JP2004136647A - 複合焼結体の製造方法、複合成形体の製造方法、複合焼結体および複合成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】少なくとも第一相と第二相とを備えており、第一相と第二相との間に境界が設けられている複合焼結体を製造するのに際して、複合焼結体の寸法精度を高くできるようにし、また生産性を向上させる。
【解決手段】少なくとも第一相と第二相とを備えており、第一相と第二相との間に境界が設けられている複合焼結体を製造する。第一相と第二相とを含む複合成形体を得るのに際して、焼結可能な無機物の粉体、分散媒およびゲル化剤を含むスラリーを注型し、このスラリーをゲル化させることにより固化することによって少なくとも第一相を成形する。次いでこの複合成形体を焼成することによって複合焼結体を得る。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくとも第一相と第二相とを備えており、第一相と第二相との間に境界が設けられている複合焼結体を製造する。第一相と第二相とを含む複合成形体を得るのに際して、焼結可能な無機物の粉体、分散媒およびゲル化剤を含むスラリーを注型し、このスラリーをゲル化させることにより固化することによって少なくとも第一相を成形する。次いでこの複合成形体を焼成することによって複合焼結体を得る。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セラミックスや金属からなる複数の成形部分を備える複合成形体およびその焼結体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】スーパークリーン状態を必要とする半導体製造装置では、デポジション用ガス、エッチング用ガス、及びクリーニング用ガスとして、塩素系ガス、及びフッ素系ガスなどのハロゲン系腐食性ガスが使用されている。例えば、熱CVD装置などの半導体製造装置においては、デポジション後にClF3、NF3、CF4、HF、及びHClなどのハロゲン系腐食性ガスからなる半導体クリーニングガスを用いている。また、デポジションの段階でも、WF6、SiH2Cl2などのハロゲン系腐食性ガスを成膜用ガスとして使用している。
【0003】また、半導体製造装置分野において、いわゆるシャワープレートと呼ばれる製品がある。これは、セラミックス製の板状基材に多数の貫通孔を形成したものである。シャワープレートを半導体ウエハー上の空間に設置し、ハロゲン系ガスをシャワープレートの貫通孔を通してウエハー上の空間に供給し、プラズマを発生させる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、半導体製造装置用部材、例えば装置内に収容する部材や、チャンバーの内壁面には、ハロゲンガスやそのプラズマに対する耐食性が高く、長期間にわたって安定した被膜を形成することが望まれる。
【0005】本出願人は、特許文献1において、基体表面にイットリウム−アルミニウム・ガーネット膜を溶射法によって形成することで、ハロゲンガスのプラズマに対して高い耐食性を付与し、パーティクルの発生を抑制できることを開示した。
【特許文献1】
特願2001−110136号明細書
【0006】しかし、この膜には次の問題点が生ずる場合があった。即ち、溶射法によっては、厚さが一定の膜を形成することが難しく、得られた溶射膜の厚さには場所によってかなりのバラツキが発生する。膜の厚さが変動すると、膜の特性、例えば熱伝導が変動したり、膜内の応力分布が発生し、剥がれ等の原因になるおそれがある。また、溶射法では、ある程度以上の厚さの膜を形成することが難しい。例えば厚さ0.5mm以上の膜を形成することはきわめて困難である。更に、基体を焼結させた後、基体表面に溶射膜を形成することが必要であり、この溶射膜をある程度緻密にするためには、熱処理することも通常必要であるので、工程数が多く、生産性が低い。
【0007】また、シャワープレートの場合、従来製法では、セラミックス製の板状基体に研削加工によって貫通孔を形成している。しかし、この際の加工ダメージによってパーティクルが発生し、半導体欠陥の原因となる場合があるので、シャワープレートから発生するパーティクルを抑制する技術が必要である。
【0008】本発明の課題は、少なくとも第一相と第二相とを備えており、第一相と第二相との間に境界が設けられている複合焼結体を製造するのに際して、複合焼結体の寸法精度を高くできるようにし、また生産性を向上させることである。
【0009】また、本発明の課題は、少なくとも第一相成形部と第二相成形部とを備えており、第一相成形部と第二相成形部との間に境界が設けられている複合成形体を製造するのに際して、複合成形体の寸法精度を高くできるようにすることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】第一の態様に係る発明は、少なくとも第一相と第二相とを備えており、第一相と第二相との間に境界が設けられている複合焼結体の製造方法であって、第一相と第二相とを含む複合成形体を得るのに際して、焼結可能な無機物の粉体、分散媒およびゲル化剤を含むスラリーを注型し、このスラリーをゲル化させることにより固化することによって少なくとも第一相を成形し、この複合成形体を焼成することによって複合焼結体を得ることを特徴とする。
【0011】また、本発明は、この方法によって得られたことを特徴とする複合焼結体に係るものである。
【0012】また、本発明は、少なくとも第一相成形部と第二相成形部とを備えており、第一相成形部と第二相成形部との間に境界が設けられている複合成形体の製造方法であって、焼結可能な無機物の粉体、分散媒およびゲル化剤を含むスラリーを注型し、このスラリーをゲル化させることにより固化することによって少なくとも第一相成形部を成形することを特徴とする。
【0013】また、本発明は、この方法によって得られたことを特徴とする複合成形体に係るものである。
【0014】第一の態様に係る発明によれば、複合成形体を製造するのに際して、目的とする設計寸法に対する実測値の差を著しく低減できる。例えば、腐食保護等を目的に片側表面を耐食層にした2層構造体を形成させる場合などでは、設計上、部分的に耐食層の膜厚を増加したいことがある。そのような部分的に膜厚を変化させた設計の場合でも、本発明においては設計値に極めて近い形状で、成形体を得ることができる。また、この複合成形体を焼結させ、第一相と第二相とを共焼結させることによって、製品を得るまでの焼成回数を減らし、複合焼結体の生産性を向上させることができ、かつ得られた複合焼結体の寸法精度も高くできる。さらにスラリーの調製条件により第一相と第二相の材質、例えば多孔度、結晶の種類や構成、熱膨張等の物性を独立に制御できる。
【0015】また、第二の態様に係る発明は、細孔が設けられたセラミックス製の本体と、本体の細孔側の内壁面に設けられ、細孔に面する最内層を備えており、この最内層が耐蝕性セラミックスからなり、細孔の直径が0.1 mm以上、2 mm以下であり、細孔の長さが2 mm以上であることを特徴とする、耐蝕性部材に係るものである。
【0016】例えばシャワープレートの細孔は、直径2mm以下、長さ2mm以上といったように細長いものであり、この中にハロゲン系腐食性ガスを通してウエハー上にガスを供給すると、細孔内壁面からのパーティクルの発生が比較的に顕著であった。これは、細孔の直径が小さいことから、細孔内壁面の加工ダメージに基づくパーティクル発生が特に生じ易いためと考えられる。
【0017】これに対して、第二の態様に係る発明においては、細孔の直径が2 mm以下であり、細孔の長さが2 mm以上であるような場合に、細孔に面する耐蝕性セラミックス層を設けることによって、パーティクル発生を著しく低減できる。特に、このような最内層の作用効果は、細孔の直径が2mm以下、かつ長さが2mm以上であるような形態の場合に著しいことが分かった。これは、細孔が一定以上細長い場合に、細孔内壁面のダメージに起因するパーティクルの発生が著しいためと考えられる。
【0018】また、第三の態様に係る発明は、細孔が設けられた本体と、本体の細孔側の内壁面に設けられ、細孔に面する最内層を備えているセラミックス部材を製造に係る。本方法では、成形空間が形成する外枠、および成形空間内に突出する突起を備えている型の突起に、焼成後に最内層を構成するゲルキャストスラリーを付着させて固化させ、次いで成形空間内に少なくとも焼成後に前記本体を構成するゲルキャストスラリーを流し込んで固化させることによって成形体を得、この成形体を焼成することによって、本体および最内層を形成する。
【0019】この方法によれば、細長い細孔の内壁面に対して、特定のセラミック層を、加工を伴うことなしに形成することができる。しかも、多数の細孔を例えば研削加工によって開けるという煩雑な工程が不要であるので、生産性が高い。しかも、上述したように、ゲルキャストスラリーを使用して最内層の形成された複合成形体を得、これを焼結しているので、最内層の厚さの寸法精度を精密に制御することができる。
【0020】以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0021】本発明においては、少なくとも第一相と第二相とを備えており、第一相と第二相との間に境界が設けられている複合焼結体を製造する。ここで、焼結可能な無機物の粉体、分散媒およびゲル化剤を含むスラリーを注型し、このスラリーをゲル化させることにより固化することによって少なくとも第一相を成形して複合成形体を得る。
【0022】この第一相の成形方法は、いわゆるゲルキャスト法と呼ばれるものである。ゲルキャスト法は、セラミック、金属の粉体、分散媒、及びゲル化剤を含むスラリーを注型した後に、このスラリーを温度条件や架橋剤の添加等によりゲル化させることにより固化して成形体を得る粉体成形体の製造方法である。
【0023】このようなゲルキャスト法は、粉末成形体の製造方法としては知られている。しかし、第一相成形部と第二相成形部とを有する複合成形体の成形に際して、第一相をゲルキャスト法によって成形することは知られていない。そして、こうして得られた複合成形体を共焼結させることによって、複合焼結体を得ることも知られていない。
【0024】以下、具体的な実施形態を例示する。本発明の複合焼結体は第一相と第二相とを備えている。第一相の材質と第二相の材質とは同じであってよく、異なっていても良い。しかし、第一相の材質と第二相の材質とは互いに異なっていることが好ましい。
【0025】第一相、第二相の形態は特に限定されない。好適な実施形態においては、図4(a)に示すように、基体3と膜2とが積層されている。この場合には、基体3が第一相であってよく、膜2が第一相であってもよい。しかし、図4(b)に示すように、第一相12と第二相13とがともに塊状であって、互いに一体化されている場合を含む。
【0026】本発明の複合焼結体は、第一相、第二相の他に、一つまたは複数の焼結体相を備えていて良い。これら他の焼結体相の形態は限定されないが、第一相、第二相と積層されていることが好ましい。また、他の焼結体相は、第一相と隣接していてよく、第二相と隣接していてよく、第一相および第二相の両方と隣接していてよい。
【0027】第一相以外の相の成形方法は限定されない。しかし、上述したゲルキャスト法、コールドアイソスタティックプレス法、スリップキャスト法、スラリーディップ法、ドクターブレード法、射出成形法を例示できる。また、第一相と第二相との成形の順序も限定されない。即ち、第一相をゲルキャスト法によって成形した後、第二相をゲルキャスト法または他の方法によって成形し、複合成形体を製造できる。あるいは、第二相をゲルキャスト法または他の方法によって成形した後で、この成形体を型中に入れ、第一相をゲルキャスト法によって成形できる。
【0028】具体的には、図1に示すように、第二相を先に成形できる。即ち、第二相をゲルキャスト法または他の方法によって成形する。そして、第一相の材料を秤量し、湿式混合し、攪拌してスラリーを製造する。そして、第二相の成形体を型中に入れ、第一相用のスラリーを注型し、硬化させ、複合成形体を製造する。そして、この複合成形体を離型し、脱溶媒、脱脂、焼成する。
【0029】また、図2に示すように、先に第一相を成形できる。即ち、第一相用の材料を秤量し、湿式混合、攪拌してスラリーを得る。この第一相用スラリーを注型し、硬化させ、第一相成形部を得る。第一相成形部を離型し、第二相を成形して複合成形体を得る。
