JP2004154707A - 分離膜の洗浄方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】薬品洗浄時における分離膜素材や分離膜モジュール構成部材の劣化を最低限に抑えながら、効率よく膜面の目詰まり物質やファウリング物質を分解除去する方法を提供する。
【解決手段】活性塩素とpH緩衝剤とを含む水溶液と、分離膜とを接触させる工程(A)を有する分離膜の洗浄方法は、活性塩素が必要以上の酸化力を持つことを防止することができ、分離膜や分離膜モジュールの構成部材を劣化させることなく薬品洗浄をすることができる。
また、前記工程(A)の前に、分離膜と、酸を含む水溶液とを接触させる工程(B)を有すると、水溶液が不必要な酸化活性を持たないので、分離膜や分離膜モジュールの構成部材を劣化させることなく、より一層効率よく膜を薬品洗浄することができる。
【選択図】 なし
【解決手段】活性塩素とpH緩衝剤とを含む水溶液と、分離膜とを接触させる工程(A)を有する分離膜の洗浄方法は、活性塩素が必要以上の酸化力を持つことを防止することができ、分離膜や分離膜モジュールの構成部材を劣化させることなく薬品洗浄をすることができる。
また、前記工程(A)の前に、分離膜と、酸を含む水溶液とを接触させる工程(B)を有すると、水溶液が不必要な酸化活性を持たないので、分離膜や分離膜モジュールの構成部材を劣化させることなく、より一層効率よく膜を薬品洗浄することができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分離膜の機能を回復させる分離膜の洗浄方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、分離膜は様々な用途で利用されており、無菌水、飲料水、高純度水の製造、空気の浄化、ガスの濃縮や添加等の目的で利用されてきた。中でも、限外濾過膜や精密濾過膜は近年、浄水場における河川水の直接濾過、工業用水道水の濾過、プール水の濾過、下水処理場における二次処理や三次処理、浄化槽における固液分離、産業廃水中のss(浮遊懸濁物質)の固液分離などの高汚濁性水処理用途に利用され始めてきている。
【0003】
濾過などの運転の継続に従って、膜には目詰まりが生じ、濾過差圧が上昇する。このような濾過差圧の上昇は、いずれ処理液を確保するのには困難な程度にまで上昇することになる。その場合、運転を継続して行うためには、この目詰まり物質を除去することによって上昇した差圧を低下させることが必要になる。
【0004】
分離膜の目詰まりは、大きく2つに分類され、一つは膜面への微粒子など固形分の堆積である。これに対しては、クロスフロー濾過や気液混合流によるスクラビング洗浄により膜面の洗浄が可能である。一方、もう一つは有機物や微少な無機化合物などの膜材への吸着に由来するファウリングであり、これらのファウリングは、スクラビング洗浄のような物理的手段では容易に除去できず、薬液などによる化学的な洗浄が不可欠となる。
【0005】
分離膜の薬液洗浄において、その洗浄剤は様々なものが利用されている。金属塩などに代表される無機化合物のファウリングにおいては、酸の水溶液などに分離膜を浸漬、あるいは通液することで洗浄が行うことができる。また、有機物のファウリングについては、酸やアルカリで除去可能な場合もあるが、多く用いられるのは次亜塩素酸塩等の酸化剤の水溶液を洗浄剤として用い、この洗浄剤中の活性塩素によって、有機物を酸化分解して膜面より除去する。
【0006】
これらの薬液による洗浄は、ファウリング物質の溶解、分解を進行させてファウリング物質を膜面及び膜厚内部より除去し、濾過性能を回復させる。しかしながら、用いる薬品及び膜材質によっては、ファウリング物質の溶解、分解だけでなく、膜材そのものも分解して劣化させてしまい、膜モジュールの寿命を著しく短くしてしまうことが問題として挙げられる。
【0007】
薬品洗浄に用いる薬剤としては、水酸化ナトリウム等の強アルカリ性の水溶液、塩酸や硝酸などの強酸の水溶液や、クエン酸、シュウ酸などの弱酸の水溶液、活性塩素(あるいは有効塩素)を含む次亜塩素酸塩、オゾンなどの水溶液が用いられる。特に、これらの中で酸化を促す薬剤については、ファウリング物質の分解による透水性能回復の効果も大きいが、同時に膜材も酸化劣化させるため、高い頻度や長時間酸化剤と接触させるような薬品洗浄では、分離膜が経時的に劣化するという問題がある。
【0008】
また、排水処理等で用いられた分離膜には、その性能を低下させるファウリング物質として、無機物と有機物が混在して分離膜表面あるいは分離膜細孔内部に付着してことも多い。このような場合、酸性水溶液による薬液と、次亜塩素酸塩水溶液等の活性塩素を含む薬液の2種類を用い、無機物の除去に酸性薬液を用い、有機物の分解・除去に活性塩素を含む薬液を用いると、効果的に洗浄を行うことができる(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0009】
