JP2004155801A - プラスチック用塗料組成物及び塗膜の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】反応性シリル基含有ビニル単量体を含有するビニル系共重合体(A)100重量部に対して、イソシアナート基を2個以上含有する化合物(B)0.1〜80重量部と、有機金属化合物(C)0.1〜30重量部含有することを特徴とするプラスチック用硬化性組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック用塗料組成物及び塗膜の形成方法に関する。さらに詳しくは、例えばポリオレフィン、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂成形品、FRP等の繊維強化複合樹脂の成形品などの塗装に好適に使用しうるプラスチック用塗料組成物及び塗膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プラスチック成形品表面を、例えば、フッ素樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料、アクリルシリコン樹脂塗料などの塗料で被覆することによって外観をよくしたり、耐候性等を向上させたりしている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、この中でアクリルシリコン塗料についてはその架橋形態によって、他の2種に比較して被塗物によっては耐衝撃性、後加工性が不十分であり、塗膜に割れが発じる場合があった。また、アクリルシリコン樹脂塗料にイソシアナート化合物を配合した塗料の鋼板等へ適用することについては既に知られている。(例えば特許文献2参照)
【0003】
【特許文献1】特開平9−208894号公報(表1)
【0004】
【特許文献2】特開平11−286648号公報(表1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記のごとき実状に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来用いられたアクリルシリコン塗料の特性向上させた、常温または加熱で硬化性を有するプラスチック用塗料組成物を提供し、アクリルシリコン樹脂塗料の優れた耐汚染性と密着性、耐溶剤性、耐衝撃性、加工性を同時に有する塗装物を提供することである。更には、プライマーとして用いることにより、上塗りされたアクリルシリコン樹脂塗料の優れた耐汚染性と密着性、耐溶剤性、耐衝撃性、加工性を同時に有する塗装物を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の構成からなる新規な樹脂組成物を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
1)加水分解性シリル基を有するビニル系共重合体(A)100重量部に対して、架橋剤としてイソシアナート基を2個以上含有する化合物(B)0.1〜80重量部と、有機金属化合物(C)0.1〜30重量部含有することを特徴とするプラスチック用塗料組成物。
2)前記組成物に一般式(I)
(R1O)4−a−Si−R2 a (I)
(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、R2は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、aは0または1を示す)で表されるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(D)1〜200重量部添加することを特徴とする請求項1記載のプラスチック用塗料組成物。3)前記ビニル系共重合体(A)が、(a)分子内に
(式中、R3は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、R4は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、アリール基及びアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、bは0〜2の整数を示す)で表される炭素原子に結合した反応性シリル基を含有するビニル系単量体3〜90重量%、(b)水酸基含有ビニル系単量体1〜50重量%、(c)その他、前記(a)、(b)と共重合可能な単量体4〜91重量%を共重合して得られる1)〜2)いずれかに記載のプラスチック用塗料組成物。
4)ビニル系共重合体(A)が前記(a)、(b)、(c)と共重合可能な単量体として(d)芳香族ビニル系単量体5〜20重量%を共重合して得られる1)〜3)いずれか1項に記載のプラスチック用塗料組成物。
5)必要に応じて、単官能イソシアネート化合物(E)0.1〜10重量部配合してなる1)〜4)いずれか1項に記載のプラスチック用塗料組成物。
6)前記有機金属系化合物(C)成分が有機錫化合物である1)〜5)いずれか1項に記載のプラスチック用塗料組成物。
7)前記有機金属化合物(C)成分が分子内にS原子を含有する錫系化合物である1)〜6)いずれか1項に記載のプラスチック用塗料組成物。
8)前記単官能性のイソシアナ−ト化合物(E)成分がトシルイソシアナ−トである5)〜7)いずれか1項に記載のプラスチック用塗料組成物。
9)前記プラスチック用塗料組成物をプラスチックのプライマーとして用いることを特徴とする1)〜8)記載のいずれか1項に記載の塗膜の形成方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のプラスチック用塗料組成物として用いられる樹脂(A)成分はイソシアナート基と反応する官能基を含有していればよく、たとえば、湿分の存在下、室温で硬化性を有する樹脂として加水分解性シリル基および水酸基を有する樹脂(A)成分が含有される。
【0008】
前記加水分解性シリル基および水酸基を有する樹脂(A)成分は、その主鎖が実質的にアクリル系単量体が共重合した主鎖からなる(以下、主鎖が実質的にアクリル系共重合鎖からなるともいう)共重合体であるため、得られる本発明のプラスチック用塗料組成物から形成される塗膜の密着性、耐衝撃性、耐溶剤性、耐薬品性などが優れたものとなる。
【0009】
なお、前記樹脂(A)成分の主鎖が実質的にアクリル共重合鎖からなるとは、樹脂(A)成分の主鎖を構成する単位のうちの50%以上、さらには70%以上がアクリル系単量体単位から形成されていることを意味する。また、樹脂(A)成分は、加水分解性シリル基が炭素原子に結合した形式で含有されているため、塗膜の耐水性、耐アルカリ性、耐酸性などがすぐれたものとなる。
【0010】
