JP2004155966A - 熱伝導性高分子シート - Google Patents
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Abstract
【課題】電気製品又は電子部品等から発生する多量の熱を効果的に放散できる優れた熱伝導性を有する熱伝導性高分子シートを提供する。
【解決手段】高分子材料からなる母材にダイヤモンド粉末からなる熱伝導性充填剤が分散された熱伝導性高分子シートである。前記ダイヤモンド粉末は、気相合成法によって製造され、この製造過程で、粉末の表面がハロゲン系元素及びそれを含む修飾基で化学修飾されたものである。前記ダイヤモンド粉末は、コバルト、ニッケル及び鉄からなる群から選択された少なくとも1種の金属又はその合金で、粉末の表面の一部又は全部が被覆されたものであることが好ましい。また、前記ダイヤモンド粉末は、その粒径が150nm乃至1μmであることが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】高分子材料からなる母材にダイヤモンド粉末からなる熱伝導性充填剤が分散された熱伝導性高分子シートである。前記ダイヤモンド粉末は、気相合成法によって製造され、この製造過程で、粉末の表面がハロゲン系元素及びそれを含む修飾基で化学修飾されたものである。前記ダイヤモンド粉末は、コバルト、ニッケル及び鉄からなる群から選択された少なくとも1種の金属又はその合金で、粉末の表面の一部又は全部が被覆されたものであることが好ましい。また、前記ダイヤモンド粉末は、その粒径が150nm乃至1μmであることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のダイヤモンド粉末を含有して優れた熱伝導性を有する熱伝導性高分子シートに関するものであり、更に詳述すれば、電気製品に使用される各種半導体素子、電源、光源及び部品等から発生する熱を効果的に外部に放散させる熱伝導性高分子シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、電子機器の高性能化、小型化及び軽量化に伴う半導体パッケージの高密度実装化と、LSIの高集積化及び高速化等によって、電子機器から発生する熱対策が極めて重要な課題になっている。そして、このような素子の熱を拡散させる方法として、発熱源と放熱器との間、又は熱源と金属製伝熱板との間に、熱伝導性が良いシート材を介在させる方法が一般的に使用されている。
【0003】
これらの高い熱伝導性を要求される熱伝導性組成物としては、樹脂又はゴム等の高分子材料中に、熱伝導率が高い充填材、例えば、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭化珪素、石英、及び水酸化アルミニウム等の金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、及び金属水酸化物等の熱伝導性充填剤を含有させたものが知られている(特開2002−121404号公報(特許文献1))。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−121404号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの熱伝導性高分子組成物は必ずしも十分に大きな熱伝導性が得られてはいない。即ち、発熱量が一段と増大し続ける最近の高性能な電子部品においては、半導体素子等の電子部品からの多大な発熱により、電気化学的なマイグレーションが加速されたり、配線及びパッド部の腐食が促進されたり、発熱する熱応力によって構成材料にクラックが生じたり、破壊したり、構成部品の接合部の界面が剥離して電子部品の信頼性及び寿命を損なう等の種々のトラブルが発生するおそれがある。そのため、熱伝導性をより一層向上させた熱伝導性高分子組成物に対する要求が高まり続けているが、上記従来の熱伝導性高分子組成物は熱伝導性が未だ不十分であった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、電気製品又は電子部品等から発生する多量の熱を効果的に放散できる優れた熱伝導性を有する熱伝導性高分子シートを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る熱伝導性高分子シートは、高分子材料からなる母材にダイヤモンド粉末からなる熱伝導性充填剤が分散された熱伝導性高分子シートであって、前記ダイヤモンド粉末は、気相合成法によって製造され、この製造過程で、粉末の表面がハロゲン系元素又はそれを含む修飾基で化学修飾されたものであることを特徴とする。
【0008】
この熱伝導性高分子シートにおいて、前記ダイヤモンド粉末は、コバルト、ニッケル及び鉄からなる群から選択された少なくとも1種の金属又はその合金で、粉末の表面の一部又は全部が被覆されたものであることが好ましい。
【0009】
