JP2004277520A - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物 - Google Patents

ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物 Download PDF

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JP2004277520A
JP2004277520A JP2003069131A JP2003069131A JP2004277520A JP 2004277520 A JP2004277520 A JP 2004277520A JP 2003069131 A JP2003069131 A JP 2003069131A JP 2003069131 A JP2003069131 A JP 2003069131A JP 2004277520 A JP2004277520 A JP 2004277520A
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Akira Kojima
彰 小島
Takashi Nishi
剛史 西
Naoya Iwamura
尚哉 岩村
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Abstract

【課題】本発明は、低臭気性に優れ、かつ、増粘作用の抑制ならびに熱安定性の高いポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を提供せんとするものである。
【解決手段】本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(b)繊維状無機充填材75〜170重量部、(c)酸化マグネシウム1〜35重量部を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、該ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の315.5℃、5000g荷重でのメルトフローレート(MFR)が15g/10分以上、および該ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を200℃、5時間加熱処理した場合の同条件でのMFR保持率が50%以上であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物である。また、本発明のOA機器用部品は、かかるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなるものである。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばコピー、プリンタ、FAX、プロジェクタなどのOA機器用部品などのように、家庭やオフィスで使用された際の臭気の抑制が要求される用途に有用なポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンスルフィド樹脂は優れた耐熱性、剛性、寸法安定性、および難燃性などエンジニアリングプラスチックとしては好適な性質を有していることから、射出成形用を中心として各種電気部品、機械部品及び自動車部品などの用途に使用されている。
【0003】
しかしながら、コピー、プリンタ、FAX、プロジェクタなどの家庭やオフィスで使用されるOA機器用部品などの用途に用いる場合には、機器の稼働中に発生する熱により部品が高温に晒されるため、ポリフェニレンスルフィド樹脂に含有される不純物成分であるγ−ブチロラクトンやフェノールなどによる臭気が特に問題となることが判明した。
【0004】
ポリフェニレンスルフィド樹脂の発生ガスの低減を目的とした検討は、これまでにもいくつかなされている。しかし、その中でも特に臭気性のガスを特定し、低臭気性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂を目的とした検討は例がない。発生ガスの低減検討については、例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂にハイドロタルサイト類およびMg/Al酸化物固溶体からなる群より選択される少なくとも一種の無機充填材と、ジ(シクロヘキシル)アンモニウムナイトライトを配合することによりSOなどの腐食性ガスを低減させる方法(特許文献1参照)、ポリフェニレンスルフィド樹脂に酸化マグネシウムを配合することによりSO、HSなどの腐食性ガスを低減させる方法(特許文献2参照)、ポリアリーレンスルフィドを融点以下の温度で加熱処理して溶媒や未反応モノマーなどの揮発成分を除去する方法(特許文献3参照)などが提案されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献記載の発明においては、主として腐食性ガスの低減を目的としているため、特にOA機器用部品の用途に用いる際、これら文献に記載された組成物をそのまま適用するのみでは、十分な臭気の抑制は困難であった。また、上記文献記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物をさらに加熱処理することにより、臭気の原因となる成分を低減する方法も考えられるが、本発明者らの検討によればそのようなポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を単に加熱処理するのみでは、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の増粘作用が著しく、また加熱処理に対する熱安定性が悪いため、粘度バラツキが大きくなり、大型かつ複雑形状を要するOA機器用部品においては、射出成形による製造が困難となり、実用的ではない。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−322271号公報(第2頁)
