JP2004131703A - コンミテーター用フェノール樹脂成形材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、機械的強度を実用的レベルに維持しつつ、熱時強度及び靭性を向上させ、かつ成形収縮を低減させたコンミテーター用フェノール樹脂成形材料を提供することである。
【解決手段】フェノール樹脂の少なくとも一部としてシリコーンゲル変性ノボラック樹脂を含有することを特徴とするコンミテーター用フェノール樹脂成形材料であり、好ましくは、前記シリコーンゲルの割合が、シリコーンゲル変性ノボラック樹脂を含むフェノール樹脂の合計100重量部に対し、0.05〜10重量部である。
【選択図】 なし
【解決手段】フェノール樹脂の少なくとも一部としてシリコーンゲル変性ノボラック樹脂を含有することを特徴とするコンミテーター用フェノール樹脂成形材料であり、好ましくは、前記シリコーンゲルの割合が、シリコーンゲル変性ノボラック樹脂を含むフェノール樹脂の合計100重量部に対し、0.05〜10重量部である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンミテーター用フェノール樹脂成形材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
モーターのコンミテーターには、従来からフェノール樹脂成形材料が用いられている。この成形材料に要求される基本特性としては、成形品の機械的強度、耐熱性(熱時強度、加熱寸法安定性)、耐湿寸法安定性等が挙げられる。そのため、ガラス繊維で強化されたフェノール樹脂成形材料が、高強度である上、成形時の成形収縮が比較的小さい理由から使用されている。
【0003】
近年、コンミテーターに対する要求レベルは益々高度化しており、このようなガラス繊維強化フェノール樹脂成形材料をもってしても、熱時強度や成形収縮において満足する特性を得られない場合がある。また、小型モーターに使用されるコンミテーターは、フェノール樹脂成形材料で成形したコンミテーターの内径に、内径寸法よりやや太いシャフトを直接圧入する場合が多いため、圧入時にコンミテーターが割れないよう靭性に優れることが要求される。
【0004】
一方、シリコーンゲルを含有するフェノール樹脂については、フェノール樹脂中でシリコーンゲルを生成させる技術が報告されている(例えば、特許文献1,2参照)が、かかる方法では、シリコーンゲルの生成が不十分であり、目的の特性を有する樹脂を得ることができないことがわかった。
【0005】
【特許文献1】
特開平05−295233号公報
【特許文献2】
特開平08−239552号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、機械的強度を実用的レベルに維持しつつ、熱時強度や靭性を向上させ、かつ成形収縮を低減させたコンミテーター用フェノール樹脂成形材料を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(6)記載の本発明により達成される。
(1) フェノール樹脂とシリコーンゲルを含有することを特徴とするコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
(2) フェノール樹脂、シリコーンゲル、及びガラス繊維を含む無機充填材を含有することを特徴とするコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
(3) シリコーンゲルが、予めフェノール樹脂と溶融混練されたものである上記(1)または上記(2)に記載のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
(4) シリコーンゲルの割合が、フェノール樹脂とシリコーンゲルの合計量100重量部に対し、0.05〜10重量部である上記(1)ないし上記(3)のいずれかに記載のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
(5) 無機充填材は、ガラス繊維と、クレー、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、タルクの中から選ばれた1種以上を含むものである上記(1)ないし上記(4)のいずれかに記載のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
(6) フェノール樹脂とシリコーンゲルの合計量が、成形材料全体に対して20〜50重量%である上記(1)ないし上記(5)のいずれかに記載のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料(以下、単に「成形材料」ということがある)について詳細に説明する。
