JP2004137514A - 表面に被覆層を有するチタン系材料およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】チタン系材料の干渉色を残したまま、表面を保護する被覆層を有するチタン系材料を提供する。
【解決手段】表面に酸化皮膜を形成し、酸化皮膜の干渉色により発色させたチタン系材料上に、透明な被覆層を形成する際、酸化皮膜の厚さを150 nmから60 nmにするか、酸化皮膜による干渉色が、干渉により強められた波長と弱められた波長の両方の作用によるもので、干渉により強められた波長による色と、弱められた波長による色の補色の色相が、色相環で90°以内の近い色になるようにする。または、チタン系材料の明るさがL*a*b*表色系のL*値が33以上なるようにすることにより、表面に透明な被覆層を形成しても干渉色が残るようにする。
【選択図】 なし
【解決手段】表面に酸化皮膜を形成し、酸化皮膜の干渉色により発色させたチタン系材料上に、透明な被覆層を形成する際、酸化皮膜の厚さを150 nmから60 nmにするか、酸化皮膜による干渉色が、干渉により強められた波長と弱められた波長の両方の作用によるもので、干渉により強められた波長による色と、弱められた波長による色の補色の色相が、色相環で90°以内の近い色になるようにする。または、チタン系材料の明るさがL*a*b*表色系のL*値が33以上なるようにすることにより、表面に透明な被覆層を形成しても干渉色が残るようにする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面に被覆層を有するチタン系材料およびその製造方法に関するものであり、特に、酸化皮膜の干渉作用により発色したチタン系材料の表面に、変色を防止することを目的とした透明な被覆層を有するチタン系材料およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
チタンは、大気環境において極めて優れた耐食性を示すことから、海浜地区の屋根、壁のような建材用途に用いられている。チタンが屋根材等に使用されはじめてから10数年を経過するが、これまで腐食が発生したと報告された例はない。しかしながら、使用環境によっては長期間に亘って使用されたチタン表面が暗い金色に変色する場合がある。
【0003】
変色は極表面層に限定されることから、チタンの防食機能を損なうものではないが、干渉色により発色したチタン系材料はその意匠性の高さから使用されているため、表面の変色が意匠性の観点で問題となる場合がある。
【0004】
また、干渉色により発色したチタン系材料は、その意匠性の高さから屋外用途以外でも使用されているが、発色が酸化皮膜の干渉作用に基づくため、指紋や油性の汚れが付着すると、その部分の色調が変化して見えるため、汚染が目立ちやすい。
【0005】
前者のような環境における変色の防止方法としては、チタン系材料の酸化皮膜の構造を規定することにより変色を防止する方法が、例えば、特許文献1等に記載されている。
【0006】
また、後者の変色に対する防止方法として、表面に透明系の塗料を施すことにより表面汚染を防止するという方法も、非特許文献1に紹介されているが、この非特許文献1には、この方法では汚染が防止できる代わりに、干渉皮膜の色彩を犠牲にしてしまうので、「干渉皮膜の色彩を生かしたまま表面汚染を防止する方法は確立されていないのが実体である。」と記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−130886号公報
【非特許文献1】
表面処理対策Q&A1000編集委員会 編集「表面処理対策Q&A1000」(1998年5月、(株)産業技術サービスセンター発行、p.634)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、意匠性に優れた干渉色により発色したチタン系材料を屋根、壁材のような大気環境中で使用した場合に発生する酸化皮膜自体の変質による変色や、表面に付着した汚れによる干渉色の色調変化を防止した表面に被覆層を有するチタン系材料およびその製造方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明では、干渉色により発色したチタン系材料の意匠性を損なうことなく表面を保護することを目的としているが、酸化皮膜の厚さ、干渉色の発色機構、原板の明度を適正な条件にすることで、表面に透明な被覆層を設けても干渉色が損なわれないことを見出し、かかる知見を基に本発明を完成させたものであって、本発明がその要旨とするところは以下の通りである。
(1) 干渉色を有する酸化皮膜が形成されたチタン系材料の表面に透明被覆層を被覆してなるチタン系材料であって、前記酸化皮膜の厚さが150〜600nmであることを特徴とする表面に被覆層を有するチタン系材料。
(2) 干渉色を有する酸化皮膜が形成されたチタン系材料の表面に透明被覆層を被覆してなるチタン系材料であって、前記酸化皮膜による干渉色が、干渉により強められた波長と弱められた波長の両方の作用によるもので、干渉により強められた波長による色と、弱められた波長による色の補色の色相が、色相環で90°以内の近い色であることを特徴とする表面に被覆層を有するチタン系材料。
(3) 前記酸化皮膜による干渉色が、干渉により強められた波長と弱められた波長の両方の作用によるもので、干渉により強められた波長による色と、弱められた波長による色の補色の色相が、色相環で90°以内の近い色であることを特徴とする(1)に記載の表面に被覆層を有するチタン系材料。
(4) 干渉色を有する酸化皮膜が形成されたチタン系材料の表面に透明被覆層を被覆してなるチタン系材料であって、前記酸化皮膜が形成されたチタン系材料の被覆層形成前の明度が、JIS Z 8730に準拠したL*a*b*表色系のL*値が33以上であることを特徴とする表面に被覆層を有するチタン系材料。
(5) 前記酸化皮膜が形成されたチタン系材料の被覆層形成前の明度が、JIS Z 8730に準拠したL*a*b*表色系のL*値が33以上であることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載の表面に被覆層を有するチタン系材料。
(6) 干渉色を有する酸化皮膜が形成されたチタン系材料の表面に透明被覆層を被覆してなるチタン系材料であって、前記酸化皮膜上にアルカリチタン酸塩層を有することを特徴とする表面に被覆層を有するチタン系材料。
(7) 前記酸化皮膜上にアルカリチタン酸塩層を有することを特徴とする(1)〜(5)の何れかに記載の表面に被覆層を有するチタン系材料。
(8) 前記透明被覆層がクリア塗膜であることを特徴とする(1)〜(7)の何れかに記載の表面に被覆層を有するチタン系材料。
(9) 前記透明被覆層が接着層であることを特徴とする(1)〜(7)の何れかに記載の表面に被覆層を有するチタン系材料。
(10) チタン系材料表面に酸化皮膜を形成し、その後、アルカリ溶液により処理を行ってから、透明被覆層を被覆することを特徴とする表面に被覆層を有するチタン系材料の製造方法。
(11) 前記アルカリ溶液のpHが8以上、14以下で、処理温度が10℃以上、90℃以下であることを特徴とする(10)に記載の表面に被覆層を有するチタン系材料の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
まず、本発明において表面に形成する酸化皮膜の作成方法は、電解溶液中における陽極酸化、過酸化水素を含む溶液、強酸、強アルカリ溶液による化学酸化など、いずれも特に限定しないが、均一な色が簡易に得られる点から、電解質溶液中でチタン系材料を陽極とした、いわゆる陽極酸化法が好ましい。使用する電解質溶液も特に限定はしないが、一般的には、リン酸、硫酸、ホウ酸、あるいはこれらの塩類を一種類以上含んだものを電解質溶液として用い、チタン材料に印加する電圧を制御することによって所望する色を発色するもので、工業的にも用いられている方法である。