本発明の組成物から形成される塗膜の密着性、耐溶剤性などの耐久性が優れるという点から、樹脂(A)成分において、加水分解性シリル基の数は、樹脂(A)成分1分子あたり2個以上、好ましくは3個以上であることが、好ましい。
【0011】
前記加水分解性シリル基は、樹脂(A)成分の主鎖の末端に結合していてもよく、側鎖に結合していてもよく、主鎖の末端および側鎖に結合していてもよい。加水分解性シリル基の導入方法としては、加水分解性シリル基を有する単量体をその他の単量体と共重合する方法、シリケ−ト化合物を反応させる方法、または、水酸基含有共重合体にシリケ−ト化合物を反応させる方法等がある。簡便な方法としては加水分解性シリル基を有する単量体を他の単量体を共重合する方法である。
前記加水分解性シリル基の加水分解性基は、ハロゲン基、アルコキシ基等がある。その中で、反応の制御の簡便さから下記一般式(II)で表されるアルコキシ基が有用である。
一般式(II)中のR3としては、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、好ましくはたとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基である。前記アルキル基の炭素数が10を超える場合には、加水分解性シリル基の反応性が低下するようになる。また、前記アルコキシ基の酸素に結合した基がたとえばフェニル基、ベンジル基などのアルキル基以外の基である場合にも、加水分解性シリル基の反応性が低下するようになる。
また、前記一般式(II)中のR4としては水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、好ましくはたとえば前記R3において例示された炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基などの炭素数6〜25のアリール基およびベンジル基などの炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基である。これらの中では、本発明の組成物の硬化性が優れるという点から炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0012】
前記一般式(II)において、(R3O)3−bは3−bが1以上3以下になるように、すなわちbが0〜2になるように選ばれるが、本発明の組成物の硬化性が良好になるという点からは、bが0または1であるのが好ましい。したがって、R4の結合数は0または1であるのが好ましい。
一般式(II)中に存在する(R3O)3−bまたは R4 bの数が複数個の場合はそれらは同一であっても異なっていてもよい。
前記一般式(II)で表される炭素原子に結合した加水分解性シリル基の具体例としては、たとえば後述の樹脂(A)成分に共重合される加水分解性シリル基含有ビニル系単量体に含有される基が挙げられる。
【0013】
なお、樹脂(A)成分中の前記単量体単位の含有割合は、本発明の組成物を用いて形成される塗膜の耐久性が優れる、強度が大きくなるという点から、樹脂(A)成分の全単量体中3〜90重量%、さらには10〜70重量%、とくには10〜50重量%であるのが好ましい。 つぎに、樹脂(A)成分の製法の一例について説明する。
【0014】
樹脂(A)成分は、たとえば加水分解性シリル基含有ビニル系単量体(a)成分、水酸基含有ビニル系単量体および/またはその誘導体(b)成分、(メタ)アクリル酸および(または)その誘導体(c)成分、ならびに必要により(a)成分、(b)成分、(c)成分以外のその他の共重合可能なビニル系単量体(d)成分を共重合することによって製造することができる。
【0015】
加水分解性シリル基含有ビニル系単量体(a)成分の具体例としては、たとえば
【0016】
【化1】
【0017】
【化2】
【0018】
【化3】
【0019】
【化4】
【0020】
【化5】
【0021】
【化6】
【0022】
【化7】
(式中、R3、R4、R5およびbは一般式(II)および(III)中のR3、R4、R5およびbと同じ、pは0〜20の整数を示す)で表される化合物や、炭素原子に結合した加水分解性シリル基をウレタン結合またはシロキサン結合を介して末端に有する(メタ)アクリレ−トなどがあげられる。これらの中では、共重合性および重合安定性、ならびに得られる組成物の硬化性および保存安定性が優れるという点から、前記一般式(IV)で表される化合物が好ましい。
【0023】
これらの加水分解性シリル基含有ビニル系単量体(a)成分は単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。前記(a)成分は、樹脂(A)成分の全単量体中に一般式(II)で表される炭素原子に結合した反応性シリル基を含有する単量体が3〜90重量%、さらには10〜70重量%、特には10〜50重量%含有されるように使用するのが好ましい。
【0024】
前記水酸基含有ビニル系単量体およびまたはその誘導体(b)成分の具体例としては、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2―ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシエチルビニルエ−テル、N―メチロ−ル(メタ)アクリルアミド、東亜合成化学工業(株)製のアロニクス5700、4−ヒドロキシスチレン、日本触媒化学工業(株)製のHE―10、HE−20、HP―1およびHP―20(以上、いずれも末端に水酸基を有するアクリル酸エステルオリゴマ−)、日本油脂(株)製のブレンマ−PPシリ−ズ(ポリプロピレングリコ−ルメタクリレ−ト)ブレンマ−PEシリ−ズ(ポリエチレングリコ−ルモノメタクリレ−ト)ブレンマ−PEPシリ−ズ(ポリエチレングリコ−ルポリプロピレングリコ−ルメタクリレ−ト)ブレンマ−AP−400(ポリプロピレングリコ−ルモノアクリレ−ト)、ブレンマ−AE−350(ポリエチレングリコ−ルモノアクリレ−ト)およびブレンマ−GLM(グリセロ−ルモノメタクリレ−ト)、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類、水酸基含有化合物とε―カプロラクトンとの反応により得られるε−カプロラクトン変性ヒドロキシアルキルビニル系共重合体化合物Placcel FA―1、 Placcel FA―4、 Placcel FM―1、 Placcel FM―4(以上ダイセル化学工業(株)製)、TONE M−201(UCC社製)、ポリカ−ボネ−ト含有ビニル系化合物(具体例としては、HEAC―1(ダイセル化学工業(株)製)などが挙げられる。中でも2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−トは、イソシアナ−トとの反応性に優れ、耐候性、耐薬品性、耐衝撃性が良好な塗膜が得られる点から好ましい。特に好ましくは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−トである。また、使用量としては、樹脂(A)成分の全単量体中1〜50重量%、さらには5〜30重量%、特には5〜20重量%が好ましい。(b)成分が1重量%未満の場合には、得られる組成物の硬化性が低下するようになり、また50重量%を超えると、得られた組成物の安定性が低下しやすい。
