JP2004126399A - 光導波路および光導波回路 - Google Patents
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Abstract
【課題】低コストで実現でき、かつ、光学特性も良好な温度無依存の光導波路および光導波回路を提供する。
【解決手段】石英系光導波路にTiO2を入れることで、SiO2ガラス系の屈折率の温度係数が逆になる(SiO2は通常正だが負になる)現象を利用して、石英系光導波路にTiO2を入れることにより光導波回路の温度無依存化を実現する。屈折率の温度係数は熱膨張係数の関数であるから、TiO2濃度60mol%のコア12とクラッド11間(またはクラッド11と基板10間)にTiO2濃度30mol%の応力緩衝層14をはさみ、これにより応力緩衝層14の熱膨張係数を上下のガラス11、12(または10、11)の熱膨張係数の中間値とすることで、温度無依存の光導波路を実現する。
【選択図】 図2
【解決手段】石英系光導波路にTiO2を入れることで、SiO2ガラス系の屈折率の温度係数が逆になる(SiO2は通常正だが負になる)現象を利用して、石英系光導波路にTiO2を入れることにより光導波回路の温度無依存化を実現する。屈折率の温度係数は熱膨張係数の関数であるから、TiO2濃度60mol%のコア12とクラッド11間(またはクラッド11と基板10間)にTiO2濃度30mol%の応力緩衝層14をはさみ、これにより応力緩衝層14の熱膨張係数を上下のガラス11、12(または10、11)の熱膨張係数の中間値とすることで、温度無依存の光導波路を実現する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信または光情報処理の分野で用いられる光導波路および光導波回路に関し、より詳細には、光透過特性が温度無依存である光導波路および光導波回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
インターネットが世界的に利用されるようになり、通信需要が増大している。このため、動画などの大容量データを効率的に伝達できる光波長多重(WDM:wavelength division multiplexing)通信システムの商用導入が世界中で進んでいる。これに伴い、光通信システムを構成する光デバイスの研究にも拍車がかかっている。中でも、LSI(大規模集積回路)微細加工技術を応用し、平面基板上に一括形成できるプレーナ型光導波回路は、集積性・量産性に優れていることから、高性能で複雑な光デバイスを実現できる手段として期待されている。その中でも、シリコン基板上に形成され石英系光導波回路は、信頼性に優れた実用的デバイスとして研究開発が進められている。
【0003】
プレーナ型光導波回路は、光の干渉現象を機能的に利用することにより多種多様な光デバイスを実現できる。中でも、アレイ導波路回折格子(AWG: arrayed waveguide grating)型光波長合分波器や、非対称マッハツェンダ干渉計(MZI:Mach−Zender interferometer)型光波長合分波器に代表される光波長合分波器は、光波長多重(WDM)通信システムのキーデバイスとして重要である。
【0004】
従来のAWG型光波長合分波器の回路構成を図5の(A)に示す。AWG型光波長合分波器は、入力用チャネル導波路1、出力用チャネル導波路2、チャネル導波路アレイ3、入力用チャネル導波路1とチャネル導波路アレイ3とを接続する入力側スラブ導波路4、並びにチャネル導波路アレイ3と出力用チャネル導波路2とを接続する入力側スラブ導波路5とから形成されている。
【0005】
また、図5の(B)に、従来の非対称MZI型光波長合分波器の回路構成を示す。非対称MZI型光波長合分波器は、2つの3dB方向性結合器6とアーム導波路7と入力ポート8と出力ポート9とから構成されている。
【0006】
これらのAWG型光波長合分波器、および非対称MZI型光波長合分波器の光透過特性は、温度依存性を有する。図6の(A)に、従来のチャネル間隔100GHzのAWG型光波長合分波器における透過スペクトル(波長対透過率)を示す。同図から、スペクトルが温度の増加とともに長波長側にシフトしていることが分かる。さらに、図6の(B)に、従来のAWG型光波長合分波器における中心波長の温度依存性を示す。同図から、中心波長の温度シフトは0℃〜100℃の範囲で、チャネル間隔0.8nm(=100GHz)を超える値となっている。
【0007】
また、図7に、従来の非対称MZI型光波長合分波器における透過スペクトル(波長対透過率)を示す。このデバイスの透過スペクトルも温度の増加とともに長波長側にシフトしている。
【0008】
しかしながら、スペクトルの温度シフトは厳密な波長制御を必要とするWDM通信システムにおいては重大な欠陥であり、実際のデバイスでは種々の方法によりスペクトルの温度無依存化を実現している。下記の表1に従来の代表的温度無依存化技術を示す。
【0009】
【表1】
【0010】
従来法の一つである温調素子実装法は、ペルチェ素子やヒータ等の温調素子(温度調整素子)をデバイス(光波長合分波器)に実装し、その温調素子を用いて、外部温度が変化してもデバイスの素子の温度が一定になるように調節する方法である。この方法では光学特性は劣化することはないが、温調素子の部材コストや実装コストが負担となる。
【0011】
もう一つの従来法であるシリコーン樹脂充填法は、負の屈折率温度依存性を有するシリコーン樹脂を用いて、光波長合分波器の温度無依存化を図るものである(非特許文献1を参照)。この方法では、光干渉回路に溝を形成して樹脂を充填する。したがって、その溝における放射損失による光学特性の劣化と溝形成のプロセスコストと作業コストとが短所となる。特に、非対称MZIを多段に接続した複合回路の場合などは、溝における放射損失が累積して光学特性を大きく劣化させる。
【0012】
【非特許文献1】
Inoue et al. “A thermal Silica−Based Arrayed−Waveguide Grating Multiplexer” ,Electronics Letters,33(1997) P1945.
