JP2004152589A - 燃料電池セパレーターの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高割合で配合された黒鉛の粒径を維持しながら、機械的強度を満足できるシート形状の熱可塑性樹脂組成物を製造し、これを加熱加圧成形することにより、導電性が優れた燃料電池セパレーターを得る手段を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)と導電性を有する炭素系基材(B)とを含有する燃料電池セパレーターの製造方法であって、前記熱可塑性樹脂(A)と導電性を有する炭素系基材(B)とを含有する原材料混合物を、超臨界状態にあり、かつ、常温ではガス状である物質(C)とともに混練してシート形状の熱可塑性樹脂組成物を製造する工程を有することを特徴とする、燃料電池セパレーターの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)と導電性を有する炭素系基材(B)とを含有する燃料電池セパレーターの製造方法であって、前記熱可塑性樹脂(A)と導電性を有する炭素系基材(B)とを含有する原材料混合物を、超臨界状態にあり、かつ、常温ではガス状である物質(C)とともに混練してシート形状の熱可塑性樹脂組成物を製造する工程を有することを特徴とする、燃料電池セパレーターの製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池セパレーターの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池セパレーターの生産方式は、成形体を黒鉛化処理して造るもの、或いは黒鉛板に機械加工して流路形成する方式によるもの、金属加工によるもの、導電性樹脂成形材料の成形によるもの等の方式があり、導電性と信頼性等の品質向上と低コスト化が検討されてきたが、個々の方式について、それぞれに欠点が克服されておらず、未だに技術開発の途上にある。
【0003】
例えば、黒鉛セパレーターはピッチとコークス粉末などの炭素質粉末の混合物を予めセパレーターの形状に成形した後、アジソン炉等の黒鉛化炉を用いて3000℃以上で焼成した上で、反りや変形を修正しながらピッチの再浸漬と焼成を繰り返す方式により生産する。即ち、黒鉛化の為の焼成によって、水素や酸素などがガス化して脱離するために、細孔や収縮変形が発生するが、この細孔は,燃料電池に使われる水素ガス透過を遮断する為にも電気抵抗を下げる為にも、炭素によって充填されることが必要な為に、ピッチの浸漬と焼成を繰り返し、高密度化を行ったうえで最終的に形状の修正と仕上げを行う(例えば、特許文献1参照。)。
叉、機械加工法では、黒鉛板に対し切削や研磨などの機械加工によって溝加工をする。焼成法では工程は長く非常に歩留まりが低い。機械加工法は1枚ずつ、精密加工をする事が必要になるため、大量生産には不向きで、どちらの方法でもコスト対応力がなく、現実的な工業ベースでの生産には不可能な手法である。
【0004】
一方、金属セパレーターはステンレスやアルミニウムなどの金属板に形状加工をした上で、耐蝕メッキ処理をするが、表面ピンホール問題が解決していない。酸化しても導電性を損なわない貴金属による処理としては金メッキ(例えば、非特許文献1参照。)や、カーボン塗料コート(例えば、特許文献2参照。)等が挙げられるが、通常厚さのメッキではピンホール発生防止が困難である。燃料電池運転時におけるセパレーター接触面の環境は、80℃〜120℃の飽和水蒸気圧下で、約pH4になる為、ピンホールからの腐食防止が困難で、長期信頼性に劣る。このメッキピンホールは厚メッキによって低減はできるが、貴金属の厚メッキは高コストになるだけでなく、厚メッキの場合に末端部やエッジに偏析するメッキ厚みの増加が、形状の精度悪化を併発し打開策が無い。
【0005】
導電性樹脂成形材料によるモールドセパレーターは、これらの技術的難点を打開する可能性があるが、熱硬化性樹脂を用いた場合は、機械的強度に問題があり、熱可塑性樹脂を用いた場合は特性だけでなく、配合・製造の現実性に困難があった。
【0006】
まず、熱硬化性樹脂成形材料における機械的強度の問題は、導電性を高めるために黒鉛を高配合する事と、熱硬化性樹脂が本来持つ脆性に起因するものである。熱硬化性樹脂による成形セパレーターは黒鉛の配合率を高める事で導電性を確保すると共に、可塑剤の応用や熱硬化性樹脂の分子量の調整などにより成形性の改善が行われているが、バインダー成分としてのフェノール樹脂やエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂は本来機械強度的には脆い。一般的な絶縁材料や構造材料としての熱硬化性成形材料ではこの脆性を克服する為に、無機や有機の繊維状充填材を配合するが、導電材においてはこの手法を容易に用いる事ができない。
【0007】
例えば、繊維状充填材としてガラス繊維を用いた場合は、その絶縁性のために配合が困難である。一方、炭素繊維を用いた場合では、充分な機械的強度改善を得る為には、大量の配合が必要であって、この場合は原料費の増大だけでなく、成形性の顕著な悪化を招くことになる。このような理由から、導電性を確保する為の黒鉛の高配合と、繊維状充填材の配合を最適化して材料化したとしても、特に車載用など燃料電池が小型化されるのに対応して、セパレーターの肉厚が薄くなると、強度が不足し、スタックに組み込まれた後でもセパレーターにクラックを生じるなど問題点が明らかになりつつある。
【0008】
一方で、熱可塑性樹脂成形材料は靭性が高く、車載セパレーターの様な薄物形状に加工されても、実用範囲の機械的強度を示す事ができる。しかし熱可塑性樹脂は、粘度が高く通常の手段では黒鉛の高配合が出来ない事が難点である。また、黒鉛粒子は劈開性が強い為に、通常の混練等で強い剪断力が付加された場合には、粒子が容易に破壊され劈開によって細粒化していく。優れた導電性を発揮する為には、黒鉛粒径が大きく保たれることが重要であって、細粒化を起こすような手段は好ましくない。この対応に可塑剤を用いて粘度を低下させる試みは、可塑剤成分のブリードが起こって、燃料電池の発電性に影響を与えることが分かっているなど、実施に難点があってこれまでの所、有意な効果的手法が報告されているとは言い難かった。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−169230号公報
【特許文献2】
特開平11−345618号公報
【非特許文献1】
平成12年度固体高分子形燃料電池研究開発成果報告会要旨集,「II.高効率燃料電池システム実用化技術開発 II−2固体高分子形燃料電池システム実用化技術開発」,新エネルギー産業技術総合開発機構 水素・アルコール・バイオマス技術開発室,平成13年3月8日,P69
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、材料化の手段と高導電性の両立が困難であった熱可塑性樹脂成形材料による燃料電池セパレーターの製造方法に対しなされたものであって、その目的とするところは高割合で配合された黒鉛の粒径を維持しながら、機械的強度を満足できるシート形状の熱可塑性樹脂組成物を製造し、これを加熱加圧成形することにより、導電性が優れた燃料電池セパレーターを得る手段を提供する事にある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記の本発明(1)〜(3)により達成される。
