JP2004132835A - バスケットセル、バスケットおよびキャスク - Google Patents
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Abstract
【課題】キャスクに用いるバスケットとして十分な板厚を有する空隙バスケットセルを提供する。
【解決手段】コーナ部材140の脚部の厚さt3が10mm、平板部材141の厚t2さが10mmである。そして、接合部142は、バスケットセル135の厚さ(50mm)未満の厚さを有しているコーナ部材140、平板部材141であって、かつ所定の平坦領域に配置させる。
【選択図】 図4
【解決手段】コーナ部材140の脚部の厚さt3が10mm、平板部材141の厚t2さが10mmである。そして、接合部142は、バスケットセル135の厚さ(50mm)未満の厚さを有しているコーナ部材140、平板部材141であって、かつ所定の平坦領域に配置させる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子力関連設備や放射性物質の輸送や貯蔵用として使用するキャスク内に装荷される使用済み核燃料を収容するためのバスケットに関し、特にバスケットの組み立て構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、中性子吸収能を有するB(ホウ素)を添加したステンレス鋼やアルミニウム合金が、中性子などの放射線を発する使用済み核燃料の収納容器など原子力関連設備の構造部材として用いられていた。この構造部材の一例として、キャスクが存在する。
キャスクは、全体がほぼ円筒形状の収容容器であり、使用済み核燃料集合体をキャスク内部の所定位置に収容するためのバスケットをその構成要素としている。特開2002−20828号公報には、このキャスクまたはバスケットをホウ素−アルミニウム合金粉末を用いて作成する技術が開示されている。
【0003】
バスケットは、特開2002−20828号公報にも記載されているように、ほぼ矩形状のバスケットセルを互いの外面同士を接触させて多数結束した構造を有している。燃焼度の高い使用済み核燃料を収容する場合、遮蔽距離を多くとるために、バスケットセルを構成する板体の厚さを厚くする必要がある。このとき、バスケットセル、ひいてはバスケットの重量増を抑制するために、バスケットセルを構成する板部分に空隙を形成することが提案されている。このバスケットセルを本明細書中では、空隙バスケットセルと呼ぶことにする。
【0004】
空隙バスケットセルを鋳造により製造することは、以下のような点が問題となり、実用化は困難である。つまり、アルミニウム合金溶湯中で比重の異なる多種のホウ素化合物が生成し、それらが沈澱または浮揚する。そのため、得られたアルミニウム合金材のホウ素含有量は、実際のホウ素添加量よりも低くなるという問題点がある。また、発生するホウ素化合物の大きさの多くは数百μm程度であることと、微細なホウ素化合物は凝集して粗大化するため、母材中のホウ素の均一性が得られないという問題点がある。ホウ素を添加したアルミニウム合金材において、このようにホウ素含有量が低くなったり、ホウ素の分布が不均一になると、十分な中性子吸収能が得られなくなってしまう。
【0005】
特開2002−20828号公報は、ホウ素を含有するアルミニウム合金粉末を製造し、それを単独で、または炭化ホウ素(B4C)と混合した後、加圧成形して圧粉体を形成し、それを加熱溶融して鋳造するのが有効であることを開示している。ただし、特開2002−20828号公報は、その図10に記載されている単純な形態のバスケットセルを製造することはできるが、空隙バスケットセルを製造することはできない。熱間押出しにより空隙バスケットセルを製造することも選択肢としてはある。しかし、バスケットセルの板厚が数十mm程度あるために、熱間押出しにより空隙バスケットセルを製造することは容易でない。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−20828号公報(図10)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、キャスクに用いるバスケットとして十分な板厚を有する空隙バスケットセルを提供することを目的とする。また本発明は、このバスケットセルを用いたバスケット、キャスクを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる目的のもと本発明者は、空隙バスケットセルを一体として製造するのではなく、複数の部材の組み合わせとして製造することを検討した。その結果、複数の部材を組み合わせる際に、レーザ溶接法で接合した場合には、接合部分には、ホウ素析出物の不均一分散が生じ、中性子吸収能に不均一が生じるおそれがあることが判明した。一方で、摩擦撹拌溶接(Friction Stir Welding)を用いて接合すると、ホウ素析出物の不均一分散の発生を防止することができることを知見した。ところが、摩擦撹拌溶接は、接合部の厚さに限界があるため、接合部分が限定されてしまう。したがって、接合部を選択した組み合わせ形態とすることが必要である。
本発明は、使用済み核燃料集合体を収容するバスケットの構成要素であり、側壁要素が中空角筒状をなして構成されるバスケットセルであって、このバスケットセルは、複数の部材の組み合せとして構成されかつ側壁要素に所定の空隙が形成されたセル本体と、複数の部材同士を接合する接合部とを備え、接合部は、前記部材における空隙を含む側壁要素の厚さ未満の厚さを有する所定の平坦領域内に配置されたことを特徴とする。
本発明のバスケットセルは、接合部の厚さを側壁要素の厚さ未満とするので、摩擦撹拌溶接によっても十分な接合を確保することができる。また、本発明のバスケットセルは、接合部を所定の平坦領域内に配置するので、摩擦撹拌溶接を行う際の溶接作業の容易性を確保することができる。
【0009】
本発明において、複数の部材は、一体で形成されかつバスケットセルのコーナ部に配置されるコーナ部材を含むとよい。
本発明は、コーナ部材のみでバスケットセルを構成することができるが、複数の部材としてさらに平板状部材を含むこともできる。つまり本発明は、コーナ部材と平板部材とを適宜組み合わせることにより、バスケットセルを構成することができる。
