JP2004152397A - 光ディスク成型用基盤、その製造方法、及び光ディスク成型用基盤のブランクス - Google Patents
光ディスク成型用基盤、その製造方法、及び光ディスク成型用基盤のブランクス Download PDFInfo
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Abstract
【課題】基盤上に複数のフォトレジストの突起部が形成された光ディスク成型用基盤において、光ディスクの成型前に、上記光ディスク成型用基盤自体を再生して、信号パターンの記録状態の確認を行うことができる光ディスク成型用基盤、その製造方法、及び光ディスク成型用基盤のブランクスを提供する。
【解決手段】光ディスク成型用基盤において、上記夫々の突起部を、上記信号パターンの再生用の光に対して光吸収効果を有する色素を含ませて形成し、上記再生用の光の反射光の光量に変化を与え、この光量変化を検出することにより、上記信号パターンを検出可能とする。
【選択図】図1
【解決手段】光ディスク成型用基盤において、上記夫々の突起部を、上記信号パターンの再生用の光に対して光吸収効果を有する色素を含ませて形成し、上記再生用の光の反射光の光量に変化を与え、この光量変化を検出することにより、上記信号パターンを検出可能とする。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスクを成型する際に用いられる光ディスク成型用基盤に関するものであり、特に、上記光ディスク成型用基盤の表面に形成された無数の微細な突起部を、光ディスクのピットとして転写して光ディスクを成型することができる光ディスク成型用基盤、その製造方法、及び光ディスク成型用基盤のブランクスに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の光ディスク成型用基盤は、一般的にスタンパーと呼ばれ、また、このスタンパーを製作する工程は、マスタリング工程と呼ばれている。
【0003】
また、このマスタリング工程(あるいはマスタリング工法)においては、一般にフォトリソグラフィーといわれる技術が用いられており、ガラス盤上に記録すべき信号に対応したフォトレジストの凹凸のパターンを形成することから始まる。上記ガラス盤上に形成されたポジ型フォトレジスト層に、記録すべき信号パターンに対応して強度変調されたレーザ光(あるいはレーザビーム、以下同じ)を照射して、螺旋状に多数の露光部を形成し、この夫々の露光部が形成された上記ポジ型フォトレジスト層を現像することによって、多数のフォトレジストの窪み(ピット)をトラック状に形成するのである。その後、表面に導電性膜を形成し、その上に電鋳によりニッケルの厚膜を形成する。その厚膜の膜厚はおよそ0.3mmほどであり、それを上記ガラス盤から剥がして、上記剥されたニッケル盤をスタンパーとするのである。このニッケル盤にはフォトレジストのピットが転写された多数の突起(バンプ)が螺旋状に形成されている。このスタンパーを用いて射出成型を行なうことにより、情報を含んだピット列を有する光ディスクを成型することができる。
【0004】
上記のようなマスタリング工程は、一般にガラスマスタリングと呼ばれるが、このようなガラスマスタリングにおいては、10以上の工程を含み、上記スタンパー製作のための多くの時間とコストがかかり、また、工程が多いために塵埃の付着や人為的ミスなどによる欠陥も多く、歩留まりを低下させているという問題点があった。
【0005】
このような背景のもと、上記ガラスマスタリングのような多くの工程を要せず、より少ない工程でスタンパーを製作する試みが試されている。例えば、特許第2765421号公報には基盤の上に架橋性無機物または架橋性有機物層を設け、記録すべき信号パターンに基づいて強度変調されたレーザ光を上記層に照射し、現像することにより基盤上に上記信号パターンに対応した突起部を設け、さらに加熱により上記突起部を強固なものにした後、その基盤を直接スタンパーとする工法、すなわち、いわゆるダイレクトマスタリング工法が示されている。以下に、この従来における上記ダイレクトマスタリング工法について、図7に示す模式説明図に基づいて説明する。
【0006】
まず、図7(A)には、ニッケル基盤51と架橋性無機物または架橋性有機物層である架橋性物質層52が示されている。まず、図7(B)に示すように、記録すべき信号パターンに基づいて信号変調されたレーザ光53を、記録レンズ54で絞って、架橋性物質層52に照射することにより多数の露光部を形成する。その後、図7(C)に示すように、レーザ光53の照射による露光の潜像としての上記夫々の露光部を局所的に加熱して架橋させ、多数のマーク55を形成する。そして、図7(D)に示すように、このような状態の架橋性物質層52を現像すると、これら架橋性物質層52はいわゆるネガ型レジストの作用をするため、上記露光部以外の部分である未露光部が溶解され、露光部のみ、すなわちマーク55が形成されている部分のみが多数の突起56として残ることとなる。さらにこの夫々の突起56を300℃の高温でハードべークすることにより、夫々の突起56において架橋が促進されて、夫々の突起56を強固なものとすることができる。このように製作された基盤51(その上面には多数の突起56が形成されている)は、そのままスタンパー50として用いることができる。
【0007】
また、上記ダイレクトマスタリング工法の別の例としては、特開平7−326077号に示されているような工法があり、基盤上にフォトレジストの突起を形成し、高温加熱により架橋を促進した後、それをスタンパーとして直接用いるという工法が示されている。
【0008】
この工法が前者の工法と異なるのは、基盤上にフォトレジストを形成する方法である。前者は信号変調されたレーザ光の熱で選択的に架橋を起こしたのに対し、後者ではフォトレジストにレーザ光を選択的に照射して露光部を形成するとともに、上記露光部に酸を発生させて、その後、全体的に加熱することにより上記酸が触媒となり上記露光部のみに架橋を起こさせる。次に、フォトレジスト全体に光を照射して露光すると、上記レーザ光が照射されていない未露光部に酸が生成され、かつ、この未露光部は架橋されていないので現像液で溶解され、最初にレーザ光が照射されて形成された多数の露光部が多数の突起として残るのである。
【0009】
上記夫々のダイレクトマスタリング工法により製作されるスタンパーは、何れもニッケル基盤の上に有機または無機のフォトレジストの突起を形成したものである。しかしながら、上記ニッケル基盤の上に上記フォトレジストの突起を直接的に形成していることにより、以下のような問題点がある。
【0010】
まず、高温ベークが施されることにより、上記夫々のフォトレジストの突起の硬度は硬くなっているものの、本来、フォトレジスト自体は、金属(すなわち、上記ニッケル基盤)との接着力が強くないという特性を有している。また、このようなスタンパーが光ディスクとしてDVD成型用のスタンパーであるような場合にあっては、上記夫々のフォトレジストの突起の幅は0.3μm、長さは最短のもので0.4μmとなり、上記夫々のフォトレジストの突起と上記ニッケル基盤との接着面積は非常に小さいものとなる。
【0011】
また、スタンパーは成型機の金型に取り付けられ、鏡面金型とキャビティを形成し、このキャビティの中に高温の樹脂が高圧で注入されて、光ディスクが成型されるが、この時、上記高圧の樹脂は上記スタンパーの上記フォトレジストの突起を引き剥がす作用を起こす。
【0012】
また、一般に上記金型の温度は100℃前後に設定されているが、上記注入される樹脂は約300℃以上の高温である。上記樹脂の射出によって上記スタンパー表面温度は上昇し、その後、成型された光ディスクの取り出しによって上記スタンパーの表面温度は、上記設定温度(すなわち、100℃前後)に戻るという熱膨張と熱収縮が繰り返される。さらに、ニッケルのような金属とフォトレジストの熱膨張係数には大きな違いがあり、その熱膨張量の違いによる熱応力が繰り返し上記夫々のフォトレジストの突起に作用し、ついには上記ニッケル基板から剥離される場合があるという問題点がある。
【0013】
上記の問題を解決するために上記ニッケル基板上に接着層となるアンカーコート層を設け、その上に上記夫々のフォトレジストの突起を形成し、光ディスクの成型時における上記夫々のフォトレジストの突起の剥がれを無くすことを可能とするダイレクトマスタリング工法が創作されて、特許出願されている(特願2001−324707号)。この特許出願にかかる工法の一例について、図5及び図6を用いて以下に説明する。
【0014】
図5(A)は、ニッケルにより形成された基盤41の上に架橋性物質からなるアンカーコート層42を塗布して形成させた状態を示す。上記架橋性物質としては、有機ポリマーやシリコン酸化物の無機の材料などがある。また、基盤41は、ニッケルの他にニッケル合金、シリコン、アルミ、又は銅などの金属の他に、ガラス、セラミックなどを用いるような場合であってもよい。
【0015】
次に、図5(B)に示すように、基盤41及びアンカーコート層42に対して、ベーキング処理を行なう。アンカーコート層42の上記架橋性物質が熱により架橋するものであれば、このベーキング処理で架橋を起こさせることができる。
【0016】
一方、上記架橋性物質が化学増幅型フォトレジストのように、光の照射により酸が発生し、それに続くベーキング処理で上記発生した酸が触媒となって架橋を起こすものもある。このような場合には、図5(B)のベーキング処理を、アンカーコート層42の塗布形成における溶剤を蒸発させる目的のプリベーク処理として、80から90℃までの範囲の比較的低温で行なう。引き続き、図5(C)に示すように、基盤41全体に紫外線を照射し、その後、図5(D)に示すベーキング処理を経て上記架橋性物質におけるポリマー鎖を架橋させる。なお、この図5(D)の上記紫外線照射後のベーキング処理は、いわゆるポストエクスポージャーベークと呼ばれるものである。また、このベーキング処理においては、上記紫外線の照射で発生した酸が触媒となって架橋反応が起こる。
【0017】
また、上記何れの架橋性物質を用いる場合も、この段階においては上記架橋性物質の架橋を完全に行なうのではなく、半架橋の状態とさせておく必要がある。この半架橋の状態とは、次の図5(E)に示す工程において、フォトレジストをアンカーコート層42の上に塗布することによりフォトレジスト層43を形成するが、この上記フォトレジストの溶剤にアンカーコート層42が溶けない程度、つまり実質的に侵されない程度に架橋された状態のことである。このように半架橋の状態とさせるのは、一般に有機ポリマーでは数パーセント架橋が進行する(すなわち、半架橋の状態とする)と溶剤に溶けなくなるという特性を有しているからである。
【0018】
また、図5(E)に示すフォトレジスト層43にはネガ型フォトレジストを用いる。ただし、このようにネガ型フォトレジストを用いるような場合に代えて、ポジ型フォトレジストを用いるような場合であってもよく、いわゆるイメージリバーサル法として知られる方法でネガ型として用いることができるからである。なお、上述したように、アンカーコート層42の架橋性物質は数パーセント架橋された状態(すなわち、上記半架橋の状態)であるため、フォトレジスト層43の溶剤によって侵されることはない。
【0019】
次に、図5(F)に示すように、信号パターンとして記録すべき信号で変調されたレーザ光44をフォトレジスト層43に照射して複数の露光部を形成する。ここで使われる装置は、レーザビームレコーダと呼ばれ、上記変調されたレーザ光44を照射可能なレーザ光照射装置(図示しない)と、このレーザ光44を0.3μm程度の微細なスポットに絞る記録レンズ45と、基盤41を保持するとともに、その中心に位置される回転軸46の周りに基盤41を回転させる回転駆動部材47とを備えている。また、上記レーザ光照射装置と記録レンズ45は上記回転される基盤41の半径方向に沿って移動可能となっているため、基盤41を回転させ、かつ、上記レーザ光照射装置及び記録レンズ45を上記半径方向沿いに移動させながら、レーザ光44をフォトレジスト層43上に照射することにより、フォトレジスト層43には螺旋状に複数の潜像が記録される。なお、この夫々の潜像部分が上記夫々の露光部となる。
【0020】
その後、図6(G)に示すように、ベーキング処理を行なう。上記レーザ光44の照射によって上記夫々の露光部に発生した酸を触媒として、このベーキング処理でフォトレジスト層43における上記夫々の露光部の架橋反応を進行させる。なお、このベーキング処理は、一般に化学増幅型フォトレジストと呼ばれる種類のフォトレジストが、フォトレジスト層43に用いられた場合に行なわれる工程であって、フォトレジストの種類によってはこのベーキング処理が不要の場合もある。
【0021】
その後、図6(H)に示すように、フォトレジスト層43に対して現像処理が行なわれ、上記架橋された部位以外、すなわち上記夫々の露光部以外が溶けて流される。その結果、上記夫々の露光部のみがフォトレジスト突起48として残る。この状態の夫々のフォトレジスト突起48とアンカーコート層42とはまだ強固に結合されていない状態である。
【0022】
次に、図6(I)は、アンカーコート層42の架橋性物質と夫々のフォトレジスト突起48のフォトレジストとの架橋をさらに促進する工程である。上述したように、アンカーコート層42の架橋性物質は完全に架橋されていない。また、レーザ光44が照射されて形成された夫々のフォトレジスト突起48のフォトレジストも、まだ架橋は一部しか進行していない。この工程で両者の架橋をさらに進行させることにより、夫々のフォトレジスト突起48のレジストポリマーとアンカーコート層42との間で相互の架橋が起こり両者の結合を強める。また、夫々が架橋によりさらに強固になり、成型時の熱及び熱応力に耐える強度を与える。
【0023】
