JP2004006782A - 有機半導体材料、これを用いた有機トランジスタ、電界効果トランジスタ及びスイッチング素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】特殊な配向技術を要せず、簡単な方法でキャリア移動度が高い有機電荷輸送性材料薄膜を形成し得る有機半導体材料を提供し、これを用いたスイッチング素子を提供する。
【解決手段】主鎖と側鎖の間の結合が共役した分岐型共役高分子を含んでなることを特徴とする有機半導体材料。
【選択図】 なし
【解決手段】主鎖と側鎖の間の結合が共役した分岐型共役高分子を含んでなることを特徴とする有機半導体材料。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、簡単なプロセスで形成が可能な、有機半導体材料及び、該有機半導体材料を用いた有機トランジスタ、電界効果トランジスタおよびスイッチング素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
情報端末の普及に伴い、コンピュータ用のディスプレイとしてフラットパネルディスプレイに対するニーズが高まっている。またさらに情報化の進展に伴い、従来紙媒体で提供されていた情報が電子化されて提供される機会が増え、薄くて軽い、手軽に持ち運びが可能なモバイル用表示媒体として、電子ペーパーあるいはデジタルペーパーへのニーズも高まりつつある。
【0003】
一般に平板型のディスプレイ装置においては液晶、有機EL、電気泳動などを利用した素子を用いて表示媒体を形成している。またこうした表示媒体では画面輝度の均一性や画面書き換え速度などを確保するために、画像駆動素子としてアクティブ駆動素子(TFT素子)を用いる技術が主流になっている。例えば通常のコンピュータディスプレイではガラス基板上にこれらTFT素子を形成し、液晶、有機EL素子等が封止されている。
【0004】
ここでTFT素子には主にa−Si(アモルファスシリコン)、p−Si(ポリシリコン)などの半導体を用いることができ、これらのSi半導体(必要に応じて金属膜も)を多層化し、ソース、ドレイン、ゲート電極を基板上に順次形成していくことでTFT素子が製造される。こうしたTFT素子の製造には通常、スパッタリング、その他の真空系の製造プロセスが必要とされる。
【0005】
しかしながら、このようなTFT素子の製造では真空チャンバーを含む真空系の製造プロセスを何度も繰り返して各層を形成せざるを得ず、装置コスト、ランニングコストが非常に膨大なものとなっていた。例えばTFT素子では通常、それぞれの層の形成のために、真空蒸着、ドープ、フォトリソグラフ、現像等の工程を何度も繰り返す必要があり、何十もの工程を経て素子を基板上に形成している。スイッチング動作の要となる半導体部分に関してもp型、n型等、複数種類の半導体層を積層している。こうした従来のSi半導体による製造方法ではディスプレイ画面の大型化のニーズに対し、真空チャンバー等の製造装置の大幅な設計変更が必要とされるなど、設備の変更が容易ではない。
【0006】
また、このような従来からのSi材料を用いたTFT素子の形成には高い温度の工程が含まれるため、基板材料には工程温度に耐える材料であるという制限が加わることになる。このため実際上はガラスを用いざるを得ず、先に述べた電子ペーパーあるいはデジタルペーパーといった薄型ディスプレイを、こうした従来知られたTFT素子を利用して構成した場合、そのディスプレイは重く、柔軟性に欠け、落下の衝撃で割れる可能性のある製品となってしまう。ガラス基板上にTFT素子を形成することに起因するこれらの特徴は、情報化の進展に伴う手軽な携行用薄型ディスプレイへのニーズを満たすにあたり望ましくないものである。
【0007】
これに対して、例えば「アドバンスド・マテリアル」(Advanced Material)誌2002年第2号99〜117ページに記載されているように、近年有機半導体の研究とともに有機物をSi材料に代えてこうした回路に組み込むことも考えられている。有機半導体は比較的低い温度での真空ないし低圧蒸着が可能であると考えられるほか、その分子構造を適切に改良することによって、溶液化できる半導体を得る可能性があると考えられ、有機半導体溶液をインク化することによりインクジェット方式を含む印刷法による製造も考えられる。これらの低温プロセスによる製造は、従来のSi系半導体材料については不可能と考えられてきたが、有機半導体を用いたTFT素子にはその可能性があり、したがって前述の基板耐熱性に関する制限が緩和され、透明樹脂基板上にもTFT素子を形成できる可能性がある。透明樹脂基板上にTFT素子を形成し、そのTFT素子により表示材料を駆動させることができれば、ディスプレイを従来のものよりも軽く、柔軟性に富み、落としても割れない(もしくは非常に割れにくい)ディスプレイとすることができるであろう。
【0008】
しかしながら、有機半導体は電荷担体(キャリア)移動度が充分でなく、又、導電性に異方性を示すものが多く、基板上に有機分子を配向させる必要があったり、又、材料の配向連続性が確保されないと不連続な部分において電荷輸送に大きな障壁が生じるため電荷輸送性が大きく阻害される。従って、配向や材料としての均一性を保つために特殊な配向技術や、真空系の製造プロセスを繰り返すなど製造プロセス上の問題は依然解消されていない。製造プロセス上の問題点を解消するべく、近年ポリチオフェンやポリ−p−チエニレンビニレンといったポリマー材料を活性層に用いた有機トランジスタ素子も研究されているが、電荷移動度は低分子化合物の蒸着膜を用いた有機トランジスタに比べて低いレベルにとどまっている。これは比較的高い効率で電荷移動を行うことができる分子内の電荷移動過程に対して、分子間電荷移動過程が非効率なために移動度が低くなっているものと考えられ、ポリマー単独で構成された材料によって分子間電荷移動過程を効率化しようとする場合、やはりポリマーを任意の方向に配向させるといった工程を付加しなければならず、したがって製造プロセスの複雑化を避けることができない。
【0009】
これまでに電荷輸送性ポリマーに対して、その電荷移動度を向上させる試みは種々試みられてきたが、その多くは特開平9−120709号や特開2001−240742号に開示されているような、ポリマー内部に電荷担体(キャリア)を発生させるためのいわゆるドーピングの方法や、ドーピングに用いる化学物質(ドーパント)の種類に関する検討であった。また特開平10−120782号には導電性ポリマーに枝分れ構造を導入することによる電荷移動性の向上が提案されているが、ここで開示されている内容もドーピングによって内部にキャリアを発生するタイプのポリマーであり、これらは電解コンデンサや電池の電解質として用いるのが一般的であって、これらの材料を有機半導体として能動素子、例えばトランジスタに用いた場合、ソース電極とドレイン電極の間の電圧によって容易に電流が流れることとなり、ゲート電界による制御が効き難くなってしまう。すなわち枝分れ構造をもつ導電性ポリマーは、能動素子の構成に利用できる有機半導体として検討されてこなかった。
【0010】
