JP3916949B2 - 熱現像感光材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像感光材料に関するものであり、特に写真製版用に適したスキャナー、イメージセッター用熱現像感光材料に関し、さらに詳しくは、カブリが低く、Dmax(最高濃度)が高く、かつ、処理後の感光材料を長期間保管することができる熱現像感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
支持体上に感光性の画像形成層を有し、画像露光することで画像形成を行う感光材料が、数多く知られている。その中には、環境保全に寄与し画像形成手段を簡易化できるシステムとして、熱現像により画像を形成する技術がある。
近年、写真製版分野においては環境保全や省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれるようになっている。そこで、レーザー・スキャナーまたはレーザー・イメージセッターにより効率的に露光させることができ、かつ高解像度および鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することができる写真製版用途の熱現像感光材料に関する技術開発が必要とされている。このような熱現像感光材料によれば、溶液系処理化学薬品を必要としない、より簡単で環境を損なわない熱現像処理システムを顧客に対して供給することが可能になる。
【0003】
熱現像により画像を形成する方法は、例えば米国特許第3,152,904号明細書、同第3,457,075号明細書、およびD.クロスタボーア(Klosterboer)による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)A」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、J.スタージ(Sturge)、V.ウォールワーズ(Walworth)、A.シェップ(Shepp)編集、第9章第279頁、1989年)に記載されている。このような熱現像感光材料は、還元可能な非感光性の銀源(例えば有機銀塩)、触媒活性量の光触媒(例えばハロゲン化銀)、および銀の還元剤を通常有機バインダーマトリックス中に分散した状態で含有する。感光材料は常温で安定であるが、露光後に高温(例えば、80℃以上)に加熱したときに、還元可能な銀源(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光により形成された潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の還元可能な銀塩の反応によって生成した銀は黒色になり、非露光領域と対照をなすことから画像の形成がなされる。
【0004】
従来から知られている熱現像感光材料は、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノールなどの有機溶剤を溶媒とする塗布液を塗布することにより画像形成層を形成しているものが多い。有機溶剤を溶媒として用いることは、製造工程で人体へ悪影響が及ぶだけでなく、溶剤の回収その他の工程が必要になるためコスト上も不利である。
そこで、水を溶媒とする塗布液を用いて画像形成層を形成する方法が提案されている。例えば特開昭49−52626号公報、特開昭53−116144号公報などには、ゼラチンをバインダーとする画像形成層が記載されている。また特開昭50−151138号公報には、ポリビニルアルコールをバインダーとする画像形成層が記載されている。さらに特開昭60−61747号公報には、ゼラチンとポリビニルアルコールを併用した画像形成層が記載されている。これ以外の例として特開昭58−28737号公報には、水溶性ポリビニルアセタールをバインダーとする画像形成層が記載されている。このようなバインダーを用いれば、水溶媒の塗布液を用いて画像形成層を形成することができるため、環境面およびコスト面のメリットは大きい。
【0005】
しかしながら、ポリビニルアルコール、水溶性ポリアセタールなどのポリマーをバインダーとして用いると、現像部の銀色調が本来好ましいとされる黒色からかけ離れた茶色や黄色になるうえ、露光部の黒化濃度が低くて未露光部の濃度が高い等の問題があり、商品価値が著しく損なわれたものしか得られなかった。さらに、上記の熱現像システムでは従来の化学処理システムに比べ、感光材料を長期間保存するとカブリが上昇する、あるいは、高温の場所に一時的に保管した場合に短時間でカブリが上昇してしまうという問題があった。加えて、上記の熱現像システムでは従来の化学処理感材に比べ、熱現像処理後の感光材料を長期間保管することによりカブリが上昇しやすいという問題があった。このため、前述の水溶媒の塗布液で用いるバインダーで、カブリが低くDmax(最高濃度)が高く、高コントラストな画像を得ることができ、かつ処理後の感光材料を長期間保管してもカブリの上昇が少ない熱現像感光材料を提供することが望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の解決しようとする第一の課題は、特に写真製版用、中でもスキャナー、イメージセッター用熱現像感光材料において、カブリが低く、Dmax(最高濃度)が高く、かつ処理後の感光材料を長期間保管してもカブリの上昇が少ない熱現像感光材料を提供することにある。
さらに、本発明の解決しようとする第二の課題は、環境面、コスト面で有利な水系塗布可能な熱現像感光材料を提供することにある。
【0007】
(1)支持体の一方面上に、非感光性有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、銀イオンのための還元剤、およびバインダーを有する熱現像感光材料において、下記一般式(1)、(N1)〜(N6)、(M1)、(M2)または下記化合物群から選択される化合物を少なくとも1種含み、前記非感光性有機銀塩を含む画像形成層に用いるバインダーの50質量%以上はガラス転移温度が40℃以下のポリマーラテックスであり、該ポリマーラテックス中のNH 4 + イオン含量が固形分に対して50ppm以下であることを特徴とする熱現像感光材料。
【化12】
一般式(1)において、Zは芳香族基、ヘテロ環基、またはアミノ基を表し、Mは水素原子、銀原子、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属を表す。mは1または2の整数を表し、Mが1価の原子の時は1、Mが2価の原子の時は2を表す。nは0または1の整数を表す。 R 1 およびR 2 はそれぞれ水素原子または置換基を表し、それぞれ同じでも異なっていても良く、またZと結合して環状構造を形成していてもよい。
【化13】
一般式(N1)において、Xは置換アルキル基、−C(R 2 )=C(Y)(Z)基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換アリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基、ハロゲン原子、アシル基、チオアシル基、オキサリル基、オキシオキサリル基、−S−オキサリル基、オキサモイル基、オキシカルボニル基、−S−カルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基、−S−スルホニル基、スルファモイル基、オキシスルフィニル基、−S−スルフィニル基、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基、N−スルホニルイミノ基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基およびインモニウム基から選択されるハメットの置換基定数σpが正の値を取りうる置換基を表し、Wは水素原子、アルキル基、−C(R 2 )=C(Y)(Z)基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アシル基、チオアシル基、オキサリル基、オキシオキサリル基、−S−オキサリル基、オキサモイル基、オキシカルボニル基、−S−カルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基、−S−スルホニル基、スルファモイル基、オキシスルフィニル基、−S−スルフィニル基、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基、N−スルホニルイミノ基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基またはインモニウム基を表す。Rはハロゲン原子、ヒドロキシ基もしくはその塩、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノカルボニルオキシ基オキシ基、メルカプト基もしくはその塩、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルケニルチオ基、アルキニルチオ基、アシルチオ基、アルコキシカルボニルチオ基、アミノカルボニルチオチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基、 オキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホンアミド基アミノ基またはヘテロ環基を表す。ここで、XおよびWにおいて、R 2 は水素原子または置換基を表し、YおよびZは各々独立に水素原子または置換基を表すが、少なくとも一方は、置換アルキル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換アリール基、ハロゲン原子、アシル基、チオアシル基、オキサリル基、オキシオキサリル基、−S−オキサリル基、オキサモイル基、オキシカルボニル基、−S−カルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基、−S−スルホニル基、スルファモイル基、オキシスルフィニル基、−S−スルフィニル基、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基、N−スルホニルイミノ基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基およびインモニウム基から選択されるハメットの置換基定数σpが正の値を取りうる置換基を表す。
ここで、Rがヒドロキシ基またはヒドロキシ基の塩を表すとき、XとWは何れもホルミル基であることはなく、XとWの組み合わせにおいて、一方が無置換アルコキシカルボニル基を表すとき、他方が無置換アルコキシカルボニル基または無置換アルキルスルホニル基であることはない。また、XとW、またはWとRが互いに結合して環状構造を形成することはない。また、X、W、Rは何れも連結基を介して銀塩への吸着促進基を含むことはない。
なお、XとRはシスの形で表示してあるが、XとRがトランスの形を含む。
【化14】
一般式(N2)において、R 11 はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。R 12 はヘテロ環基、アルケニル基またはアミノ基を表す。Xは酸素原子または硫黄原子を表し、A 1 およびA 2 はともに水素原子或いは一方が水素原子で他方がアルキルスルホニル基、オキザリル基またはアシル基を表す。
【化15】
一般式(N3)において、R 21 は置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R 22 は水素原子、アルキルアミノ基、アリールアミノ基またはヘテロ環アミノ基を表す。A 1 およびA 2 はともに水素原子或いは一方が水素原子で他方がアルキルスルホニル基、オキザリル基またはアシル基を表す。
【化16】
一般式(N4)においてG 31 およびG 32 は−(CO) p −基、−C(=S)−、スルホニル基、スルホキシ基、−P(=O)R 33 −基またはイミノメチレン基を表し、pは1または2の整数を表し、R 33 はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ア ルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基またはアミノ基を表す。R 31 およびR 32 はアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基またはヘテロ環チオ基を表す。但し、G 31 がスルホニル基のとき、G 32 はカルボニル基ではない。A 1 およびA 2 はともに水素原子或いは一方が水素原子で他方がアルキルスルホニル基、オキザリル基またはアシル基を表す。
【化17】
一般式(N5)においてR 41 は水素原子または一価の置換基を表し、A 1 およびA 2 はともに水素原子或いは一方が水素原子で他方がアルキルスルホニル基、オキザリル基またはアシル基を表す。
【化18】
一般式(N6)において、R 51 、R 52 およびR 53 はそれぞれ独立に置換もしくは無置換のアリール基またはヘテロアリール基を表す。R 54 およびR 55 は無置換または置換アルキル基を表す。A 1 およびA 2 はともに水素原子或いは一方が水素原子で他方がアルキルスルホニル基、オキザリル基またはアシル基を表す。
【化19】
一般式(M1)において、Zは直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。Wはアリール基または電子求引性基で置換されたアルキル基を表す。ここでWはZと互いに結合して環状構造を形成してもよい。Mは陽イオンを表す。
【化20】
一般式(M2)においてX、YおよびZはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Mは陽イオンを表す。
化合物群
【化21】
【化22】
(2)前記一般式(1)、(N1)〜(N6)、(M1)、(M2)または前記化合物群から選択される化合物が、非感光性有機銀塩上及び近傍に現像開始点を形成可能な化学種をイメージワイズに生成する化合物であることを特徴とする(1)に記載の熱現像感光材料。
(3) 前記一般式(1)、(N1)〜(N6)、(M1)、(M2)または前記化合物群から選択される化合物が、0.01mol/銀molで添加することにより現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する化合物であることを特徴とする(1)に記載の熱現像感光材料。
(4) 前記一般式(1)、(N1)〜(N6)、(M1)、(M2)または前記化合物群から選択される化合物が、0.01mol/銀molで添加することによりカバリングパワーが120〜1000%に増加する化合物であることを特徴とする(1)に記載の熱現像感光材料。
(5)前記ポリマーラテックスが、重合反応後のpH調整剤としてNH 4 + イオンを含有しないアルカリ化合物を用いて調製されたものであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
(6)前記pH調整剤が、LiOH、NaOHおよびKOHから選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
(7)前記ポリマーラテックスが、NH 4 + イオンを含有しない重合開始剤を用いて重合したポリマーラテックスであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
(8)前記重合開始剤が、K 2 S 2 O 8 またはNa 2 S 2 O 8 であることを特徴とする(7)に記載の熱現像感光材料。
(9)画像形成層を有する側のNH 4 + イオン含量が、支持体1m 2 当たり0.06mmol以下であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
(10)前記ポリマーラテックスの少なくとも1種が、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/ブタジエン/イタコン酸コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/スチレン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/ジビニルベンゼン/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/塩化ビニル/アクリル酸コポリマーのラテックス、塩化ビニリデン/エチルアクリレート/アクリロニトリル/メタクリル酸コポリマーのラテックスから選択されることを特徴とする(1〜9のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の熱現像感光材料について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
【0009】
まず、本発明の熱現像感光材料に用いられる、▲1▼非感光性有機銀塩上及び近傍に現像開始点を形成可能な化学種をイメージワイズに生成する化合物、▲2▼0.01mol/銀molで添加することにより現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する化合物、▲3▼0.01mol/銀molで添加することによりカバリングパワーが120〜1000%に増加する化合物について説明する。なお、本明細書では、これら▲1▼〜▲3▼のいずれかに該当する化合物を「本発明の化合物」という。
【0010】
先ず、▲1▼非感光性有機銀塩上及び近傍に現像開始点を形成可能な化学種をイメージワイズに生成する化合物について説明する。▲1▼の化合物が感光材料中に存在しない場合は、露光により潜像が形成したハロゲン化銀上でのみ、物理現像が進行する。▲1▼の化合物が感光材料中に存在する場合は、露光により潜像が形成したハロゲン化銀上で起こる物理現像に伴って生成する化学種、例えば現像主薬酸化体と▲1▼の化合物が反応し、非感光性有機銀塩上及び近傍に現像開始点を形成可能な化学種が生成する。その化学種が非感光性銀塩、例えばベヘン酸銀上及び近傍に現像開始点を形成し、そこから物理現像が起こる。すなわち、▲1▼の化合物が感光材料中に存在する場合は、露光により潜像が形成したハロゲン化銀上、およびイメージワイズに現像開始点が形成された非感光性有機銀塩上及び近傍の両方で物理現像が進行する。
【0011】
図1は、▲1▼の化合物が0.01mol/銀molで感光材料中に存在する場合(A)、および存在しない場合(B)の両方について、現像後の感光材料を厚さ2μmに切削し、その薄片の電子顕微鏡写真を撮影した結果である。撮影対象となった熱現像感光材料は、特願2000−393931号明細書の実施例1における実験No.1の熱現像感光材料(特願2001−390779号明細書の実施例1における実験No.1の熱現像感光材料と同一)であり、現像処理は当該実施例1に記載される通りに行った。本発明の化合物を添加することによりが現像銀粒子の数が、大幅に増加していることが図1より明らかである。
【0012】
次に、▲2▼0.01mol/銀molで添加することにより現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する化合物について説明する。現像銀粒子密度の増加量は、感光材料中の全ての銀イオンが還元されたサンプルについて、前記図1に示すような写真を撮影し、単位面積当たりの現像銀粒子の数を数え、その密度を比較することにより得ることができる。本発明の化合物が感光材料中に存在する場合は、該化合物が感光材料中に存在しない場合に比べ、現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する。より好ましい化合物の現像銀粒子密度増加率は500〜3000%である。
【0013】
次に、▲3▼0.01mol/銀molで添加することによりカバリングパワーが120〜1000%に増加する化合物について説明する。本明細書において「カバリングパワー」とは、感光材料中の全ての銀イオンが還元されたサンプルについて、可視濃度を現像銀量(g/m2)で割った値である。本発明の化合物によるカバリングパワーの増加は、前記図1の(A)と(B)の比較からわかるように、より小さな現像銀粒子が数多く形成されることによる。より好ましい化合物のカバリングパワー増加率は150〜500%である。
【0014】
前記いずれかの化合物は、本発明においては後述する一般式(1)で表される化合物、一般式( N 1)〜( N 6)のいずれかで表される化合物、一般式( M 1)または( M 2)で表される化合物、または後述する特定の構造の化合物群から選択される化合物である。
【0015】
最初に前記の一般式(1)で表される本発明の化合物を説明する。
なお、該化合物としては、特開平11−149136号公報にも般式(1)として記載されている。一般式(1)で示される化合物の具体例を以下に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
【0019】
【表4】
【0020】
【表5】
【0021】
【表6】
【0022】
【表7】
【0023】
【表8】
【0024】
【表9】
【0025】
【表10】
【0026】
【表11】
【0027】
【表12】
【0028】
次に、本発明の化合物群の化合物を説明する。
該化合物は、特願2000−313207号明細書に記載の蟻酸プレカーサーとして記載もしくは包含されるものである。なお、これ以外に、下記化合物X
【化23】
および下記化合物が、本発明の化合物群に含まれる。
化合物群(蟻酸プレカーサー)
【0029】
【化1】
【0030】
次に、本発明の一般式(N1)、(N2)、(N3)、(N4)、(N5)、(N6)、(M1)または(M2)で表される化合物を説明する。
【0031】
一般式(N1)で表される化合物について説明する。
【0032】
【化2】
【0033】
式中のX、W、Rは前述の通りである。
【0034】
Xにおいて規定された置換基は、電子求引基であり、ハメットの置換基定数σpが正の値を取りうる置換基のことである。該置換基をさらに説明すると、置換アルキル基(ハロゲン置換アルキル基等)、前述の特定の置換アルケニル基(シアノビニル基等)、置換、無置換のアルキニル基(トリフルオロメチルアセチレニル基、シアノアセチレニル基、ホルミルアセチレニル基等)、置換アリール基(シアノフェニル基等)、置換、無置換のヘテロ環基(ピリジル基、トリアジニル基、ベンゾオキサゾリル基等)、ハロゲン原子、アシル基、(アセチル基、トリフルオロアセチル基、ホルミル基等)、チオアシル基(チオホルミル基、チオアセチル基等)、オキサリル基(メチルオキサリル基等)、オキシオキサリル基(エトキサリル基等)、−S−オキサリル基(エチルチオオキサリル基等)、オキサモイル基(メチルオキサモイル基等)、オキシカルボニル基(エトキシカルボニル基、カルボキシル基等)、−S−カルボニル基(エチルチオカルボニル基等)、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基(エトキシスルホニル基等)、−S−スルホニル基(エチルチオスルホニル基等)、スルファモイル基、オキシスルフィニル基(メトキシスルフィニル基等)、−S−スルフィニル基(メチルチオスルフィニル基等)、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基(イミノ基、N−メチルイミノ基、N−フェニルイミノ基、N−ピリジルイミノ基、N−シアノイミノ基、N−ニトロイミノ基等)、N−カルボニルイミノ基(N−アセチルイミノ基、N−エトキシカルボニルイミノ基、N−エトキサリルイミノ基、N−ホルミルイミノ基、N−トリフルオロアセチルイミノ基、N−カルバモイルイミノ基等)、N−スルホニルイミノ基(N−メタンスルホニルイミノ基、N−トリフルオロメタンスルホニルイミノ基、N−メトキシスルホニルイミノ基、N−スルファモイルイミノ基等)、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基およびインモニウム基から選択される基であり、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、インモニウム基等が環を形成したヘテロ環状のものも含まれる。σp値として0.2以上のものが好ましく0.3以上のものがさらに好ましい。
【0035】
