JP2004150549A - ハイブリッド車の変速制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】駆動源としてエンジンとモータジェネレータとを備え、摩擦係合要素の係合により所定の変速段を達成する自動変速機を備えたハイブリッド車であって、パワーオフ状態で自動変速機を低速段から高速段へアップシフトを行う場合に、自動変速機の入力回転数が低速段の入力回転数から高速段側の同期回転数に降下するまでの所定期間、モータジェネレータにその直前のモータトルクよりも小さな負のモータトルクM1 を発生させるとともに、自動変速機の入力回転数が高速段側の同期回転数以下になった時、モータジェネレータにその直前のモータトルクよりも大きな正のモータトルクM3 を発生させる。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は駆動源としてエンジンとモータジェネレータとを備えるとともに、摩擦係合要素の係合により所定の変速段を達成する自動変速機を備えたハイブリッド車において、オフアップ時の変速制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開2002−39346号公報
【特許文献2】特開平10−243502号公報
自動変速機の変速制御には、一般に車速とスロットル開度とをパラメータとする変速マップが用いられ、変速マップから現在の運転状態に応じた最適な変速段を選択するとともに、エンジンの負荷情報などに基づいてパワーオン状態かパワーオフ状態かを判定し、その判定結果に基づいて制御ロジックを切り換えて、係合要素に制御油圧を給排するとともに、制御油圧を可変している。
図7はパワーオンオフ判定マップの一例であり、エンジン回転数とスロットル開度とによってパワーオン領域とパワーオフ領域とを分ける判定線が設けられている。エンジン回転数が同一である場合、スロットル開度が大きいときにはパワーオン状態、スロットル開度が小さいときにはパワーオフ状態と判定する。
なお、図7ではエンジン負荷としてスロットル開度を用いたが、吸気管負圧やエンジントルクなどの他のエンジン負荷情報を用いてもよい。
【0003】
このような自動変速機において、アクセルペダルを踏み込みながら走行を行っている最中に、アクセルペダルを急に戻すと、車速が高い状態でスロットル開度がほぼ全閉となるので、変速マップにおける動作点が変速点を越え、高速段側へ変速されてしまう。これをオフアップ変速と呼ぶ。このようなオフアップ変速では、スロットルを閉じていることから、パワーオフ状態であり、タービン回転数は自然に降下してくる。一般に、摩擦係合要素の油圧を制御しているソレノイドバルブの入力電流の動きに対し、油圧の応答が遅れるため、予め遅れを考慮して摩擦係合要素の係合タイミングを判定する同期判定を、高速段の同期回転数まで降下する手前で行っている。つまり、タービン回転数が高速段の同期回転数より所定値だけ高い回転数で同期判定を行うのが通例である。
【0004】
しかしながら、タービン回転数の降下速度が一定でないため、同期判定時に係合側の摩擦係合要素の油圧が同期に必要なトルク容量が得られる油圧になっているかどうかが予測できない。例えば、少し油圧が高いと、同期回転前にタービン回転の引込みショックが発生するし、油圧が低すぎると同期回転数以下に大きくタービン回転が降下するアンダーシュートが発生し、変速遅れが生じる。また、タービン回転の持ち上げ時に減速感やショックが発生する。
【0005】
特許文献1では、このようなオフアップ変速時のアンダーシュートによる係合ショックを防止するため、アンダーシュートが発生した場合に、摩擦係合要素の係合油圧を締結時の上昇勾配より緩やな勾配で上昇させている。つまり、スイープ制御を行うことにより、タービン回転の持ち上げショックを解消し、円滑に変速を終了できるようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、燃料の節約、エンジン騒音の低減、排ガスの低減を目的として、駆動源としてエンジンとモータジェネレータとを備えるとともに、摩擦係合要素の係合により所定の変速段を達成する自動変速機を備えたハイブリッド車が提案されている。
ハイブリッド車の場合には、上記のようなエンジンのみを駆動源とする一般車両とは異なり、モータジェネレータがエンジンの始動や車両の駆動を行うアシスト作用のほか、エンジントルクを利用して発電する回生作用、車両減速時に車輪から伝えられる制動エネルギーを回収して電力として蓄える回生制動作用などを行うことができる。
【0007】
特許文献2には、変速中にモータジェネレータの出力トルクを負のトルクとすること、つまりモータ回生を行うことで、自動変速機に入力されるイナーシャトルクを減少させ、変速時間を短縮するハイブリッド車の制御装置が開示されている。
