JP2004141956A - 板材の蛇行測定方法及び蛇行測定装置並びにこの蛇行測定方法を用いた板材の製造方法 - Google Patents

板材の蛇行測定方法及び蛇行測定装置並びにこの蛇行測定方法を用いた板材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】安価で且つ小型な2次元撮像装置を使用し、劣悪な環境下でも精度良く安定して板材の蛇行量を測定し得る蛇行測定方法を提供する。
【解決手段】複数の圧延スタンドを具備する圧延ミルによって圧延される板材Sに対して蛇行制御を実施するべく、板材Sの蛇行量を測定する方法であって、パスラインの垂線に対して圧延方向に傾斜した方向から2次元撮像装置11,12で板材S表面を撮像するステップと、前記撮像画像について、板幅方向の走査線毎に濃度値の変化を検出することにより、板材のエッジ位置を走査線毎に検出するステップと、走査線毎に検出した各エッジ位置に対して最小自乗法を適用することにより近似直線を算出するステップと、近似直線と所定の走査線との交点の位置を算出するステップと、交点の位置に基づき、蛇行量を算出するステップとを備える。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱間の連続仕上圧延ミル等、複数の圧延スタンドを具備する圧延ミルによって圧延される板材に対して蛇行制御を実施するべく、当該板材の蛇行量を測定する方法及び蛇行測定装置並びにこの蛇行測定方法を用いた板材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
6つ又は7つの圧延スタンドを具備する熱間の連続仕上圧延ミルにおいて、各圧延スタンドの圧延機におけるワークサイド(作業側)とドライブサイド(駆動側)の圧下率に差があると、被圧延材である鋼板は蛇行しようとする。ここで、連続する2つの圧延スタンドの両スタンドで鋼板を圧延中の場合には、スタンド間張力が発生するため、蛇行量を抑制することができる。しかし、鋼板の尾端が前段の圧延スタンドを抜けるとスタンド間張力がなくなるため、鋼板は急激に蛇行することになる。蛇行量が大きくなると、圧延スタンドに付設されたサイドガイドに鋼板が当たり、絞り込み(鋼板のエッジが2枚折れとなって圧延され、圧延機の圧延ロールが損傷すること)が生じることにより、次の鋼板を圧延中に当該鋼板に傷が発生して不良品になったりするという問題がある。また、圧延ロール替えによる生産能率の低下を引き起こすという問題もある。
【0003】
上記絞り込みを回避するべく、従来より、オペレータが圧延スタンド間の通板状況を目視し、当該目視結果に基づいて圧延機のレベリング操作(上下圧延ロールのロールギャップ等を調整)が実施されている。しかしながら、絞り込みの発生し易い薄物材においては、連続仕上圧延ミルの後段に位置する圧延スタンド間(F1〜F7の7つの圧延スタンドを具備する圧延ミルにおいては、F4〜F5間、F5〜F6間、F6〜F7間)に鋼板の尾端が存在するのは1秒以下であるため、目視で尾端の蛇行量を定量的に把握するのは困難な上、仮に把握できたとしても瞬時にレベリング操作を行うことは極めて困難である。
【0004】
そこで、従来より、種々の蛇行測定方法や蛇行制御方法が提案されている。これまでに提案されてきた熱間仕上圧延ミルにおける蛇行制御方法は、以下の2つに大別される。
【0005】
第1の制御方法は、圧延機のドライブサイドとワークサイドの荷重差を用いて制御する方法で、一般に、「差荷重方式蛇行制御」と呼ばれており、蛇行の原因となる鋼板の曲がりの緩やかな変化に対しては一定の効果がある方法である(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0006】
第2の制御方法は、蛇行量を直接測定した結果に基づき蛇行制御する方法で、これは、一般に、「センサ方式蛇行制御」と呼ばれており、圧延機直下の蛇行の原因となる鋼板の曲がりを検出できるため、蛇行制御が容易であり、高応答で安定した制御系を容易に構成できるという利点を有する(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開昭63−68209号公報
【特許文献2】
特開昭49−133256号公報
【特許文献3】
特開平4−144211号公報
【0008】
しかしながら、上記差荷重方式蛇行制御は、原理上、圧延機直下の蛇行を圧延機左右の荷重差から推定する方法であり、圧延ロールの偏芯によるノイズが大きいという問題がある。つまり、感度が鈍く、差荷重を検出した時には鋼板の曲がりは大きくなっているため、それ以降の蛇行を修正するのが難しいという問題がある。また、無理に修正しようとして、制御ゲインを上げると制御系が不安定になってしまうという問題がある。従って、前述のように、鋼板の曲がりの緩やかな変化に対しては効果があるものの、鋼板の尾端が前段スタンドを抜けてスタンド間張力が無くなり、それまで潜在化していた両サイドのアンバランスが一挙に顕在化した場合のような、急激な変化に対しては、ほとんど制御効果が得られないという問題がある。
【0009】
一方、上記センサ方式蛇行制御は、以下に述べる問題を有するため、熱間の連続仕上圧延ミルでは実用化されていないのが現状である。
【0010】
蛇行による絞り込みは、鋼板の尾端のみで顕在化する現象であるため、特に速度の速い最終スタンドで制御効果を得るには、蛇行量測定用のセンサとして、高応答速度で高分解能な1次元のラインセンサが用いられるのが一般的である。このラインセンサは、高価であることに加え、センサ自体の寸法が比較的大きいため、環境対策用の筐体に収納した際の全体寸法も大きくなり、圧延スタンド間に設置しようとすると、以下のような問題が生じる。
【0011】
すなわち、ラインセンサが高価で且つ寸法が大きいことに起因し、
(a)鋼板が突っ掛るなどライントラブルが発生した際に邪魔になる。これを回避するべくリトラクト機構を設置すると設備費用が膨大となる、
(b)長期間使用すると筐体上にスケールが蓄積し、その蓄積したスケールが圧延中に鋼板上に落下すれば、所謂スケール傷の原因になる、
(c)操業時にオペレータが通板状況を目視しようとする際に鋼板を遮蔽してしまうため、通板状況を確認することができず操業に支障をきたす、
