JP2004131775A - 無電解ニッケルめっき老化液の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】無電解ニッケルめっき老化液と含水金属酸化物とを接触させて、老化液中の亜りん酸イオンを含水金属酸化物に取り込ませ、老化液中の亜りん酸イオンを除去又は減少させた後に、含水金属酸化物を分離する工程と、分離後の溶液を中和して溶液中の金属イオンを沈殿、分離する工程と、分離後の溶液を冷却し、析出した硫酸ナトリウムを溶液から分離する工程と、分離した溶液に、ニッケルイオン、硫酸イオン、有機酸イオンを補給して無電解ニッケルめっき液を得る工程とを有することを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無電解ニッケルめっき老化液中に含有され、無電解ニッケルめっきの際に障害となりうる亜りん酸イオンを選択的に減少させ、老化液を再利用可能とする無電解ニッケルめっき老化液の処理方法に関する。
【0002】
【従来の背景】
無電解ニッケルめっき液の基本組成は、概略、ニッケル源としての硫酸ニッケル、還元剤としての次亜りん酸ナトリウムおよび錯化剤で構成されている。無電解ニッケルめっきを行なっていると、めっき液に使用されている構成薬剤に不足が生じるために、それらを補給してめっき液として繰り返し使用している。そうすると、めっき液中には、次亜りん酸イオンの酸化による亜りん酸イオンと、硫酸イオンとナトリウムイオンの存在により生成する硫酸ナトリウムとが、次第に蓄積してくる。そのことにより、めっき速度の低下、めっき皮膜の物性の劣化などが起こるようになり、構成薬剤の補給によってはもはや改善されなくなる。そうなるとそのめっき液は廃棄されることになる。
【0003】
その廃棄されるめっき液中には、有価物としてのニッケル、りん分が含まれているが、それらは、また、厳しい排水基準が設けられている物質でもあり、廃棄には充分な注意が払われ、自然環境中に放出されることが無いようにしなければならないものである。そのため、そのようなめっき液を廃棄するのではなくめっき液として再利用すると共に、りん分を分離して回収し、他の産業分野も含めて再利用するすることにより、無電解ニッケルめっきからの廃液を削減し、環境への有害物質の排出を抑制する方法が確立されることは、この産業界ばかりでなく社会全般にとっても望ましいことである。
【0004】
【従来の技術】
無電解ニッケルめっき廃液の海洋投棄が禁止され、安全な処理方法を開発するために努力がなされ、そのための技術が開示されてきている。無電解ニッケルめっき廃液には、主として、ニッケルイオン、りん化合物イオン、有機酸、硫酸ナトリウム等が含まれている。このような廃液の特徴から、ニッケルの回収方法、りん化合物の回収方法、有機酸の分解方法の3種の方法が組み合わされて廃液処理方法として確立され、それぞれの技術の特徴となっている。
【0005】
ニッケルの回収方法としては、イオン交換樹脂に吸着させる方法(例えば、特許文献1参照)、キレート樹脂に吸着させる方法(例えば、特許文献2参照)、ニッケル金属粉と共に沈殿させる方法(例えば、特許文献3参照)、硫化物として沈殿させる方法(例えば、特許文献4参照)などが提案されており、りん分の回収方法としては、酸化カルシウム、水酸化カルシウムなどと亜りん酸塩として沈殿させる方法(例えば、特許文献5参照)、次亜りん酸イオン、亜りん酸イオンをりん酸イオンに酸化してから酸化カルシウム、水酸化カルシウム等と反応させてりん酸塩として沈殿させる方法(例えば、特許文献6参照)などが提案されており、また有機酸の分解方法としては、触媒による湿式酸化処理(例えば、特許文献7参照)、活性汚泥、光触媒等で分解させる方法(例えば、特許文献8参照)などが提案されている。
【0006】