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の温度無依存化法は、良好な光学特性と低コスト性を両立するものではない。
【0014】
本発明の目的は、低コストで実現でき、かつ、光学特性も良好な温度無依存の光導波路および光導波回路を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の光導波路は、平面基板上に下部クラッドと下部クラッド上に形成されたリブ型のコアからなる石英系光導波路、または、平面基板上に下部クラッドと下部クラッド上に形成されたコアとコアを覆うように形成された上部クラッドからなる埋め込み型石英系光導波路であって、その光導波路の光路長をSとしたとき、その温度係数dS/dTが本質的にdS/dT=0を満たすことを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明では、導波路材料間の熱膨張係数差が大きく剥離や亀裂などの問題が生じる場合には、平面基板と下部クラッド間、または、下部クラッドとコア間、またはコアと上部クラッド間の一部、または全てに、熱膨張係数が上下のガラスの熱膨張係数の中間値となるような応力緩衝用クラッド層を形成する。
【0017】
そして、上記の光導波路を実現するため、コアまたは上部クラッドまたは下部クラッドにTiO2を含有させる。
【0018】
なお、本発明の典型的な平面基板材料はシリコンであり、基板材料としてシリコンを、コアまたは上部クラッドまたは下部クラッドとしてTiO2とSiO2の両成分で80mol%以上の成分比を占める石英系ガラスを用い、そのTiO2の濃度が45〜75mol%,最適値は60mol%付近とする。
【0019】
また、応力緩衝用クラッド層は典型例としてTiO2を含み、そのTiO2の濃度は、5〜60mol%,最適値は30mol%付近であり、さらにその応力緩衝用クラッド層の膜厚は0.1μm以上なら効果があり、好適な膜厚は0.5〜5μm、最適値は2μm付近である。
【0020】
もう一つの典型的な基板材料として、石英ガラスを用いても良い。
【0021】
本発明はまた、上記光導波路を少なくとも1本有することを特徴とする光導波回路を提供する。典型的には、光の干渉現象を利用した光導波回路である。一例として、その光導波回路は、複数の上記光導波路を有するアレイ導波路回折格子、もしくは、複数の光導波路を有する非対称マッハツェンダ干渉計を含むものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[発明の原理]
まず、はじめに本発明の原理を説明する。光導波路の光路長Sは、光導波路の長さLと実行屈折率neffとの積で表される。
【0023】
【数1】
S=neff×L (1)
【0024】
したがって、光路長Sの温度係数はdS/dTは次式(2)で表される。
【0025】
【数2】
【0026】
従来の石英系導波路においては、dL/dT、dneff/dTともに正の値であるため、dS/dTも正となる。このため、AWGや非対称MZIなどの光干渉回路において、透過スペクトルが長波長側にシフトする。よって、光干渉回路における透過スペクトルの温度無依存化を図るために、dS/dT=0、すなわち、
【0027】
【数3】
【0028】
となるように、光導波路材料の成分を調整する必要がある。
【0029】
一般に高分子材料を除く光導波路材料では、熱膨張係数が正の値、すなわち、dL/dT>0である。したがって、従来のシリコーン樹脂を用いずに、温度無依存の光導波回路を実現するためには、負の屈折率温度係数(dn/dT<0)を有する光導波路材料が必要である(nは光導波路材料の屈折率)。
【0030】
本発明者らは、シリコン基板上に作製したTiO2とSiO2で成分の80mol%以上を占める石英ガラスが負の屈折率温度係数を有することを見出した。図1に典型例としてTiO2−SiO2二元系ガラス(TiO2とSiO2で成分の100mol%)における屈折率温度係数dn/dTのTiO2濃度依存性を示す。同図の横軸はTiO2濃度(mol%)、縦軸は屈折率温度係数(×10−6)(1/℃)を示す。 同図に示すように、TiO2濃度が増加するとともに、屈折率温度係数dn/dTは正から負の値へと変化する。したがって、屈折率温度係数dn/dTが負の領域において、光導波路の構成を考慮して適当な組成を選択することにより温度無依存の光導波回路を実現できる。なお、各組成において、屈折率温度係数dn/dTの値に幅があるのは、たとえ組成が同じであっても熱処理などのガラス膜作製条件によって屈折率温度係数dn/dTの値が異なるためである。
【0031】
また、図1ではTiO2−SiO2二元系ガラスの例を示したが、TiO2とSiO2とを80mol%以上含有し、他にGeO2,B2O3,P2O3などの成分を含むガラスでも図1とほぼ同様の効果が得られた。
【0032】
[第1の実施の形態]
上述のような、石英系光導波路にTiO2を入れることで、SiO2ガラス系の屈折率の温度係数が逆になる(SiO2は通常は正だが、負になる)現象を利用して、温度無依存化を実現した光導波路を、本発明の第1の実施形態として以下に説明する。