(d)圧延スタンド間では、大量の霧状水滴やヒュームが生じるため、ラインセンサのレンズ面が汚れ易いなど、長期に亘り安定した測定を維持するのが困難である、
(e)圧延スタンド間にX線厚み計が設置された仕上圧延ミルの場合、圧延スタンド間に設置スペースを確保することができない、
(f)熱間連続仕上圧延ミルでの蛇行は、上流から下流に行くに従って遺伝されるため、効果的な蛇行制御を行うには、連続した圧延スタンドで蛇行を抑制する制御を実施する必要がある。しかしながら、前述したように、絞り込みは、板厚が薄く板速度の速い最終圧延スタンド間で発生することが多く、またセンサが高価であるため、最終圧延スタンド間にのみ蛇行量測定用センサを設置し、最終圧延スタンドのみに蛇行制御を実施することが多い。従って、上流でのレベリング不良により大きな蛇行が生じている場合、最終スタンドのみでの蛇行制御では、絞り込みの抑制が極めて困難である、
という問題である。
【0012】
また、
(f)ラインセンサを蛇行量測定用のセンサとして用いる場合、圧延方向の所定位置における1走査線分の鋼板エッジのみを光学的に測定することになるため、霧状水滴やヒュームが充満する圧延スタンド間においては、前記走査線の部分が霧状水滴やヒュームで遮られると異常な測定結果となり、ひいては異常な蛇行制御を実施してしまうことになる、
という問題もある。
【0013】
なお、上記第1及び第2の制御方法以外にも、ルーパー型張力検出値を用いて、ワークサイドとドライブサイドの張力差を検出し制御する方法や、鋼板のウェッジを測定し制御する方法などが提案されているものの、熱間の仕上圧延ミルでは実用化されていない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、斯かる従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、ラインセンサと比べて安価で且つ小型なものが種々市販されている2次元CCDカメラ等の2次元撮像装置を使用し、熱間連続仕上圧延ミルのような劣悪な環境下でも精度良く安定して板材の蛇行量を測定し得る蛇行測定方法及び蛇行測定装置並びにこの蛇行測定方法を用いた板材の製造方法を提供することを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するべく、本発明は、請求項1に記載の如く、複数の圧延スタンドを具備する圧延ミルによって圧延される板材に対して蛇行制御を実施するべく、当該板材の蛇行量を測定する方法であって、パスラインの垂線に対して圧延方向に傾斜した方向から、板材のエッジを含む撮像視野を有する2次元撮像装置で板材表面を撮像する第1ステップと、前記撮像画像について、板幅方向の走査線毎に濃度値の変化を検出することにより、板材のエッジ位置を走査線毎に検出する第2ステップと、前記走査線毎に検出した各エッジ位置に対して最小自乗法を適用することにより近似直線を算出する第3ステップと、前記近似直線と所定の走査線との交点の位置を算出する第4ステップと、前記交点の位置に基づき、蛇行量を算出する第5ステップとを備えることを特徴とする蛇行測定方法を提供するものである。
【0016】
請求項1に係る発明によれば、蛇行量測定用のセンサとして、安価で且つ小型なものが種々市販されている2次元撮像装置を用いるため、熱間連続仕上圧延ミルに適用する場合、当該小型な2次元撮像装置を圧延スタンドの圧延機ハウジング内に収納することも可能である。従って、圧延ミルで作業する際や通板状況を目視する際の邪魔にならない上、2次元撮像装置上にスケールが蓄積することを抑制できるという利点を有する。また、小型な2次元撮像装置であれば、必要となるレンズも小さくて済むため、レンズ面の汚れ防止対策が容易になるという利点も有する。さらには、安価な2次元撮像装置であれば、連続した圧延スタンド間(特に絞り込みが発生し易い中間圧延スタンド以降)に数多く設置することができ、効果的な蛇行制御に供することが可能である。
【0017】
また、請求項1に係る発明によれば、2次元撮像装置の撮像画像について、板材のエッジ位置を板幅方向の走査線毎に検出し、当該検出した各エッジ位置に最小自乗法を適用することにより近似直線を算出し、当該近似直線と所定の走査線との交点の位置を算出し、最後に、当該交点の位置に基づき蛇行量を算出することになる。換言すれば、前記交点の位置を、蛇行量を算出するための最終的な板材のエッジ位置として使用していることになる。ここで、熱間連続仕上圧延ミルに適用する際に生じ得る霧状水滴やヒュームが原因で、前記走査線毎に検出した各エッジ位置の一部が測定誤差を含むか或いは検出不能であったとしても、検出した圧延方向に多数のエッジ位置から最小自乗法で近似直線を算出し、当該近似直線と所定の走査線との交点を最終的な板材のエッジ位置とするため、安定したエッジ位置の測定、ひいては安定した蛇行量の測定が可能である。
【0018】
さらに、請求項1に係る発明によれば、パスラインの垂線に対して圧延方向に傾斜した方向から板材表面を撮像するため、実際には圧延方向に板幅が同一である板材であったとしても、撮像画像の上部では2次元撮像装置からの距離が長くなるため板幅が狭く撮像され、逆に下部では2次元撮像装置からの距離が短くなるため板幅が広く撮像されることになる。従って、走査線毎に検出した各エッジ位置に対して最小自乗法を適用することにより算出される近似直線は、圧延方向に対して傾斜することになるため、当該近似直線と所定の走査線との交点位置として得られる最終的な板材のエッジ位置は、撮像視野と画素数に応じて決まる2次元撮像装置自体の分解能よりも高分解能で測定されることになる。このように、請求項1に係る発明によれば、精度の良いエッジ位置の測定、ひいては精度の良い蛇行量の測定が可能である。
【0019】
好ましくは、請求項2に記載の如く、前記第2ステップにおいて、板幅方向の走査線毎に濃度値の微分値を算出し、当該算出した微分値が最大又は最小となる位置を板材のエッジ位置として検出するように構成される。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、単に撮像画像の濃度値を所定のしきい値で2値化し、明暗の境界部をエッジ位置として検出する方法に比べ、特に熱間連続仕上圧延ミルに適用する場合に、板材の温度変化やヒューム等に起因した撮像画像の濃度値変化の影響を受け難く、より一層精度良くエッジ位置を検出でき、ひいてはより一層精度の良い蛇行量の測定が可能である。
