JP2004139706A - 光ディスク用紫外線硬化型組成物及び光ディスク - Google Patents
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Abstract
【課題】銀または銀を主成分とする合金の変質防止能に優れ、光ディスク基板の貼り合わせ接着剤として適する紫外線硬化型組成物の提供、および高温高湿の過酷な環境条件や、太陽光あるいは蛍光灯等に曝露した後でも信号の読み取りエラー(PIエラー)比の増加や外観変化が少なく、金を半透明膜とした貼り合わせ光ディスクと同等の高耐久性を有する、銀または銀を主成分とする合金を半透明膜または反射膜とした貼り合わせ光ディスクの提供。
【解決手段】光重合性化合物と光重合開始剤とを含む紫外線硬化型組成物において、下記一般式(Ι)
【化1】
(ここで、R1及びR2は、それぞれが同一でも異なる構造であっても良い、非置換の又は置換された、C1〜C6の分岐状又は直鎖状のアルキル基を表す)
で表わされる特定のチオフェン化合物を含有する組成物とすること、および該組成物を貼り合わせ用の接着剤として使用した貼り合わせ光ディスクとする。
【選択図】 なし
【解決手段】光重合性化合物と光重合開始剤とを含む紫外線硬化型組成物において、下記一般式(Ι)
【化1】
(ここで、R1及びR2は、それぞれが同一でも異なる構造であっても良い、非置換の又は置換された、C1〜C6の分岐状又は直鎖状のアルキル基を表す)
で表わされる特定のチオフェン化合物を含有する組成物とすること、および該組成物を貼り合わせ用の接着剤として使用した貼り合わせ光ディスクとする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、貼り合わせ光ディスクに関し、更に詳しくは、前記光ディスクを製造する際に貼り合わせ用接着剤とする紫外線硬化型組成物、および該組成物を用いた前記光ディスクの耐久性の技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
貼り合わせ光ディスクの代表例としては、DVD(ディジタルバーサタイルディスク又はディジタルビデオディスク)がある。このDVDは、少なくとも1枚の光ディスク基板には情報記録層を形成した、2枚の光ディスク基板を貼り合わせる方法で作製し、その貼り合わせ剤としては、紫外線硬化型組成物からなる接着剤を使用することが一般的である。
ここで、情報記録層とは、ポリカーボネート等の光ディスク用合成樹脂基板に形成したピットと称する凹凸、相変化材料や色素等からなる層およびその上に形成した最外層としての、一般的には金属または金属合金の薄膜である、半透明膜または反射膜の層との積層体を指す。
【0003】
DVDにおいては、再生専用型の場合、貼り合わせる2枚の光ディスク基板の構成に基づき、各種のタイプが存在する。例えば、「DVD−10」と称するものは、貼り合わせる2枚がそれぞれ、ポリカーボネート基板の片面に記録情報に対応するピットと称する凹凸を設け、その上に情報読み取り用のレーザー光反射膜として、例えばアルミニウムの層を形成して情報記録層としたものであり、また、「DVD−5」は、「DVD−10」における1枚を情報記録層がない透明なポリカーボネート基板そのものとしたものであり、また、「DVD−9」は、1枚を金または金を主成分とする合金或いは銀または銀を主成分とする合金或いはケイ素化合物等からなる半透明膜により情報記録層を形成したものである。さらには、「DVD−18」と称する、片面に2層の情報記録層を有する基板を2枚貼り合わせた構造のものもある。現在では記録容量が大きく片面から2層の情報を読み取れる「DVD−9」が主流になっている。
【0004】
この「DVD−9」等の半透明膜としては、金またはケイ素化合物が主として使用されている。しかし、金は材料の値段が非常に高くコスト面のため不利であり、またケイ素化合物は成膜が非常に困難であるという欠点を持つ。そのため、両者の欠点をカバーし、比較的に低コストであって成膜も容易である銀または銀を主成分とする合金への置き換えが盛んに検討されている。
【0005】
しかしながら、銀または銀を主成分とする合金を半透明膜として使用した「DVD−9」(以下、「銀合金DVD−9」と称する。)の作製にあたり、接着剤として、金またはケイ素化合物を半透明膜として用いる「DVD−9」用として開発された従来の紫外線硬化型接着剤を使用した場合には、「銀合金DVD−9」の耐久性を著しく劣化させるという欠点が有り、問題があった。すなわち、従来の接着剤を使用した「銀合金DVD−9」では、高温高湿環境下に長時間曝露した場合、その接着剤の影響により、銀または銀を主成分とする合金の表面が変質して、信号の読み取りエラーの増加や外観不良などを生じさせた。
【0006】
また、このような高温高湿試験における耐久性低下の問題に加えて、「銀合金DVD−9」を太陽光や蛍光灯等の室内灯に暴露する耐光性試験を行った場合、半透明膜側が黄変あるいは黒変して反射率の低下を引き起こし、情報の読み取りが不可能になるという新たな問題が見つかった。
【0007】
前記高温高湿試験での問題の解決に対しては、DVD用の貼り合わせ接着剤として、3官能以上の多官能(メタ)アクリル酸エステル5〜70重量%、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールのジアクリル酸エステル95〜30重量%から成る光ディスク用樹脂組成物を使用することが開示されている(例えば、特許文献1)。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−3539号公報(第2−3頁)
【0009】
また、大気中・80℃・1時間放置後の重量損失が2%以下、さらには、同重量損失で1%以下の成分を80重量%以上含有の光ディスク貼り合わせ用紫外線硬化性接着剤組成物が開示されている(例えば、特許文献2)。
【0010】
【特許文献2】
特開2002−114949号公報(第2−3頁)
【0011】
