JP2004151122A - 位相差板の製造方法およびその方法によって製造された位相差板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】長尺ロール状の透明支持体及びその片側に2層以上の液晶性化合物からなる光学異方性層を有する位相差板の製造方法であって、連続移動している支持体に配向膜を塗布し、(a)該支持体の配向膜を形成した側の表面をラビングし、(b)ラビングされた表面に液晶性化合物を含有する組成物を塗布し、(c)工程(b)で塗布された組成物を固化させて光学異方性層とし、(d)前記支持体を巻き取らずに、工程(a)〜(c)を少なくとも1回繰り返し、(e)前記支持体を巻き取る、以上の工程を含む製造方法である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、2層以上の液晶性化合物からなる光学異方性層を有する位相差板の製造方法に関する。本発明はまた、上記方法によって得られる位相差板、特に、反射型液晶表示装置、光ディスクの書き込み用のピックアップ、あるいは反射防止膜に利用されるλ/4板として有効な位相差板に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明が対象とする位相差板、とりわけλ/4板は、非常に多くの用途を有しており、既に実際に使用されている。広い波長領域でλ/4を達成できる従来技術としては、光学異方性を有する二枚のポリマーフィルムを積層する方法(例えば、特許文献1および2参照)、液晶性化合物を含む光学異方性層を少なくとも2層設ける方法(例えば、特許文献3〜6参照)がある。しかしながら、光学異方性を有する二枚のポリマーフィルムを積層する方法は、二枚のポリマーフィルムの光学的向き(光軸や遅相軸)を調節するために、二種類のポリマーフィルムを所定の角度にカットして、得られるチップを貼り合わせる必要がある。チップの貼り合わせで位相差板を製造しようとすると、処理が煩雑であり、軸ズレによる品質低下が起きやすく、歩留まりが低下し、コストが増大し、汚染による劣化も起きやすい。また、ポリマーフィルムでは、λ/4板に必要なレターデーション値を厳密に調節することも難しい。
【0003】
一方、液晶性化合物を含む光学異方性層を少なくとも2層設ける方法は、より簡便に広帯域λ/4板を提供することができるが、液晶性化合物からなる光学異方性層を2層以上設けることは、その液晶性化合物からなる光学異方性層を積層する毎に配向膜を設ける必要があり、製造コスト的に問題があった。さらに、2層目の光学異方性層を配向膜なしで塗布した場合では、液晶配向の精度や均一性が低下したり、配向欠陥が多発するという問題があり、液晶性化合物からなる光学異方性層を積層する毎に配向膜を塗布する必要があった。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−68816号公報
【特許文献2】
特開平10−90521号公報
【特許文献3】
特開2000−206331号公報
【特許文献4】
特開2001−4837号公報
【特許文献5】
特開2001−21720号公報
【特許文献6】
特開2001−91741号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記問題を解決する製造方法、すなわち、液晶性化合物からなる光学異方性層を2層以上設ける場合の、液晶配向精度および均一性が高く、配向欠陥の少ない、コスト的に有利な製造方法を提供することにある。本発明のもう1つの課題は、その製造方法によって得られる位相差板を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は以下の方法によって解決された。即ち、下記(1)〜(4)の位相差板の製造方法および下記(5)の位相差板により達成された。
(1) 長尺ロール状の透明支持体及びその片側に2層以上の液晶性化合物からなる光学異方性層を有する位相差板の製造方法であって、連続移動している支持体に配向膜を塗布し、
(a)該支持体の配向膜を形成した側の表面をラビングし、
(b)ラビングされた表面に液晶性化合物を含有する組成物を塗布し、
(c)工程(b)で塗布された組成物を固化させて光学異方性層とし、
(d)前記支持体を巻き取らずに、工程(a)〜(c)を少なくとも1回繰り返し、
(e)前記支持体を巻き取る、
以上の工程を含む製造方法。
【0007】
(2) 繰り返し工程(a)〜(c)を行う場合に、少なくとも1回の工程(a)において、光学異方性層の表面をラビングし、且つ該光学異方性層が、炭素原子数が9以下の炭化水素基を有する変性ポリビニルアルコールを含有する(1)に記載の製造方法。
(3) 少なくとも1回の工程(b)に用いる前記液晶性化合物が、重合性基を有する棒状液晶性化合物である(1)または(2)に記載の製造方法。
(4) 少なくとも1回の工程(b)に用いる前記液晶性化合物が、重合性基を有する円盤状液晶性化合物である(1)または(2)に記載の製造方法。
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載の方法で製造された位相差板。
【0008】
本明細書において、角度について「実質的に」とは、厳密な角度±5゜未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との誤差は、4゜未満であることが好ましく、3゜未満であることがより好ましい。また、本明細書において、「実質的に垂直に配向」とは、厳密な垂直配向のみを意味するのではなく、平均角度(平均傾斜角)が50°〜90°の範囲内の配向を含み、「実質的に水平に配向」とは、厳密な水平配向のみを意味するのではなく、平均角度(平均傾斜角)が0°〜40°の範囲内の配向を含む意味で用いる。
また、本明細書において「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。
【0009】
【発明の実施の形態】
[位相差板の製造方法]
本発明の位相差板の製造方法の一例を図1に示す。図1は、光学異方性層を2層有する位相差板の製造例である。
まず、長尺ロール状(図中不図示)の透明支持体を連続移動させつつ、該透明支持体1上に変性ポリビニルアルコールなどを含む配向膜形成用の塗布液を塗布して、配向膜2を形成する。次に、配向膜2の表面を、例えば、ラビングロール3などを用いてラビングする(工程(a))。ラビングされた表面に、液晶性化合物を含有する組成物を塗布して塗布層4’を形成する(工程(b))。塗布層4’中の液晶性化合物は、配向膜2の表面性状により、およびラビング方向に応じて、所定の配向状態となる。引き続き、塗布層4’を、熱および/または活性放射線等にさらすなどして、液晶性化合物をかかる配向状態に固定し、光学異方性層4を形成する。再び、工程(a)〜(c)を繰り返し、光学異方性層5を形成する。この様にして、光学異方性層を2層有する位相差板を連続的に作製することができる。光学異方性層5が形成された後、位相差板はロール状に巻き取られ、保管および搬送等された後、所望により、種々の形状に切断されて、用途に供せられる。