本発明のバスケットセルは、以上のような複数の部材を適宜組み合わせた構成とすることにより、接合部に切り欠きが生じない位置に配置することができる。切り欠きが生ずると、強度的に弱い部分が生ずることになるため、これを防止しようというものである。
【0010】
以上では、バスケットセルのコーナ部を除く部分に接合部を配置することを想定しているが、本発明はコーナ部に接合部を配置することもできる。この場合、複数の部材は両端部に垂下部を有する4つの平板状部材を含み、この垂下部同士を突き合わせ、かつこの突き合わせ部位に接合部を配置することができる。この際、接合部が空隙を含む側壁要素の厚さ未満の厚さを有し、かつ所定の平坦領域内に配置されるように、垂下部の形状を調整する。例えば、垂下部の先端の肉厚を薄くすればよい。
【0011】
以上の本発明によるバスケットセルにおいて、複数の部材を接合する際に摩擦撹拌接合を用いることにより、接合部を摩擦撹拌溶接により形成することが望ましい。
【0012】
本発明は、以上のバスケットセルを用いた下記のバスケットを提供する。すなわち本発明は、使用済み核燃料をキャスクの所定位置に収納するための格子状断面を有するバスケットであって、バスケットを構成するバスケットセルは、複数の部材の組み合せとして構成されかつ側壁要素に所定の空隙が形成されたセル本体と、複数の部材同士を接合する接合部とを備え、接合部は、空隙を含む側壁要素の厚さ未満の厚さを有する所定の平坦領域内に配置されたことを特徴とする。
【0013】
本発明は、以上のバスケットを用いたキャスクを提供する。このキャスクは、使用済み核燃料をキャスクの所定位置に収納するための格子状断面を有するバスケットと、耐圧を受け持つ胴本体とその周囲を取り巻く中性子遮蔽部とを有し、バスケットを内部に収納する中空のキャスク本体と、使用済み核燃料をバスケットに出し入れするために設けられたキャスク本体の開口部に着脱可能な蓋とを備え、バスケットは、複数のバスケットセルから構成され、バスケットセルは、複数の部材の組み合せとして構成されかつ側壁要素に所定の空隙が形成されたセル本体と、複数の部材同士を接合する接合部とを備え、接合部は、空隙を含む側壁要素の厚さ未満の厚さを有する所定の平坦領域内に配置されたことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態におけるキャスク100を示す部分断面斜視図を、図2に図1に示したキャスク100の径方向断面図を示す。
キャスク100は、胴本体101のキャビティ102内面をバスケット130の外周形状に合わせて機械加工したものである。胴本体101および底板104は、γ線遮蔽機能を有する炭素鋼や低合金鋼製の鍛造品である。なお、炭素鋼の代わりにステンレス鋼を用いることもできる。前記胴本体101と底板104は、溶接により結合する。また、耐圧容器としての密閉性能を確保するため、一次蓋110と胴本体101との間には金属ガスケットを設けておく。
【0015】
胴本体101と外筒105との間には、水素を多く含有する高分子材料であって中性子遮蔽機能を有するレジン106が充填されている。また、胴本体101と外筒105との間には熱伝導を行う複数の銅製内部フィン107が溶接されており、前記レジン106は、この内部フィン107によって形成される空間に流動状態で注入され、冷却固化される。なお、内部フィン107は、放熱を均一に行うため、熱量の多い部分に高い密度で設けるようにするのが好ましい。また、レジン106と外筒105との間には、数mmの熱膨張しろ108が設けられる。
【0016】
蓋部109は、一次蓋110と二次蓋111により構成される。この一次蓋110は、γ線を遮蔽するステンレス鋼または炭素鋼からなる円盤形状である。また、二次蓋111もステンレス鋼製または炭素鋼製の円盤形状であるが、その上面には中性子遮蔽体としてレジン112が封入されている。一次蓋110および二次蓋111は、ステンレス鋼製または炭素鋼製のボルト113によって胴本体101に取り付けられている。さらに、一次蓋110および二次蓋111と胴本体101との間にはそれぞれ金属ガスケットが設けられ、内部の密封性を保持している。また、蓋部109の周囲には、レジン114を封入した補助遮蔽体115が設けられている。
【0017】
キャスク本体116の両側には、キャスク100を吊り下げるためのトラニオン117が設けられている。なお、図1では、補助遮蔽体115を設けたものを示したが、キャスク100の搬送時には補助遮蔽体115を取り外して緩衝体(図示省略)を取り付ける。緩衝体は、ステンレス鋼材により作成した外筒(図示省略)内にレッドウッド材などの緩衝材を組み込んだ構造である。
【0018】
バスケット130は、使用済み核燃料を収容する角パイプ132のバスケットセル131の集合体から構成される。当該角パイプ132のバスケットセル131には、ホウ素入りのアルミニウム合金材料を用いる。
【0019】
また、キャビティ102のうちバスケットセル数が5個または7個となる角パイプ列の両側には、それぞれダミーパイプ133が挿入されている。このダミーパイプ133は、胴本体101の重量を軽減すると共に胴本体101の厚みを均一化すること、角パイプ132を確実に固定することを目的とする。このダミーパイプ133にもホウ素入りのアルミニウム合金材料を用い、上記同様の工程により製作する。なお、このダミーパイプ133は省略することもできる。
【0020】
キャスク100に収容する使用済み核燃料集合体は、核分裂性物質および核分裂生成物などを含み、放射線を発生すると共に崩壊熱を伴うため、キャスク100の除熱機能、遮蔽機能および臨界防止機能を貯蔵期間中(60年程度)、確実に維持する必要がある。キャスク100では、胴本体101のキャビティ102内を機械加工してバスケットセル131で構成したバスケット130の外側を略密着状態(大きな隙間なし)で挿入するようにしている。
【0021】
さらに、胴本体101と外筒105との間に内部フィン107を設け、この空間をレジン106で充填している。このため、燃料棒からの熱は、角パイプ132のバスケットセル131或いは充填したヘリウムガスを通じて胴本体101に伝導し、主に内部フィン107を通じて外筒105から放出されることになる。
