JP4534417B2 - スパッタターゲットの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属の非飽和酸化物からなるスパッタターゲットの製造方法及びスパッタターゲットに関するもので、特に、無機レジスト薄膜形成用スパッタターゲットの製造方法関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、DVD(Degital Versatile Disc)などの光ディスクは記録媒体として幅広い分野で使用されるようになった。
この光ディスクは、ポリカーボネート等の光学的に透明な基板の一主面上に情報信号を示すピットやグルーブ等の微細な凹凸パターンが形成され、その上にアルミニウム等の金属薄膜からなる反射膜が形成され、さらにその反射膜上に保護膜が形成された構造を有しており、有機レジストを用いた従来公知のリソグラフィ技術によって製造される(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような構造の光ディスクとして、直径12cmの読み取り専用光ディスク(DVD−ROM)の片面に4.7GBの情報容量を有するものが登場してきているが、近年ではさらにその数倍の記録容量が要求されている。
【0004】
上記構造の記録媒体では、上記凹凸パターンをより微細化させることによって記録密度を増大させ、ひいては記録容量の増大を図ることが可能であるが、この微細凹凸パターンは、微細凹凸パターンが高精度に形成されたスタンパを用いて、基板上に忠実に且つ即座に当該パターンを複製するプロセスを経ることにより作製されるものであり、さらにさかのぼれば、レジスト層にレーザ光による露光を行って潜像を形成する、いわゆるカッティングにより如何に微細な凹凸パターンを形成できるかによって決定される。
【0005】
例えば、先に述べた情報容量4.7GBの読み取り専用DVD(DVD−ROM)においては、スタンパ上に最短ピット長0.4μm、トラックピッチ0.74μmのピット列がスパイラル状に形成されるようにカッティングが施されている。そのカッティングには、波長413nmのレーザと、開口数NAとして0.90前後(例えば0.95)の対物レンズとが用いられている。
【0006】
ところで、光源の波長をλ(μm)とし、対物レンズの開口数をNAとすると、露光される最短ピット長P(μm)は、以下の式(1)で表される。なお、Kは比例定数である。
P=K・λ/NA …(1)
ここで、光源の波長λ、対物レンズの開口数NAは光源となるレーザ装置の仕様によって決まる項目であり、比例定数Kはレーザ装置とレジスト原盤との組み合せで決まる項目である。
【0007】
前記情報容量4.7GBの光ディスクを作製する場合には、波長0.413μm、開口数NAを0.90、最短ピット長が0.40μmであるため、上記式(1)より比例定数K=0.87となる。
【0008】
これに対して、上記25GBの光ディスクの要求に応えるためには、最短ピット長を0.17μm、トラックピッチを0.32μm程度にまで微細化する必要がある。
【0009】
一般的には、先に述べた凹凸パターンの微細化(極微細ピットの形成)は、レーザ波長の短波長化によって達成することが有効とされる。すなわち、片面25GBの高密度光ディスクに要求される最短ピット長0.17μm程度を得るためには、比例定数はK=0.87とし、開口数NA=0.95とした場合、レーザ波長としてλ=0.18μmの光源が必要となる。
【0010】
ここで必要となる波長0.18μmは、次世代半導体リソグラフィ用の光源として開発されている波長193nmのArFレーザよりも短波長である。このような短波長を実現する露光装置は、光源となるレーザのみならずレンズ等の光学部品についても特殊なものが必要となり、非常に高価なものとなる。すなわち、露光波長λの短波長化と対物レンズの開口数NAの大口径化とによって光学的な解像度を上げて極微細加工に対応する手法は、微細化の進展に伴って既存の露光装置が使用できなくなる代わりに高価な露光装置を導入せざるを得ないために、安価なデバイス供給達成には極めて不向きである。したがって、露光装置におけるレーザ装置の高機能化による光ディスクの記憶容量の増大には限界があった。
【0011】
また、現在では、例えばノボラック系レジスト、化学増幅レジスト等の有機レジストと、露光源として紫外線とを組み合せた露光方法が一般的に広く行われている。有機レジストは、汎用性がありフォトリソグラフィの分野で広く用いられているものであるが、分子量が高いことに起因して露光部と未露光部との境界部のパターンが不明瞭となり、25GBレベルの高容量の光ディスクに対応する微細加工には精度面で問題があった。
【0012】
これに対して、無機レジスト、特にアモルファス無機レジストは、最小構造単位が原子レベルのサイズであるため、露光部と未露光部との境界部で明瞭なパターンが得られ、有機レジストに比較して高精度の微細加工が可能であり、高容量の光ディスクへの適用が有望と考えられている。これには、MoOやWO等をレジスト材料として用い、露光源としてイオンビームを用いた微細加工例がある(例えば、非特許文献1参照。)。また、SiOをレジスト材料として用い、露光源として電子ビームを用いる加工例がある(例えば、非特許文献2参照。)。さらに、カルコゲナイドガラスをレジスト材料として用い、露光源として波長476nm及び波長532nmのレーザ並びに水銀キセノンランプからの紫外光を用いる方法も検討されている(例えば、非特許文献3参照。)。