【0033】
本発明の第1の実施の形態では、上記のようなTiO2−SiO2ガラスを用いて、シリコン基板上に、チャネル間隔100GHz、チャネル数32のAWG型波長合分波器を作製した。
【0034】
本実施形態では、コアとクラッド間(またはクラッドと基板間)に応力緩衝層をはさみ、応力緩衝層の熱膨張係数を上下のガラスの熱膨張係数の中間値とすることで、温度無依存の光導波路を実現した。この場合、ガラス材料の厚さに比べて基板の厚さが十分に厚いため、光導波路の温度変化による物理的な伸びは基板の熱膨張に支配される。よって、シリコンの線膨張係数、
【0035】
【数4】
【0036】
を用いて、
【0037】
【数5】
【0038】
を満たすように、光導波路材料の成分を調整した。
【0039】
実際には、図2の(A)に示すようなリブ型の光導波路によりAWGを作製した。まず、Si基板10上に、スパッタ法によって、SiO2を主成分とする下部クラッド層11を堆積した。次に、応力緩衝用にTiO2を30mol%含むクラッドガラス層14を形成し、さらに、TiO2濃度60mol%のコア12を形成した。そして、フォトリソグラフィーと反応性イオンエッチングにより回路パターンを形成した。
【0040】
なお、好適例として、下部クラッド層11の厚さは10μm、応力緩衝用クラッドガラス層14の厚さは2μm、コア12の厚さHと幅Wはそれぞれ、4μm、4μm、コア12の掘り込み深さDは、2μmとした。なお、緩衝層14の膜厚は2μmが最適であるが、0.1μm以上なら効果があり、好適な膜厚は0.5〜5μmである。
【0041】
ここで、コア12と応力緩衝用クラッドガラス層14のTiO2濃度について記述する。図1に示さすように、TiO2濃度45mol%から75mol%では、上記の(5)式の条件を満たすため、この範囲の組成はいずれもコア12として採用可能である。最も再現性が良く、ガラス膜が作製できたTiO2濃度は、60mol%付近であった。ただし、TiO2の濃度が75mol%より高いと薄膜がひび割れたり、剥離する。
【0042】
そこで、第1の実施の形態でのコア12のTiO2濃度は60mol%とした。一方、この応力緩衝用クラッドガラス14は、コア12を直接下部クラッド11上に作製した場合に熱膨張係数の差に起因して生じるコアの亀裂や剥離を抑制する目的で形成している。TiO2濃度60mol%からコアよりも10mol%低い濃度まで、応力緩衝用クラッド膜14として機能する。今回は、TiO2濃度60mol%のコア12と下部クラッドガラス11のほぼ中間の熱膨張係数を有する組成として、応力緩衝用クラッド膜14のTiO2濃度を30mol%とした。
【0043】
図3の(A)は、本発明に係る上記の手法で作製したAWG型光波長合分波器のセンターポートからの透過スペクトルを示す。ここで、横軸は波長(nm)、縦軸は透過率(dB)を示す。同図から、各温度のスペクトルは一致して、一本のスペクトルに重なっていることがわかる。すなわち、温度に依存しない特性となっている。
【0044】
図3の(B)に同AWG型光波長合分波器の透過スペクトルの中心波長の温度依存性を示す。ここで、横軸は温度(℃)、縦軸は中心波長(nm)を示す。同図から、0℃〜100℃の範囲で透過波長の変化は0.05nm以下となっている。この値はチャネル間隔100GHz(0.8nm)に比較して十分小さな値であるため、ペルチェ素子やヒータなどを用いた温度制御が不要になる。このため、本実施形態では、電源や温度コントローラなどの部品も不要となり、従来法の温調素子実装法に比べ、大幅なコスト削減を実現した。また、本実施形態では、従来法のシリコーン樹脂挿入法の場合に発生するような放射損失はないので、回路特性を犠牲にせずに、温度無依存化を実現した。
【0045】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態では、FSR(Free Spectral Range) 800GHz非対称MZI型光波長合分波器を図2の(B)に示すような埋め込み型導波路を用いて作製した。まず、応力を緩衝するためにシリコン基板10上にTiO2を50mol%含むクラッドガラス層14を2μm形成した。次に、TiO2−SiO2下部クラッド層11を、さらに下部クラッド層11上にTiO2−SiO2コア12をスパッタ法で堆積した。そして、フォトリソグラフィーと反応性イオンエッチングにより回路パターンを形成した。最後にスパッタ法を用いてTiO2−SiO2上部クラッド層13を形成した。なお、緩衝層14の膜厚は2μm付近が最適であるが、0.1μm以上なら効果があり、好適な膜厚は0.5〜5μmである。5μmを超える膜厚では、作業時間、コストがかかりすぎる。
【0046】
なお、好適例として、下部クラッド層11と上部クラッド層13の厚さはそれぞれ10μm、コア12の幅Wとコア厚Hはともに1μmとした。また、コア12とクラッド13の比屈折率差Δは5%で、かつ第1の実施の形態と同様に、前述の(5)式を満たすように、TiO2濃度を調整した。
【0047】