そしてさらに、フェニルチオエチル(メタ)アクリレート類を含有させた紫外線硬化型組成物により接着した「銀合金DVD−9」は、80℃85%RH500時間の高温高湿環境試験負荷後においても、半透明膜の変色やピンホールの発生がなく、金を半透明膜とした「DVD−9」と同等の耐久性が得られることが開示されている(例えば、特許文献3)。
【0012】
【特許文献3】
特開特開2002−212514号公報(第2および第6頁)
【0013】
しかしながら、上記提案によっても、高温高湿試験での「銀合金DVD−9」の耐久性は、未だ、不十分であった。
その上さらに、耐光性に関して全く考慮されていないことにより、耐光性試験を行った場合、半透明膜側は著しく変色して反射率が低下した。そして、この耐光性改善に関する接着剤の側からの具体的な開示は、未だ、見当たらない。
【0014】
このように、高温高湿環境試験と、太陽光や蛍光灯等の室内灯に暴露する耐光性試験との両試験において、半透明膜の変質を十分に防止できる紫外線硬化型接着剤組成物は存在せず、問題であった。そのため、「銀合金DVD−9」の実用化を容易にする紫外線硬化型接着剤組成物の開発が強く望まれていた。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような状況に鑑み、本発明の目的は、銀または銀を主成分とする合金の変質防止能に優れ、光ディスク基板の貼り合わせ接着剤として適する紫外線硬化型組成物の提供、およびその組成物を使用することにより、高温高湿の過酷な環境条件や、太陽光あるいは蛍光灯等に曝露した後でも信号の読み取りエラー(PIエラー)比の増加や外観変化が少なく、金を半透明膜とした貼り合わせ光ディスクと同等の高耐久性を有する、銀または銀を主成分とする合金を半透明膜または反射膜とした貼り合わせ光ディスクの提供である。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、紫外線硬化型組成物に特定のチオフェン構造を有する特定の化合物を添加することにより、銀または銀を主成分とする合金の変質防止能を格段と向上させることが出来ることを見いだし、さらに、その組成物を貼り合わせ光ディスク用の貼り合わせ接着剤として使用することにより、本発明の目的が達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0017】
すなわち本発明は、光重合性化合物と光重合開始剤とを含む紫外線硬化型組成物であって、下記一般式(Ι)
【化2】
(ここで、R1及びR2は、それぞれが同一でも異なる構造であっても良い、非置換の又は置換された、C1〜C6の分岐状又は直鎖状のアルキル基を表す)
で表わされるチオフェン化合物を含有する光ディスク用紫外線硬化型組成物である。
【0018】
また、本発明は、少なくとも1枚の基板には最外層としての半透明膜または反射膜で構成される情報記録層が形成されている2枚の光ディスク基板を紫外線硬化型組成物で接着した貼り合わせ光ディスクにおいて、前記紫外線硬化型組成物として、上記特定のチオフェン化合物を含有する光ディスク用紫外線硬化型組成物を使用した貼り合わせ光ディスクである。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の紫外線硬化型組成物は、前記チオフェン化合物および光重合性化合物並びに光重合開始剤を必須成分とする。
【0020】
本発明の組成物に含有させるチオフェン化合物は、下記一般式(Ι)
【化3】
(ここで、R1及びR2は、それぞれが同一でも異種構造であっても良い、非置換の又は置換された、C1〜C6の分岐状又は直鎖状のアルキル基を表す)
である化合物が好ましい。特に好ましくは、R1及びR2が同一構造であって、かつ、共に、ターシャリーブチル基(−C4H9)である化合物である。このものは、市販品の UVITEX OB(チバスペチャルティケミカルズ(株)製)として、容易に入手可能である。
【0021】
そして、上記チオフェン化合物の含有量は、紫外線硬化型組成物に対して、好ましくは0.01〜5質量%である。より好ましくは、0.05〜1質量%である。ここで、含有量が0.01質量%未満のときは効果がなく、逆に、5質量%を超過する場合には、耐光性の向上がそれ以上期待できないばかりか経済的に不利であり、好ましくない。
【0022】
本発明の組成物に用いる光重合性化合物としては、重合性モノマー及び/又は重合性オリゴマーが使用できる。重合性モノマーとしては、単官能(メタ)アクリレートや多官能(メタ)アクリレートを用いることができ、これらは、各々、単独または2種類以上併用して用いることもできる。ここで、本発明では、アクリレートとメタクリレートとを併せて(メタ)アクリレートと称する。
【0023】
本発明に使用できる重合性モノマーのうち、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、置換基としてメチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、トリデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イソブチル、イソアミル、イソオクチル、イソデシル、イソミリスチル、イソステアリル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、テトラヒドロフルフリル、グリシジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、エチルカルビトール、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニロキシエチル等の如き基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
また、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
さらに、重合性オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等がある。