一方、新たな大規模構造をもつ有機分子として、樹枝状の超分岐構造をもつデンドリマーの物性に関心が高まっている。中心構造(コア)から末端部分(大規模構造の表面部分)に至るまで合成化学的制御が可能であり、分子設計と機能設計が結びついた材料として各種の応用が検討されており、例えば、農業用薬剤の放出制御についての応用(特許文献1参照)が、液晶組成物への応用(特許文献2参照)が開示されているし、硬化性組成物への応用(特許文献3参照)が開示、電子写真用帯電付与部材への応用(特許文献4参照)が開示されているが、しかしながら未だこれら一群の化合物について、電気的能動素子に用いた例の充分な開示は行われてこなかった。
【0011】
【特許文献1】
特開平6−220190号公報
【0012】
【特許文献2】
特開平9−243984号公報
【0013】
【特許文献3】
特開平11−193318号公報
【0014】
【特許文献4】
特開2000−66482号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、特殊な配向技術を要せず、簡単な方法でキャリア移動度が高い有機電荷輸送性材料薄膜を得るための多重に分岐した有機半導体材料を提供することにあり、該有機電荷輸送性材料を用いて製造の容易な有機トランジスタ、スイッチング素子又これを用いたディスプレイパネル、とくにフレキシブルな基板を用いたディスプレイパネルを提供することにある。また別な目的は、共役結合により分岐したデンドリマーを用いた有機電荷輸送性材料を用いた、移動度の高い有機トランジスタを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下の手段により達成された。
【0017】
(1)主鎖と側鎖の間の結合が共役した分岐型共役高分子を含んでなることを特徴とする有機半導体材料。
【0018】
(2)直鎖状共役高分子の末端に、主鎖と側鎖の間の結合が共役した分岐部分が連結した構造である共役高分子を含んでなることを特徴とする(1)に記載の有機半導体材料。
【0019】
(3)分岐元の分子鎖と分岐した分子鎖の間の結合が共役した構造を含む、分岐がさらに分岐する多重分岐構造の高分子を含んでなることを特徴とする(1)または(2)に記載の有機半導体材料。
【0020】
(4)分岐元の分子鎖と分岐した分子鎖の間の結合が共役した構造を有するデンドリマーを含んでなることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
【0021】
(5)高分子の繰り返し単位構造がアリーレンビニレン型であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
【0022】
(6)高分子の繰り返し単位構造が、置換または無置換のp−フェニレンビニレンもしくは2,5−チエニレンビニレンであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
【0023】
(7)前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の有機半導体材料を含んでなることを特徴とする有機トランジスタ。
【0024】
(8)電荷輸送性材料と、該電荷輸送性材料に直接或いは間接に接するゲート電極から構成され、該ゲート電極及び電荷輸送性材料間に電界を印加することで、電荷輸送性材料中の電流を制御する電界効果トランジスタにおいて、該電荷輸送性材料が(1)〜(6)のいずれか1項に記載の有機半導体材料であることを特徴とする電界効果トランジスタ。
【0025】
(9)前記(7)に記載の有機トランジスタを用いたことを特徴とするスイッチング素子。
【0026】
(10)前記(8)に記載の電界効果トランジスタを用いたことを特徴とするスイッチング素子。
【0027】
以下、本発明に係る有機半導体材料の具体的挙動、その材料を用いた独自の有機トランジスタ、又、スイッチング素子等について説明する。
【0028】
本発明に係る有機半導体材料は、結合が共役した高分子の主鎖と側鎖の間にも結合の共役が存在し、これによりキャリアの移動が主鎖から側鎖もしくは側鎖から主鎖にも起こるように設計された共役高分子を含んでなる材料である。キャリア移動機構の詳細はつまびらかでないが、分岐した構造を有することにより、該共役高分子は他の分子鎖と接触しやすくなっており、そのため分子中に導入されたキャリアが他の分子鎖に移動する確率が直鎖高分子のみからなる材料に対して高くなった結果、キャリアの移動度が増大しているものと考えられる。
【0029】
高分子主鎖は単一の繰り返し単位からなる構造であっても、複数種類の繰り返し単位からなる構造であってもよいし、それぞれに異なる繰り返し単位からなる分子鎖が連結した、いわゆるブロックコポリマーであってもよい。主鎖と側鎖の分岐は全ての繰り返し単位において存在してもよいが、特定の繰り返し単位において存在するものであってもよい。分岐せずに主鎖を構成する繰り返し単位として用いられる2価の連結基の例には、p−フェニレン基、チオフェン−2,5−ジイル基、ピロール−2,5−ジイル基、ビニレン基、アセチレン−ジイル基が挙げられるほか、シリル基が形成する結合はσ結合ながら共役性を有することが知られており、このようなσ共役性の連結基を用いることも可能である。これらの連結基は置換基を有していてもよいし、無置換であってもよいが、とくにπ共役高分子においてはアルキル置換基を有していることが溶解性の点から好ましく、とくに好ましくは鎖状共役高分子において炭素数6〜12の直鎖アルキル基、デンドリマーにおいては炭素数4までの直鎖アルキル基である。また、結合の共役を保ったまま分岐することができる繰り返し単位の例としては、これらの連結基に対して結合の共役を連続したまま置換基を導入できる1,2,4−ベンゼン−トリイル基や、エテン−トリイル基、シラン−トリイル基などが挙げられるほか、ホウ素原子を主鎖に導入することによっても、結合の共役を保ったまま分岐構造を組み込むことができる。
【0030】
これと同様に、本発明の有機半導体材料がコア部と周縁部とに結合共役が連続したデンドリマーである場合にも、先に挙げたものと同様の繰り返し単位を例示することができる。デンドリマーはコアから周縁部に向かって超分岐と呼ばれる多重の分岐構造をとるが、コア部から数えて何回目の分岐か(何「世代」目にあたるか)によらず分岐部位の構造が同じであっても、あるいは分岐の「世代」ごとに異なっていてもよい。共役デンドリマーにおいて用いることができる繰り返し単位構造および分岐部位構造の例は、先に挙げたものと同様である。
【0031】
本発明に係る有機半導体材料は、上記に示したような結合が共役した分岐高分子を含有していることを特徴とするものであり、上記の分岐高分子単独であっても複数種類含まれた混合物であってもよいし、結合が共役していない側鎖をもつ、もしくは側鎖をもたない直鎖状共役高分子との混合物であってもよい。直鎖状共役高分子の例としてはポリチオフェン、ポリ−p−フェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアニリン、ポリシランなどを挙げることができる。直鎖状共役高分子と混合される場合、上記の分岐高分子の含量に格別の制限はないが、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10〜55質量%の範囲である。また、本発明に係る分岐共役高分子の分子量としては1000以上10万未満が好ましい。