図4に本実施形態の非対称MZI型光波長合分波器の透過スペクトルを示す。ここで、横軸は波長(nm)、縦軸は透過率(dB)を示す。同図から、各温度のスペクトルは一致しており、温度に依存しない透過特性を実現したことが分かる。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態によれば、コアまたはクラッド層にTiO2を含むSiO2ガラスを用いることで、光導波路の温度変化による物理的な伸び縮みを打ち消すことができ、その結果、透過スペクトルが温度変化に対して不変な光導波回路が実現できる。また、本実施形態は、温調素子の実装やシリコーン樹脂の充填が不要のため、従来の手法に比べ明らかに簡便で、コスト的な負担もない。さらに、本実施形態は光導波路そのものを温度無依存化するため、従来のシリコーン樹脂法で発生する放射損失は生じない。よって、本実施形態は、各種光波長合分波器、光共振器、光減衰器、熱光学スイッチ、遅延線など様々な光導波回路、およびそれらを集積化した大規模回路にも適用可能である。
【0049】
[他の実施の形態]
上述した本発明の第1と第2の実施の形態では、TiO2−SiO2二元系ガラスを用いて、下部クラッド層11、コア12、上部クラッド層13、応力緩衝用クラッド層14を実現したが、ガラスの屈折率や熱膨張係数および軟化点などの調整のために、TiO2−SiO2以外に、新たにGeO2,B2O3,P2O3などの成分を添加しても良い。また、これらTiO2−SiO2、GeO2,B2O3,P2O3を適宜組合わせ、SiO2系へ添加しても同様な効果が得られた。ただし、その結果、温度無依存化のための最適なTiO2濃度が50mol%から変化する場合がある。
【0050】
また、上述した本発明の第1と第2の実施の形態では、スパッタ法を用いて光導波回路を形成したが、下部クラッド層11、コア12、上部クラッド層13、応力緩衝用クラッド層14の一部または全てを、火炎堆積法やCVD(Chemical
Vapor Deposition)法で作製しても良い。
【0051】
そして、平面基板10と下部クラッド層11の間、または、下部クラッド層11とコア12の間に応力緩衝用クラッド層14を形成する場合には、応力緩衝用クラッド層14を下部クラッドとして代用し、下部クラッド層11の形成を省略しても良い。
【0052】
さらに、上述した本発明の第1と第2の実施の形態では、基板としてシリコンを用いたが、石英ガラス基板など他の基板上の光導波回路でも同様な効果が得られる。
【0053】
以上、本発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、請求項に記載の範囲内において種々変更可能であることは勿論である。
【0054】
即ち、上記実施の形態においては温度無依存化を実現させているが、仕様によっては無依存は実現されなくても、所望の低レベル依存性を実現されても良く、仕様、製造条件、コスト等を考慮した所望の低レベルに合わせTiO2濃度を決定すればよい。
【0055】
たとえば、上記実施の形態のリブ型、埋め込み型導波路の断面形状は凸型、正方形であったが、本発明はいかなる断面形状のコアに対しても適用可能で、例えば、正方形ではなく長方形や台形のコアに対しても適用できる。
【0056】
さらに言うならば、今回の実施の形態では、典型例としてTiO2を必ず含む石英系ガラスについて述べたが、TiO2を含まない石英系ガラスでも本発明の原理に基づいて平面基板上の光導波路を実現できる。すなわち、バルクガラスで屈折率の温度係数が負になることが確認されているB2O3またはP2O5またはLi,Na,Kなどのアルカリ金属の酸化物またはMg,Caなどのアルカリ土金属の参加物を多量に含む石英系ガラスを用いても、本発明の平面基板上の光導波路を作製することができる。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、次のような効果が得られる。
(1)屈折率の温度依存性を変化させることができるので、温度に依存しない、もしく所望の低レベル依存性の光導波回路を実現できる。
(2)新たな製造過程を追加することなく対応でき、かつ、温度コントローラ等の部品も必要としないので、生産面・コスト面の負担を増加させることなく温度無依存型の光導波回路を実現できる。
(3)作製法や仕様の異なる多様な光導波回路に対して広範囲に適用できる。
(4)各種光波長合分波器、光共振器、光減衰器、熱光学スイッチ、遅延線など様々な光導波回路、およびそれらを集積化した大規模回路にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明におけるTiO2−SiO2ガラスの屈折率温度係数のTiO2濃度依存性を示す特性図である。
【図2】
(A)は本発明の第1の実施の形態における光導波路の構成を示し、(B)は本発明の第2の実施の形態における光導波路の構成を示す断面図である。
【図3】
(A)は本発明の第1の実施の形態で作製したAWG型光波長合分波器の透過スペクトルを示し、(B)はその中心波長の温度依存性を示す特性図である。
【図4】
本発明の第2の実施の形態で作製したMZI型光波長合分波器の透過スペクトルを示す特性図である。
【図5】(A)は従来のAWG型光波長合分波器の概略構成を示す模式図、(B)は従来のMZI型光波長合分波器の概略構成を示す模式図である。