Wとしては水素原子、アルキル基(メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基等)、前述の特定のアルケニル基(ビニル基、ハロゲン置換ビニル基、シアノビニル基等)、アルキニル基(アセチレニル基、シアノアセチレニル基等)、アリール基(フェニル基、クロロフェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等)、ヘテロ環基(ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、キノキサリニル基、トリアジニル基、スクシンイミド基、テトラゾリル基、トリアゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基等)の他上記Xで説明したようなハロゲン原子、アシル基、チオアシル基、オキサリル基、オキシオキサリル基、−S−オキサリル基、オキサモイル基、オキシカルボニル基、−S−カルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基、−S−スルホニル基、スルファモイル基、オキシスルフィニル基、−S−スルフィニル基、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基、N−スルホニルイミノ基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基またはインモニウム基である。
【0036】
Wとしてはハメットの置換基定数σpが正の値を取りうる電子求引基の他、上記したようなアリール基およびヘテロ環基も好ましい。但し、本発明において、XとWの組み合わせにおいて、一方が無置換アルコキシカルボニル基を表すとき、他方が無置換アルコキシカルボニル基および無置換アルキルスルホニル基を表すことはない。
【0037】
また、XとW、WとRが互いに結合して環状構造を形成することはない。Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノカルボニルオキシ基(以後これらをまとめてオキシ基とも称す)、メルカプト基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルケニルチオ基、アルキニルチオ基、アシルチオ基、アルコキシカルボニルチオ基、アミノカルボニルチオ基(以後これらをまとめてチオ基とも称す)およびヒドロキシ基、メルカプト基の有機または無機の塩、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基、オキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホンアミド基(以後これらをまとめてアミノ基とも称す)、ヘテロ環基(5〜6員の含窒素ヘテロ環基)を表す。
【0038】
ヘテロ環基としては5〜6員の含窒素ヘテロ環であり、好ましくは5〜6員の含窒素ヘテロ芳香環で、環内の窒素原子を通して結合するものがさらに好ましく、ピロール環基、ジアゾール環基、トリアゾール環基、テトラゾール環基等で表されるものであり、具体的にはイミダゾール環基、ベンゾトリアゾール環基等が好ましい。ここで、Rがヒドロキシ基またはヒドロキシ基の塩を表すとき、XとWはいずれもホルミル基を表すことはない。
【0039】
Rとして好ましくはヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、ヒドロキシまたはメルカプトの有機または無機塩、ヘテロ残基等が挙げられる。Rとしてさらに好ましくはヒドロキシ基、ヒドロキシの有機または無機塩、ヘテロ残基が挙げられ、特にヒドロキシ基、ヒドロキシの有機または無機塩が好ましい。
【0040】
また、本発明においては、X、W、Rは何れも耐拡散性基を含まないものである。耐拡散性基とは写真用のカプラーなどにおけるバラスト基と呼ばれるもので、添加された化合物が感光材料の被膜中を移動しないような嵩高い分子量とするものである。
【0041】
また、本発明においては、特に、X、W、Rは何れも−O−、−S−、−N(R1)−(R1は水素原子、アルキル基、アリール基を表す)、−CO−、−CS−、−SO2−、−SO−、−P(O)−、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環基等の単独またはこれらの基の組み合わせからなる連結基を介して、チオアミド基、脂肪族メルカプト基、芳香族メルカプト基、ヘテロ環メルカプト基およびベンゾトリアゾール、トリアゾール、テトラゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾール、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾオキサゾール、オキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、トリアジンから選ばれる5〜6員の含窒素ヘテロ環で表される銀塩への吸着促進基を含まないものである。
【0042】
本発明において、X、Wで表される置換基中にチオエーテル基(−S−)を含む化合物が好ましい。
以下に、XおよびWで表される下記アルケン基を説明する。
−C(R2)=C(Y)(Z)
R2は水素原子および置換基を表し、Y、Zは水素原子および置換基を表すが、Y、Zのうちの少くとも一方は置換アルキル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換アリール基、ハロゲン原子、アシル基、チオアシル基、オキサリル基、オキシオキサリル基、−S−オキサリル基、オキサモイル基、オキシカルボニル基、−S−カルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基、−S−スルホニル基、スルファモイル基、オキシスルフィニル基、−S−スルフィニル基、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基、N−スルホニルイミノ基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基およびインモニウム基から選択されるハメットの置換基定数σpが正の値を取りうる置換基を表す。上記一般式で表されるXおよびWとしては、例えば次の様な基が挙げられる。
【0043】
【化3】
【0044】
【化4】
【0045】
また、XおよびWのうち少なくとも一方が次の様なアルキン基を有するものも好ましい。
【0046】
【化5】
【0047】
R3は水素原子および置換基を表し、置換基としては先述したXおよびWの中で挙げたような電子求引性基が好ましい。上記一般式で表されるXおよびWとしては例えば次のような基が挙げられる。
【0048】
【化6】
【0049】
また、XおよびWのうち少くとも一方が置換アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アルキニルカルボニル基から選ばれるアシル基を有するものも好ましく、XおよびWとしては例えば次のような基が挙げられる。
【0050】
【化7】
【0051】
【化8】
【0052】
また、XおよびWのうち少なくとも一方がオキサリル基を有するものも好ましく、XおよびWとしては例えば次のような基が挙げられる。
【0053】
−COCOCH3、−COCOOC2H5、−COCONHCH3、−COCOSC2H5、−COCOOC2H4SCH3、−COCONHC2H4SCH3また、XおよびWのうち少なくとも一方が電子求引性基の置換したアリール基または含窒素ヘテロ環基を有するものも好ましく、XおよびWとしては例えば次のような基が挙げられる。
【0054】
【化9】
【0055】
本発明において、一般式(N1)で表されるアルケン化合物は、X、W、RおよびHが置換する二重結合に関して異性体構造を取りうる時は総ての異性体を含むものとし、またケト−エノールのような互変異性構造を取りうるときも総ての異性体を含むものとする。
【0056】
一般式(N1)で表される化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0057】
【化10】
【0058】
【化11】
【0059】
【化12】
【0060】
【化13】
【0061】
【化14】
【0062】
【化15】
【0063】
【化16】
【0064】
【化17】
【0065】
【化18】
【0066】
【化19】
【0067】
【化20】
【0068】
【化21】
【0069】
【化22】
【0070】
【化23】
【0071】
【化24】
【0072】
【化25】
【0073】
【化26】
【0074】
【化27】
【0075】
【化28】
【0076】
【化29】
【0077】
【化30】
【0078】
【化31】
【0079】
【化32】
【0080】
【化33】
【0081】
【化34】
【0082】
【化35】
【0083】
【化36】
【0084】
【化37】
【0085】
【化38】
【0086】
【化39】
【0087】
【化40】
【0088】
【化41】
【0089】
【化42】
【0090】
【化43】
【0091】
【化44】
【0092】
【化45】
【0093】
【化46】
【0094】
【化47】
【0095】
【化48】
【0096】
【化49】
【0097】
【化50】
【0098】
【化51】
【0099】
【化52】
【0100】
【化53】
【0101】
【化54】
【0102】
【化55】
【0103】
次に、一般式(N2)で表される化合物について説明する。
【0104】
【化56】
【0105】
式中、R11はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。R12はヘテロ環基、アルケニル基またはアミノ基を表す。Xは酸素原子または硫黄原子を表し、A1、A2はともに水素原子或いは一方が水素原子で他方がアルキルスルホニル基、オキザリル基またはアシル基を表す。
【0106】
R11はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表すが、アルキル基として具体的には、例えばメチル基、エチル基、tert−ブチル基、2−オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基等が挙げられる。アリール基として具体的には、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。ヘテロ環基として具体的には、例えばトリアゾール残基、イミダゾール残基、ピリジン残基、ピリミジン残基、インドール残基、ベンゾチアゾール残基、ベンズイミダゾール残基、フラン残基、チオフェン残基、ピペリジノ基、ピロリジノ基、モルホリノ基などが挙げられる。R12はヘテロ環基、アルケニル基、アミノ基を表すが、ヘテロ環基として具体的には、例えばトリアゾール残基、イミダゾール残基、ピリジン残基、ピリミジン残基、インドール残基、ベンゾチアゾール残基、ベンズイミダゾール残基、フラン残基、チオフェン残基、ピペリジノ基、ピロリジノ基、モルホリノ基などが挙げられる。アルケニル基として具体的には、エテニル基、プロぺニル基等が挙げられる。アミノ基として具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基などが挙げられる。Xは酸素原子または硫黄原子を表し、A1、A2は、ともに水素原子、または一方が水素原子で他方はアシル基(アセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル等)、スルホニル基(メタンスルホニル、トルエンスルホニル等)、またはオキザリル基(エトキザリル等)を表す。
【0107】
一般式(N2)で表される化合物の中でも、特に下記一般式(N2A)で表される化合物がより好ましく用いられる。
【0108】
【化57】
【0109】
式中、R111、R112およびR113はそれぞれ独立に置換もしくは無置換のアリール基またはヘテロアリール基を表す。X、R12、A1およびA2は一般式(N2)と同義である。
【0110】
R111、R112およびR113はそれぞれ独立に置換もしくは無置換のアリール基またはヘテロアリール基を表すが、アリール基として具体的には、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。ヘテロアリール基として具体的には、例えばトリアゾール残基、イミダゾール残基、ピリジン残基、ピリミジン残基、インドール残基、ベンゾチアゾール残基、ベンズイミダゾール残基、フラン残基、チオフェン残基などが挙げられる。
【0111】
また、R111、R112およびR113はそれぞれ任意の連結基を介して結合しても良い。R111、R112およびR113が置換基を有する場合、その置換基としては例えばアルキル基(R11で表されるアルキル基と同義である)、アルケニル基(R12で表されるアルケニル基と同義である)、アルキニル基(例えばエチニル基、プロパギル基等を表す)、アリール基(R11で表されるアリ−ル基と同じものを表す)、ヘテロ環基(R11で表されるヘテロ環基と同義である)、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の基を表し、これらの基の他、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、ナフチルオキシ基等の基)、アシルオキシ基(例えばアセチルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の基)、アシル基(A1で表されるアシル基と同じものを表す)、アルコキシカルボニル基(例えばアセチルオキシカルボニル基、トリフルオロアセチルオキシカルボニル基、プロピオニルオキシカルボニル基等の基)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基、p−メチルフェノキカルボニルシ基、ナフチルオキシカルボニル基等の基)、カルバモイル基(例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、メトキシフェニルカルバモイル基等の基)、カルバモイルオキシ基(例えばウレタン基、メチルカルバモイルオキシ基、ジエチルカルバモイルオキシ基、ジブチルカルバモイルオキシ基、フェニルカルバモイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルバモイルオキシ基、p−シアノフェニルカルバモイルオキシ基等の基)、カルボキシル基、イミド基、アミノ基(R12で表されるアミノ基と同じものを表す)、カルボンアミド基(例えばアセトアミド基、プロピオンアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ベンズアミド基、p−メトキシベンズアミド基、p−クロロベンズアミド基等の基)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、トリフルオロメタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、p−トルエンスルホンアミド基、p−クロロベンゼンスルホンアミド基等の基)、ウレイド基(例えばウレイド基、メチルウレイド基、ジエチルウレイド基、ジブチルウレイド基、フェニルウレイド基、p−メトキシフェニルウレイド基、p−シアノフェニルウレイド基等の基)、チオウレイド基(例えばチオウレイド基、メチルチオウレイド基、ジエチルチオウレイド基、ジブチルチオウレイド基、フェニルチオウレイド基、p−メトキシフェニルチオウレイド基、p−シアノフェニルチオウレイド基等の基)、スルファモイルアミノ基(例えばスルファモイルアミノ基、メチルスルファモイルアミノ基、エチルスルファモイルアミノ基、ブチルスルファモイルアミノ基、ジエチルスルファモイルアミノ基、ジブチルスルファモイルアミノ基、フェニルスルファモイルアミノ基、p−メトキシフェニルチオウレイド基、p−シアノフェニルチオウレイド基等の基)、セミカルバジド基(メチルセミカルバジド基、エチルセミカルバジド基、フェニルセミカルバジド基等の基)、チオセミカルバジド基(メチルチオセミカルバジド基、エチルチオセミカルバジド基、フェニルチオセミカルバジド基等の基)、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基(トリメチルアンモニオ基、ピリジニオ基等の基)、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基(これらのまた以下のアルキル、アリールについてはR11におけるアルキル基とアリール基と同義である)、メルカプト基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルカルバモイル基、(アルキルもしくはアリール)スルファモイル基、その他、アシルスルファモイル基(アセチルスルファモイル基、プロピオニルスルファモイル基、ベンゾイルスルファモイル基等の基)、スルホ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、リン酸アミド基などが挙げられる。R111、R112およびR113として好ましくはいずれもが置換もしくは無置換のフェニル基であり、より好ましくはR111、R112およびR113のいずれもが無置換のフェニル基である。X、R12、A1およびA2は一般式(N2)と同義である。R12として好ましくはピリジルオキシ基、チエニルオキシ基である。
A1、A2として、好ましくはA1、A2ともに水素原子の場合である。
【0112】
次に、一般式(N3)で表される化合物について説明する。
【0113】
【化58】
【0114】
式中、R21は置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R22は水素原子、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を表す。A1、A2はともに水素原子或いは一方が水素原子で他方がアルキルスルホニル基、オキザリル基またはアシル基を表す。
【0115】
R21は置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表すが、アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、2−オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基等が挙げられる。アリール基およびヘテロアリール基として具体的には、R111、R112およびR113と同様のものが挙げられる。また、R21が置換基を有する場合の置換基の具体的な例としては、R111、R112およびR113の置換基と同様のものが挙げられる。R21として好ましくはアリール基またはヘテロアリール基であり、特に好ましくは置換もしくは無置換のフェニル基である。
【0116】
R22は水素、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を表すが、アルキルアミノ基として具体的には、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基等が挙げられる。アリールアミノ基としてはアニリノ基、ヘテロ環アミノ基としてはチアゾリルアミノ基、ベンズイミダゾリルアミノ基、ベンズチアゾリルアミノ基等が挙げられる。R22として好ましくはジメチルアミノ基またはジエチルアミノ基である。
A1、A2は一般式(N2)で記載したA1、A2と同様である。
【0117】
次に、一般式(N4)で表される化合物について説明する。
【0118】
【化59】
【0119】
式中、G31、G32は−(CO)p−基、−C(=S)−、スルホニル基、スルホキシ基、−P(=O)R33−基またはイミノメチレン基を表し、pは1または2の整数を表し、R33はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基、アミノ基を表す。R31、R32はアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基を表す。但し、G31がスルホニル基のとき、G32はカルボニル基ではない。A1、A2はともに水素原子或いは一方が水素原子で他方がアルキルスルホニル基、オキザリル基またはアシル基を表す。
【0120】
R31、R32はアルキル基(R12で表されるアルキル基と同義である)、アルケニル基(R12で表されるアルケニル基と同義である)、アリール基(R12で表されるアリール基と同義である)、ヘテロアリール基(R111で表されるヘテロアリール基と同義である)、アルコキシ基(R111の置換基として挙げられたアルコキシ基と同義である)、アルケニルオキシ基(アルケニルとしてはR12で表されるものと同義である)、アリールオキシ基(R111の置換基として挙げられたアリールオキシ基と同義である)、ヘテロ環オキシ基(ここにおけるヘテロ環基としてはR11の置換基として挙げられたヘテロ環基と同義である)、アルキルチオ基(ここにおけるアルキル基としてはR11の置換基として挙げられたアルキル基と同義である)、アルケニルチオ基(ここにおけるアルケニル基としてはR12の置換基として挙げられたアルケニル基と同義である)、アリールチオ基(ここにおけるアリール基としてはR11の置換基として挙げられたアリール基と同義である)、ヘテロ環チオ基(ここにおけるヘテロ環基としてはR11の置換基として挙げられたヘテロ環基と同義である)を表す。好ましくはアリール基またはアルコキシ基である。特に好ましいのは、R31とR32の少なくとも一つがtert−ブトキシ基であるものであり、別の好ましい構造は、R31が置換もしくは無置換のフェニル基のとき、R32がtert−ブトキシ基である。
【0121】
G31、G32は−(CO)p−基、−C(=S)−、スルホニル基、スルホキシ基、−P(=O)R33−基またはイミノメチレン基を表し、pは1または2の整数を表し、R33はアルキル基(ここにおけるアルキル基としてはR11の置換基として挙げられたアルキル基と同義である)、アルケニル基(ここにおけるアルケニル基としてはR12の置換基として挙げられたアルケニル基と同義である)、アルキニル基(ここにおけるアルキニル基としてはR111の置換基として挙げられたアルキニル基と同義である)、アリール基(ここにおけるアリール基としてはR11の置換基として挙げられたアリール基と同義である)、アルコキシ基(ここにおけるアルコキシ基としてはR111の置換基として挙げられたアルコキシ基と同義である)、アルケニルオキシ基(ここにおけるアルケニル基としてはR12の置換基として挙げられたアルケニル基と同義である)、アルキニルオキシ基(ここにおけるアルキニル基としてはR111の置換基として挙げられたアルキニル基と同義である)、アリールオキシ基(ここにおけるアリールオキシ基としてはR111の置換基として挙げられたアリールオキシ基と同義である)、アミノ基(R1 2の置換基として挙げられたアニノ基と同義である)を表す。但し、G31がスルホニル基のとき、G32はカルボニル基ではない。G31、G32として好ましくは−CO−基、−COCO−基、スルホニル基または−CS−であり、より好ましくは互いに−CO−基または互いにスルホニル基である。
A1、A2は一般式(N2)で記載したA1、A2と同様である。
【0122】
次に、一般式(N5)で表される化合物について説明する。
【0123】
【化60】
【0124】
式中、R41は水素原子または一価の置換基を表し、A1、A2はともに水素原子或いは一方が水素原子で他方がアルキルスルホニル基、オキザリル基またはアシル基を表す。
【0125】
R41は水素原子または一価の置換基を表すが、一価の置換基としては、R111、R112およびR113の置換基として挙げられた基が挙げられるが、好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基が挙げられる。より好ましくは、R41がアリール基、ヘテロアリール基の時である。A1、A2は一般式(N2)で記載したA1、A2と同様である。
【0126】
次に、一般式(N6)で表される化合物について説明する。
【0127】
【化61】
【0128】
式中、R51、R52およびR53はそれぞれ独立に置換もしくは無置換のアリール基またはヘテロアリール基を表す。R54、R55は無置換または置換アルキル基を表す。A1、A2はともに水素原子或いは一方が水素原子で他方がアルキルスルホニル基、オキザリル基またはアシル基を表す。
【0129】
R51、R52およびR53は一般式(N2A)におけるR111、R112およびR113と同義である。R51、R52およびR53として好ましくはいずれもが置換もしくは無置換のフェニル基であり、より好ましくはR51、R52およびR53のいずれもが無置換のフェニル基である。R54、R55は無置換または置換アルキル基を表すが、具体的な例としては、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、2−オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基等が挙げられる。R54、R55として好ましくは互いにエチル基である。
