JP2004139835A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】炭素材料を主構成材料とするガス拡散層基材の厚み方向のガス拡散率と面方向のガス拡散率の比率に着目し、それらを独自の手法で測定した後に様々な比率のガス拡散層基材を、使用目的、諸条件、燃料極側か空気極側かなどに応じて用いることによって、上述したフラッディングやドライアップの問題を解決する。
【解決手段】炭素繊維で構成されガス透過性および電子伝導性を有するガス拡散基材と、前記ガス拡散基材の表面に添加された樹脂とを具備するガス拡散層において、前記ガス拡散基材の厚み方向のガス透過率x1と面方向のガス透過率x2との比Rx(x1/x2)を特定の範囲に設定する。
【選択図】 なし
【解決手段】炭素繊維で構成されガス透過性および電子伝導性を有するガス拡散基材と、前記ガス拡散基材の表面に添加された樹脂とを具備するガス拡散層において、前記ガス拡散基材の厚み方向のガス透過率x1と面方向のガス透過率x2との比Rx(x1/x2)を特定の範囲に設定する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、民生用コジェネレーション、ならびに移動体用およびモバイル用のエネルギー源として有用な燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロトン伝導性高分子膜を電解質として用いる固体高分子型燃料電池は、電解質においてプロトンを選択的に輸送し、水素などの燃料ガスと空気などの酸化ガスを白金などの触媒層を有するガス拡散電極によって電気化学的に反応させ、電気と熱とを同時に発生させる。
【0003】
高分子電解質膜の両面には、白金系の金属触媒を担持したカーボン粉末とそれを被覆するように混合する高分子電解質とを主成分とする触媒反応層を、密着して配置する。さらに、触媒反応層の外面には、ガス透過性および導電性を兼ね備えた一対のガス拡散層を密着して配置する。
このガス拡散層および触媒反応層によりガス拡散電極を構成する。パーフルオロスルホン酸など固体高分子型燃料電池の電解質膜および触媒反応層中の高分子電解質に一般的に用いられるプロトン伝導体は、導電率を確保するべく、含水機能および保湿機能を有することが必要である。この高分子電解質が乾燥するとプロトン伝導性は著しく低下する。
【0004】
ガス拡散電極の外側には、高分子電解質膜とガス拡散電極で構成された電解質膜電極接合体(MEA)を機械的に固定するとともに、隣接するMEA同士を互いに電気的に直列に接続し、さらに電極に反応ガスを供給しかつ反応により発生した水や余剰のガスを運び去るためのガス流路を設けた導電性セパレータ板(バイポーラ板とも呼ぶ)を配置する。ガス流路はセパレータ板と別に設けることもできるが、セパレータ板の表面に溝を設けてガス流路とする方式が一般的である。
【0005】
多くの燃料電池は、上記のような構造の単セルを数多く重ねた積層構造(スタックと呼ぶ)をとっている。上記のような固体高分子型燃料電池スタックでは、セパレータ板やガス拡散層等の積層する構成部品間の接触抵抗を低減するため、またガスのシール性を維持するため、電池全体を積層方向に恒常的に締め付けることが必要である。
【0006】
ガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)はガス透過性と電子伝導性を有することが必要であり、炭素繊維を主構成材料とするカーボンペーパ、炭素繊維織布のカーボンクロス、炭素繊維不織布のカーボンフェルト等をガス拡散層基材として用いことが一般的である。これらのガス拡散層基材は撥水性を付与する為にフッ素樹脂ディスパージョンなどを利用して撥水処理して用いる場合が多い。
【0007】
また、炭素粉体とフッ素樹脂などの撥水性樹脂を主成分とする層(以下、導電性撥水層と呼ぶ)をガス拡散層基材の触媒反応層側に設けることが一般的であり、高分子電解質の保湿及び電池反応により過剰となった水分の安全かつ速やかな除去やガス拡散層基材が触媒反応層や高分子電解質膜を傷つけることを回避する事などにおいて有効である。このガス拡散層は燃料電池用ガス拡散電極において集電体としての役割も担う。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、高分子電解質膜および触媒反応層の高分子電解質を常に保湿しつづけ、かつ生成水などによって余剰となった水分を速やかに電池系外へ排出することは容易ではなく、余剰水分の排出が不十分であると、凝集水がガス拡散層及び触媒反応層の気孔部やセパレータ板のガス流路を閉塞してガス拡散を阻害する状態(フラッディング)に陥りやすくなる。このような問題に対しては、例えば特許文献1に解決手段の一つが開示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−251904号公報
【0010】
フラッディングは、燃料電池のセル電圧を低下させるだけでなく、スタックにおける単セル間の性能バラツキおよび突発的な運転不能を引き起こす。逆に高分子電解質の保湿が不十分であると、高分子電解質の含水率低下に伴いイオン伝導性が低下する状態(ドライアップ)となる。これもまたセル電圧の低下を招き、さらには高分子電解質が化学的に分解されて経時的かつ不可逆的な性能劣化をも引き起こす。
【0011】
また、活物質となる反応ガスは加湿して単セルもしくはスタックへ供給するのが一般的であるが、加湿量つまり供給ガスの露点、本発明では特に空気極側の露点を下げることにより、固体高分子型燃料電池システムのシステム効率を向上させ、かつ燃料電池システムの外形サイズのコンパクト化が図れる。電池外から加湿することなく電池部の生成水のみにより高分子電解質の保湿ができることが理想である。
