JP2004143961A - 車両用エンジン冷却システム - Google Patents
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Abstract
【課題】エンジン冷却用のラジエータを用いてオイルクーラを冷却する冷却システムが知られているが、低温始動時であってもオイルクーラを通過した冷却水がエンジンに供給される構成になっており、エンジンの暖機が遅れてしまう。
【解決手段】エンジン1の低温始動時に冷凍サイクル11を作動させ、コンプレッサ12から圧送された高温高圧の冷媒と、エンジン1に循環供給される冷却水とをコンデンサ5において熱交換させ、エンジン1に供給される冷却水の温度を急速に上昇させることにより、従来ではコンデンサから大気中に捨てられていた熱を有効に利用してエンジン1を早期暖機できる。また、コンデンサ5では温度が低くて潜熱の大きい冷却水と冷媒とが熱交換されるため、コンデンサ5の冷媒凝縮能力が高められ、早期冷房、早期除湿が可能になる。
【選択図】 図1
【解決手段】エンジン1の低温始動時に冷凍サイクル11を作動させ、コンプレッサ12から圧送された高温高圧の冷媒と、エンジン1に循環供給される冷却水とをコンデンサ5において熱交換させ、エンジン1に供給される冷却水の温度を急速に上昇させることにより、従来ではコンデンサから大気中に捨てられていた熱を有効に利用してエンジン1を早期暖機できる。また、コンデンサ5では温度が低くて潜熱の大きい冷却水と冷媒とが熱交換されるため、コンデンサ5の冷媒凝縮能力が高められ、早期冷房、早期除湿が可能になる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却水(例えば、クーラント等の液体の冷却用熱媒体を冷却水と称す)をエンジンに循環供給してエンジンの温度上昇を防ぐ車両用エンジン冷却システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンを冷却するラジエータを用いてオイルクーラ(発熱補機)を冷却する冷却システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭61−89917号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に開示される発明は、トルクコンバータのオイルとエンジン冷却用の冷却水とを熱交換するオイルクーラを搭載しており、エンジンの低温始動時であってもオイルクーラを通過した冷却水がエンジンに供給される構成になっている。即ち、エンジンの低温始動時で冷却水の温度が所定温度以下の時は、サーモスタットが閉じてエンジンから出た冷却水がラジエータのバイパス通路を通るが、そのバイパス通路を通った熱媒体はオイルクーラを通って再びエンジンに供給される。
このような構成では、エンジンに供給される冷却水の熱がオイルクーラに吸収されてしまうため、エンジンの暖機が遅れてしまう問題が生じる。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エンジンの早期暖機が可能な車両用エンジン冷却システムの提供にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
〔請求項1の手段〕
請求項1の手段を採用する車両用エンジン冷却システムは、車両に搭載された冷凍サイクルのコンデンサにおいてエンジンに循環供給される冷却水とコンプレッサから圧送された冷媒とを熱交換可能に設けられている。
このため、エンジンの低温始動時に冷凍サイクルを作動させ、コンプレッサで圧送された高温高圧の冷媒と、エンジンに循環供給される冷却水とを熱交換させることにより、エンジンに供給される冷却水の温度を急速に上昇させることができる。すると、温度上昇した冷却水によってエンジンが温められるため、エンジン低温始動時の暖機が早められる。
【0007】
ここで、従来のコンデンサは、コンプレッサから圧送された冷媒と外気とを熱交換するように設けられていたため、コンデンサからは大量の熱(例えば、60℃近い熱)が大気中に捨てられていた。しかるに、この請求項1の発明では、コンプレッサから圧送された冷媒の熱は、上述したようにエンジンの暖機に使用される。つまり、請求項1の発明では、従来では大気中に捨てられていた熱を利用してエンジンを早期暖機できる。
【0008】
一方、コンデンサの熱を利用してエンジンの早期暖機を行う場合は、温度が低くて潜熱の大きい冷却水と冷媒とがコンデンサにおいて熱交換される。つまり、請求項1の発明では、エンジンの始動直後で、車室内を急速冷房あるいは急速除湿する要求がある時に、コンデンサの冷媒凝縮能力が高められるため、車室内の早期冷房、早期除湿が可能になる。
【0009】
〔請求項2の手段〕
請求項2の手段を採用する車両用エンジン冷却システムは、コンデンサをバイパスして冷却水を流すコンデンサバイパスと、コンデンサに流れる冷却水量とコンデンサバイパスを流れる冷却水量の割合を調整するコンデンサ水量調整バルブと、車両の運転状態に基づいてコンデンサ水量調整バルブを制御する制御装置とを備える。
このため、コンデンサに冷却水を流すことによって増加してしまう流路圧損を、車両の運転状態に応じて低減することが可能になる。
【0010】
〔請求項3の手段〕
請求項3の手段を採用する車両用エンジン冷却システムは、冷却水と外気とを熱交換するラジエータ、コンデンサ、エンジンに冷却水を循環供給する統合冷却系回路の他に、車室内に吹き出される空気と冷却水とを熱交換するヒータコア、エンジンに冷却水を循環供給する暖機系回路を備える。
この暖機系回路によってヒータコアを流れる冷却水の熱量確保が容易になり、ヒータコアによる暖房性能を高めることが可能になる。
【0011】
〔請求項4の手段〕
請求項4の手段を採用する車両用エンジン冷却システムの統合冷却系回路は、エンジンに流入する冷却水とエンジンをバイパスする冷却水の割合を調整する冷却系水量調整バルブと、車両の運転状態に基づいて冷却系水量調整バルブを制御する制御装置とを備える。
このため、統合冷却系回路からエンジンへ流入する冷却水の供給量を、車両の運転状態に応じて変更することができる。つまり、車両の運転状態に応じて冷却水によるエンジンの冷却能力を変えることが可能になる。
【0012】
〔請求項5の手段〕
請求項5の手段を採用する車両用エンジン冷却システムの統合冷却系回路を流れる冷却水は、作動によって熱を出す発熱補機を冷却可能に設けられる。
ここで、従来では各種の発熱補機(例えば、ハイブリッド車に搭載されるインバータ、電動モータ、バッテリ、吸着器、インタークーラ等)から放出される不要な熱は、大気中に捨てていた。
しかるに、この請求項5の発明を採用することにより、発熱補機の熱が冷却水に与えられるため、その熱をヒータコアで放熱させることが可能になる。つまり、例えばエンジン効率の向上等によってエンジンから放出される熱量が低下しても、発熱補機の放出した熱をヒータコアで放出でき、暖房能力を高めることが可能になる。
【0013】
〔請求項6の手段〕
請求項6の手段を採用する車両用エンジン冷却システムの暖機系回路は、暖機系回路に再流入する冷却水と統合冷却系回路に流入する冷却水の割合を調整する暖機系水量調整バルブと、車両の運転状態に基づいて暖機系水量調整バルブを制御する制御装置とを備える。
このため、ヒータコアを通過した冷却水をエンジンに戻す量を変更することが可能になる。この結果、車両の運転状態に応じてヒータコアで放熱される熱量(暖房能力)を高めることが可能になる。
【0014】
〔請求項7の手段〕
