JP2004149723A - 異方熱伝導性高分子成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】一定方向に優れた熱伝導性を発揮することができる異方熱伝導性高分子成形体を提供する。
【解決手段】異方熱伝導性高分子成形体は、液晶性高分子を含有する液晶性組成物から得られる。この異方熱伝導性高分子成形体おいて、液晶性高分子に由来する異方性磁化率Δχは、5×10−8〜1×10−6[emu/g]の範囲である。この異方性磁化率Δχは、異方熱伝導性高分子成形体の磁化測定から下記式(1)によって求められた値である。
異方性磁化率Δχ=χmax−χmin・・・(1)
(ただし、χmaxは最大磁化率、χminは最小磁化率を表す。)
液晶性組成物には、液晶性高分子100重量部に対し、好ましくは100重量部未満の熱伝導性充填剤が含有される。
【選択図】 図2
【解決手段】異方熱伝導性高分子成形体は、液晶性高分子を含有する液晶性組成物から得られる。この異方熱伝導性高分子成形体おいて、液晶性高分子に由来する異方性磁化率Δχは、5×10−8〜1×10−6[emu/g]の範囲である。この異方性磁化率Δχは、異方熱伝導性高分子成形体の磁化測定から下記式(1)によって求められた値である。
異方性磁化率Δχ=χmax−χmin・・・(1)
(ただし、χmaxは最大磁化率、χminは最小磁化率を表す。)
液晶性組成物には、液晶性高分子100重量部に対し、好ましくは100重量部未満の熱伝導性充填剤が含有される。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品等から発生する熱を伝導する異方熱伝導性高分子成形体に関し、さらに詳しくは、一定方向に優れた熱伝導性を発揮することができる異方熱伝導性高分子成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器においては高性能化、小型化、軽量化等に伴って半導体パッケージの高密度実装化、LSIの高集積化及び高速化等が行われている。これらに伴って、各種の電子部品において発生する熱が増大するため、電子部品から熱を効果的に外部へ放散させる熱対策が非常に重要な課題になっている。このような熱対策として、プリント配線基板、半導体パッケージ、筐体、ヒートパイプ、放熱板、熱拡散板等の放熱部材には、金属、セラミックス、高分子組成物等の放熱材料からなる熱伝導性成形体が適用されている。
【0003】
これらの放熱部材の中でも、高分子組成物からなる熱伝導性成形体(以下、熱伝導性高分子成形体という。)は、任意の形状に成形加工し易く、比較的軽量であることから広く利用されている。
【0004】
熱伝導性高分子成形体を構成する高分子組成物は、樹脂、ゴム等の高分子マトリックス材料中に、熱伝導率の高い熱伝導性充填剤を配合したものが知られている。熱伝導性充填剤としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、石英等の金属酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の金属窒化物、炭化ケイ素等の金属炭化物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、金、銀、銅等の金属、炭素繊維、黒鉛等が用いられている。
【0005】
一方、電子部品の実装工程及び使用時の高い温度環境でも変形が生じない耐熱性が要求される用途には、マトリックスの樹脂としては成形加工性が良好で耐熱性に優れる熱液晶性高分子を用いた高分子組成物及び熱伝導性高分子成形体が提唱されている。この種の高分子組成物としては、熱伝導性充填剤として50〜90重量%のジルコンと50〜10重量%の熱液晶性高分子を含む熱伝導性に優れる電気絶縁性組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。さらに、炭素繊維等の熱伝導性充填剤20〜80重量%と熱液晶性高分子80〜20重量%を含む組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−271465号公報(段落番号[0011])
【特許文献2】
特表2001−523892号公報(段落番号[0037])
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ところが、最近の電子部品はその高性能化に伴って発熱量が増大しているため、上記従来の技術の組成物から得られる熱伝導性高分子成形体では熱伝導性が不十分となっている。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、一定方向に優れた熱伝導性を発揮することができる異方熱伝導性高分子成形体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明の異方熱伝導性高分子成形体では、液晶性高分子を含有する液晶性組成物から得られる異方熱伝導性高分子成形体であって、磁化測定から下記式(1)によって求められる前記液晶性高分子に由来する異方性磁化率Δχが、5×10−8〜1×10−6[emu/g]の範囲であることを特徴とする。
【0010】
異方性磁化率Δχ=χmax−χmin・・・(1)
(ただし、χmaxは最大磁化率、χminは最小磁化率を表す。)
請求項2に記載の発明の異方熱伝導性高分子成形体では、請求項1に記載の発明において、前記液晶性組成物は、液晶性高分子100重量部に対し、100重量部未満の熱伝導性充填剤を含有するものである。
【0011】
請求項3に記載の発明の異方熱伝導性高分子成形体では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記液晶性高分子は、加熱溶融すると光学的異方性溶融相を示す熱液晶性高分子であることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明の異方熱伝導性高分子成形体では、請求項3に記載の発明において、前記熱液晶性高分子が(A)全芳香族ポリエステル及び(B)全芳香族ポリエステルアミドから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態における異方熱伝導性高分子成形体は、液晶性高分子を含有する液晶性組成物から得られる。また、この異方熱伝導性高分子成形体において、液晶性高分子に由来する異方性磁化率Δχは、5×10−8〜1×10−6[emu/g]の範囲である。この異方性磁化率Δχは、異方熱伝導性高分子成形体の磁化測定から下記式(1)によって求められた値である。
【0014】
異方性磁化率Δχ=χmax−χmin・・・(1)
(ただし、χmaxは最大磁化率、χminは最小磁化率を表す。)
この異方熱伝導性高分子成形体は、プリント配線基板、半導体パッケージ、筐体、ヒートパイプ、放熱板、熱拡散板等の放熱部材に適用することができ、各種電子部品で発生する熱を伝導伝熱させ、電子機器の外部に放熱することができるものである。
【0015】
まず、液晶性組成物について詳述する。液晶性組成物に含有する液晶性高分子は、液晶状態において高分子の分子鎖が規則的に配列することによって光学的異方性溶融相を示すものである。この光学的異方性は、直交偏光子を利用した通常の偏光検査法によって確認することができる。液晶性高分子の具体例としては、熱液晶性高分子(サーモトロピック液晶性高分子)及びリオトロピック液晶性高分子が挙げられる。
【0016】
熱液晶性高分子は、熱可塑性を有する高分子であって、加熱溶融すると、ある温度範囲で光学的異方性溶融相を示す液晶状態となる液晶性高分子である。熱液晶性高分子は細長く、扁平で分子の長鎖に沿って剛性が高い分子鎖を有するものから構成される。そして、同軸又は平行のいずれかの関係にある複数の分子鎖は、連鎖伸長結合を有している。一方、リオトロピック液晶性高分子は溶媒に溶解すると、ある濃度範囲において光学的異方性を示す液晶状態となる液晶性高分子である。
【0017】
これらの液晶性高分子の中でも、好ましくは熱液晶性高分子である。液晶性高分子として熱液晶性高分子を配合した場合、溶媒を使用せず、加熱溶融によって液晶状態を発現するため、液晶性高分子を容易に配向させることができる。
【0018】
熱液晶性高分子の具体例としては、熱液晶性ポリエステル、熱液晶性ポリエステルアミド、熱液晶性ポリエステルエーテル、熱液晶性ポリエステルカーボネート、熱液晶性ポリエステルイミド等が挙げられる。また、熱液晶性高分子の分類としては、主鎖型の熱液晶性高分子、側鎖型の熱液晶性高分子及び複合型の熱液晶性高分子等が挙げられる。主鎖型の熱液晶性高分子は、液晶構造発現のもととなるメソゲン基が主鎖に入ったものいい、ポリエステルのコポリマー(ポリエチレンテレフタレートとヒドロキシ安息香酸のコポリマー等)、ヒドロキシナフトエ酸とヒドロキシ安息香酸のコポリマー等が挙げられる。側鎖型の熱液晶性高分子は、メソゲン基が側鎖に入ったものをいい、エチレン系やシロキサン系等の主鎖にメソゲン基が側鎖として連なった構造を繰り返し単位として含むものである。複合型の熱液晶性高分子は、主鎖型と側鎖型が複合されたものをいう。
【0019】
熱液晶性ポリエステルとしては、例えば熱液晶性全芳香族ポリエステル(A)が挙げられる。熱液晶性全芳香族ポリエステルとは、一般に光学的異方性溶融相を形成するセグメント部分が芳香族カルボン酸と芳香族アルコールとのエステルで構成されたものをいう。本実施形態における熱液晶性全芳香族ポリエステルは、光学的異方性溶融相を形成しないセグメント部分を脂肪族又は脂環族の酸とアルコールによるエステルで構成することも可能である。また、本実施形態における熱液晶性全芳香族ポリエステルは、光学的異方性溶融相を形成するセグメント部分を脂肪族又は脂環族の酸とアルコールによるエステルで構成し、光学的異方性溶融相を形成しないセグメント部分を芳香族カルボン酸と芳香族アルコールとのエステルで構成することも可能である。さらに、脂肪族又は脂環族の酸と、芳香族アルコールとによるエステルで構成することも可能である。加えて、脂肪族又は脂環族のアルコールと、芳香族カルボン酸とによるエステルで構成することも可能である。
【0020】
熱液晶性全芳香族ポリエステルの構成成分としては、(a)芳香族ジカルボン酸系化合物及び脂環族ジカルボン酸系化合物の少なくとも一種、(b)芳香族ヒドロキシカルボン酸系化合物の少なくとも一種、(c)芳香族ジオール系、脂環族ジオール系及び脂環族ジオール系化合物の少なくとの一種、(d)芳香族ジチオール系、芳香族チオフェノール系及び芳香族チオールカルボン酸系化合物の少なくとも一種、(e)芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミン系化合物の少なくとも一種、等が挙げられる。これらの成分(a)〜(e)は単独で構成してもよいが、好ましくは(a)及び(c)、(a)及び(d)、(a)、(b)及び(c)、(a)、(b)及び(e)、(a)、(b)、(c)及び(e)等のように組み合わせて構成される。
