JP2004243628A - セルロースエステルフィルム、その製造方法、光学補償フィルム、偏光板、及び液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セルロースエステル100質量部に対して、レターデーション上昇剤として平面構造のトリアジン骨格を有する特定化合物を0.01乃至20質量部含むセルロースエステル溶液を流延する工程、及び剥ぎ取り前乾燥の前半において10秒以上90秒以下の時間、実質的に無風で乾燥する工程を含んだセルロースエステルフィルムを製造する方法、この方法で得られたセルロースエステルフィルム、該フィルムを用いた光学補償フィルム及び偏光板、並びにこれら機能性フィルムを備えた液晶表示装置。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースエステルフィルム及びその製造方法、該フィルムを支持体に用いた光学補償フィルム及び偏光板、さらには該偏光板を用いた液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置において、視野角の拡大、画像着色の改良、及びコントラストの向上のため光学補償フィルムを使用することは広く知られた技術である。なかでも、セルロースエステル中に平面性の高い分子構造を有する低分子化合物を添加したフィルムは広い範囲でのレターデーション調節が可能で特に有用であり、例えば、特許文献1(特開2000−111914号公報)、特許文献2(特開2000−166144号公報)などに具体例が開示されている。しかし、これらの化合物は、ソルベントキャスト法によりセルロースエステルフィルムを製造する際の乾燥工程で、フィルム表面にブリードアウトしてフィルムが光学的に不均一化し、このフィルムからなる光学補償フィルムを使用した液晶表示装置は表示品位が著しく劣るという問題を有していた。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−111914号公報
【特許文献2】
特開2000−166144号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、レターデーション値が高くかつフィルム面内での光学的な均一性に優れたセルロースエステルフィルム及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記特性に優れたセルロースエステルフィルムを支持体とする光学補償フィルム及び偏光板を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、上記偏光板を用いた表示品質の良好な液晶表示装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、ソルベントキャスト法によりセルロースエステルフィルムを製造する際の乾燥工程でのレターデーション上昇剤のブリードアウトは、溶剤が急速に揮散した結果、取り残されたレターデーション上昇剤が析出し、セルロースエステルフィルム内への再拡散が十分おこなわれないことが原因との結論に至り、乾燥時の溶剤揮散性速度を十分遅くすることにより解決できることを見出し本発明に到った。
即ち、本発明によれば、下記構成のセルロースエステルフィルムの製造方法、セルロースエステルフィルム、光学補償フィルム、偏光板、及び液晶表示装置が提供され、上記本発明の目的が達成される。
1.ソルベントキャスト法によるセルロースエステルフィルムの製造方法であって、
セルロースエステル100質量部に対して、レターデーション上昇剤として下記一般式(I)で表される化合物を0.01乃至20質量部含むセルロースエステル溶液を流延する工程、及び剥ぎ取り前乾燥の前半において10秒以上90秒以下の時間、実質的に無風で乾燥する工程を含むことを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
一般式(I)
【0006】
【化2】
【0007】
上記一般式(I)中:
R1は、各々独立に、オルト位、メタ位およびパラ位の少なくともいずれかに置換基を有する芳香族環または複素環を表す。
X1は、各々独立に、単結合または−NR3−を表す。ここで、R3は、各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。
2.ソルベントキャスト法によりドラム上に流延するセルロースエステルフィルムの製造方法であって、
セルロースエステル100質量部に対して、レターデーション上昇剤として前記一般式(I)で表される化合物を0.01乃至20質量部含むセルロースエステル溶液を流延する工程、及び剥ぎ取り前乾燥の前半において1秒以上10秒以下の時間、実質的に無風で乾燥する工程を含むことを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
3.上記1および2に記載される方法により製造されたセルロースエステルフィルム。
4.下記数式(I)で算出されるRthレターデーション値が70乃至400nmの範囲であることを特徴とする上記3に記載のセルロースエステルフィルム。
数式(I)
Rth={(nx−ny)/2−nz}×d
上記数式(I)中:
nxは、フイルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率、nyは、フイルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率、nzはフィルム面に対して垂直方向の屈折率を表す。
dは、フイルムの厚さ(nm)を表す。
5.上記3または4のいずれかに記載のセルロースエステルフィルムの上に、液晶性分子から形成された光学異方性層が設けられていることを特徴とする光学補償フィルム。
6.透明保護膜、偏光膜、透明支持体、及び液晶性分子から形成された光学的異方性層がこの順に積層されている偏光板であって、
透明支持体が上記3または4のいずれかのセルロースエステルフィルムであることを特徴とする偏光板。
7.液晶セルおよびその両側に配置された2枚の偏光板からなる偏光板であって、
該2枚の偏光板の内少なくとも1枚の偏光板が上記6に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
8.液晶セルが、TNモード、ベンド配向モードまたは垂直配向モードの液晶セルであることを特徴とする上記7に記載の液晶表示装置。
【0008】
【発明の実施の形態】
光学補償フィルムや偏光板の透明支持体に用いられるセルロースアセテートフィルムには、レターデーションを調整するため、レターデーション上昇剤が使用される。まず、本発明で用いられるレターデーション上昇剤について説明する。
[レターデーション上昇剤]
本発明では、下記一般式(I)で表される化合物がレターデーション上昇剤として用いられる。一般式(I)で表される化合物は、分子構造がトリアジン環を中心として回転対称性を有するので、レターデーション発現性が高く、かつ安価に製造可能であり、好ましい。
一般式(I)
【0009】
【化3】
【0010】
上記一般式(I)中:
R1は、各々独立に、オルト位、メタ位およびパラ位の少なくともいずれかに置換基を有する芳香族環または複素環を表す。
X1は、各々独立に、単結合または−NR3−を表す。ここで、R3は、各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。
【0011】
R1が表す芳香族環は、フェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルであることが特に好ましい。R1が表す芳香族環はいずれかの置換位置に少なくとも一つの置換基を有してもよい。前記置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、カルボキシル、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アルキル置換スルファモイル基、アルケニル置換スルファモイル基、アリール置換スルファモイル基、スルオンアミド基、カルバモイル、アルキル置換カルバモイル基、アルケニル置換カルバモイル基、アリール置換カルバモイル基、アミド基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基およびアシル基が含まれる。
【0012】
R1が表す複素環基は、芳香族性を有することが好ましい。芳香族性を有する複素環は、一般に不飽和複素環であり、好ましくは最多の二重結合を有する複素環である。複素環は5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが最も好ましい。複素環のヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子または酸素原子であることが好ましく、窒素原子であることが特に好ましい。芳香族性を有する複素環としては、ピリジン環(複素環基としては、2−ピリジルまたは4−ピリジル)が特に好ましい。複素環基は、置換基を有していてもよい。複素環基の置換基の例は、上記アリール部分の置換基の例と同様である。
X1、X2およびX3がそれぞれ単結合である場合の複素環基は、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基であることが好ましい。窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、5員環であることが最も好ましい。複素環基は、複数の窒素原子を有していてもよい。また、複素環基は、窒素原子以外のヘテロ原子(例、O、S)を有していてもよい。以下に、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基の例を示す。
【0013】
【化4】
【0014】
一般式(I)中、X1は単結合または−NR3−を表す。R3は独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。