【0021】
好ましくは、請求項3に記載の如く、前記2次元撮像装置を板幅方向に2つ並設し、前記第1ステップにおいて、各2次元撮像装置でパスラインの垂線に対して板幅方向にそれぞれ異なる角度から板材表面を撮像し、前記第4ステップにおいて、一方の2次元撮像装置による撮像画像に基づき、前記近似直線と所定の走査線との第1の交点の位置を算出すると共に、他方の2次元撮像装置による撮像画像に基づき、前記近似直線と所定の走査線との第2の交点の位置を算出し、前記第5ステップにおいて、前記第1の交点の位置に基づき、蛇行量を算出すると共に、前記第1の交点の位置と前記第2の交点の位置との差に基づき、パスラインの変動量を算出し、当該算出した変動量に基づき、前記算出した蛇行量を補正するように構成される。
【0022】
一般に、圧延スタンド間には、板材の張力制御用のルーパーが設置されているが、当該ルーパーによって板材のパスラインが変動すれば、当該パスライン変動に起因した蛇行量の測定誤差を生じる。請求項3に係る発明によれば、2次元撮像装置を板幅方向に2つ並設し、各2次元撮像装置でパスラインの垂線に対して板幅方向にそれぞれ異なる角度から板材表面を撮像するため、所謂立体視の原理により、パスライン変動に起因した交点位置(最終的な板材のエッジ位置)の変動量が、各2次元撮像装置で互いに異なる値となる。つまり、一方の2次元撮像装置による撮像画像に基づき算出した第1の交点の位置と、他方の2次元撮像装置による撮像画像に基づき算出した第2の交点の位置との差を利用すれば、パスラインの変動量を算出できることになる。従って、前記第1の交点の位置に基づき算出した蛇行量を前記算出したパスラインの変動量に基づき補正すれば、パスライン変動の影響が低減され、より一層精度良く蛇行量を測定することが可能である。
【0023】
好ましくは、請求項4に記載の如く、蛇行制御を実施する圧延スタンドと、当該圧延スタンドの直前の圧延スタンドとの略中間に撮像視野を有するように、前記2次元撮像装置は設置される。
【0024】
前述したように、連続する2つの圧延スタンドの内、板材の尾端が前段の圧延スタンドを抜けるとスタンド間張力がなくなるため、板材は急激に蛇行することになる。ここで、2次元撮像装置の撮像視野を前段の圧延スタンド近傍に設定すると、板材の尾端が前段の圧延スタンドを抜けた直後であり、蛇行の原因となる板材の曲がり量がまだ少ないため、当該撮像視野で測定した蛇行量を用いても、後段の圧延スタンドで実施する蛇行制御が適切なものとならない可能性がある。一方、2次元撮像装置の撮像視野を後段の圧延スタンド近傍に設定すると、当該圧延スタンドに付設されたサイドガイドに板材のエッジが遮蔽されたり、蛇行量を測定してから蛇行制御を行なうまでの時間に余裕がないといった問題を生じる可能性がある。
【0025】
請求項4に係る発明によれば、蛇行制御を実施する圧延スタンドと、当該圧延スタンドの直前の圧延スタンドとの略中間に撮像視野を有するように2次元撮像装置を設置するため、上記の問題を生じることなく、適切な蛇行制御に供することが可能である。
【0026】
好ましくは、請求項5に記載の如く、連続した2つの圧延スタンド間以上にそれぞれ撮像視野を有するように、前記2次元撮像装置は圧延方向に複数設置される。
【0027】
請求項5に係る発明によれば、連続した2つの圧延スタンド間以上にそれぞれ撮像視野を有するように、2次元撮像装置が圧延方向に複数設置されるため、連続した圧延スタンドで、蛇行量測定値に基づいた蛇行制御を実施することができ、絞り込みを効果的に抑制することが可能である。
【0028】
好ましくは、請求項6に記載の如く、前記2次元撮像装置は、撮像面を形成す画素の内、一部分のみを撮像画像として出力可能とされており、前記第1ステップにおいて、撮像視野内の一部分のみを撮像画像として出力することにより、フレームレートを高めるように構成される。
【0029】
請求項6に係る発明によれば、撮像面を形成する画素の内、一部分のみを撮像画像として出力し得る、所謂部分読み出し可能な2次元撮像装置を用いることにより、フレームレートを高めるため、ラインセンサ並みの応答速度で蛇行量を測定することが可能である。
【0030】
好ましくは、請求項7に記載の如く、前記第2ステップにおいて、板幅方向の走査線毎に算出した前記微分値の最大値又は最小値の絶対値を圧延方向に積算した値が、所定のしきい値を越えている場合に、前記第4ステップで算出した交点の位置を有効と判定するように構成される。
【0031】
板幅方向の走査線毎に算出した前記微分値の最大値又は最小値の絶対値を圧延方向に積算した値は、板材のエッジ位置をどの程度明瞭に検出できたかを示す指標、ひいては近似直線や交点の信頼性を示す指標になる。つまり、熱間連続仕上圧延ミルに適用する場合に、板材の温度低下やヒューム等に起因して、撮像画像の濃度値が低下すれば、板材エッジでの濃度値変化が低下し、前記微分値の最大値又は最小値の絶対値も低下することになる。従って、前記微分値の最大値又は最小値の絶対値を圧延方向に積算した値が大きければ、明瞭にエッジ位置を検出することができた走査線が多く、逆に積算した値が小さければ、明瞭にエッジ位置を検出することができた走査線が少なかったことになる。請求項7に係る発明によれば、前記積算した値が、所定のしきい値を越えている場合に、算出した交点の位置(最終的な板材のエッジ位置)を有効と判定するため、測定値の信頼性を評価することが可能である。なお、算出した交点の位置が有効と判定された場合にのみ、測定した蛇行量に基づく蛇行制御を実施するように構成すれば、異常な制御を事前に回避することができ、信頼性の高い蛇行制御を実現することができる。
【0032】
また、前記課題を解決するべく、本発明は、請求項8に記載の如く、複数の圧延スタンドを具備する圧延ミルを通板する板材に対して蛇行制御を実施するべく、当該板材の蛇行量を測定する装置であって、パスラインの垂線に対して圧延方向に傾斜した方向から、板材のエッジを含む撮像視野で板材表面を撮像する2次元撮像装置と、前記撮像画像に基づき蛇行量を算出する蛇行演算装置とを備え、前記蛇行演算装置は、前記撮像画像について、板幅方向の走査線毎に濃度値の変化を検出することにより、板材のエッジ位置を走査線毎に検出する処理と、前記走査線毎に検出した各エッジ位置に対して最小自乗法を適用することにより近似直線を算出する処理と、前記近似直線と所定の走査線との交点の位置を算出する処理と、前記交点の位置に基づき、蛇行量を算出する処理とを実行することを特徴とする蛇行測定装置としても提供される。