【0010】
図1の例では、2層の光学異方性層を有する位相差板の作製例を示したが、工程(a)〜(c)をn回(nは2以上の整数。以下、同様である)経ることにより、n層の光学異方性層を有する位相差板を連続的に作製することができる。本発明では、全ての光学異方性層を形成するまで、ロール状に巻き取らない(即ち、工程(e)を実施しない)ことにより、光学異方性層間(図1では層4と層5との間)に配向膜を形成しない場合であっても、液晶の配向精度および配向の均一性を高く維持し、配向欠陥の少ない光学異方性層を形成することを可能としている。その結果、光学異方性層間に配向膜を形成する工程を省くことができ、製造コストの軽減にも寄与する。
【0011】
本発明では、1〜n回目の工程(a)〜(c)については、それぞれ独立に条件および材料を選択できる。例えば、工程(a)で行うラビングの方向や、工程(b)で用いる液晶性化合物の種類などは、1〜n回目のそれぞれにおいて、同一であっても異なっていてもよい。
【0012】
以下に各工程、ならびに各工程に用いられる種々の部材および材料について更に詳細に説明する。
[透明支持体]
本発明では、透明支持体を用いる。透明支持体とは、光透過率が80%以上の支持体をいう。また、透明支持体の波長分散は小さいのが好ましく、具体的には、Re400/Re700の比が1.2未満であることが好ましい。さらに、透明支持体は、光学異方性が小さいことが好ましく、具体的には、面内レターデーション(Re)が20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。
【0013】
前記透明支持体としては、ポリマーフィルムが好ましい。ポリマーの例には、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートが含まれる。セルロースエステルが好ましく、アセチルセルロースがさらに好ましく、トリアセチルセルロースが最も好ましい。特にトリアセチルセルロースを用いる場合は、酢化度60.25〜61.50のものが好ましい。ポリマーフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。
【0014】
本発明では、長尺ロール状の支持体を用い、連続的に光学異方性層を塗布する。光学異方性層を形成してから、必要な大きさに切断することが好ましい。透明支持体の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、40〜200μmであることがさらに好ましい。また、透明支持体とその上に設けられる層(接着層、水平配向膜、垂直配向膜あるいは光学異方性層)との接着を改善するため、透明支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理、ケン化処理)を実施してもよいし、透明支持体の上に接着層(下塗り層)を設けてもよい。表面処理としてはケン化処理が好ましい。
【0015】
[配向膜]
本発明では、前記透明支持体を連続移動させつつ、支持体の表面に配向膜を形成する。配向膜は、光学異方性層中の液晶性化合物を所望の配向状態にする機能を有する。配向膜としては、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理により配向機能を生じる配向膜を用いる。配向膜を形成するポリマーの種類は,液晶性化合物の配向(特に平均傾斜角)に応じて決定する。
液晶性化合物を水平に配向させるためには配向膜の表面エネルギーを低下させないポリマー(通常の配向用ポリマー)を用いる。ラビング処理時に好ましく用いられるポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリイミド誘導体、ナイロンが挙げられる。ラビング処理はこれらのポリマー層の表面を紙や布で一定方向に数回こすることによって、膜平面に対する液晶性化合物のチルト角を変えることができる。
【0016】
上方に形成される液晶性化合物層との密着性を改善する目的で、配向膜は重合性基を有することが好ましい。重合性基は、側鎖に重合性基を有する繰り返し単位を導入するか、あるいは、環状基の置換基として導入することができる。界面で液晶性化合物と化学結合を形成する配向膜を用いることがより好ましく、かかる配向膜としては、特開平9−152509号公報に記載されている。
配向膜の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜3μmであることがさらに好ましい。
【0017】
本発明では、透明支持体の表面に形成された配向膜、または工程(a)〜(c)を経て形成された光学異方性層の表面をラビングする(工程(a))。
[ラビング処理]
ラビング処理は、長尺ロール状の支持体のMD方向に対して所定の任意の角度で行うことができる。MD方向に対するラビング方向の角度は、MD方向に対して同一方向もしくは斜め方向にラビングされるのが好ましい。斜め方向の角度としては、−45度〜+45度の範囲が好ましい。
ラビング処理は任意の方法で行うことができるが、少なくとも1つのラビングロールにより行うのが好ましい。例えば、長尺フィルムをMD方向に搬送するステージ上に、長尺フィルムのMD方向に対して任意の角度でラビングロールを配置し、該フィルムをMD方向に搬送しながら該ラビングロールを回転させて、透明支持体の配向膜表面をラビング処理することができる。ラビングロールとステージの移動方向が成す角度を自在に調整し得る機構を備えているのが好ましい。また、ラビングロールとは、表面に適宜のラビング布材を貼付したロールのことをいう。
【0018】
次に、ラビングされた表面に、液晶性化合物を含む組成物を塗布し(工程(b))、さらに、該組成物を固化させて光学異方性層とする(工程(c))。
[液晶性化合物からなる光学異方性層]
本発明の工程(b)で用いる液晶性化合物としては、棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物が好ましく、重合性基を有している棒状液晶性化合物または重合性基を有している円盤状液晶性化合物がより好ましい。
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性分子だけではなく、高分子液晶性分子も用いることができる。特に好ましく用いられる、低分子の重合性基を有する棒状液晶性化合物としては、下記式(I)の棒状液晶性化合物である。
式(I)
Q1−L1−A1−L3−M−L4−A2−L2−Q2
