JP2004302146A - 熱現像画像記録材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】重ねたときに相互に接着したり、キズがついたりし難くて、搬送性が良好な熱現像画像記録材料を提供すること。
【解決手段】支持体の両面に各々1層以上の構成層を有する熱現像画像記録材料において、少なくとも片面の最外層が水性ポリエステル樹脂とマット剤を含有し、かつ、該最外層のバインダーの塗布量が0.5〜2g/m2であることを特徴とする熱現像画像記録材料。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体の両面に各々1層以上の構成層を有する熱現像画像記録材料において、少なくとも片面の最外層が水性ポリエステル樹脂とマット剤を含有し、かつ、該最外層のバインダーの塗布量が0.5〜2g/m2であることを特徴とする熱現像画像記録材料。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱現像画像記録材料に関するものであり、熱現像処理時の搬送性が良好で、キズの付きにくい熱現像画像記録材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、印刷分野では、環境保全や省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、従来のような現像、定着、水洗といった工程を経ることの無い記録材料が求められている。
そのような要求に応える記録材料として、熱現像処理法を用いて画像を形成する熱現像画像記録材料が知られている。例えば、熱現像処理法を用いて写真画像を形成する熱現像写真感光材料は、特許文献1、特許文献2、非特許文献1等に開示されている。
【0003】
このような方式に基づく熱現像画像記録材料は、還元可能な銀源(たとえば有機銀塩)、感光性触媒(たとえばハロゲン化銀)、および還元剤を有機バインダーのマトリックス中に分散した状態で含有しており、熱処理のみで画像が形成されると言う利点があるため医療分野や、印刷新聞の製版分野で利用されている。
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,152,904号明細書
【特許文献2】米国特許第3,457,075号明細書
【非特許文献1】D.モーガン(Morgan)とB.シェリー(Shely)「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウォールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp)編集、第2項、1969年
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、熱現像方式を用いた画像記録材料は通常80〜150℃で熱現像されるため、印刷用途に使用する際に従来の写真感光材料の様にバインダーとしてゼラチンを使用すると、ゼラチンの収縮により寸度が大きく変化してしまうという問題が生じる。そこで、加熱により収縮しないポリマーバインダーを使用することによって、寸法変化の問題を実用上解決しているが、ロールやシートなどの製品形態で30℃以上の高温下に放置すると最外層同士が接着を起こすという別の問題を生じている。接着を防止するために、最外層にマット剤を添加する方法が知られているが、ゼラチンを用いないバインダーにマット剤を使うと、取り扱い時にマット剤が脱落しやすいという問題があった。
また、高温で現像することから、搬送部での擦れによるスリキズや、バインダーの粘着による搬送不良等の問題もあった。
【0006】
これらの従来技術の問題点を考慮して、本発明は、重ねたときに相互に接着しにくいうえ、キズがつきにくく、搬送性が良好な熱現像画像記録材料を提供することを目的とした。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、熱現像画像記録材料の最外層に特定の材料を使用することにより、目的を達成しうることを見出して、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、支持体の両面に各々1層以上の構成層を有する熱現像画像記録材料において、少なくとも片面の最外層が水性ポリエステル樹脂とマット剤を含有し、かつ、該最外層のバインダーの塗布量が0.5〜2g/m2であることを特徴とする熱現像画像記録材料を提供する。本発明の熱現像画像記録材料は、水性ポリエステル樹脂を含有する最外層が、支持体に対して画像を形成する層を有する側とは反対側に位置することが好ましい。また、水性ポリエステル樹脂を含有する最外層が、フッ素系界面活性剤およびすべり剤を含有することが好ましい。
【0009】
本発明の熱現像画像記録材料は、熱現像部が、搬送される熱現像画像記録材料の画像形成層側およびバック層側に加熱部材を備えるとともに、画像形成層側のみに搬送ローラーを備える熱現像機で熱現像処理を行うことができる。また、幅550〜650mmおよび長さ1〜65mのシート状で、その一部または全部が円筒形状のコア部材に画像形成層を外側にして巻き取られている形態をとることができる。また、本発明の熱現像画像記録材料は、20mm/秒〜200mm/秒で熱現像処理することができる。さらに、本発明の熱現像画像記録材料は750nm〜850nmに吸収極大を持つアンチハレーション染料を含有しており、かつ、750nm〜850nmの波長の光で露光し、熱現像後に600nm〜700nmの波長の光で記録情報を読み取ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の熱現像画像記録材料について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
本発明の熱現像画像記録材料は、支持体の両面に各々1層以上の構成層を有していて、少なくとも片面の最外層に、水性ポリエステル樹脂とマット剤を含有することを特徴とする。
最外層に使用される水性ポリエステル樹脂は、水性基を有するポリエステルであって、水溶性あるいは水分散性を有するものをいう。本発明で用いられる水性ポリエステル樹脂は、水分散されたラテックスであっても、有機溶媒に均一溶解された樹脂でも良い。本発明で用いられる水性ポリエステル樹脂は、平均分子量が4,000〜150,000であるものが好ましい。
【0012】
水性ポリエステル樹脂は公知の製造技術によりジカルボン酸とジオールとをエステル化(エステル交換)、重縮合させることによって製造されるが、その製造方法についてはなんら限定されるものではない。
ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタリンジカルボン酸のような芳香族ジカルボン酸またはそのエステルを主体とすることが好ましい。これは、芳香族ジカルボン酸の芳香核が、疎水性のプラスチックと親和性が大きいために密着性が向上する利点があるからである。特にテレフタル酸を用いた水性ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルの成型物に対して密着性が大きいため、好ましい水性ポリエステル樹脂である。
【0013】
本発明に使用される水性ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分としては、上記のような芳香族ジカルボン酸、またはそのエステルを使用することが好ましいが、これら以外にアジピン酸、コハク酸、セバチン酸、ドデカン二酸のような脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキシルジカルボン酸のような脂環式ジカルボン酸、ヒドロキシ安息香酸のようなヒドロキシカルボン酸またはこれらのエステルを、ジカルボン酸成分としてもしくはその一部として使用することもできる。
【0014】
エステルを使用する場合には、メチルエステル、エチルエステル等の低級アルキルエステルを使用することが好ましい。これらのエステルはモノエステルでもジエステルでも差支えない。
【0015】
一方、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール類が使用される。
【0016】
本発明で用いられる水性ポリエステルは、水溶性あるいは水分散性を付与するために分子中に親水基としてスルホン酸塩基あるいはカルボン酸塩基を含有するように重合して調製したものであることが好ましい。スルホン酸塩を含有させるためには、例えば5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分をジカルボン酸成分の一部として用いる方法が挙げられる。その使用量はジカルボン酸成分中に2〜15モル%が好ましい。
【0017】
カルボン酸塩を含有させるための具体例としては、ポリエステル樹脂の製造時に縮合酸成分として3官能以上の多価カルボン酸を使用したり、ポリエステル樹脂に重合性の不飽和カルボン酸をグラフトする方法などによりカルボン酸含有のポリエステルを作製し、アルカリ金属、各種アミン類、アンモニウム系化合物等とともに水溶性塩を形成する物質との塩類とする方法が挙げられる。
【0018】
水性ポリエステル樹脂中のカルボン酸塩の量は、生成したポリエステル樹脂の酸価が15〜250KOHmg/gの間となる量であることが好ましい。
【0019】
本発明で用いる水性ポリエステル樹脂は、分子量が4,000〜150,000であることが好ましい。分子量が4,000以下では耐水性、耐ブロッキング性、密着性等の樹脂物性が低下する傾向があり、150,000以上では水への均一な溶解もしくは分散が難しく、時間の経過とともにゲル化する傾向がある。水性ポリエステル樹脂の分子量は5,000〜50,000であることが特に好ましい。
【0020】
本発明で用いる水性ポリエステル樹脂は、通常は、水溶液あるいは水分散液にして用いる。水分散液にする手段としては、スルホン酸塩含有ポリエステル樹脂の場合は、攪拌下に好ましくは50〜90℃の温水に溶解若しくは分散させる方法を採用することが好ましい。このとき、樹脂の溶解もしくは分散を容易にするために水溶性有機溶剤を併用してもよい。水溶性有機溶剤としては、低級アルコール類、多価アルコール類およびそのアルキルエーテルまたはアルキルエステル類などが挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等を使用することができる。
【0021】
また、カルボン酸塩含有ポリエステル樹脂の場合は、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、各種アミン類等のアルカリ性化合物を添加した好ましくは50〜90℃の温水に、攪拌下に溶解もしくは分散させることができる。この場合も上記水溶性有機溶剤を併用してもよい。
【0022】
具体的には、ペスレジンA515G、A615G(以上高松油脂(株)製)、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD−size、WMS(以上イーストマンケミカル製)などが挙げられる。また、乳化分散に適したポリエステル重合体としては、バイロン200、103、300、500、600(以上東洋紡(株)製)などが挙げられる。なかでも、スルホン酸基を導入した水性ポリエステル−アクリル複合樹脂が特に好ましい。
【0023】
最外層に用いられるマット剤としては、特開平11−84573号公報の段落番号0052〜0059に記載のものを好ましく用いることができる。
本発明における熱現像画像記録材料の最外層表面のベック平滑度は、3000秒以下であり、好ましくは100〜2000秒である。ベック平滑度は、マット剤の粒子サイズおよび含有量を適宜調整することによりコントロールすることができる。
マット剤のサイズは3〜10μmであることが好ましく、3〜8μmであることがより好ましい。マット剤のサイズが大きいと取り扱い時に脱落が発生しやすい。
【0024】
本発明の熱現像画像記録材料の最外層にはフッ素系界面活性剤を好ましく含有させることができる。
【0025】
本発明に有用なフッ素系界面活性剤は、全部または一部がフッ素原子で置換されている炭素原子数が2〜20の炭化水素鎖と、親水性基、例えば金属塩のアニオン性基、第4級オニウム塩のアニオン基、ポリアルキレンオキシド基、ベタイン、第4級アンモニウムカチオン基等を有する化合物で、例えば英国特許第1,330,356号明細書、同第1,542,631号明細書、米国特許第3,666,478号、同第3,888,678号明細書、特公昭52−26687号公報、特開昭48−43130号公報、同49−46733号公報、同51−32322号公報、特開平2−12145号公報、同3−24657号公報、特公平3−27099号公報に記載されているフッ素系界面活性剤を挙げることができる。以下に本発明に有用なフッ素系界面活性剤の具体例を示すが、本発明で用いることができるフッ素系界面活性剤はこれらに限定されるものではない。
【0026】
【化1】
【0027】
【化2】
【0028】
フッ素系界面活性剤の添加量は、熱現像画像記録材料の片面1m2当たり0.1〜100mgであり、好ましくは0.5〜50mgである。
【0029】
本発明の熱現像画像記録材料の最外層には、滑り剤を含有させることができる。
【0030】
有用な滑り剤としては、例えば英国特許第955,061号明細書、同第1,143,118号明細書、米国特許第3,042,522号明細書、同第3,080,317号明細書、同第4,004,927号明細書、同第4,047,958号明細書、同第3,489,576号明細書、特開昭60−140341号公報に記載のシリコン系滑り剤、米国特許第2,454,043号明細書、同第2,732,305号明細書、同第2,976,148号明細書、同第3,206,311号明細書、独国特許第1,284,295号明細書、同第1,284,294号明細書に記載の高級脂肪酸系、高級脂肪アルコール系、高級脂肪酸アミド系滑り剤、英国特許第1,263,722号明細書、米国特許第3,933,516号明細書に記載の金属石鹸、米国特許第2,588,765号明細書、同第3,121,060号明細書、英国特許第1,198,387号明細書に記載の高級脂肪酸エステル系、高級脂肪アルコールのエーテル系滑り剤、米国特許第3,502,437号明細書、同第3,042,222号明細書に記載のタウリン系滑り剤等を挙げることができる。以下に具体例を示すが、本発明で用いることができる滑り剤はこれらに限定されるものではない。
【0031】
【化3】
【0032】
【化4】
【0033】
【化5】
【0034】
滑り剤の使用量は、最外層のゼラチン付量、マット剤の種類等により最適量は異なるが、通常、熱現像画像記録材料の片面1m2当たり5〜200mgであり、好ましくは15〜150mgである。
【0035】
本発明の熱現像画像記録材料は、PS版へ画像を複製する目的のほかに、画像情報を記録するバーコードが記録されていることが好ましい。自動化された工程においては、材料の確認も自動で行われる必要がある。バーコードは、一般的に使用されているフォーマットであるので、利便性もある。通常、バーコードリーダーは、780nm付近で読み取る機種と670nm付近で読み取る機種があるが、780nm付近では、濃淡差の読み取りがうまくいかない場合も多く、本発明の熱現像画像記録材料の場合、700nm以下で読み取ることが好ましく、600〜700nmで読み取ることがより好ましい。
【0036】
また、本発明の熱現像画像記録材料が、テープによって搬送されたり、テープでガイドベースに固定されて搬送された後に、トンボと呼ばれる画像で位置あわせが行われるが、その検出波長は、600nm〜800nmと多岐にわたる。700nm〜800nmの検出波長の場合、位置合わせに時間がかかる。位置合わせに時間がかかるとその分だけ搬送トラブルが発生する機会が多くなり、本発明の熱現像画像記録材料の場合、600nm〜700nmで読み取ることが好ましい。
【0037】
本発明の熱現像画像記録材料には有機銀塩を用いることができる。本発明で用いる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)および還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は、還元可能な銀イオン源を含む任意の有機物質であってよい。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪カルボン酸の銀塩が好ましい。配位子が4.0〜10.0の範囲の錯体安定度定数を有する有機または無機銀塩の錯体も好ましい。銀供給物質は、好ましくは画像形成層の約5〜70質量%を構成することができる。好ましい有機銀塩として、カルボキシル基を有する有機化合物の銀塩を挙げることができる。具体的には、脂肪族カルボン酸の銀塩および芳香族カルボン酸の銀塩を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。脂肪族カルボン酸の銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、リノール酸銀、酪酸銀および樟脳酸銀、これらの混合物などを挙げることができる。
【0038】
本発明においては、上記の有機酸銀ないしは有機酸銀の混合物の中でも、ベヘン酸銀含有率75mol%以上の有機酸銀を用いることが好ましく、ベヘン酸銀含有率85mol%以上の有機酸銀を用いることがさらに好ましい。ここでベヘン酸銀含有率とは、使用する有機酸銀に対するベヘン酸銀のモル分率を示す。本発明に用いる有機酸銀中に含まれるベヘン酸銀以外の有機酸銀としては、上記の例示有機酸銀を好ましく用いることができる。
【0039】
本発明に好ましく用いられる有機酸銀は、上記の有機酸のアルカリ金属塩(Na塩、K塩、Li塩等が挙げられる)溶液または懸濁液と硝酸銀を反応させることにより調製される。これらの調製方法については、特開2000−292882号公報の段落番号0019〜0021に記載の方法を用いることができる。
【0040】
本発明においては、液体を混合するための密閉手段の中に硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液を添加することにより有機酸銀を調製する方法を好ましく用いることができる。具体的には、特開2001−33907号公報に記載されている方法を用いることができる。
本発明においては有機酸銀の調製時に、硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液、あるいは反応液には水に可溶な分散剤を添加することができる。ここで用いる分散剤の種類および使用量については、特開2000−305214号公報の段落番号0052に具体例が記載されている。
【0041】
本発明に用いる有機酸銀は第3アルコールの存在下で調製することが好ましい。第3アルコールとしては、好ましくは総炭素数15以下の化合物が好ましく、10以下の化合物が特に好ましい。好ましい第3アルコールの例としては、tert−ブタノール等が挙げられるが、本発明で使用することができる第3アルコールはこれに限定されない。
本発明に用いる第3アルコールの添加時期は有機酸銀調製時のいずれのタイミングでもよいが、有機酸アルカリ金属塩の調製時に添加して、有機酸アルカリ金属塩を溶解して用いることが好ましい。また、本発明で用いる第3アルコールは、有機酸銀調製時の溶媒としての水に対して質量比で0.01〜10の範囲で使用することができるが、0.03〜1の範囲で使用することが好ましい。
【0042】
本発明に用いることができる有機銀塩の形状やサイズは特に制限されないが、特開2000−292882号公報の段落番号0024に記載のものを用いることが好ましい。有機銀塩の形状は、有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像から求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)は好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。測定方法としては、例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。この測定法での平均粒子サイズとしては0.05μm〜10.0μmの固体微粒子分散物が好ましい。より好ましい平均粒子サイズは0.1μm〜5.0μm、さらに好ましい平均粒子サイズは0.1μm〜2.0μmである。
【0043】
本発明に用いる有機銀塩は、脱塩したものであることが好ましい。脱塩法は特に制限されず、公知の方法を用いることができるが、遠心濾過、吸引濾過、限外濾過、凝集法によるフロック形成水洗等の公知の濾過方法を好ましく用いることができる。限外濾過の方法については、特開2000−305214号公報に記載の方法を用いることができる。
【0044】
本発明では、高S/Nで、粒子サイズが小さく、凝集のない有機銀塩固体分散物を得る目的で、画像形成媒体である有機銀塩を含み、かつ感光性銀塩を実質的に含まない水分散液を高速流に変換した後、圧力降下させる分散法を用いることが好ましい。これらの分散方法については特開2000−292882号公報の段落番号0027〜0038に記載の方法を用いることができる。
【0045】
本発明で用いる有機銀塩固体微粒子分散物の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。具体的には、体積荷重平均直径の標準偏差を体積荷重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が80%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。
【0046】
本発明に用いる有機銀塩固体微粒子分散物は、少なくとも有機銀塩と水からなるものである。有機銀塩と水との割合は特に限定されるものではないが、有機銀塩の全体に占める割合は5〜50質量%であることが好ましく、特に10〜30質量%の範囲が好ましい。前述の分散助剤を用いることは好ましいが、粒子サイズを最小にするのに適した範囲で最少量使用するのが好ましく、有機銀塩に対して0.5〜30質量%、特に1〜15質量%の範囲が好ましい。
【0047】
本発明で用いる有機銀塩は所望の量で使用できるが、銀量として0.1〜5g/m2が好ましく、さらに好ましくは0.5〜3g/m2であり、最も好ましくは1〜2g/m2である。
【0048】
本発明にはCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンを非感光性有機銀塩へ添加することが好ましい。Ca、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの非感光性有機銀塩への添加については、ハロゲン化物でない、水溶性の金属塩の形で添加することが好ましく、具体的には硝酸塩や硫酸塩などの形で添加することが好ましい。ハロゲン化物での添加は処理後の感光材料の光(室内光や太陽光など)による画像保存性、いわゆるプリントアウト性を悪化させるので好ましくない。このため、本発明ではハロゲン化物でない、水溶性の金属塩の形で添加することが好ましい。
【0049】
本発明に好ましく用いるCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの添加時期としては、該非感光性有機銀塩の粒子形成後であって、粒子形成直後、分散前、分散後および塗布液調製前後など塗布直前までであればいずれの時期でもよく、好ましくは分散後、塗布液調製前後である。
【0050】
本発明におけるCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの添加量としては、非感光性有機銀1molあたり10−3〜10−1molが好ましく、特に5×10−3〜5×10−2molが好ましい。
【0051】
本発明の熱現像画像記録材料には、感光性ハロゲン化銀を用いることができる。
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀は、ハロゲン組成として特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀を用いることができ、好ましくは塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀である。感光性ハロゲン化銀乳剤の粒子形成については、特開平11−119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法で粒子形成することができるが、特にこの方法に限定されるものではない。
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、十四面体、平板状、球状、棒状、ジャガイモ状等を挙げることができるが、本発明においては特に立方体状粒子あるいは平板状粒子が好ましい。粒子のアスペクト比、面指数など粒子形状の特徴については、特開平11−119374号公報の段落番号0225に記載されているものと同じである。また、ハロゲン組成の分布はハロゲン化銀粒子の内部と表面において均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を用いる場合は、好ましくは2〜5重構造、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子である。また塩化銀または塩臭化銀粒子の表面に臭化銀を局在させる技術も用いることができる。ハロゲン組成の分布は粒子の内部と表面において均一であることが好ましい。
【0052】
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀のハロゲン化銀粒子の粒子サイズは、特に制限なく用いることができるが、0.12μm以下が好ましく、さらに0.01〜0.10μmが好ましい。本発明で用いるハロゲン化銀粒子の粒子サイズ分布は、単分散度の値が30%以下であり、好ましくは1〜20%であり、さらに5〜15%である。ここで単分散度は、粒子サイズの標準偏差を平均粒子サイズで割った値の百分率(%)(変動係数)として定義されるものである。なおハロゲン化銀粒子の粒子サイズは、便宜上、立方体粒子の場合は稜長で表し、その他の粒子(八面体、十四面体、平板状など)は投影面積円相当直径で算出する。
【0053】
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表の第VII族あるいは第VIII族の金属または金属錯体を含有する。具体的な金属錯体の構造としては特開平7−225449号公報等に記載された構造の金属錯体を用いることができるが、周期律表の第VII族あるいは第VIII族の金属または金属錯体の中心金属として好ましくはロジウム、レニウム、ルテニウム、オスニウム、イリジウムである。特に好ましい金属錯体は、(NH4)3Rh(H2O)Cl5、K2Ru(NO)Cl5、K3IrCl6、K4Fe(CN)6である。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属および異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1molに対し1×10−9mol〜1×10−3molの範囲が好ましく、1×10−8mol〜1×10−4molの範囲がより好ましい。これら重金属の種類、添加方法に関しては、特開平11−119374号公報の段落番号0227〜0240に記載されている。
【0054】
感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている水洗法により脱塩することができる。
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀乳剤は化学増感することが好ましい。化学増感については、特開平11−119374号公報の段落番号0242〜0250に記載されている方法を用いることが好ましい。
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開EP293917A号公報に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加することが好ましい。
【0055】
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀に含有するゼラチンとしては、感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持するために、低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。低分子量ゼラチンの分子量は、500〜60,000であり、好ましくは分子量1,000〜40,000である。これらの低分子量ゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、脱塩処理後の分散時に使用することが好ましい。さらには、粒子形成時は通常のゼラチン(分子量100,000程度)を使用し、脱塩処理後の分散時に低分子量ゼラチンを使用することがより好ましい。
【0056】
分散媒の濃度は0.05〜20質量%にすることができるが、取り扱い上5〜15質量%の濃度域が好ましい。ゼラチンの種類としては、アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、フタル化ゼラチンの如き修飾ゼラチンが用いられるが、アルカリ処理ゼラチン、フタル化ゼラチンの如き修飾ゼラチンが好ましい。
【0057】
本発明に用いる熱現像画像記録材料中のハロゲン化銀乳剤は、1種だけを用いてもよいし、2種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)を併用してもよいが、本発明では1種のハロゲン化銀乳剤を用いることが好ましい。
【0058】
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀の使用量としては有機銀塩1molに対して感光性ハロゲン化銀0.01mol〜0.5molが好ましく、0.02mol〜0.3molがより好ましく、0.03mol〜0.25molが特に好ましい。別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法および混合条件については、それぞれ調製を終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等がある。また、混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましい方法である。本発明では、別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩を低速(100〜200rpm)プロペラ攪拌機で混合することが好ましい。
【0059】
本発明に用いることができる増感色素としては、ハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので、露光光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。例えば、550nm〜750nmの波長領域を分光増感する色素としては、特開平10−186572号公報の一般式(II)で表される色素が挙げられ、具体的にはII−6、II−7、II−14、II−15、II−18、II−23、II−25の色素を好ましい色素として例示することができる。また、750〜1400nmの波長領域を分光増感する色素としては、特開平11−119374号公報の一般式(I)で表される色素が挙げられ、具体的には(25)、(26)、(30)、(32)、(36)、(37)、(41)、(49)、(54)の色素を好ましい色素として例示することができる。さらに、J−bandを形成する色素として、米国特許第5,510,236号明細書、同第3,871,887号明細書の実施例5に記載の色素、特開平2−96131号公報、特開昭59−48753号公報に開示されている色素を好ましい色素として例示することができる。これらの増感色素は単独で用いてもよく、2種以上組合せて用いてもよいが、本発明では単独で用いることが好ましい。
【0060】
これら増感色素の添加方法は、特開平11−119374号公報の段落番号0106に記載されている方法が挙げられるが、エタノール、メタノールに溶解して添加することが好ましい。
本発明における増感色素の添加量は、感度やカブリの性能に合わせて所望の量にすることができるが、感光層のハロゲン化銀1mol当たり10−6〜1molが好ましく、さらに好ましくは10−4〜10−1molである。
【0061】
本発明では分光増感効率を向上させるため、強色増感剤を用いることが好ましい。本発明に用いる強色増感剤としては、欧州特許公開EP587338A号公報、米国特許第3,877,943号明細書、同第4,873,184号明細書に開示されている化合物、複素芳香族あるいは脂肪族メルカプト化合物、複素芳香族ジスルフィド化合物、スチルベン、ヒドラジン、トリアジンから選択される化合物などが挙げられる。
好ましい強色増感剤は、特開平5−341432号公報に開示されている複素芳香族メルカプト化合物、複素芳香族ジスルフィド化合物、特開平4−182639号公報の一般式(I)あるいは(II)で表される化合物、特開平10−111543号公報の一般式(I)で表されるスチルベン化合物、特開平11−109547号公報の一般式(I)で表わされる化合物である。特に好ましい強色増感剤は、特開平5−341432号公報のM−1〜M−24の化合物、特開平4−182639号公報のd−1)〜d−14)の化合物、特開平10−111543号公報のSS−01〜SS−07の化合物、特開平11−109547号公報の31、32、37、38、41〜45、51〜53の化合物である。