R3が表すアルキル基は、環状アルキル基であっても鎖状アルキル基であってもよいが、鎖状アルキル基が好ましく、分岐を有する鎖状アルキル基よりも、直鎖状アルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜8がさらにまた好ましく、1〜6であることが最も好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ)およびアシルオキシ基(例、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ)が含まれる。
【0015】
R3が表すアルケニル基は、環状アルケニル基であっても鎖状アルケニル基であってもよいが、鎖状アルケニル基を表すのが好ましく、分岐を有する鎖状アルケニル基よりも、直鎖状アルケニル基を表すのがより好ましい。アルケニル基の炭素原子数は、2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがさらにまた好ましく、2〜6であることが最も好ましい。アルケニル基は置換基を有していてもよい。置換基の例には、前述のアルキル基の置換基と同様である。
R3が表す芳香族環基および複素環基は、R1が表す芳香族環および複素環と同様であり、好ましい範囲も同様である。芳香族環基および複素環基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例にはR1の芳香族環および複素環の置換基と同様である。
【0016】
一般式(I)で表されるレターデーション上昇剤の分子量は、300乃至800であることが好ましい。
また、一般式(I)で表されるレターデーション上昇剤と共にUV吸収剤を併用してもよい。UV吸収剤の使用量は一般式(I)で表されるレターデーション上昇剤に対して質量比で10%以下が好ましく、3%以下がさらに好ましい。
【0017】
以下に本発明で使用される一般式(I)で表されるレターデーション上昇剤の具体例を示す。各例に示す複数のRは、同一の基を意味する。Rの定義は具体例番号と共に式の後に示す。
【0018】
【化5】
【0019】
(1)フェニル
(2)3−エトキシカルボニルフェニル
(3)3−ブトキシフェニル
(4)m−ビフェニリル
(5)3−フェニルチオフェニル
(6)3−クロロフェニル
(7)3−ベンゾイルフェニル
(8)3−アセトキシフェニル
(9)3−ベンゾイルオキシフェニル
(10)3−フェノキシカルボニルフェニル
(11)3−メトキシフェニル
(12)3−アニリノフェニル
(13)3−イソブチリルアミノフェニル
(14)3−フェノキシカルボニルアミノフェニル
(15)3−(3−エチルウレイド)フェニル
(16)3−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
(17)3−メチルフェニル
(18)3−フェノキシフェニル
(19)3−ヒドロキシフェニル
【0020】
(20)4−エトキシカルボニルフェニル
(21)4−ブトキシフェニル
(22)p−ビフェニリル
(23)4−フェニルチオフェニル
(24)4−クロロフェニル
(25)4−ベンゾイルフェニル
(26)4−アセトキシフェニル
(27)4−ベンゾイルオキシフェニル
(28)4−フェノキシカルボニルフェニル
(29)4−メトキシフェニル
(30)4−アニリノフェニル
(31)4−イソブチリルアミノフェニル
(32)4−フェノキシカルボニルアミノフェニル
(33)4−(3−エチルウレイド)フェニル
(34)4−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
(35)4−メチルフェニル
(36)4−フェノキシフェニル
(37)4−ヒドロキシフェニル
【0021】
(38)3,4−ジエトキシカルボニルフェニル
(39)3,4−ジブトキシフェニル
(40)3,4−ジフェニルフェニル
(41)3,4−ジフェニルチオフェニル
(42)3,4−ジクロロフェニル
(43)3,4−ジベンゾイルフェニル
(44)3,4−ジアセトキシフェニル
(45)3,4−ジベンゾイルオキシフェニル
(46)3,4−ジフェノキシカルボニルフェニル
(47)3,4−ジメトキシフェニル
(48)3,4−ジアニリノフェニル
(49)3,4−ジメチルフェニル
(50)3,4−ジフェノキシフェニル
(51)3,4−ジヒドロキシフェニル
(52)2−ナフチル
【0022】
(53)3,4,5−トリエトキシカルボニルフェニル
(54)3,4,5−トリブトキシフェニル
(55)3,4,5−トリフェニルフェニル
(56)3,4,5−トリフェニルチオフェニル
(57)3,4,5−トリクロロフェニル
(58)3,4,5−トリベンゾイルフェニル
(59)3,4,5−トリアセトキシフェニル
(60)3,4,5−トリベンゾイルオキシフェニル
(61)3,4,5−トリフェノキシカルボニルフェニル
(62)3,4,5−トリメトキシフェニル
(63)3,4,5−トリアニリノフェニル
(64)3,4,5−トリメチルフェニル
(65)3,4,5−トリフェノキシフェニル
(66)3,4,5−トリヒドロキシフェニル
【0023】
【化6】
【0024】
(67)フェニル
(68)3−エトキシカルボニルフェニル
(69)3−ブトキシフェニル
(70)m−ビフェニリル
(71)3−フェニルチオフェニル
(72)3−クロロフェニル
(73)3−ベンゾイルフェニル
(74)3−アセトキシフェニル
(75)3−ベンゾイルオキシフェニル
(76)3−フェノキシカルボニルフェニル
(77)3−メトキシフェニル
(78)3−アニリノフェニル
(79)3−イソブチリルアミノフェニル
(80)3−フェノキシカルボニルアミノフェニル
(81)3−(3−エチルウレイド)フェニル
(82)3−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
(83)3−メチルフェニル
(84)3−フェノキシフェニル
(85)3−ヒドロキシフェニル
【0025】
(86)4−エトキシカルボニルフェニル
(87)4−ブトキシフェニル
(88)p−ビフェニリル
(89)4−フェニルチオフェニル
(90)4−クロロフェニル
(91)4−ベンゾイルフェニル
(92)4−アセトキシフェニル
(93)4−ベンゾイルオキシフェニル
(94)4−フェノキシカルボニルフェニル
(95)4−メトキシフェニル
(96)4−アニリノフェニル
(97)4−イソブチリルアミノフェニル
(98)4−フェノキシカルボニルアミノフェニル
(99)4−(3−エチルウレイド)フェニル
(100)4−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
(101)4−メチルフェニル
(102)4−フェノキシフェニル
(103)4−ヒドロキシフェニル
【0026】
(104)3,4−ジエトキシカルボニルフェニル
(105)3,4−ジブトキシフェニル
(106)3,4−ジフェニルフェニル
(107)3,4−ジフェニルチオフェニル
(108)3,4−ジクロロフェニル
(109)3,4−ジベンゾイルフェニル
(110)3,4−ジアセトキシフェニル
(111)3,4−ジベンゾイルオキシフェニル
(112)3,4−ジフェノキシカルボニルフェニル
(113)3,4−ジメトキシフェニル
(114)3,4−ジアニリノフェニル
(115)3,4−ジメチルフェニル
(116)3,4−ジフェノキシフェニル
(117)3,4−ジヒドロキシフェニル
(118)2−ナフチル
【0027】
(119)3,4,5−トリエトキシカルボニルフェニル
(120)3,4,5−トリブトキシフェニル
(121)3,4,5−トリフェニルフェニル
(122)3,4,5−トリフェニルチオフェニル
(123)3,4,5−トリクロロフェニル
(124)3,4,5−トリベンゾイルフェニル
(125)3,4,5−トリアセトキシフェニル
(126)3,4,5−トリベンゾイルオキシフェニル
(127)3,4,5−トリフェノキシカルボニルフェニル
(128)3,4,5−トリメトキシフェニル
(129)3,4,5−トリアニリノフェニル
(130)3,4,5−トリメチルフェニル
(131)3,4,5−トリフェノキシフェニル
(132)3,4,5−トリヒドロキシフェニル
【0028】
【化7】
【0029】
(133)フェニル
(134)4−ブチルフェニル
(135)4−(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
(136)4−(5−ノネニル)フェニル
(137)p−ビフェニリル
(138)4−エトキシカルボニルフェニル
(139)4−ブトキシフェニル
(140)4−メチルフェニル
(141)4−クロロフェニル
(142)4−フェニルチオフェニル
(143)4−ベンゾイルフェニル
(144)4−アセトキシフェニル
(145)4−ベンゾイルオキシフェニル
(146)4−フェノキシカルボニルフェニル
(147)4−メトキシフェニル
(148)4−アニリノフェニル
(149)4−イソブチリルアミノフェニル
(150)4−フェノキシカルボニルアミノフェニル
(151)4−(3−エチルウレイド)フェニル
(152)4−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
(153)4−フェノキシフェニル
(154)4−ヒドロキシフェニル
【0030】
(155)3−ブチルフェニル
(156)3−(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
(157)3−(5−ノネニル)フェニル
(158)m−ビフェニリル
(159)3−エトキシカルボニルフェニル
(160)3−ブトキシフェニル
(161)3−メチルフェニル
(162)3−クロロフェニル
(163)3−フェニルチオフェニル
(164)3−ベンゾイルフェニル
