JP2004123896A - メタクリル系重合体の製造方法 - Google Patents

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Mitsuhiro Matsuo
松尾 光弘
Hirotoshi Mizota
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Abstract

【課題】長時間連続運転を行うプロセスにおける重合反応器内の腐食と異常重合体の付着とを防止する連続塊状または連続溶液重合方法を提供する。
【解決手段】メタクリル酸エステルを含む原料を連続的に重合反応器に供給し、連続塊状重合または連続溶液重合させて、続いて重合反応液を連続的に脱揮押出機に供給して、メタクリル酸エステルを含む揮発物を脱揮して重合体を製造し、脱揮した揮発物を液化して再び原料として使用するメタクリル系重合体の製造方法において、液化した揮発物100質量部当たり第1級もしくは第2級のアミノ基含有化合物または塩基性化合物0.001〜0.8質量部を添加して30〜70℃の範囲内で保持した後、弱塩基性イオン交換樹脂に接触させてから再び原料として使用する。
【選択図】 無し

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、メタクリル系重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
メタクリル酸エステルを重合反応器内で重合する場合、重合反応器内の酸素を完全に除去することは困難であるため、重合反応器内に存在する微量の酸素によってメタクリル酸エステルが酸化され、メタクリル酸エステル過酸化物となる。この過酸化物は分解されて蟻酸等を生成する。
【0003】
この蟻酸は、メタクリル酸エステル中に微量に含まれている水分とともに重合反応器内に付着し、付着した箇所を腐食させる。その腐食によって発生した鉄イオンは、レドックス重合等の異常重合を開始する触媒となる。成長した異常重合体は重合反応器内に強固に付着して重合反応器の運転に悪影響を与えたり、製品に混入する等の問題を起こしていた。
【0004】
また連続塊状または連続溶液重合方法においては未反応のメタクリル酸エステルを再び原料として使用するため、原料中の蟻酸濃度が次第に高くなって、前記の問題がさらに深刻な状況になることがあった。
【0005】
そこで再び原料として使用するメタクリル酸エステルを塩基性イオン交換樹脂と接触させて蟻酸等の酸性成分を除去する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−87705号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方法では酸性成分の除去が不充分であった。本発明の目的は再度原料として使用するメタクリル酸エステル中の蟻酸等の酸性成分を充分に除去することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、メタクリル酸エステル、重合開始剤及び連鎖移動剤を含む原料を連続的に重合反応器に供給し、連続塊状重合または連続溶液重合させて重合反応液とし、続いてその重合反応液を連続的に脱揮押出機に供給して、メタクリル酸エステルを含む揮発物を脱揮して重合体を製造し、脱揮した揮発物を液化して再び原料として使用するメタクリル系重合体の製造方法において、液化した揮発物100質量部当たり第1級もしくは第2級のアミノ基含有化合物または塩基性化合物0.001〜0.8質量部を添加して30〜70℃の範囲内で保持した後、弱塩基性イオン交換樹脂に接触させてから再び原料として使用することを特徴とするメタクリル系重合体の製造方法にある。
【0009】
重合反応器が液相部と気相部とを有し、重合反応器の気相部内壁面温度が気相部圧力におけるメタクリル酸エステルの沸点以下であることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のメタクリル系重合体の製造方法における原料を構成するメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸アルキルエステル;フッ化アルキルメタクリレート、ベンジルメタクリレートが挙げられる。さらにアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、フッ化アルキルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸エステルや、スチレン、アクリロニトリル等を併用することもできる。これらの重合性成分中のメタクリル酸エステルの含有量は80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。すべてメタクリル酸エステルであってもよい。
【0011】
さらに、本発明においては重合性成分に重合開始剤と連鎖移動剤とを添加して原料とする。それらの添加量は、好ましい重合条件に応じて、適宜、設定することができる。
【0012】
重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサネート、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサネート等の有機過酸化物等が挙げられる。これらは併用することもできる。
【0013】
連鎖移動剤としては、イソプロピルメルカプタン、n−プロピルメルカプタン、イソブチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘプチルメルカプタン、イソオクチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、イソデシルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、sec−ドデシルメルカプタン等が挙げられる。これらは併用することもできる。
【0014】
本発明の製造方法においては、この原料を連続的に重合反応器に供給し、連続塊状重合または連続溶液重合させて、重合反応液とする。重合反応器は液相部と気相部とを有し、液相部を撹拌翼で撹拌するものが好ましい。