【0025】
これらのアルコ−ル性水酸基含有ビニル系単量体(b)成分は単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0026】
その他前記(a)、(b)と共重合可能な単量体(c)は水酸基を含まない単量体であり、具体例としては(メタ)アクリル酸および/またはその誘導体があげられる。その具体例としては、たとえばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレ−ト、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレ−ト、3,3,5,−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、2ーエチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレ−ト、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、グリシジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレ−ト、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、α−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド(メタ)アクリロイルモルホリン、アロニクスM−5700、マクロモノマーであるAS−6、AN−6、AA−6、AB−6、AK−6などの化合物(以上、東亜合成化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類とリン酸またはリン酸エステル類との縮合生成物などのリン酸エステル基含有(メタ)アクリル系化合物、ウレタン結合やシロキサン結合を含む(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0027】
その他(c)成分の具体例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸、これらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などの塩;無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸の酸無水物、これら酸無水物と炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖を有するアルコールまたはアミンとのジエステルまたはハーフエステルなどの不飽和カルボン酸のエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジアリルフタレートなどのビニルエステルやアリル化合物;ビニルピリジン、アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ基含有ビニル系化合物;イタコン酸ジアミド、クロトン酸アミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸ジアミド、N−ビニルピロリドンなどのアミド基含有ビニル系化合物;メチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、フルオロオレフィンマレイミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルスルホン酸などのその他ビニル系化合物などが挙げられる。
【0028】
これらの(c)成分は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。前記(b)成分と(c)成分の使用量の合計は、加水分解性シリル基含有ビニル系単量体(a)成分の種類および使用量に応じて適宜調整すればよいが、樹脂(A)成分の全単量体中4〜91重量%、さらには30〜85重量%、とくには50〜80重量%であるのが好ましい。
【0029】
また、本発明においては、得られる本発明の組成物から形成される塗膜の耐久性をさらに向上させる目的で、たとえば主鎖にウレタン結合やシロキサン結合により形成されたセグメント、(a)成分、(b)成分、(c)成分以外の単量体に由来するセグメントなどを、50重量%を超えない範囲で樹脂(A)成分の製造時に導入してもよい。
【0030】
前記その他(a)、(b)、(c)と共重合可能な単量体の(d)芳香族ビニル系単量体成分の具体例としては、たとえばスチレン、αーメチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸、ビニルトルエンなどの水酸基を含まない芳香族系ビニル化合物;などが挙げられる。
【0031】
これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。樹脂(A)成分にはカルボキシル基またはアミノ基などの基が含まれていてもよく、その場合には、硬化性、密着性が向上するが、重合体鎖に結合しているカルボキシル基やアミノ基の場合、活性が弱く、これらを硬化触媒のかわりに使用して硬化させようとしても良好な特性の硬化物を得ることは難しい。
【0032】
前記樹脂(A)成分は、たとえば特開昭54−36395号公報、特開昭57−55954号公報などに記載のヒドロシリル化法または加水分解性シリル基を含有する単量体を用いた溶液重合法によって製造することができるが、合成の容易さなどの点から加水分解性シリル基を含有する単量体を用い、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系ラジカル重合開始剤を用いた溶液重合法によって製造することがとくに好ましい。
【0033】
前記溶液重合法に用いられる溶剤は、非水系のものであればよく、とくに制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、nーヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類;エチルセロソルブ、ブチルセロソロブなどのセロソルブ類;セロソルブアセテートなどのエーテルエステル類;メチルエチルケトン、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン、アセトンなどのケトン類;メタノール、イソプロピルアルコール、nーブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、オクタノールなどのアルコール類が挙げられる。