【0012】
そこで、本発明は、カーボンペーパやカーボンクロスなどを主構成材料とするガス拡散層基材の厚み方向のガス拡散率と面方向のガス拡散率の比率に着目し、それらを独自の手法で測定した後に様々な比率のガス拡散層基材を、使用目的、諸条件、燃料極側か空気極側かなどに応じて用いることによって、上述したフラッディングやドライアップの問題を解決し、さらには固体高分子型燃料電池の低加湿化を目的とする。ここで、上述の使用目的とは、コジェネレーション、自動車およびモバイルなどである。また、諸条件とは、加湿量、反応ガスや冷却水のフロー方向、電流密度、活物質の利用率などである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、炭素繊維で構成されガス透過性および電子伝導性を有するガス拡散基材を、樹脂添加により表面処理して得られる拡散層であって、
関係式:0.2<Rx<200
(式中、Rxは、未処理の前記ガス拡散基材の厚み方向のガス透過率x1と面方向のガス透過率x2との比x1/x2)を満たすガス拡散層を具備する燃料電池を提供する。
【0014】
この場合、アノード側には、関係式:0.2<Rx<40を満たす前記ガス拡散層を具備し、カソード側には、関係式:1<Rx<200を満たすガス拡散層を具備するのが好ましい。
【0015】
また、本発明は、炭素繊維で構成されガス透過性および電子伝導性を有するガス拡散基材を、樹脂添加により表面処理して得られるガス拡散層であって、
関係式:Ry<Rp
(式中、Ryは、未処理の前記ガス拡散基材の厚み方向のガス透過率y1と面方向のガス透過率y2との比y1/y2であり、Rpは、処理後の前記ガス拡散層の厚み方向のガス透過率をp1と面方向のガス透過率p2との比p1/p2)を満たすガス拡散層を具備する燃料電池を提供する。
ここで、前記樹脂がフッ素樹脂であるのが好ましい。上記ガス拡散層は、アノードおよびカソードの少なくとも一方に用いる。
【0016】
また、本発明は、炭素繊維で構成されガス透過性および電子伝導性を有するガス拡散基材を、樹脂添加により表面処理して得られるガス拡散層を含むカソードであって、
(1)関係式:T−Tdc≦0を満たす作動条件においては、
関係式:5<Rz<200を満たすガス拡散層基材を含むカソード、
(2)関係式:0<T−Tdc<10を満たす作動条件においては、
関係式:1<Rz<100を満たすガス拡散層基材を含むカソード、
(3)関係式:T−Tdc≧10を満たす作動条件においては、
関係式:0.2<Rz<10を満たすガス拡散層基材を含むカソード
(式中、Tは作動時の燃料電池の温度(℃)、Tdcはカソードに供給されるガスの露点(℃)、Rzは、前記ガス拡散基材の厚み方向のガス透過率Z1と面方向のガス透過率Z2との比Z1/Z2)を有する燃料電池にも関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
ガス拡散層基材の厚み方向のガス透過率をx1、面方向のガス透過率をx2とし、これらの比率をRx(Rx=x1/x2)とすると、Rxが小さいほど、つまり面方向のガス透過率が比較的良好なほどMEA面内のガス供給の分配均一性に対して有効である。また、Rxが大きいほど、つまり厚み方向のガス透過率が比較的良好なほど、固体高分子型燃料電池の電解質膜や触媒反応層で余剰となった水分の円滑な排出に対して有効である。換言すると、Rxが小さいほど電解質膜や触媒反応層の保湿に対して有効である。
【0018】
本発明はガス拡散層基材の厚み方向のガス拡散率と面方向のガス拡散率の比率が、運転条件や燃料極側であるのか空気極側であるのかなどに応じて適切な値であるものを用いることによって、MEAを良好な湿潤状態に保ちフラッディングやドライアップの課題を解決し、固体高分子型燃料電池の耐久性を向上させ、さらには固体高分子型燃料電池の低加湿化を実現することを特徴とする。
【0019】
また、炭素繊維などを主構成材料とする多孔質のガス拡散層基材を、フッ素樹脂などを用いて表面処理することによって、厚み方向のガス拡散率と面方向のガス拡散率の比率は変化する。これは、ガス拡散層基材における繊維の配向に起因する。具体的に述べると、繊維が主として面方向に延びているガス拡散層基材を樹脂で表面処理することで、繊維間が結着され面方向のガス拡散が阻害され、結果としてRxは大きくなる。このとき、フッ素樹脂を用いることが、撥水性の付加とRxの増大の相乗効果により、電解質膜や触媒反応層で過剰となった水分の円滑な排出に対してはより効果的である。
【0020】
本発明においては独自に考案した手法を用いて、ガス拡散層基材の厚み方向のガス拡散率と面方向のガス拡散率の双方を計測した。この測定法に関して概略図を参照しながら以下に述べる。ガス透過性評価装置を用いて測定するが、2種の試料セルで厚み方向と面方向のガス透過率を計測する。
【0021】
【実施例】
以下に、図面を参照しながら、実施例を用いて本発明を説明する。
図1に厚み方向のガス透過率を評価する時の試料セルの概略図を、図2に面方向のガス透過率を評価する時の試料セルの概略図を示す。ともに一定体積の空気を一定の圧力で供給して試料を通過するのに要する時間を計測してガス透過率を算出する。
【0022】
まず、種々のガス拡散層基材に対して厚み方向のガス拡散率及び面方向のガス拡散率を計測および算出した。試料となる各種ガス拡散層基材の仕様、ガス拡散率、厚み方向と面方向のガス拡散率の比率を表1に示した。ガス拡散率は東洋精機株式会社製「パーミアグラフ」を計測装置として用い、サンプルは直径30mmの円状に切り出し、50ccの空気を100mmAqの圧力で供給して、前述のように厚み方向および面方向に通過してくる時間を計測して双方のガス透過率を算出した。面方向のガス透過性を計測する時の試料セルは、ガス供給側の内径が5mmのものを用いた(図1および2参照)。