このような架橋の具体的方法の一例としては、上記現像後の基盤41全体(すなわち、フォトレジスト突起48及びアンカーコート層42を含めた全体)をプラズマ中に曝す方法がある。上記プラズマとしてはフッ素ガスのプラズマなどが効果的である。上記プラズマ中にフォトレジストを曝すと、プラズマ中のイオンやラジカルによりフォトレジスト自体が削られるので暴露時間は数秒程度に抑える必要がある。このように数秒間のプラズマ処理が施されたフォトレジスト突起48は内部まで硬くなっており、強度および耐熱性が向上する。
【0024】
また、上記架橋の方法の別の例としては、上記現像後の基盤41に遠紫外線の照射とその後のベーキング処理により架橋を促進する方法がある。化学増幅型フォトレジストの場合は、上記遠紫外線照射後にベーキング処理することにより架橋を促進させることができる。また、化学増幅型ではないノボラック系樹脂では、上記ベーキング処理によりフォトレジスト中の水分を無くした状態で遠紫外線を照射すると架橋がより進行することが知られている。
【0025】
例えば、フォトレジスト突起48に化学増幅型フォトレジストを用い、上記現像後の基盤41に遠紫外線を照射して、その後、110〜250℃の範囲における温度でベーキング処理を行なう。この場合もアンカーコート層42とフォトレジスト43の架橋が進行し、基盤全体の耐熱温度を250℃以上と向上させることができる。
【0026】
そして、図6(J)は架橋後の基盤であり、夫々のフォトレジスト突起48とアンカーコート層42は一体化された構造物49となっている。これを光ディスク成型機の金型に合うように内外径を加工し、必要に応じ裏面を削ればスタンパーが完成する。
【0027】
上記の工法で作製されたスタンパーの成型実験の結果によれば、光ディスクの成型回数が5万ショットを超えてもバンプの欠落は全く観察されていない。
【0028】
【特許文献1】
特許第2765421号公報
【特許文献2】
特開平7−326077号公報
【0029】
【発明が解決しようとする課題】
上述の夫々の工法により作製される夫々のスタンパーは、光ディスク成型時の型となるものであり、光ディスクの成型前に上記スタンパーに記録された信号の中身や品質を確認するために、上記スタンパー自身を再生することがよく行われている。また、このような上記スタンパー自身の再生には、市販されているスタンパー再生装置が一般的に用いられている。
【0030】
まず、図4(A)に、通常の電鋳によって作製されたスタンパー60の模式的な部分拡大断面図を示す。図4(A)に示すように、スタンパー60の表面には信号を表す凸状の多数の突起が形成されているが、上記スタンパー再生装置にかけると、再生用レーザ光が上記表面の夫々の突起を走査するように照射されて、上記照射されたレーザ光の反射光を受光することにより、その反射率の変化が信号として捉えられる。このようなスタンパー60の表面の突起の高さdは、成型される光ディスクにおいて再生信号が効率よく再生できる値に設定されている。すなわち、上記光ディスクの屈折率をn、上記スタンパー再生装置の再生用のレーザ光の波長をλとした時、d=λ/(4n)とするのが一般的である。このとき、上記突起に照射されたレーザ光Bの反射光と上記突起以外の部位に照射されたレーザ光Aの反射光との位相差が180度となり干渉が最大となり、信号として検出される変化量が最大となる。また、このようなスタンパー60の再生においては、媒体が空気で屈折率が1となるため、上記光ディスクを再生した場合と比べて、両者の屈折率相違により検出される信号がずれることになる。例えば、上記光ディスクが、屈折率が1.5の樹脂で形成される場合にあっては、スタンパー60により検出される信号は、上記光ディスクにより再生される信号の0.7倍程度となるが、このような信号の相違レベルでは、スタンパー60における上記信号の検出のため再生を問題なく行なうことができる。
【0031】
次に、図4(B)に、上述した図7に示すダイレクトマスタリング工法により作製されたスタンパー50の模式的な部分拡大断面図を示す。図4(B)に示すように、ニッケル基盤51の上に多数の突起56が形成されている。夫々の突起56は、フォトレジストの作用を有する架橋性物質で形成されるため、再生用のレーザ光Bはほとんど突起56を透過し、ニッケル基盤51の表面で反射する。従って、図4(B)に示すように突起56が形成されていない部位に照射されたレーザ光Aの反射光と、突起56に照射されたレーザ光Bの反射光との間には、光量の差がほとんどない。これは、ニッケル基盤51の反射率に対して突起56の反射率はかなり小さく、また突起56による光吸収量も少ないからである。従って、上記市販されているスタンパー再生装置では、スタンパー50を再生することができないという問題点がある。
【0032】
次に、図4(C)に、上述した図5及び6に示すダイレクトマスタリング工法により作製されたスタンパー40の模式的な部分拡大断面図を示す。このスタンパー40においても、スタンパー50の場合と同様に、アンカーコート層42およびフォトレジスト突起48の再生用のレーザ光A及びBに対する反射率が小さく、また、光吸収量も小さいので、上記市販されているスタンパー再生装置では、スタンパー40を再生することができないという問題点がある。
【0033】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、基盤上に複数のフォトレジストの突起部が形成された光ディスク成型用基盤において、光ディスクの成型前に、上記光ディスク成型用基盤自体を再生して、信号の記録状態の確認を行うことができる光ディスク成型用基盤、その製造方法、及び光ディスク成型用基盤のブランクスを提供することにある。
【0034】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0035】
本発明の第1態様によれば、基盤と、上記基盤上において信号パターンの記録用の光でもって上記信号パターンに対応した形状に形成された複数のフォトレジストの突起部とを備える光ディスク成型用基盤であって、
上記夫々の突起部が、上記信号パターンの再生用の光に対して光吸収効果を有する色素を含んでいることを特徴とする光ディスク成型用基盤を提供する。
【0036】
本発明の第2態様によれば、上記再生用の光は、上記記録用の光の波長が属さない赤外から赤色までの範囲のいずれかの波長のレーザ光である第1態様に記載の光ディスク成型用基盤を提供する。
【0037】
本発明の第3態様によれば、上記記録用の光は、紫外から青色までの範囲のいずれかの波長のレーザ光である第1態様又は第2態様に記載の光ディスク成型用基盤を提供する。
【0038】
本発明の第4態様によれば、上記基盤は、金属で形成されている第1態様から第3態様のいずれか1つに記載の光ディスク成型用基盤を提供する。
【0039】
本発明の第5態様によれば、架橋性物質により上記基盤上に形成されたアンカーコート層をさらに備え、上記夫々の突起部は、上記アンカーコート層に一体的に結合された状態でその上面に形成されている第1態様から第4態様のいずれか1つに記載の光ディスク成型用基盤を提供する。
【0040】
本発明の第6態様によれば、上記架橋性物質は、有機ポリマーである第5態様に記載の光ディスク成型用基盤を提供する。
【0041】
本発明の第7態様によれば、上記夫々の突起部に照射された上記再生用の光の上記夫々の突起部よりの反射光量が、上記基盤に照射された上記再生用の光の上記基盤よりの反射光量の1/2程度となるように、上記色素は上記再生用の光を吸収する第1態様から第6態様に記載の光ディスク成型用基盤を提供する。
【0042】
本発明の第8態様によれば、第1態様から第7態様のいずれか1つに記載の光ディスク成型用基盤は、直接的に光ディスクを成型可能な光ディスク成型用スタンパーであることを特徴とする光ディスク成型用基盤を提供する。
【0043】
本発明の第9態様によれば、基盤と、上記基盤において信号パターンに対応した形状に形成された複数のフォトレジストの突起部とを備える光ディスク成型用基盤の製造方法において、
上記信号パターンの再生用の光に対して光吸収効果を有する色素を含有するフォトレジスト層を上記基盤上に形成し、
上記信号パターンにより変調された上記信号パターンの記録用の光を上記フォトレジスト層に照射して、上記フォトレジスト層に複数の露光部を形成し、
その後、現像によって上記フォトレジスト層の上記夫々の露光部を残して、上記フォトレジスト層の未露光部を除去し、上記信号パターンに対応しかつ上記色素を含有する上記夫々のフォトレジストの突起部を形成することを特徴とする光ディスク成型用基盤の製造方法を提供する。
【0044】
本発明の第10態様によれば、上記再生用の光は、上記記録用の光の波長が属さない赤外から赤色までの範囲のいずれかの波長のレーザ光である第9態様に記載の光ディスク成型用基盤の製造方法を提供する。
【0045】
本発明の第11態様によれば、上記記録用の光は、紫外から青色までの範囲のいずれかの波長のレーザ光である第9態様又は第10態様に記載の光ディスク成型用基盤の製造方法を提供する。
【0046】
本発明の第12態様によれば、基盤と、上記基盤上に形成され、上記信号パターンに対応した形状の複数のフォトレジストの突起部が形成されるフォトレジスト層とを備える光ディスク成型用基盤のブランクスであって、
上記フォトレジスト層が、上記信号パターンの再生用の光に対して光吸収効果を有する色素を含んでいることを特徴とする光ディスク成型用基盤のブランクスを提供する。
【0047】
ここで、本明細書において用いられている用語の意義を説明する。
【0048】
用語「光吸収効果」とは、上記色素に照射される光の光量に対して、その反射あるいは透過される光の光量を低減させるような光の吸収効果のことをいい、本発明においては、上記突起部に照射される光を吸収させることにより、その反射される光の光量又は透過される光の光量を減少させるような効果として用いられている。ただし、上記照射される光を100%吸収することのみを意味するものではなく、上記照射された光のうちの少なくとも30%以上程度の光が吸収されることを意味する。
【0049】
用語「ブランクス」とは、光ディスク成型用基盤の製作工程における中間製品であって、基盤上にフォトレジストが塗布されて、フォトレジスト層が形成されたものをいう。また、上記フォトレジスト層の塗布形成後に、ベーキング処理(プリベーク処理)等が施されることにより、上記フォトレジスト層が安定化されたものをも含む。さらに、上記フォトレジスト層が上記基盤上に直接形成されたもの、又は、その他の層を介して間接的に形成されたもののいずれのものをも含んでいる。
【0050】
【発明の実施の形態】
次に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0051】
(実施形態)
本発明の一の実施形態にかかる光ディスク成型用基盤の一例であるスタンパー10の模式的な断面構造及びその製造方法を示す模式説明図を図1及び図2に示す。
【0052】
本実施形態の光ディスク成型用のスタンパー10は、基盤を加工してそれを直接スタンパーとする、いわゆるダイレクトマスタリング工法と呼ばれるスタンパー作製方法により作製される。以下に、まず、このスタンパー10の作製方法を図1及び図2に基づいて説明する。
【0053】
図1(A)に示すように、ニッケルにより形成されたプレート状の基盤1の上面全体に架橋性物質を塗布してアンカーコート層2を形成する。この架橋性物質としては、有機ポリマーやシリコン酸化物の無機の材料などがある。また、基盤1は、上記ニッケルの他にニッケル合金、シリコン、アルミ、又は銅などの金属、さらに、ガラス、又はセラミックなどにより形成される場合であってもよい。
【0054】
次に、図1(B)に示すように、基盤1及びアンカーコート層2に対して、ベーキング処理を行なう。アンカーコート層2の上記架橋性物質が熱により架橋するものであれば、このベーキング処理で架橋を起こさせることができる。
【0055】
一方、上記架橋性物質が化学増幅型フォトレジストのように、光が照射されることにより酸が発生し、その後に行なわれるベーキング処理で上記発生した酸が触媒となって架橋を起こすものもある。このような場合には、図1(B)のベーキング処理を、アンカーコート層2の塗布形成の際に用いられる溶剤を蒸発させる目的のプリベーク処理として、80〜90℃の範囲の比較的低温で行なう。引き続き、図1(C)に示すように、基盤1全体に紫外線を照射し、図1(D)に示すベーキング処理を経て上記架橋性物質におけるポリマー鎖を架橋させる。なお、図1(D)の上記紫外線照射後のベーキング処理は、いわゆるポストエクスポージャーベークと呼ばれるものである。また、このベーキング処理において、上記紫外線の照射で発生した酸が触媒となって架橋反応が起こる。
【0056】
また、上記何れの架橋性物質を用いる場合も、この段階においてはアンカーコート層2の上記架橋性物質の架橋を完全に行なうのではなく、半架橋の状態とさせておく必要がある。この半架橋の状態とは、次の図1(E)に示す工程において、フォトレジストをアンカーコート層2の上に塗布することによりフォトレジスト層3を形成するが、この上記フォトレジストの溶剤にアンカーコート層2が溶けない程度、つまり実質的に侵されない程度に架橋された状態のことである。このように半架橋の状態とさせるのは、一般的に有機ポリマーが有している数パーセント架橋が進行する(すなわち、半架橋の状態とする)と溶剤に溶けなくなるという特性を利用するためである。
【0057】