【0012】
表面に形成する酸化皮膜の厚さは、150nm以上、600nm以下であることが好適である。150nmより薄いと被覆層を形成することにより干渉色が著しく損なわれることがある。透明被覆層を形成後、より鮮明な干渉色を残すには、酸化皮膜の厚さが厚い方がよく、酸化皮膜の厚さを200nm以上にすることでより鮮明な干渉色を残すことが出来る。しかし、酸化皮膜の厚さが600nmより厚くなると、被覆層を形成する以前に酸化皮膜による干渉色が無くなるため、酸化皮膜の厚さは200〜600nmがより好適である。
【0013】
酸化皮膜の厚さはオージェ分光法によって確認することが出来る。150〜600nmの酸化皮膜は、具体的には電解液として1mass%リン酸溶液を用い、陰極にSUS304を用いた場合、およそ30〜140Vの電圧で定電圧電解することによって得られるが、電解液の浴組成や陰極の配置の違いで溶液抵抗が異なること、陰極の違いにより水素発生過電圧が異なることなどの理由により、電解電圧と膜厚との関係は変化する。
【0014】
酸化皮膜による干渉色は、干渉により強められた波長と弱められた波長の両方の作用によるもので、干渉により強められた波長による色と、弱められた波長による色の補色の色相が、色相環で90°以内の近い色であればよい。
【0015】
すなわち、干渉色が干渉により発色している色に対応する波長のみが強められる場合、発色している色の補色に対応する波長のみが弱められる場合、または、干渉により強められている波長に対応する色と、弱められている波長に対応する色の色相が、色相環で90°以内の近い色相である場合、表面に透明被覆層を形成することで、干渉色が著しく損なわれることがある。しかし、干渉色が干渉により強められた波長と、弱められた波長の両方の作用によるもので、干渉により強められた波長による色と、弱められた波長による色の補色の色相が、色相環で90°以内の近い色であれば、その複合効果により、透明被覆層を形成しても干渉色が損なわれない。
【0016】
また、可視光に対応する360〜800nmの波長域内に、干渉により強められる波長、弱められる波長がそれぞれ一つ以上ある場合は、一つ以上の強められた波長に対応する色同士を加算混合した色と、一つ以上の弱められた波長に対応する色同士を加算混合した色の補色の色相が色相環で90°以内であれば複合効果により、透明被覆層を形成しても干渉色が損なわれない。しかし、可視光の中でも、比較的鮮明な色に対応する400〜760nmの波長域内に、強められる波長、弱められる波長が合計5つ以上ある場合は、互いに効果を相殺してしまうため、被覆層を形成する以前に鮮明な干渉色が認められない。
【0017】
具体的な色で説明すると、陽極酸化によりチタン系材料を発色する場合、発色電圧を上げ、酸化皮膜を厚くするにしたがって、彩度、明度は異なるが、色相環を数回周回し、彩度が低い色に収束する。酸化皮膜を形成することで、まず黄色に発色し、その後、青色を発色し、また黄色、青色の順番に発色し、その後も緑色、桃色等を発色する。ここでは最初に現れる黄色を1周目の黄色、その後に現れる青色を1周目の青色、次に現れる黄色を2周目の黄色、次に現れる青色を2周目の青色、次に現れる緑を2周目の緑色と呼ぶ。
【0018】
1周目の黄色や青は、発色している色に対応する波長のみが強められる場合、発色している色の補色に対応する波長のみが弱められる場合、または、干渉により強められている波長に対応する色と、弱められている波長に対応する色の色相が、色相環で90°以内の近い色相である。そのため、表面に透明被覆層を形成すると、干渉色を著しく損なってしまう。ちなみに、1周目の黄色の発色は、補色である青色に対応する波長のみが干渉により弱められることにより、1周目の青色発色は、初期の色が濃いものは補色である黄色に対応する波長のみが干渉により弱められる場合に相当し、その後に現れる薄い青色は、青色に対応する波長のみが干渉により強められる場合、または、それと同時に青色と近い色相の紫色に対応する波長のみが干渉により弱められる場合に相当する。
【0019】
それに対して、2周目の黄色や青色は、干渉により強められた波長と弱められた波長の両方の作用によるもので、干渉により強められた波長に対応する色と、弱められた波長に対応する色の補色の色相が、色相環で90°以内の近い色で、その複合効果で発色しているため、透明被覆層を被覆しても、干渉色が消えない。ちなみに、2週目の黄色の発色は、黄色に対応する波長が干渉により強められると共に、黄色の補色である青色に対応する波長が干渉により弱められる場合に相当し、2周目の青色の発色は、青色に対応する波長が干渉により強められる共に、青色の補色である黄色に対応する波長が干渉により弱められる場合に相当する。
【0020】
また、2週目の緑色は、可視光に対応する360〜800nmの波長域内に、干渉により強められる波長が一つ、弱められる波長が二つあり、強められた波長に対応する色と、二つの弱められた波長に対応する色同士を加算混合した色の補色の色相が色相環で90°以内であり、その複合効果で発色しているため、透明被覆層を形成しても、干渉色が消えない。ちなみに、2週目の緑色の発色は、緑色に対応する波長が干渉により強められると共に、赤色と紫色に対応する波長が干渉により弱められる場合に相当する。
【0021】
電解質溶液中で陽極酸化することにより表面に酸化皮膜を形成し酸化皮膜の干渉色により発色させたチタン系材料で、そのチタン系材料の色をJIS Z 8730に準拠したL*a*b*表色系で示した場合、そのL*値が、33以上であることが好適である。L*が33より低いと、被覆層を形成することにより干渉色が損なわれることがある。
【0022】
これは、透明被覆層を表面に形成することで、干渉色が失われる場合、グレーに近い色に変色してしまうため、L*が高い値の明るい色ほど、被覆層の影響を受けにくいためである。
【0023】
表面に形成する透明被覆層の厚さは、特には限定しないが、0.5μm以上であることが好ましい。0.5μmより薄いと、被覆層によっては被覆層自体が干渉効果を持ってしまう可能性があり、酸化皮膜による干渉色を相殺してしまう可能性があるだけでなく、塗装の均一性も確保しづらいことから、表面に色むらを生じてしまう可能性がある。また、被覆層の厚さは、厚い分には特に問題は無く、透明感が保たれていれば良いが、特殊な形状のものについて、凹凸を吸収しなくてはならないような場合以外は、コストの面から2mm以下で十分である。
【0024】
電解質溶液中で陽極酸化することにより表面に酸化皮膜を形成し、酸化皮膜の干渉色により発色させたチタン系材料に透明な被覆層を形成する際、事前にアルカリ溶液により処理することが好適である。
【0025】
アルカリ溶液には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸塩、メタ珪酸塩、オルソ珪酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、縮重リン酸塩酸塩、重炭酸塩、界面活性剤等を主成分とするものを用いることが出来る。
【0026】
アルカリ溶液は、pHが8以上、14以下で、処理温度が10℃以上、90℃以下であれば良い。アルカリ溶液の成分使用方法により異なるが、温度が35℃以上、80℃以下、pHは9以上、13.5以下であればより好適である。この範囲であれば数十秒から数分間の処理で十分な効果が得られる。温度、pHがより低い場合は、十分な処理が出来るまでに時間がかかる可能性が高いだけでなく、時間をかけても十分な効果が得られない可能性が高い。温度、pHがより高い場合は、処理時間によっては酸化皮膜が侵され、干渉色が変色してしまう可能性があるばかりでなく、アルカリ浴槽の耐食性等、装置的な問題が生じてしまう可能性がある。
