JP2004062982A - スタンパー用ブランク盤の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アンカーコート層に残った酸(H+)がその上に形成されたレジスト層に拡散し、露光・現像後のレジスト突起の形状に影響を与えること。
【解決手段】基盤の表面に架橋性物質層及びフォトレジスト層を順次形成し、前記フォトレジスト層にレーザビームを照射することで露光した後、前記フォトレジスト層を現像すると共に前記フォトレジスト層の未露光部を除去し、前記フォトレジスト層を突起形状に形成した後、前記突起と架橋性物質層とを架橋反応させることでスタンパー用のブランク盤を製造する方法であって、前記架橋性物質層を形成した後、前記架橋性物質層を塩基性ガスの雰囲気に曝すことで解決することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】基盤の表面に架橋性物質層及びフォトレジスト層を順次形成し、前記フォトレジスト層にレーザビームを照射することで露光した後、前記フォトレジスト層を現像すると共に前記フォトレジスト層の未露光部を除去し、前記フォトレジスト層を突起形状に形成した後、前記突起と架橋性物質層とを架橋反応させることでスタンパー用のブランク盤を製造する方法であって、前記架橋性物質層を形成した後、前記架橋性物質層を塩基性ガスの雰囲気に曝すことで解決することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスクを成形する際に使用されるダイレクトスタンパーを作製するためのブランク盤の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、光ディスクの製造は、一般にポリカーボネートなどの樹脂を射出成形することによって大量生産される工法が採用されているが、その際に、射出成形機の金型に取り付けられているのがスタンパーである。このスタンパーには、無数の微細な突起が螺旋状に形成されており、光ディスクではそれが転写されて情報を表すピット(窪み)となっている。
【0003】
前述するスタンパーを作製する工程が、マスタリングと呼ばれるものである。以下、このマスタリングについて詳細に説明する。
【0004】
まず、フォトリソグラフィーと呼ばれる技術を用いて、ガラス盤上に信号に対応したフォトレジストの凹凸のパターンを形成することから始まる。ガラス盤上のポジ型フォトレジスト層に、記録すべき信号に対応して強度変調されたレーザビームを螺旋状に露光し、現像することによって、レジストのピット(窪み)を螺旋状に形成する。
【0005】
その後、その表面に導電性膜を形成し、更に、その上に電鋳によりニッケルの厚膜を形成する。その厚膜は0.3mm程度であり、それを元のガラス盤から剥がしてスタンパーとするものである。このニッケル盤には、フォトレジストのピットが転写された突起(バンプ)が螺旋状に形成されている。このニッケル盤をスタンパーとして射出成形機の金型に取り付け、金型で射出成形することにより、情報を含んだピット列を有するディスクができる。
【0006】
このスタンパーを作製する工程は、一般にガラスマスタリングと呼ばれるが、10を超える工程を有することから、過大な時間やコストが掛かるとされている。また、処理工程を多数要するために、塵埃や人為的ミスなどによる欠陥も多く見受けられ、歩留まりを低下させることにも繋がっていた。
【0007】
そこで今日では、多くの工程を要せず、より少ない工程でスタンパーを作製する試みがなされつつある。
【0008】
例えば、特許第2765421号公報には、基盤の上に架橋性無機物または架橋性有機物層を設け、記録信号で強度変調されたレーザビームを照射し、現像することにより基盤上に信号パターンに対応した突起部を設け、更に、加熱により前記突起部を強固なものにした後、その基盤を直接スタンパーとする工法が開示されている。ガラスマスタリングと区別するために、この工法をダイレクトスタンパー工法と呼ぶ。
【0009】
以下、図3を参照しながら前述するダイレクトスタンパー工法を説明する。
【0010】
まず、図3(A)のように、ニッケル基盤31の表面に架橋性無機物または架橋性有機物などのフォトレジスト32が塗布される。次に、図3(B)のように、信号変調されたレーザビーム34が記録レンズ33を介してフォトレジスト32に照射され、露光される。続いて、図3(C)のように、レーザ露光の潜像としての露光部が局所的に加熱されて架橋され、パターン35を得る。これを現像することで図3(D)のように未露光部は溶解され、露光部のみがパターン36として残る。
【0011】
これらパターン36として残った架橋性物質は、いわゆるネガ型レジストの作用を有する。そして、このパターン36を有するニッケル基盤31を300℃の高温でハードベークすることによって、パターン36の部分は架橋が促進され強固になる。このようにして作られた基盤をそのままスタンパーにするのである。
【0012】
また、特開平7−326077号公報にも、基盤上にフォトレジストの突起を形成し、高温加熱により架橋を促進した後、直接それをスタンパーとして用いる方法が開示されている。
【0013】
ここで特許第2765421号と特開平7−326077号公報とに記載された発明の技術的な差異について考える。
【0014】
前者の発明は、信号変調されたレーザビームの熱で選択的に架橋を起こすのに対し、後者の発明は、フォトレジストを選択的に露光し、酸を発生させる点で異なる。後者の発明は、その後、フォトレジストを選択的に露光し、酸を発生させた後、全体を加熱することにより酸が触媒となり露光部のみに架橋を起こさせる。次に、全体を露光すると、前回未露光であったところに酸が生成され、かつ、そこは架橋されていないので現像液で溶解され、最初に露光されたところが突起として残るのである。
