JP2004152465A - 光ディスク用原盤の製造方法及び光ディスクの製造方法 - Google Patents
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Abstract
である。
【解決手段】 WやMoのような遷移金属の不完全酸化物を含み、該不完全酸化物は、酸素の含有量が前記遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成の酸素含有量より小さいものであるようなレジスト材料よりなるレジスト層を基板上に成膜した後、該レジスト層をレーザ光により記録用信号パターンに対応させて選択的に露光し、現像して所定の凹凸パターンが形成された原盤を用いて、その凹凸パターンが転写されたディスクを作製するものである。
【選択図】 図1
Description
近年では、光記録媒体の中でも、コンパクトディスク(CD)から光ディスクへの移行が進み、直径12cmの読み取り専用光ディスク(DVD−ROM)の片面に4.7GBの情報容量を有するものが登場している。これにより、カラー標準方式(NTSC)の2時間分の映像記録が可能である。
上記光ディスクは、ポリカーボネート等の光学的に透明な基板の一主面上に情報信号を示すピットやグルーブ等の微細な凹凸パターンが形成され、その上にアルミニウム等の金属薄膜からなる反射膜が形成され、さらにその反射膜上に保護膜が形成された構造を有している。
先ず、基板90の上に、レジスト層91を均一に形成する(図10(a))。
ついで、レジスト層91に信号パターンに対応した選択的な露光を施し感光させ(図10(b))、レジスト層91を現像することによって所定の凹凸パターンが形成された原盤92を得る(図10(c))。この原盤の作製に関して、従来から行なわれている方法の一例を以下に示す。
つぎに、電鋳法によってレジスト原盤92の凹凸パターン面上に金属ニッケル膜を析出させ(図10(d))、これをレジスト原盤92から剥離させた後に所定の加工を施し、レジスト原盤92の凹凸パターンが転写された成型用スタンパ93を得る(図10(e))。
その成型用スタンパ93を用いて射出成型法によって熱可塑性樹脂であるポリカーボネートからなる樹脂製ディスク基板94を成形する(図10(f))。ついで、スタンパを剥離し(図10(g))、その樹脂製ディスク基板94の凹凸面にAl合金の反射膜95(図10(h))と保護膜96とを成膜することにより光ディスクを得る(図10(i))。
このように光ディスクの微細凹凸パターンは、微細凹凸パターンが高精度に形成されたスタンパを用いて、基板上に忠実に且つ即座に当該パターンを複製するプロセスを経ることにより作製されるものであり、さらにさかのぼれば、レジスト層にレーザ光による露光を行って潜像を形成する、いわゆるカッティングにより如何に微細な凹凸パターンを形成できるかによって決定される。
例えば、先に述べた情報容量4.7GBの読み取り専用DVD(DVD−ROM)においては、スタンパ上に最短ピット長0.4μm、トラックピッチ0.74μmのピット列がスパイラル状に形成されるようにカッティングが施されている。そのカッティングには、波長413nmのレーザと、開口数NAとして0.90前後(例えば0.95)の対物レンズとが用いられている。
P=K・λ/NA …(1)
ここで、光源の波長λ、対物レンズの開口数NAは光源となるレーザ装置の仕様によって決まる項目であり、比例定数Kはレーザ装置とレジスト原盤との組み合せで決まる項目である。
前記情報容量4.7GBの光ディスクを作製する場合には、波長0.413μm、開口数NAを0.90、最短ピット長が0.40μmであるため、上記式(1)より比例定数K=0.87となる。
これに対して、上記25GBの光ディスクの要求に応えるためには、最短ピット長を0.17μm、トラックピッチを0.32μm程度にまで微細化する必要がある。
一般的には、先に述べた凹凸パターンの微細化(極微細ピットの形成)は、レーザ波長の短波長化によって達成することが有効とされる。すなわち、片面25GBの高密度光ディスクに要求される最短ピット長0.17μm程度を得るためには、比例定数はK=0.87とし、開口数NA=0.95とした場合、レーザ波長としてλ=0.18μmの光源が必要となる。