【特許文献2】
特開2002−188005号公報(第2頁)
【特許文献3】
特開2001−31765号公報(第2頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決するため、低臭気性に優れ、かつ、増粘作用の抑制ならびに熱安定性の高いポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を提供せんとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、
1.(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(b)繊維状無機充填材75〜170重量部、(c)酸化マグネシウム1〜35重量部を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、該ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の315.5℃、5000g荷重でのメルトフローレート(MFR)が15g/10分以上、および該ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を200℃、5時間加熱処理した場合の同条件でのMFR保持率が50%以上であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
2.さらに(d)酸化マグネシウム以外の非繊維状無機充填材10〜110重量部を配合してなる上記1記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
3.酸化マグネシウムの平均粒子径が2.0μm以下である上記1または2記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
4.酸化マグネシウムの純度が98.5%以上である上記1〜3のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
5.140〜240℃の環境下で使用される樹脂成形体である上記1〜4のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
6.ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物がOA機器用部品用である上記1〜5のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
7.140〜240℃の環境下で使用される上記1〜5のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体、
8.上記1〜5のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形してなるOA機器用部品である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂と称す)100重量部に対して、(b)繊維状無機充填材75〜170重量部および(c)酸化マグネシウム1〜35重量部を配合してなるPPS樹脂組成物であって、該PPS樹脂組成物の315.5℃、5000g荷重でのMFRが15g/10分以上、および該PPS樹脂組成物を200℃、5時間加熱処理した場合の同条件でのMFR保持率が50%以上である必要がある。PPS樹脂組成物の上記MFR、およびMFR保持率を上記範囲内とすることにより、はじめて低臭気性ならびに熱安定性に優れた組成物が得られるものである。上記MFRが15g/10分以上、MFR保持率が50%以上のPPS樹脂組成物は、熱安定性に優れたPPS樹脂を用い、繊維状無機充填材の配合量、酸化マグネシウムの種類および配合量を適宜選択することにより調製される。
【0010】
(1)PPS樹脂
本発明で使用するPPS樹脂とは、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
【0011】
【化1】
Figure 2004277520
【0012】
上記構造式で示される繰り返し単位を70モル%以上、特に90モル%以上含む重合体であることが耐熱性の点で好ましい。またPPS樹脂は、その繰り返し単位の30モル%未満を、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成することが可能である。
【0013】
【化2】
Figure 2004277520
【0014】
本発明のPPS樹脂組成物のMFRを本発明で規定する範囲とするためには、配合に供するPPS樹脂として、MFRが高いものを用いるが、315.5℃、5000g荷重でのMFRが200g/10分以上であることが好ましく、300g/10分以上であることが特に好ましく、500g/10分以上であることがさらに好ましい。上限としてはMFRが1000g/10分であることが好ましい。
【0015】
あわせて本発明中のPPS樹脂組成物のMFR保持率を本発明で規定する範囲とするためには、配合に供するPPS樹脂としても、MFR保持率の高い、すなわち熱安定性に優れたものを用いる必要がある。MFR保持率は、未架橋PPS樹脂に比べ、架橋PPS樹脂の方が優れており、さらに高度に架橋されたものほど優れている。また、架橋PPS樹脂の中でも、架橋前のリニア重合度が高い、すなわちMFRが低いものほど優れている。具体的には架橋前のPPS樹脂のMFRが1200g/10分以下であることが好ましく、1000g/10分以下であることがより好ましく、800g/10分以下であることがさらに好ましい。このようなMFRを示す架橋前PPS樹脂を高度に架橋させたPPS樹脂が最もMFR保持率の高いものとなる。ただし、過度の架橋は架橋後のPPS樹脂のMFRの低下に繋がり、PPS樹脂組成物として使用した際、流動性を損なう可能性がある。本発明ではMFR保持率の高いものを用いるが、PPS樹脂を200℃、5時間加熱処理した場合の315.5℃、5000g荷重でのMFR保持率が50%以上であることが好ましく、60%以上であることが特に好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。上限としては特に制限はないが、100%以下であることが好ましい。なお、上記MFR、MFR保持率は、後述するPPS樹脂組成物におけるMFR、MFR保持率と同様の方法で測定することができる。