A1、A2は一般式(N2)で記載したA1、A2と同様である。
【0130】
一般式(N2)、(N3)、(N4)、(N5)、(N6)で表される化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0131】
【化62】
【0132】
【化63】
【0133】
【化64】
【0134】
【化65】
【0135】
【化66】
【0136】
【化67】
【0137】
【化68】
【0138】
【化69】
【0139】
【化70】
【0140】
【化71】
【0141】
【化72】
【0142】
さらに、本発明の化合物としては下記一般式(M1)、(M2)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0143】
一般式(M1)で表される化合物について説明する。
【0144】
【化73】
【0145】
一般式(M1)中、Zはアルキル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基)、さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。]、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、oまたはmまたはp−メタンスルホニルフェニル基、3,5−ビストリフルオロメチル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)を表す。
【0146】
Zは好ましくは、アルキル基またはアリール基であり、特に好ましくはアリール基である。
【0147】
Zはさらに他の置換基で置換されていても良く、置換基としてはハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよびヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。特に好ましい置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基である。
【0148】
一般式(M1)中、Wはアリール基または電子求引性基で置換されたアルキル基を表す。
【0149】
Wで表されるアリール基は上記のZで説明したアリール基と同義である。該アリール基は、さらに他の置換基で置換されていても良く、この置換基とはZの置換基と同義である。
Wで表されるアリール基には電子求引性基が少なくとも一つ置換していることが好ましい。電子求引性基とは、ハメットの置換基定数σpが正の値を取りうる置換基のことであり、具体的には、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、チオカルボニル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルカンアミド基、スルホンアミド基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、カルボキシ基、スルホ基(またはその塩)、ヘテロ環基、アルケニル基、アルキニル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、スルホニルオキシ基、またはこれら電子求引性基で置換されたアリール基等である。
【0150】
Wで表されるアルキル基は上記のZで説明したアルキル基と同義であるが、少なくとも一つ以上の電子求引性基が置換していなければならない。電子求引性基の定義は前述の通りである。
【0151】
Wは好ましくは、電子求引性基で置換されたアルキル基であり、さらに好ましくは、フッ素原子で置換されたアルキル基であり、特に好ましくはトリフルオロメチル基である。WはZと互いに結合して環状構造を形成しても良い。
【0152】
一般式(M1)において、Mは陽イオンを表わす。例えば水素イオン、金属イオン(例えば、Li、Na、K、Lb、Cs、Ca、Mg、Zn、Ag等)、アンモニウムイオン(例えばNH4、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム等)などが挙げられる。好ましくは、金属イオン、アンモニウムイオンである。
【0153】
次に、一般式(M2)で表される化合物について説明する。
【0154】
【化74】
【0155】
一般式(M2)中、X、YおよびZはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。X、YおよびZで表される置換基としては、写真性能に悪影響のない基であればどのようなものでもかまわないが、好ましい置換基はアルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基)、さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、スルホ基、アルキルおよびアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、2―ピリジルカルボニル基、2―フリルカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)を表わす。
一般式(M2)のXおよびYはさらに好ましくは、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアミノ基であり、特に好ましくはアルキル基である。一般式(M2)のZはさらに好ましくは、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基であり、特に好ましくはアリール基である。
【0156】
一般式(M2)においてX、YおよびZの好ましい組み合わせは、XおよびYがアルキル基であり、かつZがアリール基である。
【0157】
X、YおよびZはさらに他の置換基で置換されていても良く、置換基としては写真性能に悪影響を及ぼさないものであればどのような置換基でもかまわない。例えば、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよびヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。置換基Zには電子求引性基が置換していることが好ましい。電子求引性基とは、ハメットの置換基定数σpが正の値を取りうる置換基のことであり、Chem.Rev.1991,91,165−195に具体例が記載されている。
【0158】
X、YおよびZは互いに同じでも異なっていても良く、また、互いに結合して環構造を形成しても良い。
【0159】
一般式(M2)において、Mは一般式(1)のMと同義である。
【0160】
本発明で用いられる一般式(M1)、一般式(M2)で表される化合物は、その部分構造のエノーレートアニオン部の共役酸のpKa値が3.0〜4.0であることが好ましく、さらには3.2〜3.7であることが特に好ましい。ここでいうpKa値はTHF/水=3/2の混合溶媒系において常法で測定した値である。
【0161】
本発明で用いられる一般式(M1)、一般式(M2)で表される化合物には、さらに以下に記載される基が組み込まれていても良い。これらの基は、一般式(M1)、一般式(M2)で表される化合物の置換可能な部位のいずれかに組み込まれていても良いし、あるいはX、Y、ZおよびWの一部として組み込まれていても良い。
【0162】
本発明で用いられる一般式(M1)、一般式(M2)で表される化合物は、ハロゲン化銀に対して吸着する吸着性の基が組み込まれていてもよい。かかる吸着基としては、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオ尿素基、チオアミド基、メルカプト複素環基、トリアゾール基などの米国特許第4,385,108号明細書、同4,459,347号明細書、特開昭59−195233号公報、同59−200231号公報、同59−201045号公報、同59−201046号公報、同59−201047号公報、同59−201048号公報、同59−201049号公報、特開昭61−170733号公報、同61−270744号公報、同62−948号公報、同63−234244号公報、同63−234245号公報、同63−234246号公報に記載された基が挙げられる。またこれらハロゲン化銀への吸着基は、プレカーサー化されていてもよい。その様なプレカーサーとしては、特開平2ー285344号公報に記載された基が挙げられる。
【0163】
本発明で用いられる一般式(M1)、一般式(M2)で表される化合物は、その中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基またはポリマーが組み込まれているものでもよい。特にバラスト基が組み込まれているものは本発明の好ましい例の1つである。バラスト基は8以上の炭素数を有する、写真性に対して比較的不活性な基であり、例えばアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、フェニル基、アルキルフェニル基、フェノキシ基、アルキルフェノキシ基などの中から選ぶことができる。またポリマーとしては、例えば特開平1−100530号公報に記載のものが挙げられる。
【0164】
本発明で用いられる一般式(M1)、一般式(M2)で表される化合物は、その中にカチオン性基(具体的には、4級のアンモニオ基を含む基、または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基等)、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を含む基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、あるいは塩基により解離しうる解離性基(カルボキシ基、スルホ基、アシルスルファモイル基、カルバモイルスルファモイル基等)が含まれていてもよい。特にエチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を含む基、あるいは(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基が含まれているものは、本発明の好ましい例の1つである。これらの基の具体例としては、例えば特開平7ー234471号公報、特開平5−333466号公報、特開平6−19032号公報、特開平6−19031号公報、特開平5−45761号公報、米国特許4994365号明細書、米国特許4988604号明細書、特開平73−259240号公報、特開平7−5610号公報、特開平7−244348号公報、独特許4006032号明細書等に記載の化合物が挙げられる。
【0165】
本発明の一般式(M1)、一般式(M2)で表される化合物の分子量は、好ましくは50〜10000であり、さらに好ましくは100〜2000であり、特に好ましくは300〜1000である。
【0166】
一般式(M1)で表される化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0167】
【化75】
【0168】
一般式(M2)で表される化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0169】
【化76】
【0170】
【化77】
【0171】
【化78】
【0172】
本発明の化合物は、水または適当な有機溶媒、例えばアルコ−ル類(メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、フッ素化アルコ−ル)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレ−ト、トリクレジルフォスフェ−ト、グリセリルトリアセテ−トあるいはジエチルフタレ−トなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、本発明の化合物の粉末を水等の適当な溶媒中にボ−ルミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散して用いることもできる。
【0173】
本発明の化合物は、1種のみ用いても、2種以上を併用してもよい。本発明の化合物は、支持体に対して画像形成層側のいずれの層に添加してもよいが、該画像形成層あるいはそれに隣接する層に添加することが好ましい。
本発明の化合物の添加量は銀1molに対し1×10-6〜1molが好ましく、1×10-5〜5×10-1molがより好ましく、2×10-5〜2×10-1molが最も好ましい。
【0174】
本発明の熱現像感光材料には五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩を本発明の化合物と併用して用いることが好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどがある。
本発明において好ましく用いることができる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩は、少量で所望の効果を発現するという点から画像形成層あるいはそれに隣接するバインダー層に添加する。
五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩の使用量(感光材料1m2あたりの塗布量)は感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1〜500mg/m2が好ましく、0.5〜100mg/m2がより好ましい。
【0175】
本発明の熱現像感光材料は、非感光性有機銀塩およびバインダーを含有する画像形成層を有する。画像形成層には、非感光性有機銀塩の他に、感光性ハロゲン化銀も含まれていることが好ましい。本発明の熱現像感光材料には、画像形成層が1層だけ形成されていてもよいし、2層以上形成されていてもよい。その画像形成層の少なくとも1層に用いる全バインダーの50質量%以上は、ガラス転移温度が40℃以下のポリマーラテックスである(以降、この画像形成層を「本発明の画像形成層」、バインダーに用いるポリマーラテックスを「本発明のポリマーラテックス」という)。また、ポリマーラテックスは画像形成層だけではなく、保護層やバック層に用いてもよく、特に寸法変化が問題となる印刷用途に本発明の熱現像感光材料を用いる場合には、保護層やバック層にもポリマーラテックスを用いることが好ましい。
【0176】
本明細書で言う「ポリマーラテックス」とは、水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散されたものである。分散状態としては、ポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散されたものなどいずれでもよい。なお本発明で用いるポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などに記載されている。分散粒子の平均粒径は1〜50000nmであることが好ましく、5〜1000nmであることがより好ましい。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限は無く、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
【0177】
本発明のポリマーラテックスは、通常の均一構造のポリマーラテックスであってもよいし、いわゆるコア/シェル型のラテックスであってもよい。コア/シェル型のラテックスの場合、コアとシェルはガラス転移温度が異なっていた方が好ましい場合がある。特に、コアのTgがシェルのTgより高いコア/シェル型ラテックスは、良好な造膜性が得られる。
【0178】
本発明のバインダーに用いるポリマーラテックスのガラス転移温度(Tg)は、保護層、バック層と画像形成層とでは好ましい範囲が異なる。画像形成層にあっては熱現像時に写真有用素材の拡散を促すため、−30〜40℃であるものが好ましい。保護層やバック層に用いる場合には種々の機器と接触するために25〜100℃であるものが好ましい。
ポリマーのTgは、例えば「J.Brandrup,E.H.Immergut共著Polymer Handbook,2nd Edition, III-139〜III-192(1975)」に記載の方法で求められる。
【0179】
本発明で用いるポリマーラテックスの最低造膜温度(MFT)は−30℃〜90℃が好ましく、0℃〜70℃がより好ましい。最低造膜温度をコントロールするために造膜助剤を添加してもよい。造膜助剤は可塑剤ともよばれポリマーラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物(通常有機溶剤)で、例えば前述の「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」に記載されている。
【0180】
本発明のポリマーラテックス中のNH4 +イオン含量は、固形分に対して50ppm以下であるが、30ppm以下がより好ましく、10ppm以下がさらに好ましい。
本発明の熱現像感光材料の画像形成層を有する側のNH4 +イオン含量は、支持体1m2当たり0.06mmol以下が好ましく、さらに好ましくは0.04mmol以下であり、最も好ましくは0.02mmol以下である。
【0181】
ラテックス中のNH4 +イオンは主として重合開始剤として(NH4)2S2O8を用いる場合や重合反応後のpH調整剤としてNH4OHを用いることによって持ち込まれる。ラテックス中に持ち込まれるNH4 +イオンは、本発明の熱現像感光材料の画像形成層塗布液の分散状態に悪影響を与えたり、塗布乾燥後も熱現像感光材料中に残存して熱現像時や保存時にアンモニアとして揮発し、熱現像感光材料の保存性などに悪影響を与えたりすることがある。従って、重合開始剤としてはK2S2O8やNa2S2O8を用いることが好ましい。また、pH調整剤としては、NH4 +イオンを含有しないアルカリ化合物を用いることが好ましく、具体的な化合物例としては、LiOH、KOH、NaOHなどを用いることが好ましく、さらに好ましくは、LiOHである。
また、これらの化合物を2種以上併用することも好ましい。
【0182】
NH4 +イオンの定量は、東ソー社製8000タイプイオンクロマト測定装置(電気伝導度法)および分離カラムとして、東ソー社製TSKgel IC-Cation、ガードカラムとして、TSK guard column IC-Cを用いて測定することができる。本明細書におけるNH4 +イオンの定量は、溶離液として2mM硝酸水溶液を用い、1.2ml/minの流量で行った。また、カラム恒温層温度は40℃で行った。
【0183】
ラテックスからのNH4 +イオンの抽出は、ラテックス1gとイオン交換水3gを混合し、このうちの約2.5mlをSartorius AG製カットオフフィルター(ポアサイズ:5μm)に入れて、遠心分離機(日立工機(株)製,CR22)で3500rpm、25℃、2時間遠心分離して行い、遠心分離によって得られた透明な上澄み液をサンプルのNH4 +イオン含量の応じてイオン交換水で適当に希釈して(例えば、10倍希釈、100倍希釈)測定した。
感光材料からのNH4 +イオンの抽出の際には、抽出液として、酢酸:イオン交換水=1:148混合溶液を用い、抽出液5mlに感光材料(1×3.5cm2)を2時間浸して抽出後、0.45μmのフィルターで濾過した液を測定した。
【0184】
本発明のポリマーラテックスに用いられるポリマー種としては、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはこれらの共重合体などが挙げられる。ポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでも、また架橋されたポリマーでもよい。またポリマーとしては単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでもブロックコポリマーでもよい。ポリマーの分子量は数平均分子量で5,000〜1,000,000が好ましく、10,000〜100,000程度がより好ましい。分子量が小さすぎるものは画像形成層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪くなる傾向がある。
【0185】
本発明の熱現像感光材料の画像形成層のバインダーとして用いられるポリマーラテックスの具体例としては、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/ブタジエン/イタコン酸コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/スチレン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/ジビニルベンゼン/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/塩化ビニル/アクリル酸コポリマーのラテックス、塩化ビニリデン/エチルアクリレート/アクリロニトリル/メタクリル酸コポリマーのラテックスなどが挙げられる。さらに具体的には、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸=33.5/50/16.5(質量%)のコポリマーラテックス、メチルメタクリレート/ブタジエン/イタコン酸=47.5/47.5/5(質量%)のコポリマーラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸=95/5(質量%)のコポリマーラテックスなどが挙げられる。これらのポリマーは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドして用いてもよい。
【0186】
本発明の画像形成層の全バインダー量は0.2〜30g/m2であることが好ましく、1〜15g/m2であることがより好ましい。本発明の画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布製改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
【0187】
画像形成層には必要に応じて全バインダーの50質量%以下の範囲でゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は画像形成層の全バインダーの30質量%以下、さらには15質量%以下が好ましい。
【0188】
画像形成層は水系の塗布液を塗布後乾燥して調製することが好ましい。ただし、ここで言う「水系」とは塗布液の溶媒(分散媒)の60質量%以上が水であることをいう。塗布液の水以外の成分はメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなどの水混和性の有機溶媒を用いることができる。具体的な溶媒組成の例としては以下のようなものがある。水/メタノール=90/10、水/メタノール=70/30、水/エタノール=90/10、水/イソプロパノール=90/10、水/ジメチルホルムアミド=95/5、水/メタノール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メタノール/ジメチルホルムアミド=90/5/5(ただし数字は質量%を表す。)
【0189】
本発明に用いることができる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)および還元剤の存在下で、80℃あるいはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は、還元可能な銀イオン源を含む任意の有機物質であってよい。有機酸の銀塩、特に長鎖脂肪カルボン酸の銀塩(炭素数は好ましくは10〜30、より好ましくは15〜28)が好ましい。また、配位子が4.0〜10.0の範囲の錯体安定度定数を有する有機または無機銀塩の錯体も好ましい。銀供給物質は、好ましくは画像形成層の約5〜70質量%を構成することができる。好ましい有機銀塩として、カルボキシル基を有する有機化合物の銀塩を挙げることができる。具体的には、脂肪族カルボン酸の銀塩および芳香族カルボン酸の銀塩を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。脂肪族カルボン酸の銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、リノール酸銀、酪酸銀および樟脳酸銀、これらの混合物などを挙げることができる。
【0190】