【0023】
ガス拡散層基材の炭素繊維はすべてポリアクリロニトリル(PAN)を原料としたものを用いた。また、カーボンクロスにおいて織り方は全て平織りのものを用いた。
【0024】
ここで、フッ素樹脂による表面処理について説明する。基材をフッ素樹脂含有の水性ディスパージョン(ダイキン工業(株)製のネオフロンND−1)を水で希釈したものに含浸させた後に引き上げ、乾燥させて溶媒を除去し、300℃で1時間焼成して表面処理をした。
【0025】
次に、これらの試料をガス拡散層基材として用いて固体高分子型燃料電池の単セルを作製して電池性能の評価を行った。
以下に、固体高分子型燃料電池の単セルの作製について述べる。まずこれらのガス拡散層基材サンプルの各々に導電性撥水層を塗工した。導電性撥水層について説明する。界面活性剤を添加した水にアセチレンブラック(AB)の顆粒を分散させた後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の水性ディスパージョン(ダイキン社製、D−1)を加えてよく混練したものを導電性撥水層スラリーとした。スラリーの重量組成比は水:AB:PTFE:界面活性剤=40:10:3:1とした。このスラリーをガス拡散層基材にドクターブレード法で塗工した後、電気炉で300℃、3時間焼成して界面活性剤を除去させつつ導電性撥水層をカーボンクロスに固着させた。
【0026】
表1に示した数種のガス拡散層基材試料を様々に組み合わせて電池性能を評価したが、以後はある一組のガス拡散層を一例にとって説明する。5cm×5cm角に切断した2枚1組のガス拡散層を、触媒反応層を両面に塗着した高分子電解質膜のさらに外側両面に重ね合わせ、さらに周縁部にゴム製のガスケットを位置合わせした後、100℃、5分間ホットプレスし、電極電解質膜接合体(MEA)とした。ここで触媒反応層は白金粒子または白金と他の金属との混合粒子をカーボンブラックに担持させた触媒担持カーボン粉体と高分子電解質を主成分とする。高分子電解質膜はDu Pont社製のNafion112を用いた。
【0027】
セパレータ板は厚み3mmの樹脂含浸黒鉛板に切削加工によりガス流路を施した。アノード側のガス流路はリブ幅1.0mm、溝幅1.0mm、流路本数2パスのサーペンタインタイプ流路、カソード側のガス流路はリブ幅1.0mm、溝幅1.0mm、流路本数4本のサーペンタインタイプ流路とした。
【0028】
以上の手順で作製した固体高分子型燃料電池単セルの構成断面の概略図を図3に示す。一般的にスタックにおいて、樹脂黒鉛板などの電子伝導性に優れガス透過性の低い材料の両面にガス流路を施したものを、供給ガスを隔てる役割からセパレータ板と呼ぶ。本発明における実施例は単セルであるのでガスを隔てる役割は無いが、便宜上、実施例に用いた片面にガス流路を施した樹脂黒鉛板をセパレータ板と呼ぶ。
【0029】
まず、アノード側及びカソード側のガス拡散層に、ガス拡散層基材試料のNo.1、2、4、6、8、9(表1参照)をそれぞれ組み合わせて電池性能を試験した。表2に電流密度0.2A/cm2、カソード露点Tdc=50(℃)の時のセル電圧を、表3に電流密度0.7A/cm2、カソード露点Tdc=70(℃)の時のセル電圧をまとめた。いずれの試験も電池温度T=70(℃)に保ち、アノード側には水素80%、二酸化炭素20%の加湿した混合ガスを、カソード側には加湿した空気を供給した。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
アノード露点Tdaは65(℃)、燃料利用率Ufは70%、空気利用率(酸素利用率)は40%の条件で固定した。いずれも上記の条件で電池を作動させて1時間後のセル電圧である。表2にまとめた試験条件はMEAが乾燥しやすい条件といえる。表3にまとめた試験条件はMEAがフラッディングに陥りやすい条件といえる。
【0034】
表2及び3より、アノード、カソードの少なくともどちらか一方に試料No.1もしくは試料No.9のガス拡散層基材を用いると単セルの電池電圧を著しく悪化させている。No.1の基材ではRxが小さすぎて反応ガスの厚み方向の拡散や生成水の排出が阻害されフラッディングに陥っている。またNo.9の基材では高分子電解質の保湿が不十分となりドライアップが生じている。つまり、請求項1に記載したようにガス拡散層基材の厚み方向のガス透過率と面方向のガス透過率との比率Rxにおいて、0.2<Rx<200となるガス拡散層基材を用いることが好適である。
【0035】
また、これらの表2および3にまとめた結果に関してさらに考察すると、アノード、カソードの両極において、それぞれに適切な異なるRxの範囲があることが分かった。アノード側に用いるガス拡散層は試料No.2,4,6において良好な結果が得られた。カソード側においては試料No.4,6,8において良好な結果が得られた。つまり請求項2に記載のように、アノード側には0.2<Rx<40となるガス拡散層基材を用い、カソード側には1<Rx<200となるガス拡散層基材を用いることがより好適である。これは生成水が発生するカソードにおいて厚み方向のガス透過率が大きなGDLを用いて、余剰となった水分の安全かつ速やかな排出を重視すべきであることを示している。
【0036】