【0022】
また、使用済み核燃料集合体から発生するγ線は、炭素鋼あるいはステンレス鋼からなる胴本体101、外筒105、蓋部109などにおいて遮蔽される。また、中性子はレジン106によって遮蔽され、放射線業務従事者に対する被ばく上の影響をなくすようにしている。具体的には、表面線当量率が2mSv/h以下、表面から1mの線量当量率が100μSv/h以下になるような遮蔽機能が得られるように設計する。さらに、バスケットセル131を構成する角パイプ132には、ホウ素入りのアルミニウム合金材料を用いているので、中性子を吸収して臨界に達するのを防止することができる。
【0023】
さらに、このキャスク100によれば、胴本体101のキャビティ102内を機械加工しバスケット130の外周を構成する角パイプ132のバスケットセル131を略密着状態で挿入するようにしたので、バスケットセル131とキャビティ102との対面する面積が広くなり、バスケットセル131である角パイプ132からの熱伝導を良好にできる。
【0024】
また、キャビティ102内の空間領域をなくすことができるから、角パイプ132のバスケットセル131の収容数が同じであれば、胴本体101をコンパクトかつ軽量にすることができる。逆に、胴本体101の外径を変えない場合、それだけバスケットセル数を確保できるから、使用済み核燃料集合体の収容数を増加することができる。具体的に当該キャスク100では、使用済み核燃料集合体の収容数を69体にでき、かつキャスク本体116の外径を2560mm、重量を120tonに抑えることができる。
【0025】
なお、このバスケット130は、集合体を構成するバスケットセル131の部材が前述したホウ素入りのアルミニウム合金材料から製造されたものであり、従って、全体が中性子吸収能を有したものとなる。
【0026】
図3は、バスケット130の構造を示す部分斜視図である。バスケット130は、ほぼ矩形断面の長さ1m程度のバスケットセル135を、互いの外面同士を接触させて多数結束したバスケット分割体136a、136b、136c、・・・からなり、それらバスケット分割体136a、136b、136c、・・・を複数段積み上げて一体化させた構造となっている。各バスケットセル135の結束方法としては、溶接、ロウ付け、連結部材を介してビスやリベットで固定するなど、公知の方法から適宜選択すればよい。
【0027】
図4は、バスケットセル135の正面図を示しており、ハッチングが施されている部分が摩擦撹拌溶接法による接合部分を示している。また、図5は、バスケットセル135を構成する部材を示している。
図4および図5に示すように、バスケットセル135は、コーナ部材140と、平板部材141という2種類の部材から構成されている。コーナ部材140および平板部材141は、いずれもホウ素含有アルミニウム合金で構成された熱間押出し材である。なお、コーナ部材140の最大厚さt1は50mm、平板部材141の厚さt2は10mmである。したがって、バスケットセル135の空隙部分135hを含む厚さは50mmとなる。
図5に示すように、コーナ部材140は、略L字状の断面を有し、直行する2本の脚部140aを備えている。脚部140aの厚さt3は310mmである。また、コーナ部材140は、平板部材141との接続をなすための段差部140bを備えている。さらに、コーナ部材140は、長手方向(紙面の垂直方向)に貫通する空隙140cを備えている。図4および図5に示すように、隣接するコーナ部材140はその脚部140a同士が突き合わされ、かつその状態で隣接するコーナ部材140の段差部140bにて平板部材141を支持するように組み合わされる。コーナ部材140の脚部140a同士の接合、コーナ部材140と平板部材141との接合は、摩擦撹拌溶接によって行う。ここで、コーナ部材140の脚部140aの厚さが10mm、平板部材141の厚さが10mmであるから、接合部142は、バスケットセル135の厚さ未満の厚さを有しているコーナ部材140、平板部材141であって、かつ所定の平坦領域に配置されることになる。
【0028】
図9は摩擦撹拌溶接によってコーナ部材140と平板部材141とを接合している様子を示す部分斜視図である。摩擦撹拌溶接は、接合すべき個所に押圧した回転工具を回転させながら接合線に沿って移動させ、接合すべき個所を発熱、軟化させ、塑性流動させ、固相接合する方法である。
【0029】
符号200はコーナ部材140と平板部材141の境界線上に位置決めされ矢印A方向に回転しながら矢印B方向に向かって移動する回転工具である。この回転工具200は、モータ(図示せず)に連結される基部201と、円盤状の形状を有し回転しながらコーナ部材140および平板部材141を押圧する押圧部202と、この押圧部202の中央部に取り付けられコーナ部材140および平板部材141同士を摩擦撹拌するプローブ203とを備えている。このプローブ203は、例えばバルク状のc−BNにて構成され、その長さは2〜4mm、根元部の直径は10〜15mmである。
【0030】
コーナ部材140と平板部材141の境界線上に沿って回転工具200を矢印A方向に回転させながら、矢印B方向に移動させて摩擦撹拌接合を行う。ここで、回転工具200の回転速度は300〜1000rpm、移動速度は100〜500mm/sec程度に設定することが好ましい。プローブ203の通過部位には、コーナ部材140と平板部材141とが摩擦撹拌溶接された接合部142が形成される。
【0031】
摩擦撹拌溶接は、上述したように、回転工具200を相当の力で被溶接部材に押圧する。この押圧力に抗することのできる治具で被溶接部材を支持する必要がある。この治具を考慮すると、コーナ部で2つの部材を溶接するよりも本実施の形態のように、所定の平坦領域内において摩擦撹拌溶接を実施することが望ましい。また、摩擦撹拌接合は、現状では接合深さに限界がある。そのために板厚の厚い部分を溶接するのは避けることが要望される、本実施の形態では厚さが10mm程度の板厚の部分に対して摩擦撹拌接合を適用しているため、前記要望を満足することができる。
【0032】
