JP2004142079A - ワイヤ放電加工用電極線の製造方法及びその製造方法を用いて製造したワイヤ放電加工用電極線 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係るワイヤ放電加工用電極線20の製造方法は、Cu−0.05〜0.2重量%Zr合金からなる心材31の外周に、順に、Zn層32、Cu−32〜37重量%Zn合金層33を有する被覆線材30に拡散熱処理を施して、心材41の外周に高Zn濃度のCu−Zn合金層42を有する線材40を形成し、この線材40に時効析出処理を施すものである。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワイヤ放電加工用電極線の製造方法及びその製造方法を用いて製造したワイヤ放電加工用電極線に係り、特に、被覆型のワイヤ放電加工用電極線の製造方法及びその製造方法を用いて製造したワイヤ放電加工用電極線に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的なワイヤ放電加工用電極線として、Cu−Zn合金単体からなる電極線が活用されている。この電極線は、加工速度、加工精度などの放電特性に優れていると共に、コスト的にも有利な特質を有している。このタイプの電極線の放電加工速度を向上させるには、電極線をZn濃度が高いCu−Zn合金で形成することが望ましい。しかしながら、Cu−Zn合金中のZn濃度が40重量%を超えると、伸線加工性が著しく低下し、電極線の製造が困難となる。このため、このタイプの電極線の構成材として、一般的に、32〜36重量%のZnを含むCu−Zn合金、すなわちCu−35重量%Zn合金(65/35黄銅線)が使用されてきた。
【0003】
近年、ワイヤ放電加工用電極線の高速加工性が重視されるようになっている。このため、例えば、Cu−2.0重量%Sn合金などのCu合金からなる心材の周りに、従来よりもZn濃度が高いCu−Zn合金層を被覆した被覆型の放電加工用電極線が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−339664号公報
また、放電加工用電極線は、一般に放電加工中、200〜400℃に上昇すると言われており、電極線自体に熱的負荷が加わると共に、加工速度及び加工精度を上げるために張力負荷も加わることから、高温での引張強度が高いことが要求されている。ところが、一般に用いられているCu−Zn電極線や被覆電極線は、高温強度が高くないため、加工速度を上げるべく放電加工電流を増加させると、ワイヤ温度が上昇して断線が生じてしまう。
【0005】
高温引張強度が高い銅合金の一つとしてCu−Zr合金がある。このCu−Zr合金を用いた被覆型の放電加工用電極線として、Cu−0.05〜0.2重量%Zr合金からなる心材の外周に、順に、Zn層、Cu−Zn合金層を有する被覆線材に、550〜600℃×2〜4hrの拡散熱処理を施すことで、心材の外周にCu−38〜50重量%Zn合金層を形成したものが挙げられる(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献2】
特開2002−172529号公報(
【特許請求の範囲】、
及び
【0007】〜
【0008】)
【発明が解決しようとする課題】
特開平5−339664号公報に記載された被覆型の放電加工用電極線の製造方法は、心材の周りに、Cu−38〜49重量%ZnからなるCu−Zn合金層を押出被覆するものであった。ここで、Cu−Zn合金層のZn濃度が38〜49重量%と高いことから、Cu−Zn合金層の単一層を形成するには、熱間押出被覆を行う必要があり、製造コストが非常に高くなるという問題があった。また、Cu−Zn合金層のZn濃度が38〜49重量%と高いことから、伸線加工性が著しく悪く、その結果、生産性が良好でないという問題があった。
【0009】
また、特開2002−172529号公報に記載された被覆型の放電加工用電極線は、拡散熱処理として550〜600℃×2〜4hrの熱処理を行っているが、高温強度を向上させるための時効析出処理としては熱処理温度が高過ぎることから、Cu−Zr合金の機械的特性を最大限に発揮できていなかった。