本発明の成形材料は、フェノール樹脂とシリコーンゲルを含有することを特徴とするものである。また、本発明の成形材料は、フェノール樹脂、シリコーンゲル、及びガラス繊維を含む無機充填材を含有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の成形材料は、フェノール樹脂とシリコーンゲルを含有する。これにより機械的強度を低下させることなく、成形収縮を低減および熱時強度及び靭性を向上させることができる。フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂(以下、ノボラック樹脂という)またはレゾール型フェノール樹脂(以下、レゾール樹脂という)、あるいは両者を併用する。ノボラック樹脂を使用する場合、通常硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを使用する。ヘキサメチレンテトラミンを用いる場合、その含有量は特に限定されないが、ノボラック樹脂100重量部に対して、10〜30重量部配合することが好ましく、特に15〜20重量部配合することが好ましい。ヘキサメチレンテトラミンの配合量が前記上限値より多いと、成形品の機械的強度が低下する場合があり、前記下限値より少ないと、成形収縮を充分低減することができず、成形品の機械的強度が低下する場合がある。
【0010】
本発明においては、シリコーンゲルを使用する。これにより機械的強度を低下させることなく成形時の成形収縮を低減することができる。その理由は明確ではないが、シリコーンゲルは緩やかな3次元構造であり、適度な柔軟性を有していることから、成形時、冷却にともなう収縮を吸収することにより緩和することができ、このことにより成形収縮を低減することができると推測される。更に、成形後においては、靭性や熱時の機械的強度や加熱寸法安定性を向上させることができる。
【0011】
本発明において使用するシリコーンゲルは、付加反応型ポリオルガノシロキサン組成物をベースとしたゲル状物質である。かかるシリコーンゲルは適度な柔軟性を有していて、フェノール樹脂とともに使用されると、耐衝撃性、機械的強度、耐水性等に優れている上に、常温域からコンミテーターとして使用される際の高温域に至るまでの広い温度範囲において、これらの特性を維持することができる。かかるシリコーンゲルは、針入度(JIS K 2530−1976−50g加重)が10〜300であることが好ましい。かかる針入度のシリコーンゲルは、特に適度な柔軟性を持ち、耐衝撃性、振動吸収性に優れている。このため、本発明の成形材料をコンミテーターに用いると、柔軟性、熱時強度、耐湿寸法安定性を向上させることができる。
【0012】
本発明において、シリコーンゲルはフェノール樹脂と予め溶融混練されたものであることが好ましい。これにより、フェノール樹脂とシリコーンゲルとを無機充填材など他の配合剤とともに溶融混練した場合に比べて、シリコーンゲルがフェノール樹脂中によりミクロに分散することから、上記の特長を高度に発現させることができる。この場合、フェノール樹脂中に分散したシリコーンゲルの大きさは、実質的に10μmより大きい粒径であることが好ましい。10μm以下では、却ってシリコーンゲルの特長が現れにくくなることがある。また、50μmを越える大きさでは、均一分散が損なわれやすくなる。溶融混練する場合、フェノール樹脂としてはノボラック樹脂を使用することが好ましい。これは溶融混練の際にフェノール樹脂がゲル化するおそれがないからである。なお、フェノール樹脂とシリコーンゲルとの溶融混練に使用するフェノール樹脂は、成形材料中のフェノール樹脂の全部でもよく、あるいは一部でもよい。
【0013】
前記シリコーンゲルの配合割合は、特に限定されないが、フェノール樹脂とシリコーンゲルの合計100重量部に対して0.05〜10重量部が好ましく、特に0.5〜5重量部が好ましい。シリコーンゲルの割合が前記上限値より多いと、成形材料製造時の作業性や成形品の機械的強度が低下する場合がある。シリコーンゲルの割合が前期下限値より少ないと、充分な成形収縮の低減および熱時強度や靭性の向上をすることが難しい場合がある
前記フェノール樹脂とシリコーンゲルの合計の含有量は、特に限定されないが、成形材料全体に対して20〜50重量%が好ましく、特に28〜36重量%が好ましい。前記含有量が前記下限値より少ないと、成形材料製造時の作業性や成形物の機械的強度が低下する場合があり、前記上限値より多いと、成形品の耐熱性、寸法安定性などが充分でない場合がある。
【0014】
本発明の成形材料は、ガラス繊維を含む無機充填材を含有することが好ましい。カラス繊維を含有することにより、得られる成形物の機械的強度が向上する。ガラス繊維の繊維径は、特に限定されないが、10〜15μmが好ましい。これにより、成形材料化段階での作業性を向上させることができる。また、ガラス繊維の繊維長は、特に限定されないが、1〜3mmのチョップドストランドタイプのものを使用することが好ましい。これにより、成形材料化時の作業性、成形性及び成形物の強度を向上させることができる。
