JP2004146733A - 有機半導体及びそれを用いる有機薄膜トランジスタ素子 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は有機半導体、とくに簡単なプロセスで薄膜を形成することが可能な有機半導体および、該有機半導体で形成された薄膜を用いた電界効果トランジスタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
情報端末の普及に伴い、コンピュータ用のディスプレイとしてフラットパネルディスプレイに対するニーズが高まっている。またさらに情報化の進展に伴い、従来紙媒体で提供されていた情報が電子化されて提供される機会が増え、薄くて軽い、手軽に持ち運びが可能なモバイル用表示媒体として、電子ペーパーあるいはデジタルペーパーへのニーズも高まりつつある。
【0003】
一般に平板型のディスプレイ装置においては液晶、有機EL、電気泳動などを利用した素子を用いて表示媒体を形成している。またこうした表示媒体では画面輝度の均一性や画面書き換え速度などを確保するために、画像駆動素子としてアクティブ駆動素子(TFT素子)を用いる技術が主流になっている。例えば通常のコンピュータディスプレイではガラス基板上にこれらTFT素子を形成し、液晶、有機EL素子等が封止されている。
【0004】
ここでTFT素子には主にa−Si(アモルファスシリコン)、p−Si(ポリシリコン)などの半導体を用いることができ、これらのSi半導体(必要に応じて金属膜も)を多層化し、ソース、ドレイン、ゲート電極を基板上に順次形成していくことでTFT素子が製造される。こうしたTFT素子の製造には通常、スパッタリング、その他の真空系の製造プロセスが必要とされる。
【0005】
しかしながら、このようなTFT素子の製造では真空チャンバーを含む真空系の製造プロセスを何度も繰り返して各層を形成せざるを得ず、装置コスト、ランニングコストが非常に膨大なものとなっていた。例えばTFT素子では通常、それぞれの層の形成のために、真空蒸着、ドープ、フォトリソグラフ、現像等の工程を何度も繰り返す必要があり、何十もの工程を経て素子を基板上に形成している。スイッチング動作の要となる半導体部分に関してもp型、n型等、複数種類の半導体層を積層している。こうした従来のSi半導体による製造方法ではディスプレイ画面の大型化のニーズに対し、真空チャンバー等の製造装置の大幅な設計変更が必要とされるなど、設備の変更が容易ではない。
【0006】
また、このような従来からのSi材料を用いたTFT素子の形成には高い温度の工程が含まれるため、基板材料には工程温度に耐える材料であるという制限が加わることになる。このため実際上はガラスを用いざるをえず、先に述べた電子ペーパーあるいはデジタルペーパーといった薄型ディスプレイを、こうした従来知られたTFT素子を利用して構成した場合、そのディスプレイは重く、柔軟性に欠け、落下の衝撃で割れる可能性のある製品となってしまう。ガラス基板上にTFT素子を形成することに起因するこれらの特徴は、情報化の進展に伴う手軽な携行用薄型ディスプレイへのニーズを満たすにあたり望ましくないものである。
【0007】
一方、近年において高い電荷輸送性を有する有機化合物として、有機半導体材料の研究が精力的に進められている。これらの化合物は有機EL素子用の電荷輸送性材料のほか、例えば非特許文献1等において論じられているような有機レーザー発振素子や、例えば非特許文献2等、多数の論文にて報告されている有機薄膜トランジスタへの応用が期待されている。これら有機半導体デバイスを実現できれば、比較的低い温度での真空ないし低圧蒸着による製造プロセスの簡易化や、さらにはその分子構造を適切に改良することによって、溶液化できる半導体を得る可能性があると考えられ、有機半導体溶液をインク化することによりインクジェット方式を含む印刷法による製造も考えられる。これらの低温プロセスによる製造は、従来のSi系半導体材料については不可能と考えられてきたが、有機半導体を用いたデバイスにはその可能性があり、したがって前述の基板耐熱性に関する制限が緩和され、透明樹脂基板上にも例えばTFT素子を形成できる可能性がある。透明樹脂基板上にTFT素子を形成し、そのTFT素子により表示材料を駆動させることができれば、ディスプレイを従来のものよりも軽く、柔軟性に富み、落としても割れない(もしくは非常に割れにくい)ディスプレイとすることができるであろう。
【0008】
しかしながら、こうしたTFT素子を実現するための有機半導体としてこれまでに検討されてきたのは、特許文献1にて開示されているペンタセンやテトラセンといったアセン類、同じく特許文献2に開示されている鉛フタロシアニンを含むフタロシアニン類、ペリレンやそのテトラカルボン酸誘導体といった低分子化合物や、特許文献3に開示されているα−チエニールもしくはセクシチオフェンと呼ばれるチオフェン6量体を代表例とする芳香族オリゴマー、さらにはポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリ−p−フェニレンビニレンといった共役高分子など限られた種類の化合物(これらの多くは非特許文献3に記載されている)でしかなく、高いキャリア移動度を示す新規な電荷輸送性材料を用いた半導体性組成物の開発が待望されていた。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−55568号公報