また、前記ダイヤモンド粉末は、その粒径が150nm乃至1μmであることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の熱伝導性高分子シートは、後述する高分子材料中に、熱伝導性充填剤としてダイヤモンド粉末が分散されたものである。ダイヤモンド粉末は、気相合成法によって製造する際に、その粉末表面がフッ素又は塩素等のハロゲン系元素及びそれを含む修飾基で化学修飾されたものである。
【0011】
ダイヤモンド粉末の平均直径は、特に限定されないが、好ましくは150nm〜1μmである。この範囲の繊維直径を有するダイヤモンド粉末は、工業的に生産しやすく、得られる熱伝導性高分子シートの熱伝導性が大きくなる。繊維直径が150nmよりも小さいと、熱伝導性高分子シートの熱伝導性が低下する。また、繊維直径が1μmよりも大きいと、ダイヤモンド粉末が嵩高くなって、高分子材料中に高濃度で充填(分散)することが困難になる。
【0012】
ダイヤモンド粉末の熱伝導率は、特に限定されないが、本発明の目的を達成するためには、熱伝導率が、好ましくは400W/m・K以上、より好ましくは1000W/m・K以上、特に好ましくは1400W/m・K以上である。
【0013】
ダイヤモンド粉末の表面は、フッ素又は塩素等のハロゲン系元素又はそれを含む修飾基で化学修飾されている。即ち、ダイヤモンド粉末の表面に、例えば、−Cl又は−Fが直接終端している場合と、ハロゲン元素を含む修飾基、例えば、−CCl3、−CF2H,−COOF等が結合している場合とがある。
【0014】
更に、ダイヤモンド粉末の表面に、コバルト、ニッケル及び鉄等の遷移金属又はその合金の被覆層が形成されていることが好ましい。このような繊維金属又は合金の被覆層は、製造のしやすさと製造コストを考慮すると、無電解メッキ法により形成することが実用的で好ましい。コバルト、ニッケル及び鉄といった遷移金属は、ダイヤモンドとの化学反応性に富む。後述する種々の方法により、ダイヤモンド表面にこれらの遷移金属を被覆しておくと、常温から数十℃温度が上昇しただけでも、金属/ダイヤモンド界面で化学反応が起こり、熱伝導性が高く、密着性が優れた界面が形成される。上記化学反応に伴い、ダイヤモンドの一部が浸食されるので、ダイヤモンド粒子同士及び高分子母材との接合面積が増大し、面熱伝導率が向上するので、好ましい。
【0015】
遷移金属の被覆層の膜厚は、特に限定するものではないが、10乃至200nmであることが好ましい。被覆層の膜厚が10nmよりも薄いと、発現される機能が弱く、ダイヤモンド粉末を高分子材料中で均一に分散させることが困難となる。一方、被覆層の膜厚が200nmを超えると、得られる熱伝導性高分子シートの熱伝導率が低下する。
【0016】
更に、被覆層が形成されたダイヤモンド粉末は、シラン系、チタン系、アルミニウム系等の公知のカップリング剤又はサイジング剤等で処理することにより、その表面を改質させたものとすることが好ましい。これにより、高分子材料との濡れ性及び接着性を向上させたり、界面の剥離強度を改良したりすることができ、高分子材料への、より一層のダイヤモンド粉末の高充填化が可能となり、得られる熱伝導性高分子シートの一層の高熱伝導率化が達成できる。
【0017】
母材となる高分子材料は、特に規定されるものではなく、目的とする熱伝導性高分子シートの形状、硬さ、機械的性質、熱的性質、電気的性質、耐久性、及び信頼性等の要求性能又は用途に応じて、例えば、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、硬化性樹脂又は架橋ゴム等を任意に選択することができる。特に、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、硬化性樹脂又は架橋ゴムは、成形加工が容易であるため、好適であり、なかでも、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーは、繰返し成形加工でき、リサイクルが可能である点から特に好ましい。
【0018】
具体的な熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸類、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、及びアイオノマー等が挙げられる。
【0019】
具体的な熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン又はスチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、及びポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0020】
具体的な硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂、熱硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂及び変性PPE樹脂等が挙げられる。
【0021】