【0015】
前記ガラス繊維の含有量は、特に限定されないが、成形材料全体に対して30〜60重量%が好ましく、特に40〜50重量%が好ましい。ガラス繊維の含有量が前記下限値よりも少ないと、成形品の機械的強度が不十分となる場合があり、前記上限値よりも多いと、成形材料製造時の作業性が低下する場合がある。
【0016】
本発明の成形材料は、前記ガラス繊維以外の無機充填材を含有することが好ましい。これにより、得られる成形物の強度を向上させるとともに寸法安定性を向上させることができる。
前記無機充填材としては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、炭酸カルシウム、タルク、ウォラストナイト、アルミナ、シリカ、未焼成クレー、焼成クレー、硫酸バリウム等を挙げることができる。これらの中でもクレー(特に未焼成クレー)、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、タルクが好ましく、これらの中から1種以上を選択し使用。これにより成形品の寸法安定性をさらに向上させることができる。
【0017】
前記ガラス繊維以外の無機充填材の含有量は、特に限定されないが、成形材料全体の5〜35重量%が好ましく、特に9〜25重量%が好ましい。かかる含有量が前記下限値未満であると成形品の耐熱性、寸法安定性などが充分でない場合があり、前記上限値を超えると成形材料製造時の作業性や、成形品の機械的強度が低下する場合がある。
【0018】
本発明のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料には、本発明の目的を損なわない範囲で離型剤、硬化助剤、顔料、エラストマー等の添加剤を添加することができる。
【0019】
本発明の成形材料を得る場合、例えば、予めフェノール樹脂の一部又は全部とシリコーンゲルとをニーダー、ロール等で溶融混練し、次いで他の原料と均一に混合した後、あるいは、配合する全原料をロール、コニーダ、二軸押出し機等の混錬機単独またはロールと他の混合機との組み合わせで加熱混練した後、粉砕して得られる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
(使用した原材料)
(1)シリコーンゲル含有ノボラック樹脂
シリコーンゲル含有ノボラック樹脂▲1▼:住友ベークライト(株)製 PR−54529(数平均分子量1000、ヘキサメチレンテトラミン含有)。シリコーンゲルはα−ゲル(ジェルテック製、針入度160)を使用し、ノボラック樹脂と溶融混練した。シリコーンゲル含有率はノボラック樹脂との合計量に対して5重量%である。
シリコーンゲル含有フェノール樹脂▲2▼:前記PR−54529において、シリコーンゲル含有率をノボラック樹脂との合計量に対して20重量%としたものである。
【0022】
(2)レゾール樹脂:以下の方法にて製造した。
還流コンデンサー撹拌機、加熱装置、真空脱水装置を備えた反応釜内に、フェノール(P)とホルムアルデヒド(F)とをモル比(F/P)=1.7で仕込み、これに酢酸亜鉛をフェノール100重量部に対して0.5重量部添加した。この反応系のpHを5.5に調整し、還流反応を3時間行った。その後、真空度100Torr、温度100℃で2時間水蒸気蒸留を行って未反応フェノールを除去し、さらに、真空度100Torr、温度115℃で1時間反応させ、数平均分子量800のレゾール樹脂(固形)を得た。
【0023】
(3)ノボラック樹脂:秋田住友ベーク(株)製 A−1087(重量平均分子量1000)
(4)ガラス繊維:日本板硝子(株)製 RES03−BM38(平均線維径11μm、平均繊維長3mm)
(5)無機充填材:未焼成クレー,(株)ECC製ECKALITE(325メッシュパス)
【0024】
なお、上記(1)〜(3)に示したフェノール樹脂の数平均分子量は、GPC測定によりフェノール換算で算出したものである。
【0025】
(実施例1)
フェノール樹脂としてノボラック樹脂9重量%、シリコーンゲル含有ノボラック樹脂▲1▼23重量%、ヘキサメチレンテトラミン3重量%、ガラス繊維42重量%、無機充填材として未焼成クレー20重量%、および硬化助剤(水酸化カルシウム)1重量%、離型剤(ステアリン酸)1重量%、顔料(カーボンブラック)1重量%を約90℃の加熱ロールで約15分間混練し、冷却後粉砕して成形材料を得た。
【0026】
(実施例2)
シリコーンゲル含有ノボラック樹脂▲1▼の配合量を2重量%、ノボラック樹脂を28重量%、ヘキサメチレンテトラミンを5重量%とした以外は、実施例1と同様にして成形材料を得た。
【0027】
(実施例3)
シリコーンゲル含有ノボラック樹脂▲2▼を用い、その配合量を8重量%とし、ノボラック樹脂を22重量%、ヘキサメチレンテトラミンを5重量%とした以外は、実施例1と同様にした。