また、図1(E)に示すフォトレジスト層3にはネガ型フォトレジストを用いる。ただし、このようにネガ型フォトレジストを用いるような場合に代えて、ポジ型フォトレジストを用いるような場合であってもよく、いわゆるイメージリバーサル法として知られる方法でネガ型として用いることができるからである。なお、上述したように、アンカーコート層2の架橋性物質は数パーセント架橋された状態(すなわち、上記半架橋の状態)であるため、上記フォトレジストの溶剤によって侵されることはない。また、このフォトレジスト層3の塗布形成厚みは、最終的に形成したいスタンパー10の突起部(信号パターンに合わせて形成される)の形成高さに略合致するように形成される。なお、このようにフォトレジスト層3が、アンカーコート層2を介して基盤1上に形成された状態のものは、一般的にブランクスと呼ばれ、複数のブランクスを生産して、まとめて一時的に保管等しておき、その後、上記夫々のブランクスに対して後述する以降の製作工程を施すことが可能である。
【0058】
ここで、スタンパーに再生用のレーザ光を照射して、その反射光を受光することにより、上記スタンパーに記録された信号パターンの記録状態を確認することができるスタンパー再生装置に一般的に用いられる上記再生用のレーザ光(再生用の光の一例である)の波長を吸収する(すなわち、光吸収効果を有する)色素が、上記フォトレジストには含まれている。このような再生用のレーザ光としては、赤外から赤色までの範囲のいずれかの波長、例えば、600〜800nm程度の範囲のいずれかの波長のレーザ光が用いられる。また、例えば、上記スタンパーにより成型される光ディスクがCDであるような場合には、赤外線レーザ光が用いられており、その波長は780nm程度である。また、上記成型される光ディスクがDVDであるような場合には、赤色レーザ光が用いられ、その波長は600〜650nm程度である。上記色素の含有量が多いほど、上記スタンパーの再生における再生SN比(signal noise ratio)を向上させることができる。理想的には、フォトレジスト層3の形成厚み(すなわち、スタンパー10に形成される突起部の形成高さ)が1000オングストローム程度の場合において、上記照射される再生用のレーザ光のうちの30%〜50%程度の上記レーザ光が吸収される程度が望ましい。
【0059】
次に、図1(F)に示すように、信号パターンとして記録すべき信号で変調されたレーザ光4をフォトレジスト層3に照射して複数の露光部を形成する。ここで使われる装置は、レーザビームレコーダと呼ばれ、上記変調されたレーザ光4を照射可能なレーザ光照射装置(図示しない)と、そのレーザ光4を0.3μm程度の微細なスポットに絞る記録レンズ5と、基盤1を保持するとともに、その中心位置される回転軸6の周りに基盤1を回転させる回転駆動部材7とを備えている。また、レーザ光4が記録用の光の一例となっている。また、上記レーザ光照射装置及び記録レンズ5は、上記回転される基盤1の半径方向に沿って移動可能となっているため、基盤1を回転させ、かつ、上記レーザ光照射装置及び記録レンズ5を上記半径方向沿いに移動させながら、レーザ光4をフォトレジスト層3上に照射することにより、フォトレジスト層3には螺旋状に潜像が記録される。この記録に使われるレーザ光4の波長は453nmの青色から351nmの紫外線までの範囲のいずれかの波長のレーザ光が用いられる(すなわち、紫外から青色までの範囲のいずれかの波長の光が用いられ、レーザ光4に用いられる波長の範囲は、上記再生用のレーザ光に用いられる波長の範囲には属さない)。ただし、上記フォトレジストに含有される上記色素には、上記範囲内の波長のレーザ光はほとんど吸収されない。なお、上記フォトレジスト層3に記録形成される上記潜像部分が上記露光部となる。
【0060】
その後、図2(G)に示すように、ベーキング処理を行なう。上記レーザ光4の照射によって、上記夫々の露光部に発生した酸を触媒として、このベーキング処理でフォトレジスト層3における上記夫々の露光部の架橋反応を進行させる。なお、このベーキング処理は、一般に化学増幅型フォトレジストと呼ばれる種類のフォトレジストが、フォトレジスト層3に用いられた場合に行なわれる工程であって、フォトレジストの種類によってはこのベーキング処理が不要な場合もある。
【0061】
その後、図2(H)に示すように、フォトレジスト層3に対して現像処理が行なわれ、上記架橋された部位以外、すなわち、上記夫々の露光部以外(すなわち、未露光部)が溶けて流される。その結果、上記夫々の露光部のみがフォトレジスト突起8(フォトレジストの突起部の一例である)として残る。ただし、この状態の夫々のフォトレジスト突起8とアンカーコート層2とはまだ強固に結合されていない状態である。
【0062】
次に、図2(I)は、アンカーコート層2の上記架橋性物質と夫々のフォトレジスト突起8のフォトレジストとの架橋を更に促進する工程である。上述したように、アンカーコート層2の上記架橋性物質はまだ完全には架橋されていない。また、記録用のレーザ光4が照射されて形成された夫々のフォトレジスト突起8のフォトレジストも、まだ架橋は一部しか進行していない。この工程で両者の架橋をさらに進行させることにより、夫々のフォトレジスト突起8のレジストポリマーとアンカーコート層2との間で相互の架橋が起こり両者の結合を強める。また、各々が架橋によりさらに強固になり、成型時の熱及び熱応力に耐える強度を有することとなる。
【0063】
このような架橋の具体的方法の一例としては、上記現像後の基板1全体(すなわち、フォトレジスト突起8及びアンカーコート層2とを含めた基盤1全体)をプラズマ中に曝す方法がある。上記プラズマとしてはフッ素ガスのプラズマなどが効果的である。上記プラズマ中にフォトレジストを曝すと、プラズマ中のイオンやラジカルによりフォトレジスト自体が削られるので暴露時間は数秒程度に抑える必要がある。このように数秒間のプラズマ処理が施されたフォトレジスト突起8は内部まで硬くされており、強度および耐熱性が向上する。
【0064】
また、上記架橋の方法の別の例としては、上記現像後の基盤1に遠紫外線の照射とその後のベーキング処理により架橋を促進する方法がある。化学増幅型フォトレジストの場合は、上記遠紫外線照射後にベーキング処理することにより架橋を促進することができる。また、化学増幅型ではないノボラック系樹脂では、上記ベーキング処理によりフォトレジスト中の水分を無くした状態で遠紫外線を照射すると架橋がより進行することが知られている。
【0065】
本実施形態においては、例えば、フォトレジスト層3に化学増幅型フォトレジストを用い、上記現像後の基盤1に遠紫外線を照射して、その後、110〜200℃の範囲における温度でベーキング処理を行なう。この場合もアンカーコート層2と夫々のフォトレジスト突起8の架橋が進行し、基盤全体の耐熱温度を250℃以上と向上させることができる。
【0066】
そして、図2(J)は架橋後の基盤であり、夫々のフォトレジスト突起8とアンカーコート層2は一体化された構造物9となっている。これを光ディスク成型機の金型に合うように内外径を加工し、必要に応じ裏面を削ればスタンパー10が完成する。このスタンパー10は、直接成型機の型として光ディスクを成型することができる。従って、従来のガラスマスタリング工法のように電鋳でさらに雄型を作る必要はない。
【0067】
ここで、図2(K)は、上記作製方法により作製されたスタンパー10をスタンパー再生装置(このスタンパー再生装置自体は図示しない)で再生している状態の模式説明図である。図2(K)に示すように、上記スタンパー再生装置は、赤色又は赤外線のレーザ光A及びBを、スタンパー10の表面を走査するようにして照射することが可能となっており、上記照射されたレーザ光A及びBの反射光を受光することにより、スタンパー10において多数のフォトレジスト突起8として記録形成された信号パターンを読み取ることが可能となっている。
【0068】
このような上記スタンパー再生装置を用いて、図2(K)に示すように、フォトレジスト突起8が形成されていない部分に照射された再生用のレーザ光Aは、アンカーコート層2によりほとんど吸収されることなく、アンカーコート層2を透過して基盤1に照射される。そのため、レーザ光Aの反射光は、基盤1の反射率に略支配されることとなる。
【0069】
一方、フォトレジスト突起8に照射されたレーザ光Bは、赤色又は赤外線に対する光吸収効果を有する上記色素が上記フォトレジストに含有されていることにより、上記色素にレーザ光Bが吸収されてその光量が減少される。その後、上記レーザ光Bがフォトレジスト突起8及びアンカーコート層2を透過して基盤1に照射されるが、上記照射されるレーザ光Bの光量自体が減少されているため、その反射光量は減少することとなる。
【0070】
例えば、その形成高さが、1000オングストロームのフォトレジスト突起8において、レーザ光Bの光吸収率が30%であれば、上記照射されるレーザ光Bが30%吸収されて光量が減少され、さらにこの光量が減少されたレーザ光Bの反射光が再びフォトレジスト突起8を透過する際に、その30%が吸収されることとなるため、反射されたレーザ光Bの光量は、照射されたレーザ光Bの光量の49%(すなわち、100%×70%×70%)の光量となる。このように光の吸収が行なわれることにより、レーザ光Aの反射光に比べ、レーザ光Bの反射光を約50%(1/2程度)の光量とすることができ、この光量の差、すなわち光量の変化量を上記スタンパー再生装置において検出することにより、スタンパー10の夫々のフォトレジスト突起8により記録された信号パターンを検出することができる。
【0071】
ここで、上記スタンパー再生装置において、スタンパー10に記録された信号パターンの検出を確実に行なうためには、上述のように反射光量の差が倍近く変化するのが望ましい。しかし、実際のスタンパー再生装置における再生用のレーザ光のスポット径はフォトレジスト突起8よりも大きく、上記照射されるレーザ光のすべてがフォトレジスト突起8に照射される訳ではない(すなわち、上記レーザ光は、上記フォトレジスト突起8を照射するとともに、その周囲近傍の部分も照射することとなる)。そのため、上記反射光量の差は、さらに半分ぐらいに減少する(すなわち、上記光量の変化量が25%程度となる)が、この程度の上記反射光量の差であっても、上記スタンパー再生装置によりスタンパー10に記録された信号パターンを確実に再生することは可能である。従って、上記スタンパー再生装置による上記信号パターンの検出は、上記光量の差(変化量)を、例えば、20〜50%程度の範囲とすることにより、確実に行なうことができる。
【0072】
また、夫々のフォトレジスト突起8での上記照射されたレーザ光Bの光の吸収量は、フォトレジスト層3を形成するフォトレジストに添加される(含有される)上記色素の含有量に比例し、上記含有量を多くする程、上記光の吸収量を大きくすることができる。従って、上記色素の添加量(含有量)は、上記信号パターンを確実に検出できるような上記光量の差(変化量)が得られる範囲で調整される。
【0073】
なお、上記再生用のレーザ光がフォトレジスト突起8に照射されたとき、上記フォトレジスト突起8による回折も生じることとなるが、フォトレジストより形成されているフォトレジスト突起8の表面反射率は、金属であるニッケルにより形成されている基盤1の表面反射率に比べかなり小さく、上記回折による光量変化も小さくなり、この回折が上記信号パターンの検出に影響を与えることはない。
【0074】
なお、アンカーコート層2には、その形成材料として有機ポリマーなどの架橋性物質が用いられるが、このような形成材料に代えて、上記色素を含んだフォトレジストを用いることもできる。このような場合にあっては、上記再生用のレーザ光は、スタンパーの表面において、フォトレジスト突起8が形成されている部分と、形成されていない部分との両方で、光吸収効果を有することとなった上記アンカーコート層2にて光量減少を起こすが、両者の光量変化の比率は同じであるため、上記スタンパー再生装置による上記信号パターンの検出を行なうことができる。
【0075】
なお、上記の説明においては、基盤1にアンカーコート層2を設けた場合について説明したが、本実施形態はこのような場合にのみ限定されるものではない。例えば、従来のダイレクトマスタリング工法の1つとして説明した図5に示すような上記アンカーコート層を形成しないで、夫々のフォトレジスト突起を直接的に基盤の上面に形成するような場合においても、本発明を適用することができる。
【0076】
このような場合におけるスタンパー20の模式断面図を図3に示す。図3に示すように、スタンパー20においては、基盤21の上面に多数のフォトレジスト突起22が形成されている。また、この夫々のフォトレジスト突起22を形成するフォトレジストには、上記色素が含有されており、夫々のフォトレジスト突起22は、照射される上記再生用のレーザ光に対して光吸収効果を有している。従って、スタンパー20が上記スタンパー再生装置により再生されるような場合には、フォトレジスト突起22が形成されていない部分に照射されるレーザ光Aの反射光と、フォトレジスト突起22に照射されるレーザ光Bの反射光との間に光量の差(変化)を生じさせることができ、この光量の差を検出することにより、スタンパー20に記録された信号パターンの記録状態を確実に検出することができる。よって、このようなスタンパー20であっても、スタンパー10と同様な効果を得ることができる。
【0077】
(実施形態による効果)
上記実施形態によれば、製作工程の数が少なく、低コストで高品質な光ディスク成型用のスタンパーを作製することができるダイレクトマスタリング工法により作製されるスタンパーであっても、スタンパー再生装置により上記作製されたスタンパー自体に記録された信号パターンの再生を行なうことができる。
【0078】
具体的には、従来の上記ダイレクトマスタリング工法により作製されたスタンパーにおいては、上記信号パターンが記録されている部分である多数の突起が、フォトレジストの作用を有する架橋性物質により形成されているため、上記スタンパー再生装置の再生用のレーザ光を上記突起に照射したような場合であっても、上記レーザ光はそのまま上記突起を透過して、ニッケル基盤の表面において反射されることとなるため、上記突起が形成されていない部位に照射された上記レーザ光のニッケル基盤の表面での反射光との差異を検出することができないという問題を、上記突起に光吸収効果を与えることにより解決することができる。