【0027】
電解質溶液中で陽極酸化することにより表面に酸化皮膜を形成し、酸化皮膜の干渉色により発色させたチタン系材料に対して、前記アルカリ溶液により処理を施すと、酸化皮膜上にアルカリチタン酸塩層を形成する。このことによりチタン系材料と被覆層の密着性を向上することが出来る。アルカリチタン酸塩層の厚さは、特には限定しないが、前記アルカリ溶液による処理により形成されるアルカリチタン酸塩層の厚さは、0.5〜10nm程度である。アルカリチタン酸塩層の厚さが、0.5〜10nm程度であれば、干渉色には影響を与えない。アルカリチタン酸塩の厚さはオージェ電子分光法によって確認することが出来る。
【0028】
アルカリチタン酸塩としては、処理に用いるアルカリ溶液により異なるが、チタン酸ナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸リチウムなどが挙げられる。
【0029】
また、アルカリ溶液による処理は、チタン系材料の洗浄方法としても有用である。陽極酸化によって形成された酸化チタン層は多孔質であることから、本来、投錨効果により被覆層とはある程度の密着性を有するはずであるが、陽極酸化によって形成された酸化チタンは汚れが吸着しやすく、陽極酸化直後から汚染が進行しづらい環境で保存しないと、被覆層と良好な密着性が得られない。しかし、チタン系材料を輸送したり、プレス、パンチング等の加工をしたりする際には、表面に疵が付くのを防止するため、塗油もしくは保護フィルムを貼ることが多い。塗油した場合、表面に残った油はもちろん、保護フィルムを貼り付けた場合、目に見えないレベルであっても表面に粘着部分が残ってしまい、被覆層との密着性に悪影響を及ぼすことが多い。そのため、表面の油分、粘着分を除去するために表面を処理する必要がある。しかし、有機溶剤による洗浄では被覆層と十分な密着性が確保できず、酸による処理では、酸化皮膜が侵され干渉色が変色してしまう可能性が高い。それに対して、前記アルカリ溶液による処理は、被覆層と十分な密着性を確保でき、かつ、干渉色に影響を与えることも無い。
【0030】
透明被覆層は、クリア塗膜であってもよく、クリア塗膜は、有機系、無機系、いずれも特に限定されず、用途に応じて一般に公知のものを用いることが出来る。例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニル、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂や、これらの共重合体、また、水ガラス、アルミナ、シリカ、ジルコニア等のセラミック系のものを使用することができ、さらに、有機系、無機系を問わず数種のものをブレンドして用いてもよい。塗料としての形態も特に限定されず、用途に応じて適宜使い分けることができる。例えば、有機溶剤系塗料、水系塗料、コロイド分散系塗料、粉体塗料、電着塗料、熱硬化型塗料、常温乾燥型塗料などが挙げられる。
【0031】
また、透明被覆層は、接着剤や粘着剤からなるものであってもよく、接着剤、粘着剤としては、有機系、無機系、いずれも特に限定されず、用途に応じて一般に公知のものを用いることができる。例えば、有機系では、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリビニルブチラ−ル、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル、メタクリル、ポリスチレン、ポリアミド、アルキド、セルロース、シアノアクリレート、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ、ポリスルホン、ポリアクリルスルホン、フェノール、レゾルシノール、ユリア、メラミン、フラン、エポキシ、イソシアネート、シリコン、アクリル酸ジエステル、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ポリクロロプレン、ニトリルゴム、ポリサルファイド、ポリイミド、ポリベンズイミダゾールや、これらの共重合体、天然系では、デキストリン、大豆たん白、アルブミン、松脂、セラック、ギルソナイト、カゼイン等が挙げられ、無機系では、水ガラスやコロイドとして水に分散したアルミナ、シリカ、ジルコニア等が挙げられる。さらに有機系、無機系を問わず、用途に応じて数種のものをブレンドして用いてもよい。
【0032】
また、前記接着剤、粘着剤を介して透明なフィルムを積層することも可能である。特に粘着剤の場合は、硬化しないためそのままでは汚れ防止にならないため、透明なフィルムを積層することが好適である。
【0033】
フィルムは、透明なものであればいずれも特に限定されず、用途に応じて一般に公知のものを用いることが出来る。例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、セロハンなどのフィルムが挙げられ、さらに透明なものであれば、有機、無機を問わず、アクリル板、ポリカーボネート板、塩化ビニル板、石英板、ジルコニア板、アルミナ結晶板などの硬質板を張り付けることもできる。厚さについては、チタン系材料に直接積層する部分は特別な用途以外では先に述べたように2mm以下で十分だが、接着剤を介して積層する透明なフィルム、板については、最大で20cm程度のものまで積層可能である。最小厚さは、フィルムの製膜性から5μm程度までが好適である。また、積層は一層である必要は無く、用途に応じて数枚の層を積層してもよい。
【0034】
また、透明な被覆層やフィルム、板は無色透明である必要は無く、干渉色を損なわない程度の透明感があれば、着色がなされていても構わない。干渉色と被覆層やフィルム、板の色を併せることで、さらに意匠性を高めることができる場合もある。
【0035】
接着剤、粘着剤層を有する場合は、他の用途として、接着剤を2枚のチタン板で挟みこむ防振板を作成することも可能で、もちろん表に出る面に対しては、クリア塗膜を塗布したり、接着剤、粘着剤を塗布したり、さらに上に透明なフィルムや板を貼り付けることも可能である。
【0036】
クリア塗膜の塗装方法は、いずれも特に限定されず、状況に応じて一般的に公知の塗装方法を採用することが出来る。例えば、ロールコート法、ローラーカーテンコート法、カーテンフロー法、エアスプレー法、エアレススプレー法、バーコート法、ドクターブレード法、静電法、浸漬法、刷毛塗り法、T−ダイ法などが採用できる。
【0037】
接着剤の塗布方法も、いずれも特に限定されず、状況に応じてクリア塗膜と同様方法を採用することが出来る。
【0038】
透明なフィルム、板の積層方法は、いずれも特に限定されず、一般的に公知な方法を採用することが出来る。例えば、接着剤が硬化する前に貼り付ける方法、接着剤が加熱により接着性を発現するものの場合は、事前に接着剤のみを塗布、硬化し、その後熱圧着するような方法、また、接着剤シートをチタン系材料と透明なフィルム、板との間にはさみ、熱圧着により貼り付ける方法を採用することが出来る。
【0039】
透明なフィルム、板そのものが加熱により接着性を発現する成分からなる場合は、フィルム、板そのものを熱圧着によりチタン系材料上に積層することが出来る。
【0040】
本発明では、陽極酸化皮膜の厚さやアルカリチタン酸塩層の厚さをオージェ電子分光法により求めているが、酸化皮膜の厚さは図1(酸素の深さ方向濃度のプロファイル)に示した様に、酸素濃度が最高濃度とベース濃度の中間濃度に減少するまでに要したスパッタリング時間tに、スパッタリング速度を乗じて求めることができる(酸化皮膜の厚さ=スパッタリング時間t×スパッタリング速度)。アルカリチタン酸塩層の厚さも、アルカリ成分(例えばNa)について酸化皮膜の厚さを求める際の酸素と同様な見方をすることで求めた。また、このときのスパッタ速度は、測定時のスパッタリング条件でSiO2 をスパッタリングしたときの速度から換算したものである。また、上記分析は、下記の条件および方法で行なったものである。