これらの強色増感剤の添加量は、乳剤層中にハロゲン化銀1mol当たり10−4〜1molの範囲が好ましく、ハロゲン化銀1mol当たり0.001〜0.3molの範囲がより好ましい。
【0062】
本発明の熱現像画像記録材料にはリンを含む化合物として、五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩を併用して用いることが特に好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどがある。
本発明において好ましく用いることができる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩は、少量で所望の効果を発現するという点から画像形成層あるいはそれに隣接するバインダー層に添加する。
リンを含む化合物および五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩の使用量(熱現像画像記録材料1m2あたりの塗布量)は感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1〜500mg/m2が好ましく、0.5〜100mg/m2がより好ましい。
【0063】
本発明の熱現像画像記録材料は、好ましくは有機銀塩のための還元剤を含む。有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質、好ましくは有機物質である。フェニドン、ハイドロキノンおよびカテコールなどの従来の写真現像剤は有用であるが、ヒンダードフェノール還元剤が好ましい。還元剤は、画像形成層を有する面の銀1molに対して0.05〜5mol含まれることが好ましく、0.1〜2molで含まれることがさらに好ましい。還元剤の添加層は支持体に対して画像形成層側のいかなる層でもよい。画像形成層以外の層に添加する場合は銀1molに対して0.1〜10molと多めに使用することが好ましい。また、還元剤は現像時のみ有効に機能するように誘導化されたいわゆるプレカーサーであってもよい。
【0064】
有機銀塩を利用した熱現像画像記録材料においては広範囲の還元剤を使用することができる。例えば、特開昭46−6074号公報、同47−1238号公報、同47−33621号公報、同49−46427号公報、同49−115540号公報、同50−14334号公報、同50−36110号公報、同50−147711号公報、同51−32632号公報、同51−1023721号公報、同51−32324号公報、同51−51933号公報、同52−84727号公報、同55−108654号公報、同56−146133号公報、同57−82828号公報、同57−82829号公報、特開平6−3793号公報、米国特許第3,679,426号明細書、同第3,751,252号明細書、同第3,751,255号明細書、同第3,761,270号明細書、同第3,782,949号明細書、同第3,839,048号明細書、同第3,928,686号明細書、同第5,464,738号明細書、独国特許第2,321,328号明細書、欧州特許公開EP692732A号公報などに開示されている還元剤を用いることができる。例えば、フェニルアミドオキシム、2−チエニルアミドオキシムおよびp−フェノキシフェニルアミドオキシムなどのアミドオキシム;例えば4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンズアルデヒドアジンなどのアジン;2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオニル−β−フェニルヒドラジンとアスコルビン酸との組合せのような脂肪族カルボン酸アリールヒドラジドとアスコルビン酸との組合せ;ポリヒドロキシベンゼンと、ヒドロキシルアミン、レダクトンおよび/またはヒドラジンの組合せ(例えばハイドロキノンと、ビス(エトキシエチル)ヒドロキシルアミン、ピペリジノヘキソースレダクトンまたはホルミル−4−メチルフェニルヒドラジンの組合せなど);フェニルヒドロキサム酸、p−ヒドロキシフェニルヒドロキサム酸およびβ−アリニンヒドロキサム酸などのヒドロキサム酸;アジンとスルホンアミドフェノールとの組合せ(例えば、フェノチアジンと2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノールなど);エチル−α−シアノ−2−メチルフェニルアセテート、エチル−α−シアノフェニルアセテートなどのα−シアノフェニル酢酸誘導体;2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、6,6’−ジブロモ−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチルおよびビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタンに例示されるようなビス−β−ナフトール;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体(例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンまたは2’,4’−ジヒドロキシアセトフェノンなど)の組合せ;3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロンなどの5−ピラゾロン;ジメチルアミノヘキソースレダクトン、アンヒドロジヒドロアミノヘキソースレダクトンおよびアンヒドロジヒドロピペリドンヘキソースレダクトンに例示されるようなレダクトン;2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノールおよびp−ベンゼンスルホンアミドフェノールなどのスルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオンなど;2,2−ジメチル−7−tert−ブチル−6−ヒドロキシクロマンなどのクロマン;2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジンなどの1,4−ジヒドロピリジン;ビスフェノール(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−エチリデン−ビス(2−tert−ブチル−6−メチルフェノール)、1,1,−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサンおよび2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなど);アスコルビン酸誘導体(例えば、パルミチン酸1−アスコルビル、ステアリン酸アスコルビルなど);ならびにベンジルおよびビアセチルなどのアルデヒドおよびケトン;3−ピラゾリドンおよびある種のインダン−1,3−ジオン;クロマノール(トコフェロールなど)などがある。特に好ましい還元剤は、ビスフェノール、クロマノールである。
【0065】
本発明で還元剤を用いる場合、それは、水溶液、有機溶媒溶液、粉末、固体微粒子分散物、乳化分散物などいかなる方法で添加してもよいが、この中でも固体微粒子分散物として添加することが好ましい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際には当技術分野で周知の分散助剤を用いることが好ましく、具体的には特開2001−83657公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。
【0066】
画像を向上させる「色調剤」として知られる添加剤を含ませると光学濃度が高くなることがある。また、色調剤は黒色銀画像を形成させるうえでも有利になることがある。色調剤は支持体に対して画像形成層側の層に銀1molあたりの0.01〜1molの量含ませることが好ましく、0.02〜0.5mol含ませることがさらに好ましい。また、色調剤は現像時のみ有効に機能するように誘導化されたいわゆるプレカーサーであるとさらに好ましい。
有機銀塩を利用した熱現像画像記録材料においては広範囲の色調剤を使用することができる。例えば、特開昭46−6077号公報、同47−10282号公報、同49−5019号公報、同49−5020号公報、同49−91215号公報、同49−91215号公報、同50−2524号公報、同50−32927号公報、同50−67132号公報、同50−67641号公報、同50−114217号公報、同51−3223号公報、同51−27923号公報、同52−14788号公報、同52−99813号公報、同53−1020号公報、同53−76020号公報、同54−156524号公報、同54−156525号公報、同61−183642号公報、特開平4−56848号公報、特公昭49−10727号公報、同54−20333号公報、米国特許第3,080,254号明細書、同第3,446,648号明細書、同第3,782,941号明細書、同第4,123,282号明細書、同第4,510,236号明細書、英国特許第1,380,795号明細書、ベルギー特許第841,910号明細書などに開示される色調剤を用いることができる。色調剤の具体例としては、フタルイミドおよびN−ヒドロキシフタルイミド;スクシンイミド、ピラゾリン−5−オン、ならびにキナゾリノン、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリンおよび2,4−チアゾリジンジオンのような環状イミド;ナフタルイミド(例えば、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタルイミド);コバルト錯体(例えば、コバルトヘキサミントリフルオロアセテート);3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,4−ジメルカプトピリミジン、3−メルカプト−4,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾールおよび2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールに例示されるメルカプタン;N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド、(例えば、(N,N−ジメチルアミノメチル)フタルイミドおよびN,N−(ジメチルアミノメチル)−ナフタレン−2,3−ジカルボキシイミド);ならびにブロック化ピラゾール、イソチウロニウム誘導体およびある種の光退色剤(例えば、N,N’−ヘキサメチレンビス(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジアザオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)および2−(トリブロモメチルスルホニル)−ベンゾチアゾール;ならびに3−エチル−5−[(3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)−1−メチルエチリデン]−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン;フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩、または4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオンなどの誘導体;フタラジノンとフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;フタラジン、フタラジン誘導体(たとえば、4−(1−ナフチル)フタラジン、6−クロロフタラジン、5,7−ジメトキシフタラジン、6−イソブチルフタラジン、6−tert−ブチルフタラジン、5,7−ジメチルフタラジン、および2,3−ジヒドロフタラジンなどの誘導体)もしくは金属塩;フタラジンおよびその誘導体とフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;キナゾリンジオン、ベンズオキサジンまたはナフトオキサジン誘導体;色調調節剤としてだけでなくその場でハロゲン化銀生成のためのハライドイオンの源としても機能するロジウム錯体、例えばヘキサクロロロジウム(III)酸アンモニウム、臭化ロジウム、硝酸ロジウムおよびヘキサクロロロジウム(III)酸カリウムなど;無機過酸化物および過硫酸塩、例えば、過酸化二硫化アンモニウムおよび過酸化水素;1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン、8−メチル−1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオンおよび6−ニトロ−1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオンなどのベンズオキサジン−2,4−ジオン;ピリミジンおよび不斉−トリアジン(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン、2−ヒドロキシ−4−アミノピリミジンなど)、アザウラシル、およびテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン、および1,4−ジ(o−クロロフェニル)−3,6−ジメルカプト−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン)などが好ましく用いられる。特にフタラジン誘導体、フタル酸誘導体が好ましく用いられる。本発明では色調剤として、特開2000−35631号公報に記載の一般式(F)で表されるフタラジン誘導体が最も好ましく用いられる。具体的には同公報に記載のA−1〜A−10が好ましく用いられる
【0067】
色調剤は、水あるいは適当な有機溶媒に溶解して用いることが好ましい。当技術分野で周知の可溶化剤を用いて水溶液化して添加することが好ましく、具体的には特開2001−83657公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。また、適当な有機溶媒に溶解して用いる場合は、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることが好ましい。また、酸性基が結合した化合物の場合は当量のアルカリで中和し、塩として用いることが好ましい。
【0068】
水への溶解度が低い場合は、乳化分散法、固体分散法で分散して用いることが好ましい。乳化分散を行う場合は、当技術分野で周知の乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して、熱現像画像記録材料中に用いることが好ましい。固体分散を行う場合は、当技術分野で周知の固体分散法によって、粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、サンドグラインダーミル、マントンゴーリン、マイクロフルイダイザーあるいは超音波によって分散し、熱現像画像記録材料中に用いることが好ましい。また、乳化分散、固体分散を行うには当技術分野で周知の分散助剤を用いることが好ましく、具体的には特開2001−83657公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。
【0069】
本発明の熱現像画像記録材料において、ハロゲン化銀乳剤および/または有機銀塩は、カブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体によって、付加的なカブリの生成に対してさらに保護され、在庫貯蔵中における感度の低下に対して安定化することが好ましい。単独または組合せて使用することができる適当なカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体は、米国特許第2,131,038号明細書および同第2,694,716号明細書に記載のチアゾニウム塩、米国特許第2,886,437号明細書および同第2,444,605号明細書に記載のアザインデン、米国特許第2,728,663号明細書に記載の水銀塩、米国特許第3,287,135号明細書に記載のウラゾール、米国特許第3,235,652号明細書に記載のスルホカテコール、英国特許第623,448号明細書に記載のオキシム、ニトロン、ニトロインダゾール、米国特許第2,839,405号明細書に記載の多価金属塩、米国特許第3,220,839号明細書に記載のチウロニウム塩、ならびに米国特許第2,566,263号明細書および同第2,597,915号明細書に記載のパラジウム、白金および金塩、米国特許第4,108,665号明細書および同第4,442,202号明細書に記載のハロゲン置換有機化合物、米国特許第4,128,557号明細書および同第4,137,079号明細書、同第4,138,365号明細書および同第4,459,350号明細書に記載のトリアジンならびに米国特許第4,411,985号明細書に記載のリン化合物などがある。
【0070】
本発明の熱現像画像記録材料は、高感度化やカブリ防止を目的として安息香酸類を含有することが好ましい。本発明で用いる安息香酸類はいかなる安息香酸誘導体でもよいが、好ましい例としては、米国特許第4,784,939号明細書、同第4,152,160号明細書、特開平9−329863号公報、同9−329864号公報、同9−281637号公報などに記載の化合物が挙げられる。安息香酸類は熱現像画像記録材料のいかなる層に添加してもよいが、支持体に対して画像形成層側の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。安息香酸類の添加は塗布液調製のいかなる工程で行ってもよく、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でもよいが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。安息香酸類の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行ってもよい。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加してもよい。安息香酸類の添加量としてはいかなる量でもよいが、銀1mol当たり1×10−6mol〜2molが好ましく、1×10−3mol〜0.5molがさらに好ましい。
【0071】
本発明を実施するために必須ではないが、画像形成層にカブリ防止剤として水銀(II)塩を加えることが有利なことがある。この目的のために好ましい水銀(II)塩は、酢酸水銀および臭化水銀である。本発明に使用する水銀の添加量としては、塗布された銀1mol当たり好ましくは1×10−9mol〜1×10−3mol、さらに好ましくは1×10−8mol〜1×10−4molの範囲である。
【0072】
また、特開2000−284399号公報に記載の式(Z)で表されるサリチル酸誘導体がカブリ防止剤として好ましく用いられる。具体的には、同公報に記載の(A−1)〜(A−60)が好ましく用いられる。式(Z)で表されるサリチル酸誘導体の添加量は、Ag1molに対するmol量(mol/molAg)で示して、好ましくは1×10−5〜5×10−1mol/molAg、より好ましくは5×10−5〜1×10−1mol/molAg、さらに好ましくは1×10−4〜5×10−2mol/molAgである。これらは1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0073】
本発明に好ましく用いられるカブリ防止剤として、ホルマリンスカベンジャーが有効であり、例えば、特開2000−221634号公報に記載の式(S)で表される化合物およびその例示化合物(S−1)〜(S−24)が挙げられる。
【0074】
本発明に用いるカブリ防止剤は、水あるいは適当な有機溶媒に溶解して用いることができる。水溶液として添加する場合は、当技術分野で周知の可溶化剤を用いることができ、具体的には特開2001−83657公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。有機溶媒に溶解して用いる場合は、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることが好ましい。また、酸性基が結合した化合物の場合は当量のアルカリで中和し、塩として用いることが好ましい。
水への溶解度が低い場合は、乳化分散法、固体分散法で分散して用いることが好ましい。乳化分散を行う場合は、当技術分野で周知の乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して、熱現像画像記録材料中に用いることが好ましい。固体分散を行う場合は、当技術分野で周知の固体分散法によって、粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、サンドグラインダーミル、マントンゴーリン、マイクロフルイダイザーあるいは超音波によって分散し、熱現像画像記録材料中に用いることが好ましい。また、乳化分散、固体分散を行うには当技術分野で周知の分散助剤を用いることが好ましく、具体的には特開2001−83657号公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。
【0075】
本発明に用いるカブリ防止剤は、支持体に対して画像形成層側の層、即ち画像形成層あるいはこの層側の他のどの層に添加してもよいが、画像形成層あるいはそれに隣接する層に添加することが好ましい。画像形成層は還元可能な銀塩(有機銀塩)を含有する層であり、好ましくはさらに感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層であることが好ましい。
【0076】
本発明の熱現像画像記録材料には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御することや、現像前後の保存性を向上させることなどを目的としてメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることが好ましい。
本発明にメルカプト化合物を使用する場合、いかなる構造のものでもよいが、Ar−SM、Ar−S−S−Arで表されるものが好ましい。式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、イオウ、酸素、セレニウムまたはテルリウム原子を有する芳香環または縮合芳香環である。好ましくは、複素芳香環はベンズイミダゾール、ナフスイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフスオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリンまたはキナゾリノンである。この複素芳香環は、例えば、ハロゲン(例えば、BrおよびCl)、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、アルキル(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、アルコキシ(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)およびアリール(置換基を有していてもよい)からなる置換基群から選択されるものを有してもよい。メルカプト置換複素芳香族化合物をとしては、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、6−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2,2’−ジチオビス−(ベンゾチアゾール)、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4,5−ジフェニル−2−イミダゾールチオール、2−メルカプトイミダゾール、1−エチル−2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトキノリン、8−メルカプトプリン、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリノン、7−トリフルオロメチル−4−キノリンチオール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−ピリジンチオール、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジンモノヒドレート、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−ヒドキロシ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプトピリミジン、4,6−ジアミノ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプト−4−メチルピリミジンヒドロクロリド、3−メルカプト−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、3−(5−メルカプトテトラゾール)−ベンゼンスルホン酸ナトリウム、N−メチル−N’−{3−(5−メルカプトテトラゾリル)フェニル}ウレア、2−メルカプト−4−フェニルオキサゾールなどが好ましく用いられる。
これらのメルカプト化合物の添加量としては画像形成層中に銀1mol当たり0.001〜1.0molの範囲が好ましく、さらに好ましくは、銀の1mol当たり0.001〜0.3molの量である。
【0077】
本発明の熱現像画像記録材料では、アンモニアなどの揮発性の塩基は揮発しやすく、塗布する工程や熱現像時だけでなく、保存中にも揮発するため、膜内に存在することは好ましくなく、NH4 +含有量は支持体1m2当たりの塗布量で、0.06mmol以下であることが好ましい。より好ましくは、0.03mmol以下である。膜中のNH4 +量の定量は、東ソー社製8000タイプイオンクロマト測定装置(電気導電度法)および分離カラムとして、東ソー社製TSKgelIC−Cation、ガードカラムとして、TSK guard column IC−Cを用いて測定した。溶離液には、2mM硝酸水溶液を用い、1.2ml/minの流量で行った。また、カラム恒温槽温度は40℃で行った。
【0078】
熱現像画像記録材料からのNH4 +の抽出は、抽出液として、酢酸:イオン交換水=1:148混合溶液を用い、上記抽出液5mlに熱現像画像記録材料1x3.5cm2の大きさの熱現像画像記録材料を2時間浸して行い、抽出後、0.45μmのフィルターで濾過した溶液を測定した。
膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸や、不揮発性の塩基を用いることが好ましい。
本発明の熱現像画像記録材料の熱現像処理前の膜面pHは6.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは5.5以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。
なお、膜面pHの測定方法は、特開2000−284339号公報の段落番号0123に記載されている。
【0079】
本発明の熱現像画像記録材料は、支持体上に、有機銀塩、還元剤および感光性ハロゲン化銀を含む画像形成層を有し、画像形成層上には少なくとも1層の保護層が設けられていることが好ましい。また、本発明の熱現像画像記録材料は支持体に対して画像形成層と反対側(バック面)に少なくとも1層のバック層を有することが好ましい。
【0080】
本発明で用いるバインダーとしては、天然ポリマー合成樹脂やポリマーおよびコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)およびポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。
【0081】
親水性でも疎水性でもよいが、本発明においては、熱現像後のカブリを低減させるために、疎水性透明バインダーを使用することが好ましい。好ましいバインダーとしては、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタンなどがあげられる。その中でもポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレートは特に好ましく用いられる。
【0082】
熱現像画像記録材料の表面を保護したり擦り傷を防止するために、画像形成層の外側に保護層を有することが好ましい。これらの保護層に用いられるバインダーは画像形成層に用いられるバインダーと同じ種類でも異なった種類でもよい。好ましくは擦り傷や相の変形等を防止するために画像形成層を構成するバインダーポリマーよりも軟化点の高いポリマーが用いられ、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等がこの目的にかなっている。
【0083】
本発明で用いるバインダーとして、水を主成分とする溶媒(分散媒)を用いた塗布をおこなう場合には、以下に述べるポリマーラテックスを用いることが好ましい。
本発明の熱現像画像記録材料の感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層のうち少なくとも1層は以下に述べるポリマーラテックスを全バインダーの50質量%以上用いた画像形成層であることが好ましい。また、ポリマーラテックスは画像形成層だけではなく、保護層やバック層に用いてもよく、特に寸法変化が問題となる印刷用途に本発明の熱現像画像記録材料を用いる場合には、保護層やバック層にもポリマーラテックスを用いることが好ましい。ただしここで言う「ポリマーラテックス」とは水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散されたものである。分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散されたものなどいずれでもよい。なお本発明で用いるポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などに記載されている。分散粒子の平均粒子サイズは1〜50000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒子サイズ分布に関しては特に制限は無く、広い粒子サイズ分布を持つものでも単分散の粒子サイズ分布を持つものでもよい。
【0084】
本発明で用いるポリマーラテックスとしては、通常の均一構造のポリマーラテックス以外の、いわゆるコア/シェル型のラテックスでもよい。この場合コアとシェルはガラス転移温度を変えると好ましい場合がある。
【0085】
本発明で用いるバインダーに好ましく用いるポリマーラテックスのガラス転移温度(Tg)は保護層、バック層と画像形成層とでは好ましい範囲が異なる。画像形成層にあっては熱現像時に写真有用素材の拡散を促すため、−30〜40℃であることが好ましい。保護層やバック層に用いる場合には種々の機器と接触するために25〜70℃のガラス転移温度が好ましい。
【0086】
本発明で用いるポリマーラテックスの最低造膜温度(MFT)は−30℃〜90℃、より好ましくは0℃〜70℃程度が好ましい。最低造膜温度をコントロールするために造膜助剤を添加することが好ましい。造膜助剤は可塑剤ともよばれポリマーラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物(通常有機溶剤)で、例えば前述の「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」に記載されている。
【0087】
本発明で用いるポリマーラテックスに用いられるポリマー種としてはアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはこれらの共重合体などが挙げられる。ポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでも、また架橋されたポリマーでもよい。またポリマーとしては単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでもブロックコポリマーでもよい。好ましいポリマーは直鎖のランダムコポリマーである。ポリマーの分子量は数平均分子量で5,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜100,000程度が好ましい。分子量が小さすぎるものは画像形成層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く、好ましくない。
【0088】