【0015】
前述するスタンパーは、何れもニッケル基盤の上に有機または無機のフォトレジストの突起を形成したものである。高温ベークによって、フォトレジストの硬度は高くなっているが、本来金属との接着力はそれほど強いものではない。また、DVDの場合、フォトレジストの突起の幅は0.3μm、長さは最短のもので0.4μmと接着面積は非常に小さい。
【0016】
スタンパーは射出成形機の金型に取り付けられ、鏡面金型とキャビティを形成する。その中に高温の樹脂が高圧で注入される。その時、高圧の樹脂はレジスト突起を引き剥がす作用を起こす。
【0017】
また、一般に金型の温度は100℃前後に設定されているが、注入される樹脂は約300℃以上の高温である。樹脂の射出によってスタンパー表面温度は上昇し、成形ディスクの取り出しによって元の温度に戻るという熱膨張と収縮が繰り返される。ニッケルのような金属とフォトレジストとの熱膨張係数には大きな違いがあり、その熱膨張の違いによる応力が繰り返しレジスト突起に作用し、遂には基盤から剥離させてしまうことになる。
【0018】
上記の問題を解決する方法としては、特願2001−324707に記載された発明があり、ニッケル基盤上に接着層となるアンカーコート層を設け、その上にフォトレジストの突起を形成することで、成形時の突起の剥がれを低減させようとするものである。以下、特願2001−324707に記載された工法を図4を参照しながら説明する。
【0019】
図4(A)は、ニッケルなどの基盤41の上に、有機ポリマーなどの架橋性物質を塗布しアンカーコート層42を形成した状態を示す。このとき、基盤41は、ニッケルの他に、ニッケル合金、シリコン、アルミ、銅などの金属、更には、ガラス、セラミックなどでもよい。
【0020】
図4(B)は、同図(A)に続くベーキング処理を示し、このベーキング処理は塗布後に溶剤を蒸発させるプリベークとして、80℃から90℃程度の比較的低温で行なわれる。架橋性物質は、化学増幅型レジストのような露光で酸を発生させ、それに続くベーキングで先ほどの酸が触媒となって架橋を起こすものが用いられる。引き続き、図4(C)に示すように、基盤41全体に対して紫外線を照射する。更に、図4(D)に示すようなベーキング処理を経て、ポリマー鎖を架橋させる。図4(D)は、露光後のベーキングであり、いわゆるポストエクスポージャーベークと呼ばれるものが行われた状態である。このとき、紫外線を照射することで発生した酸が触媒となって架橋反応を引き起こしている。但し、この段階の架橋性物質の架橋は完全ではなく、半架橋の状態にする。
【0021】
この理由は、図4(E)に示す工程において、フォトレジスト43をアンカーコート層42の上に塗布するが、フォトレジスト43の溶剤にアンカーコート層42が溶解しない程度、すなわち実質的に犯されない程度に架橋する。一般に有機ポリマーでは数パーセントで架橋が進行すると溶剤に溶けなくなることが知られている。図4(E)は、アンカーコート層42の上にフォトレジスト43が形成された状態を示す。これをブランク盤と呼ぶ。
【0022】
このフォトレジスト43はネガ型レジストを用いる。レジスト塗布時、アンカーコート層42の架橋性物質は数パーセント以上架橋された状態で、フォトレジスト43の溶剤によって犯されることが少ない。レジストが塗布された後は、プリベーク処理を経て、レジストの溶剤を飛ばしレジスト層を安定化させるためのベーキング処理が行われる。
【0023】
図4(F)は、記録すべき信号で変調されたレーザビーム44をフォトレジスト43に照射する状態を示す。このレーザビーム44をフォトレジスト43に照射する装置は、レーザビームレコーダと呼ばれ、図4(F)には、記録すべき信号で変調された後のレーザビーム44と、このレーザビーム44を0.3ミクロン程度の微細なスポットに絞る記録レンズ45、更に、基盤41を回転軸46の周りに回転させる回転駆動部材47のみを示す。記録レンズ45は、回転する基盤41の半径方向に沿って移動するので、フォトレジスト43には螺旋状に潜像が記録される。
【0024】
図4(G)は、露光後のベーキングを示し、露光部に発生した酸が触媒となり、ベーキング処理でレジストの架橋反応が連鎖反応的に進む状態である。これは一般に、化学増幅型レジストと呼ばれる種類のレジストであるが、レジストの種類によっては露光後のベーキング処理が不要の場合もある。
【0025】
図4(H)は、現像処理を示し、架橋された部位以外が溶けて除去される。結果として、露光部がレジスト突起48として残る。この状態では、レジスト突起48と架橋性物質層42とはまだ強固に結合されていない。
【0026】
図4(I)は、アンカーコート層42の架橋性物質と、レジスト突起48のレジストとの架橋を一層強固に促進する工程を示す。前述したように、図4(H)ではアンカーコート層42の架橋性物質は完全には架橋されておらず、また、記録レーザで露光されたレジスト突起48のレジストも、まだ架橋は一部しか進行していない。本工程でレジスト突起48と架橋性物質層42の架橋を一層促進させることにより、レジスト突起48のレジストポリマーとアンカーコート層42との間で相互の架橋が起こり両者の結合を強固にする。また、夫々が架橋により一層強固になり、成形時の熱と応力に耐え得る強度を与える。
【0027】
架橋を行う具体的な方法の一つとしては、現像後の基盤全体をプラズマ中に曝す方法がある。一般にプラズマ中にレジストを曝すと、プラズマ中のイオンやラジカルによりレジスト自体が削られることから、プラズマに曝す時間は数秒程度に抑える必要がある。数秒間プラズマ処理されたレジストは内部まで硬くなる傾向にあることから、強度および耐熱性が向上するというものである。プラズマとしては、フッ素ガスのプラズマなどが効果的である。
【0028】