【0010】
【特許文献2】
特開平5−190877号
【0011】
【特許文献3】
特開平8−264805号
【0012】
【非特許文献1】
『サイエンス』(Science)誌289巻 599ページ
(2000)
【0013】
【非特許文献2】
『ネイチャー』(Nature)誌403巻 521ページ
(2000)
【0014】
【非特許文献3】
『アドバンスド・マテリアル』(Advanced Materi−al)誌2002年第2号99ページ
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、移動度の高い新規な有機半導体を提供することであり、また、該有機半導体を用いた有機薄膜トランジスタを提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、
1) 前記一般式(1)で表される化合物を含有する有機半導体、
2) 前記一般式(1)で表される化合物を活性層に含有する有機薄膜トランジスタ素子、
3) 一般式(1)においてR9が芳香族基である2)の有機薄膜トランジスタ素子、
4) 一般式(1)で表される化合物が、カルバゾール骨格が共役結合により連結された構造である2)または3)の有機薄膜トランジスタ素子、
によって達成される。
【0017】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
一般式(1)において、R1〜R9はそれぞれ独立に水素原子または一価の置換基を表し、R1〜R9は水素原子またはアルキル基(メチル基、エチル基、i−プロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)、アルキルオキシ基(メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、i−プロピルキオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基等)、アリールアミノ基(アニリノ基、ジフェニルアミノ基等)、複素環基(ピロール基、ピロリジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基等)、シリル基(トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等)基のいずれかより選ばれる一価の置換基である。それぞれの置換基はさらに置換基を有していてもよく、また、置換基どうしが互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0018】
R1〜R9のうち、R3およびR6は水素原子でないことが好ましく、とくにアルキル基、アリール基、複素環基のいずれかであることが好ましい。R9で表される一価の置換基としては、ヘテロ原子を有するものを含む芳香族基が好ましく、とくに好ましくはフェニル基、チエニル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピリミジル基、ピラジル基であり、これらの置換基はさらに置換されていても他の環と縮合していてもよい。
【0019】
また、一般式(1)で表される化合物が、カルバゾール骨格、すなわち一般式(1)から置換基R1〜R9を除いた部分を複数有している構造であることも好ましい。複数のカルバゾール骨格をもつ構造において、それぞれのカルバゾール骨格に導入された置換基は同じであっても異なっていてもよく、すなわち一般式(1)にて表される構造の単一種類の構造を複数個もつ化合物であってもよいし、複数種類の一般式(1)の範疇に属する構造が連結された化合物であってもよい。この場合カルバゾール骨格どうしを結合させる連結基の構造に特別な制限はないが、複数のカルバゾール骨格を共役結合で結合させることのできる連結基がとくに好ましい。このような、複数のカルバゾール骨格を共役結合で結合させることのできる連結基の例としては、エテン−1,2−ジイル基、アセチレンジイル基、p−フェニレン基、2,5−チエニレン基、ピリジン−2,6−ジイル基、およびこれらの任意の組み合わせによって形成される2価の連結基を挙げることができる。また1分子内のカルバゾール骨格の数に特別の制限はなく、一般式(1)の構造を有する繰り返し単位をもつオリゴマーもしくはポリマーであっても、本発明の範疇に含まれる。
【0020】
以下に、具体的化合物例を示すが、本発明における化合物がこれらに限定されるものではない。また、一般式(1)に示した構造を有する繰り返し単位をもつポリマーについては、その平均分子量をMとして構造式に併記した。平均分子量の測定にはゲル泳動クロマトグラフィーを用い、ポリスチレンを基準に用いた。またコポリマーについて併記したm:nは各々のモノマーユニットの重合時における仕込比率を表している。
【0021】
【化2】
【0022】
【化3】
【0023】
【化4】
【0024】
【化5】
【0025】
【化6】
【0026】
【化7】
【0027】
【化8】
【0028】
【化9】
【0029】
合成例 化合物例1の合成