本発明の熱現像画像記録材料の画像形成層のバインダーとして用いられるポリマーラテックスの具体例としては、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/ブタジエン/イタコン酸コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/スチレン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/ジビニルベンゼン/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/塩化ビニル/アクリル酸コポリマーのラテックス、塩化ビニリデン/エチルアクリレート/アクリロニトリル/メタクリル酸コポリマーのラテックスなどが挙げられる。さらに具体的には、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸=33.5/50/16.5(質量%)のコポリマーラテックス、メチルメタクリレート/ブタジエン/イタコン酸=47.5/47.5/5(質量%)のコポリマーラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸=95/5(質量%)のコポリマーラテックスなどが挙げられる。また、このようなポリマーは市販もされていて、例えばアクリル樹脂の例として、セビアンA−4635,46583、4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol LX811、814、821、820、857(以上日本ゼオン(株)製)、VONCORT−R3340、R3360、R3370、4280(以上大日本インキ化学(株)製)など、ポリエステル樹脂としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD−size、WMS(以上イーストマンケミカル製)など、ポリウレタン樹脂としてはHYDRAN AP10、20、30、40(以上大日本インキ化学(株)製)など、ゴム系樹脂としてはLACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上大日本インキ化学(株)製)、Nipol LX410、430,435、438C(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニル樹脂としてはG351、G576(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニリデン樹脂としてはL502、L513(以上旭化成工業(株)製)、アロンD7020、D504、D5071(以上三井東圧(株)製)など、オレフィン樹脂としてはケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。これらのポリマーは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドして用いてもよいが、単独で用いることが好ましい。
【0089】
画像形成層には全バインダーの50質量%以上として上記ポリマーラテックスが好ましく用いられるが、70質量%以上として上記ポリマーラテックスが用いられることがさらに好ましい。
【0090】
画像形成層には必要に応じて全バインダーの50質量%以下の範囲でゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は画像形成層の全バインダーの30質量%以下、さらには15質量%以下が好ましい。
【0091】
画像形成層は水系の塗布液を塗布後乾燥して調製することが好ましい。ただし、ここで言う「水系」とは塗布液の溶媒(分散媒)の60質量%以上が水であることをいう。塗布液の水以外の成分はメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなどの水混和性の有機溶媒を用いることができる。具体的な溶媒組成の例としては以下のようなものがある。水/メタノール=90/10、水/メタノール=70/30、水/エタノール=90/10、水/イソプロパノール=90/10、水/ジメチルホルムアミド=95/5、水/メタノール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メタノール/ジメチルホルムアミド=90/5/5。(ただし数字は質量%を表す。)
【0092】
画像形成層の全バインダー量は0.2〜30g/m2、より好ましくは1〜15g/m2の範囲が好ましい。画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加することが好ましい。
【0093】
さらに、保護層用のバインダーとして、特開2000−267226号公報の段落番号0025〜0029に記載の有機概念図に基づく無機性値を有機性値で割ったI/O値の異なるポリマーラテックスの組み合わせを好ましく用いることができる。
【0094】
本発明においては必要に応じて、特開2000−267226号公報の段落番号0021〜0025に記載の可塑剤(例、ベンジルアルコール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3−モノイソブチレートなど)を添加して、造膜温度をコントロールすることができる。また、特開2000−267226号公報の段落番号0027〜0028に記載の如くポリマーバインダー中に親水性ポリマーを、塗布液中に水混和性の有機溶媒を添加することができる。
【0095】
それぞれの層には、特開2000−196783号公報の段落番号0023〜0041に記載の官能基を導入した第一のポリマーラテックスとこの第一のポリマーラテックスと反応しうる官能基を有する架橋剤および/または第二のポリマーラテックスを用いることもできる。
上記の官能基は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、N−メチロール基、オキサゾリニル基など、架橋剤としては、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、メチロ−ル化合物、ヒドロキシ化合物、カルボキシル化合物、アミノ化合物、エチレンイミン化合物、アルデヒド化合物、ハロゲン化合物などから選ばれる。架橋剤の具体例として、イソシアネート化合物としてヘキサメチレンイソシアネート、デュラネートWB40−80D、WX−1741(旭化成工業(株)製)、バイヒジュール3100(住友バイエルウレタン(株)製)、タケネートWD725(武田薬品工業(株)製)、アクアネート100、200(日本ポリウレタン(株)製)、特開平9−160172号公報記載の水分散型ポリイソシアネート;アミノ化合物としてスミテックスレジンM−3(住友化学工業(株)製);エポキシ化合物としてデナコールEX−614B(ナガセ化成工業(株)製);ハロゲン化合物として2,4ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンナトリウムなどが挙げられる。
【0096】
保護層用の全バインダー量は、本発明に好ましく用いられる膜厚3μm以上を達成する上で必要な量として、1〜10.0g/m2が好ましく、2〜6.0g/m2がより好ましい。
本発明の熱現像画像記録材料の保護層の膜厚は、3μm以上が好ましく、4μm以上がさらに好ましい。保護層膜厚の上限としては特に制限はないが、塗布乾燥のことを考慮し、10μm以下、さらには8μm以下が好ましい。
バック層用の全バインダー量は0.01〜10.0g/m2が好ましく、0.05〜5.0g/m2がより好ましい。
最外層のバインダー量は、特に0.5〜2g/m2が好ましい。
【0097】
これらの各層は、2層以上設けられる場合がある。画像形成層が2層以上である場合は、すべての層のバインダーとしてポリマーラテックスを用いることが好ましい。また、保護層は画像形成層上に設けられる層であり2層以上存在する場合もあるが、少なくとも1層、特に最外層の保護層にポリマーラテックスが用いられることが好ましい。
【0098】
本発明において、特開2000−171935号公報、特開2000−47083号公報に記載のように予備加熱部を対向ローラーで搬送し、熱現像処理部は画像形成層を有する側をローラーの駆動により、その反対側のバック面を平滑面に滑らせて搬送する熱現像処理装置を用いることができる。このとき、良好な搬送性を付与するためには、現像処理温度における熱現像機の平滑面部材とバック面との動摩擦係数(μb)は小さいことが望ましい。
本発明において熱現像処理温度での熱現像処理機部材と画像形成層を有する面および/またはその反対面の最外層の滑り性は、最外層に滑り剤を含有させて調整することができる。
【0099】
支持体の両面には、特開昭64−20544号公報、特開平1−180537号公報、特開平1−209443号公報、特開平1−285939号公報、特開平1−296243号公報、特開平2−24649号公報、特開平2−24648号公報、特開平2−184844号公報、特開平3−109545号公報、特開平3−137637号公報、特開平3−141346号公報、特開平3−141347号公報、特開平4−96055号公報、米国特許第4,645,731号明細書、特開平4−68344号公報、特許第2,557,641号公報の2頁右欄20行目〜3頁右欄30行目、特開2000−39684号公報の段落番号0020〜0037、特開2000−47083号公報の段落番号0063〜0080に記載の塩化ビニリデン単量体の繰り返し単位を70質量%以上含有する塩化ビニリデン共重合体を含む下塗り層を設けることが好ましい。
【0100】
塩化ビニリデン単量体が70質量%未満の場合は、十分な防湿性が得られず、熱現像後の時間経過における寸法変化が大きくなってしまう。また、塩化ビニリデン共重合体は、塩化ビニリデン単量体のほかの構成繰り返し単位としてカルボキシル基含有ビニル単量体の繰り返し単位を含むことが好ましい。このような繰り返し単位を含ませるのは、塩化ビニル単量体のみでは、重合体(ポリマー)が結晶化してしまい、防湿層を塗設する際に均一な膜を作り難くなり、また重合体(ポリマー)の安定化のためにはカルボキシル基含有ビニル単量体が不可欠であるからである。
本発明で用いる塩化ビニリデン共重合体の分子量は、質量平均分子量で45,000以下、さらには10,000〜45,000が好ましい。分子量が大きくなると塩化ビニリデン共重合体層とポリエステル等の支持体層との接着性が悪化してしまう傾向がある。
【0101】
本発明で用いる塩化ビニリデン共重合体の含有量は、塩化ビニリデン共重合体を含有する下塗り層の片面当たりの合計膜厚として0.3μm以上であることが好ましく、0.3μm〜4μmであることがより好ましい。
【0102】
なお、下塗り層としての塩化ビニリデン共重合体層は、支持体に直接設層される下塗り層第1層として設けることが好ましく、通常は片面ごとに1層ずつ設けられるが、場合によっては2層以上設けてもよい。2層以上設けるときは、塩化ビニリデン共重合体量が合計で上記の範囲となるようにすればよい。
このような層には塩化ビニリデン共重合体のほか、架橋剤やマット剤などを含有させることが好ましい。
【0103】
支持体は必要に応じて塩化ビニリデン共重合体層に加え、ポリエステル、ゼラチンをバインダーとする下塗り層を塗布することが好ましい。これらの下塗り層は2層以上設けることが好ましく、また支持体に対して両面に設けることが好ましい。下塗り層の厚み(1層当たり)は一般に0.01〜5μm、より好ましくは0.05〜1μmである。
【0104】
本発明の熱現像画像記録材料には、強度、寸法安定性、透明性、耐薬品性などを考慮したうえで、種々の支持体を用いることができる。典型的な支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、硝酸セルロース、セルロースエステル、ポリビニルアセタール、シンジオタクチックポリスチレン、ポリカーボネート、両面がポリエチレンで被覆された紙支持体などが挙げられる。このうち二軸延伸したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)が強度、寸法安定性、耐薬品性などの点から好ましい。支持体の厚みは下塗り層を除いたベース厚みで90〜180μmであることが好ましい。
【0105】
本発明の熱現像画像記録材料に用いる支持体としては、特開平10−48772号公報、特開平10−10676号公報、特開平10−10677号公報、特開平11−65025号公報、特開平11−138648号公報に記載の二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0106】
このような熱処理後における支持体の120℃、30秒加熱による寸法変化率は縦方向(MD)が−0.03%〜+0.01%、横方向(TD)が0〜0.04%であることが好ましい。
【0107】
本発明の熱現像画像記録材料には、ゴミ付着の減少、スタチックマーク発生防止、自動搬送工程での搬送不良防止などの目的で、特開平11−84573号公報の段落番号0040〜0051に記載の導電性金属酸化物および/またはフッ素系界面活性剤を用いて帯電防止することが好ましい。導電性金属酸化物としては、米国特許第5,575,957号明細書、特開平11−223901号公報の段落番号0012〜0020に記載のアンチモンでドーピングされた針状導電性酸化錫、特開平4−29134号公報に記載のアンチモンでドーピングされた繊維状酸化錫が好ましく用いられる。
【0108】
金属酸化物含有層の表面比抵抗(表面抵抗率)は25℃、相対湿度20%の雰囲気下で1012Ω以下、好ましくは1011Ω以下がよい。これにより良好な帯電防止性が得られる。このときの表面抵抗率の下限は特に制限されないが、通常107Ω程度である。
【0109】
本発明の熱現像画像記録材料の画像形成層を有する面およびその反対面の最外層表面の少なくとも一方、好ましくは両方のベック平滑度は、3000秒以下であり、より好ましくは100秒〜2000秒である。
本発明におけるベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
熱現像画像記録材料の画像形成層を有する面の最外層およびその反対面の最外層のベック平滑度は、特開平11−84573号公報の段落番号0052〜0059に記載の如く、前記両面の層に含有させるマット剤の粒子サイズおよび添加量を適宜変化させることによってコントロールすることができる。
【0110】
本発明では水溶性ポリマーが塗布性付与のための増粘剤として好ましく利用され、天然物でも合成ポリマーでもよく、その種類は特に限定されない。具体的には、天然物としてはデンプン類(コーンスターチ、デンプンなど)、海藻(寒天、アルギン酸ナトリウムなど)、植物性粘着物(アラビアゴムなど)、動物性タンパク(にかわ、カゼイン、ゼラチン、卵白など)、発酵粘着物(プルラン、デキストリンなど)などであり、半合成ポリマーであるデンプン質(可溶性デンプン、カルボキシルデンプン、デキストランなど)、セルロース類(ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)も挙げられ、さらに合成ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリビニルスルフィン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、アクリル酸またはその共重合体等、マレイン酸共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸またはその共重合体など)などである。
【0111】
これらの中でも好ましく用いられる水溶性ポリマーは、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デキストラン、デキストリン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸またはその共重合体などであり、特に増粘剤として好ましく利用される。
【0112】
これらでも特に好ましい増粘剤としては、ゼラチン、デキストラン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体などである。これらの化合物は、「新・水溶性ポリマーの応用と市場」(株式会社シーエムシー発行、長友新治編集、1988年11月4日発行)に詳細に記載されている。
【0113】
増粘剤としての水溶性ポリマーの使用量は、塗布液に添加した時に粘度が上昇すれば特に限定されない。一般に液中の濃度は0.01〜30質量%、より好ましくは0.05〜20質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。これらによって得られる粘度は、初期の粘度からの上昇分として1〜200mPa・sが好ましく、より好ましくは5〜100mPa・sである。なお、粘度はB型回転粘度計で25℃で測定した値を示す。塗布液などへの添加に当たっては、一般に増粘剤はできるだけ希薄溶液で添加することが望ましい。また添加時は十分な攪拌を行なうことが好ましい。
【0114】
本発明で用いる界面活性剤について以下に述べる。本発明で用いる界面活性剤はその使用目的によって、分散剤、塗布剤、濡れ剤、帯電防止剤、写真性コントロール剤などに分類されるが、以下に述べる界面活性剤を適宜選択して使用することによってそれらの目的は達成することができる。本発明で用いる界面活性剤は、ノニオン性、イオン性(アニオン、カチオン、ベタイン)のいずれも使用できる。さらにフッ素系界面活性剤も好ましく用いられる。
【0115】
好ましいノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリグリシジルやソルビタンをノニオン性親水性基とする界面活性剤を挙げることができ、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステルを挙げることができる。
【0116】
アニオン系界面活性剤としては、カルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩を挙げることができ、代表的なものとしては脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸塩、アルキル硫酸塩、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニールエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物などを挙げることができる。
【0117】
カチオン系界面活性剤としてはアミン塩、4級アンモニウム塩、ピリジウム塩などを挙げることができ、第1〜第3脂肪アミン塩、第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、アルキルイミダゾリウム塩など)を挙げることができる。
【0118】
ベタイン系界面活性剤としてはカルボキシベタイン、スルホベタインなどを挙げることができ、N−トリアルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタインなどを挙げることができる。
【0119】
これらの界面活性剤は、「界面活性剤の応用」(幸書房、刈米孝夫著、昭和55年9月1日発行)に記載されている。本発明においては、好ましい界面活性剤はその使用量において特に限定されず、目的とする界面活性特性が得られる量であればよい。なお、フッ素含有界面活性剤の塗布量は、1m2当り0.01mg〜250mgが好ましい。
【0120】
以下に界面活性剤の具体例を記すが、これに限定されるものではない(ここで、−C6H4−はフェニレン基を表わす)。
WA−1: C16H33(OCH2CH2)10OH
WA−2: C9H19−C6H4−(OCH2CH2)12OH
WA−3: ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
WA−4: トリ(イソプロピル)ナフタレンスルホン酸ナトリウム
WA−5: トリ(イソブチル)ナフタレンスルホン酸ナトリウム
WA−6: ドデシル硫酸ナトリウム
WA−7: α−スルファコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル ナトリウム塩
WA−8: C8H17−C6H4−(CH2CH2O)3(CH2)2SO3K
WA−10: セチルトリメチルアンモニウム クロライド
WA−11: C11H23CONHCH2CH2N(+)(CH3)2−CH2COO(−)
WA−12: C8F17SO2N(C3H7)(CH2CH2O)16H
WA−13: C8F17SO2N(C3H7)CH2COOK
WA−14: C8F17SO3K
WA−15: C8F17SO2N(C3H7)(CH2CH2O)4(CH2)4SO3Na
WA−16: C8F17SO2N(C3H7)(CH2)3OCH2CH2N(+)(CH3)3−CH3・C6H4−SO3 (−)
WA−17: C8F17SO2N(C3H7)CH2CH2CH2N(+)(CH3)2−CH2COO(−)
【0121】
本発明の好ましい態様においては、画像形成層および保護層に加えて、必要に応じて中間層を設けてもよい。生産性の向上などを目的として、これらの複数の層は水系において同時重層塗布することが好ましい。塗布方式はエクストルージョン塗布、スライドビード塗布、カーテン塗布などがあるが、特開2000−2964号公報の図1に示されるスライドビード塗布方式が特に好ましい。
【0122】
ゼラチンを主バインダーとして用いるハロゲン化銀写真感光材料の場合は、コーティングダイの下流に設けられている第一乾燥ゾーンで急冷され、その結果、ゼラチンのゲル化が起こり、塗布膜は冷却固化される。冷却固化されて流動の止まった塗布膜は続く第二乾燥ゾーンに導かれ、これ以降の乾燥ゾーンで塗布液中の溶媒が揮発され、成膜される。第二乾燥ゾーン以降の乾燥方式としては、U字型のダクトからローラー支持された支持体に噴流を吹き付けるエアーループ方式や円筒状のダクトに支持体をつるまき状に巻き付けて搬送乾燥する、つるまき方式(エアーフローティング方式)などが挙げられる。
【0123】
バインダーの主成分がポリマーラテックスである塗布液を用いて層形成を行うときには、急冷では塗布液の流動を停止させることができないため、第一乾燥ゾーンのみでは予備乾燥が不十分である場合もある。この場合は、ハロゲン化銀写真感光材料で用いられている様な乾燥方式では流れムラや乾燥ムラが生じ、塗布面状に重大な欠陥を生じやすい。
【0124】
本発明における好ましい乾燥方式は、特開2000−002964号公報に記載されているような第一乾燥ゾーン、第二乾燥ゾーンを問わず、少なくとも恒率乾燥が終了するまでの間は水平乾燥ゾーンで乾燥させる方式である。塗布直後から水平乾燥ゾーンに導かれるまでの支持体の搬送は、水平搬送であってもなくてもどちらでもよく、塗布機の水平方向に対する立ち上がり角度は0〜70°の間にあればよい。また、本発明における水平乾燥ゾーンとは、支持体が塗布機の水平方向に対して上下に±15°以内に搬送されればよく、水平搬送を意味するものではない。
【0125】
本発明における恒率乾燥とは、液膜温度が一定で流入する熱量全てが溶媒の蒸発に使用される乾燥過程を意味する。減率乾燥とは、乾燥末期になると種々の要因(水分移動の材料内部拡散が律速になる、蒸発表面の後退など)により乾燥速度が低下し、与えられた熱が液膜温度上昇にも使用される乾燥過程を意味する。恒率過程から減率過程に移行する限界含水率は200〜300%である。恒率乾燥が終了する時には、流動が停止するまで十分乾燥が進むため、ハロゲン化銀写真感光材料の様な乾燥方式も採用することができるが、本発明においては恒率乾燥後も最終的な乾燥点まで水平乾燥ゾーンで乾燥させることが好ましい。
【0126】
画像形成層および/または保護層を形成する時の乾燥条件は、恒率乾燥時の液膜表面温度がポリマーラテックスの最低造膜温度(MTF;通常ポリマーのガラス転移温度Tgより3〜5℃高い)以上にすることが好ましい。通常は製造設備の制限より25℃〜40℃にすることが多い。また、減率乾燥時の乾球温度は支持体のTg未満の温度(PETの場合通常80℃以下)が好ましい。本明細書における液膜表面温度とは、支持体に塗布された塗布液膜の溶媒液膜表面温度を言い、乾球温度とは乾燥ゾーンの乾燥風の温度を意味する。
【0127】
恒率乾燥時の液膜表面温度が低くなる条件で乾燥した場合、乾燥が不十分になりやすい。このため特に保護層の造膜性が著しく低下し、膜表面に亀裂が生じやすくなる。また、膜強度も弱くなり、露光機や熱現像機での搬送中に傷がつきやすくなるなどの重大な問題が生じやすくなる。
【0128】
一方、液膜表面温度が高くなる条件で乾燥した場合は、主としてポリマーラテックスから構成される保護層は速やかに皮膜を形成するが、その一方で画像形成層などの下層は流動性が停止していないので、表面に凹凸が発生しやすくなる。また、支持体(ベース)にTgよりも高い過剰の熱がかかると、熱現像画像記録材料の寸度安定性、耐巻き癖性も悪くなる傾向にある。
【0129】
下層を塗布乾燥してから上層を塗布する逐次塗布においても同様であるが、特に、下層の乾燥前に上層を塗布して、両層を同時に乾燥する同時重層塗布を行うための塗布液物性としては、画像形成層の塗布液と保護層の塗布液とのpH差が2.5以下であることが好ましく、このpH差は小さい程好ましい。塗布液のpH差が大きくなると塗布液界面でミクロな凝集が生じやすくなり、長尺連続塗布時に塗布筋などの重大な面状故障が発生しやすくなる。
【0130】
画像形成層の塗布液粘度は25℃で15〜100mPa・sが好ましく、さらに好ましくは30〜70mPa・sである。一方、保護層の塗布液粘度は25℃で5〜75mPa・sが好ましく、さらに好ましくは20〜50mPa・sである。これらの粘度はB型粘度計によって測定される。
【0131】
乾燥後の巻取りは温度20〜30℃、相対湿度45±20%の条件下で行うことが好ましく、巻き姿はその後の加工形態に合わせ画像形成層側の面を外側にしてもよいし、内側にしてもよい。また、加工形態がロール品の場合は巻き姿で発生したカールを除去するために加工時に巻き姿とは反対側に巻いたロール形態にすることも好ましい。好ましい一態様として、幅550〜650mmおよび長さ1〜65mのシート状であって、その一部または全部が円筒形状のコア部材に画像形成層を外側にして巻き取られている熱現像画像記録材料を挙げることができる。なお、熱現像画像記録材料の相対湿度は20〜55%(25℃測定)の範囲で制御されることが好ましい。
【0132】
ハロゲン化銀を含みゼラチンを基体とする粘性液である従来の写真乳剤塗布液は、通常加圧送液するだけで気泡が液中に溶解、消滅してしまい、塗布時に大気圧下に戻されても気泡が析出するようなことはほとんどない。ところが、本発明で好ましく用いられる有機銀塩分散物とポリマーラテックスなどを含む画像形成層塗布液の場合は、加圧送液だけでは脱泡が不十分になりやすいため、気液界面が生じないようにして送液しながら超音波振動を与え脱泡することが好ましい。
【0133】
本発明において塗布液の脱泡は、塗布液を塗布される前に減圧脱気し、さらに1.5kg/cm2以上の加圧状態に保ち、かつ気液界面が生じないようにして連続的に送液しながら超音波振動を与える方式が好ましい。具体的には、特公昭55−6405号公報(4頁20行〜7頁11行)に記載されている方式が好ましい。このような脱泡を行う装置として、特開2000−98534号公報の実施例と図3に示される装置を好ましく用いることができる。
【0134】
加圧条件としては、1.5kg/cm2以上が好ましく、1.8kg/cm2以上がより好ましい。その上限に特に制限はないが、通常5kg/cm2程度である。与えられる超音波の音圧は0.2V以上、好ましくは0.5V〜3.0Vであり、一般的に音圧は高い方が好ましいが、音圧が高すぎるとキャピテーションにより部分的に高温状態になりカブリの発生原因となる。周波数は特に制約はないが、通常10kHz以上、好ましくは20kHz〜200kHzである。なお、減圧脱気は、タンク内(通常、調液タンクもしくは貯蔵タンク)を密閉減圧し、塗布液中の気泡径を増大させ、浮力をかせぎ脱気させることを指し、減圧脱気の際の減圧条件は−200mmHgないしそれより低い圧力条件、好ましくは−250mmHgないしそれより低い圧力条件とし、その最も低い圧力条件は特に制限はないが通常−800mmHg程度である。減圧時間は30分以上、好ましくは45分以上であり、その上限は特に制限されない。
【0135】
本発明において、画像形成層、画像形成層の保護層、下塗層およびバック層には特開平11−84573号公報の段落番号0204〜0208、特開2000−47083号公報の段落番号0240〜0241に記載の如くハレーション防止などの目的で、染料を含有させることが好ましい。
【0136】
画像形成層には色調改良、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料を用いることが好ましい。画像形成層に用いる染料および顔料はいかなるものでもよいが、例えば特開平11−119374号公報の段落番号0297に記載されている化合物を用いることが好ましい。これらの染料の添加法としては、溶液、乳化物、固体微粒子分散物、高分子媒染剤に媒染された状態などが挙げられ、ゼラチン水溶液添加することが好ましい。これらの化合物の使用量は目的の吸収量によって決められるが、一般的に1m2当たり1×10−6g〜1gの範囲で用いることが好ましい。
【0137】
本発明でハレーション防止染料を使用する場合、750〜850nmに吸収極大を持つ染料を用いることが好ましい。該染料は所望の範囲で目的の吸収を有し、処理後に可視領域での吸収が充分少なく、上記バック層の好ましい吸光度スペクトルの形状が得られればいかなる化合物でもよい。例えば特開平11−119374号公報の段落番号0300に記載されている化合物を用いることができる。また、ベルギー特許第733,706号明細書に記載されるように染料による濃度を加熱による消色で低下させる方法、特開昭54−17833号公報に記載されるように光照射による消色で濃度を低下させる方法等を用いることもできる。本発明では、特開平11−119374号公報の段落番号0297に記載されている化合物を用いることが好ましい。
【0138】
本発明の熱現像画像記録材料が熱現像後において、PS版により刷版を作製する際にマスクとして用いられる場合、熱現像後の熱現像画像記録材料は、製版機においてPS版に対する露光条件を設定するための情報や、マスク原稿およびPS版の搬送条件等の製版条件を設定するための情報を画像情報として担持している。従って、前記のイラジエーション染料、ハレーション染料、フィルター染料の濃度(使用量)は、これらを読み取るために制限される。これら情報はLEDあるいはレーザーによって読み取られるため、センサーの波長域のDmin(最低濃度)が低い必要があり吸光度が0.3以下である必要がある。例えば、富士写真フイルム(株)社製、製版機S−FNRIIIはトンボ検出のための検出器およびバーコードリーダーとして670nmの波長の光源を使用している。また、清水製作社製、製版機APMLシリーズのバーコードリーダーとして670nmの光源を使用している。すなわち670nm付近のDmin(最低濃度)が高い場合にはフィルム上の情報が正確に検出できず搬送不良、露光不良など製版機で作業エラーが発生する。従って、670nmの光源で情報を読み取るためには670nm付近のDminが低い必要があり、熱現像後の660〜680nmの吸光度が0.3以下である必要がある。より好ましくは0.25以下である。その下限に特に制限はないが、通常は0.10程度である。
【0139】
本発明において、像様露光に用いられる露光装置は露光時間が10−6秒以下の露光が可能な装置であればいずれでもよいが、750〜850nmの波長を持つレーザダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)を光源に使用した露光装置が好ましく用いられる。特に、LDは高出力、高解像度の点でより好ましい。これらの光源は目的波長範囲の電磁波スペクトルの光を発生することができるものであればいずれでもよい。例えばLDであれば、色素レーザー、ガスレーザー、固体レーザー、半導体レーザーなどを用いることができる。
【0140】
本発明における露光は光源の光ビームをオーバーラップさせて露光する。オーバーラップとは副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えばビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表わしたとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が0.2以上であることが好ましい。
【0141】
本発明に使用する露光装置の光源の走査方式は特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、高出力が得られ、書き込み時間が短くなるという点でレーザーヘッドを2機以上搭載するマルチチャンネルが好ましい。特に、円筒外面方式の場合にはレーザーヘッドを数機〜数十機以上搭載するマルチチャンネルが好ましく用いられる。
【0142】
本発明の熱現像画像記録材料は露光時のヘイズが低く、干渉縞が発生しやすい傾向にある。この干渉縞の発生防止技術としては、特開平5−113548号公報などに開示されているレーザー光を熱現像画像記録材料に対して斜めに入光させる技術や、国際公開WO95/31754号公報などに開示されているマルチモードレーザーを利用する方法が知られており、これらの技術を用いることが好ましい。
【0143】
