JP4012757B2 - 熱現像感光材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像感光材料に関するもので、特に特定のフッ素化合物を使用することで塗布面状を改良し、かつ使用前保存時のカブリ上昇を低減した熱現像感光材料に関するものである
さらに詳細には、写真製版用に適したイメージセッター用熱現像感光材料関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来印刷製版の分野では、画像形成材料の湿式処理に伴う廃液が作業性の上で問題となっており、また近年では環境保全や省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザー・イメージセッターにより効率的な露光が可能で、高解像度で鮮明な黒色画像を形成することができる光熱写真材料に関する技術が注目されている。
【0003】
この技術として、例えば、米国特許第3,152,904号明細書、同3,487,075号明細書およびD.モーガン(Morgan)による「ドライシルバー写真材料(Dry Silver Photographic Materials)」(Handbook of Imaging Materials,MarcelDekker,Inc.第48頁,1991)等に記載されているように、支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子、還元剤およびバインダーを含有する熱現像感光材料が知られている。
【0004】
印刷写真製版用途としては、実質的に色がなく(特にUV領域で色のない)、硬調な写真特性が得られる感光材料が必要とされる。硬調な写真特性を得る方法として、欧州特許公開EP762,196A号公報、特開平9−90550号公報等に、熱現像感光材料に用いる感光性ハロゲン化銀粒子に第VII族またはVIII族の金属イオンまたは金属錯体イオンを含有させること、および熱現像感光材料中にヒドラジン誘導体を含有せしめて硬調な写真特性を得ることができることが開示されている。また、赤外線露光を前提とした感光材料としては、増感色素、ハレーション防止染料の可視吸収を大幅に少なくすることができ、実質的に色のない感光材料を容易に作ることができ、感赤外線性光熱ハロゲン化銀写真材料の技術が開発されている。分光増感技術については特公平3−10391号公報、特公平6−52387号公報、特開平5−341432号公報、特開平6−194781号公報、特開平6−301141号公報等に開示されており、さらにハレーション防止技術については特開平7−13295号公報、米国特許第5,380,635号明細書に開示されている。
【0005】
しかし、赤外線を吸収し分光増感する色素は一般的にHOMOが高いため強い還元能を有し、感光材料中の銀イオンを還元し、感光材料のカブリを悪化させる傾向にある。特に、高温、高湿といった条件での保存や、長期の保存では著しい性能変化が伴う場合がある。また保存性の劣化を防ぐためにHOMOの低い色素を用いると、相対的にLUMOも低くなり分光増感効率が低下し、感度が低くなる。このような性能変動に対する問題は、湿式写真感光材料だけでなく、熱現像感光材料においてはさらに顕著となる。
【0006】
そこで、カブリが低く、かつ使用前(露光前)保存時のカブリの上昇の少ない画像を得ることが可能で、環境面・コスト面で有利な熱現像感光材料を提供する技術が望まれていた。
【0007】
一方、有機銀塩を利用した熱画像形成システムの製造においては、溶剤塗布により製造する方法と、主バインダーとしてポリマー微粒子を水分散として含有する塗布液を塗布・乾燥して製造する方法がある。後者の方法は溶剤の回収等の工程が不要なため製造設備が簡単であり、かつ大量生産に有利である。
溶剤を使用した塗布方法、主として水を溶媒として使用した水系の塗布いずれの場合においても、熱現像感光材料はこれまでのゼラチンを主たるバインダーとして使用した感光材料に比べて塗布が難しく、特に高速で塗布しようとするとスジやハジキ・ムラの発生が起こり、生産性、経済性を改善するために塗布性の改良が望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の第一の目的は、熱現像感光材料の塗布液の塗布適性を改善し、スジやハジキ・ムラの発生を抑えることにあり、第二の目的は使用前(露光前)保存時のカブリの上昇を低減した熱現像感光材料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するフッ素化合物を用いれば、目的にかなう熱現像感光材料を提供し得ることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、以下の<1>〜<14>の熱現像感光材料を提供するものである。
<1> 支持体上に、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、硬調化剤およびバインダーを含有する熱現像感光材料において、下記一般式(b1)で表されるフッ素化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【化1】
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に炭素原子数2以上でフッ素原子数が11以下のフッ化アルキル基であり、且つ−La−Raf−Wを表す。ここで、La−は置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、またはこれらを組み合わせてできる2価基を表し、Rafは炭素数1〜5のパーフルオロアルキレン基を表し、Wはフッ素原子を表す。R3およびR4はそれぞれ水素原子か置換または無置換のアルキル基を表す。AおよびBは、一方が水素原子を、もう一方が−Lb−SO3Mを表し、Mは水素原子またはカチオンを表す。Lbは、単結合または置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。)
<2> 前記一般式(b1)で表されるフッ素化合物が、下記一般式(b2)で表される化合物であることを特徴とする<1>に記載の熱現像感光材料。
【化2】
(式中、R1およびR2は前記一般式(b1)におけるものと同義である。Xは−Lb−SO3Mを表し、Mは水素原子またはカチオンを表す。Lbは、単結合または置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。)
<3> 前記R1およびR2におけるRafが、炭素数2〜4のパーフルオロアルキレン基であることを特徴とする<1>または<2>に記載の熱現像感光材料。
<4> 感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層を有する側、及びその反対側の何れかの表面のX線光電子分光法で求めたフッ素原子と炭素原子との光電子エネルギーのピーク強度比が、0.05〜5.0であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1つに記載の熱現像感光材料。
<5> 前記感光性ハロゲン化銀が750〜1400nmの範囲で分光増感されていることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1つに記載の熱現像感光材料。
<6> 感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層を有する側のNH4 +イオン含量が、支持体1m2当たり0.06mmol以下であることを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1つに記載の熱現像感光材料。
<7> 感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層に用いるバインダーの50質量%以上が、ポリマーラテックスであることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1つに記載の熱現像感光材料。
<8> 前記ポリマーラテックスが、該ポリマーラテックス中のNH4 +イオン含量が固形分に対して50ppm以下であるポリマーラテックスであることを特徴とする<7>に記載の熱現像感光材料。
<9> 前記ポリマーラテックスが、ガラス転移温度が−30〜40℃のポリマーラテックスであることを特徴とする<7>または<8>に記載の熱現像感光材料。
<10> 前記ポリマーラテックスの重合反応後のpH調整剤が、NH4 +イオンを含有しないアルカリ化合物であることを特徴とする<7>〜<9>のいずれか1つに記載の熱現像感光材料。
<11> 前記pH調整剤が、LiOH、NaOHまたはKOHの少なくとも一つの化合物であることを特徴とする<10>に記載の熱現像感光材料。
<12> 前記一般式(b1)で表されるフッ素系化合物を支持体の画像形成層側の最外層もしくはバック層側の最外層のいずれかに含有することを特徴とする<1>〜<11>のいずれか1つに記載の熱現像感光材料。
<13> 前記支持体が下塗り層を少なくとも有する支持体であって、該下塗り層にフッ素系界面活性剤を含有することを特徴とする<1>〜<12>のいずれか1つに記載の熱現像感光材料。
<14> 前記下塗り層中の前記フッ素系界面活性剤が、下記一般式(a1)で表されるフッ素化合物および前記一般式(b1)で表されるフッ素系化合物から選択されるフッ素化合物であることを特徴とする<13>に記載の熱現像感光材料。
【化3】
(式中、Rは置換または無置換のアルキル基を表し、Rafはパーフルオロアルキレン基を表す。Wは水素原子またはフッ素原子を表し、Laは置換もしくは無置換のアルキレン基または置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、あるいはこれらを組み合わせてできる2価基を表す。AおよびBは、一方が水素原子を、もう一方が−Lb−SO3Mを表し、Mはカチオンを表す。Lbは、単結合または置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。)
【0012】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の熱現像感光材料について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
まず、本発明の熱現像感光材料に用いる、もしくは好ましく使用されるフッ素化合物について説明する。本発明においては後述の一般式(b1)で表されるフッ素化合物を用いることを特徴とする。
最初に、後述の一般式(b1)で表されるフッ素化合物と併用して好ましく用いられる一般式(a1)で表されるフッ素化合物を説明する。
なお、以下の説明では一般式(a1)で表されるフッ素化合物をフッ素化合物(A)と呼ぶことがある。
【0013】
【化7】
【0014】
前記一般式(a1)中、Rは置換または無置換のアルキル基を表す。Rで表される置換または無置換のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、また環状構造を有していてもよい。
前記置換基としては、どんな置換基でもよいが、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子(好ましくはCl)、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、燐酸エステル基等が好ましい。
Rは、置換基としてフッ素を有さない方が好ましく、無置換アルキル基がより好ましい。Rは、炭素数が2以上であるのが好ましく、4以上がより好ましく、6以上がさらに好ましい。
【0015】
Rafはパーフルオロアルキレン基を表す。ここで、パーフルオロアルキレン基とは、アルキレン基の水素原子が全てフッ素置換された基をいう。前記パーフルオロアルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、また環状構造を有していてもよい。Rafは、炭素数が10以下であるのが好ましく、8以下であるのがより好ましい。最も好ましくは炭素数4のパーフルオロアルキレン基である。
【0016】
Wは、水素原子またはフッ素原子を表すが、フッ素原子であることが好ましい。
Laは、置換もしくは無置換のアルキレン基または置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、あるいはこれらを組み合わせてできる2価基を表す。置換基はRで挙げたものが好ましい。Laは、炭素数が4以下であるのが好ましく、また、無置換アルキレンであるのが好ましい。
【0017】
本発明に係わるフッ素化合物が、Rafの炭素数が異なる化合物の混合物であるときは、Rafの炭素数が4である化合物(C4体)の割合が多い方が好ましい。C4体の混合物中の割合は好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
一般に、C6以上のRafを有する化合物が多く含まれると、水に対する溶解性が悪くなるため、C6以上の成分は少ないほうが好ましい。また、C3以下の成分が含まれると、静的表面表力を下げる効果がC4体に比べて小さくなるため、C3以下の成分は少ないほうが好ましい。
【0018】
AおよびBは、一方が水素原子を、もう一方が−Lb−SO3Mを表し、Mはカチオンを表す。
ここで、Mで表されるカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン等が好ましく例示される。
これらのうち、より好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはアンモニウムイオンであり、さらに好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンであり、一般式(a1)で表されるフッ素化合物(A)の総炭素数や置換基、アルキル基の分岐の程度等により適切に選択することができる。
【0019】
R、LaおよびRafの炭素数の合計が16以上の場合、リチウムイオンであることが溶解性(特に水に対して)と帯電防止能または塗布均一性の両立の観点で優れている。
Lbは、単結合または置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。置換基はRで挙げたものが好ましい。Lbがアルキレン基である場合、C数は2以下であるのが好ましく、無置換であるのが好ましく、メチレン基であるのがより好ましい。
Lbは、単結合であるのが最も好ましい。
【0020】
上記一般式(a1)は、上記のそれぞれの好ましい態様を組み合わせることが、より好ましい。
一般式(a1)は、さらに下記一般式(a2)で表されるのが好ましい。
【0021】
【化8】
【0022】
前記一般式(a2)中、R1は総炭素数6以上の置換または無置換のアルキル基を表す。但し、R1はフッ素原子で置換されたアルキル基になることはない。R1で表される置換または無置換のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、また環状構造を有していてもよい。
前記置換基としては、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素以外のハロゲン原子、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、燐酸エステル基等が挙げられる。
【0023】
R1で表される置換または無置換のアルキル基は、総炭素数が6〜24であるのが好ましい。炭素数6〜24の無置換アルキル基の好ましい例としては、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、2−オクチルドデシル基、ドコシル基、テトラコシル基、2−デシルテトラデシル基、トリコシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
また、置換基の炭素も含めた総炭素数が6〜24の置換アルキル基の好ましい例としては、2−ヘキセニル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基、ベンジル基、β−フェネチル基、2−メトキシエチル基、4−フェニルブチル基、4−アセトキシエチル基、6−フェノキシヘキシル基、12−フェニルドデシル基、18−フェニルオクタデシル基、12−(p−クロロフェニル)ドデシル基、2−(燐酸ジフェニル)エチル基等を挙げることができる。
【0024】
R1で表される置換または無置換のアルキル基は、総炭素数が6〜18であるのがより好ましい。炭素数6〜18の無置換アルキル基の好ましい例としては、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
また、置換基の炭素数を含む総炭素数が6〜18の置換アルキル基の好ましい例としては、フェネチル基、6−フェノキシヘキシル基、12−フェニルドデシル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基等が挙げられる。
【0025】
中でも、R1としては、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基であるのがさらに好ましく、炭素数8〜16の直鎖、環状または分岐の無置換アルキル基であるのが特に好ましい。
【0026】
前記一般式(a2)中、Rfは炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を表す。
ここで、パーフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子が全てフッ素置換された基をいう。前記パーフルオロアルキル基中のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、また環状構造を有していてもよい。
Rfで表されるパーフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基、ウンデカフルオロ−n−ペンチル基、トリデカフルオロ−n−ヘキシル基、ウンデカフルオロシクロヘキシル基等が挙げられる。
中でも、炭素数2〜4のパーフルオロアルキル基(例えば、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基等)が好ましく、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基が特に好ましい。
【0027】
前記一般式(a2)中、nは1以上の整数を表す。好ましくは1〜4の整数であり、特に好ましくは1または2である。
また、nとRfの組合せとして、n=1の場合にはRfがヘプタフルオロ−n−プロピル基またはノナフルオロ−n−ブチル基、n=2の場合にはRfがノナフルオロ−n−ブチル基であることがさらに好ましい。
【0028】
前記一般式(a2)中、X1およびX2は、一方が水素原子を、もう一方がSO3Mを表し、Mはカチオンを表す。
ここで、Mで表されるカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン等が好ましく例示される。これらのうち、特に好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンである。
【0029】
前記一般式(a1)で表されるフッ素化合物(A)の好ましい具体例を以下に例示するが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
尚、以下では便宜上、BがSO3Mであり、Aが水素原子である例示化合物を示すが、下記の例示化合物においてBが水素原子であり、AがSO3Mであってもよく、それらの化合物も本発明のフッ素化合物(A)の具体例として挙げられる。
下記例示化合物の構造表記の中で特に断りのない限り、アルキル基、パーフルアロアルキル基は直鎖構造を有する基を意味する。さらに、構造表記中の略号のうち、2EHは2−エチルヘキシル基を表し、2BOは2−ブチルオクチル基を表す。
【0030】
【化9】
【0031】
【化10】
【0032】
【化11】
【0033】
【化12】
【0034】
【化13】
【0035】
【化14】
【0036】
【化15】
【0037】
【化16】
【0038】
前記一般式(a1)で表されるフッ素化合物(A)は、一般的なエステル化反応およびスルホン化反応を組み合わせて容易に合成することができる。
【0039】
次に、本発明の一般式(b1)で表されるフッ素化合物を詳細に説明する。
【化17】
【0040】
R 1 およびR 2 はそれぞれ独立に、下記一般式(c)で表される基を表す。
一般式(c)
−La−Raf−W
一般式(c)においてLaは、置換もしくは無置換のアルキレン基または置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、あるいはこれらを組み合わせてできる2価基を表す。前記の置換基としては、どのような基でもよいが、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子(好ましくはCl)、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、リン酸エステル基が好ましい。
Laは、炭素数が8以下であるのが好ましく、4以下がより好ましい。また、無置換アルキレン基であるのが好ましい。Rafは炭素数1〜5パーフルオロアルキレン基を表し、好ましくは炭素数2〜4のパーフルオロアルキレン基、最も好ましくは炭素数4のパーフルオロアルキレン基である。ここでパーフルオロアルキレン基とはアルキレン基のすべての水素原子がフッ素原子で置き換えられたアルキレン基を言う。前記パーフルオロアルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、また環状構造を有していてもよい。Wはフッ素原子を表す。
本発明に係わるフッ素化合物が、Rafの炭素数が異なる化合物の混合物であるときは、Rafの炭素数が4である化合物(C4体)の割合が多い方が好ましい。C4体の混合物中の割合は好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。一般に、C6以上のRafを有する化合物が多く含まれると、水に対する溶解性が悪くなるため、C6以上の成分は少ないほうが好ましい。また、C3以下の成分が含まれると、静的表面表力を下げる効果がC4体に比べて小さくなるため、C3以下の成分は少ないほうが好ましい。
【0041】
上記R 1 およびR 2 の具体例としては、−C2F5基、−C3F7基、−C4F9基、−C5F11基、−CH2−C4F9基、−C2H4−C4F9基、−C4H8−C4F9基、−C6H12−C4F9基、−C8H16−C4F9基、−C4H8−C2F5基、−C4H8−C3F7基、−C4H8−C5F11基、−C8H16−C2F5基、−C2H4−C3F7基、−C2H4−C5F11基、−C4H8−CF(CF3)2基、−CH2CF3基、C4H8−CH(C2F5)2基、−C4H8−CH(CF3)2基、−C4H8−C(CF3)3基が挙げられるが、本発明で採用しうるR 1 およびR 2 のフッ化アルキル基はこれらに限定されるものではない。
【0045】
前記一般式(b1)中、R 3およびR4はそれぞれ独立に水素原子または置換または無置換のアルキル基を表す。
R 3およびR4で表される置換または無置換のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、また環状構造を有していてもよい。前記置換基としては、どんな置換基でもよいが、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子(好ましくはCl)、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、燐酸エステル基等が好ましい。
AおよびBは、一方が水素原子を、もう一方が−Lb−SO3Mを表し、Mはカチオンを表す。ここで、Mで表されるカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン等が好ましく例示される。これらのうち、より好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはアンモニウムイオンであり、さらに好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンであり、一般式(C)の基の総炭素数や置換基、アルキル基の分岐の程度等により適切に選択することができる。R1、R2、R3およびR4の炭素数の合計が16以上の場合、リチウムイオンであることが溶解性(特に水に対して)と帯電防止能または塗布均一性の両立の観点で優れている。
Lbは、単結合または置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。置換基はR3およびR4の説明で挙げたものが好ましい。Lbがアルキレン基である場合、炭素数は2以下であるのが好ましく、無置換であるのが好ましく、メチレン基であるのがより好ましい。Lbは、単結合であるのが最も好ましい。
上記一般式(b1)は、上記のそれぞれの好ましい態様を組み合わせることが、より好ましい。一般式(b1)は、さらに下記一般式(b2)で表されるのが好ましい。
【0046】
【化18】
【0047】
前記一般式(b2)中、R1およびR2は一般式(b1)のものと同義であり、R1およびR2で表されるフッ化アルキル基の具体例は前述の一般式(b1)における基が挙げられ、好ましい構造も同様に前述の一般式(c)の説明で記載した好ましい構造と同じである。
【0048】
前記一般式(b2)中、Xは−L b −SO3Mを表し、Mはカチオンを表す。L b は、単結合または置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。ここで、Mで表されるカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン等が好ましく例示される。これらのうち、特に好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンである。
【0049】
一般式(b1)で表されるフッ素化合物の具体例を以下に例示するが、本発明で用いることができるフッ素化合物は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
下記例示化合物の構造表記の中で特に断りのない限りアルキル基、パーフルオロアルキル基は直鎖の構造を有する基を意味する。
【0050】
【化19】