【0016】
(PPS樹脂の重合)
一般に、PPS樹脂は、特公昭45−3368号公報で代表される製造法により得られる比較的分子量の小さい重合体と、特公昭52−12240号公報で代表される製造法により得られる実質的に直鎖状で不純物が少ない未架橋の重合体などがある。
【0017】
前者と後者の違いは重合助剤であるアルカリ金属カルボン酸塩の重合系内における有無である。
【0018】
前者は重合系内にアルカリ金属カルボン酸塩を添加しないため、重合度が上がらず比較的分子量が小さく不純物も多分に含有している重合体であるので、そのままではγ−ブチロラクトンやフェノールなどの臭気発生成分が多く残存するだけでなく、靭性、柔軟性及び耐衝撃性が不足している。また、臭気発生成分の除去を目的とした加熱処理を行う際もMFR保持率が低いため、熱安定性が悪く、粘度バラツキが大きい。そのため、かかる重合体を酸素の存在下200〜260℃という高温で酸化架橋することで高分子量化し、臭気発生成分を低減するとともに、靭性、柔軟性及び耐衝撃性を改善することができる。酸化架橋によりMFR保持率が若干改善され、熱安定性をやや高めることが可能であるが、当該製造法で得られるPPS樹脂を単独で使用した場合、PPS樹脂組成物のMFR保持率を本発明範囲内とすることは困難であり、低臭気性、流動性、機械的物性のバランス上からも実用的ではない。
【0019】
後者は重合系内にアルカリ金属カルボン酸塩を添加するため、重合度が上がり比較的分子量が大きく、臭気発生成分の含有も比較的少ないPPS樹脂が得られる。かかる重合体を酸素の存在下200〜260℃という高温で酸化架橋することでさらに高分子量化し、臭気発生成分のさらなる低減ができ、靭性、柔軟性及び耐衝撃性のさらなる改善をすることができる。あわせて、リニア重合度が高いため、MFR保持率が高く、熱安定性に優れている。
【0020】
本発明においては、本発明で規定する条件を比較的容易に満足させる得るのは後者である。ただし、前者のPPS樹脂を併用することによりPPS樹脂のMFRやMFR保持率を調整することは可能である。
【0021】
(後処理)
本発明において上記PPS樹脂からの臭気発生成分量の低減、ならびに熱安定性を向上させるために、加熱処理、有機溶媒洗浄、酸処理などの後処理を施すことができる。
【0022】
加熱処理はPPS樹脂を、通常200〜260℃、好ましくは220〜240℃という高温で加熱されるが、これによりγ−ブチロラクトンやフェノールなどの臭気発生成分を除去することができる。あわせて、熱安定性が向上し、粘度バラツキを抑制することができる。加熱時間は10〜30時間が好ましく、15〜25時間が特に好ましい。加熱処理の雰囲気は通常、酸素雰囲気下、または窒素雰囲気下で行われるが、酸素雰囲気下であることが好ましい。
【0023】
次にPPS樹脂の有機溶媒洗浄について説明する。有機溶媒洗浄を施すことにより臭気発生成分を除去することができる。PPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略す)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、NMP、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
【0024】
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、本発明の効果をより顕著にすることを目的として、撹拌または加熱することが好ましい。PPS樹脂に対する有機溶媒の使用量に特に制限はないが、乾燥したPPS樹脂1kgに対して1〜100kgであることが好ましく、2〜50kgであることがより好ましく、3〜15kgであることがさらに好ましい。
【0025】
有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。ただし、洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるため、100〜300℃の高温で洗浄することが好ましい。
【0026】
圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下(好ましくは250〜300℃)に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はないが、本発明の効果をより顕著にすることを目的として、バッチ式洗浄の場合、30〜60分間以上洗浄することが好ましい。また連続式で洗浄することも可能である。
【0027】
重合により生成したPPS樹脂を有機溶媒で洗浄するに際し、本発明の効果をさらに発揮させるために、水洗浄と組合わせるのが好ましい。また、N−メチルピロリドンなどの高沸点水溶性有機溶媒を用いた場合は、有機溶媒洗浄後、水で洗浄することにより、残存有機溶媒の除去が比較的容易に行えて好ましい。これらの洗浄に用いる水は蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。上記水洗浄の温度は50〜90℃であることが好ましく、60〜80℃であることが好ましい。
【0028】
次に酸処理について説明する。酸処理を施すことにより臭気発生成分を除去することができる。PPS樹脂の酸処理に用いる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、塩酸、酢酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられ、なかでも酢酸がより好ましく用いられるが、硝酸のようなPPS樹脂を分解、劣化させるものは好ましくない。
【0029】