式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に重合性基を表し、L1、L2、L3およびL4はそれぞれ単結合または二価の連結基を表すが、L3またはL4の少なくとも一方が−O−CO−O−を表す。A1およびA2はそれぞれ炭素原子数2〜20のスペーサー基を表し、Mはメソゲン基を表す。
【0019】
以下に、前記式(I)で表される重合性基を有する棒状液晶性化合物についてさらに詳細に説明する。
式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に重合性基である。重合性基の重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。言い換えると、重合性基は、付加重合反応または縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例を示す。
【0020】
【化1】
【0021】
L1、L2、L3およびL4で表される二価の連結基としては、−O−、−S−、−CO−、−NR2−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR2−、−NR2−CO−、−O−CO−、−O−CO−NR2−、−NR2−CO−O−、−NR2−CO−NR2−および単結合からなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R2は炭素原子数が1〜7のアルキル基または水素原子である。この場合、L3およびL4の少なくとも一方は、−O−CO−O−(カーボネート基)である。
前記式(I)中、Q1−L1−およびQ2−L2−は、CH2=CH−CO−O−、CH2=C(CH3)−CO−O−およびCH2=C(Cl)−CO−O−が好ましく、CH2=CH−CO−O−が最も好ましい。
【0022】
A1およびA2は、炭素原子数2〜20を有するスペーサー基を表す。炭素原子数2〜12の脂肪族基が好ましく、特に、アルキレン基が好ましい。スペーサー基は鎖状であることが好ましく、隣接していない酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい。また、前記スペーサー基は、置換基を有していてもよく、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素)、シアノ基、メチル基、エチル基が置換していてもよい。
【0023】
Mで表されるメソゲン基としては、すべての公知のメソゲン基が挙げられる。特に、下記式(II)で表される基が好ましい。
式(II)
−(−W1−L5)n−W2−
式中、W1およびW2は各々独立して、二価の環状脂肪族基、二価の芳香族基または二価のヘテロ環基を表し、L5は単結合または連結基を表し、連結基の具体例としては、前記式(I)中、L1〜L4で表される基の具体例、および−CH2−O−、−O−CH2−が挙げられる。nは1または2または3を表す。
【0024】
W1およびW2としては、1,4−シクロヘキサンジイル、1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル、1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイルが挙げられる。1,4−シクロヘキサンジイルの場合、トランス体およびシス体の構造異性体があるが、本発明ではどちらの異性体であってもよく、任意の割合の混合物でもよい。トランス体であることがより好ましい。W1およびW2はそれぞれ置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)、炭素原子数1〜10のアシル基(ホルミル基、アセチル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、炭素原子数1〜10のアシルオキシ基(アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基など)、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、などが挙げられる。
【0025】
前記式(II)で表されるメソゲン基の基本骨格で好ましいものを、以下に例示する。これらに上記置換基が置換していてもよい。
【0026】
【化2】
【0027】
以下に、前記式(I)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、式(I)で表される化合物は特表平11−513019号公報に記載の方法で合成することができる。
【0028】
【化3】
【0029】
【化4】
【0030】
【化5】
【0031】
本発明には、液晶性化合物として円盤状液晶性化合物を用いることも好ましい。円盤状液晶性化合物は、ポリマーフイルム面に対して実質的に垂直(50〜90度の範囲の平均傾斜角)に配向させることが好ましい。円盤状液晶性化合物は、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page2655(1994))に記載されている。円盤状液晶性化合物の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
【0032】
円盤状液晶性化合物は、重合により固定可能なように、重合性基を有するのが好ましい。例えば、円盤状液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させた構造が考えられるが、但し、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に連結基を有する構造が好ましい。即ち、重合性基を有する円盤状液晶性化合物は、下記式(III)で表わされる化合物が好ましい。
式(III)
D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは4〜12の整数である。
【0033】
前記式(III)中の円盤状コア(D)、二価の連結基(L)および重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)であり、同公報に記載の内容を好ましく用いることができる。
【0034】
これらの液晶性化合物は、光学異方性層中では、実質的に均一に配向していることが好ましく、実質的に均一に配向している状態で固定されていることがさらに好ましく、重合反応により液晶性分子が固定されていることが最も好ましい。
重合性基を有する棒状液晶性化合物の場合は、実質的に水平(ホモジニアス)配向に固定化することが好ましい。実質的に水平とは、棒状液晶性化合物の長軸方向と光学異方性層の面との平均角度(平均傾斜角)が0°〜40°の範囲内であることを意味する。棒状液晶性化合物を斜め配向させてもよいし、傾斜角が徐々に変化するように(ハイビリッド配向)させてもよい。斜め配向またはハイブリッド配向の場合でも、平均傾斜角は0°〜40°であることが好ましい。