(1)熱可塑性樹脂(A)と導電性を有する炭素系基材(B)とを含有する燃料電池セパレーターの製造方法であって、前記熱可塑性樹脂(A)と導電性を有する炭素系基材(B)とを含有する原材料混合物を、超臨界状態にあり、かつ、常温ではガス状である物質(C)とともに混練してシート形状の熱可塑性樹脂組成物を製造する工程を有することを特徴とする、燃料電池セパレーターの製造方法。
(2)さらに、前記シート形状の熱可塑性樹脂組成物に、溝加工賦型を行う工程を有する上記(1)に記載の燃料電池セパレーターの製造方法。
(3)前記熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)5〜37重量%と、導電性を有する炭素系基材(B)60〜92重量%とを含有する上記(1)または(2)に記載の燃料電池セパレーターの製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の燃料電池セパレーターの製造方法について説明する。
本発明の燃料電池セパレーターの製造方法(以下、単に「製造方法」ということがある)は、熱可塑性樹脂(A)と、導電性を有する炭素系基材(B)(以下、単に「炭素系基材(B)」ということがある)とを含有する燃料電池セパレーターの製造方法であって、熱可塑性樹脂(A)と、炭素系基材(B)とを含有する原材料混合物を、超臨界状態にあり、かつ、常温ではガス状である物質(C)(以下、単に「物質(C)」ということがある)とともに混練してシート形状の熱可塑性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ということがある)とする工程を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の製造方法で使用される熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えば、一般的なポリオレフィン、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変成ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリフェレンサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、超高分子ポリエチレン、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
また、必要に応じて上記熱可塑性樹脂とエラストマーとの混合物を用いることもでき、本発明の製造方法におけるシート形状化後の溝加工賦形や、燃料電池組立時の機械的強度を保証できるものであればよい。
【0014】
固体高分子型燃料電池はその運転温度が約80〜120℃であり、あまり低粘度である熱可塑性樹脂を選択すると、長期に亘る使用で、形状にひずみが発生し、クリープによるシーリング不良を生じてガス漏れを起こす可能性がある。したがって、熱可塑性樹脂選択の条件としては、強靭性だけでなく対衝撃、耐クリープ性などが要求される。また、添加される物質(C)との親和性が高いものであることが好ましい。特に、本発明の製造方法においては、物質(C)として二酸化炭素を用いた場合に、二酸化炭素に対する溶解度が大きいものであることが好ましい。
【0015】
このような熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、変成ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルフォンなどが挙げられる。これらを単独もしくは2種類以上併用することができる。
【0016】
本発明の製造方法で用いられる炭素系基材(B)としては特に限定されないが、例えば、黒鉛、炭素繊維、カーボンブラックなどの炭素材が挙げられる。炭素材のうち導電性の優れているものはグラファイト構造が成長したものであり、天然や人造の黒鉛がこれに該当する。天然に算出する鉱物としての黒鉛には天然黒鉛と称される鱗片状の黒鉛と土壌黒鉛があるが、このうち天然黒鉛が導電性に優れている。人造黒鉛については、石炭系コークスを熱処理したものと石油系コークスを熱処理したものがあり、形状的には鱗状、針状、塊状、球状、凝集体などがあるが、いずれのものも、X線解析による格子定数精密法で求めるc軸(002)層面間距離(d002)が0.335〜0.460nmの範囲にあって、真比重が2.04〜2.34の範囲にあればよく、かつ、その構造が単一粒子形状であっても、凝集した構造であっても良い。
【0017】
その他の炭素系基材(B)である炭素繊維やカーボンブラックについては、非晶質カーボンを含んでいてもよい。炭素繊維やカーボンブラックは、樹脂相内に分散して導電助剤として働くと共に、炭素繊維の場合はその形状による効果として、曲げや強靭性などの機械的特性を改善する効果があり、必要に応じて配合される。
【0018】
次に、熱可塑性樹脂(A)と炭素系基材(B)との配合量について説明する。本発明の製造方法においては特に限定されないが、樹脂組成物全体に対して、熱可塑性樹脂(A)5〜37重量%、炭素系基材(B)60〜92重量%を配合することが好ましい。かかる配合量とすることによって、成形性と成形品の導電性や機械的強度を確保することができる。熱可塑性樹脂(A)の配合量が前記下限値を下回るか、炭素系基材(B)の配合量が前記上限値を超えると、物質(C)を注入したとしても、押し出し時に十分な流動性が確保できず、正確な厚みのシートを押し出すのが困難となることがある。これは樹脂が黒鉛粒子間を十分に充填するのに必要な体積を持っていないからと考えられ、この結果成形体の強度の確保も難しくなる。一方、熱可塑性樹脂(A)の配合量が前記上限値を越えるか、炭素系基材(B)の配合量が前記下限値を下回ると、導電性が低下し、実用に即したセパレーターを得る事が難しくなる場合がある。これは樹脂体積が増える事で黒鉛粒子同士の凝集が起こるようになり、結果として不導体相部分を生じて導電性を低下させるものと考えられる。このような樹脂相が多い系においては、上記の炭素繊維やカーボンブラックの併用もその効果が小さくなる。
【0019】
本発明の製造方法では、上記のような熱可塑性樹脂(A)と炭素系基材(B)以外に、成形材料として一般に用いられる可塑剤や離型剤を用いることができる。可塑剤としては成形後にブリードすることがなく、成形時に揮散できるように、メタノールやアセトンなどの低沸点の有機溶剤を用いることが好ましい。
また、離型剤としては、一般に用いられる高級脂肪酸あるいはそのエステル化物や酸化物等を用いることができるが、金属塩は発電効果の劣化を招くことがある。
【0020】
本発明の製造方法は、以上に説明したような原材料混合物を、物質(C)とともに混練してシート状の樹脂組成物を製造する工程を有することを特徴とする。
【0021】
本発明の製造方法において用いられる物質(C)としては特に限定されないが、例えば、窒素、二酸化炭素、メタンなどが挙げられる。これらの中でも、特に二酸化炭素が好ましい。これにより、比較的低い温度、圧力において超臨界状態とすることができるので、取り扱いが容易であり、このためのエネルギーコストも低く抑えることが出来る。
【0022】