また、前記溶液重合の際には、必要に応じて、たとえばN−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、γーメルカプトプロピルトリメトキシシラン、γーメルカプトプロピルトリエトキシシラン、(CH3O)3Si−S−S−Si(OCH3)3、(CH3O)3Si−S8−Si(OCH3)3などの連鎖移動剤を単独または2種以上併用することにより、得られる樹脂(A)成分の分子量を調整してもよい。とくに、たとえばγーメルカプトプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基を分子中に有する連鎖移動剤を用いた場合には、樹脂(A)成分の末端に反応性シリル基を導入できるので好ましい。かかる連鎖移動剤の使用量は、用いる(A)成分の単量体合計100重量部あたり0.05〜10重量部、特には0.1〜8重量部であることが好ましい。
このようにして得られた樹脂(A)成分は、本発明の組成物を用いて形成される塗膜の耐久性などの物性が優れるという点から、数平均分子量が、1000〜30000、特には3000〜25000であることが好ましい。
前記のごとき樹脂(A)成分は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0034】
さらに、本発明の塗料用組成物において、主成分である樹脂(A)成分には、加水分解性シリル基含有共重合体を分散安定剤樹脂として用い、非水系ディスパージョン重合で得られる非水系重合体粒子(NAD)を添加することができる。この成分は、極少量の添加で塗料組成物の低粘度化、ハイソリッド化を達成でき、さらに硬化塗膜の耐衝撃性を向上させることができる。上記添加成分である非水系重合体粒子(NAD)の製造において用いられる単量体は樹脂(A)成分に使用される単量体を用いることができる。
【0035】
本発明の組成物には、(A)成分および必要により(D)成分を含む組成物に対して架橋剤としてイソシアナ−ト基を2個以上有する化合物(B)成分が含有される。
【0036】
前記、イソシアナ−ト基を2個以上有する化合物としては、脂肪族系もしくは芳香族系のものが挙げられる。
【0037】
脂肪族系多官能性イソシアナ−トの具体例として、常温硬化用でヘキサメチレンジイソシアナ−ト、ジシクロヘキシルメタン4,4‘−イソシアナ−ト、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナ−ト、イソフォロンジイソシアナ−トがあり、構造としては単量体、ビュレット型、ウレジオ型、イソシナヌレ−ト型がある。
加熱硬化用としてはブロックタイプのものがある。そのブロック剤としてはメチルアルコ−ル、エチルアルコ−ル、n−プロピルアルコ−ル、イソ−プロピルアルコ−ル、n−ブチルアルコ−ル、sec−ブチルアルコ−ル、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、ベンジルアルコ−ル、フルフリルアルコ−ル、シクロヘキシルアルコ−ル、フェノ−ル、o−クレゾ−ル、m−クレゾ−ル、p―クレゾ−ル、p−tert−ブチルフェノ−ル、チモ−ル、p−ニトロフェノ−ル、β―ナフト−ルなどがある。また、芳香族多官能性イソシアナ−トとしては、2,4―トリレンジイソシアナ−ト、2,6―トリレンジイソシアナ−ト、ジフェニルメタン−4,4‘−ジイソシアナ−ト、キシレンジイソシアナ−ト、ポリメチレン−ポリフェニレル−ポリイソシアナ−ト、などがある。これにも、ビュレット型、ウレジオ型、イソシアヌレ−ト型がある。
これらの化合物は、2種以上混合して用いることもできる。
前記イソシアナ−ト化合物(B)成分の使用量は、(A)成分100重量部に対して0.1〜80重量部、好ましくは0.5〜60重量部、更に好ましくは1〜40重量部である。(B)成分が0.1重量部未満の場合には、得られる組成物の硬化性が低下するようになり、また80重量部を超えると、該組成物を用いて得られた塗膜に未反応のイソシアナ−ト化合物あるいはイソシアナ−ト基が残存し、塗り重ね時にちぢみを生じる原因となりやすい。
イソシナ−ト化合物とともに配合する硬化触媒としては好ましくは有機金属化合物が使用される。その中では、錫系化合物の場合が塗膜の硬化性の点から好ましい。また、貯蔵安定性と硬化活性を考慮して分子内にS原子を有する錫化合物が更に好ましい。
【0038】
前記錫化合物の具体例としては、ジオクチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレ−ト)、ジオクチル錫オキサイドまたはジブチル錫オキサイドとシリケ−トとの縮合物、ジブチル錫ジオクトエ−ト、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジブチル錫ジステアレ−ト、ジブチル錫ジアセチルアセトナ−ト、ジブチル錫ビス(エチルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(ブチルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(オレイルマレ−ト)、スタナスオクトエ−ト、ステアリン酸錫、ジ−n−ブチル錫ラルレ−トオキサイドがある。また、分子内にS原子有する錫化合物としては、ジブチル錫ビスイソノニル−3―メルカプトプロピオネ−ト、ジオクチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネ−ト、オクチルブチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネ−ト、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−ト、ジオクチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−ト、オクチルブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−トなどが挙げられる。
【0039】
前記錫化合物のうちでは、分子内にS原子を有する化合物が、イソシアナ−トを配合した場合の貯蔵安定性および可使時間が良好であることから好ましく、特に、ジブチル錫ビスイソノニル−3−メルカプト、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−トが硬化性と貯蔵安定性、可使時間のバランスの点から好ましい。