【0051】
【化20】
【0052】
【化21】
【0053】
【化22】
【0055】
【化24】
【0056】
【化25】
【0058】
【化27】
【0059】
前記一般式(b1)および(b2)で表されるフッ素化合物は、一般的なエステル化反応およびスルホン化反応を組み合わせて容易に合成することができる。
本発明で用いるフッ素化合物は、界面活性剤として、熱現像感光材料を構成している層(特に、保護層や下塗り層、バック層など)を形成するための塗布組成物に好ましく用いられる。中でも、熱現像感光材料の最上層の親水性コロイド層の形成に用いると、効果的な帯電防止能と塗布の均一性を得ることができるので特に好ましい。
【0060】
本発明においては、感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層を有する側、及びその反対側の何れかの表面のX線光電子分光法で求めたフッ素原子と炭素原子との光電子エネルギーのピーク強度比(以下、F/C比と記載する)が、0.05〜5.0であることが好ましく、0.1〜4.0であることがより好ましい。
本発明におけるX線光電子分光法とは、試料表面にエネルギー幅の狭い軟X線(半値幅約1eV)を照射した時の光電効果により試料中の原子の内殻・外殻電子が真空中に放出され、この光電子のエネルギーとその数を測定することにより表面近傍(深さ数nm)に存在する原子の量やその原子の周囲の環境、化学結合状態を分析する方法である。X線光電子分光法を用いて、表面のフッ素原子と炭素原子との光電子エネルギーのピーク強度比を求めることにより熱現像感光材料表面のフッ素原子の存在状態を知ることができる。
【0061】
本明細書におけるF/C比は、島津製作所(株)製ESCA750型(X線源:MgKα)装置を用い、F1s、C1sのエネルギーのピーク強度を測定し、下記の計算式で求めた値である。
F/C比は、フッ素化合物の含有量を適宜変えることによりコントロールできる。本発明のフッ素化合物を適用することが最も好ましい。また、熱現感光材料両面のF/C比を求めることにより相互の面へのフッ素化合物の転写の状態を知ることもできる。
【0062】
本発明においては、本発明のフッ素化合物の1種類を単独で用いてもよいし、また2種類以上を混合して用いてもよい。また、本発明のフッ素化合物とともに他の界面活性剤を用いてもよい。併用可能な界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の各種界面活性剤を挙げることができる。また併用する界面活性剤は、高分子界面活性剤であってもよく、本発明のフッ素化合物以外のフッ素系界面活性剤であってもよい。併用する界面活性剤としては、アニオン系もしくはノニオン系活性剤がより好ましい。
本発明におけるフッ素化合物の使用量については特に制約はなく、用いる化合物の構造や用いる場所、組成物中に含まれる他の素材の種類や量などに応じて、その使用量を任意に決定することができる。
好ましい使用量は、0.001〜0.5g/m2、さらに好ましくは、0.001〜0.1g/m2である。
【0063】
本発明において有機銀塩は還元可能な銀源であり、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)および還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。還元可能な銀イオン源を含有する有機酸およびヘテロ有機酸の銀塩、特に長鎖(10〜30、好ましくは15〜25の炭素原子数)の脂肪族カルボン酸および含窒素複素環が好ましい。配位子が、4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機または無機の銀塩錯体も有用である。好適な銀塩の例は、Research Disclosure(以下、RDとする)第17029および29963に記載されており、次のものがある。
【0064】
有機酸の塩(例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の塩);銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩(例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等);アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀錯体(例えば、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等)、ヒドロキシ置換酸類(例えば、サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5,5−チオジサリチル酸))、チオン類の銀塩または錯体(例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−(チアゾリン−2−チオン)、および3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン)、イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾールおよび1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾールおよびベンゾトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体または塩;サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;およびメルカプチド類の銀塩。これらの内、好ましい銀源はベヘン酸銀、アラキジン酸および/またはステアリン酸、これらの混合物である。
【0065】
本発明においては、上記の有機酸銀ないしは有機酸銀の混合物の中でも、ベヘン酸銀含有率75mol%以上の有機酸銀を用いることが好ましく、ベヘン酸銀含有率85mol%以上の有機酸銀を用いることがさらに好ましい。ここでベヘン酸銀含有率とは、使用する有機酸銀に対するベヘン酸銀のmol分率を示す。本発明に用いる有機酸銀中に含まれるベヘン酸銀以外の有機酸銀としては、上記の例示有機酸銀を好ましく用いることができる。
【0066】
有機銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号公報に記載されている様なコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウムなど)を作製した後に、コントロールドダブルジェットにより、前記ソープと硝酸銀などを添加して有機銀塩の結晶を作製することができる。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよい。
【0067】
本発明に好ましく用いられる有機酸銀は、上記の有機酸のアルカリ金属塩(Na塩、K塩、Li塩等が挙げられる)溶液または懸濁液と硝酸銀を反応させることにより調製される。これらの調製方法については、特開2000−292882号公報の段落番号0019〜0021に記載の方法を用いることができる。
【0068】
本発明においては、液体を混合するための密閉手段の中に硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液を添加することにより有機酸銀を調製する方法を好ましく用いることができる。具体的には、特開2001−33907号公報に記載されている方法を用いることができる。
本発明においては有機酸銀の調製時に、硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液、あるいは反応液には水に可溶な分散剤を添加することができる。ここで用いる分散剤の種類および使用量については、特開2000−305214号公報の段落番号0052に具体例が記載されている。
【0069】
本発明に用いる有機酸銀は第3級アルコールの存在下で調製することが好ましい。第3級アルコールとしては、好ましくは総炭素数15以下の化合物が好ましく、10以下の化合物が特に好ましい。好ましい第3級アルコールの例としては、tert−ブタノール等が挙げられるが、本発明で使用することができる第3級アルコールはこれに限定されない。
本発明に用いる第3級アルコールの添加時期は有機酸銀調製時のいずれのタイミングでもよいが、有機酸アルカリ金属塩の調製時に添加して、有機酸アルカリ金属塩を溶解して用いることが好ましい。また、本発明で用いる第3級アルコールは、有機酸銀調製時の溶媒としての水に対して質量比で0.01〜10の範囲で使用することができるが、0.03〜1の範囲で使用することが好ましい。
【0070】
本発明に用いることができる有機銀塩の形状やサイズは特に制限されないが、特開2000−292882号公報の段落番号0024に記載のものを用いることが好ましい。有機銀塩の形状は、有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像から求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)は好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。測定方法としては、例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。この測定法での平均粒子サイズとしては0.05μm〜10.0μmの固体微粒子分散物が好ましい。より好ましい平均粒子サイズは0.1μm〜5.0μm、さらに好ましい平均粒子サイズは0.1μm〜2.0μmである。
【0071】
本発明に用いる有機銀塩は、脱塩したものであることが好ましい。脱塩法は特に制限されず、公知の方法を用いることができるが、遠心濾過、吸引濾過、限外濾過、凝集法によるフロック形成水洗等の公知の濾過方法を好ましく用いることができる。限外濾過の方法については、特開2000−305214号公報に記載の方法を用いることができる。
【0072】
本発明では、高S/Nで、粒子サイズが小さく、凝集のない有機銀塩固体分散物を得る目的で、画像形成媒体である有機銀塩を含み、かつ感光性銀塩を実質的に含まない水分散液を高速流に変換した後、圧力降下させる分散法を用いることが好ましい。これらの分散方法については特開2000−292882号公報の段落番号0027〜0038に記載の方法を用いることができる。
【0073】
本発明で用いる有機銀塩固体微粒子分散物の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。具体的には、体積荷重平均直径の標準偏差を体積荷重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が80%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。
【0074】
本発明に用いる有機銀塩固体微粒子分散物は、少なくとも有機銀塩と水からなるものである。有機銀塩と水との割合は特に限定されるものではないが、有機銀塩の全体に占める割合は5〜50質量%であることが好ましく、特に10〜30質量%の範囲が好ましい。前述の分散助剤を用いることは好ましいが、粒子サイズを最小にするのに適した範囲で最少量使用するのが好ましく、有機銀塩に対して0.5〜30質量%、特に1〜15質量%の範囲が好ましい。
【0075】
本発明で用いる有機銀塩は所望の量で使用できるが、銀量として0.1〜5g/m2が好ましく、さらに好ましくは1〜3g/m2、もっとも好ましくは1〜1.6g/m2ある。
【0076】
本発明にはCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンを非感光性有機銀塩へ添加することが好ましい。Ca、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの非感光性有機銀塩への添加については、ハロゲン化物でない、水溶性の金属塩の形で添加することが好ましく、具体的には硝酸塩や硫酸塩などの形で添加することが好ましい。ハロゲン化物での添加は処理後の感光材料の光(室内光や太陽光など)による画像保存性、いわゆるプリントアウト性を悪化させるので好ましくない。このため、本発明ではハロゲン化物でない、水溶性の金属塩の形で添加することが好ましい。
【0077】
本発明に好ましく用いるCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの添加時期としては、該非感光性有機銀塩の粒子形成後であって、粒子形成直後、分散前、分散後および塗布液調製前後など塗布直前までであればいずれの時期でもよく、好ましくは分散後、塗布液調製前後である。
【0078】
本発明におけるCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの添加量としては、非感光性有機銀1molあたり10-3〜10-1molが好ましく、特に5×10-3〜5×10-2molが好ましい。
【0079】
本発明の熱現像感光材料に用いる感光性ハロゲン化銀は、ハロゲン組成として特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀を用いることができ、好ましくは塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀である。感光性ハロゲン化銀乳剤の粒子形成については、特開平11−119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法で粒子形成することができるが、特にこの方法に限定されるものではない。
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、十四面体、平板状、球状、棒状、ジャガイモ状等を挙げることができるが、本発明においては特に立方体状粒子あるいは平板状粒子が好ましい。粒子のアスペクト比、面指数など粒子形状の特徴については、特開平11−119374号公報の段落番号0225に記載されているものと同じである。また、ハロゲン組成の分布はハロゲン化銀粒子の内部と表面において均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を用いる場合は、好ましくは2〜5重構造、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子である。また塩化銀または塩臭化銀粒子の表面に臭化銀を局在させる技術も用いることができる。ハロゲン組成の分布は粒子の内部と表面において均一であることが好ましい。
【0080】
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀のハロゲン化銀粒子の粒子サイズは、特に制限なく用いることができるが、0.12μm以下が好ましく、さらに0.01〜0.10μmが好ましい。本発明で用いるハロゲン化銀粒子の粒子サイズ分布は、単分散度の値が30%以下であり、好ましくは1〜20%であり、さらに5〜15%である。ここで単分散度は、粒子サイズの標準偏差を平均粒子サイズで割った値の百分率(%)(変動係数)として定義されるものである。なおハロゲン化銀粒子の粒子サイズは、便宜上、立方体粒子の場合は稜長で表し、その他の粒子(八面体、十四面体、平板状など)は投影面積円相当直径で算出する。
【0081】
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表の第VII族あるいは第VIII族の金属または金属錯体を含有する。周期律表の第VII族あるいは第VIII族の金属または金属錯体の中心金属として好ましくはロジウム、レニウム、ルテニウム、オスニウム、イリジウムである。特に好ましい金属錯体は、(NH4)3Rh(H2O)Cl5、K2Ru(NO)Cl5、K3IrCl6、K4Fe(CN)6である。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属および異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1molに対し1×10-9mol〜1×10-3molの範囲が好ましく、1×10-8mol〜1×10-4molの範囲がより好ましい。具体的な金属錯体の構造としては特開平7−225449号公報等に記載された構造の金属錯体を用いることができる。これら重金属の種類、添加方法に関しては、特開平11−119374号公報の段落番号0227〜0240に記載されている。
【0082】
感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている水洗法により脱塩することができる。
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀乳剤は化学増感することが好ましい。化学増感については、特開平11−119374号公報の段落番号0242〜0250に記載されている方法を用いることが好ましい。
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開EP293,917A1号公報に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加することが好ましい。
【0083】
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀に含有するゼラチンとしては、感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持するために、低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。低分子量ゼラチンの分子量は、500〜60,000であり、好ましくは分子量1,000〜40,000である。これらの低分子量ゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、脱塩処理後の分散時に使用することが好ましい。さらには、粒子形成時は通常のゼラチン(分子量100,000程度)を使用し、脱塩処理後の分散時に低分子量ゼラチンを使用することがより好ましい。
【0084】
分散媒の濃度は0.05〜20質量%にすることができるが、取り扱い上5〜15質量%の濃度域が好ましい。ゼラチンの種類としては、アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、フタル化ゼラチンの如き修飾ゼラチンが用いられるが、アルカリ処理ゼラチン、フタル化ゼラチンの如き修飾ゼラチンが好ましい。
【0085】
本発明に用いる感光材料中のハロゲン化銀乳剤は、1種だけを用いてもよいし、2種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)を併用してもよいが、本発明では1種のハロゲン化銀乳剤を用いることが好ましい。
【0086】
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀の使用量としては有機銀塩1molに対して感光性ハロゲン化銀0.01mol〜0.5molが好ましく、0.02mol〜0.3molがより好ましく、0.03mol〜0.25molが特に好ましい。別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法および混合条件については、それぞれ調製を終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等がある。また、混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましい方法である。本発明では、別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩を低速(100〜200rpm)プロペラ攪拌機で混合することが好ましい。
【0087】
本発明に用いることができる増感色素としては、ハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので、露光光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。例えば、550nm〜750nmの波長領域を分光増感する色素としては、特開平10−186572号公報の一般式(II)で表される色素が挙げられ、具体的にはII−6、II−7、II−14、II−15、II−18、II−23、II−25の色素を好ましい色素として例示することができる。また、750〜1400nmの波長領域を分光増感する色素としては、特開平11−119374号公報の一般式(I)で表される色素が挙げられ、具体的には(25)、(26)、(30)、(32)、(36)、(37)、(41)、(49)、(54)の色素を好ましい色素として例示することができる。さらに、J−bandを形成する色素として、米国特許第5,510,236号明細書、同第3,871,887号明細書の実施例5に記載の色素、特開平2−96131号公報、特開昭59−48753号公報に開示されている色素を好ましい色素として例示することができる。これらの増感色素は単独で用いてもよく、2種以上組合せて用いてもよいが、本発明では単独で用いることが好ましい。
【0088】
これら増感色素の添加方法は、特開平11−119374号公報の段落番号0106に記載されている方法が挙げられるが、エタノール、メタノールに溶解して添加することが好ましい。
本発明における増感色素の添加量は、感度やカブリの性能に合わせて所望の量にすることができるが、画像形成層(感光層)のハロゲン化銀1mol当たり10-6〜1molが好ましく、さらに好ましくは10-4〜10-1molである。
【0089】
本発明は分光増感効率を向上させるため、強色増感剤を用いることが好ましい。本発明に用いる強色増感剤としては、欧州特許公開EP第587,338A号公報、米国特許第3,877,943号明細書、同第4,873,184号明細書に開示されている化合物、複素芳香族あるいは脂肪族メルカプト化合物、複素芳香族ジスルフィド化合物、スチルベン、ヒドラジン、トリアジンから選択される化合物などが挙げられる。
好ましい強色増感剤は、特開平5−341432号公報に開示されている複素芳香族メルカプト化合物、複素芳香族ジスルフィド化合物、特開平4−182639号公報の一般式(I)あるいは(II)で表される化合物、特開平10−111543号公報の一般式(I)で表されるスチルベン化合物、特開平11−109547号公報の一般式(I)で表わされる化合物である。特に好ましい強色増感剤は、特開平5−341432号公報のM−1〜M−24の化合物、特開平4−182639号公報のd−1)〜d−14)の化合物、特開平10−111543号公報のSS−01〜SS−07の化合物、特開平11−109547号公報の31、32、37、38、41〜45、51〜53の化合物である。
これらの強色増感剤の添加量は、乳剤層中にハロゲン化銀1mol当たり10-4〜1molの範囲が好ましく、ハロゲン化銀1mol当たり0.001〜0.3molの範囲がより好ましい。
【0090】
本発明の熱現像感光材料にはリンを含む化合物として、五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩を併用して用いることが特に好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどがある。
本発明において好ましく用いることができる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩は、少量で所望の効果を発現するという点から画像形成層あるいはそれに隣接するバインダー層に添加する。
リンを含む化合物および五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩の使用量(感光材料1m2あたりの塗布量)は感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1〜500mg/m2が好ましく、0.5〜100mg/m2がより好ましい。
【0091】
本発明の熱現像感光材料は、硬調化剤を含有することを特徴とする。
本発明で用いる硬調化剤の種類は特に限定されないが、よく知られている硬調化剤として、特開2000−284399号公報に記載の式(H)で表されるヒドラジン誘導体(具体的には同公報の表1〜表4に記載のヒドラジン誘導体)、特開平10−10672号公報、特開平10−161270号公報、特開平10−62898号公報、特開平9−304870号公報、特開平9−304872号公報、特開平9−304871号公報、特開平10−31282号公報、米国特許第5,496,695号明細書、欧州特許公開EP第741,320A号公報に記載のすべてのヒドラジン誘導体を挙げることができる。また、特開2000−284399号公報に記載の式(1)〜(3)で表される置換アルケン誘導体、置換イソオキサゾール誘導体および特定のアセタール化合物や、さらには同公報に記載の式(A)または式(B)で表される環状化合物、具体的には同公報の化8〜化12に記載の化合物1〜72を挙げることができる。また、特開2001−133924号公報に記載の一般式(H)、(G)、(P)で表される化合物、具体的には同公報の[化3]〜[化9]、[化11]〜[化53]が挙げることができる。さらに、特開2001−27790号公報に記載の一般式(H−1)、(H−2)、(H−3)、(H−4)、(H−5)、(H−1−1)で表されるヒドラジン誘導体(具体的には同公報に記載の化合物H−1−1〜H−1−28、化合物H−2−1〜H−2−9、化合物H−3−1〜H−3−12、化合物H−4−1〜H−4−21、化合物H−5−1〜H−5−5)、特開2001−125224号公報に記載の一般式(1)で表される置換アルケン誘導体(具体的には同公報に記載の[化10]〜[化55])も挙げることができる。これら硬調化剤は複数を併用してもよいが、本発明は1種、または2種の硬調化剤を用いることが好ましい。
【0092】
本発明の硬調化剤は、水あるいは適当な有機溶媒に溶解して用いることができる。水溶液として添加する場合は、当技術分野で周知の可溶化剤を用いることができ、具体的には特開2001−83657公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。有機溶媒に溶解して用いる場合は、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることが好ましい。また、酸性基が結合した化合物の場合は当量のアルカリで中和し、塩として用いることが好ましい。