次に、樹脂による表面処理に関する実施例を説明する。表1に記載したガス拡散層基材試料において、試料No.2は試料No.1と同一のカーボンペーパを5重量%FEP表面処理したもので、試料No.5は試料No.4と同一のカーボンフェルトを5重量%FEP表面処理したもので、試料No.8は試料No.7と同一のカーボンクロスを10重量%FEP表面処理したものである。
【0037】
表1から分かるように、いずれにおいても表面処理によって厚み方向と面方向のガス透過率の比率Rxは増大した。このことは樹脂による表面処理によりガス透過率の比率は調節することを示しており、さらには表面処理によりフラッディングという課題に対する解決手段のひとつになることを意味する。
【0038】
また、表面処理に用いる樹脂としては、上記で用いたテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体やポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂が撥水性を同時に付与することができるので、余剰な水分を排出する効果を勘案するとより望ましい。
【0039】
次に、運転条件、特にカソード側の加湿量に対する影響に着目しつつ行った実施結果について説明する。
アノード側のガス拡散層基材に表1の試料No.3を用い、カソード側のガス拡散層には表1の試料No.2、4、6、8を用いた高分子電解質型燃料電池の単セルを作製し電池性能を評価した。単セルは既述と同じ作製方法で図3の概念図のものである。ガス拡散層試料No.6をカソード側に用いた単セルの断面図を一例として図4に示した。アノード側には水素80%、二酸化炭素20%の加湿した混合ガスを、カソード側には加湿した空気を供給した。電流密度は0.2A/cm2、アノード露点Tdaは65(℃)、燃料利用率Ufは70%、空気利用率(酸素利用率)は40%の条件で固定した。
【0040】
ここでそれぞれの単セルに対して電池温度Tを70℃に保持し、カソード露点を50℃から75℃まで5℃ずつ変化させ、そのときの電池電圧を測定して各単セルのカソード露点の影響を評価した。本実施例ではバブラーで加湿しており、供給ガスの露点はバブラー内の水温で制御しているが、バブラーの水温が一定になってから2時間後の電池電圧をそれぞれ計測した。
【0041】
この結果を図5に示す。この結果よりカソード露点に応じて最適なガス拡散層基材の厚み方向と面方向のガス透過率の比率値があることが分かる。具体的にはこの比率が高いほど加湿の高い条件下で有利であり、この比率が低いほど加湿の低い条件下で高い性能を発揮する。ここで加湿条件は供給ガスの露点のみではなく電池温度との関係、つまり電池系内の相対湿度を重視すべきであるので、図5に示した結果はカソード露点に伴っているのではなく、むしろ電池温度Tとカソード露点Tdcとの差、T−Tdcに対して、ガス拡散層基材の厚み方向と面方向のガス透過率の比率値があることを示している。これはガス拡散層基材のガス透過率の厚み方向と面方向の比率を最適化することで高分子電解質膜及び触媒反応層の湿潤状態を最適な状態に制御することが可能であることを意味する。
【0042】
最適値については特許請求の範囲記載のとおりであり、ガス拡散層基材の厚み方向のガス透過率をz1、面方向のガス透過率をz2とし、その比率をRz(Rz=z1/z2)として、燃料電池動作時の電池温度をT(℃)、カソード供給ガスの露点をTdc(℃)とするとき、T−Tdc≦0となる作動条件の燃料電池では5<Rz<200となるガス拡散層基材をカソード側のガス拡散層基材に、0<T−Tdc<10となる作動条件の燃料電池では1<Rz<100となるガス拡散層基材をカソード側のガス拡散層基材に、T−Tdc≧10となる作動条件の燃料電池では0.2<Rz<10となるガス拡散層基材をカソード側のガス拡散層基材に用いると良い。
【0043】
さらに本発明は燃料電池の耐久性向上にも効果を発揮した。図5で比較した前記の4種の単セルをそれぞれが最も高いセル電圧を示す加湿条件つまりカソード側供給ガスの露点条件で連続運転を行ったが、いずれの単セルも5000時間後の電池電圧の低下ΔVは−12mV以内であった。
【0044】
【発明の効果】
ガス拡散層基材の厚み方向のガス拡散率と面方向のガス拡散率の比率が、作動条件や燃料極側であるのか空気極側であるのかなどに応じて適切な値であるものに変えることによって、MEAを良好な湿潤状態に保ちフラッディングやドライアップの課題を解決し、固体高分子型燃料電池の耐久性を向上させ、さらには固体高分子型燃料電池の低加湿化を実現した。
【図面の簡単な説明】
【図1】厚み方向のガス透過率を測定する時の試料セルの概略図である。
【図2】面方向のガス透過率を測定する時の試料セルの概略図である。
【図3】固体高分子型燃料電池の単セルの構成断面の概略図である。
【図4】GDL試料No.3をアノード側、No.6をカソード側に配した高分子電解質型燃料電池の単セルの断面図である。
【図5】単セルの電池電圧とカソード露点の影響を評価した結果を示した図である。
【符号の説明】
1、11 高分子電解質膜
2、12 触媒反応層
3 ガス拡散層
4 電極
5 電極電解質膜接合体(MEA)
6 ガス流路
7 セパレータ板
8 ガスケット
13 導電性撥水層
14 ガス拡散層基材 試料No.3(カーボンペーパ)
15 ガス拡散層基材 試料No.6(カーボンクロス)
【発明の属する技術分野】
本発明は、民生用コジェネレーション、ならびに移動体用およびモバイル用のエネルギー源として有用な燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロトン伝導性高分子膜を電解質として用いる固体高分子型燃料電池は、電解質においてプロトンを選択的に輸送し、水素などの燃料ガスと空気などの酸化ガスを白金などの触媒層を有するガス拡散電極によって電気化学的に反応させ、電気と熱とを同時に発生させる。