【0010】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、高温引張強度が高く、かつ、放電加工性が良好なワイヤ放電加工用電極線の製造方法及びその製造方法を用いて製造したワイヤ放電加工用電極線を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明に係るワイヤ放電加工用電極線の製造方法は、Cu−0.05〜0.2重量%Zr合金からなる心材の外周に、順に、Zn層、Cu−32〜37重量%Zn合金層を有する被覆線材に拡散熱処理を施して、心材の外周に高Zn濃度のCu−Zn合金層を有する線材を形成し、この線材に時効析出処理を施すものである。また、Cu−0.05〜0.2重量%Zr合金からなる心材の外周に、順に、Zn層、Cu−32〜37重量%Zn合金層を有する被覆線材に急速加熱・急冷の拡散熱処理を施して、心材の外周に高Zn濃度のCu−Zn合金層を有する線材を形成し、この線材に時効析出処理を施すものである。
【0012】
より具体的には、請求項3に示すように、プラズマ加熱又は赤外線加熱により、上記急速加熱・急冷の拡散熱処理を行う。
【0013】
また、請求項4に示すように、上記拡散熱処理として、500〜800℃×0.5〜6minの熱処理を行う。
【0014】
請求項5に示すように、上記時効析出処理として、380〜520℃×0.5〜2hrの熱処理を行う。
【0015】
請求項6に示すように、上記心材の外周に形成する高Zn濃度のCu−Zn合金層として、Cu−41〜49重量%Zn合金層を形成する。
【0016】
このように、Cu−Zr合金からなる心材を有する被覆線材に、所定の温度・時間の拡散熱処理を施した後、所定の温度・時間の時効析出処理を施すようにしたため、心材の機械的特性、高温引張強度を最大限に引き出すことができる。
【0017】
一方、本発明に係るワイヤ放電加工用電極線は、上述したワイヤ放電加工用電極線の製造方法を用いて製造したものである。また、心材の外周に、Cu−Zn合金層を有するワイヤ放電加工用電極線において、Cu−0.05〜0.2重量%Zr合金からなる心材の外周に、Cu−41〜49重量%Zn合金層を有し、かつ、400℃での引張強度が200〜600MPaであるものである。
【0018】
このように、本発明に係るワイヤ放電加工用電極線の製造方法を用いることで、強度が高く、かつ、放電加工性が良好なワイヤ放電加工用電極線を得ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適一実施の形態を添付図面に基いて説明する。
【0020】
本発明に係るワイヤ放電加工用電極線の製造方法のフローを示す概略図を図1に示す。
【0021】
先ず、図3に示すように、Cu−0.05〜0.2重量%Zr合金からなる心材31の外周に、順に、Zn層32、Cu−32〜37重量%Zn合金(好ましくはCu−35重量%前後Zn合金)層33を有する被覆線材30を形成する。具体的には、Cu−0.05〜0.2重量%Zr合金からなる心材31の外周に、純Znテープを縦添えする(又は巻回す)。その後、純Znテープからなる層の外周にCu−Znテープを縦添えすると共に、その突き合わせ部に溶接処理を施し、心材31の外周に、順に、Zn層32、Cu−32〜37重量%Zn合金層33を有する被覆線材30を形成する。
【0022】
次に、この被覆線材30を、図1に示すようにプラズマ加熱炉(又は赤外線加熱炉)11に通して、被覆線材30に急速加熱・急冷の拡散熱処理を施す。具体的には、500〜800℃、好ましくは550〜750℃、特に好ましくは600〜700℃の温度、0.5〜6min、好ましくは0.5〜4min、特に好ましくは1〜3minの時間の拡散熱処理を施す。これによって、被覆線材30におけるZn層32のZn原子が、Cu−32〜37重量%Zn合金層33及び心材31の外層部に拡散する。その結果、Cu−32〜37重量%Zn合金層33及び心材31の外層部のZn濃度が高まり、図4に示すように心材41の外周に高Zn濃度のCu−Zn合金層(拡散層)42を有する線材40が形成される。
【0023】
次に、この線材40を、図1に示すように伸線ダイス12に通して、線材40に第1伸線加工(冷間の縮径加工)を施す。
【0024】
次に、この伸線後の線材40を、図1に示すように加熱炉13に通して、線材40に時効析出処理を施す。具体的には、380〜520℃、好ましくは380〜450℃、特に好ましくは400℃前後の温度、0.5〜2hr、好ましくは0.5〜1.5hr、特に好ましくは1hr前後の時間の時効析出処理を施す。これによって、図2に示すように心材21の外周に高Zn濃度のCu−Zn合金層(拡散層)22を有する本発明に係るワイヤ放電加工用電極線20が得られる。