もう一つの架橋の方法としては、現像後の基盤に紫外線の中でも波長が300nm以下の遠紫外線を照射し、その後のベーキングにより架橋を促進する方法である。化学増幅型レジストの場合は、遠紫外線を照射した後、ベーキングすることで、照射で発生した酸(H+)が触媒となり連鎖反応的に架橋が促進されるが、化学増幅型ではない場合、例えばノボラック系樹脂などでは、ベーキングによりレジスト中の水分を低減させた状態で遠紫外線を照射すると架橋がより進行することが知られている。
【0029】
一例としては、化学増幅型のフォトレジスト43を用いて、現像後の基盤41に遠紫外線を照射し、その後110℃から200℃の間でベーキング処理を行った。この場合も、アンカーコート層42とフォトレジスト43の架橋が進行し、基盤全体の耐熱温度は250℃以上にまで上がったことを確認した。
【0030】
図4(J)は、架橋後の基盤を示し、アンカーコート層42とレジスト突起48が一体化された構造物49になっている。これを射出成形機の金型に取り付けることでスタンパーが完成する。
【0031】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述する従来技術では、架橋反応を起こしたアンカーコート層42の上にフォトレジスト43を設ける工程(図4(E))において、アンカーコート層42の中に触媒となった酸が残留しやすくなるという問題が生じる。
【0032】
以下、上記現象を説明を図5を参照しながら説明する。
【0033】
図5は、この状態を模式的に示したものであり、同図(A)は、アンカーコート層52に酸(H+)が残留する状態である。この酸(H+)は有機ポリマーであるアンカーコート層52からフォトレジスト53の中に拡散する性質を持っている(同図(B))。一般にフォトレジスト53の残存溶剤が多いほど拡散しやすい傾向にあり、フォトレジスト53の塗布後に溶剤を飛ばすためにプリベークを行うが、それでも完全に溶剤は無くならず数パーセントはフォトレジスト53に残留してしまう。
【0034】
続けて、図5(C)は、フォトレジスト53に酸(H+)が拡散した後にレーザビーム54を照射することで、フォトレジスト53を露光させて露光部を形成している状態を示す。本来、この露光でレーザスポットが照射された部分のみに酸(H+)が発生する。その後、上記従来の技術(図4(G)付近)で説明したように、酸(H+)が触媒となり架橋が起こる。このときのレーザスポットの強度は、ガウシャン分布をしており、発生する酸(H+)もその強度分布に従ったものとなる。ところが、露光部分の周囲に拡散された酸(H+)が既に存在していると露光で発生した酸(H+)と相乗効果を引き起こし、レーザスポットの強度は、最終的に架橋される部分の形状が露光のみの場合に比べ大きくなってしまう。また、アンカーコート層52からフォトレジスト53に酸が拡散する速度は、残留溶剤量や周囲の温度などに影響され一定ではなく、数週間から数ヶ月の範囲でばらつく傾向にある。
【0035】
以上のことから、露光する時期やブランク盤の保管状況によって、図4(H)に示す現像後に形成されるレジスト突起48のサイズにばらつきが生じる。また、図5(D)は、現像後のレジスト突起58の状態であり、往々にして台形に近い形をしていることが多い。例えば、DVDの場合、レジスト突起58の半値全幅は0.3μm程度で、側壁の角度は40〜60°程度の範囲となる。このとき、フォトレジスト53に拡散していた酸(H+)が存在すると、レーザスポットによる露光で発生する酸(H+)の境界がぼやけ、裾野を引いた断面形状になりやすくなる。特に、側壁角度θ2が浅くだれた形状となり、信号再生時の変調度が低下しやすくなるという問題を有することになる。
【0036】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載されたスタンパー用ブランク盤の製造方法は、架橋性物質層及びフォトレジスト層が順次形成されたブランク盤の前記フォトレジスト層にレーザビームを照射することで露光した後、前記フォトレジスト層を現像すると共に前記フォトレジスト層の未露光部を除去し、前記フォトレジスト層を突起形状に形成した後、前記突起と架橋性物質層とを架橋反応させることでスタンパーを作製する工法に用いるブランク盤を製造する方法であって、前記架橋性物質層を形成し架橋反応を起こさせた後、前記架橋性物質層を塩基性ガスの雰囲気に曝すことを特徴とする。
【0037】
また、請求項2に記載されたスタンパー用ブランク盤の製造方法は、請求項1におけるスタンパー用ブランク盤の製造方法において、前記架橋性物質層の架橋反応が、前記架橋性物質層に紫外線を照射し、その後、前記架橋性物質層を加熱することであることを特徴とする。
【0038】
また、請求項3に記載されたスタンパー用ブランク盤の製造方法は、請求項1または2におけるスタンパー用ブランク盤の製造方法において、前記架橋性物質層を塩基性ガスの雰囲気に曝す時間が、1〜5分であることを特徴とする。
【0039】
また、請求項4に記載されたスタンパー用ブランク盤の製造方法は、請求項1または2におけるスタンパー用ブランク盤の製造方法において、架橋性物質層が形成された基盤を回転させながら、前記架橋性物質層に塩基性ガスの蒸気を吹き付けることを特徴とする。
【0040】
更に、請求項5に記載されたスタンパー用ブランク盤の製造方法は、請求項1〜4の何れか一項におけるスタンパー用ブランク盤の製造方法において、塩基性ガスが、ヘキサメチルジシラザン(HMDS),トリエチルアミン,トリプロピュルアミンの何れかであることを特徴とする。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、図1及び図2を参照しながら本発明に係る実施の形態を詳述する。