[分析条件]
分析装置:PHI 610走査型オージェ電子分光装置(パーキンエルマー社製)
一次電子:5kV−100nA
分析領域:約20μm×30μm
スパッタリング:Ar+ 2kV−25mA
スパッタリング速度:約15nm/min(SiO2 換算)
[分析方法]
まず、最表面についてワイドスキャンにより定性分析を行なった後、定性分析で検出された元素について深さ方向組成分析を行なった。また存在元素確認の為、深さ方向分析時もワイドスキャンを行なった。
【0041】
【実施例】
実施例に基づき本発明をさらに説明する。
【0042】
チタン板には、板厚0.4mm、リン酸1mass%溶液中で、SUS304を陰極にして定電圧電解することで形成した陽極酸皮膜厚が45〜645nmの13水準、発色後、保護フィルム(粘着剤の主成分はアクリル系)を貼付けて保存していたものを用いた。
【0043】
アルカリ溶液による処理は、アルカリ溶液として炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、亜硝酸塩、縮合燐酸塩、重炭酸塩、界面活性剤等を含む薬剤を、水1Lに対して固形分が20gになるように溶解したものを用いた。この溶液は60℃でpHは11から12である。
【0044】
60℃に保った前記アルカリ溶液にチタン板を3分間浸漬したのち、イオン交換水で水洗、常温で送風により乾燥した。
【0045】
[被覆層被覆前後の干渉色の比較]
被覆層を表面に設けることによる干渉色の変色を確認するため、陽極酸化皮膜の厚さが45〜645nmのチタン板にポリエステル樹脂を約2μmバーコーターで塗布し、塗装前後の色を比較した。その際、JIS Z 8730に準拠したL*a*b*表色系の測定と、目視による色の確認を行った。
【0046】
表1で、各比較例、実施例の膜厚と発色機構、L*1に対して、色差ΔEと目視による確認の比較をしたが、ここで、発色機構は、陽極酸化皮膜による干渉色が、干渉により発色している色に対応する波長のみが強められる場合、発色している色の補色に対応する波長のみが弱められる場合、または、干渉により強められている波長による色と、弱められている波長による色の色相が、色相環で90°以内の近い色相である場合を×、陽極酸化皮膜による干渉色が、干渉により強められた波長と弱められた波長の両方の作用によるもので、干渉により強められた波長による色と、弱められた波長による色の補色の色相が、色相環で90°以内の近い色のものを○とした。L*1は、○が33以上、×が33未満とし、ΔEは、ΔE={(L*2−L*1)2+(a*2−a*1)2+(b*2−b*1)2}(1/2) によって求めたもので、○は2.5未満、△は2.5以上、5未満、×は5以上としたが、ここで、L*1,a*1,b*1は塗装前の測定結果、L*2,a*2 ,b*2 は、塗装後の測定結果である。目視による確認では、色の違いを目視で確認した場合、意匠性の高い材料といえるレベルに干渉色が残っていると感じるものは○、干渉色が損なわれ、意匠性の高い材料といえないと感じるもの、グレーに変色してしまっていると感じるものは×にした。
【0047】
【表1】
【0048】
この結果から、陽極酸化皮膜については、厚さが150nm未満のものにクリア塗膜を積層すると、干渉色が失われるが、厚さが150nm以上のものは、クリア塗膜を積層しても干渉色が残ることが判かる。また、陽極酸化皮膜の厚さがより厚ければ、さらに好適であることが判る。しかし、比較例6のように陽極酸化皮膜の厚さが600nmより厚い場合は、被覆層を表面に形成する以前に鮮明な干渉色が認められない。これは、陽極酸化皮膜の厚さが600nmより厚くなると、可視光の中でも、比較的鮮明な色に対応する400〜760nmの波長域内に、干渉により強められる波長、弱められる波長が合計5つ以上になり、互いに効果を相殺してしまうためである。
【0049】
陽極酸化皮膜の厚さが600nmを超えると、干渉による発色機構が作用しないため、元の色調自体がグレー色を呈していた。
【0050】
発色機構については、干渉色が干渉により発色している色に対応する波長のみが強められる場合、発色している色の補色に対応する波長のみが弱められる場合、または、干渉により強められている波長に対応する色と、弱められている波長に対応する色の色相が、色相環で90°以内の近い色相である場合にクリア塗膜を積層すると、干渉色が失われるが、干渉色が干渉により強められた波長と弱められた波長の両方の作用によるもので、干渉により強められた波長による色と、弱められた波長による色の補色の色相が、色相環で90°以内の近い色の場合は、クリア塗装を積層しても干渉色が残ることが判る。
【0051】
L*1については、33未満のものにクリア塗膜を積層すると、干渉色が失われるが、33以上のものは、クリア塗膜を塗装しても干渉色が残ることが判る。
【0052】
[アルカリ処理によるチタン板と被覆層との密着性の変化]
チタン板には陽極酸化皮膜厚225nmで保護フィルム剥離後、未処理のもの、常温のMEK中で3分間超音波洗浄したもの、前記アルカリ溶液による処理条件で処理したものの3水準を用意した。これら3水準についてオージェ電子分光法で分析した結果、未処理、MEK洗浄については、差が認められなかったが、アルカリ処理したものは、未処理ではほとんど認められなかった、Naが認められた。ちなみに前記分析方法で、深さ方向について、分析したところ、最表面から3nmで、Naの濃度が酸化皮膜中のベース濃度と、最高濃度の中間になった。このことから、陽極酸化皮膜上に形成されたアルカリチタン酸塩層の厚さは3nmであることが判る。
【0053】
これら3水準のチタン板に、エチレン酢酸ビニル共重合体を主成分とする熱可塑性接着シートを熱圧着し、幅25mm、剥離速度300mm/minで180°剥離をして、それぞれの剥離強度を比較した。その結果を表2に示した。表2中の○は剥離強度4kN/m以上、△は1kN/m以上、4kN/m未満、×は1kN/m未満である。
【0054】
【表2】
【0055】
この結果から、アルカリ溶液により処理した場合、未処理、MEK洗浄と比較して、被覆層と非常に高い密着性を得ることが出来ることが判った。
【0056】
【発明の効果】
本発明により、大幅な設備改造などを必要としない簡便で安価な処理をすることで、干渉色により発色したチタンの干渉色を残したまま表面を保護することができ、これによりチタンの干渉色を生かした建材、家電、家具、小物など様々な材料を長期間補修することなく使用することが出来るようになった。したがって、本発明は極めて産業上の価値の高い発明であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】酸化皮膜の厚さやアルカリチタン酸塩層の厚さをオージェ電子分光法により測定する方法を説明するための図。
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面に被覆層を有するチタン系材料およびその製造方法に関するものであり、特に、酸化皮膜の干渉作用により発色したチタン系材料の表面に、変色を防止することを目的とした透明な被覆層を有するチタン系材料およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
チタンは、大気環境において極めて優れた耐食性を示すことから、海浜地区の屋根、壁のような建材用途に用いられている。チタンが屋根材等に使用されはじめてから10数年を経過するが、これまで腐食が発生したと報告された例はない。しかしながら、使用環境によっては長期間に亘って使用されたチタン表面が暗い金色に変色する場合がある。