窒素雰囲気下、酢酸パラジウム0.33gとトリ−tert−ブチルホスフィン1.4mlをキシレン200mlに加えた。その後、4−ブロモトルエンを25g、カルバゾール25g、ナトリウム−tert−ブトキシド15gを添加し、6時間加熱還流した。その後、得られた反応混合物より有機物を抽出しカラム精製することで、化合物Aを28g得た(収率75%)。
【0030】
【化10】
【0031】
次に塩化メチレン800mlに化合物A25gを加え、これに0℃で31gの臭素を滴下し、1時間撹拌後に有機物を抽出し、これを再結晶することで38gの化合物Bを得た(収率94%)。
【0032】
【化11】
【0033】
化合物B30gを窒素雰囲気下にてテトラヒドロフラン450mlに溶解し、−78℃でn−ブチルリチウム−ヘキサン(1.5M/L)溶液を58ml滴下し、30分撹拌後、ヨードメタン11mlを滴下した後、室温に戻して得られた反応混合物より有機物を抽出し、これを再結晶することで化合物Cを20g得た(収率80%)。
【0034】
【化12】
【0035】
化合物C20gを窒素雰囲気下にてテトラヒドロフラン200mlに溶解し、−78℃でn−ブチルリチウム−ヘキサン(1.5M/L)溶液を48ml滴下し、30分撹拌後、トリメトキシボラン15mlのテトラヒドロフラン25ml溶液を滴下した後、反応溶液に酸を加え、pH=2にした。反応溶液を抽出、乾燥、濃縮して得られた化合物Dを含む反応生成物を精製せずに次のステップに用いた。
【0036】
【化13】
【0037】
得られた化合物Dを含む反応生成物とp−ジブロモベンゼン6.0gをテトラヒドロフラン400mlに溶解し、炭酸カリウム15.7gを同量の水に溶かした溶液を加え、窒素を15分間吹き込んだ後でテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを1.8g加え、16時間加熱還流した。反応溶液を抽出処理、乾燥、濃縮、カラム精製、昇華精製を行うことで例示化合物1を5.8g得た。
【0038】
【化14】
【0039】
NMR及びマススペクトルにより目的物であることを確認した。その他の化合物も同様な方法あるいは公知の方法によって製造することが可能である。
【0040】
本発明の有機半導体は有機薄膜トランジスタ素子の活性層に設置することにより、良好に駆動するトランジスタ装置を提供することができる。
【0041】
有機薄膜トランジスタは、支持体上に有機半導体チャネル(活性層)で連結されたソース電極とドレイン電極を有し、その上にゲート絶縁層を介してゲート電極を有するトップゲート型と、支持体上にまずゲート電極を有し、ゲート絶縁層を介して有機半導体チャネルで連結されたソース電極とドレイン電極を有するボトムゲート型に大別される。
【0042】
本発明の化合物を有機薄膜トランジスタ素子の活性層に設置するには、真空蒸着により基板上に設置することもできるが、適切な溶剤に溶解し必要に応じ添加剤を加えて調製した溶液をキャストコート、スピンコート、印刷、インクジェット法、アブレーション法等によって基板上に設置するのが好ましい。この場合、本発明の有機半導体を溶解する溶剤は、該有機半導体を溶解して適切な濃度の溶液が調製できるものであれば格別の制限はないが、具体的にはジエチルエーテルやジイソプロピルエーテル等の鎖状エーテル系溶媒、テトラヒドロフランやジオキサンなどの環状エーテル系溶媒、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルムや1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、トルエン、o−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、m−クレゾール等の芳香族系溶媒、N−メチルピロリドン、2硫化炭素等を挙げることができる。
【0043】
本発明おいて、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を形成する材料は導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITOおよび炭素が好ましい。あるいはドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体なども好適に用いられる。中でも半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。
【0044】
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーションなどにより形成してもよい。さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0045】
ゲート絶縁層としては種々の絶縁膜を用いることができるが、特に、比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられる。それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
【0046】
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などのドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、印刷やインクジェットなどのパターニングによる方法などのウェットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用できる。