具体的な架橋ゴム又はその類似物としては、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、及びシリコーンゴム等が挙げられる。
【0022】
これらの高分子材料の中でも、シリコーンゴム、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、及び熱可塑性エラストマーより選ばれる少なくとも1種、さらに好ましくは、シリコーンゴム、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、及び熱可塑性エラストマーからなる群から選択された少なくとも1種の高分子材料を用いることが、耐熱性等の温度特性及び電気的信頼性の観点から好ましい。
【0023】
なお、これらの高分子材料は用途及び要求性能に応じて適宜選択して使用される。例えば、誘電率及び誘電正接が小さくて高周波領域での特性を要求される配線基板用途等には、フッ素樹脂、熱硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂又はポリオレフィン系樹脂等を使用することが好ましい。また、低硬度の架橋ゴム及び熱可塑性エラストマーを使用すれば、熱伝導性が優れた柔軟な熱伝導性高分子シートを得ることができる。更に、ダイヤモンド粉末を高濃度で充填する場合には、液状物又は溶融状態での粘度が低い高分子材料又は高分子前駆体を使用することが好ましい。
【0024】
また、これらの高分子材料は、その1種を単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよく、これらの高分子材料から選択される複数の高分子材料からなるポリマーアロイを使用してもよい。更に、硬化性樹脂又は架橋ゴムの架橋方法については、熱硬化法に限定されず、光硬化法又は湿気硬化法等の公知の架橋方法を採用することができる。
【0025】
高分子材料に配合されるダイヤモンド粉末の濃度は、目的とする最終製品の要求性能によって適宜決定されるが、体積百分率で表して好ましくは5乃至45体積%、より好ましくは7乃至20体積%である。ダイヤモンド粉末の配合量が5体積%よりも少ないと、得られる熱伝導性高分子シートの熱伝導率が小さくなり、放熱特性が低下する。また、配合量が45体積%を超えると、気泡の混入が避けられず好ましくない。なお、高分子組成物の粘度を低下させるために、揮発性の有機溶剤や低粘度の軟化剤、反応性可塑剤を添加してもよい。
【0026】
熱伝導性高分子シートの厚さは、特に限定されないが、好ましくは50μm〜2mm、より好ましくは200μm〜1mmである。50μmよりも薄いと製造しにくく、また、取り扱いにくくなる。また、2mmよりも厚くなると熱抵抗が大きくなるので好ましくない。
【0027】
ダイヤモンド粉末は気相合成法によって製造する。その後、ガス雰囲気中でダイヤモンド粉末を高温で加熱処理することによって化学修飾される。処理温度は好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上である。また、ダイヤモンド粉末の表面を予め脱脂及び洗浄処理したり、紫外線照射処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、イオン注入等の活性化処理を施すことも有効である。
【0028】
ダイヤモンド粉末の表面にハロゲン元素及び修飾基を化学修飾する具体的な方法としては、例えば、以下に示すものがある。先ず、ダイヤモンド粉末をCVD(化学気相成長)装置に導入する。容器内を真空排気した後、CH3Cl:5%、メタン:5%、水素:90%の混合ガスを流し、反応器内を100Torrに保持する。その後、マイクロ波プラズマを発生し、基板温度が680℃になるようにする。このようにして1時間処理を行った後、試料の表面をXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)分析したところ、ダイヤモンド表面の3〜5%が塩素で終端されていることを確認できた。なお、上記方法の他に、試料表面に紫外線を照射したり、イオンビーム又は分子ビームを照射するだけでも、化学修飾を形成することができる。
【0029】
次いで、上記のように製造されたダイヤモンド粉末の表面に、遷移金属被覆層を形成する場合は、無電解メッキ法、電解メッキ法、真空蒸着法やスパッタリング法などによる物理的蒸着法、化学的蒸着法、溶射法、塗装法、浸漬法、微細粒子を機械的にダイヤモンド粉末表面に固着させるメカノケミカル法などの種々の方法が採用できる。
【0030】
上記のように製造されたダイヤモンド粉末を、例えば、ブレンダー、ミキサー、ロール、押出機などの公知の混合・混練装置を用いて高分子材料に配合し、攪拌、脱泡、混練等の操作を施すことにより高分子組成物が得られる。そして、得られた高分子組成物をシート状に成形することにより、熱伝導性高分子シートが製造される。
【0031】