【0021】
芳香族ジカルボン酸系化合物(a)としては、芳香族ジカルボン酸及びその誘導体が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−トリフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェノキシブタン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−4,4′−ジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテル−3,3′−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−3,3′−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−3,3′−ジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸誘導体は、芳香族ジカルボン酸にアルキル、アルコキシ及びハロゲン等の置換基を導入したものであって、クロロテレフタル酸、ジクロロテレフタル酸、ブロモテレフタル酸、メチルテレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、エチルテレフタル酸、メトキシテレフタル酸、エトキシテレフタル酸等が挙げられる。
【0022】
脂環族ジカルボン酸系化合物(a)としては、脂環族ジカルボン酸及びその誘導体が挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。脂環族ジカルボン酸誘導体は、脂環族ジカルボン酸にアルキル、アルコキシ、ハロゲン等の置換基を導入したものであって、トランス−1,4−(2−メチル)シクロヘキサンジカルボン酸トランス−1,4−(2−クロル)シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
【0023】
芳香族ヒドロキシカルボン酸系化合物(b)としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体が挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸が挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体は、芳香族ヒドロキシカルボン酸にアルキル、アルコキシ、ハロゲン等の置換基を導入したものであって、3−メチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ジメエチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−メトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−5−メチル−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ナフトエ酸、2−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2,3−ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2,5−ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−ブロモ−4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−5−クロロ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−7−クロロ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−5,7−ジクロロ−2−ナフトエ酸等が挙げられる。
【0024】
芳香族ジオール系化合物(c)としては、芳香族ジオール及びその誘導体が挙げられる。芳香族ジオールとしては、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、3,3′−ジヒドロキシジフェニル、4,4′−ジヒドロキシトリフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ナフタレンジオール、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)エタン、3,3′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,6−ナフタレンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。芳香族ジオール誘導体は、芳香族ジオールにアルキル、アルコキシ、ハロゲン等の置換基を導入したものであって、クロロハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、フェノキシハイドロキノン、4−クロロレゾルシン、4−メチルレゾルシン等が挙げられる。
【0025】
脂環族ジオール系化合物(c)としては、脂環族ジオール及びその誘導体が挙げられる。脂環族ジオールとしては、トランス−1,4−シクロヘキサンジオール、シス−1,4−シクロヘキサンジオール、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、トランス−1,3−シクロヘキサンジオール、シス−1,2−シクロヘキサンジオール、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。脂環族ジオール誘導体は、脂環族ジオールにアルキル、アルコキシ、ハロゲン等の置換基を導入したものであって、トランス−1,4−(2−メチル)シクロヘキサンジオール、トランス−1,4−(2−クロロ)シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
【0026】
脂肪族ジオール系化合物(c)としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の直鎖状又は分岐状脂肪族ジオールが挙げられる。
【0027】
芳香族ジチオール系化合物(d)としては、ベンゼン−1,4−ジチオール、ベンゼン−1,3−ジチオール、2,6−ナフタレン−ジチオール、2,7−ナフタレン−ジチオール等が挙げられる。
【0028】
芳香族チオフェノール系化合物(d)としては、4−メルカプトフェノール、3−メルカプトフェノール、6−メルカプトフェノール等が挙げられる。
芳香族チオールカルボン酸系化合物(d)としては、4−メルカプト安息香酸、3−メルカプト安息香酸、6−メルカプト−2−ナフトエ酸、7−メルカプト−2−ナフトエ酸等が挙げられる。
【0029】
芳香族ヒドロキシアミン系化合物(e)としては、4−アミノフェノール、N−メチル−4−アミノフェノール、3−アミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、2−クロロ−4−アミノフェノール、4−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−4′−ヒドロキシジフェニル、4−アミノ−4′−ヒドロキシジフェニルエーテル、4−アミノ−4′−ヒドロキシジフェニルメタン、4−アミノ−4′−ヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−エチレンジアニリン等が挙げられる。
【0030】
芳香族ジアミン系化合物(e)としては、1,4−フェニレンジアミン、N−メチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N′−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、4,4′−ジアミノフェニルスルフィド(チオジアニリン)、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、2,5−ジアミノトルエン、4,4′−ジアミノジフェノキシエタン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(オキシジアニリン)等が挙げられる。
【0031】
熱液晶性ポリエステルアミドとしては、例えば全芳香族ポリエステルアミド(B)が挙げられる。全芳香族ポリエステルアミドとしては、芳香族ジアミン、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族アミノカルボン酸、芳香族オキシカルボン酸、芳香族オキシアミノ化合物及びこれらの誘導体から選ばれる二種以上の構成成分から組み合わせられるものが挙げられる。
【0032】
これらの熱液晶性高分子の中でも、一定方向の熱伝導性に優れる異方熱伝導性高分子成形体が容易に得られることから、好ましくは全芳香族ポリエステル(A)及び全芳香族ポリエステルアミド(B)から選ばれる少なくとも一種、さらに好ましくは全芳香族ポリエステル(A)である。
【0033】
液晶性組成物には、耐熱性、成形加工性等を改良するためにその他の高分子を少量配合することができる。その他の高分子としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン、アクリル系高分子、ポリサルホン、シリコーン系高分子、ハロゲン系高分子、オレフィン系高分子等が挙げられる。
【0034】
また、液晶性組成物には必要に応じて顔料、染料、蛍光増白剤、分散剤、安定剤、紫外線吸収剤、エネルギー消光剤、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、熱安定剤、滑剤、可塑剤、溶剤等を少量添加することも可能である。
【0035】