しかしながら、このような2種類の薬液をそれぞれ段階的に分けて洗浄を行う時、前段の薬液が残留したまま、後段の薬液が投入されたり、混合された場合、条件によっては、必要以上の活性を薬液が持つことになる。例えば、次亜塩素酸塩水溶液に代表される活性塩素水溶液においては、その水溶液中のpHが下がり、酸性になるほど活性が増し、酸化力が増大する傾向にある。このため、ファウリング物質の分解、除去だけでなく、分離膜そのものや、分離膜モジュールの構成部材をも劣化させてしまい、寿命を早めてしまう可能性がある。特に同じ分離膜モジュールに対して、繰り返し薬品洗浄を行うことにより、膜材や部材等の劣化が進行していく懸念がある。
【0010】
塩酸水溶液で分離膜の洗浄を行った後、超純水で簡単に洗浄し、その後次亜塩素酸ナトリウム水溶液との接触を行った場合(特許文献1参照)、膜の細孔やモジュール内の水が置換されにくい個所では、塩酸が残留してしまい、次の次亜塩素酸ナトリウム水溶液のpHが低くなりすぎて、必要以上に膜材や部材を酸化劣化させてしまう可能性がある。
【0011】
先に次亜塩素酸塩水溶液で分離膜を洗浄した後、水道水によるリンスをして、その後にクエン酸溶液と分離膜とを接触させた場合(特許文献2参照)、特許文献1と同様に、次亜塩素酸塩が残留する懸念があり、クエン酸溶液中に、残留する次亜塩素酸塩が混ざってしまい、酸性領域で活性塩素が存在する液となってしまう可能性がある。
【0012】
まずNaOHを混在させた強アルカリの次亜塩素酸塩水溶液と分離膜とを接触させた後、水で洗浄し、その後硫酸溶液と接触させた場合(特許文献3参照)、これも特許文献2の場合と同様に、酸洗浄工程で活性塩素が残留してしまう可能性がある。
【0013】
【特許文献1】
特開平9−262444号公報
【特許文献2】
特開平10−118469号公報
【特許文献3】
特開平11−244673号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、薬品洗浄時における分離膜素材や分離膜モジュール構成部材の劣化を最低限に抑えながら、効率よく膜面の目詰まり物質やファウリング物質を分解除去する方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明の要旨は、活性塩素とpH緩衝剤とを含む水溶液と、分離膜とを接触させる工程(A)を有する分離膜の洗浄方法、である。
【0016】
前記工程(A)における前記水溶液のpHが、6〜14の範囲であると、活性塩素が過剰な活性を持たないため好ましい。
また、前記工程(A)の開始時と終了時における前記水溶液のpHの差が、2.0以下であると、分離膜の劣化を押えつつ効果的に洗浄を行うことができる。
前記工程(A)の前に、分離膜と、酸を含む水溶液とを接触させる工程(B)を有すると、より効果的な洗浄を行うことができる。
また、分離膜がポリオレフィン樹脂からなると、本発明の洗浄方法が特に有効である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の洗浄方法は、液体や気体の濾過や濃縮、液体から気体の脱気、液体への気体の給気など様々な用途で利用される分離膜の洗浄に適用できる。その中でも、濾過するに従って膜面の汚染度が高くなる、液体の濾過用途に利用される分離膜について特に有用である。
【0018】
本発明における洗浄方法は、膜面の目詰まり物質並びにファウリング物質を酸化分解して洗浄するために活性塩素を用いるが、用いる活性塩素としては、次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カルシウムのような次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩などが挙げられ、主にこれらの水溶液を洗浄に使用する。これらの塩は、薬液中に単独で溶解していても構わないし、複数の種類が混在していても構わない。
【0019】
活性塩素を水溶液として利用する場合、活性塩素の濃度は、10〜250000mg/Lの範囲が好ましい。この範囲より低い濃度では、膜面の汚れや目詰まり物質の分解の速度が遅く、薬品洗浄に非常に長時間を要し、その間は運転を行うことができない。また、この範囲より高い濃度では、活性塩素を有する薬剤は水への溶解度が限界に達するため溶解させ難いという点と、高濃度の活性塩素は場合によってその薬剤単独による分解反応が激しく進行するといった安全性の面で問題がある。より好ましくは、100〜100000mg/Lの範囲であり、さらに好ましくは300〜10000mg/Lの範囲である。
【0020】
活性塩素を発生させる塩を単独で含む水溶液は、通常は弱酸と強アルカリの塩であるため、薬品洗浄初期にはアルカリ性を示す。しかしながら、洗浄が進み、薬剤としての活性塩素を含む塩そのものが分解していくと、次第に水溶液は中性サイドに移行し、残存する活性塩素の活性が洗浄初期に比べて必要以上に増してしまう傾向がある。活性塩素を含む水溶液のpHが下がると、活性塩素の活性が増し、酸化力が強くなる。酸化力が強くなることで、分離膜に目詰まった物質等の分解も促進されるが、必要以上の活性が伴うと、分離膜材そのものや分離膜モジュールや装置を構成する部材までをも劣化させてしまう。
【0021】
このため、本発明における分離膜の洗浄方法は、活性塩素とpH緩衝剤とを含む水溶液と、分離膜とを接触させる工程(A)を行うことにより、分離膜を損なうことなく、効果的に目詰まり物質を除去することができる。
【0022】