【0030】特に好ましくは、図3に示すように、第二相をゲルキャスト法によって成形した後、第二相成形部が収容されている型中に第一相用スラリーを注型し、ゲルキャスト成形する。この場合には、複合成形体および複合焼結体の寸法精度が特に高くなり、かつ複合焼結体において第一相と第二相との剥離強度が特に高くなる。
【0031】本発明において、成形体、焼結体の寸法精度とは、設計寸法と、実際に得られる成形体や焼結体の寸法との差を意味する。これは、以下の2つの場合を含んでいる。
(1)設計寸法と、実際に得られた成形体や焼結体の寸法の平均値との差
即ち、成形体や焼結体において、場所によって寸法測定値が変動する。そして、実測寸法の平均値と設計値との差が小さいことは、寸法精度が高いことを意味する。
特に、第一相を成形する際に、厚さの設計値が大きいと、設計値と実測値との差は大きくなり易い。しかし、第一相をゲルキャスト法によって成形することで、第一相において厚さの設計値と実測値(平均値)との差を低減できる。
【0032】特に、本発明においては、第一相の厚さ(図4(a)のTAまたはTB)を0.5mm以上とすることができ、更には1.0mm以上とすることができ、この場合にも厚さの設計値と実測値(平均値)との差を低減できる。
【0033】(2)実際に得られた成形体における寸法のバラツキ
成形体や焼結体において、場所によって寸法測定値が変動する。そして、実測寸法のバラツキが小さいことは、寸法精度が高いことを意味する。第一相をゲルキャスト法によって成形することで、第一相において厚さの実測値のバラツキを低減できる。
【0034】本発明の複合成形体および複合焼結体を生成させるための焼結可能な無機物の粉体としては、加熱によって焼結し、焼結体を生成するような成形用粉末であれば特に制限はない。無機物粉体は、典型的には、セラミック粉末、金属粉末、セラミックス−金属複合材料の粉末、およびこれらの混合粉末である。セラミックスとしては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、マグネシア、フェライト、コージェライト、イットリア等の希土類元素の酸化物等の酸化物系セラミックス;チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ジルコン酸鉛、希土類元素のマンガナイト、希土類元素のクロマイト等の複合酸化物;窒化アルミニウム、窒化珪素、サイアロン等の窒化物系セラミックス;炭化珪素、炭化ホウ素、炭化タングステン等の炭化物系セラミックス;弗化ベリリウム、弗化マグネシウム、弗化カルシウム、弗化ストロンチウム、弗化バリウム等の弗化物系セラミックスを例示できる。また、金属としては、鉄、ステンレス、カルボニル鉄等の鉄系金属、チタン、銅、アルミニウム等の非鉄金属または非鉄金属の合金を例示できる。また、無機物粉末としては、グラファイト、ガラス、カーボンも例示できる。
【0035】ゲルキャスト法は、以下の方法を例示できる。
(1) 無機物粉体とともに、ゲル化剤となるポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のプレポリマーを分散媒中に分散してスラリーを調製し、注型後、架橋剤により三次元的に架橋してゲル化させることにより、スラリーを固化させる。
(2) 反応性官能基を有する有機分散媒とゲル化剤とを化学結合させることにより、スラリーを固化させる。この方法は、本出願人の特開2001−335371号公報に記載されている。
【0036】この方法においては、2以上の反応性官能基を有する有機分散媒を使用することが好ましい。また、全分散媒のうち60質量%以上が、反応性官能基を有する有機分散媒であることが好ましい。
【0037】反応性官能基を有する有機分散媒の20℃における粘度が20cps以下であることが好ましく、ゲル化剤の20℃における粘度が3000cps以下であることが好ましい。具体的には、2以上のエステル基を有する有機分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤とを化学結合させることによりスラリーを固化することが好ましい。
【0038】有機分散媒は、ゲル化剤と化学結合し、スラリーを固化可能な液状物質であること、及び注型が容易な高流動性のスラリーを形成できる液状物質であること、の2条件を満たすことが必要である。
【0039】ゲル化剤と化学結合し、スラリーを固化するためには、反応性官能基、即ち水酸基、カルボキシル基、アミノ基のようなゲル化剤と化学結合を形成し得る官能基を分子内に有していることが必要である。
【0040】前記有機分散媒は少なくとも1の反応性官能基を有するものであれば足りるが、より充分な固化状態を得るためには、2以上の反応性官能基を有する有機分散媒を使用することが好ましい。
【0041】2以上の反応性官能基を有する液状物質としては、例えば多価アルコール(エチレングリコールのようなジオール類、グリセリンのようなトリオール類等)、多塩基酸(ジカルボン酸類等)が考えられる。
【0042】尚、分子内の反応性官能基は必ずしも同種の官能基である必要はなく、異なる官能基であってもよい。また、反応性官能基はポリエチレングリコールのように多数あってもよい。
【0043】一方、注型が容易な高流動性のスラリーを形成するためには、可能な限り粘性の低い液状物質を使用することが好ましく、特に20℃における粘度が20cps以下の物質を使用することが好ましい。
【0044】既述の多価アルコールや多塩基酸は水素結合の形成により粘性が高い場合があるため、たとえスラリーを固化することが可能であっても反応性分散媒として好ましくない場合がある。従って、多塩基酸エステル(例えば、グルタル酸ジメチル等)、多価アルコールの酸エステル(例えば、トリアセチン等)等の2以上のエステル基を有するエステル類を前記有機分散媒として使用することが好ましい。
【0045】エステル類は比較的安定ではあるものの、反応性が高いゲル化剤とであれば充分反応可能であり、粘性も低いため、上記2条件を満たすからである。特に、全体の炭素数が20以下のエステルは低粘性であるため、反応性分散媒として好適に用いることができる。
【0046】この実施形態においては、非反応性分散媒を併用できる。この分散媒としては、エーテル、炭化水素、トルエン等が好ましい。
【0047】また、非反応性分散媒として有機化合物を用いる場合であっても、ゲル化剤との反応効率を確保する観点からは、全分散媒のうち、反応性分散媒を60質量%以上含有させることが好ましく、85質量%以上含有させることがより好ましい。
【0048】反応性のゲル化剤の例は、特開2001−335371号公報に記載されている。
【0049】具体的には、この反応性のゲル化剤は、分散媒と化学結合し、スラリーを固化可能な物質である。従って、本発明におけるゲル化剤は、分子内に、分散媒と化学反応し得る反応性官能基を有するものであればよく、例えば、モノマー、オリゴマー、架橋剤の添加により三次元的に架橋するプレポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等)等のいずれであってもよい。
【0050】但し、前記反応性ゲル化剤は、スラリーの流動性を確保する観点から、粘性が低いもの、具体的には20℃における粘度が3000cps以下の物質を使用することが好ましい。
【0051】一般に平均分子量が大きなプレポリマー及びポリマーは、粘性が高いため、本発明では、これらより分子量が小さいもの、具体的には平均分子量(GPC法による)が2000以下のモノマー又はオリゴマーを使用することが好ましい。
【0052】尚、ここでの「粘度」とは、ゲル化剤自体の粘度(ゲル化剤が100%の時の粘度)を意味し、市販のゲル化剤希釈溶液(例えば、ゲル化剤の水溶液等)の粘度を意味するものではない。
【0053】本発明におけるゲル化剤の反応性官能基は、反応性分散媒との反応性を考慮して適宜選択することが好ましい。例えば反応性分散媒として比較的反応性が低いエステル類を用いる場合は、反応性が高いイソシアナート基(−N=C=O)、及び/又はイソチオシアナート基(−N=C=S)を有するゲル化剤を選択することが好ましい。
【0054】イソシアナート類はジオール類やジアミン類と反応させることが一般的であるが、ジオール類は既述の如く高粘性のものが多く、ジアミン類は反応性が高すぎて注型前にスラリーが固化してしまう場合がある。
【0055】このような観点からも、エステルからなる反応性分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤との反応によりスラリーを固化することが好ましく、より充分な固化状態を得るためには、2以上のエステル基を有する反応性分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤との反応によりスラリーを固化することが好ましい。
【0056】イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤としては、例えば、MDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアナート)系イソシアネート(樹脂)、TDI(トリレンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、IPDI(イソホロンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、イソチオシアナート(樹脂)等を挙げることができる。
【0057】また、反応性分散媒との相溶性等の化学的特性を考慮して、前述した基本化学構造中に他の官能基を導入することが好ましい。例えば、エステルからなる反応性分散媒と反応させる場合には、エステルとの相溶性を高めて、混合時の均質性を向上させる点から、親水性の官能基を導入することが好ましい。
【0058】尚、ゲル化剤分子内に、イソシアナート基又はイソチオシアナート基以外の反応性官能基を含有させてもよく、イソシアナート基とイソチオシアナート基が混在してもよい。さらには、ポリイソシアナートのように、反応性官能基が多数存在してもよい。
【0059】第一相、第二相用の成形用スラリーは、以下のようにして製造できる。
(1)分散媒に無機物粉体を分散してスラリーとした後、ゲル化剤を添加する。
(2)分散媒に無機物粉体及びゲル化剤を同時に添加して分散することによりスラリーを製造する。
【0060】注型時の作業性を考慮すると20℃におけるスラリーの粘度は30000cps以下であることが好ましく、20000cps以下であることがより好ましい。スラリーの粘度は、既述した反応性分散媒やゲル化剤の粘度の他、粉体の種類、分散剤の量、スラリー濃度(スラリー全体体積に対する粉体体積%)によっても調整することができる。
【0061】但し、スラリー濃度が低すぎれば成形体密度が低下し、成形体の強度低下、乾燥・焼成時におけるクラックの発生や収縮率の増加に伴う変形等の問題を生ずる点において好ましくない。従って、通常は、スラリー濃度が25〜75体積%のものが好ましく、乾燥収縮によるクラックを少なくすることを考慮すると、35〜75体積%のものが更に好ましい。
【0062】尚、成形用スラリーには種々の添加剤、例えば分散媒とゲル化剤との反応を促進するための触媒、スラリー調製を容易にするための分散剤、消泡剤、界面活性剤、或いは焼結体特性を向上させるための焼結助剤等を加えることが可能である。
【0063】好適な実施形態においては、第一相と第二相との1500℃における熱膨張係数差が0.5ppm/℃以下である。この場合には、焼成後に複合焼結体の剥離やクラックを効果的に防止でき、製造歩留りが高くなる。
【0064】また、好適な実施形態においては、第一相の厚さと第二相の厚さとが異なっており、第一相と第二相とのうち厚さが相対的に大きい相が、厚さが相対的に小さい相よりも1500℃での熱膨張係数が大きい。ここで、第一相、第二相の厚さとは、境界に対して略垂直な方向の寸法を言うものとする。例えば、図4(a)の例では、第一相2と第二相3との境界4に対して略垂直方向の寸法TA、TBを、各相の厚さとする。また、図4(b)の例では、第一相12と第二相13との境界4に対して略垂直方向の寸法TA、TBを、各相の厚さとする。