本発明に用いる画像形成方法の加熱現像工程はいかなる方法であってもよいが、通常イメージワイズに露光した熱現像画像記録材料を昇温して現像される。用いられる熱現像機の好ましい態様としては、熱現像画像記録材料をヒートローラーやヒートドラムなどの熱源に接触させるタイプとして特公平5−56499号公報、特開平9−292695号公報、特開平9−297385号公報および国際公開WO95/30934号公報に記載の熱現像機、非接触型のタイプとして特開平7−13294号公報、国際公開WO97/28489号公報、同97/28488号公報および同97/28487号公報に記載の熱現像機がある。特に好ましい態様としては非接触型の熱現像機である。好ましい現像温度としては80〜250℃であり、さらに好ましくは100〜140℃である。現像時間としては1〜180秒が好ましく、5〜90秒がさらに好ましい。ラインスピードは、20mm/秒〜200mm/秒が好ましく、23mm/秒〜180mm/秒が特に好ましい。
【0144】
熱現像時における熱現像画像記録材料の寸法変化による処理ムラを防止する方法として、80℃以上115℃未満の温度で画像が出ないようにして、5秒以上加熱した後、110℃〜140℃で熱現像して画像形成させる方法(いわゆる多段階加熱方法)が好ましい。
【0145】
本発明の熱現像画像記録材料を熱現像処理するとき、110℃以上の高温にさらされるため、該材料中に含まれている成分の一部、あるいは熱現像による分解成分の一部が揮発してくる。これらの揮発成分は現像ムラの原因になったり、熱現像機の構成部材を腐食させたり、温度の低い場所で析出し異物として画面の変形を引起こしたり、画面に付着して汚れとなる種々の悪い影響があることが知られている。これらの影響を除くための方法として、熱現像機にフィルターを設置し、また熱現像機内の空気の流れを最適に調整することが好ましい。これらの方法は有効に組み合わせて利用することができる。
国際公開WO95/30933号公報、同97/21150号公報、特表平10−500496号公報には、結合吸収粒子を有し揮発分を導入する第一の開口部と排出する第二の開口部とを有するフィルターカートリッジを、フィルムと接触して加熱する加熱装置に用いることが記載されている。また、国際公開WO96/12213号公報、特表平10−507403号公報には、熱伝導性の凝縮捕集器とガス吸収性微粒子フィルターを組み合わせたフィルターを用いることが記載されている。本発明ではこれらを好ましく用いることができる。
また、米国特許第4,518,845号明細書、特公平3−54331号公報には、フィルムからの蒸気を除去する装置とフィルムを伝熱部材へ押圧する加圧装置と伝熱部材を加熱する装置とを有する構成が記載されている。また、国際公開WO98/27458号公報には、フィルムから揮発するカブリを増加させる成分をフィルム表面から取り除くことが記載されている。これらについても本発明では好ましく用いることができる。
【0146】
本発明の熱現像画像記録材料の熱現像処理に用いられる熱現像機の一構成例を図1に示す。図1は熱現像機の側面図を示したものである。図1の熱現像機は熱現像画像記録材料10を平面状に矯正および予備加熱しながら加熱部に搬入する搬入ローラー対11(上部ローラーはシリコンゴムローラーで、下部ローラーがアルミ製のヒートローラー)と熱現像後の熱現像画像記録材料10を平面状に矯正しながら加熱部から搬出する搬出ローラー対12を有する。熱現像画像記録材料10は搬入ローラー対11から搬出ローラー対12へと搬送される間に熱現像される。この熱現像中の熱現像画像記録材料10を搬送する搬送手段は画像形成層を有する面が接触する側に複数のローラー13が設置され、その反対側のバック面が接触する側には不織布(例えば芳香族ポリアミドやテフロン(登録商標)から成る)等が貼り合わされた平滑面14が設置される。熱現像画像記録材料10は画像形成層を有する面に接触する複数のローラー13の駆動により、バック面を平滑面14の上に滑らせながら搬送される。ローラー13の上部および平滑面14の下部には、熱現像画像記録材料10の両面から加熱されるように加熱ヒーター15が設置される。この場合の加熱手段としては板状ヒーター等が挙げられる。ローラー13と平滑面14とのクリアランスは平滑面の部材により異なるが、熱現像画像記録材料10が搬送できるクリアランスに適宜調整される。好ましくは0〜1mmである。
【0147】
ローラー13の表面の材質および平滑面14の部材は、高温耐久性があり、熱現像画像記録材料10の搬送に支障がなければ何でもよいが、ローラー表面の材質はシリコンゴム、平滑面の部材は芳香族ポリアミドまたはテフロン(PTFE)製の不織布が好ましい。加熱手段としては複数のヒーターを用い、それぞれ加熱温度を自由に設定することが好ましい。
【0148】
なお、加熱部は、搬入ローラー対11を有する予備加熱部Aと、加熱ヒーター15を備えた熱現像加熱部Bとで構成されるが、熱現像処理部Bの上流の予備加熱部Aは、熱現像温度よりも低く(例えば10〜30℃程度低く)、熱現像画像記録材料10中の水分量を蒸発させるのに十分な温度および時間に設定することが望ましく、熱現像画像記録材料10の支持体のガラス転移温度(Tg)よりも高い温度で、現像ムラが出ないように設定することが好ましい。予備加熱部と熱現像処理部の温度分布としては±1℃以下が好ましく、さらには±0.5℃以下が好ましい。
また、熱現像処理部Bの下流にはガイド板16が設置され、搬出ローラー対12とガイド板16とを有する徐冷部Cが設置される。
ガイド板16は熱伝導率の低い素材が好ましく、熱現像画像記録材料10に変形が起こらないようにするために冷却は徐々に行うのが好ましく、冷却速度としては、0.5〜10℃/秒が好ましい。
【0149】
以上、図示例に従って説明したが、これに限らず、例えば特開平7−13294号公報に記載のものなど、本発明に用いる熱現像機は種々の構成のものであってもよい。また、本発明において好ましく用いられる多段加熱方法の場合は、上述のような装置において、加熱温度の異なる熱源を2個以上設置し、連続的に異なる温度で加熱するようにすればよい。
なお、本発明の熱現像画像記録材料は、特開2000−206653号公報の段落番号0014〜0026に記載される包装材料によって、あるいは特開2001−13632号公報の段落番号0020〜0045に記載される包装方法によって包装されることが好ましい。
【0150】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0151】
<実施例1>
《バック/下塗り層のついたポリエチレンテレフタレート(PET)支持体の作製》
(1)PET支持体の作製
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い、固有粘度IV=0.66(フェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のポリエチレンテレフタレートを得た。これをペレット化した後、130℃で4時間乾燥した後、300℃で溶融後T型ダイから押し出した後急冷し、熱固定後の膜厚が120μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。
これを、周速の異なるロールを用いて3.3倍に縦延伸し、ついでテンターで4.5倍に横延伸を実施した。このときの温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後、これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後、テンターのチャック部をスリットした後、両端にナール加工を行い、4.8kg/cm2で巻きとった。このようにして、幅2.4m、長さ3500m、厚み120μmのロール状のPET支持体を得た。
【0152】
(2)下塗り層およびバック層の作製
▲1▼下塗り第一層
以下に示す組成の塗布液を9.7ml/m2となる様に支持体上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、185℃で30秒乾燥した。
【0153】
ラテックス−A 280g
KOH 0.5g
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ2μm、平均粒子サイズの変動係数7%)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 1.8g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0154】
ラテックス−A:
コア部90質量%、シェル部10質量%のコアシェルタイプのラテックス
コア部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/
アクリロニトリル/アクリル酸=93/3/3/0.9/0.1(質量%)
シェル部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/
アクリロニトリル/アクリル酸=88/3/3/3/3(質量%)
質量平均分子量38,000
【0155】
▲2▼下塗り第二層
以下に示す組成の塗布液を8.3ml/m2となる様に下塗り第一層の上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。
【0156】
【0157】
▲3▼バック第一層
前記下塗り層塗布面とは反対側の面に0.375kV・A・分/m2のコロナ放電処理を施し、その面に以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となる様に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、185℃で30秒乾燥した。
【0158】
ジュリマーET410(30%水分散物、日本純薬(株)製) 23g
アルカリ処理ゼラチン 4.44g
(分子量約10,000、Ca2+含量30ppm)
脱イオン処理ゼラチン(Ca2+含量0.6ppm) 0.84g
化合物A 0.02g
染料−Bc−A 目安として 0.88g
(783nmの光学濃度として1.3〜1.4になるように調整)
ポリオキシエチレンフェニルエーテル 1.7g
水溶性メラミン化合物 15g
(住友化学工業(株)製、スミテックスレジンM−3(8%水溶液))
Sbド−プSnO2 の針状粒子の水分散物 24g
(石原産業(株)製、FS−10D)
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ2μm,平均粒子サイズの変動係数7%)
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0159】
▲4▼バック第二層
以下に示す組成の塗布液を5.5ml/m2となる様にバック第一層上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。
【0160】
ジュリマーET410 57.5g
(30%水分散物、日本純薬(株)製)
ポリオキシエチレンフェニルエーテル 1.7g
水溶性メラミン化合物 15g
(住友化学工業(株)製、スミテックスレジンM−3(8%水溶液))
セロゾール524(15%水溶液、中京油脂(株)製) 3.3g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0161】
▲5▼バック第三層
下塗り第一層と同じ塗布液を9.7ml/m2となる様にバック第二層上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、185℃で30秒乾燥した。
【0162】
▲6▼バック第四層
以下に示す組成の塗布液B−1〜塗布液B−8の中の1つの塗布液を13.8ml/m2となる様にバック第三層上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。塗布液B−1〜塗布液B−8を用いて作製した支持体を、順に支持体101〜支持体108とした。
【0163】
【0164】
ラテックス−B:
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/
2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=59/9/26/
5/1(質量%の共重合体)
【0165】
【0166】
【0167】
塗布液 B−4
ペスレジンA615G(25%水分散物、高松油脂(株)製) 140g
ジュリマーET410(30%水分散物、日本純薬(株)製) 150g
化合物−Bc−B 1.5g
化合物−Bc−C 0.5g
化合物−Bc−D 0.3g
化合物−Bc−E 0.2g
ポリメチルメタクリレート 7.7g
(10%水分散物、平均粒子サイズ 5.5μm)
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0168】
塗布液 B−5
ペスレジンA615G(25%水分散物、高松油脂(株)製) 140g
ハイドランAP40F 150g
(30%水分散物、大日本インキ化学工業(株)製)
化合物−Bc−B 1.5g
化合物−Bc−C 0.5g
化合物−Bc−D 0.3g
化合物−Bc−E 0.2g
水溶性エポキシ化合物 3.4g
(ナガセ化成工業(株)製、デナコールEX521)
ポリメチルメタクリレート 7.7g
(10%水分散物、平均粒子サイズ5.5μm)
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0169】
【0170】
【0171】
塗布液 B−8
ペスレジンA615G(25%水分散物、高松油脂(株)製) 140g
ハイドランAP40F 150g
(30%水分散物、大日本インキ化学工業(株)製)
化合物−Bc−B 1.5g
化合物−Bc−C 0.5g
化合物−Bc−D 0.3g
化合物−Bc−E 0.2g
水溶性エポキシ化合物 3.4g
(ナガセ化成工業(株)製、デナコールEX521)
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0172】
【化6】
【0173】
このようにして作製した支持体101〜108のそれぞれに、以下の方法で画像形成層塗布液、保護層塗布液、下層オーバーコート層塗布液、および上層オーバーコート層塗布液を塗布し、熱現像画像記録材料101〜108を作製した。
【0174】
《ハロゲン化銀乳剤Aの調製》
水700mLにアルカリ処理ゼラチン(カルシウム含有量として2700ppm以下)11gおよび臭化カリウム30mg、4−メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.3gを溶解して温度45℃にてpHを6.5に合わせた後、硝酸銀18.6gを含む水溶液159mLと臭化カリウムを1モル/L(NH4)2RhCl5(H2O)を5×10−6モル/LおよびK3IrCl6を2×10−5モル/Lで含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で6分30秒間かけて添加した。ついで、硝酸銀55.5gを含む水溶液476mLと臭化カリウムを1モル/LおよびK3IrCl6を2×10−5モル/Lで含むハロゲン塩水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で28分30秒間かけて添加した。その後pHを下げて凝集沈降させて脱塩処理をし、平均分子量15,000の低分子量ゼラチン(カルシウム含有量として20ppm以下)51.1g加え、pH5.9、pAg8.0に調製した。得られた粒子は平均粒子サイズ0.11μm、投影面積変動係数9%、(100)面比率90%の立方体粒子であった。こうして得たハロゲン化銀粒子に、銀1モル当たりベンゼンチオスルホン酸ナトリウム76μモル、トリエチルチオ尿素71μモルを添加した後に熟成し、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを5×10−4モル、化合物Aを0.17g加えた後、ハロゲン化銀1モルに対して4.7×10−2モルの臭化カリウム(水溶液として添加)、12.8×10−4モルの下記増感色素−A(エタノール溶液として添加)、6.4×10−3モルの化合物B(メタノール溶液として添加)を攪拌しながら添加し、20分後に30℃に急冷してハロゲン化銀乳剤Aの調製を終了した。得られたハロゲン化銀乳剤Aは、後述する塗布液の調製に用いた。
【0175】
【化7】
【0176】
《ベヘン酸銀分散物Aの調製》
ベヘン酸(ヘンケル社製、製品名EdenorC22−85R)87.6gを、5mol/LのNaOH水溶液49.2mLおよびtert−ブチルアルコール120mLと混合し、75℃にて反応させベヘン酸ナトリウム溶液を得た。このベヘン酸ナトリウム溶液と硝酸銀の水溶液とを、635mLの蒸留水および30mLのtert−ブチルアルコールを入れた反応容器を攪拌しながら、添加した。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が上がらないようにコントロールした。添加終了後、吸引濾過で固形分を濾別し、水洗した。つぎに、得られたベヘン酸銀の固形分100g相当のウエットケーキに、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217,平均重合度:約1700)7.4gおよび水を添加し、ホモミキサーにて予備分散した後、分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−110S−EH、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、G10Zインタラクションチャンバー使用)で分散し、ベヘン酸分散物Aを得て、後述する塗布液の調製に用いた。
【0177】
《還元剤の固体微粒子分散物の調製》
還元剤である1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgに、サーフィノール104E(日信化学(株)製)400gと、メタノール640g、水16kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーを、横型ビーズミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて分散した後、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩4gと水を加えて還元剤の固体微粒子分散物を得て、後述する塗布液の調製に用いた。こうして得た分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.44μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、平均粒子サイズの変動係数19%であった。
【0178】
《有機ポリハロゲン化合物Aの固体微粒子分散物の調製》
ポリハロゲン化合物Aを10kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液639gと、サーフィノール104E(日信化学(株)製)400gと、メタノール640gと、水16kgとをよく混合してスラリーとした。このスラリーを、横型ビーズミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて分散した後、水を加えてポリハロゲン化合物Aの濃度が25質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物Aの固体微粒子分散物を得て、後述する塗布液の調製に用いた。こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.36μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、平均粒子サイズの変動係数18%であった。
【0179】
《有機ポリハロゲン化合物Bの固体微粒子分散物の調製》
ポリハロゲン化合物Bを5kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液2.5kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液213gと、水10kgとをよく混合してスラリーとした。このスラリーを、横型ビーズミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩2.5gと水とを加えてポリハロゲン化合物Bの濃度が23.5質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物Bの固体微粒子分散物を得て、後述する塗布液の調製に用いた。こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.38μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、平均粒子サイズの変動係数20%であった。
【0180】
《有機ポリハロゲン化合物C水溶液の調製》
室温で攪拌しながら、水75.0ml、トリプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(20%水溶液)8.6ml、オルトリン酸二水素ナトリウム・2水和物(5%水溶液)6.8ml、および水酸化カリウムの1mol/L水溶液9.5mlを順次攪拌混合した。さらに、攪拌しながらポリハロゲン化合物Cの4.0gの粉末を添加し、有機ポリハロゲン化合物C水溶液100mlを得て、後述する塗布液の調製に用いた。
【0181】
《化合物−Zの乳化分散物の調製》
化合物−Zを85質量%含有する三光(株)製R−054を10kgと、MIBK11.66kgを混合した後、窒素置換して80℃1時間溶解した。この液に水25.52kgとクラレ(株)製MPポリマーのMP−203の20質量%水溶液12.76kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.44kgとを添加して、20〜40℃、3600rpmで60分間乳化分散した。さらに、この液にサーフィノール104E(日信化学(株)製)0.08kgと、水47.94kgとを添加して減圧蒸留しMIBKを除去したのち、化合物−Zの濃度が10質量%になるように調製して、後述する塗布液の調製に用いた。
【0182】
《6−イソプロピルフタラジン化合物の分散液の調製》
室温で水62.35gを攪拌しながら、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)2.0gを添加し10分間攪拌混合した後、加熱し、内温50〜60℃の範囲で均一に溶解させた。内温を40℃以下に降温し、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−217、10質量%水溶液)25.5g、トリプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(20質量%水溶液)3.0g、および6−イソプロピルフタラジン(70質量%水溶液)7.15gを添加し、攪拌混合して、透明分散液100gを得て、後述する塗布液の調製に用いた。
【0183】
《現像促進剤Wの固体微粒子分散物の調製》
現像促進剤Wの10kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液の10kgと、水20kgとを、よく混合してスラリーとした。このスラリーを、横型ビーズミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて分散した後、水を加えて現像促進剤Wの濃度が20質量%になるように調製し、現像促進剤Wの固体微粒子分散物を得て、後述する塗布液の調製に用いた。
【0184】
《画像形成層塗布液の調製》
上記で作製したベヘン酸銀分散物Aの銀1モルに対して、以下のバインダー、素材、およびハロゲン化銀乳剤Aを添加して、水を加えて、画像形成層塗布液とした。この塗布液は、有機溶媒としてメタノールおよびエタノールを10質量%含有する塗布液であった。完成後、減圧脱気を圧力0.54atmで45分間行った。塗布液のpHは7.7、粘度は25℃で50mPa・sであった。
【0185】
pH調整剤として、NaOHを用いて調整した。
(なお、塗布膜のガラス転移温度は17℃であった。)
【0186】
《保護層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度として21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ塗布液のガラス転移温度を24℃とした、平均粒子サイズ116nm)943gに水を加え、ポリハロゲン化合物Cの水溶液 114.8g、ポリハロゲン化合物Aを固形分として17.0g、オルトリン酸二水素ナトリウム・二水和物を固形分として0.69g、現像促進剤Wを固形分として11.55g、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒子サイズ7μm、平均粒子サイズの変動係数8%)1.58g、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235)29.3gおよび化合物Eを0.62g、化合物Iを1.0g加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を0.8質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは5.5、粘度は25℃で45mPa・sであった。
【0187】
【化8】
【0188】
《下層オーバーコート層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度として21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ、塗布液のガラス転移温度を24℃とした、平均粒子サイズ74nm)625gに水を加え、化合物Cを0.23g、化合物Iを0.13g、化合物Fを11.7g、化合物Hを2.7gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−235)11.5gを加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を0.1質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは2.6、粘度は25℃で30mPa・sであった。
【0189】
《上層オーバーコート層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度として21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ、塗布液のガラス転移温度を24℃とした、平均粒子サイズ116nm)649gに水を加え、カルナヴァワックス(中京油脂(株)製、セロゾール524:シリコーン含有量として5ppm未満)30質量%溶液18.4g、化合物Cを0.23g、化合物Eを1.0g、化合物Gを1.0g、化合物Iを0.87g、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒子サイズ7μm、平均粒子サイズの変動係数8%)3.45gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235)26.5gを加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を1.1質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは5.3、粘度は25℃で25mPa・sであった。
【0190】
【化9】
【0191】
《熱現像画像記録材料の作製》
上で作製した各支持体101〜108の下塗り第二層上に、画像形成層塗布液、保護層塗布液、下層オーバーコート層塗布液、上層オーバーコート層塗布液を以下の手順にしたがって塗布した。
支持体の下塗り第二層の上に、特願平10−292849号明細書中の図1で開示されているスライドビート塗布方式を用いて、前記の画像形成層塗布液を塗布銀量1.5g/m2になるように塗布した。さらにその上に、前記保護層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.29g/m2になるように画像形成層塗布液と共に同時重層塗布した。その後、保護層の上に前記下層オーバーコート層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.97g/m2および前記上層オーバーコート層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.07g/m2になるように下層オーバーコート塗布液と共に同時重層塗布し、熱現像感光材料を作製した。
塗布時の乾燥は、恒率過程、減率過程とも、乾球温度70〜75℃、露点14〜25℃、液膜表面温度35〜40℃の範囲で、塗布液の流動がほぼなくなる乾燥点近傍までは水平乾燥ゾーン(塗布機の水平方向に対し支持体が1.5°〜3°の角度)で行った。乾燥後の巻取りは温度23±5℃、相対湿度45±5%の条件下で行われ、巻き姿はその後の加工形態(画像形成層面側外巻)に合わせ、画像形成層面側を外にした。なお、感光材料の包袋内の相対湿度は20〜40%(25℃測定)で、得られた熱現像画像記録材料の画像形成側の膜面pHは5.3、ベック平滑度は900秒であり、反対側の膜面pHは5.9、ベック平滑度は560秒であった。
以上の方法により、支持体101〜108に対応する熱現像画像記録材料101〜108を作製した。
【0192】
《熱現像画像記録材料の評価》
作製した熱現像画像記録材料101〜108について、以下の評価を行った。
【0193】
(1)動摩擦係数の測定
表面性測定機(新東科学(株)製、HEIDONトライボギアTYPE:14DR)を用いて、熱現像処理温度におけるバック面側の動摩擦係数を、下記の条件で測定した。
サイズが2cm×3.5cmの平滑面部材(不織布)に、40gの荷重を乗せて、速度19mm/secで測定面を移動させたときの121℃での摩擦抵抗力(Fb)を測定し、次式で動摩擦係数を求めた。
動摩擦係数(μb)=Fb(g)/40(g)
【0194】
(2)搬送性試験
熱現像画像記録材料101〜108を幅610mmおよび長さ59mのシート状とし、これを円筒状のコア部材に画像形成層側を外向きにして巻き付け、ロール状にした。25℃、相対湿度50%および30℃、相対湿度75%の環境下で、このロール状のサンプルを785nmの半導体レーザーを有する日本電気製FT−286Rにセットし、このプロッターと、自動熱現像機FDS−6100X(富士写真フイルム(株)製)をドッキングし、露光、熱現像処理を行う工程(熱現像温度を121℃、ライン速度25mm/秒)を連続して30回行った。
このとき、露光前、サンプルが切断されてから熱現機から排出されるまでの時間を計測し、25℃、相対湿度50%での最大値と30℃、相対湿度75%での最大値の差を算出した。
差が5秒以上であるとローラーの空回りなど搬送不良が起こっているといえる。
【0195】
(3)接着性試験
熱現像画像記録材料101〜108を3.5cm×3.5cmに裁断し、25℃、相対湿度40%で16時間調湿した。調湿したサンプルを各4枚ずつ重ねて、その上下を同サイズのステンレス板で挟み、ズレが生じないようにテ−プで固定して10kgの荷重をかけた。60℃で24時間保管し、荷重を外し、室温に戻した後サンプルを1枚ずつ剥がして、画像形成層側の接着の度合いを以下の5段階で評価した。実用上は3以上のレベルが必要である。
5 接着痕がなく剥がす際に音もしないレベル
4 接着痕はないが剥がす音がわずかにするレベル
3 表面にわずかに接着痕が残るレベル
2 接着痕がサンプル面積の3割程度のレベル
1 接着痕が5割を超えるレベル
【0196】
(4)マット剤脱落試験
バック面と黒紙を接触させ、3.5cm×3.5cmあたり3kgの加重をかけてこすりあわせて、下記の基準で脱落を評価した。
○ 脱落がなかった
△ わずかに脱落が認められた
× かなりの脱落が認められた
【0197】
試験結果をまとめて表1に示す。
【0198】
【表1】
【0199】
最外層に水性ポリエステル樹脂を含有していない試料101は搬送性が劣るのに対して、水性ポリエステル樹脂とマット剤を含有する試料102,103,104,105および107は良好な性能を示す。但し、バインダー厚が薄い試料106はマット剤の脱落がおきた。またマット剤を使用しない試料108では接着が悪く、搬送性も劣っていた。
【0200】
【発明の効果】
本発明の熱現像画像記録材料は、重ねたときに相互に接着しにくいうえ、キズがつきにくく、搬送性が良好であるという特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱現像画像記録材料の熱現像処理に用いられる熱現像機の一構成例を示す側面図である。
【符号の説明】
10 熱現像画像記録材料
11 搬入ローラー対
12 搬出ローラー対
13 ローラー
14 平滑面
15 加熱ヒーター
16 ガイド板
A 予備加熱部
B 熱現像処理部
C 徐冷部
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱現像画像記録材料に関するものであり、熱現像処理時の搬送性が良好で、キズの付きにくい熱現像画像記録材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、印刷分野では、環境保全や省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、従来のような現像、定着、水洗といった工程を経ることの無い記録材料が求められている。
