JP2004125484A - キャスク、バスケットおよびバスケットユニットの製造方法 - Google Patents
キャスク、バスケットおよびバスケットユニットの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】メンテナンス時のバスケットの取り出し、取り入れ作業が効率的に行うことができる放射性物質の輸送や貯蔵用キャスクと、中性子吸収能が均一なバスケットユニット化されたバスケットを提供すること。
【解決手段】使用済み核燃料を所定位置に収納するための格子状断面を有するバスケット130と、耐圧を受け持つ胴本体101とその周囲を取り巻く中性子遮蔽体とを有し、バスケット130を内部に収納する中空のキャスク本体とを備えたキャスク100であって、バスケット130は、複数のバスケットセル131の集合体から構成され、この集合体の少なくとも一部がユニット化されたバスケットユニットA,Bを含む。
【選択図】 図1
【解決手段】使用済み核燃料を所定位置に収納するための格子状断面を有するバスケット130と、耐圧を受け持つ胴本体101とその周囲を取り巻く中性子遮蔽体とを有し、バスケット130を内部に収納する中空のキャスク本体とを備えたキャスク100であって、バスケット130は、複数のバスケットセル131の集合体から構成され、この集合体の少なくとも一部がユニット化されたバスケットユニットA,Bを含む。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子力関連設備や放射性物質の輸送や貯蔵用として使用するキャスクの改良およびこのキャスク内に装荷される使用済み核燃料を収容するためのバスケットに関する。さらに、このバスケットを構成するバスケットユニットの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、キャスクはその構成としてキャスク本体の内側に胴本体、外側に外筒、該胴本体と該外筒との間の熱伝導を行う内部フィンと、使用済み核燃料を収容するバスケットセルの集合体であるバスケットを有している。中性子などの放射線を発する使用済み核燃料の収容用の断面が正方形の角パイプのバスケットセルとしては、中性子吸収能を有するB(ホウ素)添加したAlまたはAl合金(以下、アルミニウム合金という)が用いられている。
【0003】
バスケットセルの製造方法としては、ホウ素を添加したアルミニウム合金を溶解・鋳造したインゴットまたはアルミニウム合金粉末と中性子吸収材を混合・予備成形し、真空焼結法や熱間静水圧法(HIP)で焼結したビレットを熱間押出しにより製造する。図12(a)に1本のバスケットセル131の斜視図を、図12(b)に69本のバスケットセル131の集合体で構成されるバスケット130の径方向断面図を示す(特開2002−20828号公報参照)。現在実用化されているキャスクのバスケット130は、個々のバスケットセル131の集合体であり、バスケットセル131の形状としては、板厚が6mmの径が160mm角で長さ4mの角パイプであり、集合体を構成するバスケットセル131の数の一例としては69本である。
【0004】
従来のキャスク構造として、図10に部分断面斜視図を、図11に図10に示したキャスクの径方向断面図を示す。
このキャスク100は、胴本体101のキャビティ102内面をバスケット130の外周形状に合わせて機械加工したものである。胴本体101および底板104は、γ線遮蔽機能を有する炭素鋼や低合金鋼製の鍛造品である。なお、炭素鋼の代わりにステンレス鋼を用いることもできる。前記胴本体101と底板104は、溶接により結合する。また、耐圧容器としての密閉性能を確保するため、一次蓋110と胴本体101との間には金属ガスケットを設けておく。
【0005】
胴本体101と外筒105との間には、水素を多く含有する高分子材料であって中性子遮蔽機能を有するレジン106が充填されている。また、胴本体101と外筒105との間には熱伝導を行う複数の銅製内部フィン107が溶接されており、前記レジン106は、この内部フィン107によって形成される空間に流動状態で注入され、冷却固化される。なお、内部フィン107は、放熱を均一に行うため、熱量の多い部分に高い密度で設けるようにするのが好ましい。また、レジン106と外筒105との間には、数mmの熱膨張しろ108が設けられる。
【0006】
蓋部109は、一次蓋110と二次蓋111により構成される。この一次蓋110は、γ線を遮蔽するステンレス鋼または炭素鋼からなる円盤形状である。また、二次蓋111もステンレス鋼製または炭素鋼製の円盤形状であるが、その上面には中性子遮蔽体としてレジン112が封入されている。一次蓋110および二次蓋111は、ステンレス鋼製または炭素鋼製のボルト113によって胴本体101に取り付けられている。さらに、一次蓋110および二次蓋111と胴本体101との間にはそれぞれ金属ガスケットが設けられ、内部の密封性を保持している。また、蓋部109の周囲には、レジン114を封入した補助遮蔽体115が設けられている。
【0007】
キャスク本体116の両側には、キャスク100を吊り下げるためのトラニオン117が設けられている。なお、図10では、補助遮蔽体115を設けたものを示したが、キャスク100の搬送時には補助遮蔽体115を取り外して緩衝体(図示省略)を取り付ける。緩衝体は、ステンレス鋼材により作成した外筒(図示省略)内にレッドウッド材などの緩衝材を組み込んだ構造である。
【0008】
バスケット130は、使用済み核燃料を収容する角パイプ132のバスケットセル131の集合体から構成される。当該角パイプ132のバスケットセル131には、ホウ素入りのアルミニウム合金材料を用いる。
また、キャビティ102のうちバスケットセル数が5個または7個となる角パイプ列の両側には、それぞれダミーパイプ133が挿入されている。このダミーパイプ133は、胴本体101の重量を軽減すると共に胴本体101の厚みを均一化すること、角パイプ132を確実に固定することを目的とする。このダミーパイプ133にもホウ素入りのアルミニウム合金材料を用い、上記同様の工程により製作する。なお、このダミーパイプ133は省略することもできる。
【0009】