【図6】(A)は従来の石英系AWG型光波長合分波器の透過スペクトルを示し、(B)はその中心波長の温度依存性を示す特性図である。
【図7】従来の石英系MZI型光波長合分波器における透過スペクトルの温度依存性を示す特性図である。
【符号の説明】
1 入力用チャネル導波路
2 出力用チャネル導波路
3 チャネル導波路アレイ
4 入力側スラブ導波路
5 入力側スラブ導波路
6 3dB方向性結合器
7 アーム導波路
8 入力ポート
9 出力ポート
10 Si基板
11 下部クラッド層
12 コア
13 上部クラッド層
14 応力緩衝用のクラッドガラス層
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信または光情報処理の分野で用いられる光導波路および光導波回路に関し、より詳細には、光透過特性が温度無依存である光導波路および光導波回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
インターネットが世界的に利用されるようになり、通信需要が増大している。このため、動画などの大容量データを効率的に伝達できる光波長多重(WDM:wavelength division multiplexing)通信システムの商用導入が世界中で進んでいる。これに伴い、光通信システムを構成する光デバイスの研究にも拍車がかかっている。中でも、LSI(大規模集積回路)微細加工技術を応用し、平面基板上に一括形成できるプレーナ型光導波回路は、集積性・量産性に優れていることから、高性能で複雑な光デバイスを実現できる手段として期待されている。その中でも、シリコン基板上に形成され石英系光導波回路は、信頼性に優れた実用的デバイスとして研究開発が進められている。
【0003】
プレーナ型光導波回路は、光の干渉現象を機能的に利用することにより多種多様な光デバイスを実現できる。中でも、アレイ導波路回折格子(AWG: arrayed waveguide grating)型光波長合分波器や、非対称マッハツェンダ干渉計(MZI:Mach−Zender interferometer)型光波長合分波器に代表される光波長合分波器は、光波長多重(WDM)通信システムのキーデバイスとして重要である。
【0004】
従来のAWG型光波長合分波器の回路構成を図5の(A)に示す。AWG型光波長合分波器は、入力用チャネル導波路1、出力用チャネル導波路2、チャネル導波路アレイ3、入力用チャネル導波路1とチャネル導波路アレイ3とを接続する入力側スラブ導波路4、並びにチャネル導波路アレイ3と出力用チャネル導波路2とを接続する入力側スラブ導波路5とから形成されている。
【0005】
また、図5の(B)に、従来の非対称MZI型光波長合分波器の回路構成を示す。非対称MZI型光波長合分波器は、2つの3dB方向性結合器6とアーム導波路7と入力ポート8と出力ポート9とから構成されている。
【0006】
これらのAWG型光波長合分波器、および非対称MZI型光波長合分波器の光透過特性は、温度依存性を有する。図6の(A)に、従来のチャネル間隔100GHzのAWG型光波長合分波器における透過スペクトル(波長対透過率)を示す。同図から、スペクトルが温度の増加とともに長波長側にシフトしていることが分かる。さらに、図6の(B)に、従来のAWG型光波長合分波器における中心波長の温度依存性を示す。同図から、中心波長の温度シフトは0℃〜100℃の範囲で、チャネル間隔0.8nm(=100GHz)を超える値となっている。
【0007】
また、図7に、従来の非対称MZI型光波長合分波器における透過スペクトル(波長対透過率)を示す。このデバイスの透過スペクトルも温度の増加とともに長波長側にシフトしている。
【0008】
しかしながら、スペクトルの温度シフトは厳密な波長制御を必要とするWDM通信システムにおいては重大な欠陥であり、実際のデバイスでは種々の方法によりスペクトルの温度無依存化を実現している。下記の表1に従来の代表的温度無依存化技術を示す。
【0009】
【表1】
【0010】
従来法の一つである温調素子実装法は、ペルチェ素子やヒータ等の温調素子(温度調整素子)をデバイス(光波長合分波器)に実装し、その温調素子を用いて、外部温度が変化してもデバイスの素子の温度が一定になるように調節する方法である。この方法では光学特性は劣化することはないが、温調素子の部材コストや実装コストが負担となる。
【0011】
もう一つの従来法であるシリコーン樹脂充填法は、負の屈折率温度依存性を有するシリコーン樹脂を用いて、光波長合分波器の温度無依存化を図るものである(非特許文献1を参照)。この方法では、光干渉回路に溝を形成して樹脂を充填する。したがって、その溝における放射損失による光学特性の劣化と溝形成のプロセスコストと作業コストとが短所となる。特に、非対称MZIを多段に接続した複合回路の場合などは、溝における放射損失が累積して光学特性を大きく劣化させる。
【0012】
【非特許文献1】
Inoue et al. “A thermal Silica−Based Arrayed−Waveguide Grating Multiplexer” ,Electronics Letters,33(1997) P1945.