【0026】
本発明に使用する光重合開始剤は、用いる重合性モノマー及び/又は重合性モノマーに代表される光重合性化合物を硬化できる公知慣用のものがいずれも使用できる。光重合開始剤としては、分子開裂型または水素引き抜き型のものが本発明に好適である。
【0027】
本発明に使用する光重合開始剤としては、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が好適に用いられ、また、これら以外の分子開裂型のものとして、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンおよび2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等を併用しても良いし、さらには、水素引き抜き型光重合開始剤であるベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等も併用できる。
【0028】
上記光重合開始剤に対して増感剤を使用することができ、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミンおよび4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の、前述重合性成分と付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。もちろん、上記光重合開始剤や増感剤は、紫外線硬化型化合物への溶解性に優れ、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。
【0029】
また、本発明の紫外線硬化型組成物には、必要に応じて、他の添加剤を使用することができ、例えば、熱重合禁止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ホスファイト等に代表される酸化防止剤、可塑剤およびエポキシシラン、メルカプトシラン、(メタ)アクリルシラン等に代表されるシランカップリング剤等を、各種特性を改良する目的で配合することもできる。これらは、紫外線硬化型化合物への溶解性に優れたもの、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いる。
【0030】
紫外線硬化型組成物としては、常温〜40℃において、液状であるものを用いるのが好ましい。溶媒は用いない方が好ましく、用いたとしても極力少量に留めるのがよい。また、前記組成物の塗布をスピンコーターで行う場合には、粘度を20〜1000mPa・sとなるように調整するのが好ましく、DVD用途で用いる場合は100〜1000mPa・sに調整するのが良い。
【0031】
本発明の光ディスクに用いられる基板としては、光ディスク用基板として通常用いられるものが使用でき、特にポリカーボネート基板を好適に用いることができる。
【0032】
本発明の光ディスクに用いられる「銀を主成分とする合金」としては、例えばUSP6007889に記載されているものがあげられる。
【0033】
本発明における光ディスクのタイプは、好ましくは再生専用型DVDである「DVD−5」、「DVD−10」、「DVD−9」および「DVD−18」、書き込み可能型のDVD−R、書き換え可能型のDVD−RW、DVD+RW、DVD−RAM等のDVDであり、特に好ましくは「DVD−9」である。しかし、本発明の光ディスクはこれらには限定されず、例えば、厚さ約1.1mmの光ディスク基板の上に、紫外線硬化型組成物の塗布による硬化膜又は透明フィルムの貼り合わせ等により、厚さ約0.1mmの保護層若しくはカバー層または光透過層を形成したもの、すなわち、情報読み書き用のレーザー光として青紫色レーザー光に適したタイプのものであっても良いし、DVDと同様の厚さ0.6mmの基板を2枚貼り合わせた構造を有するSACD(スーパーオーディオCD)であっても良い。
【0034】
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物は、貼り合わせ型ディスクの接着剤として用いてもよいし、銀または銀を主成分とする合金の薄膜を光反射層とするCD−ROMまたはCD−Rなどの保護コート剤として用いてもよく、何れの場合でも優れた耐久性の光ディスクを得ることができる。
【0035】
次に、本発明の実施形態を好ましい様態に基づいて説明する。
まず、記録情報に対応するピットと称する凹凸の上に40〜60nmの金属薄膜が積層された円盤状プラスチック基板1枚と、記録情報に対応するピットと称する凹凸の上に10〜30nmの銀または銀合金、もしくは10〜30nmの金、もしくは10〜30nmのシリコン系の半透明膜が積層された円盤状プラスチック基板或いは円盤状プラスチックのみからなる基板1枚を用意する。
【0036】
次いで、重合性モノマーまたは重合性オリゴマーとして、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを2種以上、必要に応じて単官能モノマーを用いて、光重合開始剤を紫外線硬化型組成物100重量部あたり2〜7部使用して紫外線硬化型組成物を調製する。
【0037】
前記組成物を前記40〜60nmの金属薄膜が積層された円盤状プラスチック基板の金属薄膜上に塗布し、10〜30nmの銀または銀合金、もしくは10〜30nmの金、もしくは10〜30nmのシリコン系の半透明膜が積層された円盤状プラスチック基板を、半透明膜が前記組成物を塗布した金属薄膜面と対向するよう貼り合わせ、この貼り合わせたディスクの片面または両面から紫外線を照射して、両者を接着させ「DVD−9」とする。
【0038】
前記組成物を前記40〜60nmの金属薄膜が積層された円盤状プラスチック基板の金属薄膜上に塗布し、前記40〜60nmの金属薄膜が積層された円盤状プラスチック基板を、金属薄膜が前記組成物を塗布した金属薄膜面と対向するよう貼り合わせ、この貼り合わせたディスクの片面または両面から紫外線を照射して、両者を接着させ「DVD−10」とする。
【0039】