【0033】
好ましくは、請求項9に記載の如く、前記2次元撮像装置は、2次元カメラと、当該2次元カメラを収納する筐体とを備え、前記筐体は、前記2次元カメラの視線が通過する位置に形成された開口部と、当該開口部を介して前記筐体の内部から外部へと気体を噴出させるパージ手段とを具備するように構成される。
【0034】
本発明の発明者らは、2次元撮像装置を構成する2次元カメラのレンズ面に、ヒューム等が付着して汚れが生じるのを抑制する手段を鋭意検討した。その結果、2次元カメラを収納する筐体の当該2次元カメラの視線が通過する位置にガラス等からなる窓部を形成して、当該2次元カメラを外気から遮断すると共に、前記窓部に汚れが生じるのを抑制するべく種々のパージを施すという一般的な手段を用いた場合には、2次元カメラのレンズ面自体は無論汚れが抑制されるものの、筐体の窓部に汚れが生じるため、結果的に、頻繁にメンテナンスをしなければ、測定精度が低下したり測定不能になったりすることが分かった。これに対し、2次元カメラの視線が通過する位置に、筐体の内外部を連通させる開口部を形成し、当該開口部を介して筐体の内部から外部へとパージすれば、2次元カメラのレンズ面に汚れが生じるのを大幅に抑制できることを見出した。
【0035】
請求項9に係る発明は、以上に述べた本発明の発明者らが見出した知見に基づき完成されたものであり、筐体が、2次元カメラの視線が通過する位置に形成された開口部と、当該開口部を介して前記筐体の内部から外部へと気体を噴出させるパージ手段とを具備するため、2次元カメラのレンズ面に汚れが生じるのを大幅に抑制し、蛇行測定装置のメンテナンス性を高めることができる。
【0036】
なお、本発明は、請求項10に記載の如く、請求項1から7のいずれかに記載の蛇行測定方法によって測定された板材の蛇行量に基づき、当該蛇行量測定位置の後段に位置する圧延スタンドに対して蛇行を抑制する蛇行制御を実施することを特徴とする板材の製造方法としても提供される。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る蛇行測定方法を、鋼板を被圧延材とする熱間の連続仕上圧延ミルに適用した一実施形態について説明する。なお、本発明に係る蛇行測定方法は、鋼板や熱間圧延ミルのみを対象とするものではなく、複数の圧延スタンドを具備する圧延ミルによって圧延される板材である限りにおいて種々の対象に適用可能である。
【0038】
図1は、本実施形態に係る蛇行測定方法を実施するための蛇行測定装置を模式的に示す図であり、(a)は板幅方向から見た構成図を、(b)は(a)の矢符Aから見た部分的構成図をそれぞれ示す。また、図2は、本実施形態に係る蛇行測定装置のシステム構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る蛇行測定装置1は、鋼板Sの板幅方向(紙面奥行き方向)に並設された2次元撮像装置11、12と、2次元撮像装置11、12で撮像された鋼板S表面の撮像画像に基づき蛇行量を算出する蛇行演算装置13とを備えている。なお、本実施形態に係る蛇行測定装置1の2次元撮像装置11、12は、7つの圧延スタンド(F1〜F7)を具備する連続仕上圧延ミルの後段に位置する圧延スタンド(F4〜F6)の圧延機ハウジング内にそれぞれ設置され、F4〜F5、F5〜F6及びF6〜F7の各圧延スタンド間における蛇行をそれぞれ測定するように構成されている。図1では、特に、F6スタンドに2次元撮像装置11、12が設置され、F6〜F7の圧延スタンド間の蛇行を測定する蛇行測定装置1のみを図示している。以下、F6の圧延スタンドに2次元撮像装置11、12が設置された蛇行測定装置1について説明し、他の圧延スタンドに設置された蛇行測定装置は同様の構成であるためその説明は省略する。
【0039】
図1に示すように、2次元撮像装置11、12は、パスラインPLの垂線Nに対して圧延方向に傾斜した方向(傾斜角α)から、鋼板Sのエッジを含む撮像視野で鋼板S表面を撮像するように、また、垂線Nに対して板幅方向にそれぞれ異なる角度β、γから鋼板S表面を撮像するように配置されている。傾斜角αとしては、圧延方向に傾斜した方向から撮像し得る限り、つまり0以外の値である限りにおいて、2次元撮像装置11、12の設置箇所の環境等に応じて種々の値を設定することができる。しかしながら、より適切な蛇行制御に供する上では、蛇行制御を実施する圧延スタンドF7と、当該圧延スタンドF7の直前の圧延スタンドF6との略中間に撮像視野を有するように、傾斜角αを設定するのが好ましい。また、角度β、γは、両角度が異なる角度である限りにおいて種々の値を設定することができる。
【0040】
図3は、2次元撮像装置11の先端部の概略構成を示す断面図である。2次元撮像装置12も同様の構成を有するため、ここでは、2次元撮像装置11を例にあげて説明する。図3に示すように、2次元撮像装置11は、2次元カメラ111と、2次元カメラ111を収納する筐体112とを備えている。筐体112は、2次元カメラ111の視線が通過する位置に形成された開口部112Aと、開口部112Aを介して筐体112の内部から外部へと、図3に矢符で示す経路に沿って空気を噴出させるパージ手段とを具備している。前記パージ手段は、筐体112の後端部から筐体112内に圧縮空気を注入する空気源(図示せず)と、当該圧縮空気を2次元カメラの両側部に分岐させる分岐板(図示せず)とから構成されている。本実施形態に係る2次元撮像装置11は、以上に説明した構成を有するため、2次元カメラのレンズ面111Aに汚れが生じるのを大幅に抑制することができる。なお、本実施形態に係る2次元撮像装置11は、さらに汚れが生じるのを抑制するべく、筐体112の先端にフード113が取り付けられている。
【0041】
図2に示す2次元撮像装置11、12の各2次元カメラ111、112としては、応答速度を高める目的で、いわゆる部分読み出し可能なカメラが使用されている。通常のカメラは、撮像面を形成する全ての有効画素から濃度信号を読み出して、1つの撮像画像として出力する。これに対し、部分読み出し可能なカメラは、有効画素全数の内、一部の範囲のみを読み出すことにより、画像の出力周波数(フレームレート)を高めることができる機能を有する。
