JP2004075717A - 界面活性剤組成物、界面活性剤溶液並びにそれを含有するハロゲン化銀写真感光材料および熱現像感光材料 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、撥水撥油性、防汚性、帯電防止性等の表面機能付与が可能であり、水または親水性有機溶媒への溶解性の高い界面活性剤および、該界面活性剤を使用することにより塗布時の故障(はじき)を削減したハロゲン化銀写真感光材料および熱現像感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、フッ化アルキル鎖を有する化合物が界面活性剤として知られている。このような界面活性剤は、フッ化アルキル鎖の独特の性質(撥水・撥油性、潤滑性、帯電防止性等)により種々の表面改質を行うことができる機能を有しているため、繊維、布、カーペット、樹脂等、幅広い基材の表面加工に用いられている。また、フッ化アルキル鎖を持つ界面活性剤を種々の基質の水性媒体溶液に添加すると、塗膜形成時にハジキのない、均一な被膜を形成することができるばかりでなく、界面活性剤の吸着層を基質表面に形成することができ、上記のフッ化アルキル鎖が持つ独特の性質を被膜表面にもたらすことができる。
【0003】
写真感光材料においても、種々の界面活性剤が用いられ、重要な役割を果たしている。写真感光材料は、通常、親水性コロイドバインダー(例えばゼラチン)の水溶液を含む複数の塗布液を、支持体上に個々に塗布して複数の層を形成し作製される。しばしば、複数の親水性コロイド層を同時多層塗布することも行われる。これらの層には、帯電防止層、下塗り層、ハレーション防止層、ハロゲン化銀乳剤層、中間層、フィルター層、保護層等が含まれ、各層には各機能を発現するために種々の素材が添加される。また、膜物理性改良のためにポリマーラテックスを親水性コロイド層に含有させることもある。さらに、カラーカプラー、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、スベリ剤等の水に難溶性の機能性化合物を親水性コロイド層に含有させるために、これらの素材をそのまま、あるいはリン酸エステル系化合物、フタル酸エステル化合物などの高沸点有機溶媒に溶解させた状態で、親水性コロイド溶液中に乳化分散させて、塗布液の調製に用いる場合がある。このように、一般的に、写真感光材料は種々の親水性コロイド層から構成されており、その製造に際しては、種々の素材を含む塗布液を、ハジキや塗布ムラなどの欠陥なく均一に高速塗布することが要求されている。このような要求に応えるために、界面活性剤を塗布助剤として塗布液中に添加することがしばしば行われている。
【0004】
一方で、感光材料はその製造、撮影、現像処理の間に種々の物質と接触する。例えば、処理の工程において、感光材料が巻き取られた状態にあると、支持体の裏面に形成されたバック層と表面層が接触する場合がある。また、処理の工程において搬送される際に、ステンレス、ゴムローラー等と接触する場合がある。これらの材料と接触すると、感光材料の表面(ゼラチン層)は正に帯電しやすく、場合によっては不要な放電を起こすため、感光材料に望ましくない露光跡(スタチックマークと称される)を残すことになる。このゼラチンの帯電性を軽減するには、フッ素原子を有する化合物を用いることが有効であり、感光材料にフッ素系界面活性剤を添加することがしばしば行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、界面活性剤、特にフッ素系界面活性剤は塗布膜の均質性を付与するための塗布助剤、あるいは写真感光材料の帯電防止性付与の両機能を担う素材として用いられており、例えば特開昭49−46733号公報、同51−32322号公報、同57−64228号公報、同64−536号公報、特開平2−141739号公報、同3−95550号公報、同4−248543号公報等にその具体例が開示されている。しかしながら、これらの素材は近年の感光材料の高感度化および高速塗布化の要請に対して、必ずしも満足する性能を有するものではなく、さらなるフッ素系界面活性剤の改良が望まれている。一般的に、パーフルオロアルキル鎖の鎖長を短くすると、分解性(使用後の化合物の分解性)の点で有利と考えられるが、塗膜表面へのフッ化アルキル鎖の配向性は著しく低下してしまう。従って、より短いフルオロアルキル鎖を有し、かつ表面配向性(帯電防止性に関連する)と塗膜の均質性を両立できるフッ素系界面活性剤の利用が強く望まれている。
【0006】
しかしながら、フッ素系界面活性剤は写真感光材料の表面に配向し帯電性を調整する効果が大きいという利点がある一方で、フッ素系界面活性剤は水あるいは親水性の有機溶媒等に極少量しか溶解せず、溶解不良によるはじき等の発生が起こることがあるという欠点もある。
そこで、フッ素系界面活性剤を可溶化する目的で炭化水素系の界面活性剤を始め種々の添加剤を混合する試みが行われているが、例えば添加する炭化水素系界面活性剤の方がフッ素系界面活性剤より多くなり、製造上あまり好ましいとは言えなかった。そこで、少しでも水あるいは親水性の有機溶媒等に対する溶解性が高いフッ素系界面活性剤を開発することが課題となっている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、フッ素界面活性剤の製造時、あるいは溶解時に不純物として存在する無機塩が少ないほど水あるいは親水性の有機溶媒への溶解性が向上することが明らかになり、以下の構成を有する本発明を提供するに至った。
【0008】
<1> 下記一般式(1)で表される化合物を90質量%以上含有する固体状の界面活性剤組成物であって、該界面活性剤組成物を水に1質量%溶解させたときの電気伝導度が150〜750μS/cmである界面活性剤組成物。
【化2】
【0009】
(式中、RB3、RB4およびRB5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。AおよびBはそれぞれ独立にフッ素原子または水素原子を表す。nB3およびnB4はそれぞれ独立に4〜8の整数を表す。LB1およびLB2はそれぞれ独立に置換もしくは無置換のアルキレン基または置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、あるいはこれらを組み合わせてできる2価の連結基を表す。mBは0または1を表す。Mはカチオンを表す。)
【0010】
<2> 上記一般式(1)で表わされる化合物を、水およびアルコールから選択される単独溶媒または混合溶媒に溶解させた界面活性剤溶液。
<3> 上記一般式(1)で表わされる化合物を少なくとも1種含有する水性塗布組成物。
<4> 上記一般式(1)で表わされる化合物とその他の無機塩を含有する固体状の界面活性剤組成物であって、該界面活性剤組成物を水に1質量%溶解させたときの電気伝導度が150〜750μS/cmである界面活性剤組成物。
<5> 上記一般式(1)で表わされる化合物の含有量が95質量%以上である<1>または<4>に記載の界面活性剤組成物。
<6> <1>、<4>または<5>に記載の界面活性剤組成物を、水およびアルコールから選択される単独溶媒または混合溶媒に溶解させた界面活性剤溶液。<7> <1>、<4>または<5>に記載の界面活性剤組成物を溶解させた水性塗布組成物。
<8> 支持体上に少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀乳剤層を含む1以上の層を有するハロゲン化銀写真感光材料であって、支持体上に形成された層の少なくとも1層中に上記一般式(1)で表わされる化合物を少なくとも1種含有するハロゲン化銀写真感光材料。
<9> 支持体上に少なくとも感光性ハロゲン化銀、還元可能な銀塩、還元剤、バインダーおよび、上記一般式(1)で表わされる化合物を少なくとも1種含有する熱現像感光材料。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の界面活性剤組成物およびその利用について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
<界面活性剤組成物>
本発明の界面活性剤組成物は、一般式(1)で表される化合物を90質量%以上含有する固体状の界面活性剤組成物である。そこでまず、一般式(1)で表わされる化合物について詳細に説明する。
【0013】
一般式(1)中、RB3、RB4およびRB5はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。該置換基として後述の置換基Tを適用することができる。
RB3、RB4およびRB5としては、好ましくはアルキル基または水素原子であり、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基または水素原子であり、さらに好ましくはメチル基または水素原子であり、特に好ましくは水素原子である。
【0014】
一般式(1)中、AおよびBはそれぞれ独立にフッ素原子またま水素原子を表し、AとBは同じであっても、異なっていてもよい。AおよびBとして好ましいくは、A、B共にフッ素原子、あるいはA、B共に水素原子であり、より好ましくはA、B共にフッ素原子である。
【0015】
nB3およびnB4はそれぞれ独立に4〜8の整数を表す。nB3およびnB4は4〜8の整数であれば互いに異なっていても、同じであってもよい。nB3およびnB4として好ましくは4〜6の整数でかつnB3=nB4であり、より好ましくは4または6の整数でかつnB3=nB4であり、さらに好ましくはnB3=nB4=4である。
mBは0または1を表し、どちらも同様に好ましい。
【0016】
LB1およびLB2は置換もしくは無置換のアルキレン基または置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、あるいはこれらを組み合わせてできる2価基を表す。置換基として後述の置換基Tを適用することができる。LB1およびLB2は、炭素数が4以下であるのが好ましく、また、無置換アルキレンであるのが好ましい。
【0017】
Mはカチオンを表す。Mで表されるカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン等が好ましい。Mとして好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンであり、より好ましくは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンである。さらに好ましくはナトリウムイオンである。
【0018】
一般式(1)で表わされる化合物のうち、好ましいのは下記一般式(1A)で表わされる化合物である。
【化3】
【0019】
式中、RB3、RB4、RB5、nB3、nB4、mBおよびMは一般式(1)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。nB1およびnB2はそれぞれ独立に1〜6の整数を表す。
【0020】
nB1およびnB2は1〜6の整数であれば互いに異なっていても、同じであってもよい。nB1およびnB2として好ましくはnB1=nB2であり、より好ましくは、1〜3の整数でかつnB1=nB2であり、さらに好ましくは2または3の整数でかつnB1=nB2であり、特に好ましくはnB1=nB2=2である。
【0021】
一般式(1)で表わされる化合物のうち、より好ましいのは下記一般式(1―B)で表わされる化合物ある。
【化4】
【0022】
式中、nB1、nB2、nB3、nB4、mBおよびMは一般式(1−B)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0023】
一般式(1)で表わされる化合物のうち、さらにより好ましいのは下記一般式(1−C)で表わされる化合物である。
【化5】
【0024】
式中、nB5は2または3の整数を表す。nB6は4〜6の整数を表す。mBは0または1をし、どちらも同様に好ましい。Mは一般式(1)におけるのと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。
【0025】
以下に、上記の置換基Tに関して詳細に説明する。置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12アシル基であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基はさらに置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0026】
以下に一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明で用いることができる一般式(1)の化合物はこれらに限定されるものではない。
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
【化8】
【0030】
【化9】
【0031】
【化10】
【0032】
【化11】
【0033】
一般式(1)で表される化合物の合成法は特に制限されない。一般式(1)で表される化合物は一般にマレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびそれらの無水物より合成することができる。一般式(1)で表される化合物のうち、2本のエステル鎖が等しいものは下記スキームによって合成することができる。
【0034】
【化12】
【0035】
まず、初めに上記中間体Aの一般的合成法に関して説明する。
上記中間体Aは、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸またはそれらの無水物を酸触媒の存在下にアルコール等と脱水縮合反応させることによって合成することができる。酸触媒としては、無機酸、有機酸のいずれであってもよいが、好ましくはp−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、硫酸、リン酸であり、より好ましくはp−トルエンスルホン酸、硫酸である。
また、特許公報2713964号公報に記載されるように、フマル酸、イタコン酸の酸塩化物からも同様に合成することができる。また、上記中間体はシス体であるが、対応するトランス体からも同様に中間体Aを合成することができる。上記中間体Aの反応は無溶媒でも溶媒を使って行ってもよい。溶媒を使う場合は沸点が80℃以上の溶媒を用いることが好ましく、例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等を好ましく用いることができ、トルエンをより好ましく用いることができる。
【0036】
中間体Aから一般式(1)で表わされる化合物を製造する工程に関しては、特公昭58−23387号公報、特許第2713964号公報に記載される方法を利用することができる。また対カチオンの変換は、イオン交換樹脂により容易に行うことができる。
【0037】
本発明の界面活性剤組成物は、水に1質量%溶解させたときの電気伝導度が150〜750μS/cmである。電気伝導度は、150〜600μS/cmであることがより好ましく、150〜550μS/cmであることがさらに好ましく、170〜500μS/cmであることが特に好ましい。電気伝導度は、後述する実施例1(3)に記載される方法で測定することができる。
一般式(1)で表わされる化合物は、上に例示される方法で合成した場合、無機塩などの不純物を含有していることが多い。界面活性剤組成物の1質量%溶液の電気伝導度は、このような不純物の種類や存在量により影響を受ける。したがって、電気伝導度を150〜750μS/cmの範囲内に調整するためには、一般式(1)で表わされる化合物を合成した後の後処理の方法を適宜調整する必要がある。例えば、反応混合物から一般式(1)で表わされる化合物を抽出する際に用いる溶媒の種類や量を適宜選択することによって、電気伝導度を150〜750μS/cmの範囲内にすることができる。具体的な方法については、後述する実施例を参照することができる。
【0038】
<界面活性剤を含む溶液>
上記界面活性剤組成物を溶解させる媒体は、水単独であってもよいし、水以外の有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、nーブタノール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、アセトン等)と水との混合溶媒であってもよい。好ましくは水またはアルコール(好ましくはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールである。)の単独または混合溶媒であり、より好ましくは水またはメタノールの単独または混合溶媒であり、さらに好ましくは水またはメタノールの単独または混合溶媒である。水とアルコールの混合溶媒を用いる場合は、水の割合が50%以上であることが好ましい。
上記溶液中における一般式(1)で表わされる界面活性剤の濃度は0.001質量%〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.1質量%〜20質量%であり、さらに好ましくは、0.5質量%〜10質量%であり、特に好ましくは1質量%〜10質量%である。
【0039】
<水性塗布組成物>
一般式(1)で表わされる界面活性剤を含む水性溶液は、ハロゲン化銀写真感光材料や熱現像感光材料などの感光材料に対する水性塗布組成物として用いることができる。水性塗布組成物は、一般式(1)で表わされる化合物と水のみからなっていてもよいし、目的に応じてその他の成分を適宜含んでいてもよい。
上記の水性塗布組成物は、一般式(1)で表わされる界面活性剤を1種類のみ含むものであってもよいし、また一般式(1)で表わされる界面活性剤を2種類以上含むものであってもよい。また、一般式(1)で表わされる界面活性剤とともに、一般式(1)以外の構造を有する界面活性剤以外の界面活性剤を含んでいてもよい。併用可能な界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の各種界面活性剤を挙げることができ、高分子界面活性剤やフッ素系界面活性剤であってもよい。このうち、アニオン系もしくはノニオン系活性剤を用いることがより好ましい。併用可能な界面活性剤の例としては、例えば特開昭62−215272(649〜706頁)やリサーチ・ディスクロージャ(RD)Item17643,26〜27頁(1978年12月)、同18716,650頁(1979年11月),同307105,875〜876頁(1989年11月)等に記載されるものを挙げることができる。
【0040】
上記水性塗布組成物中に含まれていてもよいものとして代表的なものはポリマー化合物である。ポリマー化合物は水性媒体可溶なポリマーであってもよいし、ポリマーの水分散物(いわゆるポリマーラテックス)であってもよい。可溶性ポリマーとしては特に制限は無いが、例えばゼラチン、ポリビニルアルコール、カゼイン、寒天、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができ、ポリマーラテックスとしては、種々のビニルモノマー(例えば、アクリレート誘導体、メタクリレート誘導体、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体、スチレン誘導体、共役ジエン誘導体、N−ビニル化合物、O−ビニル化合物、ビニルニトリル、その他のビニル化合物(例えばエチレン、塩化ビニリデン))の単独もしくは共重合体、縮合系ポリマーの分散物(例えばポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド)を挙げることができる。この種のポリマー化合物の詳細例については、例えば特開昭62−215272(707〜763頁)やリサーチ・ディスクロージャ(RD)Item17643,651頁(1978年12月)、同18716,650頁(1979年11月),同307105,873〜874頁(1989年11月)等を挙げることができる。
【0041】
上記水性塗布組成物における媒体としては、水単独であってもよいし、水以外の有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、nーブタノール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、アセトン等)と水との混合溶媒であってもよい。好ましくは水またはアルコール(好ましくはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール)の単独または混合溶媒が好ましい。より好ましくは水またはメタノールの単独または混合溶媒であり、さらに好ましくは水またはメタノールの単独または混合溶媒である。混合溶媒の場合は、水の割合が50%以上であることが好ましい。
【0042】
上記水性塗布組成物中には、用いる感光材料の層に応じて種々の化合物を含んでいてもよく、またそれらは媒体に溶解していてもよく、分散されていてもよい。それらの例としては、種々のカプラー、紫外線吸収剤、混色防止剤、スタチック防止剤、スカベンジャー、かぶり防止剤、硬膜剤、染料、防黴剤 等を挙げることができる。効果的な帯電防止能と塗布の均一性を得るためには、感光材料の最上層の親水性コロイド層に用いるのが好ましい。
この場合、該層の塗布組成物中には、親水性コロイド(例えばゼラチン)や一般式(1)で表わされるフッ素系界面活性剤以外に、他の界面活性剤やマット剤、スベリ剤、コロイダルシリカ、ゼラチン可塑剤等を含有することができる。
【0043】
一般式(I)の界面活性剤の使用量に特に制約は無く、また界面活性剤の構造やその用途、水性組成物中に含まれる化合物の種類や量、媒体の構成等によって、その使用量を任意に変えることができる。例えば本発明の界面活性剤を、本発明の好ましい態様である感光材料の最上層の親水性コロイド(ゼラチン)層用塗布液として用いる場合、塗布溶液中の濃度として0.003〜0.5%であることが好ましく、またゼラチン固形分に対しては0.03〜5%であることが好ましい。
【0044】
<ハロゲン化銀写真感光材料および熱現像感光材料>
本発明の水性塗布組成物を用いれば、良好な機能を有するハロゲン化銀写真感光材料や熱現像感光材料を製造することができる。ハロゲン化銀写真感光材料は、支持体上に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有するものであり、熱現像感光材料は、支持体上に少なくとも感光性ハロゲン化銀、還元可能な銀塩、還元剤、バインダーを有するものである。以下において、代表的な応用例として熱現像感光材料について主として説明を行う。
【0045】
本発明の熱現像感光材料に用いることができる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)および還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は、還元可能な銀イオン源を含む任意の有機物質であってよい。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪カルボン酸の銀塩が好ましい。配位子が4.0〜10.0の範囲の錯体安定度定数を有する有機または無機銀塩の錯体も好ましい。銀供給物質は、好ましくは画像形成層の約5〜70質量%を構成することができる。好ましい有機銀塩として、カルボキシル基を有する有機化合物の銀塩を挙げることができる。具体的には、脂肪族カルボン酸の銀塩および芳香族カルボン酸の銀塩を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。脂肪族カルボン酸の銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、リノール酸銀、酪酸銀および樟脳酸銀、これらの混合物などを挙げることができる。
【0046】
本発明においては、上記の有機酸銀ないしは有機酸銀の混合物の中でも、ベヘン酸銀含有率75mol%以上の有機酸銀を用いることが好ましく、ベヘン酸銀含有率85mol%以上の有機酸銀を用いることがさらに好ましい。ここでベヘン酸銀含有率とは、使用する有機酸銀に対するベヘン酸銀のモル分率を示す。本発明に用いる有機酸銀中に含まれるベヘン酸銀以外の有機酸銀としては、上記の例示有機酸銀を好ましく用いることができる。
【0047】
本発明に好ましく用いられる有機酸銀は、上記の有機酸のアルカリ金属塩(Na塩、K塩、Li塩等が挙げられる)溶液または懸濁液と硝酸銀を反応させることにより調製される。これらの調製方法については、特開2000−292882号公報の段落番号0019〜0021に記載の方法を用いることができる。
【0048】
本発明においては、液体を混合するための密閉手段の中に硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液を添加することにより有機酸銀を調製する方法を好ましく用いることができる。具体的には、特開2001−33907号公報に記載されている方法を用いることができる。
本発明においては有機酸銀の調製時に、硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液、あるいは反応液には水に可溶な分散剤を添加することができる。ここで用いる分散剤の種類および使用量については、特開2000−305214号公報の段落番号0052に具体例が記載されている。
【0049】
本発明に用いる有機酸銀は第3アルコールの存在下で調製することが好ましい。第3アルコールとしては、好ましくは総炭素数15以下の化合物が好ましく、10以下の化合物が特に好ましい。好ましい第3アルコールの例としては、tert−ブタノール等が挙げられるが、本発明で使用することができる第3アルコールはこれに限定されない。
本発明に用いる第3アルコールの添加時期は有機酸銀調製時のいずれのタイミングでもよいが、有機酸アルカリ金属塩の調製時に添加して、有機酸アルカリ金属塩を溶解して用いることが好ましい。また、本発明で用いる第3アルコールは、有機酸銀調製時の溶媒としての水に対して質量比で0.01〜10の範囲で使用することができるが、0.03〜1の範囲で使用することが好ましい。
【0050】
本発明に用いることができる有機銀塩の形状やサイズは特に制限されないが、特開2000−292882号公報の段落番号0024に記載のものを用いることが好ましい。有機銀塩の形状は、有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像から求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)は好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。測定方法としては、例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。この測定法での平均粒子サイズとしては0.05μm〜10.0μmの固体微粒子分散物が好ましい。より好ましい平均粒子サイズは0.1μm〜5.0μm、さらに好ましい平均粒子サイズは0.1μm〜2.0μmである。
【0051】
本発明に用いる有機銀塩は、脱塩したものであることが好ましい。脱塩法は特に制限されず、公知の方法を用いることができるが、遠心濾過、吸引濾過、限外濾過、凝集法によるフロック形成水洗等の公知の濾過方法を好ましく用いることができる。限外濾過の方法については、特開2000−305214号公報に記載の方法を用いることができる。
【0052】
本発明では、高S/Nで、粒子サイズが小さく、凝集のない有機銀塩固体分散物を得る目的で、画像形成媒体である有機銀塩を含み、かつ感光性銀塩を実質的に含まない水分散液を高速流に変換した後、圧力降下させる分散法を用いることが好ましい。これらの分散方法については特開2000−292882号公報の段落番号0027〜0038に記載の方法を用いることができる。
【0053】
本発明で用いる有機銀塩固体微粒子分散物の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。具体的には、体積荷重平均直径の標準偏差を体積荷重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が80%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。
【0054】
本発明に用いる有機銀塩固体微粒子分散物は、少なくとも有機銀塩と水からなるものである。有機銀塩と水との割合は特に限定されるものではないが、有機銀塩の全体に占める割合は5〜50質量%であることが好ましく、特に10〜30質量%の範囲が好ましい。前述の分散助剤を用いることは好ましいが、粒子サイズを最小にするのに適した範囲で最少量使用するのが好ましく、有機銀塩に対して0.5〜30質量%、特に1〜15質量%の範囲が好ましい。
【0055】
本発明で用いる有機銀塩は所望の量で使用できるが、銀量として0.1〜5g/m2が好ましく、さらに好ましくは1〜3g/m2である。
【0056】
本発明にはCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンを非感光性有機銀塩へ添加することが好ましい。Ca、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの非感光性有機銀塩への添加については、ハロゲン化物でない、水溶性の金属塩の形で添加することが好ましく、具体的には硝酸塩や硫酸塩などの形で添加することが好ましい。ハロゲン化物での添加は処理後の感光材料の光(室内光や太陽光など)による画像保存性、いわゆるプリントアウト性を悪化させるので好ましくない。このため、本発明ではハロゲン化物でない、水溶性の金属塩の形で添加することが好ましい。
【0057】
本発明に好ましく用いるCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの添加時期としては、該非感光性有機銀塩の粒子形成後であって、粒子形成直後、分散前、分散後および塗布液調製前後など塗布直前までであればいずれの時期でもよく、好ましくは分散後、塗布液調製前後である。
【0058】
本発明におけるCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの添加量としては、非感光性有機銀1molあたり10−3〜10−1molが好ましく、特に5×10−3〜5×10−2molが好ましい。
【0059】
本発明の熱現像感光材料は、感光性ハロゲン化銀を含む。本発明に用いる感光性ハロゲン化銀は、ハロゲン組成として特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀を用いることができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の粒子形成については、特開平11−119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法で粒子形成することができるが、特にこの方法に限定されるものではない。
【0060】
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、十四面体、平板状、球状、棒状、ジャガイモ状等を挙げることができるが、本発明においては特に立方体状粒子あるいは平板状粒子が好ましい。粒子のアスペクト比、面指数など粒子形状の特徴については、特開平11−119374号公報の段落番号0225に記載されているものと同じである。また、ハロゲン組成の分布はハロゲン化銀粒子の内部と表面において均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を好ましく用いることができる。構造としては好ましくは2〜5重構造、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。また塩化銀または塩臭化銀粒子の表面に臭化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0061】
本発明で用いるハロゲン化銀粒子の粒子サイズ分布は、単分散度の値が30%以下であり、好ましくは1〜20%であり、さらに5〜15%である。ここで単分散度は、粒子サイズの標準偏差を平均粒子サイズで割った値の百分率(%)(変動係数)として定義されるものである。なおハロゲン化銀粒子の粒子サイズは、便宜上、立方体粒子の場合は稜長で表し、その他の粒子(八面体、十四面体、平板状など)は投影面積円相当直径で算出する。
【0062】
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表の第VII族あるいは第VIII族の金属または金属錯体を含有する。周期律表の第VII族あるいは第VIII族の金属または金属錯体の中心金属として好ましくはロジウム、レニウム、ルテニウム、オスニウム、イリジウムである。特に好ましい金属錯体は、(NH4)3Rh(H2O)Cl5、K2Ru(NO)Cl5、K3IrCl6、K4Fe(CN)6である。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属および異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1molに対し1×10−9mol〜1×10−3molの範囲が好ましく、1×10−8mol〜1×10−4molの範囲がより好ましい。具体的な金属錯体の構造としては特開平7−225449号公報等に記載された構造の金属錯体を用いることができる。これら重金属の種類、添加方法に関しては、特開平11−119374号公報の段落番号0227〜0240に記載されている。
【0063】
感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている水洗法により脱塩することができるが、本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀乳剤は化学増感することが好ましい。化学増感については、特開平11−119374号公報の段落番号0242〜0250に記載されている方法を用いることが好ましい。
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開EP293,917A号公報に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。
【0064】
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀に含有するゼラチンとしては、感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持するために、低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。低分子量ゼラチンの分子量は、500〜60,000であり、好ましくは分子量1,000〜40,000である。これらの低分子量ゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、脱塩処理後の分散時に使用することが好ましい。また、粒子形成時は通常のゼラチン(分子量100,000程度)を使用し、脱塩処理後の分散時に低分子量ゼラチンを使用してもよい。
分散媒の濃度は0.05〜20質量%にすることができるが、取り扱い上5〜15質量%の濃度域が好ましい。ゼラチンの種類としては、通常アルカリ処理ゼラチンが用いられるが、その他に酸処理ゼラチン、フタル化ゼラチンの如き修飾ゼラチンも用いることができる。
【0065】
本発明に用いる感光材料中のハロゲン化銀乳剤は、1種だけを用いてもよいし、2種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)を併用してもよい。
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀の使用量としては有機銀塩1molに対して感光性ハロゲン化銀0.01mol〜0.5molが好ましく、0.02mol〜0.3molがより好ましく、0.03mol〜0.25molが特に好ましい。別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法および混合条件については、それぞれ調製を終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に得られる限り特に制限はない。また、混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましい方法である。
【0066】
本発明に用いることができる増感色素としては、ハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので、露光光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。例えば、550nm〜750nmの波長領域を分光増感する色素としては、特開平10−186572号公報の一般式(II)で表される色素が挙げられ、具体的にはII−6、II−7、II−14、II−15、II−18、II−23、II−25の色素を好ましい色素として例示することができる。また、750〜1400nmの波長領域を分光増感する色素としては、特開平11−119374号公報の一般式(I)で表される色素が挙げられ、具体的には(25)、(26)、(30)、(32)、(36)、(37)、(41)、(49)、(54)の色素を好ましい色素として例示することができる。さらに、J−bandを形成する色素として、米国特許第5,510,236号明細書、同第3,871,887号明細書の実施例5に記載の色素、特開平2−96131号公報、特開昭59−48753号公報に開示されている色素を好ましい色素として例示することができる。これらの増感色素は単独で用いてもよく、2種以上組合せて用いてもよい。
【0067】
これら増感色素の添加については、特開平11−119374号公報の段落番号0106に記載されている方法で添加することができるが、特に、この方法に限定されるものではない。
本発明における増感色素の添加量は、感度やカブリの性能に合わせて所望の量にすることができるが、感光性層のハロゲン化銀1mol当たり10−6〜1molが好ましく、さらに好ましくは10−4〜10−1molである。
【0068】
本発明は分光増感効率を向上させるため、強色増感剤を用いることができる。本発明に用いる強色増感剤としては、欧州特許公開EP587,338A号公報、米国特許第3,877,943号明細書、同第4,873,184号明細書に開示されている化合物、複素芳香族あるいは脂肪族メルカプト化合物、複素芳香族ジスルフィド化合物、スチルベン、ヒドラジン、トリアジンから選択される化合物などが挙げられる。
【0069】
特に好ましい強色増感剤は、特開平5−341432号公報に開示されている複素芳香族メルカプト化合物、複素芳香族ジスルフィド化合物、特開平4−182639号公報の一般式(I)あるいは(II)で表される化合物、特開平10−111543号公報の一般式(I)で表されるスチルベン化合物、特開平11−109547号公報の一般式(I)で表わされる化合物である。具体的には特開平5−341432号公報のM−1〜M−24の化合物、特開平4−182639号公報のd−1)〜d−14)の化合物、特開平10−111543号公報のSS−01〜SS−07の化合物、特開平11−109547号公報の31、32、37、38、41〜45、51〜53の化合物である。
これらの強色増感剤の添加量は、乳剤層中にハロゲン化銀1mol当たり10−4〜1molの範囲が好ましく、ハロゲン化銀1mol当たり0.001〜0.3molの範囲がより好ましい。
【0070】
次に本発明に用いられる、▲1▼非感光性有機銀塩上か近傍の少なくとも一方に現像開始点を形成可能な化学種をイメージワイズに生成する化合物、▲2▼添加することにより現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する化合物、▲3▼添加することによりカバリングパワーが120〜1000%に増加する化合物について説明する。
【0071】
先ず、非感光性有機銀塩上か近傍の少なくとも一方に現像開始点を形成可能な化学種をイメージワイズに生成する化合物について詳細に説明する。該化合物が感光材料中に存在しない場合は、露光により潜像が形成したハロゲン化銀上でのみ、物理現像が進行する。該化合物が感光材料中に存在する場合は、露光により潜像が形成したハロゲン化銀上で起こる物理現像に伴い生成する化学種、例えば現像主薬酸化体と該化合物が反応し、非感光性有機銀塩上か近傍の少なくとも一方に現像開始点を形成可能な化学種が生成する。その化学種が非感光性銀塩、例えばベヘン酸銀上か近傍の少なくとも一方に現像開始点を形成し、そこから物理現像が起こる。すなわち、該化合物が感光材料中に存在する場合は、露光により潜像が形成したハロゲン化銀上、およびイメージワイズに現像開始点が形成された非感光性有機銀塩上の両方で物理現像が進行する。
【0072】
次に、添加することにより現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する化合物について詳細に説明する。現像銀粒子密度は、感光材料中の全ての銀イオンが還元されたサンプルについて、特願2001−21749号明細書に記載の図1、あるいは図2に示すような写真を撮影し、単位面積当たりの現像銀粒子の数を数え、その密度を比較した。本発明の化合物が感光材料中に存在する場合は、該化合物が感光材料中に存在しない場合に比べ、現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する。より好ましい化合物の現像銀粒子密度増加率は500〜3000%である。
【0073】
次に、添加することによりカバリングパワーが120〜1000%に増加する化合物について詳細に説明する。ここで、カバリングパワーとは、感光材料中の全ての銀イオンが還元されたサンプルについて、可視濃度を現像銀量(g/m2)で割った値である。本発明の化合物によるカバリングパワーの増加は、特願2001−21749号明細書に記載の図1と図2の比較からわかるように、より小さな現像銀粒子が数多く形成されることによる。より好ましい化合物のカバリングパワー増加率は150〜500%である。
【0074】
次に、本発明に用いられる、▲1▼非感光性有機銀塩上か近傍の少なくとも一方に現像開始点を形成可能な化学種をイメージワイズに生成する化合物、▲2▼添加することにより現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する化合物、▲3▼添加することによりカバリングパワーが120〜500%に増加する化合物としては、特開2000−284399号公報に記載の式(H)で表されるヒドラジン誘導体(具体的には同公報の表1〜表4に記載のヒドラジン誘導体)、特開平10−10672号公報、特開平10−161270号公報、特開平10−62898号公報、特開平9−304870号公報、特開平9−304872号公報、特開平9−304871号公報、特開平10−31282号公報、米国特許第5,496,695号明細書、欧州特許公開EP741,320A号公報に記載のすべてのヒドラジン誘導体を挙げることができる。特開2001−133924号公報に記載の一般式(H)、(G)、(P)で表される化合物、具体的には同公報の[化3]〜[化9]、[化11]〜[化53]。特開2001−27790号公報に記載の一般式(H−1)、(H−2)、(H−3)、(H−4)、(H−5)、(H−1−1)で表されるヒドラジン誘導体、具体的には同公報に記載の化合物H−1−1〜H−1−28、化合物H−2−1〜H−2−9、化合物H−3−1〜H−3−12、化合物H−4−1〜H−4−21、化合物H−5−1〜H−5−5)。特開2001−125224号公報に記載の一般式(1)で表される置換アルケン誘導体、具体的には同公報に記載の[化10]〜[化55]が挙げられる。これらの化合物を複数併用してもよい。
【0075】
また、本発明に用いられる、▲1▼非感光性有機銀塩上か近傍の少なくとも一方に現像開始点を形成可能な化学種をイメージワイズに生成する化合物、▲2▼添加することにより現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する化合物、▲3▼添加することによりカバリングパワーが120〜500%に増加する化合物として、下式(11)、(12)、(13)で表される化合物がより好ましく用いられる。
【0076】
【化13】
[式(11)中、R1,R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Zは電子吸引性基を表す。R1とZ、R2とR3、R1とR2、或いはR3とZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
【0077】
【化14】
[式(12)中、R4は、置換基を表す。]
【0078】
【化15】
[式(13)中、XおよびYはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、AおよびBはそれぞれ独立に、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アニリノ基、ヘテロ環オキシ基、ヘテロ環チオ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。XとY、あるいはAとBは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
【0079】
式(11)、(12)、(13)で表される化合物について詳細に説明する。式(11)においてR1,R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Zは電子吸引性基を表す。式(11)においてR1とZ、R2とR3、R1とR2、或いはR3とZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。式(12)においてR4は、置換基を表す。式(13)においてXおよびYはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、AおよびBはそれぞれ独立に、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アニリノ基、ヘテロ環オキシ基、ヘテロ環チオ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。式(13)においてXとY、あるいはAとBは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0080】