(165)3−アセトキシフェニル
(166)3−ベンゾイルオキシフェニル
(167)3−フェノキシカルボニルフェニル
(168)3−メトキシフェニル
(169)3−アニリノフェニル
(170)3−イソブチリルアミノフェニル
(171)3−フェノキシカルボニルアミノフェニル
(172)3−(3−エチルウレイド)フェニル
(173)3−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
(174)3−フェノキシフェニル
(175)3−ヒドロキシフェニル
【0031】
(176)2−ブチルフェニル
(177)2−(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
(178)2−(5−ノネニル)フェニル
(179)o−ビフェニリル
(180)2−エトキシカルボニルフェニル
(181)2−ブトキシフェニル
(182)2−メチルフェニル
(183)2−クロロフェニル
(184)2−フェニルチオフェニル
(185)2−ベンゾイルフェニル
(186)2−アセトキシフェニル
(187)2−ベンゾイルオキシフェニル
(188)2−フェノキシカルボニルフェニル
(189)2−メトキシフェニル
(190)2−アニリノフェニル
(191)2−イソブチリルアミノフェニル
(192)2−フェノキシカルボニルアミノフェニル
(193)2−(3−エチルウレイド)フェニル
(194)2−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
(195)2−フェノキシフェニル
(196)2−ヒドロキシフェニル
【0032】
(197)3,4−ジブチルフェニル
(198)3,4−ジ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
(199)3,4−ジフェニルフェニル
(200)3,4−ジエトキシカルボニルフェニル
(201)3,4−ジドデシルオキシフェニル
(202)3,4−ジメチルフェニル
(203)3,4−ジクロロフェニル
(204)3,4−ジベンゾイルフェニル
(205)3,4−ジアセトキシフェニル
(206)3,4−ジメトキシフェニル
(207)3,4−ジ−N−メチルアミノフェニル
(208)3,4−ジイソブチリルアミノフェニル
(209)3,4−ジフェノキシフェニル
(210)3,4−ジヒドロキシフェニル
【0033】
(211)3,5−ジブチルフェニル
(212)3,5−ジ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
(213)3,5−ジフェニルフェニル
(214)3,5−ジエトキシカルボニルフェニル
(215)3,5−ジドデシルオキシフェニル
(216)3,5−ジメチルフェニル
(217)3,5−ジクロロフェニル
(218)3,5−ジベンゾイルフェニル
(219)3,5−ジアセトキシフェニル
(220)3,5−ジメトキシフェニル
(221)3,5−ジ−N−メチルアミノフェニル
(222)3,5−ジイソブチリルアミノフェニル
(223)3,5−ジフェノキシフェニル
(224)3,5−ジヒドロキシフェニル
【0034】
(225)2,4−ジブチルフェニル
(226)2,4−ジ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
(227)2,4−ジフェニルフェニル
(228)2,4−ジエトキシカルボニルフェニル
(229)2,4−ジドデシルオキシフェニル
(230)2,4−ジメチルフェニル
(231)2,4−ジクロロフェニル
(232)2,4−ジベンゾイルフェニル
(233)2,4−ジアセトキシフェニル
(234)2,4−ジメトキシフェニル
(235)2,4−ジ−N−メチルアミノフェニル
(236)2,4−ジイソブチリルアミノフェニル
(237)2,4−ジフェノキシフェニル
(238)2,4−ジヒドロキシフェニル
【0035】
(239)2,3−ジブチルフェニル
(240)2,3−ジ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
(241)2,3−ジフェニルフェニル
(242)2,3−ジエトキシカルボニルフェニル
(243)2,3−ジドデシルオキシフェニル
(244)2,3−ジメチルフェニル
(245)2,3−ジクロロフェニル
(246)2,3−ジベンゾイルフェニル
(247)2,3−ジアセトキシフェニル
(248)2,3−ジメトキシフェニル
(249)2,3−ジ−N−メチルアミノフェニル
(250)2,3−ジイソブチリルアミノフェニル
(251)2,3−ジフェノキシフェニル
(252)2,3−ジヒドロキシフェニル
【0036】
(253)2,6−ジブチルフェニル
(254)2,6−ジ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
(255)2,6−ジフェニルフェニル
(256)2,6−ジエトキシカルボニルフェニル
(257)2,6−ジドデシルオキシフェニル
(258)2,6−ジメチルフェニル
(259)2,6−ジクロロフェニル
(260)2,6−ジベンゾイルフェニル
(261)2,6−ジアセトキシフェニル
(262)2,6−ジメトキシフェニル
(263)2,6−ジ−N−メチルアミノフェニル
(264)2,6−ジイソブチリルアミノフェニル
(265)2,6−ジフェノキシフェニル
(266)2,6−ジヒドロキシフェニル
【0037】
(267)3,4,5−トリブチルフェニル
(268)3,4,5−トリ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
(269)3,4,5−トリフェニルフェニル
(270)3,4,5−トリエトキシカルボニルフェニル
(271)3,4,5−トリドデシルオキシフェニル
(272)3,4,5−トリメチルフェニル
(273)3,4,5−トリクロロフェニル
(274)3,4,5−トリベンゾイルフェニル
(275)3,4,5−トリアセトキシフェニル
(276)3,4,5−トリメトキシフェニル
(277)3,4,5−トリ−N−メチルアミノフェニル
(278)3,4,5−トリイソブチリルアミノフェニル
(279)3,4,5−トリフェノキシフェニル
(280)3,4,5−トリヒドロキシフェニル
【0038】
(281)2,4,6−トリブチルフェニル
(282)2,4,6−トリ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
(283)2,4,6−トリフェニルフェニル
(284)2,4,6−トリエトキシカルボニルフェニル
(285)2,4,6−トリドデシルオキシフェニル
(286)2,4,6−トリメチルフェニル
(287)2,4,6−トリクロロフェニル
(288)2,4,6−トリベンゾイルフェニル
(289)2,4,6−トリアセトキシフェニル
(290)2,4,6−トリメトキシフェニル
(291)2,4,6−トリ−N−メチルアミノフェニル
(292)2,4,6−トリイソブチリルアミノフェニル
(293)2,4,6−トリフェノキシフェニル
(294)2,4,6−トリヒドロキシフェニル
【0039】
(295)ペンタフルオロフェニル
(296)ペンタクロロフェニル
(297)ペンタメトキシフェニル
(298)6−N−メチルスルファモイル−8−メトキシ−2−ナフチル
(299)5−N−メチルスルファモイル−2−ナフチル
(300)6−N−フェニルスルファモイル−2−ナフチル
(301)5−エトキシ−7−N−メチルスルファモイル−2−ナフチル
(302)3−メトキシ−2−ナフチル
(303)1−エトキシ−2−ナフチル
(304)6−N−フェニルスルファモイル−8−メトキシ−2−ナフチル
(305)5−メトキシ−7−N−フェニルスルファモイル−2−ナフチル
(306)1−(4−メチルフェニル)−2−ナフチル
(307)6,8−ジ−N−メチルスルファモイル−2−ナフチル
(308)6−N−2−アセトキシエチルスルファモイル−8−メトキシ−2−ナフチル
(309)5−アセトキシ−7−N−フェニルスルファモイル−2−ナフチル
(310)3−ベンゾイルオキシ−2−ナフチル
【0040】
(311)5−アセチルアミノ−1−ナフチル
(312)2−メトキシ−1−ナフチル
(313)4−フェノキシ−1−ナフチル
(314)5−N−メチルスルファモイル−1−ナフチル
(315)3−N−メチルカルバモイル−4−ヒドロキシ−1−ナフチル
(316)5−メトキシ−6−N−エチルスルファモイル−1−ナフチル
(317)7−テトラデシルオキシ−1−ナフチル
(318)4−(4−メチルフェノキシ)−1−ナフチル
(319)6−N−メチルスルファモイル−1−ナフチル
(320)3−N,N−ジメチルカルバモイル−4−メトキシ−1−ナフチル
(321)5−メトキシ−6−N−ベンジルスルファモイル−1−ナフチル
(322)3,6−ジ−N−フェニルスルファモイル−1−ナフチル
【0041】
(323)メチル
(324)エチル
(325)ブチル
(326)オクチル
(327)ドデシル
(328)2−ブトキシ−2−エトキシエチル
(329)ベンジル
(330)4−メトキシベンジル
【0042】
【化8】
【0043】
(331)メチル
(332)フェニル
(333)ブチル
【0044】
一般式(I)で表されるレターデーション上昇剤は、セルロースエステル100質量部に対して、0.01乃至20質量部、好ましくは0.5乃至10質量部用いられる。この範囲でレターデーション上昇剤を用いることにより、フィルムのレターデーションを適宜に制御することができる。0.01質量部未満の使用では、レターデーションの上昇が少なくレターデーションを制御することができない。20質量部を超えての使用は、レターデーション上昇剤がセルロースエステルと相溶せず、フィルム中で結晶化してしまう。
【0045】
次に本発明の製造の対象であり、かつ光学補償フィルム、偏光板で使用するセルロースエステルフィルムについて詳しく説明する。