また、水への溶解度が低い場合は、乳化分散法、固体分散法で分散して用いることが好ましい。乳化分散を行う場合は、当技術分野で周知の乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して、熱現像感光材料中に用いることが好ましい。固体分散を行う場合は、当技術分野で周知の固体分散法によって、粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、サンドグラインダーミル、マントンゴーリン、マイクロフルイダイザーあるいは超音波によって分散し、熱現像感光材料中に用いることが好ましい。また、乳化分散、固体分散を行うには当技術分野で周知の分散助剤を用いることが好ましく、具体的には特開2001−83657公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。
【0093】
本発明では、硬調化剤は支持体に対して画像形成層側のいずれの層に添加してもよいが、該画像形成層あるいはそれに隣接する層に添加することが好ましい。添加量はハロゲン化銀粒子の粒子サイズ、ハロゲン組成、化学増感の程度、抑制剤の種類等により最適量が違い、一様ではないが、銀1mol当たり10-6〜1mol程度、特に10-5〜10-1molの範囲が好ましい。
【0094】
本発明の熱現像感光材料は、有機銀塩のための還元剤を含む。有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質、好ましくは有機物質である。フェニドン、ハイドロキノンおよびカテコールなどの従来の写真現像剤は有用であるが、ヒンダードフェノール還元剤が好ましい。還元剤は、画像形成層を有する面の銀1molに対して5〜50mol含まれることが好ましく、10〜40molで含まれることがさらに好ましい。還元剤の添加層は支持体に対して画像形成層側のいかなる層でもよい。画像形成層以外の層に添加する場合は銀1molに対して10〜50molと多めに使用することが好ましい。また、還元剤は現像時のみ有効に機能するように誘導化されたいわゆるプレカーサーであってもよい。
【0095】
有機銀塩を利用した熱現像感光材料においては広範囲の還元剤を使用することができる。例えば、特開昭46−6074号公報、同47−1238号公報、同47−33621号公報、同49−46427号公報、同49−115540号公報、同50−14334号公報、同50−36110号公報、同50−147711号公報、同51−32632号公報、同51−1023721号公報、同51−32324号公報、同51−51933号公報、同52−84727号公報、同55−108654号公報、同56−146133号公報、同57−82828号公報、同57−82829号公報、特開平6−3793号公報、米国特許第3,679,426号明細書、同第3,751,252号明細書、同第3,751,255号明細書、同第3,761,270号明細書、同第3,782,949号明細書、同第3,839,048号明細書、同第3,928,686号明細書、同第5,464,738号明細書、独国特許第2,321,328号明細書、欧州特許公開EP第692,732A号公報などに開示されている還元剤を用いることができる。例えば、フェニルアミドオキシム、2−チエニルアミドオキシムおよびp−フェノキシフェニルアミドオキシムなどのアミドオキシム;例えば4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンズアルデヒドアジンなどのアジン;2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオニル−β−フェニルヒドラジンとアスコルビン酸との組合せのような脂肪族カルボン酸アリールヒドラジドとアスコルビン酸との組合せ;ポリヒドロキシベンゼンと、ヒドロキシルアミン、レダクトンおよび/またはヒドラジンの組合せ(例えばハイドロキノンと、ビス(エトキシエチル)ヒドロキシルアミン、ピペリジノヘキソースレダクトンまたはホルミル−4−メチルフェニルヒドラジンの組合せなど);フェニルヒドロキサム酸、p−ヒドロキシフェニルヒドロキサム酸およびβ−アリニンヒドロキサム酸などのヒドロキサム酸;アジンとスルホンアミドフェノールとの組合せ(例えば、フェノチアジンと2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノールなど);エチル−α−シアノ−2−メチルフェニルアセテート、エチル−α−シアノフェニルアセテートなどのα−シアノフェニル酢酸誘導体;2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、6,6’−ジブロモ−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチルおよびビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタンに例示されるようなビス−β−ナフトール;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体(例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンまたは2’,4’−ジヒドロキシアセトフェノンなど)の組合せ;3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロンなどの5−ピラゾロン;ジメチルアミノヘキソースレダクトン、アンヒドロジヒドロアミノヘキソースレダクトンおよびアンヒドロジヒドロピペリドンヘキソースレダクトンに例示されるようなレダクトン;2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノールおよびp−ベンゼンスルホンアミドフェノールなどのスルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオンなど;2,2−ジメチル−7−tert−ブチル−6−ヒドロキシクロマンなどのクロマン;2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジンなどの1,4−ジヒドロピリジン;ビスフェノール(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−エチリデン−ビス(2−tert−ブチル−6−メチルフェノール)、1,1,−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサンおよび2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなど);アスコルビン酸誘導体(例えば、パルミチン酸1−アスコルビル、ステアリン酸アスコルビルなど);ならびにベンジルおよびビアセチルなどのアルデヒドおよびケトン;3−ピラゾリドンおよびある種のインダン−1,3−ジオン;クロマノール(トコフェロールなど)などがある。特に好ましい還元剤は、ビスフェノール、クロマノールである。
【0096】
本発明で還元剤を用いる場合、それは、水溶液、有機溶媒溶液、粉末、固体微粒子分散物、乳化分散物などいかなる方法で添加してもよいが、この中でも固体微粒子分散物として添加することが好ましい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際には当技術分野で周知の分散助剤を用いることが好ましく、具体的には特開2001−83657公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。
【0097】
画像を向上させる「色調剤」として知られる添加剤を含ませると光学濃度が高くなることがある。また、色調剤は黒色銀画像を形成させるうえでも有利になることがある。また、色調剤は現像時のみ有効に機能するように誘導化されたいわゆるプレカーサーであるとさらに好ましい。
有機銀塩を利用した熱現像感光材料においては広範囲の色調剤を使用することができる。例えば、特開昭46−6077号公報、同47−10282号公報、同49−5019号公報、同49−5020号公報、同49−91215号公報、同50−2524号公報、同50−32927号公報、同50−67132号公報、同50−67641号公報、同50−114217号公報、同51−3223号公報、同51−27923号公報、同52−14788号公報、同52−99813号公報、同53−1020号公報、同53−76020号公報、同54−156524号公報、同54−156525号公報、同61−183642号公報、特開平4−56848号公報、特公昭49−10727号公報、同54−20333号公報、米国特許第3,080,254号明細書、同第3,446,648号明細書、同第3,782,941号明細書、同第4,123,282号明細書、同第4,510,236号明細書、英国特許第1,380,795号明細書、ベルギー特許第841,910号明細書などに開示されているものを適宜使用することができる。色調剤の具体例としては、フタルイミドおよびN−ヒドロキシフタルイミド;スクシンイミド、ピラゾリン−5−オン、ならびにキナゾリノン、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリンおよび2,4−チアゾリジンジオンのような環状イミド;ナフタルイミド(例えば、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタルイミド);コバルト錯体(例えば、コバルトヘキサミントリフルオロアセテート);3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,4−ジメルカプトピリミジン、3−メルカプト−4,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾールおよび2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールに例示されるメルカプタン;N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド、(例えば、(N,N−ジメチルアミノメチル)フタルイミドおよびN,N−(ジメチルアミノメチル)−ナフタレン−2,3−ジカルボキシイミド);ならびにブロック化ピラゾール、イソチウロニウム誘導体およびある種の光退色剤(例えば、N,N’−ヘキサメチレンビス(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジアザオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)および2−トリブロモメチルスルホニル)−(ベンゾチアゾール));ならびに3−エチル−5−[(3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)−1−メチルエチリデン]−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン;フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩、または4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオンなどの誘導体;フタラジノンとフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;フタラジン、フタラジン誘導体(たとえば、4−(1−ナフチル)フタラジン、6−クロロフタラジン、5,7−ジメトキシフタラジン、6−イソブチルフタラジン、6−tert−ブチルフタラジン、5,7−ジメチルフタラジン、および2,3−ジヒドロフタラジンなどの誘導体)もしくは金属塩、;フタラジンおよびその誘導体とフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;キナゾリンジオン、ベンズオキサジンまたはナフトオキサジン誘導体;色調調節剤としてだけでなくその場でハロゲン化銀生成のためのハライドイオンの源としても機能するロジウム錯体、例えばヘキサクロロロジウム(III)酸アンモニウム、臭化ロジウム、硝酸ロジウムおよびヘキサクロロロジウム(III)酸カリウムなど;無機過酸化物および過硫酸塩、例えば、過酸化二硫化アンモニウムおよび過酸化水素;1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン、8−メチル−1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオンおよび6−ニトロ−1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオンなどのベンズオキサジン−2,4−ジオン;ピリミジンおよび不斉−トリアジン(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン、2−ヒドロキシ−4−アミノピリミジンなど)、アザウラシル、およびテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン、および1,4−ジ(o−クロロフェニル)−3,6−ジメルカプト−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン)などが好ましく用いられる。特にフタラジン誘導体、フタル酸誘導体が好ましく用いられる。本発明では色調剤として、特開2000−35631号公報に記載の一般式(F)で表されるフタラジン誘導体が最も好ましく用いられる。具体的には同公報に記載のA−1〜A−10が好ましく用いられる。
【0098】
色調剤は、水あるいは適当な有機溶媒に溶解して用いることが好ましい。当技術分野で周知の可溶化剤を用いて水溶液化して添加することが好ましく、具体的には特開2001−83657号公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。また、適当な有機溶媒に溶解して用いる場合は、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることが好ましい。また、酸性基が結合した化合物の場合は当量のアルカリで中和し、塩として用いることが好ましい。
【0099】
水への溶解度が低い場合は、乳化分散法、固体分散法で分散して用いることが好ましい。乳化分散を行う場合は、当技術分野で周知の乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して、熱現像感光材料中に用いることが好ましい。固体分散を行う場合は、当技術分野で周知の固体分散法によって、粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、サンドグラインダーミル、マントンゴーリン、マイクロフルイダイザーあるいは超音波によって分散し、熱現像感光材料中に用いることが好ましい。また、乳化分散、固体分散を行うには当技術分野で周知の分散助剤を用いることが好ましく、具体的には特開2001−83657号公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。
【0100】
本発明の熱現像感光材料において、ハロゲン化銀乳剤および/または有機銀塩は、カブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体によって、付加的なカブリの生成に対してさらに保護され、在庫貯蔵中における感度の低下に対して安定化することが好ましい。単独または組合せて使用することができる適当なカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体は、米国特許第2,131,038号明細書および同第2,694,716号明細書に記載のチアゾニウム塩、米国特許第2,886,437号明細書および同第2,444,605号明細書に記載のアザインデン、米国特許第2,728,663号明細書に記載の水銀塩、米国特許第3,287,135号明細書に記載のウラゾール、米国特許第3,235,652号明細書に記載のスルホカテコール、英国特許第623,448号明細書に記載のオキシム、ニトロン、ニトロインダゾール、米国特許第2,839,405号明細書に記載の多価金属塩、米国特許第3,220,839号明細書に記載のチウロニウム塩、ならびに米国特許第2,566,263号明細書および同第2,597,915号明細書に記載のパラジウム、白金および金塩、米国特許第4,108,665号明細書および同第4,442,202号明細書に記載のハロゲン置換有機化合物、米国特許第4,128,557号明細書および同第4,137,079号明細書、同第4,138,365号明細書および同第4,459,350号明細書に記載のトリアジンならびに米国特許第4,411,985号明細書に記載のリン化合物などがある。
【0101】
本発明の熱現像感光材料は、高感度化やカブリ防止を目的として安息香酸類を含有することが好ましい。本発明で用いる安息香酸類はいかなる安息香酸誘導体でもよいが、好ましい例としては、米国特許第4,784,939号明細書、同第4,152,160号明細書、特開平9−329863号公報、同9−329864号公報、同9−281637号公報などに記載の化合物が挙げられる。安息香酸類は熱現像感光材料のいかなる層に添加してもよいが、支持体に対して画像形成層側の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。安息香酸類の添加は塗布液調製のいかなる工程で行ってもよく、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でもよいが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。安息香酸類の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行ってもよい。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加してもよい。安息香酸類の添加量としてはいかなる量でもよいが、銀1mol当たり1×10-6mol〜2molが好ましく、1×10-3mol〜0.5molがさらに好ましい。
【0102】
本発明を実施するために必須ではないが、画像形成層にカブリ防止剤として水銀(II)塩を加えることが有利なことがある。この目的のために好ましい水銀(II)塩は、酢酸水銀および臭化水銀である。本発明に使用する水銀の添加量としては、塗布された銀1mol当たり好ましくは1×10-9mol〜1×10-3mol、さらに好ましくは1×10-8mol〜1×10-4molの範囲である。
【0103】
本発明で特に好ましく用いられるカブリ防止剤は有機ハロゲン化物であり、例えば、米国特許第3,874,946号明細書、同第4,756,999号明細書、同第5,340,712号明細書、同第5,369,000号明細書、同第5,464,737号明細書 、特開昭50−120328号公報、特開昭50−137126号公報、同50−89020号公報、同50−119624号公報、同59−57234号公報、特開平7−2781号公報、同7−5621号公報、同9−160164号公報、同9−160167号公報、同10−197988号公報、同9−244177号公報、同9−244178号公報、同9−160167号公報、同9−319022号公報、同9−258367号公報、同9−265150号公報、同9−319022号公報、同10−197989号公報、同11−242304号公報、特開2000−2963号公報、特開2000−112070号公報、特開2000−284412号公報、特開2000−284399号公報、特開2000−284410号公報、特開2001−33911号公報、特開2001−5144号公報等に記載された化合物が挙げられる。これらの中で、特に好ましい有機ハロゲン化物は、特開平7−2781号公報に記載の2−トリブロモメチルスルホニルキノリン、特開2001−5144号公報に記載の2−トリブロモメチルスルホニルピリジン、特開2000−112070号公報に記載のP−1〜P−31の化合物、特開2000−284410号公報に記載のP−1〜P−73の化合物、特開2001−33911号公報に記載のP−1〜P−25、P’−1〜P’−27の化合物、特開2000−284399号公報に記載のP−1〜P−118の化合物、フェニルトリブロモメチルスルホン、2−ナフチルトリブロモメチルスルホンである。
有機ハロゲン化物の添加量は、Ag1molに対するmol量(mol/molAg)で示して、好ましくは1×10-5〜2mol/molAg、より好ましくは5×10-5〜1mol/molAg、さらに好ましくは1×10-4〜5×10-1mol/molAgである。これらは1種のみを用いてもよいが、2種以上を併用することがより好ましい。
【0104】
また、特開2000−284399公報に記載の式(Z)で表されるサリチル酸誘導体がカブリ防止剤として好ましく用いられる。具体的には、同公報に記載の(A−1)〜(A−60)が好ましく用いられる。式(Z)で表されるサリチル酸誘導体の添加量は、Ag1molに対するmol量(mol/molAg)で示して、好ましくは1×10-5〜5×10-1mol/molAg、より好ましくは5×10-5〜1×10-1mol/molAg、さらに好ましくは1×10-4〜5×10-2mol/molAgである。これらは1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0105】
本発明に好ましく用いられるカブリ防止剤として、ホルマリンスカベンジャーが有効であり、例えば、特開2000−221634号公報に記載の式(S)で表される化合物およびその例示化合物(S−1)〜(S−24)が挙げられる。
【0106】
本発明に用いるカブリ防止剤は、水あるいは適当な有機溶媒に溶解して用いることができる。水溶液として添加する場合は、当技術分野で周知の可溶化剤を用いることができ、具体的には特開2001−83657公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。有機溶媒に溶解して用いる場合は、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることが好ましい。また、酸性基が結合した化合物の場合は当量のアルカリで中和し、塩として用いることが好ましい。
水への溶解度が低い場合は、乳化分散法、固体分散法で分散して用いることが好ましい。乳化分散を行う場合は、当技術分野で周知の乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して、熱現像感光材料中に用いることが好ましい。固体分散を行う場合は、当技術分野で周知の固体分散法によって、粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、サンドグラインダーミル、マントンゴーリン、マイクロフルイダイザーあるいは超音波によって分散し、熱現像感光材料中に用いることが好ましい。また、乳化分散、固体分散を行うには当技術分野で周知の分散助剤を用いることが好ましく、具体的には特開2001−83657公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。
【0107】
本発明に用いるカブリ防止剤は、支持体に対して画像形成層側の層、即ち画像形成層あるいはこの層側の他のどの層に添加してもよいが、画像形成層あるいはそれに隣接する層に添加することが好ましい。画像形成層は還元可能な銀塩(有機銀塩)を含有する層であり、好ましくはさらに感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層であることが好ましい。
【0108】
本発明の熱現像感光材料には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御することや、現像前後の保存性を向上させることなどを目的としてメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることが好ましい。
本発明にメルカプト化合物を使用する場合、いかなる構造のものでもよいが、Ar−SM、Ar−S−S−Arで表されるものが好ましい。式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、イオウ、酸素、セレニウムまたはテルリウム原子を有する芳香環または縮合芳香環である。好ましくは、複素芳香環はベンズイミダゾール、ナフスイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフスオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリンまたはキナゾリノンである。この複素芳香環は、例えば、ハロゲン(例えば、BrおよびCl)、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、アルキル(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、アルコキシ(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)およびアリール(置換基を有していてもよい)からなる置換基群から選択されるものを有してもよい。メルカプト置換複素芳香族化合物をとしては、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、6−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2,2’−ジチオビス−(ベンゾチアゾール)、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4,5−ジフェニル−2−イミダゾールチオール、2−メルカプトイミダゾール、1−エチル−2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトキノリン、8−メルカプトプリン、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリノン、7−トリフルオロメチル−4−キノリンチオール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−ピリジンチオール、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジンモノヒドレート、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−ヒドキロシ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプトピリミジン、4,6−ジアミノ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプト−4−メチルピリミジンヒドロクロリド、3−メルカプト−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、3−(5−メルカプトテトラゾール)−ベンゼンスルホン酸ナトリウム、N−メチル−N’−{3−(5−メルカプトテトラゾリル)フェニル}ウレア、2−メルカプト−4−フェニルオキサゾールなどが好ましく用いられる。
