JP2004125995A - 熱現像画像記録材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】長期保存後でも感度の変動が少なく、裏写りが発生しない熱現像画像記録材料を提供すること。
【解決手段】支持体上に、有機溶媒を60質量%以上含有する塗布液を塗布してなる層を有し、かつ、[Rf−(Rc)n]m−Zで表されるフッ素化合物(F)を含有する熱現像画像記録材料(式中、Rfはパーフルオロアルキル基、Rcはアルキレン基、Zは界面活性を持たせるために必要なアニオン性基等、nは0または1、mは1〜3である)。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に、有機溶媒を60質量%以上含有する塗布液を塗布してなる層を有し、かつ、[Rf−(Rc)n]m−Zで表されるフッ素化合物(F)を含有する熱現像画像記録材料(式中、Rfはパーフルオロアルキル基、Rcはアルキレン基、Zは界面活性を持たせるために必要なアニオン性基等、nは0または1、mは1〜3である)。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱現像画像記録材料に関し、詳しくは優れたレーザー記録画像形成可能な、印刷版等への焼付透過原稿フィルムや、医療診断用フィルム等に好適な熱現像画像記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱現像記録材料は、レーザー記録とそれに続く熱現像プロセスにより画像形成せしめ、印刷版等への焼付透過原稿フィルムや、医療診断用フィルムとして用いられている。レーザー記録において、通常は内面ドラム、外面ドラム、フラットベッド式のレーザー露光方式が知られているが、いずれの方式においても、ドラムまたはフラットベッドに記録材料を密着させるためドラムまたはフラットベッド表面に微細な吸引口を設け、減圧にすることによって記録材料を密着せしめる方法が一般的である。そのため、該ドラムまたはフラットベッド表面には、これらの吸引口やそれらをつなぐ細溝等のパターンが存在する。透明支持体を用いた記録材料では、記録用レーザー光が記録材料中を透過し、ドラムまたはフラットベッド表面において反射することにより、前述の吸引口や細溝等のパターンを同時に記録してしまう裏写りと呼ばれる現象を防止するため、記録材料の記録層よりも下側、すなわち露光の際にドラムまたはフラットベッド表面に近い層の何れかに、レーザー光を吸収する染料層を設ける方法が知られている。従来の湿式現像処理を施す銀塩写真記録材料においては、現像処理、定着処理等の湿式処理によって、染料層中の染料を溶出除去し、処理後のフィルムの着色を防止する方法が一般的に行われてきた。しかしながら熱現像記録材料においては、従来の湿式処理銀塩写真記録材料と異なり、処理において染料を除去することができないため、染料層の設計および染料の選択が困難であった。
【0003】
近赤外レーザー露光により記録する熱現像記録材料においては、裏写りを防止するために、染料含有層を有する支持体の露光波長における透過吸光度が0.4以上であることが要求されるが、その際に、可視領域の吸収を充分に抑えることは困難で目視上の着色に問題がある上、赤色レーザーを用いたバーコード検出器により、フィルム上に記録したバーコードの読取りが不可能であった。これを解決するために、特定構造のシアニン染料を採用することで改善を図っている(特許文献1)が、その効果は充分ではなかった。また、染料含有層にラテックスバインダーを用い、かつバルビツール酸骨格を部分構造として有する特定構造の染料を使用することにより、可視領域の吸収を大幅に低減する方法が提案されている(特許文献2)が、逆に吸収の山形が急峻になることにより、レーザー記録時の環境影響やレーザーヘッドのロット間バラツキの影響を受けやすくなり、特に高湿環境下での裏写り防止の効果の安定性に問題があった。この問題は、特定のシアニン染料により改善を図っている(特許文献3)が、その効果は十分ではなく、また、保存経時による感度変化が大きく、カブリが高くなるという問題を生じる事となった。
【0004】
【特許文献1】特開平8−201959号公報
【特許文献2】特開平11−223898号公報
【特許文献3】特開2002−40593号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、長期保存後でも感度の変動が少なく、裏写りが発生しない熱現像画像記録材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1)支持体上に少なくとも1層の画像記録層を有する熱現像画像記録材料において、支持体上に形成された層の少なくとも1層が有機溶媒を60質量%以上含有する塗布液を塗布してなる層であり、かつ、支持体上に形成された層の少なくとも1層が一般式(F)で表されるフッ素化合物(F)を含有することを特徴とする熱現像画像記録材料。
一般式(F)
[Rf−(Rc)n]m−Z
[式中、Rfはパーフルオロアルキル基を表し、Rcはアルキレン基、Zは界面活性を持たせるために必要なアニオン性基、カチオン性基、ベタイン性基、またはノニオン性極性基を有する基を表す。nは0または1の整数を表し、mは1〜3の整数を表す。]
【0007】
(2)支持体上に少なくとも1層の画像記録層を有する熱現像画像記録材料において、支持体上に形成された層の少なくとも1層が有機溶媒を60質量%以上含有する塗布液を塗布してなる層であり、かつ、支持体上に形成された層の少なくとも1層が、一般式(a1)で表されるフッ素化合物(A)、および/または、炭素原子数が2以上のフッ化アルキル基を2つ以上有し、かつアニオン性またはノニオン性の親水性基の少なくとも一方を有するフッ素化合物(B)(但し、親水性基がノニオン性の場合にはフッ化アルキル基のフッ素原子数が11以下である)を含有することを特徴とする熱現像画像記録材料。
【化10】
[式中、Rは置換または無置換のアルキル基を表し、Rafはパーフルオロアルキレン基を表す。Wは水素原子またはフッ素原子を表し、Laは置換もしくは無置換のアルキレン基または置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、あるいはこれらを組み合わせてできる2価基を表す。AおよびBは、一方が水素原子を、もう一方が−Lb−SO3Mを表し、Mはカチオンを表す。Lbは、単結合または置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。]
【0008】
(3)前記フッ素化合物(B)が下記一般式(b1)で表される化合物であることを特徴とする(2)の熱現像画像記録材料。
【化11】
[式中、R1およびR2は各々独立に炭素原子数が2以上でフッ素原子数が11以下のフッ化アルキル基を表し、R3およびR4は各々独立に水素原子か置換または無置換のアルキル基を表す。AおよびBは、一方が水素原子を、もう一方が−Lb−SO3Mを表し、Mは水素原子またはカチオンを表す。Lbは、単結合または置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。]
【0009】
(4)前記フッ素化合物(B)が下記一般式(b2)で表される化合物である事を特徴とする(2)の熱現像画像記録材料。
【化12】
[式中、R1およびR2は各々独立に炭素原子数が2以上でフッ素原子数が11以下のフッ化アルキル基を表す。Xは−Lb−SO3Mを表し、Mは水素原子またはカチオンを表す。Lbは、単結合または置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。]
【0010】
(5)前記フッ素化合物(B)がアニオン性の親水性基を持ち、前記フッ素化合物(B)が有するフッ化アルキル基のフッ素原子総数が11以下であることを特徴とする(2)〜(4)のいずれか1項の熱現像画像記録材料。
(6)支持体上に少なくとも1層の画像記録層を有する熱現像画像記録材料において、支持体上に形成された層の少なくとも1層が有機溶媒を60質量%以上含有する塗布液を塗布してなる層であり、かつ、支持体上に形成された層の少なくとも1層が一般式(FA)で表されるフッ素化合物(FA)を含有することを特徴とする熱現像画像記録材料。
【化13】
[式中、R1およびR2は各々独立に置換または無置換のアルキル基を表すが、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R3、R4およびR5は各々独立に水素原子または置換基を表し、X1、X2およびZは各々独立に2価の連結基または単結合を表し、M+はカチオン性の置換基を表す。Y−は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY−はなくてもよい。mは0または1である。]
(7)前記フッ素化合物(FA)が、一般式(FA−a)で表される化合物であることを特徴とする(6)の熱現像画像記録材料。
【化14】
[式中、R11およびR21は各々独立に置換または無置換のアルキル基を表すが、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、R11とR21の炭素数の総計は19以下である。R13、R14およびR15は各々独立に置換または無置換のアルキル基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。X11およびX21は各々独立に−O−、−S−または−NR31−を表し、R31は水素原子または置換基を表し、Zは2価の連結基または単結合を表す。Y−は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY−はなくてもよい。mは0または1である。]
(8)前記フッ素化合物(FA)が、一般式(FA−c)で表される化合物であることを特徴とする(6)の熱現像画像記録材料。
【化15】
[式中、n1は1〜6の整数を、n2は3〜8の整数を表すが、2(n1+n2)は19以下である。R13、R14およびR15は各々独立に置換または無置換のアルキル基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。X11およびX21は各々独立に−O−、−S−または−NR31−を表す。R31は水素原子または置換基を表し、Zは2価の連結基または単結合を表す。Y−は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY−はなくてもよい。mは0または1である。]
(9)支持体上に少なくとも1層の染料含有層を有し、該染料含有層の露光波長750nm〜1500nmにおける透過吸光度が0.4以上であり、670nmにおける透過吸光度が0.22以下であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の熱現像画像記録材料。
【0011】
(10)前記染料含有層中に含まれる染料がシアニン染料もしくはポリメチン染料であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の熱現像画像記録材料。
(11)前記シアニン染料が、下記一般式〔1〕で表される染料であることを特徴とする(10)の熱現像画像記録材料。
【化16】
〔式中、R1、R2、R3およびR4は各々独立に、水素原子または置換基を表し、R1とR2、またはR2とR3は連結して環を形成してもよい。R5、R6、R7およびR8は各々独立に、水素原子または置換基を表し、R5とR6、またはR6とR7は連結して5員環または6員環を形成してもよい。R9およびR10は各々独立に、アルキル基、−(CH2)n−COOMまたは−(CH2)n−SO3Mを表す(ここで、nは2以上の整数を表し、Mは水素原子またはアルカリ金属原子を表す)。R11およびR12は連結して5員環または6員環を形成する基を表し、R13は水素原子、メチル基またはハロゲン原子を表し、A1は−S−、−Se−、−O−または−C(CH3)2−を表す。X−はアニオンを表す。〕
【0012】
(12)前記ポリメチン染料が、下記一般式〔2〕で表される染料であることを特徴とする(10)の熱現像画像記録材料。
【化17】
〔式中、R14、R15、R16およびR17は各々独立に、水素原子または置換基を表し、R14とR15、またはR15とR16は連結して環を形成してもよい。R18、R19、R20およびR21は各々独立に、水素原子または置換基を表し、R18とR19、またはR19とR20は連結して環を形成してもよい。R22およびR23は各々独立に、アルキル基、−(CH2)n−COOMまたは−(CH2)n−SO3Mを表す(ここで、nは2以上の整数を表し、Mは水素原子またはアルカリ金属原子を表す。)。R24およびR25は連結して5員環または6員環を形成する基を表し、R26は水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、A2は−S−、−Se−、−O−または−C(CH3)2−を表し、A3、A4およびA5は酸素原子または硫黄原子を表す。〕
【0013】
(13)前記ポリメチン染料が、下記一般式〔3〕で表される染料であることを特徴とする(10)の熱現像画像記録材料。
【化18】
〔式中、R31、R32、R33およびR34は各々独立に、水素原子または置換基を表し、R31とR32、またはR32とR33は連結して環を形成してもよい。R35、R36、R37およびR38は各々独立に、水素原子または置換基を表し、R35とR36、またはR36とR37は連結して環を形成してもよい。R39およびR40は各々独立に、アルキル基、−(CH2)n−COOMまたは−(CH2)n−SO3Mを表す(ここで、nは2以上の整数を表し、Mは水素原子またはアルカリ金属原子を表す)。R41およびR42は連結して5員環または6員環を形成する基を表し、X31は−S−、−Se−、−O−または−C(CH3)2−を表し、Y31は酸素原子または硫黄原子を表す。〕
【0014】
(14)支持体上に形成された層の少なくとも1層が硬調化剤を含有することを特徴とする(1)〜(13)のいずれか1項に記載の熱現像画像記録材料。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の熱現像画像記録材料について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0016】
まず、本発明で用いる一般式(F)で表されるフッ素化合物(F)について詳しく説明する。一般式(F)においてRfは炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を表し、具体例としては、C3F7−基、C4F9−基、C6F13−基、C8H17−基、C12F25−基、C16F33−基などが挙げられる。Rc基はアルキレン基を表す。アルキレン基の炭素数は1以上であるが、2以上であることが好ましく、20以下であることが好ましい。具体的にはメチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,2−オクチレン基などが挙げられる。本発明では、Rfが互いに異なる鎖長のパーフルオロアルキル基である複数の化合物の混合物を用いてもよいし、単一のパーフルオロアルキル基を有する化合物のみを用いてもよい。また、Rfが同一でRcが互いに異なる複数の化合物の混合物を用いてもよい。Rfが互いに異なる鎖長のパーフルオロアルキル基である複数の化合物の混合物を用いる場合、そのパーフルオロアルキル基の鎖長の平均値は炭素数として4〜10であることが好ましく、4〜9であることが特に好ましい。nは0または1の整数を表し、1であることが好ましい。mは1〜3の整数を表し、mが2または3のとき、[Rf−(Rc)n]は互いに同一でも異なっていてもよい。Zがリン酸エステル基でない場合はm=1が好ましく、Zがリン酸エステル基を表す場合はm=1〜3、あるいはその混合物を表し、その平均値としては0.5〜2が好ましい。
【0017】
Zは、界面活性を持たせるために必要な、カチオン性基、アニオン性基、ベタイン性基、または極性のノニオン性基を有する基を表す。これらの基が含まれていればRcとの連結の仕方は問わない。界面活性を持たせるために必要なアニオン基の例としては、スルホン酸基およびそのアンモニウムまたは金属塩、カルボン酸基およびそのアンモニウムまたは金属塩、ホスホン酸基およびそのアンモニウムまたは金属塩、硫酸エステル基およびそのアンモニウムまたは金属塩、リン酸エステル基およびそのアンモニウムまたは金属塩が挙げられる。
【0018】
界面活性を持たせるために必要なカチオン性基の例としては、トリメチルアンモニウムエチル基、トリメチルアンモニウムプロピル基などの4級アルキルアンモニウム基;ジメチルフェニルアンモニウムアルキル基、N−メチルピリジニウム基などの芳香族アンモニウム基が挙げられる。これらの基には適当な対イオンが存在しており、ハロゲン原子、ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオンなどが挙げられ、トルエンスルホン酸アニオンが好ましい。界面活性を持たせるために必要なベタイン性基としては、−N+(CH3)2CH2COO−、−N+(CH3)2CH2CH2COO−などのベタイン構造を有する基などが挙げられる。界面活性を持たせるために必要なノニオン性基の例としてはポリオキシアルキレン基、多価アルコール基などが挙げられ、好ましくはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシアルキレン基である。但し、これらの基の末端は水素原子以外の基、例えばアルキル基であってもよい。
【0019】
一般式(F)においてRfは好ましくは炭素数4〜16のパーフルオロアルキル基で、より好ましくは炭素数6〜16のパーフルオロアルキル基である。Rcは好ましくは炭素数2〜16のアルキレン基で、より好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基である。特に好ましいのはエチレン基である。nは好ましくは1である。Rcと界面活性付与に必要な基との間はどのように結合されていてもよく、例えばアルキレン鎖、アリーレン等で結合することができ、これらの基は置換基を有していてもよい。これらの基は主鎖または側鎖にオキシ基、チオ基、スルホニル基、スルホキシド基、スルホンアミド基、アミド基、アミノ基などが含まれていてもよい。以下一般式(F)で表されるフッ素化合物(F)の具体例を示すが、本発明で用いることができる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0020】
【化19】
【0021】
【化20】
【0022】
【化21】
【0023】
上記一般式(F)で表される化合物は1種のみを使用しても2種以上を併用してもよく、また感光材料の任意の層に添加してよい。これらの構成層としては、例えば画像記録層(感光層)、中間層、表面保護層、バック層、バック面保護層などがあるが、このうちでも表面保護層、バック面保護層で使用することが特に好ましい。本発明において一般式(F)で表される化合物の使用量は表面、裏面それぞれで0.1〜200mg/m2の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜50mg/ m2、さらに好ましくは1〜30mg/m2の範囲である。
【0024】
本発明の一般式(F)で表される化合物は、通常の合成方法により製造することができ、また、いわゆるテロマー型のパーフルオロアルキル基含有界面活性剤として広く市販されているものを用いることができる。その例としては、DUPONT(株)製のZonyl FSP,FSE,FSJ,NF,TBS,FS−62,FSA,FSK(以上イオン性)、Zonyl 9075,FSO,FSN,FS−300,FS−310(以上非イオン性)、旭硝子(株)製のS−111,S−112,S−113,S−121,S−131,S−132(以上イオン性)、S−141,S−145(以上非イオン性)、ダイキン工業(株)製のユニダインDS−101,DS−102,DS−202、DS−301(以上イオン性)、DS−401,DS−403(以上非イオン性)等を挙げる事ができる。また、上記の種々の化合物のうちイオン性の界面活性剤はその使用目的、必要とされる諸特性等によってイオン交換あるいは中和等の手段で種々の異なる塩の形で、または1種または2種以上の対イオン存在下で用いることができる。
【0025】
本発明においては、下記一般式(a1)で表されるフッ素化合物(A)を用いることが好ましい。
【0026】
【化22】
【0027】
前記一般式(a1)中、Rは置換または無置換のアルキル基を表す。Rで表される置換または無置換のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、また環状構造を有していてもよい。
【0028】
前記置換基としては、どんな置換基でもよいが、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子(好ましくはCl)、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、燐酸エステル基等が好ましい。
【0029】
Rは、置換基としてフッ素を有しない方が好ましく、無置換アルキル基がより好ましい。Rは、炭素数が2以上であるのが好ましく、4以上がより好ましく、6以上がさらに好ましい。
【0030】
Rafはパーフルオロアルキレン基を表す。ここで、パーフルオロアルキレン基とは、アルキレン基の水素原子が全てフッ素置換された基をいう。前記パーフルオロアルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、また環状構造を有していてもよい。Rafは、炭素数が10以下であるのが好ましく、8以下であるのがより好ましい。最も好ましくは炭素数4のパーフルオロアルキレン基である。
【0031】
Wは、水素原子またはフッ素原子を表すが、フッ素原子であることが好ましい。
Laは、置換もしくは無置換のアルキレン基または置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、あるいはこれらを組み合わせてできる2価基を表す。置換基はRで挙げたものが好ましい。Laは、炭素数が4以下であるのが好ましく、また、無置換アルキレンであるのが好ましい。
【0032】
本発明に係わるフッ素化合物が、Rafの炭素数が異なる化合物の混合物であるときは、Rafの炭素数が4である化合物(C4体)の割合が多い方が好ましい。C4体の混合物中の割合は好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0033】
一般に、C6以上のRafを有する化合物が多く含まれると、水に対する溶解性が悪くなるため、C6以上の成分は少ないほうが好ましい。また、C3以下の成分が含まれると、静的表面表力を下げる効果がC4体に比べて小さくなるため、C3以下の成分は少ないほうが好ましい。
【0034】
AおよびBは、一方が水素原子を、もう一方が−Lb−SO3Mを表し、Mはカチオンを表す。
ここで、Mで表されるカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン等が好ましく例示される。
これらのうち、より好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはアンモニウムイオンであり、さらに好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンであり、一般式(a1)で表されるフッ素化合物(A)の総炭素数や置換基、アルキル基の分岐の程度等により適切に選択することができる。
【0035】
R、LaおよびRafの炭素数の合計が16以上の場合、リチウムイオンであることが溶解性(特に水に対して)と帯電防止能または塗布均一性の両立の観点で優れている。
Lbは、単結合または置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。置換基はRで挙げたものが好ましい。Lbがアルキレン基である場合、C数は2以下であるのが好ましく、無置換であるのが好ましく、メチレン基であるのがより好ましい。
Lbは、単結合であるのが最も好ましい。
【0036】
上記一般式(a1)は、上記のそれぞれの好ましい態様を組み合わせることが、より好ましい。
一般式(a1)は、さらに下記一般式(a2)で表されるのが好ましい。
【0037】
【化23】
【0038】
前記一般式(a2)中、R1は総炭素数6以上の置換または無置換のアルキル基を表す。但し、R1はフッ素原子で置換されたアルキル基になることはない。R1で表される置換または無置換のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、また環状構造を有していてもよい。
前記置換基としては、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素以外のハロゲン原子、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、燐酸エステル基等が挙げられる。
【0039】
R1で表される置換または無置換のアルキル基は、総炭素数が6〜24であるのが好ましい。炭素数6〜24の無置換アルキル基の好ましい例としては、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、2−オクチルドデシル基、ドコシル基、テトラコシル基、2−デシルテトラデシル基、トリコシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
また、置換基の炭素も含めた総炭素数が6〜24の置換アルキル基の好ましい例としては、2−ヘキセニル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基、ベンジル基、β−フェネチル基、2−メトキシエチル基、4−フェニルブチル基、4−アセトキシエチル基、6−フェノキシヘキシル基、12−フェニルドデシル基、18−フェニルオクタデシル基、12−(p−クロロフェニル)ドデシル基、2−(燐酸ジフェニル)エチル基等を挙げることができる。
【0040】
R1で表される置換または無置換のアルキル基は、総炭素数が6〜18であるのがより好ましい。炭素数6〜18の無置換アルキル基の好ましい例としては、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
また、置換基の炭素数を含む総炭素数が6〜18の置換アルキル基の好ましい例としては、フェネチル基、6−フェノキシヘキシル基、12−フェニルドデシル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基等が挙げられる。
【0041】
中でも、R1としては、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基であるのがさらに好ましく、炭素数8〜16の直鎖、環状または分岐の無置換アルキル基であるのが特に好ましい。
【0042】
前記一般式(a2)中、Rfは炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を表す。
ここで、パーフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子が全てフッ素置換された基をいう。前記パーフルオロアルキル基中のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、また環状構造を有していてもよい。
Rfで表されるパーフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基、ウンデカフルオロ−n−ペンチル基、トリデカフルオロ−n−ヘキシル基、ウンデカフルオロシクロヘキシル基等が挙げられる。
中でも、炭素数2〜4のパーフルオロアルキル基(例えば、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基等)が好ましく、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基が特に好ましい。