さらに、液晶性組成物から得られる異方熱伝導性高分子成形体の熱伝導性を向上させるために熱伝導性充填剤を適量配合することも可能である。熱伝導性充填剤としては、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、金属被覆樹脂、炭素繊維、黒鉛化炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、球状黒鉛粒子、メソカーボンマイクロビーズ、ウィスカー状カーボン、マイクロコイル状カーボン、ナノコイル状カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等が挙げられる。金属としては、銀、銅、金、白金、ジルコン等、金属酸化物としては酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等、金属窒化物としては窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等、金属炭化物としては炭化ケイ素等、金属水酸化物としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの熱伝導性充填剤の配合量は、液晶性高分子100重量部に対して、好ましくは100重量部未満、より好ましくは80重量部未満、さらに好ましくは70重量部未満である。この配合量が液晶性高分子100重量部に対して100重量部以上であると、異方熱伝導性高分子成形体の密度を高めてしまい、適用物の軽量化を妨げるおそれがある。適用物の軽量化がさらに要求される場合は、液晶性組成物には実質的に熱伝導性充填剤を含有しないことが好ましい。ここで、実質的に熱伝導性充填剤を含有しない液晶性組成物として、好ましくは液晶性高分子100重量部に対して熱伝導性充填剤が5重量部以下の液晶性組成物、より好ましくは液晶性高分子100重量部に対して熱伝導性充填剤が1重量部以下の液晶性組成物、さらに好ましくは液晶性高分子のみからなる液晶性組成物である。
【0036】
液晶性高分子としてリオトロピック液晶性高分子を配合する場合は、リオトロピック液晶性高分子を溶解させるための溶媒が配合される。溶媒としては、リオトロピック液晶性高分子が溶解するものであれば特に限定されないが、溶媒は熱伝導性充填剤の分散媒にもなるため、熱伝導性充填剤の分散性を考慮して選択することが好ましい。溶媒の配合量は、リオトロピック液晶性高分子が液晶状態を発現する量に設定される。
【0037】
次に、異方熱伝導性高分子成形体について詳述する。
異方熱伝導性高分子成形体において、液晶性高分子に由来する異方性磁化率Δχは、異方熱伝導性高分子成形体の磁化測定から上記式(1)によって求められる。磁化測定は、超伝導量子干渉素子、振動試料型磁力計、磁気異方性トルク計等を用いて、異方熱伝導性高分子成形体の二次元方向や三次元方向に対して行われる。この磁化測定によって、異方熱伝導性高分子成形体における液晶性高分子の最大磁化率(χmax)及び最小磁化率(χmin)を求める。ここで、液晶性高分子は反磁性体であるため、液晶性高分子の磁化率は負の値を示す。従って、最大磁化率(χmax)は、異方熱伝導性高分子成形体の各方向における磁化測定において、液晶性高分子の反磁性が最も小さい方向の磁化率を意味する。一方、最小磁化率(χmin)は、異方熱伝導性高分子成形体の各方向における磁化測定において、液晶性高分子の反磁性が最も大きい方向の磁化率を意味する。
【0038】
異方熱伝導性高分子成形体の磁化測定から異方性磁化率Δχを算出するには、まず印加した磁場とそれによって生じる磁化を測定することにより、図1に示すような異方熱伝導性高分子成形体の各方向における磁化特性を得る。次に、磁化特性を示す直線の傾きから最大磁化率(χmax)及び最小磁化率(χmin)を求める。図1に示す磁化特性は、シート状の異方熱伝導性高分子成形体において、その厚み方向の磁化率が最大磁化率(χmax)である−1.15×10−6[emu/g]を示し、その面内方向の磁化率が最小磁化率(χmin)である−1.37×10−6[emu/g]を示している。これらの最大磁化率(χmax)及び最小磁化率(χmin)を上記(1)式に代入することによって異方性磁化率Δχを算出する。図1におけるシート状の異方熱伝導性高分子成形体の異方性磁化率Δχは、2.20×10−7[emu/g]である。
【0039】
この異方性磁化率Δχの範囲は、5×10−8〜1×10−6[emu/g]、好ましくは5×10−8〜5×10−7[emu/g]、さらに好ましくは2×10−7〜5×10−7[emu/g]である。この異方性磁化率Δχが5×10−8[emu/g]未満であると、一定方向(本実施形態における最大磁化率(χmax)が得られる方向)の熱伝導性が低く、十分な熱伝導性が得られない。一方、1×10−6[emu/g]を超える異方熱伝導性高分子成形体を得ることは困難である。異方性磁化率Δχの範囲が5×10−8〜1×10−6[emu/g]であると、一定方向の熱伝導率λが極めて高くなり、一定方向に優れた熱伝導性を発揮することができる。
【0040】
液晶性高分子として熱液晶性高分子を含有する液晶性組成物から異方熱伝導性高分子成形体を得るには、まず成形装置によって熱液晶性高分子を加熱溶融させるとともに、熱液晶性高分子を配向させる。次に、熱液晶性高分子が配向した状態で、溶融状態の熱液晶性高分子を冷却固化させることにより異方性磁化率Δχが上記の範囲に制御された異方熱伝導性高分子成形体を得ることができる。
【0041】
液晶性組成物に液晶性高分子としてリオトロピック液晶性高分子を含有する液晶性組成物から熱伝導性高分子成形体を得るには、まず成形装置によって液晶性組成物を溶液成形するとともに、リオトロピック液晶性高分子を配向させる。次に、リオトロピック液晶性高分子が配向した状態で、揮発等によって溶媒を除去させ、リオトロピック液晶性高分子を液晶状態から固体状態に相転移させることによって異方性磁化率Δχが上記の範囲に制御された熱伝導性高分子成形体を得ることができる。
【0042】
液晶性高分子を配向させる方法としては、流動場、せん断場、磁場及び電場から選ばれる少なくとも一種の場による配向方法が挙げられる。これらの配向方法の中でも、配向する方向を容易に制御でき、異方性磁化率Δχを制御し易いことから、磁場による配向方法が好ましい。磁場を利用して液晶性高分子を配向させ、異方性磁化率Δχを制御するには、液晶状態の液晶性高分子に磁場を印加し、熱液晶性高分子の剛直な分子鎖を磁力線と平行方向又は垂直方向に配向させる。続いて、磁場を印加した状態で液晶性高分子を液晶状態から固体状態に相転移させる。ここで、液晶性高分子の異方性磁化率Δχは、磁場の磁束密度、磁場の印加時間等によって5×10−8〜1×10−6[emu/g]となるように設定される。
【0043】
磁場を発生する磁場発生手段としては、永久磁石、電磁石、超電導磁石、コイル等が挙げられる。これらの磁場発生手段の中でも、実用的な磁束密度を有する磁場を発生させることができることから超電導磁石が好ましい。
【0044】
液晶性高分子に印加する磁場の磁束密度は、好ましくは1〜20テスラ(T)、さらに好ましくは2〜20T、最も好ましくは3〜20Tである。この磁束密度が1T未満であると、液晶性高分子の剛直な分子鎖を十分に配向させることができず、異方性磁化率Δχを十分に制御することができないおそれがある。一方、磁束密度が20Tを超える磁場は、実用上得られにくい。この磁束密度の範囲が3〜20Tであると、高い異方性磁化率Δχを有する異方熱伝導性高分子成形体が得られるとともに、実用的である。
【0045】
成形装置としては、射出成形装置、押出成形装置、プレス成形装置等の合成樹脂を加熱成形する装置を用いることができる。液晶性組成物は、シート状、フィルム状、ブロック状、粒状、繊維状等の様々な形状の異方熱伝導性高分子成形体に成形することができる。
【0046】
異方熱伝導性高分子成形体の熱伝導率λは、液晶性高分子の分子鎖が一定方向に配向され、液晶性高分子に由来する異方性磁化率Δχが上記の範囲に設定されることによって、その一定方向(本実施形態における液晶性高分子の分子鎖方向)に極めて高くなる。この熱伝導率λの値は、好ましくは0.7〜20W/(m・K)、さらに好ましくは1.0〜10W/(m・K)、最も好ましくは2.0〜10W/(m・K)である。この熱伝導率λが0.7W/(m・K)未満であると、電子部品から発生する熱を効果的に外部へ伝えることが困難になるおそれがある。一方、20W/(m・K)を超える異方熱伝導性高分子成形体を得るのは液晶性高分子の物性を考慮すると困難である。
【0047】
この異方熱伝導性高分子成形体の密度は、好ましくは1.10g/cm3以上、2.10g/cm3未満、さらに好ましくは1.20g/cm3以上、1.90g/cm3未満、最も好ましくは1.30g/cm3以上、1.80g/cm3未満である。この密度が2.10g/cm3以上であると、適用物の軽量化を妨げるおそれがある。一方、1.10未満である異方熱伝導性高分子成形体を得るのは、液晶性高分子の物性を考慮すると困難である。
【0048】
この異方熱伝導性高分子成形体をシート状に成形する場合、その厚さは好ましくは0.02〜10mm、さらに好ましくは0.1〜7mm、最も好ましくは0.2〜5mmである。この厚さが0.02mm未満であると、適用物に適用する際、操作性が悪くなるおそれがある。一方、10mmを超えると、電子機器等の適用物を軽量化することが困難となるおそれがある。
【0049】
続いて、液晶性高分子として熱液晶性高分子を配合した液晶性組成物から異方熱伝導性高分子成形体を製造する方法について図3〜図5に基づいて詳細に説明する。図3に示すように、異方熱伝導性高分子成形体としてのシート状の異方熱伝導性シート11は、プリント配線基板、放熱シート等の放熱部材として電子機器等に適用することができるものである。
【0050】
まず、異方熱伝導性シート11の厚さ方向(図3におけるZ軸方向)に液晶性高分子の剛直な分子鎖を配向させる場合について説明する。図4に示すように、金型12aの内部には、キャビティ13aがシート状に形成されている。また、金型12aの上下には磁場発生手段としての一対の永久磁石14aが配設され、永久磁石14aによって発生する磁場の磁力線M1は、キャビティ13aの厚さ方向に一致するようになっている。
【0051】
このキャビティ13aに熱液晶性高分子が溶融状態となった液晶性組成物15を充填させる。ここで、金型12aには図示しない加熱装置が備えられ、キャビティ13aに充填された液晶性組成物15に含有する熱液晶性高分子は溶融状態に維持される。次に、永久磁石14aによってキャビティ13aに充填された液晶性組成物15に所定の磁束密度の磁場を印加する。このとき、磁力線M1は、シート状の液晶性組成物15の厚さ方向に一致するため、熱液晶性高分子の剛直な分子鎖をシート状の液晶性組成物15の厚さ方向に配向することができる。この配向状態で熱液晶性高分子を冷却固化させて、金型12aから取り出すと熱液晶性高分子の剛直な分子鎖が厚さ方向に配向し、異方性磁化率Δχが、5×10−8〜1×10−6[emu/g]の範囲である異方熱伝導性シート11を得ることができる。
【0052】
このとき、異方熱伝導性シート11の異方性磁化率Δχが、5×10−8〜1×10−6[emu/g]の範囲である。従って、異方熱伝導性シート11は、厚さ方向に高い熱伝導率λを有し、厚さ方向に熱伝導性が要求される回路基板材料、半導体パッケージ用の放熱シート等に適用することができる。
【0053】