本発明の製造方法において、上記物質(C)を超臨界状態とする方法としては特に限定されないが、例えば、物質(C)の種類により固有である超臨界領域まで昇温、昇圧し、あらかじめ超臨界状態としたものを用いる方法、または、臨界圧力以上に昇圧したものを原材料混合物と混練する系に供給し、加温された原材料混合物からの伝熱により昇温させて超臨界状態とする方法などが挙げられる。
【0023】
一般的に、物質を高温高圧にすると、亜臨界を経て超臨界に至る。常温でガス状の物質、例えば二酸化炭素の場合は、臨界圧力は7.38MPa、臨界温度は31℃であって、昇温、昇圧に従って、亜臨界から超臨界に至る。このような状態の二酸化炭素は有機溶媒と同様な挙動を示し、その工業的利用としては、例えば文献(プラスチックスエージ,vol48,Mar,p102)などに見られるように、熱可塑性樹脂の薄肉成形において、低粘度化、可塑化を起こし、その効果を用いて、精密な表面形状を形成する手法が知られている。導電性基材である黒鉛を、劈開や細粒化を抑制して粒径を維持したまま熱可塑性樹脂とコンパウンド化し、かつ押し出しシート成形するにあたっても、同様に有機溶媒的な効果は有効に応用することが可能である。
【0024】
本発明の製造方法において、上記原材料混合物を上記物質(C)とともに混練して樹脂組成物とする方法としては特に限定されないが、例えば、上記原材料混合物を混練装置で混練する際に、超臨界状態とした物質(C)を注入して原材料混合物とともに混練する方法、または、臨界圧力以上に昇圧した物質(C)を混練装置に注入し、混練装置内で昇温させて超臨界状態になった物質(C)と原材料混合物とを混練する方法などが挙げられる。
【0025】
本発明の製造方法において、物質(C)は、油圧、機械式、空圧式など、高圧を発生しうるブースター型のポンプを用いて増圧し、配管を通して混練装置に接続し、あたかも液体原料を添加するように、注入用ノズル孔を用いて混練装置内の原材料混合物に添加することができる。混練装置への注入位置は、原材料混合物の溶融が開始する位置より吐出孔側にする。原材料混合物は混練装置内部で加温されているため、高圧状態で添加された物質(C)は、原材料混合物からの伝熱を受けて、高温になり、高温高圧下での本来の溶媒効果を発揮しうる状態に至る。高温高圧状態で注入する常温でガス状である物質の比率は、樹脂の種類、組成物の粘度により適正な値を選択することができる。
【0026】
上記物質(C)との混練により、上記原材料混合物からなる樹脂組成物の可塑化が進むと、樹脂組成物の低粘度化が起こるため、シート形状に押し出すことが可能になる。一方、押し出されたシート形状の樹脂組成物内の物質(C)は、大気下に晒されたと同時に、揮発揮散してしまうので、樹脂組成物中や成形品内に残存して特性等に影響を与えることがない。このように、混練装置内に物質(C)を注入して混練すると、熱可塑性樹脂の低粘度化が起こるために、物質(C)を注入しない場合に較べて黒鉛の配合量を高くすることができる。また、混練装置スクリューによる剪断力が軽減される為に、黒鉛粒子の劈開が防止されるので、シート形状に押し出された後でも粒径を保持することが可能であり、この結果、良好な導電性を得ることができる。
【0027】
混練した樹脂組成物をシート形状にする方法としては特に限定されないが、例えば、樹脂組成物をダイから押し出す方法、ロールにて圧延する方法などが挙げられる。これらのいずれか、またはいくつかを組み合わせて適用することもできる。
このようにして得られたシート形状の樹脂組成物は、炭素系基材が熱可塑性樹脂中に高精度に分散されているとともに、シート形状に加工される段階で適度に高密度化されたものである。
【0028】
上記シート形状の樹脂組成物に溝加工賦型を行う方法としては特に限定されないが、熱圧プレス装置により加熱加圧成形して形状加工を行うことが好ましい。これにより、成形性に優れ、充分な密度を有し、熱可塑性樹脂本来の靭性と炭素系基材の高充填による高導電性を兼ね備えた所定の形状の燃料電池セパレーターを容易に製造することができる。
溝賦形加工は、予めセパレーターの寸法、厚さに調整されて押出成形されたシート形状の樹脂組成物を、熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度で熱圧プレスをする。成形圧力は特に限定されないが、20〜150MPaの圧力で成形することができる。セパレーターの溝の深さは通常1mm弱であって、必要変形量が小さいために、既に物質(C)が揮散して高粘度化したシート形状の樹脂組成物でも、容易に賦形され、目的とするセパレーターを得ることができる。
【0029】
本発明の製造方法において、熱可塑性樹脂は、一般に軟化点が高いほど、或いは分子量が大きい程、成形品の耐化学薬品性、耐衝撃性などが良くなるが、反比例的に、成形時の流動性が悪くなる。超臨界状態の物質(C)の添加は、このような高軟化点、低流動性樹脂の加工時粘度を下げる効果があり、通常の手段では配合が困難であった、黒鉛高配合、及びそのシート押し出しを可能にする。一旦押し出されてシート状の中間体となった組成物は、溝加工のための賦形熱プレスで容易に形状加工ができる。
【0030】
以下に、本発明の好ましい実施形態である、図1の装置概略図を用いて、本発明の製造方法を詳細に説明する。図1は、物質(C)として二酸化炭素を用いた例である。
図1において、ガスボンベ1に充填された二酸化炭素を圧力計3でモニターしつつ減圧バルブ2を開閉して高圧コンプレッサー4に供給する。例えば、高圧コンプレッサーとして(株)フジキン製の高圧コンプレッサー(商品名 プロバイダー)型式150WGを用いて増圧すると、最大6.47MPaの吐出圧に至るので、圧力計6を見ながら流量調整バルブ5を調整して、高圧ガス注入孔7に至る二酸化炭素の流量を調整する。この際、二酸化炭素の流量はロードセル8によってもモニターすることができる。熱可塑性樹脂と黒鉛との原材料混合物13は混練装置内で加熱により軟化してくるため、この状態の原料混練物に、この高圧ガス14を注入する。
【0031】
二酸化炭素量の注入に際しては、混練装置における吐出速度に連動して必要な量を注入するために、上記したように、圧力や重量などを用いたフィードバッグ機構を利用し、注入速度をコントロールすることが好ましい。また、混練装置における二酸化炭素の注入孔の位置については、樹脂組成物の溶融開始部分に二酸化炭素が逆流しないような、樹脂組成物圧が安定する場所にセットする。注入孔の形状については、樹脂組成物の逆流により閉塞が起こらないように、注入孔先端が注入管内部径より大きい、いわゆるラッパ形状になっていない事が必要である。二酸化炭素注入後は、樹脂組成物の混練粘度が低下する事を除いて、通常の運転と何ら変わる事が無い。二酸化炭素とともに混練され低粘度化した樹脂組成物は混練装置9より吐出される。この後、ギアポンプ10を経てシートダイ11より押し出され、シートダイのリップ間隙調整により目標厚みに調整されたシート形状の樹脂組成物はピンチロール12を経て15に回収される。
【0032】
次に、上記シート形状の樹脂組成物を熱圧プレスにより溝加工賦型を行う場合は、シート形状の樹脂組成物をセパレーターの大きさに裁断し、予め、軟化点直近まで加熱しておくことが好ましい。これを、軟化点以上に加熱された溝型でプレスし、塑性変形により溝加工賦型を行った上、冷却した後で型より取り出す。この場合、シート形状の樹脂組成物中の二酸化炭素は、加熱により殆ど揮発してしまうが、加熱プレスによる塑性変形に対しては、混練時や流動時に必要なレベルまでの低粘度は必要なく、熱可塑性樹脂の軟化点以上の加熱と加圧により、容易に溝加工賦型を行うことができる。