これに対して、無機レジスト、特にアモルファス無機レジストは、最小構造単位が原子レベルのサイズであるため、露光部と未露光部との境界部で明瞭なパターンが得られ、有機レジストに比較して高精度の微細加工が可能であり、高容量の光ディスクへの適用が有望と考えられている。これには、MoO3やWO3等をレジスト材料として用い、露光源としてイオンビームを用いた微細加工例がある(例えば非特許文献1参照)。また、SiO2をレジスト材料として用い、露光源として電子ビームを用いる加工例がある(例えば、非特許文献2参照)。さらに、カルコゲナイドガラスをレジスト材料として用い、露光源として波長476nm及び波長532nmのレーザ並びに水銀キセノンランプからの紫外光を用いる方法も検討されている(例えば、非特許文献3参照)。
その点では既存の露光装置に搭載されているレーザ装置などの光、すなわち紫外線又は可視光が利用できることが望ましいが、無機レジスト材料の中で紫外線又は可視光でカッティング可能な材料は限られており、これまで報告がある中ではカルコゲナイド材料のみである。これは、カルコゲナイド材料以外の無機レジスト材料においては紫外線又は可視光は透過してしまい、光エネルギーの吸収が著しく少なく実用的でないためである。
既存の露光装置とカルコゲナイド材料との組み合せは経済的な面では実用的な組み合せではあるが、カルコゲナイド材料はAg2S3、Ag−As2S3、Ag2Se−GeSe等の人体に有害な材料を含むという問題点があり、工業生産の観点からその使用は困難である。
以上のように、これまでのところ既存の露光装置による高記録容量の光ディスクの製造は実現されていない。
Nobuyoshi Koshida, Kazuyoshi Yoshida, Shinichi Watanuki,Masanori Komuro and Nobufumi Atoda : "50―nm Metal Line Fabrication by Focused Ion Beam and Oxide Resists ", Jpn.J.Appl.Phys.Vol.30 [1991] pp3246。 Sucheta M. Gorwadkar, Toshimi Wada, Satoshi Hiraichi, Hiroshi Hiroshima, Kenichi Ishii and Masanori Komuro : " SiO2/C―Si Bilayer Electron―Beam Resist Process for Nano―Fabrication", Jpn.J.Appl.Phys.Vol.35 [1996 ]pp6673。 S. A. Kostyukevych : "Investifations and modelling of physical processes in inorganic Resists for the use in UV and laser lithography", SPIE Vol.3424 [1998] pp20。
これに対して、本発明者らは検討の結果、遷移金属酸化物の化学量論組成から僅かでも酸素含有量がずれるとこの酸化物の紫外線又は可視光に対する吸収が突然大きくなるとともに、紫外線又は可視光を吸収することによりその化学的性質が変化し、レジスト材料及び光ディスク用原盤の製造方法への応用が可能であることを見出した。すなわち、これにより上記式(1)において比例定数Kが改善され、最短ピット長Pの低減を達成できる。
ここでいう遷移金属の不完全酸化物とは、遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成より酸素含有量が少ない方向にずれた化合物のこと、すなわち遷移金属の不完全酸化物における酸素の含有量が、上記遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成の酸素含有量より小さい化合物のことと定義する。
なお、複数種類の遷移金属を含む場合には、結晶構造のある1種の遷移金属原子の一部が他の遷移金属原子で置換されたものと考えられるが、これら複数種類の遷移金属がとりうる化学量論組成に対して酸素含有量が不足しているか否かで不完全酸化物かどうかを判断することとする。
本発明に係る光ディスクの製造方法を適用した製造工程の概要について、図1に基づいて以下に説明する。
先ず、基板100の上に、スパッタリング法により所定の無機系のレジスト材料からなるレジスト層102を均一に成膜する(レジスト層形成工程、図1(a))。レジスト層102に適用される材料の詳細は後述する。
また、レジスト層102の露光感度の改善のために基板100とレジスト層102との間に所定の中間層101を形成してもよい。図1(a)ではその状態を示している。
なお、レジスト層102の膜厚は任意に設定可能であるが、10nm〜80nmの範囲内が好ましい。
つぎに、電鋳法によって原盤103の凹凸パターン面上に金属ニッケル膜を析出させ(図1(d))、これを原盤103から剥離させた後に所定の加工を施し、原盤103の凹凸パターンが転写された成型用スタンパ104を得る(図1(e))。