次に、異方熱伝導性シート11の面内方向(図3におけるX軸方向、Y軸方向等)に熱液晶性高分子の剛直な分子鎖を配向させる場合について説明する。図5に示すように、金型12bに形成されるキャビティ13bの面内方向に磁力線M2が一致するように、一対の永久磁石14bを金型12bの両側方に対向させて配設する。次に、永久磁石14bによってキャビティ13bの内部に充填された液晶性組成物15に磁場を印加する。このとき、磁力線M2はシート状の液晶性組成物15の面内方向に一致するため、熱液晶性高分子の剛直な分子鎖を液晶性組成物15の面内方向に配向することができる。この配向状態で熱液晶性高分子を冷却固化させ、金型12bから取り出すと、熱液晶性高分子の剛直な分子鎖が面内方向に配向した異方熱伝導性シート11を得ることができる。
【0054】
このとき、異方熱伝導性シート11の異方性磁化率Δχが、5×10−8〜1×10−6[emu/g]の範囲である。従って、異方熱伝導性シート11は、面内方向に高い熱伝導率λを有し、面内方向に熱伝導性が要求される回路基板材料、半導体パッケージ用の放熱シート等に適用することができる。
【0055】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ この実施形態の異方熱伝導性高分子成形体においては、液晶性高分子を含有する液晶性組成物から得られ、液晶性高分子に由来する異方性磁化率Δχが、5×10−8〜1×10−6[emu/g]の範囲である。従って、液晶性高分子の配向方向に高い熱伝導率λを有し、一定方向に優れた熱伝導性を発揮することができる。また、液晶性組成物に熱伝導性充填剤を配合し、得られる熱伝導性高分子成形体の熱伝導性を向上させた場合でも、液晶性高分子に由来する異方性磁化率Δχを上記の範囲に設定し、異方熱伝導性高分子成形体とすることによって、一定方向の熱伝導性がさらに向上される。従って、一定方向に優れた熱伝導性を発揮することができる。
【0056】
・ この実施形態の異方熱伝導性高分子成形体においては、好ましくは液晶性高分子100重量部に対し、100重量部未満の熱伝導性充填剤を含有する。この場合、熱伝導性充填剤を多量に配合しないため、得られる異方熱伝導性高分子成形体は、適用物の軽量化に貢献することができる。さらに熱伝導性充填剤を多量に配合しないため、液晶性高分子に対する熱伝導性充填剤の分散性等を考慮する手間が省け、液晶性組成物を容易に製造することができる。加えて、液晶性組成物は液晶性高分子を主成分としているため、得られる異方熱伝導性高分子成形体は、液晶性高分子が有する電気絶縁性等の特性を発揮することができる。
・ この実施形態の異方熱伝導性高分子成形体においては、液晶性高分子は熱液晶性高分子であることが好ましい。この場合、異方性磁化率Δχを上記の範囲に容易に設定することができ、一定方向に優れた熱伝導性を有する異方熱伝導性高分子成形体を容易に得ることができる。
・ この実施形態の異方熱伝導性高分子成形体においては、熱液晶性高分子が(A)全芳香族ポリエステル及び(B)全芳香族ポリエステルアミドから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。このように構成した場合、光学的異方性溶融相を容易に発現させることができるとともに、これらの熱液晶性高分子の成形加工性は良好であって、種々の形状に容易に成形することができる。従って、異方性磁化率Δχを上記の範囲に容易に設定することができるとともに、液晶性組成物を容易に成形することができ、一定方向に優れた熱伝導性を有する異方熱伝導性高分子成形体をさらに容易に得ることができる。
【0057】
・ この実施形態の異方熱伝導性高分子成形体においては、液晶状態の液晶性高分子に磁場を印加することによって、液晶性高分子の剛直な分子鎖を一定方向に配向制御させ、異方性磁化率Δχを上記の範囲に容易に設定している。このように構成した場合、液晶性高分子を容易に配向させることができるとともに異方性磁化率Δχを上記の範囲に容易に設定することができ、一定方向に優れた熱伝導性を有する異方熱伝導性高分子成形体を容易に得ることができる。
【0058】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 前記実施形態においては、液晶性高分子に熱伝導性充填剤を配合しているが、ガラス繊維等の通常の充填剤を配合してもよい。
【0059】
・ 前記永久磁石14a、14bは、金型12a、12bを挟むように一対配設されているが、一方の永久磁石14a、14bを省略してもよい。
・ 前記永久磁石14a、14bは、S極とN極とが互いに対向するように一対配設されているが、S極同士又はN極同士が対向するように配設してもよい。
【0060】
・ 前記磁力線M1、M2は、直線状であるが、曲線状等でもよい。また、前記永久磁石14a、14bは磁力線M1、M2が一方向に延びるように配設されているが、磁力線M1、M2が二方向以上に延びるように永久磁石14a、14bを配設してもよい。さらに、磁力線M1、M2又は金型12a、12bを回転させてもよい。
【0061】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
熱液晶性高分子として構成単位が4−ヒドロキシ安息香酸/(テレフタル酸とエチレングリコール)=80/20モル%である全芳香族ポリエステル(i)のペレットを脱湿乾燥し、射出成形によって、縦50mm×横50mm×厚み2mmのシート状成形体を作製した。このシート状成形体を、温度340℃に加熱した金型のキャビティに入れて磁束密度2.5テスラの超伝導磁石の磁場中で溶融させた後、同磁場中で20分間保持し、その後、室温まで冷却固化させて異方熱伝導性高分子成形体を作製した。磁力線の方向はシート状成形体の厚み方向とした。
(実施例2及び実施例3)
実施例1と同一の全芳香族ポリエステル(i)のペレットを射出成形したシート状成形体を使用し、表1に記載の磁束密度に変更した以外は実施例1と同様に異方熱伝導性高分子成形体を作製した。
(実施例4)
熱液晶性高分子として構成単位が4−ヒドロキシ安息香酸/(テレフタル酸とエチレングリコール)=60/40モル%からなる全芳香族ポリエステル(ii)を使用し、実施例1と同様にシート状成形体を作製した。このシート状成形体を使用し、磁束密度を5テスラとした以外は実施例1と同様に異方熱伝導性高分子成形体を作製した。
(実施例5)
実施例4と同様にシート状成形体を得た。このシート状成形体を使用し、磁束密度を10テスラに変更した以外は実施例1と同様に異方熱伝導性高分子成形体を作製した。
(比較例1)
実施例1と同一の全芳香族ポリエステル(i)のペレットを脱湿乾燥し、射出成形によって、縦50mm×横50mm×厚み2mmのシート状成形体を作製した。このシート状成形体を、温度340℃に加熱した金型のキャビティに入れて磁場を印加せずに溶融させた後、溶融状態で20分間保持し、その後、室温まで冷却固化させて熱伝導性高分子成形体を作製した。
(比較例2)
比較例1と同様にシート状成形体を作製した。このシート状成形体を、温度340℃に加熱した金型のキャビティに入れて磁束密度1.5テスラの磁場中で溶融させた後、同磁場中で20分間保持し、その後、室温まで冷却固化させて熱伝導性高分子成形体を作製した。磁力線の方向はシート状の厚み方向とした。
(比較例3)
実施例4と同様にシート状成形体を作製した。このシート状成形体を使用し、比較例1と同様に熱伝導性高分子成形体を作製した。
【0062】
実施例1〜5及び比較例1〜3の異方性磁化率Δχは、カンタムデザイン社製の超伝導量子干渉素子を使用した磁化測定から求めた。実施例3の磁化測定による磁化特性を図1に示す。また、実施例1〜5及び比較例1〜3の熱伝導率λをレーザーフラッシュ法で測定した。実施例1〜5及び比較例1〜3における異方性磁化率Δχと熱伝導率λを表1及び表2に示し、異方性磁化率Δχと熱伝導率λの関係を図2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜5では、異方性磁化率Δχが、5×10−8〜1×10−6[emu/g]の範囲である異方熱伝導性高分子成形体が得られ、熱伝導率λが0.7W/(m・K)以上の優れた熱伝導性が発揮されている。また、実施例1〜5では、磁束密度を高くするほど、異方性磁化率Δχが高められ、高い熱伝導率λを有する異方熱伝導性高分子成形体が得られることがわかる。
【0065】
一方、表2の結果から明らかなように、比較例1〜3では、異方性磁化率Δχが5.0×10−8[emu/g]以下の従来の熱伝導性高分子成形体であるため、熱伝導率λが0.61W/(m・K)以下の不十分な熱伝導性を示している。
【0066】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(1) 前記液晶性高分子は、磁場発生手段によって発生される磁場が印加されることにより、前記液晶性高分子に由来する異方性磁化率Δχが設定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の異方熱伝導性高分子成形体。このように構成した場合、異方性磁化率Δχを容易に設定することができる。
【0067】
(2) シート状をなし、シートの厚み方向の磁化率又はシートの面内方向の磁化率が前記最大磁化率又は最小磁化率となるように構成したことを特徴とする請求項1から請求項4及び上記(1)のいずれか一項に記載の異方熱伝導性高分子成形体。このように構成した場合、厚み方向の熱伝導性又は面内方向の熱伝導性が要求される回路基板材料、半導体パッケージ用の放熱シート等に適用することができる。
【0068】
(3) 少なくとも一方向の熱伝導率λが0.7〜20W/(m・K)であることを特徴とする請求項1から請求項4、上記(1)及び(2)のいずれか一項に記載の異方熱伝導性高分子成形体。
【0069】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明の異方熱伝導性高分子成形体によれば、一定方向に優れた熱伝導性を発揮することができる。
【0070】
請求項2に記載の発明の異方熱伝導性高分子成形体によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、適用物の軽量化に貢献することができる。
請求項3に記載の発明の異方熱伝導性高分子成形体によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、異方熱伝導性高分子成形体を容易に得ることができる。
【0071】
請求項4に記載の発明の異方熱伝導性高分子成形体によれば、請求項3に記載の発明の効果に加え、異方熱伝導性高分子成形体をさらに容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態における異方熱伝導性高分子成形体(実施例3)の磁化特性を示すグラフ。
【図2】実施の形態における異方熱伝導性高分子成形体及び従来の熱伝導性高分子成形体の異方性磁化率Δχと熱伝導率λの関係を示すグラフ。
【図3】実施の形態における異方熱伝導性シートを示す斜視図。
【図4】厚さ方向に高い熱伝導性を有する異方熱伝導性シートの製造方法を示す概念図。
【図5】面内方向に高い熱伝導性を有する異方熱伝導性シートの製造方法を示す概念図。
【符号の説明】