前記硬化触媒(C)成分は単独でもよく、また、2種類以上併用してもよい。
【0040】
前記(C)成分の使用量は、(A)成分100重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは、1.2〜13重量部、より好ましくは0.5〜10重量部、更に好ましくは0.5〜5重量部である。さらに、有機金属化合物(C)成分の量が30重量部を超えると、該組成物を用いて形成した塗膜の表面光沢など外観性の低下傾向が認められるので好ましくない。
【0041】
本発明においては、前述の樹脂(A)成分には、本発明の組成物から形成される該塗膜と被塗物との密着性を向上させるための成分である、一般式(I):
(R1O)4−a−Si−R2 a (I)
(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数7〜10のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、R2は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数7〜10のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、aは0または1を示す)で表されるシリコン化合物および/または該シリコン化合物をアルコール系溶剤中、酸性条件下で加水分解した化合物(D)成分を(A)成分100重量部あたり1〜200重量部(以下、シリコン化合物の部分加水分解縮合物(D)成分という)が使用出来る。
【0042】
前記一般式(1)において、R1は炭素数1〜10、好ましくはたとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルリル基、好ましくはたとえばフェニル基などの炭素数6〜9のアリール基およびベンジル基などの炭素数7〜9のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基である。前記アルキル基の炭素数が10を超える場合には、シリコン化合物の部分加水分解縮合物(D)成分の反応性が低下するようになる。また、R1が前記アルキル基、アリール基、アラルキル基以外の場合にも反応性が低下するようになる。
【0043】
また、前記一般式(I)において、R2は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルリル基、好ましくはR1と同様の炭素数1〜4のアラルキル基、炭素数6〜9のアリール基、炭素数7〜9のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素である。
【0044】
前記一般式(I)において、(R1O)4−aは4−aが3以上になるように、すなわちaが0〜1になるように選ばれるが、本発明の組成物から形成される塗膜の硬化性が向上するという点からは、aが0であるのが好ましい。
【0045】
一般式(I)中に存在する(R1O)4−aの数が複数個の場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。
【0046】
前記(D)成分のシリコン化合物の具体例としては、たとえばテトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラn−プロピルシリケート、テトラi−プロピルシリケート、テトラn−ブチルシリケート、テトラi−ブチルシリケートなどのテトラアルキルシリケート;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、3ーグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリsec−オクチルオキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシランなどのシランカップリング剤などが挙げられる。
【0047】
また、前記(D)成分のシリコン化合物の部分加水分解縮合物(D)成分の具体例としては、たとえば通常の方法で前記テトラアルキルシリケートやトリアルコキシシランに水を添加し、縮合させて得られるものがあげられ、たとえばMSI51、ESI28、ESI40、ESI48、HAS−1、HAS−10(以上、コルコート(株)製)、MS51、MS56、MS56S(以上、三菱化学(株)製)、Mシリケ−ト51、FR−3、シリケ−ト40、シリケ−ト45、シリケ−ト48、ES−48(以上、多摩化学(株)製)などのテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物や、たとえばAFP−1(信越化学工業(株)製)などのトリアルコキシシランの部分加水分解縮合物などが挙げられる。
前記(D)成分のシリコン化合物の部分加水分解縮合物のうちでは、樹脂(A)成分との相溶性、得られる本発明の組成物の硬化性が良好で、該組成物を用いて形成される塗膜の硬度に優れるという点から、MSI51、MS51、MS56、MS56S(テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)やESI48、HAS−1(テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物)などのテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物を用いるのが好ましく、特に、重量平均分子量が1000より大きいMS56およびESI48のような化合物が、配合量を低減できる点から更に好ましい。
前記シリコン化合物等(D)成分は単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0048】
(D)成分のシリコン化合物の部分加水分解縮合物はまた、前記シリコン化合物および/またはシリコン化合物の部分加水分解縮合物をアルコール系溶剤中、酸性条件下で加水分解しても得ることができる。
【0049】
なお、前記アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコールなどが挙げられる。
【0050】
これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらのうちでは、メタノール、エタノール、イソプロパノールが安定性向上の点から好ましい。
【0051】
前記酸性条件下とは(1)酸性物質を添加する、(2)陽イオン交換樹脂で処理するような条件を指す。
【0052】