【0043】
前記一般式(a2)中、nは1以上の整数を表す。好ましくは1〜4の整数であり、特に好ましくは1または2である。
また、nとRfの組合せとして、n=1の場合にはRfがヘプタフルオロ−n−プロピル基またはノナフルオロ−n−ブチル基、n=2の場合にはRfがノナフルオロ−n−ブチル基であることがさらに好ましい。
【0044】
前記一般式(a2)中、X1およびX2は、一方が水素原子を、もう一方がSO3Mを表し、Mはカチオンを表す。
ここで、Mで表されるカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン等が好ましく例示される。これらのうち、特に好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンである。
【0045】
前記一般式(a1)で表されるフッ素化合物(A)の好ましい具体例を以下に例示するが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
尚、以下では便宜上、BがSO3Mであり、Aが水素原子である例示化合物を示すが、下記の例示化合物においてBが水素原子であり、AがSO3Mであってもよく、それらの化合物もフッ素化合物(A)の具体例として挙げられる。
下記例示化合物の構造表記の中で特に断りのない限り、アルキル基、パーフルアロアルキル基は直鎖構造を有する基を意味する。さらに、構造表記中の略号のうち、2EHは2−エチルヘキシル基を表し、2BOは2−ブチルオクチル基を表す。
【0046】
【化24】
【0047】
【化25】
【0048】
【化26】
【0049】
【化27】
【0050】
【化28】
【0051】
【化29】
【0052】
【化30】
【0053】
【化31】
【0054】
前記一般式(a1)で表されるフッ素化合物(A)は、一般的なエステル化反応およびスルホン化反応を組み合わせて容易に合成することができる。
【0055】
本発明においてフッ素化合物(B)とは、炭素原子数が2以上でフッ素原子数が11以下のフッ化アルキル基を2つ以上有しかつアニオン性またはノニオン性の親水性基の少なくとも一方を有する化合物である。フッ素化合物(B)は、上記フッ化アルキル基2つ以上と、アニオン性親水基またはノニオン性親水基の少なくともいずれかを有していれば、その他の構造は特に制限されない。
本発明の上記フッ化アルキル基はフッ素原子数が11以下であるが、好ましくは3〜9の範囲で、より好ましくは5〜9の範囲である。また、炭素原子数は2以上であるが、好ましくは2〜16、より好ましくは4〜12の範囲である。
【0056】
本発明のフッ化アルキル基は好ましくは下記一般式(c)で表される基である。
一般式(c)
−La−Raf−W
一般式(c)においてLaは、置換もしくは無置換のアルキレン基または置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、あるいはこれらを組み合わせてできる2価基を表す。前記の置換基としては、どのような基でもよいが、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子(好ましくはCl)、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、リン酸エステル基が好ましい。
Laは、炭素数が8以下であるのが好ましく、4以下がより好ましい。また、無置換アルキレン基であるのが好ましい。Rafは炭素数1〜5パーフルオロアルキレン基を表し、好ましくは炭素数2〜4のパーフルオロアルキレン基、最も好ましくは炭素数4のパーフルオロアルキレン基である。ここでパーフルオロアルキレン基とはアルキレン基のすべての水素原子がフッ素原子で置き換えられたアルキレン基を言う。前記パーフルオロアルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、また環状構造を有していてもよい。Wは水素原子、フッ素原子またはアルキル基を表し、好ましくは水素原子またはフッ素原子である。
本発明に係わるフッ素化合物が、Rafの炭素数が異なる化合物の混合物であるときは、Rafの炭素数が4である化合物(C4体)の割合が多い方が好ましい。C4体の混合物中の割合は好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。一般に、C6以上のRafを有する化合物が多く含まれると、水に対する溶解性が悪くなるため、C6以上の成分は少ないほうが好ましい。また、C3以下の成分が含まれると、静的表面表力を下げる効果がC4体に比べて小さくなるため、C3以下の成分は少ないほうが好ましい。
【0057】
本発明で用いられるフッ化アルキル基の具体例としては、−C2F5基、−C3F7基、−C4F9基、−C5F11基、−CH2−C4F9基、−C4F8−H基、−C2H4−C4F9基、−C4H8−C4F9基、−C6H12−C4F9基、−C8H16−C4F9基、−C4H8−C2F5基、−C4H8−C3F7基、−C4H8−C5F11基、−C8H16−C2F5基、−C2H4−C4F8−H基、−C4H8−C4F8−H基、−C6H12−C4F8−H基、−C6H12−C2F4−H基、−C8H16−C2F4−H基、−C6H12−C4F8−CH3基、−C2H4−C3F7基、−C2H4−C5F11基、−C4H8−CF(CF3)2基、−CH2CF3基−C4H8−CH(C2F5)2基、−C4H8−CH(CF3)2基、−C4H8−C(CF3)3基が挙げられるが、本発明で採用しうるフッ化アルキル基はこれらに限定されるものではない。
【0058】
アニオン性の親水基とはpKaが7以下の酸性基およびそのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩を言う。具体的には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホン酸基、カルバモイルスルファモイル基、スルファモイルスルファモイル基、アシルスルファモイル基およびこれらの塩類などが挙げられる。このうち、好ましくはスルホ基、カルボキシル基、ホスホン酸基およびその塩類で、より好ましくはスルホ基およびその塩類である。塩類を形成するカチオン種としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルピリジニウムなどが挙げられるが、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムである。
ノニオン性の親水基の具体例としては水酸基、ポリアルキレンオキシ基が挙げられ、ポリアルキレンオキシ基が好ましい。
【0059】
ポリアルキレンオキシ基と上記のアニオン性親水基を同一分子内に同時に有していてもよく、本発明においては好ましい構造である。また、アニオン性の化合物とノニオン性の化合物を併用するのも効果的な使い方で特に好ましい。
本発明においてより好ましいフッ素化合物(B)は下記一般式(b1)で表される。
【0060】
【化32】
【0061】
前記一般式(b1)中、R1およびR2はそれぞれ独立に炭素原子数が2以上でフッ素原子数が11以下のフッ化アルキル基を表し、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子または置換または無置換のアルキル基を表す。
R1およびR2で表されるフッ化アルキル基の具体例は前述の基があげられ、好ましい構造も同様に前述の一般式(c)で表される構造である。また、その中での好ましい構造も前述のフッ化アルキル基の記載と同様である。
R3およびR4で表される置換または無置換のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、また環状構造を有していてもよい。前記置換基としては、どんな置換基でもよいが、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子(好ましくはCl)、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、燐酸エステル基等が好ましい。
AおよびBは、一方が水素原子を、もう一方が−Lb−SO3Mを表し、Mはカチオンを表す。ここで、Mで表されるカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン等が好ましく例示される。これらのうち、より好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはアンモニウムイオンであり、さらに好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンであり、一般式(C)の化合物の総炭素数や置換基、アルキル基の分岐の程度等により適切に選択することができる。R1、R2、R3およびR4の炭素数の合計が16以上の場合、リチウムイオンであることが溶解性(特に水に対して)と帯電防止能または塗布均一性の両立の観点で優れている。
Lbは、単結合または置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。置換基はR3およびR4の説明で挙げたものが好ましい。Lbがアルキレン基である場合、炭素数は2以下であるのが好ましく、無置換であるのが好ましく、メチレン基であるのがより好ましい。Lbは、単結合であるのが最も好ましい。
上記一般式(b1)は、上記のそれぞれの好ましい態様を組み合わせることが、より好ましい。一般式(b1)は、さらに下記一般式(b2)で表されるのが好ましい。
【0062】
【化33】
【0063】
前記一般式(b2)中、R1およびR2はそれぞれ独立に上記一般式(c)で表されるフッ化アルキル基を表す。R1およびR2で表されるフッ化アルキル基の具体例は前述の基があげられ、好ましい構造も同様に前述の一般式(c)の説明で記載した好ましい構造と同じである。
【0064】
前記一般式(b2)中、XはSO3Mを表し、Mはカチオンを表す。ここで、Mで表されるカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン等が好ましく例示される。これらのうち、特に好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンである。
【0065】
フッ素化合物(B)の具体例を以下に例示するが、本発明で用いることができるフッ素化合物(B)は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。下記例示化合物の構造表記の中で特に断りのない限りアルキル基、パーフルオロアルキル基は直鎖の構造を有する基を意味する。
【0066】
【化34】
【0067】
【化35】
【0068】
【化36】
【0069】
【化37】
【0070】
【化38】
【0071】
【化39】
【0072】
【化40】
【0073】
【化41】
【0074】
【化42】
【0075】
前記一般式(b1)および(b2)で表されるフッ素化合物は、一般的なエステル化反応およびスルホン化反応を組み合わせて容易に合成することができる。本発明で用いるフッ素化合物は、界面活性剤として、熱現像画像記録材料を構成している層(特に、保護層や下塗り層、バック層など)を形成するための塗布組成物に好ましく用いられる。中でも、熱現像画像記録材料の最上層の親水性コロイド層の形成に用いると、効果的な帯電防止能と塗布の均一性を得ることができるので特に好ましい。
【0076】
本明細書におけるF/C比は、島津製作所(株)製ESCA750型(X線源:MgKα)装置を用い、F1s、C1sのエネルギーのピーク強度を測定し、下記の計算式で求めた値である。
【数1】
F/C比は、フッ素化合物の含有量を適宜変えることによりコントロールできる。本発明に係るフッ素化合物を適用することが最も好ましい。また、熱現感光材料両面のF/C比を求めることにより相互の面へのフッ素化合物の転写の状態を知ることもできる。
【0077】
本発明においては、本発明に係るフッ素化合物の1種類を単独で用いてもよいし、また2種類以上を混合して用いてもよい。また、本発明に係るフッ素化合物とともに他の界面活性剤を用いてもよい。併用可能な界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の各種界面活性剤を挙げることができる。また併用する界面活性剤は、高分子界面活性剤であってもよく、本発明に係るフッ素化合物以外のフッ素系界面活性剤であってもよい。併用する界面活性剤としては、アニオン系もしくはノニオン系活性剤がより好ましい。
本発明におけるフッ素化合物の使用量については特に制約はなく、用いる化合物の構造や用いる場所、組成物中に含まれる他の素材の種類や量などに応じて、その使用量を任意に決定することができる。
好ましい使用量は、0.001〜0.5g/m2、さらに好ましくは、0.001〜0.1g/m2である。
【0078】
次に、下記一般式(FA)で表されるフッ素化合物(FA)について説明する。
【0079】
【化43】
【0080】
式中、R1およびR2はそれぞれ置換または無置換のアルキル基を表すが、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R3、R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、X1、X2およびZはそれぞれ独立に2価の連結基または単結合を表し、M+はカチオン性の置換基を表す。Y−は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY−はなくてもよい。mは0または1である。
【0081】
前記一般式(FA)中、R1およびR2はそれぞれ置換または無置換のアルキル基を表す。前記アルキル基は、炭素数1以上であって、直鎖状、分岐鎖状および環状のいずれであってもよい。前記置換基としては、ハロゲン原子、アルケニル基、アリール基、アルコキシル基、フッ素以外のハロゲン原子、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、燐酸エステル基等が挙げられる。但し、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基(以下、フッ素原子で置換されたアルキル基を「Rf」という)を表す。
【0082】
Rfは、炭素数1以上の少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基であり、Rfは少なくとも1つのフッ素原子で置換されていればよく、直鎖状、分岐状および環状のいずれの構造であってもよい。また、フッ素原子以外の置換基でさらに置換されていてもよいし、フッ素原子のみで置換されていてもよい。Rfのフッ素原子以外の置換基としては、アルケニル基、アリール基、アルコキシル基、フッ素以外のハロゲン原子、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、燐酸エステル基等が挙げられる。
【0083】
Rfとしては、炭素数1〜16のフッ素置換アルキル基が好ましく、炭素数1〜12がより好ましく、炭素数4〜10がさらに好ましい。Rfの好ましい例としては、以下のものが挙げられる。
【0084】
【化44】
【0085】
Rfとしてさらに好ましくは、末端がトリフルオロメチル基で置換された炭素数4〜10のアルキル基であり、特に好ましくは−(CH2)n1−(CF2)n2Fで表される炭素数3〜10のアルキル基である(n1は1〜6の整数を表す。n2は3〜8の整数を表す)。具体的には、−CH2−(CF2)2F、−(CH2)6−(CF2)4F、−(CH2)3−(CF2)4F、−CH2−(CF2)3F、−(CH2)2−(CF2)4F、−(CH2)3−(CF2)4F、−(CH2)6−(CF2)4F、−(CH2)2−(CF2)6F、−(CH2)3−(CF2)6F、−(CH2)2−(CF2)6F等が挙げられる。これらの中でも、特に、−(CH2)2−(CF2)4Fおよび−(CH2)2−(CF2)6Fが最も好ましい。
【0086】
前記一般式(FA)中、R1およびR2の双方がRfを表すのが好ましい。
【0087】
R1およびR2がそれぞれRf以外のアルキル基、即ち、フッ素原子で置換されていないアルキル基を表す場合、該アルキル基としては、炭素数1〜24の置換または無置換のアルキル基、より好ましくは炭素数6〜24の置換または無置換のアルキル基である。炭素数6〜24の無置換アルキル基の好ましい例としては、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、2−オクチルドデシル基、ドコシル基、テトラコシル基、2−デシルテトラデシル基、トリコシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。また、置換基を有する総炭素数が6〜24のアルキル基の好ましい例としては、2−ヘキセニル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基、ベンジル基、β−フェネチル基、2−メトキシエチル基、4−フェニルブチル基、4−アセトキシエチル基、6−フェノキシヘキシル基、12−フェニルドデシル基、18−フェニルオクタデシル基、12−(p−クロロフェニル)ドデシル基、2−(燐酸ジフェニル)エチル基等を挙げることができる。
【0088】
R1およびR2でそれぞれ表されるRf以外のアルキル基としては、さらに好ましくは炭素数6〜18の置換または無置換のアルキル基である。炭素数6〜18の無置換のアルキル基の好ましい例としては、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基等が挙げられる。また、置換基を有する総炭素数が6〜18の置換アルキル基の好ましい例としては、フェネチル基、6−フェノキシヘキシル基、12−フェニルドデシル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基等が挙げられる。
【0089】
R1およびR2でそれぞれ表されるRf以外のアルキル基としては、特に好ましくは、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基であり、最も好ましくは炭素数8〜16の直鎖状、環状または分岐状の無置換アルキル基である。
【0090】
前記一般式(FA)中、R3、R4およびR5はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。該置換基としては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12アシル基であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基はさらに置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0091】
R3、R4およびR5としては、好ましくはアルキル基または水素原子であり、さらに好ましくは水素原子である。
【0092】
前記式中、X1およびX2はそれぞれ2価の連結基または単結合を表す。前記2価の連結基については特に制約はないが、好ましくはアリーレン基、−O−、−S−または−NR31−(R31は水素原子または置換基を表し、置換基としてはR3、R4およびR5がそれぞれ表す置換基の例と同様であり、−R31として好ましくは、アルキル基、前述のRfまたは水素原子であり、さらに好ましくは水素原子である)を単独またはそれらを組合せて得られる基であり、より好ましくは−O−、−S−または−NR31である。X1およびX2としてより好ましくは、−O−または−NR31−であり、さらに好ましくは−O−または−NH−であり、特に好ましくは−O−である。
【0093】
前記式中、Zは2価の連結基または単結合を表す。前記2価の連結基については特に制約はないが、好ましくはアルキレン基、アリーレン基、−C(=O)―、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)2−または−NR32−(R32は水素原子または置換基を表し、置換基としてはR3、R4およびR5が表す置換基の例と同様であり、R32として好ましくはアルキル基または水素原子であり、さらに好ましくは水素原子である)を単独またはそれらを組合せて得られる基であり、より好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、−C(=O)―、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)2−または−NR32−を単独またはそれらを組合せて得られる基である。Zとしてさらに好ましくは、炭素数1〜8のアルキレン基、−C(=O)―、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)2−または−NR32−を単独またはそれらを組合せて得られる基であり、例えば、以下のものが挙げられる。
【0094】
【化45】
【0095】
前記式中、M+はカチオン性の置換基を表し、M+として好ましくは、有機のカチオン性置換基であり、より好ましくは窒素または燐原子を含む有機カチオン性基である。さらに好ましくはピリジニウムカチオンまたはアンモニウムカチオンであり、より好ましくは下記一般式(2)で表されるトリアルキルアンモニウムカチオンである。
【0096】
【化46】
【0097】
前記式中、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に置換または無置換のアルキル基を表す。該置換基としては前記R3、R4およびR5の置換基として挙げたものが適用できる。また、R13、R14およびR15は可能な場合にはお互いが結合して環を形成してもよい。R13、R14およびR15として好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、メチルカルボキシル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0098】
前記式中、Y−は対アニオンを表し、無機アニオンでも有機アニオンでもよい。また、分子内で荷電が0になる場合にはY−はなくてもよい。無機アニオンとして好ましくは、ヨードイオン、臭素イオン、塩素イオン等が挙げられ、有機アニオンとして好ましくは、p−トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等が挙げられる。Y−としてより好ましくは、ヨードイオン、p−トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオンであり、さらに好ましくはp−トルエンスルホン酸である。
【0099】
前記式中、mは0または1を表し、好ましくは0である。
【0100】
上記一般式(FA)で表される化合物の中でも、下記一般式(FA−a)で表される化合物が好ましい。
【0101】
【化47】
【0102】
式中、R11およびR21はそれぞれ置換または無置換のアルキル基を表すが、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、R11とR21の炭素数の総計は19以下である。R13、R14およびR15はそれぞれ独立に置換または無置換のアルキル基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。X11およびX21はそれぞれ独立に−O−、−S−または−NR31−を表し、R31は水素原子または置換基を表し、Zは2価の連結基または単結合を表す。Y−は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY−はなくてもよい。
【0103】
mは0または1である。式中、ZおよびY−はそれぞれ上記一般式(FA)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。R13、R14、R15およびmについては、それぞれ上記一般式(FA)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0104】
式中、X11およびX12はそれぞれ−O−、−S−または−NR31−(R31は水素原子または置換基を表し、該置換基としては前記R3、R4およびR5の置換基として挙げたものが適用できる。R31として好ましくはアルキル基、前述のRf、または水素原子であり、さらに好ましくは水素原子である)である。X11およびX21としてより好ましくは−O−、−NH−であり、さらに好ましくは−O−である。
【0105】
前記式中、R11およびR21はそれぞれ一般式(FA)におけるR1およびR2と同義であり、好ましい範囲も同様である。ただし、R11およびR21の炭素数の総計は19以下である。mは0または1である。
【0106】
上記一般式(FA)で表される化合物の中でも、下記一般式(FA−b)で表される化合物が好ましい。
【0107】
【化48】
【0108】
式中、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に置換または無置換のアルキル基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。Zは2価の連結基を表し、AおよびBはそれぞれフッ素原子または水素原子を表す。n1は1〜6の整数を表し、n2は3〜8の整数を表す。Y−は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY−はなくてもよい。式中、ZおよびY−はそれぞれ上記一般式(1)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。R13、R14、R15およびmについては、それぞれ上記一般式(1)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。AおよびBは、好ましくは、フッ素原子である。
【0109】
上記一般式(FA)で表される化合物の中でも、下記一般式(FA−c)で表される化合物がさらに好ましい。
【0110】
【化49】
【0111】
式中、n1は1〜6の整数を、n2は3〜8の整数を表すが2(n1+n2)は19以下である。R13、R14およびR15はそれぞれ独立に置換または無置換のアルキル基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。X11およびX21はそれぞれ独立に−O−、−S−または−NR31−を表す。R31は水素原子または置換基を表し、Zは2価の連結基または単結合を表す。Y−は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY−はなくてもよい。mは0または1である。
【0112】
式中、ZおよびY−はそれぞれ上記一般式(1)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。R13、R14、R15およびmについては、それぞれ上記一般式(1)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0113】
n1は1〜6の整数を表し、好ましくは1〜3の整数を表し、さらに好ましくは2または3を表し、最も好ましくは2である。n2は3〜8の整数を表し、より好ましくは、3〜6であり、さらに好ましくは4〜6である。n1およびn2の好ましい組合せとしては、n1が2または3で、且つn2は4または6であるのが好ましい。
【0114】
上記一般式(FA)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は、以下の具体例によってなんら制限されるものではない。なお、下記例示化合物の構造表記の中で特に断りのない限り、アルキル基、パーフルアロアルキル基は直鎖の構造を意味する。また、表記中の略号の内2EHは、2−ethylhexylを意味する。
【0115】
【化50】
【0116】
【化51】
【0117】
【化52】
【0118】
【化53】
【0119】
【化54】
【0120】
【化55】
【0121】
【化56】
【0122】
【化57】
【0123】