そのような要求に応える記録材料として、熱現像処理法を用いて画像を形成する熱現像画像記録材料が知られている。例えば、熱現像処理法を用いて写真画像を形成する熱現像写真感光材料は、特許文献1、特許文献2、非特許文献1等に開示されている。
【0003】
このような方式に基づく熱現像画像記録材料は、還元可能な銀源(たとえば有機銀塩)、感光性触媒(たとえばハロゲン化銀)、および還元剤を有機バインダーのマトリックス中に分散した状態で含有しており、熱処理のみで画像が形成されると言う利点があるため医療分野や、印刷新聞の製版分野で利用されている。
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,152,904号明細書
【特許文献2】米国特許第3,457,075号明細書
【非特許文献1】D.モーガン(Morgan)とB.シェリー(Shely)「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウォールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp)編集、第2項、1969年
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、熱現像方式を用いた画像記録材料は通常80〜150℃で熱現像されるため、印刷用途に使用する際に従来の写真感光材料の様にバインダーとしてゼラチンを使用すると、ゼラチンの収縮により寸度が大きく変化してしまうという問題が生じる。そこで、加熱により収縮しないポリマーバインダーを使用することによって、寸法変化の問題を実用上解決しているが、ロールやシートなどの製品形態で30℃以上の高温下に放置すると最外層同士が接着を起こすという別の問題を生じている。接着を防止するために、最外層にマット剤を添加する方法が知られているが、ゼラチンを用いないバインダーにマット剤を使うと、取り扱い時にマット剤が脱落しやすいという問題があった。
また、高温で現像することから、搬送部での擦れによるスリキズや、バインダーの粘着による搬送不良等の問題もあった。
【0006】
これらの従来技術の問題点を考慮して、本発明は、重ねたときに相互に接着しにくいうえ、キズがつきにくく、搬送性が良好な熱現像画像記録材料を提供することを目的とした。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、熱現像画像記録材料の最外層に特定の材料を使用することにより、目的を達成しうることを見出して、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、支持体の両面に各々1層以上の構成層を有する熱現像画像記録材料において、少なくとも片面の最外層が水性ポリエステル樹脂とマット剤を含有し、かつ、該最外層のバインダーの塗布量が0.5〜2g/m2であることを特徴とする熱現像画像記録材料を提供する。本発明の熱現像画像記録材料は、水性ポリエステル樹脂を含有する最外層が、支持体に対して画像を形成する層を有する側とは反対側に位置することが好ましい。また、水性ポリエステル樹脂を含有する最外層が、フッ素系界面活性剤およびすべり剤を含有することが好ましい。
【0009】
本発明の熱現像画像記録材料は、熱現像部が、搬送される熱現像画像記録材料の画像形成層側およびバック層側に加熱部材を備えるとともに、画像形成層側のみに搬送ローラーを備える熱現像機で熱現像処理を行うことができる。また、幅550〜650mmおよび長さ1〜65mのシート状で、その一部または全部が円筒形状のコア部材に画像形成層を外側にして巻き取られている形態をとることができる。また、本発明の熱現像画像記録材料は、20mm/秒〜200mm/秒で熱現像処理することができる。さらに、本発明の熱現像画像記録材料は750nm〜850nmに吸収極大を持つアンチハレーション染料を含有しており、かつ、750nm〜850nmの波長の光で露光し、熱現像後に600nm〜700nmの波長の光で記録情報を読み取ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の熱現像画像記録材料について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
本発明の熱現像画像記録材料は、支持体の両面に各々1層以上の構成層を有していて、少なくとも片面の最外層に、水性ポリエステル樹脂とマット剤を含有することを特徴とする。
最外層に使用される水性ポリエステル樹脂は、水性基を有するポリエステルであって、水溶性あるいは水分散性を有するものをいう。本発明で用いられる水性ポリエステル樹脂は、水分散されたラテックスであっても、有機溶媒に均一溶解された樹脂でも良い。本発明で用いられる水性ポリエステル樹脂は、平均分子量が4,000〜150,000であるものが好ましい。
【0012】
水性ポリエステル樹脂は公知の製造技術によりジカルボン酸とジオールとをエステル化(エステル交換)、重縮合させることによって製造されるが、その製造方法についてはなんら限定されるものではない。
ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタリンジカルボン酸のような芳香族ジカルボン酸またはそのエステルを主体とすることが好ましい。これは、芳香族ジカルボン酸の芳香核が、疎水性のプラスチックと親和性が大きいために密着性が向上する利点があるからである。特にテレフタル酸を用いた水性ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルの成型物に対して密着性が大きいため、好ましい水性ポリエステル樹脂である。
【0013】
本発明に使用される水性ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分としては、上記のような芳香族ジカルボン酸、またはそのエステルを使用することが好ましいが、これら以外にアジピン酸、コハク酸、セバチン酸、ドデカン二酸のような脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキシルジカルボン酸のような脂環式ジカルボン酸、ヒドロキシ安息香酸のようなヒドロキシカルボン酸またはこれらのエステルを、ジカルボン酸成分としてもしくはその一部として使用することもできる。
【0014】
エステルを使用する場合には、メチルエステル、エチルエステル等の低級アルキルエステルを使用することが好ましい。これらのエステルはモノエステルでもジエステルでも差支えない。
【0015】
一方、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール類が使用される。
【0016】
本発明で用いられる水性ポリエステルは、水溶性あるいは水分散性を付与するために分子中に親水基としてスルホン酸塩基あるいはカルボン酸塩基を含有するように重合して調製したものであることが好ましい。スルホン酸塩を含有させるためには、例えば5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分をジカルボン酸成分の一部として用いる方法が挙げられる。その使用量はジカルボン酸成分中に2〜15モル%が好ましい。
【0017】
カルボン酸塩を含有させるための具体例としては、ポリエステル樹脂の製造時に縮合酸成分として3官能以上の多価カルボン酸を使用したり、ポリエステル樹脂に重合性の不飽和カルボン酸をグラフトする方法などによりカルボン酸含有のポリエステルを作製し、アルカリ金属、各種アミン類、アンモニウム系化合物等とともに水溶性塩を形成する物質との塩類とする方法が挙げられる。
【0018】
水性ポリエステル樹脂中のカルボン酸塩の量は、生成したポリエステル樹脂の酸価が15〜250KOHmg/gの間となる量であることが好ましい。
【0019】
本発明で用いる水性ポリエステル樹脂は、分子量が4,000〜150,000であることが好ましい。分子量が4,000以下では耐水性、耐ブロッキング性、密着性等の樹脂物性が低下する傾向があり、150,000以上では水への均一な溶解もしくは分散が難しく、時間の経過とともにゲル化する傾向がある。水性ポリエステル樹脂の分子量は5,000〜50,000であることが特に好ましい。
【0020】
本発明で用いる水性ポリエステル樹脂は、通常は、水溶液あるいは水分散液にして用いる。水分散液にする手段としては、スルホン酸塩含有ポリエステル樹脂の場合は、攪拌下に好ましくは50〜90℃の温水に溶解若しくは分散させる方法を採用することが好ましい。このとき、樹脂の溶解もしくは分散を容易にするために水溶性有機溶剤を併用してもよい。水溶性有機溶剤としては、低級アルコール類、多価アルコール類およびそのアルキルエーテルまたはアルキルエステル類などが挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等を使用することができる。
【0021】
また、カルボン酸塩含有ポリエステル樹脂の場合は、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、各種アミン類等のアルカリ性化合物を添加した好ましくは50〜90℃の温水に、攪拌下に溶解もしくは分散させることができる。この場合も上記水溶性有機溶剤を併用してもよい。
【0022】
具体的には、ペスレジンA515G、A615G(以上高松油脂(株)製)、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD−size、WMS(以上イーストマンケミカル製)などが挙げられる。また、乳化分散に適したポリエステル重合体としては、バイロン200、103、300、500、600(以上東洋紡(株)製)などが挙げられる。なかでも、スルホン酸基を導入した水性ポリエステル−アクリル複合樹脂が特に好ましい。
【0023】
最外層に用いられるマット剤としては、特開平11−84573号公報の段落番号0052〜0059に記載のものを好ましく用いることができる。
本発明における熱現像画像記録材料の最外層表面のベック平滑度は、3000秒以下であり、好ましくは100〜2000秒である。ベック平滑度は、マット剤の粒子サイズおよび含有量を適宜調整することによりコントロールすることができる。
マット剤のサイズは3〜10μmであることが好ましく、3〜8μmであることがより好ましい。マット剤のサイズが大きいと取り扱い時に脱落が発生しやすい。
【0024】
本発明の熱現像画像記録材料の最外層にはフッ素系界面活性剤を好ましく含有させることができる。
【0025】
本発明に有用なフッ素系界面活性剤は、全部または一部がフッ素原子で置換されている炭素原子数が2〜20の炭化水素鎖と、親水性基、例えば金属塩のアニオン性基、第4級オニウム塩のアニオン基、ポリアルキレンオキシド基、ベタイン、第4級アンモニウムカチオン基等を有する化合物で、例えば英国特許第1,330,356号明細書、同第1,542,631号明細書、米国特許第3,666,478号、同第3,888,678号明細書、特公昭52−26687号公報、特開昭48−43130号公報、同49−46733号公報、同51−32322号公報、特開平2−12145号公報、同3−24657号公報、特公平3−27099号公報に記載されているフッ素系界面活性剤を挙げることができる。以下に本発明に有用なフッ素系界面活性剤の具体例を示すが、本発明で用いることができるフッ素系界面活性剤はこれらに限定されるものではない。
【0026】
【化1】
【0027】
【化2】
【0028】
フッ素系界面活性剤の添加量は、熱現像画像記録材料の片面1m2当たり0.1〜100mgであり、好ましくは0.5〜50mgである。
【0029】
本発明の熱現像画像記録材料の最外層には、滑り剤を含有させることができる。
【0030】
有用な滑り剤としては、例えば英国特許第955,061号明細書、同第1,143,118号明細書、米国特許第3,042,522号明細書、同第3,080,317号明細書、同第4,004,927号明細書、同第4,047,958号明細書、同第3,489,576号明細書、特開昭60−140341号公報に記載のシリコン系滑り剤、米国特許第2,454,043号明細書、同第2,732,305号明細書、同第2,976,148号明細書、同第3,206,311号明細書、独国特許第1,284,295号明細書、同第1,284,294号明細書に記載の高級脂肪酸系、高級脂肪アルコール系、高級脂肪酸アミド系滑り剤、英国特許第1,263,722号明細書、米国特許第3,933,516号明細書に記載の金属石鹸、米国特許第2,588,765号明細書、同第3,121,060号明細書、英国特許第1,198,387号明細書に記載の高級脂肪酸エステル系、高級脂肪アルコールのエーテル系滑り剤、米国特許第3,502,437号明細書、同第3,042,222号明細書に記載のタウリン系滑り剤等を挙げることができる。以下に具体例を示すが、本発明で用いることができる滑り剤はこれらに限定されるものではない。
【0031】
【化3】
【0032】
【化4】
【0033】
【化5】
【0034】
滑り剤の使用量は、最外層のゼラチン付量、マット剤の種類等により最適量は異なるが、通常、熱現像画像記録材料の片面1m2当たり5〜200mgであり、好ましくは15〜150mgである。
【0035】
本発明の熱現像画像記録材料は、PS版へ画像を複製する目的のほかに、画像情報を記録するバーコードが記録されていることが好ましい。自動化された工程においては、材料の確認も自動で行われる必要がある。バーコードは、一般的に使用されているフォーマットであるので、利便性もある。通常、バーコードリーダーは、780nm付近で読み取る機種と670nm付近で読み取る機種があるが、780nm付近では、濃淡差の読み取りがうまくいかない場合も多く、本発明の熱現像画像記録材料の場合、700nm以下で読み取ることが好ましく、600〜700nmで読み取ることがより好ましい。
【0036】
また、本発明の熱現像画像記録材料が、テープによって搬送されたり、テープでガイドベースに固定されて搬送された後に、トンボと呼ばれる画像で位置あわせが行われるが、その検出波長は、600nm〜800nmと多岐にわたる。700nm〜800nmの検出波長の場合、位置合わせに時間がかかる。位置合わせに時間がかかるとその分だけ搬送トラブルが発生する機会が多くなり、本発明の熱現像画像記録材料の場合、600nm〜700nmで読み取ることが好ましい。
【0037】
本発明の熱現像画像記録材料には有機銀塩を用いることができる。本発明で用いる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)および還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は、還元可能な銀イオン源を含む任意の有機物質であってよい。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪カルボン酸の銀塩が好ましい。配位子が4.0〜10.0の範囲の錯体安定度定数を有する有機または無機銀塩の錯体も好ましい。銀供給物質は、好ましくは画像形成層の約5〜70質量%を構成することができる。好ましい有機銀塩として、カルボキシル基を有する有機化合物の銀塩を挙げることができる。具体的には、脂肪族カルボン酸の銀塩および芳香族カルボン酸の銀塩を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。脂肪族カルボン酸の銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、リノール酸銀、酪酸銀および樟脳酸銀、これらの混合物などを挙げることができる。
【0038】
本発明においては、上記の有機酸銀ないしは有機酸銀の混合物の中でも、ベヘン酸銀含有率75mol%以上の有機酸銀を用いることが好ましく、ベヘン酸銀含有率85mol%以上の有機酸銀を用いることがさらに好ましい。ここでベヘン酸銀含有率とは、使用する有機酸銀に対するベヘン酸銀のモル分率を示す。本発明に用いる有機酸銀中に含まれるベヘン酸銀以外の有機酸銀としては、上記の例示有機酸銀を好ましく用いることができる。
【0039】
本発明に好ましく用いられる有機酸銀は、上記の有機酸のアルカリ金属塩(Na塩、K塩、Li塩等が挙げられる)溶液または懸濁液と硝酸銀を反応させることにより調製される。これらの調製方法については、特開2000−292882号公報の段落番号0019〜0021に記載の方法を用いることができる。
【0040】
本発明においては、液体を混合するための密閉手段の中に硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液を添加することにより有機酸銀を調製する方法を好ましく用いることができる。具体的には、特開2001−33907号公報に記載されている方法を用いることができる。
本発明においては有機酸銀の調製時に、硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液、あるいは反応液には水に可溶な分散剤を添加することができる。ここで用いる分散剤の種類および使用量については、特開2000−305214号公報の段落番号0052に具体例が記載されている。
【0041】
本発明に用いる有機酸銀は第3アルコールの存在下で調製することが好ましい。第3アルコールとしては、好ましくは総炭素数15以下の化合物が好ましく、10以下の化合物が特に好ましい。好ましい第3アルコールの例としては、tert−ブタノール等が挙げられるが、本発明で使用することができる第3アルコールはこれに限定されない。
本発明に用いる第3アルコールの添加時期は有機酸銀調製時のいずれのタイミングでもよいが、有機酸アルカリ金属塩の調製時に添加して、有機酸アルカリ金属塩を溶解して用いることが好ましい。また、本発明で用いる第3アルコールは、有機酸銀調製時の溶媒としての水に対して質量比で0.01〜10の範囲で使用することができるが、0.03〜1の範囲で使用することが好ましい。
【0042】
本発明に用いることができる有機銀塩の形状やサイズは特に制限されないが、特開2000−292882号公報の段落番号0024に記載のものを用いることが好ましい。有機銀塩の形状は、有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像から求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)は好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。測定方法としては、例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。この測定法での平均粒子サイズとしては0.05μm〜10.0μmの固体微粒子分散物が好ましい。より好ましい平均粒子サイズは0.1μm〜5.0μm、さらに好ましい平均粒子サイズは0.1μm〜2.0μmである。
【0043】
本発明に用いる有機銀塩は、脱塩したものであることが好ましい。脱塩法は特に制限されず、公知の方法を用いることができるが、遠心濾過、吸引濾過、限外濾過、凝集法によるフロック形成水洗等の公知の濾過方法を好ましく用いることができる。限外濾過の方法については、特開2000−305214号公報に記載の方法を用いることができる。
【0044】
本発明では、高S/Nで、粒子サイズが小さく、凝集のない有機銀塩固体分散物を得る目的で、画像形成媒体である有機銀塩を含み、かつ感光性銀塩を実質的に含まない水分散液を高速流に変換した後、圧力降下させる分散法を用いることが好ましい。これらの分散方法については特開2000−292882号公報の段落番号0027〜0038に記載の方法を用いることができる。
【0045】
本発明で用いる有機銀塩固体微粒子分散物の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。具体的には、体積荷重平均直径の標準偏差を体積荷重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が80%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。
【0046】
本発明に用いる有機銀塩固体微粒子分散物は、少なくとも有機銀塩と水からなるものである。有機銀塩と水との割合は特に限定されるものではないが、有機銀塩の全体に占める割合は5〜50質量%であることが好ましく、特に10〜30質量%の範囲が好ましい。前述の分散助剤を用いることは好ましいが、粒子サイズを最小にするのに適した範囲で最少量使用するのが好ましく、有機銀塩に対して0.5〜30質量%、特に1〜15質量%の範囲が好ましい。
【0047】
本発明で用いる有機銀塩は所望の量で使用できるが、銀量として0.1〜5g/m2が好ましく、さらに好ましくは0.5〜3g/m2であり、最も好ましくは1〜2g/m2である。
【0048】
本発明にはCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンを非感光性有機銀塩へ添加することが好ましい。Ca、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの非感光性有機銀塩への添加については、ハロゲン化物でない、水溶性の金属塩の形で添加することが好ましく、具体的には硝酸塩や硫酸塩などの形で添加することが好ましい。ハロゲン化物での添加は処理後の感光材料の光(室内光や太陽光など)による画像保存性、いわゆるプリントアウト性を悪化させるので好ましくない。このため、本発明ではハロゲン化物でない、水溶性の金属塩の形で添加することが好ましい。
【0049】
本発明に好ましく用いるCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの添加時期としては、該非感光性有機銀塩の粒子形成後であって、粒子形成直後、分散前、分散後および塗布液調製前後など塗布直前までであればいずれの時期でもよく、好ましくは分散後、塗布液調製前後である。
【0050】
本発明におけるCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの添加量としては、非感光性有機銀1molあたり10−3〜10−1molが好ましく、特に5×10−3〜5×10−2molが好ましい。
【0051】
本発明の熱現像画像記録材料には、感光性ハロゲン化銀を用いることができる。
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀は、ハロゲン組成として特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀を用いることができ、好ましくは塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀である。感光性ハロゲン化銀乳剤の粒子形成については、特開平11−119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法で粒子形成することができるが、特にこの方法に限定されるものではない。
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、十四面体、平板状、球状、棒状、ジャガイモ状等を挙げることができるが、本発明においては特に立方体状粒子あるいは平板状粒子が好ましい。粒子のアスペクト比、面指数など粒子形状の特徴については、特開平11−119374号公報の段落番号0225に記載されているものと同じである。また、ハロゲン組成の分布はハロゲン化銀粒子の内部と表面において均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を用いる場合は、好ましくは2〜5重構造、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子である。また塩化銀または塩臭化銀粒子の表面に臭化銀を局在させる技術も用いることができる。ハロゲン組成の分布は粒子の内部と表面において均一であることが好ましい。
【0052】
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀のハロゲン化銀粒子の粒子サイズは、特に制限なく用いることができるが、0.12μm以下が好ましく、さらに0.01〜0.10μmが好ましい。本発明で用いるハロゲン化銀粒子の粒子サイズ分布は、単分散度の値が30%以下であり、好ましくは1〜20%であり、さらに5〜15%である。ここで単分散度は、粒子サイズの標準偏差を平均粒子サイズで割った値の百分率(%)(変動係数)として定義されるものである。なおハロゲン化銀粒子の粒子サイズは、便宜上、立方体粒子の場合は稜長で表し、その他の粒子(八面体、十四面体、平板状など)は投影面積円相当直径で算出する。
【0053】
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表の第VII族あるいは第VIII族の金属または金属錯体を含有する。具体的な金属錯体の構造としては特開平7−225449号公報等に記載された構造の金属錯体を用いることができるが、周期律表の第VII族あるいは第VIII族の金属または金属錯体の中心金属として好ましくはロジウム、レニウム、ルテニウム、オスニウム、イリジウムである。特に好ましい金属錯体は、(NH4)3Rh(H2O)Cl5、K2Ru(NO)Cl5、K3IrCl6、K4Fe(CN)6である。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属および異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1molに対し1×10−9mol〜1×10−3molの範囲が好ましく、1×10−8mol〜1×10−4molの範囲がより好ましい。これら重金属の種類、添加方法に関しては、特開平11−119374号公報の段落番号0227〜0240に記載されている。
【0054】
感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている水洗法により脱塩することができる。
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀乳剤は化学増感することが好ましい。化学増感については、特開平11−119374号公報の段落番号0242〜0250に記載されている方法を用いることが好ましい。
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開EP293917A号公報に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加することが好ましい。
【0055】
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀に含有するゼラチンとしては、感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持するために、低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。低分子量ゼラチンの分子量は、500〜60,000であり、好ましくは分子量1,000〜40,000である。これらの低分子量ゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、脱塩処理後の分散時に使用することが好ましい。さらには、粒子形成時は通常のゼラチン(分子量100,000程度)を使用し、脱塩処理後の分散時に低分子量ゼラチンを使用することがより好ましい。
【0056】
分散媒の濃度は0.05〜20質量%にすることができるが、取り扱い上5〜15質量%の濃度域が好ましい。ゼラチンの種類としては、アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、フタル化ゼラチンの如き修飾ゼラチンが用いられるが、アルカリ処理ゼラチン、フタル化ゼラチンの如き修飾ゼラチンが好ましい。
【0057】
本発明に用いる熱現像画像記録材料中のハロゲン化銀乳剤は、1種だけを用いてもよいし、2種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)を併用してもよいが、本発明では1種のハロゲン化銀乳剤を用いることが好ましい。
【0058】
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀の使用量としては有機銀塩1molに対して感光性ハロゲン化銀0.01mol〜0.5molが好ましく、0.02mol〜0.3molがより好ましく、0.03mol〜0.25molが特に好ましい。別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法および混合条件については、それぞれ調製を終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等がある。また、混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましい方法である。本発明では、別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩を低速(100〜200rpm)プロペラ攪拌機で混合することが好ましい。
【0059】
本発明に用いることができる増感色素としては、ハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので、露光光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。例えば、550nm〜750nmの波長領域を分光増感する色素としては、特開平10−186572号公報の一般式(II)で表される色素が挙げられ、具体的にはII−6、II−7、II−14、II−15、II−18、II−23、II−25の色素を好ましい色素として例示することができる。また、750〜1400nmの波長領域を分光増感する色素としては、特開平11−119374号公報の一般式(I)で表される色素が挙げられ、具体的には(25)、(26)、(30)、(32)、(36)、(37)、(41)、(49)、(54)の色素を好ましい色素として例示することができる。さらに、J−bandを形成する色素として、米国特許第5,510,236号明細書、同第3,871,887号明細書の実施例5に記載の色素、特開平2−96131号公報、特開昭59−48753号公報に開示されている色素を好ましい色素として例示することができる。これらの増感色素は単独で用いてもよく、2種以上組合せて用いてもよいが、本発明では単独で用いることが好ましい。
【0060】
これら増感色素の添加方法は、特開平11−119374号公報の段落番号0106に記載されている方法が挙げられるが、エタノール、メタノールに溶解して添加することが好ましい。
本発明における増感色素の添加量は、感度やカブリの性能に合わせて所望の量にすることができるが、感光層のハロゲン化銀1mol当たり10−6〜1molが好ましく、さらに好ましくは10−4〜10−1molである。
【0061】
本発明では分光増感効率を向上させるため、強色増感剤を用いることが好ましい。本発明に用いる強色増感剤としては、欧州特許公開EP587338A号公報、米国特許第3,877,943号明細書、同第4,873,184号明細書に開示されている化合物、複素芳香族あるいは脂肪族メルカプト化合物、複素芳香族ジスルフィド化合物、スチルベン、ヒドラジン、トリアジンから選択される化合物などが挙げられる。
好ましい強色増感剤は、特開平5−341432号公報に開示されている複素芳香族メルカプト化合物、複素芳香族ジスルフィド化合物、特開平4−182639号公報の一般式(I)あるいは(II)で表される化合物、特開平10−111543号公報の一般式(I)で表されるスチルベン化合物、特開平11−109547号公報の一般式(I)で表わされる化合物である。特に好ましい強色増感剤は、特開平5−341432号公報のM−1〜M−24の化合物、特開平4−182639号公報のd−1)〜d−14)の化合物、特開平10−111543号公報のSS−01〜SS−07の化合物、特開平11−109547号公報の31、32、37、38、41〜45、51〜53の化合物である。
これらの強色増感剤の添加量は、乳剤層中にハロゲン化銀1mol当たり10−4〜1molの範囲が好ましく、ハロゲン化銀1mol当たり0.001〜0.3molの範囲がより好ましい。
【0062】
本発明の熱現像画像記録材料にはリンを含む化合物として、五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩を併用して用いることが特に好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどがある。
本発明において好ましく用いることができる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩は、少量で所望の効果を発現するという点から画像形成層あるいはそれに隣接するバインダー層に添加する。
リンを含む化合物および五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩の使用量(熱現像画像記録材料1m2あたりの塗布量)は感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1〜500mg/m2が好ましく、0.5〜100mg/m2がより好ましい。
【0063】