しかし、上記の方法では、単にニッケル、りんを有価物として回収したり、有害物を除去することが目的であって、廃液としての排水は、有害物が規制値以下に低減されているが、量そのものは、増加することはあっても減少されることはない。最近では環境問題に対する関心が高まり、工場廃水の削減により環境への付加を低減することが望まれるようになってきている。
そうした要請に応えるため、廃液を再利用して、排出する量を抑制する技術が開発され、開示されている。無電解ニッケルめっきの老化液中に蓄積している主なものは、亜りん酸イオンと硫酸ナトリウムである。そのため、酸化カルシウム、水酸化カルシウムと反応させて、亜りん酸カルシウムとして沈殿させ、除去し、めっき液として再生する方法(例えば、特許文献9参照)が提案されている。しかし、亜りん酸カルシウム、硫酸カルシウムは一部溶解し、完全に除去することができず、めっき液として再使用する場合、めっきの状態が変わってしまい、必ずしも再生されているとは言いがたい。イオン交換膜を利用して蓄積した亜りん酸イオン、硫酸イオン、ナトリウムイオンを除去する方法がある。 しかし、この方法では、特定のイオンを選択的に除去することができず、次亜りん酸イオン、有機酸も除去されてしまうことになる。
【0007】
また、河川などのように微量のりん酸イオンを含有する液からりん酸イオンを除去する方法として、陰イオン交換体である含水金属酸化物を使用する方法が提案されている(例えば、特許文献10参照)。しかし、この方法は、河川などのように微量のりん酸イオンを含有する液からりん分をまとめて除去しようとするものであって、上記無電解ニッケルめっき老化液のように、それよりも酸性の強い液であって、河川からの水に比べてはるかに多量のりん分を異なった形態で含み、また、他の多種類のイオンが存在し、有効な成分(次亜りん酸イオン等)と無用な成分(亜りん酸イオン)が混在しているような状態の液から、有効な成分を残し特定の無用な成分のみを分離除去しようとするものではない。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−54200号公報
【特許文献2】
特開平11−226596号公報
【特許文献3】
特開平9−176861号公報
【特許文献4】
特開平8−91971号公報
【特許文献5】
特開平9−100107号公報
【特許文献6】
特開平10−85769号公報
【特許文献7】
特開平7−108282号公報
【特許文献8】
特開2000−33269号公報
【特許文献9】
特開平10−195670号公報
【特許文献10】
特開2000−33269号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、無電解ニッケルめっき液の使用中に蓄積する亜りん酸イオンを選択的に除去し、めっき速度の低下、めっき皮膜の物性の劣化などが生じないか若しくは低減された状態とし、無電解ニッケルめっき液に再使用できるようにし、廃液の排出量を大幅に低減する方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、無電解ニッケルめっき液中に次第に蓄積してくる、不純物としての金属イオン、亜りん酸イオン、硫酸ナトリウムを順次以下の手段により減少することにより上記の目的を達成するものである。即ち、無電解ニッケルめっき老化液と特定の含水金属酸化物とを接触させて、次亜りん酸イオンの酸化により生じる亜りん酸イオンを該含水金属酸化物により選択的にイオン交換して除去または減少させた後、冷却し、硫酸ナトリウムを析出分離し、再利用可能とすることにより上記の目的を達成するものである。