キャスク100に収容する使用済み核燃料集合体は、核分裂性物質および核分裂生成物などを含み、放射線を発生すると共に崩壊熱を伴うため、キャスク100の除熱機能、遮蔽機能および臨界防止機能を貯蔵期間中(60年程度)、確実に維持する必要がある。キャスク100では、胴本体101のキャビティ102内を機械加工してバスケットセル131で構成したバスケット130の外側を略密着状態(大きな隙間なし)で挿入するようにしている。
【0010】
さらに、胴本体101と外筒105との間に内部フィン107を設け、この空間をレジン106で充填している。このため、燃料棒からの熱は、角パイプ132のバスケットセル131或いは充填したヘリウムガスを通じて胴本体101に伝導し、主に内部フィン107を通じて外筒105から放出されることになる。また、使用済み核燃料集合体から発生するγ線は、炭素鋼あるいはステンレス鋼からなる胴本体101、外筒105、蓋部109などにおいて遮蔽される。また、中性子はレジン106によって遮蔽され、放射線業務従事者に対する被ばく上の影響をなくすようにしている。具体的には、表面線当量率が2mSv/h以下、表面から1mの線量当量率が100μSv/h以下になるような遮蔽機能が得られるように設計する。さらに、バスケットセル131を構成する角パイプ132には、ホウ素入りのアルミニウム合金材料を用いているので、中性子を吸収して臨界に達するのを防止することができる。
さらに、このキャスク100によれば、胴本体101のキャビティ102内を機械加工しバスケット130の外周を構成する角パイプ132のバスケットセル131を略密着状態で挿入するようにしたので、バスケットセル131とキャビティ102との対面する面積が広くなり、バスケットセル131である角パイプ132からの熱伝導を良好にできる。
【0011】
また、キャビティ102内の空間領域をなくすことができるから、角パイプ132のバスケットセル131の収容数が同じであれば、胴本体101をコンパクトかつ軽量にすることができる。逆に、胴本体101の外径を変えない場合、それだけバスケットセル数を確保できるから、使用済み核燃料集合体の収容数を増加することができる。具体的に当該キャスク100では、使用済み核燃料集合体の収容数を69体にでき、かつキャスク本体116の外径を2560mm、重量を120tonに抑えることができる。
【0012】
なお、このバスケット130は、集合体を構成するバスケットセル131の部材が前述したホウ素入りのアルミニウム合金材料から製造されたものであり、従って、全体が中性子吸収能を有したものとなる。
【0013】
【特許文献1】
特開2002−20828号公報(図10)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のキャスクのバスケットは、個々のバスケットセルの集合体であるために、放射性損傷を確認する等のメンテナンス時にはバスケットセルを一本一本取り出し、挿入する作業が必要となり、工数がかかり作業効率が悪いという問題があった。
【0015】
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、メンテナンス時のバスケットの取り出し、取り入れ作業を効率的に行うことができる放射性物質の輸送や貯蔵用キャスクと、中性子吸収能が均一なバスケットユニット化されたバスケットを提供することを目的とする。また、本発明は、このバスケットユニットの製造方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究の結果、バスケット全体を構成するバスケットのセル集合体を、取り扱いのしやすい数のバスケットセルの本数で接合したバスケットユニット化することと、この接合手段として摩擦撹拌溶接法を適用することで中性子吸収能の劣化のない接合部を形成できるとの知見を得て本発明に至った。
すなわち、本発明のキャスクは、使用済み核燃料をキャスクの所定位置に収納するための格子状断面を有するバスケットと、耐圧を受け持つ胴本体とその周囲を取り巻く中性子遮蔽部とを有し、前記バスケットを内部に収納する中空のキャスク本体と、前記使用済み核燃料を前記バスケットに出し入れするために設けられた前記キャスク本体の開口部に着脱可能な蓋とを備え、前記バスケットは、複数本のバスケットセルの集合体から構成され、前記集合体の少なくとも一部がユニット化されたバスケットユニットを含むことを特徴とする。
本発明のキャスクにおいて、バスケットが、前記バスケットユニットのみから構成することが好ましい。また、バスケットユニットが、複数本のバスケットセルを摩擦撹拌溶接で接合したものとすることが望ましい。
【0017】
また、本発明は、使用済み核燃料をキャスクの所定位置に収納するための格子状断面を有するバスケットであって、前記バスケットを構成するバスケットセル集合体の少なくとも一部が、複数本のバスケットセルが摩擦撹拌溶接部で接合されバスケットユニットを含むことを特徴とするバスケットを提供する。この摩擦撹拌溶接部は、バスケットセルの端部にあってもよく、また側面にあってもよい。端部および側面にあってもよい。バスケットセルの全長全てを摩擦撹拌溶接したときの変形を生じないように、断続的に接合することが好ましい。
【0018】
本発明のバスケットユニットの製造方法は、バスケットを構成するバスケットセル集合体の複数本のバスケットセルを摩擦撹拌溶接法で接合することを特徴とする。
本発明のキャスクおよびバスケットに用いられるバスケットユニットを構成するバスケットセルの材料は、ホウ素などの中性子吸収材入りアルミニウム合金であり、アルミニウム合金はAl−Si系、Al−Si−Mg系、Al−Si−Cu−Mg系、Al−Si−Cu−Ni−Mg系のアルミニウム合金であることが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のキャスク、バスケットおよびバスケットユニットの製造方法の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではなく、下記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することができる。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明によるキャスクの一実施形態を示す径方向断面図である。キャスク本体の内側の胴本体101、外側の外筒105、該胴本体101と該外筒105との間の熱伝導を行う内部フィン107とこの空間を充填するレジン106と、複数本の使用済み核燃料を収容するバスケットセル131の集合体であるバスケット130をキャビティ103に装荷した放射性物質の輸送や貯蔵用のキャスク100であって、本発明のバスケット130が、6本のバスケットセル131が接合されたバスケットユニットAが4個と、9本のバスケットセル131が接合されたバスケットユニットBが5個とから構成された69本のバスケットセル集合体のものである。