しかしながら、オフアップ変速時にモータ回生を行うと、エンジントルクがほぼ零であるため、タービン回転のアンダーシュートが大きくなり過ぎ、違和感やショックを生じるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、オフアップ変速時のアンダーシュートによる係合ショックを低減できるハイブリッド車の変速制御方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、駆動源としてエンジンとモータジェネレータとを備え、摩擦係合要素の係合により所定の変速段を達成する自動変速機を備えたハイブリッド車であって、パワーオフ状態で自動変速機を低速段から高速段へアップシフトを行う変速制御方法において、上記自動変速機の入力回転数が高速段側の同期回転数以下になった時、上記モータジェネレータにその直前のモータトルクよりも大きな0以上のモータトルクを発生させることを特徴とするハイブリッド車の変速制御方法を提供する。
【0010】
オフアップ変速によって自動変速機の入力回転数が高速段側の同期回転数以下になった時、つまりアンダーシュートが発生した時、モータジェネレータにその直前のモータトルクよりも大きな0以上のモータトルクを発生させる。すなわち、入力回転数を維持または持ち上げるようにモータジェネレータがアシストを行うことで、アンダーシュート量を小さく制御し、変速時間を短くしている。また、モータジェネレータにより入力回転と同期回転との差を小さくすることで、摩擦係合要素の完全係合時のショックを軽減することができる。
なお、本発明における入力回転数とは、自動変速機の入力軸の回転数のことであり、トルクコンバータを備えた自動変速機の場合には、タービン回転数に相当する。
【0011】
請求項2のように、自動変速機の入力回転数が低速段の入力回転数から高速段側の同期回転数に降下するまでの所定期間、モータジェネレータにその直前のモータトルクよりも小さな負のモータトルクを発生させるのがよい。
つまり、変速途中にモータジェネレータの出力トルクを負のトルクとすることで、モータ回生を行う。そのため、入力回転数の降下速度が早くなり、変速時間を短縮することができる。
なお、オフアップ変速時にモータ回生を行うと、タービン回転のアンダーシュートが大きくなり過ぎる傾向があるが、本発明ではアンダーシュートをモータ制御によって抑制できるので、ショックを軽減できる。
【0012】
特許文献1では、個体ばらつきを解消するため、アンダーシュート時における入力回転数の最大降下量、または入力回転数がアンダーシュートしてから上昇に転じるまでの降下量の時間積分値が設定範囲内となるように、摩擦係合要素の初期油圧を学習制御することが行われている。
本発明では、アンダーシュートをモータ制御によって常に発生させることが可能であり、オフアップ初期油圧の学習制御に対応することも可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一例であるハイブリッド自動車のシステム構成を示す。
エンジン1の出力軸と自動変速機2の入力軸との間にモータジェネレータ7が設けられ、自動変速機2の出力軸5は駆動輪(図示せず)と接続されている。この例の自動変速機2は、トルクコンバータ3と、遊星歯車装置11および複数の摩擦係合要素C1〜C3,B1,B2を持つ変速機構4と、油圧制御装置6とを備えた有段式の自動変速機である。
【0014】
エンジン1はエンジン制御用コントローラ20によって制御され、自動変速機2はAT制御用コントローラ21によって制御され、モータジェネレータ7はモータ制御用コントローラ22によって制御される。各コントローラ20,21,22にはそれぞれ各種センサから信号が入力され、かつ相互に通信用バス23で接続されている。入力信号には、例えば車速信号、スロットル開度(アクセル開度)信号、シフト位置信号、エアコン信号、イグニッション信号、アイドル信号、エンジン水温信号、吸入空気量信号、エンジン回転数信号、タービン回転数信号、スタート信号、ブレーキ信号、バッテリ容量などがある。
【0015】
エンジン制御用コントローラ20は、走行状態に応じた最適な燃料噴射量に制御するものであり、例えばスロットル全閉状態の減速時にエンジンへの燃料供給を遮断するフューエルカットや、走行状態から車両が停止した際に、エンジンを自動停止させ、停車中の無駄な燃料消費や排出ガスの発生を抑える自動アイドルストップ制御などを実施することができる。
【0016】
AT制御用コントローラ21は周知のように、走行状態に応じて予め設定された変速マップに従って変速段を決定し、油圧制御装置6に内蔵されたソレノイドバルブ24〜26を制御することによって、摩擦係合要素C1〜C3,B1,B2に選択的に油圧を供給し、決定された変速段へ変速するものである。