【0028】
(実施例4)
ノボラック樹脂に代えてレゾール樹脂を11重量%用い、ヘキサメチレンテトラミンを1重量%とした以外は、実施例1と同様にした。
【0029】
(比較例1)
シリコーンゲル含有ノボラック樹脂を用いずに、ノボラック樹脂を21重量%、レゾール樹脂を11重量%、ヘキサメチレンテトラミンを3重量%とした以外は、実施例1と同様にした。
【0030】
(比較例2)
シリコーンゲル含有ノボラック樹脂を用いずに、ノボラック樹脂を31重量%、ヘキサメチレンテトラミンを6重量%とした以外は、実施例1と同様にした。
【0031】
実施例および比較例により得られた成形材料を用いて、次の評価を行った。評価項目を、その内容とともに以下に示す。得られた結果を表1に示す。
▲1▼ シャルピー衝撃強さ、曲げ強さ、熱時曲げ強さ、成形収縮率:試験片は、トランスファ成形(175℃,3分間)により作製し、JIS K 6911に基づいて測定した。
▲2▼ 成形後外径収縮率:トランスファ成形(175℃,3分間)にて図1に示す円筒型試験片を作製し、試験片の外径を測定することで、金型からの変化率を求めた。試験片の形状をコンミテーターの形状により近づけたことから、外径収縮率について前記成形収縮率よりも精度の高い評価となったと考えられる。
【0032】
【表1】
【0033】
表から明らかなように、実施例1ないし4は、機械的強度を実用的なレベルに維持しつつ、熱時強度が向上し、成形収縮が低減されていた。また靭性については、曲げ強度がやや低下する場合があるものの曲げ弾性率も低下するため、結果的に歪みに対する許容量が大きくなり靭性が向上したといえる。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、機械的強度を実用的なレベルに維持しつつ、熱時強度や靭性を向上させ、かつ成形収縮を低減したコンミテーター用フェノール樹脂成形材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】外径収縮率測定用試験片の断面図
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンミテーター用フェノール樹脂成形材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
モーターのコンミテーターには、従来からフェノール樹脂成形材料が用いられている。この成形材料に要求される基本特性としては、成形品の機械的強度、耐熱性(熱時強度、加熱寸法安定性)、耐湿寸法安定性等が挙げられる。そのため、ガラス繊維で強化されたフェノール樹脂成形材料が、高強度である上、成形時の成形収縮が比較的小さい理由から使用されている。
【0003】
近年、コンミテーターに対する要求レベルは益々高度化しており、このようなガラス繊維強化フェノール樹脂成形材料をもってしても、熱時強度や成形収縮において満足する特性を得られない場合がある。また、小型モーターに使用されるコンミテーターは、フェノール樹脂成形材料で成形したコンミテーターの内径に、内径寸法よりやや太いシャフトを直接圧入する場合が多いため、圧入時にコンミテーターが割れないよう靭性に優れることが要求される。
【0004】
一方、シリコーンゲルを含有するフェノール樹脂については、フェノール樹脂中でシリコーンゲルを生成させる技術が報告されている(例えば、特許文献1,2参照)が、かかる方法では、シリコーンゲルの生成が不十分であり、目的の特性を有する樹脂を得ることができないことがわかった。
【0005】
【特許文献1】
特開平05−295233号公報
【特許文献2】
特開平08−239552号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、機械的強度を実用的レベルに維持しつつ、熱時強度や靭性を向上させ、かつ成形収縮を低減させたコンミテーター用フェノール樹脂成形材料を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(6)記載の本発明により達成される。
(1) フェノール樹脂とシリコーンゲルを含有することを特徴とするコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
(2) フェノール樹脂、シリコーンゲル、及びガラス繊維を含む無機充填材を含有することを特徴とするコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
(3) シリコーンゲルが、予めフェノール樹脂と溶融混練されたものである上記(1)または上記(2)に記載のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