[フイルムのレターデーション]
フイルムのReレターデーション値およびRthレターデーション値は、それぞれ、下記式(I)および(II)で定義される。
式(I):Re=(nx−ny)×d
式(II):Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(I)および(II)において、nxは、フイルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率である。
式(I)および(II)において、nyは、フイルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率である。
式(II)において、nzは、フイルムの厚み方向の屈折率である。
式(I)および(II)において、dは、単位をnmとするフイルムの厚さである。
【0046】
本発明では、セルロースアセテートフイルムのReレターデーション値を0乃至100nmの範囲に、そして、Rthレターデーション値を70乃至400nmの範囲に調節する。
なお、セルロースアセテートフイルムの複屈折率(Δn:nx−ny)は、0.00乃至0.002の範囲にあることが好ましい。また、セルロースアセテートフイルムの厚み方向の複屈折率{(nx+ny)/2−nz}は、0.001乃至0.05の範囲にあることが好ましい。
【0047】
[セルロースエステル]
本発明に用いるセルロースエステルとしては、セルロースの低級脂肪酸エステルが好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数は2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)、4(セルロースブチレート)であることが好ましい。
なかでも、セルロースアセテートが特に好ましい。また、セルロースアセテートプロピオネートとセルロースアセテートブチレートとが混在するような混合脂肪酸のセルロースエステルを用いてもよい。更には、セルロースベンゾエートのようなセルロース芳香族酸エステルや、セルロースアセテートベンゾエートとセルロースプロピオネートベンゾエートとが混在するような脂肪族酸と芳香族酸との混合酸のセルロースエステルを用いてもよい。
このうち酢化度が59.0乃至61.5%の範囲にあるセルロースアセテートを使用することが特に好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。セルロースエステルの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。
また、本発明に使用するセルロースエステルは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)で示される分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値は、1.0乃至1.7の範囲にあることが好ましく、1.3乃至1.65の範囲にあることがさらに好ましく、1.4乃至1.6の範囲にあることが最も好ましい。
【0048】
[セルロースアセテートフイルムの製造]
本発明のセルロースアセテートフイルムは、ソルベントキャスト法により製造する。ソルベントキャスト法では、セルロースアセテートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフイルムを製造する。
有機溶媒は、炭素原子数が3乃至12のエーテル、炭素原子数が3乃至12のケトン、炭素原子数が3乃至12のエステルおよび炭素原子数が1乃至6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する溶媒の上記した好ましい炭素原子数範囲内であることが好ましい。
【0049】
炭素原子数が3乃至12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25乃至75モル%であることが好ましく、30乃至70モル%であることがより好ましく、35乃至65モル%であることがさらに好ましく、40乃至60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0050】
0℃以上の温度(常温または高温)で処理することからなる一般的な方法で、セルロースアセテート溶液を調製することができる。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特にメチレンクロリド)を用いることが好ましい。
セルロースアセテートの量は、得られる溶液中に10乃至40質量%含まれるように調整する。セルロースアセテートの量は、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
溶液は、常温(0乃至40℃)でセルロースアセテートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースアセテートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。
加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60乃至200℃であり、さらに好ましくは80乃至110℃である。
【0051】
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
【0052】
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にもセルロースアセテートを溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でセルロースアセテートを溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果がある。
冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にセルロースアセテートを撹拌しながら徐々に添加する。
セルロースアセテートの量は、この混合物中に10乃至40質量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアセテートの量は、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
【0053】
次に、混合物を−100乃至−10℃(好ましくは−80乃至−10℃、さらに好ましくは−50乃至−20℃、最も好ましくは−50乃至−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30乃至−20℃)中で実施できる。冷却によりセルロースアセテートと有機溶媒の混合物は固化する。
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
【0054】
さらに、これを0乃至200℃(好ましくは0乃至150℃、さらに好ましくは0乃至120℃、最も好ましくは0乃至50℃)に加温すると、有機溶媒中にセルロースアセテートが溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよく、温浴中で加温してもよい。
加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
【0055】
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時の減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
なお、セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示差走査熱量計(DSC)による測定によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアセテートの酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
【0056】
調製したセルロースアセテート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアセテートフイルムを製造する。ドープには前記のレターデーション上昇剤を添加することが好ましい。
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18乃至35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。
【0057】
本発明では、ドープ(セルロースエステル溶液)をバンド上に流延する場合、剥ぎ取り前乾燥の前半において10秒以上90秒以下、好ましくは15秒以上90秒以下の時間、実質的に無風で乾燥する工程を行う。また、ドラム上に流延する場合、剥ぎ取り前乾燥の前半において1秒以上10秒以下、好ましくは2秒以上5秒以下の時間、実質的に無風で乾燥する工程を行う。
本発明において、「剥ぎ取り前乾燥」とはバンドもしくはドラム上にドープが塗布されてからフィルムとして剥ぎ取られるまでの乾燥を指すものとする。また、「前半」とはドープ塗布から剥ぎ取りまでに要する全時間の半分より前の工程を指すものとする。「実質的に無風」であるとは、バンド表面もしくはドラム表面から200mm以内の距離において0.5m/s以上の風速が検出されないことである。
剥ぎ取り前乾燥の前半は、バンド上の場合通常30〜300秒程度の時間であるが、その内の10秒以上90秒以下、好ましくは15秒以上90秒以下の時間、無風で乾燥する。ドラム上の場合は通常5〜30秒程度の時間であるが、その内の1秒以上10秒以下、好ましくは2秒以上5秒以下の時間、無風で乾燥する。雰囲気温度温度は0℃〜180℃が好ましく、40℃〜150℃がさらに好ましい。無風で乾燥する操作は剥ぎ取り前乾燥の前半の任意の段階で行うことができるが、好ましくは流延直後から行うことが好ましい。無風で乾燥する時間が10秒未満であると、レターデーション上昇剤がフィルム内に均一に分布することが難しく、90秒を超えると乾燥不十分で剥ぎ取られことになり、フィルムの面状が悪化する。