【0013】
【特許文献1】
特開2001−195791号公報(段落[0002]〜[0006])
【非特許文献1】
Nobuyoshi Koshida, Kazuyoshi Yoshida, Shinichi Watanuki, Masanori Komuro and Nobufumi Atoda : “50-nm Metal Line Fabrication by Focused Ion Beam and Oxide Resists “, Jpn.J.Appl.Phys.Vol.30 (1991) pp3246
【非特許文献2】
Sucheta M. Gorwadkar, Toshimi Wada, Satoshi Hiraichi, Hiroshi Hiroshima, Kenichi Ishii and Masanori Komuro : “ SiO2/c-Si Bilayer Electron-Beam Resist Process for Nano-Fabrication”, Jpn.J.Appl.Phys.Vol.35 (1996 )pp6673
【非特許文献3】
S. A. Kostyukevych : “Investifations and modelling of physical processes in inorganic resists for the use in UV and laser lithography“, SPIE Vol.3424 (1998) pp20
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、露光源としてイオンビームや電子ビームを用いる場合には上述のように多種類の無機レジスト材料を組み合せることができ、電子線又はイオンビームを細く収束することによって凹凸パターンの微細化も可能であるが、電子線及びイオンビーム照射源を搭載する装置は構造として複雑で、かつ極めて高価であるため、安価な光ディスク供給には不向きである。
【0015】
その点では既存の露光装置に搭載されているレーザ装置などの光、すなわち紫外線又は可視光が利用できることが望ましいが、無機レジスト材料の中で紫外線又は可視光でカッティング可能な材料は限られており、これまで報告がある中ではカルコゲナイド材料のみである。これは、カルコゲナイド材料以外の無機レジスト材料においては紫外線又は可視光は透過してしまい、光エネルギーの吸収が著しく少なく実用的でないためである。
【0016】
既存の露光装置とカルコゲナイド材料との組み合せは経済的な面では実用的な組み合せではあるが、カルコゲナイド材料はAg、Ag−As、AgSe−GeSe等の人体に有害な材料を含むという問題点があり、工業生産の観点からその使用は困難である。
以上のように、これまでのところ既存の露光装置による高記録容量の光ディスクの製造は実現されていない。
【0017】
本発明は、このような従来の問題点を解決するために提案されたものであり、電子ビームやイオンビーム等の高価な照射装置を用いることなく、高精度の微細加工を実現する安全なレジスト材料を用い、既存の露光装置を利用して光ディスクのさらなる高記憶容量化を実現することが可能な光ディスク用原盤の製造に供されるスパッタターゲットの製造方法及びスパッタターゲットを提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、金属粉末を少なくとも1種と金属酸化物粉末を少なくとも1種とを混合し、あるいは価数の異なる複数種の金属の酸化物粉末を混合し、該混合物を加圧焼結して金属の非飽和酸化物からなるスパッタターゲットとすることを特徴とするスパッタターゲットの製造方法としてもよい。
【0019】
発明者らは、無機レジスト材料のうち、遷移金属酸化物の化学量論組成から僅かでも酸素含有量がずれるとこの酸化物の紫外線又は可視光に対する吸収が突然大きくなるとともに、紫外線又は可視光を吸収することによりその化学的性質が変化することに着想を得て、現行の露光装置のままで高記録容量化の要求に対応可能な新しいレジスト材料及び光ディスク用原盤の製造方法を開発した。
【0020】
この製造方法のうち、レジスト層形成工程では遷移金属の単体からなるスパッタターゲットを用いて、アルゴン及び酸素雰囲気中でスパッタリング法により成膜を行う反応性スパッタリング方法によってレジスト層を形成する。この場合には、真空雰囲気中の酸素ガス濃度を変えることにより、遷移金属の非飽和酸化物の酸化度合いを制御する。また、2種類以上の遷移金属を含む遷移金属の非飽和酸化物を含むレジスト層とする場合もあるが、異なる種類のスパッタターゲット上で基板を常に回転させながらスパッタリングすることにより複数種類の遷移金属を成膜時に混合させる方法が一般的である。なお、その混合割合は、それぞれのスパッタ投入パワーを変えることにより制御する。
【0021】
このように形成された遷移金属の非飽和酸化物からなるレジスト層を用いた光ディスク用原盤の製造方法によって、これまでと同じ信号処理方式により直径12cmの光ディスクの片面への25GBの情報容量の確保が達成されている。
【0022】
