるアルカリ金属カルボン酸塩を添加するため、重合度が上がり比較的分子量が大きくオリゴマー成分、不純物も比較的少なく、実質的に直鎖状の重合体が得られる))、あるいは極性溶媒中でジハロゲン芳香族化合物と硫化リチウムなどのリチウムを含有するアルカリ金属硫化物(リチウム系アルカリ金属硫化物)を用い、等モル反応によりPPS樹脂を製造する方法(例えば特開2000−95941号公報で代表される製造法(高純度で分岐のない高分子量の重合体が得られる))(製法2)が挙げられる。
【0015】
製法1により得られる重合体は、そのままではNMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量がともに高くなる。NMP発生量を本発明の範囲内まで低減するには有機溶媒洗浄が効果的であり、有機溶媒としてはNMPが最も効果的である。その際、洗浄に用いたNMPがPPS樹脂中に残存しやすい問題が浮上する。NMP発生量は水で洗浄することで低減できる。ただし、NMP発生量を本発明の範囲内まで低減するには、水洗浄の強化が必要であり、例えばNMP発生量が十分低減されるまで洗浄を繰り返すなどの方法が用いられる。一方、NMP以外の有機溶媒により洗浄する場合においては、PPS樹脂中へのNMPの残存量を低減でき、加熱時のNMP発生量を抑制できる。しかしその反面、溶媒洗浄効率が低下するため、クロロホルム抽出量を本発明の範囲内まで低減するには、例えばアセトン、クロロホルムなどを使用して、長時間にわたる洗浄や、洗浄回数を増やすなどをする必要がある。上記のとおり、製法1により得られる重合体において、NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量を所望の範囲内まで低減するのは容易ではないが、十分に後処理工程の手法を施すことが肝要である。
【0016】
一方、製法2により得られる重合体は、重合原料に用いる硫化リチウムの特性上、高純度かつ高分子量であって、加熱時のNMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量がともに非常に少なくなり、比較的容易に本発明の範囲内まで低減することが可能となる。したがって、本発明の効果を向上する点においては、製法2により得られる重合体が好ましい。重合方法としては、極性溶媒としてNMP、ジハロゲン芳香族化合物として1,4−ジクロロベンゼンを用い、硫化リチウムと等モル反応させることが好ましい。なお、上記等モル反応とはジハロゲン芳香族化合物と硫化リチウム中の硫黄が理論上1:1で反応することを意味し、実際の重合において厳密に等モルである必要はなく、ジハロゲン芳香族化合物1モルに対し、硫化リチウムなどのイオウ源が0.5〜1.3モル程度であることが好ましい。
【0017】
また、さらに上記NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量を低減させる必要がある場合には、後述する後処理を施すことが好ましい。製造工程上、重合原料として硫化リチウム以外の原料を使用する場合においても、それら重合原料から硫化リチウムが生成される場合はこれと同義である。このような硫化リチウムを形成せしめる反応物としては、水硫化リチウム、水酸化リチウム、塩化リチウム、N−メチルアミノ酪酸リチウム塩などが挙げられる。
【0018】
本発明においては、重合反応を阻害しない範囲であれば、重合時に添加剤を併用することも可能である。添加剤としては、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、p−ジブロモベンゼン、p−ジヨードベンゼン、1−クロロ−4−ブロモベンゼン、1−クロロ−4−ヨードベンゼン、硫化ルビジウム、硫化セシウム、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、ギ酸リチウム、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、マロン酸リチウム、プロピオン酸リチウム、酪酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、2,4−ジニトロクロロベンゼン、2,5−ジクロロニトロベンゼン、2−ニトロ−4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、3,3’−ジニトロ−4,4’−ジクロロジフェニルスルフォン、2,5−ジクロロ−3−ニトロピリジン、2−クロロ−3,5−ジニトロピリジンなどが挙げられ、これらを1種単独で用いても、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0019】
(後処理)
本発明において上記PPS樹脂の加熱時のNMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量を低減させるために、加熱処理、有機溶媒洗浄、酸処理などの後処理を施すことができる。
【0020】
加熱処理はPPS樹脂を、通常200〜260℃、好ましくは220〜240℃という高温で加熱されるが、これによりNMPを除去することができる。加熱時間は10〜30時間が好ましく、15〜25時間が特に好ましい。加熱処理の雰囲気は通常、酸素雰囲気下、または窒素雰囲気下で行われるが、酸素雰囲気下であることが好ましい。
【0021】
次にPPS樹脂の有機溶媒洗浄について説明する。有機溶媒洗浄を施すことによりPPSオリゴマーの除去が可能である。PPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばNMP、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、NMP、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
【0022】
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、本発明の効果をより顕著にすることを目的として、撹拌または加熱することが好ましい。PPS樹脂に対する有機溶媒の使用量に特に制限はないが、乾燥したPPS樹脂1kgに対して1〜100kgであることが好ましく、2〜50kgであることがより好ましく、3〜15kgであることがさらに好ましい。
【0023】
有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。ただし、洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるため、100〜300℃の高温で洗浄することが好ましい。
【0024】
圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下(好ましくは250〜300℃)に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はないが、本発明の効果をより顕著にすることを目的として、バッチ式洗浄の場合、30〜60分間以上洗浄することが好ましい。また連続式で洗浄することも可能である。
【0025】
重合により生成したPPS樹脂を有機溶媒で洗浄するに際し、本発明の効果をさらに発揮させるために、水洗浄と組合わせるのが好ましい。また、N−メチルピロリドンなどの高沸点水溶性有機溶媒を用いた場合は、有機溶媒洗浄後、水で洗浄することにより、残存有機溶媒の除去が比較的容易に行えて好ましい。これらの洗浄に用いる水は蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。上記水洗浄の温度は50〜90℃であることが好ましく、60〜80℃であることが好ましい。PPS樹脂のNMP発生量が所望量より多い場合には、上記水洗浄を繰り返すことにより、NMP発生量を低減せしめることができる。
次に酸処理について説明する。PPS樹脂の酸処理により、オリゴマーの除去効率が向上する。PPS樹脂の酸処理に用いる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、塩酸、酢酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられ、なかでも塩酸および酢酸がより好ましく用いられるが、硝酸のようなPPS樹脂を分解、劣化させるものは好ましくない。
【0026】
酸処理の方法は、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、本発明の効果をより顕著にすることを目的として、撹拌または加熱することが好ましく、処理時間は30〜60分間以上であることが好ましい。また、PPS樹脂の酸処理に用いる酸について、pHは1.5〜5.5であることが好ましく、使用量は乾燥したPPS樹脂1kgに対して2〜100kgであることが好ましく、4〜50kgであることがより好ましく、5〜15kgであることがさらに好ましい。処理温度に特に制限はなく、通常室温で行うことが可能であり、加熱する場合には50〜90℃で行うことが可能である。例えば、酢酸を用いる場合、室温に保持したPH4の水溶液中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30〜60分間以上撹拌することが好ましい。酸処理を施されたPPS樹脂は残留している酸または塩などを物理的に除去するため、水で数回洗浄する。上記水洗浄の温度は50〜90℃であることが好ましく、60〜80℃であることが好ましい。
【0027】
洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の本発明および好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水、脱イオン水が用いられる。本発明においては、上記後処理を組み合わせることも可能であり、複数回繰り返すことも可能である。
【0028】
(2)無機充填材