【0003】
高分子電解質膜の両面には、白金系の金属触媒を担持したカーボン粉末とそれを被覆するように混合する高分子電解質とを主成分とする触媒反応層を、密着して配置する。さらに、触媒反応層の外面には、ガス透過性および導電性を兼ね備えた一対のガス拡散層を密着して配置する。
このガス拡散層および触媒反応層によりガス拡散電極を構成する。パーフルオロスルホン酸など固体高分子型燃料電池の電解質膜および触媒反応層中の高分子電解質に一般的に用いられるプロトン伝導体は、導電率を確保するべく、含水機能および保湿機能を有することが必要である。この高分子電解質が乾燥するとプロトン伝導性は著しく低下する。
【0004】
ガス拡散電極の外側には、高分子電解質膜とガス拡散電極で構成された電解質膜電極接合体(MEA)を機械的に固定するとともに、隣接するMEA同士を互いに電気的に直列に接続し、さらに電極に反応ガスを供給しかつ反応により発生した水や余剰のガスを運び去るためのガス流路を設けた導電性セパレータ板(バイポーラ板とも呼ぶ)を配置する。ガス流路はセパレータ板と別に設けることもできるが、セパレータ板の表面に溝を設けてガス流路とする方式が一般的である。
【0005】
多くの燃料電池は、上記のような構造の単セルを数多く重ねた積層構造(スタックと呼ぶ)をとっている。上記のような固体高分子型燃料電池スタックでは、セパレータ板やガス拡散層等の積層する構成部品間の接触抵抗を低減するため、またガスのシール性を維持するため、電池全体を積層方向に恒常的に締め付けることが必要である。
【0006】
ガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)はガス透過性と電子伝導性を有することが必要であり、炭素繊維を主構成材料とするカーボンペーパ、炭素繊維織布のカーボンクロス、炭素繊維不織布のカーボンフェルト等をガス拡散層基材として用いことが一般的である。これらのガス拡散層基材は撥水性を付与する為にフッ素樹脂ディスパージョンなどを利用して撥水処理して用いる場合が多い。
【0007】
また、炭素粉体とフッ素樹脂などの撥水性樹脂を主成分とする層(以下、導電性撥水層と呼ぶ)をガス拡散層基材の触媒反応層側に設けることが一般的であり、高分子電解質の保湿及び電池反応により過剰となった水分の安全かつ速やかな除去やガス拡散層基材が触媒反応層や高分子電解質膜を傷つけることを回避する事などにおいて有効である。このガス拡散層は燃料電池用ガス拡散電極において集電体としての役割も担う。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、高分子電解質膜および触媒反応層の高分子電解質を常に保湿しつづけ、かつ生成水などによって余剰となった水分を速やかに電池系外へ排出することは容易ではなく、余剰水分の排出が不十分であると、凝集水がガス拡散層及び触媒反応層の気孔部やセパレータ板のガス流路を閉塞してガス拡散を阻害する状態(フラッディング)に陥りやすくなる。このような問題に対しては、例えば特許文献1に解決手段の一つが開示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−251904号公報
【0010】
フラッディングは、燃料電池のセル電圧を低下させるだけでなく、スタックにおける単セル間の性能バラツキおよび突発的な運転不能を引き起こす。逆に高分子電解質の保湿が不十分であると、高分子電解質の含水率低下に伴いイオン伝導性が低下する状態(ドライアップ)となる。これもまたセル電圧の低下を招き、さらには高分子電解質が化学的に分解されて経時的かつ不可逆的な性能劣化をも引き起こす。
【0011】
また、活物質となる反応ガスは加湿して単セルもしくはスタックへ供給するのが一般的であるが、加湿量つまり供給ガスの露点、本発明では特に空気極側の露点を下げることにより、固体高分子型燃料電池システムのシステム効率を向上させ、かつ燃料電池システムの外形サイズのコンパクト化が図れる。電池外から加湿することなく電池部の生成水のみにより高分子電解質の保湿ができることが理想である。
【0012】
そこで、本発明は、カーボンペーパやカーボンクロスなどを主構成材料とするガス拡散層基材の厚み方向のガス拡散率と面方向のガス拡散率の比率に着目し、それらを独自の手法で測定した後に様々な比率のガス拡散層基材を、使用目的、諸条件、燃料極側か空気極側かなどに応じて用いることによって、上述したフラッディングやドライアップの問題を解決し、さらには固体高分子型燃料電池の低加湿化を目的とする。ここで、上述の使用目的とは、コジェネレーション、自動車およびモバイルなどである。また、諸条件とは、加湿量、反応ガスや冷却水のフロー方向、電流密度、活物質の利用率などである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、炭素繊維で構成されガス透過性および電子伝導性を有するガス拡散基材を、樹脂添加により表面処理して得られる拡散層であって、
関係式:0.2<Rx<200
(式中、Rxは、未処理の前記ガス拡散基材の厚み方向のガス透過率x1と面方向のガス透過率x2との比x1/x2)を満たすガス拡散層を具備する燃料電池を提供する。
【0014】
この場合、アノード側には、関係式:0.2<Rx<40を満たす前記ガス拡散層を具備し、カソード側には、関係式:1<Rx<200を満たすガス拡散層を具備するのが好ましい。
【0015】
また、本発明は、炭素繊維で構成されガス透過性および電子伝導性を有するガス拡散基材を、樹脂添加により表面処理して得られるガス拡散層であって、
関係式:Ry<Rp