【0042】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るブランク盤の製造方法の具体的な動作工程を示す。
【0043】
図1(A)は、ニッケルなどの基盤1上にアンカーコート層2が紫外線の照射とポストエクスポーヤーベークによって架橋された状態を示す。このとき、アンカーコート層2の中には、紫外線を照射することで発生した酸(H+)が残留している。
【0044】
続いて、図1(B)に示すように、基盤1上にアンカーコート層2が架橋された状態で、アンカーコート層2を塩基性ガス4の雰囲気に曝し、内部に残留する酸(H+)を失活させる。本実施形態では、塩基性ガスとして、フォトレジストの密着強化に用いられるHMDS(ヘキサメチルジシラザン)を使用した。
【0045】
より詳細に説明すると、底にHMDSが数ミリの厚さで満たされた密閉された容器の中に基盤1を投入した。このとき、アンカーコート層2がHMDSの蒸気に曝される時間は、アンカーコート層2の厚みにも拠るが、本実施形態の100nm程度の場合は、1〜5分で十分な効果があることが確認された。その後、アンカーコート層2に清浄な空気を吹き付け、表面に付着しているHMDSの成分を除去する。仮に、HMDSが表面に残っていると、空気中の水分と反応してアンモニアを生成してしまい、レジスト感度を低下させることになってしまう。
【0046】
次に、図1(C)に示すように、残留酸が失活して無くなったアンカーコート層2a上にフォトレジスト3を形成する。この状態でブランク盤が完成する。更に、図1(D)に示すように、記録すべき信号によって変調されたレーザビーム44を記録レンズで絞り、フォトレジスト3を選択的に露光する。
【0047】
また、図1(E)は、ポストエクスポージャーベークによる加熱と現像処理後にアンカーコート層2aの上にレジスト突起5が形成される状態を示し、この後、アンカーコート層2aとレジスト突起5を架橋してスタンパーを完成させる。このレジスト突起5は、アンカーコート層2aの中に残留酸(H+)が無いので、レーザビーム44の照射部分に対応した形状が形成される。このとき、レジスト突起5の側壁角度θ1は、従来の技術で説明した図3(D)のθ2より大きく、裾野のないクリアな形状となり、所望の形状を得ることができた。
【0048】
ここで、本実施形態と従来の技術との効果を比較する。
【0049】
▲1▼HMDSに曝した基盤と▲2▼曝さなかった基盤を共に40℃の恒温槽に入れ、5日後に露光を施し、レジスト突起を形成させてその形状を測定した。その結果、▲1▼HMDSに曝したものは、側壁角度が51°であったが、▲2▼曝さなったものは、46°であった。また、HMDSに曝さなかったものは、8日間でレジスト突起の幅が50nm以上増加したが、HMDSに曝したものはほとんど変化がなく、その後20日まで環境試験を行った結果においても大きな変化は確認できなかった。
【0050】
(第2の実施形態)
図2は、アンカーコート層2に残留する酸(H+)を失活させる他の方法を示す。図2において、1は第1の実施形態と同様な基盤、2は基盤1上に形成されたアンカーコート層である。このアンカーコート層2は、紫外線照射とそれに続くベーキングで半架橋状態になっている。そして、アンカーコート層2の内部には、架橋の際の触媒となった酸(H+)が残留している。6は基盤1を載置して回転駆動系(図示しない)で回転する回転テーブルである。7はHMDSの蒸気8を噴出するノズルである。9はチャンバー、10は排気ダクトである。
【0051】
具体的な動作工程は、ノズル7よりHMDSの蒸気を出しながら半径方向に移動し、回転駆動系によって回転するアンカーコート層2上にHMDSの蒸気8が満たされる。このように、装置構成によって、アンカーコート層2に残留する酸(H+)を失活させることが可能となる。
【0052】
上記工程の作用時間は、第1の実施形態と同様で1〜5分の間であり、発明者はその効果も確認した。また、HMDSの吹き付けを終了してから回転テーブル6の回転数を高め、チャンバー9の排気ダクト10からチャンバー1内に残留したHMDSの蒸気を排気する場合、排気時間を約5分で行った結果、アンカーコート層2の表面からHMDSの雰囲気を除去できたことを確認した。
【0053】
なお、第1及び第2の実施形態では、特に、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を例に挙げ説明を進めてきたが、トリエチルアミン、トリプロピュルアミンで実験した結果においても、HMDSを同様の効果があることを確認した。
【0054】
【発明の効果】
本発明のスタンパー用ブランク盤の製造方法によれば、レジスト突起の形状が露光時のレーザビームスポットに沿った寸法で形成され、側壁角度の大きな値を得ることが可能となる。また、露光時期がばらついたとしても、レジスト突起の形状はほとんど変化することがない。その結果、スタンパーの特性を安定なものにすることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るスタンパー用ブランク盤の製造工程を説明する図
【図2】本発明の第2の実施形態に係るスタンパー用ブランク盤の製造工程を説明する図
【図3】従来の技術におけるダイレクトスタンパー工法の工程図
【図4】従来の技術におけるベースとなるダイレクトスタンパー工法を示す工程図
【図5】従来の技術におけるスタンパーの作製工法を示す模式図
【符号の説明】
1 基盤
2 アンカーコート層
3 フォトレジスト
4 HMDSの蒸気
5 レジスト突起