ここで、レジスト層形成に関し、上記反応性スパッタリング法では酸化度合いを一定に保つために成膜装置の酸素ガス導入量の変化や排気性能の経時変化に対する高精度な制御を行っている。特に、2種類以上の遷移金属からなる合金ターゲットを用いた反応性スパッタリングでは、金属の種類によって酸素との反応速度が異なるため、その調整が必要であった。
【0023】
そこで、本発明は導入ガスや投入パワーなどのスパッタ成膜条件の制御を容易にすることによって、レジスト層の厚さ方向で非飽和酸化物の状態をより安定化させ、これによってレジスト層の露光感度もより安定となり、ひいては現像後のピットサイズをより安定させることを目的として開発されたものである。
【0024】
前記方法の発明により、スパッタ成膜時に酸素ガスの導入を必要とせずに金属の非飽和酸化物層を形成することができるスパッタターゲットを製造することができる。
なお、ここでいう金属とは、原子番号21(Sc)から30(Zn)まで、原子番号39(Y)から48(Cd)まで、原子番号57(La)から80(Hg)まで、及びSiをいう。
また、ここでは光ディスクを例に説明したが、発明者らが開発したレジスト層形成から現像までのフォトリソグラフィ技術に供されるスパッタターゲットの製造方法及びスパッタターゲットは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、Flashメモリ、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific IC)等の半導体デバイス、磁気ヘッド等の磁気デバイス、液晶、EL(Electro Luminescence)、PDP(Plasma Display Panel)等の表示デバイス、光記録媒体、光変調素子等の光デバイス、等の各種デバイスの作製に応用することもできる。
【0025】
前記課題を解決するために提供する請求項の発明は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Nb、Cu、Ni、Co、Mo、Ta、W、Zr、Ru、Agのうち、酸化物状態の融点が金属状態の融点よりも低い遷移金属の金属粉末と酸化物粉末とを混合し、該混合物を加圧焼結する際に、該遷移金属の酸化物粉末を加圧焼結して完全酸化物のスパッタターゲットとする際の焼成温度よりも高い温度で焼成することを特徴とする金属の不完全酸化物からなるスパッタターゲットの製造方法である。
【0026】
この方法により、スパッタ成膜時に酸素ガスの導入を必要とせずに遷移金属の非飽和酸化物であるレジスト層を形成することが可能なスパッタターゲットを製造することができる。特に、各種デバイスの高記録容量化を可能とするフォトリソグラフィ技術に対応したレジスト層(遷移金属の非飽和酸化物)をスパッタ成膜時に酸素ガスの導入を必要とせずに形成することができるスパッタターゲットが製造可能となる。
また、この方法により、同一元素の遷移金属の金属粉末と酸化物粉末との混合物を原材料とする場合に、その遷移金属の金属状態の融点と酸化物状態の融点との関係を考慮して焼成温度を設定することによって、密度や強度の十分なスパッタターゲットを得ることが可能となる。
【0027】
前記課題を解決するために提供する請求項の発明に係るスパッタターゲットの製造方法は、請求項1の発明において、上記遷移金属の金属粉末と酸化物粉末との混合比により上記加圧焼結後の酸素の含有量を調整することを特徴とする。
【0028】
この方法において、混合物の混合比を調整して所定の酸素含有量のスパッタターゲットとすることにより、スパッタ成膜時に形成されるレジスト層の酸化度合いを精度よく決定することができ、従来の反応性スパッタリング法によるものよりも容易で安定して目標の酸化度合いとすることができる。
なお、ここでいう加圧焼結後の酸素の含有量はレジスト層の目標酸素含有量とするのが一般的である。
【0029】
前記課題を解決するために提供する請求項の発明に係るスパッタターゲットの製造方法は、請求項1の発明において、上記遷移金属はMo、Wのいずれか一方または両方であることを特徴とする。
【0030】
この方法により、各種デバイスの高記録容量化を可能とするフォトリソグラフィ技術に対応したレジスト層(遷移金属の非飽和酸化物)をスパッタ成膜時に酸素ガスの導入を必要とせずに形成することができるスパッタターゲットが製造可能となる。
【0031】
前記課題を解決するために提供する請求項の発明に係るスパッタターゲットの製造方法は、請求項1〜3のうちいずれか一の発明において、上記混合物にさらに遷移金属以外の他の元素の粉末が添加されていることを特徴とする。
【0032】
この方法により、スパッタ成膜時に形成されるレジスト層を構成する遷移金属の非飽和酸化物の結晶粒を小さくし、該レジスト層の表面租度を小さくすることにより分解能が大幅に向上し、さらに露光感度が改善されるスパッタターゲットの製造が可能となる。
なお、ここで遷移金属以外の他の元素とは、Al、C、B、Si、Ge等のうち少なくとも1種である。
【0033】
前記課題を解決するために提供する請求項の発明は、少なくとも同一元素で価数の異なる複数種の遷移金属の酸化物粉末を混合し、該混合物を加圧焼結する際に、上記価数の異なる複数種の遷移金属の酸化物粉末の混合比及び焼成温度により上記加圧焼結後の酸素の含有量を調整することを特徴とする金属の不完全酸化物からなるスパッタターゲットの製造方法である。
【0034】