前記組成物を前記40〜60nmの金属薄膜が積層された円盤状プラスチック基板の金属薄膜上に塗布し、円盤状プラスチックのみからなる基板を貼り合わせ、この貼り合わせたディスクの片面または両面から紫外線を照射して、両者を接着させ「DVD−5」とする。
【0040】
紫外線照射にあたっては、例えばメタルハライドランプ、高圧水銀灯などを用いた連続光照射方式で行うこともできるし、USP5904795記載の閃光照射方式で行うこともできる。効率よく硬化出来る点で閃光照射方式がより好ましい。
【0041】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下実施例中の「部」は「質量部」を表す。
【0042】
(実施例1)
ウレタンアクリレートとしてFAU−74−2(大日本インキ化学工業(株)製)30部、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート14部、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート27部、テトラヒドロフルフリルアクリレート16部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート5部、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート1.5部、エチレンオキサイド変性リン酸メタクリレート0.2部、ジメチルアミノ安息香酸エチル0.3部、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド2部および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン4部、チオフェン化合物としてUVITEX OB(チバスペチャルティケミカルズ(株)製)0.2部を配合し、60℃で1時間加熱混合して溶解し、淡黄色透明の紫外線硬化型組成物を調製した。この組成物を用いて、下記≪「銀合金DVD−9」貼り合わせ光ディスクの調製方法≫により、評価用サンプルを調製した。
このサンプルを用いて、下記≪環境曝露負荷試験方法≫により、「銀合金DVD−9」タイプ貼り合わせ光ディスクとしての耐久性を評価した。結果は、表1に示した。
【0043】
(比較例1)[チオフェン化合物を含まない例]
チオフェン化合物を含有させない以外は実施例1と同様にして、紫外線硬化型組成物および評価用サンプルを調製し、耐久性を評価した。結果は、上記同様、表1に示した。
【0044】
(比較例2)[金(Gold)半透明膜使用の市販品DVDの例]
市場で販売されている金(Gold)半透明膜を使用した「DVD−9」タイプのDVD製品・新品(2002年8月製)を購入・入手して評価用サンプルとし、実施例1と同様に耐久性を評価した。結果は、上記同様、表1に示した。
【0045】
≪「銀合金DVD−9」貼り合わせ光ディスクの調製方法≫
記録情報のピットが形成され、アルミニウムが50nm積層されたポリカーボネート円板に上記各実施例1および比較例1の紫外線硬化型組成物をディスペンサで塗布し、半透明膜として銀を主成分とする合金が積層されたポリカーボネート円版を重ね合わせた。次いでスピンコーターで硬化塗膜の膜厚が約50〜60μmになるよう回転させた。次いで、ウシオ電機株式会社製「クセノンフラッシュ照射装置 SBC−04型」を用い、設定電圧1800Vで、銀合金半透明膜付きの基板側から空気中で10ショット紫外線を照射して、各組成物を接着剤として使用した「銀合金DVD−9」サンプルを調製した。
≪環境曝露負荷試験(A〜B)の試験方法≫
試験・評価用サンプルには、上記で調製したサンプルおよび市販品サンプルの各貼り合わせ光ディスクサンプルを使用した。
<A.高温高湿試験>
まず、楠本化成株式会社製「エタック恒温恒湿器SD01」を使用して、80℃85%RH96時間の高温高湿環境曝露負荷試験を行った。次に、試験前後の各サンプルについて、銀合金または金半透明膜がついた情報記録層(L0と称す)のPIエラーおよび反射率を測定し評価した。
ここで、PIエラー及び反射率は、ソニー・プレシジョン・テクノロジー株式会社製「DVDテスター DQL−300D」により測定した。そして、PIエラー比(環境曝露負荷後/環境曝露負荷前)を、その測定値からの計算により求め、評価した。評価結果は、表1に示した。
【0046】
<B.耐光性試験1(サンテスト)>
キセノンランプ耐光試験器SUNTEST CPS+(ATLAS社製)を使用し、試験条件を、照度550W/m2、ブラックスタンダード温度65度に設定、光ディスクの読み取り面側(銀合金または金半透明膜側)をキセノンランプに対向させ、24時間曝露した前後での各サンプルのPIエラー及び反射率を測定し、耐光性を評価した。 評価結果は、表1に示した。
【0047】
<C.耐光性試験2(蛍光灯テスト)>
20Wの蛍光灯2本の前に、蛍光灯の中心から10cmの距離の位置で上記耐光試験1と同様に光ディスクの読み取り面側(銀合金または金半透明膜側)を蛍光灯に対向させ、24時間曝露した前後の各サンプルのPIエラー及び反射率を測定し、耐光性を評価した。評価結果は、表1に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
表1の結果より、チオフェン化合物を含有する実施例1の組成物は、いずれの環境曝露負荷試験においても、PIエラー比および反射率が良好であり、高耐久性であることが判る。また、比較例2の市販品(金[Gold]の半透明膜使用)と較べても遜色なく、同等の耐久性を有することが判る。
これに対し、前記チオフェン化合物を含有させなかった比較例1は、反射率の評価で不良であって、耐久性が劣ることが判る。
【0050】
【発明の効果】