請求項7の手段を採用する車両用エンジン冷却システムの暖機系回路を流れる冷却水は、加熱手段によって加熱可能に設けられる。
この結果、暖機系回路を流れる冷却水の温度を急速に高めることが可能になり、始動直後におけるエンジンの早期暖機、およびヒータコアによる早期暖房が可能になる。また、例えばエンジン効率の向上等によってエンジンから放出される熱量が低下しても、暖房能力を高めて暖房不足を防止できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、2つの実施例を用いて説明する。
[第1実施例の構成]
第1実施例を図1〜図8を参照して説明する。まず、車両用エンジン冷却システムの構成を図1を参照して説明する。
【0016】
この実施例の車両用エンジン冷却システムは、エンジン1の熱を大気中に放出する統合冷却系回路2と、エンジン1の熱を車室内に放出する暖機系回路3とを備える。なお、統合冷却系回路2および暖機系回路3を流れる冷却水として、この実施例では高密度輸送冷媒を用いている。高密度輸送冷媒とは、クーラント(LLC)に、潜熱蓄熱材のスリラーや潜熱蓄熱材のマイクロカプセルを混入した流体であり、ナノフルード、イオン性液体、ミセル等の高密度輸送冷媒を用いても良い。
【0017】
統合冷却系回路2の基本構成は、エンジン1、ラジエータ4、コンデンサ5に冷却水を循環供給するものであり、暖機系回路3の基本構成は、エンジン1、ヒータコア6に冷却水を循環供給するものである。
【0018】
(統合冷却系回路2の説明)
エンジン1は、燃料の燃焼(爆発)によって車両走行のための動力を得る周知なものであり、エンジン1内に形成されたウォータジャケットを流れる冷却水によって所定の温度範囲内に保たれるようになっている。また、エンジン1は、エンジン1の発生する動力によって駆動されるウォータポンプ(図示しない)を搭載しており、このウォータポンプの作動によって冷却水を循環駆動している。一方、統合冷却系回路2には、電動ポンプ2aが搭載されており、統合冷却系回路2の冷却水を循環駆動するように設けられている。
【0019】
ラジエータ4は、車両走行風(外気)と冷却水を熱交換する周知なものであり、車両走行風の当たりやすい部位(例えば、車両前部のグリル内)に取り付けられている。統合冷却系回路2には、ラジエータ4をバイパスして冷却水を流すラジエータバイパス8が設けられており、その分岐部分には、冷却水の温度が所定温度より低い場合に冷却水をラジエータバイパス8に流し、冷却水の温度が所定温度より高い場合に冷却水をラジエータ4に流す周知のサーモスタット9が設けられている。
【0020】
コンデンサ5は、車両用冷凍サイクル11の構成部品であり、冷凍サイクル11はコンデンサ5の他に、コンプレッサ12、減圧装置13、エバポレータ14を備える。コンデンサ5は、コンプレッサ12で圧縮された高温の冷媒と、統合冷却系回路2を流れる冷却水とを熱交換する水−冷媒熱交換器である。
【0021】
ここで、冷凍サイクル11の作動を簡単に説明する。エンジン1によってコンプレッサ12が駆動されると、コンプレッサ12が冷媒の吸入・圧縮・吐出を行う。圧縮された冷媒はコンデンサ5で冷却水と熱交換されて液化凝縮する。液化した冷媒は、減圧装置13で断熱膨張され、低温の霧状冷媒となる。低温の霧状冷媒は、エアコンダクトにおけるクーラケース(図示しない)内に設置されたエバポレータ14内で車室内に吹き出される空気から蒸発潜熱を奪って蒸発する。この結果、エバポレータ14を通過する空気は、エバポレータ14内を流れる冷媒が蒸発する際に蒸発潜熱を奪われて冷却される。そして、エバポレータ14で冷却された空気はヒータコア6あるいはヒータコア6のバイパス通路(図示しない)を通って車室内に吹き出される。また、エバポレータ14で蒸発したガス冷媒は、コンプレッサ12に再吸入されて、上記のサイクルを繰り返す。
【0022】
統合冷却系回路2には、コンデンサ5をバイパスして冷却水を流すコンデンサバイパス15が設けられており、その分岐部分には、冷却水をコンデンサ5あるいはコンデンサバイパス15に流すコンデンサバイパスバルブ16(コンデンサ水量調整バルブの一例)が設けられている。このコンデンサバイパスバルブ16は、制御装置(図示しない)によって切替制御される。
なお、制御装置によるコンデンサバイパスバルブ16の制御は、冷凍サイクル11の作動停止時に冷却水をコンデンサバイパス15に流し、冷凍サイクル11の作動時に冷却水をコンデンサ5に流すものであるが、冷凍サイクル11の作動時であっても、統合冷却系回路2を流れる冷却水量を増やしたい運転状態の時は、コンデンサバイパス15に冷却水の一部あるいは全部を流して、統合冷却系回路2の流路圧損を低減するように設けられている。
【0023】
統合冷却系回路2の基本構成は、上述したように、エンジン1→ラジエータ4→コンデンサ5に冷却水を循環供給するものであるが、この実施例のように、統合冷却系回路2を流れる冷却水によって、作動により熱を出す発熱補機(例えば、ハイブリッド車両に搭載されるインバータ、電動モータ、バッテリ等の電気系冷却器17、吸着器18等)を冷却するように設けられている。
このように設けることにより、電気系冷却器17、吸着器18等から放出される不要な熱を無駄に大気中に捨てるのではなく、暖機系回路3のヒータコア6から放熱させて暖房に使うことが可能になる。この結果、例えばエンジン効率の向上等によってエンジン1から放出される熱量が低下しても、暖房能力の低下を防ぐことができる。
なお、図1中に示す符号19は、サクション冷却手段であり、エバポレータ14を通過した冷媒の冷熱によって電気系冷却器17に供給される冷却水を冷却するとともに、コンプレッサ12に吸引されるガス冷媒を加熱して、コンプレッサ12に吸引される冷媒を確実にガス化するものである。
【0024】
(暖機系回路3の説明)
暖機系回路3に配置されるヒータコア6は、エアコンダクトにおけるヒータケース20内に設置されて、車室内に吹き出される空気を冷却水(温水)の熱によって加熱するものである。
本実施例の暖機系回路3には、暖機系回路3を流れる冷却水を加熱する加熱手段(排気熱回収器21、超小型燃焼式ヒータ22、蓄熱器23等)が配置されている。また、暖機系回路3には、電動ポンプ3aが搭載されており、暖機系回路3の冷却水を循環駆動するように設けられている。
このように設けられることにより、暖機系回路3を流れる冷却水の温度を素早く高めることが可能になり、ヒータコア6による早期暖房が可能になるとともに、始動直後におけるエンジン1の早期暖機が可能になる。また、例えばエンジン効率の向上等によってエンジン1から放出される熱量が低下しても、暖房能力を高めて暖房不足を防ぐことができる。
【0025】
本実施例の暖機系回路3には、ヒータコア6を通過した冷却水を統合冷却系回路2に導く蓄熱器バイパス24が設けられており、その分岐部分には、冷却水を蓄熱器23あるいは蓄熱器バイパス24に流す蓄熱器バイパスバルブ25が設けられている。この蓄熱器バイパスバルブ25は、制御装置によって切替制御される。
なお、制御装置による蓄熱器バイパスバルブ25の制御は、ラジエータ4での放熱量を増やしたい運転状態の時(例えば、登坂走行等の高負荷走行時や、通常走行時でも夏期等でラジエータ4の放熱能力が低下している時等)に、蓄熱器バイパス24に冷却水を流して暖機系回路3の流路圧損を低減してラジエータ4の放熱量を増加させるように設けられている。
【0026】
また、本実施例の暖機系回路3には、蓄熱器23を通過した冷却水を暖機系回路3の上流に再び戻すエコラン暖房バイパス26が設けられており、その分岐部分には、冷却水を電動制御弁30(後述する)あるいはエコラン暖房バイパス26に流すエコラン暖房バイパスバルブ27が設けられている。このエコラン暖房バイパスバルブ27は、制御装置によって切替制御される。