上記レジスト層102に適用されるレジスト材料は、遷移金属の不完全酸化物である。ここで、遷移金属の不完全酸化物は、遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成より酸素含有量が少ない方向にずれた化合物のこと、すなわち遷移金属の不完全酸化物における酸素の含有量が、上記遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成の酸素含有量より小さい化合物のことと定義する。
例えば、遷移金属の酸化物として化学式MoO3を例に挙げて説明する。化学式MoO3の酸化状態を組成割合Mo1−xOxに換算すると、x=0.75の場合が完全酸化物であるのに対して、0<x<0.75で表される場合に化学量論組成より酸素含有量が不足した不完全酸化物であるといえる。
なお、1種の遷移金属の不完全酸化物の他に、第2の遷移金属を添加したもの、さらに3種以上の遷移金属を添加したものの場合、結晶構造のある1種の遷移金属原子の一部が他の遷移金属原子で置換されたものと考えられるが、これら複数種類の遷移金属がとりうる化学量論組成に対して酸素含有量が不足しているか否かで不完全酸化物かどうかを判断することとする。
なお、上記レジスト材料は、所定の遷移金属を含んだターゲットを用いたAr+O2雰囲気中のスパッタリング法によって作製すればよい。例えば、チャンバー内への導入ガスの全流量に対してO2を5〜20%とし、ガス圧は通常のスパッタリングのガス圧(1〜10Pa)とする。
次に、上記光ディスクの製造方法の根幹をなす光ディスク用原盤の製造方法の詳細を説明する。
本発明に係る光ディスク用原盤の製造方法の一の実施の形態として、例えば、上述したように遷移金属の不完全酸化物からなるレジスト材料を基板上に成膜してレジスト層を形成する工程と、レジスト層に選択的に露光して感光される工程と、レジスト層を現像によって所定の凹凸パターンが形成された原盤を製造する工程とからなる。以下に各工程の詳細を説明する。
先ず、表面が充分に平滑とされた基板上に、遷移金属の不完全酸化物からなるレジスト層を成膜する。具体的な成膜方法としては、例えば遷移金属の単体からなるスパッタターゲットを用いて、アルゴン及び酸素雰囲気中でスパッタリング法により成膜を行う方法が挙げられる。この場合には、真空雰囲気中の酸素ガス濃度を変えることにより、遷移金属の不完全酸化物の酸化度合いを制御できる。2種類以上の遷移金属を含む遷移金属の不完全酸化物をスパッタリング法により成膜する場合には、異なる種類のスパッタターゲット上で基板を常に回転させることにより複数種類の遷移金属を混合させる。混合割合は、それぞれのスパッタ投入パワーを変えることにより制御する。
さらに、スパッタリング法の他、蒸着法によっても遷移金属の不完全酸化物からなるレジスト層を容易に成膜可能である。
レジスト層の膜厚は任意に設定可能であるが、例えば10nm〜80nmの範囲内とすることができる。
次に、レジスト層の成膜が終了した基板(以下、レジスト基板1と称する)を、図2に示される露光装置のターンテーブル11にレジスト成膜面が上側に配置されるようにセットする。
この露光装置は、レジスト層が露光される例えばレーザ光を発生するビーム発生源12が設けられ、これよりのレーザ光が、コリメータレンズ13、ビームスプリッタ14及び対物レンズ15を通じてレジスト基板1のレジスト層にフォーカシングされて照射する構成を有する。また、この露光装置は、レジスト基板1からの反射光をビームスプリッタ14及び集光レンズ16を介して分割フォトディテクタ17上で結ぶ構成を有する。分割フォトディテクタ17は、レジスト基板1からの反射光を検出し、この検出結果から得られるフォーカス誤差信号18を生成し、フォーカスアクチュエータ19に送る。フォーカスアクチュエータ19は、対物レンズ15の高さ方向の位置制御を行うものである。
したがって、本発明の光ディスク用原盤の製造方法では、波長分離を行う光学系が不要となり露光装置の低コスト化を達成するとともに、露光波長に相当する高精度なフォーカシングを実現して正確な微細加工を達成できる。また、無機レジストである本発明のレジスト材料では、照射閾値パワーP0未満の微弱光では露光されないため、通常の有機レジストを用いるプロセスで必要とされる室内照明の紫外光のカットも不要となる。
また、光ディスクの場合には、微細凹凸の潜像として情報データ用凹凸ピット及び案内溝の蛇行を形成する。また、磁気ハードディスク等の同心円状のトラックが用いられるディスクを作製する際には、ターンテーブル11又は光学系を連続的ではなくステップ的に送ることにより対応可能である。