11…異方熱伝導性高分子成形体としての異方熱伝導性シート、15…液晶性組成物。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品等から発生する熱を伝導する異方熱伝導性高分子成形体に関し、さらに詳しくは、一定方向に優れた熱伝導性を発揮することができる異方熱伝導性高分子成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器においては高性能化、小型化、軽量化等に伴って半導体パッケージの高密度実装化、LSIの高集積化及び高速化等が行われている。これらに伴って、各種の電子部品において発生する熱が増大するため、電子部品から熱を効果的に外部へ放散させる熱対策が非常に重要な課題になっている。このような熱対策として、プリント配線基板、半導体パッケージ、筐体、ヒートパイプ、放熱板、熱拡散板等の放熱部材には、金属、セラミックス、高分子組成物等の放熱材料からなる熱伝導性成形体が適用されている。
【0003】
これらの放熱部材の中でも、高分子組成物からなる熱伝導性成形体(以下、熱伝導性高分子成形体という。)は、任意の形状に成形加工し易く、比較的軽量であることから広く利用されている。
【0004】
熱伝導性高分子成形体を構成する高分子組成物は、樹脂、ゴム等の高分子マトリックス材料中に、熱伝導率の高い熱伝導性充填剤を配合したものが知られている。熱伝導性充填剤としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、石英等の金属酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の金属窒化物、炭化ケイ素等の金属炭化物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、金、銀、銅等の金属、炭素繊維、黒鉛等が用いられている。
【0005】
一方、電子部品の実装工程及び使用時の高い温度環境でも変形が生じない耐熱性が要求される用途には、マトリックスの樹脂としては成形加工性が良好で耐熱性に優れる熱液晶性高分子を用いた高分子組成物及び熱伝導性高分子成形体が提唱されている。この種の高分子組成物としては、熱伝導性充填剤として50〜90重量%のジルコンと50〜10重量%の熱液晶性高分子を含む熱伝導性に優れる電気絶縁性組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。さらに、炭素繊維等の熱伝導性充填剤20〜80重量%と熱液晶性高分子80〜20重量%を含む組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−271465号公報(段落番号[0011])
【特許文献2】
特表2001−523892号公報(段落番号[0037])
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ところが、最近の電子部品はその高性能化に伴って発熱量が増大しているため、上記従来の技術の組成物から得られる熱伝導性高分子成形体では熱伝導性が不十分となっている。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、一定方向に優れた熱伝導性を発揮することができる異方熱伝導性高分子成形体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明の異方熱伝導性高分子成形体では、液晶性高分子を含有する液晶性組成物から得られる異方熱伝導性高分子成形体であって、磁化測定から下記式(1)によって求められる前記液晶性高分子に由来する異方性磁化率Δχが、5×10−8〜1×10−6[emu/g]の範囲であることを特徴とする。
【0010】
異方性磁化率Δχ=χmax−χmin・・・(1)
(ただし、χmaxは最大磁化率、χminは最小磁化率を表す。)
請求項2に記載の発明の異方熱伝導性高分子成形体では、請求項1に記載の発明において、前記液晶性組成物は、液晶性高分子100重量部に対し、100重量部未満の熱伝導性充填剤を含有するものである。
【0011】
請求項3に記載の発明の異方熱伝導性高分子成形体では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記液晶性高分子は、加熱溶融すると光学的異方性溶融相を示す熱液晶性高分子であることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明の異方熱伝導性高分子成形体では、請求項3に記載の発明において、前記熱液晶性高分子が(A)全芳香族ポリエステル及び(B)全芳香族ポリエステルアミドから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態における異方熱伝導性高分子成形体は、液晶性高分子を含有する液晶性組成物から得られる。また、この異方熱伝導性高分子成形体において、液晶性高分子に由来する異方性磁化率Δχは、5×10−8〜1×10−6[emu/g]の範囲である。この異方性磁化率Δχは、異方熱伝導性高分子成形体の磁化測定から下記式(1)によって求められた値である。
【0014】
異方性磁化率Δχ=χmax−χmin・・・(1)
(ただし、χmaxは最大磁化率、χminは最小磁化率を表す。)
この異方熱伝導性高分子成形体は、プリント配線基板、半導体パッケージ、筐体、ヒートパイプ、放熱板、熱拡散板等の放熱部材に適用することができ、各種電子部品で発生する熱を伝導伝熱させ、電子機器の外部に放熱することができるものである。
【0015】
まず、液晶性組成物について詳述する。液晶性組成物に含有する液晶性高分子は、液晶状態において高分子の分子鎖が規則的に配列することによって光学的異方性溶融相を示すものである。この光学的異方性は、直交偏光子を利用した通常の偏光検査法によって確認することができる。液晶性高分子の具体例としては、熱液晶性高分子(サーモトロピック液晶性高分子)及びリオトロピック液晶性高分子が挙げられる。
【0016】
熱液晶性高分子は、熱可塑性を有する高分子であって、加熱溶融すると、ある温度範囲で光学的異方性溶融相を示す液晶状態となる液晶性高分子である。熱液晶性高分子は細長く、扁平で分子の長鎖に沿って剛性が高い分子鎖を有するものから構成される。そして、同軸又は平行のいずれかの関係にある複数の分子鎖は、連鎖伸長結合を有している。一方、リオトロピック液晶性高分子は溶媒に溶解すると、ある濃度範囲において光学的異方性を示す液晶状態となる液晶性高分子である。
【0017】
これらの液晶性高分子の中でも、好ましくは熱液晶性高分子である。液晶性高分子として熱液晶性高分子を配合した場合、溶媒を使用せず、加熱溶融によって液晶状態を発現するため、液晶性高分子を容易に配向させることができる。
【0018】
熱液晶性高分子の具体例としては、熱液晶性ポリエステル、熱液晶性ポリエステルアミド、熱液晶性ポリエステルエーテル、熱液晶性ポリエステルカーボネート、熱液晶性ポリエステルイミド等が挙げられる。また、熱液晶性高分子の分類としては、主鎖型の熱液晶性高分子、側鎖型の熱液晶性高分子及び複合型の熱液晶性高分子等が挙げられる。主鎖型の熱液晶性高分子は、液晶構造発現のもととなるメソゲン基が主鎖に入ったものいい、ポリエステルのコポリマー(ポリエチレンテレフタレートとヒドロキシ安息香酸のコポリマー等)、ヒドロキシナフトエ酸とヒドロキシ安息香酸のコポリマー等が挙げられる。側鎖型の熱液晶性高分子は、メソゲン基が側鎖に入ったものをいい、エチレン系やシロキサン系等の主鎖にメソゲン基が側鎖として連なった構造を繰り返し単位として含むものである。複合型の熱液晶性高分子は、主鎖型と側鎖型が複合されたものをいう。
【0019】
熱液晶性ポリエステルとしては、例えば熱液晶性全芳香族ポリエステル(A)が挙げられる。熱液晶性全芳香族ポリエステルとは、一般に光学的異方性溶融相を形成するセグメント部分が芳香族カルボン酸と芳香族アルコールとのエステルで構成されたものをいう。本実施形態における熱液晶性全芳香族ポリエステルは、光学的異方性溶融相を形成しないセグメント部分を脂肪族又は脂環族の酸とアルコールによるエステルで構成することも可能である。また、本実施形態における熱液晶性全芳香族ポリエステルは、光学的異方性溶融相を形成するセグメント部分を脂肪族又は脂環族の酸とアルコールによるエステルで構成し、光学的異方性溶融相を形成しないセグメント部分を芳香族カルボン酸と芳香族アルコールとのエステルで構成することも可能である。さらに、脂肪族又は脂環族の酸と、芳香族アルコールとによるエステルで構成することも可能である。加えて、脂肪族又は脂環族のアルコールと、芳香族カルボン酸とによるエステルで構成することも可能である。
【0020】
熱液晶性全芳香族ポリエステルの構成成分としては、(a)芳香族ジカルボン酸系化合物及び脂環族ジカルボン酸系化合物の少なくとも一種、(b)芳香族ヒドロキシカルボン酸系化合物の少なくとも一種、(c)芳香族ジオール系、脂環族ジオール系及び脂環族ジオール系化合物の少なくとの一種、(d)芳香族ジチオール系、芳香族チオフェノール系及び芳香族チオールカルボン酸系化合物の少なくとも一種、(e)芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミン系化合物の少なくとも一種、等が挙げられる。これらの成分(a)〜(e)は単独で構成してもよいが、好ましくは(a)及び(c)、(a)及び(d)、(a)、(b)及び(c)、(a)、(b)及び(e)、(a)、(b)、(c)及び(e)等のように組み合わせて構成される。
【0021】
芳香族ジカルボン酸系化合物(a)としては、芳香族ジカルボン酸及びその誘導体が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−トリフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェノキシブタン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−4,4′−ジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテル−3,3′−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−3,3′−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−3,3′−ジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸誘導体は、芳香族ジカルボン酸にアルキル、アルコキシ及びハロゲン等の置換基を導入したものであって、クロロテレフタル酸、ジクロロテレフタル酸、ブロモテレフタル酸、メチルテレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、エチルテレフタル酸、メトキシテレフタル酸、エトキシテレフタル酸等が挙げられる。