洗浄に使用する水溶液のpHの範囲は6〜14の範囲が好ましい。pHが6より低いと活性塩素が高すぎてしまい、必要以上の酸化力により構成部材が劣化してしまい、pHが14より高いと、今度は強アルカリによる部材の劣化が進行する。より好ましい範囲としては、8〜12のpHの範囲が好ましい。
また、洗浄する初期から終了時まで、pHが大きく変化しないことが好ましく、工程(A)の開始時と終了時における前記水溶液のpHの差が、2.0以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましい。
【0023】
本発明に使用するpH緩衝剤としては、次のようなものが挙げられる。
pHが6〜8で緩衝させた液としては、リン酸二水素カリウムやリン酸二水素ナトリウムと、水酸化ナトリウムによってpHを調整した液、リン酸二水素カリウムやリン酸二水素ナトリウムと、四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)によってpHを調整した液、リン酸二水素カリウムとリン酸水素二ナトリウムによってpHを調整した液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと塩酸によってpHを調整した液が挙げられ、それぞれの液を用いて活性塩素を含む液を調製することができる。
【0024】
pHが8〜11で緩衝させた液としては、ホウ酸と水酸化ナトリウムによってpHを調整した液、四ホウ酸ナトリウムと水酸化ナトリウムによってpHを調整した液、四ホウ酸ナトリウムと炭酸ナトリウムによってpHを調整した液、塩化アンモニウムとアンモニアによってpHを調整した液、N,N−ジエチルグリシンナトリウム塩と塩酸によってpHを調整した液、塩酸と炭酸ナトリウムによってpHが調整された液などが挙げられ、それぞれの液を用いて活性塩素を含む液を調製することができる。
【0025】
pHが10〜12で緩衝させた液としては、リン酸水素二ナトリウムと水酸化ナトリウムによってpHが調整された液などが挙げられ、この液を用いて活性塩素を含む液を調製することができる。
【0026】
pHが12〜14で緩衝させた液としては、水酸化ナトリウムと塩化カリウムによってpHが調整された液などが挙げられ、この液を用いて活性塩素を含む液を調製することができる。
【0027】
また、pH6〜12の範囲の広域緩衝液としては、クエン酸、リン酸二水素カリウム、ホウ酸、ジエチルバルビツール酸とリン酸三ナトリウムによってpHが調整された液、ホウ酸、クエン酸、リン酸三ナトリウムによってpHが調整された液、などが挙げられ、pH8〜13の範囲の広域緩衝液としては、グリシン、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウムによってpHが調整された液などが挙げられ、これらの液を用いて活性塩素を含む液を調製することができる。
【0028】
なお、使用するpH緩衝剤の濃度は、使用する塩の中で、最も量の多い塩の水溶液中の濃度として0.05〜0.5mol/Lの範囲が好ましく、0.07〜0.2mol/Lの範囲がより好ましい。
【0029】
本発明の洗浄方法は、活性塩素とpH緩衝剤とを含む水溶液と、分離膜とを接触させる工程(A)の前に、分離膜と、酸を含む水溶液とを接触させる工程(B)を行った場合に、特に有効である。
【0030】
これは、酸を含む水溶液で分離膜を洗浄し、無機系の目詰まり物質を除去した後、活性塩素を含む水溶液で洗浄するにあたって、分離膜から持ち込まれる酸が多少あったとしても、活性塩素を含む水溶液中にpH緩衝剤が含まれているため、水溶液のpH変化を押えることができるためである。
一方、工程(A)の後に工程(B)を行う場合、分離膜に保持されたpH緩衝剤に対して酸の量が圧倒的に多量となり、pHを緩衝できず、分離膜に保持された活性塩素の酸化力が著しく増大して分離膜の分解が起こる可能性があるため好ましくない。
【0031】
工程(B)において使用する酸は、使用する酸の量が弱酸の場合と比較して少量ですみ、経済性に優れるため、強酸が好ましい。強酸の種類としては、塩酸、硝酸、硫酸、クロロ酢酸等を用いることができ、安価かつ取扱い性に優れる塩酸が最も好ましい。
なお、クエン酸、シュウ酸等の弱酸を使うこともできるが、これら有機性弱酸は、洗浄後に中和を行ったとしても、有機成分を含むため、そのまま排水として廃棄すると問題になる場合もある。一方、塩酸、硝酸、硫酸の場合、中和してしまえば無害な無機物となるため、廃棄も容易である。
【0032】
また、工程(B)の後、工程(A)の活性塩素による洗浄を行う前に、アルカリ性の水溶液を用いて、分離膜をリンスしてもよい。リンスを行って酸を中和することにより、後の工程(A)における経時的なpH変化を最小限とすることができる。
【0033】
本発明に適用する分離膜は、どのような形態であっても構わない。分離膜の形態としては平膜、管状膜、中空糸膜等が挙げられる。分離膜の使用にあたっては、その一次側と二次側とを仕切って固定した分離膜モジュールが通常使用されるが、分離膜モジュールの形態や構造においても、平板状、円筒形状、プリーツ状、スパイラル状等、構造に特に依存せずに本発明の洗浄方法が適用できる。
【0034】
また、濾過運転時の使用形態も、缶体などに分離膜モジュールを装填して、加圧しながら使うタイプのものや、槽内に分離膜モジュールを浸漬して二次側を吸引しながら濾液を取り出す、浸漬吸引方式のもの等、特に限定されることなく、本発明の薬品洗浄方法を用いることができる。