(4) シリコーンゲルの割合が、フェノール樹脂とシリコーンゲルの合計量100重量部に対し、0.05〜10重量部である上記(1)ないし上記(3)のいずれかに記載のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
(5) 無機充填材は、ガラス繊維と、クレー、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、タルクの中から選ばれた1種以上を含むものである上記(1)ないし上記(4)のいずれかに記載のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
(6) フェノール樹脂とシリコーンゲルの合計量が、成形材料全体に対して20〜50重量%である上記(1)ないし上記(5)のいずれかに記載のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料(以下、単に「成形材料」ということがある)について詳細に説明する。
本発明の成形材料は、フェノール樹脂とシリコーンゲルを含有することを特徴とするものである。また、本発明の成形材料は、フェノール樹脂、シリコーンゲル、及びガラス繊維を含む無機充填材を含有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の成形材料は、フェノール樹脂とシリコーンゲルを含有する。これにより機械的強度を低下させることなく、成形収縮を低減および熱時強度及び靭性を向上させることができる。フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂(以下、ノボラック樹脂という)またはレゾール型フェノール樹脂(以下、レゾール樹脂という)、あるいは両者を併用する。ノボラック樹脂を使用する場合、通常硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを使用する。ヘキサメチレンテトラミンを用いる場合、その含有量は特に限定されないが、ノボラック樹脂100重量部に対して、10〜30重量部配合することが好ましく、特に15〜20重量部配合することが好ましい。ヘキサメチレンテトラミンの配合量が前記上限値より多いと、成形品の機械的強度が低下する場合があり、前記下限値より少ないと、成形収縮を充分低減することができず、成形品の機械的強度が低下する場合がある。
【0010】
本発明においては、シリコーンゲルを使用する。これにより機械的強度を低下させることなく成形時の成形収縮を低減することができる。その理由は明確ではないが、シリコーンゲルは緩やかな3次元構造であり、適度な柔軟性を有していることから、成形時、冷却にともなう収縮を吸収することにより緩和することができ、このことにより成形収縮を低減することができると推測される。更に、成形後においては、靭性や熱時の機械的強度や加熱寸法安定性を向上させることができる。
【0011】
本発明において使用するシリコーンゲルは、付加反応型ポリオルガノシロキサン組成物をベースとしたゲル状物質である。かかるシリコーンゲルは適度な柔軟性を有していて、フェノール樹脂とともに使用されると、耐衝撃性、機械的強度、耐水性等に優れている上に、常温域からコンミテーターとして使用される際の高温域に至るまでの広い温度範囲において、これらの特性を維持することができる。かかるシリコーンゲルは、針入度(JIS K 2530−1976−50g加重)が10〜300であることが好ましい。かかる針入度のシリコーンゲルは、特に適度な柔軟性を持ち、耐衝撃性、振動吸収性に優れている。このため、本発明の成形材料をコンミテーターに用いると、柔軟性、熱時強度、耐湿寸法安定性を向上させることができる。
【0012】
本発明において、シリコーンゲルはフェノール樹脂と予め溶融混練されたものであることが好ましい。これにより、フェノール樹脂とシリコーンゲルとを無機充填材など他の配合剤とともに溶融混練した場合に比べて、シリコーンゲルがフェノール樹脂中によりミクロに分散することから、上記の特長を高度に発現させることができる。この場合、フェノール樹脂中に分散したシリコーンゲルの大きさは、実質的に10μmより大きい粒径であることが好ましい。10μm以下では、却ってシリコーンゲルの特長が現れにくくなることがある。また、50μmを越える大きさでは、均一分散が損なわれやすくなる。溶融混練する場合、フェノール樹脂としてはノボラック樹脂を使用することが好ましい。これは溶融混練の際にフェノール樹脂がゲル化するおそれがないからである。なお、フェノール樹脂とシリコーンゲルとの溶融混練に使用するフェノール樹脂は、成形材料中のフェノール樹脂の全部でもよく、あるいは一部でもよい。
【0013】
前記シリコーンゲルの配合割合は、特に限定されないが、フェノール樹脂とシリコーンゲルの合計100重量部に対して0.05〜10重量部が好ましく、特に0.5〜5重量部が好ましい。シリコーンゲルの割合が前記上限値より多いと、成形材料製造時の作業性や成形品の機械的強度が低下する場合がある。シリコーンゲルの割合が前期下限値より少ないと、充分な成形収縮の低減および熱時強度や靭性の向上をすることが難しい場合がある