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の温度無依存化法は、良好な光学特性と低コスト性を両立するものではない。
【0014】
本発明の目的は、低コストで実現でき、かつ、光学特性も良好な温度無依存の光導波路および光導波回路を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の光導波路は、平面基板上に下部クラッドと下部クラッド上に形成されたリブ型のコアからなる石英系光導波路、または、平面基板上に下部クラッドと下部クラッド上に形成されたコアとコアを覆うように形成された上部クラッドからなる埋め込み型石英系光導波路であって、その光導波路の光路長をSとしたとき、その温度係数dS/dTが本質的にdS/dT=0を満たすことを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明では、導波路材料間の熱膨張係数差が大きく剥離や亀裂などの問題が生じる場合には、平面基板と下部クラッド間、または、下部クラッドとコア間、またはコアと上部クラッド間の一部、または全てに、熱膨張係数が上下のガラスの熱膨張係数の中間値となるような応力緩衝用クラッド層を形成する。
【0017】
そして、上記の光導波路を実現するため、コアまたは上部クラッドまたは下部クラッドにTiO2を含有させる。
【0018】
なお、本発明の典型的な平面基板材料はシリコンであり、基板材料としてシリコンを、コアまたは上部クラッドまたは下部クラッドとしてTiO2とSiO2の両成分で80mol%以上の成分比を占める石英系ガラスを用い、そのTiO2の濃度が45〜75mol%,最適値は60mol%付近とする。
【0019】
また、応力緩衝用クラッド層は典型例としてTiO2を含み、そのTiO2の濃度は、5〜60mol%,最適値は30mol%付近であり、さらにその応力緩衝用クラッド層の膜厚は0.1μm以上なら効果があり、好適な膜厚は0.5〜5μm、最適値は2μm付近である。
【0020】
もう一つの典型的な基板材料として、石英ガラスを用いても良い。
【0021】
本発明はまた、上記光導波路を少なくとも1本有することを特徴とする光導波回路を提供する。典型的には、光の干渉現象を利用した光導波回路である。一例として、その光導波回路は、複数の上記光導波路を有するアレイ導波路回折格子、もしくは、複数の光導波路を有する非対称マッハツェンダ干渉計を含むものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[発明の原理]
まず、はじめに本発明の原理を説明する。光導波路の光路長Sは、光導波路の長さLと実行屈折率neffとの積で表される。
【0023】
【数1】
S=neff×L (1)
【0024】
したがって、光路長Sの温度係数はdS/dTは次式(2)で表される。
【0025】
【数2】
【0026】
従来の石英系導波路においては、dL/dT、dneff/dTともに正の値であるため、dS/dTも正となる。このため、AWGや非対称MZIなどの光干渉回路において、透過スペクトルが長波長側にシフトする。よって、光干渉回路における透過スペクトルの温度無依存化を図るために、dS/dT=0、すなわち、
【0027】
【数3】
【0028】
となるように、光導波路材料の成分を調整する必要がある。
【0029】
一般に高分子材料を除く光導波路材料では、熱膨張係数が正の値、すなわち、dL/dT>0である。したがって、従来のシリコーン樹脂を用いずに、温度無依存の光導波回路を実現するためには、負の屈折率温度係数(dn/dT<0)を有する光導波路材料が必要である(nは光導波路材料の屈折率)。
【0030】
本発明者らは、シリコン基板上に作製したTiO2とSiO2で成分の80mol%以上を占める石英ガラスが負の屈折率温度係数を有することを見出した。図1に典型例としてTiO2−SiO2二元系ガラス(TiO2とSiO2で成分の100mol%)における屈折率温度係数dn/dTのTiO2濃度依存性を示す。同図の横軸はTiO2濃度(mol%)、縦軸は屈折率温度係数(×10−6)(1/℃)を示す。 同図に示すように、TiO2濃度が増加するとともに、屈折率温度係数dn/dTは正から負の値へと変化する。したがって、屈折率温度係数dn/dTが負の領域において、光導波路の構成を考慮して適当な組成を選択することにより温度無依存の光導波回路を実現できる。なお、各組成において、屈折率温度係数dn/dTの値に幅があるのは、たとえ組成が同じであっても熱処理などのガラス膜作製条件によって屈折率温度係数dn/dTの値が異なるためである。
【0031】
また、図1ではTiO2−SiO2二元系ガラスの例を示したが、TiO2とSiO2とを80mol%以上含有し、他にGeO2,B2O3,P2O3などの成分を含むガラスでも図1とほぼ同様の効果が得られた。
【0032】
[第1の実施の形態]
上述のような、石英系光導波路にTiO2を入れることで、SiO2ガラス系の屈折率の温度係数が逆になる(SiO2は通常は正だが、負になる)現象を利用して、温度無依存化を実現した光導波路を、本発明の第1の実施形態として以下に説明する。
【0033】
本発明の第1の実施の形態では、上記のようなTiO2−SiO2ガラスを用いて、シリコン基板上に、チャネル間隔100GHz、チャネル数32のAWG型波長合分波器を作製した。
【0034】
本実施形態では、コアとクラッド間(またはクラッドと基板間)に応力緩衝層をはさみ、応力緩衝層の熱膨張係数を上下のガラスの熱膨張係数の中間値とすることで、温度無依存の光導波路を実現した。この場合、ガラス材料の厚さに比べて基板の厚さが十分に厚いため、光導波路の温度変化による物理的な伸びは基板の熱膨張に支配される。よって、シリコンの線膨張係数、
【0035】
【数4】
【0036】
を用いて、
【0037】
【数5】
【0038】
を満たすように、光導波路材料の成分を調整した。
【0039】
実際には、図2の(A)に示すようなリブ型の光導波路によりAWGを作製した。まず、Si基板10上に、スパッタ法によって、SiO2を主成分とする下部クラッド層11を堆積した。次に、応力緩衝用にTiO2を30mol%含むクラッドガラス層14を形成し、さらに、TiO2濃度60mol%のコア12を形成した。そして、フォトリソグラフィーと反応性イオンエッチングにより回路パターンを形成した。