高分子組成物をシート状に成形加工する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、圧縮成形法、押出成形法、射出成形法、注型成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法などのほか、液状組成物の場合には、塗装法、印刷法、ディスペンサー法、ポッティング法などの方法を採用することができる。
【0032】
上記熱伝導性高分子シートの適用例としては、電子機器等において、半導体素子、電源、及び光源等の発熱部材と、放熱器などの放熱部材との間に介在させるなどして使用され、発熱部材が発生する熱を効果的に放熱部材に伝達させ、この放熱部材を介して、外部へ放散させるために使用される。これにより、熱伝導性高分子シートがない場合に比して、発熱部材の熱を高効率で放散させることができる。
【0033】
例えば、プリント配線基板上に半導体素子(ボールグリッドアレイ型半導体パッケージ)が配設されるとともに、その半導体素子を覆うように放熱器が支持部材を介して支持される。熱伝導性高分子シートは、半導体素子と放熱器との間に介装される。
【0034】
また、例えば、プリント配線基板上に半導体素子(チップサイズ型半導体パッケージ)が配設される場合、熱伝導性高分子シートは、プリント配線基板と半導体素子との間に介装される。
【0035】
更にまた別の例では、プリント配線基板上に半導体素子(ピングリッドアレイ型半導体パッケージ)が配設される場合に、熱伝導性高分子シートは、半導体素子と凹凸状をなすヒートシンクとの間に介装される。
【0036】
このように、熱伝導性をより一層向上させた熱伝導性高分子シートは、電気部品や電子部品などから発生する多量の熱を効果的に放散させることができる。
【0037】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明し、その効果を説明する。
【0038】
(実施例1)
気相合成法で得た粒径150nm〜1μmのダイヤモンド粉末を、塩素ガス及び四フッ化炭素ガス雰囲気下で、250℃まで昇温した後、10分間保持してから降温して、ダイヤモンド粉末の表面を化学修飾した。
【0039】
また、このダイヤモンド粉末の表面に、ニッケル、コバルト、鉄又はその合金の被覆層を形成するために、ダイヤモンド粉末を硫酸ニッケル−クエン酸ナトリウム−エチレンジアミン四酢酸水溶液(メッキ液)に投入し、攪拌しながら約80℃まで加熱して、無電解メッキ法によりダイヤモンド粉末の表面に、厚さが100nmの均一なニッケル被覆層を形成した。別のダイヤモンド粉末は、硫酸コバルト−次亜リン酸ナトリウム−硫酸ナトリウム−酢酸ナトリウム−硫酸アンモニウム水溶液(メッキ液)に投入し、攪拌しながら約90℃まで加熱して、無電解メッキ法によりダイヤモンド粉末の表面に厚さが50nmの均一なコバルト−リン合金の被覆層を形成した。下記表1は得られたダイヤモンド粉末を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
そして、高分子材料としての液状シリコーンゴム(GE東芝シリコーン株式会社製TSE3070)と、上述の如くして製造したダイヤモンド粉末とを、液状シリコーンゴムが75体積%、ダイヤモンド粉末が25体積%になるように混合し、真空脱泡した高分子組成物を調製した。次いで、得られた高分子組成物を、アルミニウム製の縦20mm、横20mmの箱状の成形金型の凹部内に充填し、加熱硬化させ、厚さが0.8mmの柔軟なゴムシート状の熱伝導性高分子シートを得た。下記表2は、同様にして得られた種々の熱伝導性高分子シート中のダイヤモンド粉末の体積混合率とシートの厚さ方向の熱伝導率を示す。
【0042】
【表2】
【0043】
次に、高分子材料として、夫々所定量の▲1▼液状エポキシ樹脂(米国エポキシテクノロジー社製エポテック310)、又は▲2▼不飽和ポリエステル(株式会社日本触媒製エポラック)と、前述のダイヤモンド粉末とを混合し、真空脱泡した高分子組成物を調製した。得られた各々の高分子組成物を、アルミニウム製の縦20mm、横20mmの板状の金型の成形凹部内に充填し、加熱乾燥又は加熱硬化させ、厚さが1mmの熱伝導性高分子シートを得た。下記表3は、得られた熱伝導性高分子シートの厚さ方向の熱伝導率を示す。
【0044】
【表3】
【0045】
この表3に示すように、本発明の範囲に入るダイヤモンド粉末は、いずれも、熱伝導率が優れている。これに対し、化学修飾していないダイヤモンド粉末Eは熱伝導率が低い。また、金属被覆していないダイヤモンド粉末は熱伝導率が若干低い。