繊維状無機充填材としては特に制限はなく、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ワラステナイト繊維、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、硼酸アルミニウムウィスカー、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、などが挙げられるが、なかでもガラス繊維が好ましい。また、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填材を2種以上併用することも可能である。かかる繊維状無機充填材は必要により、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することも可能である。繊維状無機充填材の配合量は、PPS樹脂100重量部に対して、40〜170重量部であることが好ましく、60〜150重量部であることがさらに好ましい。繊維状無機充填材の配合量が多すぎると組成物の流動性が損なわれる傾向があり、少なすぎると本発明の効果、および機械的物性の向上が損なわれる傾向がある。
【0029】
非繊維状無機充填材としては特に制限はなく、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化亜鉛、酸化カルシウム、アルミナ、酸化マグネシウム、マグネシウム・アルミニウム酸化物、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、シリカなどの非繊維状充填材が挙げられるが、本発明の効果、および機械的物性の向上の点から、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、マグネシウム・アルミニウム酸化物が好ましい。また、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填材を2種以上併用することも可能である。非繊維状無機充填材の配合量は、PPS樹脂に対して、20〜170重量部であることが好ましく、30〜140重量部であることがさらに好ましい。非繊維状無機充填材の配合量が多すぎると組成物の流動性が損なわれる傾向があり、少なすぎると本発明の効果、および機械的物性の向上が損なわれる傾向がある。
【0030】
また、本発明の効果、および機械的物性を向上の点から上記のような繊維状無機充填材と非繊維状無機充填材を併用することが好ましい。繊維状無機充填材と非繊維状無機充填材の配合量の合計は、PPS樹脂に対して、100〜240重量部であることが好ましく、80〜200重量部であることがさらに好ましい。繊維状無機充填材と非繊維状無機充填材の配合量の合計が多すぎると組成物の流動性が損なわれる傾向があり、少なすぎると本発明の効果、および機械的物性の向上が損なわれる傾向がある。また無機充填材の配合量はさらに、PPS樹脂組成物の加熱時のNMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量が本発明で規定する範囲内となるよう、用いるPPS樹脂の同NMP発生量、ならびに同クロロホルム抽出量を勘案しながら決定される。一般に無機充填材量を増加させることによりPPS樹脂組成物の上記NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量が低減される傾向にあり、また、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、マグネシウム・アルミニウム酸化物を用いる場合には他の無機充填材を用いた場合に比較してより少量でPPS樹脂組成物のNMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量が低減される傾向にある。
【0031】
(3)その他の添加剤
本発明のPPS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、シラン化合物、離型剤、結晶核剤などの通常の添加剤および少量の他種ポリマーを添加することができる。
【0032】
組成物に配合し得るシラン化合物としては、エポキシシラン化合物、アミノシラン化合物、ウレイドシラン化合物、イソシアネートシラン化合物のほか種々のものが使用できる。
【0033】
かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、およびγ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
【0034】
シラン化合物の配合量に特に制限はなく、(a)PPS樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の配合量であることが好ましく、中でも0.2〜5重量部の配合量がより好ましい。
【0035】
離型剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、またはモンタン酸ワックス類、またはステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミニウム等の金属石鹸、脂肪酸アミド系重縮合物、例えばエチレンジアミン・ステアリン酸重縮合物、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物などが挙げられる。
【0036】
結晶核剤としてはポリエ−テルエ−テルケトン樹脂、ナイロン樹脂、タルク、カオリン等が挙げられる。
【0037】
他種ポリマーとしてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリアミドエラストマ、ポリエステルエラストマなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0038】
また、次亜リン酸塩等の着色防止剤、エステル系化合物等の可塑剤、カーボンブラック、黒鉛などの着色剤、あるいは防食剤、酸化防止剤、熱安定剤、渇剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
【0039】
(4)各成分の配合
本発明のPPS樹脂組成物の配合方法は特に制限はないが、原料の混合物を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー及びミキシングロールなど通常公知の溶融混合機に供給して280〜380℃の温度で溶融混練する方法などを代表例として挙げることができる。上記溶融混練においては、減圧下で脱気しながら行うことが、溶融混練中に発生するNMPを含むガスをさらに除去できるため好ましい。なお、原料の混合順序に特に制限はない。
【0040】
また、少量添加剤成分については、他の成分を上記方法などで混練し、ペレット化した後、成形前に予備混合してもしくはしないで添加することもできる。
【0041】
(5)PPS樹脂組成物
本発明のPPS樹脂組成物は、窒素雰囲気中で320℃、1時間加熱処理による発生ガス中のNMP発生量が2ppm以下であることが必要である。
【0042】
PPS樹脂組成物のNMP発生量のパラメータについて以下に記す。
【0043】
NMP発生量は、PPS樹脂組成物0.5gを150℃、3時間で予備乾燥後、50mlのサンプルチューブに入れ、窒素ガス(20ml/min)を流しながら、320℃、1時間加熱し、発生ガスをアセトン5mlにトラップした後、アセトン溶液は乾燥させ、1mlアセトン溶液として1.0μlをGC、GC/MS分析で定量する方法で測定することができる。GCに島津製作所(株)製GC−9A、レコーダーに島津製作所(株)製C−R4Aを用いることができる。
【0044】
PPS樹脂組成物のNMP発生量が2ppm以下未満であると金属複合成形体に複合された金属端子などの金属が腐食を受けやすいため、本発明の樹脂組成物のNMP発生量は2ppm以下であることが必要であり、1.4ppm以下であることが好ましく、特に1ppm以下であることが好ましい。また、同NMP発生量は小さいほど好ましいが、0.1ppmまで低減できれば十分効果がある。
【0045】
あわせて、PPS樹脂組成物のクロロホルムで85℃、5時間全環流抽出するソックスレー抽出法による抽出量が0.2重量%以下であることが必要である。
【0046】
クロロホルム抽出量は、粉砕サンプルを32〜60meshで分級し、付着物除去のために30mlのメタノールで5回洗浄後、真空乾燥し試料2gを秤量する。2gの試料を20gのクロロホルムで、ソックスレー抽出器を用いて85℃、5時間全還流抽出(ソックスレー抽出)を行う。クロロホルムを回収し、23℃、1時間真空乾燥する。乾固後重量を抽出前の重量で除した値を算出する方法で測定する。
【0047】
PPS樹脂組成物のクロロホルム抽出量が0.2重量%以下未満であると金属複合成形体に複合された金属端子などの金属が腐食を受けやすいため、本発明の樹脂組成物のクロロホルム抽出量は0.2重量%以下であることが必要であり、0.15重量%以下であることが好ましく、特に0.1重量%以下であることが好ましい。また、同クロロホルム抽出量は小さいほど好ましいが、0.05重量%以下まで低減できれば十分効果がある。
【0048】
(6)PPS樹脂組成物の成形・用途
本発明のPPS樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、吹込成形、射出圧縮成形、トランスファー成形、真空成形など一般に熱可塑性樹脂の公知の成形方法により成形されるが、なかでも射出成形が好ましい。また、金属複合成形体用PPS樹脂組成物において、金属の複合方法としては、金属を金型へインサートした後、PPS樹脂組成物によりオーバーモールドする金属インサート、ビスどめ、ネジどめ、ピン圧入、超音波溶着、振動溶着、エポキシ樹脂やシリコン樹脂による接着など一般的に公知の複合方法により複合されるが、なかでも金属インサートが好ましい。
【0049】
本発明により得られたPPS樹脂組成物は、NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量が大幅に低減された樹脂組成物であるため、複合した金属は、長期にわたり腐蝕を受けない。したがって、特に金属が電極や金属端子など、通電が必要な部材として複合されている場合において、腐蝕による通電不良が発生せず、長期にわたり安定した実用性を得ることができる。なかでも電解コンデンサー用部品に用いることにより極めて優れた実用性を発揮し、なかでも複合される金属電極が腐食を受けやすいアルミニウム製であり、かつ電解液中に含浸されて使用されるアルミ電解コンデンサー封口板などが特に適する。
【0050】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
なお、実施例及び比較例の中で述べられるNMP発生量、クロロホルム抽出量、アルミニウム腐食性評価、曲げ強度の値は次の方法に従って測定した。
【0051】