【0017】
モータ制御用コントローラ22にはバッテリ8が接続され、適時モータジェネレータ7を駆動すると同時に、モータジェネレータ7の回生エネルギーをバッテリ8に蓄えるようになっている。
【0018】
図2は自動変速機2の変速機構4の一例を示す。
変速機構4は、トルクコンバータ3を介してエンジン動力が伝達される入力軸10、摩擦係合要素である3個のクラッチC1〜C3および2個のブレーキB1,B2、ワンウエイクラッチF、ラビニヨウ型遊星歯車装置11、差動装置14などを備えている。
遊星歯車装置11のフォワードサンギヤ11aと入力軸10とはC1クラッチを介して連結されており、リヤサンギヤ11bと入力軸10とはC2クラッチを介して連結されている。キャリヤ11cはセンターシャフト15と連結され、センターシャフト15はC3クラッチを介して入力軸10と連結されている。また、キャリヤ11cはB2ブレーキとキャリヤ11cの正転(エンジン回転方向)のみを許容するワンウェイクラッチFとを介して変速機ケース16に連結されている。キャリヤ11cは2種類のピニオンギヤ11d,11eを支持しており、フォワードサンギヤ11aは軸長の長いロングピニオン11dと噛み合い、リヤサンギヤ11bは軸長の短いショートピニオン11eを介してロングピニオン11dと噛み合っている。ロングピニオン11dのみと噛み合うリングギヤ11fは出力ギヤ12に結合されている。出力ギヤ12は中間軸13を介して差動装置14と接続されている。
【0019】
変速機構4は、クラッチC1,C2,C3、ブレーキB1,B2およびワンウェイクラッチFの作動によって、図3のように前進4段、後退1段の変速段を実現している。図3において、●は油圧の作用状態を示している。なお、B2ブレーキは後退時とLレンジの第1速時に係合する。また、図3にはソレノイドバルブ(SOL1〜SOL3)24〜26の作動状態も示されている。○は通電状態、×は非通電状態を示す。この実施例では、第1ソレノイドバルブ24は常閉型、第2,第3ソレノイドバルブ25,26は常開型が用いられている。
【0020】
第1ソレノイドバルブ24はB1ブレーキ制御用であり、第2ソレノイドバルブ25はC2クラッチ制御用であり、第3ソレノイドバルブ26はC3クラッチ制御用とB2ブレーキ制御用とを兼ねている。第3ソレノイドバルブ26がC3クラッチ制御用とB2ブレーキ制御用とを兼ねる理由は、B2ブレーキはDレンジでは作動せず、Lレンジのエンジンブレーキ制御とRレンジの過渡制御でのみ使用されるので、Dレンジで作動されるC3クラッチと干渉しないからである。第1〜第3ソレノイドバルブ24〜26は微妙な油圧制御を行なう必要があるため、デューティソレノイドバルブまたはリニアソレノイドバルブを用いるのが良い。この実施例では、油圧制御装置6に変速制御用の3個のソレノイドバルブ24〜26を設けたが、この他にロックアップクラッチ制御用やライン圧制御用などのソレノイドバルブを設けてもよい。
【0021】
次に、2速から3速へオフアップ変速された時の係合側係合要素(C3クラッチ)の油圧制御、およびモータジェネレータ7のトルク制御を図4を参照して説明する。図4は、タービン回転数、モータトルク、解放側係合要素(B1ブレーキ)および係合側係合要素(C3クラッチ)の油圧のそれぞれの時間変化を示す。
【0022】
2速で走行中に、時刻t1でアクセルオフすることによってパワーオフ状態になると、その時の車速とスロットル開度とに応じて変速マップから所望の変速段(ここでは3速)を決定し、変速指令(オフアップ指令)を出す。変速指令の出力により、モータトルクをM0 まで低下させる。このトルクM0 は、アクセルオフ時の急激なトルク変化をなくし、アクセルオフショックを軽減するためであり、若干正のトルクとするのがよい。これと同時に、C3クラッチのがた詰めを行い、がた詰め後、C3 クラッチに初期油圧を供給する。なお、解放側係合要素であるB1ブレーキについては、変速指令と共に伝達トルクがほぼ0の状態まで油圧が低下する。
時刻t2でエンジントルクが0以下になり、その時点から一定時間後の時刻t3で、モータトルクをM1 まで低下させる。このトルクM1 は負のトルクであり、モータ回生を実施する。モータ回生を実施することで、タービン回転数の降下を早めることができる。また時刻t3で、C3クラッチ油圧が勾配Aで緩やかに上昇するようにスイープ制御を開始する。
時刻t4で、タービン回転数が高速段(ここでは3速)の同期回転数より所定値V0 (例えば30〜50rpm)だけ高い回転数まで低下すると、同期検出を行い、モータトルクをM2 まで上昇させるとともに、C3クラッチ油圧を勾配Bでスイープ制御する。勾配Bは勾配Aと同等であってもよいが、ここではA<Bとしてある。トルクM2 は、同期前にモータ回生を減少させ、タービン回転数が同期回転数以下に下がり過ぎるのを防止するためであり、0もしくは若干正のトルクとするのがよい。