これらのメルカプト化合物の添加量としては画像形成層中に銀1mol当たり0.9000〜1.0molの範囲が好ましく、さらに好ましくは、銀の1mol当たり9000〜0.3molの量である。
【0109】
本発明の熱現像感光材料は、支持体上に、有機銀塩、還元剤および感光性ハロゲン化銀を含む画像形成層を有し、画像形成層上には少なくとも1層の保護層が設けられていることが好ましい。また、本発明の熱現像感光材料は支持体に対して画像形成層と反対側(バック面)に少なくとも1層のバック層を有することが好ましい。
【0110】
本発明で用いるバインダーとしては、天然ポリマー合成樹脂やポリマーおよびコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)およびポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。
【0111】
親水性でも疎水性でもよいが、本発明においては、熱現像後のカブリを低減させるために、疎水性透明バインダーを使用することが好ましい。好ましいバインダーとしては、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタンなどがあげられる。その中でもポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレートは特に好ましく用いられる。
【0112】
感光材料の表面を保護したり擦り傷を防止するために、画像形成層の外側に保護層を有することが好ましい。これらの保護層に用いられるバインダーは画像形成層に用いられるバインダーと同じ種類でも異なった種類でもよい。好ましくは擦り傷や相の変形等を防止するために画像形成層を構成するバインダーポリマーよりも軟化点の高いポリマーが用いられ、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等がこの目的にかなっている。
【0113】
本発明で用いるバインダーとして、水を主成分とする溶媒(分散媒)を用いた塗布をおこなう場合には、以下に述べるポリマーラテックスを用いることが好ましい。
本発明の熱現像感光材料の感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層のうち少なくとも1層は以下に述べるポリマーラテックスを全バインダーの50質量%以上用いた画像形成層であることが好ましい。また、ポリマーラテックスは画像形成層だけではなく、保護層やバック層に用いてもよく、特に寸法変化が問題となる印刷用途に本発明の熱現像感光材料を用いる場合には、保護層やバック層にもポリマーラテックスを用いることが好ましい。ただしここで言う「ポリマーラテックス」とは水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散されたものである。分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散されたものなどいずれでもよい。なお本発明で用いるポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などに記載されている。分散粒子の平均粒子サイズは1〜50000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒子サイズ分布に関しては特に制限は無く、広い粒子サイズ分布を持つものでも単分散の粒子サイズ分布を持つものでもよい。
【0114】
本発明で用いるポリマーラテックスとしては、通常の均一構造のポリマーラテックス以外の、いわゆるコア/シェル型のラテックスでもよい。この場合コアとシェルはガラス転移温度を変えると好ましい場合がある。
【0115】
本発明で用いるバインダーに好ましく用いるポリマーラテックスのガラス転移温度(Tg)は保護層、バック層と画像形成層とでは好ましい範囲が異なる。画像形成層にあっては熱現像時に写真有用素材の拡散を促すため、−30〜40℃であることが好ましい。保護層やバック層に用いる場合には種々の機器と接触するために25〜70℃のガラス転移温度が好ましい。
【0116】
本発明で用いるポリマーラテックスの最低造膜温度(MFT)は−30℃〜90℃、より好ましくは0℃〜70℃程度が好ましい。最低造膜温度をコントロールするために造膜助剤を添加してもよい。造膜助剤は可塑剤ともよばれポリマーラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物(通常有機溶剤)で、例えば前述の「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」に記載されている。
【0117】
本発明で用いるポリマーラテックスに用いられるポリマー種としてはアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはこれらの共重合体などが挙げられる。ポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでも、また架橋されたポリマーでもよい。またポリマーとしては単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでもブロックコポリマーでもよい。ポリマーの分子量は数平均分子量で5,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜100,000程度が好ましい。分子量が小さすぎるものは塗膜の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く、好ましくない。
【0118】
本発明の熱現像感光材料のバインダーとして用いられるポリマーラテックスの具体例としては、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/ブタジエン/イタコン酸コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/スチレン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/ジビニルベンゼン/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/塩化ビニル/アクリル酸コポリマーのラテックス、塩化ビニリデン/エチルアクリレート/アクリロニトリル/メタクリル酸コポリマーのラテックスなどが挙げられる。さらに具体的には、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸=33.5/50/16.5(質量%)のコポリマーラテックス、メチルメタクリレート/ブタジエン/イタコン酸=47.5/47.5/5(質量%)のコポリマーラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸=95/5(質量%)のコポリマーラテックスなどが挙げられる。また、このようなポリマーは市販もされていて、例えばアクリル樹脂の例として、セビアンA−4635,46583、4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol LX811、814、821、820、857(以上日本ゼオン(株)製)、VONCORT−R3340、R3360、R3370、4280(以上大日本インキ化学(株)製)、ジュリマーET410(日本純薬(株)製)など、ポリエステル樹脂としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD−size、WMS(以上イーストマンケミカル製)など、ポリウレタン樹脂としてはHYDRAN AP10、20、30、40(以上大日本インキ化学(株)製)など、ゴム系樹脂としてはLACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上大日本インキ化学(株)製)、Nipol LX410、430,435、438C(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニル樹脂としてはG351、G576(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニリデン樹脂としてはL502、L513(以上旭化成工業(株)製)、アロンD7020、D504、D5071(以上三井東圧(株)製)など、オレフィン樹脂としてはケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。これらのポリマーは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドして用いてもよいが、単独で用いることが好ましい。
【0119】
画像形成層には全バインダーの50質量%以上として上記ポリマーラテックスが好ましく用いられるが、70質量%以上として上記ポリマーラテックスが用いられることがさらに好ましい。
【0120】
本発明の熱現像感光材料の画像形成層を有する側のNH4 +イオン含量は、支持体1m2当たり0.06mmol以下であり、好ましくは0.04mmol以下であり、さらに好ましくは0.02mmol以下である。
本発明の画像形成層に用いられるポリマーラテックス中のNH4 +イオン含量は、固形分に対して50ppm以下であるが、30ppm以下がより好ましく、10ppm以下がさらに好ましい。
【0121】
ラテックス中のNH4 +イオンは、主として重合開始剤として(NH4)2S2O8を用いる場合や重合反応後のpH調整剤としてNH4OHを用いることによって持ち込まれる。ラテックス中に持ち込まれるNH4 +イオンは、本発明の熱現像感光材料の画像形成層塗布液の分散状態に悪影響を与えたり、塗布乾燥後も熱現像感光材料中に残存して熱現像時や保存時にアンモニアとして揮発し、熱現像感光材料の保存性などに悪影響を与えたりすることがある。従って、重合開始剤としてはK2S2O8やNa2S2O8を用いることが好ましく、pH調整剤としては、NH4 +イオンを含有しないアルカリ化合物が好ましく、具体的な化合物例としては、LiOH、KOH、NaOHなどを用いることが好ましく、さらに好ましくは、LiOHである。
また、これらの化合物を2種以上併用することも好ましい。
【0122】
NH4 +イオンの含有量は、下記の方法に従って行なった。
ラテックスからのNH4 +イオンの抽出は、ラテックス1gとイオン交換水3gを混合し、このうちの約2.5mlをSartorius AG製カットオフフィルター(ポアサイズ:5μm)に入れて、遠心分離機(日立工機(株)製,CR22)で3500rpm、25℃、2時間遠心分離して行い、遠心分離によって得られた透明な上澄み液をサンプルのNH4 +イオン含量の応じてイオン交換水で適当に希釈して(例えば、10倍希釈、100倍希釈)測定した。
感光材料からのNH4 +イオンの抽出は、抽出液として、酢酸:イオン交換水=1:148混合溶液を用い、抽出液5mlに感光材料(1×3.5cm2)を2時間浸して抽出後、0.45μmのフィルターで濾過した液を測定した。
【0123】
NH4 +イオンの定量は、東ソー社製8000タイプイオンクロマト測定装置(電気伝導度法)および分離カラムとして、東ソー社製TSKgel IC-Cation、ガードカラムとして、TSK guard column IC-Cを用いて測定することができる。
本発明におけるNH4 +イオンの定量は、溶離液として2mM硝酸水溶液を用い、1.2ml/minの流量で行った。また、カラム恒温層温度は40℃で行った。
【0124】
本発明の熱現像感光材料の画像形成層を有する側の膜面pHの調節は、フタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸や、不揮発性の塩基を用いることが好ましい。
本発明の熱現像感光材料の熱現像処理前の膜面pHは6.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは5.5以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。
なお、膜面pHの測定方法は、特開2000−284399号公報の段落番号0123に記載されている。
【0125】
画像形成層には必要に応じて全バインダーの50質量%以下の範囲でゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は各層の全バインダーの30質量%以下、さらには15質量%以下が好ましい。
【0126】
画像形成層は、水系の塗布液を塗布後乾燥して調製することが好ましい。ただし、ここで言う「水系」とは塗布液の溶媒(分散媒)の60質量%以上が水であることをいう。塗布液の水以外の成分はメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなどの水混和性の有機溶媒を用いることが好ましい。具体的な溶媒組成の例としては以下のようなものがある。水/メタノール=90/10、水/メタノール=70/30、水/エタノール=90/10、水/イソプロパノール=90/10、水/ジメチルホルムアミド=95/5、水/メタノール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メタノール/ジメチルホルムアミド=90/5/5。(ただし数字は質量%を表す。)
【0127】
さらに、保護層用のバインダーとして、特開2000−267226号公報の段落番号0025〜0029に記載の有機概念図に基づく無機性値を有機性値で割ったI/O値の異なるポリマーラテックスの組み合わせを好ましく用いることができる。
【0128】
本発明においては必要に応じて、特開2000−267226号公報の段落番号0021〜0025に記載の可塑剤(例、ベンジルアルコール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3−モノイソブチレートなど)を添加して、造膜温度をコントロールすることができる。また、特開2000−267226号公報の段落番号0027〜0028に記載の如くポリマーバインダー中に親水性ポリマーを、塗布液中に水混和性の有機溶媒を添加することができる。
【0129】
それぞれの層には、特開2000−196783号公報の段落番号0023〜0041に記載の官能基を導入した第一のポリマーラテックスとこの第一のポリマーラテックスと反応しうる官能基を有する架橋剤および/または第二のポリマーラテックスを用いることもできる。
上記の官能基は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、N−メチロール基、オキサゾリニル基など、架橋剤としては、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、メチロ−ル化合物、ヒドロキシ化合物、カルボキシル化合物、アミノ化合物、エチレンイミン化合物、アルデヒド化合物、ハロゲン化合物などから選ばれる。架橋剤の具体例として、イソシアネート化合物としてヘキサメチレンイソシアネート、デュラネートWB40−80D、WX−1741(旭化成工業(株)製)、バイヒジュール3100(住友バイエルウレタン(株)製)、タケネートWD725(武田薬品工業(株)製)、アクアネート100、200(日本ポリウレタン(株)製)、特開平9−160172号公報記載の水分散型ポリイソシアネート;アミノ化合物としてスミテックスレジンM−3(住友化学工業(株)製);エポキシ化合物としてデナコールEX−614B(ナガセ化成工業(株)製);ハロゲン化合物として2,4ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンナトリウムなどが挙げられる。
【0130】
画像形成層用の全バインダー量は0.2〜30g/m2、より好ましくは1.0〜15g/m2の範囲が好ましい。
保護層用の全バインダー量は、1〜10g/m2、より好ましくは2〜6g/m2の範囲が好ましい。保護層膜厚としては、1μm以上であり、好ましくは3μm以上、さらに好ましくは4μm以上である。保護層膜厚の上限としては特に制限はないが、塗布乾燥のことを考慮し、10μm以下、さらには8μm以下が好ましい。
バック層用の全バインダー量は0.01〜10g/m2、より好ましくは0.05〜5g/m2の範囲が好ましい。
【0131】
これらの各層は、2層以上設けられる場合がある。画像形成層が2層以上である場合は、すべての層のバインダーとしてポリマーラテックスを用いることが好ましい。また、保護層は画像形成層上に設けられる層であり2層以上存在する場合もあるが、少なくとも1層、特に最外層の保護層にポリマーラテックスが用いられることが好ましい。また、バック層は支持体バック面の下塗り層の上部に設けられる層であり2層以上存在する場合もあるが、少なくとも1層、特に最外層のバック層にポリマーラテックスを用いることが好ましい。
【0132】
本発明においては、熱現感光材料同志あるいは露光装置、熱現像装置などの部材との接触摩擦抵抗を減少させるために、滑り剤を含有させることが好ましい。
本発明における滑り剤とは、物体表面に存在させた時に、存在させない場合に比べて物体表面の摩擦係数を減少させる化合物を意味する。その種類は特に制限されない。
本発明に用いる滑り剤としては、特開平11−84573号公報の段落番号0061〜0064、特開2000−47083号公報の段落番号0049〜0062に記載の化合物を挙げることができる。
好ましい滑り剤の具体例としては、セロゾール524(主成分カルナバワックス)、ポリロンA,393,H−481(主成分ポリエチレンワックス)、ハイミクロンG−110(主成分エチレンビスステアリン酸アマイド)、ハイミクロンG−270(主成分ステアリン酸アマイド)(以上、中京油脂(株)製)、
W−1 C16H33−O−SO3Na
W−2 C18H37−O−SO3Na
などが挙げられる。
滑り剤の使用量は添加層のバインダー量の0.1〜50質量%であり、好ましくは0.5〜30質量%である。
滑り剤の添加層は、画像形成層を有する側、および/またはその反対側の最表面層に添加することが他の物体との接触による摩擦抵抗を減少させる上で最も好ましい。
【0133】
本発明において、特開2000−171935号公報、特開2000−47083号公報に記載のように予備加熱部を対向ローラーで搬送し、熱現像処理部は画像形成層を有する側をローラーの駆動により、その反対側のバック面を平滑面に滑らせて搬送する熱現像処理装置を用いる場合、現像処理温度における熱現像感光材料の画像形成層を有する側の最表面層とバック面の最表面層との摩擦係数の比は、1.5以上、好ましくは1.5〜30である。また、μbは1.0以下、好ましくは0.05〜0.8である。この値は、下記の式によって求められる。
摩擦係数の比=μe/μb
μe:熱現像機のローラー部材と画像形成層を有する面との動摩擦係数
μb:熱現像機の平滑面部材とバック面との動摩擦係数
本発明において熱現像処理温度での熱現像処理機部材と画像形成層を有する面および/またはその反対面の最表面層の滑り性は、最表面層に滑り剤を含有させ、その添加量を変えることにより調整することができる。
【0134】
本発明の熱現像感光材料には、種々の支持体を用いることができる。典型的な支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、硝酸セルロース、セルロースエステル、ポリビニルアセタール、シンジオタクチックポリスチレン、ポリカーボネート、両面がポリエチレンで被覆された紙支持体などが挙げられる。このうち二軸延伸したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)が強度、寸法安定性、耐薬品性などの点から好ましい。支持体の厚みは下塗り層を除いたベース厚みで90〜180μmであることが好ましい。
【0135】
本発明の熱現像感光材料に用いる支持体としては、特開平10−48772号公報、特開平10−10676号公報、特開平10−10677号公報、特開平11−65025号公報、特開平11−138648号公報に記載の二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0136】
このような熱処理後における支持体の120℃、30秒加熱による寸法変化率は縦方向(MD)が−0.03%〜+0.01%、横方向(TD)が0〜0.04%であることが好ましい。
【0137】
支持体の両面には、特開昭64−20544号公報、特開平1−180537号公報、特開平1−209443号公報、特開平1−285939号公報、特開平1−296243号公報、特開平2−24649号公報、特開平2−24648号公報、特開平2−184844号公報、特開平3−109545号公報、特開平3−137637号公報、特開平3−141346号公報、特開平3−141347号公報、特開平4−96055号公報、米国特許第4,645,731号明細書、特開平4−68344号公報、特許第2,557,641号公報の2頁右欄20行目〜3頁右欄30行目、特開2000−39684号公報の段落番号0020〜0037、特開2000−47083号公報の段落番号0063〜0080に記載の塩化ビニリデン単量体の繰り返し単位を70質量%以上含有する塩化ビニリデン共重合体を含む下塗り層を設けることが好ましい。
【0138】
塩化ビニリデン単量体が70質量%未満の場合は、十分な防湿性が得られず、熱現像後の時間経過における寸法変化が大きくなってしまう。また、塩化ビニリデン共重合体は、塩化ビニリデン単量体のほかの構成繰り返し単位としてカルボキシル基含有ビニル単量体の繰り返し単位を含むことが好ましい。このような繰り返し単位を含ませるのは、塩化ビニル単量体のみでは、重合体(ポリマー)が結晶化してしまい、防湿層を塗設する際に均一な膜を作り難くなり、また重合体(ポリマー)の安定化のためにはカルボキシル基含有ビニル単量体が不可欠であるからである。
本発明で用いる塩化ビニリデン共重合体の分子量は、質量平均分子量で45,000以下、さらには10,000〜45,000が好ましい。分子量が大きくなると塩化ビニリデン共重合体層とポリエステル等の支持体層との接着性が悪化してしまう傾向がある。
【0139】
本発明で用いる塩化ビニリデン共重合体の含有量は、塩化ビニリデン共重合体を含有する下塗り層の片面当たりの合計膜厚として0.3μm以上であり、好ましくは0.3μm〜4μmの範囲である。
【0140】
なお、下塗り層としての塩化ビニリデン共重合体層は、支持体に直接設層される下塗り層第1層として設けることが好ましく、通常は片面ごとに1層ずつ設けられるが、場合によっては2層以上設けてもよい。2層以上の多層構成とするときは、塩化ビニリデン共重合体量が合計で本発明の範囲となるようにすればよい。
このような層には塩化ビニリデン共重合体のほか、架橋剤やマット剤などを含有させることが好ましい。
【0141】
支持体は必要に応じて塩化ビニリデン共重合体層のほか、SBR、ポリエステル、ゼラチン等をバインダーとする下塗り層を塗布することが好ましい。これらの下塗り層は多層構成とすることが好ましく、また支持体に対して両面に設けることが好ましい。下塗り層の厚み(1層当たり)は一般に0.01〜5μm、より好ましくは0.05〜2μmである。
【0142】
本発明の熱現像感光材料には、ゴミ付着の減少、スタチックマーク発生防止、自動搬送工程での搬送不良防止などの目的で、特開平11−84573号公報の段落番号0040〜0051に記載の導電性金属酸化物および/またはフッ素系界面活性剤を用いて帯電防止することが好ましい。導電性金属酸化物としては、米国特許第5,575,957号明細書、特開平11−223901号公報の段落番号0012〜0020に記載のアンチモンでドーピングされた針状導電性酸化錫、特開平4−29134号公報に記載のアンチモンでドーピングされた繊維状酸化錫が好ましく用いられる。
【0143】
金属酸化物含有層の表面比抵抗(表面抵抗率)は25℃、相対湿度20%の雰囲気下で1012Ω以下、好ましくは1011Ω以下がよい。これにより良好な帯電防止性が得られる。このときの表面抵抗率の下限は特に制限されないが、通常107Ω程度である。
【0144】
本発明の熱現像感光材料の画像形成層を有する面およびその反対面の最外層表面の少なくとも一方、または両方のベック平滑度は、10000秒以下であり、好ましくは10秒〜5000秒である。さらに好ましくは、200〜5000秒である。
本発明におけるベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
熱現像感光材料の画像形成層を有する面の最外層およびその反対面の最外層のベック平滑度は、特開平11−84573号公報の段落番号0052〜0059に記載の如く、前記両面の層に含有させるマット剤の粒子サイズおよび添加量を適宜変化させることによってコントロールすることができる。
【0145】
本発明では水溶性ポリマーが塗布性付与のための増粘剤として好ましく利用され、天然物でも合成ポリマーでもよく、その種類は特に限定されない。具体的には、天然物としてはデンプン類(コーンスターチ、デンプンなど)、海藻(寒天、アルギン酸ナトリウムなど)、植物性粘着物(アラビアゴムなど)、動物性タンパク(にかわ、カゼイン、ゼラチン、卵白など)、発酵粘着物(プルラン、デキストリンなど)などであり、半合成ポリマーであるデンプン質(可溶性デンプン、カルボキシルデンプン、デキストランなど)、セルロース類(ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)も挙げられ、さらに合成ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリビニルスルフィン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、アクリル酸またはその共重合体等、マレイン酸共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸またはその共重合体など)などである。
【0146】