本発明の熱現像画像記録材料は、好ましくは有機銀塩のための還元剤を含む。有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質、好ましくは有機物質である。フェニドン、ハイドロキノンおよびカテコールなどの従来の写真現像剤は有用であるが、ヒンダードフェノール還元剤が好ましい。還元剤は、画像形成層を有する面の銀1molに対して0.05〜5mol含まれることが好ましく、0.1〜2molで含まれることがさらに好ましい。還元剤の添加層は支持体に対して画像形成層側のいかなる層でもよい。画像形成層以外の層に添加する場合は銀1molに対して0.1〜10molと多めに使用することが好ましい。また、還元剤は現像時のみ有効に機能するように誘導化されたいわゆるプレカーサーであってもよい。
【0064】
有機銀塩を利用した熱現像画像記録材料においては広範囲の還元剤を使用することができる。例えば、特開昭46−6074号公報、同47−1238号公報、同47−33621号公報、同49−46427号公報、同49−115540号公報、同50−14334号公報、同50−36110号公報、同50−147711号公報、同51−32632号公報、同51−1023721号公報、同51−32324号公報、同51−51933号公報、同52−84727号公報、同55−108654号公報、同56−146133号公報、同57−82828号公報、同57−82829号公報、特開平6−3793号公報、米国特許第3,679,426号明細書、同第3,751,252号明細書、同第3,751,255号明細書、同第3,761,270号明細書、同第3,782,949号明細書、同第3,839,048号明細書、同第3,928,686号明細書、同第5,464,738号明細書、独国特許第2,321,328号明細書、欧州特許公開EP692732A号公報などに開示されている還元剤を用いることができる。例えば、フェニルアミドオキシム、2−チエニルアミドオキシムおよびp−フェノキシフェニルアミドオキシムなどのアミドオキシム;例えば4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンズアルデヒドアジンなどのアジン;2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオニル−β−フェニルヒドラジンとアスコルビン酸との組合せのような脂肪族カルボン酸アリールヒドラジドとアスコルビン酸との組合せ;ポリヒドロキシベンゼンと、ヒドロキシルアミン、レダクトンおよび/またはヒドラジンの組合せ(例えばハイドロキノンと、ビス(エトキシエチル)ヒドロキシルアミン、ピペリジノヘキソースレダクトンまたはホルミル−4−メチルフェニルヒドラジンの組合せなど);フェニルヒドロキサム酸、p−ヒドロキシフェニルヒドロキサム酸およびβ−アリニンヒドロキサム酸などのヒドロキサム酸;アジンとスルホンアミドフェノールとの組合せ(例えば、フェノチアジンと2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノールなど);エチル−α−シアノ−2−メチルフェニルアセテート、エチル−α−シアノフェニルアセテートなどのα−シアノフェニル酢酸誘導体;2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、6,6’−ジブロモ−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチルおよびビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタンに例示されるようなビス−β−ナフトール;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体(例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンまたは2’,4’−ジヒドロキシアセトフェノンなど)の組合せ;3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロンなどの5−ピラゾロン;ジメチルアミノヘキソースレダクトン、アンヒドロジヒドロアミノヘキソースレダクトンおよびアンヒドロジヒドロピペリドンヘキソースレダクトンに例示されるようなレダクトン;2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノールおよびp−ベンゼンスルホンアミドフェノールなどのスルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオンなど;2,2−ジメチル−7−tert−ブチル−6−ヒドロキシクロマンなどのクロマン;2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジンなどの1,4−ジヒドロピリジン;ビスフェノール(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−エチリデン−ビス(2−tert−ブチル−6−メチルフェノール)、1,1,−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサンおよび2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなど);アスコルビン酸誘導体(例えば、パルミチン酸1−アスコルビル、ステアリン酸アスコルビルなど);ならびにベンジルおよびビアセチルなどのアルデヒドおよびケトン;3−ピラゾリドンおよびある種のインダン−1,3−ジオン;クロマノール(トコフェロールなど)などがある。特に好ましい還元剤は、ビスフェノール、クロマノールである。
【0065】
本発明で還元剤を用いる場合、それは、水溶液、有機溶媒溶液、粉末、固体微粒子分散物、乳化分散物などいかなる方法で添加してもよいが、この中でも固体微粒子分散物として添加することが好ましい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際には当技術分野で周知の分散助剤を用いることが好ましく、具体的には特開2001−83657公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。
【0066】
画像を向上させる「色調剤」として知られる添加剤を含ませると光学濃度が高くなることがある。また、色調剤は黒色銀画像を形成させるうえでも有利になることがある。色調剤は支持体に対して画像形成層側の層に銀1molあたりの0.01〜1molの量含ませることが好ましく、0.02〜0.5mol含ませることがさらに好ましい。また、色調剤は現像時のみ有効に機能するように誘導化されたいわゆるプレカーサーであるとさらに好ましい。
有機銀塩を利用した熱現像画像記録材料においては広範囲の色調剤を使用することができる。例えば、特開昭46−6077号公報、同47−10282号公報、同49−5019号公報、同49−5020号公報、同49−91215号公報、同49−91215号公報、同50−2524号公報、同50−32927号公報、同50−67132号公報、同50−67641号公報、同50−114217号公報、同51−3223号公報、同51−27923号公報、同52−14788号公報、同52−99813号公報、同53−1020号公報、同53−76020号公報、同54−156524号公報、同54−156525号公報、同61−183642号公報、特開平4−56848号公報、特公昭49−10727号公報、同54−20333号公報、米国特許第3,080,254号明細書、同第3,446,648号明細書、同第3,782,941号明細書、同第4,123,282号明細書、同第4,510,236号明細書、英国特許第1,380,795号明細書、ベルギー特許第841,910号明細書などに開示される色調剤を用いることができる。色調剤の具体例としては、フタルイミドおよびN−ヒドロキシフタルイミド;スクシンイミド、ピラゾリン−5−オン、ならびにキナゾリノン、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリンおよび2,4−チアゾリジンジオンのような環状イミド;ナフタルイミド(例えば、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタルイミド);コバルト錯体(例えば、コバルトヘキサミントリフルオロアセテート);3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,4−ジメルカプトピリミジン、3−メルカプト−4,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾールおよび2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールに例示されるメルカプタン;N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド、(例えば、(N,N−ジメチルアミノメチル)フタルイミドおよびN,N−(ジメチルアミノメチル)−ナフタレン−2,3−ジカルボキシイミド);ならびにブロック化ピラゾール、イソチウロニウム誘導体およびある種の光退色剤(例えば、N,N’−ヘキサメチレンビス(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジアザオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)および2−(トリブロモメチルスルホニル)−ベンゾチアゾール;ならびに3−エチル−5−[(3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)−1−メチルエチリデン]−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン;フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩、または4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオンなどの誘導体;フタラジノンとフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;フタラジン、フタラジン誘導体(たとえば、4−(1−ナフチル)フタラジン、6−クロロフタラジン、5,7−ジメトキシフタラジン、6−イソブチルフタラジン、6−tert−ブチルフタラジン、5,7−ジメチルフタラジン、および2,3−ジヒドロフタラジンなどの誘導体)もしくは金属塩;フタラジンおよびその誘導体とフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;キナゾリンジオン、ベンズオキサジンまたはナフトオキサジン誘導体;色調調節剤としてだけでなくその場でハロゲン化銀生成のためのハライドイオンの源としても機能するロジウム錯体、例えばヘキサクロロロジウム(III)酸アンモニウム、臭化ロジウム、硝酸ロジウムおよびヘキサクロロロジウム(III)酸カリウムなど;無機過酸化物および過硫酸塩、例えば、過酸化二硫化アンモニウムおよび過酸化水素;1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン、8−メチル−1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオンおよび6−ニトロ−1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオンなどのベンズオキサジン−2,4−ジオン;ピリミジンおよび不斉−トリアジン(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン、2−ヒドロキシ−4−アミノピリミジンなど)、アザウラシル、およびテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン、および1,4−ジ(o−クロロフェニル)−3,6−ジメルカプト−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン)などが好ましく用いられる。特にフタラジン誘導体、フタル酸誘導体が好ましく用いられる。本発明では色調剤として、特開2000−35631号公報に記載の一般式(F)で表されるフタラジン誘導体が最も好ましく用いられる。具体的には同公報に記載のA−1〜A−10が好ましく用いられる
【0067】
色調剤は、水あるいは適当な有機溶媒に溶解して用いることが好ましい。当技術分野で周知の可溶化剤を用いて水溶液化して添加することが好ましく、具体的には特開2001−83657公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。また、適当な有機溶媒に溶解して用いる場合は、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることが好ましい。また、酸性基が結合した化合物の場合は当量のアルカリで中和し、塩として用いることが好ましい。
【0068】
水への溶解度が低い場合は、乳化分散法、固体分散法で分散して用いることが好ましい。乳化分散を行う場合は、当技術分野で周知の乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して、熱現像画像記録材料中に用いることが好ましい。固体分散を行う場合は、当技術分野で周知の固体分散法によって、粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、サンドグラインダーミル、マントンゴーリン、マイクロフルイダイザーあるいは超音波によって分散し、熱現像画像記録材料中に用いることが好ましい。また、乳化分散、固体分散を行うには当技術分野で周知の分散助剤を用いることが好ましく、具体的には特開2001−83657公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。
【0069】
本発明の熱現像画像記録材料において、ハロゲン化銀乳剤および/または有機銀塩は、カブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体によって、付加的なカブリの生成に対してさらに保護され、在庫貯蔵中における感度の低下に対して安定化することが好ましい。単独または組合せて使用することができる適当なカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体は、米国特許第2,131,038号明細書および同第2,694,716号明細書に記載のチアゾニウム塩、米国特許第2,886,437号明細書および同第2,444,605号明細書に記載のアザインデン、米国特許第2,728,663号明細書に記載の水銀塩、米国特許第3,287,135号明細書に記載のウラゾール、米国特許第3,235,652号明細書に記載のスルホカテコール、英国特許第623,448号明細書に記載のオキシム、ニトロン、ニトロインダゾール、米国特許第2,839,405号明細書に記載の多価金属塩、米国特許第3,220,839号明細書に記載のチウロニウム塩、ならびに米国特許第2,566,263号明細書および同第2,597,915号明細書に記載のパラジウム、白金および金塩、米国特許第4,108,665号明細書および同第4,442,202号明細書に記載のハロゲン置換有機化合物、米国特許第4,128,557号明細書および同第4,137,079号明細書、同第4,138,365号明細書および同第4,459,350号明細書に記載のトリアジンならびに米国特許第4,411,985号明細書に記載のリン化合物などがある。
【0070】
本発明の熱現像画像記録材料は、高感度化やカブリ防止を目的として安息香酸類を含有することが好ましい。本発明で用いる安息香酸類はいかなる安息香酸誘導体でもよいが、好ましい例としては、米国特許第4,784,939号明細書、同第4,152,160号明細書、特開平9−329863号公報、同9−329864号公報、同9−281637号公報などに記載の化合物が挙げられる。安息香酸類は熱現像画像記録材料のいかなる層に添加してもよいが、支持体に対して画像形成層側の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。安息香酸類の添加は塗布液調製のいかなる工程で行ってもよく、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でもよいが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。安息香酸類の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行ってもよい。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加してもよい。安息香酸類の添加量としてはいかなる量でもよいが、銀1mol当たり1×10−6mol〜2molが好ましく、1×10−3mol〜0.5molがさらに好ましい。
【0071】
本発明を実施するために必須ではないが、画像形成層にカブリ防止剤として水銀(II)塩を加えることが有利なことがある。この目的のために好ましい水銀(II)塩は、酢酸水銀および臭化水銀である。本発明に使用する水銀の添加量としては、塗布された銀1mol当たり好ましくは1×10−9mol〜1×10−3mol、さらに好ましくは1×10−8mol〜1×10−4molの範囲である。
【0072】
また、特開2000−284399号公報に記載の式(Z)で表されるサリチル酸誘導体がカブリ防止剤として好ましく用いられる。具体的には、同公報に記載の(A−1)〜(A−60)が好ましく用いられる。式(Z)で表されるサリチル酸誘導体の添加量は、Ag1molに対するmol量(mol/molAg)で示して、好ましくは1×10−5〜5×10−1mol/molAg、より好ましくは5×10−5〜1×10−1mol/molAg、さらに好ましくは1×10−4〜5×10−2mol/molAgである。これらは1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0073】
本発明に好ましく用いられるカブリ防止剤として、ホルマリンスカベンジャーが有効であり、例えば、特開2000−221634号公報に記載の式(S)で表される化合物およびその例示化合物(S−1)〜(S−24)が挙げられる。
【0074】
本発明に用いるカブリ防止剤は、水あるいは適当な有機溶媒に溶解して用いることができる。水溶液として添加する場合は、当技術分野で周知の可溶化剤を用いることができ、具体的には特開2001−83657公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。有機溶媒に溶解して用いる場合は、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることが好ましい。また、酸性基が結合した化合物の場合は当量のアルカリで中和し、塩として用いることが好ましい。
水への溶解度が低い場合は、乳化分散法、固体分散法で分散して用いることが好ましい。乳化分散を行う場合は、当技術分野で周知の乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して、熱現像画像記録材料中に用いることが好ましい。固体分散を行う場合は、当技術分野で周知の固体分散法によって、粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、サンドグラインダーミル、マントンゴーリン、マイクロフルイダイザーあるいは超音波によって分散し、熱現像画像記録材料中に用いることが好ましい。また、乳化分散、固体分散を行うには当技術分野で周知の分散助剤を用いることが好ましく、具体的には特開2001−83657号公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。
【0075】
本発明に用いるカブリ防止剤は、支持体に対して画像形成層側の層、即ち画像形成層あるいはこの層側の他のどの層に添加してもよいが、画像形成層あるいはそれに隣接する層に添加することが好ましい。画像形成層は還元可能な銀塩(有機銀塩)を含有する層であり、好ましくはさらに感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層であることが好ましい。
【0076】
本発明の熱現像画像記録材料には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御することや、現像前後の保存性を向上させることなどを目的としてメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることが好ましい。
本発明にメルカプト化合物を使用する場合、いかなる構造のものでもよいが、Ar−SM、Ar−S−S−Arで表されるものが好ましい。式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、イオウ、酸素、セレニウムまたはテルリウム原子を有する芳香環または縮合芳香環である。好ましくは、複素芳香環はベンズイミダゾール、ナフスイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフスオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリンまたはキナゾリノンである。この複素芳香環は、例えば、ハロゲン(例えば、BrおよびCl)、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、アルキル(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、アルコキシ(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)およびアリール(置換基を有していてもよい)からなる置換基群から選択されるものを有してもよい。メルカプト置換複素芳香族化合物をとしては、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、6−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2,2’−ジチオビス−(ベンゾチアゾール)、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4,5−ジフェニル−2−イミダゾールチオール、2−メルカプトイミダゾール、1−エチル−2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトキノリン、8−メルカプトプリン、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリノン、7−トリフルオロメチル−4−キノリンチオール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−ピリジンチオール、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジンモノヒドレート、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−ヒドキロシ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプトピリミジン、4,6−ジアミノ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプト−4−メチルピリミジンヒドロクロリド、3−メルカプト−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、3−(5−メルカプトテトラゾール)−ベンゼンスルホン酸ナトリウム、N−メチル−N’−{3−(5−メルカプトテトラゾリル)フェニル}ウレア、2−メルカプト−4−フェニルオキサゾールなどが好ましく用いられる。
これらのメルカプト化合物の添加量としては画像形成層中に銀1mol当たり0.001〜1.0molの範囲が好ましく、さらに好ましくは、銀の1mol当たり0.001〜0.3molの量である。
【0077】
本発明の熱現像画像記録材料では、アンモニアなどの揮発性の塩基は揮発しやすく、塗布する工程や熱現像時だけでなく、保存中にも揮発するため、膜内に存在することは好ましくなく、NH4 +含有量は支持体1m2当たりの塗布量で、0.06mmol以下であることが好ましい。より好ましくは、0.03mmol以下である。膜中のNH4 +量の定量は、東ソー社製8000タイプイオンクロマト測定装置(電気導電度法)および分離カラムとして、東ソー社製TSKgelIC−Cation、ガードカラムとして、TSK guard column IC−Cを用いて測定した。溶離液には、2mM硝酸水溶液を用い、1.2ml/minの流量で行った。また、カラム恒温槽温度は40℃で行った。
【0078】
熱現像画像記録材料からのNH4 +の抽出は、抽出液として、酢酸:イオン交換水=1:148混合溶液を用い、上記抽出液5mlに熱現像画像記録材料1x3.5cm2の大きさの熱現像画像記録材料を2時間浸して行い、抽出後、0.45μmのフィルターで濾過した溶液を測定した。
膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸や、不揮発性の塩基を用いることが好ましい。
本発明の熱現像画像記録材料の熱現像処理前の膜面pHは6.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは5.5以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。
なお、膜面pHの測定方法は、特開2000−284339号公報の段落番号0123に記載されている。
【0079】
本発明の熱現像画像記録材料は、支持体上に、有機銀塩、還元剤および感光性ハロゲン化銀を含む画像形成層を有し、画像形成層上には少なくとも1層の保護層が設けられていることが好ましい。また、本発明の熱現像画像記録材料は支持体に対して画像形成層と反対側(バック面)に少なくとも1層のバック層を有することが好ましい。
【0080】
本発明で用いるバインダーとしては、天然ポリマー合成樹脂やポリマーおよびコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)およびポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。
【0081】
親水性でも疎水性でもよいが、本発明においては、熱現像後のカブリを低減させるために、疎水性透明バインダーを使用することが好ましい。好ましいバインダーとしては、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタンなどがあげられる。その中でもポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレートは特に好ましく用いられる。
【0082】
熱現像画像記録材料の表面を保護したり擦り傷を防止するために、画像形成層の外側に保護層を有することが好ましい。これらの保護層に用いられるバインダーは画像形成層に用いられるバインダーと同じ種類でも異なった種類でもよい。好ましくは擦り傷や相の変形等を防止するために画像形成層を構成するバインダーポリマーよりも軟化点の高いポリマーが用いられ、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等がこの目的にかなっている。
【0083】
本発明で用いるバインダーとして、水を主成分とする溶媒(分散媒)を用いた塗布をおこなう場合には、以下に述べるポリマーラテックスを用いることが好ましい。
本発明の熱現像画像記録材料の感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層のうち少なくとも1層は以下に述べるポリマーラテックスを全バインダーの50質量%以上用いた画像形成層であることが好ましい。また、ポリマーラテックスは画像形成層だけではなく、保護層やバック層に用いてもよく、特に寸法変化が問題となる印刷用途に本発明の熱現像画像記録材料を用いる場合には、保護層やバック層にもポリマーラテックスを用いることが好ましい。ただしここで言う「ポリマーラテックス」とは水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散されたものである。分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散されたものなどいずれでもよい。なお本発明で用いるポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などに記載されている。分散粒子の平均粒子サイズは1〜50000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒子サイズ分布に関しては特に制限は無く、広い粒子サイズ分布を持つものでも単分散の粒子サイズ分布を持つものでもよい。
【0084】
本発明で用いるポリマーラテックスとしては、通常の均一構造のポリマーラテックス以外の、いわゆるコア/シェル型のラテックスでもよい。この場合コアとシェルはガラス転移温度を変えると好ましい場合がある。
【0085】
本発明で用いるバインダーに好ましく用いるポリマーラテックスのガラス転移温度(Tg)は保護層、バック層と画像形成層とでは好ましい範囲が異なる。画像形成層にあっては熱現像時に写真有用素材の拡散を促すため、−30〜40℃であることが好ましい。保護層やバック層に用いる場合には種々の機器と接触するために25〜70℃のガラス転移温度が好ましい。
【0086】
本発明で用いるポリマーラテックスの最低造膜温度(MFT)は−30℃〜90℃、より好ましくは0℃〜70℃程度が好ましい。最低造膜温度をコントロールするために造膜助剤を添加することが好ましい。造膜助剤は可塑剤ともよばれポリマーラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物(通常有機溶剤)で、例えば前述の「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」に記載されている。
【0087】
本発明で用いるポリマーラテックスに用いられるポリマー種としてはアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはこれらの共重合体などが挙げられる。ポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでも、また架橋されたポリマーでもよい。またポリマーとしては単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでもブロックコポリマーでもよい。好ましいポリマーは直鎖のランダムコポリマーである。ポリマーの分子量は数平均分子量で5,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜100,000程度が好ましい。分子量が小さすぎるものは画像形成層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く、好ましくない。
【0088】
本発明の熱現像画像記録材料の画像形成層のバインダーとして用いられるポリマーラテックスの具体例としては、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/ブタジエン/イタコン酸コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/スチレン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/ジビニルベンゼン/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/塩化ビニル/アクリル酸コポリマーのラテックス、塩化ビニリデン/エチルアクリレート/アクリロニトリル/メタクリル酸コポリマーのラテックスなどが挙げられる。さらに具体的には、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸=33.5/50/16.5(質量%)のコポリマーラテックス、メチルメタクリレート/ブタジエン/イタコン酸=47.5/47.5/5(質量%)のコポリマーラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸=95/5(質量%)のコポリマーラテックスなどが挙げられる。また、このようなポリマーは市販もされていて、例えばアクリル樹脂の例として、セビアンA−4635,46583、4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol LX811、814、821、820、857(以上日本ゼオン(株)製)、VONCORT−R3340、R3360、R3370、4280(以上大日本インキ化学(株)製)など、ポリエステル樹脂としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD−size、WMS(以上イーストマンケミカル製)など、ポリウレタン樹脂としてはHYDRAN AP10、20、30、40(以上大日本インキ化学(株)製)など、ゴム系樹脂としてはLACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上大日本インキ化学(株)製)、Nipol LX410、430,435、438C(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニル樹脂としてはG351、G576(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニリデン樹脂としてはL502、L513(以上旭化成工業(株)製)、アロンD7020、D504、D5071(以上三井東圧(株)製)など、オレフィン樹脂としてはケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。これらのポリマーは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドして用いてもよいが、単独で用いることが好ましい。