酸処理の方法は、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、本発明の効果をより顕著にすることを目的として、撹拌または加熱することが好ましく、処理時間は30〜60分間以上であることが好ましい。また、PPS樹脂の酸処理に用いる酸について、pHは2.5〜5.5であることが好ましく、使用量は乾燥したPPS樹脂1kgに対して2〜100kgであることが好ましく、4〜50kgであることがより好ましく、5〜15kgであることがさらに好ましい。処理温度に特に制限はなく、通常室温で行うことが可能であり、加熱する場合には50〜90℃で行うことが可能である。例えば、酢酸を用いる場合、室温に保持したPH4の水溶液中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30〜60分間以上撹拌することが好ましい。酸処理を施されたPPS樹脂は残留している酸または塩などを物理的に除去するため、水で数回洗浄する。上記水洗浄の温度は50〜90℃であることが好ましく、60〜80℃であることが好ましい。
【0030】
洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の本発明および好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水、脱イオン水が用いられる。本発明においては、上記後処理を組み合わせることも可能であり、複数回繰り返すことも可能である。
【0031】
(2)繊維状無機充填材
繊維状無機充填材としては特に制限はなく、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ワラステナイト繊維、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、硼酸アルミニウムウィスカー、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、などが挙げられるが、なかでも機械的物性を著しく向上することができる点からガラス繊維が好ましい。また、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填材を2種以上併用することも可能である。かかる繊維状無機充填材は必要により、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することも可能である。繊維状無機充填材の配合量は、PPS樹脂100重量部に対して、通常75〜170重量部の範囲であるが、本発明の効果、および機械的物性のバランスの上から、90〜155重量部であることが好ましく、105〜140重量部であることがさらに好ましい。繊維状無機充填材の配合量が多すぎると組成物の流動性が損なわれる傾向があり、少なすぎると本発明の効果、および機械的物性の向上が損なわれる傾向がある。
【0032】
(3)酸化マグネシウム
本発明の効果を向上せしめる目的で、酸化マグネシウムを配合する必要がある。本発明の効果を顕著にする、あるいは機械的物性に悪影響を及ぼさなくするために、酸化マグネシウムは、平均粒子径が2.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましい。下限に特に制限はなく、小さいほど好ましいが、0.5μm以上であれば市場からの入手は容易であり、臭気発生成分量の低減効果も十分に発揮できる上で好ましい。
【0033】
ここで、平均粒子径とは、試料0.70gにエタノールを加え、3分間超音波分散させたものにレーザー光を照射させるマイクロトラック法により求められる値であり、例えば平均粒子径が2.0μm以下であるとは、全粒子中の50%以上の粒子の粒子径が2.0μm以下であることを意味する。
【0034】
また、一般に汎用品として入手できる酸化マグネシウムの純度は98%未満であるが、本発明においては、98.5%以上の純度を有するものが好ましい。高純度の酸化マグネシウムは物理的・化学的に非常に活性であり、本発明の効果をより一層高めることができる。このように高純度化した酸化マグネシウムは長時間焼成することにより得ることができる。上記のとおり酸化マグネシウムの純度としては、98.5%以上であることが好ましいが、99.0%以上であることがさらに好ましい。純度の上限としては、特に制限はなく、99.5%以下であれば市場からの入手は容易であり、臭気発生成分量の低減効果も十分に発揮できる上で好ましい。ここで、純度とは、JISK6224(キレート滴定法)によって求められた値を表す。
【0035】
上記平均粒子径、純度を有する酸化マグネシウムは、市販品から選択して用いることが可能である。そのような市販品としては、例えば協和化学工業(株)製“ミクロマグ”3−150を挙げることができる。
【0036】
酸化マグネシウムは、必要によりイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することも可能である。酸化マグネシウムの配合量は、PPS樹脂100重量部に対して、通常1〜35重量部の範囲であるが、本発明の効果、および機械的物性のバランスの上から、1.1〜20重量部であることが好ましく、1.2〜10重量部であることがさらに好ましい。酸化マグネシウムの配合量が多すぎると組成物の流動性、および機械的物性が損なわれる傾向があり、少なすぎると本発明の効果の向上が損なわれる傾向がある。
【0037】
(4)酸化マグネシウム以外の非繊維状無機充填材