時刻t5で、タービン回転数が同期回転数より低下(アンダーシュート)すると、モータトルクをM3 まで上昇させるとともに、C3クラッチ油圧を勾配Cでスイープ制御する。トルクM3 は、アンダーシュート発生時にタービン回転数と同期回転数との回転差を減らすためであり、その直前のトルクM2 より大きな零または正のトルクとする。具体的には、トルクM3 の値は、その時の入力トルクとタービン回転数とによって決定される。また、勾配Cはその直前の勾配Bより小さな勾配であり、アンダーシュートを抑制する方向へC3クラッチの油圧を継続して上昇させる。
時刻t6で、タービン回転数が同期回転数直前まで上昇すると、再同期検出を行い、モータトルクをM4 に低下させるとともに、C3クラッチ油圧を勾配Dでスイープ制御する。勾配Dの期間はC3クラッチをショックなく締結するための期間であり、その勾配Dは勾配A,Bに比べて大きくするのがよい。再同期判定を行う時の回転数は、例えば3速の同期回転数より30〜50rpm程度低い値である。トルクM4 は、フューエルカット復帰などによってエンジントルクが増大した場合、クラッチ油圧が低いと、タービン回転数が同期回転数以上に吹き上がるので、これを抑えるためのモータトルクであり、0もしくは若干正のトルクとするのがよい。
時刻t7で変速を終了できる状態に達したと判定し、C3クラッチを完全係合させる。
【0023】
上記のように、変速途中(時刻t3〜t4)にモータトルクを負(M1 )とし、モータ回生を行ってタービン回転数の降下を早めたので、変速時間を短縮することができる。一方、タービン回転数の降下が早まることによって、アンダーシュートも大きくなるが、アンダーシュートを検出すると(時刻t5)、モータトルクをそれ以前のトルクM2 より大きな0以上のトルクM3 とすることで、アンダーシュートを小さくあるいはそれ以上増加しないよう制御している。そのため、変速時間が短くかつショックの少ない変速を実現できる。なお、ここでは、直前のトルクM2 が正であるため、トルクM3 を正としたが、直前のトルクM2 が負である場合にはトルクM3 を0としてもよい。
【0024】
なお、上記説明におけるがた詰め期間および初期油圧の期間は、共にC3クラッチを係合直前の状態にするための制御期間である。すなわち、がた詰めは、C3クラッチのピストンとクラッチ板との隙間(無効ストローク)を早期に解消するため、一定期間だけソレノイド電流をON状態とし、ピストンをクラッチ板方向へ急速移動させるものである。このがた詰めは必要に応じて実施される。初期油圧は、油圧の応答遅れを解消するため、油圧をソレノイド電流に追従させるための油圧である。初期油圧は、前述の特許文献1の図8,図9に記載のように、アンダーシュート量に応じて学習制御により可変され、個体ばらつきが解消される。
【0025】
図5は2速から3速へのオフアップ変速時におけるC3クラッチの油圧制御方法を示し、図6は同変速時のモータジェネレータ7の制御方法を示す。
図5において、油圧制御がスタートすると、オフアップ変速指令が出されたか否かを判別する(ステップS1)。オフアップ変速指令が出された場合には、まずがた詰めを行い(ステップS2)、続いて初期油圧を出力する(ステップS3)。初期油圧の出力後、同期外れ検出を行う(ステップS3)。同期外れ検出とは、タービン回転数によって低速段(2速)状態から外れたか否かを判定するものであり、タービン回転数とエンジン回転数との比が一定値以下に低下した場合に同期外れと判定する。これは図4における時刻t3付近に相当する。同期外れ検出がなされた場合には、C3クラッチ油圧を勾配Aでスイープ制御する(ステップS5)。その後、高速段(3速)の同期検出がされたか否かを判定し(ステップS6)、同期が検出された場合には、C3クラッチ油圧を勾配Bでスイープ制御する(ステップS7)。次に、アンダーシュートを検出したかどうかを判定し(ステップS8)、アンダーシュートを検出した場合には、C3クラッチ油圧を勾配Cでスイープ制御し(ステップS9)、アンダーシュート量を抑制する。その後、再同期検出を行い(ステップS10)、再同期が検出された場合には、C3クラッチ油圧を勾配Dでスイープ制御し(ステップS11)、制御を終了する。
一方、ステップS8で、アンダーシュートを検出しない場合には、同期後一定時間が経過したかどうかを判定する(ステップS12)。この一定時間とは、例えば100〜300msec程度である。同期後、一定時間経過してもアンダーシュートを検出しない場合には、タービン回転数が理想的な状態で高速段の同期回転数へ収束したことを意味するので、再同期検出を行うことなく、勾配Dでのスイープ制御(ステップS11)へ移行し、制御を終了する。
【0026】