これらの中でも好ましく用いられる水溶性ポリマーは、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デキストラン、デキストリン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸またはその共重合体などであり、特に増粘剤として好ましく利用される。
【0147】
これらでも特に好ましい増粘剤としては、ゼラチン、デキストラン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体などである。これらの化合物は、「新・水溶性ポリマーの応用と市場」(株式会社シーエムシー発行、長友新治編集、1988年11月4日発行)に詳細に記載されている。
【0148】
増粘剤としての水溶性ポリマーの使用量は、塗布液に添加した時に粘度が上昇すれば特に限定されない。一般に液中の濃度は0.01〜30質量%、より好ましくは0.05〜20質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。これらによって得られる粘度は、初期の粘度からの上昇分として1〜200mPa・sが好ましく、より好ましくは5〜100mPa・sである。なお、粘度はB型回転粘度計で25℃で測定した値を示す。塗布液などへの添加に当たっては、一般に増粘剤はできるだけ希薄溶液で添加することが望ましい。また添加時は十分な攪拌を行なうことが好ましい。
【0149】
本発明で用いる界面活性剤について以下に述べる。本発明で用いる界面活性剤はその使用目的によって、分散剤、塗布剤、濡れ剤、帯電防止剤、写真性コントロール剤などに分類されるが、以下に述べる界面活性剤を適宜選択して使用することによってそれらの目的は達成することができる。
本発明で用いる界面活性剤は、ノニオン性、イオン性(アニオン、カチオン、ベタイン)のいずれも使用できる。
【0150】
好ましいノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリグリシジルやソルビタンをノニオン性親水性基とする界面活性剤を挙げることができ、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステルを挙げることができる。
【0151】
アニオン系界面活性剤としては、カルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩を挙げることができ、代表的なものとしては脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸塩、アルキル硫酸塩、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニールエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物などを挙げることができる。
【0152】
カチオン系界面活性剤としてはアミン塩、4級アンモニウム塩、ピリジウム塩などを挙げることができ、第1〜第3脂肪アミン塩、第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、アルキルイミダゾリウム塩など)を挙げることができる。
【0153】
ベタイン系界面活性剤としてはカルボキシベタイン、スルホベタインなどを挙げることができ、N−トリアルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタインなどを挙げることができる。
に記載の界面活性剤が挙げられる。
【0154】
これらの界面活性剤は、「界面活性剤の応用」(幸書房、刈米孝夫著、昭和55年9月1日発行)、特開昭62−215272号公報(649〜706頁)、リサーチ・ディスクロージャ(RD)Item17643,26〜27頁(1978年12月)、同18716,650頁(1979年11月),同307105,875〜876頁(1989年11月)等に記載されている。
本発明においては、好ましい界面活性剤はその使用量において特に限定されず、目的とする界面活性特性が得られる量であればよい。なお、フッ素含有界面活性剤の塗布量は、1m2当り0.01mg〜250mgが好ましい。
【0155】
以下に界面活性剤の具体例を記すが、これに限定されるものではない(ここで、−C6H4−はフェニレン基を表わす)。
WA−1: C16H33(OCH2CH2)10OH
WA−2: C9H19-C6H4-(OCH2CH2)12OH
WA−3: ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
WA−4: トリ(イソプロピル)ナフタレンスルホン酸ナトリウム
WA−5: トリ(イソブチル)ナフタレンスルホン酸ナトリウム
WA−6: ドデシル硫酸ナトリウム
WA−7: α−スルファコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル ナトリウム塩
WA−8: C8H17-C6H4-(CH2CH2O)3(CH2)2SO3K
WA−10: セチルトリメチルアンモニウム クロライド
WA−11: C11H23CONHCH2CH2N(+)(CH3)2-CH2COO(-)
WA−12: C8F17SO2N(C3H7)(CH2CH2O)16H
WA−13: C8F17SO2N(C3H7)CH2COOK
WA−14: C8F17SO3K
WA−15: C8F17SO2N(C3H7)(CH2CH2O)4(CH2)4SO3Na
WA−16: C8F17SO2N(C3H7)(CH2)3OCH2CH2N(+)(CH3)3-CH3・C6H4-SO3 (-)
WA−17: C8F17SO2N(C3H7)CH2CH2CH2N(+)(CH3)2-CH2COO(-)
【0156】
本発明の好ましい態様においては、画像形成層および保護層に加えて、必要に応じて中間層を設けてもよい。生産性の向上などを目的として、これらの複数の層は水系において同時重層塗布することが好ましい。塗布方式はエクストルージョン塗布、スライドビード塗布、カーテン塗布などがあるが、特開2000−2964号公報の図1に示されるスライドビード塗布方式が特に好ましい。
【0157】
ゼラチンを主バインダーとして用いるハロゲン化銀写真感光材料の場合は、コーティングダイの下流に設けられている第一乾燥ゾーンで急冷され、その結果、ゼラチンのゲル化が起こり、塗布膜は冷却固化される。冷却固化されて流動の止まった塗布膜は続く第二乾燥ゾーンに導かれ、これ以降の乾燥ゾーンで塗布液中の溶媒が揮発され、成膜される。第二乾燥ゾーン以降の乾燥方式としては、U字型のダクトからローラー支持された支持体に噴流を吹き付けるエアーループ方式や円筒状のダクトに支持体をつるまき状に巻き付けて搬送乾燥する、つるまき方式(エアーフローティング方式)などが挙げられる。
【0158】
バインダーの主成分がポリマーラテックスである塗布液を用いて層形成を行うときには、急冷では塗布液の流動を停止させることができないため、第一乾燥ゾーンのみでは予備乾燥が不十分である場合もある。この場合は、ハロゲン化銀写真感光材料で用いられている様な乾燥方式では流れムラや乾燥ムラが生じ、塗布面状に重大な欠陥を生じやすい。
【0159】
本発明における好ましい乾燥方式は、特開2000−002964号公報に記載されているような第一乾燥ゾーン、第二乾燥ゾーンを問わず、少なくとも恒率乾燥が終了するまでの間は水平乾燥ゾーンで乾燥させる方式である。塗布直後から水平乾燥ゾーンに導かれるまでの支持体の搬送は、水平搬送であってもなくてもどちらでもよく、塗布機の水平方向に対する立ち上がり角度は0〜70°の間にあればよい。また、本発明における水平乾燥ゾーンとは、支持体が塗布機の水平方向に対して上下に±15°以内に搬送されればよく、水平搬送を意味するものではない。
【0160】
本発明における恒率乾燥とは、液膜温度が一定で流入する熱量全てが溶媒の蒸発に使用される乾燥過程を意味する。減率乾燥とは、乾燥末期になると種々の要因(水分移動の材料内部拡散が律速になる、蒸発表面の後退など)により乾燥速度が低下し、与えられた熱が液膜温度上昇にも使用される乾燥過程を意味する。恒率過程から減率過程に移行する限界含水率は200〜300%である。恒率乾燥が終了する時には、流動が停止するまで十分乾燥が進むため、ハロゲン化銀写真感光材料の様な乾燥方式も採用することができるが、本発明においては恒率乾燥後も最終的な乾燥点まで水平乾燥ゾーンで乾燥させることが好ましい。
【0161】
画像形成層および/または保護層を形成する時の乾燥条件は、恒率乾燥時の液膜表面温度がポリマーラテックスの最低造膜温度(MFT)以上にすることが好ましい。通常は製造設備の制限より25℃〜40℃にすることが多い。また、減率乾燥時の乾球温度は支持体のTg未満の温度(PETの場合通常80℃以下)が好ましい。本明細書における液膜表面温度とは、支持体に塗布された塗布液膜の溶媒液膜表面温度を言い、乾球温度とは乾燥ゾーンの乾燥風の温度を意味する。
【0162】
恒率乾燥時の液膜表面温度が低くなる条件で乾燥した場合、乾燥が不十分になりやすい。このため特に保護層の造膜性が著しく低下し、膜表面に亀裂が生じやすくなる。また、膜強度も弱くなり、露光機や熱現像機での搬送中に傷がつきやすくなるなどの重大な問題が生じやすくなる。
【0163】
一方、液膜表面温度が高くなる条件で乾燥した場合は、主としてポリマーラテックスから構成される保護層は速やかに皮膜を形成するが、その一方で画像形成層などの下層は流動性が停止していないので、表面に凹凸が発生しやすくなる。また、支持体(ベース)にTgよりも高い過剰の熱がかかると、感光材料の寸度安定性、耐巻き癖性も悪くなる傾向にある。
【0164】
下層を塗布乾燥してから上層を塗布する逐次塗布においても同様であるが、特に、下層の乾燥前に上層を塗布して、両層を同時に乾燥する同時重層塗布を行うための塗布液物性としては、画像形成層の塗布液と保護層の塗布液とのpH差が2.5以下であることが好ましく、このpH差は小さい程好ましい。塗布液のpH差が大きくなると塗布液界面でミクロな凝集が生じやすくなり、長尺連続塗布時に塗布筋などの重大な面状故障が発生しやすくなる。
【0165】
画像形成層の塗布液粘度は25℃で15〜100mPa・sが好ましく、さらに好ましくは30〜70mPa・sである。一方、保護層の塗布液粘度は25℃で5〜75mPa・sが好ましく、さらに好ましくは20〜50mPa・sである。これらの粘度はB型粘度計によって測定される。
【0166】
乾燥後の巻取りは温度20〜30℃、相対湿度45±20%の条件下で行うことが好ましく、巻き姿はその後の加工形態に合わせ画像形成層側の面を外側にしてもよいし、内側にしてもよい。また、加工形態がロール品の場合は巻き姿で発生したカールを除去するために加工時に巻き姿とは反対側に巻いたロール形態にすることも好ましい。なお、感光材料の相対湿度は20〜55%(25℃測定)の範囲で制御されることが好ましい。
【0167】
ハロゲン化銀を含みゼラチンを基体とする粘性液である従来の写真乳剤塗布液は、通常加圧送液するだけで気泡が液中に溶解、消滅してしまい、塗布時に大気圧下に戻されても気泡が析出するようなことはほとんどない。ところが、本発明で好ましく用いられる有機銀塩分散物とポリマーラテックスなどを含む画像形成層塗布液の場合は、加圧送液だけでは脱泡が不十分になりやすいため、気液界面が生じないようにして送液しながら超音波振動を与え脱泡することが好ましい。
【0168】
本発明において塗布液の脱泡は、塗布液を塗布される前に減圧脱気し、さらに1.5kg/cm2以上の加圧状態に保ち、かつ気液界面が生じないようにして連続的に送液しながら超音波振動を与える方式が好ましい。具体的には、特公昭55−6405号公報(4頁20行〜7頁11行)に記載されている方式が好ましい。このような脱泡を行う装置として、特開2000−98534号公報の実施例と図3に示される装置を好ましく用いることができる。
【0169】
加圧条件としては、1.5kg/cm2以上が好ましく、1.8kg/cm2以上がより好ましい。その上限に特に制限はないが、通常5kg/cm2程度である。与えられる超音波の音圧は0.2V以上、好ましくは0.5V〜3.0Vであり、一般的に音圧は高い方が好ましいが、音圧が高すぎるとキャピテーションにより部分的に高温状態になりカブリの発生原因となる。周波数は特に制約はないが、通常10kHz以上、好ましくは20kHz〜200kHzである。なお、減圧脱気は、タンク内(通常、調液タンクもしくは貯蔵タンク)を密閉減圧し、塗布液中の気泡径を増大させ、浮力をかせぎ脱気させることを指し、減圧脱気の際の減圧条件は−200mmHgないしそれより低い圧力条件、好ましくは−250mmHgないしそれより低い圧力条件とし、その最も低い圧力条件は特に制限はないが通常−800mmHg程度である。減圧時間は30分以上、好ましくは45分以上であり、その上限は特に制限されない。
【0170】
本発明において、画像形成層、画像形成層の保護層、下塗層およびバック層には特開平11−84573号公報の段落番号0204〜0208、特開2000−47083号公報の段落番号0240〜0241に記載の如くハレーション防止などの目的で、染料を含有させることが好ましい。
【0171】
画像形成層には色調改良、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料を用いることが好ましい。画像形成層に用いる染料および顔料はいかなるものでもよいが、例えば特開平11−119374号公報の段落番号0297に記載されている化合物を用いることが好ましい。これらの染料の添加法としては、溶液、乳化物、固体微粒子分散物、高分子媒染剤に媒染された状態などが挙げられ、ゼラチン水溶液添加することが好ましい。これらの化合物の使用量は目的の吸収量によって決められるが、一般的に1m2当たり1×10-6g〜1gの範囲で用いることが好ましい。
【0172】
本発明でハレーション防止染料を使用する場合、該染料は所望の範囲で目的の吸収を有し、処理後に可視領域での吸収が充分少なく、上記バック層の好ましい吸光度スペクトルの形状が得られればいかなる化合物でもよい。例えば特開平11−119374号公報の段落番号0300に記載されている化合物を用いることが好ましい。また、ベルギー特許第733,706号明細書に記載されるように染料による濃度を加熱による消色で低下させる方法、特開昭54−17833号公報に記載されるように光照射による消色で濃度を低下させる方法等を用いることも好ましい。
【0173】
本発明の熱現像感光材料が熱現像後において、PS版により刷版を作製する際にマスクとして用いられる場合、熱現像後の熱現像感光材料は、製版機においてPS版に対する露光条件を設定するための情報や、マスク原稿およびPS版の搬送条件等の製版条件を設定するための情報を画像情報として担持している。従って、前記のイラジエーション染料、ハレーション染料、フィルター染料の濃度(使用量)は、これらを読み取るために制限される。これら情報はLEDあるいはレーザーによって読み取られるため、センサーの波長域のDmin(最低濃度)が低い必要があり吸光度が0.3以下である必要がある。例えば、富士写真フイルム(株)製、製版機S−FNRIIIはトンボ検出のための検出器およびバーコードリーダーとして670nmの波長の光源を使用している。また、清水製作社製、製版機APMLシリーズのバーコードリーダーとして670nmの光源を使用している。すなわち670nm付近のDmin(最低濃度)が高い場合にはフィルム上の情報が正確に検出できず搬送不良、露光不良など製版機で作業エラーが発生する。従って、670nmの光源で情報を読み取るためには670nm付近のDminが低い必要があり、熱現像後の660〜680nmの吸光度が0.3以下である必要がある。より好ましくは0.25以下である。その下限に特に制限はないが、通常は0.10程度である。
【0174】
本発明において、像様露光に用いられる露光装置は露光時間が10-7秒以下の露光が可能な装置であればいずれでもよいが、一般的にはレーザーダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)を光源に使用した露光装置が好ましく用いられる。特に、LDは高出力、高解像度の点でより好ましい。これらの光源は目的波長範囲の電磁波スペクトルの光を発生することができるものであればいずれでもよい。例えばLDであれば、色素レーザー、ガスレーザー、固体レーザー、半導体レーザーなどを用いることができる。
【0175】
本発明は、露光時、光ビームをオーバーラップさせて、露光するのが好ましい。オーバーラップとは副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えばビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表わしたとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が0.2以上であることが好ましい。
【0176】
本発明に使用される露光装置の光源の走査方式は特に限定されず、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、高出力が得られ、書き込み時間が短くなるという点でレーザーヘッドを2機以上搭載するマルチチャンネルが好ましい。特に、円筒外面方式の場合にはレーザーヘッドを数機から数十機以上搭載するマルチチャンネルが好ましく用いられる。
【0177】
本発明に好ましく使用される露光装置の光源の走査方式はインナードラム方式(円筒内面走査方式)である。露光は、レーザーダイオードから発生するレーザー光がポリゴンミラー(プリズム)を介して、インナードラム部に搬送された熱現像感光材料面上に走査されて行われる。主走査方向の露光時間は、ポリゴンミラーの回転数とドラムの内径によって決定される。本発明の熱現像感光材料面上での主走査速度は500m/秒〜1500m/秒であることが好ましい。より好ましい主走査速度は1100m/秒〜1500m/秒である。
【0178】
露光の対象となる熱現像感光材料が、露光時のヘイズが低い場合は、干渉縞が発生しやすい傾向にあるので、これを防止することが好ましい。干渉縞の発生を防止する技術としては、特開平5−113548号公報などに開示されているレーザー光を感光材料に対して斜めに入光させる技術や、国際公開WO95/31754号公報などに開示されているマルチモードレーザーを利用する方法が知られており、これらの技術を用いることが好ましい。
【0179】
本発明に用いる画像形成方法の加熱現像工程はいかなる方法であってもよいが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。用いられる熱現像機の好ましい態様としては、熱現像感光材料をヒートローラーやヒートドラムなどの熱源に接触させるタイプとして特公平5−56499号公報、特開平9−292695号公報、特開平9−297385号公報および国際公開WO95/30934号公報に記載の熱現像機、非接触型のタイプとして特開平7−13294号公報、国際公開WO97/28489号公報、同97/28488号公報および同97/28487号公報に記載の熱現像機がある。特に好ましい態様としては非接触型の熱現像機である。
【0180】
熱現像時における熱現像感光材料の寸法変化による処理ムラを防止する方法として、80℃以上115℃未満の温度で画像が出ないようにして、5秒以上加熱した後、110℃〜140℃で熱現像して画像形成させる方法(いわゆる多段階加熱方法)が好ましい。
【0181】
従って、本発明の熱現像感光材料の好ましい画像形成方法は、露光され、潜像が形成された後、予備加熱部、熱現像部および徐冷部を備えた熱現像機で現像処理される方法である。熱現像機による現像温度は、80〜250℃であるのが好ましく、100〜140℃であるのが好ましい。前記熱現像機によるトータルの現像時間は1〜180秒であるのが好ましく、5〜90秒であるのがさらに好ましい。また、前記熱現像機による熱現像部の処理速度は、21〜100mm/秒であるのが好ましく、27〜50mm/秒であるのがより好ましい。
【0182】
露光された熱現像感光材料は、まず、予備加熱部で加熱される。予備加熱部は、熱現像時における熱現像感光材料の寸法変化による処理ムラを防止する目的で設けられる。予備加熱部における加熱は、熱現像温度よりも低く(例えば10〜30℃程度低く)、熱現像感光材料中に残存する溶媒を蒸発させるのに十分な温度および時間に設定することが望ましく、熱現像感光材料の支持体のガラス転移温度(Tg)よりも高い温度で、現像ムラが出ないように設定することが好ましい。一般的には、80℃以上115℃未満で、5秒以上加熱するのが好ましい。
【0183】
予備加熱部で加熱された熱現像感光性材料は、引き続き熱現像部にて加熱される。本発明の画像形成方法では、前記熱現像部は、搬送される熱現像感光材料に対して、画像形成層側およびバック層側に加熱部材を備えるとともに、画像形成層側のみに搬送ローラーを備える。例えば、熱現像感光材料が画像形成層を上側にして搬送される場合、熱現像感光材料の搬送方向に対し下側(熱現像感光材料のバック層側)は搬送ローラーがなく、上側(熱現像感光材料の画像形成層側)のみに搬送ローラーがある構成である。本発明においては、熱現像部を前記構成とすることにより、濃度ムラの発生および物理的な変形を防止している。
【0184】
熱現像部において、熱現像感光材料は加熱ヒータ等の加熱部材によって加熱される。熱現像部における加熱温度は、熱現像に充分な温度であり、一般的には110℃〜140℃である。熱現像感光材料は、熱現像部において、110℃以上の高温にさらされるため、該材料中に含まれている成分の一部、あるいは熱現像による分解成分の一部が揮発する場合がある。これらの揮発成分は現像ムラの原因になったり、熱現像機の構成部材を腐食させたり、温度の低い場所で析出し、異物として画面の変形を引起こしたり、画面に付着した汚れとなったり、等の種々の悪い影響を及ぼすことが知られている。これらの影響を除くための方法として、熱現像機にフィルターを設置し、また熱現像機内の空気の流れを最適に調整する方法が知られている。これらの方法は有効に組み合わせて利用することができる。例えば、国際公開WO95/30933号公報、同97/21150号公報、特表平10−500496号公報には、結合吸収粒子を有し揮発分を導入する第一の開口部と排出する第二の開口部とを有するフィルターカートリッジを、フィルムと接触して加熱する加熱装置に用いることが記載されている。また、国際公開WO96/12213号公報、特表平10−507403号公報には、熱伝導性の凝縮捕集器とガス吸収性微粒子フィルターを組合せたフィルターを用いることが記載されている。本発明ではこれらを好ましく用いることができる。また、米国特許第4,518,845号明細書、特公平3−54331号公報には、フィルムからの蒸気を除去する装置とフィルムを伝熱部材へ押圧する加圧装置と伝熱部材を加熱する装置とを有する構成が記載されている。また、国際公開WO98/27458号公報には、フィルムから揮発するカブリを増加させる成分をフィルム表面から取り除くことが記載されている。これらについても本発明では好ましく用いることができる。
【0185】
予備加熱部および熱現像部における加熱の温度分布は、各々、±1℃以下であるのが好ましく、±0.5℃以下であるのがより好ましい。
【0186】
熱現像部で加熱された熱現像感光材料は、次に、徐冷部で冷却される。冷却は、熱現像感光材料が物理的に変形しないように、徐々に行うのが好ましく、冷却速度としては0.5〜10℃/秒が好ましい。
【0187】
本発明の画像形成方法に用いられる熱現像機の一構成例を図1に示す。
図1は熱現像機の概略側面図を示したものである。図1に示す熱現像機は、熱現像感光材料10を予備加熱するための予備加熱部A、熱現像処理するための熱現像部Bおよび熱現像感光材料を冷却する徐冷部Cとから構成される。予備加熱部Aは、搬入ローラー対11(上部ローラーはシリコンゴムローラーで、下部ローラーがアルミ製のヒートローラー)を備える。熱現像部Bは、熱現像感光材料10の画像形成層が形成された側の面10aと接触する側に、複数のローラー13を備え、その反対側の熱現像感光材料10のバック層側の面10bと接触する側には、不織布(例えば芳香族ポリアミドやテフロンから成る)等が貼り合わされた平滑面14を備える。ローラー13と平滑面14とのクリアランスは、熱現像感光材料10が搬送可能なクリアランスに適宜調整される。一般的には、クリアランスは0〜1mm程度である。さらに、熱現像部Bは、ローラー13の上部および平滑面14の下部に、熱現像感光材料10を画像形成層側およびバック層側から加熱するための加熱ヒータ15(板状ヒータ等)を備える。徐冷部Cは、熱現像部Bから熱現像感光材料10を搬出するための搬出ローラー対12とガイド板16とを備える。
【0188】
熱現像感光材料10は搬入ローラー対11から搬出ローラー対12へと搬送される間に熱現像される。
熱現像感光材料10は露光された後、予備加熱部Bに搬入される。予備加熱部Bにおいて、熱現像感光材料10は、複数の搬入ローラー対12によって平面状に矯正され且つ予備加熱されて、熱現像部Bに搬入される。熱現像部Bに搬入された熱現像感光材料10は、複数のローラー13と平滑面14とのクリアランスに挿入され、熱現像感光材料10の表面10aに接触するローラー13の駆動により、バック層側の面10bを平滑面14上に滑らせながら搬送される。搬送されている間、熱現像感光材料10は、画像形成層側およびバック層側の双方から、加熱ヒータ15によって熱現像に充分な温度まで加熱され、露光によって形成された潜像が現像される。その後、熱現像感光材料10は、徐冷部Cへ搬送され、搬出ローラー対12によって平面状に矯正されて、熱現像機20から搬出される。
【0189】
熱現像部Bのローラー13の表面の材質および平滑面14の部材は、高温耐久性があり、熱現像感光材料10の搬送に支障がなければ特に制限はないが、ローラー13の表面の材質はシリコンゴムであるのが好ましく、平滑面14の部材は芳香族ポリアミドまたはテフロン(PTFE)製の不織布であるのが好ましい。加熱ヒータ15は、熱現像感光材料10を熱現像するのに十分な温度まで加熱するものであれば、その形状および数については特に制限されないが、それぞれの加熱温度が自由に設定可能な構成であるのが好ましい。
【0190】
なお、熱現像感光材料10は、搬入ローラー対11を備える予備加熱部Aと、加熱ヒータ15を備える熱現像部Bで加熱されるが、予備加熱部Aにおける加熱は、熱現像温度よりも低く(例えば10〜30℃程度低く)、熱現像感光材料10中の溶媒を蒸発させるのに十分な温度および時間に設定することが望ましく、熱現像感光材料10の支持体のガラス転移温度(Tg)よりも高い温度で、現像ムラが出ないように設定することが好ましい。予備加熱部と熱現像処理部の温度分布としては±1℃以下が好ましく、さらには±0.5℃以下が好ましい。
【0191】