重合性基を有する円盤状液晶性化合物の場合は、実質的に垂直配向させることが好ましい。実質的に垂直とは、円盤状液晶性化合物の円盤面と光学異方性層の面との平均角度(平均傾斜角)が50°〜90°の範囲内であることを意味する。円盤状液晶性化合物を斜め配向させてもよいし、傾斜角が徐々に変化するように(ハイビリッド配向)させてもよい。斜め配向またはハイブリッド配向の場合でも、平均傾斜角は50°〜90°であることが好ましい。
【0035】
本発明では、工程(a)〜工程(c)をn回(nは2以上の整数)行い、n層の光学異方性層を形成するが、1回目〜n−1回目の工程(a)〜工程(c)を経て形成される光学異方性層のそれぞれを、2回目〜n回目の工程(a)〜工程(c)を経て形成される光学異方性層のそれぞれの配向膜として機能させるのが好ましい。光学異方性層を、その上に形成する光学異方性層の配向膜として機能させる場合は、工程(b)において、液晶性化合物とともに、炭素原子数が9以下の炭化水素基を有する変性ポリビニルアルコールを含有する組成物を用い、工程(c)を経て光学異方性層を形成し、さらに引き続き実施する工程(a)において、該光学異方性層の表面にラビングを行うのが好ましい。
【0036】
液晶性化合物とともに用いる、前記炭素原子数が9以下の炭化水素基を有する変性ポリビニルアルコールについて説明する。
好ましい変性ポリビニルアルコールとしては、下記式(PX)で表されるものである。
(PX)−(VAl)x−(HyD)y−(VAc)z−
式中、VAlは、ビニルアルコールの繰り返し単位であり、HyDは炭素原子数が9以下の炭化水素基を有する繰り返し単位であり、VAcは酢酸ビニル繰り返し単位であり、xは20〜95質量%(好ましくは25〜90質量%)であり、yは2〜98質量%(好ましくは10〜80質量%)であり、zは0〜30質量%(好ましくは2〜20質量%)である。
【0037】
HyDに含まれる炭化水素基は、脂肪族基、芳香族基またはそれらの組み合わせである。脂肪族基は、環状、分岐状あるいは直鎖状のいずれでもよい。脂肪族基は、アルキル基(シクロアルキル基であってもよい)またはアルケニル基(シクロアルケニル基であってもよい)であることが好ましい。前記炭化水素基は置換基を有していてもよい。前記炭化水素基の炭素原子数は1〜9であり、1〜8が好ましい。HyDの好ましい例は、下記式(HyD−I)および(HyD−II)で表される。
【0038】
【化6】
【0039】
式中、L1は、−O−、−CO−、−SO2−、−NH−、アルキレン基、アリーレン基およびそれらの組み合わせから選ばれる二価の連結基であり、L2は単結合、または−O−、−CO−、−SO2−、−NH−、アルキレン基、アリーレン基およびそれらの組み合わせから選ばれる二価の連結基であり、R1およびR2は、それぞれ炭素原子数が9以下の炭化水素基である。上記の組み合わせにより形成される二価の連結基の例を以下に示す。
【0040】
L1:−O−CO−
L2:−O−CO−アルキレン基−O−
L3:−O−CO−アルキレン基−CO−NH−
L4:−O−CO−アルキレン基−NH−SO2−アリーレン基−O−
L5:−アリーレン基−NH−CO−
L6:−アリーレン基−CO−O−
L7:−アリーレン基−CO−NH−
L8:−アリーレン基−O−
L9:−O−CO−NH−アリーレン基−NH−CO−
【0041】
HyDの具体例を以下に示す。
【0042】
【化7】
【0043】
前記変性ポリビニルアルコールの重合度は、200〜5000であることが好ましく、300〜3000であることが好ましい。ポリマーの分子量は、9000〜200000であることが好ましく、13000〜130000であることがさらに好ましい。二種類以上のポリマーを併用してもよい。
【0044】
以下に好ましい変性ポリビニルアルコールの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
PX−1:−(VAl)21−(HyD−13)77−(VAc)2−
PX−2:−(VAl)14−(HyD−13)84−(VAc)2−
PX−3:−(VAl)21−(HyD−16)77−(VAc)2−
PX−4:−(VAl)34−(HyD−15)64−(VAc)2−
PX−5:−(VAl)29−(HyD−12)69−(VAc)2−
PX−6:−(VAl)46−(HyD−14)52−(VAc)2−
PX−7:−(VAl)21−(HyD−2)77−(VAc)2−
PX−8:−(VAl)17−(HyD−8)85−(VAc)2−
PX−9:−(VAl)21−(HyD−13)77−(VAc)2−
PX−10:−(VAl)46−(HyD−9)52−(VAc)2−
【0045】
上記変性ポリビニルアルコールの添加量は、該制御剤の添加する液晶性化合物に対し0.05質量%〜10質量%添加することが好ましい。より好ましくは0.1質量〜5質量%である。
【0046】
上記変性ポリビニルアルコールは縮合剤と併用してもよい。縮合剤としてはイソシアネート基またはホルミル基を末端に有する化合物が好ましい。以下に具体的な化合物を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
ポリ(1,4−ブタンジオール)、イソホロンジイソシアネートターミネーテッド
ポリ(1,4−ブタンジオール)、トリレン2,4−ジイソシアネートターミネーテッド
ポリ(エチレンアジペート)、トリレン2,4−ジイソシアネートターミネーテッド
ポリ(プロピレングリコール)、トリレン2,4−ジイソシアネートターミネーテッド、
1、6−ジイソシアナートヘキサン
1、8−ジイソシアナートオクタン
1、12−ジイソシアナートドデカン
イソホロンジイソシアナート
グリオキザール
【0048】
工程(b)では、前記液晶性化合物、所望により、前記変性ポリビニルアルコール、および下記の重合開始剤や他の添加剤を溶媒に溶解させた塗布液を、ラビング表面に塗布するのが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0049】
[液晶性化合物の配向状態の固定化]
工程(c)では、前記塗布液をラビング表面に塗布した後、固化して光学異方性層とする。液晶性化合物は、配向膜の性質およびラビングの方向に応じて、所定の配向をとる。この配向状態を維持したまま、液晶性化合物を固定し、光学異方性層を形成するのが好ましい。固定化は、液晶性化合物に導入した重合性基の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用い、熱に曝すことによって重合反応を開始させる熱重合反応と、光重合開始剤を用い、活性放射線に曝すことによって重合反応を開始させる光重合反応とが含まれるが、光重合反応がより好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