[NMP発生量]PPS樹脂またはPPS樹脂組成物のペレット0.5gを150℃、3時間で予備乾燥後、50mlのサンプルチューブに入れ、窒素ガス(20ml/min)を流しながら、320℃、1時間加熱し、発生ガスをアセトン5mlにトラップした後、アセトン溶液は乾燥させ、1mlアセトン溶液として1.0μlをGC、GC/MS分析で定量する方法で測定した。GCに(株)島津製作所製GC−9A、レコーダーに(株)島津製作所製C−R4Aを用いた。なお、GCの測定条件は、カラム:CP−SIL 5CB 15m, 0.53mmid、オーブン温度:50℃(1min)−260℃(5℃/min)、キャリア:ヘリウム(30ml/min)とした。また、GC/MSの測定条件は、カラム:DB−1 15m, 0.53mmid、オーブン温度:50(1min)−260℃(5℃/min)とした。GC定量の検量線はチオフェノールで作成し、チオフェノール0.5〜1.0μg/μlアセトン溶液をGC−FID分析した。得られたGCピーク面積と注入絶対量の関係を求め検量線を作成し、発生ガス中のNMP含有量を求めた。定量は1g当たりの発生量(ppm)として求めた(チオフェノール換算値)。
【0052】
[クロロホルム抽出量]クロロホルム抽出量は、PPS樹脂またはPPS樹脂組成物のペレットを粉砕後、32〜60meshで分級し、付着物除去のために30mlのメタノールで5回洗浄後、真空乾燥し試料2gを秤量する。2gの試料を20gのクロロホルムで、ソックスレー抽出器を用いて85℃、5時間全還流抽出(ソックスレー抽出)を行う。クロロホルムを回収し、23℃、1時間真空乾燥する。乾固後重量を抽出前の重量で除した値を算出する方法で測定した。
【0053】
[アルミニウム腐食性評価]実施例でアルミニウム腐食性評価に用いた金属(アルミニウム)複合成形体の形状を図1に示す。図1(a)はアルミニウム製金属1をインサート成形した金属複合成形体2の上面図であり、(b)はその側面図である。該金属複合成形体を外形30mm、高さ150mmの試験管中へ入れ、試験管上部に栓をし、320℃で500時間保持した後、金属板を取り出して腐食状態を調べた。腐食の度合いにより、金属板の体積固有抵抗値(以下Rvと称す)があがるため、同Rvを腐食の指標とし、測定数は30とした。
【0054】
Rv(平均値)<10、かつRv(標準偏差)<1であるものにいては、アルミニウムの腐食性を「優」とした。アルミニウム腐食性が「優」のものは、アルミニウム部分が金属電極として長期に使用しても非常に信頼性が高いものと考えられる。
【0055】
Rv(平均値)<10、かつ10≦Rv(標準偏差)<102であるものについては、アルミニウムの腐食性を「良」とした。アルミニウム腐食性が「良」のものは、アルミニウム部分が金属電極として長期に使用しても比較的信頼性が高いものと考えられる。
【0056】
上記「優」、「良」以外で測定数30の全サンプルRvがRv≦106であるものについては、アルミニウムの腐食性を「可」とした。アルミニウム腐食性が「可」のものは、アルミニウム部分が金属電極として実使用に耐え得るものと考えられる。
【0057】
一方、通電不良領域であるRv>106を示すサンプルが測定数30に対して1つでもあるものについては、アルミニウムの腐食性を「不可」とした。アルミニウム腐食性が「不可」のものは、アルミニウム部分が通電不良を引き起こすため、金属電極としての利用価値が低いものであった。
【0058】
体積固有抵抗値の測定は、川口電機製作所(株)製超絶縁計R−503を用い、電極間距離が3mmになる方向に金属片をセットし、印加電圧500V×1分の条件での体積固有抵抗値を測定し、電極面積および電極間距離から算出した。Rvの測定値については、測定数30による平均値、最大値、最小値、および標準偏差を記す。
【0059】
[曲げ強度]シリンダー温度320℃、金型温度150℃にて、7mm(幅)×6.5mm(高さ)×126mm(長さ)の角状試験片を射出成形した。測定方法はASTM−D790に準じた。
【0060】
[参考例1(PPSの製造)]
PPS−1の製造
攪拌機付きオートクレーブに無水硫化リチウム1.145kg(25モル)、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略す)10.8kg、1,4−ジクロロベンゼン3.749kg(25.5モル)、および水12.5リットルを仕込み、窒素下に密閉し、220℃まで昇温後、220℃で3時間反応し、続いて260℃まで昇温後、260℃で2時間反応した。冷却後、反応生成物を40〜60℃の温水で5回洗浄し、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、80℃で24時間減圧乾燥し、減圧脱気下でシリンダー温度320℃の押出条件に設定したスクリュー式2軸押出機により溶融混練後ペレタイズして、NMP発生量2ppm、クロロホルム抽出量0.4重量%、MFR600g/10minのPPS−1を得た。
【0061】
PPS−2の製造
攪拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005kg(25モル)、酢酸ナトリウム0.205kg(2.5モル)およびNMP3.7kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.719kg(25.3モル)ならびにNMP3.7kgを加えて、窒素下に密閉し、270℃まで昇温後、270℃で2.5時間反応した。次に100℃に加熱されたNMP10kg中に投入して、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、さらに60〜80℃の熱湯で10回洗浄した。これを90℃に加熱されたpH4の酢酸水溶液25リットル中に投入し、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、80℃で24時間減圧乾燥し、PPS−1の場合と同様に溶融混練後ペレタイズして、NMP発生量5ppm、クロロホルム抽出量0.4重量%、MFR550g/10minのPPS−2を得た。
【0062】
PPS−3の製造
攪拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005kg(25モル)、酢酸ナトリウム0.205kg(2.5モル)およびNMP3.7kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.719kg(25.3モル)ならびにNMP3.7kgを加えて、窒素下に密閉し、270℃まで昇温後、270℃で2.5時間反応した。次に100℃に加熱されたNMP10kg中に投入して、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、さらに60〜80℃の熱湯で3回洗浄した。これを90℃に加熱されたpH4の酢酸水溶液25リットル中に投入し、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、80℃で24時間減圧乾燥し、PPS−1の場合と同様に溶融混練後ペレタイズして、NMP発生量30ppm、クロロホルム抽出量0.4重量%、MFR600g/10minのPPS−3を得た。
【0063】
PPS−4の製造
攪拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005kg(25モル)、酢酸ナトリウム0.205kg(2.5モル)およびNMP3.7kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.748kg(25.5モル)ならびにNMP3.7kgを加えて、窒素下に密閉し、270℃まで昇温後、270℃で2.5時間反応した。次に常温でアセトン10kg中に投入して、約1時間攪拌し続け濾過する洗浄を5回行い、さらに60〜80℃の熱湯で3回洗浄した。これを90℃に加熱されたpH4の酢酸水溶液25リットル中に投入し、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、80℃で24時間減圧乾燥し、PPS−1の場合と同様に溶融混練後ペレタイズして、NMP発生量5ppm、クロロホルム抽出量0.8重量%、MFR600g/10minのPPS−4を得た。
【0064】
PPS−5の製造
攪拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005kg(25モル)、およびNMP3.7kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.763kg(25.6モル)ならびにNMP3.7kgを加えて、窒素下に密閉し、274℃まで昇温後、274℃で0.8時間反応した。オートクレーブ下部に設けた抜き出しバルブを常温常圧下で開放して、内容物を抜き出し、50〜70℃の熱水で洗浄した。これを濾過し、pH4の酢酸水溶液25リットル中に投入し、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、窒素下に密閉し、192℃まで昇温後、約1時間攪拌し続けた後、冷却後濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、80℃で24時間減圧乾燥し、PPS−1の場合と同様に溶融混練後ペレタイズして、NMP発生量8ppm、クロロホルム抽出量4.2重量%、MFR3000(g/10min)のPPS−5を得た。
【0065】
[実施例および比較例で用いた配合材]
(a)PPS樹脂:PPS−1、PPS−2、PPS−3、PPS−4、PPS−5
(b1)ガラス繊維:日本電気硝子(株)製 T747GH
(c1)炭酸カルシウム:(株)同和カルファイン製 KSS1000
(c2)酸化マグネシウム−2:協和化学工業(株)製 ミクロマグ3−150
(c3)マグネシウム・アルミニウム・酸化物:協和化学工業(株)製 KW−2200。
【0066】
実施例1〜8
前述のようにして用意したPPS、ガラス繊維、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、またはマグネシウム・アルミニウム・酸化物を表1に示す割合でドライブレンドした後、減圧脱気下でシリンダー温度320℃の押出条件に設定したスクリュー式2軸押出機により溶融混練後ペレタイズした。得られたペレットを乾燥後、射出成形機を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度150℃の条件で射出成形またはインサート成形することにより、所定の特性評価用試験片を得た。得られた試験片およびペレットについて、前述した方法でNMP発生量、クロロホルム抽出量、アルミニウム腐食性評価、曲げ強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0067】