【0025】
得られた電極線20を、図1に示すように伸線ダイス14に通して、電極線20に第2伸線加工(冷間の縮径加工)を施して所望の線径に形成することで、最終製品50が得られる。この第2伸線加工では、所望の線径が得られるまで、電極線20を複数台の伸線ダイス14に通す。また、線材40に対する最終製品の減面率は、95%以上、好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上である。尚、本発明に係る製造方法においては、拡散熱処理後および時効析出処理後にそれぞれ伸線加工を行う場合について説明を行ったが、時効析出処理後にまとめて伸線加工を行ってもよい。
【0026】
このようにして得られた最終製品50は、400℃前後での引張強度が200〜600MPa、好ましくは300〜450MPa、特に好ましくは320〜420MPaの、優れた高温引張特性を有するものとなる。ここで言う400℃前後とは、400℃±25℃、好ましくは400℃±10℃、特に好ましくは400℃±5℃である。
【0027】
各数値範囲を限定した理由を、以下に説明する。
【0028】
拡散層42のZn濃度を41〜49重量%と限定したのは、Zn濃度が41重量%未満だと放電加工速度を向上させる効果が十分に得られないためであり、Zn濃度が49重量%を超えると伸線加工性が著しく低下するためである。
【0029】
また、拡散熱処理の温度を500〜800℃、処理時間を0.5〜6minと限定したのは、温度が500℃未満、処理時間が0.5min未満だと拡散層42中の拡散が不十分となるためであり、温度が800℃、処理時間が6minを超えると心材41の高温強度が低下するためである。この限定範囲において、熱処理温度が低温の時は熱処理時間を長くし、また、熱処理温度が高温の時は熱処理時間を短くする。
【0030】
また、時効析出処理の温度を380〜520℃、処理時間を0.5〜2hrと限定したのは、温度が380℃未満、処理時間が0.5hr未満だと時効析出が不十分で、高温強度及び導電率を向上させる効果が十分に得られないためであり、温度が520℃、処理時間が2hrを超えると心材(Cu−Zr合金)21中に粗大な析出物が生成して、高温強度が低下するためである。この限定範囲において、熱処理温度が低温の時は熱処理時間を長くし、また、熱処理温度が高温の時は熱処理時間を短くする。
【0031】
本発明においては、ワイヤ放電加工用電極線20を構成するための心材31として、Cu−Zr系合金を用いた場合について説明を行ったが、Cu−Zr系合金に特に限定するものではなく、Cu−Cr系合金などの一般的な析出強化型Cu合金であってもよい。
【0032】
また、本発明においては、急速加熱・急冷の拡散熱処理を施すための加熱炉として、プラズマ加熱炉(又は赤外線加熱炉)を用いた場合について説明を行ったが、これらに特に限定するものではなく、急速加熱・急冷の熱処理が可能な慣用の加熱装置が全て適用可能である。
【0033】
ここで、高温引張強度が高い銅合金の一つであるCu−Zr合金を用いた従来の被覆型放電加工用電極線(例えば、特開2002−172529号公報に記載された被覆型の放電加工用電極線)は、被覆線材に対し、拡散熱処理として550〜600℃×2〜4hrの熱処理を施しているが、高温強度を向上させるための時効析出処理としては熱処理温度が高過ぎることから、Cu−Zr合金の機械的特性を最大限に発揮できていなかった。
【0034】
よって、本発明に係るワイヤ放電加工用電極線20の製造方法においては、先ず、被覆線材30に、急速加熱・急冷の拡散熱処理、具体的には500〜800℃×0.5〜6minの拡散熱処理を施して、心材41の外周に高Zn濃度のCu−Zn合金層42を有する線材40を形成している。次に、この線材40に380〜520℃×0.5〜2hrの時効析出処理を施すようにしている。
【0035】
この拡散熱処理の際、プラズマ加熱炉(又は赤外線加熱炉)11を用いて拡散熱処理を行うことで、被覆線材30の表面層を急速に、加熱・急冷することができる。その結果、拡散熱処理時において、500〜800℃という高温の熱処理を行っているにも関わらず、心材31に対する熱的負荷を抑制することが可能となり、心材(Cu−Zr合金)41の高温強度を低下させることなく、拡散層42を形成することができる。