【0035】
分離膜の素材については、無機系のセラミックや金属などでも本発明の洗浄方法は適用できるが、劣化を比較的受け易い有機系高分子からなる分離膜の薬品洗浄に、本発明の方法は適している。
【0036】
有機系高分子の中でも、機械的強度も高く、それでいて柔軟性も保持され、また濾過特性にも優れるポリオレフィン樹脂がしばしば濾過膜として利用されるが、ポリオレフィン樹脂は酸化剤と接触した場合、他の有機系高分子と比べて比較的劣化を受けやすい。したがって、特にポリオレフィン樹脂においては本発明の薬品洗浄方法が特に適しており、本発明における薬品洗浄方法で洗浄条件を制御しながら洗浄を行うことで、繰返しの薬品洗浄(特に酸化を伴う)を行っても劣化が進行し難くなるため、分離膜の寿命を長期化することが可能である。
【0037】
【実施例】
以下、実施例をもとに本発明を更に詳しく説明する。
【0038】
<実施例1>
ポリエチレン製の多孔質中空糸膜(三菱レイヨン(株)製、商品名EX410TS、孔径0.2μm、外径410μm、内径270μm)を用いて試験を行った。この中空糸膜を用いて、膜面積が5m2の分離膜モジュールを作製し、活性汚泥を0.4m3/m2・hrの定流量で濾過を行った。このとき、初期の濾過差圧は3kPaであった。
この後、濾過差圧が45kPaまで上昇した時点で、以下の条件で分離膜モジュールの薬品洗浄を行った。
【0039】
薬品洗浄は、薬液として活性塩素濃度1000mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いた。この水溶液は、リン酸水素二ナトリウムと水酸化ナトリウムをpH緩衝剤として用いることにより、pHを11.5に調整した。
この水溶液に、前述の濾過差圧が45kPaまで上昇した分離膜モジュールを、30℃で24hr浸漬した。薬液のpHは、洗浄前後において11.5を維持し、変化はなかった。この薬品洗浄を行うことで、0.4m3/m2・hrにおける膜モジュールの濾過差圧は5kPaまで回復した。
この薬品洗浄を20回繰り返しても分離膜材やモジュール構成部材の劣化は認められなかった。
【0040】
<実施例2>
実施例1と同様の分離膜モジュールを用いて、金属研磨廃液を含む活性汚泥の固液分離を行った。0.4m3/m2・hrの定流量で濾過を行ったところ、初期の濾過差圧は3kPaであった。この後、濾過差圧が48kPaまで上昇した時点で、以下の条件で分離膜モジュールの薬品洗浄を行った。
【0041】
薬品洗浄は、まず2Nの硫酸に、25℃で3hr、分離膜モジュールを浸漬した後、水洗を行った。その後、活性塩素濃度1000mg/Lを含む次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、水酸化ナトリウムと塩化カリウムによりpHを12.5に調整し、この水溶液に30℃で、24hr分離膜モジュールを浸させた。
【0042】
この薬品洗浄を行うことで、0.4m3/m2・hにおける膜モジュールの濾過差圧は3kPaに回復した。このような薬品洗浄を20回繰り返しても膜材、やモジュール構成部材の劣化は認められなかった。
【0043】
<比較例1>
実施例2と同様の条件で定流量濾過を行い、濾過差圧が48kPaとなった時点で、以下の条件で分離膜モジュールの薬品洗浄を行った。
まず、実施例2と同様の条件で硫酸による洗浄と水洗を行った後、pH緩衝剤を用いず、次亜塩素酸ナトリウム水溶液のみを用いた以外は、実施例2と同様な条件にて浸漬洗浄を行った。この次亜塩素酸ナトリウム水溶液のpHは、洗浄開始時点では10.8であったが、分離膜モジュールの浸漬10分後に5.7まで低下した。
【0044】
この薬品洗浄を行うことで、0.4m3/m2・hにおける膜モジュールの濾過差圧は3kPaに回復したものの、このような薬品洗浄を15回繰り返したところ、膜モジュールの中空糸膜を接着固定している部分が脆くなり、亀裂が入ってしまい、膜モジュールとして機能しなくなった。
【0045】
<比較例2>
実施例2と同様の条件で定流量濾過を行い、濾過差圧が48kPaとなった時点で分離膜モジュールの薬品洗浄を行った。
薬品洗浄は、まずpH緩衝剤は含まず、活性塩素濃度として3000mg/Lを含む次亜塩素酸ナトリウム水溶液に分離膜モジュールを、30℃で24hr浸漬し、その後水洗を行い、その後分離膜モジュールを2Nの塩酸に、25℃で5hr浸漬して行った。2N塩酸に膜モジュールを浸漬した5分後の塩酸中には、濃度14.5mg/Lの活性塩素が残留していた。
【0046】
この薬品洗浄を行うことで、0.4m3/m2・hにおける膜モジュールの濾過差圧は3kPaに回復したものの、このような薬品洗浄を10回繰り返したところ、膜モジュールの中空糸膜を接着固定している部分が脆くなり、亀裂が入ってしまい、膜モジュールとして機能しなくなった。
【0047】
【発明の効果】
本発明の分離膜の洗浄方法は、洗浄に用いる活性塩素を含む薬液のpHを、pH緩衝剤を用いて制御することで、活性塩素が必要以上の酸化力を持つことを防止することができ、分離膜や分離膜モジュールの構成部材を劣化させることなく薬品洗浄をすることができる。