【0003】
変色は極表面層に限定されることから、チタンの防食機能を損なうものではないが、干渉色により発色したチタン系材料はその意匠性の高さから使用されているため、表面の変色が意匠性の観点で問題となる場合がある。
【0004】
また、干渉色により発色したチタン系材料は、その意匠性の高さから屋外用途以外でも使用されているが、発色が酸化皮膜の干渉作用に基づくため、指紋や油性の汚れが付着すると、その部分の色調が変化して見えるため、汚染が目立ちやすい。
【0005】
前者のような環境における変色の防止方法としては、チタン系材料の酸化皮膜の構造を規定することにより変色を防止する方法が、例えば、特許文献1等に記載されている。
【0006】
また、後者の変色に対する防止方法として、表面に透明系の塗料を施すことにより表面汚染を防止するという方法も、非特許文献1に紹介されているが、この非特許文献1には、この方法では汚染が防止できる代わりに、干渉皮膜の色彩を犠牲にしてしまうので、「干渉皮膜の色彩を生かしたまま表面汚染を防止する方法は確立されていないのが実体である。」と記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−130886号公報
【非特許文献1】
表面処理対策Q&A1000編集委員会 編集「表面処理対策Q&A1000」(1998年5月、(株)産業技術サービスセンター発行、p.634)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、意匠性に優れた干渉色により発色したチタン系材料を屋根、壁材のような大気環境中で使用した場合に発生する酸化皮膜自体の変質による変色や、表面に付着した汚れによる干渉色の色調変化を防止した表面に被覆層を有するチタン系材料およびその製造方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明では、干渉色により発色したチタン系材料の意匠性を損なうことなく表面を保護することを目的としているが、酸化皮膜の厚さ、干渉色の発色機構、原板の明度を適正な条件にすることで、表面に透明な被覆層を設けても干渉色が損なわれないことを見出し、かかる知見を基に本発明を完成させたものであって、本発明がその要旨とするところは以下の通りである。
(1) 干渉色を有する酸化皮膜が形成されたチタン系材料の表面に透明被覆層を被覆してなるチタン系材料であって、前記酸化皮膜の厚さが150〜600nmであることを特徴とする表面に被覆層を有するチタン系材料。
(2) 干渉色を有する酸化皮膜が形成されたチタン系材料の表面に透明被覆層を被覆してなるチタン系材料であって、前記酸化皮膜による干渉色が、干渉により強められた波長と弱められた波長の両方の作用によるもので、干渉により強められた波長による色と、弱められた波長による色の補色の色相が、色相環で90°以内の近い色であることを特徴とする表面に被覆層を有するチタン系材料。
(3) 前記酸化皮膜による干渉色が、干渉により強められた波長と弱められた波長の両方の作用によるもので、干渉により強められた波長による色と、弱められた波長による色の補色の色相が、色相環で90°以内の近い色であることを特徴とする(1)に記載の表面に被覆層を有するチタン系材料。
(4) 干渉色を有する酸化皮膜が形成されたチタン系材料の表面に透明被覆層を被覆してなるチタン系材料であって、前記酸化皮膜が形成されたチタン系材料の被覆層形成前の明度が、JIS Z 8730に準拠したL*a*b*表色系のL*値が33以上であることを特徴とする表面に被覆層を有するチタン系材料。
(5) 前記酸化皮膜が形成されたチタン系材料の被覆層形成前の明度が、JIS Z 8730に準拠したL*a*b*表色系のL*値が33以上であることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載の表面に被覆層を有するチタン系材料。
(6) 干渉色を有する酸化皮膜が形成されたチタン系材料の表面に透明被覆層を被覆してなるチタン系材料であって、前記酸化皮膜上にアルカリチタン酸塩層を有することを特徴とする表面に被覆層を有するチタン系材料。
(7) 前記酸化皮膜上にアルカリチタン酸塩層を有することを特徴とする(1)〜(5)の何れかに記載の表面に被覆層を有するチタン系材料。
(8) 前記透明被覆層がクリア塗膜であることを特徴とする(1)〜(7)の何れかに記載の表面に被覆層を有するチタン系材料。
(9) 前記透明被覆層が接着層であることを特徴とする(1)〜(7)の何れかに記載の表面に被覆層を有するチタン系材料。
(10) チタン系材料表面に酸化皮膜を形成し、その後、アルカリ溶液により処理を行ってから、透明被覆層を被覆することを特徴とする表面に被覆層を有するチタン系材料の製造方法。
(11) 前記アルカリ溶液のpHが8以上、14以下で、処理温度が10℃以上、90℃以下であることを特徴とする(10)に記載の表面に被覆層を有するチタン系材料の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
まず、本発明において表面に形成する酸化皮膜の作成方法は、電解溶液中における陽極酸化、過酸化水素を含む溶液、強酸、強アルカリ溶液による化学酸化など、いずれも特に限定しないが、均一な色が簡易に得られる点から、電解質溶液中でチタン系材料を陽極とした、いわゆる陽極酸化法が好ましい。使用する電解質溶液も特に限定はしないが、一般的には、リン酸、硫酸、ホウ酸、あるいはこれらの塩類を一種類以上含んだものを電解質溶液として用い、チタン材料に印加する電圧を制御することによって所望する色を発色するもので、工業的にも用いられている方法である。
【0012】
表面に形成する酸化皮膜の厚さは、150nm以上、600nm以下であることが好適である。150nmより薄いと被覆層を形成することにより干渉色が著しく損なわれることがある。透明被覆層を形成後、より鮮明な干渉色を残すには、酸化皮膜の厚さが厚い方がよく、酸化皮膜の厚さを200nm以上にすることでより鮮明な干渉色を残すことが出来る。しかし、酸化皮膜の厚さが600nmより厚くなると、被覆層を形成する以前に酸化皮膜による干渉色が無くなるため、酸化皮膜の厚さは200〜600nmがより好適である。
【0013】
酸化皮膜の厚さはオージェ分光法によって確認することが出来る。150〜600nmの酸化皮膜は、具体的には電解液として1mass%リン酸溶液を用い、陰極にSUS304を用いた場合、およそ30〜140Vの電圧で定電圧電解することによって得られるが、電解液の浴組成や陰極の配置の違いで溶液抵抗が異なること、陰極の違いにより水素発生過電圧が異なることなどの理由により、電解電圧と膜厚との関係は変化する。
【0014】
酸化皮膜による干渉色は、干渉により強められた波長と弱められた波長の両方の作用によるもので、干渉により強められた波長による色と、弱められた波長による色の補色の色相が、色相環で90°以内の近い色であればよい。
【0015】
すなわち、干渉色が干渉により発色している色に対応する波長のみが強められる場合、発色している色の補色に対応する波長のみが弱められる場合、または、干渉により強められている波長に対応する色と、弱められている波長に対応する色の色相が、色相環で90°以内の近い色相である場合、表面に透明被覆層を形成することで、干渉色が著しく損なわれることがある。しかし、干渉色が干渉により強められた波長と、弱められた波長の両方の作用によるもので、干渉により強められた波長による色と、弱められた波長による色の補色の色相が、色相環で90°以内の近い色であれば、その複合効果により、透明被覆層を形成しても干渉色が損なわれない。
【0016】