本発明者は、特定の含水金属酸化物、即ち、セリウム、ジルコニウム、チタニウムから選択される金属の水熱処理含水金属酸化物が、無電解ニッケルめっき老化液に溶解せず、該老化液中に存在するりん酸イオンの中では次亜りん酸イオンに比較して亜りん酸イオンと選択的にイオン交換し得ることを見いだし、本発明を完成したものである。
【0011】
本発明に係る無電解ニッケルめっき老化液の処理方法は、無電解ニッケルめっき老化液と、セリウム、ジルコニウム、チタニウムから選択される金属の水熱処理含水金属酸化物の少なくとも一種とを接触させて、該老化液中の亜りん酸イオンをイオン交換によって該含水金属酸化物中に取り込ませ、該老化液中の亜りん酸イオンを除去または減少させた後に、溶液と該含水金属酸化物とを分離する工程(1)と、
工程(1)で分離した溶液を冷却し、析出した硫酸ナトリウムを溶液から分離する工程(2)と、
工程(2)で分離した溶液に、ニッケルイオン、硫酸イオン、次亜りん酸イオン、有機酸イオンの少なくとも一種を補給して無電解ニッケルめっき液を得る工程(3)とを有することを特徴とする。(請求項1)
【0012】
また、本発明に係る無電解ニッケルめっき老化液の処理方法は、前記工程(1)で分離した含水金属酸化物を酸液と接触させて該含水金属酸化物に取り込まれたニッケル分を酸液中に移行させた後、該含水金属酸化物と酸液とを分離
し、ニッケルを含有した酸液を回収する工程(4)を有することを特徴とする。(請求項2)
【0013】
また、本発明に係る無電解ニッケルめっき老化液の処理方法は、前記工程(1)及び/又は工程(4)で分離した含水金属酸化物とアルカリ液とを接触させて該含水金属酸化物に取り込まれた亜りん酸イオンをアルカリ液に移行させた後、該含水金属酸化物とアルカリ液とを分離し、分離した含水金属酸化物を工程(1)に循環し、亜りん酸イオンを含有したアルカリ液を回収する工程(5)を有することを特徴とする。(請求項3)
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、無電解ニッケルめっき老化液(以下、単に「老化液」ということもある)をセリウム、ジルコニウム、チタニウムから選択される金属の水熱処理含水金属酸化物(以下、単に「含水金属酸化物」ということもある)と接触させることにより、該老化液中のりん分のうち、必要な次亜りん酸イオンを液中に残して、不要な亜りん酸イオンのみを該含水金属酸化物に選択的に取り込み、液中における亜りん酸イオンをほぼ完全に除去するか又は無電解ニッケルめっきに対する影響が少なくなる程度までその濃度を低減することにより循環使用を可能とするものである。
【0015】
無電解ニッケルめっき液は、経時的に変化して次第にその能力を低下させるものである。経時的に蓄積する不要若しくは無用の物質は、亜りん酸、硫酸ナトリウムおよびめっき対象物から溶解してくる金属イオンが主なものである。これらの物質を老化液中から除去又は低減することが老化液の再使用を可能とする。
また、被めっき体の使用条件によっては、老化液中に鉄イオンが100ppm程度含有されることがあるが、鉄イオンが30ppm以下の場合にはめっきの際に影響が現れることもない。しかし、鉄イオンが100ppm以上になると明らかにめっき性状を悪化させたり、めっき欲を不安定にさせることとなるが、老化液と含水金属酸化物とを接触させることにより、老化液中の鉄イオンの80%程度が除去される。
【0016】
以下に、無電解ニッケルめっき老化液の処理方法を詳細に説明する。
本発明の処理対象となる「無電解ニッケルめっき老化液」とは、無電解ニッケルめっきの際に、めっき液中に蓄積した亜りん酸イオンや硫酸ナトリウム等の影響でめっき速度が低下したり、めっき皮膜の物性の劣化が生じたりするようになっためっき液のことである。老化液中に含有される不要の亜りん酸イオンや硫酸ナトリウム等の許容量は、所望のめっき速度、所望のめっき皮膜の物性に応じて選定される。