ここで得られた樹脂組成物および成形体は、NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量が十分に抑制され、ともに本発明上限範囲内であるため、アルミニウムの腐食が大幅に低減され、また機械的物性(曲げ弾性率、曲げ強度)とのバランスも良く、金属複合成形体用材料、特にアルミ電解コンデンサー封口板用材料としての実用価値の高いものであった。
【0068】
比較例1
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。非繊維状無機充填材との併用について、本発明の範囲外の場合、クロロホルム抽出量が本発明上限範囲外となり、アルミニウムの腐食性は大きく、実用価値の低いものであった。
【0069】
比較例2
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。繊維状無機充填材との併用について、本発明の範囲外の場合、NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量は、ともに本発明上限範囲内であり、アルミニウムの腐食性は低減されていたが、強度が非常に低く、実用価値の低いものであった。
【0070】
比較例3
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。繊維状無機充填材と非繊維状無機充填材との合計の配合量が本発明下限範囲外の場合、クロロホルム抽出量が本発明上限範囲外となり、アルミニウム腐食性は大きく、実用価値の低いものであった。
【0071】
比較例4
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。繊維状無機充填材と非繊維状無機充填材との合計の配合量が本発明上限範囲外の場合、NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量は、ともに本発明上限範囲内であり、アルミニウムの腐食性は低減されていたが、強度が非常に低く、実用価値の低いものであった。
【0072】
比較例5〜7
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。選択したPPS樹脂の種類、無機充填材の種類または配合量の調整により、NMP発生量が本発明上限範囲外となる場合、アルミニウム腐食性は大きく、実用価値の低いものであった。
【0073】
比較例8
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。選択したPPS樹脂の種類、無機充填材の種類または配合量の調整により、クロロホルム抽出量が本発明上限範囲外となる場合、アルミニウム腐食性は大きく、実用価値の低いものであった。
【0074】
比較例9
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。選択したPPS樹脂の種類、無機充填材の種類または配合量の調整により、NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量が本発明上限範囲外となる場合、アルミニウム腐食性は大きく、実用価値の低いものであった。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
本発明の金属複合成形体用PPS樹脂組成物は、NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量の抑制を同時に極めて高いレベルで達成せしめているため、金属複合成形体、特にアルミ電解コンデンサー封口板として用いた場合に、同コンデンサーに複合されている金属端子の腐食を起こさず、実用的な性能が得られることが明かである。
【0078】
【発明の効果】
本発明の金属複合成形体用PPS樹脂は、NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量の抑制が優れており、特にアルミ電解コンデンサー封口板等の用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いた金属複合成形体の形状を示す図で、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
1.アルミニウム製インサート金属
2.金属複合成形体
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば電解液を伴い、アルミニウム端子が複合される電解コンデンサー用部品などのような金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に関するものであり、複合している金属の耐腐食性が大幅に改善された金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に関する物である。
【0002】
【従来の技術】
電解コンデンサーは、アルミニウムやタンタルなどの金属箔に酸化アルミニウムなどの絶縁性酸化被膜を形成して誘電体とした陽極箔と導電性金属からなる陰極箔との間に電解紙を介在させて巻いたコンデンサー素子をケース中の電解液中に含浸し、外部端子を有する封口板を封着して製造される。電解コンデンサー用部品の内、特に封口板用材料には、その使用環境から優れた耐熱性と耐薬品性の両立が期待されている。耐熱性と耐薬品性を両立させたコンデンサー封口板用材料として、シンジオタクティックポリスチレン樹脂を使用した封口板(特許文献1参照)、フッ素樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂などを使用した封口板(特許文献2、3参照)などが提案されている。
【0003】
しかしながら上記材料の中で、シンジオタクティックポリスチレン樹脂は耐熱性が不十分であり、かつ、靭性が不足しており、フッ素樹脂は高価であり、ナイロン樹脂は吸水による寸法変化が著しく、フェノール樹脂は射出成形が不可能であり成形加工性が悪い。一方、ポリフェニレンスルフィド樹脂は、極めて優れた耐熱性と耐薬品性の両立を実現せしめているのみならず、比較的安価であり、また機械的特性、耐水性、成形加工性の各性能においても、非常にバランスが良い材料である。
【0004】
しかしながら、通常のポリフェニレンスルフィド樹脂はN−メチル−2−ピロリドン、およびクロロホルムで抽出されるオリゴマー成分などの副生成物が多く含有され、封口板に複合される金属端子の腐食が問題となる。上記特許文献3には溶融成形時のガス発生、金型腐蝕の低減のため、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を有機溶媒洗浄することの他、酸性水溶液などによる洗浄を施して用いる技術が開示されているが、具体的に開示された方法で処理されたポリフェニレンスルフィドにおいても上記副生成物の含有が多く、複合される金属電極が腐食するため、導電性が損なわれ電極としての実用性に優れた封口板を得るにはこの点に対する改善が重要な問題であることがわかった。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−157668号公報(第2頁)
【特許文献2】
特開平11−162796号公報(第5頁)
【特許文献3】
特開2002−231591号公報(第3〜4頁、実施例1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決するため、ポリフェニレンスルフィド樹脂の耐熱性および耐薬品性を損なうことなく、特定条件下で発生するガス中に含まれるN−メチル−2−ピロリドン含有量、およびクロロホルム抽出量を極限レベルまで低減し、複合される金属電極の腐食を抑制可能とした金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を提供せんとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、
1.(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(b)繊維状無機充填材40〜170重量部および(c)非繊維状無機充填材20〜170重量部を配合してなり、かつ(b)成分および(c)成分の合計が100〜240重量部であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、該ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を窒素雰囲気中で320℃、1時間加熱処理した場合の発生ガス中のN−メチル−2−ピロリドン含有量が2ppm以下であり、かつ該ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物をクロロホルムで85℃、5時間全還流抽出するソックスレー抽出法による抽出量が0.2重量%以下である金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
2.繊維状無機充填材が(b−1)ガラス繊維である上記1記載の金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
3.非繊維状無機充填材が(c−1)炭酸カルシウム、(c−2)酸化マグネシウム、(c−3)マグネシウム・アルミニウム酸化物から選択される1種以上である上記1または2記載の金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
4.複合成形される金属がアルミニウムである上記1〜3のいずれか記載の金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、および