【0046】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の熱伝導性シートによれば、半導体素子、電子部品及び電気機器等から発生する多量の熱を、効果的に放散できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のダイヤモンド粉末を含有して優れた熱伝導性を有する熱伝導性高分子シートに関するものであり、更に詳述すれば、電気製品に使用される各種半導体素子、電源、光源及び部品等から発生する熱を効果的に外部に放散させる熱伝導性高分子シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、電子機器の高性能化、小型化及び軽量化に伴う半導体パッケージの高密度実装化と、LSIの高集積化及び高速化等によって、電子機器から発生する熱対策が極めて重要な課題になっている。そして、このような素子の熱を拡散させる方法として、発熱源と放熱器との間、又は熱源と金属製伝熱板との間に、熱伝導性が良いシート材を介在させる方法が一般的に使用されている。
【0003】
これらの高い熱伝導性を要求される熱伝導性組成物としては、樹脂又はゴム等の高分子材料中に、熱伝導率が高い充填材、例えば、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭化珪素、石英、及び水酸化アルミニウム等の金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、及び金属水酸化物等の熱伝導性充填剤を含有させたものが知られている(特開2002−121404号公報(特許文献1))。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−121404号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの熱伝導性高分子組成物は必ずしも十分に大きな熱伝導性が得られてはいない。即ち、発熱量が一段と増大し続ける最近の高性能な電子部品においては、半導体素子等の電子部品からの多大な発熱により、電気化学的なマイグレーションが加速されたり、配線及びパッド部の腐食が促進されたり、発熱する熱応力によって構成材料にクラックが生じたり、破壊したり、構成部品の接合部の界面が剥離して電子部品の信頼性及び寿命を損なう等の種々のトラブルが発生するおそれがある。そのため、熱伝導性をより一層向上させた熱伝導性高分子組成物に対する要求が高まり続けているが、上記従来の熱伝導性高分子組成物は熱伝導性が未だ不十分であった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、電気製品又は電子部品等から発生する多量の熱を効果的に放散できる優れた熱伝導性を有する熱伝導性高分子シートを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る熱伝導性高分子シートは、高分子材料からなる母材にダイヤモンド粉末からなる熱伝導性充填剤が分散された熱伝導性高分子シートであって、前記ダイヤモンド粉末は、気相合成法によって製造され、この製造過程で、粉末の表面がハロゲン系元素又はそれを含む修飾基で化学修飾されたものであることを特徴とする。
【0008】
この熱伝導性高分子シートにおいて、前記ダイヤモンド粉末は、コバルト、ニッケル及び鉄からなる群から選択された少なくとも1種の金属又はその合金で、粉末の表面の一部又は全部が被覆されたものであることが好ましい。
【0009】
また、前記ダイヤモンド粉末は、その粒径が150nm乃至1μmであることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の熱伝導性高分子シートは、後述する高分子材料中に、熱伝導性充填剤としてダイヤモンド粉末が分散されたものである。ダイヤモンド粉末は、気相合成法によって製造する際に、その粉末表面がフッ素又は塩素等のハロゲン系元素及びそれを含む修飾基で化学修飾されたものである。
【0011】
ダイヤモンド粉末の平均直径は、特に限定されないが、好ましくは150nm〜1μmである。この範囲の繊維直径を有するダイヤモンド粉末は、工業的に生産しやすく、得られる熱伝導性高分子シートの熱伝導性が大きくなる。繊維直径が150nmよりも小さいと、熱伝導性高分子シートの熱伝導性が低下する。また、繊維直径が1μmよりも大きいと、ダイヤモンド粉末が嵩高くなって、高分子材料中に高濃度で充填(分散)することが困難になる。
【0012】
ダイヤモンド粉末の熱伝導率は、特に限定されないが、本発明の目的を達成するためには、熱伝導率が、好ましくは400W/m・K以上、より好ましくは1000W/m・K以上、特に好ましくは1400W/m・K以上である。
【0013】
ダイヤモンド粉末の表面は、フッ素又は塩素等のハロゲン系元素又はそれを含む修飾基で化学修飾されている。即ち、ダイヤモンド粉末の表面に、例えば、−Cl又は−Fが直接終端している場合と、ハロゲン元素を含む修飾基、例えば、−CCl3、−CF2H,−COOF等が結合している場合とがある。
【0014】
更に、ダイヤモンド粉末の表面に、コバルト、ニッケル及び鉄等の遷移金属又はその合金の被覆層が形成されていることが好ましい。このような繊維金属又は合金の被覆層は、製造のしやすさと製造コストを考慮すると、無電解メッキ法により形成することが実用的で好ましい。コバルト、ニッケル及び鉄といった遷移金属は、ダイヤモンドとの化学反応性に富む。後述する種々の方法により、ダイヤモンド表面にこれらの遷移金属を被覆しておくと、常温から数十℃温度が上昇しただけでも、金属/ダイヤモンド界面で化学反応が起こり、熱伝導性が高く、密着性が優れた界面が形成される。上記化学反応に伴い、ダイヤモンドの一部が浸食されるので、ダイヤモンド粒子同士及び高分子母材との接合面積が増大し、面熱伝導率が向上するので、好ましい。