老化液中の陰イオンには、例えば、表1に示されているように、次亜りん酸イオン、亜りん酸イオン、硫酸イオン及びリンゴ酸イオン、酢酸イオン、乳酸イオン等の有機酸イオンがある。
次亜りん酸イオン、有機酸イオンは、めっきに有効な成分であるが、亜りん酸イオンは、めっきを行なう際に次亜りん酸イオンから発生しためっき液にとっては不要・有害な老廃物であり、また硫酸イオンの一部をなす硫酸ナトリウムは、めっき液の補給によって蓄積されたもので、めっき液には無用のものである。
【0017】
【表1】
【0018】
本発明における工程(1)は、老化液と含水金属酸化物とを接触させて、老化液中の亜りん酸イオンを含水金属酸化物中に取り込ませ、老化液中から亜りん酸イオンをほぼ完全に除去するか又は無電解ニッケルめっきに対する影響が少なくなる程度までその濃度を減少させた後に、溶液と含水金属酸化物とを分離する工程である。
老化液中からの亜りん酸イオンのほぼ完全な除去又は無電解ニッケルめっきに対する影響が少なくなる程度までのその濃度の減少は、老化液中に含有される亜りん酸イオンの濃度に応じて、含水金属酸化物の種類(即ち、含水金属酸化物のイオン交換能力)、その添加量、接触状態の液温度、接触時間などを考慮して、老化液と含水金属酸化物とを接触させることにより行う。
【0019】
本発明において使用する含水金属酸化物は、例えば、以下のような方法で製造されたもので良い。
セリウム、ジルコニウム、チタニウムから選択される金属の化合物の少なくとも一種と酸化剤とアルカリとを、好ましくは20℃〜130℃の水溶液状態で反応させ、生成した中和反応生成物を水溶液中で60℃〜130℃、好ましくは、80℃〜100℃の温度で水熱処理し、分離乾燥することによって得ることができる。
このようにして得られる含水金属酸化物としては、平均粒子径が、0.1〜25μmの範囲の粉末であるものが好ましいく、3〜10μmの範囲の粉末であるものがさらに好ましい。平均粒子径が、0.1ミクロンよりも小さい場合には取り扱い困難であり、また、25μmより大きい場合には、含水金属酸化物がイオン交換を起こすための表面積が小さくなり適当でない。
【0020】
セリウム、ジルコニウム、チタニウムから選択される金属の化合物としては、水可溶性であることが好ましく、例えば、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、有機酸塩などが使用される。
アルカリとしては、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アンモニア等が使用される。
酸化剤としては、過酸化水素水、過塩素酸及びそのアルカリ金属化合物、塩素酸及びそのアルカリ金属化合物、次亜塩素酸及びそのアルカリ金属化合物等が使用される。
【0021】
粉末状の含水金属酸化物は、そのまま粉末状で使用することも可能ではある
が、老化液と接触させた後に老化液から分離するのが困難であるために、粉末状の含水金属酸化物は、造粒によって、0.1mm〜5mmの範囲、好ましくは、0.5mm〜2mmの範囲の粒状、果粒状、球状、棒状等の形で使用することが好ましい。
造粒は、従来公知の手段、例えば、転動造粒、攪拌転動造粒、押し出し造粒等により行うことが可能であり、その際に使用するバインダーは、無電解ニッケルめっき老化液中においても変化を受けない材質のものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェノール系樹脂、ポリスチレン系樹脂等を挙げることができる。
【0022】
また、粉末状の含水金属酸化物は、上記のようなバインダーを使用して担体に付着担持させて使用することもできる。担体としては、老化液中においても変化を受けない材質で形成されている多孔質体であれば良く、無機質のものでも、有機質のものでも良い。例えば、セラミック多孔質体、活性炭、多孔質の樹脂等を使用することができる。