この方法により、所定の酸素含有量のスパッタターゲットとすることにより、スパッタ成膜時に形成されるレジスト層の酸化度合いを精度よく決定することができ、従来の反応性スパッタリング法によるものよりも容易で安定して目標の酸化度合いとすることができる。
【0035】
前記課題を解決するために提供する請求項の発明に係るスパッタターゲットの製造方法は、請求項の発明において、上記遷移金属はMo、Wのいずれかであることを特徴とする。この方法により、各種デバイスの高記録容量化を可能とするフォトリソグラフィ技術に対応したレジスト層(遷移金属の非飽和酸化物)をスパッタ成膜時に酸素ガスの導入を必要とせずに形成することができるスパッタターゲットが製造可能となる。
【0036】
前記課題を解決するために提供する請求項7の発明に係るスパッタターゲットの製造方法は、請求項5または6の発明において、上記混合物にさらに遷移金属以外の他の元素の粉末が添加されていることを特徴とする。
この方法により、スパッタ成膜時に形成されるレジスト層を構成する遷移金属の非飽和酸化物の結晶粒を小さくし、該レジスト層の表面租度を小さくすることにより分解能が大幅に向上し、さらに露光感度が改善されるスパッタターゲットの製造が可能となる。
なお、ここで遷移金属以外の他の元素とは、Al、C、B、Si、Ge等のうち少なくとも1種である。
【0051】
【発明の実施の形態】
まず、この本発明の前提となる無機レジスト材料を用いた光ディスクの製造方法を説明する。この製造方法は、遷移金属の非飽和酸化物を含み、該非飽和酸化物は、酸素の含有量が前記遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成の酸素含有量より小さいものであるようなレジスト材料よりなるレジスト層を基板上に成膜した後、該レジスト層を記録用信号パターンに対応させて選択的に露光し、現像して所定の凹凸パターンを形成する方法である。
【0052】
その製造工程の概要を図1に基いて以下に説明する。
先ず、基板100の上に所定の無機系のレジスト材料からなるレジスト層102を均一に成膜する(レジスト層形成工程、図1(a))。また、レジスト層102の記録感度の改善のために基板100とレジスト層102との間に所定の中間層101を形成してもよい。図1(a)ではその状態を示している。なお、レジスト層102の膜厚は任意に設定可能であるが、10nm〜80nmの範囲内が好ましい。
【0053】
ついで、既存のレーザ装置を備えた露光装置を利用してレジスト層102に信号パターンに対応した選択的な露光を施し感光させる(レジスト層露光工程、図1(b))。このとき、レジスト層102である遷移金属の非飽和酸化物は、紫外線又は可視光に対して吸収を示し、紫外線又は可視光を照射されることでその化学的性質が変化している。
さらに、レジスト層102を現像することによって所定の凹凸パターンが形成された原盤103を得る(レジスト層現像工程、図1(c))。ここでは、無機レジストでありながら酸またはアルカリ水溶液に対して露光部と未露光部とでエッチング速度に差が生じる、いわゆる選択比が得られることを利用して現像を行う。
【0054】
つぎに、電鋳法によって原盤103の凹凸パターン面上に金属ニッケル膜を析出させ(図1(d))、これを原盤103から剥離させた後に所定の加工を施し、原盤103の凹凸パターンが転写された成型用スタンパ104を得る(図1(e))。
【0055】
その成型用スタンパ104を用いて射出成型法によって熱可塑性樹脂であるポリカーボネートからなる樹脂製ディスク105を複製する(図1(f))。ついで、その樹脂製ディスク105の凹凸面にAl合金の反射膜106(図1(h))と保護膜107とを成膜することにより光ディスクを得る(図1(i))。
【0056】
以下、本発明を適用したレジスト材料形成に用いるスパッタターゲットについて詳細に説明する。
(スパッタターゲット)
本発明のスパッタターゲットは、遷移金属粉末と遷移金属酸化物粉末との混合物、あるいは、価数の異なる遷移金属酸化物粉末の混合物を加圧焼成することにより形成されるものであり、通常、所定の直径と厚みをもった円盤形状をとる。ここで、遷移金属の非飽和酸化物は、遷移金属のとりうる最大の価数に対応した化学量論組成より酸素含有量が少ない方向にずれた化合物のこと、すなわち遷移金属の非飽和酸化物における酸素の含有量が、上記遷移金属のとりうる最大価数に対応した化学量論組成の酸素含有量より小さい化合物のことと定義する。
【0057】
例えば、遷移金属の酸化物として化学式MoO3を例に挙げて説明する。化学式MoOの酸化状態を組成割合Mo1-xxに換算すると、x=0.75の場合が飽和酸化物であるのに対して、0<x<0.75で表される場合に化学量論組成より酸素含有量が不足した非飽和酸化物であるといえる。
【0058】
また、遷移金属では1つの元素が価数の異なる酸化物を形成可能なものがあり、例えばMoは、先に述べた6価が最大価数であり、その他に2価の酸化物(MoO)も存在する。この場合には組成割合Mo1-xxに換算すると、x=0.5であり、先ほどの、x=0.75未満に該当するため非飽和酸化物であるといえる。なお、遷移金属酸化物の価数は、市販の分析装置で分析可能である。
【0059】