【0047】
ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶剤あるいは水に必要に応じて界面活性剤などの分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えばアルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、いわゆるゾルゲル法が用いられる。
【0048】
これらのうち好ましいのは、大気圧プラズマ法とゾルゲル法である。
大気圧下でのプラズマ製膜処理による絶縁膜の形成方法は、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材上に薄膜を形成する処理で、その方法については特開平11−61406、同11−133205、特開2000−121804、同2000−147209、同2000−185362等に記載されている(以下、大気圧プラズマ法とも称する)。これによって高機能性の薄膜を、生産性高く形成することができる。
【0049】
また有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、およびシアノエチルプルラン等を用いることもできる。
【0050】
有機化合物皮膜の形成法としては、前記ウェットプロセスが好ましい。
無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することができる。またこれら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは、100nm〜1μmである。
【0051】
また支持体はガラスやフレキシブルな樹脂製シートで構成され、例えばプラスチックフィルムをシートとして用いることができる。前記プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。このように、プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに、衝撃に対する耐性を向上できる。
【0052】
【実施例】
以下実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0053】
実施例1
ゲート電極としての抵抗率0.01Ω・cmのSiウェハーに、厚さ2000Åの熱酸化膜を形成してゲート絶縁層とした後、例示化合物14のクロロホルム溶液をアプリケーターを用いて塗布し、自然乾燥することによりキャスト膜(厚さ50nm)を形成して、窒素雰囲気下で50℃、30分間の熱処理を施した。さらに、この膜の表面にマスクを用いて金を蒸着してソースおよびドレイン電極を形成した。ソースおよびドレイン電極は幅100μm、厚さ200nmで、チャネル幅W=3mm、チャネル長L=20μmの有機薄膜トランジスタ素子1を形成した。
【0054】
例示化合物14に代えて例示化合物25を用い、有機トランジスタ素子1と同様の方法で有機トランジスタ素子2を作製した。
【0055】
例示化合物14に替えてポリ(3−ヘキシルチオフェン)(regioregular、アルドリッチ社製、平均分子量89000)を用いて、有機トランジスタ素子1と同様の方法で、比較例としての有機トランジスタ素子3を作製した。
【0056】
例示化合物14に替えてペンタセン(アルドリッチ社製市販試薬を昇華精製して用いた)を用いて、有機トランジスタ素子1と同様の方法で、比較例としての有機トランジスタ素子4を作製した。
【0057】
以上のようにして作製した有機トランジスタ素子のそれぞれに、ソース・ドレイン電極間に−50Vの電圧を印加し、ゲート電圧を−100Vから100Vの範囲で変化させた際の、最大電流値と最小電流値の比をとって、これを各々の有機トランジスタ素子のON/OFF比として記録した。比較例である有機トランジスタ素子3の示した値を100としたときの相対値によって結果を示すと以下のとおりであった。
【0058】
この結果より、本発明の半導体性材料を活性層に用いて作製した有機薄膜トランジスタ素子が、優れたON/OFF特性を示すことがわかる。また、ペンタセンを用いた有機トランジスタ素子4の結果は、塗布による薄膜形成によっては活性層として機能するペンタセン薄膜を得がたいことを示している。
【0059】
実施例2
実施例1にて測定に使用した有機トランジスタ素子1〜4を、温度40℃、湿度60%にて1週間保存した後、実施例1と同様の測定を行った。結果を実施例1と同様に、実施例1における各々の有機トランジスタ素子の結果を100とする相対値によって示すと以下のとおりであった。
【0060】
この結果より、本発明の半導体性材料を活性層に用いた場合、作製した有機トランジスタ素子は保存性においても優れた特性を示し、素子としての寿命を長期化できることがわかった。
【0061】
【発明の効果】
本発明の有機半導体は移動度が高く、ON/OFF比とその保存性に優れる有機薄膜トランジスタ素子を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は有機半導体、とくに簡単なプロセスで薄膜を形成することが可能な有機半導体および、該有機半導体で形成された薄膜を用いた電界効果トランジスタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