【0036】
その結果、電極線20の内層部である心材21を、高温引張強度が高いCu−0.05〜0.2重量%Zr合金で構成し、かつ、その心材21に対して機械的特性、特に高温引張強度を最大限に発揮させるべく最適な拡散熱処理及び時効析出処理を施すことで、電極線20の放電加工速度の向上を図ることができる。また、電極線20の外層部であるCu−Zn合金層22は、放電加工性が良好な高Zn濃度のCu−Zn合金で構成している。
【0037】
これによって、高温(200〜400℃)における引張強度が高い電極線20は、放電加工速度を上げるべく放電加工電流を増加させても、断線が生じるおそれが殆どなく、従来の65/35黄銅線単体からなる電極線と比較して放電加工速度を著しく向上(例えば、25%以上も向上)させることができる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定されることは言うまでもない。
【0039】
【実施例】
次に、本発明について、実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
線径がφ2.0mmで、Cu−0.16重量%Zrからなる心材の外周に、順に、厚さ0.14mmの純Zn層、厚さ0.2mmのCu−35重量%Zn層を有する被覆線材を形成する。
【0041】
次に、この被覆線材を走行させながらプラズマ加熱炉に通して、600℃×3minの拡散熱処理を行い、Cu−0.16重量%Zr合金からなる心材の外周に、Cu−44重量%ZnからなるCu−Zn合金層を有する線材を形成する。この線材に第1伸線加工を施し、線径がφ1.2mmの線材に形成する。
【0042】
次に、この線材を走行させながら加熱炉に通して、400℃×1hrの時効析出処理を行い、電極線を形成する。この電極線に第2伸線加工を施し、線径がφ0.25mmの最終製品(ワイヤ放電加工用電極線)を作製する。
【0043】
(実施例2)
拡散熱処理が700℃×1min、時効析出処理が500℃×1hrである以外は実施例1と同様にし、線径がφ0.25mmのワイヤ放電加工用電極線を作製する。
【0044】
(比較例1)
拡散熱処理が400℃×1min、時効析出処理が400℃×1hrである以外は実施例1と同様にし、線径がφ0.25mmのワイヤ放電加工用電極線を作製する。
【0045】
(比較例2)
拡散熱処理が900℃×1min、時効析出処理が400℃×1hrである以外は実施例1と同様にし、線径がφ0.25mmのワイヤ放電加工用電極線を作製する。
【0046】
(比較例3)
拡散熱処理が600℃×3min、時効析出処理が350℃×1hrである以外は実施例1と同様にし、線径がφ0.25mmのワイヤ放電加工用電極線を作製する。
【0047】
(比較例4)
拡散熱処理が600℃×3min、時効析出処理が600℃×1hrである以外は実施例1と同様にし、線径がφ0.25mmのワイヤ放電加工用電極線を作製する。
【0048】
(従来例1)
Cu−35重量%Zn合金からなる電極線母材に縮径加工を施し、線径がφ0.25mmのワイヤ放電加工用電極線を作製する。
【0049】
実施例1,2、比較例1〜4、及び従来例1における各電極線の、心材組成(重量%)、Cu−Zn合金層の組成(重量%)、拡散熱処理及び時効析出処理の条件、高温引張強度、及び放電加工試験時の放電加工速度を表1に示す。
【0050】
ここで、高温引張強度は、従来例1の400℃における引張強度(230MPa)を1.00とした時の相対値で評価した。また、放電加工速度は、従来例1における電極線の放電加工速度を1.00とした時の相対速度で評価した。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示すように、実施例1,2の各電極線の高温引張強度は1.70(391MPa)、1.50(345MPa)であり、従来例1と比べて高温引張特性をが50〜70%も向上した。その結果、各電極線の放電加工速度は1.42、1.40となり、従来例1と比べて放電加工速度を約40%も向上させることができた。
【0053】
これに対して、比較例1の電極線は、拡散熱処理温度が限定範囲(500〜800℃)よりも低い400℃であるため、Zn層の拡散が不十分で、未拡散のZnが残留していた。このため、高温引張強度は1.20、放電加工速度は1.22しか得られず、放電加工速度を向上させる効果が不十分であった。
