JP2005144315A - 薬液洗浄方法 - Google Patents

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吉正 松本
Kazuhisa Kumami
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Abstract

【課題】 廃棄しやすい化学薬剤を使用した膜の洗浄方法を提案すること。
【解決手段】 無機酸と有機酸を混合した薬液にて、膜モジュールを洗浄する、膜モジュールの薬液洗浄方法。無機酸と有機酸と界面活性剤を混合した薬液にて、膜モジュールを洗浄する、薬液洗浄方法。混合した薬液のBODが、100mg/L以下であることが好ましく、また、無機酸が硫酸または硝酸であり、有機酸がシュウ酸またはクエン酸であることが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、膜の洗浄方法に関する。さらに詳しくは、経済的で効果的な膜の洗浄方法に関する。
液体中の成分を分離したり、SSを除去する膜は、省エネルギーであることから色々な用途に使用されてきた。例えば、工場排水処理、河川水や地下水除濁、海水淡水化、バイオリアクターなどは、一例である。使用される膜も、その用途に応じて、さまざまなものが使用されてきた。例えば、河川水では、精密濾過膜、限外濾過膜や逆浸透膜によって濾過され飲用水などに利用される。また、排水においては、活性汚泥水を精密濾過膜やダイナミック濾過によって活性汚泥固形物と濾過水に分離されている。
しかし、このような濾過は、濾過面にSSや吸着物が付着し濾過能力を低下させ、必要な濾過水量が得られなくなることがある。このため、濾過面を定期的または非定期的に洗浄することで、濾過面に付着したSS分などを除去して濾過能力を保持している。例えば、特開平8-141375には、定期的に濾過側から濾過水を逆透過させることで濾過性能を維持している。また、特開2001-38177には、濾過体下よりエアーを供給することで濾過面を洗浄しながら濾過を行うことが提案されている。さらに、特開平2002-126470には、このような方法でも濾過面が洗浄できず、濾過体を化学洗浄する方法も提案されている。
特開平8−141375号公報 特開2001−038177号公報 特開2002−126470号公報
このような化学洗浄において、洗浄に使用した薬剤は、化学薬剤排水として処理する必要があった。この化学薬剤排水は通常、中和や活性汚泥処理をして無害化処理されている。このため、処理するのに費用がかかり不経済であった。また、多量の膜を洗浄した場合、多量の化学薬剤排水が出るため、処理をするのに一旦貯蔵する設備の確保がいるため費用がかかっていた。
本発明は、廃棄しやすい化学薬剤を使用した膜の洗浄方法を提案するものである。
本発明者は、特定の組成の化学薬剤を用いることで、膜を有効に洗浄でき、かつ、その廃棄も容易であることを見いだし、本発明を完成したものである。
請求項1の発明は、無機酸と有機酸を混合した薬液にて、膜モジュールを洗浄することを特徴とする薬液洗浄方法である。また請求項2の発明は、無機酸と有機酸と界面活性剤を混合した薬液にて、膜モジュールを洗浄することを特徴とする薬液洗浄方法であり、請求項3の発明は、混合した薬液のBODが、100mg/L以下である薬液を使用した薬液洗浄方法である。また、請求項4の発明は、無機酸が、硫酸または硝酸で、有機酸がシュウ酸またはクエン酸である薬液を使用して洗浄する薬液洗浄方法であり、請求項5の発明は、洗浄する膜モジュールが、精密濾過膜もしくは限外濾過膜である薬液洗浄方法である。
本発明に使用する薬液は、無機酸と有機酸の混合水溶液である。使用する無機酸は、どのようなものでもよい。例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸などを挙げることができる。また有機酸もどのようなものでもよい。例えば、クエン酸、シュウ酸、安息香酸、ソルビン酸などを挙げることができる。
これの濃度は、特に制限されるものではないが、通常、無機酸と有機酸とも、それぞれ5%以下であれば、洗浄する膜モジュールを劣化させることがないので使いやすい。好ましくは、0.1%〜2%であり、さらに好ましくは、0.1%〜0.5%である。無機酸と有機酸の混合比率はどのようなものでもよく、洗浄効果があり、かつ薬液のBODが低いように設定することが好ましい。
また、発明においては、無機酸と有機酸の混合薬液に、界面活性剤を添加することでさらに洗浄効果を上げることができる。使用する界面活性剤は特に制限されるものではない。例えば、ポリエチレンアルコールなどの非イオン界面活性剤や、アルキル硫酸ナトリウムなどのイオン系界面活性剤を用いることができる。またこれらに洗浄効果を向上するための薬剤を添加した市販の界面活性剤なども使用できる。
界面活性剤の添加量は、通常5%以下がよい。好ましくは、0.01%〜2%であり、さらに好ましくは0.01%〜0.5%である。濃度が低い程、廃棄時のBOD負荷が小さく環境にやさしいので好ましい。また、これらの薬剤を回収・再利用して、複数回膜モジュール洗浄に使用してもよい。
また、本発明では、BOD値が100mg/L以下の薬液を使用することが好ましい。BOD値は通常の測定方法で計測される。BOD値が、100mg/L以下であれば、洗浄後の薬液の廃棄は容易になる。より好ましくは、50mg/L以下であり、さらに好ましくは20mg/L以下である。