また、可視光に対応する360〜800nmの波長域内に、干渉により強められる波長、弱められる波長がそれぞれ一つ以上ある場合は、一つ以上の強められた波長に対応する色同士を加算混合した色と、一つ以上の弱められた波長に対応する色同士を加算混合した色の補色の色相が色相環で90°以内であれば複合効果により、透明被覆層を形成しても干渉色が損なわれない。しかし、可視光の中でも、比較的鮮明な色に対応する400〜760nmの波長域内に、強められる波長、弱められる波長が合計5つ以上ある場合は、互いに効果を相殺してしまうため、被覆層を形成する以前に鮮明な干渉色が認められない。
【0017】
具体的な色で説明すると、陽極酸化によりチタン系材料を発色する場合、発色電圧を上げ、酸化皮膜を厚くするにしたがって、彩度、明度は異なるが、色相環を数回周回し、彩度が低い色に収束する。酸化皮膜を形成することで、まず黄色に発色し、その後、青色を発色し、また黄色、青色の順番に発色し、その後も緑色、桃色等を発色する。ここでは最初に現れる黄色を1周目の黄色、その後に現れる青色を1周目の青色、次に現れる黄色を2周目の黄色、次に現れる青色を2周目の青色、次に現れる緑を2周目の緑色と呼ぶ。
【0018】
1周目の黄色や青は、発色している色に対応する波長のみが強められる場合、発色している色の補色に対応する波長のみが弱められる場合、または、干渉により強められている波長に対応する色と、弱められている波長に対応する色の色相が、色相環で90°以内の近い色相である。そのため、表面に透明被覆層を形成すると、干渉色を著しく損なってしまう。ちなみに、1周目の黄色の発色は、補色である青色に対応する波長のみが干渉により弱められることにより、1周目の青色発色は、初期の色が濃いものは補色である黄色に対応する波長のみが干渉により弱められる場合に相当し、その後に現れる薄い青色は、青色に対応する波長のみが干渉により強められる場合、または、それと同時に青色と近い色相の紫色に対応する波長のみが干渉により弱められる場合に相当する。
【0019】
それに対して、2周目の黄色や青色は、干渉により強められた波長と弱められた波長の両方の作用によるもので、干渉により強められた波長に対応する色と、弱められた波長に対応する色の補色の色相が、色相環で90°以内の近い色で、その複合効果で発色しているため、透明被覆層を被覆しても、干渉色が消えない。ちなみに、2週目の黄色の発色は、黄色に対応する波長が干渉により強められると共に、黄色の補色である青色に対応する波長が干渉により弱められる場合に相当し、2周目の青色の発色は、青色に対応する波長が干渉により強められる共に、青色の補色である黄色に対応する波長が干渉により弱められる場合に相当する。
【0020】
また、2週目の緑色は、可視光に対応する360〜800nmの波長域内に、干渉により強められる波長が一つ、弱められる波長が二つあり、強められた波長に対応する色と、二つの弱められた波長に対応する色同士を加算混合した色の補色の色相が色相環で90°以内であり、その複合効果で発色しているため、透明被覆層を形成しても、干渉色が消えない。ちなみに、2週目の緑色の発色は、緑色に対応する波長が干渉により強められると共に、赤色と紫色に対応する波長が干渉により弱められる場合に相当する。
【0021】
電解質溶液中で陽極酸化することにより表面に酸化皮膜を形成し酸化皮膜の干渉色により発色させたチタン系材料で、そのチタン系材料の色をJIS Z 8730に準拠したL*a*b*表色系で示した場合、そのL*値が、33以上であることが好適である。L*が33より低いと、被覆層を形成することにより干渉色が損なわれることがある。
【0022】
これは、透明被覆層を表面に形成することで、干渉色が失われる場合、グレーに近い色に変色してしまうため、L*が高い値の明るい色ほど、被覆層の影響を受けにくいためである。
【0023】
表面に形成する透明被覆層の厚さは、特には限定しないが、0.5μm以上であることが好ましい。0.5μmより薄いと、被覆層によっては被覆層自体が干渉効果を持ってしまう可能性があり、酸化皮膜による干渉色を相殺してしまう可能性があるだけでなく、塗装の均一性も確保しづらいことから、表面に色むらを生じてしまう可能性がある。また、被覆層の厚さは、厚い分には特に問題は無く、透明感が保たれていれば良いが、特殊な形状のものについて、凹凸を吸収しなくてはならないような場合以外は、コストの面から2mm以下で十分である。
【0024】
電解質溶液中で陽極酸化することにより表面に酸化皮膜を形成し、酸化皮膜の干渉色により発色させたチタン系材料に透明な被覆層を形成する際、事前にアルカリ溶液により処理することが好適である。
【0025】
アルカリ溶液には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸塩、メタ珪酸塩、オルソ珪酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、縮重リン酸塩酸塩、重炭酸塩、界面活性剤等を主成分とするものを用いることが出来る。
【0026】
アルカリ溶液は、pHが8以上、14以下で、処理温度が10℃以上、90℃以下であれば良い。アルカリ溶液の成分使用方法により異なるが、温度が35℃以上、80℃以下、pHは9以上、13.5以下であればより好適である。この範囲であれば数十秒から数分間の処理で十分な効果が得られる。温度、pHがより低い場合は、十分な処理が出来るまでに時間がかかる可能性が高いだけでなく、時間をかけても十分な効果が得られない可能性が高い。温度、pHがより高い場合は、処理時間によっては酸化皮膜が侵され、干渉色が変色してしまう可能性があるばかりでなく、アルカリ浴槽の耐食性等、装置的な問題が生じてしまう可能性がある。
【0027】
電解質溶液中で陽極酸化することにより表面に酸化皮膜を形成し、酸化皮膜の干渉色により発色させたチタン系材料に対して、前記アルカリ溶液により処理を施すと、酸化皮膜上にアルカリチタン酸塩層を形成する。このことによりチタン系材料と被覆層の密着性を向上することが出来る。アルカリチタン酸塩層の厚さは、特には限定しないが、前記アルカリ溶液による処理により形成されるアルカリチタン酸塩層の厚さは、0.5〜10nm程度である。アルカリチタン酸塩層の厚さが、0.5〜10nm程度であれば、干渉色には影響を与えない。アルカリチタン酸塩の厚さはオージェ電子分光法によって確認することが出来る。
【0028】
アルカリチタン酸塩としては、処理に用いるアルカリ溶液により異なるが、チタン酸ナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸リチウムなどが挙げられる。
【0029】
また、アルカリ溶液による処理は、チタン系材料の洗浄方法としても有用である。陽極酸化によって形成された酸化チタン層は多孔質であることから、本来、投錨効果により被覆層とはある程度の密着性を有するはずであるが、陽極酸化によって形成された酸化チタンは汚れが吸着しやすく、陽極酸化直後から汚染が進行しづらい環境で保存しないと、被覆層と良好な密着性が得られない。しかし、チタン系材料を輸送したり、プレス、パンチング等の加工をしたりする際には、表面に疵が付くのを防止するため、塗油もしくは保護フィルムを貼ることが多い。塗油した場合、表面に残った油はもちろん、保護フィルムを貼り付けた場合、目に見えないレベルであっても表面に粘着部分が残ってしまい、被覆層との密着性に悪影響を及ぼすことが多い。そのため、表面の油分、粘着分を除去するために表面を処理する必要がある。しかし、有機溶剤による洗浄では被覆層と十分な密着性が確保できず、酸による処理では、酸化皮膜が侵され干渉色が変色してしまう可能性が高い。それに対して、前記アルカリ溶液による処理は、被覆層と十分な密着性を確保でき、かつ、干渉色に影響を与えることも無い。
【0030】