【0079】
すなわち、スタンパー10において、上記スタンパー再生装置にて再生用のレーザ光として用いられている赤外から赤色までの範囲のいずれかの波長の光に対して光吸収効果を有する色素を、フォトレジストに含有させて、上記フォトレジストを用いて多数のフォトレジスト突起8が形成されていることにより、上記レーザ光をフォトレジスト突起8において吸収させてその光量を減少させた状態で、基盤1の表面において反射させた反射光と、フォトレジスト突起8が形成されていない部位に照射されたレーザ光の反射光との間に光量に差を持たせることができる。
【0080】
従って、上記ダイレクトマスタリング工法により作製されたスタンパー10を、上記スタンパー再生装置により確実に再生することができ、スタンパー10における信号パターンの形成状態を確実に検出することができる。そのため、このようなスタンパー10により多数の光ディスクが成型される前に、スタンパー10の品質を検査することができ、この段階でスタンパー10への信号パターンの記録不良等があった場合に、上記不良を確実に検出して、その検出結果を素早くスタンパー10の製作工程にフィードバックすることができ、上記不良による損害の発生を最小限に抑えることができる。よって、スタンパーの品質をさらに向上させることができる光ディスク成型用のスタンパーを提供することができる。
【0081】
また、このように、上記色素がフォトレジスト突起8のもととなるフォトレジスト層3に含有されていても、上記フォトレジスト突起8の形成するための信号パターン記録用のレーザ光(紫外から青色までの範囲の光)に対しては、上記色素は光吸収効果を有さないため、上記色素をフォトレジストに含有させることが、スタンパーの作製工程に影響を与えることはない。
【0082】
さらに、上述のような夫々の効果は、フォトレジストに上記色素を含有させることにより達成することができるものであるから、上記スタンパー作製工程に新たな工程を追加するものでもなく、上記スタンパー作製に要する時間を増加させることもなく、効率的にスタンパーを作製することができる。
【0083】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0084】
【発明の効果】
本発明の上記第1態様又は上記第9態様によれば、製作工程の数が少なく、低コストで高品質な光ディスク成型用基盤を作製することができるいわゆるダイレクトマスタリング工法により作製される上記光ディスク成型用基盤であっても、上記光ディスク成型用基盤の再生装置により上記作製された上記光ディスク成型用基盤に記録された信号パターンの再生を行なうことができる。
【0085】
具体的には、従来の上記ダイレクトマスタリング工法により作製された光ディスク成型用基盤においては、上記信号パターンが記録されている部分である多数の突起部が、フォトレジストの作用を有する架橋性物質により形成されているため、上記再生装置の再生用の光を上記突起部に照射したような場合であっても、上記再生用の光はそのまま上記突起部を透過して、基盤の表面において反射されることとなるため、上記突起部が形成されていない部位に照射された上記再生用の光の上記基盤の表面での反射光との差異を検出することができないという問題を、上記突起部に光吸収効果を与えることにより解決することができる。
【0086】
すなわち、光ディスク成型用基盤において、上記再生装置にて上記再生用の光に対して光吸収効果を有する色素を、フォトレジストに含有させて、上記フォトレジストを用いて多数のフォトレジストの突起部が形成されていることにより、上記再生用の光を上記夫々の突起部において吸収させてその光量を減少させた状態で、基盤の表面において反射させた反射光と、この上記突起が形成されていない部位に照射された上記再生用の光の反射光との間に光量に差を持たせることができる。
【0087】
従って、上記ダイレクトマスタリング工法により作製された光ディスク成型用基盤を、上記再生装置により確実に再生することができ、上記光ディスク成型用基盤における上記信号パターンの形成状態を確実に検出することができる。そのため、このような光ディスク成型用基盤により多数の光ディスクが成型される前に、上記光ディスク成型用基盤の品質を検査することができ、この段階で上記光ディスク成型用基盤への信号パターンの記録不良等があった場合に、上記不良を確実に検出して、その検出結果を素早く上記光ディスク成型用基盤の製作工程にフィードバックすることができ、上記不良による損害の発生を最小限に抑えることができる。よって、上記光ディスク成型用基盤の品質をさらに向上させることができる光ディスク成型用基盤及びその製造方法を提供することができる。
【0088】
本発明の上記第2態様、上記第3態様、上記第10態様、又は上記第11態様によれば、上記光ディスク成型用基盤の上記再生装置において用いられる上記再生用の光として、赤外から赤色までの範囲のいずれかの波長の光が用いられていることを考慮して、上記色素に赤外から赤色までの範囲の波長の光に対しての上記光吸収効果を備えさせることにより、上記第1態様又は上記第9態様による効果を効果的に得ることができる。
【0089】
また、上記光ディスク成型用基盤の製作において、上記信号パターンの形成のために用いられる上記信号パターンの記録用の光として、上記赤外から赤色までの範囲に属さない波長を有する光が用いられることにより、上記色素が上記フォトレジストに含まれても、上記光ディスク成型用基盤の製作工程に影響を与えることはない。また、特にこのような上記記録用の光には、紫外から青色までの範囲のいずれかの波長の光が用いられることが多いが、上記紫外から青色までの範囲は、上記赤外から赤色までの範囲とは完全に異なる範囲であるため、上記光ディスク成型用基盤の製作工程に影響を与えることはない。
【0090】
本発明の上記第4態様によれば、上記基盤が金属で形成されていることにより、上記再生用の光を高い反射率でもって上記基盤の表面において確実に反射することができ、より確実に上記光ディスク成型用基盤よりの反射光の検出を行なうことができる。従って、上記光ディスク成型用基盤における上記信号パターンの形成状態を確実に検出することができる。
【0091】
本発明の上記第5態様又は第6態様によれば、上記色素を上記フォトレジストの含ませるような場合であっても、従来のダイレクトマスタリング工法を適用することができ、熱及び熱応力に強い光ディスク成型用基盤を提供することができる。
【0092】
本発明の上記第7態様によれば、上記夫々の突起部に照射された上記再生用の光の上記夫々の突起部よりの反射光量が、上記基盤に照射された上記再生用の光の上記基盤よりの反射光量の1/2程度となるように、上記色素が上記再生用の光を吸収することにより、より確実に、市販されている上記再生装置を用いて、上記信号パターンの検出を行うことができる。
【0093】
本発明の上記第8態様によれば、上記光ディスク成型用基盤は、直接的に光ディスクを成型可能な光ディスク成型用スタンパーであることにより、より少ない工程で上記スタンパーを製作することができ、上記夫々の態様による効果に加えて、高品質かつ低コストの上記スタンパーを提供することができる。
【0094】
本発明の上記第12態様によれば、製作工程の数が少なく、低コストで高品質な光ディスク成型用基盤を作製することができるいわゆるダイレクトマスタリング工法により作製される上記光ディスク成型用基盤であっても、上記光ディスク成型用基盤の再生装置により上記作製された上記光ディスク成型用基盤に記録された信号パターンの再生を行なうことができる上記光ディスク成型用基盤のブランクスを提供することができる。
【0095】
具体的には、従来の上記ダイレクトマスタリング工法により作製された光ディスク成型用基盤においては、上記信号パターンが記録されている部分である多数の突起部が、フォトレジストの作用を有する架橋性物質により形成されているため、上記再生装置の再生用の光を上記突起部に照射したような場合であっても、上記再生用の光はそのまま上記突起部を透過して、基盤の表面において反射されることとなるため、上記突起部が形成されていない部位に照射された上記再生用の光の上記基盤の表面での反射光との差異を検出することができないという問題を、上記突起部の基となるフォトレジスト層に光吸収効果を与えることにより解決することができる。
【0096】
すなわち、光ディスク成型用基盤のブランクスにおいて、上記再生装置にて上記再生用の光に対して光吸収効果を有する色素を、上記フォトレジスト層に含有させて、この上記ブランクスを用いて上記フォトレジスト層を加工し、多数のフォトレジストの突起部を形成することにより、上記再生用の光を上記夫々の突起部において吸収させてその光量を減少させた状態で、基盤の表面において反射させた反射光と、この上記突起が形成されていない部位に照射された上記再生用の光の反射光との間に光量に差を持たせることができる上記光ディスク成型用基盤を製作することができる。
【0097】
従って、このようなブランクスを用いて、上記ダイレクトマスタリング工法により作製された光ディスク成型用基盤を、上記再生装置により確実に再生することができ、上記光ディスク成型用基盤における上記信号パターンの形成状態を確実に検出することができ、上記光ディスク成型用基盤の品質をさらに向上させることができる光ディスク成型用基盤のブランクスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる光ディスク成型用のスタンパーの製造方法を示す模式説明図であり、(A)は基盤の表面にアンカーコート層が塗布形成された状態であり、(B)はベーキング処理が行われている状態であり、(C)は紫外線照射を行なっている状態であり、(D)はポストエクスポージャーベーキングを行なっている状態であり、(E)はさらにフォトレジスト層を塗布形成している状態であり、(F)は記録用のレーザ光を照射して露光部を形成している状態を示す。
【図2】図1に続く上記スタンパーの製作方法を示す模式説明図であり、(G)は上記露光部の形成後のベーキング処理が行われている状態であり、(H)は現像処理が行なわれている状態であり、(I)は架橋促進が行なわれている状態であり、(J)はスタンパーが完成した状態であり、(K)は完成されたスタンパーを再生している状態を示す。
【図3】上記実施形態の変形例にかかる光ディスク成型用のスタンパーの模式断面図である。
【図4】従来の夫々の製造方法により作製されたスタンパーを再生している状態の模式説明図であり、(A)は電鋳により作製されたスタンパーであり、(B)はダイレクトマスタリング工法により作製されて、基盤上に直接突起が形成されたスタンパーであり、(C)はダイレクトマスタリング工法により作製されて、基盤上にアンカーコート層を介して突起が形成されたスタンパーである。
【図5】従来のダイレクトマスタリング工法によるスタンパーの製造方法を示す模式説明図であり、(A)は基盤の表面にアンカーコート層が塗布形成された状態であり、(B)はベーキング処理が行われている状態であり、(C)は紫外線照射を行なっている状態であり、(D)はポストエクスポージャーベーキングを行なっている状態であり、(E)はさらにフォトレジスト層を塗布形成している状態であり、(F)は記録用のレーザ光を照射して露光部を形成している状態を示す。
【図6】図5に続く上記スタンパーの製作方法を示す模式説明図であり、(G)は上記露光部の形成後のベーキング処理が行われている状態であり、(H)は現像処理が行なわれている状態であり、(I)は架橋促進が行なわれている状態であり、(J)はスタンパーが完成した状態を示す。
【図7】従来のダイレクトマスタリング工法によるスタンパーの製造方法を示す模式説明図であり、(A)は基盤の表面にフォトレジスト層が塗布形成された状態であり、(B)は記録用のレーザ光を照射して露光部を形成している状態であり、(C)は現像処理が行なわれている状態であり、(D)はスタンパーが完成した状態を示す。
【符号の説明】
1…基盤、2…アンカーコート層、3…フォトレジスト層(色素が含有されている)、4…記録用のレーザ光、5…記録レンズ、6…回転駆動部材の回転軸、7…回転駆動部材、8…フォトレジスト突起、9…フォトレジスト突起とアンカーコート層とが一体化された構造物、10…光ディスク成型用のスタンパー、20…光ディスク成型用のスタンパー、21…基盤、22…フォトレジスト突起、40…従来のスタンパー、50…従来のスタンパー、60…従来のスタンパー、A…再生用のレーザ光、B…再生用のレーザ光。
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスクを成型する際に用いられる光ディスク成型用基盤に関するものであり、特に、上記光ディスク成型用基盤の表面に形成された無数の微細な突起部を、光ディスクのピットとして転写して光ディスクを成型することができる光ディスク成型用基盤、その製造方法、及び光ディスク成型用基盤のブランクスに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の光ディスク成型用基盤は、一般的にスタンパーと呼ばれ、また、このスタンパーを製作する工程は、マスタリング工程と呼ばれている。
【0003】