剥ぎ取り前乾燥における無風で乾燥する以外の時間は、は不活性ガスを送風することにより乾燥を行なうことができる。このときの風温は0℃〜180℃が好ましく、40℃〜150℃がさらに好ましい。
【0058】
ソルベントキャスト法における乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。バンドまたはドラム上での乾燥は空気、窒素などの不活性ガスを送風することにより行なうことができる。
【0059】
得られたフイルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0060】
調整したセルロースアセテート溶液(ドープ)を用いて二層以上の流延を行いフイルム化することもできる。この場合、ソルベントキャスト法によりセルロースアセテートフイルムを作製することが好ましい。ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10乃至40%の範囲となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
【0061】
二層以上の複数のセルロースアセテート液を流延する場合、複数のセルロースアセテート溶液を流延することが可能で、支持体の進行方向に間隔をおいて設けられた複数の流延口からセルロースアセテートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフイルムを作製してもよい。例えば、特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および、特開平11−198285号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、2つの流延口からセルロースアセテート溶液を流延することによってもフイルム化することもできる。例えば、特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および、特開平6−134933号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアセテート溶液の流れを低粘度のセルロースアセテート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアセテート溶液を同時に押し出すセルロースアセテートフイルムの流延方法を用いることもできる。
【0062】
また、二個の流延口を用いて、第一の流延口により支持体に成形したフイルムを剥ぎ取り、支持体面に接していた側に第二の流延を行うことにより、フイルムを作製することもできる。例えば、特公昭44−20235号公報に記載の方法を挙げることができる。
流延するセルロースアセテート溶液は同一の溶液を用いてもよいし、異なるセルロースアセテート溶液を用いてもよい。複数のセルロースアセテート層に機能をもたせるために、その機能に応じたセルロースアセテート溶液を、それぞれの流延口から押し出せばよい。さらに本発明のセルロースアセテート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、紫外線吸収層、偏光層など)と同時に流延することもできる。
【0063】
従来の単層液では、必要なフイルムの厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアセテート溶液を押し出すことが必要である。その場合セルロースアセテート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良となったりして問題となることが多かった。この問題の解決方法として、複数のセルロースアセテート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に支持体上に押し出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフイルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアセテート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フイルムの生産スピードを高めることができる。
【0064】
セルロースアセテートフイルムには機械的物性を改良するために、以下の可塑剤を用いることができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
可塑剤の添加量は、セルロースエステルの量の0.1乃至25質量%であることが好ましく、1乃至20質量%であることがさらに好ましく、3乃至15質量%であることが最も好ましい。
【0065】
セルロースアセテートフイルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01乃至1質量%であることが好ましく、0.01乃至0.2質量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01質量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1質量%を越えると、フイルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を挙げることができる。
【0066】
[二軸延伸]
セルロースアセテートフイルムは、仮想歪みを低減させるために、延伸処理しても構わない。延伸することにより、延伸方向の仮想歪みが低減できるので、面内すべての方向で歪みを低減するために二軸延伸をおこなってもよい。
二軸延伸には、同時二軸延伸法と逐次二軸延伸法があるが、連続製造の観点から逐次二軸延伸方法が好ましく、ドープを流延した後、バンドもしくはドラムよりフイルムを剥ぎ取り、幅方向(長手方法)に延伸した後、長手方向(幅方向)に延伸される。
幅方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。フイルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は、フイルムのガラス転移温度以下であることが好ましい。フイルムは、乾燥中の処理で延伸することができ、特に溶媒が残存する場合は有効である。長手方向の延伸の場合、例えば、フイルムの搬送ローラーの速度を調節して、フイルムの剥ぎ取り速度よりもフイルムの巻き取り速度の方を速くするとフイルムは延伸される。幅方向の延伸の場合、フイルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもフイルムを延伸できる。フイルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。フイルムの延伸倍率(元の長さに対する延伸による増加分の比率)は、5乃至50%の範囲にあることが好ましく、10乃至40%の範囲にあることがさらに好ましく、15乃至35%の範囲にあることが最も好ましい。
【0067】
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。本発明に用いるセルロースアセテートフイルムの製造に用いる巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0068】
[セルロースアセテートフイルムの表面処理]
セルロースアセテートフイルムは、表面処理を施すことが好ましい。具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理または紫外線照射処理が挙げられる。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層を設けることも好ましい。
フイルムの平面性を保持する観点から、これら処理においてセルロースアセテートフイルムの温度をTg(ガラス転移温度)以下、具体的には150℃以下とすることが好ましい。
偏光板の透明保護膜として使用する場合、偏光子との接着性の観点から、酸処理またはアルカリ処理、すなわちセルロースアセテートに対するケン化処理を実施することが特に好ましい。
表面エネルギーは55mN/m以上であることが好ましく、60mN/m以上75mN/m以下であることが更に好ましい。
【0069】
以下、アルカリ鹸化処理を例に、具体的に説明する。
セルロースアセテートフイルムのアルカリ鹸化処理は、フイルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。
アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度は0.1乃至3.0Nの範囲にあることが好ましく、0.5乃至2.0Nの範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温乃至90℃の範囲にあることが好ましく、40乃至70℃の範囲にあることがさらに好ましい。
【0070】
固体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社 1989.12.10発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、および吸着法により求めることができる。本発明のセルロースアセテートフイルムの場合、接触角法を用いることが好ましい。
具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液をセルロースアセテートフイルムに滴下し、液滴の表面とフイルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフイルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフイルムの表面エネルギーを算出できる。