【0021】
図2は、本実施の形態によるバスケット130をキャビティ103に装荷する前のキャスク100の径方向断面図である。図1では、バスケット130を構成するバスケットセル集合体の全部が複数個のバスケットユニットA,Bで構成されたバスケット130を装荷したキャスク100を示しているが、本発明のキャスク100は、これに限定されず、バスケット130を構成するバスケットセル集合体の少なくとも一部が1個以上のバスケットユニットで構成されるようにバスケットユニット化されていればよい。
【0022】
(第2の実施の形態)
図3は、図1に示した本発明のキャスク100に装荷される本発明のバスケット130の例示をするものであり、(a)は図1に示したものと同一の6本のバスケットセル131が摩擦撹拌溶接されたバスケットユニットAが4個と、9本のバスケットセル131が摩擦撹拌溶接されたバスケットユニットBが5個とから構成されたものである。(b)は11本のバスケットセル131が摩擦撹拌溶接されたバスケットユニットCが4個と、25本のバスケットセル131が摩擦撹拌溶接されたバスケットユニットDが1個とから構成されたものである。(c)は10本のバスケットセル131が摩擦撹拌溶接されたバスケットユニットEが4個と、25本のバスケットセル131が摩擦撹拌溶接されたバスケットユニットDが1個と、個別の4本のバスケットセル131とから構成されたものである。
【0023】
本発明のバスケット130は図3(a)および(b)のようにバスケットセル集合体の全部がバスケットユニット化されたもの、(c)のように複数個のバスケットユニットD、Eと1本以上の個別のバスケットセル131からなる構成に限定されず、バスケット130を構成するバスケットセル集合体の少なくとも一部が、複数本のバスケットセル131が摩擦撹拌溶接部で接合されてユニット化されていればよい。バスケット130のバスケットユニット化は複数個のバスケットユニットでも1個のバスケットユニットでもよいが、メンテナンス時の取扱いしやすい重量の本数のバスケットセル131で構成したバスケットユニットを複数個で構成するのが好ましい。
【0024】
本実施の形態によるバスケット130を構成するバスケットユニットは、接合部の中性子吸収能の劣化がなく、かつ接合部の表面が接合されたバスケットセル131と同一平面で形成できる摩擦撹拌溶接部で接合された複数本のバスケットセル131から構成されている。
【0025】
(第3の実施の形態)
図4は、本発明のキャスクおよびバスケットに用いるバスケットユニットの一実施形態を示す斜視図である。(a)は2本のバスケットセルを摩擦撹拌溶接して1個のバスケットユニットにした1×2ユニット化の例を示す。(b)は4本のバスケットセルを摩擦撹拌溶接して1個のバスケットユニットにした2×2ユニット化の例を示す。(c)は4本のバスケットセルを摩擦撹拌溶接して1個のバスケットユニットにした1×4ユニット化の例を示す。本発明のバスケットは、バスケットを構成するバスケットセル集合体の少なくとも一部が、複数本のバスケットセルを接合したバスケットユニット化されていればよく、このバスケットユニット化は1個のバスケットユニットでも複数個のバスケットユニットでもよい。
【0026】
1個のバスケットユニットは、図4に示す構成に限定されることがなく、これより多い5本、さらには図3に示した6本、9本、10本をはじめ複数本のバスケットセルを摩擦撹拌溶接して構成していればよく、バスケットユニットの取り扱い時の重量を考慮して構成する本数を適宜選択できる。取り扱いが可能で、摩擦撹拌溶接部の強度が吊り上げたりする取り扱い時のバスケットユニットの重量に耐えるものであれば、その組み合わせは限定されない。
【0027】
図5は、2本のバスケットセルから1個のバスケットユニットを製造する場合の摩擦撹拌溶接部の個所を示す斜視図である。(a)はへり部のみを、(b)は側面のみを、(c)はへり部と側面を接合したものである。接合方法としては後述する摩擦撹拌溶接法が最適であるが、摩擦撹拌溶接法であっても溶接線全てを接合した場合、変形が生じる恐れもあり、バスケットユニットを吊り上げたりする取り扱い時の強度が維持できれば、接合時の変形を回避するためと接合工数の低減で(d)のように部分的に断続接合するのが好ましい。図6は4本のバスケットセルで1個のバスケットユニットを製造する場合の摩擦撹拌溶接部の個所を示す斜視図で、(a)は2×2ユニット化、(b)は1×4ユニット化したものである。
【0028】
複数本のバスケットセルをバスケットユニット化する手段として、ボルトとナットを用いた機械的接合法を検討したが、バスケットセルの内部で接合しようとすると、ボルトやナットがバスケットセル内の領域を占有するために、1本のバスケットセル内に収容する使用済み核燃料の量が少なくなるので好ましくない。また、バスケットセルの外周部を締め付け接合するやり方もあるが、バスケットセルの外周部に締め付け手段があると、締め付け接合された各バスケットユニットは略密着状態とすることができず、キャビティ内に空間領域ができ、キャスクのキャビティ内に装荷されるバスケットを構成する集合体のバスケットセルの数が減少してしまい、バスケットを構成する全バスケットセル内の使用済み核燃料の量が少なくなるので好ましくなく、機械的接合法は適用できない。
【0029】
次に、バスケットセルの接合手段として、金属材料の接合手段として使用されているレーザ溶接やMIG溶接などの溶融溶接法と摩擦撹拌溶接法の適用を検討した。図7は摩擦撹拌溶接法(例えば、特許第2712838号公報に記載)の概略説明図である。摩擦撹拌溶接法は、接合すべき個所に押圧した回転工具を回転させながら接合線に沿って移動させ、接合すべき個所を発熱、軟化させ、塑性流動させ、固相接合する方法である。
