JP2004127217A - 乱数発生方法及び乱数発生装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】廉価かつ簡易な構成の装置を用いて、より無秩序な乱数を発生させる新規な方法、並びに前記方法に適用する装置を提供する。
【解決手段】発振開始から定常状態に至るまでの立上り期間内において、発振回路40より発振された電気的信号をA/D変換器50に入力し、前記電気的信号をその振幅の大きさに応じてディジタルの電圧成分に変換する。次いで、前記ディジタル電圧成分を、パーソナルコンピュータ60に入力する。パーソナルコンピュータ60には、前記ディジタル電圧成分に対する閾値が設定されており、前記ディジタル電圧成分と前記閾値との大小関係が判別され、0又は1の数値が割り当てられ、2進数的な乱数を発生する。
【選択図】    図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、暗号作製技術などの情報産業分野、特に将来の量子コンピュータなどの分野において好適に用いることのできる乱数発生方法及び乱数発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
完全に無秩序であり、かつ全体としては出現頻度が等しくなる乱数は、社会現象や物理現象の数値シュミレーションなどに広く利用されている。また、乱数は暗号技術としても重要な役割を果たしており、情報の保護の分野でもその需要が高い。現在、乱数の発生方法として種々の方法が開発されているが、そのほとんどはアルゴリズムによるソフト的な疑似乱数の生成である。
【0003】
アルゴリズムによる乱数生成は、ある程度の信頼性を有し、高速に乱数生成を行なうことができるという点から広く利用されている。しかしながら、コンピュータは有限の情報しかとらないために、生成された乱数は周期性を持つことが確認されている。そのため、正確な解や十分なセキュリティが得られない場合があり、より無秩序な乱数発生方法の確立が望まれている。
【0004】
近年、ハードウエアの発展に伴う処理速度の向上と信頼性の向上から、物理的な乱数の生成方法が開発されてきた。例えば、熱電子雑音や放射性物質の崩壊などの物理現象に基づいて生成された乱数は、予測不可能性の高い、理想的な乱数列であることが知られている。しかしながら、これらの方法では高価で大掛かりな装置を必要とすることが多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、廉価かつ簡易な構成の装置を用いて、より無秩序な乱数を発生させる新規な方法、並びに前記方法に適用する装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明は、所定の電気的信号を発振した後、定常状態になるまでの立上り期間内において、前記電気的信号の振幅に対して所定の閾値を設定し、前記振幅の前記閾値に対する大小関係から0又は1の数字を割り当て、2進数的な乱数を発生させることを特徴とする、乱数発生方法に関する。
【0007】
また、本発明は、所定の電気的信号を発振するための発振手段と、
前記電気的信号の振幅に対して所定の閾値を設定し、前記振幅の前記閾値に対する大小関係から0又は1の数字を割り当てる演算処理手段とを具えることを特徴とする、乱数発生装置に関する。
【0008】
図1は、本発明の乱数発生方法の原理を説明するための図である。電気的信号が所定の周波数で発振されると、図1に示すように、所定の立上り期間内においては、発振回路などのランダムな雑音などの影響を受けることによって周波数及び振幅が不安定となり、前記立上り期間経過後の定常状態において、前記電気的信号は安定した周波数及び振幅で発振されるようになる。したがって、前記立上り期間内の電気的信号の振幅に対して所定の閾値を設定し、前記振幅の前記閾値に対する大小関係を通じて0又は1の数字を割り当てることによって、2進数的な乱数を発生させることができることを見出し、本発明をするに至ったものである。
【0009】
例えば、前記閾値よりも大きな振幅に対しては1を割り当て、前記閾値よりも小さな振幅に対しては0を割り当てることによって、2進数的な乱数を発生させることができる。
【0010】