情報端末の普及に伴い、コンピュータ用のディスプレイとしてフラットパネルディスプレイに対するニーズが高まっている。またさらに情報化の進展に伴い、従来紙媒体で提供されていた情報が電子化されて提供される機会が増え、薄くて軽い、手軽に持ち運びが可能なモバイル用表示媒体として、電子ペーパーあるいはデジタルペーパーへのニーズも高まりつつある。
【0003】
一般に平板型のディスプレイ装置においては液晶、有機EL、電気泳動などを利用した素子を用いて表示媒体を形成している。またこうした表示媒体では画面輝度の均一性や画面書き換え速度などを確保するために、画像駆動素子としてアクティブ駆動素子(TFT素子)を用いる技術が主流になっている。例えば通常のコンピュータディスプレイではガラス基板上にこれらTFT素子を形成し、液晶、有機EL素子等が封止されている。
【0004】
ここでTFT素子には主にa−Si(アモルファスシリコン)、p−Si(ポリシリコン)などの半導体を用いることができ、これらのSi半導体(必要に応じて金属膜も)を多層化し、ソース、ドレイン、ゲート電極を基板上に順次形成していくことでTFT素子が製造される。こうしたTFT素子の製造には通常、スパッタリング、その他の真空系の製造プロセスが必要とされる。
【0005】
しかしながら、このようなTFT素子の製造では真空チャンバーを含む真空系の製造プロセスを何度も繰り返して各層を形成せざるを得ず、装置コスト、ランニングコストが非常に膨大なものとなっていた。例えばTFT素子では通常、それぞれの層の形成のために、真空蒸着、ドープ、フォトリソグラフ、現像等の工程を何度も繰り返す必要があり、何十もの工程を経て素子を基板上に形成している。スイッチング動作の要となる半導体部分に関してもp型、n型等、複数種類の半導体層を積層している。こうした従来のSi半導体による製造方法ではディスプレイ画面の大型化のニーズに対し、真空チャンバー等の製造装置の大幅な設計変更が必要とされるなど、設備の変更が容易ではない。
【0006】
また、このような従来からのSi材料を用いたTFT素子の形成には高い温度の工程が含まれるため、基板材料には工程温度に耐える材料であるという制限が加わることになる。このため実際上はガラスを用いざるをえず、先に述べた電子ペーパーあるいはデジタルペーパーといった薄型ディスプレイを、こうした従来知られたTFT素子を利用して構成した場合、そのディスプレイは重く、柔軟性に欠け、落下の衝撃で割れる可能性のある製品となってしまう。ガラス基板上にTFT素子を形成することに起因するこれらの特徴は、情報化の進展に伴う手軽な携行用薄型ディスプレイへのニーズを満たすにあたり望ましくないものである。
【0007】
一方、近年において高い電荷輸送性を有する有機化合物として、有機半導体材料の研究が精力的に進められている。これらの化合物は有機EL素子用の電荷輸送性材料のほか、例えば非特許文献1等において論じられているような有機レーザー発振素子や、例えば非特許文献2等、多数の論文にて報告されている有機薄膜トランジスタへの応用が期待されている。これら有機半導体デバイスを実現できれば、比較的低い温度での真空ないし低圧蒸着による製造プロセスの簡易化や、さらにはその分子構造を適切に改良することによって、溶液化できる半導体を得る可能性があると考えられ、有機半導体溶液をインク化することによりインクジェット方式を含む印刷法による製造も考えられる。これらの低温プロセスによる製造は、従来のSi系半導体材料については不可能と考えられてきたが、有機半導体を用いたデバイスにはその可能性があり、したがって前述の基板耐熱性に関する制限が緩和され、透明樹脂基板上にも例えばTFT素子を形成できる可能性がある。透明樹脂基板上にTFT素子を形成し、そのTFT素子により表示材料を駆動させることができれば、ディスプレイを従来のものよりも軽く、柔軟性に富み、落としても割れない(もしくは非常に割れにくい)ディスプレイとすることができるであろう。
【0008】
しかしながら、こうしたTFT素子を実現するための有機半導体としてこれまでに検討されてきたのは、特許文献1にて開示されているペンタセンやテトラセンといったアセン類、同じく特許文献2に開示されている鉛フタロシアニンを含むフタロシアニン類、ペリレンやそのテトラカルボン酸誘導体といった低分子化合物や、特許文献3に開示されているα−チエニールもしくはセクシチオフェンと呼ばれるチオフェン6量体を代表例とする芳香族オリゴマー、さらにはポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリ−p−フェニレンビニレンといった共役高分子など限られた種類の化合物(これらの多くは非特許文献3に記載されている)でしかなく、高いキャリア移動度を示す新規な電荷輸送性材料を用いた半導体性組成物の開発が待望されていた。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−55568号公報
【0010】
【特許文献2】
特開平5−190877号
【0011】
【特許文献3】
特開平8−264805号
【0012】
【非特許文献1】
『サイエンス』(Science)誌289巻 599ページ
(2000)