【0030】
符号200はバスケットセル131の端部に位置決めされ矢印A方向に回転しながら矢印B方向に向かって移動する回転工具である。この回転工具200は、モータ(図示せず)に連結される基部201と、円盤状の形状を有し回転しながらバスケットセル131を押圧する押圧部202と、この押圧部202の中央部に取り付けられバスケットセル131同士を摩擦撹拌するプローブ203とを備えている。このプローブ203は、例えばバルク状のc−BNにて構成され、その長さは2〜10mmであり、根元部の直径は8〜30mmである。
【0031】
そして、バスケットセル131の端部に沿って回転工具200を矢印A方向に回転させながら、矢印B方向に円周移動させて摩擦撹拌溶接を行う。ここで、回転工具200の回転速度は300〜2500rpm、移動速度は100〜2000mm/min程度に設定することが好ましい。すると、プローブ203の通過部位には、バスケットセル131同士が摩擦撹拌溶接された摩擦撹拌溶接部50が形成される。
【0032】
図8にバスケットセルの材料として用いられるホウ素入りアルミニウム合金母材を突合せして、溶融溶接法の1つであるレーザ溶接で接合した部分の断面概略を(a)に、摩擦撹拌溶接法(FSW)で接合した部分の断面概略を(b)に示す。レーザ溶接法などの溶融溶接法で接合された溶接金属部の表面が母材の表面より盛り上がっているのに対し、摩擦撹拌溶接法では接合部上面をフライス加工しながら接合してゆくので、接合された溶接金属部の表面は母材と同一平面であり、摩擦撹拌溶接法で接合された複数本のバスケットセルで構成されるバスケットユニットは、接合部である溶接金属部の表面の盛り上がりがないので、キャスクのキャビティ内に装荷するバスケットを構成するバスケットユニット化の接合手段としては適している。
【0033】
また、レーザ溶接法と摩擦撹拌溶接法で接合した場合の母材部、接合界面および溶接金属の断面マクロ組織の顕微鏡写真を図9に示す。(a)のレーザ溶接法で接合した場合は、1−Cの溶接金属部はホウ素の析出物(黒色)が溶け込み、1−Aの母材部や1−Bの接合界面と比べて、ホウ素の析出物の量が減少しているのが明らかである。即ち、バスケットセルをレーザ溶接法で接合した場合には、接合されたバスケットユニットには、ホウ素析出物の不均一分散が生じ、中性子吸収能の不均一が生じる問題があることが判明した。
【0034】
一方、(b)の摩擦撹拌溶接法で接合した場合は、2−Cの溶接金属部のホウ素の析出物は、2−Aの母材部や2−Bの接合界面と比べても差異がなく、接合によってホウ素の析出物の溶け込みが少ないことを確認した。即ち、バスケットセルを摩擦撹拌溶接法で接合した場合には、接合されたバスケットユニットには、ホウ素析出物の不均一分散は生じず、中性子吸収能が均一であり、かつ接合部の表面は接合されるバスケットセルの表面と同一平面で寸法精度も良い。従って、キャスクのバスケットのメンテナンス時の取り扱いの効率化を図るために、バスケットを構成するバスケットセル集合体の少なくとも一部をバスケットユニット化する接合手段としては摩擦撹拌溶接法が最適であり、本発明ではこれを適用している。
【0035】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、メンテナンス時にバスケットセルを一本ずつ取り出し、挿入する作業が不要となり、バスケットのメンテナンス作業を効率的に行うことができるキャスクが得られる。また、中性子吸収能が均一なバスケットユニット化されたバスケットが得られる。さらに、バスケットセル同士の接合手段として摩擦撹拌溶接法を適用して、中性子吸収能が均一で、接合部表面の寸法精度が優れたバスケットユニットの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態におけるキャスクの一例を示す径方向断面図である。
【図2】本実施の形態におけるキャスクに本発明のバスケットを装荷する前のキャスクの径方向断面図である。
【図3】本実施の形態におけるバスケットの一例の径方向断面図である。
【図4】本実施の形態におけるキャスクおよびバスケットに用いるバスケットユニットの一例を示す斜視図である。
【図5】本実施の形態における2本のバスケットセルで1個のバスケットユニットを製造した場合の摩擦撹拌溶接部の個所を示す斜視図である。
【図6】本実施の形態における4本のバスケットセルで1個のバスケットユニットを製造した場合の摩擦撹拌溶接部の個所を示す斜視図である。
【図7】本実施の形態におけるバスケットユニットの製造方法に適用する摩擦撹拌溶接法の概略説明図である。
【図8】バスケットセルを溶融溶接法および摩擦撹拌溶接法で接合した状態を示す模式図である。
【図9】バスケットセルを溶融溶接法および摩擦撹拌溶接法で接合した接合部の断面マクロ組織の顕微鏡写真を示す図である。
【図10】従来のキャスクの構造の一例を示す部分断面斜視図である。
【図11】図10に示したキャスクの径方向断面図である。
【図12】バスケットセルの斜視図とバスケットセル集合体の径方向断面図である。
【符号の説明】
50…摩擦撹拌溶接部、100…キャスク、101…胴本体、109…蓋部、115…補助遮蔽体、116…キャスク本体、130…バスケット、131…バスケットセル、132…角パイプ、133…ダミーパイプ、200…回転工具、201…基部、202…押圧部、203…プローブ
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子力関連設備や放射性物質の輸送や貯蔵用として使用するキャスクの改良およびこのキャスク内に装荷される使用済み核燃料を収容するためのバスケットに関する。さらに、このバスケットを構成するバスケットユニットの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、キャスクはその構成としてキャスク本体の内側に胴本体、外側に外筒、該胴本体と該外筒との間の熱伝導を行う内部フィンと、使用済み核燃料を収容するバスケットセルの集合体であるバスケットを有している。中性子などの放射線を発する使用済み核燃料の収容用の断面が正方形の角パイプのバスケットセルとしては、中性子吸収能を有するB(ホウ素)添加したAlまたはAl合金(以下、アルミニウム合金という)が用いられている。