式(11)においてR1,R2およびR3が置換基を表す時、置換基の例としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(Nー置換の含窒素ヘテロ環基を含む)、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、チオカルボニル基、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イソチオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、アシルチオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスホリル基、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、シリル基、スタニル基等が挙げられる。これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
【0081】
式(11)においてZで表される電子吸引性基とは、ハメットの置換基定数σpが正の値を取りうる置換基のことであり、具体的には、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、チオカルボニル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルカンアミド基、スルホンアミド基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、カルボキシ基、スルホ基(またはその塩)、ヘテロ環基、アルケニル基、アルキニル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、スルホニルオキシ基、またはこれら電子吸引性基で置換されたアリール基等である。ここにヘテロ環基とは、芳香族もしくは非芳香族の、飽和もしくは不飽和のヘテロ環基で、例えばピリジル基、キノリル基、ピラジニル基、ベンゾトリアゾリル基、イミダゾリル基、ベンツイミダゾリル基、ヒダントインー1―イル基、ウラゾール−1−イル基、スクシンイミド基、フタルイミド基等がその例として挙げられる。式(11)においてZで表される電子吸引性基は、さらに任意の置換基を有していてもよい。
式(11)においてZで表される電子吸引性基として好ましくは、総炭素数0から30の以下の基、即ち、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、パーフルオロアルキル基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、または任意の電子吸引性基で置換されたフェニル基等であり、さらに好ましくは、シアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、トリフルオロメチル基、または任意の電子吸引性基で置換されたフェニル基等であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、またはホルミル基である。
【0082】
式(11)においてR1で表される置換基として好ましくは、総炭素数0〜30の基で、具体的には上述の式(11)のZで表される電子吸引性基と同義の基、およびアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、ウレイド基、アシルアミノ基、シリル基、または置換もしくは無置換のアリール基であり、さらに好ましくは上述の式(11)のZで表される電子吸引性基と同義の基、置換もしくは無置換のアリール基、アルケニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、シリル基、またはアシルアミノ基であり、より好ましくは電子吸引性基、アリール基、アルケニル基、またはアシルアミノ基である。R1が電子吸引性基を表す時、その好ましい範囲はZで表される電子吸引性基の好ましい範囲と同じである。
【0083】
式(11)においてR2およびR3で表される置換基として好ましくは、上述の式(11)のZで表される電子吸引性基と同義の基、アルキル基、ヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ヘテロ環アミノ基、アシルアミノ基、置換もしくは無置換のフェニル基等である。R2およびR3はさらに好ましくは、どちらか一方が水素原子で、他方が置換基を表す時である。その置換基として好ましくは、アルキル基、ヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ヘテロ環アミノ基、アシルアミノ基(特にパーフルオロアルカンアミド基)、スルホンアミド基、置換もしくは無置換のフェニル基、またはヘテロ環基等であり、さらに好ましくはヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、またはヘテロ環基であり、特に好ましくはヒドロキシ基(またはその塩)、アルコキシ基、またはヘテロ環基である。
【0084】
式(11)においてZとR1、或いはまたR2とR3とが環状構造を形成する場合もまた好ましい。この場合に形成される環状構造は、非芳香族の炭素環もしくは非芳香族のヘテロ環であり、好ましくは5員〜7員の環状構造で、置換基を含めたその総炭素数は1〜40、さらには3〜35が好ましい。
【0085】
式(11)で表される化合物の中で、より好ましいものの1つは、Zがシアノ基、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、イミノ基、またはカルバモイル基を表し、R1が電子吸引性基を表し、R2またはR3のどちらか一方が水素原子で、他方がヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、またはヘテロ環基を表す化合物である。さらにまた式(11)で表される化合物の中でより好ましいものの1つは、ZとR1とが連結して非芳香族の5員〜7員の環状構造を形成していて、R2またはR3のどちらか一方が水素原子で、他方がヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、またはヘテロ環基を表す化合物である。
【0086】
ここでZとR1とが形成する非芳香族の5員〜7員の環状構造とは具体的に、インダン−1,3−ジオン環、ピロリジン−2,4−ジオン環、ピラゾリジン−3,5−ジオン環、オキサゾリジン−2,4−ジオン環、5−ピラゾロン環、イミダゾリジン−2,4−ジオン環、チアゾリジン−2,4−ジオン環、オキソラン−2,4−ジオン環、チオラン−2,4−ジオン環、1、3―ジオキサン−4,6−ジオン環、シクロヘキサン−1,3−ジオン環、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2,4−ジオン環、シクロペンタン−1,3−ジオン環、イソオキサゾリジン−3,5−ジオン環、バルビツール酸環、2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−オン環、ピラゾロトリアゾール環(例えば7H−ピラゾロ[1,5−b][1,2,4]トリアゾール,7H−ピラゾロ[5,1−c][1,2,4]トリアゾール,7H−ピラゾロ[1,5−a]ベンズイミダゾール等)、ピロロトリアゾール環(例えば5H−ピロロ[1,2−b][1,2,4]トリアゾール,5H−ピロロ[2,1−c][1,2,4]トリアゾール等)、2−シクロペンテン−1,4−ジオン環、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド環、クロマン−2,4−ジオン環、2−オキサゾリン−5―オン環、2−イミダゾリン−5−オン環、2−チアゾリン−5−オン環、1−ピロリン−4−オン環、5−オキソチアゾリジン−2−オン環、4−オキソチアゾリジン−2−オン環、1,3−ジチオラン環、チアゾリジン環、1,3−ジチエタン環、1,3−ジオキソラン環等が挙げられ、中でもインダン−1,3−ジオン環、ピロリジン−2,4−ジオン環、ピラゾリジン−3,5−ジオン環、5−ピラゾロン環、バルビツール酸環、2−オキサゾリン−5―オン環等が好ましい。
【0087】
式(12)においてR4で表される置換基の例としては、式(11)のR1〜R3の置換基について説明したものと同じものが挙げられる。
式(12)においてR4で表される置換基は、好ましくは電子吸引性基またはアリール基である。R4が電子吸引性基を表す時、好ましくは、総炭素数0〜30の以下の基、即ち、シアノ基、ニトロ基、アシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、パーフルオロアルキル基、ホスホリル基、イミノ基、スルホンアミド基、またはヘテロ環基であり、さらにシアノ基、アシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホンアミド基、ヘテロ環基が好ましい。
R4がアリール基を表す時、好ましくは総炭素数0〜30の、置換もしくは無置換のフェニル基であり、置換基としては、式(11)のR1,R2,R3が置換基を表す時にその置換基として説明したものと同じものが挙げられるが、電子吸引性基が好ましい。
【0088】
式(13)においてXまたはYで表される置換基としては、式(11)のR1〜R3の置換基について説明したものと同じものが挙げられる。XまたはYで表される置換基は、好ましくは総炭素数1〜50の、より好ましくは総炭素数1〜35の基であり、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、チオカルボニル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、パーフルオロアルキル基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、アシルアミノ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、ヘテロ環基、アルキルチオ基、アルコキシ基、またはアリール基等が好ましい。より好ましくはシアノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アシル基、ホルミル基、アシルチオ基、アシルアミノ基、チオカルボニル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、ホスホリル基、トリフルオロメチル基、ヘテロ環基、または置換されたフェニル基等であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アシルチオ基、アシルアミノ基、チオカルボニル基、ホルミル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、ヘテロ環基、または任意の電子吸引性基で置換されたフェニル基等である。
【0089】
XとYが、互いに結合して非芳香族の炭素環、または非芳香族のヘテロ環を形成している場合もまた好ましい。この時、形成される環は5員〜7員環が好ましく、具体的には式(11)のZとR1とが互いに結合して形成しうる非芳香族の5員〜7員環の例と同じものが挙げられ、その好ましい範囲もまた同じである。これらの環はさらに置換基を有していてもよく、その総炭素数は1〜40、さらには1〜35が好ましい。
【0090】
式(13)においてA,Bで表される基は、さらに置換基を有していてもよく、好ましくは総炭素数1〜40の、より好ましくは総炭素数1〜30の基である。
式(13)においてA,Bは、これらが互いに結合して環状構造を形成している場合がより好ましい。この時形成される環状構造は5員〜7員環の非芳香族のヘテロ環が好ましく、その総炭素数は1〜40、さらには3〜30が好ましい。この場合に、A,Bが連結した例(−A−B−)を挙げれば、例えば−O−(CH2)2−O−,−O−(CH2)3−O−,−S−(CH2)2−S−,−S−(CH2)3−S−,−S−Ph−S−,−N(CH3)−(CH2)2−O−,−O−(CH2)3−S−,−N(CH3)−Ph−S−,−N(Ph)−(CH2)2−S−等である。ここにおいてPhは、フェニル基またはフェニレン基を表す。
【0091】
式(11)〜(13)で表される化合物は、ハロゲン化銀に対して吸着する吸着性の基が組み込まれていてもよい。カプラ−等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基またはポリマ−が組み込まれているものでもよく、またカチオン性基(具体的には、4級のアンモニオ基を含む基、または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基等)、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を含む基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、あるいは塩基により解離しうる解離性基(カルボキシ基、スルホ基、アシルスルファモイル基、カルバモイルスルファモイル基等)が含まれていてもよい。これらの基の例としては、例えば特開昭63−29751号公報、米国特許第4,385,108号明細書、同4,459,347号明細書、特開昭59−195233号公報、同59−200231号公報、同59−201045号公報、同59−201046号公報、同59−201047号公報、同59−201048号公報、同59−201049号公報、特開昭61−170733号公報、同61−270744号公報、同62−948号公報、同63−234244号公報、同63−234245号公報、同63−234246号公報、特開平2−285344号公報、特開平1−100530号公報、特開平7−234471号公報、特開平5−333466号公報、特開平6−19032号公報、特開平6−19031号公報、特開平5−45761号公報、米国特許第4,994,365号明細書、米国特許第4,988,604号明細書、特開平7−5610号公報、特開平7−244348号公報、独特許第4006032号明細書等に記載の化合物が挙げられる。
【0092】
次に式(11)〜(13)で表される化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明で用いることができる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0093】
【化16】
【0094】
【化17】
【0095】
【化18】
【0096】
【化19】
【0097】
【化20】
【0098】
【化21】
【0099】
【化22】
【0100】
【化23】
【0101】
【化24】
【0102】
式(11)〜(13)で表される化合物は公知の方法により容易に合成することができるが、例えば、米国特許第5,545,515号明細書、米国特許第5,635,339号明細書、米国特許第5,654,130号明細書、国際特許WO−97/34196号、或いは特開平11−231459号公報、特開平11−133546号公報、特開平11−95365号公報に記載の方法を参考に合成することができる。
【0103】
式(11)〜(13)で表される化合物は、1種のみ用いても、2種以上を併用してもよい。また上記のものの他に、米国特許第5,545,515号明細書、米国特許第5,635,339号明細書、米国特許第5,654,130号明細書、米国特許第5,705,324号明細書、米国特許第5,686,228号等明細書に記載の化合物、或いはまた特開平10―161270号公報、特開平11−119372号公報、特開平11−231459号公報、特開平11−133546号公報、特開平11−119373号公報、特開平11−109546号公報、特開平11−95365号公報、特開平11−95366号公報、特開平11−149136号公報等に記載された化合物を併用して用いてもよい。さらに本発明においては、特開平10−161270号公報に記載の種々のヒドラジン誘導体を組み合わせて用いることもできる。
【0104】
式(11)〜(13)で表される化合物は、水または適当な有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、ヒドラジン誘導体の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散し用いることができる。
【0105】
式(11)〜(13)で表される化合物は、支持体に対して画像形成層側の該画像形成層あるいは他のどの層に添加してもよいが、該画像形成層あるいはそれに隣接する層に添加することが好ましい。式(11)〜(13)で表される化合物の添加量は、銀1molに対し1×10−6〜1molが好ましく、1×10−5〜5×10−1molがより好ましく、2×10−5〜2×10−1molが最も好ましい。
【0106】
また上記の化合物の他に、米国特許第5,545,515号明細書、同第5,635,339号明細書、同第5,654,130号明細書、国際公開WO97/34196号公報、米国特許第5,686,228号明細書に記載の化合物、或いはまた特開平11−119372号公報、特開平11−133546号公報、特開平11−119373号公報、特開平11−109546号公報、特開平11−95365号公報、特開平11−95366号公報、特開平11−149136号公報に記載の化合物を用いてもよい。
【0107】
本発明では超硬調画像形成のために、前記の化合物とともに硬調化促進剤を併用することができる。例えば、米国特許第5,545,505号明細書に記載のアミン化合物、具体的にはAM−1〜AM−5、米国特許第5,545,507号明細書に記載のヒドロキサム酸類、具体的にはHA−1〜HA−11、米国特許第5,545,507号明細書に記載のアクリロニトリル類、具体的にはCN−1〜CN−13、米国特許第5,558,983号明細書に記載のヒドラジン化合物、具体的にはCA−1〜CA−6、特開平9−297368号公報に記載のオニュ−ム塩類、具体的にはA−1〜A−42、B−1〜B−27、C−1〜C−14などを用いることができる。
【0108】
本発明の熱現像感光材料にはリンを含む化合物として、五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩を併用して用いることが特に好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどがある。
【0109】
本発明において好ましく用いることができる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩は、少量で所望の効果を発現するという点から画像形成層あるいはそれに隣接するバインダー層に添加する。
リンを含む化合物および五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩の使用量(感光材料1m2あたりの塗布量)は感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1〜500mg/m2が好ましく、0.5〜100mg/m2がより好ましい。
【0110】
本発明の熱現像感光材料は、好ましくは有機銀塩のための還元剤を含む。有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質、好ましくは有機物質である。フェニドン、ハイドロキノンおよびカテコールなどの従来の写真現像剤は有用であるが、ヒンダードフェノール還元剤が好ましい。還元剤は、画像形成層を有する面の銀1molに対して5〜50mol%含まれることが好ましく、10〜40mol%で含まれることがさらに好ましい。還元剤の添加層は支持体に対して画像形成層側のいかなる層でもよい。画像形成層以外の層に添加する場合は銀1molに対して10〜50mol%と多めに使用することが好ましい。また、還元剤は現像時のみ有効に機能するように誘導化されたいわゆるプレカーサーであってもよい。
【0111】
有機銀塩を利用した熱現像感光材料においては広範囲の還元剤を使用することができる。例えば、特開昭46−6074号公報、同47−1238号公報、同47−33621号公報、同49−46427号公報、同49−115540号公報、同50−14334号公報、同50−36110号公報、同50−147711号公報、同51−32632号公報、同51−1023721号公報、同51−32324号公報、同51−51933号公報、同52−84727号公報、同55−108654号公報、同56−146133号公報、同57−82828号公報、同57−82829号公報、特開平6−3793号公報、米国特許第3,679,426号明細書、同第3,751,252号明細書、同第3,751,255号明細書、同第3,761,270号明細書、同第3,782,949号明細書、同第3,839,048号明細書、同第3,928,686号明細書、同第5,464,738号明細書、独国特許第2,321,328号明細書、欧州特許公開EP692,732A号公報などに開示されている還元剤を用いることができる。例えば、フェニルアミドオキシム、2−チエニルアミドオキシムおよびp−フェノキシフェニルアミドオキシムなどのアミドオキシム;例えば4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンズアルデヒドアジンなどのアジン;2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオニル−β−フェニルヒドラジンとアスコルビン酸との組合せのような脂肪族カルボン酸アリールヒドラジドとアスコルビン酸との組合せ;ポリヒドロキシベンゼンと、ヒドロキシルアミン、レダクトンおよび/またはヒドラジンの組合せ(例えばハイドロキノンと、ビス(エトキシエチル)ヒドロキシルアミン、ピペリジノヘキソースレダクトンまたはホルミル−4−メチルフェニルヒドラジンの組合せなど);フェニルヒドロキサム酸、p−ヒドロキシフェニルヒドロキサム酸およびβ−アリニンヒドロキサム酸などのヒドロキサム酸;アジンとスルホンアミドフェノールとの組合せ(例えば、フェノチアジンと2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノールなど);エチル−α−シアノ−2−メチルフェニルアセテート、エチル−α−シアノフェニルアセテートなどのα−シアノフェニル酢酸誘導体;2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、6,6’−ジブロモ−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチルおよびビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタンに例示されるようなビス−β−ナフトール;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体(例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンまたは2’,4’−ジヒドロキシアセトフェノンなど)の組合せ;3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロンなどの5−ピラゾロン;ジメチルアミノヘキソースレダクトン、アンヒドロジヒドロアミノヘキソースレダクトンおよびアンヒドロジヒドロピペリドンヘキソースレダクトンに例示されるようなレダクトン;2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノールおよびp−ベンゼンスルホンアミドフェノールなどのスルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオンなど;2,2−ジメチル−7−tert−ブチル−6−ヒドロキシクロマンなどのクロマン;2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジンなどの1,4−ジヒドロピリジン;ビスフェノール(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−エチリデン−ビス(2−tert−ブチル−6−メチルフェノール)、1,1,−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサンおよび2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなど);アスコルビン酸誘導体(例えば、パルミチン酸1−アスコルビル、ステアリン酸アスコルビルなど);ならびにベンジルおよびビアセチルなどのアルデヒドおよびケトン;3−ピラゾリドンおよびある種のインダン−1,3−ジオン;クロマノール(トコフェロールなど)などがある。特に好ましい還元剤は、ビスフェノール、クロマノールである。
【0112】
本発明においては、上記の還元剤と現像促進剤を併用することが好ましい。現像促進剤としては、特開2000−330234号公報に記載の一般式(1)で表される化合物で、具体的には同公報に記載のA−1〜A−105で表される化合物、特願2001−096643号明細書に記載の式(2)で表される化合物で、具体的には同公報に記載のII−1〜II−74で表される化合物が好ましく用いられる。これらの現像促進剤は乳剤層側のいかなる層に含有させてもよいが、好ましくは乳剤層またはその隣接層、さらに好ましくは乳剤層の隣接層に含有させる。
【0113】
還元剤と現像促進剤を用いる場合、これらは水溶液、有機溶媒溶液、粉末、固体微粒子分散物、乳化分散物などいかなる形態で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行うことができる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0114】
本発明で還元剤を用いる場合、それは、水溶液、有機溶媒溶液、粉末、固体微粒子分散物、乳化分散物などいかなる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0115】
画像を向上させる「色調剤」として知られる添加剤を含ませると光学濃度が高くなることがある。また、色調剤は黒色銀画像を形成させるうえでも有利になることがある。色調剤は支持体に対して画像形成層側の層に銀1molあたりの0.1〜50%molの量含ませることが好ましく、0.5〜20%mol含ませることがさらに好ましい。また、色調剤は現像時のみ有効に機能するように誘導化されたいわゆるプレカーサーであってもよい。
有機銀塩を利用した熱現像感光材料においては広範囲の色調剤を使用することができる。例えば、特開昭46−6077号公報、同47−10282号公報、同49−5019号公報、同49−5020号公報、同49−91215号公報、同49−91215号公報、同50−2524号公報、同50−32927号公報、同50−67132号公報、同50−67641号公報、同50−114217号公報、同51−3223号公報、同51−27923号公報、同52−14788号公報、同52−99813号公報、同53−1020号公報、同53−76020号公報、同54−156524号公報、同54−156525号公報、同61−183642号公報、特開平4−56848号公報、特公昭49−10727号公報、同54−20333号公報、米国特許第3,080,254号明細書、同第3,446,648号明細書、同第3,782,941号明細書、同第4,123,282号明細書、同第4,510,236号明細書、英国特許第1,380,795号明細書、ベルギー特許第841,910号明細書などに開示される色調剤を用いることができる。色調剤の具体例としては、フタルイミドおよびN−ヒドロキシフタルイミド;スクシンイミド、ピラゾリン−5−オン、ならびにキナゾリノン、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリンおよび2,4−チアゾリジンジオンのような環状イミド;ナフタルイミド(例えば、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタルイミド);コバルト錯体(例えば、コバルトヘキサミントリフルオロアセテート);3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,4−ジメルカプトピリミジン、3−メルカプト−4,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾールおよび2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールに例示されるメルカプタン;N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド、(例えば、(N,N−ジメチルアミノメチル)フタルイミドおよびN,N−(ジメチルアミノメチル)−ナフタレン−2,3−ジカルボキシイミド);ならびにブロック化ピラゾール、イソチウロニウム誘導体およびある種の光退色剤(例えば、N,N’−ヘキサメチレンビス(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジアザオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)および2−(トリブロモメチルスルホニル)−ベンゾチアゾール;ならびに3−エチル−5−[(3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)−1−メチルエチリデン]−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン;フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩、または4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオンなどの誘導体;フタラジノンとフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;フタラジン、フタラジン誘導体(たとえば、4−(1−ナフチル)フタラジン、6−クロロフタラジン、5,7−ジメトキシフタラジン、6−イソブチルフタラジン、6−tert−ブチルフタラジン、5,7−ジメチルフタラジン、および2,3−ジヒドロフタラジンなどの誘導体)もしくは金属塩;フタラジンおよびその誘導体とフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;キナゾリンジオン、ベンズオキサジンまたはナフトオキサジン誘導体;色調調節剤としてだけでなくその場でハロゲン化銀生成のためのハライドイオンの源としても機能するロジウム錯体、例えばヘキサクロロロジウム(III)酸アンモニウム、臭化ロジウム、硝酸ロジウムおよびヘキサクロロロジウム(III)酸カリウムなど;無機過酸化物および過硫酸塩、例えば、過酸化二硫化アンモニウムおよび過酸化水素;1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン、8−メチル−1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオンおよび6−ニトロ−1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオンなどのベンズオキサジン−2,4−ジオン;ピリミジンおよび不斉−トリアジン(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン、2−ヒドロキシ−4−アミノピリミジンなど)、アザウラシル、およびテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン、および1,4−ジ(o−クロロフェニル)−3,6−ジメルカプト−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン)などがある。
【0116】
本発明では色調剤として、特開2000−35631号公報に記載の一般式(F)で表されるフタラジン誘導体が好ましく用いられる。具体的には同明細書に記載のA−1〜A−10が好ましく用いられる
【0117】
色調剤は、溶液、粉末、固体微粒子分散物などいかなる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0118】
本発明の熱現像感光材料では、アンモニアなどの揮発性の塩基は揮発しやすく、塗布する工程や熱現像時だけでなく、保存中にも揮発するため、膜内に存在することは好ましくなく、NH4 +含有量は支持体1m2当たりの塗布量で、0.06mmol以下であることが好ましい。より好ましくは、0.03mmol以下である。膜中のNH4 +量の定量は、東ソー社製8000タイプイオンクロマト測定装置(電気導電度法)および分離カラムとして、東ソー社製TSKgel IC−Cation、ガードカラムとして、TSK guard column IC−Cを用いて測定した。溶離液には、2mM硝酸水溶液を用い、1.2ml/minの流量で行った。また、カラム恒温槽温度は40℃で行った。
【0119】
感光材料からのNH4 +の抽出は、抽出液として、酢酸:イオン交換水=1:148混合溶液を用い、上記抽出液5mlに感光材料1x3.5cm2の大きさの感光材料を2時間浸して行い、抽出後、0.45μmのフィルターで濾過した溶液を測定した。
膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸や、不揮発性の塩基を用いることが好ましい。
本発明の熱現像感光材料の熱現像処理前の膜面pHは6.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは5.5以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。
なお、膜面pHの測定方法は、特開2000−284399号公報の段落番号0123に記載されている。
【0120】
本発明の熱現像感光材料において、ハロゲン化銀乳剤および/または有機銀塩は、カブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体によって、付加的なカブリの生成に対してさらに保護され、在庫貯蔵中における感度の低下に対して安定化することができる。単独または組合せて使用することができる適当なカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体は、米国特許第2,131,038号明細書および同第2,694,716号明細書に記載のチアゾニウム塩、米国特許第2,886,437号明細書および同第2,444,605号明細書に記載のアザインデン、米国特許第2,728,663号明細書に記載の水銀塩、米国特許第3,287,135号明細書に記載のウラゾール、米国特許第3,235,652号明細書に記載のスルホカテコール、英国特許第623,448号明細書に記載のオキシム、ニトロン、ニトロインダゾール、米国特許第2,839,405号明細書に記載の多価金属塩、米国特許第3,220,839号明細書に記載のチウロニウム塩、ならびに米国特許第2,566,263号明細書および同第2,597,915号明細書に記載のパラジウム、白金および金塩、米国特許第4,108,665号明細書および同第4,442,202号明細書に記載のハロゲン置換有機化合物、米国特許第4,128,557号明細書および同第4,137,079号明細書、同第4,138,365号明細書および同第4,459,350号明細書に記載のトリアジンならびに米国特許第4,411,985号明細書に記載のリン化合物などがある。
【0121】
本発明の熱現像感光材料は、高感度化やカブリ防止を目的として安息香酸類を含有してもよい。本発明で用いる安息香酸類はいかなる安息香酸誘導体でもよいが、好ましい例としては、米国特許第4,784,939号明細書、同第4,152,160号明細書、特開平9−329863号公報、同9−329864号公報、同9−281637号公報などに記載の化合物が挙げられる。安息香酸類は熱現像感光材料のいかなる層に添加してもよいが、支持体に対して画像形成層側の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。安息香酸類の添加は塗布液調製のいかなる工程で行ってもよく、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でもよいが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。安息香酸類の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行ってもよい。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加してもよい。安息香酸類の添加量としてはいかなる量でもよいが、銀1mol当たり1×10−6mol〜2molが好ましく、1×10−3mol〜0.5molがさらに好ましい。
【0122】
本発明を実施するために必須ではないが、画像形成層にカブリ防止剤として水銀(II)塩を加えることが有利なことがある。この目的のために好ましい水銀(II)塩は、酢酸水銀および臭化水銀である。本発明に使用する水銀の添加量としては、塗布された銀1mol当たり好ましくは1×10−9mol〜1×10−3mol、さらに好ましくは1×10−8mol〜1×10−4molの範囲である。
【0123】
本発明で特に好ましく用いられるカブリ防止剤は有機ハロゲン化物であり、例えば、特開昭50−119624号公報、同50−120328号公報、同51−121332号公報、同54−58022号公報、同56−70543号公報、同56−99335号公報、同59−90842号公報、同61−129642号公報、同62−129845号公報、特開平6−208191号公報、同7−5621号公報、同7−2781号公報、同8−15809号公報、米国特許第5,340,712号明細書、同第5,369,000号明細書、同第5,464,737号明細書に開示されているような化合物が挙げられる。
特開2000−284399号公報に記載の式(P)で表される親水性有機ハロゲン化物がカブリ防止剤として好ましく用いられる。具体的には、同明細書に記載の(P−1)〜(P−118)が好ましく用いられる。
【0124】
有機ハロゲン化物の添加量は、Ag1molに対するmol量(mol/molAg)で示して、好ましくは1×10−5〜2mol/molAg、より好ましくは5×10−5〜1mol/molAg、さらに好ましくは1×10−4〜5×10−1mol/molAgである。これらは1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0125】
また、特開2000−284399号公報に記載の式(Z)で表されるサリチル酸誘導体がカブリ防止剤として好ましく用いられる。具体的には、同明細書に記載の(A−1)〜(A−60)が好ましく用いられる。式(Z)で表されるサリチル酸誘導体の添加量は、Ag1molに対するmol量(mol/molAg)で示して、好ましくは1×10−5〜5×10−1mol/molAg、より好ましくは5×10−5〜1×10−1mol/molAg、さらに好ましくは1×10−4〜5×10−2mol/molAgである。これらは1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0126】
本発明に好ましく用いられるカブリ防止剤として、ホルマリンスカベンジャーが有効であり、例えば、特開2000−221634号公報に記載の式(S)で表される化合物およびその例示化合物(S−1)〜(S−24)が挙げられる。
【0127】
本発明に用いるカブリ防止剤は、水あるいは適当な有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、サンドグラインダーミル、マントンゴーリン、マイクロフルイダイザーあるいは超音波によって分散し用いることもできる。
【0128】
本発明に用いるカブリ防止剤は、支持体に対して画像形成層側の層、即ち画像形成層あるいはこの層側の他のどの層に添加してもよいが、画像形成層あるいはそれに隣接する層に添加することが好ましい。画像形成層は還元可能な銀塩(有機銀塩)を含有する層であり、好ましくはさらに感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層であることが好ましい。
【0129】
本発明の熱現像感光材料には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御することや、現像前後の保存性を向上させることなどを目的としてメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができる。
本発明にメルカプト化合物を使用する場合、いかなる構造のものでもよいが、Ar−SM、Ar−S−S−Arで表されるものが好ましい。式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、イオウ、酸素、セレニウムまたはテルリウム原子を有する芳香環または縮合芳香環である。好ましくは、複素芳香環はベンズイミダゾール、ナフスイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフスオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリンまたはキナゾリノンである。この複素芳香環は、例えば、ハロゲン(例えば、BrおよびCl)、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、アルキル(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、アルコキシ(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)およびアリール(置換基を有していてもよい)からなる置換基群から選択されるものを有してもよい。メルカプト置換複素芳香族化合物をとしては、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、6−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2,2’−ジチオビス−(ベンゾチアゾール)、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4,5−ジフェニル−2−イミダゾールチオール、2−メルカプトイミダゾール、1−エチル−2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトキノリン、8−メルカプトプリン、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリノン、7−トリフルオロメチル−4−キノリンチオール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−ピリジンチオール、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジンモノヒドレート、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−ヒドキロシ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプトピリミジン、4,6−ジアミノ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプト−4−メチルピリミジンヒドロクロリド、3−メルカプト−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、3−(5−メルカプトテトラゾール)−ベンゼンスルホン酸ナトリウム、N−メチル−N’−{3−(5−メルカプトテトラゾリル)フェニル}ウレア、2−メルカプト−4−フェニルオキサゾールなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
これらのメルカプト化合物の添加量としては画像形成層中に銀1mol当たり0.0001〜1.0molの範囲が好ましく、さらに好ましくは、銀の1mol当たり0.001〜0.3molの量である。
【0130】
本発明の熱現像感光材料は、支持体上に、有機銀塩、還元剤および感光性ハロゲン化銀を含む画像形成層を有し、画像形成層上には少なくとも1層の保護層が設けられていることが好ましい。また、本発明の熱現像感光材料は支持体に対して画像形成層と反対側(バック面)に少なくとも1層のバック層を有することが好ましく、画像形成層、保護層、そしてバック層のバインダーとしてポリマーラテックスが用いられる。これらの層にポリマーラテックスを用いることによって、水を主成分とする溶媒(分散媒)を用いた水系塗布が可能になり、環境面、コスト面で有利になるとともに、熱現像時にシワの発生がない熱現像感光材料が得られるようになる。また、所定の熱処理をした支持体を使用することにより、熱現像の前後で寸法変化の少ない熱現像感光材料が得られる。
【0131】
画像形成層側の主バインダーとしては、良好な写真性能が得られ、かつ水系塗布を可能にするポリマーラテックスを用いることが好ましい。
【0132】
本発明で用いるバインダーとして以下に述べるポリマーラテックスを用いることが好ましい。
本発明の熱現像感光材料の感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層のうち少なくとも1層は以下に述べるポリマーラテックスを全バインダーの50質量%以上用いた画像形成層であることが好ましい。また、ポリマーラテックスは画像形成層だけではなく、保護層やバック層に用いてもよく、特に寸法変化が問題となる印刷用途に本発明の熱現像感光材料を用いる場合には、保護層やバック層にもポリマーラテックスを用いることが好ましい。ただしここで言う「ポリマーラテックス」とは水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散されたものである。分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散されたものなどいずれでもよい。なお本発明で用いるポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などに記載されている。分散粒子の平均粒子サイズは1〜50000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒子サイズ分布に関しては特に制限は無く、広い粒子サイズ分布を持つものでも単分散の粒子サイズ分布を持つものでもよい。
【0133】
本発明で用いるポリマーラテックスとしては、通常の均一構造のポリマーラテックス以外の、いわゆるコア/シェル型のラテックスでもよい。この場合コアとシェルはガラス転移温度を変えると好ましい場合がある。