(1)酸性物質とは塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、亜硫酸、などの無機酸;モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノオクチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジデシルホスフェートなどのリン酸エステル;ぎ酸、酢酸、マレイン酸、アジピン酸、しゅう酸、コハク酸などのカルボン酸化合物;ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、1ーナフタレンスルホン酸、2ーナフタレンスルホン酸などのスルホン酸化合物などが挙げられる。
【0053】
これらの中では酸処理後に酸を除去しやすい点から比較的沸点が低い塩酸、硝酸、亜硫酸、ぎ酸が好ましい。
【0054】
(2)陽イオン交換樹脂とは、例えば、アンバーリスト15(ローム・アンド・ハース社製)、デュオライトC−433(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。陽イオン交換樹脂と水とで処理したのちは、濾過やデカンテーションなどにより陽イオン交換樹脂を除去するのが好ましい。
これらのシリコン化合物の部分加水分解縮合物(D)成分には事前に脱水剤としてオルト酢酸メチルを加えておくことが、(A)成分と配合した後の貯蔵安定性などの点より好ましい。
前記(D)成分の使用量は(A)成分100重量部に対して1〜200重量部、好ましくは2〜50重量部、更に好ましくは2〜30重量部である。(D)成分の使用量が200重量部をこえると塗膜の表面光沢などの外観性が低下したり、クラックなどが発生したりするようになる。
前記(D)成分は、(A)成分と(D)成分との相溶性を向上させるため、(A)成分の重合時に(D)成分を加えること、さらに、(A)成分に(D)成分をホットブレンドすることができる。
【0055】
前記の脱水剤として配合される単官能イソシア−ト化合物(E)成分としては、イソシアン酸、メチルイソシアナ−ト、エチルイソシアナ−ト、イソプロピルイソシアナ−ト、ヘキシルイソシアナ−ト、ビニルイソシアナ−ト、イソプロペニルイソシアナ−ト、フェニルイソシアナ−ト、トリルイソシアナ−ト、ニトロフェニルイソシアナ−ト、ナフチルイソシアナ−ト、トシルイソシアナ−トなどが挙げられるが、脱水能力および化合物自体の安定性の点からヘキシルイソシアナ−ト、トリルイソシアナ−ト、トシルイソシアナ−トが好ましい。中でも脱水効果の持続性の点からトシルイソシアナ−トが特に好ましい。これらは、単独または2種類以上併用することができる。それによって、硬化剤が脱水され、ポリイソシアナ−ト、有機金属化合物、単官能イソシアナ−ト化合物を混合した場合の貯蔵安定性が飛躍的に向上する。
【0056】
前記単官能イソシアナ−ト化合物(E)成分の配合量としては(A)成分100重量部あたり0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部がさらに好ましい。出きれば数値範囲の上下限による効果を記載下さい。
【0057】
前記樹脂(A)成分、イソシアナ−ト化合物(B)成分、硬化触媒(C)成分,シリコン化合物等(D)成分、および脱水剤(E)成分の配合割合は、樹脂(A)成分100重量部に対して、イソシアナ−ト化合物(B)成分が0.1〜80重量部、有機金属化合物(C)成分が0.1〜30重量部、シリコン化合物(D)成分が1〜200重量部、脱水剤としての単官能イソシアナ−ト化合物(E)成分が0.1〜10重量部になるように調整される。
【0058】
本発明の塗料組成物の配合形態については、主剤として樹脂(A)成分と必要に応じてシリコン化合物(D)成分を混合、硬化剤としてイソシアナ−ト化合物(B)成分と硬化触媒(C)成分と必要に応じて脱水剤単官能イソシアナ−ト(E)成分を混合した、2液の配合形態。また、主剤として樹脂(A)成分および硬化触媒(C)必要に応じてシリコン化合物(D)成分を混合したものと、硬化剤としてイソシアナ−ト(B)成分と必要に応じて脱水剤単官能イソシアナ−ト(E)成分の2液の配合形態。さらに、イソシアナ−ト成分(B)にブロックタイプのものを使用した場合には、樹脂(A)成分、イソシアナ−ト化合物(B)成分および硬化触媒(C)成分、必要に応じてシリコン化合物(D)成分、を混合した1液の配合形態が可能である。
【0059】
本発明の塗料組成物は、樹脂(A)成分、イソシアナ−ト化合物(B)成分、硬化触媒(C)成分、必要に応じてシリコン化合物の部分加水分解縮合物(D)成分、単官能イソシアナ−ト(E)成分を例えば撹拌機などを用いて均一な組成物となるように撹拌、混合することによって得ることができるが、樹脂(A)成分および必要に応じて用いられたシリコン化合物等(D)成分には、さらに脱水剤を配合することによって、組成物の保存安定性を長期間にわたって優れたものにすることができる。
前記脱水剤の具体例としては、たとえばオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル、オルトプロピオン酸トリメチル、オルトプロピオン酸トリエチル、オルトイソプロピオン酸トリメチル、オルトイソプロピオン酸トリエチル、オルト酪酸トリメチル、オルト酪酸トリエチル、オルトイソ酪酸トリメチル、オルトイソ酪酸トリエチルなどの加水分解性エステル化合物;または、ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、1,1−ジメトキシプロパン、1,1−ジメトキシブタンなどが挙げられる。この中では、脱水効果の点から、オルト酢酸メチルが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
前記脱水剤は、(A)成分と(D)成分の合計100重量部に対して200重量部以下好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは50重量部以下で使用される。
また、樹脂(A)成分を重合する前の成分に加えてもよく、樹脂(A)成分の重合中に加えてもよく、また、得られた樹脂(A)成分とそのほかの成分との混合時に加えてもよく特に制限はないが、(D)成分であるシリコン化合物またはシリコン化合物の部分加水分解縮合物をアルコール系溶剤中、酸性条件下で加水分解した後に、加えておくことが好ましい。
【0060】
本発明のプラスチック用塗料組成物は、プラスチックの成形品に好適に用いるものである。成形品とは具体的形状を成したものであり、例えばフィルムは本発明の成形品には含まれない。更には熱可塑性樹脂等の成形品により好適に用いられる。具体的には、ポリオレフィン、ポリスチレン、ABS、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂成形品、FRP等の繊維強化複合材による成形品が例示でき、更にはFRP、ABS、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルに好適に用いられる。なお上記の熱可塑性樹脂の繊維強化複合樹脂による成形品も好ましい例である。