また、バインダーを使用して、多孔質の担体に付着担持させる代わりに、後記金属化合物の溶液中に多孔質担体を存在させた状態でアルカリを添加し、中和反応を行ない多孔質担体に中和反応物を析出して担持させて後に、前記の水熱処理を施しても良い。
【0023】
老化液と含水金属酸化物とを接触させると、含水金属酸化物中の水酸イオンが、老化液中の亜りん酸イオンと選択的にイオン交換され、老化液中の亜りん酸イオンのみが減少し、他の有効成分は老化液中に残存することになる。
この工程で、老化液から亜りん酸イオンを全て除去することが望ましいが、めっき中にも残存するイオンであり、亜りん酸イオンの除去は、完全に行なわれる必要はなく、所望とするめっき速度が低下したり、所望とするめっき皮膜の物性の劣化が生じたりしない程度に減少させれば良く、例えば、精密部品に対するめっきのような場合には、めっき液中に50〜80g/l存在する程度に減少させれば、めっき液用として再使用することができる。
このように、必要最小限の範囲で老化液中の亜りん酸の量を減少させることにより、効率良く老化液の再利用を図ることができる。
【0024】
工程(1)においては、老化液と含水金属酸化物とを接触させる場合、老化液と含水金属酸化物との接触を低いpH範囲(pH=4〜5)、例えば、無電解ニッケルめっき槽から取り出したままの状態で行なうこともできるし、また、含水金属酸化物を老化液と接触させる前に、老化液のpHを5〜9となる程度にpH調整することも可能である。
【0025】
含水金属酸化物と老化液との接触のさせ方は、特に限定されるものではなく、例えば、含水金属酸化物と老化液を同時に槽に入れ、バッチ式で接触させることができるし、また、含水金属酸化物を塔内に層状に充填し、塔内に老化液を通して、固定床方式、流動床方式により連続的に接触させることもできる。
含水金属酸化物は、老化液との接触後の分離を短時間で行なえるようにするため、前記のように、粒状、果粒状、球状、棒状に成型又は担体に担持してして使用することが望ましい。
含水金属酸化物の使用量は、老化液中の亜りん酸イオンの含有量、含水金属酸化物のイオン交換能力によっても異なるが、老化液1リットルに対して、0.1kg〜1kgの範囲が好ましい。
含水金属酸化物と老化液とが接触しているときの液温は、20〜80℃であることが好ましく、接触時間は、0.5〜24時間が好ましく、また、液のpH
は、3〜8に保たれていることが好ましい。
老化液と含水金属酸化物との分離は、公知の分離手段、例えば、遠心分離機等により行なうことができる。
【0026】
本発明における工程(2)は、工程(1)で分離した溶液を冷却して、硫酸ナトリウムを析出させ、溶液から分離する工程である。
硫酸ナトリウムは、温度によって水に対する溶解度が大きく変化するので、溶液を冷却するのみで析出させることができる。
硫酸ナトリウムを析出させるための冷却温度は、0〜10℃が好ましいが、溶液中に多量に硫酸ナトリウムが含有されていなければ、無電解ニッケルめっき液に再使用することが可能であるので、0〜15℃でも良い。
溶液と硫酸ナトリウムとの分離は、公知の分離手段、例えば、遠心分離機等により行なうことができる。
【0027】
本発明における工程(3)は、工程(2)で分離した溶液に、次亜りん酸イオン、有機酸イオン、ニッケルイオン、硫酸イオンを供給する材料のうちで不足しているものを添加して無電解ニッケルめっき液の組成に調整する工程である。
【0028】
本発明における工程(1)において老化液中の亜りん酸イオンとイオン交換し、交換容量の限界に達した含水金属酸化物は、老化液から分離されるが、ニッケル分を取り込んでいる。