【0134】
本発明で用いるバインダーに好ましく用いるポリマーラテックスのガラス転移温度(Tg)は保護層、バック層と画像形成層とでは好ましい範囲が異なる。画像形成層にあっては熱現像時に写真有用素材の拡散を促すため、−30〜40℃であることが好ましい。保護層やバック層に用いる場合には種々の機器と接触するために25〜70℃のガラス転移温度が好ましい。
【0135】
本発明で用いるポリマーラテックスの最低造膜温度(MFT)は−30℃〜90℃、より好ましくは0℃〜70℃程度が好ましい。最低造膜温度をコントロールするために造膜助剤を添加してもよい。造膜助剤は可塑剤ともよばれポリマーラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物(通常有機溶剤)で、例えば前述の「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970)」に記載されている。
【0136】
本発明で用いるポリマーラテックスに用いられるポリマー種としてはアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはこれらの共重合体などが挙げられる。ポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでも、また架橋されたポリマーでもよい。またポリマーとしては単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでもブロックコポリマーでもよい。ポリマーの分子量は数平均分子量で5,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜100,000程度が好ましい。分子量が小さすぎるものは画像形成層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く、好ましくない。
【0137】
本発明の熱現像感光材料の画像形成層のバインダーとして用いられるポリマーラテックスの具体例としては、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/ブタジエン/イタコン酸コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/スチレン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/ジビニルベンゼン/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/塩化ビニル/アクリル酸コポリマーのラテックス、塩化ビニリデン/エチルアクリレート/アクリロニトリル/メタクリル酸コポリマーのラテックスなどが挙げられる。さらに具体的には、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸=33.5/50/16.5(質量%)のコポリマーラテックス、メチルメタクリレート/ブタジエン/イタコン酸=47.5/47.5/5(質量%)のコポリマーラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸=95/5(質量%)のコポリマーラテックスなどが挙げられる。また、このようなポリマーは市販もされていて、例えばアクリル樹脂の例として、セビアンA−4635,46583、4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol LX811、814、821、820、857(以上日本ゼオン(株)製)、VONCORT−R3340、R3360、R3370、4280(以上大日本インキ化学(株)製)など、ポリエステル樹脂としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD−size、WMS(以上イーストマンケミカル製)など、ポリウレタン樹脂としてはHYDRAN AP10、20、30、40(以上大日本インキ化学(株)製)など、ゴム系樹脂としてはLACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上大日本インキ化学(株)製)、Nipol LX410、430,435、438C(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニル樹脂としてはG351、G576(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニリデン樹脂としてはL502、L513(以上旭化成工業(株)製)、アロンD7020、D504、D5071(以上三井東圧(株)製)など、オレフィン樹脂としてはケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。これらのポリマーは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドして用いてもよい。
【0138】
画像形成層には全バインダーの50質量%以上として上記ポリマーラテックスが好ましく用いられるが、70質量%以上として上記ポリマーラテックスが用いられることがさらに好ましい。
【0139】
画像形成層には必要に応じて全バインダーの50質量%以下の範囲でゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は画像形成層の全バインダーの30質量%以下、さらには15質量%以下が好ましい。
【0140】
画像形成層は水系の塗布液を塗布後乾燥して調製することが好ましい。ただし、ここで言う「水系」とは塗布液の溶媒(分散媒)の60質量%以上が水であることをいう。塗布液の水以外の成分はメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなどの水混和性の有機溶媒を用いることができる。具体的な溶媒組成の例としては以下のようなものがある。水/メタノール=90/10、水/メタノール=70/30、水/エタノール=90/10、水/イソプロパノール=90/10、水/ジメチルホルムアミド=95/5、水/メタノール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メタノール/ジメチルホルムアミド=90/5/5。(ただし数字は質量%を表す。)
【0141】
画像形成層の全バインダー量は0.2〜30g/m2、より好ましくは1〜15g/m2の範囲が好ましい。画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
【0142】
さらに、保護層用のバインダーとして、特開2000−267226号公報の段落番号0025〜0029に記載の有機概念図に基づく無機性値を有機性値で割ったI/O値の異なるポリマーラテックスの組み合わせを好ましく用いることができる。
【0143】
本発明においては必要に応じて、特開2000−267226号公報の段落番号0021〜0025に記載の可塑剤(例、ベンジルアルコール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3−モノイソブチレートなど)を添加して、造膜温度をコントロールすることが出来る。また、特開2000−267226号公報の段落番号0027〜0028に記載の如くポリマーバインダー中に親水性ポリマーを、塗布液中に水混和性の有機溶媒を添加してもよい。
【0144】
それぞれの層には、特開2000−19678号公報の段落番号0023〜0041に記載の官能基を導入した第一のポリマーラテックスとこの第一のポリマーラテックスと反応しうる官能基を有する架橋剤および/または第二のポリマーラテックスを用いることもできる。
上記の官能基は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、N−メチロール基、オキサゾリニル基など、架橋剤としては、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、メチロ−ル化合物、ヒドロキシ化合物、カルボキシル化合物、アミノ化合物、エチレンイミン化合物、アルデヒド化合物、ハロゲン化合物などから選ばれる。架橋剤の具体例として、イソシアネート化合物としてヘキサメチレンイソシアネート、デュラネートWB40−80D、WX−1741(旭化成工業(株)製)、バイヒジュール3100(住友バイエルウレタン(株)製)、タケネートWD725(武田薬品工業(株)製)、アクアネート100、200(日本ポリウレタン(株)製)、特開平9−160172号公報記載の水分散型ポリイソシアネート;アミノ化合物としてスミテックスレジンM−3(住友化学工業(株)製);エポキシ化合物としてデナコールEX−614B(ナガセ化成工業(株)製);ハロゲン化合物として2,4ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンナトリウムなどが挙げられる。
【0145】
画像形成層用の全バインダー量は0.2〜30g/m2、より好ましくは1.0〜15g/m2の範囲が好ましい。
保護層用の全バインダー量は、本発明に好ましく用いられる膜厚3μm以上を達成する上で必要な量として、1〜10.0g/m2、より好ましくは2〜6.0g/m2の範囲が好ましい。
本発明に好ましく用いられる保護層膜厚としては、3μm以上であり、4μm以上がさらに好ましい。保護層膜厚の上限としては特に制限はないが、塗布乾燥のことを考慮し、10μ以下、さらには8μm以下が好ましい。
バック層用の全バインダー量は0.01〜10.0g/m2、より好ましくは0.05〜5.0g/m2の範囲が好ましい。
【0146】
これらの各層は、2層以上設けられる場合がある。画像形成層が2層以上である場合は、すべての層のバインダーとしてポリマーラテックスを用いることが好ましい。また、保護層は画像形成層上に設けられる層であり2層以上存在する場合もあるが、少なくとも1層、特に最外層の保護層にポリマーラテックスが用いられることが好ましい。また、バック層は支持体バック面の下塗り層の上部に設けられる層であり2層以上存在する場合もあるが、少なくとも1層、特に最外層のバック層にポリマーラテックスを用いることが好ましい。
【0147】
本明細書における滑り剤とは、物体表面に存在させた時に、存在させない場合に比べて物体表面の摩擦係数を減少させる化合物を意味する。その種類は特に制限されない。
【0148】
本発明に用いる滑り剤としては、特開平11−84573号公報の段落番号0061〜0064、特開2001−83679号公報の段落番号0049〜0062に記載の化合物を挙げることができる。
好ましい滑り剤の具体例としては、セロゾール524(主成分カルナバワックス)、ポリロンA,393,H−481(主成分ポリエチレンワックス)、ハイミクロンG−110(主成分エチレンビスステアリン酸アマイド)、ハイミクロンG−270(主成分ステアリン酸アマイド)(以上、中京油脂(株)製)、
W−1 C16H33−O−SO3Na
W−2 C18H37−O−SO3Na
などが挙げられる。
滑り剤の使用量は添加層のバインダー量の0.1〜50質量%であり、好ましくは0.5〜30質量%である。
【0149】
本発明において、特開2000−171935号公報、特開2001−83679号公報に記載のように予備加熱部を対向ローラーで搬送し、熱現像処理部は画像形成層を有する側をローラーの駆動により、その反対側のバック面を平滑面に滑らせて搬送する熱現像処理装置を用いる場合、現像処理温度における熱現像感光材料の画像形成層を有する側の最表面層とバック面の最表面層との摩擦係数の比は、1.5以上であり、その上限に特に制限はないが30程度である。また、μbは1.0以下、好ましくは0.05〜0.8である。この値は、下記の式によって求められる。
摩擦係数の比=熱現像機のローラー部材と画像形成層を有する面との動摩擦係数(μe)/熱現像機の平滑面部材とバック面との動摩擦係数(μb)
本発明において熱現像処理温度での熱現像処理機部材と画像形成層を有する面および/またはその反対面の最表面層の滑り性は、最表面層に滑り剤を含有させ、その添加量を変えることにより調整することができる。
【0150】
支持体の両面には、特開昭64−20544号公報、特開平1−180537号公報、特開平1−209443号公報、特開平1−285939号公報、特開平1−296243号公報、特開平2−24649号公報、特開平2−24648号公報、特開平2−184844号公報、特開平3−109545号公報、特開平3−137637号公報、特開平3−141346号公報、特開平3−141347号公報、特開平4−96055号公報、米国特許第4,645,731号明細書、特開平4−68344号公報、特許第2,557,641号公報の2頁右欄20行目〜3頁右欄30行目、特開2000−39684号公報の段落番号0020〜0037、特開2001−83679号公報の段落番号0063〜0080に記載の塩化ビニリデン単量体の繰り返し単位を70質量%以上含有する塩化ビニリデン共重合体を含む下塗り層を設けることが好ましい。
【0151】
塩化ビニリデン単量体が70質量%未満の場合は、十分な防湿性が得られず、熱現像後の時間経過における寸法変化が大きくなってしまう。また、塩化ビニリデン共重合体は、塩化ビニリデン単量体のほかの構成繰り返し単位としてカルボキシル基含有ビニル単量体の繰り返し単位を含むことが好ましい。このような繰り返し単位を含ませるのは、塩化ビニル単量体のみでは、重合体(ポリマー)が結晶化してしまい、防湿層を塗設する際に均一な膜を作り難くなり、また重合体(ポリマー)の安定化のためにはカルボキシル基含有ビニル単量体が不可欠であるからである。
本発明で用いる塩化ビニリデン共重合体の分子量は、質量平均分子量で45,000以下、さらには10,000〜45,000が好ましい。分子量が大きくなると塩化ビニリデン共重合体層とポリエステル等の支持体層との接着性が悪化してしまう傾向がある。
【0152】
本発明で用いる塩化ビニリデン共重合体の含有量は、塩化ビニリデン共重合体を含有する下塗り層の片面当たりの合計膜厚として0.3μm以上であり、好ましくは0.3μm〜4μmの範囲である。
【0153】
なお、下塗り層としての塩化ビニリデン共重合体層は、支持体に直接設層される下塗り層第1層として設けることが好ましく、通常は片面ごとに1層ずつ設けられるが、場合によっては2層以上設けてもよい。2層以上の多層構成とするときは、塩化ビニリデン共重合体量が合計で本発明の範囲となるようにすればよい。
このような層には塩化ビニリデン共重合体のほか、架橋剤やマット剤などを含有させてもよい。
【0154】
支持体は必要に応じて塩化ビニリデン共重合体層のほか、SBR、ポリエステル、ゼラチン等をバインダーとする下塗り層を塗布してもよい。これらの下塗り層は多層構成としてもよく、また支持体に対して片面または両面に設けてもよい。下塗り層の厚み(1層当たり)は一般に0.01〜5μm、より好ましくは0.05〜1μmである。
【0155】
本発明の熱現像感光材料には、種々の支持体を用いることができる。典型的な支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、硝酸セルロース、セルロースエステル、ポリビニルアセタール、シンジオタクチックポリスチレン、ポリカーボネート、両面がポリエチレンで被覆された紙支持体などが挙げられる。このうち二軸延伸したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)が強度、寸法安定性、耐薬品性などの点から好ましい。支持体の厚みは下塗り層を除いたベース厚みで90〜180μmであることが好ましい。
【0156】
本発明の熱現像感光材料に用いる支持体としては、特開平10−48772号公報、特開平10−10676号公報、特開平10−10677号公報、特開平11−65025号公報、特開平11−138648号公報に記載の二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0157】
このような熱処理後における支持体の120℃、30秒加熱による寸法変化率は縦方向(MD)が−0.03%〜+0.01%、横方向(TD)が0〜0.04%であることが好ましい。
【0158】
本発明の熱現像感光材料には、ゴミ付着の減少、スタチックマーク発生防止、自動搬送工程での搬送不良防止などの目的で、特開平11−84573号公報の段落番号0040〜0051に記載の導電性金属酸化物および/またはフッ素系界面活性剤を用いて帯電防止することができる。導電性金属酸化物としては、米国特許第5,575,957号明細書、特開平11−223901号公報の段落番号0012〜0020に記載のアンチモンでドーピングされた針状導電性酸化錫、特開平4−29134号公報に記載のアンチモンでドーピングされた繊維状酸化錫が好ましく用いられる。
【0159】
金属酸化物含有層の表面比抵抗(表面抵抗率)は25℃、相対湿度20%の雰囲気下で1012Ω以下、好ましくは1011Ω以下がよい。これにより良好な帯電防止性が得られる。このときの表面抵抗率の下限は特に制限されないが、通常107Ω程度である。
【0160】
本発明の熱現像感光材料の画像形成層を有する面およびその反対面の最外層表面の少なくとも一方、好ましくは両方のベック平滑度は、2000秒以下であり、より好ましくは10秒〜2000秒である。
本発明におけるベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
熱現像感光材料の画像形成層を有する面の最外層およびその反対面の最外層のベック平滑度は、特開平11−84573号公報の段落番号0052〜0059に記載の如く、前記両面の層に含有させるマット剤の粒子サイズおよび添加量を適宜変化させることによってコントロールすることができる。
【0161】
本発明では水溶性ポリマーが塗布性付与のための増粘剤として好ましく利用され、天然物でも合成ポリマーでもよく、その種類は特に限定されない。具体的には、天然物としてはデンプン類(コーンスターチ、デンプンなど)、海藻(寒天、アルギン酸ナトリウムなど)、植物性粘着物(アラビアゴムなど)、動物性タンパク(にかわ、カゼイン、ゼラチン、卵白など)、発酵粘着物(プルラン、デキストリンなど)などであり、半合成ポリマーであるデンプン質(可溶性デンプン、カルボキシルデンプン、デキストランなど)、セルロース類(ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)も挙げられ、さらに合成ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリビニルスルファン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、アクリル酸またはその共重合体等、マレイン酸共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸またはその共重合体など)などである。
【0162】
これらの中でも好ましく用いられる水溶性ポリマーは、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デキストラン、デキストリン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸またはその共重合体などであり、特に増粘剤として好ましく利用される。
【0163】
これらでも特に好ましい増粘剤としては、ゼラチン、デキストラン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体などである。これらの化合物は、「新・水溶性ポリマーの応用と市場」(株式会社シーエムシー発行、長友新治編集、1988年11月4日発行)に詳細に記載されている。
【0164】
増粘剤としての水溶性ポリマーの使用量は、塗布液に添加した時に粘度が上昇すれば特に限定されない。一般に液中の濃度は0.01〜30質量%、より好ましくは0.05〜20質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。これらによって得られる粘度は、初期の粘度からの上昇分として1〜200mPa・sが好ましく、より好ましくは5〜100mPa・sである。なお、粘度はB型回転粘度計で25℃で測定した値を示す。塗布液などへの添加に当たっては、一般に増粘剤はできるだけ希薄溶液で添加することが望ましい。また添加時は十分な攪拌を行なうことが好ましい。
【0165】
本発明の好ましい態様においては、画像形成層および保護層に加えて、必要に応じて中間層を設けてもよい。生産性の向上などを目的として、これらの複数の層は水系において同時重層塗布することが好ましい。塗布方式はエクストルージョン塗布、スライドビード塗布、カーテン塗布などがあるが、特開2000−2964号公報の図1に示されるスライドビード塗布方式が特に好ましい。
【0166】
ゼラチンを主バインダーとして用いるハロゲン化銀写真感光材料の場合は、コーティングダイの下流に設けられている第一乾燥ゾーンで急冷され、その結果、ゼラチンのゲル化が起こり、塗布膜は冷却固化される。冷却固化されて流動の止まった塗布膜は続く第二乾燥ゾーンに導かれ、これ以降の乾燥ゾーンで塗布液中の溶媒が揮発され、成膜される。第二乾燥ゾーン以降の乾燥方式としては、U字型のダクトからローラー支持された支持体に噴流を吹き付けるエアーループ方式や円筒状のダクトに支持体をつるまき状に巻き付けて搬送乾燥する、つるまき方式(エアーフローティング方式)などが挙げられる。
【0167】
バインダーの主成分がポリマーラテックスである塗布液を用いて層形成を行うときには、急冷では塗布液の流動を停止させることができないため、第一乾燥ゾーンのみでは予備乾燥が不十分である場合もある。この場合は、ハロゲン化銀写真感光材料で用いられている様な乾燥方式では流れムラや乾燥ムラが生じ、塗布面状に重大な欠陥を生じやすい。
【0168】
本発明における好ましい乾燥方式は、特開2000−2964号公報に記載されているような第一乾燥ゾーン、第二乾燥ゾーンを問わず、少なくとも恒率乾燥が終了するまでの間は水平乾燥ゾーンで乾燥させる方式である。塗布直後から水平乾燥ゾーンに導かれるまでの支持体の搬送は、水平搬送であってもなくてもどちらでもよく、塗布機の水平方向に対する立ち上がり角度は0〜70°の間にあればよい。また、本発明における水平乾燥ゾーンとは、支持体が塗布機の水平方向に対して上下に±15°以内に搬送されればよく、水平搬送を意味するものではない。
【0169】
本発明における恒率乾燥とは、液膜温度が一定で流入する熱量全てが溶媒の蒸発に使用される乾燥過程を意味する。減率乾燥とは、乾燥末期になると種々の要因(水分移動の材料内部拡散が律速になる、蒸発表面の後退など)により乾燥速度が低下し、与えられた熱が液膜温度上昇にも使用される乾燥過程を意味する。恒率過程から減率過程に移行する限界含水率は200〜300%である。恒率乾燥が終了する時には、流動が停止するまで十分乾燥が進むため、ハロゲン化銀写真感光材料の様な乾燥方式も採用することができるが、本発明においては恒率乾燥後も最終的な乾燥点まで水平乾燥ゾーンで乾燥させることが好ましい。
【0170】
画像形成層および/または保護層を形成する時の乾燥条件は、恒率乾燥時の液膜表面温度がポリマーラテックスの最低造膜温度(MTF;通常ポリマーのガラス転移温度Tgより3〜5℃高い)以上にすることが好ましい。通常は製造設備の制限より25℃〜40℃にすることが多い。また、減率乾燥時の乾球温度は支持体のTg未満の温度(PETの場合通常80℃以下)が好ましい。本明細書における液膜表面温度とは、支持体に塗布された塗布液膜の溶媒液膜表面温度を言い、乾球温度とは乾燥ゾーンの乾燥風の温度を意味する。
【0171】
恒率乾燥時の液膜表面温度が低くなる条件で乾燥した場合、乾燥が不十分になりやすい。このため特に保護層の造膜性が著しく低下し、膜表面に亀裂が生じやすくなる。また、膜強度も弱くなり、露光機や熱現像機での搬送中に傷がつきやすくなるなどの重大な問題が生じやすくなる。
【0172】
一方、液膜表面温度が高くなる条件で乾燥した場合は、主としてポリマーラテックスから構成される保護層は速やかに皮膜を形成するが、その一方で画像形成層などの下層は流動性が停止していないので、表面に凹凸が発生しやすくなる。また、支持体(ベース)にTgよりも高い過剰の熱がかかると、感光材料の寸度安定性、耐巻き癖性も悪くなる傾向にある。
【0173】
下層を塗布乾燥してから上層を塗布する逐次塗布においても同様であるが、特に、下層の乾燥前に上層を塗布して、両層を同時に乾燥する同時重層塗布を行うための塗布液物性としては、画像形成層の塗布液と保護層の塗布液とのpH差が2.5以下であることが好ましく、このpH差は小さい程好ましい。塗布液のpH差が大きくなると塗布液界面でミクロな凝集が生じやすくなり、長尺連続塗布時に塗布筋などの重大な面状故障が発生しやすくなる。
【0174】
画像形成層の塗布液粘度は25℃で15〜100mPa・sが好ましく、さらに好ましくは30〜70mPa・sである。一方、保護層の塗布液粘度は25℃で5〜75mPa・sが好ましく、さらに好ましくは20〜50mPa・sである。これらの粘度はB型粘度計によって測定される。
【0175】
乾燥後の巻取りは温度20〜30℃、相対湿度45±20%の条件下で行うことが好ましく、巻き姿はその後の加工形態に合わせ画像形成層側の面を外側にしてもよいし、内側にしてもよい。また、加工形態がロール品の場合は巻き姿で発生したカールを除去するために加工時に巻き姿とは反対側に巻いたロール形態にすることも好ましい。なお、感光材料の相対湿度は20〜55%(25℃測定)の範囲で制御されることが好ましい。
【0176】
ハロゲン化銀を含みゼラチンを基体とする粘性液である従来の写真乳剤塗布液は、通常加圧送液するだけで気泡が液中に溶解、消滅してしまい、塗布時に大気圧下に戻されても気泡が析出するようなことはほとんどない。ところが、本発明で好ましく用いられる有機銀塩分散物とポリマーラテックスなどを含む画像形成層塗布液の場合は、加圧送液だけでは脱泡が不十分になりやすいため、気液界面が生じないようにして送液しながら超音波振動を与え脱泡することが好ましい。
【0177】
本発明において塗布液の脱泡は、塗布液を塗布される前に減圧脱気し、さらに1.5kg/cm2以上の加圧状態に保ち、かつ気液界面が生じないようにして連続的に送液しながら超音波振動を与える方式が好ましい。具体的には、特公昭55−6405号公報(4頁20行から7頁11行)に記載されている方式が好ましい。このような脱泡を行う装置として、特開2000−98534号公報の実施例と図3に示される装置を好ましく用いることができる。
【0178】
加圧条件としては、1.5kg/cm2以上が好ましく、1.8kg/cm2以上がより好ましい。その上限に特に制限はないが、通常5kg/cm2程度である。与えられる超音波の音圧は0.2V以上、好ましくは0.5V〜3.0Vであり、一般的に音圧は高い方が好ましいが、音圧が高すぎるとキャピテーションにより部分的に高温状態になりカブリの発生原因となる。周波数は特に制約はないが、通常10kHz以上、好ましくは20kHz〜200kHzである。なお、減圧脱気は、タンク内(通常、調液タンクもしくは貯蔵タンク)を密閉減圧し、塗布液中の気泡径を増大させ、浮力をかせぎ脱気させることを指し、減圧脱気の際の減圧条件は−200mmHgないしそれより低い圧力条件、好ましくは−250mmHgないしそれより低い圧力条件とし、その最も低い圧力条件は特に制限はないが通常−800mmHg程度である。減圧時間は30分以上、好ましくは45分以上であり、その上限は特に制限されない。
【0179】
本発明において、画像形成層、画像形成層の保護層、下塗層およびバック層には特開平11−84573号公報の段落番号0204〜0208、特開2001−83679号公報の段落番号0240〜0241に記載の如くハレーション防止などの目的で、染料を含有させることができる。
【0180】
画像形成層には色調改良、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料を用いることができる。画像形成層に用いる染料および顔料はいかなるものでもよいが、例えば特開平11−119374号公報の段落番号0297に記載されている化合物を用いることができる。これらの染料の添加法としては、溶液、乳化物、固体微粒子分散物、高分子媒染剤に媒染された状態などいかなる方法でもよい。これらの化合物の使用量は目的の吸収量によって決められるが、一般的に1m2当たり1×10−6g〜1gの範囲で用いることが好ましい。
【0181】
本発明でハレーション防止染料を使用する場合、該染料は所望の範囲で目的の吸収を有し、処理後に可視領域での吸収が充分少なく、上記バック層の好ましい吸光度スペクトルの形状が得られればいかなる化合物でもよい。例えば特開平11−119374号公報の段落番号0300に記載されている化合物を用いることができる。また、ベルギー特許第733,706号明細書に記載されるように染料による濃度を加熱による消色で低下させる方法、特開昭54−17833号公報に記載されるように光照射による消色で濃度を低下させる方法等を用いることもできる。
【0182】
本発明の熱現像感光材料が熱現像後において、PS版により刷版を作製する際にマスクとして用いられる場合、熱現像後の熱現像感光材料は、製版機においてPS版に対する露光条件を設定するための情報や、マスク原稿およびPS版の搬送条件等の製版条件を設定するための情報を画像情報として担持している。従って、前記のイラジエーション染料、ハレーション染料、フィルター染料の濃度(使用量)は、これらを読み取るために制限される。これら情報はLEDあるいはレーザーによって読み取られるため、センサーの波長域のDmin(最低濃度)が低い必要があり吸光度が0.3以下である必要がある。例えば、富士写真フイルム(株)社製、製版機S−FNRIIIはトンボ検出のための検出器およびバーコードリーダーとして670nmの波長の光源を使用している。また、清水製作社製、製版機APMLシリーズのバーコードリーダーとして670nmの光源を使用している。すなわち670nm付近のDmin(最低濃度)が高い場合にはフィルム上の情報が正確に検出できず搬送不良、露光不良など製版機で作業エラーが発生する。従って、670nmの光源で情報を読み取るためには670nm付近のDminが低い必要があり、熱現像後の660〜680nmの吸光度が0.3以下である必要がある。より好ましくは0.25以下である。その下限に特に制限はないが、通常は0.10程度である。
【0183】
本発明において、像様露光に用いられる露光装置は、好ましくは露光時間が10−7秒以下の露光が可能な装置であればいずれでもよいが、一般的にはレーザダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)を光源に使用した露光装置が好ましく用いられる。特に、LDは高出力、高解像度の点でより好ましい。これらの光源は目的波長範囲の電磁波スペクトルの光を発生することができるものであればいずれでもよい。例えばLDであれば、色素レーザー、ガスレーザー、固体レーザー、半導体レーザーなどを用いることができる。
【0184】
本発明における露光は光源の光ビームをオーバーラップさせて露光する。オーバーラップとは副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えばビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表わしたとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が0.2以上であることが好ましい。
【0185】
本発明に使用する露光装置の光源の走査方式は特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、高出力が得られ、書き込み時間が短くなるという点でレーザーヘッドを2機以上搭載するマルチチャンネルが好ましい。特に、円筒外面方式の場合にはレーザーヘッドを数機から数十機以上搭載するマルチチャンネルが好ましく用いられる。
【0186】
本発明の熱現像感光材料は露光時のヘイズが低く、干渉縞が発生しやすい傾向にある。この干渉縞の発生防止技術としては、特開平5−113548号公報などに開示されているレーザー光を感光材料に対して斜めに入光させる技術や、国際公開WO95/31754号公報などに開示されているマルチモードレーザーを利用する方法が知られており、これらの技術を用いることが好ましい。
【0187】
本発明に用いる画像形成方法の加熱現像工程はいかなる方法であってもよいが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。用いられる熱現像機の好ましい態様としては、熱現像感光材料をヒートローラーやヒートドラムなどの熱源に接触させるタイプとして特公平5−56499号公報、特開平9−292695号公報、特開平9−297385号公報および国際公開WO95/30934号公報に記載の熱現像機、非接触型のタイプとして特開平7−13294号公報、国際公開WO97/28489号公報、同97/28488号公報および同97/28487号公報に記載の熱現像機がある。特に好ましい態様としては非接触型の熱現像機である。好ましい現像温度としては80〜250℃であり、さらに好ましくは100〜140℃である。現像時間としては1〜180秒が好ましく、5〜90秒がさらに好ましい。ラインスピードは140cm/min以上、さらには150cm/min以上が好ましい。
【0188】
熱現像時における熱現像感光材料の寸法変化による処理ムラを防止する方法として、80℃以上115℃未満の温度で画像が出ないようにして、5秒以上加熱した後、110℃〜140℃で熱現像して画像形成させる方法(いわゆる多段階加熱方法)を採用することが有効である。
【0189】
本発明の熱現像感光材料を熱現像処理するとき、110℃以上の高温にさらされるため、該材料中に含まれている成分の一部、あるいは熱現像による分解成分の一部が揮発してくる。これらの揮発成分は現像ムラの原因になったり、熱現像機の構成部材を腐食させたり、温度の低い場所で析出し異物として画面の変形を引起こしたり、画面に付着して汚れとなる種々の悪い影響があることが知られている。これらの影響を除くための方法として、熱現像機にフィルターを設置し、また熱現像機内の空気の流れを最適に調整することが知られている。これらの方法は有効に組み合わせて利用することができる。
【0190】
国際公開WO95/30933号公報、同97/21150号公報、特表平10−500496号公報には、結合吸収粒子を有し揮発分を導入する第一の開口部と排出する第二の開口部とを有するフィルターカートリッジを、フィルムと接触して加熱する加熱装置に用いることが記載されている。また、国際公開WO96/12213号公報、特表平10−507403号公報には、熱伝導性の凝縮捕集器とガス吸収性微粒子フィルターを組み合わせたフィルターを用いることが記載されている。本発明ではこれらを好ましく用いることができる。
【0191】
また、米国特許第4,518,845号明細書、特公平3−54331号公報には、フィルムからの蒸気を除去する装置とフィルムを伝熱部材へ押圧する加圧装置と伝熱部材を加熱する装置とを有する構成が記載されている。また、国際公開WO98/27458号には、フィルムから揮発するカブリを増加させる成分をフィルム表面から取り除くことが記載されている。これらについても本発明では好ましく用いることができる。
【0192】
本発明の熱現像感光材料の熱現像処理に用いられる熱現像機の一構成例を図1に示す。図1は熱現像機の側面図を示したものである。図1の熱現像機は熱現像感光材料10を平面状に矯正および予備加熱しながら加熱部に搬入する搬入ローラー対11(上部ローラーはシリコンゴムローラーで、下部ローラーがアルミ製のヒートローラー)と熱現像後の熱現像感光材料10を平面状に矯正しながら加熱部から搬出する搬出ローラー対12を有する。熱現像感光材料10は搬入ローラー対11から搬出ローラー対12へと搬送される間に熱現像される。この熱現像中の熱現像感光材料10を搬送する搬送手段は画像形成層を有する面が接触する側に複数のローラー13が設置され、その反対側のバック面が接触する側には不織布(例えば芳香族ポリアミドやテフロンから成る)等が貼り合わされた平滑面14が設置される。熱現像感光材料10は画像形成層を有する面に接触する複数のローラー13の駆動により、バック面を平滑面14の上に滑らせながら搬送される。ローラー13の上部および平滑面14の下部には、熱現像感光材料10の両面から加熱されるように加熱ヒーター15が設置される。この場合の加熱手段としては板状ヒーター等が挙げられる。ローラー13と平滑面14とのクリアランスは平滑面の部材により異なるが、熱現像感光材料10が搬送できるクリアランスに適宜調整される。好ましくは0〜1mmである。
【0193】
ローラー13の表面の材質および平滑面14の部材は、高温耐久性があり、熱現像感光材料10の搬送に支障がなければ何でもよいが、ローラー表面の材質はシリコンゴム、平滑面の部材は芳香族ポリアミドまたはテフロン(PTFE)製の不織布が好ましい。加熱手段としては複数のヒーターを用い、それぞれ加熱温度を自由に設定することが好ましい。
【0194】
なお、加熱部は、搬入ローラー対11を有する予備加熱部Aと、加熱ヒーター15を備えた熱現像加熱部Bとで構成されるが、熱現像処理部Bの上流の予備加熱部Aは、熱現像温度よりも低く(例えば10〜30℃程度低く)、熱現像感光材料10中の水分量を蒸発させるのに十分な温度および時間に設定することが望ましく、熱現像感光材料10の支持体のガラス転移温度(Tg)よりも高い温度で、現像ムラが出ないように設定することが好ましい。予備加熱部と熱現像処理部の温度分布としては±1℃以下が好ましく、さらには±0.5℃以下が好ましい。
また、熱現像処理部Bの下流にはガイド板16が設置され、搬出ローラー対12とガイド板16とを有する徐冷部Cが設置される。
ガイド板16は熱伝導率の低い素材が好ましく、熱現像感光材料10に変形が起こらないようにするために冷却は徐々に行うのが好ましく、冷却速度としては、0.5〜10℃/秒が好ましい。
【0195】
以上、図示例に従って説明したが、これに限らず、例えば特開平7−13294号公報に記載のものなど、本発明に用いる熱現像機は種々の構成のものであってもよい。また、本発明において好ましく用いられる多段加熱方法の場合は、上述のような装置において、加熱温度の異なる熱源を2個以上設置し、連続的に異なる温度で加熱するようにすればよい。
【0196】
【実施例】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0197】
<実施例1> 界面活性剤組成物の調製
(1)1,4−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)ブテンジオエートの合成
無水マレイン酸90.5g(0.924mol)、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノール500g(1.89mol)、p−トルエンスルホン酸一水和物17.5g(0.09mol)をトルエン250mL中、ディーンスタークを使用し、生成する水を留去しながら8時間加熱還流した。その後、室温まで冷却し、トルエンを追加し、水で有機相を洗浄し、溶媒を減圧留去して透明の液体として目的物を484g(収率86%)得た。
【0198】
(2)FS−1を主成分とする界面活性剤組成物FS−1Aの調製
1,4−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)ブテンジオエート514g(0.845mol)、亜硫酸水素ナトリウム91.0g(0.875mol)、水−エタノール(1/1(v/v))500mlを加え、6時間加熱還流した後、酢酸エチル1.5L、飽和塩化ナトリウム水溶液500mLを加え、抽出操作を行った。有機相を回収し、硫酸ナトリウム100gを添加し、脱水操作を行った。硫酸ナトリウムを濾過で除き、濾液を濃縮した後、アセトン2.5Lを加え、加熱した。不溶解物を濾過で除いた後、0℃まで冷却し、ゆっくりとアセトニトリル2.5Lを添加した。析出した固体をろ過回収し、得られた結晶を80℃で減圧乾燥し、白色の結晶として目的化合物を478g(収率79%)得た。これを界面活性剤組成物FS−1Aとした。
【0199】
(3)界面活性剤組成物FS−1Aの分析
▲1▼ 界面活性剤組成物FS−1Aの1H−NMRスペクトルを測定した結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(DMSO−d6):δ2.49−2.62(m,4H),2.85−2.99(m,2H),3.68(dd,1H),4.23−4.35(m,4H)
▲2▼ イオン交換水を用いて界面活性剤組成物FS−1Aの1質量%水溶液を調製し、25℃で東亜電波工業(株)製電気伝導率計CM−30Gにて電気伝導度を測定した。結果は、222μS/cmであった。
【0200】
▲3▼ 溶離液A(水/リン酸/トリエチルアミン=100/0.1/0.1)と溶離液B(AR/水/リン酸/トリエチルアミン=90/10/0.1/0.1)の30/70混合液を調製し、この混合液に界面活性剤組成物FS−1Aを溶解した。この溶液10μLを注入してHPLCを実施した。HPLCのカラムはTosoh TSKgel ODS 80TM(4.6min×150mm)を用い、流量は1mL/min、カラム温度は40℃、検出波長は210nmとし、リンス液はAR/水(6/4)を用いた。表1に記載されるタイムプログラムで測定を実施した場合は、溶出時間6.3分にFS−1が溶出し、溶出時間27.6分に1,4−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)ブテンジオエートが溶出する。表2に記載されるタイムプログラムで測定を実施した場合は、溶出時間10.8分にp−トルエンスルホン酸が溶出し、溶出時間28.9分に下記の構造を有する不純物FS−1−Sが溶出し、42.9分にFS−1が溶出する。
HPLC分析の結果、不純物としてp−トルエンスルホン酸が0.06質量%検出された。
【0201】
【表1】
【0202】
【表2】
【0203】
【化25】
【0204】
<比較例1> 比較用の界面活性剤組成物の調製
(1)FS−1を主成分とする界面活性剤組成物FS−1Cの調製
実施例1(1)で調製した1,4−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)ブテンジオエート514g(0.845mol)、亜硫酸水素ナトリウム91.0g(0.875mol)、水−エタノール(1/1(v/v))500mlを加え、6時間加熱還流した後、酢酸エチル500mL、飽和塩化ナトリウム水溶液250mLを加え、抽出操作を行った。有機相を回収し、硫酸ナトリウム20gを添加し、脱水操作を行った。硫酸ナトリウムを濾過で除き、濾液を濃縮した後、アセトン2.5Lを加え、加熱した。不溶解物を濾過で除いた後、0℃まで冷却し、ゆっくりとアセトニトリル2.5Lを添加した。析出した固体をろ過回収し、得られた結晶を80℃で減圧乾燥し、白色の結晶として目的化合物を435g(収率71%)得た。これを界面活性剤組成物FS−1Cとした。
(2)界面活性剤組成物FS−1Cの分析
実施例1(3)と同じ方法により界面活性剤組成物FS−1Cの電気伝導度を測定したところ760μS/cmであった。また、実施例1(3)と同じ方法により界面活性剤組成物FS−1CのHPLC分析を行ったところ、不純物としてp−トルエンスルホン酸が0.09質量%、不純物FS−1−Sが0.52質量%検出された。
【0205】
<実施例2> 界面活性剤組成物の調製
(1)イタコン酸 ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)の合成
イタコン酸52.0g(0.40mol)、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキサノール222g(0.82mol)、p−トルエンスルホン酸一水和物3.8g(0.04mol)をトルエン110mL中、生成する水を留去しながら8時間加熱還流した。その後、室温まで冷却し、水で有機相を洗浄し、溶媒を減圧留去して透明の液体として目的物を228g(収率92%)得た。
【0206】
(2)FS−7含有組成物の調製
イタコン酸 ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)400g(0.643mol)、亜硫酸水素ナトリウム70.24g(0.675mol)、水、450mL、イソプロパノール450mlを加え、3時間加熱還流した後、ゆっくりとアセトニトリル2Lに添加した。析出した固体をろ過回収し、得られた結晶を80℃で減圧乾燥し、白色の結晶としてFS−7を416g(収率89%)得た。
【0207】
(3)FS−7含有組成物の分析
得られたFS−7含有組成物の1H−NMRデータは以下の通りであった。
1H−NMR(DMSO−d6):δ2.50−2.85(m,7H+DMSO),3.04−3.20(m,2H),4.28(m,4H)
実施例1(3)と同じ方法によりFS−7含有組成物の電気伝導度を測定したところ465μS/cmであった。また、実施例1(3)と同じ方法によりFS−7含有組成物のHPLC分析を行ったところ、不純物としてp−トルエンスルホン酸が0.19質量%、イタコン酸 ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)が0.1質量%、不純物FS−7−Sが3.1質量%検出された。
【0208】
【化26】
【0209】
<実施例3> 界面活性剤組成物の調製
(1)イタコン酸 ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)の合成
イタコン酸3.41g(26.2mmol)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクタノール20.0g(55mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物0.50g(2.6mmol)をトルエン10mL中、生成する水を留去しながら外温を120℃で1時間、135℃で4時間加熱還流した。その後、室温まで冷却し、水20mLで有機相を洗浄し、溶媒を減圧留去して白色の固体として目的物を17.8g(収率83%)得た。
【0210】
(2)FS−8含有組成物の調製
イタコン酸 ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)17.8g(21.7mmol)、亜硫酸水素ナトリウム2.37g(22.7mmol)、水−イソプロパノール(1/1(v/v))20mlを加え、7時間加熱還流した後、室温まで冷却し、ゆっくりとアセトニトリル300mLを添加した。析出した固体をろ過回収し、得られた結晶を80℃で減圧乾燥し、白色の結晶としてFS−8含有組成物を12.3g(収率61%)得た。
【0211】
(3)FS−8含有組成物の分析