本発明においては、上記の有機酸銀ないしは有機酸銀の混合物の中でも、ベヘン酸銀含有率75mol%以上の有機酸銀を用いることが好ましく、ベヘン酸銀含有率85mol%以上の有機酸銀を用いることがさらに好ましい。ここでベヘン酸銀含有率とは、使用する有機酸銀に対するベヘン酸銀のモル分率を示す。本発明に用いる有機酸銀中に含まれるベヘン酸銀以外の有機酸銀としては、上記の例示有機酸銀を好ましく用いることができる。
【0191】
本発明に好ましく用いられる有機酸銀は、上記の有機酸のアルカリ金属塩(Na塩、K塩、Li塩等が挙げられる)溶液または懸濁液と硝酸銀を反応させることにより調製される。これらの調製方法については、特開2000−292882号公報の段落番号0019〜0021に記載の方法を用いることができる。
【0192】
本発明においては、液体を混合するための密閉手段の中に硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液を添加することにより有機酸銀を調製する方法を好ましく用いることができる。具体的には、特開2000−33907号公報に記載されている方法を用いることができる。
本発明においては有機酸銀の調製時に、硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液、あるいは反応液には水に可溶な分散剤を添加することができる。ここで用いる分散剤の種類および使用量については、特開2000−305214号公報の段落番号0052に具体例が記載されている。
【0193】
本発明に用いる有機酸銀は第3級アルコールの存在下で調製することが好ましい。第3級アルコールとしては、総炭素数15以下の化合物が好ましく、10以下の化合物が特に好ましい。好ましい第3級アルコールの例としては、tert−ブタノール等が挙げられるが、本発明で使用することができる第3級アルコールはこれに限定されない。本発明に用いる第3級アルコールの添加時期は有機酸銀調製時のいずれのタイミングでもよいが、有機酸アルカリ金属塩の調製時に添加して、有機酸アルカリ金属塩を溶解して用いることが好ましい。また、本発明で用いる第3級アルコールは、有機酸銀調製時の溶媒としての水に対して重量比で0.01〜10の範囲で使用することができるが、0.03〜1の範囲で使用することが好ましい。
【0194】
本発明に用いることができる有機銀塩の形状やサイズは特に制限されないが、特開2000−292882号公報の段落番号0024に記載のものを用いることが好ましい。有機銀塩の形状は、有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像から求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)は好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。測定方法としては、例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。この測定法での平均粒子サイズとしては0.05μm〜10.0μmの固体微粒子分散物が好ましい。より好ましい平均粒子サイズは0.1μm〜5.0μm、さらに好ましい平均粒子サイズは0.1μm〜2.0μmである。
【0195】
本発明に用いる有機銀塩は、脱塩したものであることが好ましい。脱塩法は特に制限されず、公知の方法を用いることができるが、遠心ろ過、吸引ろ過、限外ろ過、凝集法によるフロック形成水洗等の公知のろ過方法を好ましく用いることができる。限外ろ過の方法については、特開2000−305214号公報に記載の方法を用いることができる。
【0196】
本発明では、高S/Nで、粒子サイズが小さく、凝集のない有機銀塩固体分散物を得る目的で、画像形成媒体である有機銀塩を含み、かつ感光性銀塩を実質的に含まない水分散液を高速流に変換した後、圧力降下させる分散法を用いることが好ましい。これらの分散方法については特開2000−292882号公報の段落番号0027〜0038に記載の方法を用いることができる。
【0197】
本発明で用いる有機銀塩固体微粒子分散物の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。具体的には、体積荷重平均直径の標準偏差を体積荷重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が80%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。
【0198】
本発明に用いる有機銀塩固体微粒子分散物は、少なくとも有機銀塩と水からなるものである。有機銀塩と水との割合は特に限定されるものではないが、有機銀塩の全体に占める割合は5〜50質量%であることが好ましく、特に10〜30質量%の範囲が好ましい。前述の分散助剤を用いることは好ましいが、粒子サイズを最小にするのに適した範囲で最少量使用するのが好ましく、有機銀塩に対して0.5〜30質量%、特に1〜15質量%の範囲が好ましい。
【0199】
本発明で用いる有機銀塩は所望の量で使用できるが、銀量として0.1〜5g/m2が好ましく、さらに好ましくは1〜3g/m2である。
【0200】
本発明にはCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンを非感光性有機銀塩へ添加することが好ましい。Ca、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの非感光性有機銀塩への添加については、ハロゲン化物でない、水溶性の金属塩の形で添加することが好ましく、具体的には硝酸塩や硫酸塩などの形で添加することが好ましい。ハロゲン化物での添加は処理後の感光材料の光(室内光や太陽光など)による画像保存性、いわゆるプリントアウト性を悪化させるので好ましくない。このため、本発明ではハロゲン化物でない、水溶性の金属塩の形で添加することが好ましい。
【0201】
本発明に好ましく用いるCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの添加時期としては、該非感光性有機銀塩の粒子形成後であって、粒子形成直後、分散前、分散後および塗布液調製前後など塗布直前までであればいずれの時期でもよく、好ましくは分散後、塗布液調製前後である。
本発明におけるCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの添加量としては、非感光性有機銀1molあたり10-3〜10-1molが好ましく、特に5×10-3〜5×10-2molが好ましい。
【0202】
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀は、ハロゲン組成として特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀を用いることができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の粒子形成については、特開平11−119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法で粒子形成することができるが、特にこの方法に限定されるものではない。
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、十四面体、平板状、球状、棒状、ジャガイモ状等を挙げることができるが、本発明においては特に立方体状粒子あるいは平板状粒子が好ましい。粒子のアスペクト比、面指数など粒子形状の特徴については、特開平11−119374号公報の段落番号0225に記載されているものと同じである。また、ハロゲン組成の分布はハロゲン化銀粒子の内部と表面において均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を好ましく用いることができる。構造としては好ましくは2〜5重構造、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。また塩化銀または塩臭化銀粒子の表面に臭化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0203】
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀のハロゲン化銀粒子の粒子サイズは、特に制限されないが0.12μm以下が好ましく、0.01〜0.10μがより好ましい。本発明で用いるハロゲン化銀粒子の粒径分布は、単分散度の値が30%以下であり、好ましくは1〜20%であり、さらに5〜15%である。ここで単分散度は、粒径の標準偏差を平均粒径で割った値の百分率(%)(変動係数)として定義されるものである。なおハロゲン化銀粒子の粒径は、便宜上、立方体粒子の場合は稜長で表し、その他の粒子(八面体、十四面体、平板状など)は投影面積円相当直径で算出する。
【0204】
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表の第VII族あるいは第VIII族の金属または金属錯体を含有する。周期律表の第VII族あるいは第VIII族の金属または金属錯体の中心金属として好ましいのは、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスニウム、イリジウムである。特に好ましい金属錯体は、(NH4)3Rh(H2O)Cl5、K2Ru(NO)Cl5、K3IrCl6、K4Fe(CN)6である。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属および異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1molに対し1×10-9mol〜1×10-3molの範囲が好ましく、1×10-8mol〜1×10-4molの範囲がより好ましい。具体的な金属錯体の構造としては特開平7−225449号公報等に記載された構造の金属錯体を用いることができる。これら重金属の種類、添加方法に関しては、特開平11−119374号公報の段落番号0227〜0240に記載されている。
【0205】
感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている水洗法により脱塩することができるが、本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀乳剤は化学増感することが好ましい。化学増感については、特開平11−119374号公報の段落番号0242〜0250に記載されている方法を用いることが好ましい。
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開EP293,917A号公報に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。
【0206】
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀に含有するゼラチンとしては、感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持するために、低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。低分子量ゼラチンの分子量は、500〜60,000であり、好ましくは分子量1,000〜40,000である。これらの低分子量ゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、脱塩処理後の分散時に使用することが好ましい。また、粒子形成時は通常のゼラチン(分子量100,000程度)を使用し、脱塩処理後の分散時に低分子量ゼラチンを使用してもよい。
【0207】
分散媒の濃度は0.05〜20質量%にすることができるが、取り扱い上5〜15質量%の濃度域が好ましい。ゼラチンの種類としては、通常アルカリ処理ゼラチンが用いられるが、その他に酸処理ゼラチン、フタル化ゼラチンの如き修飾ゼラチンも用いることができる。
【0208】
本発明に用いる感光材料中のハロゲン化銀乳剤は、1種だけを用いてもよいし、2種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)を併用してもよい。
【0209】
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀の使用量としては有機銀塩1molに対して感光性ハロゲン化銀0.01mol〜0.5molが好ましく、0.02mol〜0.3molがより好ましく、0.03mol〜0.25molが特に好ましい。別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法および混合条件については、それぞれ調製を終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に得られる限り特に制限はない。また、混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましい方法である。
【0210】
本発明に用いることができる増感色素としては、ハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので、露光光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。例えば、550nm〜750nmの波長領域を分光増感する色素としては、特開平10−186572号公報の一般式(II)で表される色素が挙げられ、具体的にはII−6、II−7、II−14、II−15、II−18、II−23、II−25の色素を好ましい色素として例示することができる。また、750〜1400nmの波長領域を分光増感する色素としては、特開平11−119374号公報の一般式(I)で表される色素が挙げられ、具体的には(25)、(26)、(30)、(32)、(36)、(37)、(41)、(49)、(54)の色素を好ましい色素として例示することができる。さらに、J−bandを形成する色素として、米国特許第5,510,236号明細書、同第3,871,887号明細書の実施例5に記載の色素、特開平2−96131号公報、特開昭59−48753号公報に開示されている色素を好ましい色素として例示することができる。これらの増感色素は単独で用いてもよく、2種以上組合せて用いてもよい。
【0211】
これら増感色素の添加については、特開平11−119374号公報の段落番号0106に記載されている方法で添加することができるが、特に、この方法に限定されるものではない。
本発明における増感色素の添加量は、感度やカブリの性能に合わせて所望の量にすることができるが、感光層のハロゲン化銀1mol当たり10-6〜1molが好ましく、さらに好ましくは10-4〜10-1molである。
【0212】
本発明は分光増感効率を向上させるため、強色増感剤を用いることができる。本発明に用いる強色増感剤としては、欧州特許公開EP587,338A号公報、米国特許第3,877,943号明細書、同第4,873,184号明細書に開示されている化合物、複素芳香族あるいは脂肪族メルカプト化合物、複素芳香族ジスルフィド化合物、スチルベン、ヒドラジン、トリアジンから選択される化合物などが挙げられる。
特に好ましい強色増感剤は、特開平5−341432号公報に開示されている複素芳香族メルカプト化合物、複素芳香族ジスルフィド化合物、特開平4−182639号公報の一般式(I)あるいは(II)で表される化合物、特開平10−111543号公報の一般式(I)で表されるスチルベン化合物、特開平11−109547号公報の一般式(I)で表わされる化合物である。具体的には特開平5−341432号公報のM−1〜M−24の化合物、特開平4−182639号公報のd−1)〜d−14)の化合物、特開平10−111543号公報のSS−01〜SS−07の化合物、特開平11−109547号公報の31、32、37、38、41〜45、51〜53の化合物である。
これらの強色増感剤の添加量は、画像形成層(乳剤層)中にハロゲン化銀1mol当たり10-4〜1molの範囲が好ましく、ハロゲン化銀1mol当たり0.001〜0.3molの範囲がより好ましい。
【0213】
本発明の熱現像感光材料は、有機銀塩のための還元剤を含む。有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質、好ましくは有機物質である。フェニドン、ハイドロキノンおよびカテコールなどの従来の写真現像剤は有用であるが、ヒンダードフェノール還元剤が好ましい。還元剤は、画像形成層を有する面の銀1molに対して5〜50mol%含まれることが好ましく、10〜40mol%で含まれることがさらに好ましい。還元剤の添加層は支持体に対して画像形成層側のいかなる層でもよい。画像形成層以外の層に添加する場合は銀1molに対して10〜50mol%と多めに使用することが好ましい。また、還元剤は現像時のみ有効に機能するように誘導化されたいわゆるプレカーサーであってもよい。
【0214】
有機銀塩を利用した熱現像感光材料においては広範囲の還元剤を使用することができる。例えば、特開昭46−6074号公報、同47−1238号公報、同47−33621号公報、同49−46427号公報、同49−115540号公報、同50−14334号公報、同50−36110号公報、同50−147711号公報、同51−32632号公報、同51−1023721号公報、同51−32324号公報、同51−51933号公報、同52−84727号公報、同55−108654号公報、同56−146133号公報、同57−82828号公報、同57−82829号公報、特開平6−3793号公報、米国特許第3,679,426号明細書、同第3,751,252号明細書、同第3,751,255号明細書、同第3,761,270号明細書、同第3,782,949号明細書、同第3,839,048号明細書、同第3,928,686号明細書、同第5,464,738号明細書、独国特許第2,321,328号明細書、欧州特許公開EP692,732A号公報などに開示されている還元剤を用いることができる。例えば、フェニルアミドオキシム、2−チエニルアミドオキシムおよびp−フェノキシフェニルアミドオキシムなどのアミドオキシム;例えば4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンズアルデヒドアジンなどのアジン;2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオニル−β−フェニルヒドラジンとアスコルビン酸との組合せのような脂肪族カルボン酸アリールヒドラジドとアスコルビン酸との組合せ;ポリヒドロキシベンゼンと、ヒドロキシルアミン、レダクトンおよび/またはヒドラジンの組合せ(例えばハイドロキノンと、ビス(エトキシエチル)ヒドロキシルアミン、ピペリジノヘキソースレダクトンまたはホルミル−4−メチルフェニルヒドラジンの組合せなど);フェニルヒドロキサム酸、p−ヒドロキシフェニルヒドロキサム酸およびβ−アリニンヒドロキサム酸などのヒドロキサム酸;アジンとスルホンアミドフェノールとの組合せ(例えば、フェノチアジンと2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノールなど);エチル−α−シアノ−2−メチルフェニルアセテート、エチル−α−シアノフェニルアセテートなどのα−シアノフェニル酢酸誘導体;2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、6,6’−ジブロモ−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチルおよびビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタンに例示されるようなビス−β−ナフトール;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体(例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンまたは2’,4’−ジヒドロキシアセトフェノンなど)の組合せ;3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロンなどの5−ピラゾロン;ジメチルアミノヘキソースレダクトン、アンヒドロジヒドロアミノヘキソースレダクトンおよびアンヒドロジヒドロピペリドンヘキソースレダクトンに例示されるようなレダクトン;2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノールおよびp−ベンゼンスルホンアミドフェノールなどのスルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオンなど;2,2−ジメチル−7−tert−ブチル−6−ヒドロキシクロマンなどのクロマン;2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジンなどの1,4−ジヒドロピリジン;ビスフェノール(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−エチリデン−ビス(2−tert−ブチル−6−メチルフェノール)、1,1,−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサンおよび2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなど);アスコルビン酸誘導体(例えば、パルミチン酸1−アスコルビル、ステアリン酸アスコルビルなど);ならびにベンジルおよびビアセチルなどのアルデヒドおよびケトン;3−ピラゾリドンおよびある種のインダン−1,3−ジオン;クロマノール(トコフェロールなど)などがある。特に好ましい還元剤は、ビスフェノール、クロマノールである。
【0215】
本発明において還元剤は、水溶液、有機溶媒溶液、粉末、固体微粒子分散物、乳化分散物などいかなる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0216】
画像を向上させる「色調剤」として知られる添加剤を含ませると光学濃度が高くなることがある。また、色調剤は黒色銀画像を形成させるうえでも有利になることがある。色調剤は支持体に対して画像形成層側の層に銀1molあたりの0.1〜50%molの量含ませることが好ましく、0.5〜20%mol含ませることがさらに好ましい。また、色調剤は現像時のみ有効に機能するように誘導化されたいわゆるプレカーサーであってもよい。