含水金属酸化物に取り込まれているニッケル分は、含水金属酸化物を単に水で洗浄するのみでは、離脱させることは困難であり、酸で処理することによって含水金属酸化物に取り込まれているニッケル分を離脱させることが好ましい。
本発明における工程(4)は、前記工程(1)で分離した含水金属酸化物を酸と接触させて含水金属酸化物に取り込まれたニッケル分を酸中に移行させた後、含水金属酸化物と酸とを分離し、ニッケルを含有した酸を回収する工程である。
本工程(4)において使用する酸としては、無機酸、有機酸のいずれでも使用可能であるが、無電解ニッケルめっきに再利用する観点から、硫酸、特に希硫酸が好ましい。
【0029】
本発明における工程(5)は、前記工程(1)及び/又は工程(4)で分離した含水金属酸化物とアルカリ液とを接触させて含水金属酸化物に取り込まれた亜りん酸イオンをアルカリ液に移行させた後、含水金属酸化物とアルカリ液とを分離し、分離した含水金属酸化物を工程(1)に循環し、亜りん酸イオンを含有したアルカリ液を回収する工程である。
本工程(5)において使用するアルカリは、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アンモニア等が挙げられる。
【0030】
前記した本発明の無電解ニッケルめっき老化液の処理方法を図式化して、その概略を示すと、図1のように表わすことができる。
勿論、本発明の無電解ニッケルめっき老化液の処理方法は、図1の記載によって限定解釈されるものではない。
【0031】
次に、本発明の実施例を挙げ具体的に説明するが、勿論、本発明は、以下の実施例の記載によって限定解釈されるものではない。
【0032】
[実施例1]
塩化セリウム1.72kgを純水に溶解した液と35%過酸化水素水0.46kgを混合し、3lとした溶液(A液)と25%苛性ソーダ溶液3kgに純水を加え3lとした液(B液)を用意し、反応容器にA液とB液を同量で、同時に送液し、1時間をかけて反応を終了させた。反応中及び反応終了後3時間、反応容器内の温度を95℃〜100℃に維持した。生成した水酸化セリウムを水洗し、濾別し、60℃で乾燥して、粉末状の含水酸化セリウムを得た。
無電解ニッケルめっき老化液400gに含水酸化セリウム粉末200gを添加し、25℃で4時間攪拌した。攪拌後、含水酸化セリウム粉末を濾別し、濾液〔処理液(1−1)〕中の成分濃度をキャピラリー電気泳動にて定量した。その結果、表2に示す通り亜りん酸イオンが選択的に除去されており、除去率は35%であった。
【0033】
【表2】
【0034】
この処理液(1−1)を5℃に冷却し、析出した硫酸ナトリウムを溶液から分離した。分離後の溶液〔処理液(1−2)〕中の硫酸イオンは、55.6g/lから7.1g/lに低下していた。
処理液中のニッケルイオンと有機酸イオンの不足分を補給して無電解ニッケルめっき液を得た。
上記の処理によって得られた溶液を用いて、pH4.6、浴温90℃で無電解ニッケルめっきを行ったところ、めっき速度は19μm/hrで、ピットの発生もなく外観は良好であった。
【0035】
<含水セリウム酸化物の再生>
亜りん酸イオンの交換容量が限界に達した含水酸化セリウム粉末200gを0.25mol/lの希硫酸1リットル中に添加し、35℃で、1時間攪拌し、含水酸化セリウムに取り込まれていたニッケル分を希硫酸中に解離させた。
含水酸化セリウムを希硫酸から分離し、次いで0.5mol/lの苛性ソーダ水溶液中に添加し、35℃で、1時間攪拌し、含水酸化セリウムに取り込まれていた亜りん酸イオンと水酸イオンとのイオン交換を行った。
イオン交換を終了した含水酸化セリウムを濾別し、十分に水洗した。
【0036】
再生処理を終了した含水酸化セリウムを使用して、無電解ニッケルめっき老化液のイオン交換処理を行った。〔処理液(1−3)〕
その結果は表3に示す通り、処理前の性能と同様に亜りん酸ナトリウムが選択的に除去された。