また、このマスタリング工程(あるいはマスタリング工法)においては、一般にフォトリソグラフィーといわれる技術が用いられており、ガラス盤上に記録すべき信号に対応したフォトレジストの凹凸のパターンを形成することから始まる。上記ガラス盤上に形成されたポジ型フォトレジスト層に、記録すべき信号パターンに対応して強度変調されたレーザ光(あるいはレーザビーム、以下同じ)を照射して、螺旋状に多数の露光部を形成し、この夫々の露光部が形成された上記ポジ型フォトレジスト層を現像することによって、多数のフォトレジストの窪み(ピット)をトラック状に形成するのである。その後、表面に導電性膜を形成し、その上に電鋳によりニッケルの厚膜を形成する。その厚膜の膜厚はおよそ0.3mmほどであり、それを上記ガラス盤から剥がして、上記剥されたニッケル盤をスタンパーとするのである。このニッケル盤にはフォトレジストのピットが転写された多数の突起(バンプ)が螺旋状に形成されている。このスタンパーを用いて射出成型を行なうことにより、情報を含んだピット列を有する光ディスクを成型することができる。
【0004】
上記のようなマスタリング工程は、一般にガラスマスタリングと呼ばれるが、このようなガラスマスタリングにおいては、10以上の工程を含み、上記スタンパー製作のための多くの時間とコストがかかり、また、工程が多いために塵埃の付着や人為的ミスなどによる欠陥も多く、歩留まりを低下させているという問題点があった。
【0005】
このような背景のもと、上記ガラスマスタリングのような多くの工程を要せず、より少ない工程でスタンパーを製作する試みが試されている。例えば、特許第2765421号公報には基盤の上に架橋性無機物または架橋性有機物層を設け、記録すべき信号パターンに基づいて強度変調されたレーザ光を上記層に照射し、現像することにより基盤上に上記信号パターンに対応した突起部を設け、さらに加熱により上記突起部を強固なものにした後、その基盤を直接スタンパーとする工法、すなわち、いわゆるダイレクトマスタリング工法が示されている。以下に、この従来における上記ダイレクトマスタリング工法について、図7に示す模式説明図に基づいて説明する。
【0006】
まず、図7(A)には、ニッケル基盤51と架橋性無機物または架橋性有機物層である架橋性物質層52が示されている。まず、図7(B)に示すように、記録すべき信号パターンに基づいて信号変調されたレーザ光53を、記録レンズ54で絞って、架橋性物質層52に照射することにより多数の露光部を形成する。その後、図7(C)に示すように、レーザ光53の照射による露光の潜像としての上記夫々の露光部を局所的に加熱して架橋させ、多数のマーク55を形成する。そして、図7(D)に示すように、このような状態の架橋性物質層52を現像すると、これら架橋性物質層52はいわゆるネガ型レジストの作用をするため、上記露光部以外の部分である未露光部が溶解され、露光部のみ、すなわちマーク55が形成されている部分のみが多数の突起56として残ることとなる。さらにこの夫々の突起56を300℃の高温でハードべークすることにより、夫々の突起56において架橋が促進されて、夫々の突起56を強固なものとすることができる。このように製作された基盤51(その上面には多数の突起56が形成されている)は、そのままスタンパー50として用いることができる。
【0007】
また、上記ダイレクトマスタリング工法の別の例としては、特開平7−326077号に示されているような工法があり、基盤上にフォトレジストの突起を形成し、高温加熱により架橋を促進した後、それをスタンパーとして直接用いるという工法が示されている。
【0008】
この工法が前者の工法と異なるのは、基盤上にフォトレジストを形成する方法である。前者は信号変調されたレーザ光の熱で選択的に架橋を起こしたのに対し、後者ではフォトレジストにレーザ光を選択的に照射して露光部を形成するとともに、上記露光部に酸を発生させて、その後、全体的に加熱することにより上記酸が触媒となり上記露光部のみに架橋を起こさせる。次に、フォトレジスト全体に光を照射して露光すると、上記レーザ光が照射されていない未露光部に酸が生成され、かつ、この未露光部は架橋されていないので現像液で溶解され、最初にレーザ光が照射されて形成された多数の露光部が多数の突起として残るのである。
【0009】
上記夫々のダイレクトマスタリング工法により製作されるスタンパーは、何れもニッケル基盤の上に有機または無機のフォトレジストの突起を形成したものである。しかしながら、上記ニッケル基盤の上に上記フォトレジストの突起を直接的に形成していることにより、以下のような問題点がある。
【0010】
まず、高温ベークが施されることにより、上記夫々のフォトレジストの突起の硬度は硬くなっているものの、本来、フォトレジスト自体は、金属(すなわち、上記ニッケル基盤)との接着力が強くないという特性を有している。また、このようなスタンパーが光ディスクとしてDVD成型用のスタンパーであるような場合にあっては、上記夫々のフォトレジストの突起の幅は0.3μm、長さは最短のもので0.4μmとなり、上記夫々のフォトレジストの突起と上記ニッケル基盤との接着面積は非常に小さいものとなる。
【0011】
また、スタンパーは成型機の金型に取り付けられ、鏡面金型とキャビティを形成し、このキャビティの中に高温の樹脂が高圧で注入されて、光ディスクが成型されるが、この時、上記高圧の樹脂は上記スタンパーの上記フォトレジストの突起を引き剥がす作用を起こす。
【0012】
また、一般に上記金型の温度は100℃前後に設定されているが、上記注入される樹脂は約300℃以上の高温である。上記樹脂の射出によって上記スタンパー表面温度は上昇し、その後、成型された光ディスクの取り出しによって上記スタンパーの表面温度は、上記設定温度(すなわち、100℃前後)に戻るという熱膨張と熱収縮が繰り返される。さらに、ニッケルのような金属とフォトレジストの熱膨張係数には大きな違いがあり、その熱膨張量の違いによる熱応力が繰り返し上記夫々のフォトレジストの突起に作用し、ついには上記ニッケル基板から剥離される場合があるという問題点がある。
【0013】
上記の問題を解決するために上記ニッケル基板上に接着層となるアンカーコート層を設け、その上に上記夫々のフォトレジストの突起を形成し、光ディスクの成型時における上記夫々のフォトレジストの突起の剥がれを無くすことを可能とするダイレクトマスタリング工法が創作されて、特許出願されている(特願2001−324707号)。この特許出願にかかる工法の一例について、図5及び図6を用いて以下に説明する。
【0014】
図5(A)は、ニッケルにより形成された基盤41の上に架橋性物質からなるアンカーコート層42を塗布して形成させた状態を示す。上記架橋性物質としては、有機ポリマーやシリコン酸化物の無機の材料などがある。また、基盤41は、ニッケルの他にニッケル合金、シリコン、アルミ、又は銅などの金属の他に、ガラス、セラミックなどを用いるような場合であってもよい。
【0015】
次に、図5(B)に示すように、基盤41及びアンカーコート層42に対して、ベーキング処理を行なう。アンカーコート層42の上記架橋性物質が熱により架橋するものであれば、このベーキング処理で架橋を起こさせることができる。
【0016】
一方、上記架橋性物質が化学増幅型フォトレジストのように、光の照射により酸が発生し、それに続くベーキング処理で上記発生した酸が触媒となって架橋を起こすものもある。このような場合には、図5(B)のベーキング処理を、アンカーコート層42の塗布形成における溶剤を蒸発させる目的のプリベーク処理として、80から90℃までの範囲の比較的低温で行なう。引き続き、図5(C)に示すように、基盤41全体に紫外線を照射し、その後、図5(D)に示すベーキング処理を経て上記架橋性物質におけるポリマー鎖を架橋させる。なお、この図5(D)の上記紫外線照射後のベーキング処理は、いわゆるポストエクスポージャーベークと呼ばれるものである。また、このベーキング処理においては、上記紫外線の照射で発生した酸が触媒となって架橋反応が起こる。
【0017】
また、上記何れの架橋性物質を用いる場合も、この段階においては上記架橋性物質の架橋を完全に行なうのではなく、半架橋の状態とさせておく必要がある。この半架橋の状態とは、次の図5(E)に示す工程において、フォトレジストをアンカーコート層42の上に塗布することによりフォトレジスト層43を形成するが、この上記フォトレジストの溶剤にアンカーコート層42が溶けない程度、つまり実質的に侵されない程度に架橋された状態のことである。このように半架橋の状態とさせるのは、一般に有機ポリマーでは数パーセント架橋が進行する(すなわち、半架橋の状態とする)と溶剤に溶けなくなるという特性を有しているからである。
【0018】
また、図5(E)に示すフォトレジスト層43にはネガ型フォトレジストを用いる。ただし、このようにネガ型フォトレジストを用いるような場合に代えて、ポジ型フォトレジストを用いるような場合であってもよく、いわゆるイメージリバーサル法として知られる方法でネガ型として用いることができるからである。なお、上述したように、アンカーコート層42の架橋性物質は数パーセント架橋された状態(すなわち、上記半架橋の状態)であるため、フォトレジスト層43の溶剤によって侵されることはない。
【0019】
次に、図5(F)に示すように、信号パターンとして記録すべき信号で変調されたレーザ光44をフォトレジスト層43に照射して複数の露光部を形成する。ここで使われる装置は、レーザビームレコーダと呼ばれ、上記変調されたレーザ光44を照射可能なレーザ光照射装置(図示しない)と、このレーザ光44を0.3μm程度の微細なスポットに絞る記録レンズ45と、基盤41を保持するとともに、その中心に位置される回転軸46の周りに基盤41を回転させる回転駆動部材47とを備えている。また、上記レーザ光照射装置と記録レンズ45は上記回転される基盤41の半径方向に沿って移動可能となっているため、基盤41を回転させ、かつ、上記レーザ光照射装置及び記録レンズ45を上記半径方向沿いに移動させながら、レーザ光44をフォトレジスト層43上に照射することにより、フォトレジスト層43には螺旋状に複数の潜像が記録される。なお、この夫々の潜像部分が上記夫々の露光部となる。
【0020】
その後、図6(G)に示すように、ベーキング処理を行なう。上記レーザ光44の照射によって上記夫々の露光部に発生した酸を触媒として、このベーキング処理でフォトレジスト層43における上記夫々の露光部の架橋反応を進行させる。なお、このベーキング処理は、一般に化学増幅型フォトレジストと呼ばれる種類のフォトレジストが、フォトレジスト層43に用いられた場合に行なわれる工程であって、フォトレジストの種類によってはこのベーキング処理が不要の場合もある。
【0021】
その後、図6(H)に示すように、フォトレジスト層43に対して現像処理が行なわれ、上記架橋された部位以外、すなわち上記夫々の露光部以外が溶けて流される。その結果、上記夫々の露光部のみがフォトレジスト突起48として残る。この状態の夫々のフォトレジスト突起48とアンカーコート層42とはまだ強固に結合されていない状態である。
【0022】
次に、図6(I)は、アンカーコート層42の架橋性物質と夫々のフォトレジスト突起48のフォトレジストとの架橋をさらに促進する工程である。上述したように、アンカーコート層42の架橋性物質は完全に架橋されていない。また、レーザ光44が照射されて形成された夫々のフォトレジスト突起48のフォトレジストも、まだ架橋は一部しか進行していない。この工程で両者の架橋をさらに進行させることにより、夫々のフォトレジスト突起48のレジストポリマーとアンカーコート層42との間で相互の架橋が起こり両者の結合を強める。また、夫々が架橋によりさらに強固になり、成型時の熱及び熱応力に耐える強度を与える。
【0023】
このような架橋の具体的方法の一例としては、上記現像後の基盤41全体(すなわち、フォトレジスト突起48及びアンカーコート層42を含めた全体)をプラズマ中に曝す方法がある。上記プラズマとしてはフッ素ガスのプラズマなどが効果的である。上記プラズマ中にフォトレジストを曝すと、プラズマ中のイオンやラジカルによりフォトレジスト自体が削られるので暴露時間は数秒程度に抑える必要がある。このように数秒間のプラズマ処理が施されたフォトレジスト突起48は内部まで硬くなっており、強度および耐熱性が向上する。
【0024】
また、上記架橋の方法の別の例としては、上記現像後の基盤41に遠紫外線の照射とその後のベーキング処理により架橋を促進する方法がある。化学増幅型フォトレジストの場合は、上記遠紫外線照射後にベーキング処理することにより架橋を促進させることができる。また、化学増幅型ではないノボラック系樹脂では、上記ベーキング処理によりフォトレジスト中の水分を無くした状態で遠紫外線を照射すると架橋がより進行することが知られている。
【0025】
例えば、フォトレジスト突起48に化学増幅型フォトレジストを用い、上記現像後の基盤41に遠紫外線を照射して、その後、110〜250℃の範囲における温度でベーキング処理を行なう。この場合もアンカーコート層42とフォトレジスト43の架橋が進行し、基盤全体の耐熱温度を250℃以上と向上させることができる。
【0026】
そして、図6(J)は架橋後の基盤であり、夫々のフォトレジスト突起48とアンカーコート層42は一体化された構造物49となっている。これを光ディスク成型機の金型に合うように内外径を加工し、必要に応じ裏面を削ればスタンパーが完成する。
【0027】
上記の工法で作製されたスタンパーの成型実験の結果によれば、光ディスクの成型回数が5万ショットを超えてもバンプの欠落は全く観察されていない。
【0028】
【特許文献1】
特許第2765421号公報
【特許文献2】
特開平7−326077号公報
【0029】
【発明が解決しようとする課題】
上述の夫々の工法により作製される夫々のスタンパーは、光ディスク成型時の型となるものであり、光ディスクの成型前に上記スタンパーに記録された信号の中身や品質を確認するために、上記スタンパー自身を再生することがよく行われている。また、このような上記スタンパー自身の再生には、市販されているスタンパー再生装置が一般的に用いられている。
【0030】