また、酸と活性塩素を含む薬液を段階的に用いて洗浄する際、まず酸洗浄を行った後、pH緩衝剤を用いながら活性塩素を含む水溶液で洗浄すると、水溶液が不必要な酸化活性を持たないので、分離膜や分離膜モジュールの構成部材を劣化させることなく、より一層効率よく膜を薬品洗浄することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、分離膜の機能を回復させる分離膜の洗浄方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、分離膜は様々な用途で利用されており、無菌水、飲料水、高純度水の製造、空気の浄化、ガスの濃縮や添加等の目的で利用されてきた。中でも、限外濾過膜や精密濾過膜は近年、浄水場における河川水の直接濾過、工業用水道水の濾過、プール水の濾過、下水処理場における二次処理や三次処理、浄化槽における固液分離、産業廃水中のss(浮遊懸濁物質)の固液分離などの高汚濁性水処理用途に利用され始めてきている。
【0003】
濾過などの運転の継続に従って、膜には目詰まりが生じ、濾過差圧が上昇する。このような濾過差圧の上昇は、いずれ処理液を確保するのには困難な程度にまで上昇することになる。その場合、運転を継続して行うためには、この目詰まり物質を除去することによって上昇した差圧を低下させることが必要になる。
【0004】
分離膜の目詰まりは、大きく2つに分類され、一つは膜面への微粒子など固形分の堆積である。これに対しては、クロスフロー濾過や気液混合流によるスクラビング洗浄により膜面の洗浄が可能である。一方、もう一つは有機物や微少な無機化合物などの膜材への吸着に由来するファウリングであり、これらのファウリングは、スクラビング洗浄のような物理的手段では容易に除去できず、薬液などによる化学的な洗浄が不可欠となる。
【0005】
分離膜の薬液洗浄において、その洗浄剤は様々なものが利用されている。金属塩などに代表される無機化合物のファウリングにおいては、酸の水溶液などに分離膜を浸漬、あるいは通液することで洗浄が行うことができる。また、有機物のファウリングについては、酸やアルカリで除去可能な場合もあるが、多く用いられるのは次亜塩素酸塩等の酸化剤の水溶液を洗浄剤として用い、この洗浄剤中の活性塩素によって、有機物を酸化分解して膜面より除去する。
【0006】
これらの薬液による洗浄は、ファウリング物質の溶解、分解を進行させてファウリング物質を膜面及び膜厚内部より除去し、濾過性能を回復させる。しかしながら、用いる薬品及び膜材質によっては、ファウリング物質の溶解、分解だけでなく、膜材そのものも分解して劣化させてしまい、膜モジュールの寿命を著しく短くしてしまうことが問題として挙げられる。
【0007】
薬品洗浄に用いる薬剤としては、水酸化ナトリウム等の強アルカリ性の水溶液、塩酸や硝酸などの強酸の水溶液や、クエン酸、シュウ酸などの弱酸の水溶液、活性塩素(あるいは有効塩素)を含む次亜塩素酸塩、オゾンなどの水溶液が用いられる。特に、これらの中で酸化を促す薬剤については、ファウリング物質の分解による透水性能回復の効果も大きいが、同時に膜材も酸化劣化させるため、高い頻度や長時間酸化剤と接触させるような薬品洗浄では、分離膜が経時的に劣化するという問題がある。
【0008】
また、排水処理等で用いられた分離膜には、その性能を低下させるファウリング物質として、無機物と有機物が混在して分離膜表面あるいは分離膜細孔内部に付着してことも多い。このような場合、酸性水溶液による薬液と、次亜塩素酸塩水溶液等の活性塩素を含む薬液の2種類を用い、無機物の除去に酸性薬液を用い、有機物の分解・除去に活性塩素を含む薬液を用いると、効果的に洗浄を行うことができる(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0009】
しかしながら、このような2種類の薬液をそれぞれ段階的に分けて洗浄を行う時、前段の薬液が残留したまま、後段の薬液が投入されたり、混合された場合、条件によっては、必要以上の活性を薬液が持つことになる。例えば、次亜塩素酸塩水溶液に代表される活性塩素水溶液においては、その水溶液中のpHが下がり、酸性になるほど活性が増し、酸化力が増大する傾向にある。このため、ファウリング物質の分解、除去だけでなく、分離膜そのものや、分離膜モジュールの構成部材をも劣化させてしまい、寿命を早めてしまう可能性がある。特に同じ分離膜モジュールに対して、繰り返し薬品洗浄を行うことにより、膜材や部材等の劣化が進行していく懸念がある。
【0010】
塩酸水溶液で分離膜の洗浄を行った後、超純水で簡単に洗浄し、その後次亜塩素酸ナトリウム水溶液との接触を行った場合(特許文献1参照)、膜の細孔やモジュール内の水が置換されにくい個所では、塩酸が残留してしまい、次の次亜塩素酸ナトリウム水溶液のpHが低くなりすぎて、必要以上に膜材や部材を酸化劣化させてしまう可能性がある。
【0011】
先に次亜塩素酸塩水溶液で分離膜を洗浄した後、水道水によるリンスをして、その後にクエン酸溶液と分離膜とを接触させた場合(特許文献2参照)、特許文献1と同様に、次亜塩素酸塩が残留する懸念があり、クエン酸溶液中に、残留する次亜塩素酸塩が混ざってしまい、酸性領域で活性塩素が存在する液となってしまう可能性がある。
【0012】