【0022】
脂環族ジカルボン酸系化合物(a)としては、脂環族ジカルボン酸及びその誘導体が挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。脂環族ジカルボン酸誘導体は、脂環族ジカルボン酸にアルキル、アルコキシ、ハロゲン等の置換基を導入したものであって、トランス−1,4−(2−メチル)シクロヘキサンジカルボン酸トランス−1,4−(2−クロル)シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
【0023】
芳香族ヒドロキシカルボン酸系化合物(b)としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体が挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸が挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体は、芳香族ヒドロキシカルボン酸にアルキル、アルコキシ、ハロゲン等の置換基を導入したものであって、3−メチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ジメエチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−メトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−5−メチル−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ナフトエ酸、2−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2,3−ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2,5−ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−ブロモ−4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−5−クロロ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−7−クロロ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−5,7−ジクロロ−2−ナフトエ酸等が挙げられる。
【0024】
芳香族ジオール系化合物(c)としては、芳香族ジオール及びその誘導体が挙げられる。芳香族ジオールとしては、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、3,3′−ジヒドロキシジフェニル、4,4′−ジヒドロキシトリフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ナフタレンジオール、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)エタン、3,3′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,6−ナフタレンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。芳香族ジオール誘導体は、芳香族ジオールにアルキル、アルコキシ、ハロゲン等の置換基を導入したものであって、クロロハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、フェノキシハイドロキノン、4−クロロレゾルシン、4−メチルレゾルシン等が挙げられる。
【0025】
脂環族ジオール系化合物(c)としては、脂環族ジオール及びその誘導体が挙げられる。脂環族ジオールとしては、トランス−1,4−シクロヘキサンジオール、シス−1,4−シクロヘキサンジオール、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、トランス−1,3−シクロヘキサンジオール、シス−1,2−シクロヘキサンジオール、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。脂環族ジオール誘導体は、脂環族ジオールにアルキル、アルコキシ、ハロゲン等の置換基を導入したものであって、トランス−1,4−(2−メチル)シクロヘキサンジオール、トランス−1,4−(2−クロロ)シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
【0026】
脂肪族ジオール系化合物(c)としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の直鎖状又は分岐状脂肪族ジオールが挙げられる。
【0027】
芳香族ジチオール系化合物(d)としては、ベンゼン−1,4−ジチオール、ベンゼン−1,3−ジチオール、2,6−ナフタレン−ジチオール、2,7−ナフタレン−ジチオール等が挙げられる。
【0028】
芳香族チオフェノール系化合物(d)としては、4−メルカプトフェノール、3−メルカプトフェノール、6−メルカプトフェノール等が挙げられる。
芳香族チオールカルボン酸系化合物(d)としては、4−メルカプト安息香酸、3−メルカプト安息香酸、6−メルカプト−2−ナフトエ酸、7−メルカプト−2−ナフトエ酸等が挙げられる。
【0029】
芳香族ヒドロキシアミン系化合物(e)としては、4−アミノフェノール、N−メチル−4−アミノフェノール、3−アミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、2−クロロ−4−アミノフェノール、4−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−4′−ヒドロキシジフェニル、4−アミノ−4′−ヒドロキシジフェニルエーテル、4−アミノ−4′−ヒドロキシジフェニルメタン、4−アミノ−4′−ヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−エチレンジアニリン等が挙げられる。
【0030】
芳香族ジアミン系化合物(e)としては、1,4−フェニレンジアミン、N−メチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N′−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、4,4′−ジアミノフェニルスルフィド(チオジアニリン)、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、2,5−ジアミノトルエン、4,4′−ジアミノジフェノキシエタン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(オキシジアニリン)等が挙げられる。
【0031】
熱液晶性ポリエステルアミドとしては、例えば全芳香族ポリエステルアミド(B)が挙げられる。全芳香族ポリエステルアミドとしては、芳香族ジアミン、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族アミノカルボン酸、芳香族オキシカルボン酸、芳香族オキシアミノ化合物及びこれらの誘導体から選ばれる二種以上の構成成分から組み合わせられるものが挙げられる。
【0032】
これらの熱液晶性高分子の中でも、一定方向の熱伝導性に優れる異方熱伝導性高分子成形体が容易に得られることから、好ましくは全芳香族ポリエステル(A)及び全芳香族ポリエステルアミド(B)から選ばれる少なくとも一種、さらに好ましくは全芳香族ポリエステル(A)である。
【0033】
液晶性組成物には、耐熱性、成形加工性等を改良するためにその他の高分子を少量配合することができる。その他の高分子としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン、アクリル系高分子、ポリサルホン、シリコーン系高分子、ハロゲン系高分子、オレフィン系高分子等が挙げられる。
【0034】
また、液晶性組成物には必要に応じて顔料、染料、蛍光増白剤、分散剤、安定剤、紫外線吸収剤、エネルギー消光剤、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、熱安定剤、滑剤、可塑剤、溶剤等を少量添加することも可能である。
【0035】
さらに、液晶性組成物から得られる異方熱伝導性高分子成形体の熱伝導性を向上させるために熱伝導性充填剤を適量配合することも可能である。熱伝導性充填剤としては、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、金属被覆樹脂、炭素繊維、黒鉛化炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、球状黒鉛粒子、メソカーボンマイクロビーズ、ウィスカー状カーボン、マイクロコイル状カーボン、ナノコイル状カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等が挙げられる。金属としては、銀、銅、金、白金、ジルコン等、金属酸化物としては酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等、金属窒化物としては窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等、金属炭化物としては炭化ケイ素等、金属水酸化物としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの熱伝導性充填剤の配合量は、液晶性高分子100重量部に対して、好ましくは100重量部未満、より好ましくは80重量部未満、さらに好ましくは70重量部未満である。この配合量が液晶性高分子100重量部に対して100重量部以上であると、異方熱伝導性高分子成形体の密度を高めてしまい、適用物の軽量化を妨げるおそれがある。適用物の軽量化がさらに要求される場合は、液晶性組成物には実質的に熱伝導性充填剤を含有しないことが好ましい。ここで、実質的に熱伝導性充填剤を含有しない液晶性組成物として、好ましくは液晶性高分子100重量部に対して熱伝導性充填剤が5重量部以下の液晶性組成物、より好ましくは液晶性高分子100重量部に対して熱伝導性充填剤が1重量部以下の液晶性組成物、さらに好ましくは液晶性高分子のみからなる液晶性組成物である。
【0036】
液晶性高分子としてリオトロピック液晶性高分子を配合する場合は、リオトロピック液晶性高分子を溶解させるための溶媒が配合される。溶媒としては、リオトロピック液晶性高分子が溶解するものであれば特に限定されないが、溶媒は熱伝導性充填剤の分散媒にもなるため、熱伝導性充填剤の分散性を考慮して選択することが好ましい。溶媒の配合量は、リオトロピック液晶性高分子が液晶状態を発現する量に設定される。