【0015】
遷移金属の被覆層の膜厚は、特に限定するものではないが、10乃至200nmであることが好ましい。被覆層の膜厚が10nmよりも薄いと、発現される機能が弱く、ダイヤモンド粉末を高分子材料中で均一に分散させることが困難となる。一方、被覆層の膜厚が200nmを超えると、得られる熱伝導性高分子シートの熱伝導率が低下する。
【0016】
更に、被覆層が形成されたダイヤモンド粉末は、シラン系、チタン系、アルミニウム系等の公知のカップリング剤又はサイジング剤等で処理することにより、その表面を改質させたものとすることが好ましい。これにより、高分子材料との濡れ性及び接着性を向上させたり、界面の剥離強度を改良したりすることができ、高分子材料への、より一層のダイヤモンド粉末の高充填化が可能となり、得られる熱伝導性高分子シートの一層の高熱伝導率化が達成できる。
【0017】
母材となる高分子材料は、特に規定されるものではなく、目的とする熱伝導性高分子シートの形状、硬さ、機械的性質、熱的性質、電気的性質、耐久性、及び信頼性等の要求性能又は用途に応じて、例えば、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、硬化性樹脂又は架橋ゴム等を任意に選択することができる。特に、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、硬化性樹脂又は架橋ゴムは、成形加工が容易であるため、好適であり、なかでも、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーは、繰返し成形加工でき、リサイクルが可能である点から特に好ましい。
【0018】
具体的な熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸類、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、及びアイオノマー等が挙げられる。
【0019】
具体的な熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン又はスチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、及びポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0020】
具体的な硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂、熱硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂及び変性PPE樹脂等が挙げられる。
【0021】
具体的な架橋ゴム又はその類似物としては、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、及びシリコーンゴム等が挙げられる。
【0022】
これらの高分子材料の中でも、シリコーンゴム、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、及び熱可塑性エラストマーより選ばれる少なくとも1種、さらに好ましくは、シリコーンゴム、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、及び熱可塑性エラストマーからなる群から選択された少なくとも1種の高分子材料を用いることが、耐熱性等の温度特性及び電気的信頼性の観点から好ましい。
【0023】
なお、これらの高分子材料は用途及び要求性能に応じて適宜選択して使用される。例えば、誘電率及び誘電正接が小さくて高周波領域での特性を要求される配線基板用途等には、フッ素樹脂、熱硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂又はポリオレフィン系樹脂等を使用することが好ましい。また、低硬度の架橋ゴム及び熱可塑性エラストマーを使用すれば、熱伝導性が優れた柔軟な熱伝導性高分子シートを得ることができる。更に、ダイヤモンド粉末を高濃度で充填する場合には、液状物又は溶融状態での粘度が低い高分子材料又は高分子前駆体を使用することが好ましい。
【0024】
また、これらの高分子材料は、その1種を単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよく、これらの高分子材料から選択される複数の高分子材料からなるポリマーアロイを使用してもよい。更に、硬化性樹脂又は架橋ゴムの架橋方法については、熱硬化法に限定されず、光硬化法又は湿気硬化法等の公知の架橋方法を採用することができる。
【0025】