【化58】
【0124】
【化59】
【0125】
【化60】
【0126】
【化61】
【0127】
【化62】
【0128】
【化63】
【0129】
次に、本発明の上記一般式(FA)、(FA−a)、(FA−b)および(FA−c)で表される化合物の一般的な合成法の一例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の化合物は、フマル酸誘導体、マレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体、グルタミン酸誘導体、アスパラギン酸誘導体等を原料にして合成できる。例えば、フマル酸誘導体、マレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体を原料とした場合は、それらの2重結合に、求核種によるマイケル付加反応を行った後、アルキル化剤によるカチオン化を行うことにより合成できる。
【0130】
本発明に用いられる染料含有層の露光波長における透過吸光度は0.4以上であり、0.6以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。透過吸光度が670nmにおいて0.22以下であることから目視上の着色が問題無いレベルに抑えられるので上限については特に限定されない。
【0131】
本発明に用いられる染料含有層は、露光する側から見て記録層よりも下側、すなわち露光の際にドラムまたはフラットベッド表面に近い部分に塗設する。具体的には、透明支持体をはさんで記録層の塗設してある面と反対側の面に塗設する方法と、記録層と透明支持体の間に塗設する方法とがある。
【0132】
本発明に用いられる染料含有層には、水酸基含有率2.5質量%以上の高分子化合物を含有せしめることが好ましい。水酸基含有率2.5質量%以上の高分子化合物としては任意のものを用いることができるが、特に水酸基含有率2.5質量%以上の部分エステル化セルロース誘導体が好ましい。具体的にはイーストマンケミカル社製セルロースアセテートブチレートCAB−553−0.4、イーストマンケミカル社製セルロースアセテートプロピオネートCAP504−0.2、CAP−482−0.5、イーストマンケミカル社製セルロースアセテートCA398−3、CA398−6、CA398−10、CA398−30、CA394−60S等が挙げられるが、これに限定されることは無い。水酸基含有率は2.5質量%以上が好ましく、2.5質量%〜17質量%がより好ましく、3質量%〜17質量%がさらに好ましい。水酸基含有率が17質量%を超えると塗膜の吸湿耐性が劣化することがある。水酸基含有率が2.5質量%以上の高分子化合物の含有量は任意であるが50質量%以上が好ましく、50質量%〜99質量%がより好ましく、60質量%〜99質量%がさらに好ましい。
【0133】
尚、上記における水酸基含有率は下式のように定義される。
水酸基含有率(質量%)={〔高分子化合物(または、部分エステル化セルロース誘導体)に含まれる水酸基の質量〕/〔該高分子化合物(または、該部分エステル化セルロース誘導体)の質量〕}×100また、本発明の染料含有層には、分子内にフェノール性水酸基を有するビニル系モノマーを構成モノマーとして有するビニル系重合体を含有せしめることが好ましい。分子内にフェノール性水酸基を有するビニル系モノマーとしては、ビニルフェノール、ハロゲン置換ビニルフェノール、4−ヒドロキシフェニルメタクリレート、4−ヒドロキシフェニルアクリレート、4−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド等が挙げられるが、これに限定されることは無い。
【0134】
これら分子内にフェノール性水酸基を有するビニル系モノマーを構成モノマーとして有するビニル系重合体は、単一重合によるホモポリマーでも、他の共重合可能なビニル系モノマーとの共重合によるコポリマーでも使用が可能である。コポリマーを使用する際には、分子内にフェノール性水酸基を有するビニル系モノマーと共重合させるビニル系モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、N−メチロールメタクリルアミド、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイン酸、無水マレイン酸、酢酸ビニル等が好ましい。
【0135】
分子内にフェノール性水酸基を有するビニル系モノマーを構成モノマーとして有するビニル系重合体の具体例としては、丸善化学製マルカリンカーシリーズの内、Mタイプ、CMMタイプ、CHMタイプ、MBタイプ、PHMCタイプ、CSTタイプ、CBAタイプ等が挙げられるが、これに限定されることは無い。分子内にフェノール性水酸基を有するビニル系モノマーを構成モノマーとして有するビニル系重合体の含有量は任意であるが、5質量%以上が好ましく、5質量%〜50質量%がより好ましい。含有量が大きくなりすぎると塗膜の透明性が不十分となることがある。
【0136】
また、本発明に用いられる染料含有層には、分子内にアルコール性水酸基を有するビニル系モノマーを構成モノマーとして有するビニル系重合体を含有せしめることが好ましい。分子内にアルコール性水酸基を有するビニル系モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、N−メチロールメタクリルアミド、ビニルアルコール等が挙げられるが、これに限定されることは無い。
【0137】
これら分子内にアルコール性水酸基を有するビニル系モノマーを構成モノマーとして有するビニル系重合体は、単一重合によるホモポリマーでも、他の共重合可能なビニル系モノマーとの共重合によるコポリマーでも使用が可能である。コポリマーを使用する際には、分子内にアルコール性水酸基を有するビニル系モノマーと共重合させるビニル系モノマーは、その共重合が可能な範囲で任意であるが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイン酸、無水マレイン酸、酢酸ビニル等が好ましい。
【0138】
分子内にアルコール性水酸基を有するビニル系モノマーを構成モノマーとして有するビニル系重合体の含有量は任意であるが、10質量%以上が好ましく、10質量%〜50質量%がより好ましい。含有量が50質量%を超えると塗膜の透明性が不十分となることがある。
【0139】
また、上述の水酸基含有率2.5%以上の部分エステル化セルロース誘導体、フェノール性水酸基を有するビニル系モノマーを構成モノマーとして有するビニル系重合体、分子内にアルコール性水酸基を有するビニル系モノマーを構成モノマーとして有するビニル系重合体は任意に組み合わせて使用することができる。
【0140】
本発明に用いられる染料含有層には、以上述べてきた高分子化合物類の他にも、バインダーとして機能する高分子化合物を含有せしめることができる。バインダーとして機能する高分子化合物の種類は任意であるが、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテート等のセルロースエステル類、ポリビニルブチラール類、ポリエステル類、ビニル系ポリマー類が好ましく使用できる。ビニル系ポリマー類としては、アクリル−メタクリル系ラテックス、スチレン−ブタジエン系ラテックスも好ましく使用可能である。
【0141】
本発明に用いられる染料含有層に用いる染料はシアニン染料もしくはポリメチン染料が好ましい。さらに好ましくは一般式〔1〕で表されるシアニン染料が挙げられる。一般式〔1〕で表されるシアニン染料の具体例としては例えば下記構造を有するDA1〜DA11の化合物が挙げられるが、これに限定されることはない。また、一般式〔2〕で表されるポリメチン染料および一般式〔3〕で表されるポリメチン染料も好ましい。一般式〔2〕で表されるポリメチン染料の具体例としては例えば下記構造を有するDB1〜DB5の化合物が挙げられるが、これに限定されることはない。一般式〔3〕で表されるポリメチン染料の具体例としては例えば下記構造を有するDC1〜DC3の化合物が挙げられるが、これに限定されることはない。
【0142】
【化64】
【0143】
【化65】
【0144】
【化66】
【0145】
【化67】
【0146】
本発明の染料含有層に含有せしめる本発明の一般式〔1〕で表されるシアニン染料、一般式〔2〕で表されるポリメチン染料、一般式〔3〕で表されるポリメチン染料の含有量は、該染料含有層の露光波長における透過吸光度が0.4以上となる量である。好ましくは該透過吸光度が0.6以上、さらに好ましくは0.8以上となる量である。
【0147】
本発明の染料含有層には,必要に応じて、ノニオン系、カチオン系、アニオン系の界面活性剤を使用することができる。特に各系においてフッ素系界面活性剤も好ましく使用することができる。また、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、マット剤、隣接層との接着剤、相溶化剤、充填材等を含有せしめることができる。
【0148】
本発明の染料含有層は、各材料を溶剤中に溶解し、支持体または下引きを施した支持体に塗布し、乾燥して付設することができるが、溶剤に溶解しない素材は分散状態で塗布乾燥することも可能である。溶媒にはメチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、トルエン、酢酸エチル、エタノール、メタノール、水等、およびそれらの混合物が好ましく使用できるが、これらに限定されることは無い。
【0149】
本発明の熱現像画像記録材料には、支持体の画像記録層がある側の最外層または支持体の画像記録層がある側とは反対側の最外層として、保護層を設けることができる。保護層のバインダーとして疎水性の樹脂またはラテックスを用いる場合に、好ましく使用可能な樹脂として、変性セルロースが挙げられる。変性セルロースとしては、セルロースの水酸基を脂肪酸エステルに変性した樹脂が特に好ましい。この際、「セルロースの脂肪酸エステル」中の脂肪酸エステル部分の含有率が40質量%以上であることが、最外層の水との接触角を増大させる効果が得られるうえから好ましい。また、好ましい脂肪酸エステルとして、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル等が挙げられるが、これに限定はされない。
【0150】
他の好ましく使用可能なラテックスとして、「アルキルアクリレートおよびアルキルメタアクリレートから選ばれる少なくとも1種」を構成モノマーとして含有するラテックスが挙げられる。さらに、該ラテックスの「アルキルアクリレートおよびアルキルメタアクリレートから選ばれる少なくとも1種」の共重合比率が75質量%以上であることが、接触角を増大させる効果が得られるうえから好ましい。該「アルキルアクリレートおよびアルキルメタアクリレートから選ばれる少なくとも1種」におけるアルキル基は任意であるが、炭素数1から8の直鎖状、分岐状、環状のアルキルが挙げられる。
【0151】
また、スチレンを構成モノマーとして有するラテックスも好ましく、特にスチレンの共重合比率が10質量%〜50質量%であるものはさらに好ましい。スチレンの共重合比率が10質量%以上であることが、接触角を増大させる効果が得られるうえから好ましく、また50質量%以下であることが、画像記録層との接着性を劣化させない点から好ましい。
【0152】
また、「アルキルアクリレートおよびアルキルメタアクリレートから選ばれる少なくとも1種」とスチレンを共に構成要素として含む共重合ラテックスも好ましい。また、これらのラテックスにおいて使用可能な他の共重合モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸モノマー、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシ基含有モノマー、リン酸エステル系モノマー、アミノ基含有モノマー、4級アンモニウム基含有モノマー等が挙げられるが、これに限定はされない。
【0153】
本発明に用いることのできる硬調化剤の例として、ヒドラジン化合物が挙げられる。好ましく使用できるヒドラジン化合物の例として、特開平11−65020号に記載されているヒドラジン誘導体が挙げられる。また、その他の好ましい例として特開2002−40593の段落[0047]〜[0053]に記載のヒドラジン化合物(H−1−1〜H−4−5)が挙げられる。
【0154】
本発明に用いることのできる、他の硬調化剤の例として、下記一般式(1)で表されるビニル化合物が挙げられる。
【0155】
【化68】
【0156】
〔式中、Xは電子吸引基を表し、但しシアノ基を除く。Rはハロゲン原子、オキシ基、チオ基、アミノ基またはヘテロ環基を表す。Wは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アシル基、チオアシル基、オキサリル基、オキシオキサリル基、−S−オキサリル基、オキサモイル基、オキシカルボニル基、−S−カルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基、−S−スルホニル基、スルファモイル基、オキシスルフィニル基、−S−スルフィニル基、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基、N−スルホニルイミノ基、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基またはインモニウム基を表す。XとW、XとRはそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。XとRは、シス位であっても、トランス位であってもよい。〕
【0157】
一般式(1)において、Xの表す電子吸引基とは、ハメットの置換基定数σp値が正の値を取りうる置換基のことであるが、但しシアノ基は除くものとする。具体的には置換アルキル基(例えば、ハロゲン置換アルキル基等)、置換アルケニル基(例えば、シアノビニル基等)、置換未置換のアルキニル基(例えば、トリフルオロメチルアセチレニル基、シアノアセチレニル基等)、置換アリール基(例えば、シアノフェニル基等)、置換未置換のヘテロ環基(例えば、ピリジル基、トリアジニル基、ベンゾオキサゾリル基等)、ハロゲン原子、アシル基(例えば、アセチル基、トリフルオロアセチル基、ホルミル基等)、チオアシル基(例えば、チオホルミル基、チオアセチル基等)、オキサリル基(例えば、メチルオキサリル基等)、オキシオキサリル基(例えば、エトキサリル基等)、−S−オキサリル基(例えば、エチルチオオキサリル基等)、オキサモイル基(例えば、メチルオキサモイル基等)、オキシカルボニル基(例えば、エトキシカルボニル基、カルボキシル基等)、−S−カルボニル基(例えば、エチルチオカルボニル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、メチルカルバモイル基等)、チオカルバモイル基(例えば、チオカルバモイル基、エチルチオカルバモイル基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基等)、オキシスルホニル基(例えば、メトキシスルホニル基等)、−S−スルホニル基(例えば、エチルチオスルホニル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基等)、オキシスルフィニル基(例えば、メトキシスルフィニル基等)、−S−スルフィニル基(例えば、メチルチオスルフィニル基等)、スルフィナモイル基(例えば、メチルスルフィナモイル基等)、ホスホリル基(例えば、ヂエトキシホスホリル基等)、ニトロ基、イミノ基(例えば、フェニルイミノ基等)、N−カルボニルイミノ基(例えば、N−アセチルイミノ基等)、N−スルホニルイミノ基(例えば、N−メタンスルホニルイミノ基等)、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基等が挙げられるが、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、インモニウム基等が環を形成したヘテロ環状のものも含まれる。σp値として0.30以上のものが好ましい。
【0158】
Wとしては、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、トリフロオロメチル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、ハロゲン置換ビニル基、シアノビニル基等)、アルキニル基(例えば、アセチレニル基、シアノアセチレニル基等)、アリール基(例えば、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等)、ヘテロ環基(例えば、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、スクシンイミド基、テトラゾリル基、トリアゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基等)の他、上記Xで具体的に説明したようなハロゲン原子、アシル基、チオアシル基、オキサリル基、オキシオキサリル基、−S−オキサリル基、オキサモイル基、オキシカルボニル基、−S−カルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基、−S−スルホニル基、スルファモイル基、オキシスルフィニル基、−S−スルフィニル基、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基、N−スルホニルイミノ基、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基等が挙げられる。
【0159】
Wとしてはハメットの置換基定数σp値が正の値をとりうる電子吸引基が好ましく、σp値として0.30以上のものがさらに好ましい。
【0160】
Rとしてはハロゲン原子、オキシ基(例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノカルボニルオキシ基等)、チオ基(例えば、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルケニルチオ基、アルキニルチオ基、アシルチオ基、アルコキシカルボニルチオ基、アミノカルボニルチオ基等)、およびヒドロキシ基、メルカプト基の有機または無機の塩、アミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基、オキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホンアミド基等)、ヘテロ環基(5〜6環の含窒素ヘテロ環基)等が挙げられる。該ヘテロ環基としては5〜6員の含窒素ヘテロ環であり、5〜6員の含窒素ヘテロ芳香環で環内のN原子を通して結合するものが好ましく、ピロール、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾール等から導かれる基で表されるものであり、具体的にはイミダゾール、ベンゾトリアゾール等から導かれる基が好ましい。
【0161】
Rとして好ましくはヒドロキシ基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、ヒドロキシまたはメルカプトの有機または無機塩、ヘテロ環基等が挙げられる。Rとしてさらに好ましくはヒドロキシ基、アルコキシ基、ヒドロキシの有機または無機塩、ヘテロ環基が挙げられ、特にヒドロキシ基、ヒドロキシの有機または無機塩が好ましい。XとW、XとR、WとRは互いに結合して環状構造を形成していてもよく、XとWが形成する環としては例えばピラゾロン、ピラゾリジノン、シクロペンタンジオン、β−ケトラクトン、β−ケトラクタム等が挙げられる。XおよびWで表される置換基中にチオエーテル基(−S−)を含む化合物は好ましい。
【0162】
本発明に好ましく使用できる一般式(1)で表されるビニル化合物の具体例は特開2002−40593号公報の段落[0063]〜[0086)[化17]〜[化40])の化合物1−1〜92−7に記載されている。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0163】
本発明において、さらに他の硬調化剤として、下記一般式(P)で表される4級オニウム化合物および一般式(Na)で表されるアミノ化合物(造核促進剤)が好ましく用いられる。
【0164】
【化69】
【0165】
式中、Qは窒素原子または燐原子を表し、R1、R2、R3およびR4は各々独立に、水素原子または置換基を表し、X−はアニオンを表す。尚、R1〜R4は互いに連結して環を形成してもよい。
【0166】
【化70】
【0167】
一般式〔Na〕において、R11、R12およびR13は各々独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換アリール基、または飽和若しくは不飽和のヘテロ環を表す。R11、R12およびR13で環を形成してもよい。特に好ましくは脂肪族の3級アミン化合物である。これらの化合物は分子中に耐拡散性基またはハロゲン化銀吸着基を有するものが好ましい。耐拡散性を有するためには分子量100以上の化合物が好ましく、さらに好ましくは分子量300以上であり、前記一般式〔H〕におけるAにおける耐拡散基と同義のものが挙げられる。また、好ましい吸着基としては複素環、メルカプト基、チオエーテル基、チオン基、チオウレア基等が挙げられる。
【0168】
一般式〔Na〕で表される造核促進剤よりさらに好ましい造核促進剤として下記一般式〔Na2〕で表される化合物が挙げられる。
【0169】
【化71】
【0170】
一般式〔Na2〕において、R1、R2、R3およびR4は、各々独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アリール基、置換アリール基または飽和若しくは不飽和のヘテロ環を表す。これらは互いに連結して環を形成することができる。又、R1とR2、R3とR4が同時に水素原子であることはない。XはS、SeまたはTe原子を表す。L1およびL2は各々独立に2価の連結基を表す。具体的には、−CH2−、−CH=CH−、−C2H4−、ピリジンジイル、−N(Z1)−(Z1は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す)、−O−、−S−、−(CO)−、−(SO2)−、−CH2N−、またはその組み合わせおよびそれらに適当な置換基(例えばアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、アシルアミノ基、スルホンアミド基等)を有する基が挙げられる。
【0171】
又、L1またはL2で表される連結基は、該連結基中に−[CH2CH2O]−、−[C(CH3)HCH2O]−、−[OC(CH3)HCH2O]−、−[OCH2C(OH)HCH2]−の構造を少なくとも1以上含むことが好ましい。
【0172】
一般式〔Na〕または〔Na2〕で表される造核促進剤の具体例は特開2002−40593号公報の段落0099〜0102のNa−1〜Na−22として記載がある。但し、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0173】
一般式(P)において、R1〜R4で表される置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、アリル基、ブテニル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基、ブチニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、複素環基(例えば、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、ピリジル基、フリル基、チエニル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、スルホラニル基等)、アミノ基等が挙げられる。
【0174】
R1〜R4が互いに連結して形成しうる環としては、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、キヌクリジン環、ピリジン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環等が挙げられる。
【0175】
R1〜R4で表される基はヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基、スルホ基、アルキル基、アリール基等の置換基を有してもよい。
【0176】
R1、R2、R3およびR4としては、水素原子およびアルキル基が好ましい。X−が表すアニオンとしては、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン等の無機および有機のアニオンが挙げられる。
【0177】
さらに好ましくは下記一般式(Pa)、(Pb)または(Pc)で表される化合物、および下記一般式〔T〕で表される化合物である。
【0178】
【化72】
【0179】
式中、A1、A2、A3、A4およびA5は、含窒素複素環を完成させるための非金属原子群を表し、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでもよく、ベンゼン環が縮合しても構わない。A1、A2、A3、A4およびA5で構成される複素環は置換基を有してもよく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、スルファモイル基、カルバモイル基、ウレイド基、アミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表す。A1、A2、A3、A4およびA5の好ましい例としては、5〜6員環(ピリジン、イミダゾール、チオゾール、オキサゾール、ピラジン、ピリミジン等の各環)を挙げることができ、さらに好ましい例としてピリジン環が挙げられる。
【0180】
BPは2価の連結基を表し、mは0または1を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、−SO2−、−SO−、−O−、−S−、−CO−、−N(R6)−(R6はアルキル基、アリール基、水素原子を表す)を単独または組み合わせて構成されるものを表す。Bpとして好ましくは、アルキレン基、アルケニレン基を挙げることができる。
【0181】
R1、R2およびR5は各々独立に、炭素数1〜20のアルキル基を表す。又、R1およびR2は同一でも異っていてもよい。アルキル基とは、置換或いは無置換のアルキル基を表し、置換基としては、A1、A2、A3、A4およびA5の置換基として挙げた置換基と同様である。
【0182】
R1、R2およびR5の好ましい例としては、それぞれ炭素数4〜10のアルキル基である。さらに好ましい例としては、置換或いは無置換のアリール置換アルキル基が挙げられる。
【0183】
Xp−は分子全体の電荷を均衡さすに必要な対イオンを表し、例えば塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、p−トルエンスルホナート、オキザラート等を表す。npは分子全体の電荷を均衡さすに必要な対イオンの数を表し、分子内塩の場合にはnpは0である。
【0184】
【化73】
【0185】
上記一般式〔T〕で表されるトリフェニルテトラゾリウム化合物のフェニル基の置換基R5、R6、R7は水素原子もしくは電子吸引性度を示すハメットのシグマ値(σP)が負のものが好ましい。
【0186】
フェニル基におけるハメットのシグマ値は多くの文献、例えばジャーナル・オブ・メディカルケミストリー(Journal of Medical Chemistry)20巻、304頁、1977年記載のC.ハンシュ(C.Hansch)等の報文等に見ることができ、特に好ましい負のシグマ値を有する基としては、例えばメチル基(σP=−0.17以下何れもσP値)、エチル基(−0.15)、シクロプロピル基(−0.21)、n−プロピル基(−0.13)、イソプロピル基(−0.15)、シクロブチル基(−0.15)、n−ブチル基(−0.16)、イソブチル基(−0.20)、n−ペンチル基(−0.15)、シクロヘキシル基(−0.22)、アミノ基(−0.66)、アセチルアミノ基(−0.15)、ヒドロキシル基(−0.37)、メトキシ基(−0.27)、エトキシ基(−0.24)、プロポキシ基(−0.25)、ブトキシ基(−0.32)、ペントキシ基(−0.34)等が挙げられ、これらは何れも一般式〔T〕の化合物の置換基として有用である。