【0089】
画像形成層には全バインダーの50質量%以上として上記ポリマーラテックスが好ましく用いられるが、70質量%以上として上記ポリマーラテックスが用いられることがさらに好ましい。
【0090】
画像形成層には必要に応じて全バインダーの50質量%以下の範囲でゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は画像形成層の全バインダーの30質量%以下、さらには15質量%以下が好ましい。
【0091】
画像形成層は水系の塗布液を塗布後乾燥して調製することが好ましい。ただし、ここで言う「水系」とは塗布液の溶媒(分散媒)の60質量%以上が水であることをいう。塗布液の水以外の成分はメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなどの水混和性の有機溶媒を用いることができる。具体的な溶媒組成の例としては以下のようなものがある。水/メタノール=90/10、水/メタノール=70/30、水/エタノール=90/10、水/イソプロパノール=90/10、水/ジメチルホルムアミド=95/5、水/メタノール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メタノール/ジメチルホルムアミド=90/5/5。(ただし数字は質量%を表す。)
【0092】
画像形成層の全バインダー量は0.2〜30g/m2、より好ましくは1〜15g/m2の範囲が好ましい。画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加することが好ましい。
【0093】
さらに、保護層用のバインダーとして、特開2000−267226号公報の段落番号0025〜0029に記載の有機概念図に基づく無機性値を有機性値で割ったI/O値の異なるポリマーラテックスの組み合わせを好ましく用いることができる。
【0094】
本発明においては必要に応じて、特開2000−267226号公報の段落番号0021〜0025に記載の可塑剤(例、ベンジルアルコール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3−モノイソブチレートなど)を添加して、造膜温度をコントロールすることができる。また、特開2000−267226号公報の段落番号0027〜0028に記載の如くポリマーバインダー中に親水性ポリマーを、塗布液中に水混和性の有機溶媒を添加することができる。
【0095】
それぞれの層には、特開2000−196783号公報の段落番号0023〜0041に記載の官能基を導入した第一のポリマーラテックスとこの第一のポリマーラテックスと反応しうる官能基を有する架橋剤および/または第二のポリマーラテックスを用いることもできる。
上記の官能基は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、N−メチロール基、オキサゾリニル基など、架橋剤としては、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、メチロ−ル化合物、ヒドロキシ化合物、カルボキシル化合物、アミノ化合物、エチレンイミン化合物、アルデヒド化合物、ハロゲン化合物などから選ばれる。架橋剤の具体例として、イソシアネート化合物としてヘキサメチレンイソシアネート、デュラネートWB40−80D、WX−1741(旭化成工業(株)製)、バイヒジュール3100(住友バイエルウレタン(株)製)、タケネートWD725(武田薬品工業(株)製)、アクアネート100、200(日本ポリウレタン(株)製)、特開平9−160172号公報記載の水分散型ポリイソシアネート;アミノ化合物としてスミテックスレジンM−3(住友化学工業(株)製);エポキシ化合物としてデナコールEX−614B(ナガセ化成工業(株)製);ハロゲン化合物として2,4ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンナトリウムなどが挙げられる。
【0096】
保護層用の全バインダー量は、本発明に好ましく用いられる膜厚3μm以上を達成する上で必要な量として、1〜10.0g/m2が好ましく、2〜6.0g/m2がより好ましい。
本発明の熱現像画像記録材料の保護層の膜厚は、3μm以上が好ましく、4μm以上がさらに好ましい。保護層膜厚の上限としては特に制限はないが、塗布乾燥のことを考慮し、10μm以下、さらには8μm以下が好ましい。
バック層用の全バインダー量は0.01〜10.0g/m2が好ましく、0.05〜5.0g/m2がより好ましい。
最外層のバインダー量は、特に0.5〜2g/m2が好ましい。
【0097】
これらの各層は、2層以上設けられる場合がある。画像形成層が2層以上である場合は、すべての層のバインダーとしてポリマーラテックスを用いることが好ましい。また、保護層は画像形成層上に設けられる層であり2層以上存在する場合もあるが、少なくとも1層、特に最外層の保護層にポリマーラテックスが用いられることが好ましい。
【0098】
本発明において、特開2000−171935号公報、特開2000−47083号公報に記載のように予備加熱部を対向ローラーで搬送し、熱現像処理部は画像形成層を有する側をローラーの駆動により、その反対側のバック面を平滑面に滑らせて搬送する熱現像処理装置を用いることができる。このとき、良好な搬送性を付与するためには、現像処理温度における熱現像機の平滑面部材とバック面との動摩擦係数(μb)は小さいことが望ましい。
本発明において熱現像処理温度での熱現像処理機部材と画像形成層を有する面および/またはその反対面の最外層の滑り性は、最外層に滑り剤を含有させて調整することができる。
【0099】
支持体の両面には、特開昭64−20544号公報、特開平1−180537号公報、特開平1−209443号公報、特開平1−285939号公報、特開平1−296243号公報、特開平2−24649号公報、特開平2−24648号公報、特開平2−184844号公報、特開平3−109545号公報、特開平3−137637号公報、特開平3−141346号公報、特開平3−141347号公報、特開平4−96055号公報、米国特許第4,645,731号明細書、特開平4−68344号公報、特許第2,557,641号公報の2頁右欄20行目〜3頁右欄30行目、特開2000−39684号公報の段落番号0020〜0037、特開2000−47083号公報の段落番号0063〜0080に記載の塩化ビニリデン単量体の繰り返し単位を70質量%以上含有する塩化ビニリデン共重合体を含む下塗り層を設けることが好ましい。
【0100】
塩化ビニリデン単量体が70質量%未満の場合は、十分な防湿性が得られず、熱現像後の時間経過における寸法変化が大きくなってしまう。また、塩化ビニリデン共重合体は、塩化ビニリデン単量体のほかの構成繰り返し単位としてカルボキシル基含有ビニル単量体の繰り返し単位を含むことが好ましい。このような繰り返し単位を含ませるのは、塩化ビニル単量体のみでは、重合体(ポリマー)が結晶化してしまい、防湿層を塗設する際に均一な膜を作り難くなり、また重合体(ポリマー)の安定化のためにはカルボキシル基含有ビニル単量体が不可欠であるからである。
本発明で用いる塩化ビニリデン共重合体の分子量は、質量平均分子量で45,000以下、さらには10,000〜45,000が好ましい。分子量が大きくなると塩化ビニリデン共重合体層とポリエステル等の支持体層との接着性が悪化してしまう傾向がある。
【0101】
本発明で用いる塩化ビニリデン共重合体の含有量は、塩化ビニリデン共重合体を含有する下塗り層の片面当たりの合計膜厚として0.3μm以上であることが好ましく、0.3μm〜4μmであることがより好ましい。
【0102】
なお、下塗り層としての塩化ビニリデン共重合体層は、支持体に直接設層される下塗り層第1層として設けることが好ましく、通常は片面ごとに1層ずつ設けられるが、場合によっては2層以上設けてもよい。2層以上設けるときは、塩化ビニリデン共重合体量が合計で上記の範囲となるようにすればよい。
このような層には塩化ビニリデン共重合体のほか、架橋剤やマット剤などを含有させることが好ましい。
【0103】
支持体は必要に応じて塩化ビニリデン共重合体層に加え、ポリエステル、ゼラチンをバインダーとする下塗り層を塗布することが好ましい。これらの下塗り層は2層以上設けることが好ましく、また支持体に対して両面に設けることが好ましい。下塗り層の厚み(1層当たり)は一般に0.01〜5μm、より好ましくは0.05〜1μmである。
【0104】
本発明の熱現像画像記録材料には、強度、寸法安定性、透明性、耐薬品性などを考慮したうえで、種々の支持体を用いることができる。典型的な支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、硝酸セルロース、セルロースエステル、ポリビニルアセタール、シンジオタクチックポリスチレン、ポリカーボネート、両面がポリエチレンで被覆された紙支持体などが挙げられる。このうち二軸延伸したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)が強度、寸法安定性、耐薬品性などの点から好ましい。支持体の厚みは下塗り層を除いたベース厚みで90〜180μmであることが好ましい。
【0105】
本発明の熱現像画像記録材料に用いる支持体としては、特開平10−48772号公報、特開平10−10676号公報、特開平10−10677号公報、特開平11−65025号公報、特開平11−138648号公報に記載の二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0106】
このような熱処理後における支持体の120℃、30秒加熱による寸法変化率は縦方向(MD)が−0.03%〜+0.01%、横方向(TD)が0〜0.04%であることが好ましい。
【0107】
本発明の熱現像画像記録材料には、ゴミ付着の減少、スタチックマーク発生防止、自動搬送工程での搬送不良防止などの目的で、特開平11−84573号公報の段落番号0040〜0051に記載の導電性金属酸化物および/またはフッ素系界面活性剤を用いて帯電防止することが好ましい。導電性金属酸化物としては、米国特許第5,575,957号明細書、特開平11−223901号公報の段落番号0012〜0020に記載のアンチモンでドーピングされた針状導電性酸化錫、特開平4−29134号公報に記載のアンチモンでドーピングされた繊維状酸化錫が好ましく用いられる。
【0108】
金属酸化物含有層の表面比抵抗(表面抵抗率)は25℃、相対湿度20%の雰囲気下で1012Ω以下、好ましくは1011Ω以下がよい。これにより良好な帯電防止性が得られる。このときの表面抵抗率の下限は特に制限されないが、通常107Ω程度である。
【0109】
本発明の熱現像画像記録材料の画像形成層を有する面およびその反対面の最外層表面の少なくとも一方、好ましくは両方のベック平滑度は、3000秒以下であり、より好ましくは100秒〜2000秒である。
本発明におけるベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
熱現像画像記録材料の画像形成層を有する面の最外層およびその反対面の最外層のベック平滑度は、特開平11−84573号公報の段落番号0052〜0059に記載の如く、前記両面の層に含有させるマット剤の粒子サイズおよび添加量を適宜変化させることによってコントロールすることができる。
【0110】
本発明では水溶性ポリマーが塗布性付与のための増粘剤として好ましく利用され、天然物でも合成ポリマーでもよく、その種類は特に限定されない。具体的には、天然物としてはデンプン類(コーンスターチ、デンプンなど)、海藻(寒天、アルギン酸ナトリウムなど)、植物性粘着物(アラビアゴムなど)、動物性タンパク(にかわ、カゼイン、ゼラチン、卵白など)、発酵粘着物(プルラン、デキストリンなど)などであり、半合成ポリマーであるデンプン質(可溶性デンプン、カルボキシルデンプン、デキストランなど)、セルロース類(ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)も挙げられ、さらに合成ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリビニルスルフィン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、アクリル酸またはその共重合体等、マレイン酸共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸またはその共重合体など)などである。
【0111】
これらの中でも好ましく用いられる水溶性ポリマーは、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デキストラン、デキストリン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸またはその共重合体などであり、特に増粘剤として好ましく利用される。
【0112】
これらでも特に好ましい増粘剤としては、ゼラチン、デキストラン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体などである。これらの化合物は、「新・水溶性ポリマーの応用と市場」(株式会社シーエムシー発行、長友新治編集、1988年11月4日発行)に詳細に記載されている。
【0113】
増粘剤としての水溶性ポリマーの使用量は、塗布液に添加した時に粘度が上昇すれば特に限定されない。一般に液中の濃度は0.01〜30質量%、より好ましくは0.05〜20質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。これらによって得られる粘度は、初期の粘度からの上昇分として1〜200mPa・sが好ましく、より好ましくは5〜100mPa・sである。なお、粘度はB型回転粘度計で25℃で測定した値を示す。塗布液などへの添加に当たっては、一般に増粘剤はできるだけ希薄溶液で添加することが望ましい。また添加時は十分な攪拌を行なうことが好ましい。
【0114】
本発明で用いる界面活性剤について以下に述べる。本発明で用いる界面活性剤はその使用目的によって、分散剤、塗布剤、濡れ剤、帯電防止剤、写真性コントロール剤などに分類されるが、以下に述べる界面活性剤を適宜選択して使用することによってそれらの目的は達成することができる。本発明で用いる界面活性剤は、ノニオン性、イオン性(アニオン、カチオン、ベタイン)のいずれも使用できる。さらにフッ素系界面活性剤も好ましく用いられる。
【0115】
好ましいノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリグリシジルやソルビタンをノニオン性親水性基とする界面活性剤を挙げることができ、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステルを挙げることができる。
【0116】
アニオン系界面活性剤としては、カルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩を挙げることができ、代表的なものとしては脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸塩、アルキル硫酸塩、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニールエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物などを挙げることができる。
【0117】
カチオン系界面活性剤としてはアミン塩、4級アンモニウム塩、ピリジウム塩などを挙げることができ、第1〜第3脂肪アミン塩、第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、アルキルイミダゾリウム塩など)を挙げることができる。
【0118】
ベタイン系界面活性剤としてはカルボキシベタイン、スルホベタインなどを挙げることができ、N−トリアルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタインなどを挙げることができる。
【0119】
これらの界面活性剤は、「界面活性剤の応用」(幸書房、刈米孝夫著、昭和55年9月1日発行)に記載されている。本発明においては、好ましい界面活性剤はその使用量において特に限定されず、目的とする界面活性特性が得られる量であればよい。なお、フッ素含有界面活性剤の塗布量は、1m2当り0.01mg〜250mgが好ましい。
【0120】
以下に界面活性剤の具体例を記すが、これに限定されるものではない(ここで、−C6H4−はフェニレン基を表わす)。
WA−1: C16H33(OCH2CH2)10OH
WA−2: C9H19−C6H4−(OCH2CH2)12OH
WA−3: ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
WA−4: トリ(イソプロピル)ナフタレンスルホン酸ナトリウム
WA−5: トリ(イソブチル)ナフタレンスルホン酸ナトリウム
WA−6: ドデシル硫酸ナトリウム
WA−7: α−スルファコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル ナトリウム塩
WA−8: C8H17−C6H4−(CH2CH2O)3(CH2)2SO3K
WA−10: セチルトリメチルアンモニウム クロライド
WA−11: C11H23CONHCH2CH2N(+)(CH3)2−CH2COO(−)
WA−12: C8F17SO2N(C3H7)(CH2CH2O)16H
WA−13: C8F17SO2N(C3H7)CH2COOK
WA−14: C8F17SO3K
WA−15: C8F17SO2N(C3H7)(CH2CH2O)4(CH2)4SO3Na
WA−16: C8F17SO2N(C3H7)(CH2)3OCH2CH2N(+)(CH3)3−CH3・C6H4−SO3 (−)
WA−17: C8F17SO2N(C3H7)CH2CH2CH2N(+)(CH3)2−CH2COO(−)
【0121】
本発明の好ましい態様においては、画像形成層および保護層に加えて、必要に応じて中間層を設けてもよい。生産性の向上などを目的として、これらの複数の層は水系において同時重層塗布することが好ましい。塗布方式はエクストルージョン塗布、スライドビード塗布、カーテン塗布などがあるが、特開2000−2964号公報の図1に示されるスライドビード塗布方式が特に好ましい。
【0122】
ゼラチンを主バインダーとして用いるハロゲン化銀写真感光材料の場合は、コーティングダイの下流に設けられている第一乾燥ゾーンで急冷され、その結果、ゼラチンのゲル化が起こり、塗布膜は冷却固化される。冷却固化されて流動の止まった塗布膜は続く第二乾燥ゾーンに導かれ、これ以降の乾燥ゾーンで塗布液中の溶媒が揮発され、成膜される。第二乾燥ゾーン以降の乾燥方式としては、U字型のダクトからローラー支持された支持体に噴流を吹き付けるエアーループ方式や円筒状のダクトに支持体をつるまき状に巻き付けて搬送乾燥する、つるまき方式(エアーフローティング方式)などが挙げられる。
【0123】
バインダーの主成分がポリマーラテックスである塗布液を用いて層形成を行うときには、急冷では塗布液の流動を停止させることができないため、第一乾燥ゾーンのみでは予備乾燥が不十分である場合もある。この場合は、ハロゲン化銀写真感光材料で用いられている様な乾燥方式では流れムラや乾燥ムラが生じ、塗布面状に重大な欠陥を生じやすい。
【0124】
本発明における好ましい乾燥方式は、特開2000−002964号公報に記載されているような第一乾燥ゾーン、第二乾燥ゾーンを問わず、少なくとも恒率乾燥が終了するまでの間は水平乾燥ゾーンで乾燥させる方式である。塗布直後から水平乾燥ゾーンに導かれるまでの支持体の搬送は、水平搬送であってもなくてもどちらでもよく、塗布機の水平方向に対する立ち上がり角度は0〜70°の間にあればよい。また、本発明における水平乾燥ゾーンとは、支持体が塗布機の水平方向に対して上下に±15°以内に搬送されればよく、水平搬送を意味するものではない。
【0125】
本発明における恒率乾燥とは、液膜温度が一定で流入する熱量全てが溶媒の蒸発に使用される乾燥過程を意味する。減率乾燥とは、乾燥末期になると種々の要因(水分移動の材料内部拡散が律速になる、蒸発表面の後退など)により乾燥速度が低下し、与えられた熱が液膜温度上昇にも使用される乾燥過程を意味する。恒率過程から減率過程に移行する限界含水率は200〜300%である。恒率乾燥が終了する時には、流動が停止するまで十分乾燥が進むため、ハロゲン化銀写真感光材料の様な乾燥方式も採用することができるが、本発明においては恒率乾燥後も最終的な乾燥点まで水平乾燥ゾーンで乾燥させることが好ましい。
【0126】
画像形成層および/または保護層を形成する時の乾燥条件は、恒率乾燥時の液膜表面温度がポリマーラテックスの最低造膜温度(MTF;通常ポリマーのガラス転移温度Tgより3〜5℃高い)以上にすることが好ましい。通常は製造設備の制限より25℃〜40℃にすることが多い。また、減率乾燥時の乾球温度は支持体のTg未満の温度(PETの場合通常80℃以下)が好ましい。本明細書における液膜表面温度とは、支持体に塗布された塗布液膜の溶媒液膜表面温度を言い、乾球温度とは乾燥ゾーンの乾燥風の温度を意味する。
【0127】
恒率乾燥時の液膜表面温度が低くなる条件で乾燥した場合、乾燥が不十分になりやすい。このため特に保護層の造膜性が著しく低下し、膜表面に亀裂が生じやすくなる。また、膜強度も弱くなり、露光機や熱現像機での搬送中に傷がつきやすくなるなどの重大な問題が生じやすくなる。
【0128】
一方、液膜表面温度が高くなる条件で乾燥した場合は、主としてポリマーラテックスから構成される保護層は速やかに皮膜を形成するが、その一方で画像形成層などの下層は流動性が停止していないので、表面に凹凸が発生しやすくなる。また、支持体(ベース)にTgよりも高い過剰の熱がかかると、熱現像画像記録材料の寸度安定性、耐巻き癖性も悪くなる傾向にある。
【0129】
下層を塗布乾燥してから上層を塗布する逐次塗布においても同様であるが、特に、下層の乾燥前に上層を塗布して、両層を同時に乾燥する同時重層塗布を行うための塗布液物性としては、画像形成層の塗布液と保護層の塗布液とのpH差が2.5以下であることが好ましく、このpH差は小さい程好ましい。塗布液のpH差が大きくなると塗布液界面でミクロな凝集が生じやすくなり、長尺連続塗布時に塗布筋などの重大な面状故障が発生しやすくなる。
【0130】
画像形成層の塗布液粘度は25℃で15〜100mPa・sが好ましく、さらに好ましくは30〜70mPa・sである。一方、保護層の塗布液粘度は25℃で5〜75mPa・sが好ましく、さらに好ましくは20〜50mPa・sである。これらの粘度はB型粘度計によって測定される。
【0131】
乾燥後の巻取りは温度20〜30℃、相対湿度45±20%の条件下で行うことが好ましく、巻き姿はその後の加工形態に合わせ画像形成層側の面を外側にしてもよいし、内側にしてもよい。また、加工形態がロール品の場合は巻き姿で発生したカールを除去するために加工時に巻き姿とは反対側に巻いたロール形態にすることも好ましい。好ましい一態様として、幅550〜650mmおよび長さ1〜65mのシート状であって、その一部または全部が円筒形状のコア部材に画像形成層を外側にして巻き取られている熱現像画像記録材料を挙げることができる。なお、熱現像画像記録材料の相対湿度は20〜55%(25℃測定)の範囲で制御されることが好ましい。
【0132】
ハロゲン化銀を含みゼラチンを基体とする粘性液である従来の写真乳剤塗布液は、通常加圧送液するだけで気泡が液中に溶解、消滅してしまい、塗布時に大気圧下に戻されても気泡が析出するようなことはほとんどない。ところが、本発明で好ましく用いられる有機銀塩分散物とポリマーラテックスなどを含む画像形成層塗布液の場合は、加圧送液だけでは脱泡が不十分になりやすいため、気液界面が生じないようにして送液しながら超音波振動を与え脱泡することが好ましい。
【0133】
本発明において塗布液の脱泡は、塗布液を塗布される前に減圧脱気し、さらに1.5kg/cm2以上の加圧状態に保ち、かつ気液界面が生じないようにして連続的に送液しながら超音波振動を与える方式が好ましい。具体的には、特公昭55−6405号公報(4頁20行〜7頁11行)に記載されている方式が好ましい。このような脱泡を行う装置として、特開2000−98534号公報の実施例と図3に示される装置を好ましく用いることができる。
【0134】
加圧条件としては、1.5kg/cm2以上が好ましく、1.8kg/cm2以上がより好ましい。その上限に特に制限はないが、通常5kg/cm2程度である。与えられる超音波の音圧は0.2V以上、好ましくは0.5V〜3.0Vであり、一般的に音圧は高い方が好ましいが、音圧が高すぎるとキャピテーションにより部分的に高温状態になりカブリの発生原因となる。周波数は特に制約はないが、通常10kHz以上、好ましくは20kHz〜200kHzである。なお、減圧脱気は、タンク内(通常、調液タンクもしくは貯蔵タンク)を密閉減圧し、塗布液中の気泡径を増大させ、浮力をかせぎ脱気させることを指し、減圧脱気の際の減圧条件は−200mmHgないしそれより低い圧力条件、好ましくは−250mmHgないしそれより低い圧力条件とし、その最も低い圧力条件は特に制限はないが通常−800mmHg程度である。減圧時間は30分以上、好ましくは45分以上であり、その上限は特に制限されない。
【0135】
本発明において、画像形成層、画像形成層の保護層、下塗層およびバック層には特開平11−84573号公報の段落番号0204〜0208、特開2000−47083号公報の段落番号0240〜0241に記載の如くハレーション防止などの目的で、染料を含有させることが好ましい。
【0136】
画像形成層には色調改良、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料を用いることが好ましい。画像形成層に用いる染料および顔料はいかなるものでもよいが、例えば特開平11−119374号公報の段落番号0297に記載されている化合物を用いることが好ましい。これらの染料の添加法としては、溶液、乳化物、固体微粒子分散物、高分子媒染剤に媒染された状態などが挙げられ、ゼラチン水溶液添加することが好ましい。これらの化合物の使用量は目的の吸収量によって決められるが、一般的に1m2当たり1×10−6g〜1gの範囲で用いることが好ましい。
【0137】
本発明でハレーション防止染料を使用する場合、750〜850nmに吸収極大を持つ染料を用いることが好ましい。該染料は所望の範囲で目的の吸収を有し、処理後に可視領域での吸収が充分少なく、上記バック層の好ましい吸光度スペクトルの形状が得られればいかなる化合物でもよい。例えば特開平11−119374号公報の段落番号0300に記載されている化合物を用いることができる。また、ベルギー特許第733,706号明細書に記載されるように染料による濃度を加熱による消色で低下させる方法、特開昭54−17833号公報に記載されるように光照射による消色で濃度を低下させる方法等を用いることもできる。本発明では、特開平11−119374号公報の段落番号0297に記載されている化合物を用いることが好ましい。
【0138】
本発明の熱現像画像記録材料が熱現像後において、PS版により刷版を作製する際にマスクとして用いられる場合、熱現像後の熱現像画像記録材料は、製版機においてPS版に対する露光条件を設定するための情報や、マスク原稿およびPS版の搬送条件等の製版条件を設定するための情報を画像情報として担持している。従って、前記のイラジエーション染料、ハレーション染料、フィルター染料の濃度(使用量)は、これらを読み取るために制限される。これら情報はLEDあるいはレーザーによって読み取られるため、センサーの波長域のDmin(最低濃度)が低い必要があり吸光度が0.3以下である必要がある。例えば、富士写真フイルム(株)社製、製版機S−FNRIIIはトンボ検出のための検出器およびバーコードリーダーとして670nmの波長の光源を使用している。また、清水製作社製、製版機APMLシリーズのバーコードリーダーとして670nmの光源を使用している。すなわち670nm付近のDmin(最低濃度)が高い場合にはフィルム上の情報が正確に検出できず搬送不良、露光不良など製版機で作業エラーが発生する。従って、670nmの光源で情報を読み取るためには670nm付近のDminが低い必要があり、熱現像後の660〜680nmの吸光度が0.3以下である必要がある。より好ましくは0.25以下である。その下限に特に制限はないが、通常は0.10程度である。
【0139】
本発明において、像様露光に用いられる露光装置は露光時間が10−6秒以下の露光が可能な装置であればいずれでもよいが、750〜850nmの波長を持つレーザダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)を光源に使用した露光装置が好ましく用いられる。特に、LDは高出力、高解像度の点でより好ましい。これらの光源は目的波長範囲の電磁波スペクトルの光を発生することができるものであればいずれでもよい。例えばLDであれば、色素レーザー、ガスレーザー、固体レーザー、半導体レーザーなどを用いることができる。
【0140】
本発明における露光は光源の光ビームをオーバーラップさせて露光する。オーバーラップとは副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えばビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表わしたとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が0.2以上であることが好ましい。
【0141】
本発明に使用する露光装置の光源の走査方式は特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、高出力が得られ、書き込み時間が短くなるという点でレーザーヘッドを2機以上搭載するマルチチャンネルが好ましい。特に、円筒外面方式の場合にはレーザーヘッドを数機〜数十機以上搭載するマルチチャンネルが好ましく用いられる。
【0142】
本発明の熱現像画像記録材料は露光時のヘイズが低く、干渉縞が発生しやすい傾向にある。この干渉縞の発生防止技術としては、特開平5−113548号公報などに開示されているレーザー光を熱現像画像記録材料に対して斜めに入光させる技術や、国際公開WO95/31754号公報などに開示されているマルチモードレーザーを利用する方法が知られており、これらの技術を用いることが好ましい。
【0143】
本発明に用いる画像形成方法の加熱現像工程はいかなる方法であってもよいが、通常イメージワイズに露光した熱現像画像記録材料を昇温して現像される。用いられる熱現像機の好ましい態様としては、熱現像画像記録材料をヒートローラーやヒートドラムなどの熱源に接触させるタイプとして特公平5−56499号公報、特開平9−292695号公報、特開平9−297385号公報および国際公開WO95/30934号公報に記載の熱現像機、非接触型のタイプとして特開平7−13294号公報、国際公開WO97/28489号公報、同97/28488号公報および同97/28487号公報に記載の熱現像機がある。特に好ましい態様としては非接触型の熱現像機である。好ましい現像温度としては80〜250℃であり、さらに好ましくは100〜140℃である。現像時間としては1〜180秒が好ましく、5〜90秒がさらに好ましい。ラインスピードは、20mm/秒〜200mm/秒が好ましく、23mm/秒〜180mm/秒が特に好ましい。
【0144】
熱現像時における熱現像画像記録材料の寸法変化による処理ムラを防止する方法として、80℃以上115℃未満の温度で画像が出ないようにして、5秒以上加熱した後、110℃〜140℃で熱現像して画像形成させる方法(いわゆる多段階加熱方法)が好ましい。
【0145】
本発明の熱現像画像記録材料を熱現像処理するとき、110℃以上の高温にさらされるため、該材料中に含まれている成分の一部、あるいは熱現像による分解成分の一部が揮発してくる。これらの揮発成分は現像ムラの原因になったり、熱現像機の構成部材を腐食させたり、温度の低い場所で析出し異物として画面の変形を引起こしたり、画面に付着して汚れとなる種々の悪い影響があることが知られている。これらの影響を除くための方法として、熱現像機にフィルターを設置し、また熱現像機内の空気の流れを最適に調整することが好ましい。これらの方法は有効に組み合わせて利用することができる。