得られたFS−8含有組成物の1H−NMRデータは以下の通りであった。
1H−NMR(DMSO−d6):δ2.52−2.65(m,4H+DMSO),2.70−3.00(m,2H),3.06−3.15(m,2H),4.28(m,2H)
実施例1(3)と同じ方法によりFS−8含有組成物の電気伝導度を測定したところ512μS/cmであった。また、実施例1(3)と同じ方法によりFS−8含有組成物のHPLC分析を行ったところ、不純物としてp−トルエンスルホン酸が0.12質量%、イタコン酸 ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)が0.1質量%検出された。
【0212】
<実施例4> 界面活性剤組成物の調製
(1)イタコン酸 ビス(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)の合成
イタコン酸10.0g(76mmol)、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール37.1g(160mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物1.4g(7.6mmol)をトルエン30mL中、生成する水を留去しながら外温120℃で1時間、次いで135℃で5時間加熱還流した。その後、室温まで冷却し、酢酸エチル(100mL)を追加し、水で有機相を洗浄し、溶媒を減圧留去して透明の液体として目的物を32.0g(収率75%)得た。
【0213】
(2)FS−43含有組成物の調製
イタコン酸 ビス(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)28.5g(51.1mmol)、亜硫酸水素ナトリウム5.6g(53.7mol)、水−イソプロパノール(1/1(v/v))30mlを加え、4時間加熱還流した後、酢酸エチル90mL、飽和塩化ナトリウム水溶液15mLを加え、抽出操作を行った。有機相を回収し、硫酸ナトリウム50gを添加し、脱水操作を行った。硫酸ナトリウムを濾過で除き、濾液を濃縮した後、クロロホルム100mLを添加し40℃に加熱した。その後、室温に冷却し、析出した固体をろ過回収し、得られた結晶を80℃で減圧乾燥し、白色の結晶としてFS−43含有組成物を20.7g(収率61%)得た。
【0214】
(3)FS−43含有組成物の分析
得られたFS−43含有組成物の1H−NMRデータは以下の通りであった。1H−NMR(DMSO−d6):δ2.47−2.50(m,1H+DMSO),2.61−2.73(m,2H),2.98−3.04(m,2H),4.53(t,4H),6.66(t,0.5H),6.99(t,1H),7.15(t,0.5H)
実施例1(3)と同じ方法によりFS−43含有組成物の電気伝導度を測定したところ492μS/cmであった。また、実施例1(3)と同じ方法によりFS−43含有組成物のHPLC分析を行ったところ、不純物としてp−トルエンスルホン酸が0.12質量%検出された。
【0215】
<試験例1> 界面活性剤組成物の溶解性試験
FS−1A、FS−1B、FS−1C、FS−1Dの各界面活性剤組成物1gを、イオン交換水10mLとメタノール10mLの混合溶媒に溶解させた。溶解後に溶液を15℃、20℃、25℃で保存した際の溶液の溶解経時安定性を評価した。結果を以下の表に示す。
なお、FS−1BとFS−1Dは、FS−1AとFS−1Cと同様にして、硫酸ナトリウムの添加量を調節して表3の電気伝導度となるように調製した。
【0216】
【表3】
【0217】
表3の結果が示す様に、電気伝導度が低いほど、溶解性がよいことがわかる。特に電気伝導度が760μS/cm以上である場合は、室温(25℃)でも析出が見られることが分かる。
【0218】
<実施例5> 熱現像感光材料の調製
《ハロゲン化銀乳剤Aの調製》
1液(下記成分を溶解して温度40℃にてpHを6.5に調製)
水 700ml
アルカリ処理ゼラチン(カルシウム含有量として2700ppm以下)
11g
臭化カリウム 50mg
4−メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム 1.3g
【0219】
2液
水 159ml
硝酸銀 18g
【0220】
3液
水 100ml
臭化カリウム 18g
(NH4 )2 RhCl5 (H2 O) 2.5×10−6mol/Agmol
(濃度0.004%、塩化ナトリウム20%含む水溶液で添加)
K3 IrCl6 3×10−5mol/Agmol
(濃度0.005%、塩化カリウム20%含む水溶液で添加)
なお、(NH4)2RhCl5(H2O)、K3IrCl6の添加量は、2液および4液の硝酸銀を合計した全硝酸銀に対するmol数である。
【0221】
40℃でpH6.5に調整された1液に、2液と3液をpAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で6分30秒間かけて添加した。
【0222】
さらに40℃で下記4液と5液をpAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で28分30秒間かけて添加した。
【0223】
4液
水 500ml
硝酸銀 55g
【0224】
5液
水 350ml
臭化カリウム 39g
(NH4 )2 RhCl5 (H2 O) 2.5×10−6mol/Agmol
(濃度0.004%、塩化ナトリウム20%含む水溶液で添加)
K3 IrCl6 9×10−5mol/Agmol
(濃度0.005%、塩化カリウム20%含む水溶液で添加)
なお、(NH4)2RhCl5(H2O)、K3IrCl6の添加量は、2液および4液の硝酸銀を合計した全硝酸銀に対するmol数である。
【0225】
3液および5液に用いた(NH4)2RhCl5(H2O)、K3IrCl6は、粉末をそれぞれ塩化ナトリウムまたは塩化カリウム水溶液に溶解し、40℃で120分間加熱して調製した溶液として添加した。
【0226】
その後、常法にしたがってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、pAg7.7に保ちながら下記に示すアニオン性沈降剤−1を3g加え、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pHは3.7±0.2の範囲であった)。
次に上澄み液を約2.5L除去した(第一水洗)。さらに2Lの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度上澄み液を2.5L除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作をさらに1回繰り返して(第三水洗)、水洗・脱塩行程を終了した。
【0227】
水洗・脱塩後の乳剤に平均分子量15,000の低分子量ゼラチン(カルシウム含有量として20ppm以下)51g加え、pH5.9、pAg8.0に調製した。
得られた粒子は平均粒子サイズ0.08μm、投影面積変動係数12%、(100)面比率92%、K3IrCl6を1.3×10−5mol/Agmol、(NH4)2RhCl5(H2O)を5×10−6mol/Agmol含有する立方体粒子であった。
【0228】
こうして得たハロゲン化銀乳剤に60℃で下記の各成分を添加し、最適感度を得るように化学増感を施した。
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 9×10−5mol/Agmol
ベンゼンチオスルフィン酸ナトリウム 9×10−5mol/Agmol
トリエチルチオ尿素 7×10−5mol/Agmol
その後、安定剤として4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラアザインデン6×10−4mol/Agmolと防腐剤として、化合物Aとフェノキシエタノールをそれぞれ3×10−3mol/Agmolを加えた。
【0229】
その後、40℃に温度を保ち、以下の各成分を攪拌しながら添加し、20分後に30℃に急冷してハロゲン化銀乳剤Aの調製を終了した。調製したハロゲン化銀乳剤Aは、下記の塗布液の調製に用いた。
臭化カリウム(水溶液として添加) 4.7×10−2mol/Agmol
下記増感色素A 12.8×10−4mol/Agmol
(エタノール溶液として添加)
化合物B 7.3×10−3mol/Agmol
(メタノール溶液として添加)
【0230】
【化27】
【0231】
《ベヘン酸銀分散物Aの調製》
ベヘン酸(ヘンケル社製、製品名:EdenorC22−85R)87.6g、蒸留水423ml、5mol/LのNaOH水溶液49.2ml、tert−ブチルアルコール120mlを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液を得た。別に、硝酸銀40.4gの水溶液206.2mlを用意し、10℃にて保温した。635mlの蒸留水と30mlのtert−ブチルアルコールを入れた反応容器を30℃に保温し、攪拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ62分10秒と60分かけて添加した。この時、硝酸銀水溶液添加開始後7分20秒間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液添加終了後9分30秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が上がらないようにコントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、スチームトレースにより保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるようにスチーム量をコントロールした。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は攪拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調節した。
【0232】
ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間攪拌放置し、25℃に降温した。その後、吸引濾過で固形分を濾別し、固形分を濾水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
得られたベヘン酸銀の粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均投影面積径0.52μm、平均粒子厚み0.14μm、平均球相当径の変動係数15%の鱗片状の結晶であった。
【0233】
つぎに、以下の方法でベヘン酸銀の分散物を作製した。乾燥固形分100g相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217,平均重合度:約1700)7.4gおよび水を添加し、全体量を385gとしてからホモミキサーにて予備分散した。次に予備分散済みの原液を分散機(マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、商品名:マイクロフルイダイザーM−110S−EH、G10Zインタラクションチャンバー使用)の圧力を1750kg/cm2に調節して、3回処理し、ベヘン酸銀分散物Aを得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで所望の分散温度に設定した。
【0234】
こうして得たベヘン酸銀分散物Aに含まれるベヘン酸銀粒子は体積加重平均直径0.52μm、変動係数15%の粒子であった。粒子サイズの測定は、Malvern Instruments Ltd.製MasterSizerXにて行った。また電子顕微鏡撮影により評価したところ、長辺と短辺の比が1.5、粒子厚み0.14μm、平均アスペクト比(粒子の投影面積の円相当径と粒子厚みの比)が5.1であった。得られたベヘン酸銀分散物Aは、下記の塗布液の調製に用いた。
【0235】
《還元剤の固体微粒子分散物の調製》
還元剤である1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgに、サーフィノール104E(日信化学(株)製)400gと、メタノール640g、水16kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩4gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製し、還元剤の固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.44μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、平均粒子サイズの変動係数19%であった。得られた分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、下記の塗布液の調製に用いた。
【0236】
《有機ポリハロゲン化合物Aの固体微粒子分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物A:トリブロモメチル(4−(2,4,6−トリメチルフェニルスルホニル)フェニル)スルホン10kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液639gと、サーフィノール104E(日信化学(株)製)400gと、メタノール640gと水16kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて5時間分散したのち水を加えて有機ポリハロゲン化合物Aの濃度が25質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物Aの固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.36μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、平均粒子サイズの変動係数18%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、下記の塗布液の調製に用いた。
【0237】
《有機ポリハロゲン化合物Bの固体微粒子分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物B:トリブロモメチルナフチルスルホン5kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液2.5kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液213gと、水10kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩2.5gと水を加えての有機ポリハロゲン化合物Bの濃度が23.5質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物Bの固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.38μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、平均粒子サイズの変動係数20%であった。得られた分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、下記の塗布液の調製に用いた。
【0238】
《有機ポリハロゲン化合物C水溶液の調製》
室温で攪拌しながら、水75.0ml、トリプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20%水溶液8.6ml、オルトりん酸二水素ナトリウム・2水和物の5%水溶液6.8ml、水酸化カリウムの1mol/L水溶液9.5mlを順次添加し、添加修了後5分間攪拌混合した。さらに、攪拌しながら有機ポリハロゲン化合物C(3−トリブロモメタンスルホニルベンゾイルアミノ酢酸)4.0gの粉末を添加し、溶液が透明になるまで均一に溶解させた。得られた水溶液100mlは、200メッシュのポリエステル製スクリーンにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、下記の塗布液の調製に用いた。
【0239】
《化合物Zの乳化分散物の調製》
化合物Zを85質量%含有する三光(株)製R−054を10kgとMIBK11.66kgを混合した後、窒素置換して80℃で1時間溶解した。この液に水25.52kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)20質量%水溶液12.76kgとトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.44kgを添加して、20〜40℃にて3600rpmで60分間乳化分散した。さらに、この液にサーフィノール104E(日信化学(株)製)0.08kgと水47.94kgを添加し減圧蒸留してMIBKを除去したのち、化合物Zの濃度が10質量%になるように調製した。こうして得た分散物に含まれる化合物Zの粒子はメジアン径0.19μm、最大粒子サイズ1.5μm以下、粒子サイズの変動係数17%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、下記の塗布液の調製に用いた。
【0240】
《6−イソプロピルフタラジン化合物の分散液の調製》
室温で水62.35gを攪拌しながら、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)2.0gが塊状にならない様に添加し10分間攪拌混合した。その後加熱し、内温が50℃になるまで昇温した後、内温50〜60℃の範囲で90分間攪拌し均一に溶解させた。内温を40℃以下に降温し、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−217)の10質量%水溶液25.5g、トリプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.0g、6−イソプロピルフタラジン(70質量%水溶液)7.15gを添加し、30分攪拌し透明分散液100gを得た。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、下記の塗布液の調製に用いた。
【0241】
《式(11)〜(13)の化合物の固体微粒子分散物の調製》
式(11)〜(13)の化合物である化合物4および化合物62のそれぞれ4kgに対して、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールPVA−217)を1kgと水36kgとを添加してよく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて12時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩4gと水を加えて造核剤濃度が10質量%になるように調製し、式(11)〜(13)の化合物の固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる粒子はメジアン径0.34μm、最大粒子サイズ3.0μm以下、粒子サイズの変動係数19%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、下記の塗布液の調製に用いた。
【0242】
《現像促進剤Wの固体微粒子分散物の調製》
現像促進剤W10kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液67.75kg、トリプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液1.4kg、サーフィノール104E(日信化学(株)製)135gと水32kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて9時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩13.4gと水を加えて現像促進剤Wの濃度が22.5質量%になるように調製し、現像促進剤Wの固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる粒子はメジアン径0.2μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、平均粒子サイズの変動係数18%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、下記の塗布液の調製に用いた。
【0243】
《画像形成層塗布液の調製》
上記で作製したベヘン酸銀分散物Aの銀1molに対して、以下のバインダー、素材、およびハロゲン化銀乳剤を添加して、水を加えて、画像形成層塗布液とした。完成後、減圧脱気を圧力0.54atmで45分間行った。塗布液のpHは7.7、粘度は25℃で50mPa・sであった。
【0244】
バインダー;SBRラテックス 固形分として 397g
(St/Bu/AA=68/29/3(質量%)、
重合開始剤として、Na2S2O8、中和剤として
LiOHを使用)
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−
3,5,5−トリメチルヘキサン 固形分として 149.5g
有機ポリハロゲン化合物B 固形分として 36.3g
有機ポリハロゲン化合物C 固形分として 2.34g
エチルチオスルホン酸ナトリウム 0.47g
ベンゾトリアゾール 1.02g
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−235) 10.8g
6−イソプロピルフタラジン 12.8g
化合物Z 固形分として 9.7g
現像促進剤Wの固体微粒子分散物 固形分として 5.6g
化合物4の固体微粒子分散物 固形分として 14.8g
化合物62の固体微粒子分散物 固形分として 14.8g
染料A(平均分子量15,000の低分子量ゼラチンとの混合液として添加)
783nmの光学濃度が0.3になる塗布量
(目安として固形分0.40g)
ハロゲン化銀乳剤A Ag量として0.06mol
尿素 80mg/m2
防腐剤として化合物A 塗布液中に40ppm
(塗布量として2.5mg/m2)
メタノール 塗布液中総溶媒量として 1質量%
エタノール 塗布液中総溶媒量として 2質量%
pH調整剤として、NaOHを用いてpHを調整した。
(なお、塗布膜のガラス転移温度は17℃であった。)
【0245】
【化28】
【0246】
《保護層塗布液の調製》
下記の成分を混合し、さらに水を加えて保護層塗布液(メタノール溶媒を0.8質量%含有)を調製した。完成後、0.47atmで減圧脱気を60分間行った。塗布液のpHは5.5、粘度は25℃で45mPa・sであった。
ポリマーラテックス溶液1 943g
現像促進剤Wの固体微粒子分散物 固形分として 78.1g
表4に示す界面活性剤 0.16g
有機ポリハロゲン化合物C水溶液 114.8g
有機ポリハロゲン化合物A 固形分として 17.0g
オルトリン酸二水素ナトリウム・二水和物 固形分として 0.69g
ポリスチレン粒子のマット剤 1.58g
(平均粒子サイズ7μm、平均粒子サイズの変動係数8%)
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235) 33.7g
【0247】
《下層オーバーコート層塗布液の調製》
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235) 11.5g
下記の各成分を混合し、さらに水を加えて下層オーバーコート層塗布液(メタノール溶媒を0.1質量%含有)を調製した。完成後、0.47atmで減圧脱気を60分間行った。塗布液のpHは2.6、粘度は25℃で30mPa・sであった。
ポリマーラテックス溶液2 625g
化合物C 0.23g
表4に示す界面活性剤 0.026g
化合物F 11.7g
化合物H 2.7g
ポリマーラテックス溶液1:
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/
2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/
25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液
ガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度21.5質量%、化合物Aを
100ppm含有、造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して
15質量%含有させて塗布液のガラス転移温度を24℃とした、平均粒子サ
イズ116nm
ポリマーラテックス溶液2:
平均粒子サイズが74nmである点以外は、ラテックス溶液Aと同じ
【0248】
《上層オーバーコート層塗布液の調製》
下記の各成分を混合し、さらに水を加えて上層オーバーコート層塗布液(メタノール溶媒を1.1質量%含有)を調製した。完成後、0.47atmで減圧脱気を60分間行った。塗布液のpHは5.2、粘度は25℃で25mPa・sであった。
保護層塗布液に用いたポリマーラテックス溶液 112g
下層オーバーコート層塗布液に用いたポリマーラテックス溶液 335g
カルナヴァワックス 18.0g
(中京油脂(株)製、セロゾール524:シリコーン含有量
として5ppm未満)30質量%溶液
化合物C 0.15g
表4に示す界面活性剤 1.85g
化合物G 1.0g
ポリスチレン粒子のマット剤 22.4g
(平均粒子サイズ7μm、平均粒子サイズの変動係数8%)
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235) 25.6g
【0249】
【化29】
【0250】
《バック/下塗り層のついたポリエチレンテレフタレート(PET)支持体の作製》
(1)PET支持体の作製
テレフタル酸とエチレングリコ−ルを用い、常法に従い、固有粘度IV=0.66(フェノ−ル/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のポリエチレンテレフタレ−トを得た。これをペレット化した後、130℃で4時間乾燥した後、300℃で溶融後T型ダイから押し出した後急冷し、熱固定後の膜厚が120μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。
これを周速の異なるロ−ルを用い、3.3倍に縦延伸、ついでテンタ−で4.5倍に横延伸を実施した。このときの温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後、これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後、テンタ−のチャック部をスリットした後、両端にナ−ル加工を行い、4.8kg/cm2で巻きとった。このようにして、幅2.4m、長さ3500m、厚み120μmのロ−ル状のPET支持体を得た。
【0251】
(2)下塗り層およびバック層の作製
▲1▼下塗り第一層
以下に示す組成の塗布液を9.7ml/m2となる様に支持体上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、185℃で30秒乾燥した。
【0252】
ラテックス−A 280g
KOH 0.5g
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ:2μm、平均粒子サイズの変動係数7%)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 1.8g
化合物−Bc−B 0.06g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0253】
▲2▼下塗り第二層
以下に示す組成の塗布液を8.3ml/m2となる様に下塗り第一層の上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。
【0254】
脱イオン処理ゼラチン 10g
(Ca2+含量0.6ppm、ゼリ−強度230g)
酢酸(20%水溶液) 10g
化合物−Bc−A 0.04g
メチルセルロ−ス(2%水溶液) 25g
エマレックス710(日本エマルジョン(株)製) 0.3g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0255】
▲3▼バック第一層
前記下塗り層塗布面とは反対側の面に0.375kV・A・分/m2のコロナ放電処理を施し、その面に以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となる様に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、185℃で30秒乾燥した。
【0256】
ペスレジンA520(30%水分散物、(株)製) 46g
アルカリ処理ゼラチン(分子量約10000、Ca2+含量30ppm)
4.44g
脱イオン処理ゼラチン(Ca2+含量0.6ppm)
0.84g
化合物−Bc−A 0.02g
染料−Bc−A(783nmの光学濃度として1.3〜1.4になるように調整)
目安として 0.88g
ポリオキシエチレンフェニルエ−テル 1.7g
水溶性メラミン化合物(8%水溶液) 15g
(住友化学工業(株)製、スミテックスレジンM−3)
Sbド−プSnO2 の針状粒子の水分散物 24g
(石原産業(株)製、FS−10D)
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ:2μm,平均粒子サイズの変動係数7%)
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0257】
▲4▼バック第二層
以下に示す組成の塗布液を9.7ml/m2となるようにバック第一層上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。
【0258】
ラテックス−A 280g
KOH 0.5g
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ:2μm、平均粒子サイズの変動係数7%)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン1.8g
化合物−Bc−B 0.06g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0259】
▲5▼バック第三層
以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となるようにバック第二層上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。
【0260】
脱イオン処理ゼラチン 10g
(Ca2+含量0.6ppm、ゼリー強度230g)
酢酸(20%水溶液) 10g
化合物−Bc−A 0.04g
メチルセルロ−ス(2%水溶液) 25g
エマレックス710(日本エマルジョン(株)製) 0.3g
塩化カリウム 1.0g
臭化カリウム 1.0g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0261】
▲6▼バック第四層
以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となる様にバック第三層上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。
【0262】
ジュリマ−ET410(30%水分散物、日本純薬(株)製) 23g
ケミパールS120(27%水分散物、三井石油化学(株)製)135g
アルカリ処理ゼラチン 12.7g
(分子量約10000、Ca2+含量30ppm)
化合物−Bc−B 0.6g
化合物−Bc−C 0.25g
セロゾ−ル524(30%水溶液、中京油脂(株)製) 12g
水溶性エポキシ化合物 1.8g
(ナガセ化成工業(株)製、デナコールEX521)
ポリメチルメタクリレート 7.7g
(10%水分散物、平均粒子サイズ5μm、平均粒子の変動係数7%)
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0263】
【化30】
【0264】
ラテックス−A:
コア部90質量%、シェル部10質量%のコアシェルタイプのラテックス
コア部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/
アクリロニトリル/アクリル酸=93/3/3/0.9/0.1(質量%)
シェル部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/
アクリロニトリル/アクリル酸=88/3/3/3/3(質量%)
質量平均分子量38000
ラテックス−B:
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/
2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=59/9/26/
5/1(質量%の共重合体)
【0265】
(3)搬送熱処理
(3−1)熱処理
このようにして作製したバック/下塗り層のついたPET支持体を160℃設定した全長200m熱処理ゾーンに入れ、張力2kg/cm2、搬送速度20m/分で搬送した。
(3−2)後熱処理
上記熱処理に引き続き、40℃のゾーンに15秒間通して後熱処理を行い、巻き取った。この時の巻き取り張力は10kg/cm2であった。
【0266】
《熱現像感光材料の作製》
前記下塗り第一層と下塗り第二層を塗布した側のPET支持体の下塗り層の上に、特願平10−292849号明細書の図1で開示されているスライドビート塗布方式を用いて、前記の画像形成層塗布液を塗布銀量1.5g/m2になるように塗布した。さらにその上に、前記保護層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.29g/m2になるように画像形成層塗布液と共に同時重層塗布した。その後、保護層の上に前記下層オーバーコート層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.97g/m2になるように、また、前記上層オーバーコート層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.07g/m2になるように、2つの塗布液を同時重層塗布し、熱現像感光材料を作製した。
【0267】
塗布時の乾燥は、恒率過程、減率過程とも、乾球温度70〜75℃、露点14〜25℃、液膜表面温度35〜40℃の範囲で、塗布液の流動がほぼなくなる乾燥点近傍までは水平乾燥ゾーン(塗布機の水平方向に対し支持体が1.5°〜3°の角度)で行った。乾燥後の巻取りは温度23±5℃、相対湿度45±5%の条件下で行われ、巻き姿はその後の加工形態(画像形成層面側外巻)に合わせ、画像形成層面側を外にした。なお、感光材料の包袋内の相対湿度は20〜40%(25℃測定)で、得られた熱現像感光材料の画像形成側の膜面pHは5.3、ベック平滑度は900秒であり、反対側の膜面pHは5.9、ベック平滑度は560秒であった。
【0268】
《露光処理》
作製した熱現像感光材料を、幅590mmおよび長さ59mのシート状とし、これを円筒状のコア部材に画像形成層側を外向きにして巻き付け、ロール状のサンプルとした。このロール状のサンプルを785nmの半導体レーザーを有する日本電気製FT−286Rにセットした。このプロッターと、図1に示す熱現像機とをそれぞれドッキングし、露光・熱現像処理した。
【0269】
《熱現像処理》
熱現像感光材料は、上記露光装置からオートキャリアを経て図1に示した熱現像機にオンラインで導入し、熱現像機で熱現像処理を行った。熱現像処理部のローラー表面材質はシリコンゴム、平滑面はテフロン不織布にして、熱現像処理部での搬送のラインスピードは25mm/秒に設定した。熱現像感光材料の処理時間は、予備加熱部が12.2秒(予備加熱部と熱現像処理部の駆動系は独立しており、熱現像部との速度差は−0.5%〜−1%に設定、オートキャリアの予備加熱部との速度差は0%〜−1.0%に設定、各予熱部の金属ローラーの温度設定、時間は第1ローラー温度67℃、2.0秒、第2ローラー温度82℃、2.0秒、第3ローラー温度98℃、2.0秒、第4ローラー温度107℃、2.0秒、第5ローラー温度115℃、2.0秒、第6ローラー温度120℃、2.0秒にした)、熱現像処理部(熱現像感光材料面温度120℃)が17.2秒、徐冷部が13.6秒とした。なお、幅方向の温度精度は±0.5℃であった。各ローラー温度の設定は熱現像感光材料の幅(例えば幅61cm)よりも両側それぞれ5cm長くして、その部分にも温度をかけて、温度精度が出るようにした。なお、各ローラーの両端部分は温度低下が激しいので、熱現像感光材料の幅よりも5cm長くした部分はローラー中央部よりも1〜3℃温度が高くなるように設定し、熱現像感光材料(例えば幅61cmの中で)の画像濃度が均質な仕上がりになるように留意した。
【0270】
《評価》
(1)Dmax(最高濃度)の評価
25℃、相対湿度80%の環境で16時間放置した熱現像感光材料を、その環境下で露光、熱現像処理し175線/インチの50%網点が得られる露光量と同一の露光量にて、25℃、相対湿度40%環境下で16時間放置した熱現像感光材料をその環境下で露光、熱現像処理した場合に得られる画像のDmax(最高濃度)で評価した。濃度測定はマクベスTD904濃度計(可視濃度)により行った。3.5以上であることが好ましく、3.0以下では実用に耐えない。
【0271】
(2)面質の評価
面質ははじきの発生頻度で評価した。はじき発生の強制条件として、上層オーバーコート層塗布液に添加される界面活性剤の添加量を1/10にしたサンプルを作製した。作製されたサンプルを曝光後、上記熱現像処理を行い、黒ベタサンプルを作製し、面積にして37m2相当のサンプルについてはじき個数を検査し、1m2あたりの個数に換算した。
【0272】
《結果》
作製した熱現像感光材料の各試料について上記評価を実施した結果を表4に示す。
【0273】
【表4】
【0274】
表4に示す結果から明らかなように、本発明の構成を有する熱現像感光材料は、Dmaxが高く、はじき発生数が少なくて面質が優れていることがわかる。
【0275】
<実施例6> 熱現像感光材料の調製
実施例5で使用したサンプルを日本電気製のA2サイズプロッターFT−286R、富士フイルム株式会社製のドライフイルムプロセサーFDS−6100XおよびドライシステムオートキャリアFDS−C1000を用いて、露光、熱現像処理を行い、同様の評価を行なった。その結果、実施例5と同様な結果が得られ、本発明の効果が明らかであった。
【0276】
<実施例7>
実施例5に記載の画像形成層塗布液、保護層塗布液、下層オーバーコート層塗布液、上層オーバーコート層塗布液を用い、さらに下記の支持体を用いたこと以外は実施例5と同様に熱現像感光材料を作製し、評価を行った。その結果、実施例5と同様な結果が得られ、本発明の効果が明らかであった。
【0277】
《バック/下塗り層のついたポリエチレンテレフタレート(PET)支持体の作製》
(1)PET支持体の作製
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い、固有粘度IV=0.66(フェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化して、130℃で4時間乾燥した後、300℃で溶融後T型ダイから押し出した。その後急冷し、熱固定後の膜厚が120μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。
これを周速の異なるロールを用い、110℃で3.3倍に縦延伸し、ついでテンターを用いて130℃で4.5倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定した後、同じ温度で横方向に4%緩和した。この後、テンターのチャック部をスリットした後、両端にナール加工を行い、4.8kg/cm2で巻きとった。このようにして、幅2.4m、長さ3500m、厚み120μmのロール状のPET支持体を得た。
【0278】
(2)下塗り層およびバック層の作製
▲1▼下塗り第一層
上記PET支持体に0.375kV・A・分/m2のコロナ放電処理を施した後、以下に示す組成の塗布液を6.2ml/m2となる様に支持体上に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに185℃で30秒乾燥した。
【0279】
ラテックス−A 280g
KOH 0.5g
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ2μm、平均粒子サイズの変動係数7%)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 1.8g
化合物−Bc−E 0.097g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0280】
▲2▼下塗り第二層
以下に示す組成の塗布液を5.5ml/m2となる様に下塗り第一層の上に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに170℃で30秒乾燥した。
【0281】
脱イオン処理ゼラチン 10g
(Ca2+含量0.6ppm、ゼリー強度230g)
酢酸(20質量%水溶液) 10g
化合物−Bc−A 0.04g
メチルセルロース(2質量%水溶液) 25g
ポリエチレンオキシ化合物 0.3g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0282】
▲3▼バック第一層
前記下塗り層塗布面とは反対側の面に0.375kV・A・分/m2のコロナ放電処理を施し、その面に以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となる様に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに185℃で30秒乾燥した。
【0283】
ジュリマーET410 23g
(30質量%水分散物、日本純薬(株)製)
アルカリ処理ゼラチン(分子量約10000、
Ca2+含量30ppm) 4.44g
脱イオン処理ゼラチン(Ca2+含量0.6ppm) 0.84g
化合物−Bc−A 0.02g
染料−Bc−A
(783nmの光学濃度として1.3〜1.4になるように調整)
目安として0.88g
ポリオキシエチレンフェニルエーテル 1.7g
水溶性メラミン化合物(住友化学工業(株)製、
スミテックスレジンM−3、8質量%水溶液) 15g
SbドープSnO2 の針状粒子の水分散物 24g
(石原産業(株)製、FS−10D)
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ2μm、平均粒子サイズの変動係数7%)
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0284】
▲4▼バック第二層
以下に示す組成の塗布液を5.5ml/m2となる様にバック第一層上に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに170℃で30秒乾燥した。
【0285】
ジュリマーET410 57.5g
(30質量%水分散物、日本純薬(株)製)
ポリオキシエチレンフェニルエーテル 1.7g
水溶性メラミン化合物(住友化学工業(株)製、
スミテックスレジンM−3、8質量%水溶液) 15g
セロゾール524(30質量%水溶液、中京油脂(株)製) 6.6g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0286】
▲5▼バック第三層
下塗り第一層と同じ塗布液を6.2ml/m2となる様にバック第二層上に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに185℃で30秒乾燥した。
【0287】
▲6▼バック第四層
以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となる様にバック第三層上に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに170℃で30秒乾燥した。
【0288】
ラテックス−B 286g
化合物−Bc−D 2.7g
化合物−Bc−E 0.6g
化合物−Bc−F 0.2g
化合物E 0.3g
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシーs−トリアジン 2.5g
ポリメチルメタクリレート(10質量%水分散物、
平均粒子サイズ5μm、平均粒子の変動係数7%) 7.7g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0289】
【化31】
【0290】
(3)搬送熱処理
(3−1)熱処理
このようにして作製したバック/下塗り層のついたPET支持体を、160℃に設定した全長200m熱処理ゾーンに入れ、張力2kg/cm2、搬送速度20m/分で搬送した。
(3−2)後熱処理
上記熱処理に引き続き、40℃のゾーンに15秒間通して後熱処理を行い、巻き取った。この時の巻き取り張力は10kg/cm2であった。
【0291】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱現像感光材料の熱現像処理に用いられる熱現像機の一構成例を示す側面図である。
【符号の説明】
10 熱現像感光材料
11 搬入ローラー対
12 搬出ローラー対
13 ローラー
14 平滑面
15 加熱ヒーター
16 ガイド板
A 予備加熱部
B 熱現像処理部
C 徐冷部
【発明の属する分野】
本発明は、撥水撥油性、防汚性、帯電防止性等の表面機能付与が可能であり、水または親水性有機溶媒への溶解性の高い界面活性剤および、該界面活性剤を使用することにより塗布時の故障(はじき)を削減したハロゲン化銀写真感光材料および熱現像感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、フッ化アルキル鎖を有する化合物が界面活性剤として知られている。このような界面活性剤は、フッ化アルキル鎖の独特の性質(撥水・撥油性、潤滑性、帯電防止性等)により種々の表面改質を行うことができる機能を有しているため、繊維、布、カーペット、樹脂等、幅広い基材の表面加工に用いられている。また、フッ化アルキル鎖を持つ界面活性剤を種々の基質の水性媒体溶液に添加すると、塗膜形成時にハジキのない、均一な被膜を形成することができるばかりでなく、界面活性剤の吸着層を基質表面に形成することができ、上記のフッ化アルキル鎖が持つ独特の性質を被膜表面にもたらすことができる。