【0054】
また、比較例2の電極線は、拡散熱処理温度が限定範囲(500〜800℃)よりも高い900℃であるため、心材であるCu−Zr合金の高温強度が低下してしまった。このため、高温引張強度は従来例1よりも低い0.80となってしまった。その結果、放電加工速度は1.10しか得られず、放電加工速度を向上させる効果が不十分であった。
【0055】
また、比較例3の電極線は、時効析出処理温度が限定範囲(380〜520℃)よりも低い350℃であるため、時効析出が不十分であった。このため、心材の高温引張強度を最大限に向上することができず、電極線の高温引張強度は1.30にとどまった。また、時効析出が不十分であるため、心材の導電率を最大限に向上させることができなかった。その結果、放電加工速度は1.15しか得られず、放電加工速度を向上させる効果が不十分であった。
【0056】
また、比較例4の電極線は、時効析出処理温度が限定範囲(380〜520℃)よりも高い600℃であるため、粗大な析出物が生成してしまった。このため、心材の高温引張強度が比較例3よりも低下してしまい、電極線の高温引張強度は1.25となった。その結果、放電加工速度は1.24しか得られず、放電加工速度を向上させる効果が不十分であった。
【0057】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、次のような優れた効果を発揮する。
【0058】
(1) 本発明に係るワイヤ放電加工用電極線の製造方法によれば、Cu−Zr合金からなる心材を有する被覆線材に、所定の温度・時間の拡散熱処理を施した後、所定の温度・時間の時効析出処理を施すようにしたことで、心材の機械的特性、高温引張強度を最大限に引き出すことができる。
【0059】
(2) (1)のワイヤ放電加工用電極線の製造方法を用いることで、強度が高く、かつ、放電加工性が良好なワイヤ放電加工用電極線を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るワイヤ放電加工用電極線の製造方法のフローを示す概略図である。
【図2】本発明に係るワイヤ放電加工用電極線の横断面図である。
【図3】拡散熱処理前の被覆線材の横断面図である。
【図4】拡散熱処理後の被覆線材の横断面図である。
【符号の説明】
20 ワイヤ放電加工用電極線
30 被覆線材
31 心材
32 Zn層
33 Cu−32〜37重量%Zn合金層
40 線材
41 心材
42 拡散層(高Zn濃度のCu−Zn合金層)
Claims (8)
- Cu−0.05〜0.2重量%Zr合金からなる心材の外周に、順に、Zn層、Cu−32〜37重量%Zn合金層を有する被覆線材に拡散熱処理を施して、心材の外周に高Zn濃度のCu−Zn合金層を有する線材を形成し、この線材に時効析出処理を施すことを特徴とするワイヤ放電加工用電極線の製造方法。
- Cu−0.05〜0.2重量%Zr合金からなる心材の外周に、順に、Zn層、Cu−32〜37重量%Zn合金層を有する被覆線材に急速加熱・急冷の拡散熱処理を施して、心材の外周に高Zn濃度のCu−Zn合金層を有する線材を形成し、この線材に時効析出処理を施すことを特徴とするワイヤ放電加工用電極線の製造方法。
- プラズマ加熱又は赤外線加熱により、上記急速加熱・急冷の拡散熱処理を行う請求項2記載のワイヤ放電加工用電極線の製造方法。
- 上記拡散熱処理として、500〜800℃×0.5〜6minの熱処理を行う請求項1から3いずれかに記載のワイヤ放電加工用電極線の製造方法。
- 上記時効析出処理として、380〜520℃×0.5〜2hrの熱処理を行う請求項1又は2記載のワイヤ放電加工用電極線の製造方法。
- 上記心材の外周に形成する高Zn濃度のCu−Zn合金層として、Cu−41〜49重量%Zn合金層を形成する請求項1又は2記載のワイヤ放電加工用電極線の製造方法。
- 請求項1から6いずれかに記載のワイヤ放電加工用電極線の製造方法を用いて製造したことを特徴とするワイヤ放電加工用電極線。
- 心材の外周に、Cu−Zn合金層を有するワイヤ放電加工用電極線において、Cu−0.05〜0.2重量%Zr合金からなる心材の外周に、Cu−41〜49重量%Zn合金層を有し、かつ、400℃での引張強度が200〜600MPaであることを特徴とするワイヤ放電加工用電極線。
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