【0065】つまり、厚さの大きい相が高い熱膨張係数を有する場合には、焼成後に剥離やクラックが生じにくいことを発見した。この場合には、第一相と第二相との熱膨張係数の差が1.0ppm/℃以上であっても、剥離やクラックが発生しにくいことが分かった。
【0066】この実施形態においては、厚さが相対的に大きい相の厚さは成形体の取り扱いのし易さから2mm以上であることが好ましく、4mm 以上であることが更に好ましい。厚さが相対的に大きい相の厚さには上限はない。しかし、厚さが相対的に大きい相の焼結性を考慮すると、3次元的に最も薄くなる方向の厚さが100mm以下である事が好ましい。また、厚さが相対的に大きい相と小さい相との比(厚さ大の膜厚/厚さ小の膜厚)は4以上であることが好ましく、6以上であることがさらに好ましい。
【0067】本発明の複合焼結体は、第一相と第二相との境界の面積が大きい場合でも、第一相と第二相との間で剥離が発生しにくいという特徴を有しており、これによって大面積の複合焼結体の製造に適している。本発明による方法では、第一相と第二相との境界の面積が、100cm2以上の複合体も製造が可能であり、例えば6400cm2のものも製造可能である。
【0068】本発明は、以下の材質の複合焼結体に対して特に好適である。即ち、第一相と第二相との一方がアルミナを含むセラミックスであり、他方がイットリア・アルミナ複合酸化物を含むセラミックスである。
【0069】イットリア−アルミナ複合酸化物を含むセラミックスにおいて、この複合酸化物は以下のものを含む。
(1)Y3Al5O12(YAG:3Y2O3・5Al2O3)
イットリアとアルミナとを3:5の割合で含有し、ガーネット結晶構造を有する。
(2)YAlO3(YAL:Y2O3・Al2O3)。ペロブスカイト結晶構造。
(3)Y4Al2O9(YAM:2Y2O3・Al2O3)。単斜晶系。
【0070】イットリア−アルミナ複合酸化物以外に、添加成分や不純物が含まれていて良い。しかし、イットリア−アルミナ複合酸化物以外の成分の割合は10重量%以下であることが好ましい。
【0071】また、前記のアルミナを含むセラミックス中には、上述したイットリア−アルミナ複合酸化物、スピネル型化合物、ジルコニウム化合物、希土類化合物が含有されていてよい。この場合、イットリア−アルミナ複合酸化物、スピネル型化合物、ジルコニウム化合物、希土類化合物の含有量が多すぎると、熱伝導および材質強度の低下を招くため、含有量は合計で10重量%以下が好ましく、3重量%から7重量%がさらに好ましい。
【0072】アルミナを含むセラミックス、イットリア−アルミナ複合酸化物のいずれにおいても、第三成分の粉末が含まれていて良い。こうした第三成分は、ガーネット相においてイットリアまたはアルミナを置換するような成分であることが好ましい。こうした成分としては、以下を例示できる。
La2O3、Pr2O3、Nd2O3、Sm2O3、Eu2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3、Tm2O3、Yb2O3、La2O3、MgO、CaO、SrO、ZrO2、CeO2、SiO2、Fe2O3、B2O3
【0073】上記のようにして得られた複合成形体を焼結させることによって、本発明の複合焼結体が得られる。ここで、焼成温度、雰囲気、昇温速度、降温速度、最高温度での保持時間は、複合成形体を構成する材質によって決定されるべきものである。しかし、セラミックスの場合には、一般的に1300〜2000℃が好ましい。また、イットリア・アルミナ複合酸化物を含むセラミックスを焼成する場合には、1400〜1700℃とすることが好ましい。
【0074】次いで、第二、第三の態様に係る発明の好適な実施形態について述べる。
【0075】第二、第三の態様に係る発明において、最内層を構成する耐蝕性セラミックスとしては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、マグネシア、フェライト、コージェライト、イットリア等の希土類元素の酸化物等の酸化物系セラミックス;チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ジルコン酸鉛、希土類元素のマンガナイト、希土類元素のクロマイト等の複合酸化物;窒化アルミニウム、窒化珪素、サイアロン等の窒化物系セラミックス;炭化珪素、炭化ホウ素、炭化タングステン等の炭化物系セラミックス;弗化ベリリウム、弗化マグネシウム、弗化カルシウム、弗化ストロンチウム、弗化バリウム等の弗化物系セラミックスを例示できる。特に好ましくは、前述したイットリア・アルミナ複合酸化物を含むセラミックスである。
【0076】第二、第三の態様に係る発明において、前述した発明の作用効果の観点からは、細孔の直径が1mm以下であることが更に好ましい。また、細孔の長さが2.4mm以上であることが更に好ましい。
【0077】また、好適な実施形態においては、最内層の厚さが1μm以上であり、これによって細孔内壁面におけるパーティクル発生量を一層低減できる。この観点からは、最内層の厚さを50μm以上とすることが更に好ましい。また、最内層の厚さを2mm以下とすることによって、後述するような最内層のゲルキャスト法による形成が一層容易になった。
【0078】好適な実施形態においては、最内層がイットリウムーアルミニウム・ガーネットを含んでおり、耐蝕性部材のうち少なくとも最内層に接する部分の材質がアルミナを50重量%含有する。この場合、耐蝕性部材のうち最内層に接する部分の材質は、アルミナ以外には、上述したイットリア−アルミナ複合酸化物、スピネル型化合物、ジルコニウム化合物、希土類化合物が含有されていてよい。
【0079】また、本発明は、細孔が設けられた本体と、本体の細孔側の内壁面に設けられ、前記細孔に面する最内層を備えているセラミックス部材を製造する方法であって、成形空間が形成する外枠、および成形空間内に突出する突起を備えている型の突起に、焼成後に最内層を構成するゲルキャストスラリーを付着させて固化させ、次いで成形空間内に少なくとも焼成後に本体を構成するゲルキャストスラリーを流し込んで固化させることによって成形体を得、この成形体を焼成することによって、本体および最内層を形成することを特徴とする。
【0080】このような製造方法によれば、細孔が設けられたセラミックス部材において、細孔に面する最内層を、高い寸法精度で容易に成形することができ、最内層の膜厚を一定にすることができる。
【0081】また、前述した第一の態様に係る発明の記載は、すべて、第二、第三の態様に係る発明に適用できる。即ち、第二、第三の態様に係る発明において、最内層を第1相とし、本体を第2相とした場合、第1相、第2相に関する記載はすべてセラミックス部材および耐蝕性部材に適用される。
【0082】以下、図5、図6は、第一、第二および第三の発明の実施例における製造プロセスの各工程を模式的に示す断面図であり、図7は、本実施例の製法のフローチャートを示す。この製法は、基本的には第一の発明の実施形態に係るものであるので、その説明を転用できる。
【0083】本例では、第1相がセラミックス部材24、24Aの最内層を構成し、第2相が本体19Aを構成する。即ち、第1相(最内層)用の原料を秤量し、秤量した第1相の原料を混合し、攪拌し、注型する。一方、図5(a)に示す型15を準備する。この型15は、外枠15aおよび所定個数のピン15bを備えており、ピン15bが成形空間16に突出している。好ましくは、この段階でセラミックゲルキャスト原料17を一定高さまで注型する(図5(b))。
【0084】次いで、突起15bの外表面に、第1相のゲルキャスト原料を付着させることによって、図5(c)に示すように付着層18を形成する。付着層18の形成方法は特に限定されない。好ましくは刷毛、ブラシなどの塗布手段を用いてゲルキャスト原料をピンの表面に付着させる。また塗布回数は一回でもよいが、塗布回数を増加させることによって、付着層の厚さおよび最内層の厚さを大きくすることが可能である。突起の形態も、細孔を形成可能な形態であれば、特に限定されない。
【0085】一方、第2相を形成するためのゲルキャスト原料を型15の成形空間16内に注型し、図5(d)に示す第2相を生成させる。そして、この第2相を硬化させ、得られた成形体を離型し、成形体から溶媒を除去する。ここで、第1相の原料、第2相の原料の組成、濃度、作製方法などの諸条件は、第一の態様に係る発明の項目において説明したとおりである。
【0086】次いで、成形体を脱脂し、焼成することによって、図6(a)に示す焼結体24を得る。焼結体24は、本体19A(第2相)、本体19Aに設けられた所定個数の最内層18A(第1相)および表面相17を備えている。次いで、焼結体24において、細孔20の閉塞部分を平面研削加工によって除去し、図6(b)に示すような焼結体製品24Aを得る。焼結体24Aは、本体19A、本体19Aを貫通する多数の細孔20A、細孔20Aに面する最内層21、および表面層17Aを備えている。
【0087】
【実施例】(第一の発明に係る実験A:実験番号1〜9)
(実験番号1)
図4(a)に示すような形状の複合焼結体1を製造した。本例では、アルミナ基体3およびYAG(イットリウム−アルミニウム・ガーネット)膜2をいずれもゲルキャスト法によって連続的に成形した。
【0088】具体的には、アルミナ粉末(住友電工株式会社製「AES−11C)」100重量部、グルタル酸ジメチル(反応性分散媒)25重量部、脂肪族ポリイネシアネート(ゲル化剤)5重量部をポットミル中で混合し、アルミナ基体用スラリーを得た。このスラリーを成形型に注型後、一定時間放置し、ゲル化させて固化することにより、アルミナ基体用の成形部を作製した。アルミナ基体の厚さの設計値は10.0mmである。成形体は、縦70mm、横70mmの正方形をしている。
【0089】また、イットリウム−アルミニウム・ガーネット粉末100重量部、グルタル酸ジメチル(反応性分散媒)27重量部、脂肪族ポリイソシアネート6重量部を秤量し、ポットミル中で混合分散させ、YAG膜用スラリーを得た。このスラリーを成形型に注型し、硬化させ、YAG膜用の成形部を得た。YAG膜の厚さの設計値は1.0mmである。
【0090】得られた複合成形体を離型し、250℃で5時間熱処理して脱溶媒し、1000℃で2時間熱処理して脱脂し、次いで1600℃で6時間熱処理して焼成し、複合焼結体を得た。
【0091】得られた複合焼結体について、アルミナ基体3の膜厚、YAG膜2の膜厚をそれぞれ5点で測定し、平均膜厚(mm)、および膜厚偏差(%)を算出した。膜厚偏差は、(最大膜厚−最小膜厚)/平均膜厚である。また、アルミナ基体およびYAG膜について、それぞれアルキメデス法によって開気孔率を測定した(%)。更に、YAG膜の剥離強度をセバスチャン試験によって測定した。測定結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】(実験番号2〜6)
実験1と同様の材質からなる複合焼結体を製造した。ただし、実験2においては、アルミナ基体をコールドアイソスタティックプレス法(CIP)によって成形し、YAG膜をゲルキャスト法によって成形した。実験3においては、アルミナ基体をスリップキャスト法によって成形し、YAG膜をゲルキャスト法によって成形した。実験4においては、アルミナ基体をゲルキャスト法によって成形し、YAG膜をスラリーディップによって成形した。実験5においては、アルミナ基体をスリップキャスト法によって成形し、YAG膜をスラリーディップによって成形した。実験6においては、アルミナ基体をCIPによって成形し、YAG膜をスラリーディップによって成形した。
【0094】ここで、アルミナ基体をCIPによって成形する際には、実験1と同様のアルミナ粉末100重量部、ポリビニルアルコール(12%溶液)4重量部を混合し、100kgf/cm2で乾式プレスし、2トン/cm2でコールドアイソスタティックプレスした。アルミナ基体をスリップキャストによって成形する際には、実験1と同様のアルミナ粉末100重量部、およびCMC(カルボキシメチルセルロース) 0.4重量部及び水35重量部をポットミル混合し、鋳込み成形し、離型する。YAG膜をスラリーディップする際には、イットリウムアルミニウムガーネット粉末100重量部、ポリビニルアルコール(12%溶液)10重量部、水20重量部を秤量し、ポットミル混合してスラリーを得る。そして、このスラリーにアルミナ基体用の成形体を浸漬して複合成形体を得る。これらの各複合成形体を実験1と同様にして焼成し、各例の複合焼結体を得る。