なお、制御装置によるエコラン暖房バイパスバルブ27の制御は、エンジン1の始動直後あるいはエンジン1の発熱が少なく、且つ上述した排気熱回収器21、超小型燃焼式ヒータ22、蓄熱器23によってヒータコア6の暖房能力を確保している時に、エコラン暖房バイパス26に冷却水を流して、冷えたエンジン1に冷却水の熱が奪われるのを防ぐように設けられている。
【0027】
次に、図2〜図8を参照して制御弁30について説明する。
制御弁30は、冷却系水量調整バルブ31と暖機系水量調整バルブ32とから構成される。
【0028】
(冷却系水量調整バルブ31の説明)
冷却系水量調整バルブ31は、図2に示されるように、吸着器18を通過した冷却水(図2中、矢印A参照)を、エンジン1をバイパスしてラジエータ4側へ戻す割合(図2中、矢印a参照)と、エンジン1ヘ流入させる割合(図2中、矢印b参照)とを調整するバルブである。
【0029】
冷却系水量調整バルブ31の具体的な構造は、図3に示されるように、冷却系水路切替スプール33と、この冷却系水路切替スプール33を作動させる冷却系リニアソレノイド34とから構成される。
そして、冷却系リニアソレノイド34によって冷却系水路切替スプール33をストロークさせることにより、図4(a)に示すように、エンジン1をバイパスする冷却水(図4中、破線a参照)と、エンジン1に流入する冷却水(図4中、実線b参照)との流量割合(a:b)を調整する。
【0030】
冷却系水量調整バルブ31は、制御装置によって制御される。制御装置は、運転状態に応じて冷却系水量調整バルブ31を制御するものであり、エンジン1に流入する冷却水(図2中、矢印b参照)の流量割合を100%とした場合、図5の実線bに示すように冷却系水量調整バルブ31を制御する。即ち、低温始動時、登坂時(エンジン高負荷時)は、エンジン1に流入する冷却水(図2中、矢印b参照)の流量割合を100%に制御し、定常運転時は、エンジン1の発熱状態および発熱補機(電気系冷却器17、吸着器18等)の発熱状態に応じてエンジン1に流入する冷却水(図2中、矢印b参照)の流量割合を可変制御する。なお、この実施例では、エンジン1に流入する冷却水(図2中、矢印b参照)の流量割合を段階的に変える例を示すが、連続的に可変するようにしても良い。
【0031】
(低温始動時における冷却系水量調整バルブ31の説明)
低温始動時は、図5、図6に示すように、エンジン1に流入する冷却水(図2中、矢印b参照)の流量割合が100%に制御されるとともに、冷凍サイクル11が作動するようになっている。なお、低温始動時であっても、エアコンスイッチ(図示しない)がONされている時だけに上記制御を実施するようにしても良い。
【0032】
低温始動時では、コンデンサ5に流入する冷却水の温度は外気温度相当になっているが、コンデンサ5において高温のガス冷媒と熱交換されて素早く昇温(例えば、約55℃)される。コンデンサ5で昇温した冷却水が100%エンジン1に供給されるため、エンジン1が早期暖機される。
一方、コンデンサ5では、冷却水の温度が低くて潜熱の大きい冷却水と冷媒とが熱交換される。このため、エンジン1の始動直後で、車室内を急速冷房(あるいは急速除湿)する要求がある時に、コンデンサ5の冷媒凝縮能力が高められる結果となり、車室内の早期冷房、早期除湿が可能になる。
【0033】
(定常運転時における冷却系水量調整バルブ31の説明)
定常運転時は、図5、図7に示すように、エンジン1の発熱状態および発熱補機(電気系冷却器17、吸着器18等)の発熱状態に応じて、エンジン1に流入する冷却水(図2中、矢印b参照)の流量割合が可変制御される。
つまり、エンジン1の発熱が多い時はエンジン1に流入する冷却水(図2中、矢印b参照)の流量割合が多くなるように制御され、逆にエンジン1の発熱が少ない時はエンジン1をバイパスして統合冷却系回路2を再循環する冷却水の割合が多くなるように制御される。
このため、エンジン1が過冷却される不具合がなく、またエンジン1の発熱を有効に暖機系回路3を流れる冷却水に与えることができ、ヒーターコア6の発熱不足を解消できる。
【0034】
(登坂時における冷却系水量調整バルブ31の説明)
登坂時は、図5、図8に示すように、エンジン1に流入する冷却水(図2中、矢印b参照)の流量割合が100%に制御されるようになっている。このため、ラジエータ4で冷却された冷却水が100%エンジン1に供給されることでエンジン1の過熱(オーバーヒート)が回避される。
【0035】
一方、登坂時は、統合冷却系回路2を流れる冷却水温度が上昇傾向になる。コンデンサ5に供給される冷却水の温度が上昇すると、コンデンサ5による冷媒の冷却能力が低下し、冷凍サイクル11の冷却能力の低下を招く。
ここで、従来のように、コンデンサ(冷媒と外気の熱交換器)がラジエータ4の空気流の上流に独立して配置されていれば、登坂時であってもコンデンサ(冷媒と外気の熱交換器)の能力が落ちないため、ラジエータ4にコンデンサ(冷媒と外気の熱交換器)を通過した高温の空気が流れ込み、ラジエータ4の冷却能力が低下してオーバーヒートを招く可能性が高まる。
しかし、この実施例のように、コンデンサ5による冷媒の冷却能力が低下することと引き換えに、ラジエータ4の冷却能力を確保できるため、オーバーヒートを回避できる。
【0036】
(暖機系水量調整バルブ32の説明)
暖機系水量調整バルブ32は、図2に示されるように、蓄熱器23を通過した冷却水(図2中、矢印B参照)を、暖機系回路3に再び戻す割合(図2中、矢印c参照)と、統合冷却系回路2に流す割合(図2中、矢印d参照)とを調整するバルブである。
【0037】
暖機系水量調整バルブ32の具体的な構造は、図3に示されるように、暖機系水路切替スプール35と、この暖機系水路切替スプール35を作動させる暖機系リニアソレノイド36とから構成される。
そして、暖機系リニアソレノイド36によって暖機系水路切替スプール35をストロークさせることにより、図4(a)に示すように、暖機系回路3に再循環する冷却水(図4中、破線c参照)と、統合冷却系回路2に流入する冷却水(図4中、細かい破線d参照)との流量割合(c:d)を調整する。
【0038】
暖機系水量調整バルブ32は、制御装置によって制御される。制御装置は、運転状態に応じて暖機系水量調整バルブ32を制御するものであり、暖機系回路3に再循環する冷却水(図2中、矢印c参照)の流量割合を100%とした場合、図5の破線cに示すように暖機系水量調整バルブ32が制御される。即ち、低温始動時および定常運転時は、エンジン1の発熱状態(エンジン1を通過した冷却水の温度)に応じて暖機系回路3に再循環する冷却水(図2中、矢印c参照)の流量割合が可変制御され、登坂時は、統合冷却系回路2へ流す冷却水(図2中、矢印d参照)の流量割合が100%に制御される。なお、この実施例では、暖機系回路3に再循環する冷却水(図2中、矢印c参照)の流量割合を連続的に変える例を示すが、段階的に可変するようにしても良い。また、登坂時は、蓄熱器バイパスバルブ25および蓄熱器バイパス24によって、ヒータコア6を通過した冷却水を統合冷却系回路2へ流すように制御される。
【0039】
(低温始動時における暖機系水量調整バルブ32の説明)
低温始動時は、図5、図6に示すように、ヒータコア6に流入する冷却水の温度が低い時は暖機系回路3に再循環する冷却水(図2中、矢印c参照)の割合が多く、逆にヒータコア6に流入する冷却水の温度が高い時は統合冷却系回路2に流す冷却水(図2中、矢印d参照)の割合が多くなるように制御される。なお、ヒータコア6に流入する冷却水の温度が低い時は、加熱手段(排気熱回収器21、超小型燃焼式ヒータ22、蓄熱器23等)によって暖機系回路3を循環する冷却水温度が温められるように設けられている。