【0050】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。光学異方性層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましい。
【0051】
[位相差板の光学的性質]
前記工程により形成された光学異方性層は、特定の波長において、実質的にπまたはπ/2の位相差を達成していることが好ましい。特定波長(λ)において位相差πを達成するためには、特定波長(λ)において測定した偏光子のレターデーション値をλ/2に調整すればよく、特定波長(λ)において位相差π/2を達成するためには、特定波長(λ)において測定した偏光子のレターデーション値をλ/4に調整すればよい。ただし、可視領域のほぼ中間の波長である550nmにおいて、一方が位相差πおよび他方がπ/2を達成していることが好ましい。例えば、工程(a)〜工程(c)を2回繰り返して、2層の光学異方性層を形成する場合は、一方の光学異方性層(第1光学異方性層)は、波長550nmで測定したレターデーション値が240〜290nmであることが好ましく、250〜280nmであることがより好ましく、もう一方の光学異方性層(第2光学異方性層)は、波長550nmで測定したレターデーション値が110〜145nmであることが好ましく、120〜140nmであることがより好ましい。
【0052】
レターデーション値とは、光学異方性層の法線方向から入射した光に対する面内のレターデーション値を意味する。具体的には、下記式により定義される値である。
レターデーション値(Re)=(nx−ny)×d
式中、nxおよびnyは光学異方性層の面内の主屈折率であり、そしてdは光学異方性層の厚み(nm)である。
【0053】
前記第1および第2の光学異方性層の厚さは、各々の層が所望のレターデーションを示す範囲で任意に決定することができる。例えば、同一の棒状液晶性化合物を水平配向させて、前記第1および第2の光学異方性層を各々形成する場合は、位相差がπである光学異方性層の厚みを、位相差がπ/2の光学異方性の厚みの倍にするのが好ましい。それぞれの光学異方性層の厚みの好ましい範囲は、用いる液晶性化合物の種類によって異なるが、一般的には、0.1〜10μmであり、0.2〜0.8μmがより好ましく、0.5〜5μmがさらに好ましい。
【0054】
[位相差板の構成]
図2は、棒状液晶性化合物を用いた場合の本発明の位相差板の代表的な構成を示す模式図である。図2に示すように、基本的な位相差板は、長尺状の透明支持体(S)および第1の光学異方性層(A)に加えて、さらに第2の光学異方性層(B)を有する。第1の光学異方性層(A)の位相差はπである。第2の光学異方性層(B)の位相差は、π/2である。透明支持体(S)の長手方向と第1の光学異方性層(A)の遅相軸(a)とのなす角は30°である。第2の光学異方性層(B)の遅相軸(b)と第1の光学異方性層(A)の遅相軸(a)との角度(γ)は60゜である。図2に示す第1光学異方性層(A)および第2光学異方性層(B)は、それぞれ棒状液晶性化合物(c1およびc2)を含む。棒状液晶性化合物c1およびc2は水平に配向している。棒状液晶性化合物の長軸方向が光学異方性層の遅相軸(aおよびb)に相当する。
【0055】
なお、図2では、便宜のため、透明支持体Sにより近い位置にあるのが光学異方性層A(位相差がπ)で、その外側に位置するのが光学異方性層B(位相差がπ/2)である位相差板および円偏光板の構成を示したが、光学異方性層Aと光学異方性層Bとの位置を入れ替えた構成であってもよいが、好ましくは、透明支持体Sにより近い位置に光学異方性層A(位相差がπ)、その外側に光学異方性層B(位相差がπ/2)が位置する構成である。
後述する図3においても同様である。
【0056】
[円偏光板]
本発明の位相差板は、反射型液晶表示装置において使用されるλ/4板、光ディスクの書き込み用のピックアップに使用されるλ/4板、あるいは反射防止膜として利用されるλ/4板として、特に有利に用いることができる。λ/4板は、一般に偏光膜と組み合わせた円偏光板として使用される。よって、位相差板と偏光膜とを組み合わせた円偏光板として構成しておくと、容易に反射型液晶表示装置のような用途とする装置に組み込むことができる。偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。
【0057】
[円偏光板の構成]
図3は、本発明の位相差板(棒状液晶性化合物を用いた位相差板)を用いた円偏光板の代表的な構成を示す模式図である。図3に示す円偏光板は、図2に示した透明支持体(S)、第1光学異方性層(A)および第2光学異方性層(B)に加えて、さらに偏光膜(P)を有する。偏光膜の偏光透過軸(p)は透明支持体(S)の長手方向(s)のなす角は45°であり、偏光透過軸と光学異方性層(A)の遅相軸(a)のなす角は15°であり、図2と同様に、光学異方性層(A)の遅相軸(a)と光学異方性層(B)の遅相軸(b)とのなす角は60°である。図3に示す第1光学異方性層(A)および第2光学異方性層(B)も、それぞれ棒状液晶性化合物(c1およびc2)を含む。棒状液晶性化合物(c1およびc2)は、それぞれ水平に配向している。棒状液晶性化合物(c1およびc2)の長軸方向が、光学異方性層(AおよびB)の面内の遅相軸(aおよびb)に相当する。
【0058】
本発明の位相差板と組み合わせる偏光膜については、特に制限はなく、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜を用いることができる。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明の位相差板の透明支持体の長手方向に対して、偏光膜の透過軸を45°となるように積層するのが好ましい。長手方向に対して実質的に45°方向に偏光の透過軸を有する偏光膜(以下45°偏光膜と称する)を用いれば、積層の際の角度調整が不要になり、本発明の円偏光板を容易に作製できる。延伸フィルムからなる偏光膜の透過軸は、延伸方向と実質的に一致するので、フィルムを長手方向に対して45°の方向に延伸処理することで、45°偏光膜を作製することができる。このような実質的に45°方向に偏光の透過軸を有する偏光膜(以下45°偏光膜と称する)は、特開2002−86554号公報に記載の斜め延伸方法により作製することができ、第0009欄〜第0045欄の記載の条件、使用可能な装置の構成等を参考に作製することができる。
【0059】