スパッタターゲットを構成する具体的な遷移金属としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Nb、Cu、Ni、Co、Mo、Ta、W、Zr、Ru、Ag等が挙げられる。この中でも、Mo、W、Cr、Fe、Nbを用いることが好ましく、紫外線又は可視光により大きな化学的変化を得られるといった見地から特にMo、Wを用いることが好ましい。
【0060】
遷移金属の非飽和酸化物としては、1種の遷移金属の非飽和酸化物の他に、第2の遷移金属を添加したもの、さらに複数種類の遷移金属を添加したもの、遷移金属以外の他の元素が添加されたもの等のいずれも、本発明の範囲に含めることにする。
なお、1種の遷移金属の非飽和酸化物の他に、第2の遷移金属を添加したもの、さらに3種以上の遷移金属を添加したものの場合、結晶構造のある1種の遷移金属原子の一部が他の遷移金属原子で置換されたものと考えられるが、これら複数種類の遷移金属がとりうる化学量論組成に対して酸素含有量が不足しているか否かで非飽和酸化物かどうかを判断することとする。
【0061】
また、遷移金属以外の他の元素としては、Al、C、B、Si、Ge等のうち少なくとも1種を含有してもよい。2種以上の遷移金属を組み合せて焼結されることで、あるいは遷移金属以外の他の元素が添加されることにより、このターゲットを用いて形成されたレジスト層は遷移金属の非飽和酸化物の結晶粒が小さくなり、膜の表面租度が小さくなるため、露光部と未露光部との境界部がさらに明瞭となり、分解能の大幅な向上が図られる。また、露光感度を改善することもできる。
【0062】
(製造方法)
本発明に係るスパッタターゲットを製造する手順を以下に説明する。
(s1)秤量・混合
2種類以上の原材料の粉末についてそれぞれを所定量秤量した後、乾式混合を行なう。ここで用いられる原材料粉末としては、少なくとも同一元素の遷移金属の金属粉末と酸化物粉末との組み合せ、あるいは同一元素で価数の異なる2種の遷移金属の酸化物粉末の組み合せが含まれる。この他に上記遷移金属とは異なる遷移金属の金属粉末や酸化物粉末が含まれてもよいし、遷移金属以外の他の元素の金属粉末が含まれてもよい。
また、秤量されるそれぞれの粉末の所定量とは、混合され加圧焼結後に目標とする非飽和酸化物の酸素の含有量となるように混合比が考慮されて決定される。
【0063】
(s2)加圧焼結
得られた混合粉末をカーボン製の型に投入しホットプレス装置によって加圧焼成を行なう。ここでは、ホットプレス装置は一般的に使用されているものでよく、一定圧力及び一定の焼成温度で、非酸素雰囲気中にて所定時間の焼成が行なわれる。
なお、酸化物状態の融点が金属状態の融点よりも低い遷移金属について、その金属粉末と酸化物粉末とを混合して加圧焼成する場合の焼成温度は、その遷移金属の酸化物粉末だけを加圧焼成してスパッタターゲットを得る際の焼成温度よりも高く設定される。この設定が適用される遷移金属は、Ti、V、Fe、Nb、Mo、Ta、Wなどである。
また、同一元素で価数の異なる2種の遷移金属の酸化物粉末の混合物を加圧焼結する場合には、予め求めておいた遷移金属の種類、その酸化物粉末の混合比、焼成温度と焼結後の酸素含有量との関係から加圧焼結後に目標とする非飽和酸化物の酸素の含有量となるように焼成温度が設定される。
【0064】
(s3)仕上げ加工
加圧焼結が終了した焼成体は所定サイズの円盤形状になるように機械加工が施され、スパッタターゲットとして完成する。
【0065】
以下、本発明の製造方法によって遷移金属WとMoとからなる(WMo)1-xx酸化物のスパッタターゲットを実際に作製した例、及びそのスパッタターゲットを用いて光ディスクを作製した例を示す。
なお、W、Moそれぞれが飽和酸化物となった場合には、WO3およびMoO3の組成を有する。従って、WMo合金の場合にも飽和酸化物の場合は(WMo)O3という組成になり、(W100-yMoy100-xx(x,y:atomic%)という形で記述した場合には、x=75となる。
【0066】
(実施例1)
実施例1に、同一元素の遷移金属の金属粉末と酸化物粉末との混合物を原料として、WMo合金の非飽和酸化物(目標ターゲット組成(W80Mo203070、及び(W80Mo203565)のスパッタターゲットを作製した例を示す。
作製に当たっては前述した本発明の製造工程に従い、各工程の条件は次の通りとした。
(1)原材料:W粉末、WO3粉末、MoO3粉末
(2)目標ターゲット組成:
(W80Mo203070、及び(W80Mo203565の2種類
(3)焼結条件:
・圧力:24.5MPa
・焼成温度:873Kから1263Kまでの間の一定温度
(焼成温度を変化させて作製)
(4)ターゲットサイズ:直径38mm、厚さ5mm
なお、比較例1として、WO3粉末とMoO3粉末との混合物から実施例と同じ条件で飽和酸化物である(W80Mo202575のスパッタターゲットを作成した。
【0067】
作製したスパッタターゲットについて、理論密度に対する相対密度(%)、機械的強度の指標として抗折強度(MPa)の測定、組成の分析を行なった。その結果を図2〜6に示す。
(相対密度)
実施例1に係る非飽和酸化物の場合には、同一焼成温度では酸素の含有量の減少とともに相対密度が低下する傾向を示した。ここで、相対密度とは、作成したターゲットの直径、厚さ、重量から算出した密度の理論密度に対する割合であり、理論密度は、ターゲット組成の各元素について重量を算出し、この重量の総和をターゲット体積で除すことにより求めた。