本発明の紫外線硬化型組成物を使用することにより、高温高湿試験及び耐光性試験(サンテスト及び蛍光灯テスト)を行った後でも高耐久性である「DVD−9」タイプ等の貼り合わせ光ディスクを得ることができる。このため、半透明膜または反射膜材料として、銀または銀を主成分とする合金の使用を確実なものとし、低価格で高信頼性の貼り合わせ光ディスクの生産を可能にするという著しい効果を奏する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、貼り合わせ光ディスクに関し、更に詳しくは、前記光ディスクを製造する際に貼り合わせ用接着剤とする紫外線硬化型組成物、および該組成物を用いた前記光ディスクの耐久性の技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
貼り合わせ光ディスクの代表例としては、DVD(ディジタルバーサタイルディスク又はディジタルビデオディスク)がある。このDVDは、少なくとも1枚の光ディスク基板には情報記録層を形成した、2枚の光ディスク基板を貼り合わせる方法で作製し、その貼り合わせ剤としては、紫外線硬化型組成物からなる接着剤を使用することが一般的である。
ここで、情報記録層とは、ポリカーボネート等の光ディスク用合成樹脂基板に形成したピットと称する凹凸、相変化材料や色素等からなる層およびその上に形成した最外層としての、一般的には金属または金属合金の薄膜である、半透明膜または反射膜の層との積層体を指す。
【0003】
DVDにおいては、再生専用型の場合、貼り合わせる2枚の光ディスク基板の構成に基づき、各種のタイプが存在する。例えば、「DVD−10」と称するものは、貼り合わせる2枚がそれぞれ、ポリカーボネート基板の片面に記録情報に対応するピットと称する凹凸を設け、その上に情報読み取り用のレーザー光反射膜として、例えばアルミニウムの層を形成して情報記録層としたものであり、また、「DVD−5」は、「DVD−10」における1枚を情報記録層がない透明なポリカーボネート基板そのものとしたものであり、また、「DVD−9」は、1枚を金または金を主成分とする合金或いは銀または銀を主成分とする合金或いはケイ素化合物等からなる半透明膜により情報記録層を形成したものである。さらには、「DVD−18」と称する、片面に2層の情報記録層を有する基板を2枚貼り合わせた構造のものもある。現在では記録容量が大きく片面から2層の情報を読み取れる「DVD−9」が主流になっている。
【0004】
この「DVD−9」等の半透明膜としては、金またはケイ素化合物が主として使用されている。しかし、金は材料の値段が非常に高くコスト面のため不利であり、またケイ素化合物は成膜が非常に困難であるという欠点を持つ。そのため、両者の欠点をカバーし、比較的に低コストであって成膜も容易である銀または銀を主成分とする合金への置き換えが盛んに検討されている。
【0005】
しかしながら、銀または銀を主成分とする合金を半透明膜として使用した「DVD−9」(以下、「銀合金DVD−9」と称する。)の作製にあたり、接着剤として、金またはケイ素化合物を半透明膜として用いる「DVD−9」用として開発された従来の紫外線硬化型接着剤を使用した場合には、「銀合金DVD−9」の耐久性を著しく劣化させるという欠点が有り、問題があった。すなわち、従来の接着剤を使用した「銀合金DVD−9」では、高温高湿環境下に長時間曝露した場合、その接着剤の影響により、銀または銀を主成分とする合金の表面が変質して、信号の読み取りエラーの増加や外観不良などを生じさせた。
【0006】
また、このような高温高湿試験における耐久性低下の問題に加えて、「銀合金DVD−9」を太陽光や蛍光灯等の室内灯に暴露する耐光性試験を行った場合、半透明膜側が黄変あるいは黒変して反射率の低下を引き起こし、情報の読み取りが不可能になるという新たな問題が見つかった。
【0007】
前記高温高湿試験での問題の解決に対しては、DVD用の貼り合わせ接着剤として、3官能以上の多官能(メタ)アクリル酸エステル5〜70重量%、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールのジアクリル酸エステル95〜30重量%から成る光ディスク用樹脂組成物を使用することが開示されている(例えば、特許文献1)。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−3539号公報(第2−3頁)
【0009】
また、大気中・80℃・1時間放置後の重量損失が2%以下、さらには、同重量損失で1%以下の成分を80重量%以上含有の光ディスク貼り合わせ用紫外線硬化性接着剤組成物が開示されている(例えば、特許文献2)。
【0010】
【特許文献2】
特開2002−114949号公報(第2−3頁)
【0011】
そしてさらに、フェニルチオエチル(メタ)アクリレート類を含有させた紫外線硬化型組成物により接着した「銀合金DVD−9」は、80℃85%RH500時間の高温高湿環境試験負荷後においても、半透明膜の変色やピンホールの発生がなく、金を半透明膜とした「DVD−9」と同等の耐久性が得られることが開示されている(例えば、特許文献3)。
【0012】
【特許文献3】
特開特開2002−212514号公報(第2および第6頁)
【0013】
しかしながら、上記提案によっても、高温高湿試験での「銀合金DVD−9」の耐久性は、未だ、不十分であった。
その上さらに、耐光性に関して全く考慮されていないことにより、耐光性試験を行った場合、半透明膜側は著しく変色して反射率が低下した。そして、この耐光性改善に関する接着剤の側からの具体的な開示は、未だ、見当たらない。
【0014】