(式中、Ryは、未処理の前記ガス拡散基材の厚み方向のガス透過率y1と面方向のガス透過率y2との比y1/y2であり、Rpは、処理後の前記ガス拡散層の厚み方向のガス透過率をp1と面方向のガス透過率p2との比p1/p2)を満たすガス拡散層を具備する燃料電池を提供する。
ここで、前記樹脂がフッ素樹脂であるのが好ましい。上記ガス拡散層は、アノードおよびカソードの少なくとも一方に用いる。
【0016】
また、本発明は、炭素繊維で構成されガス透過性および電子伝導性を有するガス拡散基材を、樹脂添加により表面処理して得られるガス拡散層を含むカソードであって、
(1)関係式:T−Tdc≦0を満たす作動条件においては、
関係式:5<Rz<200を満たすガス拡散層基材を含むカソード、
(2)関係式:0<T−Tdc<10を満たす作動条件においては、
関係式:1<Rz<100を満たすガス拡散層基材を含むカソード、
(3)関係式:T−Tdc≧10を満たす作動条件においては、
関係式:0.2<Rz<10を満たすガス拡散層基材を含むカソード
(式中、Tは作動時の燃料電池の温度(℃)、Tdcはカソードに供給されるガスの露点(℃)、Rzは、前記ガス拡散基材の厚み方向のガス透過率Z1と面方向のガス透過率Z2との比Z1/Z2)を有する燃料電池にも関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
ガス拡散層基材の厚み方向のガス透過率をx1、面方向のガス透過率をx2とし、これらの比率をRx(Rx=x1/x2)とすると、Rxが小さいほど、つまり面方向のガス透過率が比較的良好なほどMEA面内のガス供給の分配均一性に対して有効である。また、Rxが大きいほど、つまり厚み方向のガス透過率が比較的良好なほど、固体高分子型燃料電池の電解質膜や触媒反応層で余剰となった水分の円滑な排出に対して有効である。換言すると、Rxが小さいほど電解質膜や触媒反応層の保湿に対して有効である。
【0018】
本発明はガス拡散層基材の厚み方向のガス拡散率と面方向のガス拡散率の比率が、運転条件や燃料極側であるのか空気極側であるのかなどに応じて適切な値であるものを用いることによって、MEAを良好な湿潤状態に保ちフラッディングやドライアップの課題を解決し、固体高分子型燃料電池の耐久性を向上させ、さらには固体高分子型燃料電池の低加湿化を実現することを特徴とする。
【0019】
また、炭素繊維などを主構成材料とする多孔質のガス拡散層基材を、フッ素樹脂などを用いて表面処理することによって、厚み方向のガス拡散率と面方向のガス拡散率の比率は変化する。これは、ガス拡散層基材における繊維の配向に起因する。具体的に述べると、繊維が主として面方向に延びているガス拡散層基材を樹脂で表面処理することで、繊維間が結着され面方向のガス拡散が阻害され、結果としてRxは大きくなる。このとき、フッ素樹脂を用いることが、撥水性の付加とRxの増大の相乗効果により、電解質膜や触媒反応層で過剰となった水分の円滑な排出に対してはより効果的である。
【0020】
本発明においては独自に考案した手法を用いて、ガス拡散層基材の厚み方向のガス拡散率と面方向のガス拡散率の双方を計測した。この測定法に関して概略図を参照しながら以下に述べる。ガス透過性評価装置を用いて測定するが、2種の試料セルで厚み方向と面方向のガス透過率を計測する。
【0021】
【実施例】
以下に、図面を参照しながら、実施例を用いて本発明を説明する。
図1に厚み方向のガス透過率を評価する時の試料セルの概略図を、図2に面方向のガス透過率を評価する時の試料セルの概略図を示す。ともに一定体積の空気を一定の圧力で供給して試料を通過するのに要する時間を計測してガス透過率を算出する。
【0022】
まず、種々のガス拡散層基材に対して厚み方向のガス拡散率及び面方向のガス拡散率を計測および算出した。試料となる各種ガス拡散層基材の仕様、ガス拡散率、厚み方向と面方向のガス拡散率の比率を表1に示した。ガス拡散率は東洋精機株式会社製「パーミアグラフ」を計測装置として用い、サンプルは直径30mmの円状に切り出し、50ccの空気を100mmAqの圧力で供給して、前述のように厚み方向および面方向に通過してくる時間を計測して双方のガス透過率を算出した。面方向のガス透過性を計測する時の試料セルは、ガス供給側の内径が5mmのものを用いた(図1および2参照)。
【0023】
ガス拡散層基材の炭素繊維はすべてポリアクリロニトリル(PAN)を原料としたものを用いた。また、カーボンクロスにおいて織り方は全て平織りのものを用いた。
【0024】
ここで、フッ素樹脂による表面処理について説明する。基材をフッ素樹脂含有の水性ディスパージョン(ダイキン工業(株)製のネオフロンND−1)を水で希釈したものに含浸させた後に引き上げ、乾燥させて溶媒を除去し、300℃で1時間焼成して表面処理をした。
【0025】
次に、これらの試料をガス拡散層基材として用いて固体高分子型燃料電池の単セルを作製して電池性能の評価を行った。
以下に、固体高分子型燃料電池の単セルの作製について述べる。まずこれらのガス拡散層基材サンプルの各々に導電性撥水層を塗工した。導電性撥水層について説明する。界面活性剤を添加した水にアセチレンブラック(AB)の顆粒を分散させた後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の水性ディスパージョン(ダイキン社製、D−1)を加えてよく混練したものを導電性撥水層スラリーとした。スラリーの重量組成比は水:AB:PTFE:界面活性剤=40:10:3:1とした。このスラリーをガス拡散層基材にドクターブレード法で塗工した後、電気炉で300℃、3時間焼成して界面活性剤を除去させつつ導電性撥水層をカーボンクロスに固着させた。