【0033】
【実施例】
以下に実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0034】
実施例1
変性PPE(ポリフェニレンエーテル)ナイロン樹脂ペレット(住友化学社製・アートリーY20S)と、人造黒鉛粉末(日本黒鉛社製・PAG−5)とを表1に示した割合で配合し、V型ブレンダーで混合した。この原材料混合物を二軸溶融混練装置である神戸製鋼所社製・TEX25に投入した。混練装置の運転条件は、設定温度145℃、混練軸の回転数80rpmとし、原材料混合物の供給量は20kg/hrとした。
一方、物質(C)として8MPaに増圧した常温の二酸化炭素を、表1に示した割合で注入しながら、溶融混練装置内で昇温させて超臨界状態とし、上記原材料混合物との混練を行った後、Tダイから押し出す方法によりシート形状の樹脂組成物を得た。
【0035】
実施例2
原材料混合物の配合割合を変更した以外は、実施例1と同様に行い、シート形状の樹脂組成物を得た。
【0036】
実施例3
熱可塑性樹脂としてPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂ペレット(ポリプラスチック社製・ジュラネックス2002)を用い、原材料混合物の配合割合を変更した以外は、実施例1と同様に行い、シート形状の樹脂組成物を得た。
【0037】
比較例1
実施例1と同じ原材料混合物を用い、物質(C)として二酸化炭素の注入を行わずに原材料混合物の混練を試みたが、混練装置がオーバーロードとなり、混練ができなかった。
【0038】
比較例2
実施例2と同じ原材料混合物を用い、物質(C)として二酸化炭素の注入を行わずに、原材料混合物の供給量を90重量%減らし、混練装置の回転数を30%上げて混練した。混練装置による原材料混合物の混練はできたものの、シート形状の樹脂組成物に加工する際にギアポンプがオーバーロードとなった。
【0039】
比較例3
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製・EOCN1020−70)とノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト社製・PR−50716)、硬化剤(四国化成社製・キュアゾール2P4MZ)人造黒鉛粉末(日本黒鉛社製・PAG−5)、離型剤(東亜化成社製・カルナバワックス)とを表1に示した割合で配合し、90℃の混練ロールで混練したものを冷却後粉砕し、成形材料を得た。
【0040】
[導電性の評価]
実施例1〜3において、Tダイのリップ間隙を調整して、厚み0.5mm(公差+0.15〜+0.35mm)、1.5mm(公差+0.15〜+0.35mm)のシート形状の樹脂組成物を得た。これを、80×80mmに裁断し、圧力80MPa、温度140℃、時間3分間で加熱加圧して、それぞれ80×80×0.5mm(厚み公差±0.025mm以下)の試料18、及び80×80×1.5mm(厚み公差±0.025mm以下)の試料19を得た。
また、比較例3については、得られた成形材料を用いて、温度170℃、圧力90MPa、時間3分間で圧縮成形して、80×80×0.5mmの試料18、及び80×80×1.5mmの試料19を得た。
これらの試料を用いて、図2に示す方法で貫通方向の抵抗を測定し、導電性の評価を行った。即ち、厚さの異なる2枚の試料18、19を組み合わせて、カーボンペーパー17を介して電極16にセットし、成形体の厚みが異なった状態での抵抗値より、貫通方向の固有抵抗を求めた。
【0041】
[曲げ強度の評価]
上記導電性の評価で用いた、実施例1〜3の試料19、及び、比較例3の試料19を、マルトー社製・精密切断機により切り出して試験片を作成し、JIS K 7203の方法に準じて曲げ強さ、曲げ弾性率を測定した。
【0042】
[成形性評価]
実施例1〜3においては、1.5mm厚さで得られたシート形状の樹脂組成物を用いて、溝賦形加工を行った。燃料電池セパレーター相当に幅1.0mm、深さ0.5mm、長さ160mmの溝を、2.0mmピッチで49本流路加工した形状転写用の金型を用いて、145℃、50MPaで1分加圧し溝形状の転写による賦形を行い、セパレーターを得た。また、比較例3においては、同様な形状に加工した圧縮成形金型を用い、175℃、85MPaで2分硬化の条件で圧縮成形を行い、セパレーターを得た。得られたセパレーターの溝の深さを、OLYMPUS STM6−LM 測長顕微鏡を用いて測定した。
測定ポイントは、図3(a)に示したように、セパレーターの溝7列について、両端及び中央の3箇所、計21箇所とした。測定方法は、図3(b)に示したように21箇所における溝深さ(AとBとの高さの差)を測定し、次の式により深さの精度を比較した。
溝深さ精度;(Σi =1 i =21(di−dav)2)0.5
dav;21箇所の溝深さの平均値
di;i番めでの溝深さ
【0043】
評価の結果を表1に示す。
【表1】
【0044】
表1から、実施例1〜3ではいずれも、従来不可能であった、熱可塑性樹脂への黒鉛の高割合での配合を達成し、燃料電池セパレーターを得ることが出来た。これらのセパレーターは、電気導電性に優れるだけでなく、従来の熱硬化性樹脂と黒鉛配合に拠る比較例3のセパレーターに較べ、機械的強度に優れていた。
一方、比較例1、2は、物質(C)を用いずに混練及びシート形状化を試みたが、原材料混合物あるいは混練後の樹脂組成物の粘度が高く、装置が過負荷になり、燃料電池セパレーターを得ることができなかった。
【0045】
【発明の効果】
本発明は、熱可塑性樹脂(A)と導電性を有する炭素系基材(B)とを含有する原材料混合物を、超臨界状態にあり、かつ、常温ではガス状である物質(C)とともに混練してシート形状の熱可塑性樹脂組成物を得る工程を有することを特徴とする燃料電池セパレーターの製造方法であり、原材料混合物の混練時に可塑化、低粘度化を行うことでシート形状の樹脂組成物を得ることができる。本発明の製造方法によれば、導電性と強度に優れた熱可塑性樹脂による成形品を得る事ができるので、燃料電池セパレーターの製造方法として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の一例を示す概略図(側断面図)
【図2】本発明の実施例における貫通方向抵抗率の測定法を示す概略図
【図3】本発明の実施例における溝深さの測定法を示す概略図
【符号の説明】
1 二酸化炭素ガスボンベ
2 減圧バルブ
3 圧力計
4 高圧コンプレッサー
5 流量調整バルブ
6 圧力計
7 高圧ガス注入孔
8 ロードセル
9 混練装置
10 ギアポンプ
11 Tダイ
12 ピンチロール
13 原材料混合物
14 二酸化炭素
15 シート状樹脂組成物
16 電極
17 カーボンペーパー
18 樹脂組成物の成形物(厚さ1.5mm)
19 樹脂組成物の成形物(厚さ0.5mm)
20 定電流装置
21 電圧計