透明被覆層は、クリア塗膜であってもよく、クリア塗膜は、有機系、無機系、いずれも特に限定されず、用途に応じて一般に公知のものを用いることが出来る。例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニル、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂や、これらの共重合体、また、水ガラス、アルミナ、シリカ、ジルコニア等のセラミック系のものを使用することができ、さらに、有機系、無機系を問わず数種のものをブレンドして用いてもよい。塗料としての形態も特に限定されず、用途に応じて適宜使い分けることができる。例えば、有機溶剤系塗料、水系塗料、コロイド分散系塗料、粉体塗料、電着塗料、熱硬化型塗料、常温乾燥型塗料などが挙げられる。
【0031】
また、透明被覆層は、接着剤や粘着剤からなるものであってもよく、接着剤、粘着剤としては、有機系、無機系、いずれも特に限定されず、用途に応じて一般に公知のものを用いることができる。例えば、有機系では、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリビニルブチラ−ル、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル、メタクリル、ポリスチレン、ポリアミド、アルキド、セルロース、シアノアクリレート、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ、ポリスルホン、ポリアクリルスルホン、フェノール、レゾルシノール、ユリア、メラミン、フラン、エポキシ、イソシアネート、シリコン、アクリル酸ジエステル、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ポリクロロプレン、ニトリルゴム、ポリサルファイド、ポリイミド、ポリベンズイミダゾールや、これらの共重合体、天然系では、デキストリン、大豆たん白、アルブミン、松脂、セラック、ギルソナイト、カゼイン等が挙げられ、無機系では、水ガラスやコロイドとして水に分散したアルミナ、シリカ、ジルコニア等が挙げられる。さらに有機系、無機系を問わず、用途に応じて数種のものをブレンドして用いてもよい。
【0032】
また、前記接着剤、粘着剤を介して透明なフィルムを積層することも可能である。特に粘着剤の場合は、硬化しないためそのままでは汚れ防止にならないため、透明なフィルムを積層することが好適である。
【0033】
フィルムは、透明なものであればいずれも特に限定されず、用途に応じて一般に公知のものを用いることが出来る。例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、セロハンなどのフィルムが挙げられ、さらに透明なものであれば、有機、無機を問わず、アクリル板、ポリカーボネート板、塩化ビニル板、石英板、ジルコニア板、アルミナ結晶板などの硬質板を張り付けることもできる。厚さについては、チタン系材料に直接積層する部分は特別な用途以外では先に述べたように2mm以下で十分だが、接着剤を介して積層する透明なフィルム、板については、最大で20cm程度のものまで積層可能である。最小厚さは、フィルムの製膜性から5μm程度までが好適である。また、積層は一層である必要は無く、用途に応じて数枚の層を積層してもよい。
【0034】
また、透明な被覆層やフィルム、板は無色透明である必要は無く、干渉色を損なわない程度の透明感があれば、着色がなされていても構わない。干渉色と被覆層やフィルム、板の色を併せることで、さらに意匠性を高めることができる場合もある。
【0035】
接着剤、粘着剤層を有する場合は、他の用途として、接着剤を2枚のチタン板で挟みこむ防振板を作成することも可能で、もちろん表に出る面に対しては、クリア塗膜を塗布したり、接着剤、粘着剤を塗布したり、さらに上に透明なフィルムや板を貼り付けることも可能である。
【0036】
クリア塗膜の塗装方法は、いずれも特に限定されず、状況に応じて一般的に公知の塗装方法を採用することが出来る。例えば、ロールコート法、ローラーカーテンコート法、カーテンフロー法、エアスプレー法、エアレススプレー法、バーコート法、ドクターブレード法、静電法、浸漬法、刷毛塗り法、T−ダイ法などが採用できる。
【0037】
接着剤の塗布方法も、いずれも特に限定されず、状況に応じてクリア塗膜と同様方法を採用することが出来る。
【0038】
透明なフィルム、板の積層方法は、いずれも特に限定されず、一般的に公知な方法を採用することが出来る。例えば、接着剤が硬化する前に貼り付ける方法、接着剤が加熱により接着性を発現するものの場合は、事前に接着剤のみを塗布、硬化し、その後熱圧着するような方法、また、接着剤シートをチタン系材料と透明なフィルム、板との間にはさみ、熱圧着により貼り付ける方法を採用することが出来る。
【0039】
透明なフィルム、板そのものが加熱により接着性を発現する成分からなる場合は、フィルム、板そのものを熱圧着によりチタン系材料上に積層することが出来る。
【0040】
本発明では、陽極酸化皮膜の厚さやアルカリチタン酸塩層の厚さをオージェ電子分光法により求めているが、酸化皮膜の厚さは図1(酸素の深さ方向濃度のプロファイル)に示した様に、酸素濃度が最高濃度とベース濃度の中間濃度に減少するまでに要したスパッタリング時間tに、スパッタリング速度を乗じて求めることができる(酸化皮膜の厚さ=スパッタリング時間t×スパッタリング速度)。アルカリチタン酸塩層の厚さも、アルカリ成分(例えばNa)について酸化皮膜の厚さを求める際の酸素と同様な見方をすることで求めた。また、このときのスパッタ速度は、測定時のスパッタリング条件でSiO2 をスパッタリングしたときの速度から換算したものである。また、上記分析は、下記の条件および方法で行なったものである。
[分析条件]
分析装置:PHI 610走査型オージェ電子分光装置(パーキンエルマー社製)
一次電子:5kV−100nA
分析領域:約20μm×30μm
スパッタリング:Ar+ 2kV−25mA
スパッタリング速度:約15nm/min(SiO2 換算)
[分析方法]
まず、最表面についてワイドスキャンにより定性分析を行なった後、定性分析で検出された元素について深さ方向組成分析を行なった。また存在元素確認の為、深さ方向分析時もワイドスキャンを行なった。
【0041】
【実施例】
実施例に基づき本発明をさらに説明する。
【0042】
チタン板には、板厚0.4mm、リン酸1mass%溶液中で、SUS304を陰極にして定電圧電解することで形成した陽極酸皮膜厚が45〜645nmの13水準、発色後、保護フィルム(粘着剤の主成分はアクリル系)を貼付けて保存していたものを用いた。
【0043】
アルカリ溶液による処理は、アルカリ溶液として炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、亜硝酸塩、縮合燐酸塩、重炭酸塩、界面活性剤等を含む薬剤を、水1Lに対して固形分が20gになるように溶解したものを用いた。この溶液は60℃でpHは11から12である。
【0044】
60℃に保った前記アルカリ溶液にチタン板を3分間浸漬したのち、イオン交換水で水洗、常温で送風により乾燥した。
【0045】
[被覆層被覆前後の干渉色の比較]
被覆層を表面に設けることによる干渉色の変色を確認するため、陽極酸化皮膜の厚さが45〜645nmのチタン板にポリエステル樹脂を約2μmバーコーターで塗布し、塗装前後の色を比較した。その際、JIS Z 8730に準拠したL*a*b*表色系の測定と、目視による色の確認を行った。
【0046】