徐冷部Cにおいて、熱現像感光材料10が急激に冷却され、変形してしまわないためには、ガイド板16は熱伝導率の低い素材を用いて構成するのが好ましい。
【0192】
本発明の熱現像感光材料は、露光装置(プロッター)、オートキャリア、熱現像機(プロセサー)のオンラインシステムで露光、熱現像されることが好ましい。オートキャリアは露光済みの熱現像感光材料を熱現像機に自動で搬送するものであり、搬送機構はベルトコンベア、ローラー搬送などいずれの方式でも良いが、ローラー搬送が好ましい。また、オートキャリアは熱現像機側から露光装置側へ熱が入り込まないような機構を設けることが好ましく、例えばオートキャリア中心下部より露光装置および熱現像機に風を送り込む方式などがある。
【0193】
予備加熱部と熱現像処理部との線速比率が95.0〜99.0%となる条件で現像処理することが好ましく、オートキャリアと予備加熱部との線速比率が90.0〜100%となる条件で現像処理することが好ましい。予備加熱部と熱現像処理部との線速比率が95.0%未満、および/または、オートキャリアと予備加熱部との線速比率が90.0%未満であると擦り傷やジャミングの発生などが起きて搬送性が悪くなり、かつ、濃度ムラが発生しやすくなり好ましくない。
【0194】
本発明の熱現像感光材料は、例えば、幅550〜650mmおよび長さ1〜65mのシート状のものが用いられ、その一部または全部を円筒形状のコア部材に画像形成層を外側として巻き取られた形態で、熱現像システムに組み込まれる。
【0195】
【実施例】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0196】
<比較例1>
《ポリエチレンテレフタレート支持体の作製》
ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)ペレットを130℃で4時間乾燥した後、300℃で溶融後T型ダイから押し出した後急冷し、未延伸のフィルムを作製した。これを周速の異なるロールを用い3.0倍に縦延伸、ついでテンターで4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後200℃のゾーンを巻き取り張力3.5kg/cm2で20m/minの速度で10分間熱処理した。
【0197】
この後テンターのチャック部をスリッターした後、両端にナール加工を行い、40Nの力で巻き取った。このようにして巾2.4m、長さ800m、厚み130μmのPETフィルムのロールを得た。ガラス転移点は79℃であった。
【0198】
上記のようにして作製した2軸延伸熱固定済みの厚さ130μmの厚みをもったPETフィルム支持体の両面にそれぞれ8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に下記下引塗布液a−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて下引層A−1とし、また反対側の面に下記帯電防止加工した下引塗布液b−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて帯電防止加工下引層B−1とした。
【0199】
《下引塗布液a−1》
ブチルアクリレート(30質量%)、tert−ブチルアクリレート(20質量%)、スチレン(25質量%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(25質量%)の共重合体ラテックス液(固形分30%) 270g
(C−1) 0.6g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア) 0.8g
ポリスチレン微粒子(平均粒子サイズ3μm) 0.05g
コロイダルシリカ(平均粒子サイズ90nm) 0.1g
水 総量が1000mlになる量
【0200】
【0201】
上記下引層A−1および下引層B−1の上表面に、8w/m2・分のコロナ放電を施し、下引層A−1の上には、下記下引上層塗布液a−2を乾燥膜厚0.1μmになる様に下引上層A−2として、下引層B−1の上には下記下引上層塗布液b−2を乾燥膜厚0.8μmになる様に帯電防止機能をもつ下引上層B−2として塗設した。
【0202】
《下引上層塗布液a−2》
ゼラチン 0.4g/m2になる量
(C−1) 0.2g
(C−2) 0.2g
(C−3) 0.1g
シリカ粒子(平均粒子サイズ3μm) 0.1g
水 総量が1000mlになる量
【0203】
《下引上層塗布液b−2》
(C−4) 60g
(C−5)を成分とするラテックス液(固形分20%) 80g
硫酸アンモニウム 0.5g
(C−6) 12g
ポリエチレングリコール(質量平均分子量600) 6g
水 総量が1000mlになる量
【0204】
【化28】
【0205】
《支持体の熱処理》
上記の下引済み支持体の下引乾燥工程において、支持体を150℃で加熱し、その後徐々に冷却した。巻き取り張力は3.6kg/cm2で行った。
【0206】
《ハロゲン化銀乳剤Aの調製》
水900ml中にイナートゼラチン7.5gおよび臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(60/38/2)のmol比の塩化ナトリウムと臭化カリウムと沃化カリウムおよび〔Ir(NO)Cl5〕塩を銀1mol当たり1×10-6molおよび塩化ロジウム塩を銀1mol当たり1×10-6mol含む水溶液370mlを、pAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で添加した。その後4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを添加し水酸化ナトリウムでpHを8、pAg6.5に調整することで還元増感を行い平均粒子サイズ0.06μm、単分散度10%の投影直径面積の変動係数8%、〔100〕面比率87%の立方体沃臭化銀粒子を得た。この乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ脱塩処理後フェノキシエタノール0.1gを加え、pH5.9、pAg7.5に調整することによりハロゲン化銀乳剤Aを得た。
【0207】
《ベヘン酸ナトリウム溶液の調製》
945mlの純水にベヘン酸32.4g、アラキジン酸9.9g、ステアリン酸5.6gを90℃で溶解した。次に高速で攪拌しながら1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液98mlを添加した。次に濃硝酸0.93mlを加えた後、55℃に冷却して30分攪拌させてベヘン酸ナトリウム溶液を得た。
【0208】
《ベヘン酸銀とハロゲン化銀乳剤のプレフォーム乳剤の調製》
上記のベヘン酸ナトリウム溶液に、前記ハロゲン化銀乳剤Aを添加し、水酸化ナトリウム溶液でpH8.1に調整した後に、1mol/Lの硝酸銀溶液147mlを7分間かけて加え、さらに20分攪拌し限外濾過により水溶性塩類を除去した。生成したベヘン酸銀は平均粒子サイズ0.8μm、単分散度8%の粒子であった。分散物のフロックを形成後、水を取り除き、さらに6回の水洗と水の除去を行った後乾燥させた。
【0209】
《感光性乳剤の調製》
前記プレフォーム乳剤を分割し、それにポリビニルブチラール(平均分子量3000)のメチルエチルケトン溶液(17質量%)544gとトルエン107gを徐々に添加して混合した後に、0.5mmサイズZrO2のビーズミルを用いたメディア分散機で4000psiで30℃、10分間の分散を行った。分散後、電子顕微鏡写真で有機銀粒子を観察した。300個の有機銀粒子の粒子サイズと厚みを測定した結果、205個がAR3以上で分散度25%の単分散平板状有機銀であった。尚、平均粒子サイズは0.7μmであった。又塗布乾燥後も同様に有機銀粒子を観察したところ、同じ粒子が確認できた。
【0210】
前記支持体上にそれぞれ以下の各層を両面同時塗布し、試料を作製した。尚、乾燥は60℃、15分間で行った。
【0211】
《バック面側塗布》
支持体のb−2層の上に、以下の組成のバック層塗布液を塗布した。
セルロースアセテートブチレート(10%メチルエチルケトン溶液)15ml/m2
染料−A 60mg/m2
マット剤:単分散度15%平均粒子サイズ8μmシリカ 89mg/m2
C8F17CH2CH2O(CH2CH2O)4H 50mg/m2
C9F19−C6H4−SO3Na 10mg/m2
【0212】
《画像形成面側塗布》
支持体のa−1層の上に、下記の組成の画像形成層塗布液を塗布銀量が1.5g/m2になる様に塗布した。
前記感光性乳剤 240g
増感色素S(0.1%メタノール溶液) 1.7ml
ピリジニウムプロミドペルブロミド(6%メタノール溶液) 3ml
臭化カルシウム(0.1%メタノール溶液) 1.7ml
酸化剤T(10%メタノール溶液) 1.2ml
カブリ防止剤F 1.0g
2−メルカプトベンズイミダゾール(1%メタノール溶液) 11ml
トリブロモメチルスルホキノリン(5%メタノール溶液) 8ml
トリブロモメチルスルホピリジン(5%メタノール溶液) 9ml
硬調化剤K 0.4g
ヒドラジン誘導体H 0.3g
フタラジン 0.6g
4−メチルフタル酸 0.25g
テトラクロロフタル酸 0.2g
炭酸カルシウム(平均粒子サイズ3μm) 0.1g
イソシアネート化合物(Desmodur N3300) 0.5g
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)
−2−メチルプロパン(20%メタノール溶液) 5.0ml
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)
−3,5,5−トリメチルヘキサン(20%メタノール溶液)16.0ml
【0213】
上記画像形成層の上に、下記の組成の表面保護層塗布液を、塗布した。
アセトン 5ml/m2
メチルエチルケトン 21ml/m2
セルロースアセテートブチレート 2.3g/m2
メタノール 7ml/m2
フタラジン 250mg/m2
マット剤:単分散度10%平均粒子サイズ4μm単分散シリカ5mg/m2
CH2=CHSO2CH2CONHCH2CH2NHCOCH2SO2CH=CH2 35mg/m2
フッ素化合物(表1記載の種類) 表1記載の量
【0214】
【化29】
【0215】
【化30】
【0216】
以上のようにして作製した各試料について、下記の性能評価を行った。
《評価》
1.露光処理
得られた熱現像感光材料を、ビーム径(ビーム強度の1/2のFWHM)12.56μm、レーザー出力50mW、出力波長783nmの半導体レーザーを搭載した単チャンネル円筒内面方式のレーザー露光装置を使用し、ミラー回転数60,000rpm、露光時間1.2×10-8秒の露光を実施した。この時のオーバーラップ係数は0.449にし、熱現像感光材料面上のレーザーエネルギー密度としては75μJ/cm2とした。上記のレーザー露光装置を用いて、175線/インチで光量を変えながらテストステップを出力した。
【0217】
2.熱現像処理
露光済みの熱現像感光材料を図1に示した熱現像機を用いて、熱現像処理を行った。熱現像は25℃、相対湿度50%の環境下で行った。熱現像処理部のローラー表面材質はシリコンゴム、平滑面はテフロン不織布にして、搬送のラインスピードは150cm/minに設定した。予備加熱部12.2秒(予備加熱部と熱現像処理部の駆動系は独立しており、熱現像部との速度差は−0.5%〜−1%に設定、各予熱部の金属ローラーの温度設定、時間は第1ローラー温度67℃、2.0秒、第2ローラー温度82℃、2.0秒、第3ローラー温度98℃、2.0秒、第4ローラー温度温度107℃、2.0秒、第5ローラー温度115℃、2.0秒、第6ローラー温度120℃、2.0秒にした)、熱現像処理部120℃(熱現像感光材料面温度)で17.2秒、徐冷部13.6秒で熱現像処理を行った。なお、幅方向の温度精度は±0.5℃であった。各ローラー温度の設定は熱現像感光材料の幅(例えば幅61cm)よりも両側それぞれ5cm長くして、その部分にも温度をかけて、温度精度が出るようにした。なお、各ローラーの両端部分は温度低下が激しいので、熱現像感光材料の幅よりも5cm長くした部分はローラー中央部よりも1〜3℃温度が高くなるように設定し、熱現像感光材料(例えば幅61cmの中で)の画像濃度が均質な仕上がりになるように留意した。
【0218】
3.写真性能の評価法
画像のDmin(カブリ)、Dmax(最高濃度)については、マクベスTD904濃度計(可視濃度)で測定した。感度は濃度1.5を与える露光量の逆数をもって表し、S1.5とした。
試料No.1の写真感度を相対的に100と表わした。値が大きいほど高感度であることを意味する。
画像のコントラストを示す指標(γ:階調)として、特性曲線の Dmin+濃度0.3の点からDmin+濃度3.0の点を直線で結び、この直線の傾きをγ値として表した。すなわち、γ=(3.0−0.3)/(log(濃度3.0を与える露光量)− log(濃度0.3を与える露光量))であり、γ値が大きいほど硬調な写真特性であることを意味している。
実用的には、Dminは0.15以下、Dmaxは4.0以上、コントラストは、15以上であることが好ましい。
【0219】
4.保存性の評価法
得られた熱現像感光材料を、25℃、相対湿度60%の環境下に24時間放置後感光材料同士を重ね合わせ密閉した包袋に入れ、45℃で7日間保存した後露光、熱現像処理を行った。45℃で7日間保存する前のDmin(a)と保存した後のDmin(b)を測定し、(b)−(a)=ΔDminを求め、保存性の評価を行なった。ΔDminが小さいほど保存性が良好で、0.05以下が実用的に問題ないレベルである。
【0220】
5.塗布膜の面状評価法
得られた試料を目視観察し、ハジキやスジ、ムラなど塗膜の欠陥を評価した。
評価点 5…欠陥無し
3…やや欠陥有り
1…全面に欠陥有り
「4」が、「5」と「3」の中間レベルであり、「2」が、「3」と「1」の中間レベルである。4点以上が実用的に使用できるレベルである。
【0221】
各熱現像感光材料について上記評価を実施した結果を表1に示す。
【0222】
【表1】
【0224】
<実施例1>
《ハロゲン化銀乳剤Bの調製》水700mlにアルカリ処理ゼラチン(カルシウム含有量として2700ppm以下)11g、臭化カリウム30mg、および4−メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.3gを溶解して、45℃にてpHを6.5に調整した。その後、硝酸銀18.6gを含む水溶液159mlと臭化カリウムを1mol/L、(NH4)2RhCl5(H2O)を5×10-6mol/LおよびK3IrCl6を2×10-5mol/Lで含む水溶液を、pAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で6分30秒間かけて添加した。ついで、硝酸銀55.5gを含む水溶液476mlと臭化カリウムを1mol/LおよびK3IrCl6を2×10-5mol/Lで含むハロゲン塩水溶液を、pAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で28分30秒間かけて添加した。その後pHを下げて凝集沈降させて脱塩処理をし、平均分子量15,000の低分子量ゼラチン(カルシウム含有量として20ppm以下)51.1g加え、pH5.9、pAg8.0に調整した。得られた粒子は平均粒子サイズ0.11μm、投影面積変動係数9%、(100)面比率90%の立方体粒子であった。
【0225】
得られたハロゲン化銀粒子を60℃に昇温して銀1mol当たりベンゼンチオスルホン酸ナトリウム76μmolを添加し、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを5×10-4mol、化合物Aを0.17gを添加し、その3分後にトリエチルチオ尿素71μmolを添加した。その後、100分間熟成した後、40℃に降温させた。40℃に温度を保ち、ハロゲン化銀1molに対して4.7×10-2molの臭化カリウム(水溶液として添加)、12.8×10-4molの下記増感色素A(エタノール溶液として添加)、6.4×10-3molの化合物B(メタノール溶液として添加)、3.2×10-3molの化合物Y(メタノール/H2O=1/1の混合溶液として添加)、を順次攪拌しながら添加し、20分後に30℃に急冷してハロゲン化銀乳剤Bの調製を終了した。
【0226】
【化31】
【0227】
《ベヘン酸銀分散物の調製》
ベヘン酸(ヘンケル社製、製品名EdenorC22−85R)87.6kg、蒸留水423L、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液49.2L、tert−ブチルアルコール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液を得た。別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2Lを用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのtert−ブチルアルコールを入れた反応容器を30℃に保温し、攪拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ62分10秒と60分かけて添加した。この時、硝酸銀水溶液添加開始後7分20秒間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液添加終了後9分30秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が上がらないようにコントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、スチームトレースにより保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるようにスチーム量をコントロールした。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は攪拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調節した。
【0228】
ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間攪拌放置し、25℃に降温した。その後、吸引濾過で固形分を濾別し、固形分を濾水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
得られたベヘン酸銀の粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均投影面積径0.52μm、平均粒子厚み0.14μm、平均球相当径の変動係数15%の鱗片状の結晶であった。
【0229】
つぎに、以下の方法でベヘン酸銀の分散物を作製した。乾燥固形分100g相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217,平均重合度:約1700)7.4gおよび水を添加し、全体量を385gとしてからホモミキサーにて予備分散した。次に予備分散済みの原液を分散機(マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、商品名:マイクロフルイダイザーM−110S−EH、G10Zインタラクションチャンバー使用)の圧力を1750kg/cm2に調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物Aを得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで所望の分散温度に設定した。
【0230】
こうして得たベヘン酸銀分散物Aに含まれるベヘン酸銀粒子は体積加重平均直径0.52μm、変動係数15%の粒子であった。粒子サイズの測定は、Malvern Instruments Ltd.製MasterSizerXにて行った。また電子顕微鏡撮影により評価すると、長辺と短辺の比が1.5、粒子厚み0.14μm、平均アスペクト比(粒子の投影面積の円相当径と粒子厚みの比)が5.1であった。得られたベヘン酸銀分散物は、下記の塗布液の調製に用いた。
【0231】
《還元剤の固体微粒子分散物の調製》
還元剤[1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン]10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgに、サーフィノール104E(日信化学(株)製)400gと、メタノール640g、水16kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて4時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩4gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調整し、還元剤の固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる還元剤粒子は平均粒子サイズ0.43μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、変動係数35%であった。得られた分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。得られた還元剤の固体微粒子分散物は、下記の塗布液の調製に用いた。
【0232】
《有機ポリハロゲン化合物Aの固体微粒子分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物A[トリブロモメチル(4−(2,4,6−トリメチルフェニルスルホニル)フェニル)スルホン]10kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液639gと、サーフィノール104E(日信化学(株)製)400gと、メタノール640gと水16kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて6時間分散したのち水を加えて有機ポリハロゲン化合物Aの濃度が25質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物Aの固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子は平均粒子サイズ0.31μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、変動係数28%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。得られた有機ポリハロゲン化合物Aの固体微粒子分散物は、下記の塗布液の調製に用いた。
【0233】
《有機ポリハロゲン化合物Bの固体微粒子分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物B[トリブロモメチルナフチルスルホン]5kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液2.5kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液213gと、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて6時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩2.5gと水を加えての有機ポリハロゲン化合物Bの濃度が23.5質量%になるように調整し、有機ポリハロゲン化合物Bの固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子は平均粒子サイズ0.35μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、変動係数21%であった。得られた分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。得られた有機ポリハロゲン化合物Bの固体微粒子分散物は、下記の塗布液の調製に用いた。
【0234】
《有機ポリハロゲン化合物C水溶液の調製》
室温で攪拌しながら、水75.0ml、トリプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20%水溶液8.6ml、オルトりん酸二水素ナトリウム・2水和物の5%水溶液6.8ml、水酸化カリウムの1mol/L水溶液9.5mlを順次添加し、添加終了後5分間攪拌混合した。さらに、攪拌しながら有機ポリハロゲン化合物C[3−トリブロモメタンスルホニルベンゾイルアミノ酢酸]4.0gの粉末を添加し、溶液が透明になるまで均一に溶解させて水溶液100mlを得た。
得られた水溶液は、200メッシュのポリエステル製スクリーンにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。得られた有機ポリハロゲン化合物Cの水溶液は、下記の塗布液の調製に用いた。
【0235】
《有機ポリハロゲン化合物Dの固体微粒子分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物Dを6kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液12kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液240g、および水0.18kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて6時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物Dの濃度が30質量%になるように調整し、有機ポリハロゲン化合物Dの固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子は平均粒子サイズ0.37μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、変動係数23%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。得られた有機ポリハロゲン化合物Dの固体微粒子分散物は、下記の塗布液の調製に用いた。
【0236】
【化32】
【0237】
《6−イソプロピルフタラジン化合物の分散液の調製》