本発明においては、無機酸として硝酸又は硫酸を、また有機酸としてクエン酸またはシュウ酸を使用することが好ましい。特に、有機酸のシュウ酸は、BODが小さいため特に好ましい。シュウ酸と無機酸の組合せは、洗浄効果があり、かつ、そのBOD値は非常に低いものにできる。これに極少ない界面活性剤を添加することで、さらに洗浄効果をあげることが出来る。
本発明の洗浄に関して、膜洗浄時の水温は特に制限されない。1℃〜99℃でもよいが、温度が高いほうが洗浄効果は大きい。好ましくは、35℃〜95℃であり、さらに好ましくは60℃〜95℃である。
本発明に使用する膜モジュールの膜の材質はどのようなものでもよい。例えば、ポリサルホン系樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、フッ素系樹脂、PVA、セルロース誘導体樹脂、などのプラスチック類でも良いし、セラミックでも良い。また金属類でも良いし、複合樹脂でもよい。また、膜の孔径はどのようなものでもよい。好ましくは、精密濾過膜もしくは限外濾過膜である。
また、使用する膜モジュールの形式は、どのようなものでもよい。例えば、中空糸膜モジュール、スパイラル型膜モジュール、平膜型膜モジュール、チューブ型膜モジュールなどが上げられる。特に好ましくは中空糸膜モジュールである。
本発明は、どのようなに排水に使用された膜モジュールでも適応可能である。特に、SSを含む液体を濾過する用途には最適である。例えば、河川水や、地下水や湖沼水の濾過、または活性汚泥や凝集処理水の濾過に使用された場合は、現地での膜洗浄が期待されている。そのため、薬液を廃棄しやすい本発明の方法が適している。
また、薬液洗浄時の洗浄方法ではどのような方法にても適応できる。例えば浸漬洗浄でも良いし、フラッシュ洗浄でもよい。特に、本発明では薬液洗浄時に逆洗浄を併用する方法には最適である。
本発明の方法は以下のように実施することができる。まず、最初に所定有効濃度の無機酸と有機酸をそれぞれ調合する。また所定濃度の界面活性剤を調合しておいてもよい。これらの無機酸と有機酸を所定割合で調合して、薬液洗浄用薬剤にする。また、先に調合した界面活性剤を添加してもよい。この薬液を用いて洗浄用膜モジュールを洗浄する。特に、逆洗浄やフラッシュ洗浄を併用する洗浄を行う場合に効果がある。また、薬液タンクに設置したヒーターや熱交換器で薬剤の水温を高くして洗浄することも効果がある。
本発明の薬液洗浄方法では、有効に膜を洗浄でき、かつBODが小さい洗浄薬液であることから排水の環境負荷が小さいので経済的で効果的である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。図1は、本発明の洗浄方法のフローの一例を示すものである。
[実施例1] 河川水濾過に3ヶ月使用された酢酸セルロース素材でできた中空糸膜50m2を搭載した中空糸膜モジュールFW50RVC-FUC1582(ダイセン・メンブレン・システムズ社製)を、薬液洗浄用モジュールとし、無機酸として硫酸0.5%、有機酸としてシュウ酸0.2%および、界面活性剤(ウルトラジル53;エコラボ社製)0.02%を水道水に混合した20℃の薬液を調合した。まず、薬液洗浄用モジュールの透過側より薬液を流量10m3/Hで20秒逆透過させ薬液をモジュール内に満たしたまま、膜モジュールを20℃で4時間浸漬・放置した。この後、再度薬液を同条件で逆透過させて洗浄を修了した。洗浄後の薬液のBODは、85mg/Lであった。洗浄後の膜モジュールの透過流束は、製造直後の値と比較すると、99%であり、使用前の性能に回復した。
[実施例2] 界面活性剤を加えずに薬液を調合した以外は、実施例1と全く同様にして薬液洗浄を実施した。その結果、洗浄後の薬液のBODは、15mg/Lであった。洗浄後の膜モジュールの透過流束は、製造直後の値と比較すると、91%であり、使用前の性能に回復した。
[比較例1] 無機酸を用いずに、有機酸としてクエン酸1%を使用した以外は、実施例2と全く同様にして薬液洗浄を実施した。その結果、洗浄後の膜モジュールの透過流束は、製造直後の値と比較すると、92%であり、使用前の性能に回復したが、洗浄後の薬液のBODは、248mg/Lであった。
[比較例2] 無機酸と界面活性剤を加えない以外は、実施例1と全く同様にして薬液洗浄を実施した。その結果、洗浄後の薬液のBODは、10mg/Lであった。洗浄後の膜モジュールの透過流束は、製造直後の値と比較すると、81%であり、充分な性能回復には至らなかった。
本発明の薬液洗浄方法では、BOD量が少なく、環境負荷のやさしい薬液で、かつ、良好な薬液洗浄ができることが確認された。
本発明の洗浄方法のフロー図。

Claims (5)

  1. 無機酸と有機酸を混合した薬液にて、膜モジュールを洗浄することを特徴とする膜モジュールの薬液洗浄方法。
  2. 無機酸と有機酸と界面活性剤を混合した薬液にて、膜モジュールを洗浄することを特徴とする薬液洗浄方法。
  3. 混合した薬液のBODが、100mg/L以下であることを特徴とする請求項1または2記載の薬液洗浄方法。
  4. 無機酸が、硫酸または硝酸であり、有機酸がシュウ酸またはクエン酸であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の薬液洗浄方法。
  5. 洗浄する膜モジュールが、精密濾過膜もしくは限外濾過膜モジュールであることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の薬液洗浄方法。


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