偏光膜として好ましく用いられるポリマーフィルムに関しては特に制限はなく、熱可塑性の適宜なポリマーからなるフィルムを用いることができる。ポリマーの例としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカーボネート、セルロースアシレート、ポリスルホンなどをあげることができる。ポリマーとしてはPVAが好ましく用いられる。PVAは通常、ポリ酢酸ビニルをケン化したものであるが、例えば不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、オレフィン類、ビニルエーテル類のように酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有しても構わない。また、アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等を含有する変性PVAも用いることができる。
【0060】
PVAのケン化度は特に限定されないが、溶解性等の観点から80〜100mol%が好ましく、90〜100mol%が特に好ましい。またPVAの重合度は特に限定されないが、1000〜10000が好ましく、1500〜5000が特に好ましい。
【0061】
PVAを染色して偏光膜が得られるが、染色工程は気相または液相吸着により行われる。液相で行う場合の例として、ヨウ素を用いる場合には、ヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液にPVAフィルムを浸漬させて行われる。ヨウ素は0.1〜20g/L、ヨウ化カリウムは1〜100g/L、ヨウ素とヨウ化カリウムの重量比は1〜100が好ましい。染色時間は30〜5000秒が好ましく、液温度は5〜50℃が好ましい。染色方法としては浸漬だけでなく、ヨウ素あるいは染料溶液の塗布あるいは噴霧等、任意の手段が可能である。染色工程は、延伸工程の前後いずれに置いてもよいが、適度に膜が膨潤され延伸が容易になることから、延伸工程前に液相で染色することが特に好ましい。
【0062】
ヨウ素の他に二色性色素で染色することも好ましい。二色性色素の具体例としては、例えばアゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素、アントラキノン系色素等の色素系化合物をあげることができる。水溶性のものが好ましいが、この限りではない。又、これらの二色性分子にスルホン酸基、アミノ基、水酸基などの親水性置換基が導入されていることが好ましい。二色性分子の具体例としては、例えばシー.アイ.ダイレクト.イエロー12、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ39、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ72、シー.アイ.ダイレクト.レッド39、シー.アイ.ダイレクト.レッド79、シー.アイ.ダイレクト.レッド81、シー.アイ.ダイレクト.レッド83、シー.アイ.ダイレクト.レッド89、シー.アイ.ダイレクト.バイオレット48、シー.アイ.ダイレクト.ブルー67、シー.アイ.ダイレクト.ブルー90、シー.アイ.ダイレクト.グリーン59、シー.アイ.アシッド.レッド37等が挙げられ、さらに特開平1−161202号公報、特開平1−172906号公報、特開平1−172907号公報、特開平1−183602号公報、特開平1−248105号公報、特開平1−265205号公報、特開平7−261024号公報、の各公報記載の色素等が挙げられる。これらの二色性分子は遊離酸、あるいはアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン類の塩として用いられる。これらの二色性分子は2種以上を配合することにより、各種の色相を有する偏光子を製造することができる。偏光素子または偏光板として偏光軸を直交させた時に黒色を呈する化合物(色素)や黒色を呈するように各種の二色性分子を配合したものが単板透過率、偏光率とも優れており好ましい。
【0063】
PVAを延伸して偏光膜を製造する過程では、PVAに架橋させる添加物を用いることが好ましい。特に本発明の斜め延伸法を用いる場合、延伸工程出口でPVAが十分に硬膜されていないと、工程のテンションでPVAの配向方向がずれてしまうことがあるため、延伸前工程あるいは延伸工程で架橋剤溶液に浸漬、または溶液を塗布して架橋剤を含ませるのが好ましい。架橋剤としては、米国再発行特許第232897号に記載のものが使用できるが、ホウ酸類が最も好ましく用いられる。
【0064】
また、PVA,ポリ塩化ビニルを脱水、脱塩素することによりポリエン構造をつくり、共役二重結合により偏光を得るいわゆるポリビニレン系偏光膜の製造にも、本発明の延伸法は好ましく用いることができる。
【0065】
前記斜め延伸方法によって製造された偏光膜は、そのままの形態で偏光板として本発明の位相差板に用いることもできるが、両面あるいは片面に保護フィルムを貼り付けて偏光板として用いられる。保護フィルムの種類は特に限定されず、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネート等のセルロースエステル類、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル等を用いることができるが、保護フィルムのレターデーション値が一定値以上であると、偏光軸と保護フィルムの配向軸が斜めにずれているため、直線偏光が楕円偏光に変化し、好ましくない。このため保護フィルムのレターデーションは低いことが好ましい。例えば、632.8nmにおいて10nm以下が好ましく、5nm以下がさらに好ましい。このような低レターデーションを得るためには、保護フィルムとして使用するポリマーはセルローストリアセテートが特に好ましい。また、ゼオネックス、ゼオノア(共に日本ゼオン(株)製)、ARTON(JSR(株)製)のようなポリオレフィン類も好ましく用いられる。その他、例えば特開平8−110402号公報あるいは特開平11−293116号公報に記載されているような非複屈折性光学樹脂材料が挙げられる。
【0066】
偏光膜と保護層との接着剤は特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmが特に好ましい。
【0067】
延伸前のフィルムの厚みは特に限定されないが、フィルム保持の安定性、延伸の均質性の観点から、1μm〜1mmが好ましく、20〜200μmが特に好ましい。
【0068】
図4に従来の偏光板打ち抜きの例を、図5に本発明の偏光板打ち抜きする例を示す。従来の偏光板は、図4に示されるように、偏光の吸収軸71すなわち延伸軸が長手方向72と一致しているのに対し、本発明の偏光板は、図5に示されるように、偏光の吸収軸81すなわち延伸軸が長手方向82に対して45゜傾斜しており、この角度がLCDにおける液晶セルに貼り合わせる際の偏光板の吸収軸と、液晶セル自身の縦または横方向とのなす角度に一致しているため、打ち抜き工程において斜めの打ち抜きは不要となる。しかも図5からわかるように、本発明の偏光板は切断が長手方向に沿って一直線であるため、打ち抜かず長手方向に沿ってスリットすることによっても製造可能であるため、生産性も格段に優れている。