【0032】
以下に本発明に係る分岐共役高分子の例を挙げるが、本発明の態様がこの化合物例によって制限されるものではない。なお以下の化合物例に記された「m」は重合度である。
【0033】
【化1】
【0034】
【化2】
【0035】
【化3】
【0036】
本発明に係る有機半導体材料を構成する分岐高分子は、ザ・ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(The Journal of Organic Chemistry)第46巻851〜855ページ(1981年)、同誌第61巻5103〜5108ページ(1996年)や同誌第64巻8563〜8567ページ(1999年)、ザ・ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイエティ・ケミカル・コミュニケーション(The Journal of Chemical Society Chemical Communication)1988年215〜217ページ、カナディアン・ジャーナル・オブ・ケミストリー(Canadian Journal of Chemistry)第76巻1524〜1529ページ(1998年)に記載の内容、および鈴木カップリングとして知られる芳香族ハライドとジボロン酸誘導体とのクロスカップリング反応や、Stilleカップリングとして知られる芳香族ハライドと有機スズ化合物とのクロスカップリング反応など、既知の化学反応を用いることで合成が可能であるほか、電解重合法を用いることも可能である。反応を連続的に行うこともできるが、とくにデンドリマーを合成するにあたっては、構造制御の観点から各分岐世代ごとに、段階的に反応を行うことが好ましい。例えば本発明の化合物7は、以下のような経路によって合成することが可能である。また、化合物7は第2世代デンドリマーであるが、同様の手法により第3世代以降のデンドリマーを合成することも可能である。
【0037】
【化4】
【0038】
本発明に係わる有機半導体材料は、溶媒として例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルエチルケトン、クロロホルム、塩化メチレン、N−メチルピロリドン等の溶剤に溶解して塗布することもできるし、さらに適切な添加剤を加えた水性もしくは油性インクを調製してスクリーン印刷、インクジェット法などにより印刷を行うこともできる。さらには該有機半導体材料を塗布した基板と適切な光熱変換材料を用いて、アブレーション法により電気素子を形成したい基板に転写を行ってもよい。また、本発明に係わる有機半導体材料には、ルイス酸(塩化鉄、塩化アルミニウム、臭化アンチモン等)やハロゲン(ヨウ素や臭素など)、スルホン酸塩(ポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩(PSS)、p−トルエンスルホン酸カリウム等)などをドープしてもよく、ドーピングにより導電性を調整することも出来る。
【0039】
これらの方法によって得られる導電性材料からなる有機薄膜を各種有機半導体材料や薄膜の電界効果トランジスタ、スイッチング素子等各種デバイスの製造に有利に用いることができ、特にスイッチング素子材料として用いると、良好にスイッチング駆動する。
【0040】
本発明の有機半導体材料を用いて有機トランジスタを構成するための他の材料について以下に記載する。
【0041】
〈絶縁層〉
ゲート電極を絶縁する絶縁層には種々の絶縁材料を用いることができるが、特に、比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられる。それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの無機窒化物も好適に用いることができる。
【0042】
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などのドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、印刷やインクジェットなどのパターニングによる方法などのウェットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用できる。ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶剤あるいは水に必要に応じて界面活性剤などの分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えばアルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、いわゆるゾルゲル法が用いられる。これらのうち好ましいのは、大気圧プラズマ法とゾルゲル法である。
【0043】
上記大気圧下でのプラズマ製膜処理とは、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材上に薄膜を形成する処理を指し、その方法については特開平11−133205号、特開2000−185362号、特開平11−61406号、特開2000−147209号、同2000−121804号等に記載されている(以下、大気圧プラズマ法とも称する)。これによって高機能性の薄膜を、生産性高く形成することができる。
【0044】
また有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、およびシアノエチルプルラン、ポリマー体、エラストマー体を含むホスファゼン化合物、等を用いることもできる。
【0045】
有機化合物皮膜の形成法としては、前記ウェットプロセスが好ましい。無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することができる。またこれら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは、100nm〜1μmである。
【0046】
〈ソース、ドレイン、ゲート電極〉
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極としては、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITOおよび炭素が好ましい。あるいはドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体なども好適に用いられる。ソース電極、ドレイン電極は、上に挙げた中でも半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。
【0047】
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーションなどにより形成してもよい。さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0048】
〈支持体〉