5.金属複合成形体が電解コンデンサー用部品である上記1〜4のいずれか記載の金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂と称す)100重量部に対して、(b)繊維状無機充填材40〜170重量部および(c)非繊維状無機充填材20〜170重量部を配合してなり、かつ(b)成分および(c)成分の合計が100〜240重量部であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、該PPS樹脂組成物を窒素雰囲気中で320℃、1時間加熱処理した場合の発生ガス中のN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと称す)含有量(以下NMP発生量と称する場合がある)が2ppm以下であり、かつ該PPS樹脂組成物をクロロホルムで85℃、5時間全還流抽出するソックスレー抽出法による抽出量が0.2重量%以下であることが必要である。PPS樹脂組成物の上記NMP発生量、およびクロロホルム抽出量を上記範囲内とすることにより、はじめて実用性に優れた金属複合成形体に適した組成物が得られるものである。上記NMP発生量が2ppm以下、およびクロロホルム抽出量が0.2重量%以下のPPS樹脂組成物は、加熱処理時の発生ガス中のNMP含有量、ならびにクロロホルム抽出量が低減されたPPS樹脂を用い、繊維状無機充填材および非繊維状無機充填材の種類および配合量を適宜選択することにより調製される。
【0009】
(1)PPS樹脂
本発明で使用するPPS樹脂とは、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
【0010】
【化1】
【0011】
上記構造式で示される繰り返し単位を70モル%以上、特に90モル%以上含む重合体であることが耐熱性の点で好ましい。またPPS樹脂は、その繰り返し単位の30モル%未満を、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成することが可能である。
【0012】
【化2】
【0013】
本発明のPPS樹脂組成物の加熱時の発生ガス中のNMP発生量を本発明で規定する範囲とするためには、配合に供するPPS樹脂として、加熱時の発生ガス中のNMP発生量が低減されたものを用いるが、窒素雰囲気中で320℃、1時間加熱処理した場合に発生するガス中のNMP発生量が5ppm以下であることが好ましく、3ppm以下であることが特に好ましく、2ppm以下であることがさらに好ましい。あわせて本発明中のPPS樹脂組成物のクロロホルム抽出量を本発明で規定する範囲とするためには、配合に供するPPS樹脂として、クロロホルム抽出量が低減されたものを用いるが、クロロホルムで85℃、5時間全還流抽出するソックスレー抽出法による抽出量が0.5重量%以下であることが好ましく、0.4重量%以下であることが特に好ましく、0.3重量%以下であることがさらに好ましい。なお、上記NMP発生量および抽出量は、後述するPPS樹脂組成物におけるNMP発生量、抽出量と同様の方法で測定することができる。
【0014】
(PPS樹脂の重合)
一般に、PPS樹脂は、通常NMPなどの極性溶媒中でジハロゲン芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とを重合反応させることによって得られ、基本的な重合反応は特公昭45−3368号公報、特公昭52−12240号公報に開示されている。実用上、上記アルカリ金属硫化物として硫化ナトリウム、水硫化ナトリウム等のナトリウムを含有するアルカリ金属硫化物(ナトリウム系アルカリ金属硫化物)を用いる方法(製法1)(例えば特公昭45−3368号公報記載の実施例で代表される製造法(重合助剤であるアルカリ金属カルボン酸塩を添加しないため、重合度が上がらず比較的分子量が小さくオリゴマー成分も多分に含有している重合体が得られる)、特公昭52−12240号公報記載の実施例で代表される製造法(重合助剤であるアルカリ金属カルボン酸塩を添加するため、重合度が上がり比較的分子量が大きくオリゴマー成分、不純物も比較的少なく、実質的に直鎖状の重合体が得られる))、あるいは極性溶媒中でジハロゲン芳香族化合物と硫化リチウムなどのリチウムを含有するアルカリ金属硫化物(リチウム系アルカリ金属硫化物)を用い、等モル反応によりPPS樹脂を製造する方法(例えば特開2000−95941号公報で代表される製造法(高純度で分岐のない高分子量の重合体が得られる))(製法2)が挙げられる。
【0015】
製法1により得られる重合体は、そのままではNMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量がともに高くなる。NMP発生量を本発明の範囲内まで低減するには有機溶媒洗浄が効果的であり、有機溶媒としてはNMPが最も効果的である。その際、洗浄に用いたNMPがPPS樹脂中に残存しやすい問題が浮上する。NMP発生量は水で洗浄することで低減できる。ただし、NMP発生量を本発明の範囲内まで低減するには、水洗浄の強化が必要であり、例えばNMP発生量が十分低減されるまで洗浄を繰り返すなどの方法が用いられる。一方、NMP以外の有機溶媒により洗浄する場合においては、PPS樹脂中へのNMPの残存量を低減でき、加熱時のNMP発生量を抑制できる。しかしその反面、溶媒洗浄効率が低下するため、クロロホルム抽出量を本発明の範囲内まで低減するには、例えばアセトン、クロロホルムなどを使用して、長時間にわたる洗浄や、洗浄回数を増やすなどをする必要がある。上記のとおり、製法1により得られる重合体において、NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量を所望の範囲内まで低減するのは容易ではないが、十分に後処理工程の手法を施すことが肝要である。
【0016】
一方、製法2により得られる重合体は、重合原料に用いる硫化リチウムの特性上、高純度かつ高分子量であって、加熱時のNMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量がともに非常に少なくなり、比較的容易に本発明の範囲内まで低減することが可能となる。したがって、本発明の効果を向上する点においては、製法2により得られる重合体が好ましい。重合方法としては、極性溶媒としてNMP、ジハロゲン芳香族化合物として1,4−ジクロロベンゼンを用い、硫化リチウムと等モル反応させることが好ましい。なお、上記等モル反応とはジハロゲン芳香族化合物と硫化リチウム中の硫黄が理論上1:1で反応することを意味し、実際の重合において厳密に等モルである必要はなく、ジハロゲン芳香族化合物1モルに対し、硫化リチウムなどのイオウ源が0.5〜1.3モル程度であることが好ましい。
【0017】
また、さらに上記NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量を低減させる必要がある場合には、後述する後処理を施すことが好ましい。製造工程上、重合原料として硫化リチウム以外の原料を使用する場合においても、それら重合原料から硫化リチウムが生成される場合はこれと同義である。このような硫化リチウムを形成せしめる反応物としては、水硫化リチウム、水酸化リチウム、塩化リチウム、N−メチルアミノ酪酸リチウム塩などが挙げられる。
【0018】
本発明においては、重合反応を阻害しない範囲であれば、重合時に添加剤を併用することも可能である。添加剤としては、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、p−ジブロモベンゼン、p−ジヨードベンゼン、1−クロロ−4−ブロモベンゼン、1−クロロ−4−ヨードベンゼン、硫化ルビジウム、硫化セシウム、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、ギ酸リチウム、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、マロン酸リチウム、プロピオン酸リチウム、酪酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、2,4−ジニトロクロロベンゼン、2,5−ジクロロニトロベンゼン、2−ニトロ−4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、3,3’−ジニトロ−4,4’−ジクロロジフェニルスルフォン、2,5−ジクロロ−3−ニトロピリジン、2−クロロ−3,5−ジニトロピリジンなどが挙げられ、これらを1種単独で用いても、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0019】
(後処理)
本発明において上記PPS樹脂の加熱時のNMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量を低減させるために、加熱処理、有機溶媒洗浄、酸処理などの後処理を施すことができる。
【0020】
加熱処理はPPS樹脂を、通常200〜260℃、好ましくは220〜240℃という高温で加熱されるが、これによりNMPを除去することができる。加熱時間は10〜30時間が好ましく、15〜25時間が特に好ましい。加熱処理の雰囲気は通常、酸素雰囲気下、または窒素雰囲気下で行われるが、酸素雰囲気下であることが好ましい。
【0021】
次にPPS樹脂の有機溶媒洗浄について説明する。有機溶媒洗浄を施すことによりPPSオリゴマーの除去が可能である。PPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばNMP、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、NMP、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
【0022】
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、本発明の効果をより顕著にすることを目的として、撹拌または加熱することが好ましい。PPS樹脂に対する有機溶媒の使用量に特に制限はないが、乾燥したPPS樹脂1kgに対して1〜100kgであることが好ましく、2〜50kgであることがより好ましく、3〜15kgであることがさらに好ましい。
【0023】
有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。ただし、洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるため、100〜300℃の高温で洗浄することが好ましい。
【0024】
圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下(好ましくは250〜300℃)に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はないが、本発明の効果をより顕著にすることを目的として、バッチ式洗浄の場合、30〜60分間以上洗浄することが好ましい。また連続式で洗浄することも可能である。