前記フェノール樹脂とシリコーンゲルの合計の含有量は、特に限定されないが、成形材料全体に対して20〜50重量%が好ましく、特に28〜36重量%が好ましい。前記含有量が前記下限値より少ないと、成形材料製造時の作業性や成形物の機械的強度が低下する場合があり、前記上限値より多いと、成形品の耐熱性、寸法安定性などが充分でない場合がある。
【0014】
本発明の成形材料は、ガラス繊維を含む無機充填材を含有することが好ましい。カラス繊維を含有することにより、得られる成形物の機械的強度が向上する。ガラス繊維の繊維径は、特に限定されないが、10〜15μmが好ましい。これにより、成形材料化段階での作業性を向上させることができる。また、ガラス繊維の繊維長は、特に限定されないが、1〜3mmのチョップドストランドタイプのものを使用することが好ましい。これにより、成形材料化時の作業性、成形性及び成形物の強度を向上させることができる。
【0015】
前記ガラス繊維の含有量は、特に限定されないが、成形材料全体に対して30〜60重量%が好ましく、特に40〜50重量%が好ましい。ガラス繊維の含有量が前記下限値よりも少ないと、成形品の機械的強度が不十分となる場合があり、前記上限値よりも多いと、成形材料製造時の作業性が低下する場合がある。
【0016】
本発明の成形材料は、前記ガラス繊維以外の無機充填材を含有することが好ましい。これにより、得られる成形物の強度を向上させるとともに寸法安定性を向上させることができる。
前記無機充填材としては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、炭酸カルシウム、タルク、ウォラストナイト、アルミナ、シリカ、未焼成クレー、焼成クレー、硫酸バリウム等を挙げることができる。これらの中でもクレー(特に未焼成クレー)、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、タルクが好ましく、これらの中から1種以上を選択し使用。これにより成形品の寸法安定性をさらに向上させることができる。
【0017】
前記ガラス繊維以外の無機充填材の含有量は、特に限定されないが、成形材料全体の5〜35重量%が好ましく、特に9〜25重量%が好ましい。かかる含有量が前記下限値未満であると成形品の耐熱性、寸法安定性などが充分でない場合があり、前記上限値を超えると成形材料製造時の作業性や、成形品の機械的強度が低下する場合がある。
【0018】
本発明のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料には、本発明の目的を損なわない範囲で離型剤、硬化助剤、顔料、エラストマー等の添加剤を添加することができる。
【0019】
本発明の成形材料を得る場合、例えば、予めフェノール樹脂の一部又は全部とシリコーンゲルとをニーダー、ロール等で溶融混練し、次いで他の原料と均一に混合した後、あるいは、配合する全原料をロール、コニーダ、二軸押出し機等の混錬機単独またはロールと他の混合機との組み合わせで加熱混練した後、粉砕して得られる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
(使用した原材料)
(1)シリコーンゲル含有ノボラック樹脂
シリコーンゲル含有ノボラック樹脂▲1▼:住友ベークライト(株)製 PR−54529(数平均分子量1000、ヘキサメチレンテトラミン含有)。シリコーンゲルはα−ゲル(ジェルテック製、針入度160)を使用し、ノボラック樹脂と溶融混練した。シリコーンゲル含有率はノボラック樹脂との合計量に対して5重量%である。
シリコーンゲル含有フェノール樹脂▲2▼:前記PR−54529において、シリコーンゲル含有率をノボラック樹脂との合計量に対して20重量%としたものである。
【0022】
(2)レゾール樹脂:以下の方法にて製造した。
還流コンデンサー撹拌機、加熱装置、真空脱水装置を備えた反応釜内に、フェノール(P)とホルムアルデヒド(F)とをモル比(F/P)=1.7で仕込み、これに酢酸亜鉛をフェノール100重量部に対して0.5重量部添加した。この反応系のpHを5.5に調整し、還流反応を3時間行った。その後、真空度100Torr、温度100℃で2時間水蒸気蒸留を行って未反応フェノールを除去し、さらに、真空度100Torr、温度115℃で1時間反応させ、数平均分子量800のレゾール樹脂(固形)を得た。
【0023】
(3)ノボラック樹脂:秋田住友ベーク(株)製 A−1087(重量平均分子量1000)
(4)ガラス繊維:日本板硝子(株)製 RES03−BM38(平均線維径11μm、平均繊維長3mm)
(5)無機充填材:未焼成クレー,(株)ECC製ECKALITE(325メッシュパス)