【0026】
表1に示した数種のガス拡散層基材試料を様々に組み合わせて電池性能を評価したが、以後はある一組のガス拡散層を一例にとって説明する。5cm×5cm角に切断した2枚1組のガス拡散層を、触媒反応層を両面に塗着した高分子電解質膜のさらに外側両面に重ね合わせ、さらに周縁部にゴム製のガスケットを位置合わせした後、100℃、5分間ホットプレスし、電極電解質膜接合体(MEA)とした。ここで触媒反応層は白金粒子または白金と他の金属との混合粒子をカーボンブラックに担持させた触媒担持カーボン粉体と高分子電解質を主成分とする。高分子電解質膜はDu Pont社製のNafion112を用いた。
【0027】
セパレータ板は厚み3mmの樹脂含浸黒鉛板に切削加工によりガス流路を施した。アノード側のガス流路はリブ幅1.0mm、溝幅1.0mm、流路本数2パスのサーペンタインタイプ流路、カソード側のガス流路はリブ幅1.0mm、溝幅1.0mm、流路本数4本のサーペンタインタイプ流路とした。
【0028】
以上の手順で作製した固体高分子型燃料電池単セルの構成断面の概略図を図3に示す。一般的にスタックにおいて、樹脂黒鉛板などの電子伝導性に優れガス透過性の低い材料の両面にガス流路を施したものを、供給ガスを隔てる役割からセパレータ板と呼ぶ。本発明における実施例は単セルであるのでガスを隔てる役割は無いが、便宜上、実施例に用いた片面にガス流路を施した樹脂黒鉛板をセパレータ板と呼ぶ。
【0029】
まず、アノード側及びカソード側のガス拡散層に、ガス拡散層基材試料のNo.1、2、4、6、8、9(表1参照)をそれぞれ組み合わせて電池性能を試験した。表2に電流密度0.2A/cm2、カソード露点Tdc=50(℃)の時のセル電圧を、表3に電流密度0.7A/cm2、カソード露点Tdc=70(℃)の時のセル電圧をまとめた。いずれの試験も電池温度T=70(℃)に保ち、アノード側には水素80%、二酸化炭素20%の加湿した混合ガスを、カソード側には加湿した空気を供給した。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
アノード露点Tdaは65(℃)、燃料利用率Ufは70%、空気利用率(酸素利用率)は40%の条件で固定した。いずれも上記の条件で電池を作動させて1時間後のセル電圧である。表2にまとめた試験条件はMEAが乾燥しやすい条件といえる。表3にまとめた試験条件はMEAがフラッディングに陥りやすい条件といえる。
【0034】
表2及び3より、アノード、カソードの少なくともどちらか一方に試料No.1もしくは試料No.9のガス拡散層基材を用いると単セルの電池電圧を著しく悪化させている。No.1の基材ではRxが小さすぎて反応ガスの厚み方向の拡散や生成水の排出が阻害されフラッディングに陥っている。またNo.9の基材では高分子電解質の保湿が不十分となりドライアップが生じている。つまり、請求項1に記載したようにガス拡散層基材の厚み方向のガス透過率と面方向のガス透過率との比率Rxにおいて、0.2<Rx<200となるガス拡散層基材を用いることが好適である。
【0035】
また、これらの表2および3にまとめた結果に関してさらに考察すると、アノード、カソードの両極において、それぞれに適切な異なるRxの範囲があることが分かった。アノード側に用いるガス拡散層は試料No.2,4,6において良好な結果が得られた。カソード側においては試料No.4,6,8において良好な結果が得られた。つまり請求項2に記載のように、アノード側には0.2<Rx<40となるガス拡散層基材を用い、カソード側には1<Rx<200となるガス拡散層基材を用いることがより好適である。これは生成水が発生するカソードにおいて厚み方向のガス透過率が大きなGDLを用いて、余剰となった水分の安全かつ速やかな排出を重視すべきであることを示している。
【0036】
次に、樹脂による表面処理に関する実施例を説明する。表1に記載したガス拡散層基材試料において、試料No.2は試料No.1と同一のカーボンペーパを5重量%FEP表面処理したもので、試料No.5は試料No.4と同一のカーボンフェルトを5重量%FEP表面処理したもので、試料No.8は試料No.7と同一のカーボンクロスを10重量%FEP表面処理したものである。
【0037】
表1から分かるように、いずれにおいても表面処理によって厚み方向と面方向のガス透過率の比率Rxは増大した。このことは樹脂による表面処理によりガス透過率の比率は調節することを示しており、さらには表面処理によりフラッディングという課題に対する解決手段のひとつになることを意味する。
【0038】
また、表面処理に用いる樹脂としては、上記で用いたテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体やポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂が撥水性を同時に付与することができるので、余剰な水分を排出する効果を勘案するとより望ましい。
【0039】
次に、運転条件、特にカソード側の加湿量に対する影響に着目しつつ行った実施結果について説明する。
アノード側のガス拡散層基材に表1の試料No.3を用い、カソード側のガス拡散層には表1の試料No.2、4、6、8を用いた高分子電解質型燃料電池の単セルを作製し電池性能を評価した。単セルは既述と同じ作製方法で図3の概念図のものである。ガス拡散層試料No.6をカソード側に用いた単セルの断面図を一例として図4に示した。アノード側には水素80%、二酸化炭素20%の加湿した混合ガスを、カソード側には加湿した空気を供給した。電流密度は0.2A/cm2、アノード露点Tdaは65(℃)、燃料利用率Ufは70%、空気利用率(酸素利用率)は40%の条件で固定した。