【0003】
写真感光材料においても、種々の界面活性剤が用いられ、重要な役割を果たしている。写真感光材料は、通常、親水性コロイドバインダー(例えばゼラチン)の水溶液を含む複数の塗布液を、支持体上に個々に塗布して複数の層を形成し作製される。しばしば、複数の親水性コロイド層を同時多層塗布することも行われる。これらの層には、帯電防止層、下塗り層、ハレーション防止層、ハロゲン化銀乳剤層、中間層、フィルター層、保護層等が含まれ、各層には各機能を発現するために種々の素材が添加される。また、膜物理性改良のためにポリマーラテックスを親水性コロイド層に含有させることもある。さらに、カラーカプラー、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、スベリ剤等の水に難溶性の機能性化合物を親水性コロイド層に含有させるために、これらの素材をそのまま、あるいはリン酸エステル系化合物、フタル酸エステル化合物などの高沸点有機溶媒に溶解させた状態で、親水性コロイド溶液中に乳化分散させて、塗布液の調製に用いる場合がある。このように、一般的に、写真感光材料は種々の親水性コロイド層から構成されており、その製造に際しては、種々の素材を含む塗布液を、ハジキや塗布ムラなどの欠陥なく均一に高速塗布することが要求されている。このような要求に応えるために、界面活性剤を塗布助剤として塗布液中に添加することがしばしば行われている。
【0004】
一方で、感光材料はその製造、撮影、現像処理の間に種々の物質と接触する。例えば、処理の工程において、感光材料が巻き取られた状態にあると、支持体の裏面に形成されたバック層と表面層が接触する場合がある。また、処理の工程において搬送される際に、ステンレス、ゴムローラー等と接触する場合がある。これらの材料と接触すると、感光材料の表面(ゼラチン層)は正に帯電しやすく、場合によっては不要な放電を起こすため、感光材料に望ましくない露光跡(スタチックマークと称される)を残すことになる。このゼラチンの帯電性を軽減するには、フッ素原子を有する化合物を用いることが有効であり、感光材料にフッ素系界面活性剤を添加することがしばしば行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、界面活性剤、特にフッ素系界面活性剤は塗布膜の均質性を付与するための塗布助剤、あるいは写真感光材料の帯電防止性付与の両機能を担う素材として用いられており、例えば特開昭49−46733号公報、同51−32322号公報、同57−64228号公報、同64−536号公報、特開平2−141739号公報、同3−95550号公報、同4−248543号公報等にその具体例が開示されている。しかしながら、これらの素材は近年の感光材料の高感度化および高速塗布化の要請に対して、必ずしも満足する性能を有するものではなく、さらなるフッ素系界面活性剤の改良が望まれている。一般的に、パーフルオロアルキル鎖の鎖長を短くすると、分解性(使用後の化合物の分解性)の点で有利と考えられるが、塗膜表面へのフッ化アルキル鎖の配向性は著しく低下してしまう。従って、より短いフルオロアルキル鎖を有し、かつ表面配向性(帯電防止性に関連する)と塗膜の均質性を両立できるフッ素系界面活性剤の利用が強く望まれている。
【0006】
しかしながら、フッ素系界面活性剤は写真感光材料の表面に配向し帯電性を調整する効果が大きいという利点がある一方で、フッ素系界面活性剤は水あるいは親水性の有機溶媒等に極少量しか溶解せず、溶解不良によるはじき等の発生が起こることがあるという欠点もある。
そこで、フッ素系界面活性剤を可溶化する目的で炭化水素系の界面活性剤を始め種々の添加剤を混合する試みが行われているが、例えば添加する炭化水素系界面活性剤の方がフッ素系界面活性剤より多くなり、製造上あまり好ましいとは言えなかった。そこで、少しでも水あるいは親水性の有機溶媒等に対する溶解性が高いフッ素系界面活性剤を開発することが課題となっている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、フッ素界面活性剤の製造時、あるいは溶解時に不純物として存在する無機塩が少ないほど水あるいは親水性の有機溶媒への溶解性が向上することが明らかになり、以下の構成を有する本発明を提供するに至った。
【0008】
<1> 下記一般式(1)で表される化合物を90質量%以上含有する固体状の界面活性剤組成物であって、該界面活性剤組成物を水に1質量%溶解させたときの電気伝導度が150〜750μS/cmである界面活性剤組成物。
【化2】
【0009】
(式中、RB3、RB4およびRB5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。AおよびBはそれぞれ独立にフッ素原子または水素原子を表す。nB3およびnB4はそれぞれ独立に4〜8の整数を表す。LB1およびLB2はそれぞれ独立に置換もしくは無置換のアルキレン基または置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、あるいはこれらを組み合わせてできる2価の連結基を表す。mBは0または1を表す。Mはカチオンを表す。)
【0010】
<2> 上記一般式(1)で表わされる化合物を、水およびアルコールから選択される単独溶媒または混合溶媒に溶解させた界面活性剤溶液。
<3> 上記一般式(1)で表わされる化合物を少なくとも1種含有する水性塗布組成物。
<4> 上記一般式(1)で表わされる化合物とその他の無機塩を含有する固体状の界面活性剤組成物であって、該界面活性剤組成物を水に1質量%溶解させたときの電気伝導度が150〜750μS/cmである界面活性剤組成物。
<5> 上記一般式(1)で表わされる化合物の含有量が95質量%以上である<1>または<4>に記載の界面活性剤組成物。
<6> <1>、<4>または<5>に記載の界面活性剤組成物を、水およびアルコールから選択される単独溶媒または混合溶媒に溶解させた界面活性剤溶液。<7> <1>、<4>または<5>に記載の界面活性剤組成物を溶解させた水性塗布組成物。
<8> 支持体上に少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀乳剤層を含む1以上の層を有するハロゲン化銀写真感光材料であって、支持体上に形成された層の少なくとも1層中に上記一般式(1)で表わされる化合物を少なくとも1種含有するハロゲン化銀写真感光材料。
<9> 支持体上に少なくとも感光性ハロゲン化銀、還元可能な銀塩、還元剤、バインダーおよび、上記一般式(1)で表わされる化合物を少なくとも1種含有する熱現像感光材料。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の界面活性剤組成物およびその利用について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
<界面活性剤組成物>
本発明の界面活性剤組成物は、一般式(1)で表される化合物を90質量%以上含有する固体状の界面活性剤組成物である。そこでまず、一般式(1)で表わされる化合物について詳細に説明する。
【0013】
一般式(1)中、RB3、RB4およびRB5はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。該置換基として後述の置換基Tを適用することができる。
RB3、RB4およびRB5としては、好ましくはアルキル基または水素原子であり、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基または水素原子であり、さらに好ましくはメチル基または水素原子であり、特に好ましくは水素原子である。
【0014】
一般式(1)中、AおよびBはそれぞれ独立にフッ素原子またま水素原子を表し、AとBは同じであっても、異なっていてもよい。AおよびBとして好ましいくは、A、B共にフッ素原子、あるいはA、B共に水素原子であり、より好ましくはA、B共にフッ素原子である。
【0015】
nB3およびnB4はそれぞれ独立に4〜8の整数を表す。nB3およびnB4は4〜8の整数であれば互いに異なっていても、同じであってもよい。nB3およびnB4として好ましくは4〜6の整数でかつnB3=nB4であり、より好ましくは4または6の整数でかつnB3=nB4であり、さらに好ましくはnB3=nB4=4である。
mBは0または1を表し、どちらも同様に好ましい。
【0016】
LB1およびLB2は置換もしくは無置換のアルキレン基または置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、あるいはこれらを組み合わせてできる2価基を表す。置換基として後述の置換基Tを適用することができる。LB1およびLB2は、炭素数が4以下であるのが好ましく、また、無置換アルキレンであるのが好ましい。
【0017】
Mはカチオンを表す。Mで表されるカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン等が好ましい。Mとして好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンであり、より好ましくは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンである。さらに好ましくはナトリウムイオンである。
【0018】
一般式(1)で表わされる化合物のうち、好ましいのは下記一般式(1A)で表わされる化合物である。
【化3】
【0019】
式中、RB3、RB4、RB5、nB3、nB4、mBおよびMは一般式(1)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。nB1およびnB2はそれぞれ独立に1〜6の整数を表す。
【0020】
nB1およびnB2は1〜6の整数であれば互いに異なっていても、同じであってもよい。nB1およびnB2として好ましくはnB1=nB2であり、より好ましくは、1〜3の整数でかつnB1=nB2であり、さらに好ましくは2または3の整数でかつnB1=nB2であり、特に好ましくはnB1=nB2=2である。
【0021】
一般式(1)で表わされる化合物のうち、より好ましいのは下記一般式(1―B)で表わされる化合物ある。
【化4】
【0022】
式中、nB1、nB2、nB3、nB4、mBおよびMは一般式(1−B)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0023】
一般式(1)で表わされる化合物のうち、さらにより好ましいのは下記一般式(1−C)で表わされる化合物である。
【化5】
【0024】
式中、nB5は2または3の整数を表す。nB6は4〜6の整数を表す。mBは0または1をし、どちらも同様に好ましい。Mは一般式(1)におけるのと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。
【0025】
以下に、上記の置換基Tに関して詳細に説明する。置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12アシル基であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基はさらに置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0026】
以下に一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明で用いることができる一般式(1)の化合物はこれらに限定されるものではない。
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
【化8】
【0030】
【化9】
【0031】
【化10】
【0032】
【化11】
【0033】
一般式(1)で表される化合物の合成法は特に制限されない。一般式(1)で表される化合物は一般にマレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびそれらの無水物より合成することができる。一般式(1)で表される化合物のうち、2本のエステル鎖が等しいものは下記スキームによって合成することができる。
【0034】
【化12】
【0035】
まず、初めに上記中間体Aの一般的合成法に関して説明する。
上記中間体Aは、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸またはそれらの無水物を酸触媒の存在下にアルコール等と脱水縮合反応させることによって合成することができる。酸触媒としては、無機酸、有機酸のいずれであってもよいが、好ましくはp−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、硫酸、リン酸であり、より好ましくはp−トルエンスルホン酸、硫酸である。
また、特許公報2713964号公報に記載されるように、フマル酸、イタコン酸の酸塩化物からも同様に合成することができる。また、上記中間体はシス体であるが、対応するトランス体からも同様に中間体Aを合成することができる。上記中間体Aの反応は無溶媒でも溶媒を使って行ってもよい。溶媒を使う場合は沸点が80℃以上の溶媒を用いることが好ましく、例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等を好ましく用いることができ、トルエンをより好ましく用いることができる。
【0036】
中間体Aから一般式(1)で表わされる化合物を製造する工程に関しては、特公昭58−23387号公報、特許第2713964号公報に記載される方法を利用することができる。また対カチオンの変換は、イオン交換樹脂により容易に行うことができる。
【0037】
本発明の界面活性剤組成物は、水に1質量%溶解させたときの電気伝導度が150〜750μS/cmである。電気伝導度は、150〜600μS/cmであることがより好ましく、150〜550μS/cmであることがさらに好ましく、170〜500μS/cmであることが特に好ましい。電気伝導度は、後述する実施例1(3)に記載される方法で測定することができる。
一般式(1)で表わされる化合物は、上に例示される方法で合成した場合、無機塩などの不純物を含有していることが多い。界面活性剤組成物の1質量%溶液の電気伝導度は、このような不純物の種類や存在量により影響を受ける。したがって、電気伝導度を150〜750μS/cmの範囲内に調整するためには、一般式(1)で表わされる化合物を合成した後の後処理の方法を適宜調整する必要がある。例えば、反応混合物から一般式(1)で表わされる化合物を抽出する際に用いる溶媒の種類や量を適宜選択することによって、電気伝導度を150〜750μS/cmの範囲内にすることができる。具体的な方法については、後述する実施例を参照することができる。
【0038】
<界面活性剤を含む溶液>
上記界面活性剤組成物を溶解させる媒体は、水単独であってもよいし、水以外の有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、nーブタノール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、アセトン等)と水との混合溶媒であってもよい。好ましくは水またはアルコール(好ましくはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールである。)の単独または混合溶媒であり、より好ましくは水またはメタノールの単独または混合溶媒であり、さらに好ましくは水またはメタノールの単独または混合溶媒である。水とアルコールの混合溶媒を用いる場合は、水の割合が50%以上であることが好ましい。
上記溶液中における一般式(1)で表わされる界面活性剤の濃度は0.001質量%〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.1質量%〜20質量%であり、さらに好ましくは、0.5質量%〜10質量%であり、特に好ましくは1質量%〜10質量%である。
【0039】
<水性塗布組成物>
一般式(1)で表わされる界面活性剤を含む水性溶液は、ハロゲン化銀写真感光材料や熱現像感光材料などの感光材料に対する水性塗布組成物として用いることができる。水性塗布組成物は、一般式(1)で表わされる化合物と水のみからなっていてもよいし、目的に応じてその他の成分を適宜含んでいてもよい。
上記の水性塗布組成物は、一般式(1)で表わされる界面活性剤を1種類のみ含むものであってもよいし、また一般式(1)で表わされる界面活性剤を2種類以上含むものであってもよい。また、一般式(1)で表わされる界面活性剤とともに、一般式(1)以外の構造を有する界面活性剤以外の界面活性剤を含んでいてもよい。併用可能な界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の各種界面活性剤を挙げることができ、高分子界面活性剤やフッ素系界面活性剤であってもよい。このうち、アニオン系もしくはノニオン系活性剤を用いることがより好ましい。併用可能な界面活性剤の例としては、例えば特開昭62−215272(649〜706頁)やリサーチ・ディスクロージャ(RD)Item17643,26〜27頁(1978年12月)、同18716,650頁(1979年11月),同307105,875〜876頁(1989年11月)等に記載されるものを挙げることができる。
【0040】
上記水性塗布組成物中に含まれていてもよいものとして代表的なものはポリマー化合物である。ポリマー化合物は水性媒体可溶なポリマーであってもよいし、ポリマーの水分散物(いわゆるポリマーラテックス)であってもよい。可溶性ポリマーとしては特に制限は無いが、例えばゼラチン、ポリビニルアルコール、カゼイン、寒天、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができ、ポリマーラテックスとしては、種々のビニルモノマー(例えば、アクリレート誘導体、メタクリレート誘導体、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体、スチレン誘導体、共役ジエン誘導体、N−ビニル化合物、O−ビニル化合物、ビニルニトリル、その他のビニル化合物(例えばエチレン、塩化ビニリデン))の単独もしくは共重合体、縮合系ポリマーの分散物(例えばポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド)を挙げることができる。この種のポリマー化合物の詳細例については、例えば特開昭62−215272(707〜763頁)やリサーチ・ディスクロージャ(RD)Item17643,651頁(1978年12月)、同18716,650頁(1979年11月),同307105,873〜874頁(1989年11月)等を挙げることができる。
【0041】
上記水性塗布組成物における媒体としては、水単独であってもよいし、水以外の有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、nーブタノール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、アセトン等)と水との混合溶媒であってもよい。好ましくは水またはアルコール(好ましくはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール)の単独または混合溶媒が好ましい。より好ましくは水またはメタノールの単独または混合溶媒であり、さらに好ましくは水またはメタノールの単独または混合溶媒である。混合溶媒の場合は、水の割合が50%以上であることが好ましい。
【0042】
上記水性塗布組成物中には、用いる感光材料の層に応じて種々の化合物を含んでいてもよく、またそれらは媒体に溶解していてもよく、分散されていてもよい。それらの例としては、種々のカプラー、紫外線吸収剤、混色防止剤、スタチック防止剤、スカベンジャー、かぶり防止剤、硬膜剤、染料、防黴剤 等を挙げることができる。効果的な帯電防止能と塗布の均一性を得るためには、感光材料の最上層の親水性コロイド層に用いるのが好ましい。
この場合、該層の塗布組成物中には、親水性コロイド(例えばゼラチン)や一般式(1)で表わされるフッ素系界面活性剤以外に、他の界面活性剤やマット剤、スベリ剤、コロイダルシリカ、ゼラチン可塑剤等を含有することができる。
【0043】
一般式(I)の界面活性剤の使用量に特に制約は無く、また界面活性剤の構造やその用途、水性組成物中に含まれる化合物の種類や量、媒体の構成等によって、その使用量を任意に変えることができる。例えば本発明の界面活性剤を、本発明の好ましい態様である感光材料の最上層の親水性コロイド(ゼラチン)層用塗布液として用いる場合、塗布溶液中の濃度として0.003〜0.5%であることが好ましく、またゼラチン固形分に対しては0.03〜5%であることが好ましい。
【0044】
<ハロゲン化銀写真感光材料および熱現像感光材料>
本発明の水性塗布組成物を用いれば、良好な機能を有するハロゲン化銀写真感光材料や熱現像感光材料を製造することができる。ハロゲン化銀写真感光材料は、支持体上に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有するものであり、熱現像感光材料は、支持体上に少なくとも感光性ハロゲン化銀、還元可能な銀塩、還元剤、バインダーを有するものである。以下において、代表的な応用例として熱現像感光材料について主として説明を行う。
【0045】
本発明の熱現像感光材料に用いることができる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)および還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は、還元可能な銀イオン源を含む任意の有機物質であってよい。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪カルボン酸の銀塩が好ましい。配位子が4.0〜10.0の範囲の錯体安定度定数を有する有機または無機銀塩の錯体も好ましい。銀供給物質は、好ましくは画像形成層の約5〜70質量%を構成することができる。好ましい有機銀塩として、カルボキシル基を有する有機化合物の銀塩を挙げることができる。具体的には、脂肪族カルボン酸の銀塩および芳香族カルボン酸の銀塩を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。脂肪族カルボン酸の銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、リノール酸銀、酪酸銀および樟脳酸銀、これらの混合物などを挙げることができる。
【0046】
本発明においては、上記の有機酸銀ないしは有機酸銀の混合物の中でも、ベヘン酸銀含有率75mol%以上の有機酸銀を用いることが好ましく、ベヘン酸銀含有率85mol%以上の有機酸銀を用いることがさらに好ましい。ここでベヘン酸銀含有率とは、使用する有機酸銀に対するベヘン酸銀のモル分率を示す。本発明に用いる有機酸銀中に含まれるベヘン酸銀以外の有機酸銀としては、上記の例示有機酸銀を好ましく用いることができる。
【0047】
本発明に好ましく用いられる有機酸銀は、上記の有機酸のアルカリ金属塩(Na塩、K塩、Li塩等が挙げられる)溶液または懸濁液と硝酸銀を反応させることにより調製される。これらの調製方法については、特開2000−292882号公報の段落番号0019〜0021に記載の方法を用いることができる。
【0048】
本発明においては、液体を混合するための密閉手段の中に硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液を添加することにより有機酸銀を調製する方法を好ましく用いることができる。具体的には、特開2001−33907号公報に記載されている方法を用いることができる。
本発明においては有機酸銀の調製時に、硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液、あるいは反応液には水に可溶な分散剤を添加することができる。ここで用いる分散剤の種類および使用量については、特開2000−305214号公報の段落番号0052に具体例が記載されている。
【0049】
本発明に用いる有機酸銀は第3アルコールの存在下で調製することが好ましい。第3アルコールとしては、好ましくは総炭素数15以下の化合物が好ましく、10以下の化合物が特に好ましい。好ましい第3アルコールの例としては、tert−ブタノール等が挙げられるが、本発明で使用することができる第3アルコールはこれに限定されない。
本発明に用いる第3アルコールの添加時期は有機酸銀調製時のいずれのタイミングでもよいが、有機酸アルカリ金属塩の調製時に添加して、有機酸アルカリ金属塩を溶解して用いることが好ましい。また、本発明で用いる第3アルコールは、有機酸銀調製時の溶媒としての水に対して質量比で0.01〜10の範囲で使用することができるが、0.03〜1の範囲で使用することが好ましい。
【0050】
本発明に用いることができる有機銀塩の形状やサイズは特に制限されないが、特開2000−292882号公報の段落番号0024に記載のものを用いることが好ましい。有機銀塩の形状は、有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像から求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)は好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。測定方法としては、例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。この測定法での平均粒子サイズとしては0.05μm〜10.0μmの固体微粒子分散物が好ましい。より好ましい平均粒子サイズは0.1μm〜5.0μm、さらに好ましい平均粒子サイズは0.1μm〜2.0μmである。
【0051】
本発明に用いる有機銀塩は、脱塩したものであることが好ましい。脱塩法は特に制限されず、公知の方法を用いることができるが、遠心濾過、吸引濾過、限外濾過、凝集法によるフロック形成水洗等の公知の濾過方法を好ましく用いることができる。限外濾過の方法については、特開2000−305214号公報に記載の方法を用いることができる。
【0052】
本発明では、高S/Nで、粒子サイズが小さく、凝集のない有機銀塩固体分散物を得る目的で、画像形成媒体である有機銀塩を含み、かつ感光性銀塩を実質的に含まない水分散液を高速流に変換した後、圧力降下させる分散法を用いることが好ましい。これらの分散方法については特開2000−292882号公報の段落番号0027〜0038に記載の方法を用いることができる。
【0053】
本発明で用いる有機銀塩固体微粒子分散物の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。具体的には、体積荷重平均直径の標準偏差を体積荷重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が80%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。
【0054】
本発明に用いる有機銀塩固体微粒子分散物は、少なくとも有機銀塩と水からなるものである。有機銀塩と水との割合は特に限定されるものではないが、有機銀塩の全体に占める割合は5〜50質量%であることが好ましく、特に10〜30質量%の範囲が好ましい。前述の分散助剤を用いることは好ましいが、粒子サイズを最小にするのに適した範囲で最少量使用するのが好ましく、有機銀塩に対して0.5〜30質量%、特に1〜15質量%の範囲が好ましい。
【0055】
本発明で用いる有機銀塩は所望の量で使用できるが、銀量として0.1〜5g/m2が好ましく、さらに好ましくは1〜3g/m2である。
【0056】
本発明にはCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンを非感光性有機銀塩へ添加することが好ましい。Ca、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの非感光性有機銀塩への添加については、ハロゲン化物でない、水溶性の金属塩の形で添加することが好ましく、具体的には硝酸塩や硫酸塩などの形で添加することが好ましい。ハロゲン化物での添加は処理後の感光材料の光(室内光や太陽光など)による画像保存性、いわゆるプリントアウト性を悪化させるので好ましくない。このため、本発明ではハロゲン化物でない、水溶性の金属塩の形で添加することが好ましい。
【0057】
本発明に好ましく用いるCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの添加時期としては、該非感光性有機銀塩の粒子形成後であって、粒子形成直後、分散前、分散後および塗布液調製前後など塗布直前までであればいずれの時期でもよく、好ましくは分散後、塗布液調製前後である。
【0058】
本発明におけるCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの添加量としては、非感光性有機銀1molあたり10−3〜10−1molが好ましく、特に5×10−3〜5×10−2molが好ましい。
【0059】
本発明の熱現像感光材料は、感光性ハロゲン化銀を含む。本発明に用いる感光性ハロゲン化銀は、ハロゲン組成として特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀を用いることができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の粒子形成については、特開平11−119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法で粒子形成することができるが、特にこの方法に限定されるものではない。
【0060】
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、十四面体、平板状、球状、棒状、ジャガイモ状等を挙げることができるが、本発明においては特に立方体状粒子あるいは平板状粒子が好ましい。粒子のアスペクト比、面指数など粒子形状の特徴については、特開平11−119374号公報の段落番号0225に記載されているものと同じである。また、ハロゲン組成の分布はハロゲン化銀粒子の内部と表面において均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を好ましく用いることができる。構造としては好ましくは2〜5重構造、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。また塩化銀または塩臭化銀粒子の表面に臭化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0061】
本発明で用いるハロゲン化銀粒子の粒子サイズ分布は、単分散度の値が30%以下であり、好ましくは1〜20%であり、さらに5〜15%である。ここで単分散度は、粒子サイズの標準偏差を平均粒子サイズで割った値の百分率(%)(変動係数)として定義されるものである。なおハロゲン化銀粒子の粒子サイズは、便宜上、立方体粒子の場合は稜長で表し、その他の粒子(八面体、十四面体、平板状など)は投影面積円相当直径で算出する。
【0062】
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表の第VII族あるいは第VIII族の金属または金属錯体を含有する。周期律表の第VII族あるいは第VIII族の金属または金属錯体の中心金属として好ましくはロジウム、レニウム、ルテニウム、オスニウム、イリジウムである。特に好ましい金属錯体は、(NH4)3Rh(H2O)Cl5、K2Ru(NO)Cl5、K3IrCl6、K4Fe(CN)6である。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属および異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1molに対し1×10−9mol〜1×10−3molの範囲が好ましく、1×10−8mol〜1×10−4molの範囲がより好ましい。具体的な金属錯体の構造としては特開平7−225449号公報等に記載された構造の金属錯体を用いることができる。これら重金属の種類、添加方法に関しては、特開平11−119374号公報の段落番号0227〜0240に記載されている。
【0063】
感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている水洗法により脱塩することができるが、本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀乳剤は化学増感することが好ましい。化学増感については、特開平11−119374号公報の段落番号0242〜0250に記載されている方法を用いることが好ましい。
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開EP293,917A号公報に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。
【0064】
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀に含有するゼラチンとしては、感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持するために、低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。低分子量ゼラチンの分子量は、500〜60,000であり、好ましくは分子量1,000〜40,000である。これらの低分子量ゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、脱塩処理後の分散時に使用することが好ましい。また、粒子形成時は通常のゼラチン(分子量100,000程度)を使用し、脱塩処理後の分散時に低分子量ゼラチンを使用してもよい。
分散媒の濃度は0.05〜20質量%にすることができるが、取り扱い上5〜15質量%の濃度域が好ましい。ゼラチンの種類としては、通常アルカリ処理ゼラチンが用いられるが、その他に酸処理ゼラチン、フタル化ゼラチンの如き修飾ゼラチンも用いることができる。
【0065】
本発明に用いる感光材料中のハロゲン化銀乳剤は、1種だけを用いてもよいし、2種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)を併用してもよい。
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀の使用量としては有機銀塩1molに対して感光性ハロゲン化銀0.01mol〜0.5molが好ましく、0.02mol〜0.3molがより好ましく、0.03mol〜0.25molが特に好ましい。別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法および混合条件については、それぞれ調製を終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に得られる限り特に制限はない。また、混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましい方法である。
【0066】
本発明に用いることができる増感色素としては、ハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので、露光光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。例えば、550nm〜750nmの波長領域を分光増感する色素としては、特開平10−186572号公報の一般式(II)で表される色素が挙げられ、具体的にはII−6、II−7、II−14、II−15、II−18、II−23、II−25の色素を好ましい色素として例示することができる。また、750〜1400nmの波長領域を分光増感する色素としては、特開平11−119374号公報の一般式(I)で表される色素が挙げられ、具体的には(25)、(26)、(30)、(32)、(36)、(37)、(41)、(49)、(54)の色素を好ましい色素として例示することができる。さらに、J−bandを形成する色素として、米国特許第5,510,236号明細書、同第3,871,887号明細書の実施例5に記載の色素、特開平2−96131号公報、特開昭59−48753号公報に開示されている色素を好ましい色素として例示することができる。これらの増感色素は単独で用いてもよく、2種以上組合せて用いてもよい。
【0067】
これら増感色素の添加については、特開平11−119374号公報の段落番号0106に記載されている方法で添加することができるが、特に、この方法に限定されるものではない。
本発明における増感色素の添加量は、感度やカブリの性能に合わせて所望の量にすることができるが、感光性層のハロゲン化銀1mol当たり10−6〜1molが好ましく、さらに好ましくは10−4〜10−1molである。
【0068】
本発明は分光増感効率を向上させるため、強色増感剤を用いることができる。本発明に用いる強色増感剤としては、欧州特許公開EP587,338A号公報、米国特許第3,877,943号明細書、同第4,873,184号明細書に開示されている化合物、複素芳香族あるいは脂肪族メルカプト化合物、複素芳香族ジスルフィド化合物、スチルベン、ヒドラジン、トリアジンから選択される化合物などが挙げられる。
【0069】
特に好ましい強色増感剤は、特開平5−341432号公報に開示されている複素芳香族メルカプト化合物、複素芳香族ジスルフィド化合物、特開平4−182639号公報の一般式(I)あるいは(II)で表される化合物、特開平10−111543号公報の一般式(I)で表されるスチルベン化合物、特開平11−109547号公報の一般式(I)で表わされる化合物である。具体的には特開平5−341432号公報のM−1〜M−24の化合物、特開平4−182639号公報のd−1)〜d−14)の化合物、特開平10−111543号公報のSS−01〜SS−07の化合物、特開平11−109547号公報の31、32、37、38、41〜45、51〜53の化合物である。
これらの強色増感剤の添加量は、乳剤層中にハロゲン化銀1mol当たり10−4〜1molの範囲が好ましく、ハロゲン化銀1mol当たり0.001〜0.3molの範囲がより好ましい。
【0070】
次に本発明に用いられる、▲1▼非感光性有機銀塩上か近傍の少なくとも一方に現像開始点を形成可能な化学種をイメージワイズに生成する化合物、▲2▼添加することにより現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する化合物、▲3▼添加することによりカバリングパワーが120〜1000%に増加する化合物について説明する。
【0071】
先ず、非感光性有機銀塩上か近傍の少なくとも一方に現像開始点を形成可能な化学種をイメージワイズに生成する化合物について詳細に説明する。該化合物が感光材料中に存在しない場合は、露光により潜像が形成したハロゲン化銀上でのみ、物理現像が進行する。該化合物が感光材料中に存在する場合は、露光により潜像が形成したハロゲン化銀上で起こる物理現像に伴い生成する化学種、例えば現像主薬酸化体と該化合物が反応し、非感光性有機銀塩上か近傍の少なくとも一方に現像開始点を形成可能な化学種が生成する。その化学種が非感光性銀塩、例えばベヘン酸銀上か近傍の少なくとも一方に現像開始点を形成し、そこから物理現像が起こる。すなわち、該化合物が感光材料中に存在する場合は、露光により潜像が形成したハロゲン化銀上、およびイメージワイズに現像開始点が形成された非感光性有機銀塩上の両方で物理現像が進行する。
【0072】
次に、添加することにより現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する化合物について詳細に説明する。現像銀粒子密度は、感光材料中の全ての銀イオンが還元されたサンプルについて、特願2001−21749号明細書に記載の図1、あるいは図2に示すような写真を撮影し、単位面積当たりの現像銀粒子の数を数え、その密度を比較した。本発明の化合物が感光材料中に存在する場合は、該化合物が感光材料中に存在しない場合に比べ、現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する。より好ましい化合物の現像銀粒子密度増加率は500〜3000%である。
【0073】
次に、添加することによりカバリングパワーが120〜1000%に増加する化合物について詳細に説明する。ここで、カバリングパワーとは、感光材料中の全ての銀イオンが還元されたサンプルについて、可視濃度を現像銀量(g/m2)で割った値である。本発明の化合物によるカバリングパワーの増加は、特願2001−21749号明細書に記載の図1と図2の比較からわかるように、より小さな現像銀粒子が数多く形成されることによる。より好ましい化合物のカバリングパワー増加率は150〜500%である。
【0074】
次に、本発明に用いられる、▲1▼非感光性有機銀塩上か近傍の少なくとも一方に現像開始点を形成可能な化学種をイメージワイズに生成する化合物、▲2▼添加することにより現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する化合物、▲3▼添加することによりカバリングパワーが120〜500%に増加する化合物としては、特開2000−284399号公報に記載の式(H)で表されるヒドラジン誘導体(具体的には同公報の表1〜表4に記載のヒドラジン誘導体)、特開平10−10672号公報、特開平10−161270号公報、特開平10−62898号公報、特開平9−304870号公報、特開平9−304872号公報、特開平9−304871号公報、特開平10−31282号公報、米国特許第5,496,695号明細書、欧州特許公開EP741,320A号公報に記載のすべてのヒドラジン誘導体を挙げることができる。特開2001−133924号公報に記載の一般式(H)、(G)、(P)で表される化合物、具体的には同公報の[化3]〜[化9]、[化11]〜[化53]。特開2001−27790号公報に記載の一般式(H−1)、(H−2)、(H−3)、(H−4)、(H−5)、(H−1−1)で表されるヒドラジン誘導体、具体的には同公報に記載の化合物H−1−1〜H−1−28、化合物H−2−1〜H−2−9、化合物H−3−1〜H−3−12、化合物H−4−1〜H−4−21、化合物H−5−1〜H−5−5)。特開2001−125224号公報に記載の一般式(1)で表される置換アルケン誘導体、具体的には同公報に記載の[化10]〜[化55]が挙げられる。これらの化合物を複数併用してもよい。
【0075】
また、本発明に用いられる、▲1▼非感光性有機銀塩上か近傍の少なくとも一方に現像開始点を形成可能な化学種をイメージワイズに生成する化合物、▲2▼添加することにより現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する化合物、▲3▼添加することによりカバリングパワーが120〜500%に増加する化合物として、下式(11)、(12)、(13)で表される化合物がより好ましく用いられる。
【0076】
【化13】
[式(11)中、R1,R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Zは電子吸引性基を表す。R1とZ、R2とR3、R1とR2、或いはR3とZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
【0077】
【化14】
[式(12)中、R4は、置換基を表す。]
【0078】
【化15】
[式(13)中、XおよびYはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、AおよびBはそれぞれ独立に、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アニリノ基、ヘテロ環オキシ基、ヘテロ環チオ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。XとY、あるいはAとBは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
【0079】
式(11)、(12)、(13)で表される化合物について詳細に説明する。式(11)においてR1,R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Zは電子吸引性基を表す。式(11)においてR1とZ、R2とR3、R1とR2、或いはR3とZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。式(12)においてR4は、置換基を表す。式(13)においてXおよびYはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、AおよびBはそれぞれ独立に、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アニリノ基、ヘテロ環オキシ基、ヘテロ環チオ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。式(13)においてXとY、あるいはAとBは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0080】
式(11)においてR1,R2およびR3が置換基を表す時、置換基の例としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(Nー置換の含窒素ヘテロ環基を含む)、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、チオカルボニル基、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イソチオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、アシルチオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスホリル基、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、シリル基、スタニル基等が挙げられる。これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
【0081】