まず、図4(A)に、通常の電鋳によって作製されたスタンパー60の模式的な部分拡大断面図を示す。図4(A)に示すように、スタンパー60の表面には信号を表す凸状の多数の突起が形成されているが、上記スタンパー再生装置にかけると、再生用レーザ光が上記表面の夫々の突起を走査するように照射されて、上記照射されたレーザ光の反射光を受光することにより、その反射率の変化が信号として捉えられる。このようなスタンパー60の表面の突起の高さdは、成型される光ディスクにおいて再生信号が効率よく再生できる値に設定されている。すなわち、上記光ディスクの屈折率をn、上記スタンパー再生装置の再生用のレーザ光の波長をλとした時、d=λ/(4n)とするのが一般的である。このとき、上記突起に照射されたレーザ光Bの反射光と上記突起以外の部位に照射されたレーザ光Aの反射光との位相差が180度となり干渉が最大となり、信号として検出される変化量が最大となる。また、このようなスタンパー60の再生においては、媒体が空気で屈折率が1となるため、上記光ディスクを再生した場合と比べて、両者の屈折率相違により検出される信号がずれることになる。例えば、上記光ディスクが、屈折率が1.5の樹脂で形成される場合にあっては、スタンパー60により検出される信号は、上記光ディスクにより再生される信号の0.7倍程度となるが、このような信号の相違レベルでは、スタンパー60における上記信号の検出のため再生を問題なく行なうことができる。
【0031】
次に、図4(B)に、上述した図7に示すダイレクトマスタリング工法により作製されたスタンパー50の模式的な部分拡大断面図を示す。図4(B)に示すように、ニッケル基盤51の上に多数の突起56が形成されている。夫々の突起56は、フォトレジストの作用を有する架橋性物質で形成されるため、再生用のレーザ光Bはほとんど突起56を透過し、ニッケル基盤51の表面で反射する。従って、図4(B)に示すように突起56が形成されていない部位に照射されたレーザ光Aの反射光と、突起56に照射されたレーザ光Bの反射光との間には、光量の差がほとんどない。これは、ニッケル基盤51の反射率に対して突起56の反射率はかなり小さく、また突起56による光吸収量も少ないからである。従って、上記市販されているスタンパー再生装置では、スタンパー50を再生することができないという問題点がある。
【0032】
次に、図4(C)に、上述した図5及び6に示すダイレクトマスタリング工法により作製されたスタンパー40の模式的な部分拡大断面図を示す。このスタンパー40においても、スタンパー50の場合と同様に、アンカーコート層42およびフォトレジスト突起48の再生用のレーザ光A及びBに対する反射率が小さく、また、光吸収量も小さいので、上記市販されているスタンパー再生装置では、スタンパー40を再生することができないという問題点がある。
【0033】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、基盤上に複数のフォトレジストの突起部が形成された光ディスク成型用基盤において、光ディスクの成型前に、上記光ディスク成型用基盤自体を再生して、信号の記録状態の確認を行うことができる光ディスク成型用基盤、その製造方法、及び光ディスク成型用基盤のブランクスを提供することにある。
【0034】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0035】
本発明の第1態様によれば、基盤と、上記基盤上において信号パターンの記録用の光でもって上記信号パターンに対応した形状に形成された複数のフォトレジストの突起部とを備える光ディスク成型用基盤であって、
上記夫々の突起部が、上記信号パターンの再生用の光に対して光吸収効果を有する色素を含んでいることを特徴とする光ディスク成型用基盤を提供する。
【0036】
本発明の第2態様によれば、上記再生用の光は、上記記録用の光の波長が属さない赤外から赤色までの範囲のいずれかの波長のレーザ光である第1態様に記載の光ディスク成型用基盤を提供する。
【0037】
本発明の第3態様によれば、上記記録用の光は、紫外から青色までの範囲のいずれかの波長のレーザ光である第1態様又は第2態様に記載の光ディスク成型用基盤を提供する。
【0038】
本発明の第4態様によれば、上記基盤は、金属で形成されている第1態様から第3態様のいずれか1つに記載の光ディスク成型用基盤を提供する。
【0039】
本発明の第5態様によれば、架橋性物質により上記基盤上に形成されたアンカーコート層をさらに備え、上記夫々の突起部は、上記アンカーコート層に一体的に結合された状態でその上面に形成されている第1態様から第4態様のいずれか1つに記載の光ディスク成型用基盤を提供する。
【0040】
本発明の第6態様によれば、上記架橋性物質は、有機ポリマーである第5態様に記載の光ディスク成型用基盤を提供する。
【0041】
本発明の第7態様によれば、上記夫々の突起部に照射された上記再生用の光の上記夫々の突起部よりの反射光量が、上記基盤に照射された上記再生用の光の上記基盤よりの反射光量の1/2程度となるように、上記色素は上記再生用の光を吸収する第1態様から第6態様に記載の光ディスク成型用基盤を提供する。
【0042】
本発明の第8態様によれば、第1態様から第7態様のいずれか1つに記載の光ディスク成型用基盤は、直接的に光ディスクを成型可能な光ディスク成型用スタンパーであることを特徴とする光ディスク成型用基盤を提供する。
【0043】
本発明の第9態様によれば、基盤と、上記基盤において信号パターンに対応した形状に形成された複数のフォトレジストの突起部とを備える光ディスク成型用基盤の製造方法において、
上記信号パターンの再生用の光に対して光吸収効果を有する色素を含有するフォトレジスト層を上記基盤上に形成し、
上記信号パターンにより変調された上記信号パターンの記録用の光を上記フォトレジスト層に照射して、上記フォトレジスト層に複数の露光部を形成し、
その後、現像によって上記フォトレジスト層の上記夫々の露光部を残して、上記フォトレジスト層の未露光部を除去し、上記信号パターンに対応しかつ上記色素を含有する上記夫々のフォトレジストの突起部を形成することを特徴とする光ディスク成型用基盤の製造方法を提供する。
【0044】
本発明の第10態様によれば、上記再生用の光は、上記記録用の光の波長が属さない赤外から赤色までの範囲のいずれかの波長のレーザ光である第9態様に記載の光ディスク成型用基盤の製造方法を提供する。
【0045】
本発明の第11態様によれば、上記記録用の光は、紫外から青色までの範囲のいずれかの波長のレーザ光である第9態様又は第10態様に記載の光ディスク成型用基盤の製造方法を提供する。
【0046】
本発明の第12態様によれば、基盤と、上記基盤上に形成され、上記信号パターンに対応した形状の複数のフォトレジストの突起部が形成されるフォトレジスト層とを備える光ディスク成型用基盤のブランクスであって、
上記フォトレジスト層が、上記信号パターンの再生用の光に対して光吸収効果を有する色素を含んでいることを特徴とする光ディスク成型用基盤のブランクスを提供する。
【0047】
ここで、本明細書において用いられている用語の意義を説明する。
【0048】
用語「光吸収効果」とは、上記色素に照射される光の光量に対して、その反射あるいは透過される光の光量を低減させるような光の吸収効果のことをいい、本発明においては、上記突起部に照射される光を吸収させることにより、その反射される光の光量又は透過される光の光量を減少させるような効果として用いられている。ただし、上記照射される光を100%吸収することのみを意味するものではなく、上記照射された光のうちの少なくとも30%以上程度の光が吸収されることを意味する。
【0049】
用語「ブランクス」とは、光ディスク成型用基盤の製作工程における中間製品であって、基盤上にフォトレジストが塗布されて、フォトレジスト層が形成されたものをいう。また、上記フォトレジスト層の塗布形成後に、ベーキング処理(プリベーク処理)等が施されることにより、上記フォトレジスト層が安定化されたものをも含む。さらに、上記フォトレジスト層が上記基盤上に直接形成されたもの、又は、その他の層を介して間接的に形成されたもののいずれのものをも含んでいる。
【0050】
【発明の実施の形態】
次に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0051】
(実施形態)
本発明の一の実施形態にかかる光ディスク成型用基盤の一例であるスタンパー10の模式的な断面構造及びその製造方法を示す模式説明図を図1及び図2に示す。
【0052】
本実施形態の光ディスク成型用のスタンパー10は、基盤を加工してそれを直接スタンパーとする、いわゆるダイレクトマスタリング工法と呼ばれるスタンパー作製方法により作製される。以下に、まず、このスタンパー10の作製方法を図1及び図2に基づいて説明する。
【0053】
図1(A)に示すように、ニッケルにより形成されたプレート状の基盤1の上面全体に架橋性物質を塗布してアンカーコート層2を形成する。この架橋性物質としては、有機ポリマーやシリコン酸化物の無機の材料などがある。また、基盤1は、上記ニッケルの他にニッケル合金、シリコン、アルミ、又は銅などの金属、さらに、ガラス、又はセラミックなどにより形成される場合であってもよい。
【0054】
次に、図1(B)に示すように、基盤1及びアンカーコート層2に対して、ベーキング処理を行なう。アンカーコート層2の上記架橋性物質が熱により架橋するものであれば、このベーキング処理で架橋を起こさせることができる。
【0055】
一方、上記架橋性物質が化学増幅型フォトレジストのように、光が照射されることにより酸が発生し、その後に行なわれるベーキング処理で上記発生した酸が触媒となって架橋を起こすものもある。このような場合には、図1(B)のベーキング処理を、アンカーコート層2の塗布形成の際に用いられる溶剤を蒸発させる目的のプリベーク処理として、80〜90℃の範囲の比較的低温で行なう。引き続き、図1(C)に示すように、基盤1全体に紫外線を照射し、図1(D)に示すベーキング処理を経て上記架橋性物質におけるポリマー鎖を架橋させる。なお、図1(D)の上記紫外線照射後のベーキング処理は、いわゆるポストエクスポージャーベークと呼ばれるものである。また、このベーキング処理において、上記紫外線の照射で発生した酸が触媒となって架橋反応が起こる。
【0056】
また、上記何れの架橋性物質を用いる場合も、この段階においてはアンカーコート層2の上記架橋性物質の架橋を完全に行なうのではなく、半架橋の状態とさせておく必要がある。この半架橋の状態とは、次の図1(E)に示す工程において、フォトレジストをアンカーコート層2の上に塗布することによりフォトレジスト層3を形成するが、この上記フォトレジストの溶剤にアンカーコート層2が溶けない程度、つまり実質的に侵されない程度に架橋された状態のことである。このように半架橋の状態とさせるのは、一般的に有機ポリマーが有している数パーセント架橋が進行する(すなわち、半架橋の状態とする)と溶剤に溶けなくなるという特性を利用するためである。
【0057】
また、図1(E)に示すフォトレジスト層3にはネガ型フォトレジストを用いる。ただし、このようにネガ型フォトレジストを用いるような場合に代えて、ポジ型フォトレジストを用いるような場合であってもよく、いわゆるイメージリバーサル法として知られる方法でネガ型として用いることができるからである。なお、上述したように、アンカーコート層2の架橋性物質は数パーセント架橋された状態(すなわち、上記半架橋の状態)であるため、上記フォトレジストの溶剤によって侵されることはない。また、このフォトレジスト層3の塗布形成厚みは、最終的に形成したいスタンパー10の突起部(信号パターンに合わせて形成される)の形成高さに略合致するように形成される。なお、このようにフォトレジスト層3が、アンカーコート層2を介して基盤1上に形成された状態のものは、一般的にブランクスと呼ばれ、複数のブランクスを生産して、まとめて一時的に保管等しておき、その後、上記夫々のブランクスに対して後述する以降の製作工程を施すことが可能である。
【0058】
ここで、スタンパーに再生用のレーザ光を照射して、その反射光を受光することにより、上記スタンパーに記録された信号パターンの記録状態を確認することができるスタンパー再生装置に一般的に用いられる上記再生用のレーザ光(再生用の光の一例である)の波長を吸収する(すなわち、光吸収効果を有する)色素が、上記フォトレジストには含まれている。このような再生用のレーザ光としては、赤外から赤色までの範囲のいずれかの波長、例えば、600〜800nm程度の範囲のいずれかの波長のレーザ光が用いられる。また、例えば、上記スタンパーにより成型される光ディスクがCDであるような場合には、赤外線レーザ光が用いられており、その波長は780nm程度である。また、上記成型される光ディスクがDVDであるような場合には、赤色レーザ光が用いられ、その波長は600〜650nm程度である。上記色素の含有量が多いほど、上記スタンパーの再生における再生SN比(signal noise ratio)を向上させることができる。理想的には、フォトレジスト層3の形成厚み(すなわち、スタンパー10に形成される突起部の形成高さ)が1000オングストローム程度の場合において、上記照射される再生用のレーザ光のうちの30%〜50%程度の上記レーザ光が吸収される程度が望ましい。
【0059】