【0025】
重合により生成したPPS樹脂を有機溶媒で洗浄するに際し、本発明の効果をさらに発揮させるために、水洗浄と組合わせるのが好ましい。また、N−メチルピロリドンなどの高沸点水溶性有機溶媒を用いた場合は、有機溶媒洗浄後、水で洗浄することにより、残存有機溶媒の除去が比較的容易に行えて好ましい。これらの洗浄に用いる水は蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。上記水洗浄の温度は50〜90℃であることが好ましく、60〜80℃であることが好ましい。PPS樹脂のNMP発生量が所望量より多い場合には、上記水洗浄を繰り返すことにより、NMP発生量を低減せしめることができる。
次に酸処理について説明する。PPS樹脂の酸処理により、オリゴマーの除去効率が向上する。PPS樹脂の酸処理に用いる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、塩酸、酢酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられ、なかでも塩酸および酢酸がより好ましく用いられるが、硝酸のようなPPS樹脂を分解、劣化させるものは好ましくない。
【0026】
酸処理の方法は、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、本発明の効果をより顕著にすることを目的として、撹拌または加熱することが好ましく、処理時間は30〜60分間以上であることが好ましい。また、PPS樹脂の酸処理に用いる酸について、pHは1.5〜5.5であることが好ましく、使用量は乾燥したPPS樹脂1kgに対して2〜100kgであることが好ましく、4〜50kgであることがより好ましく、5〜15kgであることがさらに好ましい。処理温度に特に制限はなく、通常室温で行うことが可能であり、加熱する場合には50〜90℃で行うことが可能である。例えば、酢酸を用いる場合、室温に保持したPH4の水溶液中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30〜60分間以上撹拌することが好ましい。酸処理を施されたPPS樹脂は残留している酸または塩などを物理的に除去するため、水で数回洗浄する。上記水洗浄の温度は50〜90℃であることが好ましく、60〜80℃であることが好ましい。
【0027】
洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の本発明および好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水、脱イオン水が用いられる。本発明においては、上記後処理を組み合わせることも可能であり、複数回繰り返すことも可能である。
【0028】
(2)無機充填材
繊維状無機充填材としては特に制限はなく、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ワラステナイト繊維、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、硼酸アルミニウムウィスカー、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、などが挙げられるが、なかでもガラス繊維が好ましい。また、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填材を2種以上併用することも可能である。かかる繊維状無機充填材は必要により、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することも可能である。繊維状無機充填材の配合量は、PPS樹脂100重量部に対して、40〜170重量部であることが好ましく、60〜150重量部であることがさらに好ましい。繊維状無機充填材の配合量が多すぎると組成物の流動性が損なわれる傾向があり、少なすぎると本発明の効果、および機械的物性の向上が損なわれる傾向がある。
【0029】
非繊維状無機充填材としては特に制限はなく、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化亜鉛、酸化カルシウム、アルミナ、酸化マグネシウム、マグネシウム・アルミニウム酸化物、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、シリカなどの非繊維状充填材が挙げられるが、本発明の効果、および機械的物性の向上の点から、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、マグネシウム・アルミニウム酸化物が好ましい。また、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填材を2種以上併用することも可能である。非繊維状無機充填材の配合量は、PPS樹脂に対して、20〜170重量部であることが好ましく、30〜140重量部であることがさらに好ましい。非繊維状無機充填材の配合量が多すぎると組成物の流動性が損なわれる傾向があり、少なすぎると本発明の効果、および機械的物性の向上が損なわれる傾向がある。
【0030】
また、本発明の効果、および機械的物性を向上の点から上記のような繊維状無機充填材と非繊維状無機充填材を併用することが好ましい。繊維状無機充填材と非繊維状無機充填材の配合量の合計は、PPS樹脂に対して、100〜240重量部であることが好ましく、80〜200重量部であることがさらに好ましい。繊維状無機充填材と非繊維状無機充填材の配合量の合計が多すぎると組成物の流動性が損なわれる傾向があり、少なすぎると本発明の効果、および機械的物性の向上が損なわれる傾向がある。また無機充填材の配合量はさらに、PPS樹脂組成物の加熱時のNMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量が本発明で規定する範囲内となるよう、用いるPPS樹脂の同NMP発生量、ならびに同クロロホルム抽出量を勘案しながら決定される。一般に無機充填材量を増加させることによりPPS樹脂組成物の上記NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量が低減される傾向にあり、また、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、マグネシウム・アルミニウム酸化物を用いる場合には他の無機充填材を用いた場合に比較してより少量でPPS樹脂組成物のNMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量が低減される傾向にある。
【0031】
(3)その他の添加剤
本発明のPPS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、シラン化合物、離型剤、結晶核剤などの通常の添加剤および少量の他種ポリマーを添加することができる。
【0032】
組成物に配合し得るシラン化合物としては、エポキシシラン化合物、アミノシラン化合物、ウレイドシラン化合物、イソシアネートシラン化合物のほか種々のものが使用できる。
【0033】
かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、およびγ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
【0034】
シラン化合物の配合量に特に制限はなく、(a)PPS樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の配合量であることが好ましく、中でも0.2〜5重量部の配合量がより好ましい。
【0035】
離型剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、またはモンタン酸ワックス類、またはステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミニウム等の金属石鹸、脂肪酸アミド系重縮合物、例えばエチレンジアミン・ステアリン酸重縮合物、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物などが挙げられる。
【0036】
結晶核剤としてはポリエ−テルエ−テルケトン樹脂、ナイロン樹脂、タルク、カオリン等が挙げられる。
【0037】
他種ポリマーとしてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリアミドエラストマ、ポリエステルエラストマなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0038】
また、次亜リン酸塩等の着色防止剤、エステル系化合物等の可塑剤、カーボンブラック、黒鉛などの着色剤、あるいは防食剤、酸化防止剤、熱安定剤、渇剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
【0039】
(4)各成分の配合
本発明のPPS樹脂組成物の配合方法は特に制限はないが、原料の混合物を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー及びミキシングロールなど通常公知の溶融混合機に供給して280〜380℃の温度で溶融混練する方法などを代表例として挙げることができる。上記溶融混練においては、減圧下で脱気しながら行うことが、溶融混練中に発生するNMPを含むガスをさらに除去できるため好ましい。なお、原料の混合順序に特に制限はない。
【0040】
また、少量添加剤成分については、他の成分を上記方法などで混練し、ペレット化した後、成形前に予備混合してもしくはしないで添加することもできる。
【0041】
(5)PPS樹脂組成物
本発明のPPS樹脂組成物は、窒素雰囲気中で320℃、1時間加熱処理による発生ガス中のNMP発生量が2ppm以下であることが必要である。
【0042】
PPS樹脂組成物のNMP発生量のパラメータについて以下に記す。
【0043】
NMP発生量は、PPS樹脂組成物0.5gを150℃、3時間で予備乾燥後、50mlのサンプルチューブに入れ、窒素ガス(20ml/min)を流しながら、320℃、1時間加熱し、発生ガスをアセトン5mlにトラップした後、アセトン溶液は乾燥させ、1mlアセトン溶液として1.0μlをGC、GC/MS分析で定量する方法で測定することができる。GCに島津製作所(株)製GC−9A、レコーダーに島津製作所(株)製C−R4Aを用いることができる。