式(11)においてZで表される電子吸引性基とは、ハメットの置換基定数σpが正の値を取りうる置換基のことであり、具体的には、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、チオカルボニル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルカンアミド基、スルホンアミド基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、カルボキシ基、スルホ基(またはその塩)、ヘテロ環基、アルケニル基、アルキニル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、スルホニルオキシ基、またはこれら電子吸引性基で置換されたアリール基等である。ここにヘテロ環基とは、芳香族もしくは非芳香族の、飽和もしくは不飽和のヘテロ環基で、例えばピリジル基、キノリル基、ピラジニル基、ベンゾトリアゾリル基、イミダゾリル基、ベンツイミダゾリル基、ヒダントインー1―イル基、ウラゾール−1−イル基、スクシンイミド基、フタルイミド基等がその例として挙げられる。式(11)においてZで表される電子吸引性基は、さらに任意の置換基を有していてもよい。
式(11)においてZで表される電子吸引性基として好ましくは、総炭素数0から30の以下の基、即ち、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、パーフルオロアルキル基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、または任意の電子吸引性基で置換されたフェニル基等であり、さらに好ましくは、シアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、トリフルオロメチル基、または任意の電子吸引性基で置換されたフェニル基等であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、またはホルミル基である。
【0082】
式(11)においてR1で表される置換基として好ましくは、総炭素数0〜30の基で、具体的には上述の式(11)のZで表される電子吸引性基と同義の基、およびアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、ウレイド基、アシルアミノ基、シリル基、または置換もしくは無置換のアリール基であり、さらに好ましくは上述の式(11)のZで表される電子吸引性基と同義の基、置換もしくは無置換のアリール基、アルケニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、シリル基、またはアシルアミノ基であり、より好ましくは電子吸引性基、アリール基、アルケニル基、またはアシルアミノ基である。R1が電子吸引性基を表す時、その好ましい範囲はZで表される電子吸引性基の好ましい範囲と同じである。
【0083】
式(11)においてR2およびR3で表される置換基として好ましくは、上述の式(11)のZで表される電子吸引性基と同義の基、アルキル基、ヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ヘテロ環アミノ基、アシルアミノ基、置換もしくは無置換のフェニル基等である。R2およびR3はさらに好ましくは、どちらか一方が水素原子で、他方が置換基を表す時である。その置換基として好ましくは、アルキル基、ヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ヘテロ環アミノ基、アシルアミノ基(特にパーフルオロアルカンアミド基)、スルホンアミド基、置換もしくは無置換のフェニル基、またはヘテロ環基等であり、さらに好ましくはヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、またはヘテロ環基であり、特に好ましくはヒドロキシ基(またはその塩)、アルコキシ基、またはヘテロ環基である。
【0084】
式(11)においてZとR1、或いはまたR2とR3とが環状構造を形成する場合もまた好ましい。この場合に形成される環状構造は、非芳香族の炭素環もしくは非芳香族のヘテロ環であり、好ましくは5員〜7員の環状構造で、置換基を含めたその総炭素数は1〜40、さらには3〜35が好ましい。
【0085】
式(11)で表される化合物の中で、より好ましいものの1つは、Zがシアノ基、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、イミノ基、またはカルバモイル基を表し、R1が電子吸引性基を表し、R2またはR3のどちらか一方が水素原子で、他方がヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、またはヘテロ環基を表す化合物である。さらにまた式(11)で表される化合物の中でより好ましいものの1つは、ZとR1とが連結して非芳香族の5員〜7員の環状構造を形成していて、R2またはR3のどちらか一方が水素原子で、他方がヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、またはヘテロ環基を表す化合物である。
【0086】
ここでZとR1とが形成する非芳香族の5員〜7員の環状構造とは具体的に、インダン−1,3−ジオン環、ピロリジン−2,4−ジオン環、ピラゾリジン−3,5−ジオン環、オキサゾリジン−2,4−ジオン環、5−ピラゾロン環、イミダゾリジン−2,4−ジオン環、チアゾリジン−2,4−ジオン環、オキソラン−2,4−ジオン環、チオラン−2,4−ジオン環、1、3―ジオキサン−4,6−ジオン環、シクロヘキサン−1,3−ジオン環、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2,4−ジオン環、シクロペンタン−1,3−ジオン環、イソオキサゾリジン−3,5−ジオン環、バルビツール酸環、2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−オン環、ピラゾロトリアゾール環(例えば7H−ピラゾロ[1,5−b][1,2,4]トリアゾール,7H−ピラゾロ[5,1−c][1,2,4]トリアゾール,7H−ピラゾロ[1,5−a]ベンズイミダゾール等)、ピロロトリアゾール環(例えば5H−ピロロ[1,2−b][1,2,4]トリアゾール,5H−ピロロ[2,1−c][1,2,4]トリアゾール等)、2−シクロペンテン−1,4−ジオン環、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド環、クロマン−2,4−ジオン環、2−オキサゾリン−5―オン環、2−イミダゾリン−5−オン環、2−チアゾリン−5−オン環、1−ピロリン−4−オン環、5−オキソチアゾリジン−2−オン環、4−オキソチアゾリジン−2−オン環、1,3−ジチオラン環、チアゾリジン環、1,3−ジチエタン環、1,3−ジオキソラン環等が挙げられ、中でもインダン−1,3−ジオン環、ピロリジン−2,4−ジオン環、ピラゾリジン−3,5−ジオン環、5−ピラゾロン環、バルビツール酸環、2−オキサゾリン−5―オン環等が好ましい。
【0087】
式(12)においてR4で表される置換基の例としては、式(11)のR1〜R3の置換基について説明したものと同じものが挙げられる。
式(12)においてR4で表される置換基は、好ましくは電子吸引性基またはアリール基である。R4が電子吸引性基を表す時、好ましくは、総炭素数0〜30の以下の基、即ち、シアノ基、ニトロ基、アシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、パーフルオロアルキル基、ホスホリル基、イミノ基、スルホンアミド基、またはヘテロ環基であり、さらにシアノ基、アシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホンアミド基、ヘテロ環基が好ましい。
R4がアリール基を表す時、好ましくは総炭素数0〜30の、置換もしくは無置換のフェニル基であり、置換基としては、式(11)のR1,R2,R3が置換基を表す時にその置換基として説明したものと同じものが挙げられるが、電子吸引性基が好ましい。
【0088】
式(13)においてXまたはYで表される置換基としては、式(11)のR1〜R3の置換基について説明したものと同じものが挙げられる。XまたはYで表される置換基は、好ましくは総炭素数1〜50の、より好ましくは総炭素数1〜35の基であり、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、チオカルボニル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、パーフルオロアルキル基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、アシルアミノ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、ヘテロ環基、アルキルチオ基、アルコキシ基、またはアリール基等が好ましい。より好ましくはシアノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アシル基、ホルミル基、アシルチオ基、アシルアミノ基、チオカルボニル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、ホスホリル基、トリフルオロメチル基、ヘテロ環基、または置換されたフェニル基等であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アシルチオ基、アシルアミノ基、チオカルボニル基、ホルミル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、ヘテロ環基、または任意の電子吸引性基で置換されたフェニル基等である。
【0089】
XとYが、互いに結合して非芳香族の炭素環、または非芳香族のヘテロ環を形成している場合もまた好ましい。この時、形成される環は5員〜7員環が好ましく、具体的には式(11)のZとR1とが互いに結合して形成しうる非芳香族の5員〜7員環の例と同じものが挙げられ、その好ましい範囲もまた同じである。これらの環はさらに置換基を有していてもよく、その総炭素数は1〜40、さらには1〜35が好ましい。
【0090】
式(13)においてA,Bで表される基は、さらに置換基を有していてもよく、好ましくは総炭素数1〜40の、より好ましくは総炭素数1〜30の基である。
式(13)においてA,Bは、これらが互いに結合して環状構造を形成している場合がより好ましい。この時形成される環状構造は5員〜7員環の非芳香族のヘテロ環が好ましく、その総炭素数は1〜40、さらには3〜30が好ましい。この場合に、A,Bが連結した例(−A−B−)を挙げれば、例えば−O−(CH2)2−O−,−O−(CH2)3−O−,−S−(CH2)2−S−,−S−(CH2)3−S−,−S−Ph−S−,−N(CH3)−(CH2)2−O−,−O−(CH2)3−S−,−N(CH3)−Ph−S−,−N(Ph)−(CH2)2−S−等である。ここにおいてPhは、フェニル基またはフェニレン基を表す。
【0091】
式(11)〜(13)で表される化合物は、ハロゲン化銀に対して吸着する吸着性の基が組み込まれていてもよい。カプラ−等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基またはポリマ−が組み込まれているものでもよく、またカチオン性基(具体的には、4級のアンモニオ基を含む基、または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基等)、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を含む基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、あるいは塩基により解離しうる解離性基(カルボキシ基、スルホ基、アシルスルファモイル基、カルバモイルスルファモイル基等)が含まれていてもよい。これらの基の例としては、例えば特開昭63−29751号公報、米国特許第4,385,108号明細書、同4,459,347号明細書、特開昭59−195233号公報、同59−200231号公報、同59−201045号公報、同59−201046号公報、同59−201047号公報、同59−201048号公報、同59−201049号公報、特開昭61−170733号公報、同61−270744号公報、同62−948号公報、同63−234244号公報、同63−234245号公報、同63−234246号公報、特開平2−285344号公報、特開平1−100530号公報、特開平7−234471号公報、特開平5−333466号公報、特開平6−19032号公報、特開平6−19031号公報、特開平5−45761号公報、米国特許第4,994,365号明細書、米国特許第4,988,604号明細書、特開平7−5610号公報、特開平7−244348号公報、独特許第4006032号明細書等に記載の化合物が挙げられる。
【0092】
次に式(11)〜(13)で表される化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明で用いることができる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0093】
【化16】
【0094】
【化17】
【0095】
【化18】
【0096】
【化19】
【0097】
【化20】
【0098】
【化21】
【0099】
【化22】
【0100】
【化23】
【0101】
【化24】
【0102】
式(11)〜(13)で表される化合物は公知の方法により容易に合成することができるが、例えば、米国特許第5,545,515号明細書、米国特許第5,635,339号明細書、米国特許第5,654,130号明細書、国際特許WO−97/34196号、或いは特開平11−231459号公報、特開平11−133546号公報、特開平11−95365号公報に記載の方法を参考に合成することができる。
【0103】
式(11)〜(13)で表される化合物は、1種のみ用いても、2種以上を併用してもよい。また上記のものの他に、米国特許第5,545,515号明細書、米国特許第5,635,339号明細書、米国特許第5,654,130号明細書、米国特許第5,705,324号明細書、米国特許第5,686,228号等明細書に記載の化合物、或いはまた特開平10―161270号公報、特開平11−119372号公報、特開平11−231459号公報、特開平11−133546号公報、特開平11−119373号公報、特開平11−109546号公報、特開平11−95365号公報、特開平11−95366号公報、特開平11−149136号公報等に記載された化合物を併用して用いてもよい。さらに本発明においては、特開平10−161270号公報に記載の種々のヒドラジン誘導体を組み合わせて用いることもできる。
【0104】
式(11)〜(13)で表される化合物は、水または適当な有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、ヒドラジン誘導体の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散し用いることができる。
【0105】
式(11)〜(13)で表される化合物は、支持体に対して画像形成層側の該画像形成層あるいは他のどの層に添加してもよいが、該画像形成層あるいはそれに隣接する層に添加することが好ましい。式(11)〜(13)で表される化合物の添加量は、銀1molに対し1×10−6〜1molが好ましく、1×10−5〜5×10−1molがより好ましく、2×10−5〜2×10−1molが最も好ましい。
【0106】
また上記の化合物の他に、米国特許第5,545,515号明細書、同第5,635,339号明細書、同第5,654,130号明細書、国際公開WO97/34196号公報、米国特許第5,686,228号明細書に記載の化合物、或いはまた特開平11−119372号公報、特開平11−133546号公報、特開平11−119373号公報、特開平11−109546号公報、特開平11−95365号公報、特開平11−95366号公報、特開平11−149136号公報に記載の化合物を用いてもよい。
【0107】
本発明では超硬調画像形成のために、前記の化合物とともに硬調化促進剤を併用することができる。例えば、米国特許第5,545,505号明細書に記載のアミン化合物、具体的にはAM−1〜AM−5、米国特許第5,545,507号明細書に記載のヒドロキサム酸類、具体的にはHA−1〜HA−11、米国特許第5,545,507号明細書に記載のアクリロニトリル類、具体的にはCN−1〜CN−13、米国特許第5,558,983号明細書に記載のヒドラジン化合物、具体的にはCA−1〜CA−6、特開平9−297368号公報に記載のオニュ−ム塩類、具体的にはA−1〜A−42、B−1〜B−27、C−1〜C−14などを用いることができる。
【0108】
本発明の熱現像感光材料にはリンを含む化合物として、五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩を併用して用いることが特に好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどがある。
【0109】
本発明において好ましく用いることができる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩は、少量で所望の効果を発現するという点から画像形成層あるいはそれに隣接するバインダー層に添加する。
リンを含む化合物および五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩の使用量(感光材料1m2あたりの塗布量)は感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1〜500mg/m2が好ましく、0.5〜100mg/m2がより好ましい。
【0110】
本発明の熱現像感光材料は、好ましくは有機銀塩のための還元剤を含む。有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質、好ましくは有機物質である。フェニドン、ハイドロキノンおよびカテコールなどの従来の写真現像剤は有用であるが、ヒンダードフェノール還元剤が好ましい。還元剤は、画像形成層を有する面の銀1molに対して5〜50mol%含まれることが好ましく、10〜40mol%で含まれることがさらに好ましい。還元剤の添加層は支持体に対して画像形成層側のいかなる層でもよい。画像形成層以外の層に添加する場合は銀1molに対して10〜50mol%と多めに使用することが好ましい。また、還元剤は現像時のみ有効に機能するように誘導化されたいわゆるプレカーサーであってもよい。
【0111】
有機銀塩を利用した熱現像感光材料においては広範囲の還元剤を使用することができる。例えば、特開昭46−6074号公報、同47−1238号公報、同47−33621号公報、同49−46427号公報、同49−115540号公報、同50−14334号公報、同50−36110号公報、同50−147711号公報、同51−32632号公報、同51−1023721号公報、同51−32324号公報、同51−51933号公報、同52−84727号公報、同55−108654号公報、同56−146133号公報、同57−82828号公報、同57−82829号公報、特開平6−3793号公報、米国特許第3,679,426号明細書、同第3,751,252号明細書、同第3,751,255号明細書、同第3,761,270号明細書、同第3,782,949号明細書、同第3,839,048号明細書、同第3,928,686号明細書、同第5,464,738号明細書、独国特許第2,321,328号明細書、欧州特許公開EP692,732A号公報などに開示されている還元剤を用いることができる。例えば、フェニルアミドオキシム、2−チエニルアミドオキシムおよびp−フェノキシフェニルアミドオキシムなどのアミドオキシム;例えば4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンズアルデヒドアジンなどのアジン;2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオニル−β−フェニルヒドラジンとアスコルビン酸との組合せのような脂肪族カルボン酸アリールヒドラジドとアスコルビン酸との組合せ;ポリヒドロキシベンゼンと、ヒドロキシルアミン、レダクトンおよび/またはヒドラジンの組合せ(例えばハイドロキノンと、ビス(エトキシエチル)ヒドロキシルアミン、ピペリジノヘキソースレダクトンまたはホルミル−4−メチルフェニルヒドラジンの組合せなど);フェニルヒドロキサム酸、p−ヒドロキシフェニルヒドロキサム酸およびβ−アリニンヒドロキサム酸などのヒドロキサム酸;アジンとスルホンアミドフェノールとの組合せ(例えば、フェノチアジンと2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノールなど);エチル−α−シアノ−2−メチルフェニルアセテート、エチル−α−シアノフェニルアセテートなどのα−シアノフェニル酢酸誘導体;2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、6,6’−ジブロモ−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチルおよびビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタンに例示されるようなビス−β−ナフトール;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体(例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンまたは2’,4’−ジヒドロキシアセトフェノンなど)の組合せ;3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロンなどの5−ピラゾロン;ジメチルアミノヘキソースレダクトン、アンヒドロジヒドロアミノヘキソースレダクトンおよびアンヒドロジヒドロピペリドンヘキソースレダクトンに例示されるようなレダクトン;2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノールおよびp−ベンゼンスルホンアミドフェノールなどのスルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオンなど;2,2−ジメチル−7−tert−ブチル−6−ヒドロキシクロマンなどのクロマン;2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジンなどの1,4−ジヒドロピリジン;ビスフェノール(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−エチリデン−ビス(2−tert−ブチル−6−メチルフェノール)、1,1,−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサンおよび2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなど);アスコルビン酸誘導体(例えば、パルミチン酸1−アスコルビル、ステアリン酸アスコルビルなど);ならびにベンジルおよびビアセチルなどのアルデヒドおよびケトン;3−ピラゾリドンおよびある種のインダン−1,3−ジオン;クロマノール(トコフェロールなど)などがある。特に好ましい還元剤は、ビスフェノール、クロマノールである。
【0112】
本発明においては、上記の還元剤と現像促進剤を併用することが好ましい。現像促進剤としては、特開2000−330234号公報に記載の一般式(1)で表される化合物で、具体的には同公報に記載のA−1〜A−105で表される化合物、特願2001−096643号明細書に記載の式(2)で表される化合物で、具体的には同公報に記載のII−1〜II−74で表される化合物が好ましく用いられる。これらの現像促進剤は乳剤層側のいかなる層に含有させてもよいが、好ましくは乳剤層またはその隣接層、さらに好ましくは乳剤層の隣接層に含有させる。
【0113】
還元剤と現像促進剤を用いる場合、これらは水溶液、有機溶媒溶液、粉末、固体微粒子分散物、乳化分散物などいかなる形態で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行うことができる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0114】
本発明で還元剤を用いる場合、それは、水溶液、有機溶媒溶液、粉末、固体微粒子分散物、乳化分散物などいかなる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0115】
画像を向上させる「色調剤」として知られる添加剤を含ませると光学濃度が高くなることがある。また、色調剤は黒色銀画像を形成させるうえでも有利になることがある。色調剤は支持体に対して画像形成層側の層に銀1molあたりの0.1〜50%molの量含ませることが好ましく、0.5〜20%mol含ませることがさらに好ましい。また、色調剤は現像時のみ有効に機能するように誘導化されたいわゆるプレカーサーであってもよい。
有機銀塩を利用した熱現像感光材料においては広範囲の色調剤を使用することができる。例えば、特開昭46−6077号公報、同47−10282号公報、同49−5019号公報、同49−5020号公報、同49−91215号公報、同49−91215号公報、同50−2524号公報、同50−32927号公報、同50−67132号公報、同50−67641号公報、同50−114217号公報、同51−3223号公報、同51−27923号公報、同52−14788号公報、同52−99813号公報、同53−1020号公報、同53−76020号公報、同54−156524号公報、同54−156525号公報、同61−183642号公報、特開平4−56848号公報、特公昭49−10727号公報、同54−20333号公報、米国特許第3,080,254号明細書、同第3,446,648号明細書、同第3,782,941号明細書、同第4,123,282号明細書、同第4,510,236号明細書、英国特許第1,380,795号明細書、ベルギー特許第841,910号明細書などに開示される色調剤を用いることができる。色調剤の具体例としては、フタルイミドおよびN−ヒドロキシフタルイミド;スクシンイミド、ピラゾリン−5−オン、ならびにキナゾリノン、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリンおよび2,4−チアゾリジンジオンのような環状イミド;ナフタルイミド(例えば、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタルイミド);コバルト錯体(例えば、コバルトヘキサミントリフルオロアセテート);3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,4−ジメルカプトピリミジン、3−メルカプト−4,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾールおよび2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールに例示されるメルカプタン;N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド、(例えば、(N,N−ジメチルアミノメチル)フタルイミドおよびN,N−(ジメチルアミノメチル)−ナフタレン−2,3−ジカルボキシイミド);ならびにブロック化ピラゾール、イソチウロニウム誘導体およびある種の光退色剤(例えば、N,N’−ヘキサメチレンビス(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジアザオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)および2−(トリブロモメチルスルホニル)−ベンゾチアゾール;ならびに3−エチル−5−[(3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)−1−メチルエチリデン]−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン;フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩、または4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオンなどの誘導体;フタラジノンとフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;フタラジン、フタラジン誘導体(たとえば、4−(1−ナフチル)フタラジン、6−クロロフタラジン、5,7−ジメトキシフタラジン、6−イソブチルフタラジン、6−tert−ブチルフタラジン、5,7−ジメチルフタラジン、および2,3−ジヒドロフタラジンなどの誘導体)もしくは金属塩;フタラジンおよびその誘導体とフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;キナゾリンジオン、ベンズオキサジンまたはナフトオキサジン誘導体;色調調節剤としてだけでなくその場でハロゲン化銀生成のためのハライドイオンの源としても機能するロジウム錯体、例えばヘキサクロロロジウム(III)酸アンモニウム、臭化ロジウム、硝酸ロジウムおよびヘキサクロロロジウム(III)酸カリウムなど;無機過酸化物および過硫酸塩、例えば、過酸化二硫化アンモニウムおよび過酸化水素;1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン、8−メチル−1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオンおよび6−ニトロ−1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオンなどのベンズオキサジン−2,4−ジオン;ピリミジンおよび不斉−トリアジン(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン、2−ヒドロキシ−4−アミノピリミジンなど)、アザウラシル、およびテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン、および1,4−ジ(o−クロロフェニル)−3,6−ジメルカプト−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン)などがある。
【0116】
本発明では色調剤として、特開2000−35631号公報に記載の一般式(F)で表されるフタラジン誘導体が好ましく用いられる。具体的には同明細書に記載のA−1〜A−10が好ましく用いられる
【0117】
色調剤は、溶液、粉末、固体微粒子分散物などいかなる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0118】
本発明の熱現像感光材料では、アンモニアなどの揮発性の塩基は揮発しやすく、塗布する工程や熱現像時だけでなく、保存中にも揮発するため、膜内に存在することは好ましくなく、NH4 +含有量は支持体1m2当たりの塗布量で、0.06mmol以下であることが好ましい。より好ましくは、0.03mmol以下である。膜中のNH4 +量の定量は、東ソー社製8000タイプイオンクロマト測定装置(電気導電度法)および分離カラムとして、東ソー社製TSKgel IC−Cation、ガードカラムとして、TSK guard column IC−Cを用いて測定した。溶離液には、2mM硝酸水溶液を用い、1.2ml/minの流量で行った。また、カラム恒温槽温度は40℃で行った。
【0119】
感光材料からのNH4 +の抽出は、抽出液として、酢酸:イオン交換水=1:148混合溶液を用い、上記抽出液5mlに感光材料1x3.5cm2の大きさの感光材料を2時間浸して行い、抽出後、0.45μmのフィルターで濾過した溶液を測定した。
膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸や、不揮発性の塩基を用いることが好ましい。
本発明の熱現像感光材料の熱現像処理前の膜面pHは6.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは5.5以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。
なお、膜面pHの測定方法は、特開2000−284399号公報の段落番号0123に記載されている。
【0120】
本発明の熱現像感光材料において、ハロゲン化銀乳剤および/または有機銀塩は、カブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体によって、付加的なカブリの生成に対してさらに保護され、在庫貯蔵中における感度の低下に対して安定化することができる。単独または組合せて使用することができる適当なカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体は、米国特許第2,131,038号明細書および同第2,694,716号明細書に記載のチアゾニウム塩、米国特許第2,886,437号明細書および同第2,444,605号明細書に記載のアザインデン、米国特許第2,728,663号明細書に記載の水銀塩、米国特許第3,287,135号明細書に記載のウラゾール、米国特許第3,235,652号明細書に記載のスルホカテコール、英国特許第623,448号明細書に記載のオキシム、ニトロン、ニトロインダゾール、米国特許第2,839,405号明細書に記載の多価金属塩、米国特許第3,220,839号明細書に記載のチウロニウム塩、ならびに米国特許第2,566,263号明細書および同第2,597,915号明細書に記載のパラジウム、白金および金塩、米国特許第4,108,665号明細書および同第4,442,202号明細書に記載のハロゲン置換有機化合物、米国特許第4,128,557号明細書および同第4,137,079号明細書、同第4,138,365号明細書および同第4,459,350号明細書に記載のトリアジンならびに米国特許第4,411,985号明細書に記載のリン化合物などがある。
【0121】
本発明の熱現像感光材料は、高感度化やカブリ防止を目的として安息香酸類を含有してもよい。本発明で用いる安息香酸類はいかなる安息香酸誘導体でもよいが、好ましい例としては、米国特許第4,784,939号明細書、同第4,152,160号明細書、特開平9−329863号公報、同9−329864号公報、同9−281637号公報などに記載の化合物が挙げられる。安息香酸類は熱現像感光材料のいかなる層に添加してもよいが、支持体に対して画像形成層側の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。安息香酸類の添加は塗布液調製のいかなる工程で行ってもよく、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でもよいが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。安息香酸類の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行ってもよい。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加してもよい。安息香酸類の添加量としてはいかなる量でもよいが、銀1mol当たり1×10−6mol〜2molが好ましく、1×10−3mol〜0.5molがさらに好ましい。
【0122】
本発明を実施するために必須ではないが、画像形成層にカブリ防止剤として水銀(II)塩を加えることが有利なことがある。この目的のために好ましい水銀(II)塩は、酢酸水銀および臭化水銀である。本発明に使用する水銀の添加量としては、塗布された銀1mol当たり好ましくは1×10−9mol〜1×10−3mol、さらに好ましくは1×10−8mol〜1×10−4molの範囲である。
【0123】
本発明で特に好ましく用いられるカブリ防止剤は有機ハロゲン化物であり、例えば、特開昭50−119624号公報、同50−120328号公報、同51−121332号公報、同54−58022号公報、同56−70543号公報、同56−99335号公報、同59−90842号公報、同61−129642号公報、同62−129845号公報、特開平6−208191号公報、同7−5621号公報、同7−2781号公報、同8−15809号公報、米国特許第5,340,712号明細書、同第5,369,000号明細書、同第5,464,737号明細書に開示されているような化合物が挙げられる。
特開2000−284399号公報に記載の式(P)で表される親水性有機ハロゲン化物がカブリ防止剤として好ましく用いられる。具体的には、同明細書に記載の(P−1)〜(P−118)が好ましく用いられる。
【0124】
有機ハロゲン化物の添加量は、Ag1molに対するmol量(mol/molAg)で示して、好ましくは1×10−5〜2mol/molAg、より好ましくは5×10−5〜1mol/molAg、さらに好ましくは1×10−4〜5×10−1mol/molAgである。これらは1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0125】
また、特開2000−284399号公報に記載の式(Z)で表されるサリチル酸誘導体がカブリ防止剤として好ましく用いられる。具体的には、同明細書に記載の(A−1)〜(A−60)が好ましく用いられる。式(Z)で表されるサリチル酸誘導体の添加量は、Ag1molに対するmol量(mol/molAg)で示して、好ましくは1×10−5〜5×10−1mol/molAg、より好ましくは5×10−5〜1×10−1mol/molAg、さらに好ましくは1×10−4〜5×10−2mol/molAgである。これらは1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0126】
本発明に好ましく用いられるカブリ防止剤として、ホルマリンスカベンジャーが有効であり、例えば、特開2000−221634号公報に記載の式(S)で表される化合物およびその例示化合物(S−1)〜(S−24)が挙げられる。
【0127】
本発明に用いるカブリ防止剤は、水あるいは適当な有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、サンドグラインダーミル、マントンゴーリン、マイクロフルイダイザーあるいは超音波によって分散し用いることもできる。
【0128】
本発明に用いるカブリ防止剤は、支持体に対して画像形成層側の層、即ち画像形成層あるいはこの層側の他のどの層に添加してもよいが、画像形成層あるいはそれに隣接する層に添加することが好ましい。画像形成層は還元可能な銀塩(有機銀塩)を含有する層であり、好ましくはさらに感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層であることが好ましい。
【0129】
本発明の熱現像感光材料には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御することや、現像前後の保存性を向上させることなどを目的としてメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができる。
本発明にメルカプト化合物を使用する場合、いかなる構造のものでもよいが、Ar−SM、Ar−S−S−Arで表されるものが好ましい。式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、イオウ、酸素、セレニウムまたはテルリウム原子を有する芳香環または縮合芳香環である。好ましくは、複素芳香環はベンズイミダゾール、ナフスイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフスオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリンまたはキナゾリノンである。この複素芳香環は、例えば、ハロゲン(例えば、BrおよびCl)、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、アルキル(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、アルコキシ(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)およびアリール(置換基を有していてもよい)からなる置換基群から選択されるものを有してもよい。メルカプト置換複素芳香族化合物をとしては、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、6−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2,2’−ジチオビス−(ベンゾチアゾール)、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4,5−ジフェニル−2−イミダゾールチオール、2−メルカプトイミダゾール、1−エチル−2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトキノリン、8−メルカプトプリン、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリノン、7−トリフルオロメチル−4−キノリンチオール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−ピリジンチオール、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジンモノヒドレート、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−ヒドキロシ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプトピリミジン、4,6−ジアミノ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプト−4−メチルピリミジンヒドロクロリド、3−メルカプト−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、3−(5−メルカプトテトラゾール)−ベンゼンスルホン酸ナトリウム、N−メチル−N’−{3−(5−メルカプトテトラゾリル)フェニル}ウレア、2−メルカプト−4−フェニルオキサゾールなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
これらのメルカプト化合物の添加量としては画像形成層中に銀1mol当たり0.0001〜1.0molの範囲が好ましく、さらに好ましくは、銀の1mol当たり0.001〜0.3molの量である。
【0130】
本発明の熱現像感光材料は、支持体上に、有機銀塩、還元剤および感光性ハロゲン化銀を含む画像形成層を有し、画像形成層上には少なくとも1層の保護層が設けられていることが好ましい。また、本発明の熱現像感光材料は支持体に対して画像形成層と反対側(バック面)に少なくとも1層のバック層を有することが好ましく、画像形成層、保護層、そしてバック層のバインダーとしてポリマーラテックスが用いられる。これらの層にポリマーラテックスを用いることによって、水を主成分とする溶媒(分散媒)を用いた水系塗布が可能になり、環境面、コスト面で有利になるとともに、熱現像時にシワの発生がない熱現像感光材料が得られるようになる。また、所定の熱処理をした支持体を使用することにより、熱現像の前後で寸法変化の少ない熱現像感光材料が得られる。
【0131】
画像形成層側の主バインダーとしては、良好な写真性能が得られ、かつ水系塗布を可能にするポリマーラテックスを用いることが好ましい。
【0132】
本発明で用いるバインダーとして以下に述べるポリマーラテックスを用いることが好ましい。
本発明の熱現像感光材料の感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層のうち少なくとも1層は以下に述べるポリマーラテックスを全バインダーの50質量%以上用いた画像形成層であることが好ましい。また、ポリマーラテックスは画像形成層だけではなく、保護層やバック層に用いてもよく、特に寸法変化が問題となる印刷用途に本発明の熱現像感光材料を用いる場合には、保護層やバック層にもポリマーラテックスを用いることが好ましい。ただしここで言う「ポリマーラテックス」とは水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散されたものである。分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散されたものなどいずれでもよい。なお本発明で用いるポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などに記載されている。分散粒子の平均粒子サイズは1〜50000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒子サイズ分布に関しては特に制限は無く、広い粒子サイズ分布を持つものでも単分散の粒子サイズ分布を持つものでもよい。
【0133】
本発明で用いるポリマーラテックスとしては、通常の均一構造のポリマーラテックス以外の、いわゆるコア/シェル型のラテックスでもよい。この場合コアとシェルはガラス転移温度を変えると好ましい場合がある。
【0134】
本発明で用いるバインダーに好ましく用いるポリマーラテックスのガラス転移温度(Tg)は保護層、バック層と画像形成層とでは好ましい範囲が異なる。画像形成層にあっては熱現像時に写真有用素材の拡散を促すため、−30〜40℃であることが好ましい。保護層やバック層に用いる場合には種々の機器と接触するために25〜70℃のガラス転移温度が好ましい。
【0135】
本発明で用いるポリマーラテックスの最低造膜温度(MFT)は−30℃〜90℃、より好ましくは0℃〜70℃程度が好ましい。最低造膜温度をコントロールするために造膜助剤を添加してもよい。造膜助剤は可塑剤ともよばれポリマーラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物(通常有機溶剤)で、例えば前述の「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970)」に記載されている。