【0037】
次に、異方熱伝導性高分子成形体について詳述する。
異方熱伝導性高分子成形体において、液晶性高分子に由来する異方性磁化率Δχは、異方熱伝導性高分子成形体の磁化測定から上記式(1)によって求められる。磁化測定は、超伝導量子干渉素子、振動試料型磁力計、磁気異方性トルク計等を用いて、異方熱伝導性高分子成形体の二次元方向や三次元方向に対して行われる。この磁化測定によって、異方熱伝導性高分子成形体における液晶性高分子の最大磁化率(χmax)及び最小磁化率(χmin)を求める。ここで、液晶性高分子は反磁性体であるため、液晶性高分子の磁化率は負の値を示す。従って、最大磁化率(χmax)は、異方熱伝導性高分子成形体の各方向における磁化測定において、液晶性高分子の反磁性が最も小さい方向の磁化率を意味する。一方、最小磁化率(χmin)は、異方熱伝導性高分子成形体の各方向における磁化測定において、液晶性高分子の反磁性が最も大きい方向の磁化率を意味する。
【0038】
異方熱伝導性高分子成形体の磁化測定から異方性磁化率Δχを算出するには、まず印加した磁場とそれによって生じる磁化を測定することにより、図1に示すような異方熱伝導性高分子成形体の各方向における磁化特性を得る。次に、磁化特性を示す直線の傾きから最大磁化率(χmax)及び最小磁化率(χmin)を求める。図1に示す磁化特性は、シート状の異方熱伝導性高分子成形体において、その厚み方向の磁化率が最大磁化率(χmax)である−1.15×10−6[emu/g]を示し、その面内方向の磁化率が最小磁化率(χmin)である−1.37×10−6[emu/g]を示している。これらの最大磁化率(χmax)及び最小磁化率(χmin)を上記(1)式に代入することによって異方性磁化率Δχを算出する。図1におけるシート状の異方熱伝導性高分子成形体の異方性磁化率Δχは、2.20×10−7[emu/g]である。
【0039】
この異方性磁化率Δχの範囲は、5×10−8〜1×10−6[emu/g]、好ましくは5×10−8〜5×10−7[emu/g]、さらに好ましくは2×10−7〜5×10−7[emu/g]である。この異方性磁化率Δχが5×10−8[emu/g]未満であると、一定方向(本実施形態における最大磁化率(χmax)が得られる方向)の熱伝導性が低く、十分な熱伝導性が得られない。一方、1×10−6[emu/g]を超える異方熱伝導性高分子成形体を得ることは困難である。異方性磁化率Δχの範囲が5×10−8〜1×10−6[emu/g]であると、一定方向の熱伝導率λが極めて高くなり、一定方向に優れた熱伝導性を発揮することができる。
【0040】
液晶性高分子として熱液晶性高分子を含有する液晶性組成物から異方熱伝導性高分子成形体を得るには、まず成形装置によって熱液晶性高分子を加熱溶融させるとともに、熱液晶性高分子を配向させる。次に、熱液晶性高分子が配向した状態で、溶融状態の熱液晶性高分子を冷却固化させることにより異方性磁化率Δχが上記の範囲に制御された異方熱伝導性高分子成形体を得ることができる。
【0041】
液晶性組成物に液晶性高分子としてリオトロピック液晶性高分子を含有する液晶性組成物から熱伝導性高分子成形体を得るには、まず成形装置によって液晶性組成物を溶液成形するとともに、リオトロピック液晶性高分子を配向させる。次に、リオトロピック液晶性高分子が配向した状態で、揮発等によって溶媒を除去させ、リオトロピック液晶性高分子を液晶状態から固体状態に相転移させることによって異方性磁化率Δχが上記の範囲に制御された熱伝導性高分子成形体を得ることができる。
【0042】
液晶性高分子を配向させる方法としては、流動場、せん断場、磁場及び電場から選ばれる少なくとも一種の場による配向方法が挙げられる。これらの配向方法の中でも、配向する方向を容易に制御でき、異方性磁化率Δχを制御し易いことから、磁場による配向方法が好ましい。磁場を利用して液晶性高分子を配向させ、異方性磁化率Δχを制御するには、液晶状態の液晶性高分子に磁場を印加し、熱液晶性高分子の剛直な分子鎖を磁力線と平行方向又は垂直方向に配向させる。続いて、磁場を印加した状態で液晶性高分子を液晶状態から固体状態に相転移させる。ここで、液晶性高分子の異方性磁化率Δχは、磁場の磁束密度、磁場の印加時間等によって5×10−8〜1×10−6[emu/g]となるように設定される。
【0043】
磁場を発生する磁場発生手段としては、永久磁石、電磁石、超電導磁石、コイル等が挙げられる。これらの磁場発生手段の中でも、実用的な磁束密度を有する磁場を発生させることができることから超電導磁石が好ましい。
【0044】
液晶性高分子に印加する磁場の磁束密度は、好ましくは1〜20テスラ(T)、さらに好ましくは2〜20T、最も好ましくは3〜20Tである。この磁束密度が1T未満であると、液晶性高分子の剛直な分子鎖を十分に配向させることができず、異方性磁化率Δχを十分に制御することができないおそれがある。一方、磁束密度が20Tを超える磁場は、実用上得られにくい。この磁束密度の範囲が3〜20Tであると、高い異方性磁化率Δχを有する異方熱伝導性高分子成形体が得られるとともに、実用的である。
【0045】
成形装置としては、射出成形装置、押出成形装置、プレス成形装置等の合成樹脂を加熱成形する装置を用いることができる。液晶性組成物は、シート状、フィルム状、ブロック状、粒状、繊維状等の様々な形状の異方熱伝導性高分子成形体に成形することができる。
【0046】
異方熱伝導性高分子成形体の熱伝導率λは、液晶性高分子の分子鎖が一定方向に配向され、液晶性高分子に由来する異方性磁化率Δχが上記の範囲に設定されることによって、その一定方向(本実施形態における液晶性高分子の分子鎖方向)に極めて高くなる。この熱伝導率λの値は、好ましくは0.7〜20W/(m・K)、さらに好ましくは1.0〜10W/(m・K)、最も好ましくは2.0〜10W/(m・K)である。この熱伝導率λが0.7W/(m・K)未満であると、電子部品から発生する熱を効果的に外部へ伝えることが困難になるおそれがある。一方、20W/(m・K)を超える異方熱伝導性高分子成形体を得るのは液晶性高分子の物性を考慮すると困難である。
【0047】
この異方熱伝導性高分子成形体の密度は、好ましくは1.10g/cm3以上、2.10g/cm3未満、さらに好ましくは1.20g/cm3以上、1.90g/cm3未満、最も好ましくは1.30g/cm3以上、1.80g/cm3未満である。この密度が2.10g/cm3以上であると、適用物の軽量化を妨げるおそれがある。一方、1.10未満である異方熱伝導性高分子成形体を得るのは、液晶性高分子の物性を考慮すると困難である。
【0048】
この異方熱伝導性高分子成形体をシート状に成形する場合、その厚さは好ましくは0.02〜10mm、さらに好ましくは0.1〜7mm、最も好ましくは0.2〜5mmである。この厚さが0.02mm未満であると、適用物に適用する際、操作性が悪くなるおそれがある。一方、10mmを超えると、電子機器等の適用物を軽量化することが困難となるおそれがある。
【0049】
続いて、液晶性高分子として熱液晶性高分子を配合した液晶性組成物から異方熱伝導性高分子成形体を製造する方法について図3〜図5に基づいて詳細に説明する。図3に示すように、異方熱伝導性高分子成形体としてのシート状の異方熱伝導性シート11は、プリント配線基板、放熱シート等の放熱部材として電子機器等に適用することができるものである。
【0050】
まず、異方熱伝導性シート11の厚さ方向(図3におけるZ軸方向)に液晶性高分子の剛直な分子鎖を配向させる場合について説明する。図4に示すように、金型12aの内部には、キャビティ13aがシート状に形成されている。また、金型12aの上下には磁場発生手段としての一対の永久磁石14aが配設され、永久磁石14aによって発生する磁場の磁力線M1は、キャビティ13aの厚さ方向に一致するようになっている。
【0051】
このキャビティ13aに熱液晶性高分子が溶融状態となった液晶性組成物15を充填させる。ここで、金型12aには図示しない加熱装置が備えられ、キャビティ13aに充填された液晶性組成物15に含有する熱液晶性高分子は溶融状態に維持される。次に、永久磁石14aによってキャビティ13aに充填された液晶性組成物15に所定の磁束密度の磁場を印加する。このとき、磁力線M1は、シート状の液晶性組成物15の厚さ方向に一致するため、熱液晶性高分子の剛直な分子鎖をシート状の液晶性組成物15の厚さ方向に配向することができる。この配向状態で熱液晶性高分子を冷却固化させて、金型12aから取り出すと熱液晶性高分子の剛直な分子鎖が厚さ方向に配向し、異方性磁化率Δχが、5×10−8〜1×10−6[emu/g]の範囲である異方熱伝導性シート11を得ることができる。
【0052】
このとき、異方熱伝導性シート11の異方性磁化率Δχが、5×10−8〜1×10−6[emu/g]の範囲である。従って、異方熱伝導性シート11は、厚さ方向に高い熱伝導率λを有し、厚さ方向に熱伝導性が要求される回路基板材料、半導体パッケージ用の放熱シート等に適用することができる。
【0053】
次に、異方熱伝導性シート11の面内方向(図3におけるX軸方向、Y軸方向等)に熱液晶性高分子の剛直な分子鎖を配向させる場合について説明する。図5に示すように、金型12bに形成されるキャビティ13bの面内方向に磁力線M2が一致するように、一対の永久磁石14bを金型12bの両側方に対向させて配設する。次に、永久磁石14bによってキャビティ13bの内部に充填された液晶性組成物15に磁場を印加する。このとき、磁力線M2はシート状の液晶性組成物15の面内方向に一致するため、熱液晶性高分子の剛直な分子鎖を液晶性組成物15の面内方向に配向することができる。この配向状態で熱液晶性高分子を冷却固化させ、金型12bから取り出すと、熱液晶性高分子の剛直な分子鎖が面内方向に配向した異方熱伝導性シート11を得ることができる。
【0054】
このとき、異方熱伝導性シート11の異方性磁化率Δχが、5×10−8〜1×10−6[emu/g]の範囲である。従って、異方熱伝導性シート11は、面内方向に高い熱伝導率λを有し、面内方向に熱伝導性が要求される回路基板材料、半導体パッケージ用の放熱シート等に適用することができる。
【0055】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ この実施形態の異方熱伝導性高分子成形体においては、液晶性高分子を含有する液晶性組成物から得られ、液晶性高分子に由来する異方性磁化率Δχが、5×10−8〜1×10−6[emu/g]の範囲である。従って、液晶性高分子の配向方向に高い熱伝導率λを有し、一定方向に優れた熱伝導性を発揮することができる。また、液晶性組成物に熱伝導性充填剤を配合し、得られる熱伝導性高分子成形体の熱伝導性を向上させた場合でも、液晶性高分子に由来する異方性磁化率Δχを上記の範囲に設定し、異方熱伝導性高分子成形体とすることによって、一定方向の熱伝導性がさらに向上される。従って、一定方向に優れた熱伝導性を発揮することができる。