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池セパレーターの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池セパレーターの生産方式は、成形体を黒鉛化処理して造るもの、或いは黒鉛板に機械加工して流路形成する方式によるもの、金属加工によるもの、導電性樹脂成形材料の成形によるもの等の方式があり、導電性と信頼性等の品質向上と低コスト化が検討されてきたが、個々の方式について、それぞれに欠点が克服されておらず、未だに技術開発の途上にある。
【0003】
例えば、黒鉛セパレーターはピッチとコークス粉末などの炭素質粉末の混合物を予めセパレーターの形状に成形した後、アジソン炉等の黒鉛化炉を用いて3000℃以上で焼成した上で、反りや変形を修正しながらピッチの再浸漬と焼成を繰り返す方式により生産する。即ち、黒鉛化の為の焼成によって、水素や酸素などがガス化して脱離するために、細孔や収縮変形が発生するが、この細孔は,燃料電池に使われる水素ガス透過を遮断する為にも電気抵抗を下げる為にも、炭素によって充填されることが必要な為に、ピッチの浸漬と焼成を繰り返し、高密度化を行ったうえで最終的に形状の修正と仕上げを行う(例えば、特許文献1参照。)。
叉、機械加工法では、黒鉛板に対し切削や研磨などの機械加工によって溝加工をする。焼成法では工程は長く非常に歩留まりが低い。機械加工法は1枚ずつ、精密加工をする事が必要になるため、大量生産には不向きで、どちらの方法でもコスト対応力がなく、現実的な工業ベースでの生産には不可能な手法である。
【0004】
一方、金属セパレーターはステンレスやアルミニウムなどの金属板に形状加工をした上で、耐蝕メッキ処理をするが、表面ピンホール問題が解決していない。酸化しても導電性を損なわない貴金属による処理としては金メッキ(例えば、非特許文献1参照。)や、カーボン塗料コート(例えば、特許文献2参照。)等が挙げられるが、通常厚さのメッキではピンホール発生防止が困難である。燃料電池運転時におけるセパレーター接触面の環境は、80℃〜120℃の飽和水蒸気圧下で、約pH4になる為、ピンホールからの腐食防止が困難で、長期信頼性に劣る。このメッキピンホールは厚メッキによって低減はできるが、貴金属の厚メッキは高コストになるだけでなく、厚メッキの場合に末端部やエッジに偏析するメッキ厚みの増加が、形状の精度悪化を併発し打開策が無い。
【0005】
導電性樹脂成形材料によるモールドセパレーターは、これらの技術的難点を打開する可能性があるが、熱硬化性樹脂を用いた場合は、機械的強度に問題があり、熱可塑性樹脂を用いた場合は特性だけでなく、配合・製造の現実性に困難があった。
【0006】
まず、熱硬化性樹脂成形材料における機械的強度の問題は、導電性を高めるために黒鉛を高配合する事と、熱硬化性樹脂が本来持つ脆性に起因するものである。熱硬化性樹脂による成形セパレーターは黒鉛の配合率を高める事で導電性を確保すると共に、可塑剤の応用や熱硬化性樹脂の分子量の調整などにより成形性の改善が行われているが、バインダー成分としてのフェノール樹脂やエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂は本来機械強度的には脆い。一般的な絶縁材料や構造材料としての熱硬化性成形材料ではこの脆性を克服する為に、無機や有機の繊維状充填材を配合するが、導電材においてはこの手法を容易に用いる事ができない。
【0007】
例えば、繊維状充填材としてガラス繊維を用いた場合は、その絶縁性のために配合が困難である。一方、炭素繊維を用いた場合では、充分な機械的強度改善を得る為には、大量の配合が必要であって、この場合は原料費の増大だけでなく、成形性の顕著な悪化を招くことになる。このような理由から、導電性を確保する為の黒鉛の高配合と、繊維状充填材の配合を最適化して材料化したとしても、特に車載用など燃料電池が小型化されるのに対応して、セパレーターの肉厚が薄くなると、強度が不足し、スタックに組み込まれた後でもセパレーターにクラックを生じるなど問題点が明らかになりつつある。
【0008】
一方で、熱可塑性樹脂成形材料は靭性が高く、車載セパレーターの様な薄物形状に加工されても、実用範囲の機械的強度を示す事ができる。しかし熱可塑性樹脂は、粘度が高く通常の手段では黒鉛の高配合が出来ない事が難点である。また、黒鉛粒子は劈開性が強い為に、通常の混練等で強い剪断力が付加された場合には、粒子が容易に破壊され劈開によって細粒化していく。優れた導電性を発揮する為には、黒鉛粒径が大きく保たれることが重要であって、細粒化を起こすような手段は好ましくない。この対応に可塑剤を用いて粘度を低下させる試みは、可塑剤成分のブリードが起こって、燃料電池の発電性に影響を与えることが分かっているなど、実施に難点があってこれまでの所、有意な効果的手法が報告されているとは言い難かった。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−169230号公報
【特許文献2】
特開平11−345618号公報
【非特許文献1】
平成12年度固体高分子形燃料電池研究開発成果報告会要旨集,「II.高効率燃料電池システム実用化技術開発 II−2固体高分子形燃料電池システム実用化技術開発」,新エネルギー産業技術総合開発機構 水素・アルコール・バイオマス技術開発室,平成13年3月8日,P69
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、材料化の手段と高導電性の両立が困難であった熱可塑性樹脂成形材料による燃料電池セパレーターの製造方法に対しなされたものであって、その目的とするところは高割合で配合された黒鉛の粒径を維持しながら、機械的強度を満足できるシート形状の熱可塑性樹脂組成物を製造し、これを加熱加圧成形することにより、導電性が優れた燃料電池セパレーターを得る手段を提供する事にある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記の本発明(1)〜(3)により達成される。
(1)熱可塑性樹脂(A)と導電性を有する炭素系基材(B)とを含有する燃料電池セパレーターの製造方法であって、前記熱可塑性樹脂(A)と導電性を有する炭素系基材(B)とを含有する原材料混合物を、超臨界状態にあり、かつ、常温ではガス状である物質(C)とともに混練してシート形状の熱可塑性樹脂組成物を製造する工程を有することを特徴とする、燃料電池セパレーターの製造方法。
(2)さらに、前記シート形状の熱可塑性樹脂組成物に、溝加工賦型を行う工程を有する上記(1)に記載の燃料電池セパレーターの製造方法。
(3)前記熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)5〜37重量%と、導電性を有する炭素系基材(B)60〜92重量%とを含有する上記(1)または(2)に記載の燃料電池セパレーターの製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の燃料電池セパレーターの製造方法について説明する。