【0136】
本発明で用いるポリマーラテックスに用いられるポリマー種としてはアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはこれらの共重合体などが挙げられる。ポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでも、また架橋されたポリマーでもよい。またポリマーとしては単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでもブロックコポリマーでもよい。ポリマーの分子量は数平均分子量で5,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜100,000程度が好ましい。分子量が小さすぎるものは画像形成層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く、好ましくない。
【0137】
本発明の熱現像感光材料の画像形成層のバインダーとして用いられるポリマーラテックスの具体例としては、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/ブタジエン/イタコン酸コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/スチレン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/ジビニルベンゼン/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/塩化ビニル/アクリル酸コポリマーのラテックス、塩化ビニリデン/エチルアクリレート/アクリロニトリル/メタクリル酸コポリマーのラテックスなどが挙げられる。さらに具体的には、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸=33.5/50/16.5(質量%)のコポリマーラテックス、メチルメタクリレート/ブタジエン/イタコン酸=47.5/47.5/5(質量%)のコポリマーラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸=95/5(質量%)のコポリマーラテックスなどが挙げられる。また、このようなポリマーは市販もされていて、例えばアクリル樹脂の例として、セビアンA−4635,46583、4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol LX811、814、821、820、857(以上日本ゼオン(株)製)、VONCORT−R3340、R3360、R3370、4280(以上大日本インキ化学(株)製)など、ポリエステル樹脂としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD−size、WMS(以上イーストマンケミカル製)など、ポリウレタン樹脂としてはHYDRAN AP10、20、30、40(以上大日本インキ化学(株)製)など、ゴム系樹脂としてはLACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上大日本インキ化学(株)製)、Nipol LX410、430,435、438C(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニル樹脂としてはG351、G576(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニリデン樹脂としてはL502、L513(以上旭化成工業(株)製)、アロンD7020、D504、D5071(以上三井東圧(株)製)など、オレフィン樹脂としてはケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。これらのポリマーは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドして用いてもよい。
【0138】
画像形成層には全バインダーの50質量%以上として上記ポリマーラテックスが好ましく用いられるが、70質量%以上として上記ポリマーラテックスが用いられることがさらに好ましい。
【0139】
画像形成層には必要に応じて全バインダーの50質量%以下の範囲でゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は画像形成層の全バインダーの30質量%以下、さらには15質量%以下が好ましい。
【0140】
画像形成層は水系の塗布液を塗布後乾燥して調製することが好ましい。ただし、ここで言う「水系」とは塗布液の溶媒(分散媒)の60質量%以上が水であることをいう。塗布液の水以外の成分はメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなどの水混和性の有機溶媒を用いることができる。具体的な溶媒組成の例としては以下のようなものがある。水/メタノール=90/10、水/メタノール=70/30、水/エタノール=90/10、水/イソプロパノール=90/10、水/ジメチルホルムアミド=95/5、水/メタノール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メタノール/ジメチルホルムアミド=90/5/5。(ただし数字は質量%を表す。)
【0141】
画像形成層の全バインダー量は0.2〜30g/m2、より好ましくは1〜15g/m2の範囲が好ましい。画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
【0142】
さらに、保護層用のバインダーとして、特開2000−267226号公報の段落番号0025〜0029に記載の有機概念図に基づく無機性値を有機性値で割ったI/O値の異なるポリマーラテックスの組み合わせを好ましく用いることができる。
【0143】
本発明においては必要に応じて、特開2000−267226号公報の段落番号0021〜0025に記載の可塑剤(例、ベンジルアルコール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3−モノイソブチレートなど)を添加して、造膜温度をコントロールすることが出来る。また、特開2000−267226号公報の段落番号0027〜0028に記載の如くポリマーバインダー中に親水性ポリマーを、塗布液中に水混和性の有機溶媒を添加してもよい。
【0144】
それぞれの層には、特開2000−19678号公報の段落番号0023〜0041に記載の官能基を導入した第一のポリマーラテックスとこの第一のポリマーラテックスと反応しうる官能基を有する架橋剤および/または第二のポリマーラテックスを用いることもできる。
上記の官能基は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、N−メチロール基、オキサゾリニル基など、架橋剤としては、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、メチロ−ル化合物、ヒドロキシ化合物、カルボキシル化合物、アミノ化合物、エチレンイミン化合物、アルデヒド化合物、ハロゲン化合物などから選ばれる。架橋剤の具体例として、イソシアネート化合物としてヘキサメチレンイソシアネート、デュラネートWB40−80D、WX−1741(旭化成工業(株)製)、バイヒジュール3100(住友バイエルウレタン(株)製)、タケネートWD725(武田薬品工業(株)製)、アクアネート100、200(日本ポリウレタン(株)製)、特開平9−160172号公報記載の水分散型ポリイソシアネート;アミノ化合物としてスミテックスレジンM−3(住友化学工業(株)製);エポキシ化合物としてデナコールEX−614B(ナガセ化成工業(株)製);ハロゲン化合物として2,4ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンナトリウムなどが挙げられる。
【0145】
画像形成層用の全バインダー量は0.2〜30g/m2、より好ましくは1.0〜15g/m2の範囲が好ましい。
保護層用の全バインダー量は、本発明に好ましく用いられる膜厚3μm以上を達成する上で必要な量として、1〜10.0g/m2、より好ましくは2〜6.0g/m2の範囲が好ましい。
本発明に好ましく用いられる保護層膜厚としては、3μm以上であり、4μm以上がさらに好ましい。保護層膜厚の上限としては特に制限はないが、塗布乾燥のことを考慮し、10μ以下、さらには8μm以下が好ましい。
バック層用の全バインダー量は0.01〜10.0g/m2、より好ましくは0.05〜5.0g/m2の範囲が好ましい。
【0146】
これらの各層は、2層以上設けられる場合がある。画像形成層が2層以上である場合は、すべての層のバインダーとしてポリマーラテックスを用いることが好ましい。また、保護層は画像形成層上に設けられる層であり2層以上存在する場合もあるが、少なくとも1層、特に最外層の保護層にポリマーラテックスが用いられることが好ましい。また、バック層は支持体バック面の下塗り層の上部に設けられる層であり2層以上存在する場合もあるが、少なくとも1層、特に最外層のバック層にポリマーラテックスを用いることが好ましい。
【0147】
本明細書における滑り剤とは、物体表面に存在させた時に、存在させない場合に比べて物体表面の摩擦係数を減少させる化合物を意味する。その種類は特に制限されない。
【0148】
本発明に用いる滑り剤としては、特開平11−84573号公報の段落番号0061〜0064、特開2001−83679号公報の段落番号0049〜0062に記載の化合物を挙げることができる。
好ましい滑り剤の具体例としては、セロゾール524(主成分カルナバワックス)、ポリロンA,393,H−481(主成分ポリエチレンワックス)、ハイミクロンG−110(主成分エチレンビスステアリン酸アマイド)、ハイミクロンG−270(主成分ステアリン酸アマイド)(以上、中京油脂(株)製)、
W−1 C16H33−O−SO3Na
W−2 C18H37−O−SO3Na
などが挙げられる。
滑り剤の使用量は添加層のバインダー量の0.1〜50質量%であり、好ましくは0.5〜30質量%である。
【0149】
本発明において、特開2000−171935号公報、特開2001−83679号公報に記載のように予備加熱部を対向ローラーで搬送し、熱現像処理部は画像形成層を有する側をローラーの駆動により、その反対側のバック面を平滑面に滑らせて搬送する熱現像処理装置を用いる場合、現像処理温度における熱現像感光材料の画像形成層を有する側の最表面層とバック面の最表面層との摩擦係数の比は、1.5以上であり、その上限に特に制限はないが30程度である。また、μbは1.0以下、好ましくは0.05〜0.8である。この値は、下記の式によって求められる。
摩擦係数の比=熱現像機のローラー部材と画像形成層を有する面との動摩擦係数(μe)/熱現像機の平滑面部材とバック面との動摩擦係数(μb)
本発明において熱現像処理温度での熱現像処理機部材と画像形成層を有する面および/またはその反対面の最表面層の滑り性は、最表面層に滑り剤を含有させ、その添加量を変えることにより調整することができる。
【0150】
支持体の両面には、特開昭64−20544号公報、特開平1−180537号公報、特開平1−209443号公報、特開平1−285939号公報、特開平1−296243号公報、特開平2−24649号公報、特開平2−24648号公報、特開平2−184844号公報、特開平3−109545号公報、特開平3−137637号公報、特開平3−141346号公報、特開平3−141347号公報、特開平4−96055号公報、米国特許第4,645,731号明細書、特開平4−68344号公報、特許第2,557,641号公報の2頁右欄20行目〜3頁右欄30行目、特開2000−39684号公報の段落番号0020〜0037、特開2001−83679号公報の段落番号0063〜0080に記載の塩化ビニリデン単量体の繰り返し単位を70質量%以上含有する塩化ビニリデン共重合体を含む下塗り層を設けることが好ましい。
【0151】
塩化ビニリデン単量体が70質量%未満の場合は、十分な防湿性が得られず、熱現像後の時間経過における寸法変化が大きくなってしまう。また、塩化ビニリデン共重合体は、塩化ビニリデン単量体のほかの構成繰り返し単位としてカルボキシル基含有ビニル単量体の繰り返し単位を含むことが好ましい。このような繰り返し単位を含ませるのは、塩化ビニル単量体のみでは、重合体(ポリマー)が結晶化してしまい、防湿層を塗設する際に均一な膜を作り難くなり、また重合体(ポリマー)の安定化のためにはカルボキシル基含有ビニル単量体が不可欠であるからである。
本発明で用いる塩化ビニリデン共重合体の分子量は、質量平均分子量で45,000以下、さらには10,000〜45,000が好ましい。分子量が大きくなると塩化ビニリデン共重合体層とポリエステル等の支持体層との接着性が悪化してしまう傾向がある。
【0152】
本発明で用いる塩化ビニリデン共重合体の含有量は、塩化ビニリデン共重合体を含有する下塗り層の片面当たりの合計膜厚として0.3μm以上であり、好ましくは0.3μm〜4μmの範囲である。
【0153】
なお、下塗り層としての塩化ビニリデン共重合体層は、支持体に直接設層される下塗り層第1層として設けることが好ましく、通常は片面ごとに1層ずつ設けられるが、場合によっては2層以上設けてもよい。2層以上の多層構成とするときは、塩化ビニリデン共重合体量が合計で本発明の範囲となるようにすればよい。
このような層には塩化ビニリデン共重合体のほか、架橋剤やマット剤などを含有させてもよい。
【0154】
支持体は必要に応じて塩化ビニリデン共重合体層のほか、SBR、ポリエステル、ゼラチン等をバインダーとする下塗り層を塗布してもよい。これらの下塗り層は多層構成としてもよく、また支持体に対して片面または両面に設けてもよい。下塗り層の厚み(1層当たり)は一般に0.01〜5μm、より好ましくは0.05〜1μmである。
【0155】
本発明の熱現像感光材料には、種々の支持体を用いることができる。典型的な支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、硝酸セルロース、セルロースエステル、ポリビニルアセタール、シンジオタクチックポリスチレン、ポリカーボネート、両面がポリエチレンで被覆された紙支持体などが挙げられる。このうち二軸延伸したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)が強度、寸法安定性、耐薬品性などの点から好ましい。支持体の厚みは下塗り層を除いたベース厚みで90〜180μmであることが好ましい。
【0156】
本発明の熱現像感光材料に用いる支持体としては、特開平10−48772号公報、特開平10−10676号公報、特開平10−10677号公報、特開平11−65025号公報、特開平11−138648号公報に記載の二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0157】
このような熱処理後における支持体の120℃、30秒加熱による寸法変化率は縦方向(MD)が−0.03%〜+0.01%、横方向(TD)が0〜0.04%であることが好ましい。
【0158】
本発明の熱現像感光材料には、ゴミ付着の減少、スタチックマーク発生防止、自動搬送工程での搬送不良防止などの目的で、特開平11−84573号公報の段落番号0040〜0051に記載の導電性金属酸化物および/またはフッ素系界面活性剤を用いて帯電防止することができる。導電性金属酸化物としては、米国特許第5,575,957号明細書、特開平11−223901号公報の段落番号0012〜0020に記載のアンチモンでドーピングされた針状導電性酸化錫、特開平4−29134号公報に記載のアンチモンでドーピングされた繊維状酸化錫が好ましく用いられる。
【0159】
金属酸化物含有層の表面比抵抗(表面抵抗率)は25℃、相対湿度20%の雰囲気下で1012Ω以下、好ましくは1011Ω以下がよい。これにより良好な帯電防止性が得られる。このときの表面抵抗率の下限は特に制限されないが、通常107Ω程度である。
【0160】
本発明の熱現像感光材料の画像形成層を有する面およびその反対面の最外層表面の少なくとも一方、好ましくは両方のベック平滑度は、2000秒以下であり、より好ましくは10秒〜2000秒である。
本発明におけるベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
熱現像感光材料の画像形成層を有する面の最外層およびその反対面の最外層のベック平滑度は、特開平11−84573号公報の段落番号0052〜0059に記載の如く、前記両面の層に含有させるマット剤の粒子サイズおよび添加量を適宜変化させることによってコントロールすることができる。
【0161】
本発明では水溶性ポリマーが塗布性付与のための増粘剤として好ましく利用され、天然物でも合成ポリマーでもよく、その種類は特に限定されない。具体的には、天然物としてはデンプン類(コーンスターチ、デンプンなど)、海藻(寒天、アルギン酸ナトリウムなど)、植物性粘着物(アラビアゴムなど)、動物性タンパク(にかわ、カゼイン、ゼラチン、卵白など)、発酵粘着物(プルラン、デキストリンなど)などであり、半合成ポリマーであるデンプン質(可溶性デンプン、カルボキシルデンプン、デキストランなど)、セルロース類(ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)も挙げられ、さらに合成ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリビニルスルファン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、アクリル酸またはその共重合体等、マレイン酸共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸またはその共重合体など)などである。
【0162】
これらの中でも好ましく用いられる水溶性ポリマーは、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デキストラン、デキストリン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸またはその共重合体などであり、特に増粘剤として好ましく利用される。
【0163】
これらでも特に好ましい増粘剤としては、ゼラチン、デキストラン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体などである。これらの化合物は、「新・水溶性ポリマーの応用と市場」(株式会社シーエムシー発行、長友新治編集、1988年11月4日発行)に詳細に記載されている。
【0164】
増粘剤としての水溶性ポリマーの使用量は、塗布液に添加した時に粘度が上昇すれば特に限定されない。一般に液中の濃度は0.01〜30質量%、より好ましくは0.05〜20質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。これらによって得られる粘度は、初期の粘度からの上昇分として1〜200mPa・sが好ましく、より好ましくは5〜100mPa・sである。なお、粘度はB型回転粘度計で25℃で測定した値を示す。塗布液などへの添加に当たっては、一般に増粘剤はできるだけ希薄溶液で添加することが望ましい。また添加時は十分な攪拌を行なうことが好ましい。
【0165】
本発明の好ましい態様においては、画像形成層および保護層に加えて、必要に応じて中間層を設けてもよい。生産性の向上などを目的として、これらの複数の層は水系において同時重層塗布することが好ましい。塗布方式はエクストルージョン塗布、スライドビード塗布、カーテン塗布などがあるが、特開2000−2964号公報の図1に示されるスライドビード塗布方式が特に好ましい。
【0166】
ゼラチンを主バインダーとして用いるハロゲン化銀写真感光材料の場合は、コーティングダイの下流に設けられている第一乾燥ゾーンで急冷され、その結果、ゼラチンのゲル化が起こり、塗布膜は冷却固化される。冷却固化されて流動の止まった塗布膜は続く第二乾燥ゾーンに導かれ、これ以降の乾燥ゾーンで塗布液中の溶媒が揮発され、成膜される。第二乾燥ゾーン以降の乾燥方式としては、U字型のダクトからローラー支持された支持体に噴流を吹き付けるエアーループ方式や円筒状のダクトに支持体をつるまき状に巻き付けて搬送乾燥する、つるまき方式(エアーフローティング方式)などが挙げられる。
【0167】
バインダーの主成分がポリマーラテックスである塗布液を用いて層形成を行うときには、急冷では塗布液の流動を停止させることができないため、第一乾燥ゾーンのみでは予備乾燥が不十分である場合もある。この場合は、ハロゲン化銀写真感光材料で用いられている様な乾燥方式では流れムラや乾燥ムラが生じ、塗布面状に重大な欠陥を生じやすい。
【0168】
本発明における好ましい乾燥方式は、特開2000−2964号公報に記載されているような第一乾燥ゾーン、第二乾燥ゾーンを問わず、少なくとも恒率乾燥が終了するまでの間は水平乾燥ゾーンで乾燥させる方式である。塗布直後から水平乾燥ゾーンに導かれるまでの支持体の搬送は、水平搬送であってもなくてもどちらでもよく、塗布機の水平方向に対する立ち上がり角度は0〜70°の間にあればよい。また、本発明における水平乾燥ゾーンとは、支持体が塗布機の水平方向に対して上下に±15°以内に搬送されればよく、水平搬送を意味するものではない。
【0169】
本発明における恒率乾燥とは、液膜温度が一定で流入する熱量全てが溶媒の蒸発に使用される乾燥過程を意味する。減率乾燥とは、乾燥末期になると種々の要因(水分移動の材料内部拡散が律速になる、蒸発表面の後退など)により乾燥速度が低下し、与えられた熱が液膜温度上昇にも使用される乾燥過程を意味する。恒率過程から減率過程に移行する限界含水率は200〜300%である。恒率乾燥が終了する時には、流動が停止するまで十分乾燥が進むため、ハロゲン化銀写真感光材料の様な乾燥方式も採用することができるが、本発明においては恒率乾燥後も最終的な乾燥点まで水平乾燥ゾーンで乾燥させることが好ましい。
【0170】
画像形成層および/または保護層を形成する時の乾燥条件は、恒率乾燥時の液膜表面温度がポリマーラテックスの最低造膜温度(MTF;通常ポリマーのガラス転移温度Tgより3〜5℃高い)以上にすることが好ましい。通常は製造設備の制限より25℃〜40℃にすることが多い。また、減率乾燥時の乾球温度は支持体のTg未満の温度(PETの場合通常80℃以下)が好ましい。本明細書における液膜表面温度とは、支持体に塗布された塗布液膜の溶媒液膜表面温度を言い、乾球温度とは乾燥ゾーンの乾燥風の温度を意味する。
【0171】
恒率乾燥時の液膜表面温度が低くなる条件で乾燥した場合、乾燥が不十分になりやすい。このため特に保護層の造膜性が著しく低下し、膜表面に亀裂が生じやすくなる。また、膜強度も弱くなり、露光機や熱現像機での搬送中に傷がつきやすくなるなどの重大な問題が生じやすくなる。
【0172】
一方、液膜表面温度が高くなる条件で乾燥した場合は、主としてポリマーラテックスから構成される保護層は速やかに皮膜を形成するが、その一方で画像形成層などの下層は流動性が停止していないので、表面に凹凸が発生しやすくなる。また、支持体(ベース)にTgよりも高い過剰の熱がかかると、感光材料の寸度安定性、耐巻き癖性も悪くなる傾向にある。
【0173】
下層を塗布乾燥してから上層を塗布する逐次塗布においても同様であるが、特に、下層の乾燥前に上層を塗布して、両層を同時に乾燥する同時重層塗布を行うための塗布液物性としては、画像形成層の塗布液と保護層の塗布液とのpH差が2.5以下であることが好ましく、このpH差は小さい程好ましい。塗布液のpH差が大きくなると塗布液界面でミクロな凝集が生じやすくなり、長尺連続塗布時に塗布筋などの重大な面状故障が発生しやすくなる。
【0174】
画像形成層の塗布液粘度は25℃で15〜100mPa・sが好ましく、さらに好ましくは30〜70mPa・sである。一方、保護層の塗布液粘度は25℃で5〜75mPa・sが好ましく、さらに好ましくは20〜50mPa・sである。これらの粘度はB型粘度計によって測定される。
【0175】
乾燥後の巻取りは温度20〜30℃、相対湿度45±20%の条件下で行うことが好ましく、巻き姿はその後の加工形態に合わせ画像形成層側の面を外側にしてもよいし、内側にしてもよい。また、加工形態がロール品の場合は巻き姿で発生したカールを除去するために加工時に巻き姿とは反対側に巻いたロール形態にすることも好ましい。なお、感光材料の相対湿度は20〜55%(25℃測定)の範囲で制御されることが好ましい。
【0176】
ハロゲン化銀を含みゼラチンを基体とする粘性液である従来の写真乳剤塗布液は、通常加圧送液するだけで気泡が液中に溶解、消滅してしまい、塗布時に大気圧下に戻されても気泡が析出するようなことはほとんどない。ところが、本発明で好ましく用いられる有機銀塩分散物とポリマーラテックスなどを含む画像形成層塗布液の場合は、加圧送液だけでは脱泡が不十分になりやすいため、気液界面が生じないようにして送液しながら超音波振動を与え脱泡することが好ましい。
【0177】
本発明において塗布液の脱泡は、塗布液を塗布される前に減圧脱気し、さらに1.5kg/cm2以上の加圧状態に保ち、かつ気液界面が生じないようにして連続的に送液しながら超音波振動を与える方式が好ましい。具体的には、特公昭55−6405号公報(4頁20行から7頁11行)に記載されている方式が好ましい。このような脱泡を行う装置として、特開2000−98534号公報の実施例と図3に示される装置を好ましく用いることができる。
【0178】
加圧条件としては、1.5kg/cm2以上が好ましく、1.8kg/cm2以上がより好ましい。その上限に特に制限はないが、通常5kg/cm2程度である。与えられる超音波の音圧は0.2V以上、好ましくは0.5V〜3.0Vであり、一般的に音圧は高い方が好ましいが、音圧が高すぎるとキャピテーションにより部分的に高温状態になりカブリの発生原因となる。周波数は特に制約はないが、通常10kHz以上、好ましくは20kHz〜200kHzである。なお、減圧脱気は、タンク内(通常、調液タンクもしくは貯蔵タンク)を密閉減圧し、塗布液中の気泡径を増大させ、浮力をかせぎ脱気させることを指し、減圧脱気の際の減圧条件は−200mmHgないしそれより低い圧力条件、好ましくは−250mmHgないしそれより低い圧力条件とし、その最も低い圧力条件は特に制限はないが通常−800mmHg程度である。減圧時間は30分以上、好ましくは45分以上であり、その上限は特に制限されない。
【0179】
本発明において、画像形成層、画像形成層の保護層、下塗層およびバック層には特開平11−84573号公報の段落番号0204〜0208、特開2001−83679号公報の段落番号0240〜0241に記載の如くハレーション防止などの目的で、染料を含有させることができる。
【0180】
画像形成層には色調改良、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料を用いることができる。画像形成層に用いる染料および顔料はいかなるものでもよいが、例えば特開平11−119374号公報の段落番号0297に記載されている化合物を用いることができる。これらの染料の添加法としては、溶液、乳化物、固体微粒子分散物、高分子媒染剤に媒染された状態などいかなる方法でもよい。これらの化合物の使用量は目的の吸収量によって決められるが、一般的に1m2当たり1×10−6g〜1gの範囲で用いることが好ましい。
【0181】
本発明でハレーション防止染料を使用する場合、該染料は所望の範囲で目的の吸収を有し、処理後に可視領域での吸収が充分少なく、上記バック層の好ましい吸光度スペクトルの形状が得られればいかなる化合物でもよい。例えば特開平11−119374号公報の段落番号0300に記載されている化合物を用いることができる。また、ベルギー特許第733,706号明細書に記載されるように染料による濃度を加熱による消色で低下させる方法、特開昭54−17833号公報に記載されるように光照射による消色で濃度を低下させる方法等を用いることもできる。
【0182】
本発明の熱現像感光材料が熱現像後において、PS版により刷版を作製する際にマスクとして用いられる場合、熱現像後の熱現像感光材料は、製版機においてPS版に対する露光条件を設定するための情報や、マスク原稿およびPS版の搬送条件等の製版条件を設定するための情報を画像情報として担持している。従って、前記のイラジエーション染料、ハレーション染料、フィルター染料の濃度(使用量)は、これらを読み取るために制限される。これら情報はLEDあるいはレーザーによって読み取られるため、センサーの波長域のDmin(最低濃度)が低い必要があり吸光度が0.3以下である必要がある。例えば、富士写真フイルム(株)社製、製版機S−FNRIIIはトンボ検出のための検出器およびバーコードリーダーとして670nmの波長の光源を使用している。また、清水製作社製、製版機APMLシリーズのバーコードリーダーとして670nmの光源を使用している。すなわち670nm付近のDmin(最低濃度)が高い場合にはフィルム上の情報が正確に検出できず搬送不良、露光不良など製版機で作業エラーが発生する。従って、670nmの光源で情報を読み取るためには670nm付近のDminが低い必要があり、熱現像後の660〜680nmの吸光度が0.3以下である必要がある。より好ましくは0.25以下である。その下限に特に制限はないが、通常は0.10程度である。
【0183】
本発明において、像様露光に用いられる露光装置は、好ましくは露光時間が10−7秒以下の露光が可能な装置であればいずれでもよいが、一般的にはレーザダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)を光源に使用した露光装置が好ましく用いられる。特に、LDは高出力、高解像度の点でより好ましい。これらの光源は目的波長範囲の電磁波スペクトルの光を発生することができるものであればいずれでもよい。例えばLDであれば、色素レーザー、ガスレーザー、固体レーザー、半導体レーザーなどを用いることができる。
【0184】
本発明における露光は光源の光ビームをオーバーラップさせて露光する。オーバーラップとは副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えばビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表わしたとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が0.2以上であることが好ましい。
【0185】
本発明に使用する露光装置の光源の走査方式は特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、高出力が得られ、書き込み時間が短くなるという点でレーザーヘッドを2機以上搭載するマルチチャンネルが好ましい。特に、円筒外面方式の場合にはレーザーヘッドを数機から数十機以上搭載するマルチチャンネルが好ましく用いられる。
【0186】
本発明の熱現像感光材料は露光時のヘイズが低く、干渉縞が発生しやすい傾向にある。この干渉縞の発生防止技術としては、特開平5−113548号公報などに開示されているレーザー光を感光材料に対して斜めに入光させる技術や、国際公開WO95/31754号公報などに開示されているマルチモードレーザーを利用する方法が知られており、これらの技術を用いることが好ましい。
【0187】
本発明に用いる画像形成方法の加熱現像工程はいかなる方法であってもよいが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。用いられる熱現像機の好ましい態様としては、熱現像感光材料をヒートローラーやヒートドラムなどの熱源に接触させるタイプとして特公平5−56499号公報、特開平9−292695号公報、特開平9−297385号公報および国際公開WO95/30934号公報に記載の熱現像機、非接触型のタイプとして特開平7−13294号公報、国際公開WO97/28489号公報、同97/28488号公報および同97/28487号公報に記載の熱現像機がある。特に好ましい態様としては非接触型の熱現像機である。好ましい現像温度としては80〜250℃であり、さらに好ましくは100〜140℃である。現像時間としては1〜180秒が好ましく、5〜90秒がさらに好ましい。ラインスピードは140cm/min以上、さらには150cm/min以上が好ましい。
【0188】
熱現像時における熱現像感光材料の寸法変化による処理ムラを防止する方法として、80℃以上115℃未満の温度で画像が出ないようにして、5秒以上加熱した後、110℃〜140℃で熱現像して画像形成させる方法(いわゆる多段階加熱方法)を採用することが有効である。
【0189】
本発明の熱現像感光材料を熱現像処理するとき、110℃以上の高温にさらされるため、該材料中に含まれている成分の一部、あるいは熱現像による分解成分の一部が揮発してくる。これらの揮発成分は現像ムラの原因になったり、熱現像機の構成部材を腐食させたり、温度の低い場所で析出し異物として画面の変形を引起こしたり、画面に付着して汚れとなる種々の悪い影響があることが知られている。これらの影響を除くための方法として、熱現像機にフィルターを設置し、また熱現像機内の空気の流れを最適に調整することが知られている。これらの方法は有効に組み合わせて利用することができる。
【0190】
国際公開WO95/30933号公報、同97/21150号公報、特表平10−500496号公報には、結合吸収粒子を有し揮発分を導入する第一の開口部と排出する第二の開口部とを有するフィルターカートリッジを、フィルムと接触して加熱する加熱装置に用いることが記載されている。また、国際公開WO96/12213号公報、特表平10−507403号公報には、熱伝導性の凝縮捕集器とガス吸収性微粒子フィルターを組み合わせたフィルターを用いることが記載されている。本発明ではこれらを好ましく用いることができる。
【0191】
また、米国特許第4,518,845号明細書、特公平3−54331号公報には、フィルムからの蒸気を除去する装置とフィルムを伝熱部材へ押圧する加圧装置と伝熱部材を加熱する装置とを有する構成が記載されている。また、国際公開WO98/27458号には、フィルムから揮発するカブリを増加させる成分をフィルム表面から取り除くことが記載されている。これらについても本発明では好ましく用いることができる。
【0192】
本発明の熱現像感光材料の熱現像処理に用いられる熱現像機の一構成例を図1に示す。図1は熱現像機の側面図を示したものである。図1の熱現像機は熱現像感光材料10を平面状に矯正および予備加熱しながら加熱部に搬入する搬入ローラー対11(上部ローラーはシリコンゴムローラーで、下部ローラーがアルミ製のヒートローラー)と熱現像後の熱現像感光材料10を平面状に矯正しながら加熱部から搬出する搬出ローラー対12を有する。熱現像感光材料10は搬入ローラー対11から搬出ローラー対12へと搬送される間に熱現像される。この熱現像中の熱現像感光材料10を搬送する搬送手段は画像形成層を有する面が接触する側に複数のローラー13が設置され、その反対側のバック面が接触する側には不織布(例えば芳香族ポリアミドやテフロンから成る)等が貼り合わされた平滑面14が設置される。熱現像感光材料10は画像形成層を有する面に接触する複数のローラー13の駆動により、バック面を平滑面14の上に滑らせながら搬送される。ローラー13の上部および平滑面14の下部には、熱現像感光材料10の両面から加熱されるように加熱ヒーター15が設置される。この場合の加熱手段としては板状ヒーター等が挙げられる。ローラー13と平滑面14とのクリアランスは平滑面の部材により異なるが、熱現像感光材料10が搬送できるクリアランスに適宜調整される。好ましくは0〜1mmである。
【0193】
ローラー13の表面の材質および平滑面14の部材は、高温耐久性があり、熱現像感光材料10の搬送に支障がなければ何でもよいが、ローラー表面の材質はシリコンゴム、平滑面の部材は芳香族ポリアミドまたはテフロン(PTFE)製の不織布が好ましい。加熱手段としては複数のヒーターを用い、それぞれ加熱温度を自由に設定することが好ましい。
【0194】
なお、加熱部は、搬入ローラー対11を有する予備加熱部Aと、加熱ヒーター15を備えた熱現像加熱部Bとで構成されるが、熱現像処理部Bの上流の予備加熱部Aは、熱現像温度よりも低く(例えば10〜30℃程度低く)、熱現像感光材料10中の水分量を蒸発させるのに十分な温度および時間に設定することが望ましく、熱現像感光材料10の支持体のガラス転移温度(Tg)よりも高い温度で、現像ムラが出ないように設定することが好ましい。予備加熱部と熱現像処理部の温度分布としては±1℃以下が好ましく、さらには±0.5℃以下が好ましい。
また、熱現像処理部Bの下流にはガイド板16が設置され、搬出ローラー対12とガイド板16とを有する徐冷部Cが設置される。
ガイド板16は熱伝導率の低い素材が好ましく、熱現像感光材料10に変形が起こらないようにするために冷却は徐々に行うのが好ましく、冷却速度としては、0.5〜10℃/秒が好ましい。
【0195】
以上、図示例に従って説明したが、これに限らず、例えば特開平7−13294号公報に記載のものなど、本発明に用いる熱現像機は種々の構成のものであってもよい。また、本発明において好ましく用いられる多段加熱方法の場合は、上述のような装置において、加熱温度の異なる熱源を2個以上設置し、連続的に異なる温度で加熱するようにすればよい。
【0196】
【実施例】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0197】
<実施例1> 界面活性剤組成物の調製
(1)1,4−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)ブテンジオエートの合成
無水マレイン酸90.5g(0.924mol)、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノール500g(1.89mol)、p−トルエンスルホン酸一水和物17.5g(0.09mol)をトルエン250mL中、ディーンスタークを使用し、生成する水を留去しながら8時間加熱還流した。その後、室温まで冷却し、トルエンを追加し、水で有機相を洗浄し、溶媒を減圧留去して透明の液体として目的物を484g(収率86%)得た。
【0198】
(2)FS−1を主成分とする界面活性剤組成物FS−1Aの調製
1,4−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)ブテンジオエート514g(0.845mol)、亜硫酸水素ナトリウム91.0g(0.875mol)、水−エタノール(1/1(v/v))500mlを加え、6時間加熱還流した後、酢酸エチル1.5L、飽和塩化ナトリウム水溶液500mLを加え、抽出操作を行った。有機相を回収し、硫酸ナトリウム100gを添加し、脱水操作を行った。硫酸ナトリウムを濾過で除き、濾液を濃縮した後、アセトン2.5Lを加え、加熱した。不溶解物を濾過で除いた後、0℃まで冷却し、ゆっくりとアセトニトリル2.5Lを添加した。析出した固体をろ過回収し、得られた結晶を80℃で減圧乾燥し、白色の結晶として目的化合物を478g(収率79%)得た。これを界面活性剤組成物FS−1Aとした。
【0199】
(3)界面活性剤組成物FS−1Aの分析
▲1▼ 界面活性剤組成物FS−1Aの1H−NMRスペクトルを測定した結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(DMSO−d6):δ2.49−2.62(m,4H),2.85−2.99(m,2H),3.68(dd,1H),4.23−4.35(m,4H)
▲2▼ イオン交換水を用いて界面活性剤組成物FS−1Aの1質量%水溶液を調製し、25℃で東亜電波工業(株)製電気伝導率計CM−30Gにて電気伝導度を測定した。結果は、222μS/cmであった。
【0200】
▲3▼ 溶離液A(水/リン酸/トリエチルアミン=100/0.1/0.1)と溶離液B(AR/水/リン酸/トリエチルアミン=90/10/0.1/0.1)の30/70混合液を調製し、この混合液に界面活性剤組成物FS−1Aを溶解した。この溶液10μLを注入してHPLCを実施した。HPLCのカラムはTosoh TSKgel ODS 80TM(4.6min×150mm)を用い、流量は1mL/min、カラム温度は40℃、検出波長は210nmとし、リンス液はAR/水(6/4)を用いた。表1に記載されるタイムプログラムで測定を実施した場合は、溶出時間6.3分にFS−1が溶出し、溶出時間27.6分に1,4−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)ブテンジオエートが溶出する。表2に記載されるタイムプログラムで測定を実施した場合は、溶出時間10.8分にp−トルエンスルホン酸が溶出し、溶出時間28.9分に下記の構造を有する不純物FS−1−Sが溶出し、42.9分にFS−1が溶出する。
HPLC分析の結果、不純物としてp−トルエンスルホン酸が0.06質量%検出された。
【0201】
【表1】
【0202】
【表2】
【0203】
【化25】
【0204】
<比較例1> 比較用の界面活性剤組成物の調製
(1)FS−1を主成分とする界面活性剤組成物FS−1Cの調製
実施例1(1)で調製した1,4−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)ブテンジオエート514g(0.845mol)、亜硫酸水素ナトリウム91.0g(0.875mol)、水−エタノール(1/1(v/v))500mlを加え、6時間加熱還流した後、酢酸エチル500mL、飽和塩化ナトリウム水溶液250mLを加え、抽出操作を行った。有機相を回収し、硫酸ナトリウム20gを添加し、脱水操作を行った。硫酸ナトリウムを濾過で除き、濾液を濃縮した後、アセトン2.5Lを加え、加熱した。不溶解物を濾過で除いた後、0℃まで冷却し、ゆっくりとアセトニトリル2.5Lを添加した。析出した固体をろ過回収し、得られた結晶を80℃で減圧乾燥し、白色の結晶として目的化合物を435g(収率71%)得た。これを界面活性剤組成物FS−1Cとした。
(2)界面活性剤組成物FS−1Cの分析
実施例1(3)と同じ方法により界面活性剤組成物FS−1Cの電気伝導度を測定したところ760μS/cmであった。また、実施例1(3)と同じ方法により界面活性剤組成物FS−1CのHPLC分析を行ったところ、不純物としてp−トルエンスルホン酸が0.09質量%、不純物FS−1−Sが0.52質量%検出された。
【0205】
<実施例2> 界面活性剤組成物の調製
(1)イタコン酸 ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)の合成
イタコン酸52.0g(0.40mol)、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキサノール222g(0.82mol)、p−トルエンスルホン酸一水和物3.8g(0.04mol)をトルエン110mL中、生成する水を留去しながら8時間加熱還流した。その後、室温まで冷却し、水で有機相を洗浄し、溶媒を減圧留去して透明の液体として目的物を228g(収率92%)得た。
【0206】
(2)FS−7含有組成物の調製
イタコン酸 ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)400g(0.643mol)、亜硫酸水素ナトリウム70.24g(0.675mol)、水、450mL、イソプロパノール450mlを加え、3時間加熱還流した後、ゆっくりとアセトニトリル2Lに添加した。析出した固体をろ過回収し、得られた結晶を80℃で減圧乾燥し、白色の結晶としてFS−7を416g(収率89%)得た。
【0207】
(3)FS−7含有組成物の分析
得られたFS−7含有組成物の1H−NMRデータは以下の通りであった。
1H−NMR(DMSO−d6):δ2.50−2.85(m,7H+DMSO),3.04−3.20(m,2H),4.28(m,4H)
実施例1(3)と同じ方法によりFS−7含有組成物の電気伝導度を測定したところ465μS/cmであった。また、実施例1(3)と同じ方法によりFS−7含有組成物のHPLC分析を行ったところ、不純物としてp−トルエンスルホン酸が0.19質量%、イタコン酸 ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)が0.1質量%、不純物FS−7−Sが3.1質量%検出された。
【0208】
【化26】
【0209】
<実施例3> 界面活性剤組成物の調製
(1)イタコン酸 ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)の合成
イタコン酸3.41g(26.2mmol)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクタノール20.0g(55mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物0.50g(2.6mmol)をトルエン10mL中、生成する水を留去しながら外温を120℃で1時間、135℃で4時間加熱還流した。その後、室温まで冷却し、水20mLで有機相を洗浄し、溶媒を減圧留去して白色の固体として目的物を17.8g(収率83%)得た。
【0210】
(2)FS−8含有組成物の調製
イタコン酸 ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)17.8g(21.7mmol)、亜硫酸水素ナトリウム2.37g(22.7mmol)、水−イソプロパノール(1/1(v/v))20mlを加え、7時間加熱還流した後、室温まで冷却し、ゆっくりとアセトニトリル300mLを添加した。析出した固体をろ過回収し、得られた結晶を80℃で減圧乾燥し、白色の結晶としてFS−8含有組成物を12.3g(収率61%)得た。
【0211】
(3)FS−8含有組成物の分析
得られたFS−8含有組成物の1H−NMRデータは以下の通りであった。
1H−NMR(DMSO−d6):δ2.52−2.65(m,4H+DMSO),2.70−3.00(m,2H),3.06−3.15(m,2H),4.28(m,2H)
実施例1(3)と同じ方法によりFS−8含有組成物の電気伝導度を測定したところ512μS/cmであった。また、実施例1(3)と同じ方法によりFS−8含有組成物のHPLC分析を行ったところ、不純物としてp−トルエンスルホン酸が0.12質量%、イタコン酸 ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)が0.1質量%検出された。
【0212】
<実施例4> 界面活性剤組成物の調製
(1)イタコン酸 ビス(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)の合成