【0040】
なお、好適例として、下部クラッド層11の厚さは10μm、応力緩衝用クラッドガラス層14の厚さは2μm、コア12の厚さHと幅Wはそれぞれ、4μm、4μm、コア12の掘り込み深さDは、2μmとした。なお、緩衝層14の膜厚は2μmが最適であるが、0.1μm以上なら効果があり、好適な膜厚は0.5〜5μmである。
【0041】
ここで、コア12と応力緩衝用クラッドガラス層14のTiO2濃度について記述する。図1に示さすように、TiO2濃度45mol%から75mol%では、上記の(5)式の条件を満たすため、この範囲の組成はいずれもコア12として採用可能である。最も再現性が良く、ガラス膜が作製できたTiO2濃度は、60mol%付近であった。ただし、TiO2の濃度が75mol%より高いと薄膜がひび割れたり、剥離する。
【0042】
そこで、第1の実施の形態でのコア12のTiO2濃度は60mol%とした。一方、この応力緩衝用クラッドガラス14は、コア12を直接下部クラッド11上に作製した場合に熱膨張係数の差に起因して生じるコアの亀裂や剥離を抑制する目的で形成している。TiO2濃度60mol%からコアよりも10mol%低い濃度まで、応力緩衝用クラッド膜14として機能する。今回は、TiO2濃度60mol%のコア12と下部クラッドガラス11のほぼ中間の熱膨張係数を有する組成として、応力緩衝用クラッド膜14のTiO2濃度を30mol%とした。
【0043】
図3の(A)は、本発明に係る上記の手法で作製したAWG型光波長合分波器のセンターポートからの透過スペクトルを示す。ここで、横軸は波長(nm)、縦軸は透過率(dB)を示す。同図から、各温度のスペクトルは一致して、一本のスペクトルに重なっていることがわかる。すなわち、温度に依存しない特性となっている。
【0044】
図3の(B)に同AWG型光波長合分波器の透過スペクトルの中心波長の温度依存性を示す。ここで、横軸は温度(℃)、縦軸は中心波長(nm)を示す。同図から、0℃〜100℃の範囲で透過波長の変化は0.05nm以下となっている。この値はチャネル間隔100GHz(0.8nm)に比較して十分小さな値であるため、ペルチェ素子やヒータなどを用いた温度制御が不要になる。このため、本実施形態では、電源や温度コントローラなどの部品も不要となり、従来法の温調素子実装法に比べ、大幅なコスト削減を実現した。また、本実施形態では、従来法のシリコーン樹脂挿入法の場合に発生するような放射損失はないので、回路特性を犠牲にせずに、温度無依存化を実現した。
【0045】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態では、FSR(Free Spectral Range) 800GHz非対称MZI型光波長合分波器を図2の(B)に示すような埋め込み型導波路を用いて作製した。まず、応力を緩衝するためにシリコン基板10上にTiO2を50mol%含むクラッドガラス層14を2μm形成した。次に、TiO2−SiO2下部クラッド層11を、さらに下部クラッド層11上にTiO2−SiO2コア12をスパッタ法で堆積した。そして、フォトリソグラフィーと反応性イオンエッチングにより回路パターンを形成した。最後にスパッタ法を用いてTiO2−SiO2上部クラッド層13を形成した。なお、緩衝層14の膜厚は2μm付近が最適であるが、0.1μm以上なら効果があり、好適な膜厚は0.5〜5μmである。5μmを超える膜厚では、作業時間、コストがかかりすぎる。
【0046】
なお、好適例として、下部クラッド層11と上部クラッド層13の厚さはそれぞれ10μm、コア12の幅Wとコア厚Hはともに1μmとした。また、コア12とクラッド13の比屈折率差Δは5%で、かつ第1の実施の形態と同様に、前述の(5)式を満たすように、TiO2濃度を調整した。
【0047】
図4に本実施形態の非対称MZI型光波長合分波器の透過スペクトルを示す。ここで、横軸は波長(nm)、縦軸は透過率(dB)を示す。同図から、各温度のスペクトルは一致しており、温度に依存しない透過特性を実現したことが分かる。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態によれば、コアまたはクラッド層にTiO2を含むSiO2ガラスを用いることで、光導波路の温度変化による物理的な伸び縮みを打ち消すことができ、その結果、透過スペクトルが温度変化に対して不変な光導波回路が実現できる。また、本実施形態は、温調素子の実装やシリコーン樹脂の充填が不要のため、従来の手法に比べ明らかに簡便で、コスト的な負担もない。さらに、本実施形態は光導波路そのものを温度無依存化するため、従来のシリコーン樹脂法で発生する放射損失は生じない。よって、本実施形態は、各種光波長合分波器、光共振器、光減衰器、熱光学スイッチ、遅延線など様々な光導波回路、およびそれらを集積化した大規模回路にも適用可能である。
【0049】
[他の実施の形態]
上述した本発明の第1と第2の実施の形態では、TiO2−SiO2二元系ガラスを用いて、下部クラッド層11、コア12、上部クラッド層13、応力緩衝用クラッド層14を実現したが、ガラスの屈折率や熱膨張係数および軟化点などの調整のために、TiO2−SiO2以外に、新たにGeO2,B2O3,P2O3などの成分を添加しても良い。また、これらTiO2−SiO2、GeO2,B2O3,P2O3を適宜組合わせ、SiO2系へ添加しても同様な効果が得られた。ただし、その結果、温度無依存化のための最適なTiO2濃度が50mol%から変化する場合がある。
【0050】
また、上述した本発明の第1と第2の実施の形態では、スパッタ法を用いて光導波回路を形成したが、下部クラッド層11、コア12、上部クラッド層13、応力緩衝用クラッド層14の一部または全てを、火炎堆積法やCVD(Chemical
Vapor Deposition)法で作製しても良い。
【0051】
そして、平面基板10と下部クラッド層11の間、または、下部クラッド層11とコア12の間に応力緩衝用クラッド層14を形成する場合には、応力緩衝用クラッド層14を下部クラッドとして代用し、下部クラッド層11の形成を省略しても良い。