本発明においては、上記成分に酸化マグネシウム以外の非繊維状無機充填材を併用することにより、さらに臭気発生成分量の低減効果を改良することが可能である。酸化マグネシウム以外の非繊維状無機充填材としては特に制限はなく、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化亜鉛、酸化カルシウム、アルミナ、マグネシウム・アルミニウム酸化物、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、シリカなどの非繊維状充填材が挙げられるが、本発明の効果、および機械的物性の向上の点から、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、マグネシウム・アルミニウム酸化物が好ましい。また、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填材を2種以上併用することも可能である。酸化マグネシウム以外の非繊維状無機充填材の配合量は、PPS100重量部に対して、通常10〜110重量部の範囲であるが、本発明の効果、および機械的物性のバランス上から、樹脂に対して、20〜100重量部であることが好ましく、30〜90重量部であることがさらに好ましい。酸化マグネシウム以外の非繊維状無機充填材の配合量が多すぎると組成物の流動性が損なわれる傾向があり、少なすぎると本発明の効果、および機械的物性の向上が損なわれる傾向がある。
【0038】
(5)その他の添加剤
本発明のPPS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、シラン化合物、離型剤、結晶核剤などの通常の添加剤および少量の他種ポリマーを添加することができる。
【0039】
組成物に配合し得るシラン化合物としては、エポキシシラン化合物、アミノシラン化合物、ウレイドシラン化合物、イソシアネートシラン化合物のほか種々のものが使用できる。
【0040】
かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、およびγ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
【0041】
シラン化合物の配合量に特に制限はなく、(a)PPS樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の配合量であることが好ましく、中でも0.2〜5重量部の配合量がより好ましい。
【0042】
離型剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、またはモンタン酸ワックス類、またはステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミニウム等の金属石鹸、脂肪酸アミド系重縮合物、例えばエチレンジアミン・ステアリン酸重縮合物、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物などが挙げられる。
【0043】
結晶核剤としてはポリエ−テルエ−テルケトン樹脂、ナイロン樹脂、タルク、カオリン等が挙げられる。
【0044】
他種ポリマーとしてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリアミドエラストマ、ポリエステルエラストマなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0045】
また、次亜リン酸塩等の着色防止剤、エステル系化合物等の可塑剤、カーボンブラック、黒鉛などの着色剤、あるいは防食剤、酸化防止剤、熱安定剤、渇剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
【0046】
(6)各成分の配合
本発明のPPS樹脂組成物の配合方法は特に制限はないが、原料の混合物を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー及びミキシングロールなど通常公知の溶融混合機に供給して280〜380℃の温度で溶融混練する方法などを代表例として挙げることができる。上記溶融混練においては、減圧下で脱気しながら行うことが、溶融混練中に発生する臭気発生成分を含むガスをさらに除去できるため好ましい。なお、原料の混合順序に特に制限はない。
【0047】
また、少量添加剤成分については、他の成分を上記方法などで混練し、ペレット化した後、成形前に予備混合してもしくはしないで添加することもできる。
【0048】
(7)PPS樹脂組成物
本発明のPPS樹脂組成物は、高粘度であると大型かつ複雑形状を要するOA機器用部品においては、射出成形による製造が困難であるため、315.5℃、5000g荷重でのMFRが通常15g/10分以上が必要であるが、本発明の効果を高める上で20g/10分以上であることが好ましく、25g/10分以上であることがさらに好ましい。MFRが高すぎると臭気発生成分の低減効果、または機械的強度が低下するため、上限としては50g/10分以下であることが好ましい。
【0049】
また、PPS樹脂組成物に対して、射出成形前に加熱処理を施すことは、臭気発生成分量の大幅な低減効果が得られるため好ましいが、加熱処理後の増粘作用が大きいと、上述するMFRと同様に射出成形による製造が困難となる。また、熱安定性も悪いため、実用性に乏しいものとなる。したがって、本発明のPPS樹脂組成物は、200℃、5時間加熱処理した場合の同条件でのMFR保持率が50%以上であることが必要である。PPS樹脂組成物の200℃、5時間加熱処理した場合の同条件でのMFR保持率としては、通常50%以上であることが必要であるが、本発明の効果を高める上で55%以上であることが好ましく、65%以上であることがさらに好ましい。MFR保持率の上限としては、特に制限はないが、100%以下であることが好ましい。
【0050】
PPS樹脂組成物のMFRのパラメータについて以下に記す。
【0051】
MFRは、130℃、3時間乾燥した試料(PPS樹脂粉末、またはPPS樹脂組成物のペレット)5gを315.5℃、5分滞留させた後、5kg荷重をかけ測定(JIS−K7210準拠)することができる。また、MFR保持率は試料(PPS樹脂粉末、または樹脂組成物のペレット)について200℃、5時間加熱処理の前後でのMFRの比であり、次式のようにして算出することができる。
MFR保持率=[(加熱処理後のMFR)/(加熱処理前のMFR)]×100(%)
なお、測定機には東洋精機(株)製メルトインデクサーC5059Dを使用することができる。