【0061】
本発明プラスチック用塗料組成物をプライマーとして使用することもできる。その際には、各種溶剤を添加して作業性の良いプライマーを作製することができる。湿潤面に使用する場合には、イソプロパノール等のアルコール類、メチルエチルケトン等のケトン類等の極性溶媒を使用すると、更に接着性能を高めることが出来る。
【0062】
また、本発明のプラスチック用塗料組成物をプライマーとして用いる場合には、通常塗料に用いられるたとえば酸化チタン、群青、紺青、亜鉛華、ベンガラ、黄鉛、鉛白、カーボンブラック、透明酸化鉄、アルミニウム粉などの無機顔料、アゾ系顔料、トリフェニルメタン系顔料、キノリン系顔料、アントラキノン系顔料、フタロシアニン系顔料などの有機顔料などの顔料;希釈剤、紫外線吸収剤、光安定剤、タレ防止剤、レベリング剤などの添加剤;ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレートなどの繊維素;エポキシ樹脂、メラミン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩化ゴム、ポリビニルブチラール、ポリシロキサンなどの樹脂などを適宜加えてもよい。
【0063】
本発明のプラスチック用塗料組成物をプライマーとして用いる場合には、プライマー組成物の塗布方法としては特に限定されず、従来公知の塗布手段、たとえば浸漬、吹き付け、刷毛などを用いた塗布などの通常の方法によって被塗物に塗布され、通常、常温でそのまま、または30℃以上で焼き付けて硬化せしめる。本発明は、プラスチック用塗料組成物に関する。さらに詳しくは、例えばポリオレフィン、ポリスチレン、FRP、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂成形品、FRP等の繊維強化複合樹脂による成形品が例示でき、更にはFRP、ABS、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルの成形品の塗装に好適に用いられる。なお上記の熱可塑性樹脂の繊維強化複合材による成形品も好ましい例である。
【0064】
本発明のプラスチック用塗料組成物は、各種上塗り塗料との密着性が優れているので、使用される上塗り塗料に特に限定はなく、無機塗料、有機無機ハイブリッド塗料、フッ素樹脂塗料、アクリルシリコン塗料、アクリルウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、合成樹脂エマルジョン塗料等が用いられる。
【0065】
次に、本発明のプラスチック用塗料組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0066】
製造例1(樹脂(A)−1−1成分の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロ−トを備えた反応器にキシレン30重量部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ110℃に昇温した。その後、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン13重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレ−ト13重量部、メチルメタクリレ−ト42重量部、n−ブチルアクリレ−ト22重量部、スチレン10重量部、キシレン15重量部および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル3重量部からなる混合物を滴下ロ−トにより5時間かけて等速滴下した。滴下終了後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.3重量部およびトルエン2重量部、キシレン20重量部を1時間かけて等速滴下した後、110℃で2時間熟成してから冷却し、樹脂溶液にキシレンを加えて樹脂固形分濃度が50重量%の樹脂(A)−1−1を得た。
得られた樹脂(A)−1−1の平均分子量は7000であった。
【0067】
製造例2(樹脂(A)−1−2成分の製造)
製造例1において、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン13重量部を5重量部に、2−ヒドロキシエチルメタクリレ−ト13重量部を5重量部に、メチルメタクリレ−ト42重量部を54重量部に、n−ブチルアクリレ−ト22重量部を26重量部に変更し、ほかは製造例1と同様にして樹脂固形分濃度が50重量%の樹脂(A)−1−2を得た。得られた樹脂(A)−1−2の数平均分子量は7000であった。
製造例3((A−2)の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロ−トを備えた反応器にキシレン30重量部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ110℃に昇温した後、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン13重量部、n−ブチルアクリレ−ト25重量部、スチレン10重量部、メチルメタクリレ−ト52重量部、キシレン15重量部および2,2−アゾビスイソブチロニトリル3重量部からなる混合物を滴下ロ−トにより5時間かけて等速滴下した。
混合物の滴下後、2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.3重量部およびトルエン2重量部、キシレン20重量部を1時間かけて等速滴下した後、110℃で2時間熟成してから冷却し、樹脂溶液にキシレンを加えて樹脂固形分が50重量%の(A)−2を得た。なお、得られた(A)―2の数平均分子量は7,000であった。
【0068】
なお、前記数平均分子量は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー分析装置(東洋曹達(株))製、HLC−8020を用いて、ゲルパーミネーションクロマトグラフィーを行って測定した。
【0069】
【表1】
実施例1
製造例1で得られた樹脂(A)−1−1の樹脂固形分100重量部に対し、シリコン化合物等(D)成分としてMS56(三菱化学(株)製のテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)10重量部を加えた混合液に、イソシアナ−ト化合物(B)成分としてコロネ−トHX(日本ポリウレタン社製)、有機金属化合物(C)成分としてジブチル錫ビスイソオクチルチオグリコレ−ト、および単官能イソシアナ−ト(E)成分としてトシルイソシアナ−トを各々樹脂(A)−1−1の樹脂固形分100重量部に対してそれぞれ10重量部、1重量部、1重量部になるように(D)成分、(C)成分と(E)成分を予め混合しておき、添加した。さらに、希釈溶剤(F)成分としてキシレンを添加して攪拌機を用いて5分間攪拌して、固形分濃度が45重量%の組成物(AR−1)を得た。