本発明の燃料電池セパレーターの製造方法(以下、単に「製造方法」ということがある)は、熱可塑性樹脂(A)と、導電性を有する炭素系基材(B)(以下、単に「炭素系基材(B)」ということがある)とを含有する燃料電池セパレーターの製造方法であって、熱可塑性樹脂(A)と、炭素系基材(B)とを含有する原材料混合物を、超臨界状態にあり、かつ、常温ではガス状である物質(C)(以下、単に「物質(C)」ということがある)とともに混練してシート形状の熱可塑性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ということがある)とする工程を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の製造方法で使用される熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えば、一般的なポリオレフィン、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変成ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリフェレンサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、超高分子ポリエチレン、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
また、必要に応じて上記熱可塑性樹脂とエラストマーとの混合物を用いることもでき、本発明の製造方法におけるシート形状化後の溝加工賦形や、燃料電池組立時の機械的強度を保証できるものであればよい。
【0014】
固体高分子型燃料電池はその運転温度が約80〜120℃であり、あまり低粘度である熱可塑性樹脂を選択すると、長期に亘る使用で、形状にひずみが発生し、クリープによるシーリング不良を生じてガス漏れを起こす可能性がある。したがって、熱可塑性樹脂選択の条件としては、強靭性だけでなく対衝撃、耐クリープ性などが要求される。また、添加される物質(C)との親和性が高いものであることが好ましい。特に、本発明の製造方法においては、物質(C)として二酸化炭素を用いた場合に、二酸化炭素に対する溶解度が大きいものであることが好ましい。
【0015】
このような熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、変成ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルフォンなどが挙げられる。これらを単独もしくは2種類以上併用することができる。
【0016】
本発明の製造方法で用いられる炭素系基材(B)としては特に限定されないが、例えば、黒鉛、炭素繊維、カーボンブラックなどの炭素材が挙げられる。炭素材のうち導電性の優れているものはグラファイト構造が成長したものであり、天然や人造の黒鉛がこれに該当する。天然に算出する鉱物としての黒鉛には天然黒鉛と称される鱗片状の黒鉛と土壌黒鉛があるが、このうち天然黒鉛が導電性に優れている。人造黒鉛については、石炭系コークスを熱処理したものと石油系コークスを熱処理したものがあり、形状的には鱗状、針状、塊状、球状、凝集体などがあるが、いずれのものも、X線解析による格子定数精密法で求めるc軸(002)層面間距離(d002)が0.335〜0.460nmの範囲にあって、真比重が2.04〜2.34の範囲にあればよく、かつ、その構造が単一粒子形状であっても、凝集した構造であっても良い。
【0017】
その他の炭素系基材(B)である炭素繊維やカーボンブラックについては、非晶質カーボンを含んでいてもよい。炭素繊維やカーボンブラックは、樹脂相内に分散して導電助剤として働くと共に、炭素繊維の場合はその形状による効果として、曲げや強靭性などの機械的特性を改善する効果があり、必要に応じて配合される。
【0018】
次に、熱可塑性樹脂(A)と炭素系基材(B)との配合量について説明する。本発明の製造方法においては特に限定されないが、樹脂組成物全体に対して、熱可塑性樹脂(A)5〜37重量%、炭素系基材(B)60〜92重量%を配合することが好ましい。かかる配合量とすることによって、成形性と成形品の導電性や機械的強度を確保することができる。熱可塑性樹脂(A)の配合量が前記下限値を下回るか、炭素系基材(B)の配合量が前記上限値を超えると、物質(C)を注入したとしても、押し出し時に十分な流動性が確保できず、正確な厚みのシートを押し出すのが困難となることがある。これは樹脂が黒鉛粒子間を十分に充填するのに必要な体積を持っていないからと考えられ、この結果成形体の強度の確保も難しくなる。一方、熱可塑性樹脂(A)の配合量が前記上限値を越えるか、炭素系基材(B)の配合量が前記下限値を下回ると、導電性が低下し、実用に即したセパレーターを得る事が難しくなる場合がある。これは樹脂体積が増える事で黒鉛粒子同士の凝集が起こるようになり、結果として不導体相部分を生じて導電性を低下させるものと考えられる。このような樹脂相が多い系においては、上記の炭素繊維やカーボンブラックの併用もその効果が小さくなる。
【0019】
本発明の製造方法では、上記のような熱可塑性樹脂(A)と炭素系基材(B)以外に、成形材料として一般に用いられる可塑剤や離型剤を用いることができる。可塑剤としては成形後にブリードすることがなく、成形時に揮散できるように、メタノールやアセトンなどの低沸点の有機溶剤を用いることが好ましい。
また、離型剤としては、一般に用いられる高級脂肪酸あるいはそのエステル化物や酸化物等を用いることができるが、金属塩は発電効果の劣化を招くことがある。
【0020】
本発明の製造方法は、以上に説明したような原材料混合物を、物質(C)とともに混練してシート状の樹脂組成物を製造する工程を有することを特徴とする。
【0021】
本発明の製造方法において用いられる物質(C)としては特に限定されないが、例えば、窒素、二酸化炭素、メタンなどが挙げられる。これらの中でも、特に二酸化炭素が好ましい。これにより、比較的低い温度、圧力において超臨界状態とすることができるので、取り扱いが容易であり、このためのエネルギーコストも低く抑えることが出来る。
【0022】
本発明の製造方法において、上記物質(C)を超臨界状態とする方法としては特に限定されないが、例えば、物質(C)の種類により固有である超臨界領域まで昇温、昇圧し、あらかじめ超臨界状態としたものを用いる方法、または、臨界圧力以上に昇圧したものを原材料混合物と混練する系に供給し、加温された原材料混合物からの伝熱により昇温させて超臨界状態とする方法などが挙げられる。
【0023】
一般的に、物質を高温高圧にすると、亜臨界を経て超臨界に至る。常温でガス状の物質、例えば二酸化炭素の場合は、臨界圧力は7.38MPa、臨界温度は31℃であって、昇温、昇圧に従って、亜臨界から超臨界に至る。このような状態の二酸化炭素は有機溶媒と同様な挙動を示し、その工業的利用としては、例えば文献(プラスチックスエージ,vol48,Mar,p102)などに見られるように、熱可塑性樹脂の薄肉成形において、低粘度化、可塑化を起こし、その効果を用いて、精密な表面形状を形成する手法が知られている。導電性基材である黒鉛を、劈開や細粒化を抑制して粒径を維持したまま熱可塑性樹脂とコンパウンド化し、かつ押し出しシート成形するにあたっても、同様に有機溶媒的な効果は有効に応用することが可能である。
【0024】
本発明の製造方法において、上記原材料混合物を上記物質(C)とともに混練して樹脂組成物とする方法としては特に限定されないが、例えば、上記原材料混合物を混練装置で混練する際に、超臨界状態とした物質(C)を注入して原材料混合物とともに混練する方法、または、臨界圧力以上に昇圧した物質(C)を混練装置に注入し、混練装置内で昇温させて超臨界状態になった物質(C)と原材料混合物とを混練する方法などが挙げられる。