【0095】(実験番号7、8、9)
実験7、8、9においては、アルミナ基体をゲルキャスト法、CIP、スリップキャスト法によってそれぞれ成形し、1000℃で2時間脱脂し、1600℃で6時間焼成することで各アルミナ基体(焼結体)を得た。次いで、各アルミナ基体の上にプラズマ溶射法によってYAG膜を成形した。プラズマ溶射の際には、Y2O3粉末(日本研磨剤「PC−YH」)57重量%とAl2O3(昭和電工株式会社製「K−16T」)との各粉末を混合し、混合粉末を得、各焼結体上にプラズマ溶射し、複合成形体を得た。そして、各複合成形体を1600℃で6時間熱処理し、各複合焼結体を得た。
【0096】本発明内の実験1においては、複合成形体においてアルミナ基体とYAG膜との双方がゲルキャスト法によって成形されている。この場合には、基体,膜の平均膜厚は設計値に近く、また膜厚偏差も抑制されており、剥離強度も高くなっていた。実験2、3においては、YAG膜の膜厚の寸法精度が高く、かつ膜の剥離強度も高い。また、実験1〜3においては膜の開気孔率がきわめて低い。本発明内の実験4においては、アルミナ基体の寸法精度が高く、膜の剥離強度も高い。本発明外の実験5、6においては、膜の剥離強度は高いが、アルミナ基体、YAG膜の寸法精度はいずれも低く、特にYAG膜の膜厚が非常に小さい。本発明外の実験7、8、9においては、YAG膜の寸法精度が低く、開気孔率が大きく、かつ剥離強度が低くなっていた。
【0097】(第一の発明に係る実験B)
表2の各実験番号に示すようにして各複合焼結体を製造した。ただし、基体の材質はアルミナと5重量%スピネルとの混合物とし、基体の厚さの設計値は10mmとした。YAG膜の材質はイットリウム−アルミニウム・ガーネットとし、厚さの設計値は1mmとした。アルミナ基体は、ゲルキャスト法またはCIP法によって実験Aと同様に成形した。YAG膜は、ゲルキャスト法、スラリーディップ法またはプラズマ溶射法によって、実験Aと同様にして成形した。得られた複合成形体は、実験Aと同様にして焼成した。ここで、アルミナ基体とYAG膜との界面の面積は表2に示すように変更した。得られた各複合焼結体の各種特性を測定し、結果を表2に示した。
【0098】
【表2】
【0099】本発明内の実験1〜7においては、アルミナ基体、YAG膜の各寸法精度が高いだけでなく、YAG膜の剥離やクラックは発見されなかった。実験8、9においては、アルミナ基体の寸法精度が低く、またYAG膜は厚膜を形成できなかった。また、実験9においては、界面面積が100cm2であるが、YAG膜にクラックと剥離とが生じた。これに対して、本発明では、実験1〜7に示すように、界面面積が100cm2以上、とくに6400cm2といった大面積であっても、YAG膜にクラックや剥離が見られなかった。実験10、11においてもアルミナ基体の寸法精度が低く、YAG膜の厚さを大きくできなかった。また、実験11においては、界面面積が100cm2であるが、YAG膜にクラック、剥離が発生した。
【0100】(第一の発明に係る実験C)
実験Aと同様にして基体とYAG膜とをゲルキャスト法によって連続的に成形して複合成形体を得た。この際、基体3の材質、膜2の材質は、表3に示すように変更した。そして各複合成形体を焼成し、複合焼結体を得た。基体3、膜2の各材質の室温から1500℃までの熱膨張係数、基体3の熱伝導率、および膜2のクラック・剥離発生数を表3に示す。基体3の厚さの設計値は10mmであり、膜2の厚さの設計値は1mmである。
【0101】
【表3】
【0102】この結果、厚さの小さい膜2の方が熱膨張係数が大きい場合には、膜2にクラック・剥離が発生しやすかった。この場合には、特に基体3と膜2との熱膨張係数差が0.5ppm/℃以上となると、膜2のクラック・剥離発生数が顕著に増大することが分かった。これに対して、厚さの大きい基体3の方が熱膨張係数が大きい場合には、基体3と膜2との熱膨張係数差が0.5ppm/℃以上、更には1.0ppm/℃以上となった場合にも、膜2にクラック・剥離が発生しなかった。
【0103】(第一、第二、第三の発明に係る実験D)
図6(b)に示すような形状の複合焼結体24Aを製造した。本例では、ジルコニア添加アルミナ基体19AおよびYAG(イットリウム−アルミニウム・ガーネット)からなる最内層21を、図7に示すフローチャートに従って、いずれもゲルキャスト法によって連続的に成形した。
【0104】(第1相(最内層)用原料の製造)
イットリウム−アルミニウム・ガーネット粉末100重量部、脂肪族ポリイソシアネート7重量部、有機多塩基酸エステル25重量部、トリエチルアミン5重量部、およびポリマレイン酸共重合体0.5重量部をポットミル中で混合分散させ、YAG膜用スラリーを得た。
【0105】(第2相(本体)用原料の製造)
具体的には、ジルコニア添加アルミナ粉末100重量部、脂肪族ポリイソシアネート(ゲル化剤)7重量部、有機多塩基酸エステル25重量部、トリエチルアミン5重量部、およびポリマレイン酸共重合体0.5重量部をポットミル中で混合し、アルミナ本体19用の原料(スラリー)を得た。
【0106】(成形体の製造)
焼成収縮を考慮し、外枠径φ480mm、高さ5mmの金型の底面に、縦横30mm毎に、焼成後に所定の孔径となる直径のピン15bを121本立てた。第1相用材料として、YAGの前記ゲルキャストスラリーを、厚さが焼成後に所定の寸法となるように流し込んだ(図5(b)の17:ビスコテスターで測定した粘性は6ポイズ)。その後、20分から1hrの間で置き時間を変え、YAGの残存スラリーをハケにより各ピン15bの側面に塗布した。この時のスラリーの粘性は、ビスコテスターでは測定不能であったが、ペーストに近く、時間が経つにつれ粘性は著しく上がっていた。そのまま空気中で2時間固化を行なった。また、比較例の試料においては、各ピンに前記スラリーをハケ塗りしなかった。
【0107】次いで、第2相成形用(本体用)スラリー19を、製造から30分後に型内に焼成後に所定の厚さとなるように流し込み、約2時間固化させた。これによって、アルミナ本体19A用の成形部19を作製した。得られた成形体を金型15から取り外し、大気中で1昼夜自然乾燥をおこなった。
【0108】得られた複合成形体を離型し、250℃で5時間熱処理して脱溶媒し、1000℃で2時間熱処理して脱脂し、次いで1600℃で6時間熱処理して焼成し、複合焼結体24を得た。
本体19Aは、直径φ400mm、8molY2O3安定化ジルコニアを25重量%添加したアルミナからなる。YAG層17Aは、直径φ400mm、である。プレート面内に おいて、縦横共に25mm毎に、縦11個、横11個、合計121個の所定の直径を持つ通気孔20Aを形成した。
【0109】(パーティクルの測定)
耐食試験装置内に、実施例および比較例の各焼結体試料を、YAG膜17A面を下向きにしてセットし、その下部に10mmのスペーサーを挟んで8インチSiウエハーを置いた。Cl2ガスを、ジルコニア添加アルミナ面側から細孔20Aを通してウエハー上に供給した。Cl2ガスの流量は300sccmとし、キャリアガス(アルゴンガス)の流量は100sccmとした。ガス圧力を0.1torrとし、RF800Wとした。保持時間は10分間とした。テンコール社製「SP−1」を使用して、ウエハー上のパーティクル発生数をカウントした。この測定結果を表4に示す。
【0110】
【表4】
【0111】本発明の試験番号1では、パーティクル発生数が60個まで低減された。比較例の試験番号2では、細孔内壁面にYAG層がなく、パーティクルが多かった。本発明の試験番号3、4、6、7、9、10でもパーティクルが低減された。比較例の試験番号5では細孔の孔径が大きくなったが、パーティクルが著しく増加し、またエッチング比が増大した。比較例の試験番号8では、細孔の長さが小さいが、パーティクルが多く、またエッチング比が大きくなった。パーティクルが多いのは、細孔が短いと、ガス流が乱流化しやすいためと考えられる。試験番号11では、細孔内壁面のYAG層が薄く、パーティクルが多い。(削れ量の測定)
各ウエハ表面を半径方向に5mm幅でマスキングし、表面粗さ計「Form Talysurf 2 S4」(テイラーホブソン社製)にて中心部から20mm毎(中心、20mm、40mm、60mm、80mm)5点、各ウエハのマスク部縁にできた段差を測定し、段差の最大値と最小値の比を算出した。孔の径が大きくなると均一なエッチングができず、又、孔の径が短いと均一なエッチングができない傾向が観られた。
【0112】次いで、前記パーティクル試験後、各試料24Aについて、細孔20Aを長さ方向に沿って切断した。この結果、試験番号1(ピン15bにYAGスラリーをハケ塗りした試料)の細孔壁には厚さ0.5mm程度のYAG層21が形成されていた。一方、試験番号2の試料の細孔壁にはYAG層21が観測されなかった。
【0113】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、少なくとも第一相と第二相とを備えており、第一相と第二相との間に境界が設けられている複合焼結体を製造するのに際して、複合焼結体の寸法精度を高くできるようにし、また生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る製造プロセスのフローチャートである。
【図2】本発明の他の実施形態に係る製造プロセスのフローチャートである。
【図3】本発明の更に他の実施形態に係る製造プロセスのフローチャートである。
【図4】(a)、(b)は、それぞれ複合焼結体1、11の形態を例示する模式的正面図である。
【図5】(a)は型15を模式的に示す断面図であり、(b)は、型15の成形空間16内に表面層用ゲルキャストスラリー17を注型した状態を示す断面図であり、(c)は、成形空間16内の突起15bに最内層用ゲルキャストスラリー18を塗布した状態を示す断面図であり、(d)は、更に本体用ゲルキャストスラリーを注型した状態を示す断面図である。
【図6】(a)は、図5(d)の成形体を焼結して得られた焼結体24を模式的に示す断面図であり、(b)は、図6(a)の焼結体24において細孔20を貫通させた後の焼結体24Aを模式的に示す断面図である。
【図7】実験Dにおける製造フローチャートである。
【符号の説明】1、11 複合焼結体 2 膜(第一相または第二相)
3 基体(第二相または第一相) 4 第一相と第二相との境界
12 第一相 13 第二相 15 型 15a 外枠 15b 突起 16 成形空間 17 表面層用スラリー
18 細孔(第1相)用スラリー 18A 最内層 19 本体(第2相)用スラリー 19A 本体 20 閉塞された細孔
20A 貫通した細孔 24、24A セラミックス部材(耐蝕性部材) TA、TB 各相の厚さ
【発明の属する技術分野】本発明は、セラミックスや金属からなる複数の成形部分を備える複合成形体およびその焼結体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】スーパークリーン状態を必要とする半導体製造装置では、デポジション用ガス、エッチング用ガス、及びクリーニング用ガスとして、塩素系ガス、及びフッ素系ガスなどのハロゲン系腐食性ガスが使用されている。例えば、熱CVD装置などの半導体製造装置においては、デポジション後にClF3、NF3、CF4、HF、及びHClなどのハロゲン系腐食性ガスからなる半導体クリーニングガスを用いている。また、デポジションの段階でも、WF6、SiH2Cl2などのハロゲン系腐食性ガスを成膜用ガスとして使用している。
【0003】また、半導体製造装置分野において、いわゆるシャワープレートと呼ばれる製品がある。これは、セラミックス製の板状基材に多数の貫通孔を形成したものである。シャワープレートを半導体ウエハー上の空間に設置し、ハロゲン系ガスをシャワープレートの貫通孔を通してウエハー上の空間に供給し、プラズマを発生させる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、半導体製造装置用部材、例えば装置内に収容する部材や、チャンバーの内壁面には、ハロゲンガスやそのプラズマに対する耐食性が高く、長期間にわたって安定した被膜を形成することが望まれる。
【0005】本出願人は、特許文献1において、基体表面にイットリウム−アルミニウム・ガーネット膜を溶射法によって形成することで、ハロゲンガスのプラズマに対して高い耐食性を付与し、パーティクルの発生を抑制できることを開示した。