【0071】
以上説明したセルロースエステルフィルム及びその製造方法について説明した。次に、このセルロースエステルフィルムを支持体として用いる光学補償フィルム及び偏光板について説明する。
本発明の光学補償フィルム及び偏光板は、上記セルロースエステルフィルム上に、液晶性分子から形成された光学異方性層が設けられている。さらに偏光板は、透明保護膜及び偏光膜が設けられている。
【0072】
[光学異方性層]
(配向膜)
配向膜は、光学異方性層のディスコティック化合物の配向方向を規定する機能を有する。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。ポリビニルアルコールが、好ましいポリマーである。疎水性基が結合している変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。疎水性基は光学異方性層のディスコティック化合物と親和性があるため、疎水性基をポリビニルアルコールに導入することで、ディスコティック化合物を均一に配向させることができる。疎水性基は、ポリビニルアルコールの主鎖末端または側鎖に結合させる。
疎水性基は、炭素原子数が6以上の脂肪族基(好ましくはアルキル基またはアルケニル基)または芳香族基が好ましい。
ポリビニルアルコールの主鎖末端に疎水性基を結合させる場合は、疎水性基と主鎖末端との間に連結基を導入することが好ましい。連結基の例には、−S−、−C(CN)R1 −、−NR2 −、−CS−およびそれらの組み合わせが含まれる。上記R1 およびR2 は、それぞれ、水素原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基(好ましくは、炭素原子数が1乃至6のアルキル基)である。
【0073】
ポリビニルアルコールの側鎖に疎水性基を導入する場合は、ポリビニルアルコールの酢酸ビニル単位のアセチル基(−CO−CH3)の一部を、炭素原子数が7以上のアシル基(−CO−R3)に置き換えればよい。R3は、炭素原子数が6以上の脂肪族基または芳香族基である。
市販の変性ポリビニルアルコール(例、MP103、MP203、R1130、クラレ(株)製)を用いてもよい。
配向膜に用いる(変性)ポリビニルアルコールのケン化度は、80%以上であることが好ましい。(変性)ポリビニルアルコールの重合度は、200以上であることが好ましい。
ラビング処理は、配向膜の表面を、紙や布で一定方向に、数回こすることにより実施する。長さおよび太さが均一な繊維を均一に植毛した布を用いることが好ましい。
なお、光学異方性層のディスコティック化合物を配向膜を用いて配向後、配向膜を除去しても、ディスコティック化合物の配向状態を保つことができる。すなわち、配向膜は、ディスコティック化合物を配向するため楕円偏光板の製造において必須であるが、製造された光学補償フィルムにおいては必須ではない。
配向膜を透明支持体と光学異方性層との間に設ける場合は、さらに下塗り層(接着層)を透明支持体と配向膜との間に設けてもよい。
【0074】
(光学異方性層の形成)
光学異方性層はディスコティック液晶性分子、棒状液晶性分子など液晶性分子から形成することができる。本発明の光学補償フィルムにおいては、液晶性分子は、ディスコティック液晶性分子の場合円盤面、棒状液晶性分子の場合長軸方向、と透明支持体面とのなす角が、光学異方性層の深さ方向において変化している(ハイブリッド配向している)ことが好ましい。光学異方性層は、上記の配向膜によって液晶性分子を配向させ、その配向状態の液晶性分子を固定することによって形成することが好ましい。液晶性分子は、重合反応により固定することが好ましい。
【0075】
ディスコティック液晶性分子は、様々な文献(C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994))に記載されている。ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
特開平8−50286に記載されるディスコティック液晶性分子を用いることが好ましい。
【0076】
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。なお、棒状液晶性分子には、金属錯体も含まれる。棒状液晶性分子については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994年)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。特開平2001−166145号公報に記載されている棒状液晶性分子を用いることが好ましい。
【0077】
光学異方性層は、ディスコティック液晶性分子および必要に応じて重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
光学異方性層の厚さは、0.5乃至100μmであることが好ましく、0.5乃至30μmであることがさらに好ましい。
【0078】
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定する。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
【0079】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01乃至20質量%であることが好ましく、0.5乃至5質量%であることがさらに好ましい。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20乃至5000mJ/cm2 であることが好ましく、100乃至800mJ/cm2 であることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
【0080】
[偏光膜]
偏光板に用いられる偏光子には、偏光子としては、ポリビニルアルコール系フィルムや部分ホルマール化ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムの如き親水性高分子フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物の如きポリエン系配向フィルム等の偏光フィルムがあげられる。偏光子の厚さは5〜80μm程度が一般的であるが薄い方が高温及び高温高湿下での光漏れが小さく好ましい。また、塗布型の偏光子を用いても構わない。
フィルムとしてはPVAが好ましく用いられる。PVAは通常、ポリ酢酸ビニルをケン化したものであるが、例えば不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、オレフィン類、ビニルエーテル類のように酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有しても構わない。また、アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等を含有する変性PVAも用いることができる。
PVAのケン化度は特に限定されないが、溶解性等の観点から80乃至100mol%が好ましく、90乃至100mol%が特に好ましい。またPVAの重合度は特に限定されないが、1000乃至10000が好ましく、1500乃至5000が特に好ましい。
【0081】
本発明の偏光子は、PVAを水または有機溶媒に溶解した液を流延製膜し、該PVAフィルムを延伸してからヨウ素あるいは二色性染料で染色するか、染色してから延伸する。溶媒としては、水の他、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)、多価アルコール類(グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等)、アミン類(エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等)、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等およびこれらの混合物が用いられる。
【0082】
延伸倍率は2.5乃至30.0倍が好ましく、3.0乃至10.0倍がより好ましい。延伸は空気中でのドライ延伸でも、水中に浸漬したウェット延伸でもよく、ドライ延伸の場合は2.5乃至5.0倍程度、ウェット延伸の場合は3.0乃至10.0倍程度である。延伸方向は長手方向、幅方向の他に、斜め方向におこなってもよい。この際、延伸の方向はMD方向に対して10乃至80度が好ましい。この斜め延伸工程は数回に分けて行ってもよく、数回に分けることによって高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。また斜め延伸前に横あるいは縦に若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度)を行ってもよい。
【0083】
染色工程は気相または液相吸着により行われる。液相で行う場合の例としては、ヨウ素を用いる場合には、ヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液にPVAフィルムを浸漬させて行われる。ヨウ素は0.1乃至2.0g/l、ヨウ化カリウムは10乃至50g/l、ヨウ素とヨウ化カリウムの質量比は20乃至100が好ましい。染色時間は30乃至5000秒が好ましく、液温度は5乃至50℃が好ましい。染色方法としては浸漬だけでなく、ヨウ素あるいは染料溶液の塗布あるいは噴霧等、任意の手段が可能である。
【0084】
二色性染料としては、アゾ系、スチルベン系、キノン系、アントラキノン系、メチン系、アゾメチン系、シアニン系、メロシアニン系、キノフタロン系、テトラジン系等が挙げられる。中でもアゾ系、アントラキノン系の二色性染料が特に好ましい。