【0056】
・ この実施形態の異方熱伝導性高分子成形体においては、好ましくは液晶性高分子100重量部に対し、100重量部未満の熱伝導性充填剤を含有する。この場合、熱伝導性充填剤を多量に配合しないため、得られる異方熱伝導性高分子成形体は、適用物の軽量化に貢献することができる。さらに熱伝導性充填剤を多量に配合しないため、液晶性高分子に対する熱伝導性充填剤の分散性等を考慮する手間が省け、液晶性組成物を容易に製造することができる。加えて、液晶性組成物は液晶性高分子を主成分としているため、得られる異方熱伝導性高分子成形体は、液晶性高分子が有する電気絶縁性等の特性を発揮することができる。
・ この実施形態の異方熱伝導性高分子成形体においては、液晶性高分子は熱液晶性高分子であることが好ましい。この場合、異方性磁化率Δχを上記の範囲に容易に設定することができ、一定方向に優れた熱伝導性を有する異方熱伝導性高分子成形体を容易に得ることができる。
・ この実施形態の異方熱伝導性高分子成形体においては、熱液晶性高分子が(A)全芳香族ポリエステル及び(B)全芳香族ポリエステルアミドから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。このように構成した場合、光学的異方性溶融相を容易に発現させることができるとともに、これらの熱液晶性高分子の成形加工性は良好であって、種々の形状に容易に成形することができる。従って、異方性磁化率Δχを上記の範囲に容易に設定することができるとともに、液晶性組成物を容易に成形することができ、一定方向に優れた熱伝導性を有する異方熱伝導性高分子成形体をさらに容易に得ることができる。
【0057】
・ この実施形態の異方熱伝導性高分子成形体においては、液晶状態の液晶性高分子に磁場を印加することによって、液晶性高分子の剛直な分子鎖を一定方向に配向制御させ、異方性磁化率Δχを上記の範囲に容易に設定している。このように構成した場合、液晶性高分子を容易に配向させることができるとともに異方性磁化率Δχを上記の範囲に容易に設定することができ、一定方向に優れた熱伝導性を有する異方熱伝導性高分子成形体を容易に得ることができる。
【0058】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 前記実施形態においては、液晶性高分子に熱伝導性充填剤を配合しているが、ガラス繊維等の通常の充填剤を配合してもよい。
【0059】
・ 前記永久磁石14a、14bは、金型12a、12bを挟むように一対配設されているが、一方の永久磁石14a、14bを省略してもよい。
・ 前記永久磁石14a、14bは、S極とN極とが互いに対向するように一対配設されているが、S極同士又はN極同士が対向するように配設してもよい。
【0060】
・ 前記磁力線M1、M2は、直線状であるが、曲線状等でもよい。また、前記永久磁石14a、14bは磁力線M1、M2が一方向に延びるように配設されているが、磁力線M1、M2が二方向以上に延びるように永久磁石14a、14bを配設してもよい。さらに、磁力線M1、M2又は金型12a、12bを回転させてもよい。
【0061】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
熱液晶性高分子として構成単位が4−ヒドロキシ安息香酸/(テレフタル酸とエチレングリコール)=80/20モル%である全芳香族ポリエステル(i)のペレットを脱湿乾燥し、射出成形によって、縦50mm×横50mm×厚み2mmのシート状成形体を作製した。このシート状成形体を、温度340℃に加熱した金型のキャビティに入れて磁束密度2.5テスラの超伝導磁石の磁場中で溶融させた後、同磁場中で20分間保持し、その後、室温まで冷却固化させて異方熱伝導性高分子成形体を作製した。磁力線の方向はシート状成形体の厚み方向とした。
(実施例2及び実施例3)
実施例1と同一の全芳香族ポリエステル(i)のペレットを射出成形したシート状成形体を使用し、表1に記載の磁束密度に変更した以外は実施例1と同様に異方熱伝導性高分子成形体を作製した。
(実施例4)
熱液晶性高分子として構成単位が4−ヒドロキシ安息香酸/(テレフタル酸とエチレングリコール)=60/40モル%からなる全芳香族ポリエステル(ii)を使用し、実施例1と同様にシート状成形体を作製した。このシート状成形体を使用し、磁束密度を5テスラとした以外は実施例1と同様に異方熱伝導性高分子成形体を作製した。
(実施例5)
実施例4と同様にシート状成形体を得た。このシート状成形体を使用し、磁束密度を10テスラに変更した以外は実施例1と同様に異方熱伝導性高分子成形体を作製した。
(比較例1)
実施例1と同一の全芳香族ポリエステル(i)のペレットを脱湿乾燥し、射出成形によって、縦50mm×横50mm×厚み2mmのシート状成形体を作製した。このシート状成形体を、温度340℃に加熱した金型のキャビティに入れて磁場を印加せずに溶融させた後、溶融状態で20分間保持し、その後、室温まで冷却固化させて熱伝導性高分子成形体を作製した。
(比較例2)
比較例1と同様にシート状成形体を作製した。このシート状成形体を、温度340℃に加熱した金型のキャビティに入れて磁束密度1.5テスラの磁場中で溶融させた後、同磁場中で20分間保持し、その後、室温まで冷却固化させて熱伝導性高分子成形体を作製した。磁力線の方向はシート状の厚み方向とした。
(比較例3)
実施例4と同様にシート状成形体を作製した。このシート状成形体を使用し、比較例1と同様に熱伝導性高分子成形体を作製した。
【0062】
実施例1〜5及び比較例1〜3の異方性磁化率Δχは、カンタムデザイン社製の超伝導量子干渉素子を使用した磁化測定から求めた。実施例3の磁化測定による磁化特性を図1に示す。また、実施例1〜5及び比較例1〜3の熱伝導率λをレーザーフラッシュ法で測定した。実施例1〜5及び比較例1〜3における異方性磁化率Δχと熱伝導率λを表1及び表2に示し、異方性磁化率Δχと熱伝導率λの関係を図2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜5では、異方性磁化率Δχが、5×10−8〜1×10−6[emu/g]の範囲である異方熱伝導性高分子成形体が得られ、熱伝導率λが0.7W/(m・K)以上の優れた熱伝導性が発揮されている。また、実施例1〜5では、磁束密度を高くするほど、異方性磁化率Δχが高められ、高い熱伝導率λを有する異方熱伝導性高分子成形体が得られることがわかる。
【0065】
一方、表2の結果から明らかなように、比較例1〜3では、異方性磁化率Δχが5.0×10−8[emu/g]以下の従来の熱伝導性高分子成形体であるため、熱伝導率λが0.61W/(m・K)以下の不十分な熱伝導性を示している。
【0066】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(1) 前記液晶性高分子は、磁場発生手段によって発生される磁場が印加されることにより、前記液晶性高分子に由来する異方性磁化率Δχが設定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の異方熱伝導性高分子成形体。このように構成した場合、異方性磁化率Δχを容易に設定することができる。
【0067】
(2) シート状をなし、シートの厚み方向の磁化率又はシートの面内方向の磁化率が前記最大磁化率又は最小磁化率となるように構成したことを特徴とする請求項1から請求項4及び上記(1)のいずれか一項に記載の異方熱伝導性高分子成形体。このように構成した場合、厚み方向の熱伝導性又は面内方向の熱伝導性が要求される回路基板材料、半導体パッケージ用の放熱シート等に適用することができる。
【0068】
(3) 少なくとも一方向の熱伝導率λが0.7〜20W/(m・K)であることを特徴とする請求項1から請求項4、上記(1)及び(2)のいずれか一項に記載の異方熱伝導性高分子成形体。
【0069】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明の異方熱伝導性高分子成形体によれば、一定方向に優れた熱伝導性を発揮することができる。
【0070】
請求項2に記載の発明の異方熱伝導性高分子成形体によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、適用物の軽量化に貢献することができる。
請求項3に記載の発明の異方熱伝導性高分子成形体によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、異方熱伝導性高分子成形体を容易に得ることができる。
【0071】
請求項4に記載の発明の異方熱伝導性高分子成形体によれば、請求項3に記載の発明の効果に加え、異方熱伝導性高分子成形体をさらに容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態における異方熱伝導性高分子成形体(実施例3)の磁化特性を示すグラフ。
【図2】実施の形態における異方熱伝導性高分子成形体及び従来の熱伝導性高分子成形体の異方性磁化率Δχと熱伝導率λの関係を示すグラフ。
【図3】実施の形態における異方熱伝導性シートを示す斜視図。
【図4】厚さ方向に高い熱伝導性を有する異方熱伝導性シートの製造方法を示す概念図。
【図5】面内方向に高い熱伝導性を有する異方熱伝導性シートの製造方法を示す概念図。
【符号の説明】
11…異方熱伝導性高分子成形体としての異方熱伝導性シート、15…液晶性組成物。
Claims (4)
- 液晶性高分子を含有する液晶性組成物から得られる異方熱伝導性高分子成形体であって、磁化測定から下記式(1)によって求められる前記液晶性高分子に由来する異方性磁化率Δχが、5×10−8〜1×10−6[emu/g]の範囲であることを特徴とする異方熱伝導性高分子成形体。
異方性磁化率Δχ=χmax−χmin・・・(1)
(ただし、χmaxは最大磁化率、χminは最小磁化率を表す。) - 前記液晶性組成物は、液晶性高分子100重量部に対し、100重量部未満の熱伝導性充填剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の異方熱伝導性高分子成形体。
- 前記液晶性高分子は、加熱溶融すると光学的異方性溶融相を示す熱液晶性高分子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の異方熱伝導性高分子成形体。
- 前記熱液晶性高分子が(A)全芳香族ポリエステル及び(B)全芳香族ポリエステルアミドから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項3に記載の異方熱伝導性高分子成形体。
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