すなわち、本発明によれば、少なくとも所定の電気的信号を発振するための発振手段と、前記電気的信号の振幅に対して所定の閾値を設定し、前記振幅の前記閾値に対する大小関係から0又は1の数字を割り当てる演算処理手段とを具える廉価かつ簡易な装置を用いるのみで、無秩序な2進数的な乱数を発生することができるものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を発明の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図2は、本発明の乱数発生装置の好ましい態様を示す構成図である。図2に示す乱数発生装置は、順次に接続された、スイッチング回路30、発振回路40、A/D変換器50、及びパーソナルコンピュータ60を具えている。また、スイッチング回路30には直流電源10及び発振器20が接続されている。
【0012】
図3は、スイッチング回路30の回路図の一例を示すものであり、直流電源10より入力された直流の電源信号は、発振器20から入力された矩形波によって変調を受け、矩形波状の電源信号が発振回路40に向けて出力される。
【0013】
図4は、アナログ発振回路40の回路図の一例を示すものであり、スイッチング回路30から前記矩形波状の電源信号が入力され、電気的信号として断続的に発振される。
【0014】
発振回路40より発振された電気的信号はA/D変換器50に入力され、前記電気的信号はその振幅の大きさに応じてディジタルの電圧成分に変換される。次いで、前記ディジタルの電圧成分は、パーソナルコンピュータ60に入力される。パーソナルコンピュータ60には、前記ディジタル電圧成分に対する閾値が設定されており、次いで前記ディジタル電圧成分と前記閾値との大小関係が判別され、0又は1の数値が割り当てられる。
【0015】
発振回路40からの発振の初期、すなわち発振開始から定常状態に至るまでの立上り期間内においては、発振回路40などのランダムな雑音の影響を受け、発振された電気的信号の周波数及び振幅は図1に示すように不安定となる。
したがって、この立上り期間内の電気的信号のみを採用し、上述した演算処理を施すことによって、0又は1の2進数的な乱数を発生することができる。
【0016】
図5は、本発明の方法を用いて乱数を発生させる原理をモデル的に示したものである。図5に示すように、閾値よりも大きなディジタル電圧成分に対して1を割り当て、閾値よりも小さいディジタル電圧成分に対して0を割り当てることにより、0又は1の2進数からなる乱数を発生できることが分かる。
【0017】
なお、本発明において、スイッチング回路30は必須ではないが、スイッチング回路30を設けることによって、上述した矩形波状の電源信号を発振回路40内に導入することができ、直流電源10を連続的にオンオフした際の電源信号を導入した場合と同様の効果を得ることができる。したがって、発振回路40の立上り期間内におけるランダムな発振状態を簡易に生成できるようになる。
【0018】
また、本発明においては、A/D変換器50に入力する際の前記電気的信号の周波数をサンプリング周波数よりも高いことが好ましい。前記電気的信号の周波数が前記サンプリング周波数以下となってしまうと、例えば、A/D変換器50からは図6に示すようなディジタル電圧成分が出力されてしまう場合がある。この場合に、上述したように0又は1を割り当てても、0又は1の数値が連続して出現するようになってしまい、目的とする乱数を発生することができない場合がある。
【0019】
サンプリング周波数が高いほど乱数を高速で発生できるようになるので、図3に示す発振回路40におけるキャパシタ及びコイルの値を適宜に設定して、より高い周波数の電気的信号を発生することにより、上記関係を満足し、2進数的な乱数を高速かつ安定的に発生することができる。
【0020】
以上、具体例を挙げながら発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。例えば、矩形波状の電源信号を得るべく、図3に示すようなスイッチング回路30を用いたが、その他の公知の手段によって前記矩形波状の電源信号を得ることができる。また、電気的信号の発振手段として図4に示す発振回路を用いたが、その他の手段を用いて前記電気的信号を発振させることもできる。
【0021】
例えば、上述したアナログ発振回路の代わりにディジタル発振回路を用いることもできる。図7は、非安定性マルチバイブレータ型の発振回路40の一回路図を示すものである。図7に示す非安定製マルチバイブレータ発振回路40に対して、スイッチング回路30から矩形波電圧が印加されると、発振回路40からは断続的な発振が生成される。したがって、前記発振に基づく出力電圧(電気的信号)を出力側から取り出し、上述したようなA/D変換器50を介してパーソナルコンピュータ60に導入し、上述した演算処理を施すことによって、乱数を得ることができる。