【0187】
nは1或いは2を表し、XTn−で表されるアニオンとしては、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲンイオン、硝酸、硫酸、過塩素酸等の無機酸の酸根、スルホン酸、カルボン酸等の有機酸の酸根、アニオン系の界面活性剤、具体的にはp−トルエンスルホン酸アニオン等の低級アルキルベンゼンスルホン酸アニオン、p−ドデシルベンゼンスルホン酸アニオン等の高級アルキルベンゼンスルホン酸アニオン、ラウリルスルフェートアニオン等の高級アルキル硫酸エステルアニオン、テトラフェニルボロン等の硼酸系アニオン、ジ−2−エチルヘキシルスルホサクシネートアニオン等のジアルキルスルホサクシネートアニオン、セチルポリエテノキシサルフェートアニオン等の高級脂肪酸アニオン、ポリアクリル酸アニオン等のポリマーに酸根のついたもの等を挙げることができる。
【0188】
以下、一般式(P)で表される4級オニウム化合物は特開2002−40593号公報の段落0119〜0128に具体例P−1〜P−55,T−1〜T−18として記載されている。但し、本発明の化合物はこれらに限定されるものではない。
【0189】
上記4級オニウム化合物は公知の方法に従って容易に合成でき、例えば上記テトラゾリウム化合物は Chemical Reviews55巻335〜483頁に記載の方法を参考にできる。
【0190】
これら4級オニウム化合物の添加量は、ハロゲン化銀1モル当たり1×10−8〜1モル程度、好ましくは1×10−7〜1×10−1モルである。これらはハロゲン化銀粒子形成時から塗布までの任意の時期に感光材料中に添加できる。
【0191】
4級オニウム化合物およびアミノ化合物は、単独で用いても2種以上を適宜併用して用いてもよい。また感光材料の構成層中のいかなる層に添加してもよいが、好ましくは画像記録層を有する側の構成層の少なくとも1層、さらには画像記録層および/またはその隣接層に添加する。
【0192】
本発明において有機銀塩は還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸およびヘテロ有機酸の銀塩、特に長鎖(10〜30、好ましくは15〜25の炭素原子数)の脂肪族カルボン酸および含窒素複素環が好ましい。配位子が、4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機または無機の銀塩錯体も有用である。好適な銀塩の例は、Research Disclosure第17029および29963に記載されており、次のものがある:有機酸の塩(例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の塩);銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩(例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等);アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀錯体(例えば、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等)、ヒドロキシ置換酸類(例えば、サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5,5−チオジサリチル酸))、チオン類の銀塩または錯体(例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン、および3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン)、イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾールおよび1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾールおよびベンゾトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体または塩;サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;およびメルカプチド類の銀塩。好ましい銀源はベヘン酸銀、アラキジン酸および/またはステアリン酸である。
【0193】
有機銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号公報に記載されている様なコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウムなど)を作製した後に、コントロールドダブルジェットにより、前記ソープと硝酸銀などを添加して有機銀塩の結晶を作製する。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよい。
【0194】
本発明におけるハロゲン化銀粒子は光センサーとして機能するものである。本発明においては、画像形成後の白濁を低く抑えるため、および良好な画質を得るために平均粒子サイズが小さい方が好ましく、平均粒子サイズが0.1μm以下、より好ましくは0.01μm〜0.1μm、特に0.02μm〜0.08μmが好ましい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体或いは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。又、正常晶でない場合、例えば球状、棒状、或いは平板状の粒子の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。またハロゲン化銀は単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下をいう。さらに好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1%〜20%となる粒子である。
【0195】
単分散度=(粒子サイズの標準偏差)/(粒子サイズの平均値)×100
本発明においては、ハロゲン化銀粒子が平均粒子サイズ0.1μm以下でかつ単分散粒子であることがより好ましく、この範囲にすることで画像の粒状性も向上する。
【0196】
ハロゲン化銀粒子の形状については、特に制限はないが、ミラー指数〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、さらには70%以上、特に80%以上であることが好ましい。ミラー指数〔100〕面の比率は増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985)により求めることができる。
【0197】
またもう一つの好ましいハロゲン化銀の形状は、平板粒子である。ここでいう平板粒子とは、投影面積の平方根を粒子サイズrμmとして垂直方向の厚みをhμmとした場合のアスペクト比=r/hが3以上のものをいう。その中でも好ましくはアスペクト比が3〜50である。また粒子サイズは0.1μm以下であることが好ましく、さらに0.01μm〜0.08μmが好ましい。これらは米国特許第5,264,337号明細書、第5,314,798号明細書、第5,320,958号明細書等に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。本発明においてこれらの平板状粒子を用いた場合、さらに画像の鮮鋭性も向上する。
【0198】
ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。本発明に用いられる乳剤は、P.Glafkides著Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。
【0199】
本発明に用いられるハロゲン化銀には、照度不軌改良等のために、元素周期律表の6族から10族に属する金属のイオンまたは錯体イオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Au等が好ましい。
【0200】
感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩することができるが本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
【0201】
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は化学増感されていることが好ましい。好ましい化学増感法としては当業界でよく知られているように硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法、金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等の貴金属増感法や還元増感法を用いることができる。
【0202】
本発明においては感光材料の失透を防ぐためには、ハロゲン化銀および有機銀塩の総量は、銀量に換算して1m2当たり0.5g〜2.2gであることが好ましい。この範囲にすることで硬調な画像が得られる。また銀総量に対するハロゲン化銀の量は、質量比で50%以下、好ましくは25%以下、さらに好ましくは0.1%〜15%の間である。
【0203】
本発明の熱現像画像記録材料には還元剤を内蔵させる。好適な還元剤の例は、米国特許第3,770,448号明細書、同3,773,512号明細書、同3,593,863号明細書、およびResearch Disclosure第17029および29963に記載されており、次のものがある。アミノヒドロキシシクロアルケノン化合物(例えば、2−ヒドロキシピペリジノ−2−シクロヘキセノン);還元剤の前駆体としてアミノリダクトン類(reductones)エステル(例えば、ピペリジノヘキソースリダクトンモノアセテート);N−ヒドロキシ尿素誘導体(例えば、N−p−メチルフェニル−N−ヒドロキシ尿素);アルデヒドまたはケトンのヒドラゾン類(例えば、アントラセンアルデヒドフェニルヒドラゾン);ホスファーアミドフェノール類;ホスファーアミドアニリン類;ポリヒドロキシベンゼン類(例えば、ヒドロキノン、tert−ブチル−ヒドロキノン、イソプロピルヒドロキノンおよび(2,5−ジヒドロキシ−フェニル)メチルスルホン);スルフヒドロキサム酸類(例えば、ベンゼンスルフヒドロキサム酸);スルホンアミドアニリン類(例えば、4−(N−メタンスルホンアミド)アニリン);2−テトラゾリルチオヒドロキノン類(例えば、2−メチル−5−(1−フェニル−5−テトラゾリルチオ)ヒドロキノン);テトラヒドロキノキサリン類(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン);アミドオキシン類;アジン類(例えば、脂肪族カルボン酸アリールヒドラザイド類とアスコルビン酸の組み合わせ);ポリヒドロキシベンゼンとヒドロキシルアミンの組み合わせ、リダクトンおよび/またはヒドラジン;ヒドロキサン酸類;アジン類とスルホンアミドフェノール類の組み合わせ;α−シアノフェニル酢酸誘導体;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体の組み合わせ;5−ピラゾロン類;スルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオン等;クロマン;1,4−ジヒドロピリジン類(例えば、2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジン);ビスフェノール類(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(6−ヒドロキシ−m−トリ)メシトール(mesitol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,5−エチリデン−ビス(2−tert−ブチル−6−メチル)フェノール);紫外線感応性アスコルビン酸誘導体および3−ピラゾリドン類。中でも特に好ましい還元剤はヒンダードフェノール類である。ヒンダードフェノール類としては下記一般式(A)で表される化合物が挙げられる。
【0204】
【化74】
【0205】
式中、Rは水素原子、または炭素原子数1〜10のアルキル基(例えば、−C4H9、2,4,4−トリメチルペンチル)を表し、R’およびR”は炭素原子数1〜5のアルキル基(例えば、メチル、エチル、tert−ブチル)を表す。
一般式(A)で表される化合物の具体例として、以下のA−1〜A−7を挙げることができる。但し、本発明で用いることができる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0206】
【化75】
【0207】
【化76】
【0208】
前記一般式(A)で表される化合物を始めとする還元剤の使用量は好ましくは銀1モル当り1×10−2〜10モル、特に1.5×10−2〜1.5モルである。
【0209】
本発明の熱現像画像記録材料に好適なバインダーは透明または半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマーおよびコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルピロリドン、カゼイン、デンプン、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリビニルアセタール類(例えば、ポリビニルホルマールおよびポリビニルブチラール)、ポリエステル類、ポリウレタン類、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリエポキシド類、ポリカーボネート類、ポリビニルアセテート、セルロースエステル類、ポリアミド類がある。親水性でも疎水性でもよいが、本発明においては、熱現像後のカブリを低減させるために、疎水性透明バインダーを使用することが好ましい。好ましいバインダーとしては、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタンなどがあげられる。その中でもポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステルは特に好ましく用いられる。
本発明においては、熱現像の速度を速めるために画像記録層(感光層)のバインダー量が1.5〜10g/m2であることが好ましい。さらに好ましくは1.7〜8g/m2である。1.5g/m2未満では未露光部の濃度が大巾に上昇し、使用に耐えない場合がある。
【0210】
本発明においては、画像記録層側にマット剤を含有することが好ましく、熱現像後の画像の傷つき防止のためには、感光材料の表面にマット剤を配することが好ましく、そのマット剤を画像記録層側の全バインダーに対し、質量比で0.5〜30%含有することが好ましい。また、支持体をはさみ画像記録層の反対側に非感光層を設ける場合は、当該反対側の少なくとも1層中にマット剤を含有することが好ましく、感光材料のすべり性や指紋付着防止のためにも感光材料の表面にマット剤を配することが好ましく、そのマット剤を画像記録層側の反対側の層の全バインダーに対し、質量比で0.5〜40%含有することが好ましい。
【0211】
マット剤の形状は、定形、不定形どちらでも良いが、好ましくは定形で、球形が好ましく用いられる。
【0212】
本発明の熱現像画像記録材料は支持体上に少なくとも一層の画像形成層(感光層)を有している。支持体の上に画像記録層のみを形成しても良いが、画像記録層の上に少なくとも1層の非感光層を形成することが好ましい。画像記録層に通過する光の量または波長分布を制御するために画像記録層と同じ側にフィルター染料層および/または反対側にアンチハレーション染料層、いわゆるバッキング層を形成しても良いし、画像記録層に染料または顔料を含ませても良い。
【0213】
これらの非感光層には前記のバインダーやマット剤を含有することが好ましく、さらにポリシロキサン化合物やワックスや流動パラフィンのようなスベリ剤を含有してもよい。
【0214】
また、本発明の熱現像画像記録材料には、塗布助剤として各種の界面活性剤が用いられる。その中でもフッ素系界面活性剤が、帯電特性を改良したり、斑点状の塗布故障を防ぐために好ましく用いられる。
【0215】
画像記録層(感光層)は複数層にしても良く、また階調の調節のため感度を高感層/低感層または低感層/高感層にしても良い。
【0216】
本発明に用いられる好適な色調剤の例はResearch Disclosure第17029に開示されている。
【0217】
本発明の熱現像材料には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができる。
【0218】
本発明の熱現像画像記録材料中にはカブリ防止剤が含まれて良い。各種の添加剤は画像記録層(感光層)、非感光層、またはその他の形成層のいずれに添加しても良い。本発明の熱現像画像記録材料には例えば、界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、被覆助剤等を用いても良い。これらの添加剤および上述したその他の添加剤はResearch Disclosure 第17029(1978年6月p.9〜15)に記載されている化合物を好ましく用いることができる。
【0219】
本発明で用いられる支持体は、現像処理後に所定の光学濃度を得るため、および現像処理後の画像の変形を防ぐためにプラスチックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ナイロン、セルローストリアセテート、ポリエチレンナフタレート)であることが好ましい。
【0220】
その中でも好ましい支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)およびシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体を含むプラスチック(以下SPSと略す)の支持体が挙げられる。支持体の厚みとしては50〜300μm程度、好ましくは70〜180μmである。
【0221】
また熱処理したプラスチック支持体を用いることもできる。採用するプラスチックとしては、前記のプラスチックが挙げられる。支持体の熱処理とはこれらの支持体を製膜後、画像記録層が塗布されるまでの間に、支持体のガラス転移点より30℃以上高い温度で、好ましくは35℃以上高い温度で、さらに好ましくは40℃以上高い温度で加熱することがよい。但し、支持体の融点を超えた温度で加熱しては本発明の効果は得られない。
【0222】
本発明においては帯電性を改良するために金属酸化物および/または導電性ポリマーなどの導電性化合物を構成層中に含ませることができる。これらはいずれの層に含有させてもよいが、好ましくは下引層、バッキング層、画像記録層と下引の間の層などである。
【0223】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0224】
〈下引済みPET支持体の作製〉
市販の2軸延伸熱固定済みの厚さ125μmのPETフィルムの両面に8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に下記下引塗布液a−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて下引層A−1とし、また反対側の面に下記帯電防止加工した下引塗布液b−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて帯電防止加工下引層B−1とした。
【0225】
(支持体の熱処理)
上記の下引済み支持体を160℃設定した全長200m熱処理ゾーンに入れ、張力2kg/cm2、搬送速度20m/分で搬送した。引き続き、40℃のゾーンに15秒間通して後熱処理を行い、巻き取った。この時の巻き取り張力は10kg/cm2であった。
【0226】
(染料含有層の塗布)
支持体の下引き層B−1の上に下記の組成の染料含有層塗布液1を乾燥質量が4.2g/m2になるよう塗布し、55℃で30分乾燥した。
【0227】
染料含有層塗布液1
2−ブタノン 40g
バインダー樹脂
CAB381−20(イーストマンケミカル社製) 3.7g
ポリエステル樹脂(バイテル2200B、ボスティック社製)200mg
一般式〔1〕、〔2〕、〔3〕の染料(表1記載) (表1記載の量)
マット剤:単分散度15%、平均粒子サイズ8μm、単分散シリカ45mg
フッ素化合物(表1記載) (表1記載の量)
【0228】
(ハロゲン化銀乳剤Aの調製)
水900ml中にイナートゼラチン7.5gおよび臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(60/38/2)のモル比の塩化ナトリウムと臭化カリウムと沃化カリウムを含む水溶液および〔Ir(NO)Cl5〕塩を銀1モル当たり1×10−6モルおよび塩化ロジウム塩を銀1モル当たり1×10−6モルを、pAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で添加した。その後4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを添加しNaOHでpHを8、pAg6.5に調整することで還元増感を行い平均粒子サイズ0.06μm、単分散度10%の投影直径面積の変動係数8%、〔100〕面比率87%の立方体沃臭化銀粒子を得た。この乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ脱塩処理を行った。
【0229】
(ベヘン酸ナトリウム溶液の調製)
945mlの純水にベヘン酸32.4g、アラキジン酸9.9g、ステアリン酸5.6gを90℃で溶解した。次に高速で攪拌しながら1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液98mlを添加した。次に濃硝酸0.93mlを加えた後、55℃に冷却して30分攪拌させてベヘン酸ナトリウム溶液を得た。
【0230】
(ベヘン酸銀とハロゲン化銀Aのプレフォーム乳剤の調製)
上記のベヘン酸ナトリウム溶液に、前記ハロゲン化銀乳剤Aを1.51g添加し水酸化ナトリウム溶液でpH8.1に調整した後に、1mol/Lのの硝酸銀溶液147mlを7分間かけて加え、さらに20分攪拌し限外濾過により水溶性塩類を除去した。できたベヘン酸銀は平均粒子サイズ0.8μm、単分散度8%の粒子であった。分散物のフロックを形成後、水を取り除き、さらに6回の水洗と水の除去を行った後乾燥させた。
【0231】
(感光性乳剤の調製)
得られたプレフォーム乳剤を分割し、それにポリビニルブチラール(平均分子量3000)のメチルエチルケトン溶液(17質量%)544gとトルエン107gを徐々に添加して混合した後に、0.5mmサイズのZrO2のビーズミルを用いたメディア分散機で4000psiで分散した。
【0232】
前記支持体上に以下の各層を両面同時塗布し、試料(熱現像画像記録材料)1〜30を作製した。尚、乾燥は各々60℃,15分間で行った。
【0233】
(画像記録層側塗布)
支持体の下引き層A−1の上に、以下の組成の液を塗布銀量が2.4g/m2になる様に塗布した。
【0234】
画像記録層組成
プレフォーム乳剤 240g
増感色素1(0.1%メタノール溶液) 1.7ml
ピリジニウムプロミドペルブロミド(6%メタノール溶液) 3ml
臭化カルシウム(0.1%メタノール溶液) 1.7ml
2,4−ジクロロベンゾイル安息香酸(12%メタノール溶液)9.2ml
2−メルカプトベンズイミダゾール(1%メタノール溶液) 11ml
トリブロモメチルスルホキノリン(5%メタノール溶液) 17ml
染料DA3(0.5%メタノール溶液) 1ml
フタラジン 0.6g
ヒドラジン:例示化合物H−1−1 0.1g
ビニル化合物1 0.3g
4−メチルフタル酸 0.25g
テトラクロロフタル酸 0.2g
現像剤:例示化合物A−4(20%メタノール溶液) 29.5ml
イソシアネート化合物(モーベイ社製、Desmodur N3300)0.5g
【0235】
【化77】
【0236】
【0238】
【化78】
【0239】
(露光および現像処理)
上記で作製した試料(熱現像画像記録材料)を61cm×18cmに切断して25℃、相対湿度40%の条件で12時間調湿した後、10枚ずつ重ねて酸素と水分を透過しないバリア袋に入れたサンプルを2組作製して、1組は冷凍庫(−8℃)にて7日経時し、もう1組を経時処理用として40℃7日間加温した。その後、785nmの半導体レーザーを搭載したイメージセッター機(日本電気社製FT−286R)を用いて露光を行った。その際、露光は25℃、相対湿度40%に調湿した部屋と、30℃、相対湿度75%に調湿した部屋の両方で行った。また、熱現像は富士写真フイルム社製ドライシステムプロセッサFDS−6100Xを使用して行い、露光と同じ環境で熱現像を行った。
【0240】
(評価方法)
25℃、相対湿度40%に調湿した部屋で露光したサンプルおよび30℃、相対湿度75%に調湿した部屋で露光したサンプルについて、現像後、感度を評価した。
【0241】
〈感度変化〉
感度は、テストチャートをレーザーパワーを変えて露光を行い、線幅50μmとなるレーザーパワーの対数値とした。感度変化は冷凍サンプルを基準にして変化量を示した。
感度変化=サーモサンプルの対数値―冷凍サンプルの対数値
数値が大きいほど感度が低い。冷凍サンプルに対して、サーモ後の感度変化が0.05以内であればレーザーパワー調整は必要ないが、それ以上になると調整が必要となる。
【0242】
<カブリ>
感度を測定したテストチャートの露光がない部分の濃度を、マクベスTD904濃度計にて測定した。カブリ上昇は冷凍サンプルを基準にして変化量を示した。
カブリ上昇=サーモサンプルのカブリ値―冷凍サンプルのカブリ値
数値が大きいほどカブリが高い。冷凍サンプルに対して、サーモ後のカブリ上昇が0.03以内であれば実用上問題ない。
【0243】
〈裏写り〉
裏写りは、175LPIの70%平網の部分で以下の3段階で目視評価した。また、30℃、相対湿度75%に調湿した部屋で露光したサンプルについて、高湿条件下露光時の裏写りを評価した。
【0244】
○: 判別できない
△: フィルム上で見える。実用上問題ない
×: 実用上影響が出る
試料の構成を表1に、試験結果を表2にまとめて示す。
【0245】
【表1】
【0246】
【表2】
【0247】
【化79】
【0248】
表2から明らかなように、本発明の条件を満たすフッ素化合物と染料を使用することによって、保存時の感度変動が少なく、カブリが低く、裏写りも発生しない熱現像画像記録材料を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱現像画像記録材料に関し、詳しくは優れたレーザー記録画像形成可能な、印刷版等への焼付透過原稿フィルムや、医療診断用フィルム等に好適な熱現像画像記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱現像記録材料は、レーザー記録とそれに続く熱現像プロセスにより画像形成せしめ、印刷版等への焼付透過原稿フィルムや、医療診断用フィルムとして用いられている。レーザー記録において、通常は内面ドラム、外面ドラム、フラットベッド式のレーザー露光方式が知られているが、いずれの方式においても、ドラムまたはフラットベッドに記録材料を密着させるためドラムまたはフラットベッド表面に微細な吸引口を設け、減圧にすることによって記録材料を密着せしめる方法が一般的である。そのため、該ドラムまたはフラットベッド表面には、これらの吸引口やそれらをつなぐ細溝等のパターンが存在する。透明支持体を用いた記録材料では、記録用レーザー光が記録材料中を透過し、ドラムまたはフラットベッド表面において反射することにより、前述の吸引口や細溝等のパターンを同時に記録してしまう裏写りと呼ばれる現象を防止するため、記録材料の記録層よりも下側、すなわち露光の際にドラムまたはフラットベッド表面に近い層の何れかに、レーザー光を吸収する染料層を設ける方法が知られている。従来の湿式現像処理を施す銀塩写真記録材料においては、現像処理、定着処理等の湿式処理によって、染料層中の染料を溶出除去し、処理後のフィルムの着色を防止する方法が一般的に行われてきた。しかしながら熱現像記録材料においては、従来の湿式処理銀塩写真記録材料と異なり、処理において染料を除去することができないため、染料層の設計および染料の選択が困難であった。