【0025】
本発明の製造方法において、物質(C)は、油圧、機械式、空圧式など、高圧を発生しうるブースター型のポンプを用いて増圧し、配管を通して混練装置に接続し、あたかも液体原料を添加するように、注入用ノズル孔を用いて混練装置内の原材料混合物に添加することができる。混練装置への注入位置は、原材料混合物の溶融が開始する位置より吐出孔側にする。原材料混合物は混練装置内部で加温されているため、高圧状態で添加された物質(C)は、原材料混合物からの伝熱を受けて、高温になり、高温高圧下での本来の溶媒効果を発揮しうる状態に至る。高温高圧状態で注入する常温でガス状である物質の比率は、樹脂の種類、組成物の粘度により適正な値を選択することができる。
【0026】
上記物質(C)との混練により、上記原材料混合物からなる樹脂組成物の可塑化が進むと、樹脂組成物の低粘度化が起こるため、シート形状に押し出すことが可能になる。一方、押し出されたシート形状の樹脂組成物内の物質(C)は、大気下に晒されたと同時に、揮発揮散してしまうので、樹脂組成物中や成形品内に残存して特性等に影響を与えることがない。このように、混練装置内に物質(C)を注入して混練すると、熱可塑性樹脂の低粘度化が起こるために、物質(C)を注入しない場合に較べて黒鉛の配合量を高くすることができる。また、混練装置スクリューによる剪断力が軽減される為に、黒鉛粒子の劈開が防止されるので、シート形状に押し出された後でも粒径を保持することが可能であり、この結果、良好な導電性を得ることができる。
【0027】
混練した樹脂組成物をシート形状にする方法としては特に限定されないが、例えば、樹脂組成物をダイから押し出す方法、ロールにて圧延する方法などが挙げられる。これらのいずれか、またはいくつかを組み合わせて適用することもできる。
このようにして得られたシート形状の樹脂組成物は、炭素系基材が熱可塑性樹脂中に高精度に分散されているとともに、シート形状に加工される段階で適度に高密度化されたものである。
【0028】
上記シート形状の樹脂組成物に溝加工賦型を行う方法としては特に限定されないが、熱圧プレス装置により加熱加圧成形して形状加工を行うことが好ましい。これにより、成形性に優れ、充分な密度を有し、熱可塑性樹脂本来の靭性と炭素系基材の高充填による高導電性を兼ね備えた所定の形状の燃料電池セパレーターを容易に製造することができる。
溝賦形加工は、予めセパレーターの寸法、厚さに調整されて押出成形されたシート形状の樹脂組成物を、熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度で熱圧プレスをする。成形圧力は特に限定されないが、20〜150MPaの圧力で成形することができる。セパレーターの溝の深さは通常1mm弱であって、必要変形量が小さいために、既に物質(C)が揮散して高粘度化したシート形状の樹脂組成物でも、容易に賦形され、目的とするセパレーターを得ることができる。
【0029】
本発明の製造方法において、熱可塑性樹脂は、一般に軟化点が高いほど、或いは分子量が大きい程、成形品の耐化学薬品性、耐衝撃性などが良くなるが、反比例的に、成形時の流動性が悪くなる。超臨界状態の物質(C)の添加は、このような高軟化点、低流動性樹脂の加工時粘度を下げる効果があり、通常の手段では配合が困難であった、黒鉛高配合、及びそのシート押し出しを可能にする。一旦押し出されてシート状の中間体となった組成物は、溝加工のための賦形熱プレスで容易に形状加工ができる。
【0030】
以下に、本発明の好ましい実施形態である、図1の装置概略図を用いて、本発明の製造方法を詳細に説明する。図1は、物質(C)として二酸化炭素を用いた例である。
図1において、ガスボンベ1に充填された二酸化炭素を圧力計3でモニターしつつ減圧バルブ2を開閉して高圧コンプレッサー4に供給する。例えば、高圧コンプレッサーとして(株)フジキン製の高圧コンプレッサー(商品名 プロバイダー)型式150WGを用いて増圧すると、最大6.47MPaの吐出圧に至るので、圧力計6を見ながら流量調整バルブ5を調整して、高圧ガス注入孔7に至る二酸化炭素の流量を調整する。この際、二酸化炭素の流量はロードセル8によってもモニターすることができる。熱可塑性樹脂と黒鉛との原材料混合物13は混練装置内で加熱により軟化してくるため、この状態の原料混練物に、この高圧ガス14を注入する。
【0031】
二酸化炭素量の注入に際しては、混練装置における吐出速度に連動して必要な量を注入するために、上記したように、圧力や重量などを用いたフィードバッグ機構を利用し、注入速度をコントロールすることが好ましい。また、混練装置における二酸化炭素の注入孔の位置については、樹脂組成物の溶融開始部分に二酸化炭素が逆流しないような、樹脂組成物圧が安定する場所にセットする。注入孔の形状については、樹脂組成物の逆流により閉塞が起こらないように、注入孔先端が注入管内部径より大きい、いわゆるラッパ形状になっていない事が必要である。二酸化炭素注入後は、樹脂組成物の混練粘度が低下する事を除いて、通常の運転と何ら変わる事が無い。二酸化炭素とともに混練され低粘度化した樹脂組成物は混練装置9より吐出される。この後、ギアポンプ10を経てシートダイ11より押し出され、シートダイのリップ間隙調整により目標厚みに調整されたシート形状の樹脂組成物はピンチロール12を経て15に回収される。
【0032】
次に、上記シート形状の樹脂組成物を熱圧プレスにより溝加工賦型を行う場合は、シート形状の樹脂組成物をセパレーターの大きさに裁断し、予め、軟化点直近まで加熱しておくことが好ましい。これを、軟化点以上に加熱された溝型でプレスし、塑性変形により溝加工賦型を行った上、冷却した後で型より取り出す。この場合、シート形状の樹脂組成物中の二酸化炭素は、加熱により殆ど揮発してしまうが、加熱プレスによる塑性変形に対しては、混練時や流動時に必要なレベルまでの低粘度は必要なく、熱可塑性樹脂の軟化点以上の加熱と加圧により、容易に溝加工賦型を行うことができる。
【0033】
【実施例】
以下に実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0034】
実施例1
変性PPE(ポリフェニレンエーテル)ナイロン樹脂ペレット(住友化学社製・アートリーY20S)と、人造黒鉛粉末(日本黒鉛社製・PAG−5)とを表1に示した割合で配合し、V型ブレンダーで混合した。この原材料混合物を二軸溶融混練装置である神戸製鋼所社製・TEX25に投入した。混練装置の運転条件は、設定温度145℃、混練軸の回転数80rpmとし、原材料混合物の供給量は20kg/hrとした。
一方、物質(C)として8MPaに増圧した常温の二酸化炭素を、表1に示した割合で注入しながら、溶融混練装置内で昇温させて超臨界状態とし、上記原材料混合物との混練を行った後、Tダイから押し出す方法によりシート形状の樹脂組成物を得た。
【0035】
実施例2
原材料混合物の配合割合を変更した以外は、実施例1と同様に行い、シート形状の樹脂組成物を得た。
【0036】
実施例3
熱可塑性樹脂としてPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂ペレット(ポリプラスチック社製・ジュラネックス2002)を用い、原材料混合物の配合割合を変更した以外は、実施例1と同様に行い、シート形状の樹脂組成物を得た。