【0042】
より具体的に説明すれば、本実施形態に係る2次元カメラ111、112には、例えば、ソニー社製プログレッシブCCDカメラ(XC−HR300)を好適に使用可能である。本CCDカメラから出力される撮像画像の大きさは通常782画素×582画素で、フレームレートは最大50フレーム/秒であるが、この撮像画像の中心部分(782画素×99画素)のみを読み出すことにより、フレームレートを最大200フレーム/秒に高めることができる。本実施形態に係る2次元カメラ111、112は、斯かるCCDカメラを適用しており、撮像画像の中心部分(782画素×99画素)のみを読み出して、200フレーム/秒にフレームレートを高めた状態で使用している。これは、従来の蛇行測定用のセンサとして使用されるラインセンサの応答速度と略同等である。
【0043】
図2に示すように、本実施形態に係る2次元カメラ111、112の出力信号は、各2次元カメラ111、112にそれぞれ接続されたカメラコントローラ114、124を介して、蛇行演算装置13に出力される。ここで、カメラコントローラ114、124には、同期信号発生器14からの同期信号(200Hz)が入力され、これにより、各カメラコントローラ114、124からは、同期したフレームレート(200フレーム/秒)のビデオ信号が出力される。
【0044】
カメラコントローラ114、124からそれぞれ出力されたビデオ信号は、汎用のパーソナルコンピュータ(CPU:Pentium(登録商標)III、クロック周波数1G
Hz)から構成される蛇行演算装置13本体に装着されたマルチチャンネル画像取り込みボード131を介して同時に取り込まれる。取り込まれたビデオ信号(撮像画像)は、蛇行演算装置13内で後述する処理を施され、これにより演算された蛇行量、板幅及び測定有効信号が、蛇行演算装置13本体に装着されたD/Aカード132を介して、蛇行制御装置2(図1)に出力される。なお、蛇行制御装置2は、蛇行演算装置13から入力された蛇行量等に基づき、圧延スタンドF7の蛇行制御(レベリング制御)を実施すると共に、モニタ画面を通じて蛇行量等をガイダンス出力するように構成されている。
【0045】
以下、蛇行演算装置13で実行される処理について説明する。本実施形態に係る蛇行演算装置13は、前記撮像画像について、板幅方向の走査線毎に濃度値の変化を検出することにより、鋼板のエッジ位置を走査線毎に検出する処理と、前記走査線毎に検出した各エッジ位置に対して最小自乗法を適用することにより近似直線を算出する処理と、前記近似直線と所定の走査線との交点の位置を算出する処理と、前記交点の位置に基づき、蛇行量を算出する処理とを実行する。より具体的には、これら各処理は、蛇行演算装置13にインストールされた所定の処理プログラムによって実行される。
【0046】
図4は、本実施形態に係る蛇行演算装置において、前記各処理を実行することにより交点位置(蛇行量を算出するために用いる最終的なエッジ位置)を算出する原理を説明する説明図であり、(a)は2次元撮像装置で撮像した撮像画像の例を模式的に示す図、(b)は(a)の撮像画像に基づき算出した近似直線と所定の走査線との交点位置を算出する方法を説明する図である。
【0047】
前述したように、2次元撮像装置11、12は、圧延方向に傾斜した方向(傾斜角α)から鋼板S表面を撮像するため、図4(a)に示すように、撮像画像の上部では板幅が狭く、下部では広く撮像されることになる。ここで、図4(a)に示す板幅方向の走査線Aにおいて鋼板Sのエッジ位置を検出する場合を考える。従来のように、当該走査線Aの濃度値のみを利用してエッジ位置を検出しようとすれば、霧状水滴やヒューム等で当該走査線Aの部分が遮られることにより、エッジ位置の誤検出が生じたり、或いは、検出不能となったりする場合がある。また、例えば、幅方向782画素で最大2000mm幅の鋼板Sを撮像する場合、分解能は約2.6mm/画素(=2000/782)であり、精度良くエッジ位置を算出できないという問題もある。
【0048】
そこで、本実施形態に係る蛇行演算装置13は、図4に示すように、まず、走査線Aを中心にして上下にそれぞれ49の走査線(計99の走査線)の各走査線毎に濃度値の変化を検出することにより、鋼板Sのエッジ位置を走査線毎に検出(左右2点のエッジ位置を検出)している。次に、検出した左右の各エッジ位置に対してそれぞれ最小自乗法を適用することにより近似直線L(図4(b)では、右側の近似直線のみ図示)を算出し、さらに、近似直線Lと走査線Aとの交点Mの位置を算出して、当該交点Mを蛇行量算出に用いる最終的なエッジ位置としている。
【0049】
従って、霧状水滴やヒュームが原因で、走査線毎に検出した各エッジ位置の一部が測定誤差を含むか或いは検出不能であったとしても、検出した圧延方向(画像の上下方向)に多数のエッジ位置から最小自乗法で近似直線Lを算出し、近似直線Lと走査線Aとの交点Mを最終的な鋼板のエッジ位置とするため、安定したエッジ位置の測定、ひいては安定した蛇行量の測定が可能である。また、近似直線Lは、圧延方向に対して傾斜することになるため、近似直線Lと走査線Aとの交点Mの位置として得られる最終的な鋼板のエッジ位置は、撮像視野と画素数に応じて決まる2次元撮像装置11、12自体の分解能よりも高分解能で測定されることになる。本実施形態の場合、99の走査線毎に検出したエッジ位置に最小自乗法を適用して近似直線Lを算出しているため、走査線Aにおける1画素当りの分解能が前述した約2.6mm/画素である場合、原理的に、約0.026mmの分解能(=2.6/99)で交点Mの位置(最終的なエッジ位置)を算出することが可能である。すなわち、撮像視野と画素数に応じて決まる1画素当りの分解能を、近似直線Lの算出に用いる圧延方向の画素数で除した値の分解能を得ることができる。
【0050】
次に、前述した鋼板Sのエッジ位置を走査線毎に検出する処理について、より具体的に説明する。本実施形態では、鋼板Sの温度変化やヒューム等に起因した撮像画像の濃度値変化の影響を抑制し、精度良くエッジ位置を検出するべく、前記処理において、板幅方向の走査線毎に濃度値の微分値を算出し、当該算出した微分値が最大又は最小となる位置を鋼板Sのエッジ位置として検出している。