【0024】
なお、上記(1)〜(3)に示したフェノール樹脂の数平均分子量は、GPC測定によりフェノール換算で算出したものである。
【0025】
(実施例1)
フェノール樹脂としてノボラック樹脂9重量%、シリコーンゲル含有ノボラック樹脂▲1▼23重量%、ヘキサメチレンテトラミン3重量%、ガラス繊維42重量%、無機充填材として未焼成クレー20重量%、および硬化助剤(水酸化カルシウム)1重量%、離型剤(ステアリン酸)1重量%、顔料(カーボンブラック)1重量%を約90℃の加熱ロールで約15分間混練し、冷却後粉砕して成形材料を得た。
【0026】
(実施例2)
シリコーンゲル含有ノボラック樹脂▲1▼の配合量を2重量%、ノボラック樹脂を28重量%、ヘキサメチレンテトラミンを5重量%とした以外は、実施例1と同様にして成形材料を得た。
【0027】
(実施例3)
シリコーンゲル含有ノボラック樹脂▲2▼を用い、その配合量を8重量%とし、ノボラック樹脂を22重量%、ヘキサメチレンテトラミンを5重量%とした以外は、実施例1と同様にした。
【0028】
(実施例4)
ノボラック樹脂に代えてレゾール樹脂を11重量%用い、ヘキサメチレンテトラミンを1重量%とした以外は、実施例1と同様にした。
【0029】
(比較例1)
シリコーンゲル含有ノボラック樹脂を用いずに、ノボラック樹脂を21重量%、レゾール樹脂を11重量%、ヘキサメチレンテトラミンを3重量%とした以外は、実施例1と同様にした。
【0030】
(比較例2)
シリコーンゲル含有ノボラック樹脂を用いずに、ノボラック樹脂を31重量%、ヘキサメチレンテトラミンを6重量%とした以外は、実施例1と同様にした。
【0031】
実施例および比較例により得られた成形材料を用いて、次の評価を行った。評価項目を、その内容とともに以下に示す。得られた結果を表1に示す。
▲1▼ シャルピー衝撃強さ、曲げ強さ、熱時曲げ強さ、成形収縮率:試験片は、トランスファ成形(175℃,3分間)により作製し、JIS K 6911に基づいて測定した。
▲2▼ 成形後外径収縮率:トランスファ成形(175℃,3分間)にて図1に示す円筒型試験片を作製し、試験片の外径を測定することで、金型からの変化率を求めた。試験片の形状をコンミテーターの形状により近づけたことから、外径収縮率について前記成形収縮率よりも精度の高い評価となったと考えられる。
【0032】
【表1】
【0033】
表から明らかなように、実施例1ないし4は、機械的強度を実用的なレベルに維持しつつ、熱時強度が向上し、成形収縮が低減されていた。また靭性については、曲げ強度がやや低下する場合があるものの曲げ弾性率も低下するため、結果的に歪みに対する許容量が大きくなり靭性が向上したといえる。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、機械的強度を実用的なレベルに維持しつつ、熱時強度や靭性を向上させ、かつ成形収縮を低減したコンミテーター用フェノール樹脂成形材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】外径収縮率測定用試験片の断面図
Claims (6)
- フェノール樹脂とシリコーンゲルを含有することを特徴とするコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
- フェノール樹脂、シリコーンゲル、及びガラス繊維を含む無機充填材を含有することを特徴とするコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
- シリコーンゲルが、予めフェノール樹脂と溶融混練されたものである請求項1または2に記載のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
- シリコーンゲルの割合が、フェノール樹脂とシリコーンゲルの合計量100重量部に対し、0.05〜10重量部である請求項1ないし3のいずれかに記載のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
- 無機充填材は、ガラス繊維と、クレー、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、タルクの中から選ばれた1種以上を含むものである請求項1ないし4のいずれかに記載のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
- フェノール樹脂とシリコーンゲルの合計量が、成形材料全体に対して20〜50重量%である請求項1ないし5のいずれかに記載のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
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