このように、高温高湿環境試験と、太陽光や蛍光灯等の室内灯に暴露する耐光性試験との両試験において、半透明膜の変質を十分に防止できる紫外線硬化型接着剤組成物は存在せず、問題であった。そのため、「銀合金DVD−9」の実用化を容易にする紫外線硬化型接着剤組成物の開発が強く望まれていた。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような状況に鑑み、本発明の目的は、銀または銀を主成分とする合金の変質防止能に優れ、光ディスク基板の貼り合わせ接着剤として適する紫外線硬化型組成物の提供、およびその組成物を使用することにより、高温高湿の過酷な環境条件や、太陽光あるいは蛍光灯等に曝露した後でも信号の読み取りエラー(PIエラー)比の増加や外観変化が少なく、金を半透明膜とした貼り合わせ光ディスクと同等の高耐久性を有する、銀または銀を主成分とする合金を半透明膜または反射膜とした貼り合わせ光ディスクの提供である。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、紫外線硬化型組成物に特定のチオフェン構造を有する特定の化合物を添加することにより、銀または銀を主成分とする合金の変質防止能を格段と向上させることが出来ることを見いだし、さらに、その組成物を貼り合わせ光ディスク用の貼り合わせ接着剤として使用することにより、本発明の目的が達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0017】
すなわち本発明は、光重合性化合物と光重合開始剤とを含む紫外線硬化型組成物であって、下記一般式(Ι)
【化2】
(ここで、R1及びR2は、それぞれが同一でも異なる構造であっても良い、非置換の又は置換された、C1〜C6の分岐状又は直鎖状のアルキル基を表す)
で表わされるチオフェン化合物を含有する光ディスク用紫外線硬化型組成物である。
【0018】
また、本発明は、少なくとも1枚の基板には最外層としての半透明膜または反射膜で構成される情報記録層が形成されている2枚の光ディスク基板を紫外線硬化型組成物で接着した貼り合わせ光ディスクにおいて、前記紫外線硬化型組成物として、上記特定のチオフェン化合物を含有する光ディスク用紫外線硬化型組成物を使用した貼り合わせ光ディスクである。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の紫外線硬化型組成物は、前記チオフェン化合物および光重合性化合物並びに光重合開始剤を必須成分とする。
【0020】
本発明の組成物に含有させるチオフェン化合物は、下記一般式(Ι)
【化3】
(ここで、R1及びR2は、それぞれが同一でも異種構造であっても良い、非置換の又は置換された、C1〜C6の分岐状又は直鎖状のアルキル基を表す)
である化合物が好ましい。特に好ましくは、R1及びR2が同一構造であって、かつ、共に、ターシャリーブチル基(−C4H9)である化合物である。このものは、市販品の UVITEX OB(チバスペチャルティケミカルズ(株)製)として、容易に入手可能である。
【0021】
そして、上記チオフェン化合物の含有量は、紫外線硬化型組成物に対して、好ましくは0.01〜5質量%である。より好ましくは、0.05〜1質量%である。ここで、含有量が0.01質量%未満のときは効果がなく、逆に、5質量%を超過する場合には、耐光性の向上がそれ以上期待できないばかりか経済的に不利であり、好ましくない。
【0022】
本発明の組成物に用いる光重合性化合物としては、重合性モノマー及び/又は重合性オリゴマーが使用できる。重合性モノマーとしては、単官能(メタ)アクリレートや多官能(メタ)アクリレートを用いることができ、これらは、各々、単独または2種類以上併用して用いることもできる。ここで、本発明では、アクリレートとメタクリレートとを併せて(メタ)アクリレートと称する。
【0023】
本発明に使用できる重合性モノマーのうち、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、置換基としてメチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、トリデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イソブチル、イソアミル、イソオクチル、イソデシル、イソミリスチル、イソステアリル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、テトラヒドロフルフリル、グリシジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、エチルカルビトール、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニロキシエチル等の如き基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
また、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
さらに、重合性オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等がある。
【0026】
本発明に使用する光重合開始剤は、用いる重合性モノマー及び/又は重合性モノマーに代表される光重合性化合物を硬化できる公知慣用のものがいずれも使用できる。光重合開始剤としては、分子開裂型または水素引き抜き型のものが本発明に好適である。
【0027】
本発明に使用する光重合開始剤としては、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が好適に用いられ、また、これら以外の分子開裂型のものとして、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンおよび2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等を併用しても良いし、さらには、水素引き抜き型光重合開始剤であるベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等も併用できる。
【0028】
上記光重合開始剤に対して増感剤を使用することができ、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミンおよび4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の、前述重合性成分と付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。もちろん、上記光重合開始剤や増感剤は、紫外線硬化型化合物への溶解性に優れ、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。