図6において、ステップS1,S6,S10,S12の各判定は、図5における同ステップと同じである。これら判定はATコントローラ21によって実施され、その判定信号がモータ制御用コントローラ22に送られる。
モータ制御がスタートすると、オフアップ変速指令が出されたか否かを判別し(ステップS1)、オフアップ変速指令が出された場合には、まずモータトルクM0 を出力し(ステップS13)、続いてエンジントルクが負になってから一定時間経過したかどうかを判定する(ステップS14)。すなわち、図4における時刻t3の判定である。一定時間経過しておれば、続いて負のモータトルクM1 を出力する(ステップS15)。そして、高速段の同期検出がされたか否かを判定し(ステップS6)、同期が検出された場合には、モータトルクM2 を出力する(ステップS16)。次に、アンダーシュートを検出したかどうかを判定し(ステップS8)、アンダーシュートを検出した場合には、零または正のモータトルクM3 を出力し(ステップ17)、アンダーシュート量を抑制する。その後、再同期検出を行い(ステップS10)、再同期が検出された場合には、モータトルクM4 を出力し(ステップS18)、制御を終了する。
一方、ステップS8で、アンダーシュートを検出しない場合には、同期後一定時間が経過したかどうかを判定し(ステップS12)、同期後一定時間経過してもアンダーシュートを検出しない場合には、再同期検出を行うことなく、モータトルクM4 の出力(ステップS18)へ移行し、制御を終了する。
【0027】
上記実施例では、2速から3速へのオフアップ変速について説明したが、その他のオフアップ変速(例えば1速から2速、3速から4速)にも同様に適用できることは勿論である。
本発明で使用される自動変速機は、図3に示すような3個のクラッチC1〜C3と2個のブレーキB1,B2を有する自動変速機に限るものではなく、複数の変速段を達成できる有段式の自動変速機であればよい。
モータジェネレータは、エンジンと自動変速機の間に設けられたものに限らず、自動変速機より上流側に直結されたものであればよい。
図4では、アンダーシュート直前(同期検出後)のモータトルクM2 を若干正のトルクとしたが、負のトルクとしてよく、変速途中の負のモータトルクM1 を維持してもよい。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、オフアップ変速において、同期検出後にタービン回転のアンダーシュートを判定し、アンダーシュート時にはその直前のトルクよりも大きな0以上のモータトルクを発生させるようにしたので、アンダーシュート量を小さくあるいはそれ以上増大しないよう制御でき、変速時間を短縮できるとともに、摩擦係合要素の完全係合時のショックを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるハイブリッド自動車の一例のシステム構成図である。
【図2】図1に示すハイブリッド車に用いられる自動変速機の変速機構図である。
【図3】図2に示す変速機構の各摩擦係合要素およびソレノイドバルブの作動表である。
【図4】本発明におけるオフアップ変速時のタービン回転数、モータトルク、解放側および係合側係合要素の油圧の時間変化図である。
【図5】本発明におけるオフアップ変速時の係合側係合要素の油圧制御の一例のフローチャート図である。
【図6】図5に対応したオフアップ変速時のモータ制御方法の一例のフローチャート図である。
【図7】パワーオンオフ判定マップの一例の図である。
【符号の説明】
1 エンジン
2 自動変速機
7 モータジェネレータ
20 エンジン制御用コントローラ
21 モータ制御用コントローラ
22 AT制御用コントローラ
B1 ブレーキ(解放側係合要素)
C3 クラッチ(係合側係合要素)
Claims (2)
- 駆動源としてエンジンとモータジェネレータとを備えるとともに、摩擦係合要素の係合により所定の変速段を達成する自動変速機を備えたハイブリッド車であって、
パワーオフ状態で自動変速機を低速段から高速段へアップシフトを行う変速制御方法において、
上記自動変速機の入力回転数が高速段側の同期回転数以下になった時、上記モータジェネレータにその直前のモータトルクよりも大きな0以上のモータトルクを発生させることを特徴とするハイブリッド車の変速制御方法。 - 上記自動変速機の入力回転数が低速段の入力回転数から高速段側の同期回転数に降下するまでの所定期間、上記モータジェネレータにその直前のモータトルクよりも小さな負のモータトルクを発生させることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車の変速制御方法。
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