【0070】
得られた本発明のプラスチック用塗料組成物を、ABS樹脂成型板、ポリカーボネート成型板、FRP成型板、ポリ塩化ビニル成型板におのおの乾燥膜厚で10〜30μmとなる様塗布し評価した。また、硬化性を除く評価として、ABS樹脂成型板を基材とし、衝撃性、折り曲げ性、加工性、上塗り塗装性について評価し、以下の方法に従って評価した。
(イ)素材密着性
前記プラスチック素材にプラスチック用塗料組成物を塗装した。室温(23℃、湿度55%)で1日養生後の密着性(1次密着)とその後40℃温水に7日間浸漬し、取り出した直後(2次密着)について、JIS K 5400に準拠して碁盤目密着性を測定することにより評価した。
(評価結果)
10:100/100
8:80/100
6:60/100
4:40/100
2:20/100
0: 0/100
(ロ)硬化性(ゲル分率)
表2で得られたプラスチック用塗料組成物をポリエチレンシート上に塗布し、室温(23℃、湿度55%)で7日養生後、得られた厚さ約30μmの遊離クリアーフィルムを約50×50mmの大きさに切断し、予め精秤した200メッシュのステンレス製の金網(W0 )に包み精秤した(W1 )。そののち、アセトン中に24時間浸漬して抽出を行ない、ついで乾燥・精秤し(W2 )、式:
ゲル分率(%)={((W2 )−(W0 ))/((W1 )−(W0 ))}×100
に基づいてゲル分率(%)を求めた。
(ハ)耐衝撃性
耐衝撃性評価は、ABS樹脂成型板にプラスチック用塗料組成物を塗布し、23℃×55R.H.%で7日間養生後、サンシャインウェザオメ−タ−で48時間試験した後、塗膜を乾燥し、DuPont衝撃試験を実施し、塗膜の異常の有無を確認した。
(二)折り曲げ性
加工性評価は、ABS樹脂成型板にプラスチック用塗料組成物を塗布し、23℃×55R.H.%で7日間養生後、サンシャインウェザオメ−タ−で48時間試験した後、塗膜を乾燥し、ABS樹脂成型板を90度まで折り曲げ、塗膜の異常の有無を確認した。
〇;塗膜に異常が見られない。
×;折り曲げ部塗膜に亀裂が認められる。
(ホ)加工性
加工性評価は、ABS樹脂成型板にプラスチック用塗料組成物を塗布し、23℃×55R.H.%で7日間養生後、サンシャインウェザオメ−タ−で48時間試験した後、塗膜を乾燥し、ABS樹脂成型板をカッティングし、塗膜の異常の有無を確認した。
〇;塗膜に異常が見られない。
×;カッティングした部分に剥離が認められる。
(ヘ)上塗り塗装性
上塗り塗装性評価は、ABS樹脂成型板にプラスチック用塗料組成物を乾燥膜厚が10〜30μmになるよう塗布し、23℃×55R.H.%で1日間養生後、アクリルシリコン塗料を乾燥膜厚が20〜40μmになるよう塗装し、23℃×55R.H.%で7日間養生後、前記(二)折り曲げ性、(ホ)加工性、外観性(塗膜の異常の有無)を確認した。
結果をまとめて表−3、4に示す。
【0071】
実施例2〜3、および比較例1〜2組成を表−2に示すようなクリア−で実施した。
【0072】
実施例2〜3、および比較例1〜2得られた組成物を実施例1に示す評価法で塗膜の評価を行い、その結果を表−3、4にまとめて示す。
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
実施例1〜3および比較例1〜2で配合されている組成物は以下の通りである。イソシアナ−ト化合物(B)成分
(B);コロネートHX(日本ポリウレタン工業(株)製)
有機金属化合物(硬化触)(C)成分
(C)−1;ジブチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネ−ト
(C)−2;ジブチル錫ビスブチルマレ−ト
シリコン化合物(D)成分
(D);MS56(テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物;三菱化学(株)製)
単官能イソシアナ−ト(E)成分
(E);トシルイソシアナ−ト
【0076】
【発明の効果】
本発明は、常温または加熱で硬化性を有するプラスチック用塗料組成物を提供し、アクリルシリコン樹脂塗料の優れた耐汚染性と密着性、耐溶剤性、耐衝撃性、加工性を同時に有する塗装物を提供することである。更には、プライマーとして用いることにより、上塗りされたアクリルシリコン樹脂塗料の優れた耐汚染性と密着性、耐溶剤性、耐衝撃性、加工性を同時に有する塗装物を提供することである。
Claims (9)
- 加水分解性シリル基を有するビニル系共重合体(A)100重量部に対して、架橋剤としてイソシアナート基を2個以上含有する化合物(B)0.1〜80重量部と、有機金属化合物(C)0.1〜30重量部含有することを特徴とするプラスチック用塗料組成物。
- 前記組成物に一般式(I)
(R1O)4−a−Si−R2 a (I)
(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、R2は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、aは0または1を示す)で表されるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(D)1〜200重量部添加することを特徴とする請求項1記載のプラスチック用塗料組成物。 - ビニル系共重合体(A)が、前記(a)、(b)、(c)と共重合可能な単量体として(d)芳香族ビニル系単量体5〜20重量%を共重合して得られる請求項1〜3いずれか1項に記載のプラスチック用塗料組成物。
- 必要に応じて、単官能イソシアネート化合物(E)0.1〜10重量部配合してなる請求項1〜4いずれか1項に記載のプラスチック用塗料組成物。
- 前記有機金属系化合物(C)成分が有機錫化合物である請求項1〜5いずれか1項に記載のプラスチック用塗料組成物。
- 前記有機金属化合物(C)成分が分子内にS原子を含有する錫系化合物である請求項1〜6いずれか1項に記載のプラスチック用塗料組成物。
- 前記単官能性のイソシアナ−ト化合物(E)成分がトシルイソシアナ−トである請求項5〜7いずれか1項に記載のプラスチック用塗料組成物。
- 前記プラスチック用塗料組成物をプラスチックのプライマーとして用いることを特徴とする請求項1〜8記載のいずれか1項に記載の塗膜の形成方法。
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