【0051】
図5は、本実施形態に係るエッジ位置検出処理の有効性を説明する説明図であり、(a)及び(b)の各曲線は、所定の走査線における濃度分布を示し、(c)及び(d)の各曲線は、それぞれ(a)及び(b)の濃度値に対して算出した微分値を示す。図5(a)に示すように、単に撮像画像の濃度値を所定のしきい値で2値化し、明暗の境界部をエッジ位置(左側エッジ位置L、右側エッジ位置R)として検出する方法(以下、2値化法という)、つまり、しきい値と濃度値との交点をエッジ位置として検出する方法では、鋼板Sの温度変化やヒューム等に起因した撮像画像の濃度値変化の影響を受け易く、図5(b)に示すように、大幅にエッジ位置検出誤差が大きくなる(正しい右側エッジ位置がR’であるにも関わらず、右側エッジ位置Rとして検出される)場合がある等の問題点を有している。
【0052】
これに対し、前述した本実施形態に係るエッジ位置検出処理によれば、走査線毎に算出した濃度値の微分値により、エッジ位置を検出(微分値が最大となる位置を左側エッジ位置L、最小となる位置を右側エッジ位置Rとして検出)するため、前記2値化法に比べて、鋼板Sの温度変化やヒューム等に起因した撮像画像の濃度値変化の影響を受け難い。従って、正常時(図5(c))は無論のこと、ヒューム等による濃度値の部分的低下が生じた場合(図5(d))であっても、精度良くエッジ位置を検出することができる。
【0053】
次に、前述した走査線毎に検出した各エッジ位置に対して最小自乗法を適用することにより近似直線を算出する処理について、より具体的に説明する。
【0054】
前述したように、本実施形態では、走査線毎に算出した微分値が最大又は最小となる位置を鋼板Sのエッジ位置として検出しているが、斯かる微分値の最大値又は最小値の絶対値によって、エッジ位置検出の信頼性を評価できる点にも特徴を有する。つまり、図5(c)に示すように、撮像画像が明瞭である場合には、微分値の最大値又は最小値の絶対値(以下、微分ピーク値という)が高くなり、エッジ位置検出の信頼性が高いと考えることができる。一方、図5(d)に示すように、ヒューム等でエッジが遮られている場合には、微分ピーク値(図5(d)の場合は右側エッジ位置の微分ピーク値)が低くなり、エッジ位置検出の信頼性が低いと考えることができる。このように、各走査線毎の左右の微分ピーク値は、エッジ位置検出の信頼性を反映していると考えることができるため、本実施形態では、最小自乗法を適用するに際し、微分ピーク値を重率として加味した最小自乗法を適用し、算出する近似直線の精度向上を図っている。
【0055】
より具体的には、最小自乗法により算出する近似直線Lの式をY=aX+b、撮像画像の圧延方向(上下方向)座標がXiである走査線において検出したエッジ位置の幅方向(左右方向)座標をYi、座標がXiである走査線において検出したエッジの微分ピーク値をPiとし、さらに、ΣPiXi=[PX]、ΣPi=[P]、ΣPi・Xi=[PX]、ΣPiYi=[PY]、ΣPiXiYi=[PXY]とすると、最小自乗法によって近似直線の係数a及びbを算出する特性方程式は、以下の式(1)及び式(2)になる。
[PY]=a[PX]+b[P]          ・・・(1)
[PXY]=a[PX]+b[PX]   ・・・(2)
【0056】
前記式(1)及び(2)を解けば、係数a及びbは、それぞれ以下のようになり、これにより、近似直線Lが算出される。
a=([P]・[PXY]−[PX]・[PY])/([P]・[PX]−[PX]
b=([PY]・[PX]−[PXY]・[PX])/([P]・[PX]−[PX]
【0057】
なお、[P]は、鋼板Sのエッジ位置をどの程度明瞭に検出できたかを示す指標、ひいては近似直線Lや交点Mの信頼性を示す指標になる。そこで、本実施形態に係る蛇行演算装置13は、[P]が予め設定した所定のしきい値を越えている場合にのみ、交点Mの位置を有効と判定し、測定有効信号として蛇行制御装置2に出力している。蛇行測定装置2は、測定有効信号が入力された場合にのみ、入力された蛇行量に基づき圧延スタンドF7の蛇行制御を実施するように構成されており、これにより、測定精度の悪い蛇行量によって異常な制御がなされる危険性を回避している。
【0058】
次に、前述した交点Mの位置に基づき、蛇行量を算出する処理について、より具体的に説明する。蛇行量は、一方の2次元撮像装置11で撮像した撮像画像について、例えば、撮像画像の幅方向中心を基準(座標0)として、左側の交点Mの幅方向座標をWWS1、右側の交点Mの幅方向座標をWDS1とすれば、以下の式(3)で算出することができる。
(WWS1+WDS1)/2    ・・・(3)
なお、交点Mの幅方向座標WWS1及びWDS1は、交点Mの位置を画素単位で算出した後、これに予め設定された走査線Aの1画素当りの分解能(2次元撮像装置11とパスラインとの距離Hを想定し、当該距離Hで校正された分解能)を掛けることにより実寸に換算される。
【0059】
ここで、圧延スタンド間には、図1に示すように、鋼板Sの張力制御用のルーパー3が設置されているのが一般的であるが、当該ルーパー3によって鋼板SのパスラインPLが変動すれば、当該パスライン変動に起因した測定誤差を生じる。そこで、本実施形態では、前述のように、2次元撮像装置11、12を板幅方向に2つ並設して、各2次元撮像装置11、12でパスラインPLの垂線Nに対して板幅方向にそれぞれ異なる角度β、γから板材表面を撮像し、所謂立体視の原理により、2次元撮像装置11で撮像した撮像画像に基づき算出した蛇行量を補正している。
【0060】
図6は、斯かる蛇行量の補正方法を模式的に説明する説明図である。図6に示すように、予め想定したパスラインが変動(2次元撮像装置11、12からパスラインまでの距離がHからhに変動)した場合、当該パスライン変動に起因した交点Mの位置の変動量は、各2次元撮像装置11、12で互いに異なる値となる。つまり、図6に示すように、2次元撮像装置11では、交点Mの位置が(H−h)tanαだけずれるのに対し、2次元撮像装置12では、交点M(2次元撮像装置11の撮像画像における走査線Aと、圧延方向に見て鋼板Sの同一箇所に位置する走査線で算出した交点)の位置が(H−h)tanβだけずれ、両者は異なる変動量となる。つまり、2次元撮像装置11による撮像画像に基づき算出した交点Mの幅方向座標WWS1、WDS1と、2次元撮像装置12による撮像画像に基づき算出した交点Mの幅方向座標WWS2、WDS2との差を利用すれば、図6に示す式(4)及び(5)によりパスライン変動後の距離hを算出できる(つまりパスライン変動量H−hを算出できる)ことになる。従って、2次元撮像装置11の撮像画像から得られた交点Mの位置に基づき算出した蛇行量を、前記算出したパスライン変動量(直接的には距離h)に基づき補正すれば、パスライン変動の影響が低減され、より一層精度良く蛇行量を測定することが可能である。