例えば図10に示す形態で平板部材440の端部同士を摩擦撹拌溶接すると、平板部材440同士の間に図10の水平方向に未接合部が生じてしまい、これが切り欠きとなって接合部442の接合強度に悪影響を与える。これを避けるために、例えば図11に示す形態で平板部材540同士の端部を摩擦撹拌溶接して接合部542で接合することも考えられるが、平板部材540が50mm程度の板厚を有する場合には、接合深さが足りず、やはり未接合部分が生じてしまう。以上に対して、本実施の形態は、平面部でかつ板厚が10mm程度の部位に対して摩擦撹拌溶接を適用できるようにバスケットセル135を分割している。
【0033】
本実施の形態において、コーナ部材140と平板部材141との接合箇所には未接合部が生じないようにすることが望ましい。そのためには、コーナ部材140の段差部140bの幅を最適化する。例えば、図6(a)に示すように段差部140bの幅をWとした場合に、図6(b)に示すように摩擦撹拌溶接による接合部142がコーナ部材140の縁まで存在するように幅Wを設定することが望ましい。
【0034】
コーナ部材140と平板部材141との間の切り欠き発生を防止することのできる他の手法を図7に基づいて説明する。
図7(a)に示すように、平板部材241の端部を支持するコーナ部材240の段差部240bに溝240hを形成する。そして、平板部材241の端部を段差部240bにて支持した状態で摩擦撹拌溶接を行う。その結果、図7(b)に示すように、コーナ部材240と平板部材241とは接合部242を介して接続される。このとき、溝240hが存在しているため、接合部242がコーナ部材240の縁にかからなくても切り欠きは発生しない。
【0035】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態ではコーナ部材140(240)と平板部材141(241)という2種類の部材を用いてバスケットセル135を作成したが、本実施の形態では1種類の部材を用いてバスケットセル135を作成する例を説明する。
図8(a)は、バスケットセル135を構成する平板部材340の正面図を示している。平板部材340は、ホウ素含有アルミニウム合金で構成された熱間押出し材である。本実施の形態では、この平板部材340だけを用いてバスケットセル135を作成する。この平板部材340は、平坦部340aと、平坦部340aから45°の角度を持って垂下する垂下部340bとから構成される。垂下部340bの先端部には段差部340cが形成されている。段差部340cの存在は、垂下部340bの端部に薄肉部が形成されたことを意味している。
【0036】
図8(b)に示すように、平板部材340の垂下部340bの端面同士を突き合わせた状態で、突き合わせ面を摩擦撹拌溶接することにより、2つの平板部材340は接合部341を介して接合される。このように、段差部340cの寸法を調節することにより、図8(b)に示すように切り欠きを発生させることなく、摩擦撹拌溶接による接合部341を形成することができる。
【0037】
本実施の形態によれば、1種類の部材のみを用意することにより、摩擦撹拌溶接によってバスケットセル135を作成することができる。なお、得られたバスケットセル135は、複数組み合わせることにより図3に示すバスケット130が構成され、かつこのバスケット130は図1および図2に示すようにキャスク100内に配設される。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択し、あるいは他の構成に適宜変更することが可能である。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、バスケットとして十分な板厚を有する空隙バスケットセルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態におけるキャスクを示す斜視図である。
【図2】本実施の形態によるキャスクの正断面図である。
【図3】本実施の形態によるバスケットの斜視図である。
【図4】本実施の形態によるバスケットセルの正面図である。
【図5】本実施の形態によるバスケットセルの構成部材を示す図である。
【図6】第1の実施の形態によるコーナ部材と平板部材との接合部の例を示す図である。
【図7】第1の実施の形態によるコーナ部材と平板部材との接合部の他の例を示す図である。
【図8】第2の実施の形態による平板部材およびその接合構造を示す図である。
【図9】摩擦撹拌溶接の様子を示す図である。
【図10】平板部材同士の接合構造の例を示す図である。
【図11】平板部材同士の接合構造の他の例を示す図である。
【符号の説明】
100…キャスク、101…胴本体、109…蓋部、115…補助遮蔽体、116…キャスク本体、130…バスケット、131,135…バスケットセル、132…角パイプ、133…ダミーパイプ、140,240,340…コーナ部材、141,241,341…平板部材、142…接合部、200…回転工具、201…基部、202…押圧部、203…プローブ
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子力関連設備や放射性物質の輸送や貯蔵用として使用するキャスク内に装荷される使用済み核燃料を収容するためのバスケットに関し、特にバスケットの組み立て構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、中性子吸収能を有するB(ホウ素)を添加したステンレス鋼やアルミニウム合金が、中性子などの放射線を発する使用済み核燃料の収納容器など原子力関連設備の構造部材として用いられていた。この構造部材の一例として、キャスクが存在する。
キャスクは、全体がほぼ円筒形状の収容容器であり、使用済み核燃料集合体をキャスク内部の所定位置に収容するためのバスケットをその構成要素としている。特開2002−20828号公報には、このキャスクまたはバスケットをホウ素−アルミニウム合金粉末を用いて作成する技術が開示されている。
【0003】
バスケットは、特開2002−20828号公報にも記載されているように、ほぼ矩形状のバスケットセルを互いの外面同士を接触させて多数結束した構造を有している。燃焼度の高い使用済み核燃料を収容する場合、遮蔽距離を多くとるために、バスケットセルを構成する板体の厚さを厚くする必要がある。このとき、バスケットセル、ひいてはバスケットの重量増を抑制するために、バスケットセルを構成する板部分に空隙を形成することが提案されている。このバスケットセルを本明細書中では、空隙バスケットセルと呼ぶことにする。