【0022】
なお、二組の非安定性マルチバイブレータを用い、一方のマルチバイブレータをスイッチング回路として用い、他方を上述した発振回路として用いることもできる。この場合、スイッチング回路と発振回路とを同一チップとして作製することができ、パーソナルコンピュータ60内などの簡易に組み込むことができる。
【0023】
図8は、ディジタルICを用いたLC発振回路40の一回路図を示すものである。図8に示す発振回路40は4段のディジタルICを有しており、左側のIC1〜IC3はAND回路の入力がショートされ、正帰還のLC回路を構成する。スイッチング回路30から矩形波電圧が印加されると、発振回路40からは断続的な発振が生成される。右側のIC4におけるANDはバッファであって、発振回路40からの発振に起因する出力電圧(電気的信号)をIC4から取り出す。その後、前記出力電圧に起因した電気的信号をA/D変換器50を介してパーソナルコンピュータ60に導入し、上述した演算処理を施すことによって、乱数を得ることができる。
【0024】
なお、図8に示すディジタルICを含む発振回路を用いる場合、トランジスタなどを使用しないので、図7に示す非安定性マルチバイブレータ発振回路に比べて低コスト化することができる。
【0025】
図7及び図8に示すようなディジタル発振回路40を用いる場合は、A/D変換器50を用いることなく、前記発振回路の出力電圧に起因した電気的信号を直接パーソナルコンピュータ60に導入することもできる。また、図7及び図8に示すディジタル発振回路40中にダイオードを追加し、発振波形の立ち上がりを向上させることもできる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、廉価かつ簡易な構成の装置を用いて、より無秩序な乱数を発生させる新規な方法、並びに前記方法に適用する装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の乱数発生方法の原理を説明するための図である。
【図2】本発明の乱数発生装置の好ましい態様を示す構成図である。
【図3】スイッチング回路の回路図の一例である。
【図4】発振回路の回路図の一例である。
【図5】本発明の方法を用いて乱数を発生させる原理をモデル的に示した図である。
【図6】本発明の方法において、乱数が発生されない場合の原理をモデル的に示した図である。
【図7】発振回路の回路図の他の例である。
【図8】発振回路の回路図のその他の例である。
【符号の説明】
10 直流電源
20 発振器
30 スイッチング回路
40 発振回路
50 A/D変換器
60 パーソナルコンピュータ

Claims (10)

  1. 所定の電気的信号を発振した後、定常状態になるまでの立上り期間内において、前記電気的信号の振幅に対して所定の閾値を設定し、前記振幅の前記閾値に対する大小関係から0又は1の数字を割り当て、2進数的な乱数を発生させることを特徴とする、乱数発生方法。
  2. 前記電気的信号は所定の発振回路から発振することを特徴とする、請求項1に記載の乱数発生方法。
  3. 前記発振回路に対して所定のスイッチング回路より矩形波を入力するようにしたことを特徴とする、請求項2に記載の乱数発生方法。
  4. 前記電気的信号は、前記発振回路より発振された後、所定のA/D変換器により、ディジタル成分に変換することを特徴とする、請求項2又は3に記載の乱数発生方法。
  5. 前記電気的信号の周波数がサンプリング周波数よりも高いことを特徴とする、請求項4に記載の乱数発生方法。
  6. 所定の電気的信号を発振するための発振手段と、
    前記電気的信号の振幅に対して所定の閾値を設定し、前記振幅の前記閾値に対する大小関係から0又は1の数字を割り当てる演算処理手段とを具えることを特徴とする、乱数発生装置。
  7. 前記発振手段は所定の発振回路を含むことを特徴とする、請求項6に記載の乱数発生装置。
  8. 前記発振手段の前方において、矩形波生成手段を具えることを特徴とする、請求項6又は7に記載の乱数発生装置。
  9. 前記矩形波生成手段はスイッチング回路を含むことを特徴とする、請求項8に記載の乱数発生装置。
  10. 前記発振手段と前記演算処理手段との間において、A/D変換器を具えることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか一に記載の乱数発生装置。
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