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスクを成形する際に使用されるダイレクトスタンパーを作製するためのブランク盤の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、光ディスクの製造は、一般にポリカーボネートなどの樹脂を射出成形することによって大量生産される工法が採用されているが、その際に、射出成形機の金型に取り付けられているのがスタンパーである。このスタンパーには、無数の微細な突起が螺旋状に形成されており、光ディスクではそれが転写されて情報を表すピット(窪み)となっている。
【0003】
前述するスタンパーを作製する工程が、マスタリングと呼ばれるものである。以下、このマスタリングについて詳細に説明する。
【0004】
まず、フォトリソグラフィーと呼ばれる技術を用いて、ガラス盤上に信号に対応したフォトレジストの凹凸のパターンを形成することから始まる。ガラス盤上のポジ型フォトレジスト層に、記録すべき信号に対応して強度変調されたレーザビームを螺旋状に露光し、現像することによって、レジストのピット(窪み)を螺旋状に形成する。
【0005】
その後、その表面に導電性膜を形成し、更に、その上に電鋳によりニッケルの厚膜を形成する。その厚膜は0.3mm程度であり、それを元のガラス盤から剥がしてスタンパーとするものである。このニッケル盤には、フォトレジストのピットが転写された突起(バンプ)が螺旋状に形成されている。このニッケル盤をスタンパーとして射出成形機の金型に取り付け、金型で射出成形することにより、情報を含んだピット列を有するディスクができる。
【0006】
このスタンパーを作製する工程は、一般にガラスマスタリングと呼ばれるが、10を超える工程を有することから、過大な時間やコストが掛かるとされている。また、処理工程を多数要するために、塵埃や人為的ミスなどによる欠陥も多く見受けられ、歩留まりを低下させることにも繋がっていた。
【0007】
そこで今日では、多くの工程を要せず、より少ない工程でスタンパーを作製する試みがなされつつある。
【0008】
例えば、特許第2765421号公報には、基盤の上に架橋性無機物または架橋性有機物層を設け、記録信号で強度変調されたレーザビームを照射し、現像することにより基盤上に信号パターンに対応した突起部を設け、更に、加熱により前記突起部を強固なものにした後、その基盤を直接スタンパーとする工法が開示されている。ガラスマスタリングと区別するために、この工法をダイレクトスタンパー工法と呼ぶ。
【0009】
以下、図3を参照しながら前述するダイレクトスタンパー工法を説明する。
【0010】
まず、図3(A)のように、ニッケル基盤31の表面に架橋性無機物または架橋性有機物などのフォトレジスト32が塗布される。次に、図3(B)のように、信号変調されたレーザビーム34が記録レンズ33を介してフォトレジスト32に照射され、露光される。続いて、図3(C)のように、レーザ露光の潜像としての露光部が局所的に加熱されて架橋され、パターン35を得る。これを現像することで図3(D)のように未露光部は溶解され、露光部のみがパターン36として残る。
【0011】
これらパターン36として残った架橋性物質は、いわゆるネガ型レジストの作用を有する。そして、このパターン36を有するニッケル基盤31を300℃の高温でハードベークすることによって、パターン36の部分は架橋が促進され強固になる。このようにして作られた基盤をそのままスタンパーにするのである。
【0012】
また、特開平7−326077号公報にも、基盤上にフォトレジストの突起を形成し、高温加熱により架橋を促進した後、直接それをスタンパーとして用いる方法が開示されている。
【0013】
ここで特許第2765421号と特開平7−326077号公報とに記載された発明の技術的な差異について考える。
【0014】
前者の発明は、信号変調されたレーザビームの熱で選択的に架橋を起こすのに対し、後者の発明は、フォトレジストを選択的に露光し、酸を発生させる点で異なる。後者の発明は、その後、フォトレジストを選択的に露光し、酸を発生させた後、全体を加熱することにより酸が触媒となり露光部のみに架橋を起こさせる。次に、全体を露光すると、前回未露光であったところに酸が生成され、かつ、そこは架橋されていないので現像液で溶解され、最初に露光されたところが突起として残るのである。
【0015】
前述するスタンパーは、何れもニッケル基盤の上に有機または無機のフォトレジストの突起を形成したものである。高温ベークによって、フォトレジストの硬度は高くなっているが、本来金属との接着力はそれほど強いものではない。また、DVDの場合、フォトレジストの突起の幅は0.3μm、長さは最短のもので0.4μmと接着面積は非常に小さい。
【0016】
スタンパーは射出成形機の金型に取り付けられ、鏡面金型とキャビティを形成する。その中に高温の樹脂が高圧で注入される。その時、高圧の樹脂はレジスト突起を引き剥がす作用を起こす。
【0017】
また、一般に金型の温度は100℃前後に設定されているが、注入される樹脂は約300℃以上の高温である。樹脂の射出によってスタンパー表面温度は上昇し、成形ディスクの取り出しによって元の温度に戻るという熱膨張と収縮が繰り返される。ニッケルのような金属とフォトレジストとの熱膨張係数には大きな違いがあり、その熱膨張の違いによる応力が繰り返しレジスト突起に作用し、遂には基盤から剥離させてしまうことになる。
【0018】
上記の問題を解決する方法としては、特願2001−324707に記載された発明があり、ニッケル基盤上に接着層となるアンカーコート層を設け、その上にフォトレジストの突起を形成することで、成形時の突起の剥がれを低減させようとするものである。以下、特願2001−324707に記載された工法を図4を参照しながら説明する。
【0019】
図4(A)は、ニッケルなどの基盤41の上に、有機ポリマーなどの架橋性物質を塗布しアンカーコート層42を形成した状態を示す。このとき、基盤41は、ニッケルの他に、ニッケル合金、シリコン、アルミ、銅などの金属、更には、ガラス、セラミックなどでもよい。