【0085】
染色処理されたPVAフィルムは次いでホウ素化合物、アルデヒド類等により架橋処理される。中でもホウ素化合物が特に好ましい。ホウ素化合物の例としては、ホウ酸、ホウ砂等が挙げられる。例えばホウ素化合物は水溶液又は水と有機溶媒の混合液を溶媒として0.5乃至2.0mol/lの溶液で用いられ、染色されたPVAフィルムを浸漬または噴霧、塗布等によって処理される。ホウ素化合物溶液には少量のヨウ素カリウムを添加することが好ましい。処理温度としては40乃至70℃が好ましく、処理時間としては5乃至20分が好ましい。また、処理中に前記方法によって斜め延伸を行ってもよい。
【0086】
さらにこのPVAフィルムを熱処理してもよい。処理時のフィルムの含水率は10乃至30%が好ましい。処理温度は40乃至100℃が好ましく、50乃至90℃がさらに好ましい。処理時間は0.5乃至15分が好ましい。
【0087】
こうして作成された偏光子を形成するPVAフィルムは両面に接着剤を介して透明支持体が保護フィルムとして貼合される。接着剤としては特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01乃至10μmが好ましく、0.05乃至5μmが特に好ましい。
【0088】
本発明の支持体フィルム及び対向フィルムとしては、非複屈折性光学樹脂材料が好ましく、このような例としては、ゼオネックス、ゼオノア(共に日本ゼオン(株)製)、ARTON(JSR(株)製)、およびフジタック(富士写真フイルム(株)製:トリアセチルセルロース)のような市販品の他、例えば特開平8−110402号あるいは特開平11−293116号に記載されているような樹脂材料が挙げられる。このうち、トリアセチルセルロースが特に好ましい。
ポリマーフイルムの遅相軸と偏光子の透過軸のなす角度は3°以下になるように配置することが好ましく、2°以下になるように配置することがさらに好ましく、1°以下になるように配置することが最も好ましい。
【0089】
[液晶セル]
本発明セルロールエステルフィルムはTN型、OCB型、VA型、HAN型等様々な表示モードの液晶セルに使用できる。これらの具体例は特開2001−166144号公報等に開示されている。
【0090】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。しかしながら、本発明は実施例に限定されることはない。
【0091】
実施例1
(セルロースアセテート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Aを調製した。
【0092】
(マット剤溶液の調製)
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
なお、シリカ粒子の調液後の二次粒径は0.3μであった。
【0093】
(レターデーション上昇剤溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
<レターデーション上昇剤溶液組成>
レターデーション上昇剤(144) 19.8質量部
下記UV吸収剤(A) 0.07質量部
下記UV吸収剤(B) 0.13質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアセテート溶液A 12.8質量部
【0094】
【化9】
【0095】
(セルロースアセテートフイルムの作製)
上記セルロースアセテート溶液Aを94.6質量部、マット剤溶液を1.3質量部、レターデーション上昇剤溶液4.1質量部それぞれを濾過後に混合し、バンド流延機を用いて10m/minの速度で流延した。レターデーション上昇剤のセルロースアセテートに対する質量比は4.6%であった。露点−10℃の風で残留溶剤量30%まで乾燥した後フイルムをバンドから剥離した。さらに、130℃の条件で、残留溶剤量が13質量%のフイルムをテンターを用いて28%の延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま140℃で30秒間保持した。その後、クリップを外して140℃で40分間乾燥させセルロースアセテートフイルムを製造した。出来あがったセルロースアセテートフィルムの残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は92μmであった。
本発明において、支持体上形成されたフィルム中の残留溶剤量は次式で表される。
残留溶剤量=(残存揮発分質量/加熱処理後フィルム質量)×100%
尚、残存揮発分質量はフィルムを115℃で1時間加熱処理したとき、過熱処理前のフィルム質量から加熱処理後のフィルム質量を引いた値である。
流延直後から無風乾燥を行った時間及びレターデーション上昇剤を下記表1に変更した以外は同様にしてセルロースアセテートフィルム102〜109を作製した。
【0096】
【表1】
【0097】
実施例2
(鹸化処理)
実施例1で作製したセルロースアセテートフイルム101〜106上に下記組成の液を5.2ml/m2塗布し、60℃で10秒間乾燥させた。フイルムの表面を流水で10秒洗浄し、25℃の空気を吹き付けることでフイルム表面を乾燥させた。
<鹸化液組成>
イソプロピルアルコール 818質量部
水 167質量部
プロピレングリコール 187質量部
水酸化カリウム 777質量部
【0098】
(配向膜の形成)
ケン化処理したセルロースアセテートフイルム(透明支持体)の一方の面に、下記の組成の塗布液を#14のワイヤーバーコーターで24ml/m2 塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥して配向膜を形成した。
次に、セルロースアセテートフイルム(透明支持体)の延伸方向(遅相軸と一致)と45゜の方向に形成した配向膜にラビング処理を実施した。
<配向膜塗布液組成>
下記構造の変性ポリビニルアルコール 20質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 1.0質量部
【0099】
【化10】
【0100】
(光学異方性層の形成及び光学補償フィルムの作製)
上記配向膜上に、下記ディスコティック化合物91質量部、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)9質量部、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)1.5質量部、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)3質量部、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1質量部を、214.2質量部のメチルエチルケトンに溶解した塗布液を、#3のワイヤーバーコーターで5.2ml/m2塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、130℃の恒温槽中で2分間加熱し、ディスコティック化合物を配向させた。次に、90℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射しディスコティック化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を形成すると共に、ハイブリッド型光学補償フィルムを作製した。
【0101】
【化11】
【0102】
(偏光板の作製)
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。
次に、作製した光学補償フィルムの透明支持体側を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光膜の片側に貼り付けた。透明支持体の遅相軸および偏光膜の透過軸が平行になるように配置した。
市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)を前記と同様にケン化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側(光学補償フィルムを貼り付けなかった側)に貼り付けた。
このようにして、楕円偏光板を作製した。
【0103】
(ベンド配向液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを5.7μmに設定した。セルギャップにΔnが0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。
【0104】
(液晶表示装置の作製)
作製したベンド配向セルを挟むように、作製した楕円偏光板を二枚貼り付けた。楕円偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する配向膜のラビング方向とが反平行となるように配置した。
作製した液晶表示装置をバックライト上に配置し、液晶セルに白表示電圧2V、黒表示電圧6.0Vを印加し、測定機(EZ−Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、コントラスト視野角(コントラスト比が10以上となる角度範囲)を測定した。また中間調電圧3Vを印加し色味視野角(ΔCuvが0.02以下となる角度範囲)を測定した。
本発明のセルロースアセテートフィルムを使用した液晶表示装置は表示上の欠陥が少なく、良好な画像が得られることがわかった。
【0105】
実施例3
下記のセルロースアセテート溶液B組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Bを調製した。
【0106】
別のミキシングタンクに、レターデーション上昇剤(144) 16質量部、メチレンクロライド80質量部およびメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液Dを調製した。