これによって、低温始動時にヒータコア6に流入する冷却水の温度が急速に上昇するため、早期暖房およびエンジン1の早期暖機が可能になる。
【0040】
(定常運転時における暖機系水量調整バルブ32の説明)
定常運転時は、図5、図7に示すように、エンジン1の発熱状態およびヒータコア6の放熱要求量に応じて、暖機系回路3に再循環する冷却水(図2中、矢印c参照)の割合が調整される。つまり、運転状態に応じてヒータコア6を流れる冷却水の熱量を調整することことができる。また、エンジン1の発熱量が少ない場合でも、ヒータコア6で放熱される熱量(暖房能力)を高めることが可能になるため、結果的にエンジン1の発熱量が少ない場合での暖房能力を確保できる。
【0041】
また、定常運転時であっても、ヒータコア6を通過した冷却水温度が高い場合は、蓄熱器バイパスバルブ25および蓄熱器バイパス24によって、ヒータコア6を通過した高温の冷却水を統合冷却系回路2に流すようになっている。逆に、エンジン1の発熱が非常に少ない場合は、加熱手段(排気熱回収器21、超小型燃焼式ヒータ22、蓄熱器23等)によって暖機系回路3を循環する冷却水温度を温めるとともに、エコラン暖房バイパスバルブ27およびエコラン暖房バイパス26によって、ヒータコア6に流入する冷却水の温度を暖房に適した温度に維持する。
【0042】
(登坂時における暖機系水量調整バルブ32の説明)
登坂時は、図5、図8に示すように、統合冷却系回路2に流す冷却水(図2中、矢印d参照)の流量割合が100%に制御されるとともに、蓄熱器バイパスバルブ25および蓄熱器バイパス24によって、ヒータコア6を通過した高温の冷却水を統合冷却系回路2に流すようになっている。つまり、エンジン1の熱を、ラジエータ4およびヒータコア6の両方で放熱できるようになり、オーバーヒートが防がれるようになっている。
【0043】
[第1実施例の効果]
以上に示したように、この車両用エンジン冷却システムは、エンジン1の低温始動時に冷凍サイクル11を作動させ、コンプレッサ12から圧送された高温高圧の冷媒と、エンジン1に循環供給される冷却水とをコンデンサ5において熱交換させ、エンジン1に供給される冷却水の温度を急速に上昇させる。これにより、温度上昇した冷却水によってエンジン1が温められるため、エンジン1が早期暖機される。
【0044】
ここで、従来のコンデンサ(冷媒と外気の熱交換器)は、コンデンサから大量の熱(例えば、60℃近い熱)を大気中に捨てていた。しかるに、この車両用エンジン冷却システムでは、コンプレッサ12から圧送された冷媒の熱は、上述したようにエンジン1の暖機に使用される。つまり、従来では大気中に捨てられていた熱を有効に利用してエンジン1を早期暖機できる。
【0045】
一方、低温始動時では、コンデンサ5において、温度が低くて潜熱の大きい冷却水と冷媒とが熱交換される。つまり、エンジン1の始動直後で、車室内を急速冷房(あるいは急速除湿)する要求がある時に、コンデンサ5の冷媒凝縮能力が高められるため、車室内の早期冷房、早期除湿が可能になる。
【0046】
車両用エンジン冷却システムは、統合冷却系回路2の他に、暖房用の暖機系回路3を備える。このため、ヒータコア6を流れる冷却水の熱量確保が容易になり、ヒータコア6による暖房性能を高く維持できる。
また、各種の発熱補機(例えば、インバータ、電動モータ、バッテリ等の電気系冷却器17、吸着器18等)から放出される熱をラジエータ4あるいはヒータコア6から放熱させることが可能になる。このため、例えばエンジン効率の向上等によってエンジン1から放出される熱量が低下しても、発熱補機の熱をヒータコア6で放出できるようになり、暖房能力を高めることが可能になる。
【0047】
さらに、暖機系回路3では、運転状態に応じてヒータコア6を通過した冷却水を再び暖機系回路3に戻すことができるため、暖機系回路3の熱容量を少なくできる。この結果、加熱手段(排気熱回収器21、超小型燃焼式ヒータ22、蓄熱器23等)によって冷却水の温度を容易に上昇させることが可能になり、暖房能力を高めることができる。
また、暖機系回路3に加熱手段(排気熱回収器21、超小型燃焼式ヒータ22、蓄熱器23等)を設けて、暖機系回路3を流れる冷却水を加熱可能に設けたため、始動直後におけるエンジン1の早期暖機、およびヒータコア6による早期暖房が可能になる。また、例えばエンジン効率の向上等によってエンジン1から放出される熱量が低下しても、加熱手段(排気熱回収器21、超小型燃焼式ヒータ22、蓄熱器23等)の作動によって暖房不足を防止できる。
【0048】
[第2実施例]
第2実施例を図9を参照して説明する。なお、図中において、第1実施例と同一符号は同一機能物を示すものである。
上記の第1実施例の冷凍サイクル11は、冷媒と冷却水とを熱交換する1つのコンデンサ5を搭載する例を示した。
これに対し、この第2実施例の冷凍サイクル11は、冷却水と冷媒とを熱交換するコンデンサ5(以下、第1コンデンサ5と称す)の他に、外気(車両走行風)と冷媒とを熱交換する第2コンデンサ37を搭載するものである。
【0049】
第1コンデンサ5と第2コンデンサ37は、コンデンサ切替バルブ38によって切り替えられる。このコンデンサ切替バルブ38は、制御装置によって切替制御されるものであり、制御装置は、低温始動時など、冷却水の温度が低い場合に第1コンデンサ5を選択し、冷却水の温度が所定温度より上昇した場合に第2コンデンサ37を選択する。
この第2実施例のように、外気と冷媒とを熱交換する第2コンデンサ37を設けることにより、冷却水温度が高くても、冷凍サイクル11の能力を確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両用エンジン冷却システムの概略構成図である(第1実施例)。
【図2】制御弁による冷却水の流れ方向を示す図である。
【図3】制御弁の概略図である。
【図4】冷却系水量調整バルブおよび暖機系水量調整バルブの作動モードを示す図である。
【図5】運転状態における制御弁の作動モードを示す図である。
【図6】低温始動時における冷却水の流れを示す説明図である。
【図7】定常運転時における冷却水の流れを示す説明図である。
【図8】登坂時における冷却水の流れを示す説明図である。
【図9】車両用エンジン冷却システムの概略構成図である(第2実施例)。
【符号の説明】
1 エンジン
2 統合冷却系回路
3 暖機系回路
4 ラジエータ
5 コンデンサ
6 ヒータコア
11 冷凍サイクル
12 コンプレッサ
15 コンデンサバイパス
16 コンデンサバイパスバルブ(コンデンサ水量調整バルブ)
17 電気系冷却器(発熱補機)
18 吸着器(発熱補機)
19 排気熱回収器(加熱手段)
22 超小型燃焼式ヒータ(加熱手段)
23 蓄熱器(加熱手段)
31 冷却系水量調整バルブ
32 暖機系水量調整バルブ
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却水(例えば、クーラント等の液体の冷却用熱媒体を冷却水と称す)をエンジンに循環供給してエンジンの温度上昇を防ぐ車両用エンジン冷却システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンを冷却するラジエータを用いてオイルクーラ(発熱補機)を冷却する冷却システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭61−89917号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に開示される発明は、トルクコンバータのオイルとエンジン冷却用の冷却水とを熱交換するオイルクーラを搭載しており、エンジンの低温始動時であってもオイルクーラを通過した冷却水がエンジンに供給される構成になっている。即ち、エンジンの低温始動時で冷却水の温度が所定温度以下の時は、サーモスタットが閉じてエンジンから出た冷却水がラジエータのバイパス通路を通るが、そのバイパス通路を通った熱媒体はオイルクーラを通って再びエンジンに供給される。