【0003】
近赤外レーザー露光により記録する熱現像記録材料においては、裏写りを防止するために、染料含有層を有する支持体の露光波長における透過吸光度が0.4以上であることが要求されるが、その際に、可視領域の吸収を充分に抑えることは困難で目視上の着色に問題がある上、赤色レーザーを用いたバーコード検出器により、フィルム上に記録したバーコードの読取りが不可能であった。これを解決するために、特定構造のシアニン染料を採用することで改善を図っている(特許文献1)が、その効果は充分ではなかった。また、染料含有層にラテックスバインダーを用い、かつバルビツール酸骨格を部分構造として有する特定構造の染料を使用することにより、可視領域の吸収を大幅に低減する方法が提案されている(特許文献2)が、逆に吸収の山形が急峻になることにより、レーザー記録時の環境影響やレーザーヘッドのロット間バラツキの影響を受けやすくなり、特に高湿環境下での裏写り防止の効果の安定性に問題があった。この問題は、特定のシアニン染料により改善を図っている(特許文献3)が、その効果は十分ではなく、また、保存経時による感度変化が大きく、カブリが高くなるという問題を生じる事となった。
【0004】
【特許文献1】特開平8−201959号公報
【特許文献2】特開平11−223898号公報
【特許文献3】特開2002−40593号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、長期保存後でも感度の変動が少なく、裏写りが発生しない熱現像画像記録材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1)支持体上に少なくとも1層の画像記録層を有する熱現像画像記録材料において、支持体上に形成された層の少なくとも1層が有機溶媒を60質量%以上含有する塗布液を塗布してなる層であり、かつ、支持体上に形成された層の少なくとも1層が一般式(F)で表されるフッ素化合物(F)を含有することを特徴とする熱現像画像記録材料。
一般式(F)
[Rf−(Rc)n]m−Z
[式中、Rfはパーフルオロアルキル基を表し、Rcはアルキレン基、Zは界面活性を持たせるために必要なアニオン性基、カチオン性基、ベタイン性基、またはノニオン性極性基を有する基を表す。nは0または1の整数を表し、mは1〜3の整数を表す。]
【0007】
(2)支持体上に少なくとも1層の画像記録層を有する熱現像画像記録材料において、支持体上に形成された層の少なくとも1層が有機溶媒を60質量%以上含有する塗布液を塗布してなる層であり、かつ、支持体上に形成された層の少なくとも1層が、一般式(a1)で表されるフッ素化合物(A)、および/または、炭素原子数が2以上のフッ化アルキル基を2つ以上有し、かつアニオン性またはノニオン性の親水性基の少なくとも一方を有するフッ素化合物(B)(但し、親水性基がノニオン性の場合にはフッ化アルキル基のフッ素原子数が11以下である)を含有することを特徴とする熱現像画像記録材料。
【化10】
[式中、Rは置換または無置換のアルキル基を表し、Rafはパーフルオロアルキレン基を表す。Wは水素原子またはフッ素原子を表し、Laは置換もしくは無置換のアルキレン基または置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、あるいはこれらを組み合わせてできる2価基を表す。AおよびBは、一方が水素原子を、もう一方が−Lb−SO3Mを表し、Mはカチオンを表す。Lbは、単結合または置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。]
【0008】
(3)前記フッ素化合物(B)が下記一般式(b1)で表される化合物であることを特徴とする(2)の熱現像画像記録材料。
【化11】
[式中、R1およびR2は各々独立に炭素原子数が2以上でフッ素原子数が11以下のフッ化アルキル基を表し、R3およびR4は各々独立に水素原子か置換または無置換のアルキル基を表す。AおよびBは、一方が水素原子を、もう一方が−Lb−SO3Mを表し、Mは水素原子またはカチオンを表す。Lbは、単結合または置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。]
【0009】
(4)前記フッ素化合物(B)が下記一般式(b2)で表される化合物である事を特徴とする(2)の熱現像画像記録材料。
【化12】
[式中、R1およびR2は各々独立に炭素原子数が2以上でフッ素原子数が11以下のフッ化アルキル基を表す。Xは−Lb−SO3Mを表し、Mは水素原子またはカチオンを表す。Lbは、単結合または置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。]
【0010】
(5)前記フッ素化合物(B)がアニオン性の親水性基を持ち、前記フッ素化合物(B)が有するフッ化アルキル基のフッ素原子総数が11以下であることを特徴とする(2)〜(4)のいずれか1項の熱現像画像記録材料。
(6)支持体上に少なくとも1層の画像記録層を有する熱現像画像記録材料において、支持体上に形成された層の少なくとも1層が有機溶媒を60質量%以上含有する塗布液を塗布してなる層であり、かつ、支持体上に形成された層の少なくとも1層が一般式(FA)で表されるフッ素化合物(FA)を含有することを特徴とする熱現像画像記録材料。
【化13】
[式中、R1およびR2は各々独立に置換または無置換のアルキル基を表すが、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R3、R4およびR5は各々独立に水素原子または置換基を表し、X1、X2およびZは各々独立に2価の連結基または単結合を表し、M+はカチオン性の置換基を表す。Y−は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY−はなくてもよい。mは0または1である。]
(7)前記フッ素化合物(FA)が、一般式(FA−a)で表される化合物であることを特徴とする(6)の熱現像画像記録材料。
【化14】
[式中、R11およびR21は各々独立に置換または無置換のアルキル基を表すが、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、R11とR21の炭素数の総計は19以下である。R13、R14およびR15は各々独立に置換または無置換のアルキル基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。X11およびX21は各々独立に−O−、−S−または−NR31−を表し、R31は水素原子または置換基を表し、Zは2価の連結基または単結合を表す。Y−は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY−はなくてもよい。mは0または1である。]
(8)前記フッ素化合物(FA)が、一般式(FA−c)で表される化合物であることを特徴とする(6)の熱現像画像記録材料。
【化15】
[式中、n1は1〜6の整数を、n2は3〜8の整数を表すが、2(n1+n2)は19以下である。R13、R14およびR15は各々独立に置換または無置換のアルキル基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。X11およびX21は各々独立に−O−、−S−または−NR31−を表す。R31は水素原子または置換基を表し、Zは2価の連結基または単結合を表す。Y−は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY−はなくてもよい。mは0または1である。]
(9)支持体上に少なくとも1層の染料含有層を有し、該染料含有層の露光波長750nm〜1500nmにおける透過吸光度が0.4以上であり、670nmにおける透過吸光度が0.22以下であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の熱現像画像記録材料。
【0011】
(10)前記染料含有層中に含まれる染料がシアニン染料もしくはポリメチン染料であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の熱現像画像記録材料。
(11)前記シアニン染料が、下記一般式〔1〕で表される染料であることを特徴とする(10)の熱現像画像記録材料。
【化16】
〔式中、R1、R2、R3およびR4は各々独立に、水素原子または置換基を表し、R1とR2、またはR2とR3は連結して環を形成してもよい。R5、R6、R7およびR8は各々独立に、水素原子または置換基を表し、R5とR6、またはR6とR7は連結して5員環または6員環を形成してもよい。R9およびR10は各々独立に、アルキル基、−(CH2)n−COOMまたは−(CH2)n−SO3Mを表す(ここで、nは2以上の整数を表し、Mは水素原子またはアルカリ金属原子を表す)。R11およびR12は連結して5員環または6員環を形成する基を表し、R13は水素原子、メチル基またはハロゲン原子を表し、A1は−S−、−Se−、−O−または−C(CH3)2−を表す。X−はアニオンを表す。〕
【0012】
(12)前記ポリメチン染料が、下記一般式〔2〕で表される染料であることを特徴とする(10)の熱現像画像記録材料。
【化17】
〔式中、R14、R15、R16およびR17は各々独立に、水素原子または置換基を表し、R14とR15、またはR15とR16は連結して環を形成してもよい。R18、R19、R20およびR21は各々独立に、水素原子または置換基を表し、R18とR19、またはR19とR20は連結して環を形成してもよい。R22およびR23は各々独立に、アルキル基、−(CH2)n−COOMまたは−(CH2)n−SO3Mを表す(ここで、nは2以上の整数を表し、Mは水素原子またはアルカリ金属原子を表す。)。R24およびR25は連結して5員環または6員環を形成する基を表し、R26は水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、A2は−S−、−Se−、−O−または−C(CH3)2−を表し、A3、A4およびA5は酸素原子または硫黄原子を表す。〕
【0013】
(13)前記ポリメチン染料が、下記一般式〔3〕で表される染料であることを特徴とする(10)の熱現像画像記録材料。
【化18】
〔式中、R31、R32、R33およびR34は各々独立に、水素原子または置換基を表し、R31とR32、またはR32とR33は連結して環を形成してもよい。R35、R36、R37およびR38は各々独立に、水素原子または置換基を表し、R35とR36、またはR36とR37は連結して環を形成してもよい。R39およびR40は各々独立に、アルキル基、−(CH2)n−COOMまたは−(CH2)n−SO3Mを表す(ここで、nは2以上の整数を表し、Mは水素原子またはアルカリ金属原子を表す)。R41およびR42は連結して5員環または6員環を形成する基を表し、X31は−S−、−Se−、−O−または−C(CH3)2−を表し、Y31は酸素原子または硫黄原子を表す。〕
【0014】
(14)支持体上に形成された層の少なくとも1層が硬調化剤を含有することを特徴とする(1)〜(13)のいずれか1項に記載の熱現像画像記録材料。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の熱現像画像記録材料について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0016】
まず、本発明で用いる一般式(F)で表されるフッ素化合物(F)について詳しく説明する。一般式(F)においてRfは炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を表し、具体例としては、C3F7−基、C4F9−基、C6F13−基、C8H17−基、C12F25−基、C16F33−基などが挙げられる。Rc基はアルキレン基を表す。アルキレン基の炭素数は1以上であるが、2以上であることが好ましく、20以下であることが好ましい。具体的にはメチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,2−オクチレン基などが挙げられる。本発明では、Rfが互いに異なる鎖長のパーフルオロアルキル基である複数の化合物の混合物を用いてもよいし、単一のパーフルオロアルキル基を有する化合物のみを用いてもよい。また、Rfが同一でRcが互いに異なる複数の化合物の混合物を用いてもよい。Rfが互いに異なる鎖長のパーフルオロアルキル基である複数の化合物の混合物を用いる場合、そのパーフルオロアルキル基の鎖長の平均値は炭素数として4〜10であることが好ましく、4〜9であることが特に好ましい。nは0または1の整数を表し、1であることが好ましい。mは1〜3の整数を表し、mが2または3のとき、[Rf−(Rc)n]は互いに同一でも異なっていてもよい。Zがリン酸エステル基でない場合はm=1が好ましく、Zがリン酸エステル基を表す場合はm=1〜3、あるいはその混合物を表し、その平均値としては0.5〜2が好ましい。
【0017】
Zは、界面活性を持たせるために必要な、カチオン性基、アニオン性基、ベタイン性基、または極性のノニオン性基を有する基を表す。これらの基が含まれていればRcとの連結の仕方は問わない。界面活性を持たせるために必要なアニオン基の例としては、スルホン酸基およびそのアンモニウムまたは金属塩、カルボン酸基およびそのアンモニウムまたは金属塩、ホスホン酸基およびそのアンモニウムまたは金属塩、硫酸エステル基およびそのアンモニウムまたは金属塩、リン酸エステル基およびそのアンモニウムまたは金属塩が挙げられる。
【0018】
界面活性を持たせるために必要なカチオン性基の例としては、トリメチルアンモニウムエチル基、トリメチルアンモニウムプロピル基などの4級アルキルアンモニウム基;ジメチルフェニルアンモニウムアルキル基、N−メチルピリジニウム基などの芳香族アンモニウム基が挙げられる。これらの基には適当な対イオンが存在しており、ハロゲン原子、ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオンなどが挙げられ、トルエンスルホン酸アニオンが好ましい。界面活性を持たせるために必要なベタイン性基としては、−N+(CH3)2CH2COO−、−N+(CH3)2CH2CH2COO−などのベタイン構造を有する基などが挙げられる。界面活性を持たせるために必要なノニオン性基の例としてはポリオキシアルキレン基、多価アルコール基などが挙げられ、好ましくはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシアルキレン基である。但し、これらの基の末端は水素原子以外の基、例えばアルキル基であってもよい。
【0019】
一般式(F)においてRfは好ましくは炭素数4〜16のパーフルオロアルキル基で、より好ましくは炭素数6〜16のパーフルオロアルキル基である。Rcは好ましくは炭素数2〜16のアルキレン基で、より好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基である。特に好ましいのはエチレン基である。nは好ましくは1である。Rcと界面活性付与に必要な基との間はどのように結合されていてもよく、例えばアルキレン鎖、アリーレン等で結合することができ、これらの基は置換基を有していてもよい。これらの基は主鎖または側鎖にオキシ基、チオ基、スルホニル基、スルホキシド基、スルホンアミド基、アミド基、アミノ基などが含まれていてもよい。以下一般式(F)で表されるフッ素化合物(F)の具体例を示すが、本発明で用いることができる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0020】
【化19】
【0021】
【化20】
【0022】
【化21】
【0023】
上記一般式(F)で表される化合物は1種のみを使用しても2種以上を併用してもよく、また感光材料の任意の層に添加してよい。これらの構成層としては、例えば画像記録層(感光層)、中間層、表面保護層、バック層、バック面保護層などがあるが、このうちでも表面保護層、バック面保護層で使用することが特に好ましい。本発明において一般式(F)で表される化合物の使用量は表面、裏面それぞれで0.1〜200mg/m2の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜50mg/ m2、さらに好ましくは1〜30mg/m2の範囲である。
【0024】
本発明の一般式(F)で表される化合物は、通常の合成方法により製造することができ、また、いわゆるテロマー型のパーフルオロアルキル基含有界面活性剤として広く市販されているものを用いることができる。その例としては、DUPONT(株)製のZonyl FSP,FSE,FSJ,NF,TBS,FS−62,FSA,FSK(以上イオン性)、Zonyl 9075,FSO,FSN,FS−300,FS−310(以上非イオン性)、旭硝子(株)製のS−111,S−112,S−113,S−121,S−131,S−132(以上イオン性)、S−141,S−145(以上非イオン性)、ダイキン工業(株)製のユニダインDS−101,DS−102,DS−202、DS−301(以上イオン性)、DS−401,DS−403(以上非イオン性)等を挙げる事ができる。また、上記の種々の化合物のうちイオン性の界面活性剤はその使用目的、必要とされる諸特性等によってイオン交換あるいは中和等の手段で種々の異なる塩の形で、または1種または2種以上の対イオン存在下で用いることができる。
【0025】
本発明においては、下記一般式(a1)で表されるフッ素化合物(A)を用いることが好ましい。
【0026】
【化22】
【0027】
前記一般式(a1)中、Rは置換または無置換のアルキル基を表す。Rで表される置換または無置換のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、また環状構造を有していてもよい。
【0028】
前記置換基としては、どんな置換基でもよいが、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子(好ましくはCl)、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、燐酸エステル基等が好ましい。
【0029】
Rは、置換基としてフッ素を有しない方が好ましく、無置換アルキル基がより好ましい。Rは、炭素数が2以上であるのが好ましく、4以上がより好ましく、6以上がさらに好ましい。
【0030】
Rafはパーフルオロアルキレン基を表す。ここで、パーフルオロアルキレン基とは、アルキレン基の水素原子が全てフッ素置換された基をいう。前記パーフルオロアルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、また環状構造を有していてもよい。Rafは、炭素数が10以下であるのが好ましく、8以下であるのがより好ましい。最も好ましくは炭素数4のパーフルオロアルキレン基である。
【0031】
Wは、水素原子またはフッ素原子を表すが、フッ素原子であることが好ましい。
Laは、置換もしくは無置換のアルキレン基または置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、あるいはこれらを組み合わせてできる2価基を表す。置換基はRで挙げたものが好ましい。Laは、炭素数が4以下であるのが好ましく、また、無置換アルキレンであるのが好ましい。
【0032】
本発明に係わるフッ素化合物が、Rafの炭素数が異なる化合物の混合物であるときは、Rafの炭素数が4である化合物(C4体)の割合が多い方が好ましい。C4体の混合物中の割合は好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0033】
一般に、C6以上のRafを有する化合物が多く含まれると、水に対する溶解性が悪くなるため、C6以上の成分は少ないほうが好ましい。また、C3以下の成分が含まれると、静的表面表力を下げる効果がC4体に比べて小さくなるため、C3以下の成分は少ないほうが好ましい。
【0034】
AおよびBは、一方が水素原子を、もう一方が−Lb−SO3Mを表し、Mはカチオンを表す。
ここで、Mで表されるカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン等が好ましく例示される。
これらのうち、より好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはアンモニウムイオンであり、さらに好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンであり、一般式(a1)で表されるフッ素化合物(A)の総炭素数や置換基、アルキル基の分岐の程度等により適切に選択することができる。
【0035】
R、LaおよびRafの炭素数の合計が16以上の場合、リチウムイオンであることが溶解性(特に水に対して)と帯電防止能または塗布均一性の両立の観点で優れている。
Lbは、単結合または置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。置換基はRで挙げたものが好ましい。Lbがアルキレン基である場合、C数は2以下であるのが好ましく、無置換であるのが好ましく、メチレン基であるのがより好ましい。
Lbは、単結合であるのが最も好ましい。
【0036】
上記一般式(a1)は、上記のそれぞれの好ましい態様を組み合わせることが、より好ましい。
一般式(a1)は、さらに下記一般式(a2)で表されるのが好ましい。
【0037】
【化23】
【0038】
前記一般式(a2)中、R1は総炭素数6以上の置換または無置換のアルキル基を表す。但し、R1はフッ素原子で置換されたアルキル基になることはない。R1で表される置換または無置換のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、また環状構造を有していてもよい。
前記置換基としては、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素以外のハロゲン原子、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、燐酸エステル基等が挙げられる。
【0039】
R1で表される置換または無置換のアルキル基は、総炭素数が6〜24であるのが好ましい。炭素数6〜24の無置換アルキル基の好ましい例としては、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、2−オクチルドデシル基、ドコシル基、テトラコシル基、2−デシルテトラデシル基、トリコシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
また、置換基の炭素も含めた総炭素数が6〜24の置換アルキル基の好ましい例としては、2−ヘキセニル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基、ベンジル基、β−フェネチル基、2−メトキシエチル基、4−フェニルブチル基、4−アセトキシエチル基、6−フェノキシヘキシル基、12−フェニルドデシル基、18−フェニルオクタデシル基、12−(p−クロロフェニル)ドデシル基、2−(燐酸ジフェニル)エチル基等を挙げることができる。
【0040】
R1で表される置換または無置換のアルキル基は、総炭素数が6〜18であるのがより好ましい。炭素数6〜18の無置換アルキル基の好ましい例としては、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
また、置換基の炭素数を含む総炭素数が6〜18の置換アルキル基の好ましい例としては、フェネチル基、6−フェノキシヘキシル基、12−フェニルドデシル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基等が挙げられる。
【0041】
中でも、R1としては、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基であるのがさらに好ましく、炭素数8〜16の直鎖、環状または分岐の無置換アルキル基であるのが特に好ましい。
【0042】
前記一般式(a2)中、Rfは炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を表す。
ここで、パーフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子が全てフッ素置換された基をいう。前記パーフルオロアルキル基中のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、また環状構造を有していてもよい。
Rfで表されるパーフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基、ウンデカフルオロ−n−ペンチル基、トリデカフルオロ−n−ヘキシル基、ウンデカフルオロシクロヘキシル基等が挙げられる。
中でも、炭素数2〜4のパーフルオロアルキル基(例えば、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基等)が好ましく、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基が特に好ましい。
【0043】
前記一般式(a2)中、nは1以上の整数を表す。好ましくは1〜4の整数であり、特に好ましくは1または2である。
また、nとRfの組合せとして、n=1の場合にはRfがヘプタフルオロ−n−プロピル基またはノナフルオロ−n−ブチル基、n=2の場合にはRfがノナフルオロ−n−ブチル基であることがさらに好ましい。
【0044】
前記一般式(a2)中、X1およびX2は、一方が水素原子を、もう一方がSO3Mを表し、Mはカチオンを表す。
ここで、Mで表されるカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン等が好ましく例示される。これらのうち、特に好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンである。
【0045】
前記一般式(a1)で表されるフッ素化合物(A)の好ましい具体例を以下に例示するが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
尚、以下では便宜上、BがSO3Mであり、Aが水素原子である例示化合物を示すが、下記の例示化合物においてBが水素原子であり、AがSO3Mであってもよく、それらの化合物もフッ素化合物(A)の具体例として挙げられる。
下記例示化合物の構造表記の中で特に断りのない限り、アルキル基、パーフルアロアルキル基は直鎖構造を有する基を意味する。さらに、構造表記中の略号のうち、2EHは2−エチルヘキシル基を表し、2BOは2−ブチルオクチル基を表す。
【0046】
【化24】
【0047】
【化25】
【0048】
【化26】
【0049】
【化27】
【0050】
【化28】
【0051】
【化29】
【0052】
【化30】
【0053】
【化31】
【0054】
前記一般式(a1)で表されるフッ素化合物(A)は、一般的なエステル化反応およびスルホン化反応を組み合わせて容易に合成することができる。
【0055】
本発明においてフッ素化合物(B)とは、炭素原子数が2以上でフッ素原子数が11以下のフッ化アルキル基を2つ以上有しかつアニオン性またはノニオン性の親水性基の少なくとも一方を有する化合物である。フッ素化合物(B)は、上記フッ化アルキル基2つ以上と、アニオン性親水基またはノニオン性親水基の少なくともいずれかを有していれば、その他の構造は特に制限されない。