有機銀塩を利用した熱現像感光材料においては広範囲の色調剤を使用することができる。例えば、特開昭46−6077号公報、同47−10282号公報、同49−5019号公報、同49−5020号公報、同49−91215号公報、同50−2524号公報、同50−32927号公報、同50−67132号公報、同50−67641号公報、同50−114217号公報、同51−3223号公報、同51−27923号公報、同52−14788号公報、同52−99813号公報、同53−1020号公報、同53−76020号公報、同54−156524号公報、同54−156525号公報、同61−183642号公報、特開平4−56848号公報、特公昭49−10727号公報、同54−20333号公報、米国特許第3,080,254号明細書、同第3,446,648号明細書、同第3,782,941号明細書、同第4,123,282号明細書、同第4,510,236号明細書、英国特許第1,380,795号明細書、ベルギー特許第841,910号明細書などに開示される色調剤を用いることができる。色調剤の具体例としては、フタルイミドおよびN−ヒドロキシフタルイミド;スクシンイミド、ピラゾリン−5−オン、ならびにキナゾリノン、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリンおよび2,4−チアゾリジンジオンのような環状イミド;ナフタルイミド(例えば、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタルイミド);コバルト錯体(例えば、コバルトヘキサミントリフルオロアセテート);3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,4−ジメルカプトピリミジン、3−メルカプト−4,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾールおよび2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールに例示されるメルカプタン;N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド、(例えば、(N,N−ジメチルアミノメチル)フタルイミドおよびN,N−(ジメチルアミノメチル)−ナフタレン−2,3−ジカルボキシイミド);ならびにブロック化ピラゾール、イソチウロニウム誘導体およびある種の光退色剤(例えば、N,N’−ヘキサメチレンビス(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジアザオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)および2−(トリブロモメチルスルホニル)−ベンゾチアゾール;ならびに3−エチル−5−[(3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)−1−メチルエチリデン]−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン;フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩、または4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオンなどの誘導体;フタラジノンとフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;フタラジン、フタラジン誘導体(たとえば、4−(1−ナフチル)フタラジン、6−クロロフタラジン、5,7−ジメトキシフタラジン、6−イソブチルフタラジン、6−tert−ブチルフタラジン、5,7−ジメチルフタラジン、および2,3−ジヒドロフタラジンなどの誘導体)もしくは金属塩;フタラジンおよびその誘導体とフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;キナゾリンジオン、ベンズオキサジンまたはナフトオキサジン誘導体;色調調節剤としてだけでなくその場でハロゲン化銀生成のためのハライドイオンの源としても機能するロジウム錯体、例えばヘキサクロロロジウム(III)酸アンモニウム、臭化ロジウム、硝酸ロジウムおよびヘキサクロロロジウム(III)酸カリウムなど;無機過酸化物および過硫酸塩、例えば、過酸化二硫化アンモニウムおよび過酸化水素;1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン、8−メチル−1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオンおよび6−ニトロ−1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオンなどのベンズオキサジン−2,4−ジオン;ピリミジンおよび不斉−トリアジン(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン、2−ヒドロキシ−4−アミノピリミジンなど)、アザウラシル、およびテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン、および1,4−ジ(o−クロロフェニル)−3,6−ジメルカプト−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン)などがある。
【0217】
本発明では色調剤として、特開2000−35631号公報に記載の一般式(F)で表されるフタラジン誘導体が好ましく用いられる。具体的には同公報に記載のA−1〜A−10が好ましく用いられる。
【0218】
色調剤は、溶液、粉末、固体微粒子分散物などいかなる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0219】
本発明の熱現像感光材料の熱現像処理前の膜面pHは6.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは5.5以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。
膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸、アンモニアなどの揮発性の塩基を用いることが、膜面pHを低減させるという観点から好ましい。特にアンモニアは揮発しやすく、塗布する工程や熱現像される前に除去できることから低膜面pHを達成する上で好ましい。なお、膜面pHの測定方法は、特開2000−284339号公報の段落番号0123に記載されている。
【0220】
本発明の熱現像感光材料において、ハロゲン化銀乳剤および/または有機銀塩は、カブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体によって、付加的なカブリの生成に対してさらに保護され、在庫貯蔵中における感度の低下に対して安定化することができる。単独または組合せて使用することができる適当なカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体は、米国特許第2,131,038号明細書および同第2,694,716号明細書に記載のチアゾニウム塩、米国特許第2,886,437号明細書および同第2,444,605号明細書に記載のアザインデン、米国特許第2,728,663号明細書に記載の水銀塩、米国特許第3,287,135号明細書に記載のウラゾール、米国特許第3,235,652号明細書に記載のスルホカテコール、英国特許第623,448号明細書に記載のオキシム、ニトロン、ニトロインダゾール、米国特許第2,839,405号明細書に記載の多価金属塩、米国特許第3,220,839号明細書に記載のチウロニウム塩、ならびに米国特許第2,566,263号明細書および同第2,597,915号明細書に記載のパラジウム、白金および金塩、米国特許第4,108,665号明細書および同第4,442,202号明細書に記載のハロゲン置換有機化合物、米国特許第4,128,557号明細書および同第4,137,079号明細書、同第4,138,365号明細書および同第4,459,350号明細書に記載のトリアジンならびに米国特許第4,411,985号明細書に記載のリン化合物などがある。
【0221】
本発明の熱現像感光材料は、高感度化やカブリ防止を目的として安息香酸類を含有してもよい。本発明で用いる安息香酸類はいかなる安息香酸誘導体でもよいが、好ましい例としては、米国特許第4,784,939号明細書、同第4,152,160号明細書、特開平9−329863号公報、同9−329864号公報、同9−281637号公報などに記載の化合物が挙げられる。安息香酸類は熱現像感光材料のいかなる層に添加してもよいが、支持体に対して画像形成層側の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。安息香酸類の添加は塗布液調製のいかなる工程で行ってもよく、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でもよいが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。安息香酸類の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行ってもよい。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加してもよい。安息香酸類の添加量としてはいかなる量でもよいが、銀1mol当たり1×10-6mol〜2molが好ましく、1×10-3mol〜0.5molがさらに好ましい。
【0222】
本発明を実施するために必須ではないが、画像形成層にカブリ防止剤として水銀(II)塩を加えることが有利なことがある。この目的のために好ましい水銀(II)塩は、酢酸水銀および臭化水銀である。本発明に使用する水銀の添加量としては、塗布された銀1mol当たり好ましくは1×10-9mol〜1×10-3mol、さらに好ましくは1×10-8mol〜1×10-4molの範囲である。
【0223】
本発明で特に好ましく用いられるカブリ防止剤は有機ハロゲン化物であり、例えば、特開昭50−119624号公報、同50−120328号公報、同51−121332号公報、同54−58022号公報、同56−70543号公報、同56−99335号公報、同59−90842号公報、同61−129642号公報、同62−129845号公報、特開平6−208191号公報、同7−5621号公報、同7−2781号公報、同8−15809号公報、米国特許第5,340,712号明細書、同第5,369,000号明細書、同第5,464,737号明細書に開示されているような化合物が挙げられる。
特開2000−284399号公報に記載の式(P)で表される親水性有機ハロゲン化物がカブリ防止剤として好ましく用いられる。具体的には、同明細書に記載の(P−1)〜(P−118)が好ましく用いられる。
有機ハロゲン化物の添加量は、Ag1molに対するmol量(mol/molAg)で示して、好ましくは1×10-5〜2mol/molAg、より好ましくは5×10-5〜1mol/molAg、さらに好ましくは1×10-4〜5×10-1mol/molAgである。これらは1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0224】
また、特開2000−284399号公報に記載の式(Z)で表されるサリチル酸誘導体がカブリ防止剤として好ましく用いられる。具体的には、同明細書に記載の(A−1)〜(A−60)が好ましく用いられる。式(Z)で表されるサリチル酸誘導体の添加量は、Ag1molに対するmol量(mol/molAg)で示して、好ましくは1×10-5〜5×10-1mol/molAg、より好ましくは5×10-5〜1×10-1mol/molAg、さらに好ましくは1×10-4〜5×10-2mol/molAgである。これらは1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0225】
本発明に好ましく用いられるカブリ防止剤として、ホルマリンスカベンジャーが有効であり、例えば、特開2000−221634号公報に記載の式(S)で表される化合物およびその例示化合物(S−1)〜(S−24)が挙げられる。
【0226】
本発明に用いるカブリ防止剤は、水あるいは適当な有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、サンドグラインダーミル、マントンゴーリン、マイクロフルイダイザーあるいは超音波によって分散し用いることもできる。
【0227】
本発明に用いるカブリ防止剤は、支持体に対して画像形成層側の層、即ち画像形成層あるいはこの層側の他のどの層に添加してもよいが、画像形成層あるいはそれに隣接する層に添加することが好ましい。画像形成層は還元可能な銀塩(有機銀塩)を含有する層であり、好ましくはさらに感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層であることが好ましい。
【0228】
本発明の熱現像感光材料には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御することや、現像前後の保存性を向上させることなどを目的としてメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができる。
本発明にメルカプト化合物を使用する場合、いかなる構造のものでもよいが、Ar−SM、Ar−S−S−Arで表されるものが好ましい。式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、イオウ、酸素、セレニウムまたはテルリウム原子を有する芳香環または縮合芳香環である。好ましくは、複素芳香環はベンズイミダゾール、ナフスイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフスオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリンまたはキナゾリノンである。この複素芳香環は、例えば、ハロゲン(例えば、BrおよびCl)、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、アルキル(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、アルコキシ(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)およびアリール(置換基を有していてもよい)からなる置換基群から選択されるものを有してもよい。メルカプト置換複素芳香族化合物をとしては、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、6−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2,2’−ジチオビス−(ベンゾチアゾール)、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4,5−ジフェニル−2−イミダゾールチオール、2−メルカプトイミダゾール、1−エチル−2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトキノリン、8−メルカプトプリン、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリノン、7−トリフルオロメチル−4−キノリンチオール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−ピリジンチオール、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジンモノヒドレート、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−ヒドキロシ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプトピリミジン、4,6−ジアミノ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプト−4−メチルピリミジンヒドロクロリド、3−メルカプト−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、3−(5−メルカプトテトラゾール)−ベンゼンスルホン酸ナトリウム、N−メチル−N’−{3−(5−メルカプトテトラゾリル)フェニル}ウレア、2−メルカプト−4−フェニルオキサゾールなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
これらのメルカプト化合物の添加量としては画像形成層中に銀1mol当たり0.0001〜1.0molの範囲が好ましく、さらに好ましくは、銀の1mol当たり0.001〜0.3molの量である。
【0229】
本発明の熱現像感光材料は、支持体上に、有機銀塩、還元剤および感光性ハロゲン化銀を含む画像形成層を有し、画像形成層上には少なくとも1層の保護層が設けられていることが好ましい。また、本発明の熱現像感光材料は支持体に対して画像形成層と反対側(バック面)に少なくとも1層のバック層を有することが好ましく、画像形成層、保護層、そしてバック層のバインダーとしてポリマーラテックスが用いられる。これらの層にポリマーラテックスを用いることによって、水を主成分とする溶媒(分散媒)を用いた水系塗布が可能になり、環境面、コスト面で有利になるとともに、熱現像時にシワの発生がない熱現像感光材料が得られるようになる。また、所定の熱処理をした支持体を使用することにより、熱現像の前後で寸法変化の少ない熱現像感光材料が得られる。
【0230】
本発明においては、良好な写真性能が得られ、かつ水系塗布を可能にするバインダーを用いることが好ましい。画像形成層側の主バインダーとしては、具体的にはポリマーラテックスもしくはゼラチンを用いることが好ましく、上記のポリマーラテックスを用いることが特に好ましい。画像形成層だけでなく、保護層やバック層にもポリマーラテックスを用いることによって、水を主成分とする溶媒(分散媒)を用いた水系塗布が可能になり、環境面、コスト面で有利になるとともに、熱現像時にシワの発生がない熱現像画像記録材料が得られる。また、所定の熱処理をした支持体を使用することにより、熱現像の前後で寸法変化の少ない熱現像画像記録材料が得られる。
【0231】
保護層及びバック層のバインダーとして用いられるポリマーラテックスとしては、画像形成層のバインダーとして用いられるポリマーラテックスを同様に用いることができる。さらに、保護層用のバインダーとして、特開2000−267226号公報の段落番号0025〜0029に記載の有機概念図に基づく無機性値を有機性値で割ったI/O値の異なるポリマーラテックスの組み合わせを好ましく用いることができる。
【0232】
本発明においては必要に応じて、特開2000−267226号公報の段落番号0021〜0025に記載の可塑剤(例えば、ベンジルアルコール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3−モノイソブチレートなど)を添加して、造膜温度をコントロールすることができる。また、特開2000−267226号公報の段落番号0027〜0028に記載されているようにポリマーバインダー中に親水性ポリマーを、塗布液中に水混和性の有機溶媒を添加してもよい。
【0233】
それぞれの層には、特開2000−19678号公報の段落番号0023〜0041に記載の官能基を導入した第一のポリマーラテックスとこの第一のポリマーラテックスと反応しうる官能基を有する架橋剤および/または第二のポリマーラテックスを用いることもできる。
上記の官能基は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、N−メチロール基、オキサゾリニル基など、架橋剤としては、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、メチロ−ル化合物、ヒドロキシ化合物、カルボキシル化合物、アミノ化合物、エチレンイミン化合物、アルデヒド化合物、ハロゲン化合物などから選ばれる。架橋剤の具体例として、イソシアネート化合物としてヘキサメチレンイソシアネート、デュラネートWB40−80D、WX−1741(旭化成工業(株)製)、バイヒジュール3100(住友バイエルウレタン(株)製)、タケネートWD725(武田薬品工業(株)製)、アクアネート100、200(日本ポリウレタン(株)製)、特開平9−160172号公報記載の水分散型ポリイソシアネート;アミノ化合物としてスミテックスレジンM−3(住友化学工業(株)製);エポキシ化合物としてデナコールEX−614B(ナガセ化成工業(株)製);ハロゲン化合物として2,4ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンナトリウムなどが挙げられる。
【0234】
保護層用の全バインダー量は、保護層の膜厚を3μm以上にすることができる量であることが好ましく、具体的には1〜10.0g/m2が好ましく、2〜6.0g/m2がより好ましい。
本発明では、保護層の膜厚は3μm以上であることが好ましく、4μm以上であることがさらに好ましい。保護層膜厚の上限としては特に制限はないが、塗布乾燥のことを考慮し、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。
バック層用の全バインダー量は0.01〜10.0g/m2が好ましく、0.05〜5.0g/m2がより好ましい。
【0235】
本発明では、これらの各層は2層以上設けられる場合がある。画像形成層が2層以上である場合は、すべての層のバインダーとしてポリマーラテックスを用いることが好ましい。また、保護層は画像形成層上に設けられる層であり2層以上存在する場合もあるが、少なくとも1層、特に最外層の保護層にポリマーラテックスが用いられることが好ましい。また、バック層は支持体バック面の下塗り層の上部に設けられる層であり2層以上存在する場合もあるが、少なくとも1層、特に最外層のバック層にポリマーラテックスを用いることが好ましい。
【0236】
本発明では滑り剤を用いることができる。本明細書における「滑り剤」とは、物体表面に存在させた時に、存在させない場合に比べて物体表面の摩擦係数を減少させることができる化合物を意味する。その種類は特に制限されない。
【0237】
本発明に用いる滑り剤としては、特開平11−84573号公報の段落番号0061〜0064、特開2001−83679号公報の段落番号0049〜0062に記載の化合物を挙げることができる。
好ましい滑り剤の具体例としては、セロゾール524(主成分カルナバワックス)、ポリロンA,393,H−481(主成分ポリエチレンワックス)、ハイミクロンG−110(主成分エチレンビスステアリン酸アマイド)、ハイミクロンG−270(主成分ステアリン酸アマイド)(以上、中京油脂(株)製)、
W−1 C16H33−O−SO3Na
W−2 C18H37−O−SO3Na
などが挙げられる。
滑り剤の使用量は添加層のバインダー量の0.1〜50質量%であり、好ましくは0.5〜30質量%である。
【0238】
本発明の熱現像感光材料を熱現像する際に、特開2000−171935号公報、特開2001−83679号公報に記載のように予備加熱部を対向ローラーで搬送し、熱現像処理部は画像形成層を有する側をローラーの駆動により、その反対側のバック面を平滑面に滑らせて搬送する熱現像機を用いる場合、熱現像感光材料の画像形成層を有する側の最表面層とバック面の最表面層との熱現像処理温度における摩擦係数の比は1.5以上であることが好ましい。その摩擦係数の比の上限は特に制限されないが、30程度であることが好ましい。摩擦係数の比は以下の式により求めることができる。
摩擦係数の比=熱現像機のローラー部材と画像形成層を有する面との動摩擦係数(μe)/熱現像機の平滑面部材とバック面との動摩擦係数(μb)
μbは1.0以下であることが好ましく、0.05〜0.8であることがより好ましい。
本発明において熱現像処理温度での熱現像処理機部材と画像形成層を有する面および/またはその反対面の最表面層の滑り性は、最表面層に滑り剤を含有させ、その添加量を変えることにより調整することができる。
【0239】
支持体の両面には、特開昭64−20544号公報、特開平1−180537号公報、特開平1−209443号公報、特開平1−285939号公報、特開平1−296243号公報、特開平2−24649号公報、特開平2−24648号公報、特開平2−184844号公報、特開平3−109545号公報、特開平3−137637号公報、特開平3−141346号公報、特開平3−141347号公報、特開平4−96055号公報、米国特許第4,645,731号明細書、特開平4−68344号公報、特許第2,557,641号公報の2頁右欄20行目〜3頁右欄30行目、特開2000−39684号公報の段落番号0020〜0037、特開2001−83679号公報の段落番号0063〜0080に記載の塩化ビニリデン単量体の繰り返し単位を70質量%以上含有する塩化ビニリデン共重合体を含む下塗り層を設けることが好ましい。
【0240】
塩化ビニリデン単量体が70質量%未満の場合は、十分な防湿性が得られず、熱現像後の時間経過における寸法変化が大きくなってしまう傾向がある。また、塩化ビニリデン共重合体は、塩化ビニリデン単量体のほかの構成繰り返し単位としてカルボキシル基含有ビニル単量体の繰り返し単位を含むことが好ましい。このような繰り返し単位を含ませるのは、塩化ビニル単量体のみでは、重合体(ポリマー)が結晶化してしまい、防湿層を塗設する際に均一な膜を作り難くなり、また重合体(ポリマー)の安定化のためにはカルボキシル基含有ビニル単量体が不可欠であるからである。
本発明で用いる塩化ビニリデン共重合体の重量平均分子量は45,000以下であることが好ましく、10,000〜45,000であることがより好ましい。分子量が大きくなると塩化ビニリデン共重合体層とポリエステル等の支持体層との接着性が悪化してしまう傾向がある。
【0241】
本発明で用いる塩化ビニリデン共重合体の含有量は、塩化ビニリデン共重合体を含有する下塗り層の片面当りの合計膜厚として0.3μm以上であることが好ましく、0.3μm〜4μmであることがより好ましい。
【0242】
なお、下塗り層としての塩化ビニリデン共重合体層は、支持体に直接設層される下塗り層第1層として設けることが好ましく、通常は片面ごとに1層ずつ設けられるが、場合によっては2層以上設けてもよい。2層以上の多層構成とするときは、塩化ビニリデン共重合体量が合計で上記の範囲であることがより好ましい。
これらの層には塩化ビニリデン共重合体のほか、架橋剤やマット剤などを含有させてもよい。
【0243】
支持体には必要に応じて塩化ビニリデン共重合体層のほか、SBR、ポリエステル、ゼラチン等をバインダーとする下塗り層を塗布してもよい。これらの下塗り層は多層構成としてもよく、また支持体に対して片面または両面に設けてもよい。下塗り層の厚み(1層当たり)は一般に0.01〜5μmであり、より好ましくは0.05〜1μmである。