国際公開WO95/30933号公報、同97/21150号公報、特表平10−500496号公報には、結合吸収粒子を有し揮発分を導入する第一の開口部と排出する第二の開口部とを有するフィルターカートリッジを、フィルムと接触して加熱する加熱装置に用いることが記載されている。また、国際公開WO96/12213号公報、特表平10−507403号公報には、熱伝導性の凝縮捕集器とガス吸収性微粒子フィルターを組み合わせたフィルターを用いることが記載されている。本発明ではこれらを好ましく用いることができる。
また、米国特許第4,518,845号明細書、特公平3−54331号公報には、フィルムからの蒸気を除去する装置とフィルムを伝熱部材へ押圧する加圧装置と伝熱部材を加熱する装置とを有する構成が記載されている。また、国際公開WO98/27458号公報には、フィルムから揮発するカブリを増加させる成分をフィルム表面から取り除くことが記載されている。これらについても本発明では好ましく用いることができる。
【0146】
本発明の熱現像画像記録材料の熱現像処理に用いられる熱現像機の一構成例を図1に示す。図1は熱現像機の側面図を示したものである。図1の熱現像機は熱現像画像記録材料10を平面状に矯正および予備加熱しながら加熱部に搬入する搬入ローラー対11(上部ローラーはシリコンゴムローラーで、下部ローラーがアルミ製のヒートローラー)と熱現像後の熱現像画像記録材料10を平面状に矯正しながら加熱部から搬出する搬出ローラー対12を有する。熱現像画像記録材料10は搬入ローラー対11から搬出ローラー対12へと搬送される間に熱現像される。この熱現像中の熱現像画像記録材料10を搬送する搬送手段は画像形成層を有する面が接触する側に複数のローラー13が設置され、その反対側のバック面が接触する側には不織布(例えば芳香族ポリアミドやテフロン(登録商標)から成る)等が貼り合わされた平滑面14が設置される。熱現像画像記録材料10は画像形成層を有する面に接触する複数のローラー13の駆動により、バック面を平滑面14の上に滑らせながら搬送される。ローラー13の上部および平滑面14の下部には、熱現像画像記録材料10の両面から加熱されるように加熱ヒーター15が設置される。この場合の加熱手段としては板状ヒーター等が挙げられる。ローラー13と平滑面14とのクリアランスは平滑面の部材により異なるが、熱現像画像記録材料10が搬送できるクリアランスに適宜調整される。好ましくは0〜1mmである。
【0147】
ローラー13の表面の材質および平滑面14の部材は、高温耐久性があり、熱現像画像記録材料10の搬送に支障がなければ何でもよいが、ローラー表面の材質はシリコンゴム、平滑面の部材は芳香族ポリアミドまたはテフロン(PTFE)製の不織布が好ましい。加熱手段としては複数のヒーターを用い、それぞれ加熱温度を自由に設定することが好ましい。
【0148】
なお、加熱部は、搬入ローラー対11を有する予備加熱部Aと、加熱ヒーター15を備えた熱現像加熱部Bとで構成されるが、熱現像処理部Bの上流の予備加熱部Aは、熱現像温度よりも低く(例えば10〜30℃程度低く)、熱現像画像記録材料10中の水分量を蒸発させるのに十分な温度および時間に設定することが望ましく、熱現像画像記録材料10の支持体のガラス転移温度(Tg)よりも高い温度で、現像ムラが出ないように設定することが好ましい。予備加熱部と熱現像処理部の温度分布としては±1℃以下が好ましく、さらには±0.5℃以下が好ましい。
また、熱現像処理部Bの下流にはガイド板16が設置され、搬出ローラー対12とガイド板16とを有する徐冷部Cが設置される。
ガイド板16は熱伝導率の低い素材が好ましく、熱現像画像記録材料10に変形が起こらないようにするために冷却は徐々に行うのが好ましく、冷却速度としては、0.5〜10℃/秒が好ましい。
【0149】
以上、図示例に従って説明したが、これに限らず、例えば特開平7−13294号公報に記載のものなど、本発明に用いる熱現像機は種々の構成のものであってもよい。また、本発明において好ましく用いられる多段加熱方法の場合は、上述のような装置において、加熱温度の異なる熱源を2個以上設置し、連続的に異なる温度で加熱するようにすればよい。
なお、本発明の熱現像画像記録材料は、特開2000−206653号公報の段落番号0014〜0026に記載される包装材料によって、あるいは特開2001−13632号公報の段落番号0020〜0045に記載される包装方法によって包装されることが好ましい。
【0150】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0151】
<実施例1>
《バック/下塗り層のついたポリエチレンテレフタレート(PET)支持体の作製》
(1)PET支持体の作製
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い、固有粘度IV=0.66(フェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のポリエチレンテレフタレートを得た。これをペレット化した後、130℃で4時間乾燥した後、300℃で溶融後T型ダイから押し出した後急冷し、熱固定後の膜厚が120μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。
これを、周速の異なるロールを用いて3.3倍に縦延伸し、ついでテンターで4.5倍に横延伸を実施した。このときの温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後、これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後、テンターのチャック部をスリットした後、両端にナール加工を行い、4.8kg/cm2で巻きとった。このようにして、幅2.4m、長さ3500m、厚み120μmのロール状のPET支持体を得た。
【0152】
(2)下塗り層およびバック層の作製
▲1▼下塗り第一層
以下に示す組成の塗布液を9.7ml/m2となる様に支持体上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、185℃で30秒乾燥した。
【0153】
ラテックス−A 280g
KOH 0.5g
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ2μm、平均粒子サイズの変動係数7%)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 1.8g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0154】
ラテックス−A:
コア部90質量%、シェル部10質量%のコアシェルタイプのラテックス
コア部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/
アクリロニトリル/アクリル酸=93/3/3/0.9/0.1(質量%)
シェル部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/
アクリロニトリル/アクリル酸=88/3/3/3/3(質量%)
質量平均分子量38,000
【0155】
▲2▼下塗り第二層
以下に示す組成の塗布液を8.3ml/m2となる様に下塗り第一層の上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。
【0156】
【0157】
▲3▼バック第一層
前記下塗り層塗布面とは反対側の面に0.375kV・A・分/m2のコロナ放電処理を施し、その面に以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となる様に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、185℃で30秒乾燥した。
【0158】
ジュリマーET410(30%水分散物、日本純薬(株)製) 23g
アルカリ処理ゼラチン 4.44g
(分子量約10,000、Ca2+含量30ppm)
脱イオン処理ゼラチン(Ca2+含量0.6ppm) 0.84g
化合物A 0.02g
染料−Bc−A 目安として 0.88g
(783nmの光学濃度として1.3〜1.4になるように調整)
ポリオキシエチレンフェニルエーテル 1.7g
水溶性メラミン化合物 15g
(住友化学工業(株)製、スミテックスレジンM−3(8%水溶液))
Sbド−プSnO2 の針状粒子の水分散物 24g
(石原産業(株)製、FS−10D)
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ2μm,平均粒子サイズの変動係数7%)
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0159】
▲4▼バック第二層
以下に示す組成の塗布液を5.5ml/m2となる様にバック第一層上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。
【0160】
ジュリマーET410 57.5g
(30%水分散物、日本純薬(株)製)
ポリオキシエチレンフェニルエーテル 1.7g
水溶性メラミン化合物 15g
(住友化学工業(株)製、スミテックスレジンM−3(8%水溶液))
セロゾール524(15%水溶液、中京油脂(株)製) 3.3g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0161】
▲5▼バック第三層
下塗り第一層と同じ塗布液を9.7ml/m2となる様にバック第二層上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、185℃で30秒乾燥した。
【0162】
▲6▼バック第四層
以下に示す組成の塗布液B−1〜塗布液B−8の中の1つの塗布液を13.8ml/m2となる様にバック第三層上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。塗布液B−1〜塗布液B−8を用いて作製した支持体を、順に支持体101〜支持体108とした。
【0163】
【0164】
ラテックス−B:
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/
2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=59/9/26/
5/1(質量%の共重合体)
【0165】
【0166】
【0167】
塗布液 B−4
ペスレジンA615G(25%水分散物、高松油脂(株)製) 140g
ジュリマーET410(30%水分散物、日本純薬(株)製) 150g
化合物−Bc−B 1.5g
化合物−Bc−C 0.5g
化合物−Bc−D 0.3g
化合物−Bc−E 0.2g
ポリメチルメタクリレート 7.7g
(10%水分散物、平均粒子サイズ 5.5μm)
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0168】
塗布液 B−5
ペスレジンA615G(25%水分散物、高松油脂(株)製) 140g
ハイドランAP40F 150g
(30%水分散物、大日本インキ化学工業(株)製)
化合物−Bc−B 1.5g
化合物−Bc−C 0.5g
化合物−Bc−D 0.3g
化合物−Bc−E 0.2g
水溶性エポキシ化合物 3.4g
(ナガセ化成工業(株)製、デナコールEX521)
ポリメチルメタクリレート 7.7g
(10%水分散物、平均粒子サイズ5.5μm)
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0169】
【0170】
【0171】
塗布液 B−8
ペスレジンA615G(25%水分散物、高松油脂(株)製) 140g
ハイドランAP40F 150g
(30%水分散物、大日本インキ化学工業(株)製)
化合物−Bc−B 1.5g
化合物−Bc−C 0.5g
化合物−Bc−D 0.3g
化合物−Bc−E 0.2g
水溶性エポキシ化合物 3.4g
(ナガセ化成工業(株)製、デナコールEX521)
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0172】
【化6】
【0173】
このようにして作製した支持体101〜108のそれぞれに、以下の方法で画像形成層塗布液、保護層塗布液、下層オーバーコート層塗布液、および上層オーバーコート層塗布液を塗布し、熱現像画像記録材料101〜108を作製した。
【0174】
《ハロゲン化銀乳剤Aの調製》
水700mLにアルカリ処理ゼラチン(カルシウム含有量として2700ppm以下)11gおよび臭化カリウム30mg、4−メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.3gを溶解して温度45℃にてpHを6.5に合わせた後、硝酸銀18.6gを含む水溶液159mLと臭化カリウムを1モル/L(NH4)2RhCl5(H2O)を5×10−6モル/LおよびK3IrCl6を2×10−5モル/Lで含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で6分30秒間かけて添加した。ついで、硝酸銀55.5gを含む水溶液476mLと臭化カリウムを1モル/LおよびK3IrCl6を2×10−5モル/Lで含むハロゲン塩水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で28分30秒間かけて添加した。その後pHを下げて凝集沈降させて脱塩処理をし、平均分子量15,000の低分子量ゼラチン(カルシウム含有量として20ppm以下)51.1g加え、pH5.9、pAg8.0に調製した。得られた粒子は平均粒子サイズ0.11μm、投影面積変動係数9%、(100)面比率90%の立方体粒子であった。こうして得たハロゲン化銀粒子に、銀1モル当たりベンゼンチオスルホン酸ナトリウム76μモル、トリエチルチオ尿素71μモルを添加した後に熟成し、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを5×10−4モル、化合物Aを0.17g加えた後、ハロゲン化銀1モルに対して4.7×10−2モルの臭化カリウム(水溶液として添加)、12.8×10−4モルの下記増感色素−A(エタノール溶液として添加)、6.4×10−3モルの化合物B(メタノール溶液として添加)を攪拌しながら添加し、20分後に30℃に急冷してハロゲン化銀乳剤Aの調製を終了した。得られたハロゲン化銀乳剤Aは、後述する塗布液の調製に用いた。
【0175】
【化7】
【0176】
《ベヘン酸銀分散物Aの調製》
ベヘン酸(ヘンケル社製、製品名EdenorC22−85R)87.6gを、5mol/LのNaOH水溶液49.2mLおよびtert−ブチルアルコール120mLと混合し、75℃にて反応させベヘン酸ナトリウム溶液を得た。このベヘン酸ナトリウム溶液と硝酸銀の水溶液とを、635mLの蒸留水および30mLのtert−ブチルアルコールを入れた反応容器を攪拌しながら、添加した。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が上がらないようにコントロールした。添加終了後、吸引濾過で固形分を濾別し、水洗した。つぎに、得られたベヘン酸銀の固形分100g相当のウエットケーキに、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217,平均重合度:約1700)7.4gおよび水を添加し、ホモミキサーにて予備分散した後、分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−110S−EH、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、G10Zインタラクションチャンバー使用)で分散し、ベヘン酸分散物Aを得て、後述する塗布液の調製に用いた。
【0177】
《還元剤の固体微粒子分散物の調製》
還元剤である1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgに、サーフィノール104E(日信化学(株)製)400gと、メタノール640g、水16kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーを、横型ビーズミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて分散した後、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩4gと水を加えて還元剤の固体微粒子分散物を得て、後述する塗布液の調製に用いた。こうして得た分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.44μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、平均粒子サイズの変動係数19%であった。
【0178】
《有機ポリハロゲン化合物Aの固体微粒子分散物の調製》
ポリハロゲン化合物Aを10kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液639gと、サーフィノール104E(日信化学(株)製)400gと、メタノール640gと、水16kgとをよく混合してスラリーとした。このスラリーを、横型ビーズミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて分散した後、水を加えてポリハロゲン化合物Aの濃度が25質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物Aの固体微粒子分散物を得て、後述する塗布液の調製に用いた。こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.36μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、平均粒子サイズの変動係数18%であった。
【0179】
《有機ポリハロゲン化合物Bの固体微粒子分散物の調製》
ポリハロゲン化合物Bを5kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液2.5kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液213gと、水10kgとをよく混合してスラリーとした。このスラリーを、横型ビーズミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩2.5gと水とを加えてポリハロゲン化合物Bの濃度が23.5質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物Bの固体微粒子分散物を得て、後述する塗布液の調製に用いた。こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.38μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、平均粒子サイズの変動係数20%であった。
【0180】
《有機ポリハロゲン化合物C水溶液の調製》
室温で攪拌しながら、水75.0ml、トリプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(20%水溶液)8.6ml、オルトリン酸二水素ナトリウム・2水和物(5%水溶液)6.8ml、および水酸化カリウムの1mol/L水溶液9.5mlを順次攪拌混合した。さらに、攪拌しながらポリハロゲン化合物Cの4.0gの粉末を添加し、有機ポリハロゲン化合物C水溶液100mlを得て、後述する塗布液の調製に用いた。
【0181】
《化合物−Zの乳化分散物の調製》
化合物−Zを85質量%含有する三光(株)製R−054を10kgと、MIBK11.66kgを混合した後、窒素置換して80℃1時間溶解した。この液に水25.52kgとクラレ(株)製MPポリマーのMP−203の20質量%水溶液12.76kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.44kgとを添加して、20〜40℃、3600rpmで60分間乳化分散した。さらに、この液にサーフィノール104E(日信化学(株)製)0.08kgと、水47.94kgとを添加して減圧蒸留しMIBKを除去したのち、化合物−Zの濃度が10質量%になるように調製して、後述する塗布液の調製に用いた。
【0182】
《6−イソプロピルフタラジン化合物の分散液の調製》
室温で水62.35gを攪拌しながら、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)2.0gを添加し10分間攪拌混合した後、加熱し、内温50〜60℃の範囲で均一に溶解させた。内温を40℃以下に降温し、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−217、10質量%水溶液)25.5g、トリプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(20質量%水溶液)3.0g、および6−イソプロピルフタラジン(70質量%水溶液)7.15gを添加し、攪拌混合して、透明分散液100gを得て、後述する塗布液の調製に用いた。
【0183】
《現像促進剤Wの固体微粒子分散物の調製》
現像促進剤Wの10kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液の10kgと、水20kgとを、よく混合してスラリーとした。このスラリーを、横型ビーズミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて分散した後、水を加えて現像促進剤Wの濃度が20質量%になるように調製し、現像促進剤Wの固体微粒子分散物を得て、後述する塗布液の調製に用いた。
【0184】
《画像形成層塗布液の調製》
上記で作製したベヘン酸銀分散物Aの銀1モルに対して、以下のバインダー、素材、およびハロゲン化銀乳剤Aを添加して、水を加えて、画像形成層塗布液とした。この塗布液は、有機溶媒としてメタノールおよびエタノールを10質量%含有する塗布液であった。完成後、減圧脱気を圧力0.54atmで45分間行った。塗布液のpHは7.7、粘度は25℃で50mPa・sであった。
【0185】
pH調整剤として、NaOHを用いて調整した。
(なお、塗布膜のガラス転移温度は17℃であった。)
【0186】
《保護層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度として21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ塗布液のガラス転移温度を24℃とした、平均粒子サイズ116nm)943gに水を加え、ポリハロゲン化合物Cの水溶液 114.8g、ポリハロゲン化合物Aを固形分として17.0g、オルトリン酸二水素ナトリウム・二水和物を固形分として0.69g、現像促進剤Wを固形分として11.55g、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒子サイズ7μm、平均粒子サイズの変動係数8%)1.58g、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235)29.3gおよび化合物Eを0.62g、化合物Iを1.0g加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を0.8質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは5.5、粘度は25℃で45mPa・sであった。
【0187】
【化8】
【0188】
《下層オーバーコート層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度として21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ、塗布液のガラス転移温度を24℃とした、平均粒子サイズ74nm)625gに水を加え、化合物Cを0.23g、化合物Iを0.13g、化合物Fを11.7g、化合物Hを2.7gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−235)11.5gを加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を0.1質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは2.6、粘度は25℃で30mPa・sであった。
【0189】
《上層オーバーコート層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度として21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ、塗布液のガラス転移温度を24℃とした、平均粒子サイズ116nm)649gに水を加え、カルナヴァワックス(中京油脂(株)製、セロゾール524:シリコーン含有量として5ppm未満)30質量%溶液18.4g、化合物Cを0.23g、化合物Eを1.0g、化合物Gを1.0g、化合物Iを0.87g、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒子サイズ7μm、平均粒子サイズの変動係数8%)3.45gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235)26.5gを加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を1.1質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは5.3、粘度は25℃で25mPa・sであった。
【0190】
【化9】
【0191】
《熱現像画像記録材料の作製》
上で作製した各支持体101〜108の下塗り第二層上に、画像形成層塗布液、保護層塗布液、下層オーバーコート層塗布液、上層オーバーコート層塗布液を以下の手順にしたがって塗布した。
支持体の下塗り第二層の上に、特願平10−292849号明細書中の図1で開示されているスライドビート塗布方式を用いて、前記の画像形成層塗布液を塗布銀量1.5g/m2になるように塗布した。さらにその上に、前記保護層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.29g/m2になるように画像形成層塗布液と共に同時重層塗布した。その後、保護層の上に前記下層オーバーコート層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.97g/m2および前記上層オーバーコート層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.07g/m2になるように下層オーバーコート塗布液と共に同時重層塗布し、熱現像感光材料を作製した。
塗布時の乾燥は、恒率過程、減率過程とも、乾球温度70〜75℃、露点14〜25℃、液膜表面温度35〜40℃の範囲で、塗布液の流動がほぼなくなる乾燥点近傍までは水平乾燥ゾーン(塗布機の水平方向に対し支持体が1.5°〜3°の角度)で行った。乾燥後の巻取りは温度23±5℃、相対湿度45±5%の条件下で行われ、巻き姿はその後の加工形態(画像形成層面側外巻)に合わせ、画像形成層面側を外にした。なお、感光材料の包袋内の相対湿度は20〜40%(25℃測定)で、得られた熱現像画像記録材料の画像形成側の膜面pHは5.3、ベック平滑度は900秒であり、反対側の膜面pHは5.9、ベック平滑度は560秒であった。
以上の方法により、支持体101〜108に対応する熱現像画像記録材料101〜108を作製した。
【0192】
《熱現像画像記録材料の評価》
作製した熱現像画像記録材料101〜108について、以下の評価を行った。
【0193】
(1)動摩擦係数の測定
表面性測定機(新東科学(株)製、HEIDONトライボギアTYPE:14DR)を用いて、熱現像処理温度におけるバック面側の動摩擦係数を、下記の条件で測定した。
サイズが2cm×3.5cmの平滑面部材(不織布)に、40gの荷重を乗せて、速度19mm/secで測定面を移動させたときの121℃での摩擦抵抗力(Fb)を測定し、次式で動摩擦係数を求めた。
動摩擦係数(μb)=Fb(g)/40(g)
【0194】
(2)搬送性試験
熱現像画像記録材料101〜108を幅610mmおよび長さ59mのシート状とし、これを円筒状のコア部材に画像形成層側を外向きにして巻き付け、ロール状にした。25℃、相対湿度50%および30℃、相対湿度75%の環境下で、このロール状のサンプルを785nmの半導体レーザーを有する日本電気製FT−286Rにセットし、このプロッターと、自動熱現像機FDS−6100X(富士写真フイルム(株)製)をドッキングし、露光、熱現像処理を行う工程(熱現像温度を121℃、ライン速度25mm/秒)を連続して30回行った。
このとき、露光前、サンプルが切断されてから熱現機から排出されるまでの時間を計測し、25℃、相対湿度50%での最大値と30℃、相対湿度75%での最大値の差を算出した。
差が5秒以上であるとローラーの空回りなど搬送不良が起こっているといえる。
【0195】
(3)接着性試験
熱現像画像記録材料101〜108を3.5cm×3.5cmに裁断し、25℃、相対湿度40%で16時間調湿した。調湿したサンプルを各4枚ずつ重ねて、その上下を同サイズのステンレス板で挟み、ズレが生じないようにテ−プで固定して10kgの荷重をかけた。60℃で24時間保管し、荷重を外し、室温に戻した後サンプルを1枚ずつ剥がして、画像形成層側の接着の度合いを以下の5段階で評価した。実用上は3以上のレベルが必要である。
5 接着痕がなく剥がす際に音もしないレベル
4 接着痕はないが剥がす音がわずかにするレベル
3 表面にわずかに接着痕が残るレベル
2 接着痕がサンプル面積の3割程度のレベル
1 接着痕が5割を超えるレベル
【0196】
(4)マット剤脱落試験
バック面と黒紙を接触させ、3.5cm×3.5cmあたり3kgの加重をかけてこすりあわせて、下記の基準で脱落を評価した。
○ 脱落がなかった
△ わずかに脱落が認められた
× かなりの脱落が認められた
【0197】
試験結果をまとめて表1に示す。
【0198】
【表1】
【0199】
最外層に水性ポリエステル樹脂を含有していない試料101は搬送性が劣るのに対して、水性ポリエステル樹脂とマット剤を含有する試料102,103,104,105および107は良好な性能を示す。但し、バインダー厚が薄い試料106はマット剤の脱落がおきた。またマット剤を使用しない試料108では接着が悪く、搬送性も劣っていた。
【0200】
【発明の効果】
本発明の熱現像画像記録材料は、重ねたときに相互に接着しにくいうえ、キズがつきにくく、搬送性が良好であるという特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱現像画像記録材料の熱現像処理に用いられる熱現像機の一構成例を示す側面図である。
【符号の説明】
10 熱現像画像記録材料
11 搬入ローラー対
12 搬出ローラー対
13 ローラー
14 平滑面
15 加熱ヒーター
16 ガイド板
A 予備加熱部
B 熱現像処理部
C 徐冷部
Claims (7)
- 支持体の両面に各々1層以上の構成層を有する熱現像画像記録材料において、少なくとも片面の最外層が水性ポリエステル樹脂とマット剤を含有し、かつ、該最外層のバインダーの塗布量が0.5〜2g/m2であることを特徴とする熱現像画像記録材料。
- 水性ポリエステル樹脂を含有する最外層が、支持体に対して画像を形成する層を有する側とは反対側に位置することを特徴とする請求項1の熱現像画像記録材料。
- 水性ポリエステル樹脂を含有する最外層が、フッ素系界面活性剤およびすべり剤を含有することを特徴とする請求項1または2の熱現像画像記録材料。
- 熱現像部が、搬送される熱現像画像記録材料の画像形成層側およびバック層側に加熱部材を備えるとともに、画像形成層側のみに搬送ローラを備える熱現像機で熱現像処理を行うための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱現像画像記録材料。
- 熱現像画像記録材料が、幅550〜650mmおよび長さ1〜65mのシート状であって、その一部または全部が円筒形状のコア部材に画像形成層を外側にして巻き取られていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱現像画像記録材料。
- 20mm/秒〜200mm/秒で熱現像処理するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱現像画像記録材料。
- 熱現像画像記録材料が750nm〜850nmに吸収極大を持つアンチハレーション染料を含有しており、かつ、750nm〜850nmの波長の光で露光し、熱現像後に600nm〜700nmの波長の光で記録情報を読み取るための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱現像画像記録材料。
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2003
- 2003-03-31 JP JP2003095121A patent/JP2004302146A/ja active Pending
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