高分子材料に配合されるダイヤモンド粉末の濃度は、目的とする最終製品の要求性能によって適宜決定されるが、体積百分率で表して好ましくは5乃至45体積%、より好ましくは7乃至20体積%である。ダイヤモンド粉末の配合量が5体積%よりも少ないと、得られる熱伝導性高分子シートの熱伝導率が小さくなり、放熱特性が低下する。また、配合量が45体積%を超えると、気泡の混入が避けられず好ましくない。なお、高分子組成物の粘度を低下させるために、揮発性の有機溶剤や低粘度の軟化剤、反応性可塑剤を添加してもよい。
【0026】
熱伝導性高分子シートの厚さは、特に限定されないが、好ましくは50μm〜2mm、より好ましくは200μm〜1mmである。50μmよりも薄いと製造しにくく、また、取り扱いにくくなる。また、2mmよりも厚くなると熱抵抗が大きくなるので好ましくない。
【0027】
ダイヤモンド粉末は気相合成法によって製造する。その後、ガス雰囲気中でダイヤモンド粉末を高温で加熱処理することによって化学修飾される。処理温度は好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上である。また、ダイヤモンド粉末の表面を予め脱脂及び洗浄処理したり、紫外線照射処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、イオン注入等の活性化処理を施すことも有効である。
【0028】
ダイヤモンド粉末の表面にハロゲン元素及び修飾基を化学修飾する具体的な方法としては、例えば、以下に示すものがある。先ず、ダイヤモンド粉末をCVD(化学気相成長)装置に導入する。容器内を真空排気した後、CH3Cl:5%、メタン:5%、水素:90%の混合ガスを流し、反応器内を100Torrに保持する。その後、マイクロ波プラズマを発生し、基板温度が680℃になるようにする。このようにして1時間処理を行った後、試料の表面をXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)分析したところ、ダイヤモンド表面の3〜5%が塩素で終端されていることを確認できた。なお、上記方法の他に、試料表面に紫外線を照射したり、イオンビーム又は分子ビームを照射するだけでも、化学修飾を形成することができる。
【0029】
次いで、上記のように製造されたダイヤモンド粉末の表面に、遷移金属被覆層を形成する場合は、無電解メッキ法、電解メッキ法、真空蒸着法やスパッタリング法などによる物理的蒸着法、化学的蒸着法、溶射法、塗装法、浸漬法、微細粒子を機械的にダイヤモンド粉末表面に固着させるメカノケミカル法などの種々の方法が採用できる。
【0030】
上記のように製造されたダイヤモンド粉末を、例えば、ブレンダー、ミキサー、ロール、押出機などの公知の混合・混練装置を用いて高分子材料に配合し、攪拌、脱泡、混練等の操作を施すことにより高分子組成物が得られる。そして、得られた高分子組成物をシート状に成形することにより、熱伝導性高分子シートが製造される。
【0031】
高分子組成物をシート状に成形加工する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、圧縮成形法、押出成形法、射出成形法、注型成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法などのほか、液状組成物の場合には、塗装法、印刷法、ディスペンサー法、ポッティング法などの方法を採用することができる。
【0032】
上記熱伝導性高分子シートの適用例としては、電子機器等において、半導体素子、電源、及び光源等の発熱部材と、放熱器などの放熱部材との間に介在させるなどして使用され、発熱部材が発生する熱を効果的に放熱部材に伝達させ、この放熱部材を介して、外部へ放散させるために使用される。これにより、熱伝導性高分子シートがない場合に比して、発熱部材の熱を高効率で放散させることができる。
【0033】
例えば、プリント配線基板上に半導体素子(ボールグリッドアレイ型半導体パッケージ)が配設されるとともに、その半導体素子を覆うように放熱器が支持部材を介して支持される。熱伝導性高分子シートは、半導体素子と放熱器との間に介装される。
【0034】
また、例えば、プリント配線基板上に半導体素子(チップサイズ型半導体パッケージ)が配設される場合、熱伝導性高分子シートは、プリント配線基板と半導体素子との間に介装される。
【0035】
更にまた別の例では、プリント配線基板上に半導体素子(ピングリッドアレイ型半導体パッケージ)が配設される場合に、熱伝導性高分子シートは、半導体素子と凹凸状をなすヒートシンクとの間に介装される。
【0036】
このように、熱伝導性をより一層向上させた熱伝導性高分子シートは、電気部品や電子部品などから発生する多量の熱を効果的に放散させることができる。
【0037】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明し、その効果を説明する。
【0038】
(実施例1)