【0037】
比較例1
実施例1と同じ原材料混合物を用い、物質(C)として二酸化炭素の注入を行わずに原材料混合物の混練を試みたが、混練装置がオーバーロードとなり、混練ができなかった。
【0038】
比較例2
実施例2と同じ原材料混合物を用い、物質(C)として二酸化炭素の注入を行わずに、原材料混合物の供給量を90重量%減らし、混練装置の回転数を30%上げて混練した。混練装置による原材料混合物の混練はできたものの、シート形状の樹脂組成物に加工する際にギアポンプがオーバーロードとなった。
【0039】
比較例3
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製・EOCN1020−70)とノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト社製・PR−50716)、硬化剤(四国化成社製・キュアゾール2P4MZ)人造黒鉛粉末(日本黒鉛社製・PAG−5)、離型剤(東亜化成社製・カルナバワックス)とを表1に示した割合で配合し、90℃の混練ロールで混練したものを冷却後粉砕し、成形材料を得た。
【0040】
[導電性の評価]
実施例1〜3において、Tダイのリップ間隙を調整して、厚み0.5mm(公差+0.15〜+0.35mm)、1.5mm(公差+0.15〜+0.35mm)のシート形状の樹脂組成物を得た。これを、80×80mmに裁断し、圧力80MPa、温度140℃、時間3分間で加熱加圧して、それぞれ80×80×0.5mm(厚み公差±0.025mm以下)の試料18、及び80×80×1.5mm(厚み公差±0.025mm以下)の試料19を得た。
また、比較例3については、得られた成形材料を用いて、温度170℃、圧力90MPa、時間3分間で圧縮成形して、80×80×0.5mmの試料18、及び80×80×1.5mmの試料19を得た。
これらの試料を用いて、図2に示す方法で貫通方向の抵抗を測定し、導電性の評価を行った。即ち、厚さの異なる2枚の試料18、19を組み合わせて、カーボンペーパー17を介して電極16にセットし、成形体の厚みが異なった状態での抵抗値より、貫通方向の固有抵抗を求めた。
【0041】
[曲げ強度の評価]
上記導電性の評価で用いた、実施例1〜3の試料19、及び、比較例3の試料19を、マルトー社製・精密切断機により切り出して試験片を作成し、JIS K 7203の方法に準じて曲げ強さ、曲げ弾性率を測定した。
【0042】
[成形性評価]
実施例1〜3においては、1.5mm厚さで得られたシート形状の樹脂組成物を用いて、溝賦形加工を行った。燃料電池セパレーター相当に幅1.0mm、深さ0.5mm、長さ160mmの溝を、2.0mmピッチで49本流路加工した形状転写用の金型を用いて、145℃、50MPaで1分加圧し溝形状の転写による賦形を行い、セパレーターを得た。また、比較例3においては、同様な形状に加工した圧縮成形金型を用い、175℃、85MPaで2分硬化の条件で圧縮成形を行い、セパレーターを得た。得られたセパレーターの溝の深さを、OLYMPUS STM6−LM 測長顕微鏡を用いて測定した。
測定ポイントは、図3(a)に示したように、セパレーターの溝7列について、両端及び中央の3箇所、計21箇所とした。測定方法は、図3(b)に示したように21箇所における溝深さ(AとBとの高さの差)を測定し、次の式により深さの精度を比較した。
溝深さ精度;(Σi =1 i =21(di−dav)2)0.5
dav;21箇所の溝深さの平均値
di;i番めでの溝深さ
【0043】
評価の結果を表1に示す。
【表1】
【0044】
表1から、実施例1〜3ではいずれも、従来不可能であった、熱可塑性樹脂への黒鉛の高割合での配合を達成し、燃料電池セパレーターを得ることが出来た。これらのセパレーターは、電気導電性に優れるだけでなく、従来の熱硬化性樹脂と黒鉛配合に拠る比較例3のセパレーターに較べ、機械的強度に優れていた。
一方、比較例1、2は、物質(C)を用いずに混練及びシート形状化を試みたが、原材料混合物あるいは混練後の樹脂組成物の粘度が高く、装置が過負荷になり、燃料電池セパレーターを得ることができなかった。
【0045】
【発明の効果】
本発明は、熱可塑性樹脂(A)と導電性を有する炭素系基材(B)とを含有する原材料混合物を、超臨界状態にあり、かつ、常温ではガス状である物質(C)とともに混練してシート形状の熱可塑性樹脂組成物を得る工程を有することを特徴とする燃料電池セパレーターの製造方法であり、原材料混合物の混練時に可塑化、低粘度化を行うことでシート形状の樹脂組成物を得ることができる。本発明の製造方法によれば、導電性と強度に優れた熱可塑性樹脂による成形品を得る事ができるので、燃料電池セパレーターの製造方法として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の一例を示す概略図(側断面図)
【図2】本発明の実施例における貫通方向抵抗率の測定法を示す概略図
【図3】本発明の実施例における溝深さの測定法を示す概略図
【符号の説明】
1 二酸化炭素ガスボンベ
2 減圧バルブ
3 圧力計
4 高圧コンプレッサー
5 流量調整バルブ
6 圧力計
7 高圧ガス注入孔
8 ロードセル
9 混練装置
10 ギアポンプ
11 Tダイ
12 ピンチロール
13 原材料混合物
14 二酸化炭素
15 シート状樹脂組成物
16 電極
17 カーボンペーパー
18 樹脂組成物の成形物(厚さ1.5mm)
19 樹脂組成物の成形物(厚さ0.5mm)
20 定電流装置
21 電圧計
Claims (3)
- 熱可塑性樹脂(A)と導電性を有する炭素系基材(B)とを含有する燃料電池セパレーターの製造方法であって、前記熱可塑性樹脂(A)と導電性を有する炭素系基材(B)とを含有する原材料混合物を、超臨界状態にあり、かつ、常温ではガス状である物質(C)とともに混練してシート形状の熱可塑性樹脂組成物を製造する工程を有することを特徴とする、燃料電池セパレーターの製造方法。
- さらに、前記シート形状の熱可塑性樹脂組成物に、溝加工賦型を行う工程を有する請求項1に記載の燃料電池セパレーターの製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)5〜37重量%と、導電性を有する炭素系基材(B)60〜92重量%とを含有する請求項1または2に記載の燃料電池セパレーターの製造方法。
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-
2002
- 2002-10-30 JP JP2002315827A patent/JP2004152589A/ja active Pending
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CN111200106A (zh) * | 2018-11-16 | 2020-05-26 | 丰田自动车株式会社 | 压密化结束的带状电极板的制造方法、压密化结束的带状电极板和电池 |
CN111200106B (zh) * | 2018-11-16 | 2022-09-27 | 丰田自动车株式会社 | 压密化结束的带状电极板的制造方法、压密化结束的带状电极板和电池 |
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