【0061】
なお、前記パスライン変動量に基づく補正とは、本実施形態の場合、(1)交点Mの位置が左右共に(H−h)tanαだけずれることに応じて、蛇行量も(H−h)tanαだけ変動するため、当該変動量を補正前の蛇行量から減算し、さらに、(2)パスラインまでの距離がHからhに変動することに応じて、1画素当りの分解能がh/H倍に変動するため、前記(1)での減算後の蛇行量をさらにh/H倍することを意味する。
【0062】
本実施形態のように、2次元撮像装置11、12を板幅方向に2つ並設し、一方の2次元撮像装置11で撮像した撮像画像に基づき算出した蛇行量を、両2次元撮像装置11、12で撮像した撮像画像に基づき算出したパスライン変動量で補正する構成によれば、必ずしも圧延機ハウジングの板幅方向中央に2次元撮像装置を設置する必要がなく、配管や圧延機構造物が複雑に入り込んでいる圧延機ハウジング内では、高い設置精度を要求されないという点でも効果的である。
【0063】
【実施例】
以下、実施例を示すことにより、本発明の特徴をより一層明らかにする。
本実施例に係る蛇行測定装置としては、図1〜図6を参照して前述したものと同様の全体構成を有する装置を使用した。
【0064】
より具体的には、板幅方向に並設した2つの2次元撮像装置を、連続仕上圧延ミルの後段に位置する圧延スタンド(F4〜F6)の圧延機出側のハウジング内にそれぞれ設置した。各2次元撮像装置は、パスラインから約2800mmの高さに設けたアングル部材(図1及び図2に符号4で示す)に固定し、図1における傾斜角αが約30°、角度βが約2.8°、角度γが約11.8°となるように設置した。2次元撮像装置の筐体(ステンレス製)は、100mm×100mm×200mmの寸法とすることができ、十分に小型の2次元カメラを収納可能であると共に、筐体が圧延スタンド間に突出することはなかった。また、筐体の先端には約20mmφの開口部を形成し、当該開口部を介して筐体の内部から外部へとドライエアーを噴出させた。
【0065】
2次元カメラは、ソニー社製プログレッシブCCDカメラを使用して、有効画素数782画素×99画素、フレームレート200フレーム/秒とし、1画素当りの分解能を約0.26mm(ただし、最終的なエッジ位置はこの1/99の分解能で検出される)とした。
【0066】
以上に説明した構成を有する蛇行測定装置の測定精度を評価するべく、蛇行測定装置(圧延スタンドF6に設置され、F6〜F7の圧延スタンド間の蛇行を測定する装置)によって測定した蛇行量と、バックライト及びラインセンサで構成された既設の光学式幅計(圧延スタンドF7出側の横振れを測定する装置)で測定した横振れ量とを比較した。
【0067】
図7は、本実施例に係る蛇行測定装置によって測定した蛇行量を評価した結果を示す図であり、(a)は本実施例に係る蛇行測定装置による測定結果を、(b)は既設の光学式幅計による測定結果をそれぞれ示す。図7に示すように、幅計による測定値は、圧延スタンドF7後段のダウンコイラー(D/C)に鋼板の先端が到達し、張力によって鋼板のばたつきが収まるまでは変動しているものの、その後の両装置の測定値は略一致した値を示しており、パスライン変動の影響もなく、本実施例に係る蛇行測定装置が良好な測定精度を有することが分かった。また、本実施例に係る蛇行測定装置を長期間連続使用したが、2次元カメラのレンズ面の汚れに関して3ヶ月間メンテナンス不要で使用可能であり、実際の運用上も何ら問題ないことが分かった。
【0068】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、蛇行量測定用のセンサとして、安価で且つ小型なものが種々市販されている2次元撮像装置を用いるため、熱間連続仕上圧延ミルに適用する場合、当該小型な2次元撮像装置を圧延スタンドの圧延機ハウジング内に収納することも可能である。従って、圧延ミルで作業する際や通板状況を目視する際の邪魔にならない上、2次元撮像装置上にスケールが蓄積することを抑制できるという利点を有する。また、小型な2次元撮像装置であれば、必要となるレンズも小さくて済むため、レンズ面の汚れ防止対策が容易になるという利点も有する。さらには、安価な2次元撮像装置であれば、連続した圧延スタンド間(特に絞り込みが発生し易い中間圧延スタンド以降)に数多く設置することができ、効果的な蛇行制御に供することが可能である。
【0069】
また、2次元撮像装置の撮像画像について、板材のエッジ位置を板幅方向の走査線毎に検出し、当該検出した各エッジ位置に最小自乗法を適用することにより近似直線を算出し、当該近似直線と所定の走査線との交点の位置を算出し、最後に、当該交点の位置に基づき蛇行量を算出する。換言すれば、前記交点の位置を、蛇行量を算出するための最終的な板材のエッジ位置として使用していることになる。従って、熱間連続仕上圧延ミルに適用する際に生じ得る霧状水滴やヒュームが原因で、前記走査線毎に検出した各エッジ位置の一部が測定誤差を含むか或いは検出不能であったとしても、検出した圧延方向に多数のエッジ位置から最小自乗法で近似直線を算出し、当該近似直線と所定の走査線との交点を最終的な板材のエッジ位置とするため、安定したエッジ位置の測定、ひいては安定した蛇行量の測定が可能である。
【0070】