【0052】
(8)PPS樹脂組成物の成形・用途
本発明のPPS樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、吹込成形、射出圧縮成形、トランスファー成形、真空成形など一般に熱可塑性樹脂の公知の成形方法により成形されるが、なかでも射出成形が好ましい。
【0053】
本発明により得られたPPS樹脂組成物は、低臭気性に優れ、かつ、さらに臭気を低減するためにPPS樹脂組成物を使用前に加熱処理して用いる場合においても、MFR、ならびにMFR保持率が高いため、増粘作用の抑制ならび熱安定性が高く実用的である。したがって、コピー、プリンタ、FAX、プロジェクタなどの家庭やオフィスで140℃〜240℃の高温下で使用されるOA機器部用部品に用いることにより極めて優れた実用性を発揮する。
【0054】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
なお、実施例及び比較例の中で述べられる臭気発生成分量、MFR、MFR保持率、曲げ強度の値は次の方法に従って測定した。
【0055】
[臭気発生成分量]PPS樹脂またはPPS樹脂組成物のペレット0.5gを150℃、3時間で予備乾燥後、50mlのサンプルチューブに入れ、窒素ガス(20ml/min)を流しながら、320℃、1時間加熱し、発生ガスをアセトン5mlにトラップした後、アセトン溶液は乾燥させ、1mlアセトン溶液として1.0μlをGC、GC/MS分析で定量する方法で測定した。GCに(株)島津製作所製GC−9A、レコーダーに(株)島津製作所製C−R4Aを用いた。なお、GCの測定条件は、カラム:CP−SIL 5CB 15m, 0.53mmid、オーブン温度:50℃(1min)−260℃(5℃/min)、キャリア:ヘリウム(30ml/min)とした。また、GC/MSの測定条件は、カラム:DB−1 15m, 0.53mmid、オーブン温度:50(1min)−260℃(5℃/min)とした。GC定量の検量線はチオフェノールで作成し、チオフェノール0.5〜1.0μg/μlアセトン溶液をGC−FID分析した。得られたGCピーク面積と注入絶対量の関係を求め検量線を作成し、発生ガス中のNMP含有量を求めた。定量は1g当たりの発生量(ppm)として求めた(チオフェノール換算値)。
【0056】
[MFRおよびMFR保持率]MFRは130℃、3時間乾燥したPPS樹脂組成物のペレット5gを315.5℃、5分滞留させた後、5kg荷重をかけ測定(JIS−K7210準拠)した。またMFR保持率は130℃、3時間乾燥したPPS樹脂組成物のペレットについて200℃、5時間加熱処理の前後でのMFRの比であり、次式のようにして算出した。
MFR保持率=(加熱処理後のMFR)/(加熱処理前のMFR)]×100(%)
なお、測定機には東洋精機(株)製メルトインデクサーC5059Dを使用した。
【0057】
[曲げ強度]シリンダー温度320℃、金型温度150℃にて、7mm(幅)×6.5mm(高さ)×126mm(長さ)の角状試験片を射出成形した。測定方法はASTM−D790に準じた。
【0058】
[参考例1(PPSの製造)]
PPS−1の製造
攪拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005kg(25モル)、水酸化ナトリウム0.022kg(0.55モル)、酢酸ナトリウム0.861kg(8.3モル)およびNMP5kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.719kg(25.3モル)ならびにNMP1.8kgを加えて、窒素下に密閉し、274℃まで昇温後、274℃で0.8時間反応した。オートクレーブ下部に設けた抜き出しバルブを常温常圧下で開放して、内容物を抜き出し、80℃の熱水で30分洗浄した。これを濾過し、pH4の酢酸水溶液25リットル中に投入し、密閉されたオートクレーブ中で192℃で約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、ポリマーを120℃で8時間乾燥し、その後215℃で加熱処理し、架橋前MFR1000g/10分、架橋後MFR300g/10分のPPS−1を得た。
【0059】
PPS−2の製造
攪拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005kg(25モル)、酢酸ナトリウム0.183kg(2.23モル)およびNMP5kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.815kg(25.95モル)ならびにNMP2.4kgを加えて、窒素下に密閉し、270℃まで昇温後、270℃で2.5時間反応した。次に100℃に加熱されたNMP10kg中に投入して、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、さらに80℃の熱水で30分の洗浄を3回繰り返した。これを90℃に加熱されたpH4の酢酸水溶液25リットル中に投入し、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、ポリマーを120℃で8時間乾燥し、その後215℃で加熱処理し、架橋前MFR1000g/10分、架橋後MFR300g/10分のPPS−2を得た。
【0060】
PPS−3の製造
攪拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005kg(25モル)、酢酸ナトリウム0.656kg(8モル)およびNMP5kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.756kg(25.55モル)ならびにNMP2.4kgを加えて、窒素下に密閉し、270℃まで昇温後、270℃で2.5時間反応した。次に100℃に加熱されたNMP10kg中に投入して、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、さらに80℃の熱水で30分の洗浄を3回繰り返した。これを90℃に加熱されたpH4の酢酸水溶液25リットル中に投入し、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、80℃で24時間減圧乾燥し、MFR300g/10分のPPS−3を得た。