【0004】
空隙バスケットセルを鋳造により製造することは、以下のような点が問題となり、実用化は困難である。つまり、アルミニウム合金溶湯中で比重の異なる多種のホウ素化合物が生成し、それらが沈澱または浮揚する。そのため、得られたアルミニウム合金材のホウ素含有量は、実際のホウ素添加量よりも低くなるという問題点がある。また、発生するホウ素化合物の大きさの多くは数百μm程度であることと、微細なホウ素化合物は凝集して粗大化するため、母材中のホウ素の均一性が得られないという問題点がある。ホウ素を添加したアルミニウム合金材において、このようにホウ素含有量が低くなったり、ホウ素の分布が不均一になると、十分な中性子吸収能が得られなくなってしまう。
【0005】
特開2002−20828号公報は、ホウ素を含有するアルミニウム合金粉末を製造し、それを単独で、または炭化ホウ素(B4C)と混合した後、加圧成形して圧粉体を形成し、それを加熱溶融して鋳造するのが有効であることを開示している。ただし、特開2002−20828号公報は、その図10に記載されている単純な形態のバスケットセルを製造することはできるが、空隙バスケットセルを製造することはできない。熱間押出しにより空隙バスケットセルを製造することも選択肢としてはある。しかし、バスケットセルの板厚が数十mm程度あるために、熱間押出しにより空隙バスケットセルを製造することは容易でない。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−20828号公報(図10)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、キャスクに用いるバスケットとして十分な板厚を有する空隙バスケットセルを提供することを目的とする。また本発明は、このバスケットセルを用いたバスケット、キャスクを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる目的のもと本発明者は、空隙バスケットセルを一体として製造するのではなく、複数の部材の組み合わせとして製造することを検討した。その結果、複数の部材を組み合わせる際に、レーザ溶接法で接合した場合には、接合部分には、ホウ素析出物の不均一分散が生じ、中性子吸収能に不均一が生じるおそれがあることが判明した。一方で、摩擦撹拌溶接(Friction Stir Welding)を用いて接合すると、ホウ素析出物の不均一分散の発生を防止することができることを知見した。ところが、摩擦撹拌溶接は、接合部の厚さに限界があるため、接合部分が限定されてしまう。したがって、接合部を選択した組み合わせ形態とすることが必要である。
本発明は、使用済み核燃料集合体を収容するバスケットの構成要素であり、側壁要素が中空角筒状をなして構成されるバスケットセルであって、このバスケットセルは、複数の部材の組み合せとして構成されかつ側壁要素に所定の空隙が形成されたセル本体と、複数の部材同士を接合する接合部とを備え、接合部は、前記部材における空隙を含む側壁要素の厚さ未満の厚さを有する所定の平坦領域内に配置されたことを特徴とする。
本発明のバスケットセルは、接合部の厚さを側壁要素の厚さ未満とするので、摩擦撹拌溶接によっても十分な接合を確保することができる。また、本発明のバスケットセルは、接合部を所定の平坦領域内に配置するので、摩擦撹拌溶接を行う際の溶接作業の容易性を確保することができる。
【0009】
本発明において、複数の部材は、一体で形成されかつバスケットセルのコーナ部に配置されるコーナ部材を含むとよい。
本発明は、コーナ部材のみでバスケットセルを構成することができるが、複数の部材としてさらに平板状部材を含むこともできる。つまり本発明は、コーナ部材と平板部材とを適宜組み合わせることにより、バスケットセルを構成することができる。
本発明のバスケットセルは、以上のような複数の部材を適宜組み合わせた構成とすることにより、接合部に切り欠きが生じない位置に配置することができる。切り欠きが生ずると、強度的に弱い部分が生ずることになるため、これを防止しようというものである。
【0010】
以上では、バスケットセルのコーナ部を除く部分に接合部を配置することを想定しているが、本発明はコーナ部に接合部を配置することもできる。この場合、複数の部材は両端部に垂下部を有する4つの平板状部材を含み、この垂下部同士を突き合わせ、かつこの突き合わせ部位に接合部を配置することができる。この際、接合部が空隙を含む側壁要素の厚さ未満の厚さを有し、かつ所定の平坦領域内に配置されるように、垂下部の形状を調整する。例えば、垂下部の先端の肉厚を薄くすればよい。
【0011】
以上の本発明によるバスケットセルにおいて、複数の部材を接合する際に摩擦撹拌接合を用いることにより、接合部を摩擦撹拌溶接により形成することが望ましい。
【0012】
本発明は、以上のバスケットセルを用いた下記のバスケットを提供する。すなわち本発明は、使用済み核燃料をキャスクの所定位置に収納するための格子状断面を有するバスケットであって、バスケットを構成するバスケットセルは、複数の部材の組み合せとして構成されかつ側壁要素に所定の空隙が形成されたセル本体と、複数の部材同士を接合する接合部とを備え、接合部は、空隙を含む側壁要素の厚さ未満の厚さを有する所定の平坦領域内に配置されたことを特徴とする。
【0013】
本発明は、以上のバスケットを用いたキャスクを提供する。このキャスクは、使用済み核燃料をキャスクの所定位置に収納するための格子状断面を有するバスケットと、耐圧を受け持つ胴本体とその周囲を取り巻く中性子遮蔽部とを有し、バスケットを内部に収納する中空のキャスク本体と、使用済み核燃料をバスケットに出し入れするために設けられたキャスク本体の開口部に着脱可能な蓋とを備え、バスケットは、複数のバスケットセルから構成され、バスケットセルは、複数の部材の組み合せとして構成されかつ側壁要素に所定の空隙が形成されたセル本体と、複数の部材同士を接合する接合部とを備え、接合部は、空隙を含む側壁要素の厚さ未満の厚さを有する所定の平坦領域内に配置されたことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態におけるキャスク100を示す部分断面斜視図を、図2に図1に示したキャスク100の径方向断面図を示す。