【0029】
また、本発明の紫外線硬化型組成物には、必要に応じて、他の添加剤を使用することができ、例えば、熱重合禁止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ホスファイト等に代表される酸化防止剤、可塑剤およびエポキシシラン、メルカプトシラン、(メタ)アクリルシラン等に代表されるシランカップリング剤等を、各種特性を改良する目的で配合することもできる。これらは、紫外線硬化型化合物への溶解性に優れたもの、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いる。
【0030】
紫外線硬化型組成物としては、常温〜40℃において、液状であるものを用いるのが好ましい。溶媒は用いない方が好ましく、用いたとしても極力少量に留めるのがよい。また、前記組成物の塗布をスピンコーターで行う場合には、粘度を20〜1000mPa・sとなるように調整するのが好ましく、DVD用途で用いる場合は100〜1000mPa・sに調整するのが良い。
【0031】
本発明の光ディスクに用いられる基板としては、光ディスク用基板として通常用いられるものが使用でき、特にポリカーボネート基板を好適に用いることができる。
【0032】
本発明の光ディスクに用いられる「銀を主成分とする合金」としては、例えばUSP6007889に記載されているものがあげられる。
【0033】
本発明における光ディスクのタイプは、好ましくは再生専用型DVDである「DVD−5」、「DVD−10」、「DVD−9」および「DVD−18」、書き込み可能型のDVD−R、書き換え可能型のDVD−RW、DVD+RW、DVD−RAM等のDVDであり、特に好ましくは「DVD−9」である。しかし、本発明の光ディスクはこれらには限定されず、例えば、厚さ約1.1mmの光ディスク基板の上に、紫外線硬化型組成物の塗布による硬化膜又は透明フィルムの貼り合わせ等により、厚さ約0.1mmの保護層若しくはカバー層または光透過層を形成したもの、すなわち、情報読み書き用のレーザー光として青紫色レーザー光に適したタイプのものであっても良いし、DVDと同様の厚さ0.6mmの基板を2枚貼り合わせた構造を有するSACD(スーパーオーディオCD)であっても良い。
【0034】
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物は、貼り合わせ型ディスクの接着剤として用いてもよいし、銀または銀を主成分とする合金の薄膜を光反射層とするCD−ROMまたはCD−Rなどの保護コート剤として用いてもよく、何れの場合でも優れた耐久性の光ディスクを得ることができる。
【0035】
次に、本発明の実施形態を好ましい様態に基づいて説明する。
まず、記録情報に対応するピットと称する凹凸の上に40〜60nmの金属薄膜が積層された円盤状プラスチック基板1枚と、記録情報に対応するピットと称する凹凸の上に10〜30nmの銀または銀合金、もしくは10〜30nmの金、もしくは10〜30nmのシリコン系の半透明膜が積層された円盤状プラスチック基板或いは円盤状プラスチックのみからなる基板1枚を用意する。
【0036】
次いで、重合性モノマーまたは重合性オリゴマーとして、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを2種以上、必要に応じて単官能モノマーを用いて、光重合開始剤を紫外線硬化型組成物100重量部あたり2〜7部使用して紫外線硬化型組成物を調製する。
【0037】
前記組成物を前記40〜60nmの金属薄膜が積層された円盤状プラスチック基板の金属薄膜上に塗布し、10〜30nmの銀または銀合金、もしくは10〜30nmの金、もしくは10〜30nmのシリコン系の半透明膜が積層された円盤状プラスチック基板を、半透明膜が前記組成物を塗布した金属薄膜面と対向するよう貼り合わせ、この貼り合わせたディスクの片面または両面から紫外線を照射して、両者を接着させ「DVD−9」とする。
【0038】
前記組成物を前記40〜60nmの金属薄膜が積層された円盤状プラスチック基板の金属薄膜上に塗布し、前記40〜60nmの金属薄膜が積層された円盤状プラスチック基板を、金属薄膜が前記組成物を塗布した金属薄膜面と対向するよう貼り合わせ、この貼り合わせたディスクの片面または両面から紫外線を照射して、両者を接着させ「DVD−10」とする。
【0039】
前記組成物を前記40〜60nmの金属薄膜が積層された円盤状プラスチック基板の金属薄膜上に塗布し、円盤状プラスチックのみからなる基板を貼り合わせ、この貼り合わせたディスクの片面または両面から紫外線を照射して、両者を接着させ「DVD−5」とする。
【0040】
紫外線照射にあたっては、例えばメタルハライドランプ、高圧水銀灯などを用いた連続光照射方式で行うこともできるし、USP5904795記載の閃光照射方式で行うこともできる。効率よく硬化出来る点で閃光照射方式がより好ましい。
【0041】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下実施例中の「部」は「質量部」を表す。
【0042】
(実施例1)
ウレタンアクリレートとしてFAU−74−2(大日本インキ化学工業(株)製)30部、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート14部、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート27部、テトラヒドロフルフリルアクリレート16部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート5部、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート1.5部、エチレンオキサイド変性リン酸メタクリレート0.2部、ジメチルアミノ安息香酸エチル0.3部、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド2部および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン4部、チオフェン化合物としてUVITEX OB(チバスペチャルティケミカルズ(株)製)0.2部を配合し、60℃で1時間加熱混合して溶解し、淡黄色透明の紫外線硬化型組成物を調製した。この組成物を用いて、下記≪「銀合金DVD−9」貼り合わせ光ディスクの調製方法≫により、評価用サンプルを調製した。