次に、図1(F)に示すように、信号パターンとして記録すべき信号で変調されたレーザ光4をフォトレジスト層3に照射して複数の露光部を形成する。ここで使われる装置は、レーザビームレコーダと呼ばれ、上記変調されたレーザ光4を照射可能なレーザ光照射装置(図示しない)と、そのレーザ光4を0.3μm程度の微細なスポットに絞る記録レンズ5と、基盤1を保持するとともに、その中心位置される回転軸6の周りに基盤1を回転させる回転駆動部材7とを備えている。また、レーザ光4が記録用の光の一例となっている。また、上記レーザ光照射装置及び記録レンズ5は、上記回転される基盤1の半径方向に沿って移動可能となっているため、基盤1を回転させ、かつ、上記レーザ光照射装置及び記録レンズ5を上記半径方向沿いに移動させながら、レーザ光4をフォトレジスト層3上に照射することにより、フォトレジスト層3には螺旋状に潜像が記録される。この記録に使われるレーザ光4の波長は453nmの青色から351nmの紫外線までの範囲のいずれかの波長のレーザ光が用いられる(すなわち、紫外から青色までの範囲のいずれかの波長の光が用いられ、レーザ光4に用いられる波長の範囲は、上記再生用のレーザ光に用いられる波長の範囲には属さない)。ただし、上記フォトレジストに含有される上記色素には、上記範囲内の波長のレーザ光はほとんど吸収されない。なお、上記フォトレジスト層3に記録形成される上記潜像部分が上記露光部となる。
【0060】
その後、図2(G)に示すように、ベーキング処理を行なう。上記レーザ光4の照射によって、上記夫々の露光部に発生した酸を触媒として、このベーキング処理でフォトレジスト層3における上記夫々の露光部の架橋反応を進行させる。なお、このベーキング処理は、一般に化学増幅型フォトレジストと呼ばれる種類のフォトレジストが、フォトレジスト層3に用いられた場合に行なわれる工程であって、フォトレジストの種類によってはこのベーキング処理が不要な場合もある。
【0061】
その後、図2(H)に示すように、フォトレジスト層3に対して現像処理が行なわれ、上記架橋された部位以外、すなわち、上記夫々の露光部以外(すなわち、未露光部)が溶けて流される。その結果、上記夫々の露光部のみがフォトレジスト突起8(フォトレジストの突起部の一例である)として残る。ただし、この状態の夫々のフォトレジスト突起8とアンカーコート層2とはまだ強固に結合されていない状態である。
【0062】
次に、図2(I)は、アンカーコート層2の上記架橋性物質と夫々のフォトレジスト突起8のフォトレジストとの架橋を更に促進する工程である。上述したように、アンカーコート層2の上記架橋性物質はまだ完全には架橋されていない。また、記録用のレーザ光4が照射されて形成された夫々のフォトレジスト突起8のフォトレジストも、まだ架橋は一部しか進行していない。この工程で両者の架橋をさらに進行させることにより、夫々のフォトレジスト突起8のレジストポリマーとアンカーコート層2との間で相互の架橋が起こり両者の結合を強める。また、各々が架橋によりさらに強固になり、成型時の熱及び熱応力に耐える強度を有することとなる。
【0063】
このような架橋の具体的方法の一例としては、上記現像後の基板1全体(すなわち、フォトレジスト突起8及びアンカーコート層2とを含めた基盤1全体)をプラズマ中に曝す方法がある。上記プラズマとしてはフッ素ガスのプラズマなどが効果的である。上記プラズマ中にフォトレジストを曝すと、プラズマ中のイオンやラジカルによりフォトレジスト自体が削られるので暴露時間は数秒程度に抑える必要がある。このように数秒間のプラズマ処理が施されたフォトレジスト突起8は内部まで硬くされており、強度および耐熱性が向上する。
【0064】
また、上記架橋の方法の別の例としては、上記現像後の基盤1に遠紫外線の照射とその後のベーキング処理により架橋を促進する方法がある。化学増幅型フォトレジストの場合は、上記遠紫外線照射後にベーキング処理することにより架橋を促進することができる。また、化学増幅型ではないノボラック系樹脂では、上記ベーキング処理によりフォトレジスト中の水分を無くした状態で遠紫外線を照射すると架橋がより進行することが知られている。
【0065】
本実施形態においては、例えば、フォトレジスト層3に化学増幅型フォトレジストを用い、上記現像後の基盤1に遠紫外線を照射して、その後、110〜200℃の範囲における温度でベーキング処理を行なう。この場合もアンカーコート層2と夫々のフォトレジスト突起8の架橋が進行し、基盤全体の耐熱温度を250℃以上と向上させることができる。
【0066】
そして、図2(J)は架橋後の基盤であり、夫々のフォトレジスト突起8とアンカーコート層2は一体化された構造物9となっている。これを光ディスク成型機の金型に合うように内外径を加工し、必要に応じ裏面を削ればスタンパー10が完成する。このスタンパー10は、直接成型機の型として光ディスクを成型することができる。従って、従来のガラスマスタリング工法のように電鋳でさらに雄型を作る必要はない。
【0067】
ここで、図2(K)は、上記作製方法により作製されたスタンパー10をスタンパー再生装置(このスタンパー再生装置自体は図示しない)で再生している状態の模式説明図である。図2(K)に示すように、上記スタンパー再生装置は、赤色又は赤外線のレーザ光A及びBを、スタンパー10の表面を走査するようにして照射することが可能となっており、上記照射されたレーザ光A及びBの反射光を受光することにより、スタンパー10において多数のフォトレジスト突起8として記録形成された信号パターンを読み取ることが可能となっている。
【0068】
このような上記スタンパー再生装置を用いて、図2(K)に示すように、フォトレジスト突起8が形成されていない部分に照射された再生用のレーザ光Aは、アンカーコート層2によりほとんど吸収されることなく、アンカーコート層2を透過して基盤1に照射される。そのため、レーザ光Aの反射光は、基盤1の反射率に略支配されることとなる。
【0069】
一方、フォトレジスト突起8に照射されたレーザ光Bは、赤色又は赤外線に対する光吸収効果を有する上記色素が上記フォトレジストに含有されていることにより、上記色素にレーザ光Bが吸収されてその光量が減少される。その後、上記レーザ光Bがフォトレジスト突起8及びアンカーコート層2を透過して基盤1に照射されるが、上記照射されるレーザ光Bの光量自体が減少されているため、その反射光量は減少することとなる。
【0070】
例えば、その形成高さが、1000オングストロームのフォトレジスト突起8において、レーザ光Bの光吸収率が30%であれば、上記照射されるレーザ光Bが30%吸収されて光量が減少され、さらにこの光量が減少されたレーザ光Bの反射光が再びフォトレジスト突起8を透過する際に、その30%が吸収されることとなるため、反射されたレーザ光Bの光量は、照射されたレーザ光Bの光量の49%(すなわち、100%×70%×70%)の光量となる。このように光の吸収が行なわれることにより、レーザ光Aの反射光に比べ、レーザ光Bの反射光を約50%(1/2程度)の光量とすることができ、この光量の差、すなわち光量の変化量を上記スタンパー再生装置において検出することにより、スタンパー10の夫々のフォトレジスト突起8により記録された信号パターンを検出することができる。
【0071】
ここで、上記スタンパー再生装置において、スタンパー10に記録された信号パターンの検出を確実に行なうためには、上述のように反射光量の差が倍近く変化するのが望ましい。しかし、実際のスタンパー再生装置における再生用のレーザ光のスポット径はフォトレジスト突起8よりも大きく、上記照射されるレーザ光のすべてがフォトレジスト突起8に照射される訳ではない(すなわち、上記レーザ光は、上記フォトレジスト突起8を照射するとともに、その周囲近傍の部分も照射することとなる)。そのため、上記反射光量の差は、さらに半分ぐらいに減少する(すなわち、上記光量の変化量が25%程度となる)が、この程度の上記反射光量の差であっても、上記スタンパー再生装置によりスタンパー10に記録された信号パターンを確実に再生することは可能である。従って、上記スタンパー再生装置による上記信号パターンの検出は、上記光量の差(変化量)を、例えば、20〜50%程度の範囲とすることにより、確実に行なうことができる。
【0072】
また、夫々のフォトレジスト突起8での上記照射されたレーザ光Bの光の吸収量は、フォトレジスト層3を形成するフォトレジストに添加される(含有される)上記色素の含有量に比例し、上記含有量を多くする程、上記光の吸収量を大きくすることができる。従って、上記色素の添加量(含有量)は、上記信号パターンを確実に検出できるような上記光量の差(変化量)が得られる範囲で調整される。
【0073】
なお、上記再生用のレーザ光がフォトレジスト突起8に照射されたとき、上記フォトレジスト突起8による回折も生じることとなるが、フォトレジストより形成されているフォトレジスト突起8の表面反射率は、金属であるニッケルにより形成されている基盤1の表面反射率に比べかなり小さく、上記回折による光量変化も小さくなり、この回折が上記信号パターンの検出に影響を与えることはない。
【0074】
なお、アンカーコート層2には、その形成材料として有機ポリマーなどの架橋性物質が用いられるが、このような形成材料に代えて、上記色素を含んだフォトレジストを用いることもできる。このような場合にあっては、上記再生用のレーザ光は、スタンパーの表面において、フォトレジスト突起8が形成されている部分と、形成されていない部分との両方で、光吸収効果を有することとなった上記アンカーコート層2にて光量減少を起こすが、両者の光量変化の比率は同じであるため、上記スタンパー再生装置による上記信号パターンの検出を行なうことができる。
【0075】
なお、上記の説明においては、基盤1にアンカーコート層2を設けた場合について説明したが、本実施形態はこのような場合にのみ限定されるものではない。例えば、従来のダイレクトマスタリング工法の1つとして説明した図5に示すような上記アンカーコート層を形成しないで、夫々のフォトレジスト突起を直接的に基盤の上面に形成するような場合においても、本発明を適用することができる。
【0076】
このような場合におけるスタンパー20の模式断面図を図3に示す。図3に示すように、スタンパー20においては、基盤21の上面に多数のフォトレジスト突起22が形成されている。また、この夫々のフォトレジスト突起22を形成するフォトレジストには、上記色素が含有されており、夫々のフォトレジスト突起22は、照射される上記再生用のレーザ光に対して光吸収効果を有している。従って、スタンパー20が上記スタンパー再生装置により再生されるような場合には、フォトレジスト突起22が形成されていない部分に照射されるレーザ光Aの反射光と、フォトレジスト突起22に照射されるレーザ光Bの反射光との間に光量の差(変化)を生じさせることができ、この光量の差を検出することにより、スタンパー20に記録された信号パターンの記録状態を確実に検出することができる。よって、このようなスタンパー20であっても、スタンパー10と同様な効果を得ることができる。
【0077】
(実施形態による効果)
上記実施形態によれば、製作工程の数が少なく、低コストで高品質な光ディスク成型用のスタンパーを作製することができるダイレクトマスタリング工法により作製されるスタンパーであっても、スタンパー再生装置により上記作製されたスタンパー自体に記録された信号パターンの再生を行なうことができる。
【0078】
具体的には、従来の上記ダイレクトマスタリング工法により作製されたスタンパーにおいては、上記信号パターンが記録されている部分である多数の突起が、フォトレジストの作用を有する架橋性物質により形成されているため、上記スタンパー再生装置の再生用のレーザ光を上記突起に照射したような場合であっても、上記レーザ光はそのまま上記突起を透過して、ニッケル基盤の表面において反射されることとなるため、上記突起が形成されていない部位に照射された上記レーザ光のニッケル基盤の表面での反射光との差異を検出することができないという問題を、上記突起に光吸収効果を与えることにより解決することができる。
【0079】
すなわち、スタンパー10において、上記スタンパー再生装置にて再生用のレーザ光として用いられている赤外から赤色までの範囲のいずれかの波長の光に対して光吸収効果を有する色素を、フォトレジストに含有させて、上記フォトレジストを用いて多数のフォトレジスト突起8が形成されていることにより、上記レーザ光をフォトレジスト突起8において吸収させてその光量を減少させた状態で、基盤1の表面において反射させた反射光と、フォトレジスト突起8が形成されていない部位に照射されたレーザ光の反射光との間に光量に差を持たせることができる。
【0080】
従って、上記ダイレクトマスタリング工法により作製されたスタンパー10を、上記スタンパー再生装置により確実に再生することができ、スタンパー10における信号パターンの形成状態を確実に検出することができる。そのため、このようなスタンパー10により多数の光ディスクが成型される前に、スタンパー10の品質を検査することができ、この段階でスタンパー10への信号パターンの記録不良等があった場合に、上記不良を確実に検出して、その検出結果を素早くスタンパー10の製作工程にフィードバックすることができ、上記不良による損害の発生を最小限に抑えることができる。よって、スタンパーの品質をさらに向上させることができる光ディスク成型用のスタンパーを提供することができる。
【0081】
また、このように、上記色素がフォトレジスト突起8のもととなるフォトレジスト層3に含有されていても、上記フォトレジスト突起8の形成するための信号パターン記録用のレーザ光(紫外から青色までの範囲の光)に対しては、上記色素は光吸収効果を有さないため、上記色素をフォトレジストに含有させることが、スタンパーの作製工程に影響を与えることはない。
【0082】
さらに、上述のような夫々の効果は、フォトレジストに上記色素を含有させることにより達成することができるものであるから、上記スタンパー作製工程に新たな工程を追加するものでもなく、上記スタンパー作製に要する時間を増加させることもなく、効率的にスタンパーを作製することができる。
【0083】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0084】
【発明の効果】