キャスク100は、胴本体101のキャビティ102内面をバスケット130の外周形状に合わせて機械加工したものである。胴本体101および底板104は、γ線遮蔽機能を有する炭素鋼や低合金鋼製の鍛造品である。なお、炭素鋼の代わりにステンレス鋼を用いることもできる。前記胴本体101と底板104は、溶接により結合する。また、耐圧容器としての密閉性能を確保するため、一次蓋110と胴本体101との間には金属ガスケットを設けておく。
【0015】
胴本体101と外筒105との間には、水素を多く含有する高分子材料であって中性子遮蔽機能を有するレジン106が充填されている。また、胴本体101と外筒105との間には熱伝導を行う複数の銅製内部フィン107が溶接されており、前記レジン106は、この内部フィン107によって形成される空間に流動状態で注入され、冷却固化される。なお、内部フィン107は、放熱を均一に行うため、熱量の多い部分に高い密度で設けるようにするのが好ましい。また、レジン106と外筒105との間には、数mmの熱膨張しろ108が設けられる。
【0016】
蓋部109は、一次蓋110と二次蓋111により構成される。この一次蓋110は、γ線を遮蔽するステンレス鋼または炭素鋼からなる円盤形状である。また、二次蓋111もステンレス鋼製または炭素鋼製の円盤形状であるが、その上面には中性子遮蔽体としてレジン112が封入されている。一次蓋110および二次蓋111は、ステンレス鋼製または炭素鋼製のボルト113によって胴本体101に取り付けられている。さらに、一次蓋110および二次蓋111と胴本体101との間にはそれぞれ金属ガスケットが設けられ、内部の密封性を保持している。また、蓋部109の周囲には、レジン114を封入した補助遮蔽体115が設けられている。
【0017】
キャスク本体116の両側には、キャスク100を吊り下げるためのトラニオン117が設けられている。なお、図1では、補助遮蔽体115を設けたものを示したが、キャスク100の搬送時には補助遮蔽体115を取り外して緩衝体(図示省略)を取り付ける。緩衝体は、ステンレス鋼材により作成した外筒(図示省略)内にレッドウッド材などの緩衝材を組み込んだ構造である。
【0018】
バスケット130は、使用済み核燃料を収容する角パイプ132のバスケットセル131の集合体から構成される。当該角パイプ132のバスケットセル131には、ホウ素入りのアルミニウム合金材料を用いる。
【0019】
また、キャビティ102のうちバスケットセル数が5個または7個となる角パイプ列の両側には、それぞれダミーパイプ133が挿入されている。このダミーパイプ133は、胴本体101の重量を軽減すると共に胴本体101の厚みを均一化すること、角パイプ132を確実に固定することを目的とする。このダミーパイプ133にもホウ素入りのアルミニウム合金材料を用い、上記同様の工程により製作する。なお、このダミーパイプ133は省略することもできる。
【0020】
キャスク100に収容する使用済み核燃料集合体は、核分裂性物質および核分裂生成物などを含み、放射線を発生すると共に崩壊熱を伴うため、キャスク100の除熱機能、遮蔽機能および臨界防止機能を貯蔵期間中(60年程度)、確実に維持する必要がある。キャスク100では、胴本体101のキャビティ102内を機械加工してバスケットセル131で構成したバスケット130の外側を略密着状態(大きな隙間なし)で挿入するようにしている。
【0021】
さらに、胴本体101と外筒105との間に内部フィン107を設け、この空間をレジン106で充填している。このため、燃料棒からの熱は、角パイプ132のバスケットセル131或いは充填したヘリウムガスを通じて胴本体101に伝導し、主に内部フィン107を通じて外筒105から放出されることになる。
【0022】
また、使用済み核燃料集合体から発生するγ線は、炭素鋼あるいはステンレス鋼からなる胴本体101、外筒105、蓋部109などにおいて遮蔽される。また、中性子はレジン106によって遮蔽され、放射線業務従事者に対する被ばく上の影響をなくすようにしている。具体的には、表面線当量率が2mSv/h以下、表面から1mの線量当量率が100μSv/h以下になるような遮蔽機能が得られるように設計する。さらに、バスケットセル131を構成する角パイプ132には、ホウ素入りのアルミニウム合金材料を用いているので、中性子を吸収して臨界に達するのを防止することができる。
【0023】
さらに、このキャスク100によれば、胴本体101のキャビティ102内を機械加工しバスケット130の外周を構成する角パイプ132のバスケットセル131を略密着状態で挿入するようにしたので、バスケットセル131とキャビティ102との対面する面積が広くなり、バスケットセル131である角パイプ132からの熱伝導を良好にできる。
【0024】
また、キャビティ102内の空間領域をなくすことができるから、角パイプ132のバスケットセル131の収容数が同じであれば、胴本体101をコンパクトかつ軽量にすることができる。逆に、胴本体101の外径を変えない場合、それだけバスケットセル数を確保できるから、使用済み核燃料集合体の収容数を増加することができる。具体的に当該キャスク100では、使用済み核燃料集合体の収容数を69体にでき、かつキャスク本体116の外径を2560mm、重量を120tonに抑えることができる。
【0025】
なお、このバスケット130は、集合体を構成するバスケットセル131の部材が前述したホウ素入りのアルミニウム合金材料から製造されたものであり、従って、全体が中性子吸収能を有したものとなる。
【0026】
図3は、バスケット130の構造を示す部分斜視図である。バスケット130は、ほぼ矩形断面の長さ1m程度のバスケットセル135を、互いの外面同士を接触させて多数結束したバスケット分割体136a、136b、136c、・・・からなり、それらバスケット分割体136a、136b、136c、・・・を複数段積み上げて一体化させた構造となっている。各バスケットセル135の結束方法としては、溶接、ロウ付け、連結部材を介してビスやリベットで固定するなど、公知の方法から適宜選択すればよい。