スパッタターゲットとして、スパッタレートなどを安定に保つために望ましい相対密度80%以上という観点で実施例1の結果を見ると、目標ターゲット組成(W80Mo203070の場合、焼成温度873Kでそれが達成されていた(図2)。目標ターゲット組成(W80Mo203565の場合には、より高い焼成温度が必要となり、1033K以上で達成されていた(図3)。
なお、比較例1である2種の金属元素(W、Mo)を含む飽和酸化物の場合には、焼成温度が873Kと比較的低い温度においても相対密度が100%であった(図4)。
【0068】
(抗折強度)
抗折強度についても、実施例1に係る非飽和酸化物の場合では同様の傾向が認められ(図2、3)、酸素含有量が少なく、かつ焼成温度が低いと十分な強度が得られず、比較例1(飽和酸化物ターゲット)の焼成温度(図4)よりも高い温度での焼成が必要であった。
実施例1における混合物(W+WO3+MoO3)の焼結体が所定の相対密度及び抗折強度を得るために、比較例1における混合物(WO3+MoO3)の焼結体よりも高い焼成温度を必要とするのは、遷移金属Wの酸化物WO3(融点1746K以下で不確定)よりも融点の高い金属W(融点3673K)が含まれるためと推察される。
【0069】
(組成)
実施例1で作製されたターゲットの組成分析結果を図5に示す。実施例1のいずれの組成においても焼成温度によらず、原材料混合比(目標ターゲット組成)と同一の組成が安定して得られていた。しかし、図6に示す比較例1の組成については、焼成温度によって酸素含有量が変化し、原材料混合比(目標ターゲット組成)との相違が認められた。
【0070】
(実施例2)
実施例2に、同一元素で価数の異なる2種の遷移金属の酸化物粉末を原料として、WMo合金の非飽和酸化物(目標ターゲット組成(W80Mo203070)のスパッタターゲットを作製した例を示す。
作製に当たっては前述した本発明の製造工程に従い、各工程の条件は次の通りとした。
(1)原材料:WO2粉末、WO3粉末、MoO3粉末
(2)目標ターゲット組成:(W80Mo203070
(3)焼結条件:
・圧力:24.5MPa
・焼成温度:1193Kから1473Kまでの間の一定温度
(焼成温度を変化させて作製)
(4)ターゲットサイズ:直径38mm、厚さ5mm
【0071】
作製したスパッタターゲットについて、組成の分析を行なった結果を図7に示す。
実施例1の場合と異なり、焼成温度が高くなるに従って酸素含有量が減少し、W及びMo含有量が相対的に増加する傾向が認められた。実施例1のようにW粉末などの金属粉末が添加されている場合には、その金属粉末が離脱酸素と反応し酸化される結果として、焼結体全体としては酸素含有量が変化しないものと思われる。これに対して、実施例2および比較例1のようにW粉末などの金属粉末を用いない場合には、焼成時の環境で酸素の離脱が生じ、焼結体全体としての酸素含有量が減少するものと考えられる。
【0072】
遷移金属の非飽和酸化物のスパッタターゲットを作製する上で、金属の種類や粉末の状態(酸化物粉末、金属粉末)により入手性やコストが大きく異なるため、金属種類の組み合せの仕方や金属粉末、酸化物粉末の添加の仕方などにより原材料としていろいろな種類の粉末混合物を用いる場合が考えられるが、単にそれらを目標組成に合わせた混合物として一般的な焼成温度で焼結しただけでは組成の安定した、あるいは密度や強度の十分なスパッタターゲットを得ることはできない。
【0073】
同一元素の遷移金属の金属粉末と酸化物粉末との混合物を原材料とする場合には、本発明である実施例1に示したように、その遷移金属の金属状態の融点と酸化物状態の融点との関係を考慮して焼成温度を設定することによって、混合物としての酸素含有量と、最終的な焼結体としての目標酸素含有量を同等にした、密度や強度の十分なスパッタターゲットを得ることが可能である。
【0074】
同一元素で価数の異なる2種の遷移金属の酸化物粉末の混合物とする場合には、本発明である実施例2に示したように、その遷移金属の酸化物粉末の混合比によって決まる混合物としての酸素含有量と、最終的な焼結体としての目標酸素含有量とを考慮して焼成温度を設定することによって、組成の安定したスパッタターゲットを得ることが可能である。具体的には、先に原材料の混合比を所望の値に決め、ついでその混合比から変化して目標酸素含有量となる焼成温度にするとよい。あるいは、先に焼成温度を決め、ついで原材料の混合比を焼成により変化する分を加味した混合比にしてもよい。
【0075】
(実施例3)
上述の実施例1で得られたターゲット組成(W80Mo203070のスパッタターゲットを用いて、基板上にレジスト材料を成膜した後、所定の処理を行い、記録容量25GBの光ディスクを作製した。
具体的には、つぎの手順で光ディスク作製を行った。
【0076】
先ず、シリコンウエハを基板とし、その基板上に、スパッタリング法によりアモルファスシリコンからなる中間層を80nmの膜厚で均一に成膜した。ついで、その上にスパッタリング法によりWとMoとの非飽和酸化物からなるレジスト層102を均一に成膜した。このとき、実施例1で得られたターゲット組成(W80Mo203070のスパッタターゲットを用い、アルゴン雰囲気中でスパッタリングを行った。なお、スパッタ成膜中にスパッタリング装置のチャンバー内の真空度の変動が認められたが、アルゴンスパッタによってスパッタターゲットの構成物をその組成のまま析出させる方式であるため、レジスト層の組成は安定していた。