支持体はガラス、シリコンやフレキシブルな樹脂製シートで構成され、例えばプラスチックフィルムをシートとして用いることができる。前記プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。
【0049】
本発明においては、支持体としては、プラスチックフィルムのようなフレキシブルな基板が好ましく、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに、衝撃に対する耐性を向上できる。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係わる有機半導体材料からなる有機薄膜を用いた電界効果トランジスタについて図をもって説明する。
【0051】
図1は、本発明の有機半導体材料を用いた電界効果トランジスタの概略構成例を示す。同図(a)は、支持体6上に金属箔等によりソース電極2,ドレイン電極3を形成し、両電極間に本発明の有機半導体材料からなる有機半導体層1を形成し、その上に絶縁層5を形成し、更にその上にゲート電極4を形成して電界効果トランジスタを形成したものである。同図(b)は、有機半導体層1を、(a)では電極間に形成したものを、コート法等を用いて電極および支持体表面全体を覆うように形成したものを表す。同図(c)は、支持体6上に先ずコート法等を用いて、有機半導体層1を形成し、その後電極2,3、絶縁層5、ゲート電極4を形成したものを表す。
【0052】
同図(d)は、支持体6上にゲート電極4を金属箔等で形成した後、絶縁層5を形成し、その上に金属箔等で、ソース電極2およびドレイン電極3を形成し、該電極間に本発明の有機半導体材料により形成された有機半導体層1を形成する。その他同図(e)、(f)に示すような構成を取ることもできる。
【0053】
【実施例】
以下実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0054】
実施例1
ポリ(3−n−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)のregioregular体(アルドリッチ社製)1gをクロロホルム10mlに溶解し、これをポリエーテルスルホン(PES)フィルム支持体上に、アプリケータ(厚み120μm)にて塗布し自然乾燥することでポリマー膜を形成し、これをサンプルAとした。
【0055】
前記合成スキームにしたがって合成した例示化合物7の80mgをクロロホルム3mlに溶解したデンドリマー溶液を用いてサンプルAと同様に膜を形成し、これをサンプルBとした。
【0056】
サンプルBの調製に用いたデンドリマー溶液2mlに、サンプルAの調製に用いたポリマー溶液1.5mlを加えて、直鎖共役ポリマーと共役デンドリマーの混合溶液を調製した。この混合溶液(例示化合物7が約26質量%混合されたポリ(3−n−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)の溶液)を用いてサンプルAおよびBと同様に膜を形成して、これをサンプルCとした。
【0057】
サンプルA、BおよびCをそれぞれ規定度2の塩酸水溶液に20℃で12時間浸漬して、40℃にて真空乾燥した後、それぞれのサンプルの電気伝導性を測定した結果、サンプルAを100としたサンプルBの電気伝導性の相対値は157、サンプルCでは相対値で192であり、大きく電気伝導性が向上したことが確認できた。またサンプルA、BおよびCについて、塗布方向および塗布方向に直交する方向、塗布方向と45度の角度をなす方向について電気伝導性を測定したが、いずれのサンプルにも明確な伝導異方性は観測されなかった。
【0058】
実施例2
抵抗率0.01Ω・cmのSiウェハーに厚さ2000Åの熱酸化膜を形成した後、実施例1のサンプルAを作製するのに用いたのと同じポリマーのクロロホルム溶液をアプリケーターを用いて塗布し、自然乾燥することによりキャスト膜(厚さ50nm)を形成して、窒素雰囲気下で50℃、30分間の熱処理を施した。さらに、この膜の表面にマスクを用いて金を蒸着してソースおよびドレイン電極を形成した。幅100μm、厚さ200nmのソースおよびドレイン電極は、チャネル幅W=3mm、チャネル長L=20μmの比較用有機薄膜トランジスタ素子2−1を形成した。
【0059】
有機薄膜トランジスタ素子2−1と同様の方法で、ただし実施例1のサンプルAの作製に用いた溶液に替えて、実施例1のサンプルBの作製に用いたのと同じ溶液を使用して、本発明の有機薄膜トランジスタ素子2−2を作製した。
【0060】
有機薄膜トランジスタ素子2−1と同様の方法で、ただし実施例1のサンプルAの作製に用いた溶液に替えて、実施例1のサンプルCの作製に用いたのと同じ溶液を使用して、本発明の有機薄膜トランジスタ素子2−3を作製した。
【0061】
有機薄膜トランジスタ素子2−1と同様の方法で、ただしペンタセン(アルドリッチ社製市販試薬を昇華精製して用いた)のクロロホルム溶液を用いて、比較例としての有機薄膜トランジスタ素子2−4を作製した。
【0062】
以上のようにして作製した有機薄膜トランジスタ素子のそれぞれに、ソース・ドレイン電極間に−50Vの電圧を印加し、ゲート電圧を−100Vから100Vの範囲で変化させた際の、最大電流値と最小電流値の比をとって、これを各々の有機薄膜トランジスタ素子のON/OFF比として記録した。比較例である有機薄膜トランジスタ素子2−1の示した値を100としたときの相対値によって結果を示すと以下の通りであった。
【0063】
有機薄膜トランジスタ素子 ON/OFF比 備考
2−1 100(基準) 比較例
2−2 169 本発明
2−3 191 本発明
2−4 0.09 比較例
この結果より、本発明の半導体性材料を活性層に用いて作製した有機薄膜トランジスタ素子が、優れたON/OFF特性を示すことがわかる。また、ペンタセンを用いた有機薄膜トランジスタ素子2−4の結果は、塗布による薄膜形成によっては活性層として機能するペンタセン薄膜を得がたいことを示している。
【0064】
【発明の効果】
簡単なプロセスで形成可能な有機半導体材料が得られ、該有機半導体材料を用いた電界効果トランジスタ、スイッチング素子が構成出来ることが実証できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機半導体材料を用いた電界効果トランジスタの概略構成例を示す。
【符号の説明】
1 有機半導体層
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 絶縁層
6 支持体
【発明の属する技術分野】
本発明は、簡単なプロセスで形成が可能な、有機半導体材料及び、該有機半導体材料を用いた有機トランジスタ、電界効果トランジスタおよびスイッチング素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
情報端末の普及に伴い、コンピュータ用のディスプレイとしてフラットパネルディスプレイに対するニーズが高まっている。またさらに情報化の進展に伴い、従来紙媒体で提供されていた情報が電子化されて提供される機会が増え、薄くて軽い、手軽に持ち運びが可能なモバイル用表示媒体として、電子ペーパーあるいはデジタルペーパーへのニーズも高まりつつある。