表1で、各比較例、実施例の膜厚と発色機構、L*1に対して、色差ΔEと目視による確認の比較をしたが、ここで、発色機構は、陽極酸化皮膜による干渉色が、干渉により発色している色に対応する波長のみが強められる場合、発色している色の補色に対応する波長のみが弱められる場合、または、干渉により強められている波長による色と、弱められている波長による色の色相が、色相環で90°以内の近い色相である場合を×、陽極酸化皮膜による干渉色が、干渉により強められた波長と弱められた波長の両方の作用によるもので、干渉により強められた波長による色と、弱められた波長による色の補色の色相が、色相環で90°以内の近い色のものを○とした。L*1は、○が33以上、×が33未満とし、ΔEは、ΔE={(L*2−L*1)2+(a*2−a*1)2+(b*2−b*1)2}(1/2) によって求めたもので、○は2.5未満、△は2.5以上、5未満、×は5以上としたが、ここで、L*1,a*1,b*1は塗装前の測定結果、L*2,a*2 ,b*2 は、塗装後の測定結果である。目視による確認では、色の違いを目視で確認した場合、意匠性の高い材料といえるレベルに干渉色が残っていると感じるものは○、干渉色が損なわれ、意匠性の高い材料といえないと感じるもの、グレーに変色してしまっていると感じるものは×にした。
【0047】
【表1】
【0048】
この結果から、陽極酸化皮膜については、厚さが150nm未満のものにクリア塗膜を積層すると、干渉色が失われるが、厚さが150nm以上のものは、クリア塗膜を積層しても干渉色が残ることが判かる。また、陽極酸化皮膜の厚さがより厚ければ、さらに好適であることが判る。しかし、比較例6のように陽極酸化皮膜の厚さが600nmより厚い場合は、被覆層を表面に形成する以前に鮮明な干渉色が認められない。これは、陽極酸化皮膜の厚さが600nmより厚くなると、可視光の中でも、比較的鮮明な色に対応する400〜760nmの波長域内に、干渉により強められる波長、弱められる波長が合計5つ以上になり、互いに効果を相殺してしまうためである。
【0049】
陽極酸化皮膜の厚さが600nmを超えると、干渉による発色機構が作用しないため、元の色調自体がグレー色を呈していた。
【0050】
発色機構については、干渉色が干渉により発色している色に対応する波長のみが強められる場合、発色している色の補色に対応する波長のみが弱められる場合、または、干渉により強められている波長に対応する色と、弱められている波長に対応する色の色相が、色相環で90°以内の近い色相である場合にクリア塗膜を積層すると、干渉色が失われるが、干渉色が干渉により強められた波長と弱められた波長の両方の作用によるもので、干渉により強められた波長による色と、弱められた波長による色の補色の色相が、色相環で90°以内の近い色の場合は、クリア塗装を積層しても干渉色が残ることが判る。
【0051】
L*1については、33未満のものにクリア塗膜を積層すると、干渉色が失われるが、33以上のものは、クリア塗膜を塗装しても干渉色が残ることが判る。
【0052】
[アルカリ処理によるチタン板と被覆層との密着性の変化]
チタン板には陽極酸化皮膜厚225nmで保護フィルム剥離後、未処理のもの、常温のMEK中で3分間超音波洗浄したもの、前記アルカリ溶液による処理条件で処理したものの3水準を用意した。これら3水準についてオージェ電子分光法で分析した結果、未処理、MEK洗浄については、差が認められなかったが、アルカリ処理したものは、未処理ではほとんど認められなかった、Naが認められた。ちなみに前記分析方法で、深さ方向について、分析したところ、最表面から3nmで、Naの濃度が酸化皮膜中のベース濃度と、最高濃度の中間になった。このことから、陽極酸化皮膜上に形成されたアルカリチタン酸塩層の厚さは3nmであることが判る。
【0053】
これら3水準のチタン板に、エチレン酢酸ビニル共重合体を主成分とする熱可塑性接着シートを熱圧着し、幅25mm、剥離速度300mm/minで180°剥離をして、それぞれの剥離強度を比較した。その結果を表2に示した。表2中の○は剥離強度4kN/m以上、△は1kN/m以上、4kN/m未満、×は1kN/m未満である。
【0054】
【表2】
【0055】
この結果から、アルカリ溶液により処理した場合、未処理、MEK洗浄と比較して、被覆層と非常に高い密着性を得ることが出来ることが判った。
【0056】
【発明の効果】
本発明により、大幅な設備改造などを必要としない簡便で安価な処理をすることで、干渉色により発色したチタンの干渉色を残したまま表面を保護することができ、これによりチタンの干渉色を生かした建材、家電、家具、小物など様々な材料を長期間補修することなく使用することが出来るようになった。したがって、本発明は極めて産業上の価値の高い発明であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】酸化皮膜の厚さやアルカリチタン酸塩層の厚さをオージェ電子分光法により測定する方法を説明するための図。
Claims (11)
- 干渉色を有する酸化皮膜が形成されたチタン系材料の表面に透明被覆層を被覆してなるチタン系材料であって、前記酸化皮膜の厚さが150 〜600 nmであることを特徴とする表面に被覆層を有するチタン系材料。
- 干渉色を有する酸化皮膜が形成されたチタン系材料の表面に透明被覆層を被覆してなるチタン系材料であって、前記酸化皮膜による干渉色が、干渉により強められた波長と弱められた波長の両方の作用によるもので、干渉により強められた波長による色と、弱められた波長による色の補色の色相が、色相環で90°以内の近い色であることを特徴とする表面に被覆層を有するチタン系材料。
- 前記酸化皮膜による干渉色が、干渉により強められた波長と弱められた波長の両方の作用によるもので、干渉により強められた波長による色と、弱められた波長による色の補色の色相が、色相環で90°以内の近い色であることを特徴とする請求項1に記載の表面に被覆層を有するチタン系材料。
- 干渉色を有する酸化皮膜が形成されたチタン系材料の表面に透明被覆層を被覆してなるチタン系材料であって、前記酸化皮膜が形成されたチタン系材料の被覆層形成前の明度が、JIS Z 8730に準拠したL*a*b*表色系のL*値が33以上であることを特徴とする表面に被覆層を有するチタン系材料。
- 前記酸化皮膜が形成されたチタン系材料の被覆層形成前の明度が、JIS Z 8730に準拠したL*a*b*表色系のL*値が33以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の表面に被覆層を有するチタン系材料。
- 干渉色を有する酸化皮膜が形成されたチタン系材料の表面に透明被覆層を被覆してなるチタン系材料であって、前記酸化皮膜上にアルカリチタン酸塩層を有することを特徴とする表面に被覆層を有するチタン系材料。
- 前記酸化皮膜上にアルカリチタン酸塩層を有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の表面に被覆層を有するチタン系材料。
- 前記透明被覆層がクリア塗膜であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の表面に被覆層を有するチタン系材料。
- 前記透明被覆層が接着層であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の表面に被覆層を有するチタン系材料。
- チタン系材料表面に酸化皮膜を形成し、その後、アルカリ溶液により処理を行ってから、透明被覆層を被覆することを特徴とする表面に被覆層を有するチタン系材料の製造方法。
- 前記アルカリ溶液のpHが8以上、14以下で、処理温度が10℃以上、90℃以下であることを特徴とする請求項10に記載の表面に被覆層を有するチタン系材料の製造方法。
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