【0044】
PPS樹脂組成物のNMP発生量が2ppm以下未満であると金属複合成形体に複合された金属端子などの金属が腐食を受けやすいため、本発明の樹脂組成物のNMP発生量は2ppm以下であることが必要であり、1.4ppm以下であることが好ましく、特に1ppm以下であることが好ましい。また、同NMP発生量は小さいほど好ましいが、0.1ppmまで低減できれば十分効果がある。
【0045】
あわせて、PPS樹脂組成物のクロロホルムで85℃、5時間全環流抽出するソックスレー抽出法による抽出量が0.2重量%以下であることが必要である。
【0046】
クロロホルム抽出量は、粉砕サンプルを32〜60meshで分級し、付着物除去のために30mlのメタノールで5回洗浄後、真空乾燥し試料2gを秤量する。2gの試料を20gのクロロホルムで、ソックスレー抽出器を用いて85℃、5時間全還流抽出(ソックスレー抽出)を行う。クロロホルムを回収し、23℃、1時間真空乾燥する。乾固後重量を抽出前の重量で除した値を算出する方法で測定する。
【0047】
PPS樹脂組成物のクロロホルム抽出量が0.2重量%以下未満であると金属複合成形体に複合された金属端子などの金属が腐食を受けやすいため、本発明の樹脂組成物のクロロホルム抽出量は0.2重量%以下であることが必要であり、0.15重量%以下であることが好ましく、特に0.1重量%以下であることが好ましい。また、同クロロホルム抽出量は小さいほど好ましいが、0.05重量%以下まで低減できれば十分効果がある。
【0048】
(6)PPS樹脂組成物の成形・用途
本発明のPPS樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、吹込成形、射出圧縮成形、トランスファー成形、真空成形など一般に熱可塑性樹脂の公知の成形方法により成形されるが、なかでも射出成形が好ましい。また、金属複合成形体用PPS樹脂組成物において、金属の複合方法としては、金属を金型へインサートした後、PPS樹脂組成物によりオーバーモールドする金属インサート、ビスどめ、ネジどめ、ピン圧入、超音波溶着、振動溶着、エポキシ樹脂やシリコン樹脂による接着など一般的に公知の複合方法により複合されるが、なかでも金属インサートが好ましい。
【0049】
本発明により得られたPPS樹脂組成物は、NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量が大幅に低減された樹脂組成物であるため、複合した金属は、長期にわたり腐蝕を受けない。したがって、特に金属が電極や金属端子など、通電が必要な部材として複合されている場合において、腐蝕による通電不良が発生せず、長期にわたり安定した実用性を得ることができる。なかでも電解コンデンサー用部品に用いることにより極めて優れた実用性を発揮し、なかでも複合される金属電極が腐食を受けやすいアルミニウム製であり、かつ電解液中に含浸されて使用されるアルミ電解コンデンサー封口板などが特に適する。
【0050】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
なお、実施例及び比較例の中で述べられるNMP発生量、クロロホルム抽出量、アルミニウム腐食性評価、曲げ強度の値は次の方法に従って測定した。
【0051】
[NMP発生量]PPS樹脂またはPPS樹脂組成物のペレット0.5gを150℃、3時間で予備乾燥後、50mlのサンプルチューブに入れ、窒素ガス(20ml/min)を流しながら、320℃、1時間加熱し、発生ガスをアセトン5mlにトラップした後、アセトン溶液は乾燥させ、1mlアセトン溶液として1.0μlをGC、GC/MS分析で定量する方法で測定した。GCに(株)島津製作所製GC−9A、レコーダーに(株)島津製作所製C−R4Aを用いた。なお、GCの測定条件は、カラム:CP−SIL 5CB 15m, 0.53mmid、オーブン温度:50℃(1min)−260℃(5℃/min)、キャリア:ヘリウム(30ml/min)とした。また、GC/MSの測定条件は、カラム:DB−1 15m, 0.53mmid、オーブン温度:50(1min)−260℃(5℃/min)とした。GC定量の検量線はチオフェノールで作成し、チオフェノール0.5〜1.0μg/μlアセトン溶液をGC−FID分析した。得られたGCピーク面積と注入絶対量の関係を求め検量線を作成し、発生ガス中のNMP含有量を求めた。定量は1g当たりの発生量(ppm)として求めた(チオフェノール換算値)。
【0052】
[クロロホルム抽出量]クロロホルム抽出量は、PPS樹脂またはPPS樹脂組成物のペレットを粉砕後、32〜60meshで分級し、付着物除去のために30mlのメタノールで5回洗浄後、真空乾燥し試料2gを秤量する。2gの試料を20gのクロロホルムで、ソックスレー抽出器を用いて85℃、5時間全還流抽出(ソックスレー抽出)を行う。クロロホルムを回収し、23℃、1時間真空乾燥する。乾固後重量を抽出前の重量で除した値を算出する方法で測定した。
【0053】
[アルミニウム腐食性評価]実施例でアルミニウム腐食性評価に用いた金属(アルミニウム)複合成形体の形状を図1に示す。図1(a)はアルミニウム製金属1をインサート成形した金属複合成形体2の上面図であり、(b)はその側面図である。該金属複合成形体を外形30mm、高さ150mmの試験管中へ入れ、試験管上部に栓をし、320℃で500時間保持した後、金属板を取り出して腐食状態を調べた。腐食の度合いにより、金属板の体積固有抵抗値(以下Rvと称す)があがるため、同Rvを腐食の指標とし、測定数は30とした。
【0054】
Rv(平均値)<10、かつRv(標準偏差)<1であるものにいては、アルミニウムの腐食性を「優」とした。アルミニウム腐食性が「優」のものは、アルミニウム部分が金属電極として長期に使用しても非常に信頼性が高いものと考えられる。
【0055】
Rv(平均値)<10、かつ10≦Rv(標準偏差)<102であるものについては、アルミニウムの腐食性を「良」とした。アルミニウム腐食性が「良」のものは、アルミニウム部分が金属電極として長期に使用しても比較的信頼性が高いものと考えられる。
【0056】
上記「優」、「良」以外で測定数30の全サンプルRvがRv≦106であるものについては、アルミニウムの腐食性を「可」とした。アルミニウム腐食性が「可」のものは、アルミニウム部分が金属電極として実使用に耐え得るものと考えられる。
【0057】
一方、通電不良領域であるRv>106を示すサンプルが測定数30に対して1つでもあるものについては、アルミニウムの腐食性を「不可」とした。アルミニウム腐食性が「不可」のものは、アルミニウム部分が通電不良を引き起こすため、金属電極としての利用価値が低いものであった。
【0058】
体積固有抵抗値の測定は、川口電機製作所(株)製超絶縁計R−503を用い、電極間距離が3mmになる方向に金属片をセットし、印加電圧500V×1分の条件での体積固有抵抗値を測定し、電極面積および電極間距離から算出した。Rvの測定値については、測定数30による平均値、最大値、最小値、および標準偏差を記す。
【0059】
[曲げ強度]シリンダー温度320℃、金型温度150℃にて、7mm(幅)×6.5mm(高さ)×126mm(長さ)の角状試験片を射出成形した。測定方法はASTM−D790に準じた。
【0060】
[参考例1(PPSの製造)]
PPS−1の製造
攪拌機付きオートクレーブに無水硫化リチウム1.145kg(25モル)、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略す)10.8kg、1,4−ジクロロベンゼン3.749kg(25.5モル)、および水12.5リットルを仕込み、窒素下に密閉し、220℃まで昇温後、220℃で3時間反応し、続いて260℃まで昇温後、260℃で2時間反応した。冷却後、反応生成物を40〜60℃の温水で5回洗浄し、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、80℃で24時間減圧乾燥し、減圧脱気下でシリンダー温度320℃の押出条件に設定したスクリュー式2軸押出機により溶融混練後ペレタイズして、NMP発生量2ppm、クロロホルム抽出量0.4重量%、MFR600g/10minのPPS−1を得た。
【0061】
PPS−2の製造
攪拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005kg(25モル)、酢酸ナトリウム0.205kg(2.5モル)およびNMP3.7kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.719kg(25.3モル)ならびにNMP3.7kgを加えて、窒素下に密閉し、270℃まで昇温後、270℃で2.5時間反応した。次に100℃に加熱されたNMP10kg中に投入して、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、さらに60〜80℃の熱湯で10回洗浄した。これを90℃に加熱されたpH4の酢酸水溶液25リットル中に投入し、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、80℃で24時間減圧乾燥し、PPS−1の場合と同様に溶融混練後ペレタイズして、NMP発生量5ppm、クロロホルム抽出量0.4重量%、MFR550g/10minのPPS−2を得た。
【0062】
PPS−3の製造
攪拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005kg(25モル)、酢酸ナトリウム0.205kg(2.5モル)およびNMP3.7kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.719kg(25.3モル)ならびにNMP3.7kgを加えて、窒素下に密閉し、270℃まで昇温後、270℃で2.5時間反応した。次に100℃に加熱されたNMP10kg中に投入して、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、さらに60〜80℃の熱湯で3回洗浄した。これを90℃に加熱されたpH4の酢酸水溶液25リットル中に投入し、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、80℃で24時間減圧乾燥し、PPS−1の場合と同様に溶融混練後ペレタイズして、NMP発生量30ppm、クロロホルム抽出量0.4重量%、MFR600g/10minのPPS−3を得た。