【0069】
本発明に好ましく用いられる偏光膜は、液晶表示装置のコントラストを高める観点から、透過率は高い方が好ましく、偏光度は高い方が好ましい。透過率は好ましくは550nmで30%以上が好ましく、40%以上がさらに好ましい。偏光度は550nmで95.0%以上が好ましく、99%以上がさらに好ましく、特に好ましくは99.9%以上である。
【0070】
偏光膜は、一般に両側に保護膜を有するが、本発明では、本発明の位相差板を偏光膜の片側の保護膜として機能させることができる。45°偏光膜を用いて円偏光板を作成する場合、重ね合わせ方を変えることで容易に右および左円偏光板を作り分けることができる。
[円偏光板の構成]
図6に本発明の位相差板を用いた円偏光板の一態様の概念図を示す。
図6に示す円偏光板は、本発明の位相差板に45°偏光膜Pおよび保護膜Gを積層した構成である。位相差板は、光学異方性層AおよびB(但し、図中には一層として示した)と、透明支持体Sとからなる。位相差板は、透明支持体Sの光学異方性層AおよびBが設けられていない側の面を、45°偏光膜Pに向けて積層されている。この構成において、前記位相差板は45°偏光膜Pの保護膜としても機能する。図6中に、透明支持体Sの長手方向sと、光学異方性層AおよびBの遅相軸aおよびbと、45°偏光膜Pの透過軸pとの関係を併せて示す。
【0071】
図6の円偏光板を表示装置に組み込む場合は、保護膜P側を表示面側にする(図中の矢印で示す方向が見る方向を示す)。図6の構成から得られる円偏光板は右円偏光である。図6中、矢印方向から入射した光は、偏光膜P、光学異方性層AおよびBを順次通過することによって右円偏光となって出射する。
【0072】
本発明の位相差板を用いた円偏光板の他の構成を図7に示す。図7に示す円偏光板は、図6に示す円偏光板の保護膜Gと位相差板の位置を代えた構成であり、図7中、下方から、保護膜G、45°偏光膜P、透明支持体Sおよび光学異方性層AおよびBを積層した構成である。かかる構成の円偏光板では左円偏光が得られる。
この様に、45°偏光膜に、保護層と位相差板を貼り合わせる場合に、上下を入れ替えて貼り合せるだけで右円偏光と左円偏光を製造することができる。
【0073】
透明支持体とは別に保護膜を用いる場合は、保護膜として光学的等方性が高いセルロースエステルフィルム、特にトリアセチルセルロースフィルムを用いることが好ましい。
【0074】
本発明の位相差板および上記偏光板を用いて得られる広域帯λ/4とは、具体的には、波長450nm、550nmおよび650nmで測定したレターデーション値/波長の値が、いずれも0.2〜0.3の範囲内であることを意味する。レターデーション値/波長の値は、0.21〜0.29の範囲内であることが好ましく、0.22〜0.28の範囲内であることがより好ましく、0.23〜0.27の範囲内であることがさらに好ましく、0.24〜0.26の範囲内であることが最も好ましい。
【0075】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる従って本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
[実施例1]
厚さ80μm、幅680mm、長さ500mの光学的に等方性のトリアセチルセルロースフィルム(酢化度60.9±0.2%、レターデーション値6.0nm)を透明支持体として用いた。この透明支持体の両面をケン化処理した後、下記組成の配向膜塗布液A(NH4OHでpHを4〜5に調整)を透明支持体の片面に連続的に塗布、乾燥し、厚さ1μmの配向膜を形成した。次いで、透明支持体の長手方向に対し30°の方向に連続的に配向膜上にラビング処理を実施した。
【0076】
配向膜塗布液A組成
下記の変性ポリビニルアルコール 4質量%
水 72.6質量%
メタノール 23.3質量%
グルタールアルデヒド 0.2質量%
【0077】
【化8】
【0078】
配向膜の上に、下記の組成の塗布液をバーコーターを用いて連続的に塗布、乾燥、および加熱(配向熟成)し、さらに紫外線照射して厚さ2.1μmの光学異方性層(A)を形成した。光学異方性層は、透明支持体の長手方向に対して30°の方向に遅相軸を有していた。550nmにおけるレターデーション値(Re550)は259nmであった。
光学異方性層(A)用塗布液組成
本明細書中の棒状液晶性化合物(例示化合物 I−2) 38.1質量%
下記の増感剤 A 0.38質量%
下記の光重合開始剤 B 1.14質量%
本明細書中の例示化合物(PX−9) 0.19質量%
グルタールアルデヒド 0.04質量%
メチルエチルケトン 60.1質量%
【0079】
増感剤 A
【化9】
【0080】
光重合開始剤 B
【化10】
【0081】
上記で作製した光学異方性層(A)の遅相軸に対し−60°であり、かつ光学異方性層(A)の長手方向に対し−30°になるように、光学異方性層(A)塗布後に巻き取らずに連続的に光学異方性層(A)上にラビング処理を施した。
【0082】
ラビング処理した光学異方性層(A)の上に、下記の組成の塗布液を、バーコーターを用いてラビング処理後に巻き取らずに連続的に塗布、乾燥、および加熱(配向熟成)し、さらに紫外線照射して厚さ1.0μmの光学異方性層(B)を形成し、位相差板(λ/4板)を作製した。550nmにおける平均レターデーション値(Re550)は136nmであった。透明支持体の長手方向と光学異方性層(B)の遅相軸との角度を表1に示した。
光学異方性層(B)用塗布液組成
本発明の棒状液晶性化合物(例示化合物 I−2) 38.4質量%
増感剤 A 0.38質量%
光重合開始剤 B 1.15質量%
配向制御剤 C 0.06質量%
メチルエチルケトン 60.0質量%
【0083】
配向制御剤 C
【化11】
【0084】
[比較例1]
実施例1において、光学異方性層(A)を形成後に、一旦支持体を巻き取って、巻き取ったロール状態で表1に示す時間だけ、温度25℃、相対湿度60%RH雰囲気下にそれぞれ放置した。その後、実施例1と同様にして、光学異方性層(A)の表面にラビング処理を行ない、光学異方性層(B)を塗布して位相差板を作製し、それぞれ比較例1〜3とした。各サンプルについて、透明支持体の長手方向と光学異方性層(B)の遅相軸との角度を表1に示した。
【0085】
【表1】
【0086】
上表より、光学異方性層(A)を形成後、巻き取った状態で経時させない方が、面内での透明支持体の長手方向と光学異方性層(B)の遅相軸との角度のバラツキが小さく、液晶性化合物が均一に理想値で配向していることがわかる。従って、本発明の効果は明らかである。