【0003】
バスケットセルの製造方法としては、ホウ素を添加したアルミニウム合金を溶解・鋳造したインゴットまたはアルミニウム合金粉末と中性子吸収材を混合・予備成形し、真空焼結法や熱間静水圧法(HIP)で焼結したビレットを熱間押出しにより製造する。図12(a)に1本のバスケットセル131の斜視図を、図12(b)に69本のバスケットセル131の集合体で構成されるバスケット130の径方向断面図を示す(特開2002−20828号公報参照)。現在実用化されているキャスクのバスケット130は、個々のバスケットセル131の集合体であり、バスケットセル131の形状としては、板厚が6mmの径が160mm角で長さ4mの角パイプであり、集合体を構成するバスケットセル131の数の一例としては69本である。
【0004】
従来のキャスク構造として、図10に部分断面斜視図を、図11に図10に示したキャスクの径方向断面図を示す。
このキャスク100は、胴本体101のキャビティ102内面をバスケット130の外周形状に合わせて機械加工したものである。胴本体101および底板104は、γ線遮蔽機能を有する炭素鋼や低合金鋼製の鍛造品である。なお、炭素鋼の代わりにステンレス鋼を用いることもできる。前記胴本体101と底板104は、溶接により結合する。また、耐圧容器としての密閉性能を確保するため、一次蓋110と胴本体101との間には金属ガスケットを設けておく。
【0005】
胴本体101と外筒105との間には、水素を多く含有する高分子材料であって中性子遮蔽機能を有するレジン106が充填されている。また、胴本体101と外筒105との間には熱伝導を行う複数の銅製内部フィン107が溶接されており、前記レジン106は、この内部フィン107によって形成される空間に流動状態で注入され、冷却固化される。なお、内部フィン107は、放熱を均一に行うため、熱量の多い部分に高い密度で設けるようにするのが好ましい。また、レジン106と外筒105との間には、数mmの熱膨張しろ108が設けられる。
【0006】
蓋部109は、一次蓋110と二次蓋111により構成される。この一次蓋110は、γ線を遮蔽するステンレス鋼または炭素鋼からなる円盤形状である。また、二次蓋111もステンレス鋼製または炭素鋼製の円盤形状であるが、その上面には中性子遮蔽体としてレジン112が封入されている。一次蓋110および二次蓋111は、ステンレス鋼製または炭素鋼製のボルト113によって胴本体101に取り付けられている。さらに、一次蓋110および二次蓋111と胴本体101との間にはそれぞれ金属ガスケットが設けられ、内部の密封性を保持している。また、蓋部109の周囲には、レジン114を封入した補助遮蔽体115が設けられている。
【0007】
キャスク本体116の両側には、キャスク100を吊り下げるためのトラニオン117が設けられている。なお、図10では、補助遮蔽体115を設けたものを示したが、キャスク100の搬送時には補助遮蔽体115を取り外して緩衝体(図示省略)を取り付ける。緩衝体は、ステンレス鋼材により作成した外筒(図示省略)内にレッドウッド材などの緩衝材を組み込んだ構造である。
【0008】
バスケット130は、使用済み核燃料を収容する角パイプ132のバスケットセル131の集合体から構成される。当該角パイプ132のバスケットセル131には、ホウ素入りのアルミニウム合金材料を用いる。
また、キャビティ102のうちバスケットセル数が5個または7個となる角パイプ列の両側には、それぞれダミーパイプ133が挿入されている。このダミーパイプ133は、胴本体101の重量を軽減すると共に胴本体101の厚みを均一化すること、角パイプ132を確実に固定することを目的とする。このダミーパイプ133にもホウ素入りのアルミニウム合金材料を用い、上記同様の工程により製作する。なお、このダミーパイプ133は省略することもできる。
【0009】
キャスク100に収容する使用済み核燃料集合体は、核分裂性物質および核分裂生成物などを含み、放射線を発生すると共に崩壊熱を伴うため、キャスク100の除熱機能、遮蔽機能および臨界防止機能を貯蔵期間中(60年程度)、確実に維持する必要がある。キャスク100では、胴本体101のキャビティ102内を機械加工してバスケットセル131で構成したバスケット130の外側を略密着状態(大きな隙間なし)で挿入するようにしている。
【0010】
さらに、胴本体101と外筒105との間に内部フィン107を設け、この空間をレジン106で充填している。このため、燃料棒からの熱は、角パイプ132のバスケットセル131或いは充填したヘリウムガスを通じて胴本体101に伝導し、主に内部フィン107を通じて外筒105から放出されることになる。また、使用済み核燃料集合体から発生するγ線は、炭素鋼あるいはステンレス鋼からなる胴本体101、外筒105、蓋部109などにおいて遮蔽される。また、中性子はレジン106によって遮蔽され、放射線業務従事者に対する被ばく上の影響をなくすようにしている。具体的には、表面線当量率が2mSv/h以下、表面から1mの線量当量率が100μSv/h以下になるような遮蔽機能が得られるように設計する。さらに、バスケットセル131を構成する角パイプ132には、ホウ素入りのアルミニウム合金材料を用いているので、中性子を吸収して臨界に達するのを防止することができる。
さらに、このキャスク100によれば、胴本体101のキャビティ102内を機械加工しバスケット130の外周を構成する角パイプ132のバスケットセル131を略密着状態で挿入するようにしたので、バスケットセル131とキャビティ102との対面する面積が広くなり、バスケットセル131である角パイプ132からの熱伝導を良好にできる。
【0011】
また、キャビティ102内の空間領域をなくすことができるから、角パイプ132のバスケットセル131の収容数が同じであれば、胴本体101をコンパクトかつ軽量にすることができる。逆に、胴本体101の外径を変えない場合、それだけバスケットセル数を確保できるから、使用済み核燃料集合体の収容数を増加することができる。具体的に当該キャスク100では、使用済み核燃料集合体の収容数を69体にでき、かつキャスク本体116の外径を2560mm、重量を120tonに抑えることができる。
【0012】