このサンプルを用いて、下記≪環境曝露負荷試験方法≫により、「銀合金DVD−9」タイプ貼り合わせ光ディスクとしての耐久性を評価した。結果は、表1に示した。
【0043】
(比較例1)[チオフェン化合物を含まない例]
チオフェン化合物を含有させない以外は実施例1と同様にして、紫外線硬化型組成物および評価用サンプルを調製し、耐久性を評価した。結果は、上記同様、表1に示した。
【0044】
(比較例2)[金(Gold)半透明膜使用の市販品DVDの例]
市場で販売されている金(Gold)半透明膜を使用した「DVD−9」タイプのDVD製品・新品(2002年8月製)を購入・入手して評価用サンプルとし、実施例1と同様に耐久性を評価した。結果は、上記同様、表1に示した。
【0045】
≪「銀合金DVD−9」貼り合わせ光ディスクの調製方法≫
記録情報のピットが形成され、アルミニウムが50nm積層されたポリカーボネート円板に上記各実施例1および比較例1の紫外線硬化型組成物をディスペンサで塗布し、半透明膜として銀を主成分とする合金が積層されたポリカーボネート円版を重ね合わせた。次いでスピンコーターで硬化塗膜の膜厚が約50〜60μmになるよう回転させた。次いで、ウシオ電機株式会社製「クセノンフラッシュ照射装置 SBC−04型」を用い、設定電圧1800Vで、銀合金半透明膜付きの基板側から空気中で10ショット紫外線を照射して、各組成物を接着剤として使用した「銀合金DVD−9」サンプルを調製した。
≪環境曝露負荷試験(A〜B)の試験方法≫
試験・評価用サンプルには、上記で調製したサンプルおよび市販品サンプルの各貼り合わせ光ディスクサンプルを使用した。
<A.高温高湿試験>
まず、楠本化成株式会社製「エタック恒温恒湿器SD01」を使用して、80℃85%RH96時間の高温高湿環境曝露負荷試験を行った。次に、試験前後の各サンプルについて、銀合金または金半透明膜がついた情報記録層(L0と称す)のPIエラーおよび反射率を測定し評価した。
ここで、PIエラー及び反射率は、ソニー・プレシジョン・テクノロジー株式会社製「DVDテスター DQL−300D」により測定した。そして、PIエラー比(環境曝露負荷後/環境曝露負荷前)を、その測定値からの計算により求め、評価した。評価結果は、表1に示した。
【0046】
<B.耐光性試験1(サンテスト)>
キセノンランプ耐光試験器SUNTEST CPS+(ATLAS社製)を使用し、試験条件を、照度550W/m2、ブラックスタンダード温度65度に設定、光ディスクの読み取り面側(銀合金または金半透明膜側)をキセノンランプに対向させ、24時間曝露した前後での各サンプルのPIエラー及び反射率を測定し、耐光性を評価した。 評価結果は、表1に示した。
【0047】
<C.耐光性試験2(蛍光灯テスト)>
20Wの蛍光灯2本の前に、蛍光灯の中心から10cmの距離の位置で上記耐光試験1と同様に光ディスクの読み取り面側(銀合金または金半透明膜側)を蛍光灯に対向させ、24時間曝露した前後の各サンプルのPIエラー及び反射率を測定し、耐光性を評価した。評価結果は、表1に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
表1の結果より、チオフェン化合物を含有する実施例1の組成物は、いずれの環境曝露負荷試験においても、PIエラー比および反射率が良好であり、高耐久性であることが判る。また、比較例2の市販品(金[Gold]の半透明膜使用)と較べても遜色なく、同等の耐久性を有することが判る。
これに対し、前記チオフェン化合物を含有させなかった比較例1は、反射率の評価で不良であって、耐久性が劣ることが判る。
【0050】
【発明の効果】
本発明の紫外線硬化型組成物を使用することにより、高温高湿試験及び耐光性試験(サンテスト及び蛍光灯テスト)を行った後でも高耐久性である「DVD−9」タイプ等の貼り合わせ光ディスクを得ることができる。このため、半透明膜または反射膜材料として、銀または銀を主成分とする合金の使用を確実なものとし、低価格で高信頼性の貼り合わせ光ディスクの生産を可能にするという著しい効果を奏する。
Claims (6)
- 上記一般式(Ι):チオフェン化合物におけるR1及びR2が同一のターシャリーブチル基(−C4H9)である請求項1記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
- チオフェン化合物の含有量が、組成物に対して、0.01〜5質量%である請求項1または請求項2に記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
- 少なくとも1枚の基板には最外層としての半透明膜または反射膜で構成される情報記録層が形成されている2枚の光ディスク基板を紫外線硬化型組成物で接着した貼り合わせ光ディスクにおいて、前記紫外線硬化型組成物が、請求項1〜請求項3の何れかに記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物であることを特徴とする貼り合わせ光ディスク。
- 前記情報記録層における最外層としての半透明膜または反射膜が、銀または銀を主成分とする合金からなる薄膜層である請求項4に記載の貼り合わせ光ディスク。
- 光ディスクが再生専用型または書換え可能型若しくは書き込み型のDVDである請求項4または請求項5に記載の貼り合わせ光ディスク。
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