本発明の上記第1態様又は上記第9態様によれば、製作工程の数が少なく、低コストで高品質な光ディスク成型用基盤を作製することができるいわゆるダイレクトマスタリング工法により作製される上記光ディスク成型用基盤であっても、上記光ディスク成型用基盤の再生装置により上記作製された上記光ディスク成型用基盤に記録された信号パターンの再生を行なうことができる。
【0085】
具体的には、従来の上記ダイレクトマスタリング工法により作製された光ディスク成型用基盤においては、上記信号パターンが記録されている部分である多数の突起部が、フォトレジストの作用を有する架橋性物質により形成されているため、上記再生装置の再生用の光を上記突起部に照射したような場合であっても、上記再生用の光はそのまま上記突起部を透過して、基盤の表面において反射されることとなるため、上記突起部が形成されていない部位に照射された上記再生用の光の上記基盤の表面での反射光との差異を検出することができないという問題を、上記突起部に光吸収効果を与えることにより解決することができる。
【0086】
すなわち、光ディスク成型用基盤において、上記再生装置にて上記再生用の光に対して光吸収効果を有する色素を、フォトレジストに含有させて、上記フォトレジストを用いて多数のフォトレジストの突起部が形成されていることにより、上記再生用の光を上記夫々の突起部において吸収させてその光量を減少させた状態で、基盤の表面において反射させた反射光と、この上記突起が形成されていない部位に照射された上記再生用の光の反射光との間に光量に差を持たせることができる。
【0087】
従って、上記ダイレクトマスタリング工法により作製された光ディスク成型用基盤を、上記再生装置により確実に再生することができ、上記光ディスク成型用基盤における上記信号パターンの形成状態を確実に検出することができる。そのため、このような光ディスク成型用基盤により多数の光ディスクが成型される前に、上記光ディスク成型用基盤の品質を検査することができ、この段階で上記光ディスク成型用基盤への信号パターンの記録不良等があった場合に、上記不良を確実に検出して、その検出結果を素早く上記光ディスク成型用基盤の製作工程にフィードバックすることができ、上記不良による損害の発生を最小限に抑えることができる。よって、上記光ディスク成型用基盤の品質をさらに向上させることができる光ディスク成型用基盤及びその製造方法を提供することができる。
【0088】
本発明の上記第2態様、上記第3態様、上記第10態様、又は上記第11態様によれば、上記光ディスク成型用基盤の上記再生装置において用いられる上記再生用の光として、赤外から赤色までの範囲のいずれかの波長の光が用いられていることを考慮して、上記色素に赤外から赤色までの範囲の波長の光に対しての上記光吸収効果を備えさせることにより、上記第1態様又は上記第9態様による効果を効果的に得ることができる。
【0089】
また、上記光ディスク成型用基盤の製作において、上記信号パターンの形成のために用いられる上記信号パターンの記録用の光として、上記赤外から赤色までの範囲に属さない波長を有する光が用いられることにより、上記色素が上記フォトレジストに含まれても、上記光ディスク成型用基盤の製作工程に影響を与えることはない。また、特にこのような上記記録用の光には、紫外から青色までの範囲のいずれかの波長の光が用いられることが多いが、上記紫外から青色までの範囲は、上記赤外から赤色までの範囲とは完全に異なる範囲であるため、上記光ディスク成型用基盤の製作工程に影響を与えることはない。
【0090】
本発明の上記第4態様によれば、上記基盤が金属で形成されていることにより、上記再生用の光を高い反射率でもって上記基盤の表面において確実に反射することができ、より確実に上記光ディスク成型用基盤よりの反射光の検出を行なうことができる。従って、上記光ディスク成型用基盤における上記信号パターンの形成状態を確実に検出することができる。
【0091】
本発明の上記第5態様又は第6態様によれば、上記色素を上記フォトレジストの含ませるような場合であっても、従来のダイレクトマスタリング工法を適用することができ、熱及び熱応力に強い光ディスク成型用基盤を提供することができる。
【0092】
本発明の上記第7態様によれば、上記夫々の突起部に照射された上記再生用の光の上記夫々の突起部よりの反射光量が、上記基盤に照射された上記再生用の光の上記基盤よりの反射光量の1/2程度となるように、上記色素が上記再生用の光を吸収することにより、より確実に、市販されている上記再生装置を用いて、上記信号パターンの検出を行うことができる。
【0093】
本発明の上記第8態様によれば、上記光ディスク成型用基盤は、直接的に光ディスクを成型可能な光ディスク成型用スタンパーであることにより、より少ない工程で上記スタンパーを製作することができ、上記夫々の態様による効果に加えて、高品質かつ低コストの上記スタンパーを提供することができる。
【0094】
本発明の上記第12態様によれば、製作工程の数が少なく、低コストで高品質な光ディスク成型用基盤を作製することができるいわゆるダイレクトマスタリング工法により作製される上記光ディスク成型用基盤であっても、上記光ディスク成型用基盤の再生装置により上記作製された上記光ディスク成型用基盤に記録された信号パターンの再生を行なうことができる上記光ディスク成型用基盤のブランクスを提供することができる。
【0095】
具体的には、従来の上記ダイレクトマスタリング工法により作製された光ディスク成型用基盤においては、上記信号パターンが記録されている部分である多数の突起部が、フォトレジストの作用を有する架橋性物質により形成されているため、上記再生装置の再生用の光を上記突起部に照射したような場合であっても、上記再生用の光はそのまま上記突起部を透過して、基盤の表面において反射されることとなるため、上記突起部が形成されていない部位に照射された上記再生用の光の上記基盤の表面での反射光との差異を検出することができないという問題を、上記突起部の基となるフォトレジスト層に光吸収効果を与えることにより解決することができる。
【0096】
すなわち、光ディスク成型用基盤のブランクスにおいて、上記再生装置にて上記再生用の光に対して光吸収効果を有する色素を、上記フォトレジスト層に含有させて、この上記ブランクスを用いて上記フォトレジスト層を加工し、多数のフォトレジストの突起部を形成することにより、上記再生用の光を上記夫々の突起部において吸収させてその光量を減少させた状態で、基盤の表面において反射させた反射光と、この上記突起が形成されていない部位に照射された上記再生用の光の反射光との間に光量に差を持たせることができる上記光ディスク成型用基盤を製作することができる。
【0097】
従って、このようなブランクスを用いて、上記ダイレクトマスタリング工法により作製された光ディスク成型用基盤を、上記再生装置により確実に再生することができ、上記光ディスク成型用基盤における上記信号パターンの形成状態を確実に検出することができ、上記光ディスク成型用基盤の品質をさらに向上させることができる光ディスク成型用基盤のブランクスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる光ディスク成型用のスタンパーの製造方法を示す模式説明図であり、(A)は基盤の表面にアンカーコート層が塗布形成された状態であり、(B)はベーキング処理が行われている状態であり、(C)は紫外線照射を行なっている状態であり、(D)はポストエクスポージャーベーキングを行なっている状態であり、(E)はさらにフォトレジスト層を塗布形成している状態であり、(F)は記録用のレーザ光を照射して露光部を形成している状態を示す。
【図2】図1に続く上記スタンパーの製作方法を示す模式説明図であり、(G)は上記露光部の形成後のベーキング処理が行われている状態であり、(H)は現像処理が行なわれている状態であり、(I)は架橋促進が行なわれている状態であり、(J)はスタンパーが完成した状態であり、(K)は完成されたスタンパーを再生している状態を示す。
【図3】上記実施形態の変形例にかかる光ディスク成型用のスタンパーの模式断面図である。
【図4】従来の夫々の製造方法により作製されたスタンパーを再生している状態の模式説明図であり、(A)は電鋳により作製されたスタンパーであり、(B)はダイレクトマスタリング工法により作製されて、基盤上に直接突起が形成されたスタンパーであり、(C)はダイレクトマスタリング工法により作製されて、基盤上にアンカーコート層を介して突起が形成されたスタンパーである。
【図5】従来のダイレクトマスタリング工法によるスタンパーの製造方法を示す模式説明図であり、(A)は基盤の表面にアンカーコート層が塗布形成された状態であり、(B)はベーキング処理が行われている状態であり、(C)は紫外線照射を行なっている状態であり、(D)はポストエクスポージャーベーキングを行なっている状態であり、(E)はさらにフォトレジスト層を塗布形成している状態であり、(F)は記録用のレーザ光を照射して露光部を形成している状態を示す。
【図6】図5に続く上記スタンパーの製作方法を示す模式説明図であり、(G)は上記露光部の形成後のベーキング処理が行われている状態であり、(H)は現像処理が行なわれている状態であり、(I)は架橋促進が行なわれている状態であり、(J)はスタンパーが完成した状態を示す。
【図7】従来のダイレクトマスタリング工法によるスタンパーの製造方法を示す模式説明図であり、(A)は基盤の表面にフォトレジスト層が塗布形成された状態であり、(B)は記録用のレーザ光を照射して露光部を形成している状態であり、(C)は現像処理が行なわれている状態であり、(D)はスタンパーが完成した状態を示す。
【符号の説明】
1…基盤、2…アンカーコート層、3…フォトレジスト層(色素が含有されている)、4…記録用のレーザ光、5…記録レンズ、6…回転駆動部材の回転軸、7…回転駆動部材、8…フォトレジスト突起、9…フォトレジスト突起とアンカーコート層とが一体化された構造物、10…光ディスク成型用のスタンパー、20…光ディスク成型用のスタンパー、21…基盤、22…フォトレジスト突起、40…従来のスタンパー、50…従来のスタンパー、60…従来のスタンパー、A…再生用のレーザ光、B…再生用のレーザ光。
Claims (12)
- 基盤と、上記基盤上において信号パターンの記録用の光でもって上記信号パターンに対応した形状に形成された複数のフォトレジストの突起部とを備える光ディスク成型用基盤であって、
上記夫々の突起部が、上記信号パターンの再生用の光に対して光吸収効果を有する色素を含んでいることを特徴とする光ディスク成型用基盤。 - 上記再生用の光は、上記記録用の光の波長が属さない赤外から赤色までの範囲のいずれかの波長のレーザ光である請求項1に記載の光ディスク成型用基盤。
- 上記記録用の光は、紫外から青色までの範囲のいずれかの波長のレーザ光である請求項1又は2に記載の光ディスク成型用基盤。
- 上記基盤は、金属で形成されている請求項1から3のいずれか1つに記載の光ディスク成型用基盤。
- 架橋性物質により上記基盤上に形成されたアンカーコート層をさらに備え、上記夫々の突起部は、上記アンカーコート層に一体的に結合された状態でその上面に形成されている請求項1から4のいずれか1つに記載の光ディスク成型用基盤。
- 上記架橋性物質は、有機ポリマーである請求項5に記載の光ディスク成型用基盤。
- 上記夫々の突起部に照射された上記再生用の光の上記夫々の突起部よりの反射光量が、上記基盤に照射された上記再生用の光の上記基盤よりの反射光量の1/2程度となるように、上記色素は上記再生用の光を吸収する請求項1から6に記載の光ディスク成型用基盤。
- 請求項1から7のいずれか1つに記載の光ディスク成型用基盤は、直接的に光ディスクを成型可能な光ディスク成型用スタンパーであることを特徴とする光ディスク成型用基盤。
- 基盤と、上記基盤において信号パターンに対応した形状に形成された複数のフォトレジストの突起部とを備える光ディスク成型用基盤の製造方法において、
上記信号パターンの再生用の光に対して光吸収効果を有する色素を含有するフォトレジスト層を上記基盤上に形成し、
上記信号パターンにより変調された上記信号パターンの記録用の光を上記フォトレジスト層に照射して、上記フォトレジスト層に複数の露光部を形成し、
その後、現像によって上記フォトレジスト層の上記夫々の露光部を残して、上記フォトレジスト層の未露光部を除去し、上記信号パターンに対応しかつ上記色素を含有する上記夫々のフォトレジストの突起部を形成することを特徴とする光ディスク成型用基盤の製造方法。 - 上記再生用の光は、上記記録用の光の波長が属さない赤外から赤色までの範囲のいずれかの波長のレーザ光である請求項9に記載の光ディスク成型用基盤の製造方法。
- 上記記録用の光は、紫外から青色までの範囲のいずれかの波長のレーザ光である請求項9又は10に記載の光ディスク成型用基盤の製造方法。
- 基盤と、上記基盤上に形成され、上記信号パターンに対応した形状の複数のフォトレジストの突起部が形成されるフォトレジスト層とを備える光ディスク成型用基盤のブランクスであって、
上記フォトレジスト層が、上記信号パターンの再生用の光に対して光吸収効果を有する色素を含んでいることを特徴とする光ディスク成型用基盤のブランクス。
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JP2016175287A (ja) * | 2015-03-20 | 2016-10-06 | 日本電気株式会社 | 積層造形構造体 |
-
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- 2002-10-30 JP JP2002316046A patent/JP2004152397A/ja active Pending
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