【0037】
【表3】
【0038】
〔実施例2〕
含水酸化セリウム粉末2kgを(株)パウレック社製攪拌転動造粒機によって粒状に造粒した。バインダーには、昭和高分子(株)社製アクリル酸エステルエマルジョン(商品名:ポリゾールSH−502)を使用した。得られた粒状品を分級して、0.5〜1mmのものを採取した。粒状含水酸化セリウム200gを40φ×500mmの透明アクリル樹脂製イオン交換塔に充填した。
無電解ニッケルめっき老化液500mlをイオン交換塔の下部より送液し、粒状含水酸化セリウムを流動状態とし、上部より排出された液を再び送液し、循環処理を行った。1時間後、液〔処理液(2−1)〕中の成分濃度をキャピラリー電気泳動にて定量した。その結果、表4に示す通り亜りん酸イオンが選択的に除去されており、除去率は36%であった。
【0039】
【表4】
【0040】
この処理液(2−1)を5℃に冷却し、析出した硫酸ナトリウムを溶液から分離した。分離後の溶液〔処理液(2−2)〕中の硫酸イオンは、52.4g/lから7.3g/lに低下していた。
処理液中のニッケルイオンと有機酸イオンの不足分を補給して無電解ニッケルめっき液を得た。
上記の処理によって得られた溶液を用いて、pH4.6、浴温90℃で無電解ニケルめっきを行ったところ、めっき速度は18μm/hrで、ピットの発生もなく外観は良好であった。
【0041】
<含水酸化セリウムの再生>
イオン交換処理を行った粒状含水酸化セリウムを0.25mol/lの希硫酸1リットルを35℃で、1時間、循環送液し、含水酸化セリウムに取り込まれていたニッケル分を希硫酸中に解離させた。
希硫酸をイオン交換塔より排出し、次いで0.5mol/lの苛性ソーダ水溶液を35℃で、1時間、送液し、含水酸化セリウムに取り込まれていた亜りん酸イオンと水酸イオンとのイオン交換を行い、十分に洗浄した。
【0042】
再生処理を終了した含水酸化セリウムを使用して、無電解ニッケルめっき老化液のイオン交換処理を行った。〔処理液(2−3)〕
その結果は表5に示す通り、処理前の性能と同様に亜リン酸ナトリウムが選択的に除去された。
【0043】
【表5】
【0044】
〔実施例3〕
オキシ塩化ジルコニウム1kgを純水3lに溶解した溶液(A液)と25%苛性ソーダ溶液2kgと次亜塩素酸ソーダ0.85kgを混合し、純水を加え、3lとした溶液(B液)を用意し、反応容器にA液とB液を同量で、同時に送液し、1時間をかけて反応を終了させた。反応中及び反応終了後3時間、反応容器内の温度を95℃〜100℃に維持した。生成した水酸化ジルコニウムを水洗し、濾別し、60℃で乾燥して、粉末状の含水酸化ジルコニウムを得た。
無電解ニッケルめっき老化液500mlに含水酸化ジルコニウム粉末200gを添加し、25℃で4時間攪拌した。攪拌後、含水酸化ジルコニウム粉末を濾別し、濾液〔処理液(3−1)〕中の成分濃度をキャピラリー電気泳動にて定量した。その結果、表6に示す通り亜りん酸イオンが選択的に除去されており、除去率は53%であった。
【0045】
【表6】
【0046】
この処理液(3−1)を5℃に冷却し、析出した硫酸ナトリウムを溶液から分離した。分離後の溶液〔処理液(3−2)〕中の硫酸イオンは、56.6g/lから7.5g/lに低下していた。
処理液中のニッケルイオンと有機酸イオンの不足分を補給して無電解ニッケルめっき液を得た。
上記の処理によって得られた溶液を用いて、pH4.6、浴温90℃で無電解ニッケルめっきを行ったところ、めっき速度は19μm/hrで、ピットの発生もなく外観は良好であった。
【0047】
〔実施例4〕