まずNaOHを混在させた強アルカリの次亜塩素酸塩水溶液と分離膜とを接触させた後、水で洗浄し、その後硫酸溶液と接触させた場合(特許文献3参照)、これも特許文献2の場合と同様に、酸洗浄工程で活性塩素が残留してしまう可能性がある。
【0013】
【特許文献1】
特開平9−262444号公報
【特許文献2】
特開平10−118469号公報
【特許文献3】
特開平11−244673号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、薬品洗浄時における分離膜素材や分離膜モジュール構成部材の劣化を最低限に抑えながら、効率よく膜面の目詰まり物質やファウリング物質を分解除去する方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明の要旨は、活性塩素とpH緩衝剤とを含む水溶液と、分離膜とを接触させる工程(A)を有する分離膜の洗浄方法、である。
【0016】
前記工程(A)における前記水溶液のpHが、6〜14の範囲であると、活性塩素が過剰な活性を持たないため好ましい。
また、前記工程(A)の開始時と終了時における前記水溶液のpHの差が、2.0以下であると、分離膜の劣化を押えつつ効果的に洗浄を行うことができる。
前記工程(A)の前に、分離膜と、酸を含む水溶液とを接触させる工程(B)を有すると、より効果的な洗浄を行うことができる。
また、分離膜がポリオレフィン樹脂からなると、本発明の洗浄方法が特に有効である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の洗浄方法は、液体や気体の濾過や濃縮、液体から気体の脱気、液体への気体の給気など様々な用途で利用される分離膜の洗浄に適用できる。その中でも、濾過するに従って膜面の汚染度が高くなる、液体の濾過用途に利用される分離膜について特に有用である。
【0018】
本発明における洗浄方法は、膜面の目詰まり物質並びにファウリング物質を酸化分解して洗浄するために活性塩素を用いるが、用いる活性塩素としては、次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カルシウムのような次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩などが挙げられ、主にこれらの水溶液を洗浄に使用する。これらの塩は、薬液中に単独で溶解していても構わないし、複数の種類が混在していても構わない。
【0019】
活性塩素を水溶液として利用する場合、活性塩素の濃度は、10〜250000mg/Lの範囲が好ましい。この範囲より低い濃度では、膜面の汚れや目詰まり物質の分解の速度が遅く、薬品洗浄に非常に長時間を要し、その間は運転を行うことができない。また、この範囲より高い濃度では、活性塩素を有する薬剤は水への溶解度が限界に達するため溶解させ難いという点と、高濃度の活性塩素は場合によってその薬剤単独による分解反応が激しく進行するといった安全性の面で問題がある。より好ましくは、100〜100000mg/Lの範囲であり、さらに好ましくは300〜10000mg/Lの範囲である。
【0020】
活性塩素を発生させる塩を単独で含む水溶液は、通常は弱酸と強アルカリの塩であるため、薬品洗浄初期にはアルカリ性を示す。しかしながら、洗浄が進み、薬剤としての活性塩素を含む塩そのものが分解していくと、次第に水溶液は中性サイドに移行し、残存する活性塩素の活性が洗浄初期に比べて必要以上に増してしまう傾向がある。活性塩素を含む水溶液のpHが下がると、活性塩素の活性が増し、酸化力が強くなる。酸化力が強くなることで、分離膜に目詰まった物質等の分解も促進されるが、必要以上の活性が伴うと、分離膜材そのものや分離膜モジュールや装置を構成する部材までをも劣化させてしまう。
【0021】
このため、本発明における分離膜の洗浄方法は、活性塩素とpH緩衝剤とを含む水溶液と、分離膜とを接触させる工程(A)を行うことにより、分離膜を損なうことなく、効果的に目詰まり物質を除去することができる。
【0022】
洗浄に使用する水溶液のpHの範囲は6〜14の範囲が好ましい。pHが6より低いと活性塩素が高すぎてしまい、必要以上の酸化力により構成部材が劣化してしまい、pHが14より高いと、今度は強アルカリによる部材の劣化が進行する。より好ましい範囲としては、8〜12のpHの範囲が好ましい。
また、洗浄する初期から終了時まで、pHが大きく変化しないことが好ましく、工程(A)の開始時と終了時における前記水溶液のpHの差が、2.0以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましい。
【0023】
本発明に使用するpH緩衝剤としては、次のようなものが挙げられる。
pHが6〜8で緩衝させた液としては、リン酸二水素カリウムやリン酸二水素ナトリウムと、水酸化ナトリウムによってpHを調整した液、リン酸二水素カリウムやリン酸二水素ナトリウムと、四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)によってpHを調整した液、リン酸二水素カリウムとリン酸水素二ナトリウムによってpHを調整した液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと塩酸によってpHを調整した液が挙げられ、それぞれの液を用いて活性塩素を含む液を調製することができる。