なお、このバスケット130は、集合体を構成するバスケットセル131の部材が前述したホウ素入りのアルミニウム合金材料から製造されたものであり、従って、全体が中性子吸収能を有したものとなる。
【0013】
【特許文献1】
特開2002−20828号公報(図10)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のキャスクのバスケットは、個々のバスケットセルの集合体であるために、放射性損傷を確認する等のメンテナンス時にはバスケットセルを一本一本取り出し、挿入する作業が必要となり、工数がかかり作業効率が悪いという問題があった。
【0015】
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、メンテナンス時のバスケットの取り出し、取り入れ作業を効率的に行うことができる放射性物質の輸送や貯蔵用キャスクと、中性子吸収能が均一なバスケットユニット化されたバスケットを提供することを目的とする。また、本発明は、このバスケットユニットの製造方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究の結果、バスケット全体を構成するバスケットのセル集合体を、取り扱いのしやすい数のバスケットセルの本数で接合したバスケットユニット化することと、この接合手段として摩擦撹拌溶接法を適用することで中性子吸収能の劣化のない接合部を形成できるとの知見を得て本発明に至った。
すなわち、本発明のキャスクは、使用済み核燃料をキャスクの所定位置に収納するための格子状断面を有するバスケットと、耐圧を受け持つ胴本体とその周囲を取り巻く中性子遮蔽部とを有し、前記バスケットを内部に収納する中空のキャスク本体と、前記使用済み核燃料を前記バスケットに出し入れするために設けられた前記キャスク本体の開口部に着脱可能な蓋とを備え、前記バスケットは、複数本のバスケットセルの集合体から構成され、前記集合体の少なくとも一部がユニット化されたバスケットユニットを含むことを特徴とする。
本発明のキャスクにおいて、バスケットが、前記バスケットユニットのみから構成することが好ましい。また、バスケットユニットが、複数本のバスケットセルを摩擦撹拌溶接で接合したものとすることが望ましい。
【0017】
また、本発明は、使用済み核燃料をキャスクの所定位置に収納するための格子状断面を有するバスケットであって、前記バスケットを構成するバスケットセル集合体の少なくとも一部が、複数本のバスケットセルが摩擦撹拌溶接部で接合されバスケットユニットを含むことを特徴とするバスケットを提供する。この摩擦撹拌溶接部は、バスケットセルの端部にあってもよく、また側面にあってもよい。端部および側面にあってもよい。バスケットセルの全長全てを摩擦撹拌溶接したときの変形を生じないように、断続的に接合することが好ましい。
【0018】
本発明のバスケットユニットの製造方法は、バスケットを構成するバスケットセル集合体の複数本のバスケットセルを摩擦撹拌溶接法で接合することを特徴とする。
本発明のキャスクおよびバスケットに用いられるバスケットユニットを構成するバスケットセルの材料は、ホウ素などの中性子吸収材入りアルミニウム合金であり、アルミニウム合金はAl−Si系、Al−Si−Mg系、Al−Si−Cu−Mg系、Al−Si−Cu−Ni−Mg系のアルミニウム合金であることが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のキャスク、バスケットおよびバスケットユニットの製造方法の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではなく、下記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することができる。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明によるキャスクの一実施形態を示す径方向断面図である。キャスク本体の内側の胴本体101、外側の外筒105、該胴本体101と該外筒105との間の熱伝導を行う内部フィン107とこの空間を充填するレジン106と、複数本の使用済み核燃料を収容するバスケットセル131の集合体であるバスケット130をキャビティ103に装荷した放射性物質の輸送や貯蔵用のキャスク100であって、本発明のバスケット130が、6本のバスケットセル131が接合されたバスケットユニットAが4個と、9本のバスケットセル131が接合されたバスケットユニットBが5個とから構成された69本のバスケットセル集合体のものである。
【0021】
図2は、本実施の形態によるバスケット130をキャビティ103に装荷する前のキャスク100の径方向断面図である。図1では、バスケット130を構成するバスケットセル集合体の全部が複数個のバスケットユニットA,Bで構成されたバスケット130を装荷したキャスク100を示しているが、本発明のキャスク100は、これに限定されず、バスケット130を構成するバスケットセル集合体の少なくとも一部が1個以上のバスケットユニットで構成されるようにバスケットユニット化されていればよい。
【0022】
(第2の実施の形態)
図3は、図1に示した本発明のキャスク100に装荷される本発明のバスケット130の例示をするものであり、(a)は図1に示したものと同一の6本のバスケットセル131が摩擦撹拌溶接されたバスケットユニットAが4個と、9本のバスケットセル131が摩擦撹拌溶接されたバスケットユニットBが5個とから構成されたものである。(b)は11本のバスケットセル131が摩擦撹拌溶接されたバスケットユニットCが4個と、25本のバスケットセル131が摩擦撹拌溶接されたバスケットユニットDが1個とから構成されたものである。(c)は10本のバスケットセル131が摩擦撹拌溶接されたバスケットユニットEが4個と、25本のバスケットセル131が摩擦撹拌溶接されたバスケットユニットDが1個と、個別の4本のバスケットセル131とから構成されたものである。
【0023】