硫酸チタン0.73kgと硫酸セリウム2.5kgを2lに溶解した溶液と35%過酸化水素水0.2kgを混合した溶液(A液)と25%苛性ソーダ溶液3.7kg(B液)を用意し、反応容器にA液とB液を同時に送液し、2時間をかけて反応を終了させた。反応中及び反応終了後3時間、反応容器内の温度を95℃〜100℃に維持した。生成した水酸化チタン、水酸化セリウム混合物を水洗し、濾別し、60℃で乾燥して、粉末状のチタンとセリウムの混合含水酸化物を得た。
無電解ニッケルめっき老化液500mlにチタンとセリウムの混合含水酸化物粉末200gを添加し、25℃で4時間攪拌した。攪拌後、該混合含水酸化物粉末を濾別し、濾液〔処理液(3−1)〕中の成分濃度をキャピラリー電気泳動にて定量した。その結果、表7に示す通り亜りん酸イオンが選択的に除去されており、除去率は26%であった。
【0048】
【表7】
【0049】
【発明の効果】
本発明は、以上詳記したとおり、無電解ニッケルめっき老化液と含水金属酸化物とを接触させて、老化液中の亜りん酸イオンを含水金属酸化物に選択的に取り込ませ、次亜りん酸イオンは溶存させたままで亜りん酸イオンのみを老化液から除去又は減少させ、溶液の冷却により硫酸ナトリウムを析出分離することにより、無電解ニッケルめっき老化液を有効な形で再利用可能とすることができるとともに、そのことにより廃液の排出量を大幅に低減することができるという優れた効果を奏する。
また、工程(4)と工程(5)の順序を逆にし、先に苛性ソーダ処理を行い、次に硫酸処理を行っても良い。いずれにしてもニッケルと亜燐酸イオンとを個別に分離することができる。
また、工程(1)においては、無電解ニッケルめっき槽からの無電解ニッケルめっき老化液をそのまま含水金属酸化物と接触させても良いが、含水金属酸化物を老化液と接触させる前に、そのpHを5〜9となる程度にpH調整することにより、工程(1)において、老化液と含水金属酸化物とを接触させた場合に含水金属酸化物から金属成分が溶出するのを抑制することができる。
さらに、無電解ニッケルめっき老化液中に蓄積する硫酸ナトリウム、亜りん酸イオンを個別に分離することができるため、それぞれの再利用に便利であるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無電解ニッケルめっき老化液の処理方法の概略を示すフローチャート図である。
Claims (3)
- 無電解ニッケルめっき老化液と、セリウム、ジルコニウム、チタニウムから選択される金属の水熱処理含水金属酸化物の少なくとも一種とを接触させて、該老化液中の亜りん酸イオンをイオン交換によって該含水金属酸化物中に取り込ませ、該老化液中の亜りん酸イオンを除去または減少させた後に、溶液と該含水金属酸化物とを分離する工程(1)と、
工程(1)で分離した溶液を冷却し、析出した硫酸ナトリウムを溶液から分離する工程(2)と、
工程(2)で分離した溶液に、ニッケルイオン、硫酸イオン、次亜りん酸イオン、有機酸イオンの少なくとも一種を補給して無電解ニッケルめっき液を得る工程(3)とを有することを特徴とする無電解ニッケルめっき老化液の処理方法。 - 前記工程(1)で分離した含水金属酸化物を酸液と接触させて該含水金属酸化物に取り込まれたニッケル分を酸液中に移行させた後、該含水金属酸化物と酸液とを分離し、ニッケルを含有した酸液を回収する工程(4)を有する、請求項1に記載の無電解ニッケルめっき老化液の処理方法。
- 前記工程(1)及び/又は工程(4)で分離した含水金属酸化物とアルカリ液とを接触させて該含水金属酸化物に取り込まれた亜りん酸イオンをアルカリ液に移行させた後、該含水金属酸化物とアルカリ液とを分離し、分離した含水金属酸化物を工程(1)に循環し、亜りん酸イオンを含有したアルカリ液を回収する工程(5)を有する、請求項1又は2に記載の無電解ニッケルめっき老化液の処理方法。
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