【特許文献1】
特願2001−110136号明細書
【0006】しかし、この膜には次の問題点が生ずる場合があった。即ち、溶射法によっては、厚さが一定の膜を形成することが難しく、得られた溶射膜の厚さには場所によってかなりのバラツキが発生する。膜の厚さが変動すると、膜の特性、例えば熱伝導が変動したり、膜内の応力分布が発生し、剥がれ等の原因になるおそれがある。また、溶射法では、ある程度以上の厚さの膜を形成することが難しい。例えば厚さ0.5mm以上の膜を形成することはきわめて困難である。更に、基体を焼結させた後、基体表面に溶射膜を形成することが必要であり、この溶射膜をある程度緻密にするためには、熱処理することも通常必要であるので、工程数が多く、生産性が低い。
【0007】また、シャワープレートの場合、従来製法では、セラミックス製の板状基体に研削加工によって貫通孔を形成している。しかし、この際の加工ダメージによってパーティクルが発生し、半導体欠陥の原因となる場合があるので、シャワープレートから発生するパーティクルを抑制する技術が必要である。
【0008】本発明の課題は、少なくとも第一相と第二相とを備えており、第一相と第二相との間に境界が設けられている複合焼結体を製造するのに際して、複合焼結体の寸法精度を高くできるようにし、また生産性を向上させることである。
【0009】また、本発明の課題は、少なくとも第一相成形部と第二相成形部とを備えており、第一相成形部と第二相成形部との間に境界が設けられている複合成形体を製造するのに際して、複合成形体の寸法精度を高くできるようにすることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】第一の態様に係る発明は、少なくとも第一相と第二相とを備えており、第一相と第二相との間に境界が設けられている複合焼結体の製造方法であって、第一相と第二相とを含む複合成形体を得るのに際して、焼結可能な無機物の粉体、分散媒およびゲル化剤を含むスラリーを注型し、このスラリーをゲル化させることにより固化することによって少なくとも第一相を成形し、この複合成形体を焼成することによって複合焼結体を得ることを特徴とする。
【0011】また、本発明は、この方法によって得られたことを特徴とする複合焼結体に係るものである。
【0012】また、本発明は、少なくとも第一相成形部と第二相成形部とを備えており、第一相成形部と第二相成形部との間に境界が設けられている複合成形体の製造方法であって、焼結可能な無機物の粉体、分散媒およびゲル化剤を含むスラリーを注型し、このスラリーをゲル化させることにより固化することによって少なくとも第一相成形部を成形することを特徴とする。
【0013】また、本発明は、この方法によって得られたことを特徴とする複合成形体に係るものである。
【0014】第一の態様に係る発明によれば、複合成形体を製造するのに際して、目的とする設計寸法に対する実測値の差を著しく低減できる。例えば、腐食保護等を目的に片側表面を耐食層にした2層構造体を形成させる場合などでは、設計上、部分的に耐食層の膜厚を増加したいことがある。そのような部分的に膜厚を変化させた設計の場合でも、本発明においては設計値に極めて近い形状で、成形体を得ることができる。また、この複合成形体を焼結させ、第一相と第二相とを共焼結させることによって、製品を得るまでの焼成回数を減らし、複合焼結体の生産性を向上させることができ、かつ得られた複合焼結体の寸法精度も高くできる。さらにスラリーの調製条件により第一相と第二相の材質、例えば多孔度、結晶の種類や構成、熱膨張等の物性を独立に制御できる。
【0015】また、第二の態様に係る発明は、細孔が設けられたセラミックス製の本体と、本体の細孔側の内壁面に設けられ、細孔に面する最内層を備えており、この最内層が耐蝕性セラミックスからなり、細孔の直径が0.1 mm以上、2 mm以下であり、細孔の長さが2 mm以上であることを特徴とする、耐蝕性部材に係るものである。
【0016】例えばシャワープレートの細孔は、直径2mm以下、長さ2mm以上といったように細長いものであり、この中にハロゲン系腐食性ガスを通してウエハー上にガスを供給すると、細孔内壁面からのパーティクルの発生が比較的に顕著であった。これは、細孔の直径が小さいことから、細孔内壁面の加工ダメージに基づくパーティクル発生が特に生じ易いためと考えられる。
【0017】これに対して、第二の態様に係る発明においては、細孔の直径が2 mm以下であり、細孔の長さが2 mm以上であるような場合に、細孔に面する耐蝕性セラミックス層を設けることによって、パーティクル発生を著しく低減できる。特に、このような最内層の作用効果は、細孔の直径が2mm以下、かつ長さが2mm以上であるような形態の場合に著しいことが分かった。これは、細孔が一定以上細長い場合に、細孔内壁面のダメージに起因するパーティクルの発生が著しいためと考えられる。
【0018】また、第三の態様に係る発明は、細孔が設けられた本体と、本体の細孔側の内壁面に設けられ、細孔に面する最内層を備えているセラミックス部材を製造に係る。本方法では、成形空間が形成する外枠、および成形空間内に突出する突起を備えている型の突起に、焼成後に最内層を構成するゲルキャストスラリーを付着させて固化させ、次いで成形空間内に少なくとも焼成後に前記本体を構成するゲルキャストスラリーを流し込んで固化させることによって成形体を得、この成形体を焼成することによって、本体および最内層を形成する。
【0019】この方法によれば、細長い細孔の内壁面に対して、特定のセラミック層を、加工を伴うことなしに形成することができる。しかも、多数の細孔を例えば研削加工によって開けるという煩雑な工程が不要であるので、生産性が高い。しかも、上述したように、ゲルキャストスラリーを使用して最内層の形成された複合成形体を得、これを焼結しているので、最内層の厚さの寸法精度を精密に制御することができる。
【0020】以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0021】本発明においては、少なくとも第一相と第二相とを備えており、第一相と第二相との間に境界が設けられている複合焼結体を製造する。ここで、焼結可能な無機物の粉体、分散媒およびゲル化剤を含むスラリーを注型し、このスラリーをゲル化させることにより固化することによって少なくとも第一相を成形して複合成形体を得る。
【0022】この第一相の成形方法は、いわゆるゲルキャスト法と呼ばれるものである。ゲルキャスト法は、セラミック、金属の粉体、分散媒、及びゲル化剤を含むスラリーを注型した後に、このスラリーを温度条件や架橋剤の添加等によりゲル化させることにより固化して成形体を得る粉体成形体の製造方法である。
【0023】このようなゲルキャスト法は、粉末成形体の製造方法としては知られている。しかし、第一相成形部と第二相成形部とを有する複合成形体の成形に際して、第一相をゲルキャスト法によって成形することは知られていない。そして、こうして得られた複合成形体を共焼結させることによって、複合焼結体を得ることも知られていない。
【0024】以下、具体的な実施形態を例示する。本発明の複合焼結体は第一相と第二相とを備えている。第一相の材質と第二相の材質とは同じであってよく、異なっていても良い。しかし、第一相の材質と第二相の材質とは互いに異なっていることが好ましい。
【0025】第一相、第二相の形態は特に限定されない。好適な実施形態においては、図4(a)に示すように、基体3と膜2とが積層されている。この場合には、基体3が第一相であってよく、膜2が第一相であってもよい。しかし、図4(b)に示すように、第一相12と第二相13とがともに塊状であって、互いに一体化されている場合を含む。
【0026】本発明の複合焼結体は、第一相、第二相の他に、一つまたは複数の焼結体相を備えていて良い。これら他の焼結体相の形態は限定されないが、第一相、第二相と積層されていることが好ましい。また、他の焼結体相は、第一相と隣接していてよく、第二相と隣接していてよく、第一相および第二相の両方と隣接していてよい。
【0027】第一相以外の相の成形方法は限定されない。しかし、上述したゲルキャスト法、コールドアイソスタティックプレス法、スリップキャスト法、スラリーディップ法、ドクターブレード法、射出成形法を例示できる。また、第一相と第二相との成形の順序も限定されない。即ち、第一相をゲルキャスト法によって成形した後、第二相をゲルキャスト法または他の方法によって成形し、複合成形体を製造できる。あるいは、第二相をゲルキャスト法または他の方法によって成形した後で、この成形体を型中に入れ、第一相をゲルキャスト法によって成形できる。
【0028】具体的には、図1に示すように、第二相を先に成形できる。即ち、第二相をゲルキャスト法または他の方法によって成形する。そして、第一相の材料を秤量し、湿式混合し、攪拌してスラリーを製造する。そして、第二相の成形体を型中に入れ、第一相用のスラリーを注型し、硬化させ、複合成形体を製造する。そして、この複合成形体を離型し、脱溶媒、脱脂、焼成する。
【0029】また、図2に示すように、先に第一相を成形できる。即ち、第一相用の材料を秤量し、湿式混合、攪拌してスラリーを得る。この第一相用スラリーを注型し、硬化させ、第一相成形部を得る。第一相成形部を離型し、第二相を成形して複合成形体を得る。
【0030】特に好ましくは、図3に示すように、第二相をゲルキャスト法によって成形した後、第二相成形部が収容されている型中に第一相用スラリーを注型し、ゲルキャスト成形する。この場合には、複合成形体および複合焼結体の寸法精度が特に高くなり、かつ複合焼結体において第一相と第二相との剥離強度が特に高くなる。
【0031】本発明において、成形体、焼結体の寸法精度とは、設計寸法と、実際に得られる成形体や焼結体の寸法との差を意味する。これは、以下の2つの場合を含んでいる。
(1)設計寸法と、実際に得られた成形体や焼結体の寸法の平均値との差
即ち、成形体や焼結体において、場所によって寸法測定値が変動する。そして、実測寸法の平均値と設計値との差が小さいことは、寸法精度が高いことを意味する。
特に、第一相を成形する際に、厚さの設計値が大きいと、設計値と実測値との差は大きくなり易い。しかし、第一相をゲルキャスト法によって成形することで、第一相において厚さの設計値と実測値(平均値)との差を低減できる。
【0032】特に、本発明においては、第一相の厚さ(図4(a)のTAまたはTB)を0.5mm以上とすることができ、更には1.0mm以上とすることができ、この場合にも厚さの設計値と実測値(平均値)との差を低減できる。
【0033】(2)実際に得られた成形体における寸法のバラツキ
成形体や焼結体において、場所によって寸法測定値が変動する。そして、実測寸法のバラツキが小さいことは、寸法精度が高いことを意味する。第一相をゲルキャスト法によって成形することで、第一相において厚さの実測値のバラツキを低減できる。
【0034】本発明の複合成形体および複合焼結体を生成させるための焼結可能な無機物の粉体としては、加熱によって焼結し、焼結体を生成するような成形用粉末であれば特に制限はない。無機物粉体は、典型的には、セラミック粉末、金属粉末、セラミックス−金属複合材料の粉末、およびこれらの混合粉末である。セラミックスとしては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、マグネシア、フェライト、コージェライト、イットリア等の希土類元素の酸化物等の酸化物系セラミックス;チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ジルコン酸鉛、希土類元素のマンガナイト、希土類元素のクロマイト等の複合酸化物;窒化アルミニウム、窒化珪素、サイアロン等の窒化物系セラミックス;炭化珪素、炭化ホウ素、炭化タングステン等の炭化物系セラミックス;弗化ベリリウム、弗化マグネシウム、弗化カルシウム、弗化ストロンチウム、弗化バリウム等の弗化物系セラミックスを例示できる。また、金属としては、鉄、ステンレス、カルボニル鉄等の鉄系金属、チタン、銅、アルミニウム等の非鉄金属または非鉄金属の合金を例示できる。また、無機物粉末としては、グラファイト、ガラス、カーボンも例示できる。
【0035】ゲルキャスト法は、以下の方法を例示できる。