【0027】
図4は、バスケットセル135の正面図を示しており、ハッチングが施されている部分が摩擦撹拌溶接法による接合部分を示している。また、図5は、バスケットセル135を構成する部材を示している。
図4および図5に示すように、バスケットセル135は、コーナ部材140と、平板部材141という2種類の部材から構成されている。コーナ部材140および平板部材141は、いずれもホウ素含有アルミニウム合金で構成された熱間押出し材である。なお、コーナ部材140の最大厚さt1は50mm、平板部材141の厚さt2は10mmである。したがって、バスケットセル135の空隙部分135hを含む厚さは50mmとなる。
図5に示すように、コーナ部材140は、略L字状の断面を有し、直行する2本の脚部140aを備えている。脚部140aの厚さt3は310mmである。また、コーナ部材140は、平板部材141との接続をなすための段差部140bを備えている。さらに、コーナ部材140は、長手方向(紙面の垂直方向)に貫通する空隙140cを備えている。図4および図5に示すように、隣接するコーナ部材140はその脚部140a同士が突き合わされ、かつその状態で隣接するコーナ部材140の段差部140bにて平板部材141を支持するように組み合わされる。コーナ部材140の脚部140a同士の接合、コーナ部材140と平板部材141との接合は、摩擦撹拌溶接によって行う。ここで、コーナ部材140の脚部140aの厚さが10mm、平板部材141の厚さが10mmであるから、接合部142は、バスケットセル135の厚さ未満の厚さを有しているコーナ部材140、平板部材141であって、かつ所定の平坦領域に配置されることになる。
【0028】
図9は摩擦撹拌溶接によってコーナ部材140と平板部材141とを接合している様子を示す部分斜視図である。摩擦撹拌溶接は、接合すべき個所に押圧した回転工具を回転させながら接合線に沿って移動させ、接合すべき個所を発熱、軟化させ、塑性流動させ、固相接合する方法である。
【0029】
符号200はコーナ部材140と平板部材141の境界線上に位置決めされ矢印A方向に回転しながら矢印B方向に向かって移動する回転工具である。この回転工具200は、モータ(図示せず)に連結される基部201と、円盤状の形状を有し回転しながらコーナ部材140および平板部材141を押圧する押圧部202と、この押圧部202の中央部に取り付けられコーナ部材140および平板部材141同士を摩擦撹拌するプローブ203とを備えている。このプローブ203は、例えばバルク状のc−BNにて構成され、その長さは2〜4mm、根元部の直径は10〜15mmである。
【0030】
コーナ部材140と平板部材141の境界線上に沿って回転工具200を矢印A方向に回転させながら、矢印B方向に移動させて摩擦撹拌接合を行う。ここで、回転工具200の回転速度は300〜1000rpm、移動速度は100〜500mm/sec程度に設定することが好ましい。プローブ203の通過部位には、コーナ部材140と平板部材141とが摩擦撹拌溶接された接合部142が形成される。
【0031】
摩擦撹拌溶接は、上述したように、回転工具200を相当の力で被溶接部材に押圧する。この押圧力に抗することのできる治具で被溶接部材を支持する必要がある。この治具を考慮すると、コーナ部で2つの部材を溶接するよりも本実施の形態のように、所定の平坦領域内において摩擦撹拌溶接を実施することが望ましい。また、摩擦撹拌接合は、現状では接合深さに限界がある。そのために板厚の厚い部分を溶接するのは避けることが要望される、本実施の形態では厚さが10mm程度の板厚の部分に対して摩擦撹拌接合を適用しているため、前記要望を満足することができる。
【0032】
例えば図10に示す形態で平板部材440の端部同士を摩擦撹拌溶接すると、平板部材440同士の間に図10の水平方向に未接合部が生じてしまい、これが切り欠きとなって接合部442の接合強度に悪影響を与える。これを避けるために、例えば図11に示す形態で平板部材540同士の端部を摩擦撹拌溶接して接合部542で接合することも考えられるが、平板部材540が50mm程度の板厚を有する場合には、接合深さが足りず、やはり未接合部分が生じてしまう。以上に対して、本実施の形態は、平面部でかつ板厚が10mm程度の部位に対して摩擦撹拌溶接を適用できるようにバスケットセル135を分割している。
【0033】
本実施の形態において、コーナ部材140と平板部材141との接合箇所には未接合部が生じないようにすることが望ましい。そのためには、コーナ部材140の段差部140bの幅を最適化する。例えば、図6(a)に示すように段差部140bの幅をWとした場合に、図6(b)に示すように摩擦撹拌溶接による接合部142がコーナ部材140の縁まで存在するように幅Wを設定することが望ましい。
【0034】
コーナ部材140と平板部材141との間の切り欠き発生を防止することのできる他の手法を図7に基づいて説明する。
図7(a)に示すように、平板部材241の端部を支持するコーナ部材240の段差部240bに溝240hを形成する。そして、平板部材241の端部を段差部240bにて支持した状態で摩擦撹拌溶接を行う。その結果、図7(b)に示すように、コーナ部材240と平板部材241とは接合部242を介して接続される。このとき、溝240hが存在しているため、接合部242がコーナ部材240の縁にかからなくても切り欠きは発生しない。
【0035】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態ではコーナ部材140(240)と平板部材141(241)という2種類の部材を用いてバスケットセル135を作成したが、本実施の形態では1種類の部材を用いてバスケットセル135を作成する例を説明する。
図8(a)は、バスケットセル135を構成する平板部材340の正面図を示している。平板部材340は、ホウ素含有アルミニウム合金で構成された熱間押出し材である。本実施の形態では、この平板部材340だけを用いてバスケットセル135を作成する。この平板部材340は、平坦部340aと、平坦部340aから45°の角度を持って垂下する垂下部340bとから構成される。垂下部340bの先端部には段差部340cが形成されている。段差部340cの存在は、垂下部340bの端部に薄肉部が形成されたことを意味している。