このとき、照射パワーを低くする程短く且つ狭いピットの形成が可能であるが、極端に照射パワーを低くすると照射閾値パワーに近づくために安定したパターン形成が困難となる。このため、最適な照射パワーを適宜設定して露光する必要がある。
なお、本発明者らは、本発明のレジスト材料と、波長660nmの赤色半導体レーザ、波長185nm、254nm、及び405nm程度にピークを有する水銀ランプからの露光とを組み合わせることによって選択比が得られ、微細なピットパターンを形成可能であることを実際に確認した。
次に、このようにしてパターン露光されたレジスト基板1を現像することにより、所定の露光パターンに応じたピット又は案内溝の微細凹凸が形成されてなる光ディスク用のレジスト原盤が得られる。
現像処理としては、酸又はアルカリ等の液体によるウェットプロセスによって選択比を得ることが可能であり、使用目的、用途、装置設備等によって適宜使い分けることが可能である。ウェットプロセスに用いられるアルカリ現像液としては水酸化テトラメチルアンモニウム溶液、KOH、NaOH、Na2CO3等の無機アルカリ水溶液等を用いることができ、酸現像液としては、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸等を用いることができる。
また、本発明者らは、ウェットプロセスの他、プラズマ又は反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching :RIE)と呼ばれるドライプロセスによっても、ガス種及び複数のガスの混合比を調整することにより現像が可能であることを確認した。
ここで、露光感度の調整方法について説明する。例えば化学式WO3で表される遷移金属の酸化物を組成割合W1−xOxに換算した場合、xは0.1より大、0.75未満の範囲内で良好な露光感度が得られる。このとき、x=0.1は、露光工程における大きな照射パワーを要したり、現像処理に長時間を有したりする等の不都合が発生する臨界値である。また、xを0.4〜0.7程度とすることで最も高い露光感度が得られる。
また、化学式MoOで表される遷移金属の酸化物を組成割合Mo1−xOxに換算した場合、xは0.1より大、0.5未満の範囲内で良好な露光感度が得られる。このとき、x=0.1は、露光工程における大きな照射パワーを要したり、現像処理に長時間を有したりする等の不都合が発生する臨界値である。
とくに、単結晶シリコンからなるシリコンウエハのように熱伝導率が大きい基板を用いる場合には、中間層として熱伝導率の比較的低い層を基板上に形成することによって、露光感度を適切に改善することができる。中間層によって露光時のレジスト材料への熱の蓄積が改善されるためである。なお、その中間層を構成する熱伝導率の低いものとして、アモルファスシリコン、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、アルミナ(Al2O3)などが適している。また、その中間層はスパッタリング法やその他の蒸着法によって形成すればよい。
先ず、本発明の遷移金属の不完全酸化物からなる第1のレジスト層30を堆積させる前に、図5A示すように基板31上にこの第1のレジスト層30を構成する遷移金属の不完全酸化物との間で非常に高い選択比が得られる材料を堆積させて第2のレジスト層32とする。
次に、第1のレジスト層30からなるパターンをマスクとして、第2のレジスト層32に選択比の高いエッチング条件でエッチングを行う。これにより、図5Cに示すように、第1のレジスト層30のパターンを第2のレジスト層32に転写する。
最後に、第1のレジスト層30を除去することにより、図5Dに示すように第2のレジスト層32のパターニングが完了する。
また、描画速度の速い紫外線又は可視光を使用可能であるので、電子ビームを用いる従来の無機レジストを用いた光ディスク用原盤の製造方法に比べて、露光に要する時間を大幅に短縮することができる。
また、遷移金属の不完全酸化物からなる無機レジスト材料を用いるので、露光部と未露光部との境界部のパターンが明瞭となり、高精度な微細加工を実現する。また、露光時に露光源そのものでフォーカシングを行うことができるので、高い分解能を得ることができる。
f<0.8λ/NA
したがって、本発明によれば、既存の露光装置をそのまま利用することによって安価で、かつこれまで以上の極微細加工が実現された光ディスク用原盤の供給が可能である。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。