イタコン酸10.0g(76mmol)、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール37.1g(160mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物1.4g(7.6mmol)をトルエン30mL中、生成する水を留去しながら外温120℃で1時間、次いで135℃で5時間加熱還流した。その後、室温まで冷却し、酢酸エチル(100mL)を追加し、水で有機相を洗浄し、溶媒を減圧留去して透明の液体として目的物を32.0g(収率75%)得た。
【0213】
(2)FS−43含有組成物の調製
イタコン酸 ビス(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)28.5g(51.1mmol)、亜硫酸水素ナトリウム5.6g(53.7mol)、水−イソプロパノール(1/1(v/v))30mlを加え、4時間加熱還流した後、酢酸エチル90mL、飽和塩化ナトリウム水溶液15mLを加え、抽出操作を行った。有機相を回収し、硫酸ナトリウム50gを添加し、脱水操作を行った。硫酸ナトリウムを濾過で除き、濾液を濃縮した後、クロロホルム100mLを添加し40℃に加熱した。その後、室温に冷却し、析出した固体をろ過回収し、得られた結晶を80℃で減圧乾燥し、白色の結晶としてFS−43含有組成物を20.7g(収率61%)得た。
【0214】
(3)FS−43含有組成物の分析
得られたFS−43含有組成物の1H−NMRデータは以下の通りであった。1H−NMR(DMSO−d6):δ2.47−2.50(m,1H+DMSO),2.61−2.73(m,2H),2.98−3.04(m,2H),4.53(t,4H),6.66(t,0.5H),6.99(t,1H),7.15(t,0.5H)
実施例1(3)と同じ方法によりFS−43含有組成物の電気伝導度を測定したところ492μS/cmであった。また、実施例1(3)と同じ方法によりFS−43含有組成物のHPLC分析を行ったところ、不純物としてp−トルエンスルホン酸が0.12質量%検出された。
【0215】
<試験例1> 界面活性剤組成物の溶解性試験
FS−1A、FS−1B、FS−1C、FS−1Dの各界面活性剤組成物1gを、イオン交換水10mLとメタノール10mLの混合溶媒に溶解させた。溶解後に溶液を15℃、20℃、25℃で保存した際の溶液の溶解経時安定性を評価した。結果を以下の表に示す。
なお、FS−1BとFS−1Dは、FS−1AとFS−1Cと同様にして、硫酸ナトリウムの添加量を調節して表3の電気伝導度となるように調製した。
【0216】
【表3】
【0217】
表3の結果が示す様に、電気伝導度が低いほど、溶解性がよいことがわかる。特に電気伝導度が760μS/cm以上である場合は、室温(25℃)でも析出が見られることが分かる。
【0218】
<実施例5> 熱現像感光材料の調製
《ハロゲン化銀乳剤Aの調製》
1液(下記成分を溶解して温度40℃にてpHを6.5に調製)
水 700ml
アルカリ処理ゼラチン(カルシウム含有量として2700ppm以下)
11g
臭化カリウム 50mg
4−メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム 1.3g
【0219】
2液
水 159ml
硝酸銀 18g
【0220】
3液
水 100ml
臭化カリウム 18g
(NH4 )2 RhCl5 (H2 O) 2.5×10−6mol/Agmol
(濃度0.004%、塩化ナトリウム20%含む水溶液で添加)
K3 IrCl6 3×10−5mol/Agmol
(濃度0.005%、塩化カリウム20%含む水溶液で添加)
なお、(NH4)2RhCl5(H2O)、K3IrCl6の添加量は、2液および4液の硝酸銀を合計した全硝酸銀に対するmol数である。
【0221】
40℃でpH6.5に調整された1液に、2液と3液をpAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で6分30秒間かけて添加した。
【0222】
さらに40℃で下記4液と5液をpAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で28分30秒間かけて添加した。
【0223】
4液
水 500ml
硝酸銀 55g
【0224】
5液
水 350ml
臭化カリウム 39g
(NH4 )2 RhCl5 (H2 O) 2.5×10−6mol/Agmol
(濃度0.004%、塩化ナトリウム20%含む水溶液で添加)
K3 IrCl6 9×10−5mol/Agmol
(濃度0.005%、塩化カリウム20%含む水溶液で添加)
なお、(NH4)2RhCl5(H2O)、K3IrCl6の添加量は、2液および4液の硝酸銀を合計した全硝酸銀に対するmol数である。
【0225】
3液および5液に用いた(NH4)2RhCl5(H2O)、K3IrCl6は、粉末をそれぞれ塩化ナトリウムまたは塩化カリウム水溶液に溶解し、40℃で120分間加熱して調製した溶液として添加した。
【0226】
その後、常法にしたがってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、pAg7.7に保ちながら下記に示すアニオン性沈降剤−1を3g加え、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pHは3.7±0.2の範囲であった)。
次に上澄み液を約2.5L除去した(第一水洗)。さらに2Lの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度上澄み液を2.5L除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作をさらに1回繰り返して(第三水洗)、水洗・脱塩行程を終了した。
【0227】
水洗・脱塩後の乳剤に平均分子量15,000の低分子量ゼラチン(カルシウム含有量として20ppm以下)51g加え、pH5.9、pAg8.0に調製した。
得られた粒子は平均粒子サイズ0.08μm、投影面積変動係数12%、(100)面比率92%、K3IrCl6を1.3×10−5mol/Agmol、(NH4)2RhCl5(H2O)を5×10−6mol/Agmol含有する立方体粒子であった。
【0228】
こうして得たハロゲン化銀乳剤に60℃で下記の各成分を添加し、最適感度を得るように化学増感を施した。
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 9×10−5mol/Agmol
ベンゼンチオスルフィン酸ナトリウム 9×10−5mol/Agmol
トリエチルチオ尿素 7×10−5mol/Agmol
その後、安定剤として4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラアザインデン6×10−4mol/Agmolと防腐剤として、化合物Aとフェノキシエタノールをそれぞれ3×10−3mol/Agmolを加えた。
【0229】
その後、40℃に温度を保ち、以下の各成分を攪拌しながら添加し、20分後に30℃に急冷してハロゲン化銀乳剤Aの調製を終了した。調製したハロゲン化銀乳剤Aは、下記の塗布液の調製に用いた。
臭化カリウム(水溶液として添加) 4.7×10−2mol/Agmol
下記増感色素A 12.8×10−4mol/Agmol
(エタノール溶液として添加)
化合物B 7.3×10−3mol/Agmol
(メタノール溶液として添加)
【0230】
【化27】
【0231】
《ベヘン酸銀分散物Aの調製》
ベヘン酸(ヘンケル社製、製品名:EdenorC22−85R)87.6g、蒸留水423ml、5mol/LのNaOH水溶液49.2ml、tert−ブチルアルコール120mlを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液を得た。別に、硝酸銀40.4gの水溶液206.2mlを用意し、10℃にて保温した。635mlの蒸留水と30mlのtert−ブチルアルコールを入れた反応容器を30℃に保温し、攪拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ62分10秒と60分かけて添加した。この時、硝酸銀水溶液添加開始後7分20秒間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液添加終了後9分30秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が上がらないようにコントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、スチームトレースにより保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるようにスチーム量をコントロールした。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は攪拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調節した。
【0232】
ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間攪拌放置し、25℃に降温した。その後、吸引濾過で固形分を濾別し、固形分を濾水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
得られたベヘン酸銀の粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均投影面積径0.52μm、平均粒子厚み0.14μm、平均球相当径の変動係数15%の鱗片状の結晶であった。
【0233】
つぎに、以下の方法でベヘン酸銀の分散物を作製した。乾燥固形分100g相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217,平均重合度:約1700)7.4gおよび水を添加し、全体量を385gとしてからホモミキサーにて予備分散した。次に予備分散済みの原液を分散機(マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、商品名:マイクロフルイダイザーM−110S−EH、G10Zインタラクションチャンバー使用)の圧力を1750kg/cm2に調節して、3回処理し、ベヘン酸銀分散物Aを得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで所望の分散温度に設定した。
【0234】
こうして得たベヘン酸銀分散物Aに含まれるベヘン酸銀粒子は体積加重平均直径0.52μm、変動係数15%の粒子であった。粒子サイズの測定は、Malvern Instruments Ltd.製MasterSizerXにて行った。また電子顕微鏡撮影により評価したところ、長辺と短辺の比が1.5、粒子厚み0.14μm、平均アスペクト比(粒子の投影面積の円相当径と粒子厚みの比)が5.1であった。得られたベヘン酸銀分散物Aは、下記の塗布液の調製に用いた。
【0235】
《還元剤の固体微粒子分散物の調製》
還元剤である1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgに、サーフィノール104E(日信化学(株)製)400gと、メタノール640g、水16kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩4gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製し、還元剤の固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.44μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、平均粒子サイズの変動係数19%であった。得られた分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、下記の塗布液の調製に用いた。
【0236】
《有機ポリハロゲン化合物Aの固体微粒子分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物A:トリブロモメチル(4−(2,4,6−トリメチルフェニルスルホニル)フェニル)スルホン10kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液639gと、サーフィノール104E(日信化学(株)製)400gと、メタノール640gと水16kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて5時間分散したのち水を加えて有機ポリハロゲン化合物Aの濃度が25質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物Aの固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.36μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、平均粒子サイズの変動係数18%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、下記の塗布液の調製に用いた。
【0237】
《有機ポリハロゲン化合物Bの固体微粒子分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物B:トリブロモメチルナフチルスルホン5kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液2.5kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液213gと、水10kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩2.5gと水を加えての有機ポリハロゲン化合物Bの濃度が23.5質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物Bの固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.38μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、平均粒子サイズの変動係数20%であった。得られた分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、下記の塗布液の調製に用いた。
【0238】
《有機ポリハロゲン化合物C水溶液の調製》
室温で攪拌しながら、水75.0ml、トリプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20%水溶液8.6ml、オルトりん酸二水素ナトリウム・2水和物の5%水溶液6.8ml、水酸化カリウムの1mol/L水溶液9.5mlを順次添加し、添加修了後5分間攪拌混合した。さらに、攪拌しながら有機ポリハロゲン化合物C(3−トリブロモメタンスルホニルベンゾイルアミノ酢酸)4.0gの粉末を添加し、溶液が透明になるまで均一に溶解させた。得られた水溶液100mlは、200メッシュのポリエステル製スクリーンにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、下記の塗布液の調製に用いた。
【0239】
《化合物Zの乳化分散物の調製》
化合物Zを85質量%含有する三光(株)製R−054を10kgとMIBK11.66kgを混合した後、窒素置換して80℃で1時間溶解した。この液に水25.52kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)20質量%水溶液12.76kgとトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.44kgを添加して、20〜40℃にて3600rpmで60分間乳化分散した。さらに、この液にサーフィノール104E(日信化学(株)製)0.08kgと水47.94kgを添加し減圧蒸留してMIBKを除去したのち、化合物Zの濃度が10質量%になるように調製した。こうして得た分散物に含まれる化合物Zの粒子はメジアン径0.19μm、最大粒子サイズ1.5μm以下、粒子サイズの変動係数17%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、下記の塗布液の調製に用いた。
【0240】
《6−イソプロピルフタラジン化合物の分散液の調製》
室温で水62.35gを攪拌しながら、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)2.0gが塊状にならない様に添加し10分間攪拌混合した。その後加熱し、内温が50℃になるまで昇温した後、内温50〜60℃の範囲で90分間攪拌し均一に溶解させた。内温を40℃以下に降温し、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−217)の10質量%水溶液25.5g、トリプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.0g、6−イソプロピルフタラジン(70質量%水溶液)7.15gを添加し、30分攪拌し透明分散液100gを得た。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、下記の塗布液の調製に用いた。
【0241】
《式(11)〜(13)の化合物の固体微粒子分散物の調製》
式(11)〜(13)の化合物である化合物4および化合物62のそれぞれ4kgに対して、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールPVA−217)を1kgと水36kgとを添加してよく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて12時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩4gと水を加えて造核剤濃度が10質量%になるように調製し、式(11)〜(13)の化合物の固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる粒子はメジアン径0.34μm、最大粒子サイズ3.0μm以下、粒子サイズの変動係数19%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、下記の塗布液の調製に用いた。
【0242】
《現像促進剤Wの固体微粒子分散物の調製》
現像促進剤W10kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液67.75kg、トリプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液1.4kg、サーフィノール104E(日信化学(株)製)135gと水32kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて9時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩13.4gと水を加えて現像促進剤Wの濃度が22.5質量%になるように調製し、現像促進剤Wの固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる粒子はメジアン径0.2μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、平均粒子サイズの変動係数18%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、下記の塗布液の調製に用いた。
【0243】
《画像形成層塗布液の調製》
上記で作製したベヘン酸銀分散物Aの銀1molに対して、以下のバインダー、素材、およびハロゲン化銀乳剤を添加して、水を加えて、画像形成層塗布液とした。完成後、減圧脱気を圧力0.54atmで45分間行った。塗布液のpHは7.7、粘度は25℃で50mPa・sであった。
【0244】
バインダー;SBRラテックス 固形分として 397g
(St/Bu/AA=68/29/3(質量%)、
重合開始剤として、Na2S2O8、中和剤として
LiOHを使用)
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−
3,5,5−トリメチルヘキサン 固形分として 149.5g
有機ポリハロゲン化合物B 固形分として 36.3g
有機ポリハロゲン化合物C 固形分として 2.34g
エチルチオスルホン酸ナトリウム 0.47g
ベンゾトリアゾール 1.02g
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−235) 10.8g
6−イソプロピルフタラジン 12.8g
化合物Z 固形分として 9.7g
現像促進剤Wの固体微粒子分散物 固形分として 5.6g
化合物4の固体微粒子分散物 固形分として 14.8g
化合物62の固体微粒子分散物 固形分として 14.8g
染料A(平均分子量15,000の低分子量ゼラチンとの混合液として添加)
783nmの光学濃度が0.3になる塗布量
(目安として固形分0.40g)
ハロゲン化銀乳剤A Ag量として0.06mol
尿素 80mg/m2
防腐剤として化合物A 塗布液中に40ppm
(塗布量として2.5mg/m2)
メタノール 塗布液中総溶媒量として 1質量%
エタノール 塗布液中総溶媒量として 2質量%
pH調整剤として、NaOHを用いてpHを調整した。
(なお、塗布膜のガラス転移温度は17℃であった。)
【0245】
【化28】
【0246】
《保護層塗布液の調製》
下記の成分を混合し、さらに水を加えて保護層塗布液(メタノール溶媒を0.8質量%含有)を調製した。完成後、0.47atmで減圧脱気を60分間行った。塗布液のpHは5.5、粘度は25℃で45mPa・sであった。
ポリマーラテックス溶液1 943g
現像促進剤Wの固体微粒子分散物 固形分として 78.1g
表4に示す界面活性剤 0.16g
有機ポリハロゲン化合物C水溶液 114.8g
有機ポリハロゲン化合物A 固形分として 17.0g
オルトリン酸二水素ナトリウム・二水和物 固形分として 0.69g
ポリスチレン粒子のマット剤 1.58g
(平均粒子サイズ7μm、平均粒子サイズの変動係数8%)
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235) 33.7g
【0247】
《下層オーバーコート層塗布液の調製》
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235) 11.5g
下記の各成分を混合し、さらに水を加えて下層オーバーコート層塗布液(メタノール溶媒を0.1質量%含有)を調製した。完成後、0.47atmで減圧脱気を60分間行った。塗布液のpHは2.6、粘度は25℃で30mPa・sであった。
ポリマーラテックス溶液2 625g
化合物C 0.23g
表4に示す界面活性剤 0.026g
化合物F 11.7g
化合物H 2.7g
ポリマーラテックス溶液1:
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/
2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/
25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液
ガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度21.5質量%、化合物Aを
100ppm含有、造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して
15質量%含有させて塗布液のガラス転移温度を24℃とした、平均粒子サ
イズ116nm
ポリマーラテックス溶液2:
平均粒子サイズが74nmである点以外は、ラテックス溶液Aと同じ
【0248】
《上層オーバーコート層塗布液の調製》
下記の各成分を混合し、さらに水を加えて上層オーバーコート層塗布液(メタノール溶媒を1.1質量%含有)を調製した。完成後、0.47atmで減圧脱気を60分間行った。塗布液のpHは5.2、粘度は25℃で25mPa・sであった。
保護層塗布液に用いたポリマーラテックス溶液 112g
下層オーバーコート層塗布液に用いたポリマーラテックス溶液 335g
カルナヴァワックス 18.0g
(中京油脂(株)製、セロゾール524:シリコーン含有量
として5ppm未満)30質量%溶液
化合物C 0.15g
表4に示す界面活性剤 1.85g
化合物G 1.0g
ポリスチレン粒子のマット剤 22.4g
(平均粒子サイズ7μm、平均粒子サイズの変動係数8%)
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235) 25.6g
【0249】
【化29】
【0250】
《バック/下塗り層のついたポリエチレンテレフタレート(PET)支持体の作製》
(1)PET支持体の作製
テレフタル酸とエチレングリコ−ルを用い、常法に従い、固有粘度IV=0.66(フェノ−ル/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のポリエチレンテレフタレ−トを得た。これをペレット化した後、130℃で4時間乾燥した後、300℃で溶融後T型ダイから押し出した後急冷し、熱固定後の膜厚が120μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。
これを周速の異なるロ−ルを用い、3.3倍に縦延伸、ついでテンタ−で4.5倍に横延伸を実施した。このときの温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後、これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後、テンタ−のチャック部をスリットした後、両端にナ−ル加工を行い、4.8kg/cm2で巻きとった。このようにして、幅2.4m、長さ3500m、厚み120μmのロ−ル状のPET支持体を得た。
【0251】
(2)下塗り層およびバック層の作製
▲1▼下塗り第一層
以下に示す組成の塗布液を9.7ml/m2となる様に支持体上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、185℃で30秒乾燥した。
【0252】
ラテックス−A 280g
KOH 0.5g
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ:2μm、平均粒子サイズの変動係数7%)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 1.8g
化合物−Bc−B 0.06g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0253】
▲2▼下塗り第二層
以下に示す組成の塗布液を8.3ml/m2となる様に下塗り第一層の上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。
【0254】
脱イオン処理ゼラチン 10g
(Ca2+含量0.6ppm、ゼリ−強度230g)
酢酸(20%水溶液) 10g
化合物−Bc−A 0.04g
メチルセルロ−ス(2%水溶液) 25g
エマレックス710(日本エマルジョン(株)製) 0.3g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0255】
▲3▼バック第一層
前記下塗り層塗布面とは反対側の面に0.375kV・A・分/m2のコロナ放電処理を施し、その面に以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となる様に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、185℃で30秒乾燥した。
【0256】
ペスレジンA520(30%水分散物、(株)製) 46g
アルカリ処理ゼラチン(分子量約10000、Ca2+含量30ppm)
4.44g
脱イオン処理ゼラチン(Ca2+含量0.6ppm)
0.84g
化合物−Bc−A 0.02g
染料−Bc−A(783nmの光学濃度として1.3〜1.4になるように調整)
目安として 0.88g
ポリオキシエチレンフェニルエ−テル 1.7g
水溶性メラミン化合物(8%水溶液) 15g
(住友化学工業(株)製、スミテックスレジンM−3)
Sbド−プSnO2 の針状粒子の水分散物 24g
(石原産業(株)製、FS−10D)
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ:2μm,平均粒子サイズの変動係数7%)
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0257】
▲4▼バック第二層
以下に示す組成の塗布液を9.7ml/m2となるようにバック第一層上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。
【0258】
ラテックス−A 280g
KOH 0.5g
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ:2μm、平均粒子サイズの変動係数7%)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン1.8g
化合物−Bc−B 0.06g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0259】
▲5▼バック第三層
以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となるようにバック第二層上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。
【0260】
脱イオン処理ゼラチン 10g
(Ca2+含量0.6ppm、ゼリー強度230g)
酢酸(20%水溶液) 10g
化合物−Bc−A 0.04g
メチルセルロ−ス(2%水溶液) 25g
エマレックス710(日本エマルジョン(株)製) 0.3g
塩化カリウム 1.0g
臭化カリウム 1.0g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0261】
▲6▼バック第四層
以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となる様にバック第三層上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。
【0262】
ジュリマ−ET410(30%水分散物、日本純薬(株)製) 23g
ケミパールS120(27%水分散物、三井石油化学(株)製)135g
アルカリ処理ゼラチン 12.7g
(分子量約10000、Ca2+含量30ppm)
化合物−Bc−B 0.6g
化合物−Bc−C 0.25g
セロゾ−ル524(30%水溶液、中京油脂(株)製) 12g
水溶性エポキシ化合物 1.8g
(ナガセ化成工業(株)製、デナコールEX521)
ポリメチルメタクリレート 7.7g
(10%水分散物、平均粒子サイズ5μm、平均粒子の変動係数7%)
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0263】
【化30】
【0264】
ラテックス−A:
コア部90質量%、シェル部10質量%のコアシェルタイプのラテックス
コア部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/
アクリロニトリル/アクリル酸=93/3/3/0.9/0.1(質量%)
シェル部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/
アクリロニトリル/アクリル酸=88/3/3/3/3(質量%)
質量平均分子量38000
ラテックス−B:
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/
2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=59/9/26/
5/1(質量%の共重合体)
【0265】
(3)搬送熱処理
(3−1)熱処理
このようにして作製したバック/下塗り層のついたPET支持体を160℃設定した全長200m熱処理ゾーンに入れ、張力2kg/cm2、搬送速度20m/分で搬送した。
(3−2)後熱処理
上記熱処理に引き続き、40℃のゾーンに15秒間通して後熱処理を行い、巻き取った。この時の巻き取り張力は10kg/cm2であった。
【0266】
《熱現像感光材料の作製》
前記下塗り第一層と下塗り第二層を塗布した側のPET支持体の下塗り層の上に、特願平10−292849号明細書の図1で開示されているスライドビート塗布方式を用いて、前記の画像形成層塗布液を塗布銀量1.5g/m2になるように塗布した。さらにその上に、前記保護層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.29g/m2になるように画像形成層塗布液と共に同時重層塗布した。その後、保護層の上に前記下層オーバーコート層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.97g/m2になるように、また、前記上層オーバーコート層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.07g/m2になるように、2つの塗布液を同時重層塗布し、熱現像感光材料を作製した。
【0267】
塗布時の乾燥は、恒率過程、減率過程とも、乾球温度70〜75℃、露点14〜25℃、液膜表面温度35〜40℃の範囲で、塗布液の流動がほぼなくなる乾燥点近傍までは水平乾燥ゾーン(塗布機の水平方向に対し支持体が1.5°〜3°の角度)で行った。乾燥後の巻取りは温度23±5℃、相対湿度45±5%の条件下で行われ、巻き姿はその後の加工形態(画像形成層面側外巻)に合わせ、画像形成層面側を外にした。なお、感光材料の包袋内の相対湿度は20〜40%(25℃測定)で、得られた熱現像感光材料の画像形成側の膜面pHは5.3、ベック平滑度は900秒であり、反対側の膜面pHは5.9、ベック平滑度は560秒であった。
【0268】
《露光処理》
作製した熱現像感光材料を、幅590mmおよび長さ59mのシート状とし、これを円筒状のコア部材に画像形成層側を外向きにして巻き付け、ロール状のサンプルとした。このロール状のサンプルを785nmの半導体レーザーを有する日本電気製FT−286Rにセットした。このプロッターと、図1に示す熱現像機とをそれぞれドッキングし、露光・熱現像処理した。
【0269】
《熱現像処理》
熱現像感光材料は、上記露光装置からオートキャリアを経て図1に示した熱現像機にオンラインで導入し、熱現像機で熱現像処理を行った。熱現像処理部のローラー表面材質はシリコンゴム、平滑面はテフロン不織布にして、熱現像処理部での搬送のラインスピードは25mm/秒に設定した。熱現像感光材料の処理時間は、予備加熱部が12.2秒(予備加熱部と熱現像処理部の駆動系は独立しており、熱現像部との速度差は−0.5%〜−1%に設定、オートキャリアの予備加熱部との速度差は0%〜−1.0%に設定、各予熱部の金属ローラーの温度設定、時間は第1ローラー温度67℃、2.0秒、第2ローラー温度82℃、2.0秒、第3ローラー温度98℃、2.0秒、第4ローラー温度107℃、2.0秒、第5ローラー温度115℃、2.0秒、第6ローラー温度120℃、2.0秒にした)、熱現像処理部(熱現像感光材料面温度120℃)が17.2秒、徐冷部が13.6秒とした。なお、幅方向の温度精度は±0.5℃であった。各ローラー温度の設定は熱現像感光材料の幅(例えば幅61cm)よりも両側それぞれ5cm長くして、その部分にも温度をかけて、温度精度が出るようにした。なお、各ローラーの両端部分は温度低下が激しいので、熱現像感光材料の幅よりも5cm長くした部分はローラー中央部よりも1〜3℃温度が高くなるように設定し、熱現像感光材料(例えば幅61cmの中で)の画像濃度が均質な仕上がりになるように留意した。
【0270】
《評価》
(1)Dmax(最高濃度)の評価
25℃、相対湿度80%の環境で16時間放置した熱現像感光材料を、その環境下で露光、熱現像処理し175線/インチの50%網点が得られる露光量と同一の露光量にて、25℃、相対湿度40%環境下で16時間放置した熱現像感光材料をその環境下で露光、熱現像処理した場合に得られる画像のDmax(最高濃度)で評価した。濃度測定はマクベスTD904濃度計(可視濃度)により行った。3.5以上であることが好ましく、3.0以下では実用に耐えない。
【0271】
(2)面質の評価
面質ははじきの発生頻度で評価した。はじき発生の強制条件として、上層オーバーコート層塗布液に添加される界面活性剤の添加量を1/10にしたサンプルを作製した。作製されたサンプルを曝光後、上記熱現像処理を行い、黒ベタサンプルを作製し、面積にして37m2相当のサンプルについてはじき個数を検査し、1m2あたりの個数に換算した。
【0272】
《結果》
作製した熱現像感光材料の各試料について上記評価を実施した結果を表4に示す。
【0273】
【表4】
【0274】
表4に示す結果から明らかなように、本発明の構成を有する熱現像感光材料は、Dmaxが高く、はじき発生数が少なくて面質が優れていることがわかる。
【0275】
<実施例6> 熱現像感光材料の調製
実施例5で使用したサンプルを日本電気製のA2サイズプロッターFT−286R、富士フイルム株式会社製のドライフイルムプロセサーFDS−6100XおよびドライシステムオートキャリアFDS−C1000を用いて、露光、熱現像処理を行い、同様の評価を行なった。その結果、実施例5と同様な結果が得られ、本発明の効果が明らかであった。
【0276】
<実施例7>
実施例5に記載の画像形成層塗布液、保護層塗布液、下層オーバーコート層塗布液、上層オーバーコート層塗布液を用い、さらに下記の支持体を用いたこと以外は実施例5と同様に熱現像感光材料を作製し、評価を行った。その結果、実施例5と同様な結果が得られ、本発明の効果が明らかであった。
【0277】
《バック/下塗り層のついたポリエチレンテレフタレート(PET)支持体の作製》
(1)PET支持体の作製
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い、固有粘度IV=0.66(フェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化して、130℃で4時間乾燥した後、300℃で溶融後T型ダイから押し出した。その後急冷し、熱固定後の膜厚が120μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。
これを周速の異なるロールを用い、110℃で3.3倍に縦延伸し、ついでテンターを用いて130℃で4.5倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定した後、同じ温度で横方向に4%緩和した。この後、テンターのチャック部をスリットした後、両端にナール加工を行い、4.8kg/cm2で巻きとった。このようにして、幅2.4m、長さ3500m、厚み120μmのロール状のPET支持体を得た。
【0278】
(2)下塗り層およびバック層の作製
▲1▼下塗り第一層
上記PET支持体に0.375kV・A・分/m2のコロナ放電処理を施した後、以下に示す組成の塗布液を6.2ml/m2となる様に支持体上に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに185℃で30秒乾燥した。
【0279】
ラテックス−A 280g
KOH 0.5g
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ2μm、平均粒子サイズの変動係数7%)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 1.8g
化合物−Bc−E 0.097g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0280】
▲2▼下塗り第二層
以下に示す組成の塗布液を5.5ml/m2となる様に下塗り第一層の上に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに170℃で30秒乾燥した。
【0281】
脱イオン処理ゼラチン 10g
(Ca2+含量0.6ppm、ゼリー強度230g)
酢酸(20質量%水溶液) 10g
化合物−Bc−A 0.04g
メチルセルロース(2質量%水溶液) 25g
ポリエチレンオキシ化合物 0.3g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0282】
▲3▼バック第一層
前記下塗り層塗布面とは反対側の面に0.375kV・A・分/m2のコロナ放電処理を施し、その面に以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となる様に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに185℃で30秒乾燥した。
【0283】
ジュリマーET410 23g
(30質量%水分散物、日本純薬(株)製)
アルカリ処理ゼラチン(分子量約10000、
Ca2+含量30ppm) 4.44g
脱イオン処理ゼラチン(Ca2+含量0.6ppm) 0.84g
化合物−Bc−A 0.02g
染料−Bc−A
(783nmの光学濃度として1.3〜1.4になるように調整)
目安として0.88g
ポリオキシエチレンフェニルエーテル 1.7g
水溶性メラミン化合物(住友化学工業(株)製、
スミテックスレジンM−3、8質量%水溶液) 15g
SbドープSnO2 の針状粒子の水分散物 24g
(石原産業(株)製、FS−10D)
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ2μm、平均粒子サイズの変動係数7%)
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0284】
▲4▼バック第二層
以下に示す組成の塗布液を5.5ml/m2となる様にバック第一層上に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに170℃で30秒乾燥した。
【0285】
ジュリマーET410 57.5g
(30質量%水分散物、日本純薬(株)製)
ポリオキシエチレンフェニルエーテル 1.7g
水溶性メラミン化合物(住友化学工業(株)製、
スミテックスレジンM−3、8質量%水溶液) 15g
セロゾール524(30質量%水溶液、中京油脂(株)製) 6.6g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0286】
▲5▼バック第三層
下塗り第一層と同じ塗布液を6.2ml/m2となる様にバック第二層上に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに185℃で30秒乾燥した。
【0287】
▲6▼バック第四層
以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となる様にバック第三層上に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに170℃で30秒乾燥した。
【0288】
ラテックス−B 286g
化合物−Bc−D 2.7g
化合物−Bc−E 0.6g
化合物−Bc−F 0.2g
化合物E 0.3g
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシーs−トリアジン 2.5g
ポリメチルメタクリレート(10質量%水分散物、
平均粒子サイズ5μm、平均粒子の変動係数7%) 7.7g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0289】
【化31】
【0290】
(3)搬送熱処理
(3−1)熱処理
このようにして作製したバック/下塗り層のついたPET支持体を、160℃に設定した全長200m熱処理ゾーンに入れ、張力2kg/cm2、搬送速度20m/分で搬送した。
(3−2)後熱処理
上記熱処理に引き続き、40℃のゾーンに15秒間通して後熱処理を行い、巻き取った。この時の巻き取り張力は10kg/cm2であった。
【0291】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱現像感光材料の熱現像処理に用いられる熱現像機の一構成例を示す側面図である。
【符号の説明】
10 熱現像感光材料
11 搬入ローラー対
12 搬出ローラー対
13 ローラー
14 平滑面
15 加熱ヒーター
16 ガイド板
A 予備加熱部
B 熱現像処理部
C 徐冷部
Claims (5)
- 下記一般式(1)で表される化合物を90質量%以上含有する固体状の界面活性剤組成物であって、該界面活性剤組成物を水に1質量%溶解させたときの電気伝導度が150〜750μS/cmである界面活性剤組成物。
- 請求項1に記載の一般式(1)で表わされる化合物を、水およびアルコールから選択される単独溶媒または混合溶媒に溶解させた界面活性剤溶液。
- 請求項1に記載の一般式(1)で表わされる化合物を少なくとも1種含有する水性塗布組成物。
- 支持体上に少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀乳剤層を含む1以上の層を有するハロゲン化銀写真感光材料であって、支持体上に形成された層の少なくとも1層中に請求項1に記載の一般式(1)で表わされる化合物を少なくとも1種含有するハロゲン化銀写真感光材料。
- 支持体上に少なくとも感光性ハロゲン化銀、還元可能な銀塩、還元剤、バインダーおよび、請求項1に記載の一般式(1)で表わされる化合物を少なくとも1種含有する熱現像感光材料。
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-
2002
- 2002-08-09 JP JP2002233746A patent/JP2004075717A/ja active Pending
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KR100813483B1 (ko) * | 2007-01-04 | 2008-03-13 | 김재명 | 여지초의 에탄올 용해 유용성분의 추출방법 및 그 추출물 |
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