【0003】
一般に平板型のディスプレイ装置においては液晶、有機EL、電気泳動などを利用した素子を用いて表示媒体を形成している。またこうした表示媒体では画面輝度の均一性や画面書き換え速度などを確保するために、画像駆動素子としてアクティブ駆動素子(TFT素子)を用いる技術が主流になっている。例えば通常のコンピュータディスプレイではガラス基板上にこれらTFT素子を形成し、液晶、有機EL素子等が封止されている。
【0004】
ここでTFT素子には主にa−Si(アモルファスシリコン)、p−Si(ポリシリコン)などの半導体を用いることができ、これらのSi半導体(必要に応じて金属膜も)を多層化し、ソース、ドレイン、ゲート電極を基板上に順次形成していくことでTFT素子が製造される。こうしたTFT素子の製造には通常、スパッタリング、その他の真空系の製造プロセスが必要とされる。
【0005】
しかしながら、このようなTFT素子の製造では真空チャンバーを含む真空系の製造プロセスを何度も繰り返して各層を形成せざるを得ず、装置コスト、ランニングコストが非常に膨大なものとなっていた。例えばTFT素子では通常、それぞれの層の形成のために、真空蒸着、ドープ、フォトリソグラフ、現像等の工程を何度も繰り返す必要があり、何十もの工程を経て素子を基板上に形成している。スイッチング動作の要となる半導体部分に関してもp型、n型等、複数種類の半導体層を積層している。こうした従来のSi半導体による製造方法ではディスプレイ画面の大型化のニーズに対し、真空チャンバー等の製造装置の大幅な設計変更が必要とされるなど、設備の変更が容易ではない。
【0006】
また、このような従来からのSi材料を用いたTFT素子の形成には高い温度の工程が含まれるため、基板材料には工程温度に耐える材料であるという制限が加わることになる。このため実際上はガラスを用いざるを得ず、先に述べた電子ペーパーあるいはデジタルペーパーといった薄型ディスプレイを、こうした従来知られたTFT素子を利用して構成した場合、そのディスプレイは重く、柔軟性に欠け、落下の衝撃で割れる可能性のある製品となってしまう。ガラス基板上にTFT素子を形成することに起因するこれらの特徴は、情報化の進展に伴う手軽な携行用薄型ディスプレイへのニーズを満たすにあたり望ましくないものである。
【0007】
これに対して、例えば「アドバンスド・マテリアル」(Advanced Material)誌2002年第2号99〜117ページに記載されているように、近年有機半導体の研究とともに有機物をSi材料に代えてこうした回路に組み込むことも考えられている。有機半導体は比較的低い温度での真空ないし低圧蒸着が可能であると考えられるほか、その分子構造を適切に改良することによって、溶液化できる半導体を得る可能性があると考えられ、有機半導体溶液をインク化することによりインクジェット方式を含む印刷法による製造も考えられる。これらの低温プロセスによる製造は、従来のSi系半導体材料については不可能と考えられてきたが、有機半導体を用いたTFT素子にはその可能性があり、したがって前述の基板耐熱性に関する制限が緩和され、透明樹脂基板上にもTFT素子を形成できる可能性がある。透明樹脂基板上にTFT素子を形成し、そのTFT素子により表示材料を駆動させることができれば、ディスプレイを従来のものよりも軽く、柔軟性に富み、落としても割れない(もしくは非常に割れにくい)ディスプレイとすることができるであろう。
【0008】
しかしながら、有機半導体は電荷担体(キャリア)移動度が充分でなく、又、導電性に異方性を示すものが多く、基板上に有機分子を配向させる必要があったり、又、材料の配向連続性が確保されないと不連続な部分において電荷輸送に大きな障壁が生じるため電荷輸送性が大きく阻害される。従って、配向や材料としての均一性を保つために特殊な配向技術や、真空系の製造プロセスを繰り返すなど製造プロセス上の問題は依然解消されていない。製造プロセス上の問題点を解消するべく、近年ポリチオフェンやポリ−p−チエニレンビニレンといったポリマー材料を活性層に用いた有機トランジスタ素子も研究されているが、電荷移動度は低分子化合物の蒸着膜を用いた有機トランジスタに比べて低いレベルにとどまっている。これは比較的高い効率で電荷移動を行うことができる分子内の電荷移動過程に対して、分子間電荷移動過程が非効率なために移動度が低くなっているものと考えられ、ポリマー単独で構成された材料によって分子間電荷移動過程を効率化しようとする場合、やはりポリマーを任意の方向に配向させるといった工程を付加しなければならず、したがって製造プロセスの複雑化を避けることができない。
【0009】
これまでに電荷輸送性ポリマーに対して、その電荷移動度を向上させる試みは種々試みられてきたが、その多くは特開平9−120709号や特開2001−240742号に開示されているような、ポリマー内部に電荷担体(キャリア)を発生させるためのいわゆるドーピングの方法や、ドーピングに用いる化学物質(ドーパント)の種類に関する検討であった。また特開平10−120782号には導電性ポリマーに枝分れ構造を導入することによる電荷移動性の向上が提案されているが、ここで開示されている内容もドーピングによって内部にキャリアを発生するタイプのポリマーであり、これらは電解コンデンサや電池の電解質として用いるのが一般的であって、これらの材料を有機半導体として能動素子、例えばトランジスタに用いた場合、ソース電極とドレイン電極の間の電圧によって容易に電流が流れることとなり、ゲート電界による制御が効き難くなってしまう。すなわち枝分れ構造をもつ導電性ポリマーは、能動素子の構成に利用できる有機半導体として検討されてこなかった。
【0010】
一方、新たな大規模構造をもつ有機分子として、樹枝状の超分岐構造をもつデンドリマーの物性に関心が高まっている。中心構造(コア)から末端部分(大規模構造の表面部分)に至るまで合成化学的制御が可能であり、分子設計と機能設計が結びついた材料として各種の応用が検討されており、例えば、農業用薬剤の放出制御についての応用(特許文献1参照)が、液晶組成物への応用(特許文献2参照)が開示されているし、硬化性組成物への応用(特許文献3参照)が開示、電子写真用帯電付与部材への応用(特許文献4参照)が開示されているが、しかしながら未だこれら一群の化合物について、電気的能動素子に用いた例の充分な開示は行われてこなかった。
【0011】
【特許文献1】
特開平6−220190号公報
【0012】
【特許文献2】
特開平9−243984号公報
【0013】
【特許文献3】
特開平11−193318号公報
【0014】
【特許文献4】
特開2000−66482号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、特殊な配向技術を要せず、簡単な方法でキャリア移動度が高い有機電荷輸送性材料薄膜を得るための多重に分岐した有機半導体材料を提供することにあり、該有機電荷輸送性材料を用いて製造の容易な有機トランジスタ、スイッチング素子又これを用いたディスプレイパネル、とくにフレキシブルな基板を用いたディスプレイパネルを提供することにある。また別な目的は、共役結合により分岐したデンドリマーを用いた有機電荷輸送性材料を用いた、移動度の高い有機トランジスタを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下の手段により達成された。