【0036】
図8(b)に示すように、平板部材340の垂下部340bの端面同士を突き合わせた状態で、突き合わせ面を摩擦撹拌溶接することにより、2つの平板部材340は接合部341を介して接合される。このように、段差部340cの寸法を調節することにより、図8(b)に示すように切り欠きを発生させることなく、摩擦撹拌溶接による接合部341を形成することができる。
【0037】
本実施の形態によれば、1種類の部材のみを用意することにより、摩擦撹拌溶接によってバスケットセル135を作成することができる。なお、得られたバスケットセル135は、複数組み合わせることにより図3に示すバスケット130が構成され、かつこのバスケット130は図1および図2に示すようにキャスク100内に配設される。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択し、あるいは他の構成に適宜変更することが可能である。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、バスケットとして十分な板厚を有する空隙バスケットセルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態におけるキャスクを示す斜視図である。
【図2】本実施の形態によるキャスクの正断面図である。
【図3】本実施の形態によるバスケットの斜視図である。
【図4】本実施の形態によるバスケットセルの正面図である。
【図5】本実施の形態によるバスケットセルの構成部材を示す図である。
【図6】第1の実施の形態によるコーナ部材と平板部材との接合部の例を示す図である。
【図7】第1の実施の形態によるコーナ部材と平板部材との接合部の他の例を示す図である。
【図8】第2の実施の形態による平板部材およびその接合構造を示す図である。
【図9】摩擦撹拌溶接の様子を示す図である。
【図10】平板部材同士の接合構造の例を示す図である。
【図11】平板部材同士の接合構造の他の例を示す図である。
【符号の説明】
100…キャスク、101…胴本体、109…蓋部、115…補助遮蔽体、116…キャスク本体、130…バスケット、131,135…バスケットセル、132…角パイプ、133…ダミーパイプ、140,240,340…コーナ部材、141,241,341…平板部材、142…接合部、200…回転工具、201…基部、202…押圧部、203…プローブ
Claims (8)
- 使用済み核燃料集合体を収容するバスケットの構成要素であり、側壁要素が中空角筒状をなして構成されるバスケットセルであって、
前記バスケットセルは、
複数の部材の組み合せとして構成されかつ前記側壁要素に所定の空隙が形成されたセル本体と、
複数の前記部材同士を接合する接合部とを備え、
前記接合部は、前記部材における前記空隙を含む前記側壁要素の厚さ未満の厚さを有する所定の平坦領域内に配置されたことを特徴とするバスケットセル。 - 複数の前記部材は、一体で形成されかつ前記バスケットセルのコーナ部に配置されるコーナ部材を含むことを特徴とする請求項1に記載のバスケットセル。
- 複数の前記部材は、平板状部材を含むことを特徴とする請求項2に記載のバスケットセル。
- 前記接合部は切り欠きが生じない位置に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバスケットセル。
- 複数の前記部材は両端部に垂下部を有する4つの平板状部材を含み、この垂下部同士を突き合わせ、かつこの突き合わせ部位に接合部を配置することを特徴とする請求項1または4に記載のバスケットセル。
- 前記接合部は、摩擦撹拌溶接により形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のバスケットセル。
- 使用済み核燃料をキャスクの所定位置に収納するための格子状断面を有するバスケットであって、
前記バスケットを構成するバスケットセルは、
複数の部材の組み合せとして構成されかつ側壁要素に所定の空隙が形成されたセル本体と、
複数の前記部材同士を接合する接合部とを備え、
前記接合部は、前記空隙を含む前記側壁要素の厚さ未満の厚さを有する所定の平坦領域内に配置されたことを特徴とするバスケット。 - 使用済み核燃料をキャスクの所定位置に収納するための格子状断面を有するバスケットと、
耐圧を受け持つ胴本体とその周囲を取り巻く中性子遮蔽部とを有し、前記バスケットを内部に収納する中空のキャスク本体と、
前記使用済み核燃料を前記バスケットに出し入れするために設けられた前記キャスク本体の開口部に着脱可能な蓋とを備え、
前記バスケットは、複数のバスケットセルから構成され、
前記バスケットセルは、複数の部材の組み合せとして構成されかつ側壁要素に所定の空隙が形成されたセル本体と、
複数の前記部材同士を接合する接合部とを備え、
前記接合部は、前記空隙を含む前記側壁要素の厚さ未満の厚さを有する所定の平坦領域内に配置されたことを特徴とするキャスク。
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Cited By (2)
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JP2012512417A (ja) * | 2008-12-17 | 2012-05-31 | ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー | 炉心シュラウドのコーナー接続部 |
KR101428218B1 (ko) * | 2012-11-22 | 2014-08-08 | 주식회사 포스코 | 캐스크 바스켓을 제조하는 방법 |
-
2002
- 2002-10-10 JP JP2002297664A patent/JP2004132835A/ja not_active Withdrawn
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