【0020】
図4(B)は、同図(A)に続くベーキング処理を示し、このベーキング処理は塗布後に溶剤を蒸発させるプリベークとして、80℃から90℃程度の比較的低温で行なわれる。架橋性物質は、化学増幅型レジストのような露光で酸を発生させ、それに続くベーキングで先ほどの酸が触媒となって架橋を起こすものが用いられる。引き続き、図4(C)に示すように、基盤41全体に対して紫外線を照射する。更に、図4(D)に示すようなベーキング処理を経て、ポリマー鎖を架橋させる。図4(D)は、露光後のベーキングであり、いわゆるポストエクスポージャーベークと呼ばれるものが行われた状態である。このとき、紫外線を照射することで発生した酸が触媒となって架橋反応を引き起こしている。但し、この段階の架橋性物質の架橋は完全ではなく、半架橋の状態にする。
【0021】
この理由は、図4(E)に示す工程において、フォトレジスト43をアンカーコート層42の上に塗布するが、フォトレジスト43の溶剤にアンカーコート層42が溶解しない程度、すなわち実質的に犯されない程度に架橋する。一般に有機ポリマーでは数パーセントで架橋が進行すると溶剤に溶けなくなることが知られている。図4(E)は、アンカーコート層42の上にフォトレジスト43が形成された状態を示す。これをブランク盤と呼ぶ。
【0022】
このフォトレジスト43はネガ型レジストを用いる。レジスト塗布時、アンカーコート層42の架橋性物質は数パーセント以上架橋された状態で、フォトレジスト43の溶剤によって犯されることが少ない。レジストが塗布された後は、プリベーク処理を経て、レジストの溶剤を飛ばしレジスト層を安定化させるためのベーキング処理が行われる。
【0023】
図4(F)は、記録すべき信号で変調されたレーザビーム44をフォトレジスト43に照射する状態を示す。このレーザビーム44をフォトレジスト43に照射する装置は、レーザビームレコーダと呼ばれ、図4(F)には、記録すべき信号で変調された後のレーザビーム44と、このレーザビーム44を0.3ミクロン程度の微細なスポットに絞る記録レンズ45、更に、基盤41を回転軸46の周りに回転させる回転駆動部材47のみを示す。記録レンズ45は、回転する基盤41の半径方向に沿って移動するので、フォトレジスト43には螺旋状に潜像が記録される。
【0024】
図4(G)は、露光後のベーキングを示し、露光部に発生した酸が触媒となり、ベーキング処理でレジストの架橋反応が連鎖反応的に進む状態である。これは一般に、化学増幅型レジストと呼ばれる種類のレジストであるが、レジストの種類によっては露光後のベーキング処理が不要の場合もある。
【0025】
図4(H)は、現像処理を示し、架橋された部位以外が溶けて除去される。結果として、露光部がレジスト突起48として残る。この状態では、レジスト突起48と架橋性物質層42とはまだ強固に結合されていない。
【0026】
図4(I)は、アンカーコート層42の架橋性物質と、レジスト突起48のレジストとの架橋を一層強固に促進する工程を示す。前述したように、図4(H)ではアンカーコート層42の架橋性物質は完全には架橋されておらず、また、記録レーザで露光されたレジスト突起48のレジストも、まだ架橋は一部しか進行していない。本工程でレジスト突起48と架橋性物質層42の架橋を一層促進させることにより、レジスト突起48のレジストポリマーとアンカーコート層42との間で相互の架橋が起こり両者の結合を強固にする。また、夫々が架橋により一層強固になり、成形時の熱と応力に耐え得る強度を与える。
【0027】
架橋を行う具体的な方法の一つとしては、現像後の基盤全体をプラズマ中に曝す方法がある。一般にプラズマ中にレジストを曝すと、プラズマ中のイオンやラジカルによりレジスト自体が削られることから、プラズマに曝す時間は数秒程度に抑える必要がある。数秒間プラズマ処理されたレジストは内部まで硬くなる傾向にあることから、強度および耐熱性が向上するというものである。プラズマとしては、フッ素ガスのプラズマなどが効果的である。
【0028】
もう一つの架橋の方法としては、現像後の基盤に紫外線の中でも波長が300nm以下の遠紫外線を照射し、その後のベーキングにより架橋を促進する方法である。化学増幅型レジストの場合は、遠紫外線を照射した後、ベーキングすることで、照射で発生した酸(H+)が触媒となり連鎖反応的に架橋が促進されるが、化学増幅型ではない場合、例えばノボラック系樹脂などでは、ベーキングによりレジスト中の水分を低減させた状態で遠紫外線を照射すると架橋がより進行することが知られている。
【0029】
一例としては、化学増幅型のフォトレジスト43を用いて、現像後の基盤41に遠紫外線を照射し、その後110℃から200℃の間でベーキング処理を行った。この場合も、アンカーコート層42とフォトレジスト43の架橋が進行し、基盤全体の耐熱温度は250℃以上にまで上がったことを確認した。
【0030】
図4(J)は、架橋後の基盤を示し、アンカーコート層42とレジスト突起48が一体化された構造物49になっている。これを射出成形機の金型に取り付けることでスタンパーが完成する。
【0031】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述する従来技術では、架橋反応を起こしたアンカーコート層42の上にフォトレジスト43を設ける工程(図4(E))において、アンカーコート層42の中に触媒となった酸が残留しやすくなるという問題が生じる。
【0032】
以下、上記現象を説明を図5を参照しながら説明する。
【0033】