【0013】
【非特許文献2】
『ネイチャー』(Nature)誌403巻 521ページ
(2000)
【0014】
【非特許文献3】
『アドバンスド・マテリアル』(Advanced Materi−al)誌2002年第2号99ページ
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、移動度の高い新規な有機半導体を提供することであり、また、該有機半導体を用いた有機薄膜トランジスタを提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、
1) 前記一般式(1)で表される化合物を含有する有機半導体、
2) 前記一般式(1)で表される化合物を活性層に含有する有機薄膜トランジスタ素子、
3) 一般式(1)においてR9が芳香族基である2)の有機薄膜トランジスタ素子、
4) 一般式(1)で表される化合物が、カルバゾール骨格が共役結合により連結された構造である2)または3)の有機薄膜トランジスタ素子、
によって達成される。
【0017】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
一般式(1)において、R1〜R9はそれぞれ独立に水素原子または一価の置換基を表し、R1〜R9は水素原子またはアルキル基(メチル基、エチル基、i−プロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)、アルキルオキシ基(メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、i−プロピルキオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基等)、アリールアミノ基(アニリノ基、ジフェニルアミノ基等)、複素環基(ピロール基、ピロリジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基等)、シリル基(トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等)基のいずれかより選ばれる一価の置換基である。それぞれの置換基はさらに置換基を有していてもよく、また、置換基どうしが互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0018】
R1〜R9のうち、R3およびR6は水素原子でないことが好ましく、とくにアルキル基、アリール基、複素環基のいずれかであることが好ましい。R9で表される一価の置換基としては、ヘテロ原子を有するものを含む芳香族基が好ましく、とくに好ましくはフェニル基、チエニル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピリミジル基、ピラジル基であり、これらの置換基はさらに置換されていても他の環と縮合していてもよい。
【0019】
また、一般式(1)で表される化合物が、カルバゾール骨格、すなわち一般式(1)から置換基R1〜R9を除いた部分を複数有している構造であることも好ましい。複数のカルバゾール骨格をもつ構造において、それぞれのカルバゾール骨格に導入された置換基は同じであっても異なっていてもよく、すなわち一般式(1)にて表される構造の単一種類の構造を複数個もつ化合物であってもよいし、複数種類の一般式(1)の範疇に属する構造が連結された化合物であってもよい。この場合カルバゾール骨格どうしを結合させる連結基の構造に特別な制限はないが、複数のカルバゾール骨格を共役結合で結合させることのできる連結基がとくに好ましい。このような、複数のカルバゾール骨格を共役結合で結合させることのできる連結基の例としては、エテン−1,2−ジイル基、アセチレンジイル基、p−フェニレン基、2,5−チエニレン基、ピリジン−2,6−ジイル基、およびこれらの任意の組み合わせによって形成される2価の連結基を挙げることができる。また1分子内のカルバゾール骨格の数に特別の制限はなく、一般式(1)の構造を有する繰り返し単位をもつオリゴマーもしくはポリマーであっても、本発明の範疇に含まれる。
【0020】
以下に、具体的化合物例を示すが、本発明における化合物がこれらに限定されるものではない。また、一般式(1)に示した構造を有する繰り返し単位をもつポリマーについては、その平均分子量をMとして構造式に併記した。平均分子量の測定にはゲル泳動クロマトグラフィーを用い、ポリスチレンを基準に用いた。またコポリマーについて併記したm:nは各々のモノマーユニットの重合時における仕込比率を表している。
【0021】
【化2】
【0022】
【化3】
【0023】
【化4】
【0024】
【化5】
【0025】
【化6】
【0026】
【化7】
【0027】
【化8】
【0028】
【化9】
【0029】
合成例 化合物例1の合成
窒素雰囲気下、酢酸パラジウム0.33gとトリ−tert−ブチルホスフィン1.4mlをキシレン200mlに加えた。その後、4−ブロモトルエンを25g、カルバゾール25g、ナトリウム−tert−ブトキシド15gを添加し、6時間加熱還流した。その後、得られた反応混合物より有機物を抽出しカラム精製することで、化合物Aを28g得た(収率75%)。
【0030】
【化10】
【0031】