【0244】
本発明の熱現像感光材料には、種々の支持体を用いることができる。典型的な支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、硝酸セルロース、セルロースエステル、ポリビニルアセタール、シンジオタクチックポリスチレン、ポリカーボネート、両面がポリエチレンで被覆された紙支持体などが挙げられる。このうち二軸延伸したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが強度、寸法安定性、耐薬品性などの点から好ましい。支持体の厚みは下塗り層を除いたベース厚みで90〜180μmであることが好ましい。
【0245】
本発明の熱現像感光材料に用いる支持体としては、特開平10−48772号公報、特開平10−10676号公報、特開平10−10677号公報、特開平11−65025号公報、特開平11−138648号公報に記載の二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0246】
このような熱処理後における支持体の120℃、30秒加熱による寸法変化率は縦方向(MD)が−0.03%〜+0.01%、横方向(TD)が0〜0.04%であることが好ましい。
【0247】
本発明の熱現像感光材料には、ゴミ付着の減少、スタチックマーク発生防止、自動搬送工程での搬送不良防止などの目的で、特開平11−84573号公報の段落番号0040〜0051に記載の導電性金属酸化物および/またはフッ素系界面活性剤を用いて帯電防止することができる。導電性金属酸化物としては、米国特許第5,575,957号明細書、特開平11−223901号公報の段落番号0012〜0020に記載のアンチモンでドーピングされた針状導電性酸化錫、特開平4−29134号公報に記載のアンチモンでドーピングされた繊維状酸化錫が好ましく用いられる。
【0248】
金属酸化物含有層の表面比抵抗(表面抵抗率)は25℃、相対湿度20%の雰囲気下で1012Ω以下であることが好ましく、1011Ω以下であることがより好ましい。これにより良好な帯電防止性が得られる。このときの表面抵抗率の下限は特に制限されないが、通常107Ω程度である。
【0249】
本発明の熱現像感光材料の画像形成層を有する面およびその反対面の最外層表面の少なくとも一方、好ましくは両方のベック平滑度は、5000秒以下であり、より好ましくは10秒〜2000秒である。
本発明におけるベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
熱現像感光材料の画像形成層を有する面の最外層およびその反対面の最外層のベック平滑度は、特開平11−84573号公報の段落番号0052〜0059に記載されるように、前記両面の層に含有させるマット剤の粒径および添加量を適宜変化させることによってコントロールすることができる。
【0250】
本発明では、塗布性付与のための増粘剤として水溶性ポリマーを好ましく用いることができる。本発明で用いる水溶性ポリマーは、天然物でも合成ポリマーでもよく、その種類は特に限定されない。具体的には、天然物としてはデンプン類(コーンスターチ、デンプンなど)、海藻(寒天、アルギン酸ナトリウムなど)、植物性粘着物(アラビアゴムなど)、動物性タンパク(にかわ、カゼイン、ゼラチン、卵白など)、発酵粘着物(プルラン、デキストリンなど)などが挙げられる。また、半合成ポリマーであるデンプン質(可溶性デンプン、カルボキシルデンプン、デキストランなど)、セルロース類(ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)も用いることができる。さらに合成ポリマーとして、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリビニルスルフィン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、アクリル酸またはその共重合体等、マレイン酸共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸またはその共重合体などを挙げることができる。
【0251】
これらの中でも好ましく用いられる水溶性ポリマーは、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デキストラン、デキストリン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸またはその共重合体などである。これらは、特に増粘剤として好ましく利用される。
【0252】
これらの中でも特に好ましい増粘剤は、ゼラチン、デキストラン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体などである。これらの化合物は、「新・水溶性ポリマーの応用と市場」(株式会社シーエムシー発行、長友新治編集、1988年11月4日発行)に詳細に記載されている。
【0253】
増粘剤としての水溶性ポリマーの使用量は、塗布液に添加した時に粘度が上昇すれば特に限定されない。一般に液中の濃度は好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.05〜20質量%、特に好ましくは0.1〜10重量%である。これらによって得られる粘度は、初期の粘度からの上昇分として1〜200mPa・sが好ましく、より好ましくは5〜100mPa・sである。なお、粘度はB型回転粘度計で25℃で測定した値を示す。塗布液などへの添加に当たっては、一般に増粘剤はできるだけ希薄溶液で添加することが望ましい。また添加時には十分な攪拌を行うことが好ましい。
【0254】
本発明で用いる界面活性剤について以下に説明する。本発明で用いる界面活性剤はその使用目的によって、分散剤、塗布剤、濡れ剤、帯電防止剤、写真性コントロール剤などに分類されるが、以下に述べる界面活性剤を、適宜選択して使用することによってそれらの目的は達成することができる。本発明では、ノニオン性、イオン性(アニオン、カチオン、ベタイン)のいずれの界面活性剤も使用することができる。さらにフッ素系界面活性剤も好ましく用いられる。
【0255】
好ましいノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリグリシジルやソルビタンをノニオン性親水性基とする界面活性剤を挙げることができ、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステルを挙げることができる。
【0256】
アニオン系界面活性剤としては、カルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩を挙げることができ、代表的なものとしては脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸塩、アルキル硫酸塩、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニールエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物などを挙げることができる。
【0257】
カチオン系界面活性剤としてはアミン塩、4級アンモニウム塩、ピリジウム塩などを挙げることができ、より具体的には第1〜第3級脂肪アミン塩、第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、アルキルイミダゾリウム塩など)を挙げることができる。
【0258】
ベタイン系界面活性剤としてはカルボキシベタイン、スルホベタインなどを挙げることができ、N−トリアルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタインなどを挙げることができる。
【0259】
これらの界面活性剤は、「界面活性剤の応用」(幸書房、刈米孝夫著、昭和55年9月1日発行)に記載されている。本発明における好ましい界面活性剤の使用量は特に限定されず、目的とする界面活性特性が得られる量であればよい。なお、フッ素含有界面活性剤の塗布量は、1m2当り0.01mg〜250mgが好ましい。
【0260】
以下に界面活性剤の具体例を記すが、本発明で用いることができる界面活性剤はこれらに限定されるものではない(ここで、−C6H4−はフェニレン基を表わす)。
WA−1 :C16H33(OCH2CH2)10OH
WA−2 :C9H19-C6H4-(OCH2CH2)12OH
WA−3 :ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
WA−4 :トリ(イソプロピル)ナフタレンスルホン酸ナトリウム
WA−5 :トリ(イソブチル)ナフタレンスルホン酸ナトリウム
WA−6 :ドデシル硫酸ナトリウム
WA−7 :α−スルファコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル ナトリウム塩
WA−8 :C8H17-C6H4-(CH2CH2O)3(CH2)2SO3K
WA−10 :セチルトリメチルアンモニウム クロライド
WA−11 :C11H23CONHCH2CH2N(+)(CH3)2-CH2COO(-)
WA−12 :C8F17SO2N(C3H7)(CH2CH2O)16H
WA−13 :C8F17SO2N(C3H7)CH2COOK
WA−14 :C8F17SO3K
WA−15 :C8F17SO2N(C3H7)(CH2CH2O)4(CH2)4SO3Na
WA−16 :C8F17SO2N(C3H7)(CH2)3OCH2CH2N(+)(CH3)3-CH3・C6H4-SO3 (-)
WA−17 :C8F17SO2N(C3H7)CH2CH2CH2N(+)(CH3)2-CH2COO(-)
【0261】
本発明の好ましい態様においては、画像形成層および保護層に加えて、必要に応じて中間層を設けてもよい。生産性の向上などを目的として、これらの複数の層は水系において同時重層塗布することが好ましい。塗布方式はエクストルージョン塗布、スライドビード塗布、カーテン塗布などがあるが、特開2000−2964号公報の図1に示されるスライドビード塗布方式が特に好ましい。
【0262】
ゼラチンを主バインダーとして用いるハロゲン化銀写真感光材料の場合は、コーティングダイの下流に設けられている第一乾燥ゾーンで急冷され、その結果、ゼラチンのゲル化が起こり、塗布膜は冷却固化される。冷却固化されて流動の止まった塗布膜は続く第二乾燥ゾーンに導かれ、これ以降の乾燥ゾーンで塗布液中の溶媒が揮発され、成膜される。第二乾燥ゾーン以降の乾燥方式としては、U字型のダクトからローラー支持された支持体に噴流を吹き付けるエアーループ方式や円筒状のダクトに支持体をつるまき状に巻き付けて搬送乾燥する、つるまき方式(エアーフローティング方式)などが挙げられる。
【0263】
バインダーの主成分がポリマーラテックスである塗布液を用いて層形成を行うときには、急冷では塗布液の流動を停止させることができないため、第一乾燥ゾーンのみでは予備乾燥が不十分である場合もある。この場合は、ハロゲン化銀写真感光材料で用いられている様な乾燥方式では流れムラや乾燥ムラが生じ、塗布面状に重大な欠陥を生じやすい。
【0264】
本発明における好ましい乾燥方式は、特開2000−2964号公報に記載されているような第一乾燥ゾーン、第二乾燥ゾーンを問わず、少なくとも恒率乾燥が終了するまでの間は水平乾燥ゾーンで乾燥させる方式である。塗布直後から水平乾燥ゾーンに導かれるまでの支持体の搬送は、水平搬送であってもなくてもどちらでもよく、塗布機の水平方向に対する立ち上がり角度は0〜70°の間にあればよい。また、本発明における水平乾燥ゾーンとは、支持体が塗布機の水平方向に対して上下に±15°以内に搬送されればよく、水平搬送を意味するものではない。
【0265】
本明細書において「恒率乾燥」とは、液膜温度が一定で流入する熱量全てが溶媒の蒸発に使用される乾燥過程を意味する。また、本明細書において「減率乾燥」とは、乾燥末期における種々の要因(水分移動の材料内部拡散が律速になる、蒸発表面の後退など)により乾燥速度が低下し、与えられた熱が液膜温度上昇にも使用される乾燥過程を意味する。恒率過程から減率過程に移行する限界含水率は200〜300%である。恒率乾燥が終了する時には、流動が停止するまで十分に乾燥が進むため、ハロゲン化銀写真感光材料の様な乾燥方式も採用することができるが、本発明においては恒率乾燥後も最終的な乾燥点まで水平乾燥ゾーンで乾燥させることが好ましい。
【0266】
画像形成層および/または保護層を形成する際、恒率乾燥時の液膜表面温度はポリマーラテックスの最低造膜温度(MTF;通常ポリマーのガラス転移温度Tgより3〜5℃高い)以上にすることが好ましい。通常は製造設備の制限より25℃〜40℃にすることが多い。また、減率乾燥時の乾球温度は支持体のTg未満の温度(PETの場合通常80℃以下)であることが好ましい。本明細書における「液膜表面温度」とは、支持体に塗布された塗布液膜の溶媒液膜表面温度を言い、「乾球温度」とは乾燥ゾーンの乾燥風の温度を意味する。
【0267】
恒率乾燥時の液膜表面温度が低くなる条件で乾燥した場合、乾燥が不十分になりやすい。このため特に保護層の造膜性が著しく低下し、膜表面に亀裂が生じやすくなる。また、膜強度も弱くなり、露光機や熱現像機での搬送中に傷がつきやすくなるなどの重大な問題が生じやすくなる。
【0268】
一方、液膜表面温度が高くなる条件で乾燥した場合は、主としてポリマーラテックスから構成される保護層は速やかに皮膜を形成するが、その一方で画像形成層などの下層は流動性が停止していないので、表面に凹凸が発生しやすくなる。また、支持体(ベース)にTgよりも高い過剰の熱がかかると、感光材料の寸度安定性、耐巻き癖性も悪くなる傾向にある。
【0269】
下層を塗布乾燥してから上層を塗布する逐次塗布においても同様であるが、特に、下層の乾燥前に上層を塗布して、両層を同時に乾燥する同時重層塗布を行うための塗布液物性としては、画像形成層の塗布液と保護層の塗布液とのpH差が2.5以下であることが好ましく、このpH差は小さい程好ましい。塗布液のpH差が大きくなると塗布液界面でミクロな凝集が生じやすくなり、長尺連続塗布時に塗布筋などの重大な面状故障が発生しやすくなる。
【0270】
画像形成層の塗布液粘度は25℃で15〜100mPa・sが好ましく、さらに好ましくは40〜70mPa・sである。一方、保護層の塗布液粘度は25℃で5〜75mPa・sが好ましく、さらに好ましくは30〜60mPa・sである。これらの粘度はB型粘度計によって測定される。
【0271】
乾燥後の巻取りは温度20〜30℃、相対湿度45±20%の条件下で行うことが好ましく、巻き姿はその後の加工形態に合わせ画像形成層側の面を外側にしてもよいし、内側にしてもよい。また、加工形態がロール品の場合は巻き姿で発生したカールを除去するために加工時に巻き姿とは反対側に巻いたロール形態にすることも好ましい。なお、熱現像感光材料の相対湿度は20〜55%(25℃測定)の範囲で制御されることが好ましい。
【0272】
ハロゲン化銀を含みゼラチンを基体とする粘性液である従来の写真乳剤塗布液は、通常加圧送液するだけで気泡が液中に溶解、消滅してしまい、塗布時に大気圧下に戻されても気泡が析出するようなことはほとんどない。ところが、本発明で好ましく用いられる有機銀塩分散物とポリマーラテックスなどを含む画像形成層塗布液の場合は、加圧送液だけでは脱泡が不十分になりやすいため、気液界面が生じないようにして送液しながら超音波振動を与え脱泡することが好ましい。
【0273】
本発明における塗布液の脱泡は、塗布液を塗布される前に減圧脱気し、さらに1.5kg/cm2以上の加圧状態に保ち、かつ気液界面が生じないようにして連続的に送液しながら超音波振動を与える方式が好ましい。具体的には、特公昭55−6405号公報4頁20行〜7頁11行に記載されている方式が好ましい。このような脱泡を行う装置として、特開2000−98534号公報の実施例と図2に示される装置を好ましく用いることができる。
【0274】
加圧条件としては、1.5kg/cm2以上が好ましく、1.8kg/cm2以上がより好ましい。その上限に特に制限はないが、通常5kg/cm2程度である。与えられる超音波の音圧は0.2V以上、好ましくは0.5V〜3.0Vであり、一般的に音圧は高い方が好ましいが、音圧が高すぎるとキャピテーションにより部分的に高温状態になりカブリの発生原因となる。周波数は特に制約はないが、通常10kHz以上、好ましくは20kHz〜200kHzである。なお、減圧脱気は、タンク内(通常、調液タンクもしくは貯蔵タンク)を密閉減圧し、塗布液中の気泡径を増大させ、浮力をかせぎ脱気させることを指し、減圧脱気の際の減圧条件は−200mmHgないしそれより低い圧力条件、好ましくは−250mmHgないしそれより低い圧力条件とし、その最も低い圧力条件は特に制限はないが通常−800mmHg程度である。減圧時間は好ましくは30分以上、より好ましくは45分以上であり、その上限は特に制限されない。
【0275】
本発明において、画像形成層、画像形成層の保護層、下塗層およびバック層には特開平11−84573号公報の段落番号0204〜0208、特開2001−83679号公報の段落番号0240〜0241に記載されるようにハレーション防止などの目的で、染料を含有させることができる。
【0276】
画像形成層には色調改良、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料を用いることができる。画像形成層に用いる染料および顔料はいかなるものでもよいが、例えば特開平11−119374号公報の段落番号0297に記載されている化合物を用いることができる。これらの染料の添加法としては、溶液、乳化物、固体微粒子分散物、高分子媒染剤に媒染された状態などいかなる方法でもよい。これらの化合物の使用量は目的の吸収量によって決められるが、一般的に1m2当たり1×10-6g〜1gの範囲で用いることが好ましい。
【0277】
本発明でハレーション防止染料を使用する場合、該染料は所望の範囲で目的の吸収を有し、処理後に可視領域での吸収が充分少なく、上記バック層の好ましい吸光度スペクトルの形状が得られればいかなる化合物でもよい。例えば特開平11−119374号公報の段落番号0300に記載されている化合物を用いることができる。また、ベルギー特許第733,706号明細書に記載されるように染料による濃度を加熱による消色で低下させる方法、特開昭54−17833号公報に記載されるように光照射による消色で濃度を低下させる方法等を用いることもできる。
【0278】
本発明の熱現像感光材料が熱現像後において、PS版により刷版を作製する際にマスクとして用いられる場合、熱現像後の熱現像感光材料は、製版機においてPS版に対する露光条件を設定するための情報や、マスク原稿およびPS版の搬送条件等の製版条件を設定するための情報を画像情報として担持している。従って、前記のイラジエーション染料、ハレーション染料、フィルター染料の濃度(使用量)は、これらを読み取るために制限される。これら情報はLEDあるいはレーザーによって読み取られるため、センサーの波長域のDmin(最低濃度)が低い必要があり吸光度が0.3以下である必要がある。例えば、富士写真フイルム(株)社製、製版機S−FNRIIIはトンボ検出のための検出器およびバーコードリーダーとして670nmの波長の光源を使用している。また、清水製作社製、製版機APMLシリーズのバーコードリーダーとして670nmの光源を使用している。すなわち670nm付近のDmin(最低濃度)が高い場合にはフィルム上の情報が正確に検出できず搬送不良、露光不良など製版機で作業エラーが発生する。従って、670nmの光源で情報を読み取るためには670nm付近のDminが低い必要があり、熱現像後の660〜680nmの吸光度が0.3以下である必要がある。より好ましくは0.25以下である。その下限に特に制限はないが、通常は0.10程度である。
【0279】
本発明において、像様露光に用いられる露光装置は露光時間が10-7秒以下の露光が可能な装置であればいずれでもよいが、一般的にはレーザーダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)を光源に使用した露光装置が好ましく用いられる。特に、LDは高出力、高解像度の点でより好ましい。これらの光源は目的波長範囲の電磁波スペクトルの光を発生することができるものであればいずれでもよい。例えばLDであれば、色素レーザー、ガスレーザー、固体レーザー、半導体レーザーなどを用いることができる。
【0280】
本発明の熱現像感光材料は、光源の光ビームをオーバーラップさせて露光する。オーバーラップとは副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えばビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表わしたとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が0.2以上であることが好ましい。
【0281】
本発明に使用する露光装置の光源の走査方式は特に限定されず、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、高出力が得られ、書き込み時間が短くなるという点でレーザーヘッドを2機以上搭載するマルチチャンネルが好ましい。特に、円筒外面方式の場合にはレーザーヘッドを数機から数十機以上搭載するマルチチャンネルが好ましく用いられる。
【0282】
本発明の熱現像感光材料は露光時のヘイズが低く、干渉縞が発生しやすい傾向にある。この干渉縞の発生防止技術としては、特開平5−113548号公報などに開示されているレーザー光を感光材料に対して斜めに入光させる技術や、国際公開WO95/31754号公報などに開示されているマルチモードレーザーを利用する方法が知られており、これらの技術を用いることが好ましい。
【0283】
本発明の熱現像感光材料に画像形成する際の加熱現像工程はいかなる方法によるものであってもよいが、通常はイメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像する。用いられる熱現像機の好ましい態様としては、熱現像感光材料をヒートローラーやヒートドラムなどの熱源に接触させるタイプとして特公平5−56499号公報、特開平9−292695号公報、特開平9−297385号公報および国際公開WO95/30934号公報に記載の熱現像機、非接触型のタイプとして特開平7−13294号公報、国際公開WO97/28489号公報、同97/28488号公報および同97/28487号公報に記載の熱現像機がある。特に好ましいのは非接触型の熱現像機である。好ましい現像温度は80〜250℃であり、さらに好ましくは100〜140℃である。現像時間は1〜180秒が好ましく、5〜90秒がさらに好ましい。ラインスピードは140cm/min以上、さらには150cm/min以上が好ましい。
【0284】
熱現像時における熱現像感光材料の寸法変化による処理ムラを防止する方法として、80℃以上115℃未満の温度で画像が出ないようにして、5秒以上加熱した後、110℃〜140℃で熱現像して画像形成させる方法(いわゆる多段階加熱方法)を採用することが有効である。
【0285】
本発明の熱現像感光材料を熱現像処理するとき、110℃以上の高温にさらされるため、該材料中に含まれている成分の一部、あるいは熱現像による分解成分の一部が揮発してくる。これらの揮発成分は現像ムラの原因になったり、熱現像機の構成部材を腐食させたり、温度の低い場所で析出し異物として画面の変形を引起こしたり、画面に付着して汚れとなったりする等の種々の悪い影響を及ぼすことが知られている。これらの影響を除くための方法として、熱現像機にフィルターを設置し、また熱現像機内の空気の流れを最適に調整することが知られている。これらの方法は有効に組み合わせて利用することができる。
例えば、国際公開WO95/30933号公報、同97/21150号公報、特表平10−500496号公報には、結合吸収粒子を有し揮発分を導入する第一の開口部と排出する第二の開口部とを有するフィルターカートリッジを、フィルムと接触して加熱する加熱装置に用いることが記載されている。また、国際公開WO96/12213号公報、特表平10−507403号公報には、熱伝導性の凝縮捕集器とガス吸収性微粒子フィルターを組合せたフィルターを用いることが記載されている。本発明ではこれらを好ましく用いることができる。
また、米国特許第4,518,845号明細書、特公平3−54331号公報には、フィルムからの蒸気を除去する装置とフィルムを伝熱部材へ押圧する加圧装置と伝熱部材を加熱する装置とを有する構成が記載されている。また、国際公開WO98/27458号には、フィルムから揮発するカブリを増加させる成分をフィルム表面から取り除くことが記載されている。これらについても本発明では好ましく用いることができる。