図5は、この状態を模式的に示したものであり、同図(A)は、アンカーコート層52に酸(H+)が残留する状態である。この酸(H+)は有機ポリマーであるアンカーコート層52からフォトレジスト53の中に拡散する性質を持っている(同図(B))。一般にフォトレジスト53の残存溶剤が多いほど拡散しやすい傾向にあり、フォトレジスト53の塗布後に溶剤を飛ばすためにプリベークを行うが、それでも完全に溶剤は無くならず数パーセントはフォトレジスト53に残留してしまう。
【0034】
続けて、図5(C)は、フォトレジスト53に酸(H+)が拡散した後にレーザビーム54を照射することで、フォトレジスト53を露光させて露光部を形成している状態を示す。本来、この露光でレーザスポットが照射された部分のみに酸(H+)が発生する。その後、上記従来の技術(図4(G)付近)で説明したように、酸(H+)が触媒となり架橋が起こる。このときのレーザスポットの強度は、ガウシャン分布をしており、発生する酸(H+)もその強度分布に従ったものとなる。ところが、露光部分の周囲に拡散された酸(H+)が既に存在していると露光で発生した酸(H+)と相乗効果を引き起こし、レーザスポットの強度は、最終的に架橋される部分の形状が露光のみの場合に比べ大きくなってしまう。また、アンカーコート層52からフォトレジスト53に酸が拡散する速度は、残留溶剤量や周囲の温度などに影響され一定ではなく、数週間から数ヶ月の範囲でばらつく傾向にある。
【0035】
以上のことから、露光する時期やブランク盤の保管状況によって、図4(H)に示す現像後に形成されるレジスト突起48のサイズにばらつきが生じる。また、図5(D)は、現像後のレジスト突起58の状態であり、往々にして台形に近い形をしていることが多い。例えば、DVDの場合、レジスト突起58の半値全幅は0.3μm程度で、側壁の角度は40〜60°程度の範囲となる。このとき、フォトレジスト53に拡散していた酸(H+)が存在すると、レーザスポットによる露光で発生する酸(H+)の境界がぼやけ、裾野を引いた断面形状になりやすくなる。特に、側壁角度θ2が浅くだれた形状となり、信号再生時の変調度が低下しやすくなるという問題を有することになる。
【0036】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載されたスタンパー用ブランク盤の製造方法は、架橋性物質層及びフォトレジスト層が順次形成されたブランク盤の前記フォトレジスト層にレーザビームを照射することで露光した後、前記フォトレジスト層を現像すると共に前記フォトレジスト層の未露光部を除去し、前記フォトレジスト層を突起形状に形成した後、前記突起と架橋性物質層とを架橋反応させることでスタンパーを作製する工法に用いるブランク盤を製造する方法であって、前記架橋性物質層を形成し架橋反応を起こさせた後、前記架橋性物質層を塩基性ガスの雰囲気に曝すことを特徴とする。
【0037】
また、請求項2に記載されたスタンパー用ブランク盤の製造方法は、請求項1におけるスタンパー用ブランク盤の製造方法において、前記架橋性物質層の架橋反応が、前記架橋性物質層に紫外線を照射し、その後、前記架橋性物質層を加熱することであることを特徴とする。
【0038】
また、請求項3に記載されたスタンパー用ブランク盤の製造方法は、請求項1または2におけるスタンパー用ブランク盤の製造方法において、前記架橋性物質層を塩基性ガスの雰囲気に曝す時間が、1〜5分であることを特徴とする。
【0039】
また、請求項4に記載されたスタンパー用ブランク盤の製造方法は、請求項1または2におけるスタンパー用ブランク盤の製造方法において、架橋性物質層が形成された基盤を回転させながら、前記架橋性物質層に塩基性ガスの蒸気を吹き付けることを特徴とする。
【0040】
更に、請求項5に記載されたスタンパー用ブランク盤の製造方法は、請求項1〜4の何れか一項におけるスタンパー用ブランク盤の製造方法において、塩基性ガスが、ヘキサメチルジシラザン(HMDS),トリエチルアミン,トリプロピュルアミンの何れかであることを特徴とする。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、図1及び図2を参照しながら本発明に係る実施の形態を詳述する。
【0042】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るブランク盤の製造方法の具体的な動作工程を示す。
【0043】
図1(A)は、ニッケルなどの基盤1上にアンカーコート層2が紫外線の照射とポストエクスポーヤーベークによって架橋された状態を示す。このとき、アンカーコート層2の中には、紫外線を照射することで発生した酸(H+)が残留している。
【0044】
続いて、図1(B)に示すように、基盤1上にアンカーコート層2が架橋された状態で、アンカーコート層2を塩基性ガス4の雰囲気に曝し、内部に残留する酸(H+)を失活させる。本実施形態では、塩基性ガスとして、フォトレジストの密着強化に用いられるHMDS(ヘキサメチルジシラザン)を使用した。
【0045】
より詳細に説明すると、底にHMDSが数ミリの厚さで満たされた密閉された容器の中に基盤1を投入した。このとき、アンカーコート層2がHMDSの蒸気に曝される時間は、アンカーコート層2の厚みにも拠るが、本実施形態の100nm程度の場合は、1〜5分で十分な効果があることが確認された。その後、アンカーコート層2に清浄な空気を吹き付け、表面に付着しているHMDSの成分を除去する。仮に、HMDSが表面に残っていると、空気中の水分と反応してアンモニアを生成してしまい、レジスト感度を低下させることになってしまう。
【0046】
次に、図1(C)に示すように、残留酸が失活して無くなったアンカーコート層2a上にフォトレジスト3を形成する。この状態でブランク盤が完成する。更に、図1(D)に示すように、記録すべき信号によって変調されたレーザビーム44を記録レンズで絞り、フォトレジスト3を選択的に露光する。
【0047】