さらに、パスラインの垂線に対して圧延方向に傾斜した方向から板材表面を撮像するため、実際には圧延方向に板幅が同一である板材であったとしても、撮像画像の上部では2次元撮像装置からの距離が長くなるため板幅が狭く撮像され、逆に下部では2次元撮像装置からの距離が短くなるため板幅が広く撮像されることになる。従って、走査線毎に検出した各エッジ位置に対して最小自乗法を適用することにより算出される近似直線は、圧延方向に対して傾斜することになるため、当該近似直線と所定の走査線との交点位置として得られる最終的な板材のエッジ位置は、撮像視野と画素数に応じて決まる2次元撮像装置自体の分解能よりも高分解能で測定されることになる。つまり、精度の良いエッジ位置の測定、ひいては精度の良い蛇行量の測定が可能であるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る蛇行測定方法を実施するための蛇行測定装置を模式的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示す蛇行測定装置のシステム構成図である。
【図3】図3は、図1に示す2次元撮像装置の先端部の概略構成を示す断面図である。
【図4】図4は、図1に示す蛇行演算装置において、蛇行量を算出するための最終的なエッジ位置を算出する原理を説明する説明図である。
【図5】図5は、図1に示す蛇行演算装置におけるエッジ位置検出処理の有効性を説明する説明図である。
【図6】図6は、図1に示す蛇行演算装置における蛇行量の補正方法を模式的に説明する説明図である。
【図7】図7は、本発明の一実施例に係る蛇行測定装置によって測定した蛇行量を評価した結果を示す図である。
【符号の説明】
1…蛇行測定装置  2…蛇行制御装置  11,12…2次元撮像装置
13…蛇行演算装置  111,112…2次元カメラ  112…筐体
112A…開口部  S…鋼板

Claims (10)

  1. 複数の圧延スタンドを具備する圧延ミルによって圧延される板材に対して蛇行制御を実施するべく、当該板材の蛇行量を測定する方法であって、
    パスラインの垂線に対して圧延方向に傾斜した方向から、板材のエッジを含む撮像視野を有する2次元撮像装置で板材表面を撮像する第1ステップと、
    前記撮像画像について、板幅方向の走査線毎に濃度値の変化を検出することにより、板材のエッジ位置を走査線毎に検出する第2ステップと、
    前記走査線毎に検出した各エッジ位置に対して最小自乗法を適用することにより近似直線を算出する第3ステップと、
    前記近似直線と所定の走査線との交点の位置を算出する第4ステップと、
    前記交点の位置に基づき、蛇行量を算出する第5ステップとを備えることを特徴とする蛇行測定方法。
  2. 前記第2ステップにおいて、板幅方向の走査線毎に濃度値の微分値を算出し、当該算出した微分値が最大又は最小となる位置を板材のエッジ位置として検出することを特徴とする請求項1に記載の蛇行測定方法。
  3. 前記2次元撮像装置を板幅方向に2つ並設し、
    前記第1ステップにおいて、各2次元撮像装置でパスラインの垂線に対して板幅方向にそれぞれ異なる角度から板材表面を撮像し、
    前記第4ステップにおいて、一方の2次元撮像装置による撮像画像に基づき、前記近似直線と所定の走査線との第1の交点の位置を算出すると共に、他方の2次元撮像装置による撮像画像に基づき、前記近似直線と所定の走査線との第2の交点の位置を算出し、
    前記第5ステップにおいて、前記第1の交点の位置に基づき、蛇行量を算出すると共に、前記第1の交点の位置と前記第2の交点の位置との差に基づき、パスラインの変動量を算出し、当該算出した変動量に基づき、前記算出した蛇行量を補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の蛇行測定方法。
  4. 蛇行制御を実施する圧延スタンドと、当該圧延スタンドの直前の圧延スタンドとの略中間に撮像視野を有するように、前記2次元撮像装置を設置することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の蛇行測定方法。
  5. 連続した2つの圧延スタンド間以上にそれぞれ撮像視野を有するように、前記2次元撮像装置を圧延方向に複数設置することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の蛇行測定方法。
  6. 前記2次元撮像装置は、撮像面を形成する画素の内、一部分のみを撮像画像として出力可能とされており、
    前記第1ステップにおいて、撮像視野内の一部分のみを撮像画像として出力することにより、フレームレートを高めることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の蛇行測定方法。
  7. 前記第2ステップにおいて、板幅方向の走査線毎に算出した前記微分値の最大値又は最小値の絶対値を圧延方向に積算した値が、所定のしきい値を越えている場合に、前記第4ステップで算出した交点の位置を有効と判定することを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載の蛇行測定方法。
  8. 複数の圧延スタンドを具備する圧延ミルを通板する板材に対して蛇行制御を実施するべく、当該板材の蛇行量を測定する装置であって、
    パスラインの垂線に対して圧延方向に傾斜した方向から、板材のエッジを含む撮像視野で板材表面を撮像する2次元撮像装置と、
    前記撮像画像に基づき蛇行量を算出する蛇行演算装置とを備え、
    前記蛇行演算装置は、
    前記撮像画像について、板幅方向の走査線毎に濃度値の変化を検出することにより、板材のエッジ位置を走査線毎に検出する処理と、
    前記走査線毎に検出した各エッジ位置に対して最小自乗法を適用することにより近似直線を算出する処理と、
    前記近似直線と所定の走査線との交点の位置を算出する処理と、
    前記交点の位置に基づき、蛇行量を算出する処理とを実行することを特徴とする蛇行測定装置。
  9. 前記2次元撮像装置は、2次元カメラと、当該2次元カメラを収納する筐体とを備え、
    前記筐体は、前記2次元カメラの視線が通過する位置に形成された開口部と、当該開口部を介して前記筐体の内部から外部へと気体を噴出させるパージ手段とを具備することを特徴とする請求項8に記載の蛇行測定装置。
  10. 請求項1から7のいずれかに記載の蛇行測定方法によって測定された板材の蛇行量に基づき、当該蛇行量測定位置の後段に位置する圧延スタンドに対して蛇行を抑制する蛇行制御を実施することを特徴とする板材の製造方法。
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