【0286】
本発明の熱現像感光材料の熱現像処理に用いられる熱現像機の一構成例を図2に示す。図2は熱現像機の側面図を示したものである。図2の熱現像機は熱現像感光材料10を平面状に矯正および予備加熱しながら加熱部に搬入する搬入ローラー対11(上部ローラーはシリコンゴムローラーで、下部ローラーがアルミ製のヒートローラー)と熱現像後の熱現像感光材料10を平面状に矯正しながら加熱部から搬出する搬出ローラー対12を有する。熱現像感光材料10は搬入ローラー対11から搬出ローラー対12へと搬送される間に熱現像される。この熱現像中の熱現像感光材料10を搬送する搬送手段は画像形成層を有する面が接触する側に複数のローラー13が設置され、その反対側のバック面が接触する側には不織布(例えば芳香族ポリアミドやテフロン(登録商標)から成る)等が貼り合わされた平滑面14が設置される。熱現像感光材料10は画像形成層を有する面に接触する複数のローラー13の駆動により、バック面を平滑面14の上に滑らせながら搬送される。ローラー13の上部および平滑面14の下部には、熱現像感光材料10の両面から加熱されるように加熱ヒーター15が設置される。この場合の加熱手段としては板状ヒーター等が挙げられる。ローラー13と平滑面14とのクリアランスは平滑面の部材により異なるが、熱現像感光材料10が搬送できるクリアランスに適宜調整される。好ましくは0〜1mmである。
【0287】
ローラー13の表面の材質および平滑面14の部材は、高温耐久性があり、熱現像感光材料10の搬送に支障がなければ何でもよいが、ローラー表面の材質はシリコンゴム、平滑面の部材は芳香族ポリアミドまたはテフロン(PTFE)製の不織布が好ましい。加熱手段としては複数のヒーターを用い、それぞれ加熱温度を自由に設定することが好ましい。
【0288】
なお、加熱部は、搬入ローラー対11を有する予備加熱部Aと、加熱ヒーター15を備えた熱現像加熱部Bとで構成されるが、熱現像処理部Bの上流の予備加熱部Aは、熱現像温度よりも低く(例えば10〜30℃程度低く)、熱現像感光材料10中の水分量を蒸発させるのに十分な温度および時間に設定することが望ましく、熱現像感光材料10の支持体のガラス転移温度(Tg)よりも高い温度で、現像ムラが出ないように設定することが好ましい。予備加熱部と熱現像処理部の温度分布としては±1℃以下が好ましく、さらには±0.5℃以下が好ましい。
また、熱現像処理部Bの下流にはガイド板16が設置され、搬出ローラー対12とガイド板16とを有する徐冷部Cが設置される。
ガイド板16は熱伝導率の低い素材が好ましく、熱現像感光材料10に変形が起こらないようにするために冷却は徐々に行うのが好ましく、冷却速度としては、0.5〜10℃/秒が好ましい。
【0289】
以上、図示例に従って説明したが、これに限らず、例えば特開平7−13294号公報に記載のものなど、本発明に用いる熱現像機は種々の構成のものであってもよい。また、本発明において好ましく用いられる多段加熱方法の場合は、上述のような装置において、加熱温度の異なる熱源を2個以上設置し、連続的に異なる温度で加熱するようにすればよい。
【0290】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0291】
<実施例1>
《ハロゲン化銀乳剤Aの調製》
水700mlにアルカリ処理ゼラチン(カルシウム含有量として2700ppm以下)11g、臭化カリウム30mg、および4−メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.3gを溶解して、45℃にてpHを6.5に調整した。その後、硝酸銀18.6gを含む水溶液159mlと臭化カリウムを1mol/L、(NH4)2RhCl5(H2O)を5×10-6mol/LおよびK3IrCl6を2×10-5mol/Lで含む水溶液を、pAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で6分30秒間かけて添加した。ついで、硝酸銀55.5gを含む水溶液476mlと臭化カリウムを1mol/LおよびK3IrCl6を2×10-5mol/Lで含むハロゲン塩水溶液を、pAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で28分30秒間かけて添加した。その後pHを下げて凝集沈降させて脱塩処理をし、平均分子量15,000の低分子量ゼラチン(カルシウム含有量として20ppm以下)51.1g加え、pH5.9、pAg8.0に調整した。得られた粒子は平均粒子サイズ0.11μm、投影面積変動係数9%、(100)面比率90%の立方体粒子であった。
得られたハロゲン化銀粒子を60℃に昇温して銀1mol当たりベンゼンチオスルホン酸ナトリウム76μmolを添加し、3分後にトリエチルチオ尿素71μmolを添加した後、100分間熟成し、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを5×10-4mol、化合物Aを0.17g加えた後、40℃に降温させた。
その後、40℃に温度を保ち、ハロゲン化銀1molに対して4.7×10-2molの臭化カリウム(水溶液として添加)、12.8×10-4molの下記増感色素A(エタノール溶液として添加)、6.4×10-3molの化合物B(メタノール溶液として添加)を攪拌しながら添加し、20分後に30℃に急冷してハロゲン化銀乳剤Aの調製を終了した。
【0292】
【化79】
【0293】
《ベヘン酸銀分散物Aの調製》
ベヘン酸(ヘンケル社製、EdenorC22−85R)87.6kg、蒸留水423L、5mol/LのNaOH水溶液49.2L、tert−ブチルアルコール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液を得た。これとは別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2Lを用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのtert−ブチルアルコールを入れた反応容器を30℃に保温し、攪拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ62分10秒と60分かけて添加した。この時、硝酸銀水溶液添加開始後7分20秒間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液添加終了後9分30秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が上がらないようにコントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、スチームトレースにより保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるようにスチーム量をコントロールした。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は攪拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調節した。
ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間攪拌放置し、25℃に降温した。その後、遠心ろ過で固形分を濾別し、固形分を濾水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
得られたベヘン酸銀の粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均投影面積径0.52μm、平均粒子厚み0.14μm、平均球相当径の変動係数15%の鱗片状の結晶であった。
【0294】
次に、以下の方法でベヘン酸銀の分散物を作製した。乾燥固形分100g相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−217,平均重合度:約1700)7.4gおよび水を添加し、全体量を385gとしてからホモミキサーにて予備分散した。次に予備分散済みの原液を分散機(マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、マイクロフルイダイザーM−110S−EH、G10Zインタラクションチャンバー使用)の圧力を1750kg/cm2に調節して、3回処理し、ベヘン酸銀分散物Aを得た。このとき、蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着して冷媒の温度を調節することにより、所望の分散温度に設定した。
得られたベヘン酸銀分散物Aに含まれるベヘン酸銀粒子は、体積加重平均直径0.52μm、変動係数15%の粒子であった。粒子サイズの測定は、Malvern Instruments Ltd.製MasterSizerXにて行った。また電子顕微鏡撮影により評価したところ、長辺と短辺の比は1.5、粒子厚みは0.14μm、平均アスペクト比(粒子の投影面積の円相当径と粒子厚みの比)が5.1であった。
得られたベヘン酸銀分散物Aは、下記の塗布液の調製に用いた。
【0295】
《還元剤の固体微粒子分散物の調製》
還元剤[1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン]10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgに、サーフィノール104E(日信化学(株)製)400g、メタノール640g、および水16kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩4gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調整し、還元剤の固体微粒子分散物を得た。こうして得られた分散物に含まれる還元剤粒子は、メジアン径が0.44μm、最大粒子径が2.0μm以下、平均粒子径の変動係数が19%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行いゴミ等の異物を除去したうえで、下記の塗布液の調製に用いた。
【0296】
《有機ポリハロゲン化合物Aの固体微粒子分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物A[トリブロモメチル(4−(2,4,6−トリメチルフェニルスルホニル)フェニル)スルホン]10kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液639g、サーフィノール104E(日信化学(株)製)400g、メタノール640g、および水16kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて5時間分散したのち水を加えて有機ポリハロゲン化合物Aの濃度が25質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物Aの固体微粒子分散物を得た。こうして得られた分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子は、メジアン径が0.36μm、最大粒子径が2.0μm以下、平均粒子径の変動係数が18%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行いゴミ等の異物を除去したうえで、下記の塗布液の調製に用いた。
【0297】
《有機ポリハロゲン化合物Bの固体微粒子分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物B[トリブロモメチルナフチルスルホン]5kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液2.5kg、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液213g、および水10kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩2.5gと水を加えての有機ポリハロゲン化合物Bの濃度が23.5質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物Bの固体微粒子分散物を得た。得られた分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子は、メジアン径が0.38μm、最大粒子径が2.0μm以下、平均粒子径の変動係数が20%であった。得られた分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行いゴミ等の異物を除去したうえで、下記の塗布液の調製に用いた。
【0298】
《有機ポリハロゲン化合物C水溶液の調製》
室温で攪拌しながら、水75.0ml、トリプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(20%水溶液)8.6ml、オルトリン酸二水素ナトリウム・2水和物(5%水溶液)6.8ml、および水酸化カリウムの1mol/L水溶液9.5mlを順次添加し、添加終了後5分間攪拌混合した。さらに、攪拌しながら有機ポリハロゲン化合物C(3−トリブロモメタンスルホニルベンゾイルアミノ酢酸)4.0gの粉末を添加し、溶液が透明になるまで均一に溶解して水溶液100mlを得た。得られた水溶液は、200メッシュのポリエステル製スクリーンにてろ過を行いゴミ等の異物を除去したうえで、下記の塗布液の調製に用いた。
【0299】
《化合物Zの乳化分散物の調製》
化合物Zを85質量%含有する三光(株)製R−054を10kgとMIBK11.66kgを混合した後、窒素置換して80℃1時間溶解した。この液に水25.52kgとクラレ(株)製MPポリマー(クラレ(株)製、MP−203)の20質量%水溶液12.76kgとトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.44kgを添加して、20〜40℃、3600rpmで60分間乳化分散した。さらに、この液にサーフィノール104E(日信化学(株)製)0.08kgと水47.94kgを添加して減圧蒸留しMIBKを除去したのち、化合物Zの濃度が10質量%になるように調製した。こうして得た分散物に含まれる化合物Zの粒子はメジアン径0.19μm、最大粒子径1.5μm以下、粒子径の変動係数17%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0300】
《6−イソプロピルフタラジン化合物の分散液の調製》
室温で水62.35gを攪拌しながら変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)2.0gが塊状にならない様に添加し10分間攪拌混合した。その後加熱し、内温が50℃になるまで昇温した後、内温50〜60℃の範囲で90分間攪拌し均一に溶解させた。内温を40℃以下に降温し、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−217、10質量%水溶液)25.5g、トリプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(20質量%水溶液)3.0g、および6−イソプロピルフタラジン(70質量%水溶液)7.15gを添加し、30分攪拌し透明分散液100gを得た。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行いゴミ等の異物を除去したうえで、下記の塗布液の調製に用いた。
【0301】
《本発明の化合物の固体微粒子分散物の調製》
表13に記載される本発明の化合物4kgに対して、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールPVA−217)1kgと水36kgを添加し、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて12時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩4gと水を加えて本発明の化合物の濃度が10質量%になるように調整し、本発明の化合物の固体微粒子分散物を得た。得られた分散物に含まれる本発明の化合物の粒子は、メジアン径が0.34μm、最大粒子径が3.0μm以下、粒子径の変動係数が19%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行いゴミ等の異物を除去したうえで、下記の塗布液の調製に用いた。
【0302】
《現像促進剤Wの固体微粒子分散物の調製》
現像促進剤W10kg、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kg、および水20kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて5時間分散したのち水を加えて現像促進剤Wの濃度が20質量%になるように調整し、現像促進剤Wの固体微粒子分散物を得た。得られた分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子は、メジアン径が0.5μm、最大粒子径が2.0μm以下、平均粒子径の変動係数が18%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行いゴミ等の異物を除去したうえで、下記の塗布液の調製に用いた。
【0303】
《画像形成層塗布液の調製》
上記で作製したベヘン酸銀分散物Aの銀1molに対して、以下のバインダー、素材、およびハロゲン化銀乳剤Aを添加して、水を加えて、画像形成層塗布液とした。調製後、圧力0.54atmで減圧脱気を45分間行った。塗布液のpHは7.3〜7.6、粘度は25℃で50〜60mPa・sであった。
【0304】
【0305】
【化80】
【0306】
《保護層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体のガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ塗布液のガラス転移温度を24℃として溶液とした;平均粒子径116nm)943gに水を加え、有機ポリハロゲン化合物C水溶液を114.8g、有機ポリハロゲン化合物Aを固形分として17.0g、オルトリン酸二水素ナトリウム・二水和物を固形分として0.69g、現像促進剤Wを固形分として11.55g、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒径7μm、平均粒径の変動係数8%)1.58gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−235)29.3g、化合物Eを1.62g加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を0.8質量%含有)を調製した。調製後、圧力0.47atmで減圧脱気を60分間行った。得られた保護層塗布液のpHは5.5、粘度は25℃で45mPa・sであった。
【0307】
《下層オーバーコート層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体のガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ、塗布液のガラス転移温度を24℃として容器とした;平均粒子径74nm)625gに水を加え、化合物Cを0.23g、化合物Eを0.13g、化合物Fを11.7g、化合物Hを2.7gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−235)11.5gを加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を0.1質量%含有)を調製した。調製後、圧力0.47atmで減圧脱気を60分間行った。塗布液のpHは2.6、粘度は25℃で30mPa・sであった。
【0308】
《上層オーバーコート層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体のガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ、塗布液のガラス転移温度を24℃として溶液とした;平均粒子径116nm)649gに水を加え、カルナヴァワックス(中京油脂(株)製、セロゾール524、シリコーン含有量5ppm未満)の30質量%溶液18.4g、化合物Cを0.23g、化合物Eを1.85g、化合物Gを1.0g、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒径7μm、平均粒径の変動係数8%)3.45gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−235)を26.5g加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を1.1質量%含有)を調製した。調製後、圧力0.47atmで減圧脱気を60分間行った。塗布液のpHは5.3、粘度は25℃で25mPa・sであった。
【0309】
【化81】
【0310】
《バック/下塗り層のついたポリエチレンテレフタレート(PET)支持体の作製》
(1)PET支持体の作製
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い、固有粘度IV=0.66(フェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化して、130℃で4時間乾燥した後、300℃で溶融後T型ダイから押し出した。その後急冷し、熱固定後の膜厚が120μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。
これを周速の異なるロールを用い、110℃で3.3倍に縦延伸し、ついでテンターを用いて130℃で4.5倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定した後、同じ温度で横方向に4%緩和した。この後、テンターのチャック部をスリットした後、両端にナール加工を行い、4.8kg/cm2で巻きとった。このようにして、幅2.4m、長さ3500m、厚み120μmのロール状のPET支持体を得た。
【0311】
(2)下塗り層およびバック層の作製
▲1▼下塗り第一層
上記PET支持体に0.375kV・A・分/m2のコロナ放電処理を施した後、以下に示す組成の塗布液を6.2ml/m2となる様に支持体上に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに185℃で30秒乾燥した。
【0312】
【0313】
▲2▼下塗り第二層
以下に示す組成の塗布液を5.5ml/m2となる様に下塗り第一層の上に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに170℃で30秒乾燥した。
【0314】
【0315】
▲3▼バック第一層
前記下塗り層塗布面とは反対側の面に0.375kV・A・分/m2のコロナ放電処理を施し、その面に以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となる様に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに185℃で30秒乾燥した。
【0316】
【0317】
▲4▼バック第二層
以下に示す組成の塗布液を5.5ml/m2となる様にバック第一層上に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに170℃で30秒乾燥した。
【0318】
【0319】
▲5▼バック第三層
下塗り第一層と同じ塗布液を6.2ml/m2となる様にバック第二層上に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに185℃で30秒乾燥した。
【0320】
▲6▼バック第四層
以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となる様にバック第三層上に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに170℃で30秒乾燥した。
【0321】
ラテックス−B 286g
化合物−Bc−B 2.7g
化合物−Bc−C 0.6g
化合物−Bc−D 0.5g
2,4ジクロロ−6−ヒドロキシーs−トリアジン 2.5g
ポリメチルメタクリレート(10質量%水分散物、