本発明の上記フッ化アルキル基はフッ素原子数が11以下であるが、好ましくは3〜9の範囲で、より好ましくは5〜9の範囲である。また、炭素原子数は2以上であるが、好ましくは2〜16、より好ましくは4〜12の範囲である。
【0056】
本発明のフッ化アルキル基は好ましくは下記一般式(c)で表される基である。
一般式(c)
−La−Raf−W
一般式(c)においてLaは、置換もしくは無置換のアルキレン基または置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、あるいはこれらを組み合わせてできる2価基を表す。前記の置換基としては、どのような基でもよいが、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子(好ましくはCl)、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、リン酸エステル基が好ましい。
Laは、炭素数が8以下であるのが好ましく、4以下がより好ましい。また、無置換アルキレン基であるのが好ましい。Rafは炭素数1〜5パーフルオロアルキレン基を表し、好ましくは炭素数2〜4のパーフルオロアルキレン基、最も好ましくは炭素数4のパーフルオロアルキレン基である。ここでパーフルオロアルキレン基とはアルキレン基のすべての水素原子がフッ素原子で置き換えられたアルキレン基を言う。前記パーフルオロアルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、また環状構造を有していてもよい。Wは水素原子、フッ素原子またはアルキル基を表し、好ましくは水素原子またはフッ素原子である。
本発明に係わるフッ素化合物が、Rafの炭素数が異なる化合物の混合物であるときは、Rafの炭素数が4である化合物(C4体)の割合が多い方が好ましい。C4体の混合物中の割合は好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。一般に、C6以上のRafを有する化合物が多く含まれると、水に対する溶解性が悪くなるため、C6以上の成分は少ないほうが好ましい。また、C3以下の成分が含まれると、静的表面表力を下げる効果がC4体に比べて小さくなるため、C3以下の成分は少ないほうが好ましい。
【0057】
本発明で用いられるフッ化アルキル基の具体例としては、−C2F5基、−C3F7基、−C4F9基、−C5F11基、−CH2−C4F9基、−C4F8−H基、−C2H4−C4F9基、−C4H8−C4F9基、−C6H12−C4F9基、−C8H16−C4F9基、−C4H8−C2F5基、−C4H8−C3F7基、−C4H8−C5F11基、−C8H16−C2F5基、−C2H4−C4F8−H基、−C4H8−C4F8−H基、−C6H12−C4F8−H基、−C6H12−C2F4−H基、−C8H16−C2F4−H基、−C6H12−C4F8−CH3基、−C2H4−C3F7基、−C2H4−C5F11基、−C4H8−CF(CF3)2基、−CH2CF3基−C4H8−CH(C2F5)2基、−C4H8−CH(CF3)2基、−C4H8−C(CF3)3基が挙げられるが、本発明で採用しうるフッ化アルキル基はこれらに限定されるものではない。
【0058】
アニオン性の親水基とはpKaが7以下の酸性基およびそのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩を言う。具体的には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホン酸基、カルバモイルスルファモイル基、スルファモイルスルファモイル基、アシルスルファモイル基およびこれらの塩類などが挙げられる。このうち、好ましくはスルホ基、カルボキシル基、ホスホン酸基およびその塩類で、より好ましくはスルホ基およびその塩類である。塩類を形成するカチオン種としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルピリジニウムなどが挙げられるが、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムである。
ノニオン性の親水基の具体例としては水酸基、ポリアルキレンオキシ基が挙げられ、ポリアルキレンオキシ基が好ましい。
【0059】
ポリアルキレンオキシ基と上記のアニオン性親水基を同一分子内に同時に有していてもよく、本発明においては好ましい構造である。また、アニオン性の化合物とノニオン性の化合物を併用するのも効果的な使い方で特に好ましい。
本発明においてより好ましいフッ素化合物(B)は下記一般式(b1)で表される。
【0060】
【化32】
【0061】
前記一般式(b1)中、R1およびR2はそれぞれ独立に炭素原子数が2以上でフッ素原子数が11以下のフッ化アルキル基を表し、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子または置換または無置換のアルキル基を表す。
R1およびR2で表されるフッ化アルキル基の具体例は前述の基があげられ、好ましい構造も同様に前述の一般式(c)で表される構造である。また、その中での好ましい構造も前述のフッ化アルキル基の記載と同様である。
R3およびR4で表される置換または無置換のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、また環状構造を有していてもよい。前記置換基としては、どんな置換基でもよいが、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子(好ましくはCl)、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、燐酸エステル基等が好ましい。
AおよびBは、一方が水素原子を、もう一方が−Lb−SO3Mを表し、Mはカチオンを表す。ここで、Mで表されるカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン等が好ましく例示される。これらのうち、より好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはアンモニウムイオンであり、さらに好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンであり、一般式(C)の化合物の総炭素数や置換基、アルキル基の分岐の程度等により適切に選択することができる。R1、R2、R3およびR4の炭素数の合計が16以上の場合、リチウムイオンであることが溶解性(特に水に対して)と帯電防止能または塗布均一性の両立の観点で優れている。
Lbは、単結合または置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。置換基はR3およびR4の説明で挙げたものが好ましい。Lbがアルキレン基である場合、炭素数は2以下であるのが好ましく、無置換であるのが好ましく、メチレン基であるのがより好ましい。Lbは、単結合であるのが最も好ましい。
上記一般式(b1)は、上記のそれぞれの好ましい態様を組み合わせることが、より好ましい。一般式(b1)は、さらに下記一般式(b2)で表されるのが好ましい。
【0062】
【化33】
【0063】
前記一般式(b2)中、R1およびR2はそれぞれ独立に上記一般式(c)で表されるフッ化アルキル基を表す。R1およびR2で表されるフッ化アルキル基の具体例は前述の基があげられ、好ましい構造も同様に前述の一般式(c)の説明で記載した好ましい構造と同じである。
【0064】
前記一般式(b2)中、XはSO3Mを表し、Mはカチオンを表す。ここで、Mで表されるカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン等が好ましく例示される。これらのうち、特に好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンである。
【0065】
フッ素化合物(B)の具体例を以下に例示するが、本発明で用いることができるフッ素化合物(B)は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。下記例示化合物の構造表記の中で特に断りのない限りアルキル基、パーフルオロアルキル基は直鎖の構造を有する基を意味する。
【0066】
【化34】
【0067】
【化35】
【0068】
【化36】
【0069】
【化37】
【0070】
【化38】
【0071】
【化39】
【0072】
【化40】
【0073】
【化41】
【0074】
【化42】
【0075】
前記一般式(b1)および(b2)で表されるフッ素化合物は、一般的なエステル化反応およびスルホン化反応を組み合わせて容易に合成することができる。本発明で用いるフッ素化合物は、界面活性剤として、熱現像画像記録材料を構成している層(特に、保護層や下塗り層、バック層など)を形成するための塗布組成物に好ましく用いられる。中でも、熱現像画像記録材料の最上層の親水性コロイド層の形成に用いると、効果的な帯電防止能と塗布の均一性を得ることができるので特に好ましい。
【0076】
本明細書におけるF/C比は、島津製作所(株)製ESCA750型(X線源:MgKα)装置を用い、F1s、C1sのエネルギーのピーク強度を測定し、下記の計算式で求めた値である。
【数1】
F/C比は、フッ素化合物の含有量を適宜変えることによりコントロールできる。本発明に係るフッ素化合物を適用することが最も好ましい。また、熱現感光材料両面のF/C比を求めることにより相互の面へのフッ素化合物の転写の状態を知ることもできる。
【0077】
本発明においては、本発明に係るフッ素化合物の1種類を単独で用いてもよいし、また2種類以上を混合して用いてもよい。また、本発明に係るフッ素化合物とともに他の界面活性剤を用いてもよい。併用可能な界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の各種界面活性剤を挙げることができる。また併用する界面活性剤は、高分子界面活性剤であってもよく、本発明に係るフッ素化合物以外のフッ素系界面活性剤であってもよい。併用する界面活性剤としては、アニオン系もしくはノニオン系活性剤がより好ましい。
本発明におけるフッ素化合物の使用量については特に制約はなく、用いる化合物の構造や用いる場所、組成物中に含まれる他の素材の種類や量などに応じて、その使用量を任意に決定することができる。
好ましい使用量は、0.001〜0.5g/m2、さらに好ましくは、0.001〜0.1g/m2である。
【0078】
次に、下記一般式(FA)で表されるフッ素化合物(FA)について説明する。
【0079】
【化43】
【0080】
式中、R1およびR2はそれぞれ置換または無置換のアルキル基を表すが、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R3、R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、X1、X2およびZはそれぞれ独立に2価の連結基または単結合を表し、M+はカチオン性の置換基を表す。Y−は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY−はなくてもよい。mは0または1である。
【0081】
前記一般式(FA)中、R1およびR2はそれぞれ置換または無置換のアルキル基を表す。前記アルキル基は、炭素数1以上であって、直鎖状、分岐鎖状および環状のいずれであってもよい。前記置換基としては、ハロゲン原子、アルケニル基、アリール基、アルコキシル基、フッ素以外のハロゲン原子、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、燐酸エステル基等が挙げられる。但し、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基(以下、フッ素原子で置換されたアルキル基を「Rf」という)を表す。
【0082】
Rfは、炭素数1以上の少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基であり、Rfは少なくとも1つのフッ素原子で置換されていればよく、直鎖状、分岐状および環状のいずれの構造であってもよい。また、フッ素原子以外の置換基でさらに置換されていてもよいし、フッ素原子のみで置換されていてもよい。Rfのフッ素原子以外の置換基としては、アルケニル基、アリール基、アルコキシル基、フッ素以外のハロゲン原子、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、燐酸エステル基等が挙げられる。
【0083】
Rfとしては、炭素数1〜16のフッ素置換アルキル基が好ましく、炭素数1〜12がより好ましく、炭素数4〜10がさらに好ましい。Rfの好ましい例としては、以下のものが挙げられる。
【0084】
【化44】
【0085】
Rfとしてさらに好ましくは、末端がトリフルオロメチル基で置換された炭素数4〜10のアルキル基であり、特に好ましくは−(CH2)n1−(CF2)n2Fで表される炭素数3〜10のアルキル基である(n1は1〜6の整数を表す。n2は3〜8の整数を表す)。具体的には、−CH2−(CF2)2F、−(CH2)6−(CF2)4F、−(CH2)3−(CF2)4F、−CH2−(CF2)3F、−(CH2)2−(CF2)4F、−(CH2)3−(CF2)4F、−(CH2)6−(CF2)4F、−(CH2)2−(CF2)6F、−(CH2)3−(CF2)6F、−(CH2)2−(CF2)6F等が挙げられる。これらの中でも、特に、−(CH2)2−(CF2)4Fおよび−(CH2)2−(CF2)6Fが最も好ましい。
【0086】
前記一般式(FA)中、R1およびR2の双方がRfを表すのが好ましい。
【0087】
R1およびR2がそれぞれRf以外のアルキル基、即ち、フッ素原子で置換されていないアルキル基を表す場合、該アルキル基としては、炭素数1〜24の置換または無置換のアルキル基、より好ましくは炭素数6〜24の置換または無置換のアルキル基である。炭素数6〜24の無置換アルキル基の好ましい例としては、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、2−オクチルドデシル基、ドコシル基、テトラコシル基、2−デシルテトラデシル基、トリコシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。また、置換基を有する総炭素数が6〜24のアルキル基の好ましい例としては、2−ヘキセニル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基、ベンジル基、β−フェネチル基、2−メトキシエチル基、4−フェニルブチル基、4−アセトキシエチル基、6−フェノキシヘキシル基、12−フェニルドデシル基、18−フェニルオクタデシル基、12−(p−クロロフェニル)ドデシル基、2−(燐酸ジフェニル)エチル基等を挙げることができる。
【0088】
R1およびR2でそれぞれ表されるRf以外のアルキル基としては、さらに好ましくは炭素数6〜18の置換または無置換のアルキル基である。炭素数6〜18の無置換のアルキル基の好ましい例としては、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基等が挙げられる。また、置換基を有する総炭素数が6〜18の置換アルキル基の好ましい例としては、フェネチル基、6−フェノキシヘキシル基、12−フェニルドデシル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基等が挙げられる。
【0089】
R1およびR2でそれぞれ表されるRf以外のアルキル基としては、特に好ましくは、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基であり、最も好ましくは炭素数8〜16の直鎖状、環状または分岐状の無置換アルキル基である。
【0090】
前記一般式(FA)中、R3、R4およびR5はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。該置換基としては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12アシル基であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基はさらに置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0091】
R3、R4およびR5としては、好ましくはアルキル基または水素原子であり、さらに好ましくは水素原子である。
【0092】
前記式中、X1およびX2はそれぞれ2価の連結基または単結合を表す。前記2価の連結基については特に制約はないが、好ましくはアリーレン基、−O−、−S−または−NR31−(R31は水素原子または置換基を表し、置換基としてはR3、R4およびR5がそれぞれ表す置換基の例と同様であり、−R31として好ましくは、アルキル基、前述のRfまたは水素原子であり、さらに好ましくは水素原子である)を単独またはそれらを組合せて得られる基であり、より好ましくは−O−、−S−または−NR31である。X1およびX2としてより好ましくは、−O−または−NR31−であり、さらに好ましくは−O−または−NH−であり、特に好ましくは−O−である。
【0093】
前記式中、Zは2価の連結基または単結合を表す。前記2価の連結基については特に制約はないが、好ましくはアルキレン基、アリーレン基、−C(=O)―、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)2−または−NR32−(R32は水素原子または置換基を表し、置換基としてはR3、R4およびR5が表す置換基の例と同様であり、R32として好ましくはアルキル基または水素原子であり、さらに好ましくは水素原子である)を単独またはそれらを組合せて得られる基であり、より好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、−C(=O)―、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)2−または−NR32−を単独またはそれらを組合せて得られる基である。Zとしてさらに好ましくは、炭素数1〜8のアルキレン基、−C(=O)―、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)2−または−NR32−を単独またはそれらを組合せて得られる基であり、例えば、以下のものが挙げられる。
【0094】
【化45】
【0095】
前記式中、M+はカチオン性の置換基を表し、M+として好ましくは、有機のカチオン性置換基であり、より好ましくは窒素または燐原子を含む有機カチオン性基である。さらに好ましくはピリジニウムカチオンまたはアンモニウムカチオンであり、より好ましくは下記一般式(2)で表されるトリアルキルアンモニウムカチオンである。
【0096】
【化46】
【0097】
前記式中、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に置換または無置換のアルキル基を表す。該置換基としては前記R3、R4およびR5の置換基として挙げたものが適用できる。また、R13、R14およびR15は可能な場合にはお互いが結合して環を形成してもよい。R13、R14およびR15として好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、メチルカルボキシル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0098】
前記式中、Y−は対アニオンを表し、無機アニオンでも有機アニオンでもよい。また、分子内で荷電が0になる場合にはY−はなくてもよい。無機アニオンとして好ましくは、ヨードイオン、臭素イオン、塩素イオン等が挙げられ、有機アニオンとして好ましくは、p−トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等が挙げられる。Y−としてより好ましくは、ヨードイオン、p−トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオンであり、さらに好ましくはp−トルエンスルホン酸である。
【0099】
前記式中、mは0または1を表し、好ましくは0である。
【0100】
上記一般式(FA)で表される化合物の中でも、下記一般式(FA−a)で表される化合物が好ましい。
【0101】
【化47】
【0102】
式中、R11およびR21はそれぞれ置換または無置換のアルキル基を表すが、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、R11とR21の炭素数の総計は19以下である。R13、R14およびR15はそれぞれ独立に置換または無置換のアルキル基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。X11およびX21はそれぞれ独立に−O−、−S−または−NR31−を表し、R31は水素原子または置換基を表し、Zは2価の連結基または単結合を表す。Y−は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY−はなくてもよい。
【0103】
mは0または1である。式中、ZおよびY−はそれぞれ上記一般式(FA)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。R13、R14、R15およびmについては、それぞれ上記一般式(FA)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0104】
式中、X11およびX12はそれぞれ−O−、−S−または−NR31−(R31は水素原子または置換基を表し、該置換基としては前記R3、R4およびR5の置換基として挙げたものが適用できる。R31として好ましくはアルキル基、前述のRf、または水素原子であり、さらに好ましくは水素原子である)である。X11およびX21としてより好ましくは−O−、−NH−であり、さらに好ましくは−O−である。
【0105】
前記式中、R11およびR21はそれぞれ一般式(FA)におけるR1およびR2と同義であり、好ましい範囲も同様である。ただし、R11およびR21の炭素数の総計は19以下である。mは0または1である。
【0106】
上記一般式(FA)で表される化合物の中でも、下記一般式(FA−b)で表される化合物が好ましい。
【0107】
【化48】
【0108】
式中、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に置換または無置換のアルキル基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。Zは2価の連結基を表し、AおよびBはそれぞれフッ素原子または水素原子を表す。n1は1〜6の整数を表し、n2は3〜8の整数を表す。Y−は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY−はなくてもよい。式中、ZおよびY−はそれぞれ上記一般式(1)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。R13、R14、R15およびmについては、それぞれ上記一般式(1)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。AおよびBは、好ましくは、フッ素原子である。
【0109】
上記一般式(FA)で表される化合物の中でも、下記一般式(FA−c)で表される化合物がさらに好ましい。
【0110】
【化49】
【0111】
式中、n1は1〜6の整数を、n2は3〜8の整数を表すが2(n1+n2)は19以下である。R13、R14およびR15はそれぞれ独立に置換または無置換のアルキル基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。X11およびX21はそれぞれ独立に−O−、−S−または−NR31−を表す。R31は水素原子または置換基を表し、Zは2価の連結基または単結合を表す。Y−は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY−はなくてもよい。mは0または1である。
【0112】
式中、ZおよびY−はそれぞれ上記一般式(1)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。R13、R14、R15およびmについては、それぞれ上記一般式(1)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0113】
n1は1〜6の整数を表し、好ましくは1〜3の整数を表し、さらに好ましくは2または3を表し、最も好ましくは2である。n2は3〜8の整数を表し、より好ましくは、3〜6であり、さらに好ましくは4〜6である。n1およびn2の好ましい組合せとしては、n1が2または3で、且つn2は4または6であるのが好ましい。
【0114】
上記一般式(FA)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は、以下の具体例によってなんら制限されるものではない。なお、下記例示化合物の構造表記の中で特に断りのない限り、アルキル基、パーフルアロアルキル基は直鎖の構造を意味する。また、表記中の略号の内2EHは、2−ethylhexylを意味する。
【0115】
【化50】
【0116】
【化51】
【0117】
【化52】
【0118】
【化53】
【0119】
【化54】
【0120】
【化55】
【0121】
【化56】
【0122】
【化57】
【0123】
【化58】
【0124】
【化59】
【0125】
【化60】
【0126】
【化61】
【0127】
【化62】
【0128】
【化63】
【0129】
次に、本発明の上記一般式(FA)、(FA−a)、(FA−b)および(FA−c)で表される化合物の一般的な合成法の一例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の化合物は、フマル酸誘導体、マレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体、グルタミン酸誘導体、アスパラギン酸誘導体等を原料にして合成できる。例えば、フマル酸誘導体、マレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体を原料とした場合は、それらの2重結合に、求核種によるマイケル付加反応を行った後、アルキル化剤によるカチオン化を行うことにより合成できる。
【0130】
本発明に用いられる染料含有層の露光波長における透過吸光度は0.4以上であり、0.6以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。透過吸光度が670nmにおいて0.22以下であることから目視上の着色が問題無いレベルに抑えられるので上限については特に限定されない。
【0131】
本発明に用いられる染料含有層は、露光する側から見て記録層よりも下側、すなわち露光の際にドラムまたはフラットベッド表面に近い部分に塗設する。具体的には、透明支持体をはさんで記録層の塗設してある面と反対側の面に塗設する方法と、記録層と透明支持体の間に塗設する方法とがある。
【0132】
本発明に用いられる染料含有層には、水酸基含有率2.5質量%以上の高分子化合物を含有せしめることが好ましい。水酸基含有率2.5質量%以上の高分子化合物としては任意のものを用いることができるが、特に水酸基含有率2.5質量%以上の部分エステル化セルロース誘導体が好ましい。具体的にはイーストマンケミカル社製セルロースアセテートブチレートCAB−553−0.4、イーストマンケミカル社製セルロースアセテートプロピオネートCAP504−0.2、CAP−482−0.5、イーストマンケミカル社製セルロースアセテートCA398−3、CA398−6、CA398−10、CA398−30、CA394−60S等が挙げられるが、これに限定されることは無い。水酸基含有率は2.5質量%以上が好ましく、2.5質量%〜17質量%がより好ましく、3質量%〜17質量%がさらに好ましい。水酸基含有率が17質量%を超えると塗膜の吸湿耐性が劣化することがある。水酸基含有率が2.5質量%以上の高分子化合物の含有量は任意であるが50質量%以上が好ましく、50質量%〜99質量%がより好ましく、60質量%〜99質量%がさらに好ましい。