(1) 無機物粉体とともに、ゲル化剤となるポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のプレポリマーを分散媒中に分散してスラリーを調製し、注型後、架橋剤により三次元的に架橋してゲル化させることにより、スラリーを固化させる。
(2) 反応性官能基を有する有機分散媒とゲル化剤とを化学結合させることにより、スラリーを固化させる。この方法は、本出願人の特開2001−335371号公報に記載されている。
【0036】この方法においては、2以上の反応性官能基を有する有機分散媒を使用することが好ましい。また、全分散媒のうち60質量%以上が、反応性官能基を有する有機分散媒であることが好ましい。
【0037】反応性官能基を有する有機分散媒の20℃における粘度が20cps以下であることが好ましく、ゲル化剤の20℃における粘度が3000cps以下であることが好ましい。具体的には、2以上のエステル基を有する有機分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤とを化学結合させることによりスラリーを固化することが好ましい。
【0038】有機分散媒は、ゲル化剤と化学結合し、スラリーを固化可能な液状物質であること、及び注型が容易な高流動性のスラリーを形成できる液状物質であること、の2条件を満たすことが必要である。
【0039】ゲル化剤と化学結合し、スラリーを固化するためには、反応性官能基、即ち水酸基、カルボキシル基、アミノ基のようなゲル化剤と化学結合を形成し得る官能基を分子内に有していることが必要である。
【0040】前記有機分散媒は少なくとも1の反応性官能基を有するものであれば足りるが、より充分な固化状態を得るためには、2以上の反応性官能基を有する有機分散媒を使用することが好ましい。
【0041】2以上の反応性官能基を有する液状物質としては、例えば多価アルコール(エチレングリコールのようなジオール類、グリセリンのようなトリオール類等)、多塩基酸(ジカルボン酸類等)が考えられる。
【0042】尚、分子内の反応性官能基は必ずしも同種の官能基である必要はなく、異なる官能基であってもよい。また、反応性官能基はポリエチレングリコールのように多数あってもよい。
【0043】一方、注型が容易な高流動性のスラリーを形成するためには、可能な限り粘性の低い液状物質を使用することが好ましく、特に20℃における粘度が20cps以下の物質を使用することが好ましい。
【0044】既述の多価アルコールや多塩基酸は水素結合の形成により粘性が高い場合があるため、たとえスラリーを固化することが可能であっても反応性分散媒として好ましくない場合がある。従って、多塩基酸エステル(例えば、グルタル酸ジメチル等)、多価アルコールの酸エステル(例えば、トリアセチン等)等の2以上のエステル基を有するエステル類を前記有機分散媒として使用することが好ましい。
【0045】エステル類は比較的安定ではあるものの、反応性が高いゲル化剤とであれば充分反応可能であり、粘性も低いため、上記2条件を満たすからである。特に、全体の炭素数が20以下のエステルは低粘性であるため、反応性分散媒として好適に用いることができる。
【0046】この実施形態においては、非反応性分散媒を併用できる。この分散媒としては、エーテル、炭化水素、トルエン等が好ましい。
【0047】また、非反応性分散媒として有機化合物を用いる場合であっても、ゲル化剤との反応効率を確保する観点からは、全分散媒のうち、反応性分散媒を60質量%以上含有させることが好ましく、85質量%以上含有させることがより好ましい。
【0048】反応性のゲル化剤の例は、特開2001−335371号公報に記載されている。
【0049】具体的には、この反応性のゲル化剤は、分散媒と化学結合し、スラリーを固化可能な物質である。従って、本発明におけるゲル化剤は、分子内に、分散媒と化学反応し得る反応性官能基を有するものであればよく、例えば、モノマー、オリゴマー、架橋剤の添加により三次元的に架橋するプレポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等)等のいずれであってもよい。
【0050】但し、前記反応性ゲル化剤は、スラリーの流動性を確保する観点から、粘性が低いもの、具体的には20℃における粘度が3000cps以下の物質を使用することが好ましい。
【0051】一般に平均分子量が大きなプレポリマー及びポリマーは、粘性が高いため、本発明では、これらより分子量が小さいもの、具体的には平均分子量(GPC法による)が2000以下のモノマー又はオリゴマーを使用することが好ましい。
【0052】尚、ここでの「粘度」とは、ゲル化剤自体の粘度(ゲル化剤が100%の時の粘度)を意味し、市販のゲル化剤希釈溶液(例えば、ゲル化剤の水溶液等)の粘度を意味するものではない。
【0053】本発明におけるゲル化剤の反応性官能基は、反応性分散媒との反応性を考慮して適宜選択することが好ましい。例えば反応性分散媒として比較的反応性が低いエステル類を用いる場合は、反応性が高いイソシアナート基(−N=C=O)、及び/又はイソチオシアナート基(−N=C=S)を有するゲル化剤を選択することが好ましい。
【0054】イソシアナート類はジオール類やジアミン類と反応させることが一般的であるが、ジオール類は既述の如く高粘性のものが多く、ジアミン類は反応性が高すぎて注型前にスラリーが固化してしまう場合がある。
【0055】このような観点からも、エステルからなる反応性分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤との反応によりスラリーを固化することが好ましく、より充分な固化状態を得るためには、2以上のエステル基を有する反応性分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤との反応によりスラリーを固化することが好ましい。
【0056】イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤としては、例えば、MDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアナート)系イソシアネート(樹脂)、TDI(トリレンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、IPDI(イソホロンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、イソチオシアナート(樹脂)等を挙げることができる。
【0057】また、反応性分散媒との相溶性等の化学的特性を考慮して、前述した基本化学構造中に他の官能基を導入することが好ましい。例えば、エステルからなる反応性分散媒と反応させる場合には、エステルとの相溶性を高めて、混合時の均質性を向上させる点から、親水性の官能基を導入することが好ましい。
【0058】尚、ゲル化剤分子内に、イソシアナート基又はイソチオシアナート基以外の反応性官能基を含有させてもよく、イソシアナート基とイソチオシアナート基が混在してもよい。さらには、ポリイソシアナートのように、反応性官能基が多数存在してもよい。
【0059】第一相、第二相用の成形用スラリーは、以下のようにして製造できる。
(1)分散媒に無機物粉体を分散してスラリーとした後、ゲル化剤を添加する。
(2)分散媒に無機物粉体及びゲル化剤を同時に添加して分散することによりスラリーを製造する。
【0060】注型時の作業性を考慮すると20℃におけるスラリーの粘度は30000cps以下であることが好ましく、20000cps以下であることがより好ましい。スラリーの粘度は、既述した反応性分散媒やゲル化剤の粘度の他、粉体の種類、分散剤の量、スラリー濃度(スラリー全体体積に対する粉体体積%)によっても調整することができる。
【0061】但し、スラリー濃度が低すぎれば成形体密度が低下し、成形体の強度低下、乾燥・焼成時におけるクラックの発生や収縮率の増加に伴う変形等の問題を生ずる点において好ましくない。従って、通常は、スラリー濃度が25〜75体積%のものが好ましく、乾燥収縮によるクラックを少なくすることを考慮すると、35〜75体積%のものが更に好ましい。
【0062】尚、成形用スラリーには種々の添加剤、例えば分散媒とゲル化剤との反応を促進するための触媒、スラリー調製を容易にするための分散剤、消泡剤、界面活性剤、或いは焼結体特性を向上させるための焼結助剤等を加えることが可能である。
【0063】好適な実施形態においては、第一相と第二相との1500℃における熱膨張係数差が0.5ppm/℃以下である。この場合には、焼成後に複合焼結体の剥離やクラックを効果的に防止でき、製造歩留りが高くなる。
【0064】また、好適な実施形態においては、第一相の厚さと第二相の厚さとが異なっており、第一相と第二相とのうち厚さが相対的に大きい相が、厚さが相対的に小さい相よりも1500℃での熱膨張係数が大きい。ここで、第一相、第二相の厚さとは、境界に対して略垂直な方向の寸法を言うものとする。例えば、図4(a)の例では、第一相2と第二相3との境界4に対して略垂直方向の寸法TA、TBを、各相の厚さとする。また、図4(b)の例では、第一相12と第二相13との境界4に対して略垂直方向の寸法TA、TBを、各相の厚さとする。
【0065】つまり、厚さの大きい相が高い熱膨張係数を有する場合には、焼成後に剥離やクラックが生じにくいことを発見した。この場合には、第一相と第二相との熱膨張係数の差が1.0ppm/℃以上であっても、剥離やクラックが発生しにくいことが分かった。
【0066】この実施形態においては、厚さが相対的に大きい相の厚さは成形体の取り扱いのし易さから2mm以上であることが好ましく、4mm 以上であることが更に好ましい。厚さが相対的に大きい相の厚さには上限はない。しかし、厚さが相対的に大きい相の焼結性を考慮すると、3次元的に最も薄くなる方向の厚さが100mm以下である事が好ましい。また、厚さが相対的に大きい相と小さい相との比(厚さ大の膜厚/厚さ小の膜厚)は4以上であることが好ましく、6以上であることがさらに好ましい。
【0067】本発明の複合焼結体は、第一相と第二相との境界の面積が大きい場合でも、第一相と第二相との間で剥離が発生しにくいという特徴を有しており、これによって大面積の複合焼結体の製造に適している。本発明による方法では、第一相と第二相との境界の面積が、100cm2以上の複合体も製造が可能であり、例えば6400cm2のものも製造可能である。
【0068】本発明は、以下の材質の複合焼結体に対して特に好適である。即ち、第一相と第二相との一方がアルミナを含むセラミックスであり、他方がイットリア・アルミナ複合酸化物を含むセラミックスである。
【0069】イットリア−アルミナ複合酸化物を含むセラミックスにおいて、この複合酸化物は以下のものを含む。
(1)Y3Al5O12(YAG:3Y2O3・5Al2O3)
イットリアとアルミナとを3:5の割合で含有し、ガーネット結晶構造を有する。
(2)YAlO3(YAL:Y2O3・Al2O3)。ペロブスカイト結晶構造。
(3)Y4Al2O9(YAM:2Y2O3・Al2O3)。単斜晶系。
【0070】イットリア−アルミナ複合酸化物以外に、添加成分や不純物が含まれていて良い。しかし、イットリア−アルミナ複合酸化物以外の成分の割合は10重量%以下であることが好ましい。
【0071】また、前記のアルミナを含むセラミックス中には、上述したイットリア−アルミナ複合酸化物、スピネル型化合物、ジルコニウム化合物、希土類化合物が含有されていてよい。この場合、イットリア−アルミナ複合酸化物、スピネル型化合物、ジルコニウム化合物、希土類化合物の含有量が多すぎると、熱伝導および材質強度の低下を招くため、含有量は合計で10重量%以下が好ましく、3重量%から7重量%がさらに好ましい。
【0072】アルミナを含むセラミックス、イットリア−アルミナ複合酸化物のいずれにおいても、第三成分の粉末が含まれていて良い。こうした第三成分は、ガーネット相においてイットリアまたはアルミナを置換するような成分であることが好ましい。こうした成分としては、以下を例示できる。
La2O3、Pr2O3、Nd2O3、Sm2O3、Eu2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3、Tm2O3、Yb2O3、La2O3、MgO、CaO、SrO、ZrO2、CeO2、SiO2、Fe2O3、B2O3