なお、光学異方性層(A)を塗布した後に、乾燥後に厚さ1μmになるように前述の配向膜塗布液Aを塗布して、その後は比較例1〜3と同様にして光学異方性層(B)を塗布した場合には、表1のような面内での透明支持体の長手方向と光学異方性層(B)の遅相軸との角度の巻き取り後経時によるバラツキは発生せず、実施例1と同じ結果となった。このことより、表1の巻き取り後の経時による角度バラツキは、配向膜を光学異方性層(A)の上に塗布しなかったために発生した問題であり、配向膜を塗布しない場合には本発明が有効であることが明らかである。
【0087】
[実施例2]
PVAフィルムをヨウ素2.0g/L、ヨウ化カリウム4.0g/Lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/Lの水溶液に、25℃にて60秒浸漬後、特開2002−86554号公報の図2の形態のテンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、テンターを延伸方向に対し特開2002−86554号公報の図2の如く屈曲させ、以降幅を一定に保ち、収縮させながら80℃雰囲気で乾燥させた後、テンターから離脱した。延伸開始前のPVAフィルムの含水率は31%で、乾燥後の含水率は1.5%であった。
左右のテンタークリップの搬送速度差は0.05%未満であり、導入されるフィルムの中心線と次工程に送られるフィルムの中心線のなす角は、46゜であった。ここで|L1−L2|は0.7m、Wは0.7mであり、|L1−L2|=Wの関係にあった。テンター出口における実質延伸方向Ax−Cxは、次工程へ送られるフィルムの中心線22に対し45゜傾斜していた。テンター出口におけるシワ、フィルム変形は観察されなかった。
【0088】
さらに、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤としてケン化処理した富士写真フイルム(株)製フジタック(セルローストリアセテート、レターデーション値3.0nm)と貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して有効幅650mmの偏光板を得た。
得られた偏光板の吸収軸方向は、長手方向に対し45゜傾斜していた。この偏光板の550nmにおける透過率は43.7%、偏光度は99.97%であった。さらに図5の如く、310×233mmサイズに裁断したところ、91.5%の面積効率で辺に対し45゜吸収軸が傾斜した偏光板を得ることができた。
【0089】
次に、図8のように、上記で作製したヨウ素系偏光フィルム91の片面上に実施例1で作製した位相差板96を積層し、もう一方の面上にケン化処理した防眩性反射防止フィルム97を貼り合わせて、円偏光板92を作製した。位相板96を比較例1〜3にそれぞれ代えた以外は、同様にして円偏光板93〜95をそれぞれ作製した。いずれの偏光板の作製においても、偏光膜と位相差板の長手方向が一致するように貼り合わせて、円偏光板を作製した。
【0090】
得られた円偏光板92〜95の各々について、防眩性反射防止フィルム97側から光(測定波長は450nm、550nm、および650nm)を照射し、通過した光の位相差(レターデーション値:Re)を幅650mm、長さ1000mmの任意の20点を選んで測定し、その最大値、最小値でハラツキ幅を表した。結果を表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
表2に示すように、本発明の製造法に従えば、面内のReのバラツキが少ない円偏光板が作製できる。
【0093】
[実施例3]
(反射型液晶表示装置の作製)
市販の反射型液晶表示装置(カラーザウルス MI−310、シャープ(株)製)の偏光板と位相差板を剥ぎとり、代わりに実施例2で作製した円偏光板92を取り付けた。
作製した反射型液晶表示装置について、目視で評価したところ、白表示、黒表示、そして中間調のいずれにおいても、色味がなく、ニュートラルグレーが表示されていることがわかった。
次に、測定機(EZcontrast160D、Eldim社製)を用いて反射輝度のコントラスト比を測定した。正面からのコントラスト比は10であり、実用的に十分なコントラスト比になっていた。
【0094】
【発明の効果】
本発明によれば、液晶配向の精度が高く、配向欠陥が少ない位相差板を、容易且つ低コストで作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の位相差板の作製例の流れを示した模式図である。
【図2】本発明の位相差板の例を示す概略図である。
【図3】本発明の位相差板を用いた円偏光板の例を示す概略図である。
【図4】従来の偏光板を打ち抜く様子を示す概略平面図である。
【図5】本発明に用いられる45°偏光板を打ち抜く様子を示す概略平面図である。
【図6】本発明の位相差板を用いた円偏光板の層構成を示す概略平面図である。
【図7】本発明に位相差板を用いた円偏光板の層構成の他の例を示す概略平面図である。
【図8】実施例2で作製した円偏光板の層構成を示す概略平面図である。
【符号の説明】
1 透明支持体
2 配向膜
3 ラビングロール
4、5 光学異方性層
S 透明支持体
A 第1の光学異方性層
B 第2の光学異方性層
s 透明支持体の長手方向
a 第1の光学異方性層の遅相軸
b 第2の光学異方性層の遅相軸
c1 棒状液晶性化合物
c2 棒状液晶性化合物
71 吸収軸(延伸軸)
72 長手方向
81 吸収軸(延伸軸)
82 長手方向
91 実施例2で作製した偏光膜
92 実施例1の位相差板を用いた円偏光板
96 実施例1で作製した位相差板
97 防眩性反射防止フィルム
Claims (5)
- 長尺ロール状の透明支持体及びその片側に2層以上の液晶性化合物からなる光学異方性層を有する位相差板の製造方法であって、連続移動している支持体に配向膜を塗布し、
(a)該支持体の配向膜を形成した側の表面をラビングし、
(b)ラビングされた表面に液晶性化合物を含有する組成物を塗布し、
(c)工程(b)で塗布された組成物を固化させて光学異方性層とし、
(d)前記支持体を巻き取らずに、工程(a)〜(c)を少なくとも1回繰り返し、
(e)前記支持体を巻き取る、
以上の工程を含む製造方法。 - 繰り返し工程(a)〜(c)を行う場合に、少なくとも1回の工程(a)において、光学異方性層の表面をラビングし、且つ該光学異方性層が、炭素原子数が9以下の炭化水素基を有する変性ポリビニルアルコールを含有する請求項1に記載の製造方法。
- 少なくとも1回の工程(b)に用いる前記液晶性化合物が、重合性基を有する棒状液晶性化合物である請求項1または2に記載の製造方法。
- 少なくとも1回の工程(b)に用いる前記液晶性化合物が、重合性基を有する円盤状液晶性化合物である請求項1または2に記載の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で製造された位相差板。
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