【0061】
PPS−4の製造
攪拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005kg(25モル)、NMP5kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.763kg(25.6モル)ならびにNMP1.8kgを加えて、窒素下に密閉し、274℃まで昇温後、274℃で0.8時間反応した。オートクレーブ下部に設けた抜き出しバルブを常温常圧下で開放して、内容物を抜き出し、80℃の熱水で洗浄した。これを濾過し、酢酸カルシウムを10.4g入れた水溶液25リットル中に投入し、密閉されたオートクレーブ中で192℃で約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、ポリマーを120℃で8時間乾燥し、その後215℃で加熱処理し、架橋前MFR3000g/10分、架橋後MFR75g/10分のPPS−4を得た。
【0062】
PPS−5の製造
攪拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005kg(25モル)、NMP5kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.763kg(25.6モル)ならびにNMP1.8kgを加えて、窒素下に密閉し、274℃まで昇温後、274℃で0.8時間反応した。オートクレーブ下部に設けた抜き出しバルブを常温常圧下で開放して、内容物を抜き出し、80℃の熱水で洗浄した。これを濾過し、酢酸カルシウムを10.4g入れた水溶液25リットル中に投入し、密閉されたオートクレーブ中で192℃で約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、80℃で24時間減圧乾燥し、MFR3000g/10分のPPS−5を得た。
【0063】
[実施例および比較例で用いた配合材]
(a)PPS樹脂:PPS−1、PPS−2、PPS−3、PPS−4、PPS−5
(b)ガラス繊維:日本電気硝子(株)製 T747GH
(c−1)酸化マグネシウム−1:純度99.2%、平均粒子径0.8μm、協和化学工業(株)製 “ミクロマグ”3−150
(c−2)酸化マグネシウム−2:純度97.7%、平均粒子径8μm、協和化学工業(株)製 “キョーワマグ”150
平均粒子径は、試料0.70gにエタノールを加え、3分間超音波分散させたものにレーザー光を照射させるマイクロトラック法により求めた。
【0064】
純度は、次のとおり測定した。すなわち、酸化マグネシウム約200mgを量り、1mol/L塩酸12mLを加え完全に溶解し、水を加えて200mLとした。この液10mLを、水約80mLを加えて希釈し、0.02mol/L水酸化ナトリウム溶液で中和した。pH10.7のアンモニア・塩化アンモニウム緩衝液2mLを加え、0.01mol/Lエチレンジアミン四酢酸(EDTA)液を用いて自動滴定装置にて滴定し、消費されたEDTA液量から、酸化マグネシウムの純度を算出した。
(d)炭酸カルシウム:(株)同和カルファイン製 “KSS1000”を使用した。
【0065】
実施例1〜10
前述のようにして用意したPPS、ガラス繊維、酸化マグネシウム、炭酸カルシウムを表1に示す割合でドライブレンドした後、減圧脱気下でシリンダー温度320℃の押出条件に設定したスクリュー式2軸押出機により溶融混練後ペレタイズした。得られたペレットを乾燥後、射出成形機を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度150℃の条件で射出成形することにより、所定の特性評価用試験片を得た。得られた試験片およびペレットについて、前述した方法で200℃、5時間加熱処理前後での臭気発生成分量、MFRおよびMFR保持率、曲げ強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0066】
ここで得られた樹脂組成物は、臭気発生成分量が大幅に低減され、かつ、200℃、5時間加熱処理前のMFRが本発明範囲内であるため流動性が良好であり、ならびに200℃、5時間加熱処理前後でのMFR保持率が本発明範囲内であるため増粘作用が抑制され、熱安定性に優れたものであった。また、機械的物性(曲げ強度)とのバランスも良く、OA機器用部品としての実用価値の高いものであった。
【0067】
比較例1
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。繊維状無機充填材、酸化マグネシウムの配合量が本発明範囲内であっても、選択されるPPS樹脂の種類が適していない場合、臭気発生成分量の低減は認められるものの、200℃、5時間加熱処理前のMFRが本発明下限範囲外であるため流動性が損なわれ、さらに200℃、5時間加熱処理前後でのMFR保持率が本発明下限範囲外であるため、増粘作用が大きく、熱安定性も乏しいものであり、射出成形による製造が困難であるため実用価値の低いものであった。
【0068】
比較例2〜3
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。繊維状無機充填材、酸化マグネシウムの配合量が本発明範囲内であっても、選択されるPPS樹脂の種類が適していない場合、臭気発生成分量の低減は認められるものの、200℃、5時間加熱処理前後でのMFR保持率が本発明下限範囲外であるため、増粘作用が大きく、熱安定性が乏しいものであり、射出成形による製造が困難であるため実用価値の低いものであった。
【0069】
比較例4〜5
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。酸化マグネシウムの配合量が本発明下限範囲外の場合、臭気発生成分量が多く、実用価値の低いものであった。