【0017】
(1)主鎖と側鎖の間の結合が共役した分岐型共役高分子を含んでなることを特徴とする有機半導体材料。
【0018】
(2)直鎖状共役高分子の末端に、主鎖と側鎖の間の結合が共役した分岐部分が連結した構造である共役高分子を含んでなることを特徴とする(1)に記載の有機半導体材料。
【0019】
(3)分岐元の分子鎖と分岐した分子鎖の間の結合が共役した構造を含む、分岐がさらに分岐する多重分岐構造の高分子を含んでなることを特徴とする(1)または(2)に記載の有機半導体材料。
【0020】
(4)分岐元の分子鎖と分岐した分子鎖の間の結合が共役した構造を有するデンドリマーを含んでなることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
【0021】
(5)高分子の繰り返し単位構造がアリーレンビニレン型であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
【0022】
(6)高分子の繰り返し単位構造が、置換または無置換のp−フェニレンビニレンもしくは2,5−チエニレンビニレンであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
【0023】
(7)前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の有機半導体材料を含んでなることを特徴とする有機トランジスタ。
【0024】
(8)電荷輸送性材料と、該電荷輸送性材料に直接或いは間接に接するゲート電極から構成され、該ゲート電極及び電荷輸送性材料間に電界を印加することで、電荷輸送性材料中の電流を制御する電界効果トランジスタにおいて、該電荷輸送性材料が(1)〜(6)のいずれか1項に記載の有機半導体材料であることを特徴とする電界効果トランジスタ。
【0025】
(9)前記(7)に記載の有機トランジスタを用いたことを特徴とするスイッチング素子。
【0026】
(10)前記(8)に記載の電界効果トランジスタを用いたことを特徴とするスイッチング素子。
【0027】
以下、本発明に係る有機半導体材料の具体的挙動、その材料を用いた独自の有機トランジスタ、又、スイッチング素子等について説明する。
【0028】
本発明に係る有機半導体材料は、結合が共役した高分子の主鎖と側鎖の間にも結合の共役が存在し、これによりキャリアの移動が主鎖から側鎖もしくは側鎖から主鎖にも起こるように設計された共役高分子を含んでなる材料である。キャリア移動機構の詳細はつまびらかでないが、分岐した構造を有することにより、該共役高分子は他の分子鎖と接触しやすくなっており、そのため分子中に導入されたキャリアが他の分子鎖に移動する確率が直鎖高分子のみからなる材料に対して高くなった結果、キャリアの移動度が増大しているものと考えられる。
【0029】
高分子主鎖は単一の繰り返し単位からなる構造であっても、複数種類の繰り返し単位からなる構造であってもよいし、それぞれに異なる繰り返し単位からなる分子鎖が連結した、いわゆるブロックコポリマーであってもよい。主鎖と側鎖の分岐は全ての繰り返し単位において存在してもよいが、特定の繰り返し単位において存在するものであってもよい。分岐せずに主鎖を構成する繰り返し単位として用いられる2価の連結基の例には、p−フェニレン基、チオフェン−2,5−ジイル基、ピロール−2,5−ジイル基、ビニレン基、アセチレン−ジイル基が挙げられるほか、シリル基が形成する結合はσ結合ながら共役性を有することが知られており、このようなσ共役性の連結基を用いることも可能である。これらの連結基は置換基を有していてもよいし、無置換であってもよいが、とくにπ共役高分子においてはアルキル置換基を有していることが溶解性の点から好ましく、とくに好ましくは鎖状共役高分子において炭素数6〜12の直鎖アルキル基、デンドリマーにおいては炭素数4までの直鎖アルキル基である。また、結合の共役を保ったまま分岐することができる繰り返し単位の例としては、これらの連結基に対して結合の共役を連続したまま置換基を導入できる1,2,4−ベンゼン−トリイル基や、エテン−トリイル基、シラン−トリイル基などが挙げられるほか、ホウ素原子を主鎖に導入することによっても、結合の共役を保ったまま分岐構造を組み込むことができる。
【0030】
これと同様に、本発明の有機半導体材料がコア部と周縁部とに結合共役が連続したデンドリマーである場合にも、先に挙げたものと同様の繰り返し単位を例示することができる。デンドリマーはコアから周縁部に向かって超分岐と呼ばれる多重の分岐構造をとるが、コア部から数えて何回目の分岐か(何「世代」目にあたるか)によらず分岐部位の構造が同じであっても、あるいは分岐の「世代」ごとに異なっていてもよい。共役デンドリマーにおいて用いることができる繰り返し単位構造および分岐部位構造の例は、先に挙げたものと同様である。
【0031】
本発明に係る有機半導体材料は、上記に示したような結合が共役した分岐高分子を含有していることを特徴とするものであり、上記の分岐高分子単独であっても複数種類含まれた混合物であってもよいし、結合が共役していない側鎖をもつ、もしくは側鎖をもたない直鎖状共役高分子との混合物であってもよい。直鎖状共役高分子の例としてはポリチオフェン、ポリ−p−フェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアニリン、ポリシランなどを挙げることができる。直鎖状共役高分子と混合される場合、上記の分岐高分子の含量に格別の制限はないが、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10〜55質量%の範囲である。また、本発明に係る分岐共役高分子の分子量としては1000以上10万未満が好ましい。
【0032】
以下に本発明に係る分岐共役高分子の例を挙げるが、本発明の態様がこの化合物例によって制限されるものではない。なお以下の化合物例に記された「m」は重合度である。
【0033】
【化1】
【0034】
【化2】
【0035】
【化3】
【0036】
本発明に係る有機半導体材料を構成する分岐高分子は、ザ・ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(The Journal of Organic Chemistry)第46巻851〜855ページ(1981年)、同誌第61巻5103〜5108ページ(1996年)や同誌第64巻8563〜8567ページ(1999年)、ザ・ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイエティ・ケミカル・コミュニケーション(The Journal of Chemical Society Chemical Communication)1988年215〜217ページ、カナディアン・ジャーナル・オブ・ケミストリー(Canadian Journal of Chemistry)第76巻1524〜1529ページ(1998年)に記載の内容、および鈴木カップリングとして知られる芳香族ハライドとジボロン酸誘導体とのクロスカップリング反応や、Stilleカップリングとして知られる芳香族ハライドと有機スズ化合物とのクロスカップリング反応など、既知の化学反応を用いることで合成が可能であるほか、電解重合法を用いることも可能である。反応を連続的に行うこともできるが、とくにデンドリマーを合成するにあたっては、構造制御の観点から各分岐世代ごとに、段階的に反応を行うことが好ましい。例えば本発明の化合物7は、以下のような経路によって合成することが可能である。また、化合物7は第2世代デンドリマーであるが、同様の手法により第3世代以降のデンドリマーを合成することも可能である。