【0052】
さらに、上述した本発明の第1と第2の実施の形態では、基板としてシリコンを用いたが、石英ガラス基板など他の基板上の光導波回路でも同様な効果が得られる。
【0053】
以上、本発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、請求項に記載の範囲内において種々変更可能であることは勿論である。
【0054】
即ち、上記実施の形態においては温度無依存化を実現させているが、仕様によっては無依存は実現されなくても、所望の低レベル依存性を実現されても良く、仕様、製造条件、コスト等を考慮した所望の低レベルに合わせTiO2濃度を決定すればよい。
【0055】
たとえば、上記実施の形態のリブ型、埋め込み型導波路の断面形状は凸型、正方形であったが、本発明はいかなる断面形状のコアに対しても適用可能で、例えば、正方形ではなく長方形や台形のコアに対しても適用できる。
【0056】
さらに言うならば、今回の実施の形態では、典型例としてTiO2を必ず含む石英系ガラスについて述べたが、TiO2を含まない石英系ガラスでも本発明の原理に基づいて平面基板上の光導波路を実現できる。すなわち、バルクガラスで屈折率の温度係数が負になることが確認されているB2O3またはP2O5またはLi,Na,Kなどのアルカリ金属の酸化物またはMg,Caなどのアルカリ土金属の参加物を多量に含む石英系ガラスを用いても、本発明の平面基板上の光導波路を作製することができる。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、次のような効果が得られる。
(1)屈折率の温度依存性を変化させることができるので、温度に依存しない、もしく所望の低レベル依存性の光導波回路を実現できる。
(2)新たな製造過程を追加することなく対応でき、かつ、温度コントローラ等の部品も必要としないので、生産面・コスト面の負担を増加させることなく温度無依存型の光導波回路を実現できる。
(3)作製法や仕様の異なる多様な光導波回路に対して広範囲に適用できる。
(4)各種光波長合分波器、光共振器、光減衰器、熱光学スイッチ、遅延線など様々な光導波回路、およびそれらを集積化した大規模回路にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明におけるTiO2−SiO2ガラスの屈折率温度係数のTiO2濃度依存性を示す特性図である。
【図2】
(A)は本発明の第1の実施の形態における光導波路の構成を示し、(B)は本発明の第2の実施の形態における光導波路の構成を示す断面図である。
【図3】
(A)は本発明の第1の実施の形態で作製したAWG型光波長合分波器の透過スペクトルを示し、(B)はその中心波長の温度依存性を示す特性図である。
【図4】
本発明の第2の実施の形態で作製したMZI型光波長合分波器の透過スペクトルを示す特性図である。
【図5】(A)は従来のAWG型光波長合分波器の概略構成を示す模式図、(B)は従来のMZI型光波長合分波器の概略構成を示す模式図である。
【図6】(A)は従来の石英系AWG型光波長合分波器の透過スペクトルを示し、(B)はその中心波長の温度依存性を示す特性図である。
【図7】従来の石英系MZI型光波長合分波器における透過スペクトルの温度依存性を示す特性図である。
【符号の説明】
1 入力用チャネル導波路
2 出力用チャネル導波路
3 チャネル導波路アレイ
4 入力側スラブ導波路
5 入力側スラブ導波路
6 3dB方向性結合器
7 アーム導波路
8 入力ポート
9 出力ポート
10 Si基板
11 下部クラッド層
12 コア
13 上部クラッド層
14 応力緩衝用のクラッドガラス層
Claims (12)
- 平面基板上に下部クラッドと該下部クラッド上に形成されたリブ型のコアからなる石英系光導波路、または、平面基板上に下部クラッドと該下部クラッド上に形成されたコアと該コアを覆うように形成された上部クラッドからなる埋め込み型石英系光導波路であって、
該光導波路の光路長をSとしたとき、その温度係数dS/dTが本質的にdS/dT=0を満たすことを特徴とする光導波路。 - 前記平面基板と前記下部クラッド間、または、前記下部クラッドと前記コア間、または前記コアと前記上部クラッド間の一部、または全てに、熱膨張係数が上下のガラスの熱膨張係数の中間値となるような応力緩衝用クラッド層を有することを特徴とする請求項1に記載の光導波路。
- 前記コアまたは前記上部クラッドまたは前記下部クラッドがTiO2を含む、もしくは、前記コア、前記上部クラッド、前記下部クラッドがTiO2を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の光導波路。
- 前記平面基板の材質がシリコンであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の光導波路。
- TiO2とSiO2の両成分で80mol%以上の成分比を占める請求項4に記載の光導波路であって、該TiO2の濃度が45〜75mol%であることを特徴とする光導波路。
- 前記応力緩衝用クラッド層はTiO2を含み、該TiO2の濃度は、5〜60mol%であることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の光導波路。
- 前記応力緩衝用クラッド層の膜厚は0.1μm以上であることを特徴とする請求項2ないし6のいずれかに記載の光導波路。
- 前記平面基板の材質が石英ガラスであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の光導波路。
- 請求項1ないし8のいずれかに記載の光導波路を少なくとも1本有することを特徴とする光導波回路。
- 光の干渉現象を利用したことを特徴とする請求項9に記載の光導波回路。
- 複数の前記光導波路を有するアレイ導波路回折格子を含むことを特徴とする請求項10に記載の光導波回路。
- 複数の前記光導波路を有する非対称マッハツェンダ干渉計を含むことを特徴とする請求項10に記載の光導波回路。
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