また、図1(E)は、ポストエクスポージャーベークによる加熱と現像処理後にアンカーコート層2aの上にレジスト突起5が形成される状態を示し、この後、アンカーコート層2aとレジスト突起5を架橋してスタンパーを完成させる。このレジスト突起5は、アンカーコート層2aの中に残留酸(H+)が無いので、レーザビーム44の照射部分に対応した形状が形成される。このとき、レジスト突起5の側壁角度θ1は、従来の技術で説明した図3(D)のθ2より大きく、裾野のないクリアな形状となり、所望の形状を得ることができた。
【0048】
ここで、本実施形態と従来の技術との効果を比較する。
【0049】
▲1▼HMDSに曝した基盤と▲2▼曝さなかった基盤を共に40℃の恒温槽に入れ、5日後に露光を施し、レジスト突起を形成させてその形状を測定した。その結果、▲1▼HMDSに曝したものは、側壁角度が51°であったが、▲2▼曝さなったものは、46°であった。また、HMDSに曝さなかったものは、8日間でレジスト突起の幅が50nm以上増加したが、HMDSに曝したものはほとんど変化がなく、その後20日まで環境試験を行った結果においても大きな変化は確認できなかった。
【0050】
(第2の実施形態)
図2は、アンカーコート層2に残留する酸(H+)を失活させる他の方法を示す。図2において、1は第1の実施形態と同様な基盤、2は基盤1上に形成されたアンカーコート層である。このアンカーコート層2は、紫外線照射とそれに続くベーキングで半架橋状態になっている。そして、アンカーコート層2の内部には、架橋の際の触媒となった酸(H+)が残留している。6は基盤1を載置して回転駆動系(図示しない)で回転する回転テーブルである。7はHMDSの蒸気8を噴出するノズルである。9はチャンバー、10は排気ダクトである。
【0051】
具体的な動作工程は、ノズル7よりHMDSの蒸気を出しながら半径方向に移動し、回転駆動系によって回転するアンカーコート層2上にHMDSの蒸気8が満たされる。このように、装置構成によって、アンカーコート層2に残留する酸(H+)を失活させることが可能となる。
【0052】
上記工程の作用時間は、第1の実施形態と同様で1〜5分の間であり、発明者はその効果も確認した。また、HMDSの吹き付けを終了してから回転テーブル6の回転数を高め、チャンバー9の排気ダクト10からチャンバー1内に残留したHMDSの蒸気を排気する場合、排気時間を約5分で行った結果、アンカーコート層2の表面からHMDSの雰囲気を除去できたことを確認した。
【0053】
なお、第1及び第2の実施形態では、特に、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を例に挙げ説明を進めてきたが、トリエチルアミン、トリプロピュルアミンで実験した結果においても、HMDSを同様の効果があることを確認した。
【0054】
【発明の効果】
本発明のスタンパー用ブランク盤の製造方法によれば、レジスト突起の形状が露光時のレーザビームスポットに沿った寸法で形成され、側壁角度の大きな値を得ることが可能となる。また、露光時期がばらついたとしても、レジスト突起の形状はほとんど変化することがない。その結果、スタンパーの特性を安定なものにすることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るスタンパー用ブランク盤の製造工程を説明する図
【図2】本発明の第2の実施形態に係るスタンパー用ブランク盤の製造工程を説明する図
【図3】従来の技術におけるダイレクトスタンパー工法の工程図
【図4】従来の技術におけるベースとなるダイレクトスタンパー工法を示す工程図
【図5】従来の技術におけるスタンパーの作製工法を示す模式図
【符号の説明】
1 基盤
2 アンカーコート層
3 フォトレジスト
4 HMDSの蒸気
5 レジスト突起
Claims (5)
- 架橋性物質層及びフォトレジスト層が順次形成されたブランク盤の前記フォトレジスト層に、レーザビームを照射することで露光した後、前記フォトレジスト層を現像すると共に前記フォトレジスト層の未露光部を除去し、前記フォトレジスト層を突起形状に形成した後、前記突起と架橋性物質層とを架橋反応させることでスタンパーを作製する工法に用いるブランク盤を製造する方法であって、前記架橋性物質層を形成し架橋反応を起こさせた後、前記架橋性物質層を塩基性ガスの雰囲気に曝すことを特徴とするスタンパー用ブランク盤の製造方法。
- 前記架橋性物質層の架橋反応が、前記架橋性物質層に紫外線を照射し、その後、前記架橋性物質層を加熱することであることを特徴とする請求項1に記載のスタンパー用ブランク盤の製造方法。
- 前記架橋性物質層を塩基性ガスの雰囲気に曝す時間が、1〜5分であることを特徴とする請求項1または2記載のスタンパー用ブランク盤の製造方法。
- 架橋性物質層が形成された基盤を回転させながら、前記架橋性物質層に塩基性ガスの蒸気を吹き付けることを特徴とする請求項1または2記載のスタンパー用ブランク盤の製造方法。
- 塩基性ガスが、ヘキサメチルジシラザン(HMDS),トリエチルアミン,トリプロピュルアミンの何れかであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のスタンパー用ブランク盤の製造方法。
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CN110114861A (zh) * | 2017-07-12 | 2019-08-09 | 富士电机株式会社 | 半导体装置的制造方法 |
-
2002
- 2002-07-29 JP JP2002219329A patent/JP2004062982A/ja active Pending
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