本発明のバスケット130は図3(a)および(b)のようにバスケットセル集合体の全部がバスケットユニット化されたもの、(c)のように複数個のバスケットユニットD、Eと1本以上の個別のバスケットセル131からなる構成に限定されず、バスケット130を構成するバスケットセル集合体の少なくとも一部が、複数本のバスケットセル131が摩擦撹拌溶接部で接合されてユニット化されていればよい。バスケット130のバスケットユニット化は複数個のバスケットユニットでも1個のバスケットユニットでもよいが、メンテナンス時の取扱いしやすい重量の本数のバスケットセル131で構成したバスケットユニットを複数個で構成するのが好ましい。
【0024】
本実施の形態によるバスケット130を構成するバスケットユニットは、接合部の中性子吸収能の劣化がなく、かつ接合部の表面が接合されたバスケットセル131と同一平面で形成できる摩擦撹拌溶接部で接合された複数本のバスケットセル131から構成されている。
【0025】
(第3の実施の形態)
図4は、本発明のキャスクおよびバスケットに用いるバスケットユニットの一実施形態を示す斜視図である。(a)は2本のバスケットセルを摩擦撹拌溶接して1個のバスケットユニットにした1×2ユニット化の例を示す。(b)は4本のバスケットセルを摩擦撹拌溶接して1個のバスケットユニットにした2×2ユニット化の例を示す。(c)は4本のバスケットセルを摩擦撹拌溶接して1個のバスケットユニットにした1×4ユニット化の例を示す。本発明のバスケットは、バスケットを構成するバスケットセル集合体の少なくとも一部が、複数本のバスケットセルを接合したバスケットユニット化されていればよく、このバスケットユニット化は1個のバスケットユニットでも複数個のバスケットユニットでもよい。
【0026】
1個のバスケットユニットは、図4に示す構成に限定されることがなく、これより多い5本、さらには図3に示した6本、9本、10本をはじめ複数本のバスケットセルを摩擦撹拌溶接して構成していればよく、バスケットユニットの取り扱い時の重量を考慮して構成する本数を適宜選択できる。取り扱いが可能で、摩擦撹拌溶接部の強度が吊り上げたりする取り扱い時のバスケットユニットの重量に耐えるものであれば、その組み合わせは限定されない。
【0027】
図5は、2本のバスケットセルから1個のバスケットユニットを製造する場合の摩擦撹拌溶接部の個所を示す斜視図である。(a)はへり部のみを、(b)は側面のみを、(c)はへり部と側面を接合したものである。接合方法としては後述する摩擦撹拌溶接法が最適であるが、摩擦撹拌溶接法であっても溶接線全てを接合した場合、変形が生じる恐れもあり、バスケットユニットを吊り上げたりする取り扱い時の強度が維持できれば、接合時の変形を回避するためと接合工数の低減で(d)のように部分的に断続接合するのが好ましい。図6は4本のバスケットセルで1個のバスケットユニットを製造する場合の摩擦撹拌溶接部の個所を示す斜視図で、(a)は2×2ユニット化、(b)は1×4ユニット化したものである。
【0028】
複数本のバスケットセルをバスケットユニット化する手段として、ボルトとナットを用いた機械的接合法を検討したが、バスケットセルの内部で接合しようとすると、ボルトやナットがバスケットセル内の領域を占有するために、1本のバスケットセル内に収容する使用済み核燃料の量が少なくなるので好ましくない。また、バスケットセルの外周部を締め付け接合するやり方もあるが、バスケットセルの外周部に締め付け手段があると、締め付け接合された各バスケットユニットは略密着状態とすることができず、キャビティ内に空間領域ができ、キャスクのキャビティ内に装荷されるバスケットを構成する集合体のバスケットセルの数が減少してしまい、バスケットを構成する全バスケットセル内の使用済み核燃料の量が少なくなるので好ましくなく、機械的接合法は適用できない。
【0029】
次に、バスケットセルの接合手段として、金属材料の接合手段として使用されているレーザ溶接やMIG溶接などの溶融溶接法と摩擦撹拌溶接法の適用を検討した。図7は摩擦撹拌溶接法(例えば、特許第2712838号公報に記載)の概略説明図である。摩擦撹拌溶接法は、接合すべき個所に押圧した回転工具を回転させながら接合線に沿って移動させ、接合すべき個所を発熱、軟化させ、塑性流動させ、固相接合する方法である。
【0030】
符号200はバスケットセル131の端部に位置決めされ矢印A方向に回転しながら矢印B方向に向かって移動する回転工具である。この回転工具200は、モータ(図示せず)に連結される基部201と、円盤状の形状を有し回転しながらバスケットセル131を押圧する押圧部202と、この押圧部202の中央部に取り付けられバスケットセル131同士を摩擦撹拌するプローブ203とを備えている。このプローブ203は、例えばバルク状のc−BNにて構成され、その長さは2〜10mmであり、根元部の直径は8〜30mmである。
【0031】
そして、バスケットセル131の端部に沿って回転工具200を矢印A方向に回転させながら、矢印B方向に円周移動させて摩擦撹拌溶接を行う。ここで、回転工具200の回転速度は300〜2500rpm、移動速度は100〜2000mm/min程度に設定することが好ましい。すると、プローブ203の通過部位には、バスケットセル131同士が摩擦撹拌溶接された摩擦撹拌溶接部50が形成される。
【0032】
図8にバスケットセルの材料として用いられるホウ素入りアルミニウム合金母材を突合せして、溶融溶接法の1つであるレーザ溶接で接合した部分の断面概略を(a)に、摩擦撹拌溶接法(FSW)で接合した部分の断面概略を(b)に示す。レーザ溶接法などの溶融溶接法で接合された溶接金属部の表面が母材の表面より盛り上がっているのに対し、摩擦撹拌溶接法では接合部上面をフライス加工しながら接合してゆくので、接合された溶接金属部の表面は母材と同一平面であり、摩擦撹拌溶接法で接合された複数本のバスケットセルで構成されるバスケットユニットは、接合部である溶接金属部の表面の盛り上がりがないので、キャスクのキャビティ内に装荷するバスケットを構成するバスケットユニット化の接合手段としては適している。
【0033】
また、レーザ溶接法と摩擦撹拌溶接法で接合した場合の母材部、接合界面および溶接金属の断面マクロ組織の顕微鏡写真を図9に示す。(a)のレーザ溶接法で接合した場合は、1−Cの溶接金属部はホウ素の析出物(黒色)が溶け込み、1−Aの母材部や1−Bの接合界面と比べて、ホウ素の析出物の量が減少しているのが明らかである。即ち、バスケットセルをレーザ溶接法で接合した場合には、接合されたバスケットユニットには、ホウ素析出物の不均一分散が生じ、中性子吸収能の不均一が生じる問題があることが判明した。