このような構成では、エンジンに供給される冷却水の熱がオイルクーラに吸収されてしまうため、エンジンの暖機が遅れてしまう問題が生じる。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エンジンの早期暖機が可能な車両用エンジン冷却システムの提供にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
〔請求項1の手段〕
請求項1の手段を採用する車両用エンジン冷却システムは、車両に搭載された冷凍サイクルのコンデンサにおいてエンジンに循環供給される冷却水とコンプレッサから圧送された冷媒とを熱交換可能に設けられている。
このため、エンジンの低温始動時に冷凍サイクルを作動させ、コンプレッサで圧送された高温高圧の冷媒と、エンジンに循環供給される冷却水とを熱交換させることにより、エンジンに供給される冷却水の温度を急速に上昇させることができる。すると、温度上昇した冷却水によってエンジンが温められるため、エンジン低温始動時の暖機が早められる。
【0007】
ここで、従来のコンデンサは、コンプレッサから圧送された冷媒と外気とを熱交換するように設けられていたため、コンデンサからは大量の熱(例えば、60℃近い熱)が大気中に捨てられていた。しかるに、この請求項1の発明では、コンプレッサから圧送された冷媒の熱は、上述したようにエンジンの暖機に使用される。つまり、請求項1の発明では、従来では大気中に捨てられていた熱を利用してエンジンを早期暖機できる。
【0008】
一方、コンデンサの熱を利用してエンジンの早期暖機を行う場合は、温度が低くて潜熱の大きい冷却水と冷媒とがコンデンサにおいて熱交換される。つまり、請求項1の発明では、エンジンの始動直後で、車室内を急速冷房あるいは急速除湿する要求がある時に、コンデンサの冷媒凝縮能力が高められるため、車室内の早期冷房、早期除湿が可能になる。
【0009】
〔請求項2の手段〕
請求項2の手段を採用する車両用エンジン冷却システムは、コンデンサをバイパスして冷却水を流すコンデンサバイパスと、コンデンサに流れる冷却水量とコンデンサバイパスを流れる冷却水量の割合を調整するコンデンサ水量調整バルブと、車両の運転状態に基づいてコンデンサ水量調整バルブを制御する制御装置とを備える。
このため、コンデンサに冷却水を流すことによって増加してしまう流路圧損を、車両の運転状態に応じて低減することが可能になる。
【0010】
〔請求項3の手段〕
請求項3の手段を採用する車両用エンジン冷却システムは、冷却水と外気とを熱交換するラジエータ、コンデンサ、エンジンに冷却水を循環供給する統合冷却系回路の他に、車室内に吹き出される空気と冷却水とを熱交換するヒータコア、エンジンに冷却水を循環供給する暖機系回路を備える。
この暖機系回路によってヒータコアを流れる冷却水の熱量確保が容易になり、ヒータコアによる暖房性能を高めることが可能になる。
【0011】
〔請求項4の手段〕
請求項4の手段を採用する車両用エンジン冷却システムの統合冷却系回路は、エンジンに流入する冷却水とエンジンをバイパスする冷却水の割合を調整する冷却系水量調整バルブと、車両の運転状態に基づいて冷却系水量調整バルブを制御する制御装置とを備える。
このため、統合冷却系回路からエンジンへ流入する冷却水の供給量を、車両の運転状態に応じて変更することができる。つまり、車両の運転状態に応じて冷却水によるエンジンの冷却能力を変えることが可能になる。
【0012】
〔請求項5の手段〕
請求項5の手段を採用する車両用エンジン冷却システムの統合冷却系回路を流れる冷却水は、作動によって熱を出す発熱補機を冷却可能に設けられる。
ここで、従来では各種の発熱補機(例えば、ハイブリッド車に搭載されるインバータ、電動モータ、バッテリ、吸着器、インタークーラ等)から放出される不要な熱は、大気中に捨てていた。
しかるに、この請求項5の発明を採用することにより、発熱補機の熱が冷却水に与えられるため、その熱をヒータコアで放熱させることが可能になる。つまり、例えばエンジン効率の向上等によってエンジンから放出される熱量が低下しても、発熱補機の放出した熱をヒータコアで放出でき、暖房能力を高めることが可能になる。
【0013】
〔請求項6の手段〕
請求項6の手段を採用する車両用エンジン冷却システムの暖機系回路は、暖機系回路に再流入する冷却水と統合冷却系回路に流入する冷却水の割合を調整する暖機系水量調整バルブと、車両の運転状態に基づいて暖機系水量調整バルブを制御する制御装置とを備える。
このため、ヒータコアを通過した冷却水をエンジンに戻す量を変更することが可能になる。この結果、車両の運転状態に応じてヒータコアで放熱される熱量(暖房能力)を高めることが可能になる。
【0014】
〔請求項7の手段〕
請求項7の手段を採用する車両用エンジン冷却システムの暖機系回路を流れる冷却水は、加熱手段によって加熱可能に設けられる。
この結果、暖機系回路を流れる冷却水の温度を急速に高めることが可能になり、始動直後におけるエンジンの早期暖機、およびヒータコアによる早期暖房が可能になる。また、例えばエンジン効率の向上等によってエンジンから放出される熱量が低下しても、暖房能力を高めて暖房不足を防止できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、2つの実施例を用いて説明する。
[第1実施例の構成]
第1実施例を図1〜図8を参照して説明する。まず、車両用エンジン冷却システムの構成を図1を参照して説明する。
【0016】
この実施例の車両用エンジン冷却システムは、エンジン1の熱を大気中に放出する統合冷却系回路2と、エンジン1の熱を車室内に放出する暖機系回路3とを備える。なお、統合冷却系回路2および暖機系回路3を流れる冷却水として、この実施例では高密度輸送冷媒を用いている。高密度輸送冷媒とは、クーラント(LLC)に、潜熱蓄熱材のスリラーや潜熱蓄熱材のマイクロカプセルを混入した流体であり、ナノフルード、イオン性液体、ミセル等の高密度輸送冷媒を用いても良い。
【0017】
統合冷却系回路2の基本構成は、エンジン1、ラジエータ4、コンデンサ5に冷却水を循環供給するものであり、暖機系回路3の基本構成は、エンジン1、ヒータコア6に冷却水を循環供給するものである。
【0018】
(統合冷却系回路2の説明)
エンジン1は、燃料の燃焼(爆発)によって車両走行のための動力を得る周知なものであり、エンジン1内に形成されたウォータジャケットを流れる冷却水によって所定の温度範囲内に保たれるようになっている。また、エンジン1は、エンジン1の発生する動力によって駆動されるウォータポンプ(図示しない)を搭載しており、このウォータポンプの作動によって冷却水を循環駆動している。一方、統合冷却系回路2には、電動ポンプ2aが搭載されており、統合冷却系回路2の冷却水を循環駆動するように設けられている。
【0019】