【0024】
pHが8〜11で緩衝させた液としては、ホウ酸と水酸化ナトリウムによってpHを調整した液、四ホウ酸ナトリウムと水酸化ナトリウムによってpHを調整した液、四ホウ酸ナトリウムと炭酸ナトリウムによってpHを調整した液、塩化アンモニウムとアンモニアによってpHを調整した液、N,N−ジエチルグリシンナトリウム塩と塩酸によってpHを調整した液、塩酸と炭酸ナトリウムによってpHが調整された液などが挙げられ、それぞれの液を用いて活性塩素を含む液を調製することができる。
【0025】
pHが10〜12で緩衝させた液としては、リン酸水素二ナトリウムと水酸化ナトリウムによってpHが調整された液などが挙げられ、この液を用いて活性塩素を含む液を調製することができる。
【0026】
pHが12〜14で緩衝させた液としては、水酸化ナトリウムと塩化カリウムによってpHが調整された液などが挙げられ、この液を用いて活性塩素を含む液を調製することができる。
【0027】
また、pH6〜12の範囲の広域緩衝液としては、クエン酸、リン酸二水素カリウム、ホウ酸、ジエチルバルビツール酸とリン酸三ナトリウムによってpHが調整された液、ホウ酸、クエン酸、リン酸三ナトリウムによってpHが調整された液、などが挙げられ、pH8〜13の範囲の広域緩衝液としては、グリシン、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウムによってpHが調整された液などが挙げられ、これらの液を用いて活性塩素を含む液を調製することができる。
【0028】
なお、使用するpH緩衝剤の濃度は、使用する塩の中で、最も量の多い塩の水溶液中の濃度として0.05〜0.5mol/Lの範囲が好ましく、0.07〜0.2mol/Lの範囲がより好ましい。
【0029】
本発明の洗浄方法は、活性塩素とpH緩衝剤とを含む水溶液と、分離膜とを接触させる工程(A)の前に、分離膜と、酸を含む水溶液とを接触させる工程(B)を行った場合に、特に有効である。
【0030】
これは、酸を含む水溶液で分離膜を洗浄し、無機系の目詰まり物質を除去した後、活性塩素を含む水溶液で洗浄するにあたって、分離膜から持ち込まれる酸が多少あったとしても、活性塩素を含む水溶液中にpH緩衝剤が含まれているため、水溶液のpH変化を押えることができるためである。
一方、工程(A)の後に工程(B)を行う場合、分離膜に保持されたpH緩衝剤に対して酸の量が圧倒的に多量となり、pHを緩衝できず、分離膜に保持された活性塩素の酸化力が著しく増大して分離膜の分解が起こる可能性があるため好ましくない。
【0031】
工程(B)において使用する酸は、使用する酸の量が弱酸の場合と比較して少量ですみ、経済性に優れるため、強酸が好ましい。強酸の種類としては、塩酸、硝酸、硫酸、クロロ酢酸等を用いることができ、安価かつ取扱い性に優れる塩酸が最も好ましい。
なお、クエン酸、シュウ酸等の弱酸を使うこともできるが、これら有機性弱酸は、洗浄後に中和を行ったとしても、有機成分を含むため、そのまま排水として廃棄すると問題になる場合もある。一方、塩酸、硝酸、硫酸の場合、中和してしまえば無害な無機物となるため、廃棄も容易である。
【0032】
また、工程(B)の後、工程(A)の活性塩素による洗浄を行う前に、アルカリ性の水溶液を用いて、分離膜をリンスしてもよい。リンスを行って酸を中和することにより、後の工程(A)における経時的なpH変化を最小限とすることができる。
【0033】
本発明に適用する分離膜は、どのような形態であっても構わない。分離膜の形態としては平膜、管状膜、中空糸膜等が挙げられる。分離膜の使用にあたっては、その一次側と二次側とを仕切って固定した分離膜モジュールが通常使用されるが、分離膜モジュールの形態や構造においても、平板状、円筒形状、プリーツ状、スパイラル状等、構造に特に依存せずに本発明の洗浄方法が適用できる。
【0034】
また、濾過運転時の使用形態も、缶体などに分離膜モジュールを装填して、加圧しながら使うタイプのものや、槽内に分離膜モジュールを浸漬して二次側を吸引しながら濾液を取り出す、浸漬吸引方式のもの等、特に限定されることなく、本発明の薬品洗浄方法を用いることができる。
【0035】
分離膜の素材については、無機系のセラミックや金属などでも本発明の洗浄方法は適用できるが、劣化を比較的受け易い有機系高分子からなる分離膜の薬品洗浄に、本発明の方法は適している。
【0036】
有機系高分子の中でも、機械的強度も高く、それでいて柔軟性も保持され、また濾過特性にも優れるポリオレフィン樹脂がしばしば濾過膜として利用されるが、ポリオレフィン樹脂は酸化剤と接触した場合、他の有機系高分子と比べて比較的劣化を受けやすい。したがって、特にポリオレフィン樹脂においては本発明の薬品洗浄方法が特に適しており、本発明における薬品洗浄方法で洗浄条件を制御しながら洗浄を行うことで、繰返しの薬品洗浄(特に酸化を伴う)を行っても劣化が進行し難くなるため、分離膜の寿命を長期化することが可能である。
【0037】
【実施例】
以下、実施例をもとに本発明を更に詳しく説明する。
【0038】
<実施例1>