【0034】
一方、(b)の摩擦撹拌溶接法で接合した場合は、2−Cの溶接金属部のホウ素の析出物は、2−Aの母材部や2−Bの接合界面と比べても差異がなく、接合によってホウ素の析出物の溶け込みが少ないことを確認した。即ち、バスケットセルを摩擦撹拌溶接法で接合した場合には、接合されたバスケットユニットには、ホウ素析出物の不均一分散は生じず、中性子吸収能が均一であり、かつ接合部の表面は接合されるバスケットセルの表面と同一平面で寸法精度も良い。従って、キャスクのバスケットのメンテナンス時の取り扱いの効率化を図るために、バスケットを構成するバスケットセル集合体の少なくとも一部をバスケットユニット化する接合手段としては摩擦撹拌溶接法が最適であり、本発明ではこれを適用している。
【0035】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、メンテナンス時にバスケットセルを一本ずつ取り出し、挿入する作業が不要となり、バスケットのメンテナンス作業を効率的に行うことができるキャスクが得られる。また、中性子吸収能が均一なバスケットユニット化されたバスケットが得られる。さらに、バスケットセル同士の接合手段として摩擦撹拌溶接法を適用して、中性子吸収能が均一で、接合部表面の寸法精度が優れたバスケットユニットの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態におけるキャスクの一例を示す径方向断面図である。
【図2】本実施の形態におけるキャスクに本発明のバスケットを装荷する前のキャスクの径方向断面図である。
【図3】本実施の形態におけるバスケットの一例の径方向断面図である。
【図4】本実施の形態におけるキャスクおよびバスケットに用いるバスケットユニットの一例を示す斜視図である。
【図5】本実施の形態における2本のバスケットセルで1個のバスケットユニットを製造した場合の摩擦撹拌溶接部の個所を示す斜視図である。
【図6】本実施の形態における4本のバスケットセルで1個のバスケットユニットを製造した場合の摩擦撹拌溶接部の個所を示す斜視図である。
【図7】本実施の形態におけるバスケットユニットの製造方法に適用する摩擦撹拌溶接法の概略説明図である。
【図8】バスケットセルを溶融溶接法および摩擦撹拌溶接法で接合した状態を示す模式図である。
【図9】バスケットセルを溶融溶接法および摩擦撹拌溶接法で接合した接合部の断面マクロ組織の顕微鏡写真を示す図である。
【図10】従来のキャスクの構造の一例を示す部分断面斜視図である。
【図11】図10に示したキャスクの径方向断面図である。
【図12】バスケットセルの斜視図とバスケットセル集合体の径方向断面図である。
【符号の説明】
50…摩擦撹拌溶接部、100…キャスク、101…胴本体、109…蓋部、115…補助遮蔽体、116…キャスク本体、130…バスケット、131…バスケットセル、132…角パイプ、133…ダミーパイプ、200…回転工具、201…基部、202…押圧部、203…プローブ
Claims (8)
- 使用済み核燃料をキャスクの所定位置に収納するための格子状断面を有するバスケットと、
耐圧を受け持つ胴本体とその周囲を取り巻く中性子遮蔽部とを有し、前記バスケットを内部に収納する中空のキャスク本体と、
前記使用済み核燃料を前記バスケットに出し入れするために設けられた前記キャスク本体の開口部に着脱可能な蓋とを備え、
前記バスケットは、複数本のバスケットセルの集合体から構成され、
前記集合体の少なくとも一部がユニット化されたバスケットユニットを含むことを特徴とするキャスク。 - 前記バスケットが、前記バスケットユニットのみから構成されることを特徴とする請求項1に記載のキャスク。
- 前記バスケットユニットが、複数本のバスケットセルを摩擦撹拌溶接で接合したものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキャスク。
- 使用済み核燃料をキャスクの所定位置に収納するための格子状断面を有するバスケットであって、
前記バスケットを構成するバスケットセル集合体の少なくとも一部が、複数本のバスケットセルが摩擦撹拌溶接部で接合されバスケットユニットを含むことを特徴とするバスケット。 - 前記摩擦撹拌溶接部が、前記バスケットセルの端部にあることを特徴とする請求項4に記載のバスケット。
- 前記摩擦撹拌溶接部が、前記バスケットセルの側面にあることを特徴とする請求項4または5に記載のバスケット。
- 前記摩擦撹拌溶接部が、断続的に形成されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のバスケット。
- 使用済み核燃料をキャスクの所定位置に収納するための格子状断面を有するバスケットを構成するバスケットセル集合体の複数本のバスケットセルを、摩擦撹拌溶接法で接合することを特徴とするバスケットユニットの製造方法。
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Cited By (2)
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JP2014085155A (ja) * | 2012-10-19 | 2014-05-12 | Nikkeikin Aluminium Core Technology Co Ltd | 中性子吸収材およびその製造方法 |
KR101428218B1 (ko) | 2012-11-22 | 2014-08-08 | 주식회사 포스코 | 캐스크 바스켓을 제조하는 방법 |
-
2002
- 2002-09-30 JP JP2002287070A patent/JP2004125484A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
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KR101428218B1 (ko) | 2012-11-22 | 2014-08-08 | 주식회사 포스코 | 캐스크 바스켓을 제조하는 방법 |
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