ラジエータ4は、車両走行風(外気)と冷却水を熱交換する周知なものであり、車両走行風の当たりやすい部位(例えば、車両前部のグリル内)に取り付けられている。統合冷却系回路2には、ラジエータ4をバイパスして冷却水を流すラジエータバイパス8が設けられており、その分岐部分には、冷却水の温度が所定温度より低い場合に冷却水をラジエータバイパス8に流し、冷却水の温度が所定温度より高い場合に冷却水をラジエータ4に流す周知のサーモスタット9が設けられている。
【0020】
コンデンサ5は、車両用冷凍サイクル11の構成部品であり、冷凍サイクル11はコンデンサ5の他に、コンプレッサ12、減圧装置13、エバポレータ14を備える。コンデンサ5は、コンプレッサ12で圧縮された高温の冷媒と、統合冷却系回路2を流れる冷却水とを熱交換する水−冷媒熱交換器である。
【0021】
ここで、冷凍サイクル11の作動を簡単に説明する。エンジン1によってコンプレッサ12が駆動されると、コンプレッサ12が冷媒の吸入・圧縮・吐出を行う。圧縮された冷媒はコンデンサ5で冷却水と熱交換されて液化凝縮する。液化した冷媒は、減圧装置13で断熱膨張され、低温の霧状冷媒となる。低温の霧状冷媒は、エアコンダクトにおけるクーラケース(図示しない)内に設置されたエバポレータ14内で車室内に吹き出される空気から蒸発潜熱を奪って蒸発する。この結果、エバポレータ14を通過する空気は、エバポレータ14内を流れる冷媒が蒸発する際に蒸発潜熱を奪われて冷却される。そして、エバポレータ14で冷却された空気はヒータコア6あるいはヒータコア6のバイパス通路(図示しない)を通って車室内に吹き出される。また、エバポレータ14で蒸発したガス冷媒は、コンプレッサ12に再吸入されて、上記のサイクルを繰り返す。
【0022】
統合冷却系回路2には、コンデンサ5をバイパスして冷却水を流すコンデンサバイパス15が設けられており、その分岐部分には、冷却水をコンデンサ5あるいはコンデンサバイパス15に流すコンデンサバイパスバルブ16(コンデンサ水量調整バルブの一例)が設けられている。このコンデンサバイパスバルブ16は、制御装置(図示しない)によって切替制御される。
なお、制御装置によるコンデンサバイパスバルブ16の制御は、冷凍サイクル11の作動停止時に冷却水をコンデンサバイパス15に流し、冷凍サイクル11の作動時に冷却水をコンデンサ5に流すものであるが、冷凍サイクル11の作動時であっても、統合冷却系回路2を流れる冷却水量を増やしたい運転状態の時は、コンデンサバイパス15に冷却水の一部あるいは全部を流して、統合冷却系回路2の流路圧損を低減するように設けられている。
【0023】
統合冷却系回路2の基本構成は、上述したように、エンジン1→ラジエータ4→コンデンサ5に冷却水を循環供給するものであるが、この実施例のように、統合冷却系回路2を流れる冷却水によって、作動により熱を出す発熱補機(例えば、ハイブリッド車両に搭載されるインバータ、電動モータ、バッテリ等の電気系冷却器17、吸着器18等)を冷却するように設けられている。
このように設けることにより、電気系冷却器17、吸着器18等から放出される不要な熱を無駄に大気中に捨てるのではなく、暖機系回路3のヒータコア6から放熱させて暖房に使うことが可能になる。この結果、例えばエンジン効率の向上等によってエンジン1から放出される熱量が低下しても、暖房能力の低下を防ぐことができる。
なお、図1中に示す符号19は、サクション冷却手段であり、エバポレータ14を通過した冷媒の冷熱によって電気系冷却器17に供給される冷却水を冷却するとともに、コンプレッサ12に吸引されるガス冷媒を加熱して、コンプレッサ12に吸引される冷媒を確実にガス化するものである。
【0024】
(暖機系回路3の説明)
暖機系回路3に配置されるヒータコア6は、エアコンダクトにおけるヒータケース20内に設置されて、車室内に吹き出される空気を冷却水(温水)の熱によって加熱するものである。
本実施例の暖機系回路3には、暖機系回路3を流れる冷却水を加熱する加熱手段(排気熱回収器21、超小型燃焼式ヒータ22、蓄熱器23等)が配置されている。また、暖機系回路3には、電動ポンプ3aが搭載されており、暖機系回路3の冷却水を循環駆動するように設けられている。
このように設けられることにより、暖機系回路3を流れる冷却水の温度を素早く高めることが可能になり、ヒータコア6による早期暖房が可能になるとともに、始動直後におけるエンジン1の早期暖機が可能になる。また、例えばエンジン効率の向上等によってエンジン1から放出される熱量が低下しても、暖房能力を高めて暖房不足を防ぐことができる。
【0025】
本実施例の暖機系回路3には、ヒータコア6を通過した冷却水を統合冷却系回路2に導く蓄熱器バイパス24が設けられており、その分岐部分には、冷却水を蓄熱器23あるいは蓄熱器バイパス24に流す蓄熱器バイパスバルブ25が設けられている。この蓄熱器バイパスバルブ25は、制御装置によって切替制御される。
なお、制御装置による蓄熱器バイパスバルブ25の制御は、ラジエータ4での放熱量を増やしたい運転状態の時(例えば、登坂走行等の高負荷走行時や、通常走行時でも夏期等でラジエータ4の放熱能力が低下している時等)に、蓄熱器バイパス24に冷却水を流して暖機系回路3の流路圧損を低減してラジエータ4の放熱量を増加させるように設けられている。
【0026】
また、本実施例の暖機系回路3には、蓄熱器23を通過した冷却水を暖機系回路3の上流に再び戻すエコラン暖房バイパス26が設けられており、その分岐部分には、冷却水を電動制御弁30(後述する)あるいはエコラン暖房バイパス26に流すエコラン暖房バイパスバルブ27が設けられている。このエコラン暖房バイパスバルブ27は、制御装置によって切替制御される。
なお、制御装置によるエコラン暖房バイパスバルブ27の制御は、エンジン1の始動直後あるいはエンジン1の発熱が少なく、且つ上述した排気熱回収器21、超小型燃焼式ヒータ22、蓄熱器23によってヒータコア6の暖房能力を確保している時に、エコラン暖房バイパス26に冷却水を流して、冷えたエンジン1に冷却水の熱が奪われるのを防ぐように設けられている。
【0027】
次に、図2〜図8を参照して制御弁30について説明する。
制御弁30は、冷却系水量調整バルブ31と暖機系水量調整バルブ32とから構成される。
【0028】
(冷却系水量調整バルブ31の説明)
冷却系水量調整バルブ31は、図2に示されるように、吸着器18を通過した冷却水(図2中、矢印A参照)を、エンジン1をバイパスしてラジエータ4側へ戻す割合(図2中、矢印a参照)と、エンジン1ヘ流入させる割合(図2中、矢印b参照)とを調整するバルブである。
【0029】
冷却系水量調整バルブ31の具体的な構造は、図3に示されるように、冷却系水路切替スプール33と、この冷却系水路切替スプール33を作動させる冷却系リニアソレノイド34とから構成される。
そして、冷却系リニアソレノイド34によって冷却系水路切替スプール33をストロークさせることにより、図4(a)に示すように、エンジン1をバイパスする冷却水(図4中、破線a参照)と、エンジン1に流入する冷却水(図4中、実線b参照)との流量割合(a:b)を調整する。
【0030】
冷却系水量調整バルブ31は、制御装置によって制御される。制御装置は、運転状態に応じて冷却系水量調整バルブ31を制御するものであり、エンジン1に流入する冷却水(図2中、矢印b参照)の流量割合を100%とした場合、図5の実線bに示すように冷却系水量調整バルブ31を制御する。即ち、低温始動時、登坂時(エンジン高負荷時)は、エンジン1に流入する冷却水(図2中、矢印b参照)の流量割合を100%に制御し、定常運転時は、エンジン1の発熱状態および発熱補機(電気系冷却器17、吸着器18等)の発熱状態に応じてエンジン1に流入する冷却水(図2中、矢印b参照)の流量割合を可変制御する。なお、この実施例では、エンジン1に流入する冷却水(図2中、矢印b参照)の流量割合を段階的に変える例を示すが、連続的に可変するようにしても良い。