【0037】
【化4】
【0038】
本発明に係わる有機半導体材料は、溶媒として例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルエチルケトン、クロロホルム、塩化メチレン、N−メチルピロリドン等の溶剤に溶解して塗布することもできるし、さらに適切な添加剤を加えた水性もしくは油性インクを調製してスクリーン印刷、インクジェット法などにより印刷を行うこともできる。さらには該有機半導体材料を塗布した基板と適切な光熱変換材料を用いて、アブレーション法により電気素子を形成したい基板に転写を行ってもよい。また、本発明に係わる有機半導体材料には、ルイス酸(塩化鉄、塩化アルミニウム、臭化アンチモン等)やハロゲン(ヨウ素や臭素など)、スルホン酸塩(ポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩(PSS)、p−トルエンスルホン酸カリウム等)などをドープしてもよく、ドーピングにより導電性を調整することも出来る。
【0039】
これらの方法によって得られる導電性材料からなる有機薄膜を各種有機半導体材料や薄膜の電界効果トランジスタ、スイッチング素子等各種デバイスの製造に有利に用いることができ、特にスイッチング素子材料として用いると、良好にスイッチング駆動する。
【0040】
本発明の有機半導体材料を用いて有機トランジスタを構成するための他の材料について以下に記載する。
【0041】
〈絶縁層〉
ゲート電極を絶縁する絶縁層には種々の絶縁材料を用いることができるが、特に、比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられる。それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの無機窒化物も好適に用いることができる。
【0042】
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などのドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、印刷やインクジェットなどのパターニングによる方法などのウェットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用できる。ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶剤あるいは水に必要に応じて界面活性剤などの分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えばアルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、いわゆるゾルゲル法が用いられる。これらのうち好ましいのは、大気圧プラズマ法とゾルゲル法である。
【0043】
上記大気圧下でのプラズマ製膜処理とは、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材上に薄膜を形成する処理を指し、その方法については特開平11−133205号、特開2000−185362号、特開平11−61406号、特開2000−147209号、同2000−121804号等に記載されている(以下、大気圧プラズマ法とも称する)。これによって高機能性の薄膜を、生産性高く形成することができる。
【0044】
また有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、およびシアノエチルプルラン、ポリマー体、エラストマー体を含むホスファゼン化合物、等を用いることもできる。
【0045】
有機化合物皮膜の形成法としては、前記ウェットプロセスが好ましい。無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することができる。またこれら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは、100nm〜1μmである。
【0046】
〈ソース、ドレイン、ゲート電極〉
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極としては、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITOおよび炭素が好ましい。あるいはドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体なども好適に用いられる。ソース電極、ドレイン電極は、上に挙げた中でも半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。
【0047】
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーションなどにより形成してもよい。さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0048】
〈支持体〉
支持体はガラス、シリコンやフレキシブルな樹脂製シートで構成され、例えばプラスチックフィルムをシートとして用いることができる。前記プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。
【0049】
本発明においては、支持体としては、プラスチックフィルムのようなフレキシブルな基板が好ましく、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに、衝撃に対する耐性を向上できる。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係わる有機半導体材料からなる有機薄膜を用いた電界効果トランジスタについて図をもって説明する。
【0051】
図1は、本発明の有機半導体材料を用いた電界効果トランジスタの概略構成例を示す。同図(a)は、支持体6上に金属箔等によりソース電極2,ドレイン電極3を形成し、両電極間に本発明の有機半導体材料からなる有機半導体層1を形成し、その上に絶縁層5を形成し、更にその上にゲート電極4を形成して電界効果トランジスタを形成したものである。同図(b)は、有機半導体層1を、(a)では電極間に形成したものを、コート法等を用いて電極および支持体表面全体を覆うように形成したものを表す。同図(c)は、支持体6上に先ずコート法等を用いて、有機半導体層1を形成し、その後電極2,3、絶縁層5、ゲート電極4を形成したものを表す。