次に塩化メチレン800mlに化合物A25gを加え、これに0℃で31gの臭素を滴下し、1時間撹拌後に有機物を抽出し、これを再結晶することで38gの化合物Bを得た(収率94%)。
【0032】
【化11】
【0033】
化合物B30gを窒素雰囲気下にてテトラヒドロフラン450mlに溶解し、−78℃でn−ブチルリチウム−ヘキサン(1.5M/L)溶液を58ml滴下し、30分撹拌後、ヨードメタン11mlを滴下した後、室温に戻して得られた反応混合物より有機物を抽出し、これを再結晶することで化合物Cを20g得た(収率80%)。
【0034】
【化12】
【0035】
化合物C20gを窒素雰囲気下にてテトラヒドロフラン200mlに溶解し、−78℃でn−ブチルリチウム−ヘキサン(1.5M/L)溶液を48ml滴下し、30分撹拌後、トリメトキシボラン15mlのテトラヒドロフラン25ml溶液を滴下した後、反応溶液に酸を加え、pH=2にした。反応溶液を抽出、乾燥、濃縮して得られた化合物Dを含む反応生成物を精製せずに次のステップに用いた。
【0036】
【化13】
【0037】
得られた化合物Dを含む反応生成物とp−ジブロモベンゼン6.0gをテトラヒドロフラン400mlに溶解し、炭酸カリウム15.7gを同量の水に溶かした溶液を加え、窒素を15分間吹き込んだ後でテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを1.8g加え、16時間加熱還流した。反応溶液を抽出処理、乾燥、濃縮、カラム精製、昇華精製を行うことで例示化合物1を5.8g得た。
【0038】
【化14】
【0039】
NMR及びマススペクトルにより目的物であることを確認した。その他の化合物も同様な方法あるいは公知の方法によって製造することが可能である。
【0040】
本発明の有機半導体は有機薄膜トランジスタ素子の活性層に設置することにより、良好に駆動するトランジスタ装置を提供することができる。
【0041】
有機薄膜トランジスタは、支持体上に有機半導体チャネル(活性層)で連結されたソース電極とドレイン電極を有し、その上にゲート絶縁層を介してゲート電極を有するトップゲート型と、支持体上にまずゲート電極を有し、ゲート絶縁層を介して有機半導体チャネルで連結されたソース電極とドレイン電極を有するボトムゲート型に大別される。
【0042】
本発明の化合物を有機薄膜トランジスタ素子の活性層に設置するには、真空蒸着により基板上に設置することもできるが、適切な溶剤に溶解し必要に応じ添加剤を加えて調製した溶液をキャストコート、スピンコート、印刷、インクジェット法、アブレーション法等によって基板上に設置するのが好ましい。この場合、本発明の有機半導体を溶解する溶剤は、該有機半導体を溶解して適切な濃度の溶液が調製できるものであれば格別の制限はないが、具体的にはジエチルエーテルやジイソプロピルエーテル等の鎖状エーテル系溶媒、テトラヒドロフランやジオキサンなどの環状エーテル系溶媒、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルムや1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、トルエン、o−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、m−クレゾール等の芳香族系溶媒、N−メチルピロリドン、2硫化炭素等を挙げることができる。
【0043】
本発明おいて、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を形成する材料は導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITOおよび炭素が好ましい。あるいはドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体なども好適に用いられる。中でも半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。
【0044】
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーションなどにより形成してもよい。さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0045】
ゲート絶縁層としては種々の絶縁膜を用いることができるが、特に、比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられる。それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
【0046】
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などのドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、印刷やインクジェットなどのパターニングによる方法などのウェットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用できる。
【0047】
ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶剤あるいは水に必要に応じて界面活性剤などの分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えばアルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、いわゆるゾルゲル法が用いられる。
【0048】
これらのうち好ましいのは、大気圧プラズマ法とゾルゲル法である。
大気圧下でのプラズマ製膜処理による絶縁膜の形成方法は、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材上に薄膜を形成する処理で、その方法については特開平11−61406、同11−133205、特開2000−121804、同2000−147209、同2000−185362等に記載されている(以下、大気圧プラズマ法とも称する)。これによって高機能性の薄膜を、生産性高く形成することができる。
【0049】
また有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、およびシアノエチルプルラン等を用いることもできる。
【0050】
有機化合物皮膜の形成法としては、前記ウェットプロセスが好ましい。
無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することができる。またこれら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは、100nm〜1μmである。
【0051】
また支持体はガラスやフレキシブルな樹脂製シートで構成され、例えばプラスチックフィルムをシートとして用いることができる。前記プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。このように、プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに、衝撃に対する耐性を向上できる。
【0052】
【実施例】
以下実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0053】
実施例1
ゲート電極としての抵抗率0.01Ω・cmのSiウェハーに、厚さ2000Åの熱酸化膜を形成してゲート絶縁層とした後、例示化合物14のクロロホルム溶液をアプリケーターを用いて塗布し、自然乾燥することによりキャスト膜(厚さ50nm)を形成して、窒素雰囲気下で50℃、30分間の熱処理を施した。さらに、この膜の表面にマスクを用いて金を蒸着してソースおよびドレイン電極を形成した。ソースおよびドレイン電極は幅100μm、厚さ200nmで、チャネル幅W=3mm、チャネル長L=20μmの有機薄膜トランジスタ素子1を形成した。
【0054】
例示化合物14に代えて例示化合物25を用い、有機トランジスタ素子1と同様の方法で有機トランジスタ素子2を作製した。
【0055】
例示化合物14に替えてポリ(3−ヘキシルチオフェン)(regioregular、アルドリッチ社製、平均分子量89000)を用いて、有機トランジスタ素子1と同様の方法で、比較例としての有機トランジスタ素子3を作製した。
【0056】
例示化合物14に替えてペンタセン(アルドリッチ社製市販試薬を昇華精製して用いた)を用いて、有機トランジスタ素子1と同様の方法で、比較例としての有機トランジスタ素子4を作製した。
【0057】
以上のようにして作製した有機トランジスタ素子のそれぞれに、ソース・ドレイン電極間に−50Vの電圧を印加し、ゲート電圧を−100Vから100Vの範囲で変化させた際の、最大電流値と最小電流値の比をとって、これを各々の有機トランジスタ素子のON/OFF比として記録した。比較例である有機トランジスタ素子3の示した値を100としたときの相対値によって結果を示すと以下のとおりであった。
【0058】
この結果より、本発明の半導体性材料を活性層に用いて作製した有機薄膜トランジスタ素子が、優れたON/OFF特性を示すことがわかる。また、ペンタセンを用いた有機トランジスタ素子4の結果は、塗布による薄膜形成によっては活性層として機能するペンタセン薄膜を得がたいことを示している。
【0059】
実施例2
実施例1にて測定に使用した有機トランジスタ素子1〜4を、温度40℃、湿度60%にて1週間保存した後、実施例1と同様の測定を行った。結果を実施例1と同様に、実施例1における各々の有機トランジスタ素子の結果を100とする相対値によって示すと以下のとおりであった。
【0060】
この結果より、本発明の半導体性材料を活性層に用いた場合、作製した有機トランジスタ素子は保存性においても優れた特性を示し、素子としての寿命を長期化できることがわかった。
【0061】
【発明の効果】
本発明の有機半導体は移動度が高く、ON/OFF比とその保存性に優れる有機薄膜トランジスタ素子を得ることができる。
Claims (4)
- 前記一般式(1)で表される化合物を活性層に含有することを特徴とする有機薄膜トランジスタ素子。
- 一般式(1)においてR9が芳香族基であることを特徴とする請求項2に記載の有機薄膜トランジスタ素子。
- 一般式(1)で表される化合物が、カルバゾール骨格が共役結合により連結された構造であることを特徴とする請求項2または3に記載の有機薄膜トランジスタ素子。
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