【0063】
PPS−4の製造
攪拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005kg(25モル)、酢酸ナトリウム0.205kg(2.5モル)およびNMP3.7kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.748kg(25.5モル)ならびにNMP3.7kgを加えて、窒素下に密閉し、270℃まで昇温後、270℃で2.5時間反応した。次に常温でアセトン10kg中に投入して、約1時間攪拌し続け濾過する洗浄を5回行い、さらに60〜80℃の熱湯で3回洗浄した。これを90℃に加熱されたpH4の酢酸水溶液25リットル中に投入し、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、80℃で24時間減圧乾燥し、PPS−1の場合と同様に溶融混練後ペレタイズして、NMP発生量5ppm、クロロホルム抽出量0.8重量%、MFR600g/10minのPPS−4を得た。
【0064】
PPS−5の製造
攪拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005kg(25モル)、およびNMP3.7kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.763kg(25.6モル)ならびにNMP3.7kgを加えて、窒素下に密閉し、274℃まで昇温後、274℃で0.8時間反応した。オートクレーブ下部に設けた抜き出しバルブを常温常圧下で開放して、内容物を抜き出し、50〜70℃の熱水で洗浄した。これを濾過し、pH4の酢酸水溶液25リットル中に投入し、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、窒素下に密閉し、192℃まで昇温後、約1時間攪拌し続けた後、冷却後濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、80℃で24時間減圧乾燥し、PPS−1の場合と同様に溶融混練後ペレタイズして、NMP発生量8ppm、クロロホルム抽出量4.2重量%、MFR3000(g/10min)のPPS−5を得た。
【0065】
[実施例および比較例で用いた配合材]
(a)PPS樹脂:PPS−1、PPS−2、PPS−3、PPS−4、PPS−5
(b1)ガラス繊維:日本電気硝子(株)製 T747GH
(c1)炭酸カルシウム:(株)同和カルファイン製 KSS1000
(c2)酸化マグネシウム−2:協和化学工業(株)製 ミクロマグ3−150
(c3)マグネシウム・アルミニウム・酸化物:協和化学工業(株)製 KW−2200。
【0066】
実施例1〜8
前述のようにして用意したPPS、ガラス繊維、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、またはマグネシウム・アルミニウム・酸化物を表1に示す割合でドライブレンドした後、減圧脱気下でシリンダー温度320℃の押出条件に設定したスクリュー式2軸押出機により溶融混練後ペレタイズした。得られたペレットを乾燥後、射出成形機を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度150℃の条件で射出成形またはインサート成形することにより、所定の特性評価用試験片を得た。得られた試験片およびペレットについて、前述した方法でNMP発生量、クロロホルム抽出量、アルミニウム腐食性評価、曲げ強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0067】
ここで得られた樹脂組成物および成形体は、NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量が十分に抑制され、ともに本発明上限範囲内であるため、アルミニウムの腐食が大幅に低減され、また機械的物性(曲げ弾性率、曲げ強度)とのバランスも良く、金属複合成形体用材料、特にアルミ電解コンデンサー封口板用材料としての実用価値の高いものであった。
【0068】
比較例1
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。非繊維状無機充填材との併用について、本発明の範囲外の場合、クロロホルム抽出量が本発明上限範囲外となり、アルミニウムの腐食性は大きく、実用価値の低いものであった。
【0069】
比較例2
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。繊維状無機充填材との併用について、本発明の範囲外の場合、NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量は、ともに本発明上限範囲内であり、アルミニウムの腐食性は低減されていたが、強度が非常に低く、実用価値の低いものであった。
【0070】
比較例3
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。繊維状無機充填材と非繊維状無機充填材との合計の配合量が本発明下限範囲外の場合、クロロホルム抽出量が本発明上限範囲外となり、アルミニウム腐食性は大きく、実用価値の低いものであった。
【0071】
比較例4
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。繊維状無機充填材と非繊維状無機充填材との合計の配合量が本発明上限範囲外の場合、NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量は、ともに本発明上限範囲内であり、アルミニウムの腐食性は低減されていたが、強度が非常に低く、実用価値の低いものであった。
【0072】
比較例5〜7
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。選択したPPS樹脂の種類、無機充填材の種類または配合量の調整により、NMP発生量が本発明上限範囲外となる場合、アルミニウム腐食性は大きく、実用価値の低いものであった。
【0073】
比較例8
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。選択したPPS樹脂の種類、無機充填材の種類または配合量の調整により、クロロホルム抽出量が本発明上限範囲外となる場合、アルミニウム腐食性は大きく、実用価値の低いものであった。
【0074】
比較例9
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。選択したPPS樹脂の種類、無機充填材の種類または配合量の調整により、NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量が本発明上限範囲外となる場合、アルミニウム腐食性は大きく、実用価値の低いものであった。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
本発明の金属複合成形体用PPS樹脂組成物は、NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量の抑制を同時に極めて高いレベルで達成せしめているため、金属複合成形体、特にアルミ電解コンデンサー封口板として用いた場合に、同コンデンサーに複合されている金属端子の腐食を起こさず、実用的な性能が得られることが明かである。
【0078】
【発明の効果】
本発明の金属複合成形体用PPS樹脂は、NMP発生量、ならびにクロロホルム抽出量の抑制が優れており、特にアルミ電解コンデンサー封口板等の用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いた金属複合成形体の形状を示す図で、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
1.アルミニウム製インサート金属
2.金属複合成形体
Claims (5)
- (a)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(b)繊維状無機充填材40〜170重量部および(c)非繊維状無機充填材20〜170重量部を配合してなり、かつ(b)成分および(c)成分の合計が100〜240重量部であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、該ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を窒素雰囲気中で320℃、1時間加熱処理した場合の発生ガス中のN−メチル−2−ピロリドン含有量が2ppm以下であり、かつ該ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物をクロロホルムで85℃、5時間全還流抽出するソックスレー抽出法による抽出量が0.2重量%以下である金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 繊維状無機充填材が(b−1)ガラス繊維である請求項1記載の金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 非繊維状無機充填材が(c−1)炭酸カルシウム、(c−2)酸化マグネシウム、(c−3)マグネシウム・アルミニウム酸化物から選択される1種以上である請求項1または2記載の金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 複合成形される金属がアルミニウムである請求項1〜3のいずれか記載の金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 金属複合成形体が電解コンデンサー用部品である請求項1〜4のいずれか記載の金属複合成形体用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
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-
2002
- 2002-11-11 JP JP2002327512A patent/JP2004161834A/ja active Pending
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