室温で水62.35gを攪拌しながら変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)2.0gが塊状にならない様に添加し10分間攪拌混合した。その後加熱し、内温が50℃になるまで昇温した後、内温50〜60℃の範囲で90分間攪拌し均一に溶解させた。内温を40℃以下に降温し、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−217)の10質量%水溶液25.5g、トリプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.0g、6−イソプロピルフタラジン(70質量%水溶液)7.15gを添加し、30分攪拌し透明分散液100gを得た。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0238】
《化合物Zの乳化分散物の調製》
化合物Zを85質量%含有する三光(株)製R−054を10kgとMIBK11.66kgを混合した後、窒素置換して80℃1時間溶解した。この液に水25.52kgとクラレ(株)製MPポリマーのMP−203の20質量%水溶液12.76kgとトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.44kgを添加して、20〜40℃、3600rpmで60分間乳化分散した。さらに、この液にサーフィノール104E(日信化学(株)製)0.08kgと水47.94kgを添加して減圧蒸留しMIBKを除去したのち、化合物Zの濃度が10質量%になるように調整した。こうして得た分散物に含まれる化合物Zの粒子は平均粒子サイズ0.19μm、最大粒子サイズ1.5μm以下、変動係数17%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0239】
《硬調化剤X−1の固体微粒子分散物の調製》
硬調化剤X−1を4kgに対して変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバール、PVA−217)を1kgと水36kgとを添加してよく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて13時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩4gと水を加えて硬調化剤の濃度が10質量%になるように調整し、硬調化剤の固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる硬調化剤の粒子は平均粒子サイズ0.33μm、最大粒子サイズ3.0μm以下、変動係数24%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0240】
《硬調化剤X−2の水溶液の調製》
硬調化剤X−2を4kg、メタノール8.2kg、水60.5kgを順次添加し、添加終了後35℃で攪拌混合し、溶液が透明になるまで均一に溶解させて水溶液72.7kgを得た。
得られた水溶液は、200メッシュのポリエステル製スクリーンにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。得られた有機ポリハロゲン化合物Cの水溶液は、下記の塗布液の調製に用いた。
【0241】
《現像促進剤の固体微粒子分散物の調製》
現像促進剤W−1を10kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、水20kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて6時間分散したのち水を加えて現像促進剤の濃度が20質量%になるように調整し、現像促進剤の固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる現像促進剤粒子は平均粒子サイズ0.37μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、変動係数26%であった。
現像促進剤W−2についても同様の方法で分散し、平均粒子サイズ0.35μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、変動係数33%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
得られた現像促進剤の固体微粒子分散物は、下記の塗布液の調製に用いた。
【0242】
【化33】
【0243】
《画像形成層塗布液の調製》
上記で作製したベヘン酸銀分散物Aの銀1molに対して、以下のバインダー、素材、およびハロゲン化銀乳剤を添加して、水を加えて、画像形成層塗布液とした。完成後、減圧脱気を圧力0.54atmで45分間行った。塗布液のpHは7.7、粘度は25℃で50mPa・sであった。
【0244】
pH調整剤として、水酸化ナトリウムを用いてpHを調整した。
(なお、塗布膜のガラス転移温度は17℃であった。)
【0245】
【化34】
【0246】
《保護層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度として21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ塗布液のガラス転移温度を24℃とした、平均粒子サイズ135±10nm)943gに水を加え、フッ素化合物(表2に記載)、有機ポリハロゲン化合物C水溶液を固形分として4.8g、有機ポリハロゲン化合物Aを固形分として17.0g、オルトリン酸二水素ナトリウム・二水和物を固形分として0.69g、現像促進剤W−1を固形分として11.55g、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒子サイズ7μm、平均粒子サイズの変動係数8%)1.58gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235)29.3gを加え、さらに水を加えて塗布液1880ml(メタノール溶媒を0.8質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは5.5、粘度は25℃で45mPa・sであった。
【0247】
《下層オーバーコート層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度として21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ、塗布液のガラス転移温度を24℃とした、平均粒子サイズ80±10nm)625gに水を加え、化合物Cを0.23g、フッ素化合物(表2に記載)、化合物Fを12.1g、化合物Hを2.7gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235)11.5gを加え、さらに水を加えて塗布液2000ml(メタノール溶媒を0.1質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは2.6、粘度は25℃で35mPa・sであった。
【0248】
《上層オーバーコート層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度として21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ、塗布液のガラス転移温度を24℃とした、平均粒子サイズ135±10nm)649gに水を加え、カルナヴァワックス(中京油脂(株)製、セロゾール524:シリコーン含有量として5ppm未満)30質量%溶液18.4g、化合物Cを0.23g、フッ素化合物(表2に記載)、化合物Gを1.0g、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒子サイズ7μm、平均粒子サイズの変動係数8%)3.45gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235)26.5gを加え、さらに水を加えて塗布液1700ml(メタノール溶媒を1.1質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは5.3、粘度は25℃で35mPa・sであった。
【0249】
【化35】
【0250】
《バック/下塗り層のついたポリエチレンテレフタレート(PET)支持体の作製》
(1)PET支持体の作製
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い、固有粘度IV=0.66(フェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のポリエチレンテレフタレートを得た。これをペレット化した後、130℃で4時間乾燥した後、300℃で溶融後T型ダイから押し出した後急冷し、熱固定後の膜厚が120μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。
これを周速の異なるロールを用い、3.3倍に縦延伸、ついでテンターで4.5倍に横延伸を実施した。このときの温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後、これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後、テンターのチャック部をスリットした後、両端にナール加工を行い、4.8kg/cm2で巻きとった。このようにして、幅2.4m、長さ3500m、厚み120μmのロール状のPET支持体を得た。
【0251】
(2)下塗り層およびバック層の作製
▲1▼下塗り第一層
上記PET支持体に0.375kV・A・分/m2のコロナ放電処理を施した後、以下に示す組成の塗布液を9.6ml/m2となる様に支持体上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、185℃で30秒乾燥した。
【0252】
ラテックス−A 280g
KOH 0.5g
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ2μm、平均粒子サイズの変動係数7%)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 1.8g
化合物−Bc−C 0.097g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0253】
ラテックス−A:
コア部90質量%、シェル部10質量%のコアシェルタイプのラテックス
コア部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリロニトリル/アクリル酸=93/3/3/0.9/0.1(質量%)シェル部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリロニトリル/アクリル酸=88/3/3/3/3(質量%)、質量平均分子量38,000
【0254】
▲2▼下塗り第二層
以下に示す組成の塗布液を8.3ml/m2となる様に下塗り第一層の上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。
【0255】
脱イオン処理ゼラチン
(Ca2+含量0.6ppm、ゼリー強度230g) 10g
酢酸(20質量%水溶液) 10g
化合物−Bc−A 0.04g
メチルセルロース(2質量%水溶液) 25g
ポリエチレンオキシ化合物 0.3g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0256】
▲3▼バック第一層
前記下塗り層塗布面とは反対側の面に0.375kV・A・分/m2のコロナ放電処理を施し、その面に以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となる様に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、185℃で30秒乾燥した。
【0257】
不飽和アルキルカルボン酸ポリマー30質量%水分散物 23g
(日本純薬(株)製、ジュリマーET410)
アルカリ処理ゼラチン
(分子量約10000、Ca2+含量30ppm) 4.44g
脱イオン処理ゼラチン(Ca2+含量0.6ppm) 0.84g
化合物−Bc−A 0.02g
染料−Bc−S 目安として0.88g
(783nmの光学濃度として1.3〜1.4になるように調整)
メチルセルロース 13.8g
ポリオキシエチレンフェニルエーテル 1.7g
水溶性メラミン化合物(8質量%水溶液) 15g
(住友化学工業(株)製、スミテックスレジンM−3)
SbドープSnO2の針状粒子の水分散物 24g
(石原産業(株)製、FS−10D)
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ2μm、平均粒子サイズの変動係数7%)
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0258】
▲4▼バック第二層
下塗り第一層と同じ塗布液を9.6ml/m2となる様にバック第二層上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、185℃で30秒乾燥した。
【0259】
▲5▼バック第三層
以下に示す組成の塗布液を8.3ml/m2となる様にバック第二層上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。
【0260】
脱イオン処理ゼラチン 10g
(Ca2+含量0.6ppm、ゼリー強度230g)
酢酸(20質量%水溶液) 10g
化合物−Bc−A 0.04g
メチルセルロース(2質量%水溶液) 25g
ポリエチレンオキシ化合物 0.3g
塩化カリウム 1.0g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0261】
▲6▼バック第四層
以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となる様にバック第三層上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。
【0262】
アルカリ処理ゼラチン 12.7g
(分子量約10000、Ca2+含量30ppm)
化合物−Bc−A 0.03g
ケミパールS120 135g
(オレフィンアイオノマー、27質量%水分散物、
三井石油化学(株)製)
不飽和アルキルカルボン酸ポリマー 77g
(ジュリマーET410、30質量%水分散物、日本純薬(株)製)
化合物−Bc−B 2.7g
化合物−Bc−C 0.6g
化合物−Bc−D 0.5g
水溶性エポキシ化合物:化合物−Bc−E 7.2g
(ナガセ化成工業(株)製、デナコールEX521)
カルナヴァワックス 30質量%溶液 12.0g
(中京油脂(株)製、セロゾール524:シリコーン含有量として5ppm未満)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシーs−トリアジン 2.5g
架橋ポリメチルメタクリレート微粒子 0.8g
(カルボキシル基5質量%含有、平均粒子サイズ5μm、平均粒子の変動係数7%)
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0263】
【化36】
【0264】
(3)搬送熱処理
(3−1)熱処理
このようにして作製したバック/下塗り層のついたPET支持体を160℃設定した全長200m熱処理ゾーンに入れ、張力2kg/cm2、搬送速度20m/分で搬送した。
(3−2)後熱処理
上記熱処理に引き続き、40℃のゾーンに15秒間通して後熱処理を行い、巻き取った。この時の巻き取り張力は10kg/cm2であった。
【0265】
《熱現像感光材料の作製》
PET支持体の下塗り第2層の上に、特開2000−2964号公報の図1に示されているスライドビート塗布装置を用いて、前記の画像形成層塗布液を塗布銀量1.5g/m2になるように塗布した。さらにその上に、前記保護層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.29g/m2になるように画像形成層塗布液と共に同時重層塗布した。その後、保護層の上に前記下層オーバーコート層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.97g/m2および前記上層オーバーコート層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.07g/m2になるように下層オーバーコート塗布液と共に同時重層塗布し、熱現像感光材料を作製した。
塗布時の乾燥は、恒率過程、減率過程とも露点14〜25℃、液膜表面温度35〜40℃の範囲で、塗布液の流動がほぼなくなる乾燥点近傍までは水平乾燥ゾーン(塗布機の水平方向に対し支持体が1.5°〜3°の角度)で行った。乾燥後の巻取りは温度23±5℃、相対湿度45±5%の条件下で行い、巻き姿はその後の加工形態(画像形成面外巻)に合わせ、画像形成面を外にした。なお、熱現像感光材料の包袋相対湿度は20〜40%(25℃測定)で、得られた熱現像感光材料の画像形成面の膜面pHは5.0、反対側の膜面pHは5.9であった。この熱現像感光材料を以下のごとく遮光性感光材料ロールを作製した。
【0266】
(遮光リーダの製造)
厚みが30μmのシュリンクフィルム(TNS、グンゼ(株)製)の両面に、遮光性フィルム(カーボンブラックを5質量%混入した厚みが30μmの低密度ポリエチレンシート)を貼り合わせて熱収縮性遮光フィルム製細片を製造した。得られた熱収縮性遮光フィルム製細片の熱収縮率は、100℃において、長さ方向で13.3%、幅方向で11.9%であり、長さ方向のエルメンドルフ引裂荷重は0.43Nであった。この熱収縮性遮光フィルム製細片を、厚みが100μmのPETシートの両側表面にカーボンブラックを5質量%混入した厚みが40μmの低密度ポリエチレンシートを貼り合わせてなる遮光シートの両側部に、それぞれ幅方向に突き出すように両側端部に沿って貼り合わせて遮光リーダを製造した。
【0267】
(遮光性感光材料ロールの製造)
上記の遮光リーダを、感光材料ロールの先端に粘着テープで接合し、円盤状遮光部材を感光材料ロールの両端部に取り付けた。次いで、ロール状感光材料の遮光リーダを、感光材料ロールの周囲に巻き付けながら、遮光リーダの熱収縮性遮光フィルム製細片の表面に270℃の熱風を吹き付けて、遮光リーダの熱収縮性遮光フィルム製細片を円盤状遮光部材の外周縁部を超えて外側表面に熱収縮した状態で接触させた。そして、遮光リーダの巻き終わりの先端部と該遮光リーダの一周回前の外側表面とを接着テープにより封止した後、円盤状遮光部材の外側表面に密着している熱収縮性遮光フィルム製細片の表面に130℃に加熱したヒータを押し当てて、円盤状遮光部材の外側表面と熱収縮性遮光フィルム製細片とを融着させた。このロールは幅610mm、巻き長さ59mであった。
【0268】
各熱現像感光材料について比較例1と同様の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0269】
【表2】
【0270】
表2の結果から明らかな様に、本発明の試料は、塗膜の欠陥が無く、かつ感光材料の保存性に優れた画像が得られることがわかる。
【0271】
<実施例2>
《画像形成層塗布液の調製》
実施例1で作製したベヘン酸銀分散物Aの銀1molに対して、以下のバインダー、素材、およびハロゲン化銀乳剤Bを添加して、水を加えて、画像形成層塗布液とした。完成後、減圧脱気を圧力0.54atmで45分間行った。塗布液のpHは7.3〜7.7、粘度は25℃で40〜50mPa・sであった。
【0272】
バインダー;SBRラテックス(重合開始剤Na 2 S 2 O 8 を使用して合成され、LiOHのpH調整剤で調整され、NH 4 + 含量が1.5ppm) 固形分として 397g
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニ ル)−3,5,5−トリメチルヘキサン 固形分として 149.5g
有機ポリハロゲン化合物B 固形分として 11.9g
有機ポリハロゲン化合物D 固形分として 40.5g
現像促進剤W−2 固形分として 5.5g
エチルチオスルホン酸ナトリウム 0.3g
ベンゾトリアゾール 1.2g
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製PVA−235) 10.8g
6−イソプロピルフタラジン 12.8g
化合物Z 固形分として 9.6g
化合物C 0.2g
染料A(平均分子量15,000の低分子量ゼラチンとの混合液として添加)
783nmの光学濃度が0.3になる塗布量
(目安として固形分0.40g)
硬調化剤X−2 9.7g
ハロゲン化銀乳剤 Ag量として0.06mol
防腐剤として化合物A 塗布液中に40ppm
(塗布量として2.5mg/m2)
メタノールの塗布液中総溶媒量として 1質量%
エタノールの塗布液中総溶媒量として 2質量%
pH調整剤としては、水酸化ナトリウムを用いた。
(なお、塗布膜のガラス転移温度は17℃であった。)
【0273】
《下層保護層塗布液の調製》
ブチルアクリレート/メチルメタアクリレート=42/58(質量%比、I/O値=0.52、ガラス転移温度30℃、平均粒子サイズ145nm、質量平均分子量800,000)のポリマーラテックス溶液(固形分濃度として28.0%、化合物Aを100ppm含有)900gに水を加え、フッ素化合物BFS−1を0.2g、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235)を35.0g加え、さらに水を加えて塗布液2300ml(メタノール溶媒を0.5質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは5.2、粘度は25℃で35mPa・sであった。
【0274】
《上層保護層塗布液の調製》
メチルアクリレート/メチルメタアクリレート=54/46(質量%比、I/O値=0.68、ガラス転移温度47℃、平均粒子サイズ110nm、質量平均分子量800,000)のポリマーラテックス溶液(固形分濃度として28.0%、化合物Aを100ppm含有)900gに、カルナヴァワックス(中京油脂(株)製、セロゾール524:シリコーン含有量として5ppm未満)30質量%溶液を10.0g、化合物Cを0.3g、フッ素化合物BFS−1を1.2g、化合物Fを25.0g、化合物Hを6.0g、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒子サイズ7μm、変動係数8%)5.0gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235)40.0gを加え、さらに水を加えて塗布液2410ml(メタノール溶媒を1.5質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは2.4、粘度は25℃で35mPa・sであった。
【0275】
《熱現像感光材料の作製》
実施例1に記載したように下塗り層を塗布したPET支持体の下塗り層の上に、特開2000−2964号公報の明細書中の図1で開示されているスライドビ−ド塗布方式を用いて、前記の画像形成層塗布液を塗布銀量1.5g/m2になる様に、その上に、前記の保護層下層塗布液をポリマ−ラテックスの固形分塗布量が1.0g/m2になる様に、さらにその上に前記の保護層上層塗布液をポリマ−ラテックスの固形分塗布量が1.3g/m2になる様に、画像形成層と保護層下層および上層の3層を同時に重層塗布した。
【0276】
塗布時の乾燥条件は、第一乾燥ゾーン(低速風乾燥域)が乾球温度70〜75℃、露点9〜23℃、支持体面上での風速8〜10m/s、液膜表面温度35〜40℃の範囲で乾燥し、第二乾燥ゾーン(高速風乾燥域)が、乾球温度65〜70℃、露点20〜23℃、そして支持体面上での風速が20〜25m/sで乾燥した。第一乾燥ゾーンの滞在時間は、このゾーンでの恒率乾燥期の2/3の時間で、第二乾燥ゾーンに移行させ、乾燥した。第一乾燥ゾーンは、水平乾燥ゾーン(塗布機の水平方向に対し支持体が1.5°〜3°の角度)である。塗布速度は、60m/minで行った。乾燥後の巻取りは温度25±5℃、相対湿度45±10%の条件下で行った。巻き姿はその後の加工形態(画像形成層面側外巻)に合わせ、画像形成層面側を外にした。なお、感光材料の包袋の相対湿度は20〜40%(25℃測定)で、得られた熱現像感光材料の画像形成側の膜面pHは5.0、ベック平滑度は4000〜5000秒であり、反対側の膜面pHは5.9、ベック平滑度は500秒であった。
【0277】
塗布方法を変更し、実施例2と同様に試料を作製し評価を実施したところ、実施例2と同様に本発明の構成の試料が、塗膜の欠陥が無く、かつ感光材料の保存性に優れた画像が得られた。
【0278】
<実施例3>
実施例1、2で用いた支持体のかわりに、下記に示すような支持体を用いた以外は、実施例1、2と同様に試料を作製した。
【0279】
《バック/下塗り層のついたポリエチレンテレフタレート(PET)支持体の作製》
(1)PET支持体の作製
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い、固有粘度IV=0.66(フェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のポリエチレンテレフタレートを得た。これをペレット化した後、130℃で4時間乾燥した後、300℃で溶融後T型ダイから押し出した後急冷し、熱固定後の膜厚が120μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。
これを周速の異なるロールを用い、3.3倍に縦延伸、ついでテンターで4.5倍に横延伸を実施した。このときの温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後、これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後、テンターのチャック部をスリットした後、両端にナール加工を行い、4.8kg/cm2で巻きとった。このようにして、幅1.4m、長さ3500m、厚み120μmのロール状のPET支持体を得た。
【0280】
(2)下塗り層およびバック層の作製
塗布液S−A〜Cの液を作製し、画像形成層塗布側には、支持体からS−C、S−Aの順に13.8ml/m2、6.2ml/m2を塗布した。さらに、バック層側に、支持体からS−A、S−Bの順に6.2ml/m2、13.8ml/m2を塗布した。乾燥は、125℃で30秒、150℃で30秒、185℃で30秒行った。PET支持体の表面には、両面とも0.375kV・A・分/m2のコロナ放電処理を施した。
【0281】
<塗布液S−A>