【0070】
比較例6
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。酸化マグネシウムの配合量が本発明上限範囲外の場合、臭気発生成分量の低減は認められるが、200℃、5時間加熱処理前のMFRが本発明下限範囲外であるため流動性が損なわれ、さらに曲げ強度が著しく低下し、射出成形による製造が困難であり、かつ製品強度が低いため実用価値の低いものであった。
【0071】
比較例7
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。繊維状無機充填材の配合量が本発明下限範囲外の場合、臭気発生成分量の低減は認められるが、曲げ強度が著しく低下し、製品強度が低いため実用価値の低いものであった。
【0072】
比較例8
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。繊維状無機充填材の配合量が本発明上限範囲外の場合、臭気発生成分量の低減は認められるが、200℃、5時間加熱処理前のMFRが著しく低下し流動性が損なわれるため、射出成形による製造が困難であるため実用価値の低いものであった。
【0073】
比較例9
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。繊維状無機充填材、ならびに酸化マグネシウムの配合量が本発明下限範囲外の場合、臭気発生成分量が多く、実用価値の低いものであった。
【0074】
比較例10
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。繊維状無機充填材、ならびに酸化マグネシウムの配合量が本発明上限範囲外の場合、臭気発生成分量の低減は認められるが、200℃、5時間加熱処理前のMFRが著しく低下し流動性が損なわれるため、射出成形による製造が困難であり、、さらに曲げ強度が著しく低下するため、製品強度も低く実用価値の低いものであった。
【0075】
比較例11
実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンド、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。繊維状無機充填材、ならびに酸化マグネシウムの配合量が本発明上限範囲外の場合、臭気発生成分量の低減は認められるが、200℃、5時間加熱処理前のMFRが著しく低下し流動性が損なわれ、また200℃、5時間加熱処理前後のMFR保持率が本発明下限範囲外であるため、増粘作用が大きく、熱安定性が乏しいものであるため、射出成形による製造が困難であり、さらに曲げ強度が著しく低下するため、製品強度も低く実用価値の低いものであった。
【0076】
【表1】
Figure 2004277520
【0077】
【表2】
Figure 2004277520
【0078】
本発明の金属複合成形体用PPS樹脂組成物は、臭気発生成分量の抑制を極めて高いレベルで達成せしめており、かつ200℃、5時間加熱処理前後でのMFR保持率が高いため、増粘作用が抑制され、熱安定性が高いため、臭気の抑制を要求されるOA機器用部品等の用途において、実用的な性能が得られることが明かである。
【0079】
【発明の効果】
本発明の金属複合成形体用PPS樹脂は、臭気発生成分量の抑制、ならびに200℃、5時間加熱処理前後でのMFR保持率が優れており、特にOA機器帽部品等の用途に有用である。

Claims (8)

  1. (a)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(b)繊維状無機充填材75〜170重量部、(c)酸化マグネシウム1〜35重量部を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、該ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の315.5℃、5000g荷重でのメルトフローレート(MFR)が15g/10分以上、および該ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を200℃、5時間加熱処理した場合の同条件でのMFR保持率が50%以上であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  2. さらに(d)酸化マグネシウム以外の非繊維状無機充填材10〜110重量部を配合してなる請求項1記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  3. 酸化マグネシウムの平均粒子径が2.0μm以下である請求項1または2記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  4. 酸化マグネシウムの純度が98.5%以上である請求項1〜3のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  5. 140〜240℃の環境下で使用される樹脂成形体用である請求項1〜4のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  6. ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物がOA機器用部品用である請求項1〜5のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  7. 140〜240℃の環境下で使用される請求項1〜5のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体。
  8. 請求項1〜6のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形してなるOA機器用部品。
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