【0133】
尚、上記における水酸基含有率は下式のように定義される。
水酸基含有率(質量%)={〔高分子化合物(または、部分エステル化セルロース誘導体)に含まれる水酸基の質量〕/〔該高分子化合物(または、該部分エステル化セルロース誘導体)の質量〕}×100また、本発明の染料含有層には、分子内にフェノール性水酸基を有するビニル系モノマーを構成モノマーとして有するビニル系重合体を含有せしめることが好ましい。分子内にフェノール性水酸基を有するビニル系モノマーとしては、ビニルフェノール、ハロゲン置換ビニルフェノール、4−ヒドロキシフェニルメタクリレート、4−ヒドロキシフェニルアクリレート、4−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド等が挙げられるが、これに限定されることは無い。
【0134】
これら分子内にフェノール性水酸基を有するビニル系モノマーを構成モノマーとして有するビニル系重合体は、単一重合によるホモポリマーでも、他の共重合可能なビニル系モノマーとの共重合によるコポリマーでも使用が可能である。コポリマーを使用する際には、分子内にフェノール性水酸基を有するビニル系モノマーと共重合させるビニル系モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、N−メチロールメタクリルアミド、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイン酸、無水マレイン酸、酢酸ビニル等が好ましい。
【0135】
分子内にフェノール性水酸基を有するビニル系モノマーを構成モノマーとして有するビニル系重合体の具体例としては、丸善化学製マルカリンカーシリーズの内、Mタイプ、CMMタイプ、CHMタイプ、MBタイプ、PHMCタイプ、CSTタイプ、CBAタイプ等が挙げられるが、これに限定されることは無い。分子内にフェノール性水酸基を有するビニル系モノマーを構成モノマーとして有するビニル系重合体の含有量は任意であるが、5質量%以上が好ましく、5質量%〜50質量%がより好ましい。含有量が大きくなりすぎると塗膜の透明性が不十分となることがある。
【0136】
また、本発明に用いられる染料含有層には、分子内にアルコール性水酸基を有するビニル系モノマーを構成モノマーとして有するビニル系重合体を含有せしめることが好ましい。分子内にアルコール性水酸基を有するビニル系モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、N−メチロールメタクリルアミド、ビニルアルコール等が挙げられるが、これに限定されることは無い。
【0137】
これら分子内にアルコール性水酸基を有するビニル系モノマーを構成モノマーとして有するビニル系重合体は、単一重合によるホモポリマーでも、他の共重合可能なビニル系モノマーとの共重合によるコポリマーでも使用が可能である。コポリマーを使用する際には、分子内にアルコール性水酸基を有するビニル系モノマーと共重合させるビニル系モノマーは、その共重合が可能な範囲で任意であるが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイン酸、無水マレイン酸、酢酸ビニル等が好ましい。
【0138】
分子内にアルコール性水酸基を有するビニル系モノマーを構成モノマーとして有するビニル系重合体の含有量は任意であるが、10質量%以上が好ましく、10質量%〜50質量%がより好ましい。含有量が50質量%を超えると塗膜の透明性が不十分となることがある。
【0139】
また、上述の水酸基含有率2.5%以上の部分エステル化セルロース誘導体、フェノール性水酸基を有するビニル系モノマーを構成モノマーとして有するビニル系重合体、分子内にアルコール性水酸基を有するビニル系モノマーを構成モノマーとして有するビニル系重合体は任意に組み合わせて使用することができる。
【0140】
本発明に用いられる染料含有層には、以上述べてきた高分子化合物類の他にも、バインダーとして機能する高分子化合物を含有せしめることができる。バインダーとして機能する高分子化合物の種類は任意であるが、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテート等のセルロースエステル類、ポリビニルブチラール類、ポリエステル類、ビニル系ポリマー類が好ましく使用できる。ビニル系ポリマー類としては、アクリル−メタクリル系ラテックス、スチレン−ブタジエン系ラテックスも好ましく使用可能である。
【0141】
本発明に用いられる染料含有層に用いる染料はシアニン染料もしくはポリメチン染料が好ましい。さらに好ましくは一般式〔1〕で表されるシアニン染料が挙げられる。一般式〔1〕で表されるシアニン染料の具体例としては例えば下記構造を有するDA1〜DA11の化合物が挙げられるが、これに限定されることはない。また、一般式〔2〕で表されるポリメチン染料および一般式〔3〕で表されるポリメチン染料も好ましい。一般式〔2〕で表されるポリメチン染料の具体例としては例えば下記構造を有するDB1〜DB5の化合物が挙げられるが、これに限定されることはない。一般式〔3〕で表されるポリメチン染料の具体例としては例えば下記構造を有するDC1〜DC3の化合物が挙げられるが、これに限定されることはない。
【0142】
【化64】
【0143】
【化65】
【0144】
【化66】
【0145】
【化67】
【0146】
本発明の染料含有層に含有せしめる本発明の一般式〔1〕で表されるシアニン染料、一般式〔2〕で表されるポリメチン染料、一般式〔3〕で表されるポリメチン染料の含有量は、該染料含有層の露光波長における透過吸光度が0.4以上となる量である。好ましくは該透過吸光度が0.6以上、さらに好ましくは0.8以上となる量である。
【0147】
本発明の染料含有層には,必要に応じて、ノニオン系、カチオン系、アニオン系の界面活性剤を使用することができる。特に各系においてフッ素系界面活性剤も好ましく使用することができる。また、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、マット剤、隣接層との接着剤、相溶化剤、充填材等を含有せしめることができる。
【0148】
本発明の染料含有層は、各材料を溶剤中に溶解し、支持体または下引きを施した支持体に塗布し、乾燥して付設することができるが、溶剤に溶解しない素材は分散状態で塗布乾燥することも可能である。溶媒にはメチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、トルエン、酢酸エチル、エタノール、メタノール、水等、およびそれらの混合物が好ましく使用できるが、これらに限定されることは無い。
【0149】
本発明の熱現像画像記録材料には、支持体の画像記録層がある側の最外層または支持体の画像記録層がある側とは反対側の最外層として、保護層を設けることができる。保護層のバインダーとして疎水性の樹脂またはラテックスを用いる場合に、好ましく使用可能な樹脂として、変性セルロースが挙げられる。変性セルロースとしては、セルロースの水酸基を脂肪酸エステルに変性した樹脂が特に好ましい。この際、「セルロースの脂肪酸エステル」中の脂肪酸エステル部分の含有率が40質量%以上であることが、最外層の水との接触角を増大させる効果が得られるうえから好ましい。また、好ましい脂肪酸エステルとして、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル等が挙げられるが、これに限定はされない。
【0150】
他の好ましく使用可能なラテックスとして、「アルキルアクリレートおよびアルキルメタアクリレートから選ばれる少なくとも1種」を構成モノマーとして含有するラテックスが挙げられる。さらに、該ラテックスの「アルキルアクリレートおよびアルキルメタアクリレートから選ばれる少なくとも1種」の共重合比率が75質量%以上であることが、接触角を増大させる効果が得られるうえから好ましい。該「アルキルアクリレートおよびアルキルメタアクリレートから選ばれる少なくとも1種」におけるアルキル基は任意であるが、炭素数1から8の直鎖状、分岐状、環状のアルキルが挙げられる。
【0151】
また、スチレンを構成モノマーとして有するラテックスも好ましく、特にスチレンの共重合比率が10質量%〜50質量%であるものはさらに好ましい。スチレンの共重合比率が10質量%以上であることが、接触角を増大させる効果が得られるうえから好ましく、また50質量%以下であることが、画像記録層との接着性を劣化させない点から好ましい。
【0152】
また、「アルキルアクリレートおよびアルキルメタアクリレートから選ばれる少なくとも1種」とスチレンを共に構成要素として含む共重合ラテックスも好ましい。また、これらのラテックスにおいて使用可能な他の共重合モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸モノマー、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシ基含有モノマー、リン酸エステル系モノマー、アミノ基含有モノマー、4級アンモニウム基含有モノマー等が挙げられるが、これに限定はされない。
【0153】
本発明に用いることのできる硬調化剤の例として、ヒドラジン化合物が挙げられる。好ましく使用できるヒドラジン化合物の例として、特開平11−65020号に記載されているヒドラジン誘導体が挙げられる。また、その他の好ましい例として特開2002−40593の段落[0047]〜[0053]に記載のヒドラジン化合物(H−1−1〜H−4−5)が挙げられる。
【0154】
本発明に用いることのできる、他の硬調化剤の例として、下記一般式(1)で表されるビニル化合物が挙げられる。
【0155】
【化68】
【0156】
〔式中、Xは電子吸引基を表し、但しシアノ基を除く。Rはハロゲン原子、オキシ基、チオ基、アミノ基またはヘテロ環基を表す。Wは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アシル基、チオアシル基、オキサリル基、オキシオキサリル基、−S−オキサリル基、オキサモイル基、オキシカルボニル基、−S−カルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基、−S−スルホニル基、スルファモイル基、オキシスルフィニル基、−S−スルフィニル基、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基、N−スルホニルイミノ基、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基またはインモニウム基を表す。XとW、XとRはそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。XとRは、シス位であっても、トランス位であってもよい。〕
【0157】
一般式(1)において、Xの表す電子吸引基とは、ハメットの置換基定数σp値が正の値を取りうる置換基のことであるが、但しシアノ基は除くものとする。具体的には置換アルキル基(例えば、ハロゲン置換アルキル基等)、置換アルケニル基(例えば、シアノビニル基等)、置換未置換のアルキニル基(例えば、トリフルオロメチルアセチレニル基、シアノアセチレニル基等)、置換アリール基(例えば、シアノフェニル基等)、置換未置換のヘテロ環基(例えば、ピリジル基、トリアジニル基、ベンゾオキサゾリル基等)、ハロゲン原子、アシル基(例えば、アセチル基、トリフルオロアセチル基、ホルミル基等)、チオアシル基(例えば、チオホルミル基、チオアセチル基等)、オキサリル基(例えば、メチルオキサリル基等)、オキシオキサリル基(例えば、エトキサリル基等)、−S−オキサリル基(例えば、エチルチオオキサリル基等)、オキサモイル基(例えば、メチルオキサモイル基等)、オキシカルボニル基(例えば、エトキシカルボニル基、カルボキシル基等)、−S−カルボニル基(例えば、エチルチオカルボニル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、メチルカルバモイル基等)、チオカルバモイル基(例えば、チオカルバモイル基、エチルチオカルバモイル基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基等)、オキシスルホニル基(例えば、メトキシスルホニル基等)、−S−スルホニル基(例えば、エチルチオスルホニル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基等)、オキシスルフィニル基(例えば、メトキシスルフィニル基等)、−S−スルフィニル基(例えば、メチルチオスルフィニル基等)、スルフィナモイル基(例えば、メチルスルフィナモイル基等)、ホスホリル基(例えば、ヂエトキシホスホリル基等)、ニトロ基、イミノ基(例えば、フェニルイミノ基等)、N−カルボニルイミノ基(例えば、N−アセチルイミノ基等)、N−スルホニルイミノ基(例えば、N−メタンスルホニルイミノ基等)、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基等が挙げられるが、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、インモニウム基等が環を形成したヘテロ環状のものも含まれる。σp値として0.30以上のものが好ましい。
【0158】
Wとしては、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、トリフロオロメチル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、ハロゲン置換ビニル基、シアノビニル基等)、アルキニル基(例えば、アセチレニル基、シアノアセチレニル基等)、アリール基(例えば、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等)、ヘテロ環基(例えば、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、スクシンイミド基、テトラゾリル基、トリアゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基等)の他、上記Xで具体的に説明したようなハロゲン原子、アシル基、チオアシル基、オキサリル基、オキシオキサリル基、−S−オキサリル基、オキサモイル基、オキシカルボニル基、−S−カルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基、−S−スルホニル基、スルファモイル基、オキシスルフィニル基、−S−スルフィニル基、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基、N−スルホニルイミノ基、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基等が挙げられる。
【0159】
Wとしてはハメットの置換基定数σp値が正の値をとりうる電子吸引基が好ましく、σp値として0.30以上のものがさらに好ましい。
【0160】
Rとしてはハロゲン原子、オキシ基(例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノカルボニルオキシ基等)、チオ基(例えば、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルケニルチオ基、アルキニルチオ基、アシルチオ基、アルコキシカルボニルチオ基、アミノカルボニルチオ基等)、およびヒドロキシ基、メルカプト基の有機または無機の塩、アミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基、オキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホンアミド基等)、ヘテロ環基(5〜6環の含窒素ヘテロ環基)等が挙げられる。該ヘテロ環基としては5〜6員の含窒素ヘテロ環であり、5〜6員の含窒素ヘテロ芳香環で環内のN原子を通して結合するものが好ましく、ピロール、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾール等から導かれる基で表されるものであり、具体的にはイミダゾール、ベンゾトリアゾール等から導かれる基が好ましい。
【0161】
Rとして好ましくはヒドロキシ基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、ヒドロキシまたはメルカプトの有機または無機塩、ヘテロ環基等が挙げられる。Rとしてさらに好ましくはヒドロキシ基、アルコキシ基、ヒドロキシの有機または無機塩、ヘテロ環基が挙げられ、特にヒドロキシ基、ヒドロキシの有機または無機塩が好ましい。XとW、XとR、WとRは互いに結合して環状構造を形成していてもよく、XとWが形成する環としては例えばピラゾロン、ピラゾリジノン、シクロペンタンジオン、β−ケトラクトン、β−ケトラクタム等が挙げられる。XおよびWで表される置換基中にチオエーテル基(−S−)を含む化合物は好ましい。
【0162】
本発明に好ましく使用できる一般式(1)で表されるビニル化合物の具体例は特開2002−40593号公報の段落[0063]〜[0086)[化17]〜[化40])の化合物1−1〜92−7に記載されている。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0163】
本発明において、さらに他の硬調化剤として、下記一般式(P)で表される4級オニウム化合物および一般式(Na)で表されるアミノ化合物(造核促進剤)が好ましく用いられる。
【0164】
【化69】
【0165】
式中、Qは窒素原子または燐原子を表し、R1、R2、R3およびR4は各々独立に、水素原子または置換基を表し、X−はアニオンを表す。尚、R1〜R4は互いに連結して環を形成してもよい。
【0166】
【化70】
【0167】
一般式〔Na〕において、R11、R12およびR13は各々独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換アリール基、または飽和若しくは不飽和のヘテロ環を表す。R11、R12およびR13で環を形成してもよい。特に好ましくは脂肪族の3級アミン化合物である。これらの化合物は分子中に耐拡散性基またはハロゲン化銀吸着基を有するものが好ましい。耐拡散性を有するためには分子量100以上の化合物が好ましく、さらに好ましくは分子量300以上であり、前記一般式〔H〕におけるAにおける耐拡散基と同義のものが挙げられる。また、好ましい吸着基としては複素環、メルカプト基、チオエーテル基、チオン基、チオウレア基等が挙げられる。
【0168】
一般式〔Na〕で表される造核促進剤よりさらに好ましい造核促進剤として下記一般式〔Na2〕で表される化合物が挙げられる。
【0169】
【化71】
【0170】
一般式〔Na2〕において、R1、R2、R3およびR4は、各々独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アリール基、置換アリール基または飽和若しくは不飽和のヘテロ環を表す。これらは互いに連結して環を形成することができる。又、R1とR2、R3とR4が同時に水素原子であることはない。XはS、SeまたはTe原子を表す。L1およびL2は各々独立に2価の連結基を表す。具体的には、−CH2−、−CH=CH−、−C2H4−、ピリジンジイル、−N(Z1)−(Z1は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す)、−O−、−S−、−(CO)−、−(SO2)−、−CH2N−、またはその組み合わせおよびそれらに適当な置換基(例えばアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、アシルアミノ基、スルホンアミド基等)を有する基が挙げられる。
【0171】
又、L1またはL2で表される連結基は、該連結基中に−[CH2CH2O]−、−[C(CH3)HCH2O]−、−[OC(CH3)HCH2O]−、−[OCH2C(OH)HCH2]−の構造を少なくとも1以上含むことが好ましい。
【0172】
一般式〔Na〕または〔Na2〕で表される造核促進剤の具体例は特開2002−40593号公報の段落0099〜0102のNa−1〜Na−22として記載がある。但し、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0173】
一般式(P)において、R1〜R4で表される置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、アリル基、ブテニル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基、ブチニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、複素環基(例えば、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、ピリジル基、フリル基、チエニル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、スルホラニル基等)、アミノ基等が挙げられる。
【0174】
R1〜R4が互いに連結して形成しうる環としては、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、キヌクリジン環、ピリジン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環等が挙げられる。
【0175】
R1〜R4で表される基はヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基、スルホ基、アルキル基、アリール基等の置換基を有してもよい。
【0176】
R1、R2、R3およびR4としては、水素原子およびアルキル基が好ましい。X−が表すアニオンとしては、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン等の無機および有機のアニオンが挙げられる。
【0177】
さらに好ましくは下記一般式(Pa)、(Pb)または(Pc)で表される化合物、および下記一般式〔T〕で表される化合物である。
【0178】
【化72】
【0179】
式中、A1、A2、A3、A4およびA5は、含窒素複素環を完成させるための非金属原子群を表し、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでもよく、ベンゼン環が縮合しても構わない。A1、A2、A3、A4およびA5で構成される複素環は置換基を有してもよく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、スルファモイル基、カルバモイル基、ウレイド基、アミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表す。A1、A2、A3、A4およびA5の好ましい例としては、5〜6員環(ピリジン、イミダゾール、チオゾール、オキサゾール、ピラジン、ピリミジン等の各環)を挙げることができ、さらに好ましい例としてピリジン環が挙げられる。
【0180】
BPは2価の連結基を表し、mは0または1を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、−SO2−、−SO−、−O−、−S−、−CO−、−N(R6)−(R6はアルキル基、アリール基、水素原子を表す)を単独または組み合わせて構成されるものを表す。Bpとして好ましくは、アルキレン基、アルケニレン基を挙げることができる。
【0181】
R1、R2およびR5は各々独立に、炭素数1〜20のアルキル基を表す。又、R1およびR2は同一でも異っていてもよい。アルキル基とは、置換或いは無置換のアルキル基を表し、置換基としては、A1、A2、A3、A4およびA5の置換基として挙げた置換基と同様である。
【0182】
R1、R2およびR5の好ましい例としては、それぞれ炭素数4〜10のアルキル基である。さらに好ましい例としては、置換或いは無置換のアリール置換アルキル基が挙げられる。
【0183】
Xp−は分子全体の電荷を均衡さすに必要な対イオンを表し、例えば塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、p−トルエンスルホナート、オキザラート等を表す。npは分子全体の電荷を均衡さすに必要な対イオンの数を表し、分子内塩の場合にはnpは0である。
【0184】
【化73】
【0185】
上記一般式〔T〕で表されるトリフェニルテトラゾリウム化合物のフェニル基の置換基R5、R6、R7は水素原子もしくは電子吸引性度を示すハメットのシグマ値(σP)が負のものが好ましい。
【0186】
フェニル基におけるハメットのシグマ値は多くの文献、例えばジャーナル・オブ・メディカルケミストリー(Journal of Medical Chemistry)20巻、304頁、1977年記載のC.ハンシュ(C.Hansch)等の報文等に見ることができ、特に好ましい負のシグマ値を有する基としては、例えばメチル基(σP=−0.17以下何れもσP値)、エチル基(−0.15)、シクロプロピル基(−0.21)、n−プロピル基(−0.13)、イソプロピル基(−0.15)、シクロブチル基(−0.15)、n−ブチル基(−0.16)、イソブチル基(−0.20)、n−ペンチル基(−0.15)、シクロヘキシル基(−0.22)、アミノ基(−0.66)、アセチルアミノ基(−0.15)、ヒドロキシル基(−0.37)、メトキシ基(−0.27)、エトキシ基(−0.24)、プロポキシ基(−0.25)、ブトキシ基(−0.32)、ペントキシ基(−0.34)等が挙げられ、これらは何れも一般式〔T〕の化合物の置換基として有用である。
【0187】
nは1或いは2を表し、XTn−で表されるアニオンとしては、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲンイオン、硝酸、硫酸、過塩素酸等の無機酸の酸根、スルホン酸、カルボン酸等の有機酸の酸根、アニオン系の界面活性剤、具体的にはp−トルエンスルホン酸アニオン等の低級アルキルベンゼンスルホン酸アニオン、p−ドデシルベンゼンスルホン酸アニオン等の高級アルキルベンゼンスルホン酸アニオン、ラウリルスルフェートアニオン等の高級アルキル硫酸エステルアニオン、テトラフェニルボロン等の硼酸系アニオン、ジ−2−エチルヘキシルスルホサクシネートアニオン等のジアルキルスルホサクシネートアニオン、セチルポリエテノキシサルフェートアニオン等の高級脂肪酸アニオン、ポリアクリル酸アニオン等のポリマーに酸根のついたもの等を挙げることができる。
【0188】
以下、一般式(P)で表される4級オニウム化合物は特開2002−40593号公報の段落0119〜0128に具体例P−1〜P−55,T−1〜T−18として記載されている。但し、本発明の化合物はこれらに限定されるものではない。
【0189】
上記4級オニウム化合物は公知の方法に従って容易に合成でき、例えば上記テトラゾリウム化合物は Chemical Reviews55巻335〜483頁に記載の方法を参考にできる。
【0190】
これら4級オニウム化合物の添加量は、ハロゲン化銀1モル当たり1×10−8〜1モル程度、好ましくは1×10−7〜1×10−1モルである。これらはハロゲン化銀粒子形成時から塗布までの任意の時期に感光材料中に添加できる。
【0191】
4級オニウム化合物およびアミノ化合物は、単独で用いても2種以上を適宜併用して用いてもよい。また感光材料の構成層中のいかなる層に添加してもよいが、好ましくは画像記録層を有する側の構成層の少なくとも1層、さらには画像記録層および/またはその隣接層に添加する。