平均粒子径5μm、平均粒子の変動係数7%) 7.7g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0322】
【化82】
【0323】
ラテックス−A:
コア部90質量%、シェル部10質量%のコアシェルタイプのラテックス
コア部 塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/
アクリロニトリル/アクリル酸=93/3/3/0.9/0.1(質量%)
シェル部 塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/
アクリロニトリル/アクリル酸=88/3/3/3/3(質量%)
質量平均分子量38,000
ラテックス−B:
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/
2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=59/9/26/
5/1(質量%)の共重合体
【0324】
(3)搬送熱処理
(3−1)熱処理
このようにして作製したバック/下塗り層のついたPET支持体を、160℃に設定した全長200m熱処理ゾーンに入れ、張力2kg/cm2、搬送速度20m/分で搬送した。
(3−2)後熱処理
上記熱処理に引き続き、40℃のゾーンに15秒間通して後熱処理を行い、巻き取った。この時の巻き取り張力は10kg/cm2であった。
【0325】
《熱現像感光材料の作製》
PET支持体の下塗り第二層の上に、特開2000−2964号公報の図1に示されているスライドビート塗布方式を用いて、前記の画像形成層塗布液を表13のように、塗布銀量1.5g/m2になるように塗布した。さらにその上に、前記保護層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.29g/m2になるように画像形成層塗布液と共に同時重層塗布した。その後、保護層の上に前記下層オーバーコート層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.97g/m2および前記上層オーバーコート層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.07g/m2になるように下層オーバーコート塗布液と共に同時重層塗布し、熱現像感光材料を作製した。
塗布時の乾燥は、恒率過程、減率過程とも乾球温度70〜75℃、露点8〜25℃、液膜表面温度35〜60℃の範囲で、塗布液の流動がほぼなくなる乾燥点近傍までは水平乾燥ゾーン(塗布機の水平方向に対し支持体が1.5°〜3°の角度)で行った。乾燥後の巻取りは温度25±5℃、相対湿度45±5%の条件下で行い、巻き姿はその後の加工形態(画像形成層面側外巻)に合わせ、画像形成層面側を外にした。なお、熱現像感光材料の包袋相対湿度は20〜40%(25℃測定)で、得られた熱現像感光材料の画像形成側の膜面pHは5.0、ベック平滑度は730秒であり、反対側の膜面pHは5.9、ベック平滑度は580秒であった。
【0326】
《写真性能の評価》
(露光処理)
得られた熱現像感光材料を、ビーム径(ビーム強度の1/2のFWHM)12.56μm、レーザー出力50mW、出力波長783nmの半導体レーザーを搭載した単チャンネル円筒内面方式のレーザー露光装置を使用し、ミラー回転数60000rpm、露光時間1.2×10-8秒の露光を実施した。この時のオーバーラップ係数は0.449にし、熱現像感光材料面上のレーザーエネルギー密度は75μJ/cm2とした。
(熱現像処理)
露光済みの熱現像感光材料に対して、図2に示した熱現像機を用いて熱現像処理を行った。熱現像処理部のローラー表面材質はシリコンゴム、平滑面はテフロン不織布とし、搬送のラインスピードは150cm/minに設定した。熱現像処理は、予備加熱部で12.2秒(予備加熱部と熱現像処理部の駆動系は独立しており、熱現像部との速度差は−0.5%〜−1%に設定、各予熱部の金属ローラーの温度設定、時間は第1ローラー温度67℃、2.0秒、第2ローラー温度82℃、2.0秒、第3ローラー温度98℃、2.0秒、第4ローラー温度温度107℃、2.0秒、第5ローラー温度115℃、2.0秒、第6ローラー温度120℃、2.0秒にした)、熱現像処理部(熱現像感光材料面温度120℃)で17.2秒、徐冷部で13.6秒行った。なお、幅方向の温度精度は±0.5℃であった。各ローラー温度の設定は熱現像感光材料の幅(例えば幅61cm)よりも両側それぞれ5cm長くして、その部分にも温度をかけて、温度精度が出るようにした。なお、各ローラーの両端部分は温度低下が激しいので、熱現像感光材料の幅よりも5cm長くした部分はローラー中央部よりも1〜3℃温度が高くなるように設定し、熱現像感光材料(例えば幅61cmの中で)の画像濃度が均質な仕上がりになるように留意した。
【0327】
(ラテックス中のNH4 +イオン含量の定量)
上に記載した方法により定量を行ない、表13に記載した。
【0328】
(写真性能の評価)
画像のDmin(カブリ)、Dmax(最高濃度)については、マクベスTD904濃度計(可視濃度)により測定を行った。処理後の感光材料を保管した際のカブリの変化については、光が照射される様な環境保管のシミュレーションとして、処理後の感光材料を東京理化器械(株)製光安定性試験機LST−300を用いて、10000Lux、40℃、相対湿度55%の条件下で6時間照射した後でカブリ濃度を測定することにより行い、光が照射されない環境保管のシミュレーションとして、遮光下で60℃、相対湿度55%で3日間保管した後でカブリ濃度を測定することにより行った。
現像銀粒子密度は、上に記載した方法と同様に、写真を撮影し、単位面積当たりの現像銀粒子の数を数え、その密度を比較した。カバリングパワーについても、上に記載した方法と同様に、感光材料中の全ての銀イオンが還元されたサンプルについて、可視濃度を現像銀量(g/m2)で割った値で比較した。
上記評価を実施した結果を表13に示す。
【0329】
表13より明らかなように、本発明の条件を満たす試料が、現像銀粒子密度、カバーリングパワーが高く、カブリ、Dmaxの点で優れており、さらに、処理後保管によるカブリの上昇が少なく、良好な性能を示していることがわかる。
一方、本発明の化合物を含まない試料はDmaxが低い。また、ラテックス中のNH4 +イオン含量が固形分に対して50ppmよりも高いラテックスを用いた比較試料は処理後の試料のカブリ上昇が大きいことがわかる。
【0330】
【表13】
【0331】
<実施例2>
《画像形成層塗布液の調製》
実施例1で作製したベヘン酸銀分散物Aの銀1molに対して、以下のバインダー、素材、およびハロゲン化銀乳剤を添加して、水を加えて、画像形成層塗布液とした。調製後、圧力0.54atmで減圧脱気を45分間行った。塗布液のpHは7.3〜7.7、粘度は25℃で45〜55mPa・sであった。
【0332】
【0333】
《下層保護層塗布液の調製》
メチルアクリレート/メチルメタアクリレート=70/30(質量比、平均粒径110nm、質量平均分子量800,000)のポリマーラテックス溶液(共重合体のガラス転移温度30℃、固形分濃度28.0%、化合物Aを100ppm含有)900gに水を加え、化合物Eを0.2g、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−235)を35.0g加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を0.5質量%含有)を調製した。調製後、圧力0.47atmで減圧脱気を60分間行った。塗布液のpHは5.2、粘度は25℃で35mPa・sであった。
【0334】
《上層保護層塗布液の調製》
メチルアクリレート/メチルメタアクリレート=70/30(質量比、平均粒径110nm、質量平均分子量800,000)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度30℃、固形分濃度として28.0%、化合物Aを100ppm含有)900gに、カルナヴァワックス(中京油脂(株)製、セロゾール524、シリコーン含有量として5ppm未満)30質量%溶液を10.0g、化合物Cを0.3g、化合物Eを1.2g、化合物Fを25.0g、化合物Hを6.0g、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒径7μm、平均粒径の変動係数8%)5.0gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−235)40.0gを加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を1.5質量%含有)を調製した。調製後、圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは2.4、粘度は25℃で35mPa・sであった。
【0335】
《熱現像感光材料の作製》
実施例1に記載したように下塗り層を塗布したPET支持体の下塗り層の上に、特開2000−2964号公報の図1に示されているスライドビ-ド塗布方式を用いて、前記の画像形成層塗布液を塗布銀量1.5g/m2になる様に、その上に、前記の保護層下層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.0g/m2になる様に、さらにその上に前記の保護層上層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.3g/m2になる様に、画像形成層と保護層下層および上層の3層を同時に重層塗布した。
塗布時の乾燥条件は、第一乾燥ゾーン(低速風乾燥域)が乾球温度70〜75℃、露点9〜23℃、支持体面上での風速8〜10m/s、液膜表面温度35〜40℃の範囲で乾燥し、第二乾燥ゾーン(高速風乾燥域)が、乾球温度65〜70℃、露点20〜23℃、そして支持体面上での風速20〜25m/sで乾燥した。第一乾燥ゾーンの滞在時間は、このゾーンでの恒率乾燥期の2/3の時間で、第二乾燥ゾーンに移行させ、乾燥した。第一乾燥ゾーンは、水平乾燥ゾーン(塗布機の水平方向に対し支持体が1.5°〜3°の角度)である。塗布速度は、60m/minで行った。乾燥後の巻取りは温度25±5℃、相対湿度45±10%の条件下で行った。巻き姿はその後の加工形態(画像形成層面側外巻)に合わせ、画像形成層面側を外にした。なお、感光材料の包袋湿度は相対湿度20〜40%(25℃測定)で、得られた熱現像感光材料の画像形成側の膜面pHは5.1、ベック平滑度は4900秒であり、反対側の膜面pHは5.9、ベック平滑度は510秒であった。
【0336】
塗布方法を変更した以外は、実施例1と同様にラテックスおよび本発明の化合物を使用して試料を作成し評価を実施したところ、実施例1と同様に本発明の構成の試料が良好な性能を示した。
【0337】
<実施例3>
上層保護層塗布液のマット剤として平均粒径11μmのポリスチレン粒子(平均粒径の変動係数8%)5.0gを使用する以外は実施例2とまったく同様の方法で画像形成層塗布液、下層保護層塗布液および上層保護層塗布液を調製した。そして、実施例1に記載したように下塗り層を塗布したPET支持体の下塗り層の上に、特開2000−2964号公報の図1に示されるスライドビ-ド塗布方式を用いて、前記の画像形成層塗布液を塗布銀量1.5g/m2になる様に、その上に、前記の保護層下層塗布液をポリマ−ラテックスの固形分塗布量が1.2g/m2になる様に、さらにその上に前記の保護層上層塗布液をポリマ−ラテックスの固形分塗布量が1.4g/m2になる様に、画像形成層と保護層下層および上層の3層を同時に重層塗布した。
【0338】
塗布時の乾燥条件、巻き姿は実施例2と同様とし、その後の加工形態(画像形成層面側外巻)に合わせ、画像形成層面側を外にした。なお、感光材料の包袋相対湿度は20〜40%(25℃測定)で、得られた熱現像感光材料の画像形成側の膜面pHは5.1、ベック平滑度は1400秒であり、反対側の膜面pHは5.9、ベック平滑度は520秒であった。
塗布方法を変更した以外は、実施例1と同様にラテックスおよび本発明の化合物を使用して試料を作成し評価を実施したところ、実施例1と同様に本発明の構成の試料が良好な性能を示した。
【0339】
<実施例4>
実施例1〜3で作製した熱現像感光材料について、富士写真フイルム(株)製DRY SYSTEM PROCSSOR FDS−6100Xを用いて熱現像処理を行い同様の評価を行ったところ、実施例1〜3と同様に本発明の条件を満たす試料が良好な性能を示した。
【0340】
<実施例5>
以下の点を変更して、実施例1のサンプルNo.3〜6の調製法と同様にしてサンプルNo.12〜16を作製した。すなわち、ハロゲン化銀乳剤Aの代わりに下記のハロゲン化銀乳剤Bを用い、SBRラテックスとして、表14に記載されるアルカリ化合物のpH調整剤を用いてpHを6.5±0.2に調整したものを用い、化合物P−3およびP−10の代わりに下記の化合物Xを12.7g用い、さらに下記の有機ポリハロゲン化合物Dの固体分散物を固形分として33g添加し、それ以外は実施例1と同様にしてサンプルNo.12〜16を作製した。このサンプルの画像形成層を有する側の膜面pHは4.9±0.2であった。
得られたサンプルについて実施例1と同様の評価を行い、さらに下記の熱現像感光材料の保存性の評価を行なった。その結果、実施例1と同様に本発明の構成の試料が良好な性能を示した。さらに表14に示す様に、pH調整剤にLiOHを用いることにより熱現像感光材料の保存中のDmin(カブリ)の上昇をほとんどなくすことができることが確認された。
【0341】
《ハロゲン化銀乳剤Bの調製》
水700mlにアルカリ処理ゼラチン(カルシウム含有量として2700ppm以下)11g、臭化カリウム30mg、および4−メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.3gを溶解して、45℃にてpHを6.5に調整した。その後、硝酸銀18.6gを含む水溶液159mlと臭化カリウムを1mol/L、(NH4)2RhCl5(H2O)を5×10-6mol/LおよびK3IrCl6を2×10-5mol/Lで含む水溶液を、pAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で6分30秒間かけて添加した。ついで、硝酸銀55.5gを含む水溶液476mlと臭化カリウムを1mol/LおよびK3IrCl6を2×10-5mol/Lで含むハロゲン塩水溶液を、pAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で28分30秒間かけて添加した。その後pHを下げて凝集沈降させて脱塩処理をし、平均分子量15,000の低分子量ゼラチン(カルシウム含有量として20ppm以下)51.1g加え、pH5.9、pAg8.0に調整した。得られた粒子は平均粒子サイズ0.11μm、投影面積変動係数9%、(100)面比率90%の立方体粒子であった。
得られたハロゲン化銀粒子を60℃に昇温して銀1mol当たりベンゼンチオスルホン酸ナトリウム76μmolを添加し、3分後にトリエチルチオ尿素71μmolを添加した後、100分間熟成し、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを5×10-4mol、上記化合物Aを0.17g加えた後、40℃に降温させた。
その後、40℃に温度を保ち、ハロゲン化銀1molに対して4.7×10-2molの臭化カリウム(水溶液として添加)、12.8×10-4molの上記増感色素A(エタノール溶液として添加)、6.4×10-3molの化合物B(メタノール溶液として添加)、3.2×10-3molの化合物Y(メタノール/H2O=1/1の混合溶液として添加)、を順じ攪拌しながら添加し、20分後に30℃に急冷してハロゲン化銀乳剤Bの調製を終了した。
【0342】
《化合物Xの固体微粒子分散物の調製》
化合物Xを4kgに対して変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバール、PVA−217)を1kgと水36kgとを添加してよく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて13時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩4gと水を加えて化合物の濃度が10質量%になるように調整し、化合物の固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる化合物の粒子は平均粒子サイズ0.33μm、最大粒子サイズ3.0μm以下、変動係数24%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
得られた化合物の固体微粒子分散物は、上記の塗布液の調製に用いた。
【0343】
《有機ポリハロゲン化合物Dの固体微粒子分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物Dを6kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液12kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液240g、および水0.18kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて6時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物Dの濃度が30質量%になるように調整し、有機ポリハロゲン化合物Dの固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子は平均粒子サイズ0.37μm、最大粒子径2.0μm以下、変動係数23%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。得られた有機ポリハロゲン化合物Dの固体微粒子分散物は、上記の塗布液の調製に用いた。
【0344】
(保存性の評価)
得られた熱現像感光材料を、25℃相対湿度60%の環境下に24時間放置後、感光材料同士を重ね合わせ密閉した包袋に入れ、45℃1W保存した後実施例1と同様に露光、熱現像処理を行い、45℃保存前のDmin(a)と1W保存後のDmin(b)を測定し、(b)−(a)=ΔDminを求め、保存性の評価を行なった。ΔDminが小さいほど保存性が良好で、0.05以下が実用的に問題ないレベルである。
【0345】
【化83】
【0346】
【表14】
【0347】
<実施例6>
実施例2の画像形成層塗布液のSBRラテックスを実施例5のサンプルNo.12〜16に用いたラテックスに置き換え、本発明の化合物を実施例5の化合物X12.7gに置き換え、さらに、下層保護層塗布液のポリマーラテックス溶液をメチルメタアクリレート/ブチルアクリレート=58/42(質量比、平均粒径150nm、質量平均分子量900,000、ガラス転移温度30℃、化合物Aを100ppm含有、固形分濃度28.0質量%)のポリマーラテックスに置き換えて、実施例2と同様にして熱現像感光材料を作製した。
得られた試料を実施例5と同様の評価を行った。その結果実施例5と同様の良好な写真性能が得られた。
【0348】
<実施例7>
実施例1と同様の方法で、本発明の化合物として化合物2−2、化合物10−2、化合物18−1、化合物218−2、化合物H−1−15、化合物H−2−2、化合物H−2−2、化合物H−3−1、化合物H−4−1、化合物H−5−1、化合物A’−6、化合物A−3をそれぞれ用いて12種類の熱現像感光材料を作製した。これらの熱現像感光材料を、実施例1と同じ方法で評価した。その結果、実施例1と同様の効果を得ることができた。
【0349】
【発明の効果】
本発明によれば、カブリが低く、Dmax(最高濃度)が高く、処理後の感光材料を長期間保管してもカブリの上昇が小さく、写真製版用途に最適な熱現像感光材料を得ることができる。また、本発明の熱現像感光材料は、環境面、コスト面で有利な水系塗布が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の化合物が熱現像感光材料に存在する場合(A)と存在しない場合(B)の断面電子顕微鏡写真である。
【図2】 本発明の熱現像感光材料の熱現像処理に用いられる熱現像機の一構成例を示す側面図である。
【符号の説明】
10 熱現像画像形成材料
11 搬入ローラー対
12 搬出ローラー対
13 ローラー
14 平滑面
15 加熱ヒーター
16 ガイド板
A 予備加熱部
B 熱現像処理部
C 徐冷部
Claims (10)
- 支持体の一方面上に、非感光性有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、銀イオンのための還元剤、およびバインダーを有する熱現像感光材料において、下記一般式(1)、(N1)〜(N6)、(M1)、(M2)または下記化合物群から選択される化合物を少なくとも1種含み、前記非感光性有機銀塩を含む画像形成層に用いるバインダーの50質量%以上はガラス転移温度が40℃以下のポリマーラテックスであり、該ポリマーラテックス中のNH4 +イオン含量が固形分に対して50ppm以下であることを特徴とする熱現像感光材料。
ここで、Rがヒドロキシ基またはヒドロキシ基の塩を表すとき、XとWは何れもホルミル基であることはなく、XとWの組み合わせにおいて、一方が無置換アルコキシカルボニル基を表すとき、他方が無置換アルコキシカルボニル基または無置換アルキルスルホニル基であることはない。また、XとW、またはWとRが互いに結合して環状構造を形成することはない。また、X、W、Rは何れも連結基を介して銀塩への吸着促進基を含むことはない。
なお、XとRはシスの形で表示してあるが、XとRがトランスの形を含む。
化合物群
- 前記一般式(1)、(N1)〜(N6)、(M1)、(M2)または前記化合物群から選択される化合物が、非感光性有機銀塩上及び近傍に現像開始点を形成可能な化学種をイメージワイズに生成する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
- 前記一般式(1)、(N1)〜(N6)、(M1)、(M2)または前記化合物群から選択される化合物が、0.01mol/銀molで添加することにより現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
- 前記一般式(1)、(N1)〜(N6)、(M1)、(M2)または前記化合物群から 選択される化合物が、0.01mol/銀molで添加することによりカバリングパワーが120〜1000%に増加する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
- 前記ポリマーラテックスが、重合反応後のpH調整剤としてNH4 +イオンを含有しないアルカリ化合物を用いて調製されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
- 前記pH調整剤が、LiOH、NaOHおよびKOHから選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
- 前記ポリマーラテックスが、NH 4 + イオンを含有しない重合開始剤を用いて重合したポリマーラテックスであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
- 前記重合開始剤が、K 2 S 2 O 8 またはNa 2 S 2 O 8 であることを特徴とする請求項7に記載の熱現像感光材料。
- 画像形成層を有する側のNH4 +イオン含量が、支持体1m2当たり0.06mmol以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
- 前記ポリマーラテックスの少なくとも1種が、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/ブタジエン/イタコン酸コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/スチレン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/ジビニルベンゼン/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/塩化ビニル/アクリル酸コポリマーのラテックス、塩化ビニリデン/エチルアクリレート/アクリロニトリル/メタクリル酸コポリマーのラテックスから選択されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
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