【0052】
同図(d)は、支持体6上にゲート電極4を金属箔等で形成した後、絶縁層5を形成し、その上に金属箔等で、ソース電極2およびドレイン電極3を形成し、該電極間に本発明の有機半導体材料により形成された有機半導体層1を形成する。その他同図(e)、(f)に示すような構成を取ることもできる。
【0053】
【実施例】
以下実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0054】
実施例1
ポリ(3−n−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)のregioregular体(アルドリッチ社製)1gをクロロホルム10mlに溶解し、これをポリエーテルスルホン(PES)フィルム支持体上に、アプリケータ(厚み120μm)にて塗布し自然乾燥することでポリマー膜を形成し、これをサンプルAとした。
【0055】
前記合成スキームにしたがって合成した例示化合物7の80mgをクロロホルム3mlに溶解したデンドリマー溶液を用いてサンプルAと同様に膜を形成し、これをサンプルBとした。
【0056】
サンプルBの調製に用いたデンドリマー溶液2mlに、サンプルAの調製に用いたポリマー溶液1.5mlを加えて、直鎖共役ポリマーと共役デンドリマーの混合溶液を調製した。この混合溶液(例示化合物7が約26質量%混合されたポリ(3−n−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)の溶液)を用いてサンプルAおよびBと同様に膜を形成して、これをサンプルCとした。
【0057】
サンプルA、BおよびCをそれぞれ規定度2の塩酸水溶液に20℃で12時間浸漬して、40℃にて真空乾燥した後、それぞれのサンプルの電気伝導性を測定した結果、サンプルAを100としたサンプルBの電気伝導性の相対値は157、サンプルCでは相対値で192であり、大きく電気伝導性が向上したことが確認できた。またサンプルA、BおよびCについて、塗布方向および塗布方向に直交する方向、塗布方向と45度の角度をなす方向について電気伝導性を測定したが、いずれのサンプルにも明確な伝導異方性は観測されなかった。
【0058】
実施例2
抵抗率0.01Ω・cmのSiウェハーに厚さ2000Åの熱酸化膜を形成した後、実施例1のサンプルAを作製するのに用いたのと同じポリマーのクロロホルム溶液をアプリケーターを用いて塗布し、自然乾燥することによりキャスト膜(厚さ50nm)を形成して、窒素雰囲気下で50℃、30分間の熱処理を施した。さらに、この膜の表面にマスクを用いて金を蒸着してソースおよびドレイン電極を形成した。幅100μm、厚さ200nmのソースおよびドレイン電極は、チャネル幅W=3mm、チャネル長L=20μmの比較用有機薄膜トランジスタ素子2−1を形成した。
【0059】
有機薄膜トランジスタ素子2−1と同様の方法で、ただし実施例1のサンプルAの作製に用いた溶液に替えて、実施例1のサンプルBの作製に用いたのと同じ溶液を使用して、本発明の有機薄膜トランジスタ素子2−2を作製した。
【0060】
有機薄膜トランジスタ素子2−1と同様の方法で、ただし実施例1のサンプルAの作製に用いた溶液に替えて、実施例1のサンプルCの作製に用いたのと同じ溶液を使用して、本発明の有機薄膜トランジスタ素子2−3を作製した。
【0061】
有機薄膜トランジスタ素子2−1と同様の方法で、ただしペンタセン(アルドリッチ社製市販試薬を昇華精製して用いた)のクロロホルム溶液を用いて、比較例としての有機薄膜トランジスタ素子2−4を作製した。
【0062】
以上のようにして作製した有機薄膜トランジスタ素子のそれぞれに、ソース・ドレイン電極間に−50Vの電圧を印加し、ゲート電圧を−100Vから100Vの範囲で変化させた際の、最大電流値と最小電流値の比をとって、これを各々の有機薄膜トランジスタ素子のON/OFF比として記録した。比較例である有機薄膜トランジスタ素子2−1の示した値を100としたときの相対値によって結果を示すと以下の通りであった。
【0063】
有機薄膜トランジスタ素子 ON/OFF比 備考
2−1 100(基準) 比較例
2−2 169 本発明
2−3 191 本発明
2−4 0.09 比較例
この結果より、本発明の半導体性材料を活性層に用いて作製した有機薄膜トランジスタ素子が、優れたON/OFF特性を示すことがわかる。また、ペンタセンを用いた有機薄膜トランジスタ素子2−4の結果は、塗布による薄膜形成によっては活性層として機能するペンタセン薄膜を得がたいことを示している。
【0064】
【発明の効果】
簡単なプロセスで形成可能な有機半導体材料が得られ、該有機半導体材料を用いた電界効果トランジスタ、スイッチング素子が構成出来ることが実証できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機半導体材料を用いた電界効果トランジスタの概略構成例を示す。
【符号の説明】
1 有機半導体層
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 絶縁層
6 支持体
Claims (10)
- 主鎖と側鎖の間の結合が共役した分岐型共役高分子を含んでなることを特徴とする有機半導体材料。
- 直鎖状共役高分子の末端に、主鎖と側鎖の間の結合が共役した分岐部分が連結した構造である共役高分子を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体材料。
- 分岐元の分子鎖と分岐した分子鎖の間の結合が共役した構造を含む、分岐がさらに分岐する多重分岐構造の高分子を含んでなることを特徴とする請求項1または2に記載の有機半導体材料。
- 分岐元の分子鎖と分岐した分子鎖の間の結合が共役した構造を有するデンドリマーを含んでなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
- 高分子の繰り返し単位構造がアリーレンビニレン型であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
- 高分子の繰り返し単位構造が、置換または無置換のp−フェニレンビニレンもしくは2,5−チエニレンビニレンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機半導体材料を含んでなることを特徴とする有機トランジスタ。
- 電荷輸送性材料と、該電荷輸送性材料に直接或いは間接に接するゲート電極から構成され、該ゲート電極及び電荷輸送性材料間に電界を印加することで、電荷輸送性材料中の電流を制御する電界効果トランジスタにおいて、該電荷輸送性材料が請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機半導体材料であることを特徴とする電界効果トランジスタ。
- 請求項7に記載の有機トランジスタを用いたことを特徴とするスイッチング素子。
- 請求項8に記載の電界効果トランジスタを用いたことを特徴とするスイッチング素子。
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