ラテックス−A 280g
KOH 0.5g
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ:2μm、平均粒子サイズの変動係数7%)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 1.8g
化合物−Bc−C 0.06g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0282】
【0283】
<塗布液S−B>
27%水分散物(三井化学(株)製、ケミパールS120) 73.1g
25%水分散物(高松油脂(株)製、ペスレジンA615G) 78.9g
化合物−Bc−B 2.7g
化合物−Bc−C 0.3g
化合物−Bc−D 0.25g
水溶性エポキシ化合物:化合物−Bc−E 3.4g
(ナガセ化成工業(株)製、デナコールEX521)
ポリメチルメタクリレート微粒子 7.7g
(10%水分散物、平均粒子サイズ5μm、平均粒子の変動係数7%)
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0284】
(3)搬送熱処理
(3−1)熱処理
このようにして作製したバック/下塗り層のついたPET支持体を160℃設定した全長200m熱処理ゾーンに入れ、張力2kg/cm2、搬送速度20m/分で搬送した。
(3−2)後熱処理
上記熱処理に引き続き、40℃のゾーンに15秒間通して後熱処理を行い、巻き取った。この時の巻き取り張力は10kg/cm2であった。
【0285】
実施例1、2と同様に熱現像して評価したところ、本発明の構成の熱現像感光材料は、実施例1 、2の結果を再現し、本発明の効果が良好であることが確認された。
【0286】
<実施例4>
《画像形成層塗布液の調製》
実施例1で作製したベヘン酸銀分散物の銀1molに対して、以下のバインダー、素材、およびハロゲン化銀乳剤Bを添加して、水を加えて、画像形成層塗布液とした。完成後、減圧脱気を圧力0.54atmで45分間行った。塗布液のpHは7.3〜7.7、粘度は25℃で52〜59mPa・sであった。
【0287】
バインダー;SBRラテックス(重合開始剤Na 2 S 2 O 8 を使用して合成され、LiOHのpH 調整剤で調整され、NH 4 + 含量が1.5ppm)
固形分として 395.6g
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)
−3,5,5−トリメチルヘキサン 固形分として 149.5g
有機ポリハロゲン化合物B 固形分として 36.7g
有機ポリハロゲン化合物C 固形分として 2.39g
現像促進剤W−2 固形分として 5.73g
エチルチオスルホン酸ナトリウム 0.5g
ベンゾトリアゾール 1.0g
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−235) 11.0g
6−イソプロピルフタラジン 14.0g
化合物Z 固形分として 9.8g
硬調化剤X−1 7.5g
硬調化剤X−2 5.8g
染料A(平均分子量15,000の低分子量ゼラチンとの混合液として添加)
783nmの光学濃度が0.3になる塗布量
(目安として 固形分0.40 g)
ハロゲン化銀乳剤B Ag量として0.06mol
防腐剤として化合物A 塗布液中に40ppm
(塗布量として2.5mg/m2)
メタノールの塗布液中総溶媒量として 1質量%
エタノールの塗布液中総溶媒量として 2質量%
【0288】
《保護層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度として21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ塗布液のガラス転移温度を24℃とした、平均粒子サイズ140nm)943gに水を加え、化合物E 1.66g、有機ポリハロゲン化合物C水溶液109.6g、有機ポリハロゲン化合物Aを固形分として17.0g、オルトリン酸二水素ナトリウム・二水和物を固形分として0.73g、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒子サイズ7μm、平均粒子サイズの変動係数8%)1.59gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235)29.7gを加えて、保護層塗布液1880ml(メタノール溶媒を0.8質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは5.6、粘度は25℃で40mPa・sであった。
【0289】
実施例1の試料番号31〜33の画像形成層塗布液および保護層塗布液を上記の様に変更した以外は、実施例1と同様に本発明の化合物を使用して試料を作製し評価を実施したところ、実施例1と同様に本発明の構成の試料が良好な性能を示した。
【0290】
<実施例5>
《画像形成層塗布液の調製》
実施例1で作製したベヘン酸銀分散物の銀1molに対して、以下のバインダー、素材、およびハロゲン化銀乳剤Bを添加して、水を加えて、画像形成層塗布液とした。完成後、減圧脱気を圧力0.54atmで45分間行った。塗布液のpHは7.3〜7.7、粘度は25℃で52〜59mPa・sであった。
【0291】
バインダー;SBRラテックス(重合開始剤Na 2 S 2 O 8 を使用して合成され、LiOHの pH調整剤で調整され、NH 4 + 含量が1.5ppm)
固形分として 395.6g
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)
−3,5,5−トリメチルヘキサン 固形分として 149.5g
有機ポリハロゲン化合物B 固形分として 12.0g
有機ポリハロゲン化合物D 固形分として 41.1g
現像促進剤W−2 固形分として 5.73g
エチルチオスルホン酸ナトリウム 0.5g
ベンゾトリアゾール 1.0g
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−235) 11.0g
6−イソプロピルフタラジン 12.8g
化合物Z 固形分として 9.8g
硬調化剤X−1 7.5g
硬調化剤X−2 5.8g
染料A(平均分子量15,000の低分子量ゼラチンとの混合液として添加)
783nmの光学濃度が0.3になる塗布量
(目安として 固形分0.40g)
ハロゲン化銀乳剤B Ag量として0.06mol
防腐剤として化合物A 塗布液中に40ppm
(塗布量として2.5mg/m2)
メタノールの塗布液中総溶媒量として 1質量%
エタノールの塗布液中総溶媒量として 2質量%
【0292】
《保護層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度として21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ塗布液のガラス転移温度を24℃とした、平均粒子サイズ116nm)943gに水を加え、化合物E 1.66g、オルトリン酸二水素ナトリウム・二水和物を固形分として1.82g、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒子サイズ7μm、平均粒子サイズの変動係数8%)1.59gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235)29.7gを加えて、保護層塗布液1880ml(メタノール溶媒を0.8質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは5.6、粘度は25℃で40mPa・sであった。
【0293】
実施例1の試料番号31〜33の画像形成層塗布液および保護層塗布液を上記の様に変更した以外は、実施例1と同様に本発明の化合物を使用して試料を作製し評価を実施したところ、実施例1と同様に本発明の構成の試料が良好な性能を示した。
【0294】
<実施例6>
実施例1〜5で使用した試料の露光を円筒外面方式マルチチャンネル(50mW半導体レーザーヘッド30機搭載、熱現像感光材料面上のレーザーエネルギー密度としては75μJ/cm2)で行い、比較例1と同様に熱現像した。その結果、本発明の熱現像感光材料は、実施例1〜5の結果を再現し、本発明の効果は明らかであった。
【0295】
<実施例7>
実施例1〜5で使用した試料を富士フイルム(株)製のドライフィルムプロセッサーFDS−6100Xを用いて熱現像処理を行い同様の評価を行った。その結果、実施例1〜5と同様の結果が得られ、本発明の効果は明らかであった。
【0296】
<実施例8>
実施例1の試料番号32の下塗り第一層の化合物−Bc−C、バック第四層の化合物−Bc−C、化合物−Bc−Dを下記の化合物に変更した以外は、実施例1と同様にして試料a〜iを作製し、評価を実施したところ、実施例1と同様に良好な性能を示した。
【0297】
【表3】
【0298】
【化37】
【0299】
<実施例9>
実施例1の試料番号31のハロゲン化乳剤、画像形成層塗布液、保護層塗布液、下層オーバーコート層塗布液、上層オーバーコート層塗布液をそれぞれ下記の塗布液に換え、さらに、バック/下塗り層のついたポリエチレンテレフタレ−ト支持体を下記の支持体に換えて、実施例1と同様に試料を作製した。
【0300】
《ハロゲン化銀乳剤Cの調製》
水700mlにアルカリ処理ゼラチン(カルシウム含有量として2700ppm以下)11gおよび臭化カリウム30mg、4−メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.3gを溶解して温度40℃にてpHを6.5に調整した後、硝酸銀18.6gを含む水溶液159mlと臭化カリウムを1mol/L、(NH4)2RhCl5(H2O)を3×10-6mol/LおよびK3IrCl6を2×10-5mol/Lで含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で6分30秒間かけて添加した。ついで、硝酸銀55.5gを含む水溶液476mlと臭化カリウムを1mol/LおよびK3IrCl6を2×10-5mol/L、(NH4)2RhCl5(H2O)を2×10-6mol/Lで含むハロゲン塩水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で28分30秒間かけて添加した。その後pHを下げて凝集沈降させて脱塩処理をし、平均分子量15,000の低分子量ゼラチン(カルシウム含有量として20ppm以下)51.1g加え、pH5.9、pAg8.0に調製した。得られた粒子は平均粒子サイズ0.08μm、投影面積変動係数10%、(100)面比率92%、K3IrCl6を2×10-5mol/Agmol、(NH4)2RhCl5(H2O)を8×10-6mol/Agmol含有する立方体粒子であった。
【0301】
こうして得たハロゲン化銀乳剤を小分けして、60℃に昇温して銀1mol当たりベンゼンチオスルホン酸ナトリウム76μmolを添加し、3分後にトリエチルチオ尿素71μmolを添加した後、100分間熟成し、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを5×10-4mol、化合物Aを0.17g加えた後、40℃に降温させた。
その後、40℃に温度を保ち、ハロゲン化銀1molに対して4.7×10-2molの臭化カリウム(水溶液として添加)、12.8×10-4molの増感色素A(エタノール溶液として添加)、7.3×10-3molの化合物B(メタノール溶液として添加)を攪拌しながら添加し、20分後に30℃に急冷してハロゲン化銀乳剤Cの調製を終了した。
【0302】
《画像形成層塗布液の調製》
上記で作製したベヘン酸銀分散物Aの銀1molに対して、以下のバインダー、素材、およびハロゲン化銀乳剤を添加して、水を加えて、画像形成層塗布液とした。完成後、減圧脱気を圧力0.54atmで45分間行った。塗布液のpHは7.7、粘度は25℃で50mPa・sであった。
【0303】
バインダー;SBRラテックス(重合開始剤Na 2 S 2 O 8 を使用して合成され、LiOHのp H調整剤で調整され、NH 4 + 含量が1.5ppm)
固形分として 397g
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)
−3,5,5−トリメチルヘキサン 固形分として 149.5g
有機ポリハロゲン化合物B 固形分として 36.3g
有機ポリハロゲン化合物C 固形分として 2.34g
エチルチオスルホン酸ナトリウム 0.47g
ベンゾトリアゾール 1.02g
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−235) 10.8g
6−イソプロピルフタラジン 12.8g
化合物Z 固形分として 9.7g
現像促進剤W−2 固形分として 5.6g
硬調化剤X−1 14.8g
染料A(平均分子量15,000の低分子量ゼラチンとの混合液として添加)
783nmの光学濃度が0.3になる塗布量
(目安として 固形分0.40g)
ハロゲン化銀乳剤B Ag量として0.06mol
防腐剤として化合物A 塗布液中に40ppm
(塗布量として2.5mg/m2)
メタノールの塗布液中総溶媒量として 1質量%
エタノールの塗布液中総溶媒量として 2質量%
pH調整剤としては、水酸化ナトリウムを用いた。
(なお、塗布膜のガラス転移温度は17℃であった。)
【0304】
《保護層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度として21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ塗布液のガラス転移温度を24℃とした、平均粒子サイズ116nm)943gに水を加え、化合物E 0.16g、有機ポリハロゲン化合物C水溶液114.8g、有機ポリハロゲン化合物Aを固形分として17.0g、オルトリン酸二水素ナトリウム・二水和物を固形分として0.69g、表4記載のフッ素化合物、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒子サイズ7μm、平均粒子サイズの変動係数8%)1.58gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235)33.7gを加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を0.8質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは5.5、粘度は25℃で45mPa・sであった。
【0305】
《下層オーバーコート層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度として21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ、塗布液のガラス転移温度を24℃とした、平均粒子サイズ74nm)625gに水を加え、化合物Cを0.23g、化合物Eを0.026g、化合物Fを11.7g、化合物Hを2.7g、表4記載のフッ素化合物を表4記載の量、およびポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235)11.5gを加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を0.1質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは2.6、粘度は25℃で30mPa・sであった。
【0306】
《上層オーバーコート層塗布液の調製》
保護層塗布液に用いたポリマーラテックス溶液112g、下層オーバーコート層塗布液に用いたポリマーラテックス溶液335gに水を加え、カルナヴァワックス(中京油脂(株)製、セロゾール524:シリコーン含有量として5ppm未満)30質量%溶液18.0g、化合物Cを0.15g、化合物Eを1.85g、化合物Gを1.0g、表4記載のフッ素化合物を表4記載の量、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒子サイズ7μm、平均粒子サイズの変動係数8%)22.4gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235)25.6gを加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を1.1質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは5.3、粘度は25℃で25mPa・sであった。
【0307】
《バック/下塗り層のついたポリエチレンテレフタレ−ト(PET)支持体の作製》
(1)PET支持体の作製
テレフタル酸とエチレングリコ−ルを用い、常法に従い、固有粘度IV=0.66(フェノ−ル/テトラクロルエタン=6/4(重量比)中25℃で測定)のポリエチレンテレフタレ−トを得た。これをペレット化した後、130℃で4時間乾燥した後、300℃で溶融後T型ダイから押し出した後急冷し、熱固定後の膜厚が120μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。
これを周速の異なるロールを用い、3.3倍に縦延伸、ついでテンターで4.5倍に横延伸を実施した。このときの温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後、これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後、テンターのチャック部をスリットした後、両端にナール加工を行い、4.8kg/cm2で巻きとった。このようにして、幅2.4m、長さ3500m、厚み120μmのロ−ル状のPET支持体を得た。
【0308】
(2)下塗り層およびバック層の作製
▲1▼下塗り第一層
以下に示す組成の塗布液を9.7ml/m2となる様に支持体上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、185℃で30秒乾燥した。
【0309】
ラテックス−A 280g
KOH 0.5g
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ:2μm、平均粒子サイズの変動係数7%)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 1.8g
化合物−Bc−C 0.06g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0310】
▲2▼下塗り第二層
以下に示す組成の塗布液を8.3ml/m2となる様に下塗り第一層の上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。
【0311】
脱イオン処理ゼラチン 10g
(Ca2+含量0.6ppm、ゼリ−強度230g)
酢酸(20%水溶液) 10g
化合物−Bc−A 0.04g
メチルセルロ−ス(2%水溶液) 25
エマレックス710(日本エマルジョン(株)製) 0.3g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0312】
▲3▼バック第一層
前記下塗り層塗布面とは反対側の面に0.375kV・A・分/m2のコロナ放電処理を施し、その面に以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となる様に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、185℃で30秒乾燥した。
【0313】
【0314】
▲4▼バック第二層
以下に示す組成の塗布液を9.7ml/m2となるようにバック第一層上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。
【0315】
ラテックス−A 280g
KOH 0.5g
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ:2μm、平均粒子サイズの変動係数7%)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 1.8g
化合物−Bc−C 0.06g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0316】
▲5▼バック第三層
以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となるようにバック第二層上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。
【0317】
脱イオン処理ゼラチン 10g
(Ca2+含量0.6ppm、ゼリー強度230g)
酢酸(20%水溶液) 10g
化合物−Bc−A 0.04g
メチルセルロ−ス(2%水溶液) 25g
エマレックス710(日本エマルジョン(株)製) 0.3g
塩化カリウム 1.0g
臭化カリウム 1.0g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0318】
▲6▼バック第四層
以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となる様にバック第三層上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。
【0319】
ジュリマ−ET410(30%水分散物、日本純薬(株)製) 23g
ケミパールS120 135g
(27%水分散物、三井石油化学(株)製)
アルカリ処理ゼラチン 12.7g
(分子量約10000、Ca2+含量30ppm)
化合物−Bc−C 0.6g
化合物−Bc−D 0.25g
セロゾ−ル524(30%水溶液、中京油脂(株)製) 12g
デナコールEX521 1.8g
(水溶性エポキシ化合物、ナガセ化成工業(株)製)
ポリメチルメタクリレート 7.7g
(10%水分散物、平均粒子サイズ5μm、平均粒子の変動係数7%)
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0320】
得られた試料について、実施例1と同様の評価を実施した。その結果を、表4に示す。
表4から明らかな様に本発明の試料は、塗膜の欠陥がなく、かつ感光材料の保存性に優れた画像が得られることがわかる。
【0321】
【表4】
【0322】
【発明の効果】
本発明によれば、特に写真製版用のスキャナー、イメージセッター用として、塗布面状が改良され、かつ使用前保存時のカブリ上昇を低減し、低カブリ、高Dmax、高γの熱現像感光材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の熱現像感光材料の熱現像処理に用いられる熱現像機の一構成例を示す側面図である。
【符号の説明】
10 熱現像画像形成材料
11 搬入ローラー対
12 搬出ローラー対
13 ローラー
14 平滑面
15 加熱ヒーター
16 ガイド板
A 予備加熱部
B 熱現像処理部
C 徐冷部
Claims (14)
- 支持体上に、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、硬調化剤およびバインダーを含有する熱現像感光材料において、下記一般式(b1)で表されるフッ素化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
- 前記R1およびR2におけるRafが、炭素数2〜4のパーフルオロアルキレン基であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱現像感光材料。
- 感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層を有する側、及びその反対側の何れかの表面のX線光電子分光法で求めたフッ素原子と炭素原子との光電子エネルギーのピーク強度比が、0.05〜5.0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
- 前記感光性ハロゲン化銀が750〜1400nmの範囲で分光増感されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
- 感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層を有する側のNH4 +イオン含量が、支持体1m2当たり0.06mmol以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
- 感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層に用いるバインダーの50質量%以上が、ポリマーラテックスであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
- 前記ポリマーラテックスが、該ポリマーラテックス中のNH4 +イオン含量が固形分に対して50ppm以下であるポリマーラテックスであることを特徴とする請求項7に記載の熱現像感光材料。
- 前記ポリマーラテックスが、ガラス転移温度が−30〜40℃のポリマーラテックスであることを特徴とする請求項7または8に記載の熱現像感光材料。
- 前記ポリマーラテックスの重合反応後のpH調整剤が、NH4 +イオンを含有しないアルカリ化合物であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
- 前記pH調整剤が、LiOH、NaOHまたはKOHの少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項10に記載の熱現像感光材料。
- 前記一般式(b1)で表されるフッ素系化合物を支持体の画像形成層側の最外層もしくはバック層側の最外層のいずれかに含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
- 前記支持体が下塗り層を少なくとも有する支持体であって、該下塗り層にフッ素系界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
- 前記下塗り層中の前記フッ素系界面活性剤が、下記一般式(a1)で表されるフッ素化合物および前記一般式(b1)で表されるフッ素系化合物から選択されるフッ素化合物であることを特徴とする請求項13に記載の熱現像感光材料。
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