気相合成法で得た粒径150nm〜1μmのダイヤモンド粉末を、塩素ガス及び四フッ化炭素ガス雰囲気下で、250℃まで昇温した後、10分間保持してから降温して、ダイヤモンド粉末の表面を化学修飾した。
【0039】
また、このダイヤモンド粉末の表面に、ニッケル、コバルト、鉄又はその合金の被覆層を形成するために、ダイヤモンド粉末を硫酸ニッケル−クエン酸ナトリウム−エチレンジアミン四酢酸水溶液(メッキ液)に投入し、攪拌しながら約80℃まで加熱して、無電解メッキ法によりダイヤモンド粉末の表面に、厚さが100nmの均一なニッケル被覆層を形成した。別のダイヤモンド粉末は、硫酸コバルト−次亜リン酸ナトリウム−硫酸ナトリウム−酢酸ナトリウム−硫酸アンモニウム水溶液(メッキ液)に投入し、攪拌しながら約90℃まで加熱して、無電解メッキ法によりダイヤモンド粉末の表面に厚さが50nmの均一なコバルト−リン合金の被覆層を形成した。下記表1は得られたダイヤモンド粉末を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
そして、高分子材料としての液状シリコーンゴム(GE東芝シリコーン株式会社製TSE3070)と、上述の如くして製造したダイヤモンド粉末とを、液状シリコーンゴムが75体積%、ダイヤモンド粉末が25体積%になるように混合し、真空脱泡した高分子組成物を調製した。次いで、得られた高分子組成物を、アルミニウム製の縦20mm、横20mmの箱状の成形金型の凹部内に充填し、加熱硬化させ、厚さが0.8mmの柔軟なゴムシート状の熱伝導性高分子シートを得た。下記表2は、同様にして得られた種々の熱伝導性高分子シート中のダイヤモンド粉末の体積混合率とシートの厚さ方向の熱伝導率を示す。
【0042】
【表2】
【0043】
次に、高分子材料として、夫々所定量の▲1▼液状エポキシ樹脂(米国エポキシテクノロジー社製エポテック310)、又は▲2▼不飽和ポリエステル(株式会社日本触媒製エポラック)と、前述のダイヤモンド粉末とを混合し、真空脱泡した高分子組成物を調製した。得られた各々の高分子組成物を、アルミニウム製の縦20mm、横20mmの板状の金型の成形凹部内に充填し、加熱乾燥又は加熱硬化させ、厚さが1mmの熱伝導性高分子シートを得た。下記表3は、得られた熱伝導性高分子シートの厚さ方向の熱伝導率を示す。
【0044】
【表3】
【0045】
この表3に示すように、本発明の範囲に入るダイヤモンド粉末は、いずれも、熱伝導率が優れている。これに対し、化学修飾していないダイヤモンド粉末Eは熱伝導率が低い。また、金属被覆していないダイヤモンド粉末は熱伝導率が若干低い。
【0046】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の熱伝導性シートによれば、半導体素子、電子部品及び電気機器等から発生する多量の熱を、効果的に放散できる。
Claims (3)
- 高分子材料からなる母材にダイヤモンド粉末からなる熱伝導性充填剤が分散された熱伝導性高分子シートであって、前記ダイヤモンド粉末は、気相合成法によって製造され、この製造過程で、粉末の表面がハロゲン系元素又はそれを含む修飾基で化学修飾されたものであることを特徴とする熱伝導性高分子シート。
- 前記ダイヤモンド粉末は、コバルト、ニッケル及び鉄からなる群から選択された少なくとも1種の金属又はその合金で、粉末の表面の一部又は全部が被覆されたものであることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性高分子シート。
- 前記ダイヤモンド粉末は、その平均粒径が150nm乃至1μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱伝導性高分子シート。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR100850793B1 (ko) | 2006-05-09 | 2008-08-06 | 주식회사 엘지화학 | 열전도성 및 광반사율이 우수한 광 반사용 발포 시트 |
JP2009227873A (ja) * | 2008-03-24 | 2009-10-08 | National Institute For Materials Science | ナノ炭素材料複合体ペーストおよびそれを用いたパターン形成方法 |
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JP2018111814A (ja) * | 2017-01-12 | 2018-07-19 | 積水化学工業株式会社 | 熱伝導性樹脂組成物、熱伝導性シート及び積層体 |
-
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- 2002-11-07 JP JP2002324474A patent/JP2004155966A/ja active Pending
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