【0077】
また、堆積したレジスト層をEDXにて解析したところ、成膜されたWとMoとの非飽和酸化物におけるWとMoとの比率は80:20であり、酸素の含有率は70at.%であった。また、レジスト層の膜厚は55nmであった。なお、透過型電子線顕微鏡による電子線回折の解析結果より、WMoO非飽和酸化物の露光前の結晶状態はアモルファスであることが確認されている。
【0078】
つぎに、レジスト層が形成された基板を図8に示す露光装置にセットし、ビーム発生源12からレーザ光を照射すると同時にターンテーブル11を回転させて、レジスト層に対して25GBの信号を記録する露光を行った。この露光は、ターンテーブル11を回転させながら、レジスト基板1の半径方向にターンテーブル11を連続的に僅かな距離ずつ移動させることによって、微細凹凸の潜像として情報データ用凹凸ピット及び案内溝の蛇行を形成した。
【0079】
このときの露光条件を以下に示す。
・露光波長:0.405nm
・露光光学系の開口数NA:0.95
・変調:17PP
・ビット長:112nm
・トラックピッチ:320nm
・露光時の線速度:4.92m/s
・露光照射パワー:6.0mW
・書込方式:相変化ディスクと同様な簡易書込み方式
【0080】
つぎに、露光の終了したレジスト基板を、アルカリ現像液によるウェットプロセスにより現像した。この現像工程では、レジスト基板を現像液に浸したまま、エッチングの均一性を向上させるために超音波を加えた状態で現像を行い、現像終了後には純水及びイソプロピルアルコールにより充分に洗浄し、エアブロー等で乾燥させてプロセスを終了した。アルカリ現像液としてはテトラメチルアンモニウム水酸化溶液を用い、現像時間は30分とした。
【0081】
図9に、現像後のレジスト基板表面のピット形状をSEMにて観察した結果を示す。WとMoとの非飽和酸化物からなるレジスト材料はポジティブタイプのレジストとなり、図9ではピット部分が露光部に対応し、未露光部のレジスト層に対して凹となっている。また、形成されたピット長(径)は約130nmであり、片面25GBの高密度光ディスクに要求される最短ピット長170nm(0.17μm)以下を達成していることが確認された。さらに、レジストパターンとして、150nm長のピット、幅130nmの線状のピットなどが実際の信号パターンに対応する状態でピットが形成されている様子が観察された。
【0082】
つぎに、電鋳法によってレジスト原盤の凹凸パターン面上に金属ニッケル膜を析出させ、これをレジスト原盤から剥離させた後に所定の加工を施し、レジスト原盤の凹凸パターンが転写された成型用スタンパを得た。
最後に、得られた成型用スタンパを用いて射出成型法によって熱可塑性樹脂であるポリカーボネートからなる樹脂製ディスクを複製し、その樹脂製ディスクの凹凸面にAl合金の反射膜と膜厚0.1mmの保護膜とを成膜することにより12cm径の光ディスク(DVD−ROM)を得た。なお、以上のレジスト原盤から光ディスクを得るまでの工程は従来公知の技術で製造した。
【0083】
(比較例2)
上記実施例における光ディスクの製造工程のうち、レジスト層形成工程において本発明のスパッタターゲットを用いず、従来の通り、Wの単体からなるスパッタターゲットとMoの単体からなるスパッタターゲットとを並べて設置し、それらの上で基板を回転させながらアルゴンと酸素との混合雰囲気中でスパッタリングを行い、実施例3と同じ組成を目標としてWMoO非飽和酸化物からなるレジスト層を形成した。
【0084】
このとき、WMoの非飽和酸化物の酸化度合いを一定に保つためにスパッタリング装置のスパッタ投入パワーと、チャンバー内の排気速度と、アルゴン、酸素の混合ガスの導入量とを調整した。原則として、チャンバー内の真空度が一定となるように混合ガス導入量を制御したが、スパッタ成膜中に真空度が1〜10Paの範囲内で変動することがあり、レジスト膜中において酸素含有量が変動している可能性をうかがわせた。また、それ以外の製造条件は実施例3と同じとして光ディスクを製造した。
なお、レジスト層現像工程終了後にレジスト基板表面の状態を観察したところ、SEM観察の視野では実施例3の場合と同様に片面25GBの高密度光ディスク相当のピットが形成されていることが観察された。
【0085】
上記実施例3で得られた記録容量25GBの光ディスクについて、以下の条件で読出し、そのRF信号をアイパターンとして得て、信号評価を行った。その結果を図10に示す。
・トラッキングサーボ:プッシュプル法
・変調:17PP
・ビット長:112nm
・トラックピッチ:320nm
・読出し線速度:4.92m/s
・読出し照射パワー:0.4mW
【0086】
読出したままのアイパターン(図10(a))についてコンベンショナル・イコライゼーション処理を行なったアイパターン(図10(b))におけるジッタ値は8.6%、リミット・イコライゼーション処理を行なったアイパターン(図10(c))におけるジッタ値は4.9%と十分に低い値となっており、記録容量25GBのROMディスクとして実用上問題のない良好な結果が得られた。
なお、比較例2で得られた光ディスクもコンベンショナル・イコライゼーション処理を行なったアイパターンにおけるジッタ値は8.0%、リミット・イコライゼーション処理を行なったアイパターンにおけるジッタ値は4.6%となり、実施例3とほぼ同等のジッタ値を示した。
【0087】