【0073】上記のようにして得られた複合成形体を焼結させることによって、本発明の複合焼結体が得られる。ここで、焼成温度、雰囲気、昇温速度、降温速度、最高温度での保持時間は、複合成形体を構成する材質によって決定されるべきものである。しかし、セラミックスの場合には、一般的に1300〜2000℃が好ましい。また、イットリア・アルミナ複合酸化物を含むセラミックスを焼成する場合には、1400〜1700℃とすることが好ましい。
【0074】次いで、第二、第三の態様に係る発明の好適な実施形態について述べる。
【0075】第二、第三の態様に係る発明において、最内層を構成する耐蝕性セラミックスとしては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、マグネシア、フェライト、コージェライト、イットリア等の希土類元素の酸化物等の酸化物系セラミックス;チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ジルコン酸鉛、希土類元素のマンガナイト、希土類元素のクロマイト等の複合酸化物;窒化アルミニウム、窒化珪素、サイアロン等の窒化物系セラミックス;炭化珪素、炭化ホウ素、炭化タングステン等の炭化物系セラミックス;弗化ベリリウム、弗化マグネシウム、弗化カルシウム、弗化ストロンチウム、弗化バリウム等の弗化物系セラミックスを例示できる。特に好ましくは、前述したイットリア・アルミナ複合酸化物を含むセラミックスである。
【0076】第二、第三の態様に係る発明において、前述した発明の作用効果の観点からは、細孔の直径が1mm以下であることが更に好ましい。また、細孔の長さが2.4mm以上であることが更に好ましい。
【0077】また、好適な実施形態においては、最内層の厚さが1μm以上であり、これによって細孔内壁面におけるパーティクル発生量を一層低減できる。この観点からは、最内層の厚さを50μm以上とすることが更に好ましい。また、最内層の厚さを2mm以下とすることによって、後述するような最内層のゲルキャスト法による形成が一層容易になった。
【0078】好適な実施形態においては、最内層がイットリウムーアルミニウム・ガーネットを含んでおり、耐蝕性部材のうち少なくとも最内層に接する部分の材質がアルミナを50重量%含有する。この場合、耐蝕性部材のうち最内層に接する部分の材質は、アルミナ以外には、上述したイットリア−アルミナ複合酸化物、スピネル型化合物、ジルコニウム化合物、希土類化合物が含有されていてよい。
【0079】また、本発明は、細孔が設けられた本体と、本体の細孔側の内壁面に設けられ、前記細孔に面する最内層を備えているセラミックス部材を製造する方法であって、成形空間が形成する外枠、および成形空間内に突出する突起を備えている型の突起に、焼成後に最内層を構成するゲルキャストスラリーを付着させて固化させ、次いで成形空間内に少なくとも焼成後に本体を構成するゲルキャストスラリーを流し込んで固化させることによって成形体を得、この成形体を焼成することによって、本体および最内層を形成することを特徴とする。
【0080】このような製造方法によれば、細孔が設けられたセラミックス部材において、細孔に面する最内層を、高い寸法精度で容易に成形することができ、最内層の膜厚を一定にすることができる。
【0081】また、前述した第一の態様に係る発明の記載は、すべて、第二、第三の態様に係る発明に適用できる。即ち、第二、第三の態様に係る発明において、最内層を第1相とし、本体を第2相とした場合、第1相、第2相に関する記載はすべてセラミックス部材および耐蝕性部材に適用される。
【0082】以下、図5、図6は、第一、第二および第三の発明の実施例における製造プロセスの各工程を模式的に示す断面図であり、図7は、本実施例の製法のフローチャートを示す。この製法は、基本的には第一の発明の実施形態に係るものであるので、その説明を転用できる。
【0083】本例では、第1相がセラミックス部材24、24Aの最内層を構成し、第2相が本体19Aを構成する。即ち、第1相(最内層)用の原料を秤量し、秤量した第1相の原料を混合し、攪拌し、注型する。一方、図5(a)に示す型15を準備する。この型15は、外枠15aおよび所定個数のピン15bを備えており、ピン15bが成形空間16に突出している。好ましくは、この段階でセラミックゲルキャスト原料17を一定高さまで注型する(図5(b))。
【0084】次いで、突起15bの外表面に、第1相のゲルキャスト原料を付着させることによって、図5(c)に示すように付着層18を形成する。付着層18の形成方法は特に限定されない。好ましくは刷毛、ブラシなどの塗布手段を用いてゲルキャスト原料をピンの表面に付着させる。また塗布回数は一回でもよいが、塗布回数を増加させることによって、付着層の厚さおよび最内層の厚さを大きくすることが可能である。突起の形態も、細孔を形成可能な形態であれば、特に限定されない。
【0085】一方、第2相を形成するためのゲルキャスト原料を型15の成形空間16内に注型し、図5(d)に示す第2相を生成させる。そして、この第2相を硬化させ、得られた成形体を離型し、成形体から溶媒を除去する。ここで、第1相の原料、第2相の原料の組成、濃度、作製方法などの諸条件は、第一の態様に係る発明の項目において説明したとおりである。
【0086】次いで、成形体を脱脂し、焼成することによって、図6(a)に示す焼結体24を得る。焼結体24は、本体19A(第2相)、本体19Aに設けられた所定個数の最内層18A(第1相)および表面相17を備えている。次いで、焼結体24において、細孔20の閉塞部分を平面研削加工によって除去し、図6(b)に示すような焼結体製品24Aを得る。焼結体24Aは、本体19A、本体19Aを貫通する多数の細孔20A、細孔20Aに面する最内層21、および表面層17Aを備えている。
【0087】
【実施例】(第一の発明に係る実験A:実験番号1〜9)
(実験番号1)
図4(a)に示すような形状の複合焼結体1を製造した。本例では、アルミナ基体3およびYAG(イットリウム−アルミニウム・ガーネット)膜2をいずれもゲルキャスト法によって連続的に成形した。
【0088】具体的には、アルミナ粉末(住友電工株式会社製「AES−11C)」100重量部、グルタル酸ジメチル(反応性分散媒)25重量部、脂肪族ポリイネシアネート(ゲル化剤)5重量部をポットミル中で混合し、アルミナ基体用スラリーを得た。このスラリーを成形型に注型後、一定時間放置し、ゲル化させて固化することにより、アルミナ基体用の成形部を作製した。アルミナ基体の厚さの設計値は10.0mmである。成形体は、縦70mm、横70mmの正方形をしている。
【0089】また、イットリウム−アルミニウム・ガーネット粉末100重量部、グルタル酸ジメチル(反応性分散媒)27重量部、脂肪族ポリイソシアネート6重量部を秤量し、ポットミル中で混合分散させ、YAG膜用スラリーを得た。このスラリーを成形型に注型し、硬化させ、YAG膜用の成形部を得た。YAG膜の厚さの設計値は1.0mmである。
【0090】得られた複合成形体を離型し、250℃で5時間熱処理して脱溶媒し、1000℃で2時間熱処理して脱脂し、次いで1600℃で6時間熱処理して焼成し、複合焼結体を得た。
【0091】得られた複合焼結体について、アルミナ基体3の膜厚、YAG膜2の膜厚をそれぞれ5点で測定し、平均膜厚(mm)、および膜厚偏差(%)を算出した。膜厚偏差は、(最大膜厚−最小膜厚)/平均膜厚である。また、アルミナ基体およびYAG膜について、それぞれアルキメデス法によって開気孔率を測定した(%)。更に、YAG膜の剥離強度をセバスチャン試験によって測定した。測定結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】(実験番号2〜6)
実験1と同様の材質からなる複合焼結体を製造した。ただし、実験2においては、アルミナ基体をコールドアイソスタティックプレス法(CIP)によって成形し、YAG膜をゲルキャスト法によって成形した。実験3においては、アルミナ基体をスリップキャスト法によって成形し、YAG膜をゲルキャスト法によって成形した。実験4においては、アルミナ基体をゲルキャスト法によって成形し、YAG膜をスラリーディップによって成形した。実験5においては、アルミナ基体をスリップキャスト法によって成形し、YAG膜をスラリーディップによって成形した。実験6においては、アルミナ基体をCIPによって成形し、YAG膜をスラリーディップによって成形した。
【0094】ここで、アルミナ基体をCIPによって成形する際には、実験1と同様のアルミナ粉末100重量部、ポリビニルアルコール(12%溶液)4重量部を混合し、100kgf/cm2で乾式プレスし、2トン/cm2でコールドアイソスタティックプレスした。アルミナ基体をスリップキャストによって成形する際には、実験1と同様のアルミナ粉末100重量部、およびCMC(カルボキシメチルセルロース) 0.4重量部及び水35重量部をポットミル混合し、鋳込み成形し、離型する。YAG膜をスラリーディップする際には、イットリウムアルミニウムガーネット粉末100重量部、ポリビニルアルコール(12%溶液)10重量部、水20重量部を秤量し、ポットミル混合してスラリーを得る。そして、このスラリーにアルミナ基体用の成形体を浸漬して複合成形体を得る。これらの各複合成形体を実験1と同様にして焼成し、各例の複合焼結体を得る。
【0095】(実験番号7、8、9)
実験7、8、9においては、アルミナ基体をゲルキャスト法、CIP、スリップキャスト法によってそれぞれ成形し、1000℃で2時間脱脂し、1600℃で6時間焼成することで各アルミナ基体(焼結体)を得た。次いで、各アルミナ基体の上にプラズマ溶射法によってYAG膜を成形した。プラズマ溶射の際には、Y2O3粉末(日本研磨剤「PC−YH」)57重量%とAl2O3(昭和電工株式会社製「K−16T」)との各粉末を混合し、混合粉末を得、各焼結体上にプラズマ溶射し、複合成形体を得た。そして、各複合成形体を1600℃で6時間熱処理し、各複合焼結体を得た。
【0096】本発明内の実験1においては、複合成形体においてアルミナ基体とYAG膜との双方がゲルキャスト法によって成形されている。この場合には、基体,膜の平均膜厚は設計値に近く、また膜厚偏差も抑制されており、剥離強度も高くなっていた。実験2、3においては、YAG膜の膜厚の寸法精度が高く、かつ膜の剥離強度も高い。また、実験1〜3においては膜の開気孔率がきわめて低い。本発明内の実験4においては、アルミナ基体の寸法精度が高く、膜の剥離強度も高い。本発明外の実験5、6においては、膜の剥離強度は高いが、アルミナ基体、YAG膜の寸法精度はいずれも低く、特にYAG膜の膜厚が非常に小さい。本発明外の実験7、8、9においては、YAG膜の寸法精度が低く、開気孔率が大きく、かつ剥離強度が低くなっていた。
【0097】(第一の発明に係る実験B)
表2の各実験番号に示すようにして各複合焼結体を製造した。ただし、基体の材質はアルミナと5重量%スピネルとの混合物とし、基体の厚さの設計値は10mmとした。YAG膜の材質はイットリウム−アルミニウム・ガーネットとし、厚さの設計値は1mmとした。アルミナ基体は、ゲルキャスト法またはCIP法によって実験Aと同様に成形した。YAG膜は、ゲルキャスト法、スラリーディップ法またはプラズマ溶射法によって、実験Aと同様にして成形した。得られた複合成形体は、実験Aと同様にして焼成した。ここで、アルミナ基体とYAG膜との界面の面積は表2に示すように変更した。得られた各複合焼結体の各種特性を測定し、結果を表2に示した。
【0098】
【表2】
【0099】本発明内の実験1〜7においては、アルミナ基体、YAG膜の各寸法精度が高いだけでなく、YAG膜の剥離やクラックは発見されなかった。実験8、9においては、アルミナ基体の寸法精度が低く、またYAG膜は厚膜を形成できなかった。また、実験9においては、界面面積が100cm2であるが、YAG膜にクラックと剥離とが生じた。これに対して、本発明では、実験1〜7に示すように、界面面積が100cm2以上、とくに6400cm2といった大面積であっても、YAG膜にクラックや剥離が見られなかった。実験10、11においてもアルミナ基体の寸法精度が低く、YAG膜の厚さを大きくできなかった。また、実験11においては、界面面積が100cm2であるが、YAG膜にクラック、剥離が発生した。
【0100】(第一の発明に係る実験C)