【0040】
ここでそれぞれの単セルに対して電池温度Tを70℃に保持し、カソード露点を50℃から75℃まで5℃ずつ変化させ、そのときの電池電圧を測定して各単セルのカソード露点の影響を評価した。本実施例ではバブラーで加湿しており、供給ガスの露点はバブラー内の水温で制御しているが、バブラーの水温が一定になってから2時間後の電池電圧をそれぞれ計測した。
【0041】
この結果を図5に示す。この結果よりカソード露点に応じて最適なガス拡散層基材の厚み方向と面方向のガス透過率の比率値があることが分かる。具体的にはこの比率が高いほど加湿の高い条件下で有利であり、この比率が低いほど加湿の低い条件下で高い性能を発揮する。ここで加湿条件は供給ガスの露点のみではなく電池温度との関係、つまり電池系内の相対湿度を重視すべきであるので、図5に示した結果はカソード露点に伴っているのではなく、むしろ電池温度Tとカソード露点Tdcとの差、T−Tdcに対して、ガス拡散層基材の厚み方向と面方向のガス透過率の比率値があることを示している。これはガス拡散層基材のガス透過率の厚み方向と面方向の比率を最適化することで高分子電解質膜及び触媒反応層の湿潤状態を最適な状態に制御することが可能であることを意味する。
【0042】
最適値については特許請求の範囲記載のとおりであり、ガス拡散層基材の厚み方向のガス透過率をz1、面方向のガス透過率をz2とし、その比率をRz(Rz=z1/z2)として、燃料電池動作時の電池温度をT(℃)、カソード供給ガスの露点をTdc(℃)とするとき、T−Tdc≦0となる作動条件の燃料電池では5<Rz<200となるガス拡散層基材をカソード側のガス拡散層基材に、0<T−Tdc<10となる作動条件の燃料電池では1<Rz<100となるガス拡散層基材をカソード側のガス拡散層基材に、T−Tdc≧10となる作動条件の燃料電池では0.2<Rz<10となるガス拡散層基材をカソード側のガス拡散層基材に用いると良い。
【0043】
さらに本発明は燃料電池の耐久性向上にも効果を発揮した。図5で比較した前記の4種の単セルをそれぞれが最も高いセル電圧を示す加湿条件つまりカソード側供給ガスの露点条件で連続運転を行ったが、いずれの単セルも5000時間後の電池電圧の低下ΔVは−12mV以内であった。
【0044】
【発明の効果】
ガス拡散層基材の厚み方向のガス拡散率と面方向のガス拡散率の比率が、作動条件や燃料極側であるのか空気極側であるのかなどに応じて適切な値であるものに変えることによって、MEAを良好な湿潤状態に保ちフラッディングやドライアップの課題を解決し、固体高分子型燃料電池の耐久性を向上させ、さらには固体高分子型燃料電池の低加湿化を実現した。
【図面の簡単な説明】
【図1】厚み方向のガス透過率を測定する時の試料セルの概略図である。
【図2】面方向のガス透過率を測定する時の試料セルの概略図である。
【図3】固体高分子型燃料電池の単セルの構成断面の概略図である。
【図4】GDL試料No.3をアノード側、No.6をカソード側に配した高分子電解質型燃料電池の単セルの断面図である。
【図5】単セルの電池電圧とカソード露点の影響を評価した結果を示した図である。
【符号の説明】
1、11 高分子電解質膜
2、12 触媒反応層
3 ガス拡散層
4 電極
5 電極電解質膜接合体(MEA)
6 ガス流路
7 セパレータ板
8 ガスケット
13 導電性撥水層
14 ガス拡散層基材 試料No.3(カーボンペーパ)
15 ガス拡散層基材 試料No.6(カーボンクロス)
Claims (5)
- 炭素繊維で構成されガス透過性および電子伝導性を有するガス拡散基材を、樹脂添加により表面処理して得られるガス拡散層であって、
関係式:0.2<Rx<200
(式中、Rxは、未処理の前記ガス拡散基材の厚み方向のガス透過率x1と面方向のガス透過率x2との比x1/x2)を満たすガス拡散層を具備する燃料電池。 - アノード側には、関係式:0.2<Rx<40を満たす前記ガス拡散層を具備し、カソード側には、関係式:1<Rx<200を満たすガス拡散層を具備することを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
- 炭素繊維で構成されガス透過性および電子伝導性を有するガス拡散基材を、樹脂添加により表面処理して得られるガス拡散層であって、
関係式:Ry<Rp
(式中、Ryは、未処理の前記ガス拡散基材の厚み方向のガス透過率y1と面方向のガス透過率y2との比y1/y2であり、Rpは、処理後の前記ガス拡散層の厚み方向のガス透過率をp1と面方向のガス透過率p2との比p1/p2)を満たすガス拡散層を具備する燃料電池。 - 前記樹脂がフッ素樹脂であることを特徴とする請求項3記載の燃料電池。
- 炭素繊維で構成されガス透過性および電子伝導性を有するガス拡散基材を、樹脂添加により表面処理して得られるガス拡散層を含むカソードであって、
(1)関係式:T−Tdc≦0を満たす作動条件においては、
関係式:5<Rz<200を満たすガス拡散層基材を含むカソード、
(2)関係式:0<T−Tdc<10を満たす作動条件においては、
関係式:1<Rz<100を満たすガス拡散層基材を含むカソード、
(3)関係式:T−Tdc≧10を満たす作動条件においては、
関係式:0.2<Rz<10を満たすガス拡散層基材を含むカソード
(式中、Tは作動時の燃料電池の温度(℃)、Tdcはカソードに供給されるガスの露点(℃)、Rzは、前記ガス拡散基材の厚み方向のガス透過率Z1と面方向のガス透過率Z2との比Z1/Z2)を有する燃料電池。
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