【0031】
(低温始動時における冷却系水量調整バルブ31の説明)
低温始動時は、図5、図6に示すように、エンジン1に流入する冷却水(図2中、矢印b参照)の流量割合が100%に制御されるとともに、冷凍サイクル11が作動するようになっている。なお、低温始動時であっても、エアコンスイッチ(図示しない)がONされている時だけに上記制御を実施するようにしても良い。
【0032】
低温始動時では、コンデンサ5に流入する冷却水の温度は外気温度相当になっているが、コンデンサ5において高温のガス冷媒と熱交換されて素早く昇温(例えば、約55℃)される。コンデンサ5で昇温した冷却水が100%エンジン1に供給されるため、エンジン1が早期暖機される。
一方、コンデンサ5では、冷却水の温度が低くて潜熱の大きい冷却水と冷媒とが熱交換される。このため、エンジン1の始動直後で、車室内を急速冷房(あるいは急速除湿)する要求がある時に、コンデンサ5の冷媒凝縮能力が高められる結果となり、車室内の早期冷房、早期除湿が可能になる。
【0033】
(定常運転時における冷却系水量調整バルブ31の説明)
定常運転時は、図5、図7に示すように、エンジン1の発熱状態および発熱補機(電気系冷却器17、吸着器18等)の発熱状態に応じて、エンジン1に流入する冷却水(図2中、矢印b参照)の流量割合が可変制御される。
つまり、エンジン1の発熱が多い時はエンジン1に流入する冷却水(図2中、矢印b参照)の流量割合が多くなるように制御され、逆にエンジン1の発熱が少ない時はエンジン1をバイパスして統合冷却系回路2を再循環する冷却水の割合が多くなるように制御される。
このため、エンジン1が過冷却される不具合がなく、またエンジン1の発熱を有効に暖機系回路3を流れる冷却水に与えることができ、ヒーターコア6の発熱不足を解消できる。
【0034】
(登坂時における冷却系水量調整バルブ31の説明)
登坂時は、図5、図8に示すように、エンジン1に流入する冷却水(図2中、矢印b参照)の流量割合が100%に制御されるようになっている。このため、ラジエータ4で冷却された冷却水が100%エンジン1に供給されることでエンジン1の過熱(オーバーヒート)が回避される。
【0035】
一方、登坂時は、統合冷却系回路2を流れる冷却水温度が上昇傾向になる。コンデンサ5に供給される冷却水の温度が上昇すると、コンデンサ5による冷媒の冷却能力が低下し、冷凍サイクル11の冷却能力の低下を招く。
ここで、従来のように、コンデンサ(冷媒と外気の熱交換器)がラジエータ4の空気流の上流に独立して配置されていれば、登坂時であってもコンデンサ(冷媒と外気の熱交換器)の能力が落ちないため、ラジエータ4にコンデンサ(冷媒と外気の熱交換器)を通過した高温の空気が流れ込み、ラジエータ4の冷却能力が低下してオーバーヒートを招く可能性が高まる。
しかし、この実施例のように、コンデンサ5による冷媒の冷却能力が低下することと引き換えに、ラジエータ4の冷却能力を確保できるため、オーバーヒートを回避できる。
【0036】
(暖機系水量調整バルブ32の説明)
暖機系水量調整バルブ32は、図2に示されるように、蓄熱器23を通過した冷却水(図2中、矢印B参照)を、暖機系回路3に再び戻す割合(図2中、矢印c参照)と、統合冷却系回路2に流す割合(図2中、矢印d参照)とを調整するバルブである。
【0037】
暖機系水量調整バルブ32の具体的な構造は、図3に示されるように、暖機系水路切替スプール35と、この暖機系水路切替スプール35を作動させる暖機系リニアソレノイド36とから構成される。
そして、暖機系リニアソレノイド36によって暖機系水路切替スプール35をストロークさせることにより、図4(a)に示すように、暖機系回路3に再循環する冷却水(図4中、破線c参照)と、統合冷却系回路2に流入する冷却水(図4中、細かい破線d参照)との流量割合(c:d)を調整する。
【0038】
暖機系水量調整バルブ32は、制御装置によって制御される。制御装置は、運転状態に応じて暖機系水量調整バルブ32を制御するものであり、暖機系回路3に再循環する冷却水(図2中、矢印c参照)の流量割合を100%とした場合、図5の破線cに示すように暖機系水量調整バルブ32が制御される。即ち、低温始動時および定常運転時は、エンジン1の発熱状態(エンジン1を通過した冷却水の温度)に応じて暖機系回路3に再循環する冷却水(図2中、矢印c参照)の流量割合が可変制御され、登坂時は、統合冷却系回路2へ流す冷却水(図2中、矢印d参照)の流量割合が100%に制御される。なお、この実施例では、暖機系回路3に再循環する冷却水(図2中、矢印c参照)の流量割合を連続的に変える例を示すが、段階的に可変するようにしても良い。また、登坂時は、蓄熱器バイパスバルブ25および蓄熱器バイパス24によって、ヒータコア6を通過した冷却水を統合冷却系回路2へ流すように制御される。
【0039】
(低温始動時における暖機系水量調整バルブ32の説明)
低温始動時は、図5、図6に示すように、ヒータコア6に流入する冷却水の温度が低い時は暖機系回路3に再循環する冷却水(図2中、矢印c参照)の割合が多く、逆にヒータコア6に流入する冷却水の温度が高い時は統合冷却系回路2に流す冷却水(図2中、矢印d参照)の割合が多くなるように制御される。なお、ヒータコア6に流入する冷却水の温度が低い時は、加熱手段(排気熱回収器21、超小型燃焼式ヒータ22、蓄熱器23等)によって暖機系回路3を循環する冷却水温度が温められるように設けられている。
これによって、低温始動時にヒータコア6に流入する冷却水の温度が急速に上昇するため、早期暖房およびエンジン1の早期暖機が可能になる。
【0040】
(定常運転時における暖機系水量調整バルブ32の説明)
定常運転時は、図5、図7に示すように、エンジン1の発熱状態およびヒータコア6の放熱要求量に応じて、暖機系回路3に再循環する冷却水(図2中、矢印c参照)の割合が調整される。つまり、運転状態に応じてヒータコア6を流れる冷却水の熱量を調整することことができる。また、エンジン1の発熱量が少ない場合でも、ヒータコア6で放熱される熱量(暖房能力)を高めることが可能になるため、結果的にエンジン1の発熱量が少ない場合での暖房能力を確保できる。
【0041】
また、定常運転時であっても、ヒータコア6を通過した冷却水温度が高い場合は、蓄熱器バイパスバルブ25および蓄熱器バイパス24によって、ヒータコア6を通過した高温の冷却水を統合冷却系回路2に流すようになっている。逆に、エンジン1の発熱が非常に少ない場合は、加熱手段(排気熱回収器21、超小型燃焼式ヒータ22、蓄熱器23等)によって暖機系回路3を循環する冷却水温度を温めるとともに、エコラン暖房バイパスバルブ27およびエコラン暖房バイパス26によって、ヒータコア6に流入する冷却水の温度を暖房に適した温度に維持する。
【0042】
(登坂時における暖機系水量調整バルブ32の説明)
登坂時は、図5、図8に示すように、統合冷却系回路2に流す冷却水(図2中、矢印d参照)の流量割合が100%に制御されるとともに、蓄熱器バイパスバルブ25および蓄熱器バイパス24によって、ヒータコア6を通過した高温の冷却水を統合冷却系回路2に流すようになっている。つまり、エンジン1の熱を、ラジエータ4およびヒータコア6の両方で放熱できるようになり、オーバーヒートが防がれるようになっている。
【0043】
[第1実施例の効果]