<実施例1>
実施例1では、レジスト材料としてWの3価の不完全酸化物を用い、光ディスク用レジスト原盤を実際に作製した。
先ず、充分に平滑化されたガラス基板上に、スパッタリング法によりWの不完全酸化物からなるレジスト層を均一に成膜した。このとき、Wの単体からなるスパッタターゲットを用い、アルゴンと酸素との混合雰囲気中でスパッタリングを行い、酸素ガス濃度を変えてWの不完全酸化物の酸化度合いを制御した。
堆積したレジスト層をエネルギー分散型X線検出装置(Energy Dispersive X―ray spectrometer:EDX)にて解析したところ、組成割合W1−xOxで表したときにx=0.63であった。また、レジスト層の膜厚は40nmとした。また、屈折率の波長依存性は、分光エリプソメトリック法により測定した。
なお、図6に示す4つのピットのうち、最小のピットは、幅0.15μmであり、長さ0.16μmであった。このように、本発明のレジスト材料を用いた光ディスク用原盤の製造方法によって、従来の有機レジストで期待されるピット幅0.39μmと比較して著しい解像度の向上が可能であるとわかる。また、図6から、ピットのエッジが非常に明瞭なものとなっていることもわかる。
また、現像後のピットの幅及び長さは、露光光源の照射パワー及びパルス幅によって変動することがわかった。
比較例1では、レジスト材料としてWの完全酸化物WO3を用いて光ディスク用レジスト原盤の作製を試みた。
先ず、スパッタリング法により、ガラス基板上に、Wの完全酸化物からなるレジスト層を堆積した。堆積したレジスト層をEDXにて分析したところ、組成割合W1−xOxで表したときにx=0.75であった。なお、透過型電子線顕微鏡による電子線回折の解析結果より、WO不完全酸化物の露光前の結晶状態はアモルファスであることが確認されている。
このレジスト層を実施例1と同等又は充分に強い照射パワーで露光したが、1より大きな選択比が得られず、所望のピットパターンの形成ができなかった。つまり、Wの完全酸化物が露光源に対して光学的に透明であるため、吸収が小さく、レジスト材料の化学的変化を生じせしめるに至らないのである。
実施例2では、レジスト材料としてWの3価とMoの3価との不完全酸化物を用いて図1に示した製造工程に従って光ディスク用レジスト原盤を実際に作製し、最終的に光ディスクを作製した。以下、図1を参照しながら実施内容を説明する。
先ず、シリコンウエハを基板100とし、その基板上に、スパッタリング法によりアモルファスシリコンからなる中間層101を80nmの膜厚で均一に成膜した。ついで、その上にスパッタリング法によりWとMoとの不完全酸化物からなるレジスト層102を均一に成膜した(図1(a))。このとき、WとMoとの不完全酸化物からなるスパッタターゲットを用い、アルゴン雰囲気中でスパッタリングを行った。このとき、堆積したレジスト層をEDXにて解析したところ、成膜されたWとMoとの不完全酸化物におけるWとMoとの比率は80:20であり、酸素の含有率は60at.%であった。また、レジスト層の膜厚は55nmであった。なお、透過型電子線顕微鏡による電子線回折の解析結果より、WMoO不完全酸化物の露光前の結晶状態はアモルファスであることが確認されている。
・露光波長:405nm
・露光光学系の開口数NA:0.95
・変調:17PP
・ビット長:112nm
・トラックピッチ:320nm
・露光時の線速度:4.92m/s
・露光照射パワー:6.0mW
・書込方式:相変化ディスクと同様な簡易書込み方式
その成型用スタンパを用いて射出成型法によって熱可塑性樹脂であるポリカーボネートからなる樹脂製ディスク基板105を成形した(図1(f))。ついで、スタンパを剥離し(図1(g))、その樹脂製ディスク基板の凹凸面にAl合金の反射膜106(図1(h))と膜厚0.1mmの保護膜107とを成膜することにより12cm径の光ディスクを得た(図1(i))。なお、以上のレジスト原盤から光ディスクを得るまでの工程は従来公知の技術で製造した。
つぎに、上記光ディスクを以下の条件で読出し、そのRF信号をアイパターンとして得て、信号評価を行った。その結果を図9A乃至図9Cに示す。
・トラッキングサーボ:プッシュプル法
・変調:17PP
・ビット長:112nm
・トラックピッチ:320nm
・読出し線速度:4.92m/s
・読出し照射パワー:0.4mW
読出したままのアイパターン(図9A)についてコンベンショナル・イコライゼーション処理を行なったアイパターン(図9B)におけるジッタ値は8.0%、リミット・イコライゼーション処理を行なったアイパターン(図9C)におけるジッタ値は4.6%と十分に低い値となっており、記録容量25GBのROMディスクとして実用上問題のない良好な結果が得られた。