ポリエチレン製の多孔質中空糸膜(三菱レイヨン(株)製、商品名EX410TS、孔径0.2μm、外径410μm、内径270μm)を用いて試験を行った。この中空糸膜を用いて、膜面積が5m2の分離膜モジュールを作製し、活性汚泥を0.4m3/m2・hrの定流量で濾過を行った。このとき、初期の濾過差圧は3kPaであった。
この後、濾過差圧が45kPaまで上昇した時点で、以下の条件で分離膜モジュールの薬品洗浄を行った。
【0039】
薬品洗浄は、薬液として活性塩素濃度1000mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いた。この水溶液は、リン酸水素二ナトリウムと水酸化ナトリウムをpH緩衝剤として用いることにより、pHを11.5に調整した。
この水溶液に、前述の濾過差圧が45kPaまで上昇した分離膜モジュールを、30℃で24hr浸漬した。薬液のpHは、洗浄前後において11.5を維持し、変化はなかった。この薬品洗浄を行うことで、0.4m3/m2・hrにおける膜モジュールの濾過差圧は5kPaまで回復した。
この薬品洗浄を20回繰り返しても分離膜材やモジュール構成部材の劣化は認められなかった。
【0040】
<実施例2>
実施例1と同様の分離膜モジュールを用いて、金属研磨廃液を含む活性汚泥の固液分離を行った。0.4m3/m2・hrの定流量で濾過を行ったところ、初期の濾過差圧は3kPaであった。この後、濾過差圧が48kPaまで上昇した時点で、以下の条件で分離膜モジュールの薬品洗浄を行った。
【0041】
薬品洗浄は、まず2Nの硫酸に、25℃で3hr、分離膜モジュールを浸漬した後、水洗を行った。その後、活性塩素濃度1000mg/Lを含む次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、水酸化ナトリウムと塩化カリウムによりpHを12.5に調整し、この水溶液に30℃で、24hr分離膜モジュールを浸させた。
【0042】
この薬品洗浄を行うことで、0.4m3/m2・hにおける膜モジュールの濾過差圧は3kPaに回復した。このような薬品洗浄を20回繰り返しても膜材、やモジュール構成部材の劣化は認められなかった。
【0043】
<比較例1>
実施例2と同様の条件で定流量濾過を行い、濾過差圧が48kPaとなった時点で、以下の条件で分離膜モジュールの薬品洗浄を行った。
まず、実施例2と同様の条件で硫酸による洗浄と水洗を行った後、pH緩衝剤を用いず、次亜塩素酸ナトリウム水溶液のみを用いた以外は、実施例2と同様な条件にて浸漬洗浄を行った。この次亜塩素酸ナトリウム水溶液のpHは、洗浄開始時点では10.8であったが、分離膜モジュールの浸漬10分後に5.7まで低下した。
【0044】
この薬品洗浄を行うことで、0.4m3/m2・hにおける膜モジュールの濾過差圧は3kPaに回復したものの、このような薬品洗浄を15回繰り返したところ、膜モジュールの中空糸膜を接着固定している部分が脆くなり、亀裂が入ってしまい、膜モジュールとして機能しなくなった。
【0045】
<比較例2>
実施例2と同様の条件で定流量濾過を行い、濾過差圧が48kPaとなった時点で分離膜モジュールの薬品洗浄を行った。
薬品洗浄は、まずpH緩衝剤は含まず、活性塩素濃度として3000mg/Lを含む次亜塩素酸ナトリウム水溶液に分離膜モジュールを、30℃で24hr浸漬し、その後水洗を行い、その後分離膜モジュールを2Nの塩酸に、25℃で5hr浸漬して行った。2N塩酸に膜モジュールを浸漬した5分後の塩酸中には、濃度14.5mg/Lの活性塩素が残留していた。
【0046】
この薬品洗浄を行うことで、0.4m3/m2・hにおける膜モジュールの濾過差圧は3kPaに回復したものの、このような薬品洗浄を10回繰り返したところ、膜モジュールの中空糸膜を接着固定している部分が脆くなり、亀裂が入ってしまい、膜モジュールとして機能しなくなった。
【0047】
【発明の効果】
本発明の分離膜の洗浄方法は、洗浄に用いる活性塩素を含む薬液のpHを、pH緩衝剤を用いて制御することで、活性塩素が必要以上の酸化力を持つことを防止することができ、分離膜や分離膜モジュールの構成部材を劣化させることなく薬品洗浄をすることができる。
また、酸と活性塩素を含む薬液を段階的に用いて洗浄する際、まず酸洗浄を行った後、pH緩衝剤を用いながら活性塩素を含む水溶液で洗浄すると、水溶液が不必要な酸化活性を持たないので、分離膜や分離膜モジュールの構成部材を劣化させることなく、より一層効率よく膜を薬品洗浄することができる。
Claims (5)
- 活性塩素とpH緩衝剤とを含む水溶液と、分離膜とを接触させる工程(A)を有する分離膜の洗浄方法。
- 前記工程(A)における前記水溶液のpHが、6〜14の範囲である請求項1に記載の分離膜の洗浄方法。
- 前記工程(A)の開始時と終了時における前記水溶液のpHの差が、2.0以下である請求項1又は2に記載の分離膜の洗浄方法。
- 前記工程(A)の前に、分離膜と、酸を含む水溶液とを接触させる工程(B)を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の分離膜の洗浄方法。
- 分離膜がポリオレフィン樹脂からなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の分離膜の洗浄方法。
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