以上に示したように、この車両用エンジン冷却システムは、エンジン1の低温始動時に冷凍サイクル11を作動させ、コンプレッサ12から圧送された高温高圧の冷媒と、エンジン1に循環供給される冷却水とをコンデンサ5において熱交換させ、エンジン1に供給される冷却水の温度を急速に上昇させる。これにより、温度上昇した冷却水によってエンジン1が温められるため、エンジン1が早期暖機される。
【0044】
ここで、従来のコンデンサ(冷媒と外気の熱交換器)は、コンデンサから大量の熱(例えば、60℃近い熱)を大気中に捨てていた。しかるに、この車両用エンジン冷却システムでは、コンプレッサ12から圧送された冷媒の熱は、上述したようにエンジン1の暖機に使用される。つまり、従来では大気中に捨てられていた熱を有効に利用してエンジン1を早期暖機できる。
【0045】
一方、低温始動時では、コンデンサ5において、温度が低くて潜熱の大きい冷却水と冷媒とが熱交換される。つまり、エンジン1の始動直後で、車室内を急速冷房(あるいは急速除湿)する要求がある時に、コンデンサ5の冷媒凝縮能力が高められるため、車室内の早期冷房、早期除湿が可能になる。
【0046】
車両用エンジン冷却システムは、統合冷却系回路2の他に、暖房用の暖機系回路3を備える。このため、ヒータコア6を流れる冷却水の熱量確保が容易になり、ヒータコア6による暖房性能を高く維持できる。
また、各種の発熱補機(例えば、インバータ、電動モータ、バッテリ等の電気系冷却器17、吸着器18等)から放出される熱をラジエータ4あるいはヒータコア6から放熱させることが可能になる。このため、例えばエンジン効率の向上等によってエンジン1から放出される熱量が低下しても、発熱補機の熱をヒータコア6で放出できるようになり、暖房能力を高めることが可能になる。
【0047】
さらに、暖機系回路3では、運転状態に応じてヒータコア6を通過した冷却水を再び暖機系回路3に戻すことができるため、暖機系回路3の熱容量を少なくできる。この結果、加熱手段(排気熱回収器21、超小型燃焼式ヒータ22、蓄熱器23等)によって冷却水の温度を容易に上昇させることが可能になり、暖房能力を高めることができる。
また、暖機系回路3に加熱手段(排気熱回収器21、超小型燃焼式ヒータ22、蓄熱器23等)を設けて、暖機系回路3を流れる冷却水を加熱可能に設けたため、始動直後におけるエンジン1の早期暖機、およびヒータコア6による早期暖房が可能になる。また、例えばエンジン効率の向上等によってエンジン1から放出される熱量が低下しても、加熱手段(排気熱回収器21、超小型燃焼式ヒータ22、蓄熱器23等)の作動によって暖房不足を防止できる。
【0048】
[第2実施例]
第2実施例を図9を参照して説明する。なお、図中において、第1実施例と同一符号は同一機能物を示すものである。
上記の第1実施例の冷凍サイクル11は、冷媒と冷却水とを熱交換する1つのコンデンサ5を搭載する例を示した。
これに対し、この第2実施例の冷凍サイクル11は、冷却水と冷媒とを熱交換するコンデンサ5(以下、第1コンデンサ5と称す)の他に、外気(車両走行風)と冷媒とを熱交換する第2コンデンサ37を搭載するものである。
【0049】
第1コンデンサ5と第2コンデンサ37は、コンデンサ切替バルブ38によって切り替えられる。このコンデンサ切替バルブ38は、制御装置によって切替制御されるものであり、制御装置は、低温始動時など、冷却水の温度が低い場合に第1コンデンサ5を選択し、冷却水の温度が所定温度より上昇した場合に第2コンデンサ37を選択する。
この第2実施例のように、外気と冷媒とを熱交換する第2コンデンサ37を設けることにより、冷却水温度が高くても、冷凍サイクル11の能力を確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両用エンジン冷却システムの概略構成図である(第1実施例)。
【図2】制御弁による冷却水の流れ方向を示す図である。
【図3】制御弁の概略図である。
【図4】冷却系水量調整バルブおよび暖機系水量調整バルブの作動モードを示す図である。
【図5】運転状態における制御弁の作動モードを示す図である。
【図6】低温始動時における冷却水の流れを示す説明図である。
【図7】定常運転時における冷却水の流れを示す説明図である。
【図8】登坂時における冷却水の流れを示す説明図である。
【図9】車両用エンジン冷却システムの概略構成図である(第2実施例)。
【符号の説明】
1 エンジン
2 統合冷却系回路
3 暖機系回路
4 ラジエータ
5 コンデンサ
6 ヒータコア
11 冷凍サイクル
12 コンプレッサ
15 コンデンサバイパス
16 コンデンサバイパスバルブ(コンデンサ水量調整バルブ)
17 電気系冷却器(発熱補機)
18 吸着器(発熱補機)
19 排気熱回収器(加熱手段)
22 超小型燃焼式ヒータ(加熱手段)
23 蓄熱器(加熱手段)
31 冷却系水量調整バルブ
32 暖機系水量調整バルブ
Claims (7)
- 車両に搭載されたエンジンに冷却水を循環供給し、その冷却水によって前記エンジンの温度上昇を抑制する車両用エンジン冷却システムにおいて、
前記車両は、コンプレッサから圧送された冷媒を液化凝縮するコンデンサを備えた冷凍サイクルを搭載し、
前記コンデンサは、前記エンジンに循環供給される冷却水と前記コンプレッサから圧送された冷媒とを熱交換可能に設けられたことを特徴とする車両用エンジン冷却システム。 - 請求項1に記載の車両用エンジン冷却システムにおいて、
前記コンデンサをバイパスして冷却水を流すコンデンサバイパスと、
前記コンデンサに流れる冷却水量と前記コンデンサバイパスを流れる冷却水量の割合を調整するコンデンサ水量調整バルブと、
前記車両の運転状態に基づいて前記コンデンサ水量調整バルブを制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする車両用エンジン冷却システム。 - 請求項1または請求項2に記載の車両用エンジン冷却システムにおいて、
冷却水と外気とを熱交換するラジエータ、前記コンデンサ、前記エンジンに冷却水を循環供給する統合冷却系回路と、
車室内に吹き出される空気と冷却水とを熱交換するヒータコア、前記エンジンに冷却水を循環供給する暖機系回路と、
を備えることを特徴とする車両用エンジン冷却システム。 - 請求項3に記載の車両用エンジン冷却システムにおいて、
前記統合冷却系回路は、
前記エンジンに流入する冷却水と前記エンジンをバイパスする冷却水の割合を調整する冷却系水量調整バルブと、
前記車両の運転状態に基づいて前記冷却系水量調整バルブを制御する制御装置と、を備えることを特徴とする車両用エンジン冷却システム。 - 請求項3または請求項4に記載の車両用エンジン冷却システムにおいて、
前記統合冷却系回路を流れる冷却水は、作動によって熱を出す発熱補機を冷却可能に設けられたことを特徴とする車両用エンジン冷却システム。 - 請求項3に記載の車両用エンジン冷却システムにおいて、
前記暖機系回路は、
前記暖機系回路に再流入する冷却水と前記統合冷却系回路に流入する冷却水の割合を調整する暖機系水量調整バルブと、
前記車両の運転状態に基づいて前記暖機系水量調整バルブを制御する制御装置と、を備えることを特徴とする車両用エンジン冷却システム。 - 請求項3または請求項6に記載の車両用エンジン冷却システムにおいて、
前記暖機系回路を流れる冷却水は、加熱手段によって加熱可能に設けられたことを特徴とする車両用エンジン冷却システム。
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- 2002-10-22 JP JP2002307261A patent/JP2004143961A/ja active Pending
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