【発明の効果】
請求項1の方法の発明により、スパッタ成膜時に酸素ガスの導入を必要とせずに遷移金属の非飽和酸化物であるレジスト層を形成することが可能なスパッタターゲットを製造することができる。特に、各種デバイスの高記録容量化を可能とするフォトリソグラフィ技術に対応したレジスト層(遷移金属の非飽和酸化物)をスパッタ成膜時に酸素ガスの導入を必要とせずに形成することができるスパッタターゲットが製造可能となる。
また、同一元素の遷移金属の金属粉末と酸化物粉末との混合物を原材料とする場合に、その遷移金属の金属状態の融点と酸化物状態の融点との関係を考慮して焼成温度を設定することによって、密度や強度の十分なスパッタターゲットを得ることが可能となる。
また、請求項2の方法の発明において、混合物の混合比を調整して所定の酸素含有量のスパッタターゲットとすることにより、スパッタ成膜時に形成されるレジスト層の酸化度合いを精度よく決定することができ、従来の反応性スパッタリング法によるものよりも容易で安定して目標の酸化度合いとすることができる。
また、請求項3の方法の発明により、各種デバイスの高記録容量化を可能とするフォトリソグラフィ技術に対応したレジスト層(遷移金属の非飽和酸化物)をスパッタ成膜時に酸素ガスの導入を必要とせずに形成することができるスパッタターゲットが製造可能となる。
また、請求項の方法の発明により、スパッタ成膜時に形成されるレジスト層を構成する遷移金属の非飽和酸化物の結晶粒を小さくし、該レジスト層の表面租度を小さくすることにより分解能が大幅に向上し、さらに露光感度が改善されるスパッタターゲットの製造が可能となる。
また、請求項5の方法の発明により、所定の酸素含有量のスパッタターゲットとすることにより、スパッタ成膜時に形成されるレジスト層の酸化度合いを精度よく決定することができ、従来の反応性スパッタリング法によるものよりも容易で安定して目標の酸化度合いとすることができる。
また、請求項6の方法の発明により、各種デバイスの高記録容量化を可能とするフォトリソグラフィ技術に対応したレジスト層(遷移金属の非飽和酸化物)をスパッタ成膜時に酸素ガスの導入を必要とせずに形成することができるスパッタターゲットが製造可能となる。
また、請求項7の方法の発明により、スパッタ成膜時に形成されるレジスト層を構成する遷移金属の非飽和酸化物の結晶粒を小さくし、該レジスト層の表面租度を小さくすることにより分解能が大幅に向上し、さらに露光感度が改善されるスパッタターゲットの製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】遷移金属の非飽和酸化物をレジスト層とするレジスト基板を用いる光ディスクの製造工程図である。
【図2】本発明に係るスパッタターゲットの製造方法のうち、混合物(W+WO3+MoO3)を焼結して目標組成(W80Mo203070のスパッタターゲットを形成した場合の相対密度、抗折強度の結果を示す図である。
【図3】本発明に係るスパッタターゲットの製造方法のうち、混合物(W+WO3+MoO3)を焼結して目標組成(W80Mo203565のスパッタターゲットを形成した場合の相対密度、抗折強度の結果を示す図である。
【図4】比較例1のスパッタターゲットを形成した場合の相対密度、抗折強度の結果を示す図である。
【図5】本発明に係るスパッタターゲットの製造方法のうち、混合物(W+WO3+MoO3)を焼結して目標組成(W80Mo203070のスパッタターゲットを形成した場合の組成分析結果を示す図である。
【図6】比較例1のスパッタターゲットを形成した場合の組成分析結果を示す図である。
【図7】本発明に係るスパッタターゲットの製造方法のうち、混合物(WO2+WO3+MoO3)を焼結して目標組成(W80Mo203070のスパッタターゲットを形成した場合の組成分析結果を示す図である。
【図8】遷移金属の非飽和酸化物をレジスト層とするレジスト基板を適用した微細加工方法に用いられる露光装置を模式的に表す図である。
【図9】本発明のスパッタターゲットを用いて形成した非飽和酸化物からなるレジスト層に25GBのカッティングを行い現像後、SEMにて表面観察した写真である。
【図10】実施例3において製造された記録容量25GBの光ディスクの信号評価結果を示す図である。
【符号の説明】
1…レジスト基板、11…ターンテーブル、12…ビーム発生源、13…コリメータレンズ、14…ビームスプリッタ、15…対物レンズ、16…集光レンズ、17…分割フォトディテクタ、18…フォーカス誤差信号、19…フォーカスアクチュエータ、20…データ信号、21…反射光量信号、22…トラッキング誤差信号、23…レーザ駆動回路、24…スピンドルモータ制御系

Claims (3)

  1. 少なくとも同一元素で価数の異なる複数種の遷移金属の酸化物粉末を混合し、該混合物を加圧焼結する際に、上記価数の異なる複数種の遷移金属の酸化物粉末の混合比及び焼成温度により上記加圧焼結後の酸素の含有量を調整する金属の不完全酸化物からなるスパッタターゲットの製造方法。
  2. 上記遷移金属はMo、Wのいずれかである請求項に記載のスパッタターゲットの製造方法。
  3. 上記混合物にさらに遷移金属以外の他の元素の粉末が添加されている請求項またはに記載のスパッタターゲットの製造方法。
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