【0192】
本発明において有機銀塩は還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸およびヘテロ有機酸の銀塩、特に長鎖(10〜30、好ましくは15〜25の炭素原子数)の脂肪族カルボン酸および含窒素複素環が好ましい。配位子が、4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機または無機の銀塩錯体も有用である。好適な銀塩の例は、Research Disclosure第17029および29963に記載されており、次のものがある:有機酸の塩(例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の塩);銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩(例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等);アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀錯体(例えば、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等)、ヒドロキシ置換酸類(例えば、サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5,5−チオジサリチル酸))、チオン類の銀塩または錯体(例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン、および3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン)、イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾールおよび1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾールおよびベンゾトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体または塩;サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;およびメルカプチド類の銀塩。好ましい銀源はベヘン酸銀、アラキジン酸および/またはステアリン酸である。
【0193】
有機銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号公報に記載されている様なコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウムなど)を作製した後に、コントロールドダブルジェットにより、前記ソープと硝酸銀などを添加して有機銀塩の結晶を作製する。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよい。
【0194】
本発明におけるハロゲン化銀粒子は光センサーとして機能するものである。本発明においては、画像形成後の白濁を低く抑えるため、および良好な画質を得るために平均粒子サイズが小さい方が好ましく、平均粒子サイズが0.1μm以下、より好ましくは0.01μm〜0.1μm、特に0.02μm〜0.08μmが好ましい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体或いは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。又、正常晶でない場合、例えば球状、棒状、或いは平板状の粒子の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。またハロゲン化銀は単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下をいう。さらに好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1%〜20%となる粒子である。
【0195】
単分散度=(粒子サイズの標準偏差)/(粒子サイズの平均値)×100
本発明においては、ハロゲン化銀粒子が平均粒子サイズ0.1μm以下でかつ単分散粒子であることがより好ましく、この範囲にすることで画像の粒状性も向上する。
【0196】
ハロゲン化銀粒子の形状については、特に制限はないが、ミラー指数〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、さらには70%以上、特に80%以上であることが好ましい。ミラー指数〔100〕面の比率は増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985)により求めることができる。
【0197】
またもう一つの好ましいハロゲン化銀の形状は、平板粒子である。ここでいう平板粒子とは、投影面積の平方根を粒子サイズrμmとして垂直方向の厚みをhμmとした場合のアスペクト比=r/hが3以上のものをいう。その中でも好ましくはアスペクト比が3〜50である。また粒子サイズは0.1μm以下であることが好ましく、さらに0.01μm〜0.08μmが好ましい。これらは米国特許第5,264,337号明細書、第5,314,798号明細書、第5,320,958号明細書等に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。本発明においてこれらの平板状粒子を用いた場合、さらに画像の鮮鋭性も向上する。
【0198】
ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。本発明に用いられる乳剤は、P.Glafkides著Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。
【0199】
本発明に用いられるハロゲン化銀には、照度不軌改良等のために、元素周期律表の6族から10族に属する金属のイオンまたは錯体イオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Au等が好ましい。
【0200】
感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩することができるが本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
【0201】
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は化学増感されていることが好ましい。好ましい化学増感法としては当業界でよく知られているように硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法、金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等の貴金属増感法や還元増感法を用いることができる。
【0202】
本発明においては感光材料の失透を防ぐためには、ハロゲン化銀および有機銀塩の総量は、銀量に換算して1m2当たり0.5g〜2.2gであることが好ましい。この範囲にすることで硬調な画像が得られる。また銀総量に対するハロゲン化銀の量は、質量比で50%以下、好ましくは25%以下、さらに好ましくは0.1%〜15%の間である。
【0203】
本発明の熱現像画像記録材料には還元剤を内蔵させる。好適な還元剤の例は、米国特許第3,770,448号明細書、同3,773,512号明細書、同3,593,863号明細書、およびResearch Disclosure第17029および29963に記載されており、次のものがある。アミノヒドロキシシクロアルケノン化合物(例えば、2−ヒドロキシピペリジノ−2−シクロヘキセノン);還元剤の前駆体としてアミノリダクトン類(reductones)エステル(例えば、ピペリジノヘキソースリダクトンモノアセテート);N−ヒドロキシ尿素誘導体(例えば、N−p−メチルフェニル−N−ヒドロキシ尿素);アルデヒドまたはケトンのヒドラゾン類(例えば、アントラセンアルデヒドフェニルヒドラゾン);ホスファーアミドフェノール類;ホスファーアミドアニリン類;ポリヒドロキシベンゼン類(例えば、ヒドロキノン、tert−ブチル−ヒドロキノン、イソプロピルヒドロキノンおよび(2,5−ジヒドロキシ−フェニル)メチルスルホン);スルフヒドロキサム酸類(例えば、ベンゼンスルフヒドロキサム酸);スルホンアミドアニリン類(例えば、4−(N−メタンスルホンアミド)アニリン);2−テトラゾリルチオヒドロキノン類(例えば、2−メチル−5−(1−フェニル−5−テトラゾリルチオ)ヒドロキノン);テトラヒドロキノキサリン類(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン);アミドオキシン類;アジン類(例えば、脂肪族カルボン酸アリールヒドラザイド類とアスコルビン酸の組み合わせ);ポリヒドロキシベンゼンとヒドロキシルアミンの組み合わせ、リダクトンおよび/またはヒドラジン;ヒドロキサン酸類;アジン類とスルホンアミドフェノール類の組み合わせ;α−シアノフェニル酢酸誘導体;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体の組み合わせ;5−ピラゾロン類;スルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオン等;クロマン;1,4−ジヒドロピリジン類(例えば、2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジン);ビスフェノール類(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(6−ヒドロキシ−m−トリ)メシトール(mesitol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,5−エチリデン−ビス(2−tert−ブチル−6−メチル)フェノール);紫外線感応性アスコルビン酸誘導体および3−ピラゾリドン類。中でも特に好ましい還元剤はヒンダードフェノール類である。ヒンダードフェノール類としては下記一般式(A)で表される化合物が挙げられる。
【0204】
【化74】
【0205】
式中、Rは水素原子、または炭素原子数1〜10のアルキル基(例えば、−C4H9、2,4,4−トリメチルペンチル)を表し、R’およびR”は炭素原子数1〜5のアルキル基(例えば、メチル、エチル、tert−ブチル)を表す。
一般式(A)で表される化合物の具体例として、以下のA−1〜A−7を挙げることができる。但し、本発明で用いることができる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0206】
【化75】
【0207】
【化76】
【0208】
前記一般式(A)で表される化合物を始めとする還元剤の使用量は好ましくは銀1モル当り1×10−2〜10モル、特に1.5×10−2〜1.5モルである。
【0209】
本発明の熱現像画像記録材料に好適なバインダーは透明または半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマーおよびコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルピロリドン、カゼイン、デンプン、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリビニルアセタール類(例えば、ポリビニルホルマールおよびポリビニルブチラール)、ポリエステル類、ポリウレタン類、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリエポキシド類、ポリカーボネート類、ポリビニルアセテート、セルロースエステル類、ポリアミド類がある。親水性でも疎水性でもよいが、本発明においては、熱現像後のカブリを低減させるために、疎水性透明バインダーを使用することが好ましい。好ましいバインダーとしては、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタンなどがあげられる。その中でもポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステルは特に好ましく用いられる。
本発明においては、熱現像の速度を速めるために画像記録層(感光層)のバインダー量が1.5〜10g/m2であることが好ましい。さらに好ましくは1.7〜8g/m2である。1.5g/m2未満では未露光部の濃度が大巾に上昇し、使用に耐えない場合がある。
【0210】
本発明においては、画像記録層側にマット剤を含有することが好ましく、熱現像後の画像の傷つき防止のためには、感光材料の表面にマット剤を配することが好ましく、そのマット剤を画像記録層側の全バインダーに対し、質量比で0.5〜30%含有することが好ましい。また、支持体をはさみ画像記録層の反対側に非感光層を設ける場合は、当該反対側の少なくとも1層中にマット剤を含有することが好ましく、感光材料のすべり性や指紋付着防止のためにも感光材料の表面にマット剤を配することが好ましく、そのマット剤を画像記録層側の反対側の層の全バインダーに対し、質量比で0.5〜40%含有することが好ましい。
【0211】
マット剤の形状は、定形、不定形どちらでも良いが、好ましくは定形で、球形が好ましく用いられる。
【0212】
本発明の熱現像画像記録材料は支持体上に少なくとも一層の画像形成層(感光層)を有している。支持体の上に画像記録層のみを形成しても良いが、画像記録層の上に少なくとも1層の非感光層を形成することが好ましい。画像記録層に通過する光の量または波長分布を制御するために画像記録層と同じ側にフィルター染料層および/または反対側にアンチハレーション染料層、いわゆるバッキング層を形成しても良いし、画像記録層に染料または顔料を含ませても良い。
【0213】
これらの非感光層には前記のバインダーやマット剤を含有することが好ましく、さらにポリシロキサン化合物やワックスや流動パラフィンのようなスベリ剤を含有してもよい。
【0214】
また、本発明の熱現像画像記録材料には、塗布助剤として各種の界面活性剤が用いられる。その中でもフッ素系界面活性剤が、帯電特性を改良したり、斑点状の塗布故障を防ぐために好ましく用いられる。
【0215】
画像記録層(感光層)は複数層にしても良く、また階調の調節のため感度を高感層/低感層または低感層/高感層にしても良い。
【0216】
本発明に用いられる好適な色調剤の例はResearch Disclosure第17029に開示されている。
【0217】
本発明の熱現像材料には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができる。
【0218】
本発明の熱現像画像記録材料中にはカブリ防止剤が含まれて良い。各種の添加剤は画像記録層(感光層)、非感光層、またはその他の形成層のいずれに添加しても良い。本発明の熱現像画像記録材料には例えば、界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、被覆助剤等を用いても良い。これらの添加剤および上述したその他の添加剤はResearch Disclosure 第17029(1978年6月p.9〜15)に記載されている化合物を好ましく用いることができる。
【0219】
本発明で用いられる支持体は、現像処理後に所定の光学濃度を得るため、および現像処理後の画像の変形を防ぐためにプラスチックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ナイロン、セルローストリアセテート、ポリエチレンナフタレート)であることが好ましい。
【0220】
その中でも好ましい支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)およびシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体を含むプラスチック(以下SPSと略す)の支持体が挙げられる。支持体の厚みとしては50〜300μm程度、好ましくは70〜180μmである。
【0221】
また熱処理したプラスチック支持体を用いることもできる。採用するプラスチックとしては、前記のプラスチックが挙げられる。支持体の熱処理とはこれらの支持体を製膜後、画像記録層が塗布されるまでの間に、支持体のガラス転移点より30℃以上高い温度で、好ましくは35℃以上高い温度で、さらに好ましくは40℃以上高い温度で加熱することがよい。但し、支持体の融点を超えた温度で加熱しては本発明の効果は得られない。
【0222】
本発明においては帯電性を改良するために金属酸化物および/または導電性ポリマーなどの導電性化合物を構成層中に含ませることができる。これらはいずれの層に含有させてもよいが、好ましくは下引層、バッキング層、画像記録層と下引の間の層などである。
【0223】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0224】
〈下引済みPET支持体の作製〉
市販の2軸延伸熱固定済みの厚さ125μmのPETフィルムの両面に8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に下記下引塗布液a−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて下引層A−1とし、また反対側の面に下記帯電防止加工した下引塗布液b−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて帯電防止加工下引層B−1とした。
【0225】
(支持体の熱処理)
上記の下引済み支持体を160℃設定した全長200m熱処理ゾーンに入れ、張力2kg/cm2、搬送速度20m/分で搬送した。引き続き、40℃のゾーンに15秒間通して後熱処理を行い、巻き取った。この時の巻き取り張力は10kg/cm2であった。
【0226】
(染料含有層の塗布)
支持体の下引き層B−1の上に下記の組成の染料含有層塗布液1を乾燥質量が4.2g/m2になるよう塗布し、55℃で30分乾燥した。
【0227】
染料含有層塗布液1
2−ブタノン 40g
バインダー樹脂
CAB381−20(イーストマンケミカル社製) 3.7g
ポリエステル樹脂(バイテル2200B、ボスティック社製)200mg
一般式〔1〕、〔2〕、〔3〕の染料(表1記載) (表1記載の量)
マット剤:単分散度15%、平均粒子サイズ8μm、単分散シリカ45mg
フッ素化合物(表1記載) (表1記載の量)
【0228】
(ハロゲン化銀乳剤Aの調製)
水900ml中にイナートゼラチン7.5gおよび臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(60/38/2)のモル比の塩化ナトリウムと臭化カリウムと沃化カリウムを含む水溶液および〔Ir(NO)Cl5〕塩を銀1モル当たり1×10−6モルおよび塩化ロジウム塩を銀1モル当たり1×10−6モルを、pAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で添加した。その後4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを添加しNaOHでpHを8、pAg6.5に調整することで還元増感を行い平均粒子サイズ0.06μm、単分散度10%の投影直径面積の変動係数8%、〔100〕面比率87%の立方体沃臭化銀粒子を得た。この乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ脱塩処理を行った。
【0229】
(ベヘン酸ナトリウム溶液の調製)
945mlの純水にベヘン酸32.4g、アラキジン酸9.9g、ステアリン酸5.6gを90℃で溶解した。次に高速で攪拌しながら1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液98mlを添加した。次に濃硝酸0.93mlを加えた後、55℃に冷却して30分攪拌させてベヘン酸ナトリウム溶液を得た。
【0230】
(ベヘン酸銀とハロゲン化銀Aのプレフォーム乳剤の調製)
上記のベヘン酸ナトリウム溶液に、前記ハロゲン化銀乳剤Aを1.51g添加し水酸化ナトリウム溶液でpH8.1に調整した後に、1mol/Lのの硝酸銀溶液147mlを7分間かけて加え、さらに20分攪拌し限外濾過により水溶性塩類を除去した。できたベヘン酸銀は平均粒子サイズ0.8μm、単分散度8%の粒子であった。分散物のフロックを形成後、水を取り除き、さらに6回の水洗と水の除去を行った後乾燥させた。
【0231】
(感光性乳剤の調製)
得られたプレフォーム乳剤を分割し、それにポリビニルブチラール(平均分子量3000)のメチルエチルケトン溶液(17質量%)544gとトルエン107gを徐々に添加して混合した後に、0.5mmサイズのZrO2のビーズミルを用いたメディア分散機で4000psiで分散した。
【0232】
前記支持体上に以下の各層を両面同時塗布し、試料(熱現像画像記録材料)1〜30を作製した。尚、乾燥は各々60℃,15分間で行った。
【0233】
(画像記録層側塗布)
支持体の下引き層A−1の上に、以下の組成の液を塗布銀量が2.4g/m2になる様に塗布した。
【0234】
画像記録層組成
プレフォーム乳剤 240g
増感色素1(0.1%メタノール溶液) 1.7ml
ピリジニウムプロミドペルブロミド(6%メタノール溶液) 3ml
臭化カルシウム(0.1%メタノール溶液) 1.7ml
2,4−ジクロロベンゾイル安息香酸(12%メタノール溶液)9.2ml
2−メルカプトベンズイミダゾール(1%メタノール溶液) 11ml
トリブロモメチルスルホキノリン(5%メタノール溶液) 17ml
染料DA3(0.5%メタノール溶液) 1ml
フタラジン 0.6g
ヒドラジン:例示化合物H−1−1 0.1g
ビニル化合物1 0.3g
4−メチルフタル酸 0.25g
テトラクロロフタル酸 0.2g
現像剤:例示化合物A−4(20%メタノール溶液) 29.5ml
イソシアネート化合物(モーベイ社製、Desmodur N3300)0.5g
【0235】
【化77】
【0236】
【0238】
【化78】
【0239】
(露光および現像処理)
上記で作製した試料(熱現像画像記録材料)を61cm×18cmに切断して25℃、相対湿度40%の条件で12時間調湿した後、10枚ずつ重ねて酸素と水分を透過しないバリア袋に入れたサンプルを2組作製して、1組は冷凍庫(−8℃)にて7日経時し、もう1組を経時処理用として40℃7日間加温した。その後、785nmの半導体レーザーを搭載したイメージセッター機(日本電気社製FT−286R)を用いて露光を行った。その際、露光は25℃、相対湿度40%に調湿した部屋と、30℃、相対湿度75%に調湿した部屋の両方で行った。また、熱現像は富士写真フイルム社製ドライシステムプロセッサFDS−6100Xを使用して行い、露光と同じ環境で熱現像を行った。
【0240】
(評価方法)
25℃、相対湿度40%に調湿した部屋で露光したサンプルおよび30℃、相対湿度75%に調湿した部屋で露光したサンプルについて、現像後、感度を評価した。
【0241】
〈感度変化〉
感度は、テストチャートをレーザーパワーを変えて露光を行い、線幅50μmとなるレーザーパワーの対数値とした。感度変化は冷凍サンプルを基準にして変化量を示した。
感度変化=サーモサンプルの対数値―冷凍サンプルの対数値
数値が大きいほど感度が低い。冷凍サンプルに対して、サーモ後の感度変化が0.05以内であればレーザーパワー調整は必要ないが、それ以上になると調整が必要となる。
【0242】
<カブリ>
感度を測定したテストチャートの露光がない部分の濃度を、マクベスTD904濃度計にて測定した。カブリ上昇は冷凍サンプルを基準にして変化量を示した。
カブリ上昇=サーモサンプルのカブリ値―冷凍サンプルのカブリ値
数値が大きいほどカブリが高い。冷凍サンプルに対して、サーモ後のカブリ上昇が0.03以内であれば実用上問題ない。
【0243】
〈裏写り〉
裏写りは、175LPIの70%平網の部分で以下の3段階で目視評価した。また、30℃、相対湿度75%に調湿した部屋で露光したサンプルについて、高湿条件下露光時の裏写りを評価した。
【0244】
○: 判別できない
△: フィルム上で見える。実用上問題ない
×: 実用上影響が出る
試料の構成を表1に、試験結果を表2にまとめて示す。
【0245】
【表1】
【0246】
【表2】
【0247】
【化79】
【0248】
表2から明らかなように、本発明の条件を満たすフッ素化合物と染料を使用することによって、保存時の感度変動が少なく、カブリが低く、裏写りも発生しない熱現像画像記録材料を提供することができる。
Claims (14)
- 支持体上に少なくとも1層の画像記録層を有する熱現像画像記録材料において、支持体上に形成された層の少なくとも1層が有機溶媒を60質量%以上含有する塗布液を塗布してなる層であり、かつ、支持体上に形成された層の少なくとも1層が一般式(F)で表されるフッ素化合物(F)を含有することを特徴とする熱現像画像記録材料。
一般式(F)
[Rf−(Rc)n]m−Z
[式中、Rfはパーフルオロアルキル基を表し、Rcはアルキレン基、Zは界面活性を持たせるために必要なアニオン性基、カチオン性基、ベタイン性基、またはノニオン性極性基を有する基を表す。nは0または1の整数を表し、mは1〜3の整数を表す。] - 支持体上に少なくとも1層の画像記録層を有する熱現像画像記録材料において、支持体上に形成された層の少なくとも1層が有機溶媒を60質量%以上含有する塗布液を塗布してなる層であり、かつ、支持体上に形成された層の少なくとも1層が、一般式(a1)で表されるフッ素化合物(A)、および/または、炭素原子数が2以上のフッ化アルキル基を2つ以上有し、かつアニオン性またはノニオン性の親水性基の少なくとも一方を有するフッ素化合物(B)(但し、親水性基がノニオン性の場合にはフッ化アルキル基のフッ素原子数が11以下である)を含有することを特徴とする熱現像画像記録材料。
- 前記フッ素化合物(B)がアニオン性の親水性基を持ち、前記フッ素化合物(B)が有するフッ化アルキル基のフッ素原子総数が11以下であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに熱現像画像記録材料。
- 支持体上に少なくとも1層の画像記録層を有する熱現像画像記録材料において、支持体上に形成された層の少なくとも1層が有機溶媒を60質量%以上含有する塗布液を塗布してなる層であり、かつ、支持体上に形成された層の少なくとも1層が一般式(FA)で表されるフッ素化合物(FA)を含有することを特徴とする熱現像画像記録材料。
- 前記フッ素化合物(FA)が、一般式(FA−a)で表される化合物であることを特徴とする請求項6の熱現像画像記録材料。
- 支持体上に少なくとも1層の染料含有層を有し、該染料含有層の露光波長750nm〜1500nmにおける透過吸光度が0.4以上であり、670nmにおける透過吸光度が0.22以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱現像画像記録材料。
- 前記染料含有層中に含まれる染料がシアニン染料もしくはポリメチン染料であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱現像画像記録材料。
- 前記シアニン染料が、下記一般式〔1〕で表される染料であることを特徴とする請求項10記載の熱現像画像記録材料。
- 前記ポリメチン染料が、下記一般式〔2〕で表される染料であることを特徴とする請求項10に記載の熱現像画像記録材料。
- 前記ポリメチン染料が、下記一般式〔3〕で表される染料であることを特徴とする請求項10に記載の熱現像画像記録材料。
- 支持体上に形成された層の少なくとも1層が硬調化剤を含有することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の熱現像画像記録材料。
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2002
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