セルロースアセテート溶液B 474質量部にレターデーション上昇剤溶液Dを11質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、1.6質量部であった。
得られたドープを、流延速度45m/minでバンド流延機を用いて流延し、露点−20℃の風で残留溶剤量30%になるまで乾燥した後バンドからフイルムを剥ぎ取った。次いでフイルムを140℃の乾燥風で10分乾燥し、残留溶剤量が0.3質量%で厚みが58μmのセルロースアセテートフイルム201を作製した。
流延直後から無風乾燥を行った時間及びレターデーション上昇剤の種類を表2に示すものに変更した以外はセルロースアセテートフィルム201と同じ方法によりセルロースアセテートフィルム202〜209を作成した。
本発明のセルロースアセテートフィルム201〜203はブリードアウトがなく面状に優れていることがわかった。
また、比較例204〜206はブリードアウトが認められ、比較例207〜209はブリードアウトはないが、面状ムラが著しかった。
【0107】
【表2】
【0108】
実施例4
(鹸化処理)
実施例3で作製したセルロースアセテートフイルム201〜206上に下記組成の液を5.2ml/m2塗布し、60℃で10秒間乾燥させた。フイルムの表面を流水で10秒洗浄し、25℃の空気を吹き付けることでフイルム表面を乾燥させた。
<鹸化液組成>
イソプロピルアルコール 818質量部
水 167質量部
水酸化カリウム 777質量部
【0109】
(配向膜の形成)
鹸化処理したセルロースアセテートフイルム上に、下記の組成の塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
次に、セルロースアセテートフイルムの長手方向と平行な方向に、形成した膜にラビング処理を実施した。
【0110】
(配向膜塗布液組成)
実施例2で配向膜形成に用いたポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
【0111】
(光学異方性層の形成)
配向膜上に、実施例2で用いたディスコティック液晶性化合物41.01g、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)4.06g、セルロースアセテートブチレート(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製)0.90g、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)0.23g、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)1.35g、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.45gを、102gのメチルエチルケトンに溶解した塗布液を、#3.6のワイヤーバーで塗布した。これを130℃の恒温ゾーンで2分間加熱し、円盤状化合物を配向させた。次に、60℃の雰囲気下で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射し円盤状化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を形成し、光学補償フィルム(D−1)を作製した。
波長546nmで測定した光学異方性層のReレターデーション値は43nmであった。また、円盤面と第1透明支持体面との間の角度(傾斜角)は支持体表面から段階的に増加しており、平均で42゜であった。
【0112】
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、本発明のセルロースアセテートフィルムが偏光膜側となるように偏光子の片側に貼り付けた。偏光子の透過軸と光学異方性層の遅相軸とは平行になるように配置した。
さらに市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)を前記と同様にケン化処理し、をポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付けた。
【0113】
(液晶表示装置の作製)
TN型液晶セルを使用した20インチの液晶表示装置(LC−20V1、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに上記で作製した偏光板を、光学補償フィルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸とバックライト側の偏光板の透過軸が直交するように配置した。
本発明のセルロースアセテートフィルムを用いた液晶表示装置は表示上の欠陥が少なく良好な画像が得られることがわかった。
【0114】
実施例5
(セルロースエステルフイルムの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースエステル溶液Eを調製した。
【0115】
別のミキシングタンクに、下記の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、レターデーション上昇剤溶液Fを調製した。
<レターデーション上昇剤溶液F組成>
レターデーション上昇剤(144) 3質量部
メチレンクロライド 80質量部
メタノール 20質量部
【0116】
セルロースエステル溶液E 474質量部に、レターデーション上昇剤溶液Fを15質量部を添加し、充分に攪拌して、ドープを調製した。レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、2質量部である。
ドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。流延直後から3秒間無風で乾燥後、溶媒含有率70質量%の場外で剥ぎ取り、フイルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率が3乃至5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚みが75μm、Rthが82nm、Reが8nmのセルロースアセテートフイルムを作製した。
このセルロースアセテートフイルムを用いて、実施例2と同様にして、鹸化処理、配向膜の形成、光学異方性層の形成、偏光板の作製を行い、TN型液晶表示装置を作製したところ、本発明の液晶表示装置は表示上の欠陥が少なく、良好な画像が得られることがわかった。
【0117】
【発明の効果】
本発明の製造方法で得られたセルロースエステルフィルムは、レターデーション値が高くかつフィルム面内での光学的な均一性に優れている。これらセルロースエステルフィルムを支持体とする光学補償フィルム及び偏光板を用いた液晶表示装置は表示品質に優れる。
Claims (8)
- ソルベントキャスト法によりバンド上に流延するセルロースエステルフィルムの製造方法であって、
セルロースエステル100質量部に対して、レターデーション上昇剤として下記一般式(I)で表される化合物を0.01乃至20質量部含むセルロースエステル溶液を流延する工程、及び剥ぎ取り前乾燥の前半において10秒以上90秒以下の時間、実質的に無風で乾燥する工程を含むことを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
一般式(I)
R1は、各々独立に、オルト位、メタ位およびパラ位の少なくともいずれかに置換基を有する芳香族環または複素環を表す。
X1は、各々独立に、単結合または−NR3−を表す。ここで、R3は、各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。 - ソルベントキャスト法によりドラム上に流延するセルロースエステルフィルムの製造方法であって、
セルロースエステル100質量部に対して、レターデーション上昇剤として前記一般式(I)で表される化合物を0.01乃至20質量部含むセルロースエステル溶液を流延する工程、及び剥ぎ取り前乾燥の前半において1秒以上10秒以下の時間、実質的に無風で乾燥する工程を含むことを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。 - 請求項1および2に記載される方法により製造されたセルロースエステルフィルム。
- 下記数式(I)で算出されるRthレターデーション値が70乃至400nmの範囲であることを特徴とする請求項3に記載のセルロースエステルフィルム。
数式(I)
Rth={(nx−ny)/2−nz}×d
上記数式(I)中:
nxは、フイルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率、 nyは、フイルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率、nzはフィルム面に対して垂直方向の屈折率を表す。
dは、フイルムの厚さ(nm)を表す。 - 請求項3または4のいずれかに記載のセルロースエステルフィルムの上に、液晶性分子から形成された光学異方性層が設けられていることを特徴とする光学補償フィルム。
- 透明保護膜、偏光膜、透明支持体、及び液晶性分子から形成された光学的異方性層がこの順に積層されている偏光板であって、
透明支持体が請求項3または4のいずれかのセルロースエステルフィルムであることを特徴とする偏光板。 - 液晶セルおよびその両側に配置された2枚の偏光板からなる偏光板であって、
該2枚の偏光板の内少なくとも1枚の偏光板が請求項6に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。 - 液晶セルが、TNモード、ベンド配向モードまたは垂直配向モードの液晶セルであることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
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