なお、本発明で行なわれるレジスト層形成から現像までのフォトリソグラフィ技術は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、Flashメモリ、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific IC)等の半導体デバイス、磁気ヘッド等の磁気デバイス、液晶、EL(Electro Luminescence)、PDP(Plasma Display Panel)等の表示デバイス、光記録媒体、光変調素子等の光デバイス、等の各種デバイスの作製に応用してもよい。
したがって、このような光ディスク用原盤を用いた光ディスクの製造方法では、既存の露光装置を用いた製法によって、記憶容量25GBクラスの高容量の光ディスクを製造することができる。
Claims (13)
- 遷移金属の不完全酸化物を含み、該不完全酸化物は、酸素の含有量が前記遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成の酸素含有量より小さいものであるようなレジスト材料よりなるレジスト層を基板上に成膜した後、該レジスト層を記録用信号パターンに対応させて選択的に露光し、現像して所定の凹凸パターンを形成することを特徴とする光ディスク用原盤の製造方法。
- 前記不完全酸化物がアモルファス無機材料であることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク用原盤の製造方法。
- 上記遷移金属は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Nb、Cu、Ni、Co、Mo、Ta、W、Zr、Ru、Agのうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク用原盤の製造方法。
- 上記遷移金属はMo、Wのいずれか一方または両方であることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク用原盤の製造方法。
- 上記遷移金属の不完全酸化物にはさらに遷移金属以外の他の元素が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク用原盤の製造方法。
- 上記遷移金属以外の他の元素は、Al、C、B、Si、Geのうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項5に記載の光ディスク用原盤の製造方法。
- 紫外線又は可視光により露光することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク用原盤の製造方法。
- 上記紫外線又は可視光は、波長150nm〜410nmであることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク用原盤の製造方法。
- ガラス、プラスチック、シリコン、アルミナチタンカーバイド、ニッケルのうち少なくとも1種からなる基板上に上記レジスト層を形成することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク用原盤の製造方法。
- 前記基板と前記レジスト層との間に、基板よりも熱伝導率が小さい中間層を形成することを特徴とする請求項9に記載の光ディスク用原盤の製造方法。
- 上記中間層は、アモルファスシリコン、二酸化ケイ素、窒化シリコン、アルミナのうち少なくとも1種からなる薄膜であることを特徴とする請求項10に記載の光ディスク用原盤の製造方法。
- スパッタリング法又は蒸着法により上記レジスト層を形成することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク用原盤の製造方法。
- 遷移金属の不完全酸化物を含み、該不完全酸化物は、酸素の含有量が前記遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成の酸素含有量より小さいものであるようなレジスト材料よりなるレジスト層を基板上に成膜した後、該レジスト層を記録用信号パターンに対応させて選択的に露光し、現像して所定の凹凸パターンが形成された原盤を用いて、その凹凸パターンが転写されたディスクを作製することを特徴とする光ディスクの製造方法。
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