実験Aと同様にして基体とYAG膜とをゲルキャスト法によって連続的に成形して複合成形体を得た。この際、基体3の材質、膜2の材質は、表3に示すように変更した。そして各複合成形体を焼成し、複合焼結体を得た。基体3、膜2の各材質の室温から1500℃までの熱膨張係数、基体3の熱伝導率、および膜2のクラック・剥離発生数を表3に示す。基体3の厚さの設計値は10mmであり、膜2の厚さの設計値は1mmである。
【0101】
【表3】
【0102】この結果、厚さの小さい膜2の方が熱膨張係数が大きい場合には、膜2にクラック・剥離が発生しやすかった。この場合には、特に基体3と膜2との熱膨張係数差が0.5ppm/℃以上となると、膜2のクラック・剥離発生数が顕著に増大することが分かった。これに対して、厚さの大きい基体3の方が熱膨張係数が大きい場合には、基体3と膜2との熱膨張係数差が0.5ppm/℃以上、更には1.0ppm/℃以上となった場合にも、膜2にクラック・剥離が発生しなかった。
【0103】(第一、第二、第三の発明に係る実験D)
図6(b)に示すような形状の複合焼結体24Aを製造した。本例では、ジルコニア添加アルミナ基体19AおよびYAG(イットリウム−アルミニウム・ガーネット)からなる最内層21を、図7に示すフローチャートに従って、いずれもゲルキャスト法によって連続的に成形した。
【0104】(第1相(最内層)用原料の製造)
イットリウム−アルミニウム・ガーネット粉末100重量部、脂肪族ポリイソシアネート7重量部、有機多塩基酸エステル25重量部、トリエチルアミン5重量部、およびポリマレイン酸共重合体0.5重量部をポットミル中で混合分散させ、YAG膜用スラリーを得た。
【0105】(第2相(本体)用原料の製造)
具体的には、ジルコニア添加アルミナ粉末100重量部、脂肪族ポリイソシアネート(ゲル化剤)7重量部、有機多塩基酸エステル25重量部、トリエチルアミン5重量部、およびポリマレイン酸共重合体0.5重量部をポットミル中で混合し、アルミナ本体19用の原料(スラリー)を得た。
【0106】(成形体の製造)
焼成収縮を考慮し、外枠径φ480mm、高さ5mmの金型の底面に、縦横30mm毎に、焼成後に所定の孔径となる直径のピン15bを121本立てた。第1相用材料として、YAGの前記ゲルキャストスラリーを、厚さが焼成後に所定の寸法となるように流し込んだ(図5(b)の17:ビスコテスターで測定した粘性は6ポイズ)。その後、20分から1hrの間で置き時間を変え、YAGの残存スラリーをハケにより各ピン15bの側面に塗布した。この時のスラリーの粘性は、ビスコテスターでは測定不能であったが、ペーストに近く、時間が経つにつれ粘性は著しく上がっていた。そのまま空気中で2時間固化を行なった。また、比較例の試料においては、各ピンに前記スラリーをハケ塗りしなかった。
【0107】次いで、第2相成形用(本体用)スラリー19を、製造から30分後に型内に焼成後に所定の厚さとなるように流し込み、約2時間固化させた。これによって、アルミナ本体19A用の成形部19を作製した。得られた成形体を金型15から取り外し、大気中で1昼夜自然乾燥をおこなった。
【0108】得られた複合成形体を離型し、250℃で5時間熱処理して脱溶媒し、1000℃で2時間熱処理して脱脂し、次いで1600℃で6時間熱処理して焼成し、複合焼結体24を得た。
本体19Aは、直径φ400mm、8molY2O3安定化ジルコニアを25重量%添加したアルミナからなる。YAG層17Aは、直径φ400mm、である。プレート面内に おいて、縦横共に25mm毎に、縦11個、横11個、合計121個の所定の直径を持つ通気孔20Aを形成した。
【0109】(パーティクルの測定)
耐食試験装置内に、実施例および比較例の各焼結体試料を、YAG膜17A面を下向きにしてセットし、その下部に10mmのスペーサーを挟んで8インチSiウエハーを置いた。Cl2ガスを、ジルコニア添加アルミナ面側から細孔20Aを通してウエハー上に供給した。Cl2ガスの流量は300sccmとし、キャリアガス(アルゴンガス)の流量は100sccmとした。ガス圧力を0.1torrとし、RF800Wとした。保持時間は10分間とした。テンコール社製「SP−1」を使用して、ウエハー上のパーティクル発生数をカウントした。この測定結果を表4に示す。
【0110】
【表4】
【0111】本発明の試験番号1では、パーティクル発生数が60個まで低減された。比較例の試験番号2では、細孔内壁面にYAG層がなく、パーティクルが多かった。本発明の試験番号3、4、6、7、9、10でもパーティクルが低減された。比較例の試験番号5では細孔の孔径が大きくなったが、パーティクルが著しく増加し、またエッチング比が増大した。比較例の試験番号8では、細孔の長さが小さいが、パーティクルが多く、またエッチング比が大きくなった。パーティクルが多いのは、細孔が短いと、ガス流が乱流化しやすいためと考えられる。試験番号11では、細孔内壁面のYAG層が薄く、パーティクルが多い。(削れ量の測定)
各ウエハ表面を半径方向に5mm幅でマスキングし、表面粗さ計「Form Talysurf 2 S4」(テイラーホブソン社製)にて中心部から20mm毎(中心、20mm、40mm、60mm、80mm)5点、各ウエハのマスク部縁にできた段差を測定し、段差の最大値と最小値の比を算出した。孔の径が大きくなると均一なエッチングができず、又、孔の径が短いと均一なエッチングができない傾向が観られた。
【0112】次いで、前記パーティクル試験後、各試料24Aについて、細孔20Aを長さ方向に沿って切断した。この結果、試験番号1(ピン15bにYAGスラリーをハケ塗りした試料)の細孔壁には厚さ0.5mm程度のYAG層21が形成されていた。一方、試験番号2の試料の細孔壁にはYAG層21が観測されなかった。
【0113】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、少なくとも第一相と第二相とを備えており、第一相と第二相との間に境界が設けられている複合焼結体を製造するのに際して、複合焼結体の寸法精度を高くできるようにし、また生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る製造プロセスのフローチャートである。
【図2】本発明の他の実施形態に係る製造プロセスのフローチャートである。
【図3】本発明の更に他の実施形態に係る製造プロセスのフローチャートである。
【図4】(a)、(b)は、それぞれ複合焼結体1、11の形態を例示する模式的正面図である。
【図5】(a)は型15を模式的に示す断面図であり、(b)は、型15の成形空間16内に表面層用ゲルキャストスラリー17を注型した状態を示す断面図であり、(c)は、成形空間16内の突起15bに最内層用ゲルキャストスラリー18を塗布した状態を示す断面図であり、(d)は、更に本体用ゲルキャストスラリーを注型した状態を示す断面図である。
【図6】(a)は、図5(d)の成形体を焼結して得られた焼結体24を模式的に示す断面図であり、(b)は、図6(a)の焼結体24において細孔20を貫通させた後の焼結体24Aを模式的に示す断面図である。
【図7】実験Dにおける製造フローチャートである。
【符号の説明】1、11 複合焼結体 2 膜(第一相または第二相)
3 基体(第二相または第一相) 4 第一相と第二相との境界
12 第一相 13 第二相 15 型 15a 外枠 15b 突起 16 成形空間 17 表面層用スラリー
18 細孔(第1相)用スラリー 18A 最内層 19 本体(第2相)用スラリー 19A 本体 20 閉塞された細孔
20A 貫通した細孔 24、24A セラミックス部材(耐蝕性部材) TA、TB 各相の厚さ
Claims (22)
- 少なくとも第一相と第二相とを備えており、前記第一相と前記第二相との間に境界が設けられている複合焼結体の製造方法であって、
前記第一相と前記第二相とを含む複合成形体を得るのに際して、焼結可能な無機物の粉体、分散媒およびゲル化剤を含むスラリーを注型し、このスラリーをゲル化させることにより固化することによって少なくとも前記第一相を成形し、
前記複合成形体を焼成することによって複合焼結体を得ることを特徴とする、複合焼結体の製造方法。 - 前記分散媒が、反応性官能基を有する有機分散媒であり、この有機分散媒と前記ゲル化剤とを化学結合させることにより前記スラリーを固化することを特徴とする、請求項1記載の方法。
- 前記有機分散媒が2以上の反応性官能基を有することを特徴とする、請求項2記載の方法。
- 前記有機分散媒がエステルであり、前記ゲル化剤がイソシアナート基及び/又はイソチオシアナート基を有する化合物であることを特徴とする、請求項2または3記載の方法。
- 前記第一相の厚さが0.5mm以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の方法。
- 前記第一相と前記第二相との1500℃における熱膨張係数差が0.5ppm/℃以下であることを特徴とする、請求項5記載の方法。
- 前記第一相の厚さと前記第二相の厚さとが異なっており、第一相と第二相とのうち厚さが相対的に大きい相が、厚さが相対的に小さい相よりも1500℃での熱膨張係数が大きいことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つの請求項に記載の方法。
- 前記第一相と前記第二相との前記境界の面積が100cm2以上であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つの請求項に記載の方法。
- 前記第一相と前記第二相との一方がアルミナを含むセラミックスであり、他方がイットリア・アルミナ複合酸化物を含むセラミックスであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つの請求項に記載の方法。
- 前記アルミナを含むセラミックスが、更にスピネル、ジルコニアおよび希土類酸化物からなる群より選ばれた一種以上を含んでいることを特徴とする、請求項9記載の方法。
- 前記アルミナを含むセラミックスが、スピネル、ジルコニアおよび希土類酸化物からなる群より選ばれた一種以上を10重量%以下含有することを特徴とする、請求項10記載の方法。
- 前記第一相と前記第二相とがともに層状をなしており、積層されていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一つの請求項に記載の方法。
- 請求項1〜12のいずれか一つの請求項に記載の方法によって得られたことを特徴とする、複合焼結体。
- 少なくとも第一相成形部と第二相成形部とを備えており、前記第一相成形部と前記第二相成形部との間に境界が設けられている複合成形体の製造方法であって、
焼結可能な無機物の粉体、分散媒およびゲル化剤を含むスラリーを注型し、このスラリーをゲル化させることにより固化することによって少なくとも前記第一相成形部を成形することを特徴とする、複合成形体の製造方法。 - 前記分散媒が、反応性官能基を有する有機分散媒であり、この有機分散媒と前記ゲル化剤とを化学結合させることにより前記スラリーを固化することを特徴とする、請求項14記載の方法。
- 前記有機分散媒が2以上の反応性官能基を有することを特徴とする、請求項15記載の方法。
- 前記有機分散媒がエステルであり、前記ゲル化剤がイソシアナート基及び/又はイソチオシアナート基を有する化合物であることを特徴とする、請求項15または16記載の方法。
- 前記第一相成形部と前記第二相成形部との前記境界の面積が100cm2以上であることを特徴とする、請求項14〜17のいずれか一つの請求項に記載の方法。
- 前記第一相成形部と前記第二相成形部との一方がアルミナ原料を含んでおり、他方がイットリア・アルミナ複合酸化物の原料を含んでいることを特徴とする、請求項14〜18のいずれか一つの請求項に記載の方法。
- 前記第一相成形部と前記第二相成形部との一方が、アルミナ原料と、スピネル、ジルコニアおよび希土類酸化物からなる群より選ばれた一種以上の原料とを含んでおり、他方がイットリア・アルミナ複合酸化物の原料を含んでいることを特徴とする、請求項19記載の方法。
- 前記第一相成形部と前記第二相成形部とがともに層状をなしており、積層されていることを特徴とする、請求項14〜20のいずれか一つの請求項に記載の方法。
- 請求項14〜21のいずれか一つの請求項に記載の方法によって得られたことを特徴とする、複合成形体。
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