【0015】
液相部の重合温度は120〜180℃の範囲内であることが好ましい。重合温度が低すぎると生産性が低下する。高すぎると得られる重合体の物性が低下する。
【0016】
原料の重合体転化率を40〜60質量%の範囲内になるまで連続塊状重合または連続溶液重合させることが好ましい。重合体転化率が低すぎると生産性が低下する。高すぎると重合反応液の粘度が高くなりすぎて、工程通過性が悪くなる。
【0017】
連続溶液重合の場合、溶液としてはメタクリル酸エステルの沸点に近く、更に生成する重合体を溶解することができるトルエンやメチルエチルケトン等を用いることが好ましい。その含有量は原料中、1〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0018】
気相部の圧力は0.1〜5MPaの範囲内であることが好ましい。重合反応器の気相部内壁面温度を気相部圧力におけるメタクリル酸エステルの沸点以下にすると、気相部における異常重合体付着防止の面から好ましい。重合反応器の気相部内壁温度は冷却ジャケット等によって冷却することができる。
【0019】
続いて重合反応液をギアポンプ等を用いて連続的に脱揮押出機に供給する。脱揮押出機としてはベントを有する1軸、または2軸のものが挙げられる。重合反応液中の未反応のメタクリル酸エステル等の揮発物をベントから脱揮し、重合体を得る。脱揮された揮発物はコンデンサー等によって液化する。液化した揮発物は蒸留によって低沸点成分や高沸点成分を除去して、メタクリル酸エステルの含有率を高くすることが好ましい。
【0020】
本発明の製造方法においては、液化した揮発物100質量部当たり第1級もしくは第2級のアミノ基含有化合物または塩基性化合物0.001〜0.8質量部を添加する。
【0021】
第1級もしくは第2級のアミノ基含有化合物としては、脂肪族、芳香族アミンのいずれでもよく、1分子中に複数個のアミノ基を有するアミン類、アンモニア、ヒドラジンおよびその誘導体、さらにはヒドロキシルアミンおよびその無機酸塩等の化合物が挙げられる。たとえばプロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジーnープロピルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルエチルアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、N,N’ージフェニルエチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、アニリン、トルイジン、Nーエチルアニリン、Nープロピルアミン、ジフェニルアミン、フェニレンジアミン、N−メチルフェニレンジアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、アニシジン等が挙げられる。中でもエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等エチレンアミン類が効果的である。特にジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンジエタノールアミンは沸点が高いため、液化した揮発物の蒸留を行った際に、未反応のアミノ基含有化合物とメタクリル酸エステルとの分離が容易であり好ましい。液化した揮発物100質量部当たりの第1級もしくは第2級のアミノ基含有化合物の添加量が0.001質量部未満では添加する効果が少ない。0.8質量部よりも多いとメタクリル酸エステルの加水分解を併発し好ましくない。
【0022】
第1級もしくは第2級のアミノ基含有化合物は、水溶液の状態で液化揮発物に添加することが好ましい。水溶液における第1級もしくは第2級のアミノ基含有化合物の含有量は5〜50質量%であることが好ましい。
【0023】
本発明の製造方法においては液化した揮発物100質量部当たり、第1級もしくは第2級のアミノ基含有化合物の代わりに塩基性化合物0.001〜0.8質量部を添加することができる。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウムや水酸化アンモニウム等が揚げられる。塩基性化合物は水溶液の状態で液化揮発物に添加することが好ましい。水溶液における塩基性化合物の含有量は、0.01〜0.3質量%であることが好ましい。
【0024】
液化した揮発物に第1級もしくは第2級のアミノ基含有化合物または塩基性化合物を、好ましくは水溶液の状態で添加して30〜70℃の範囲内に加熱して保持する。撹拌しながら保持することが好ましい。保持時間は5分〜5時間、特に15分〜3時間の範囲内であることが好ましい。連続保持を行う場合には、液化した揮発物の保持槽内における滞在時間が15分以上になるよう調整することが好ましい。
【0025】
アミノ基含有化合物または塩基性化合物を添加した液化揮発物は、そのままつぎの工程へ移液しても良いが、さらに水を混合しアミノ基含有化合物や塩基性化合物を水層に溶解させてつぎの工程に移液することが好ましい。水の添加量は、液化した揮発物100質量部に対して30質量部から150質量部であることが好ましい。水を混合することで未反応のアミノ基含有化合物や塩基性化合物の90質量%以上が除去可能である。
【0026】
また、水を添加した液化揮発物は、デカンターにおいて水層と液化揮発物層とに分離して、水層を除去後、蒸留することが好ましい。蒸留する際には、フェノチアジン、ベンゾフェノチアジン等の重合禁止剤を添加して蒸留することが好ましい。
【0027】
次の工程で、液化揮発物を弱塩基性陰イオン交換樹脂に接触させる。弱塩基性イオン交換樹脂としては、交換容量、耐汚染性、低収縮性、再現性、再生頻度に耐える物理的強度の観点からスチレン系樹脂を母体とした弱塩基性陰イオン交換樹脂が最も好ましい。また、弱塩基性イオン交換樹脂は、水分を含む形態で市販されており、更に再生時の水洗で含水するため、公知の方法で乾燥或いは親水性有機溶媒で置換した後、液化揮発物と接触させることが水分の混入を防止する上で好ましい。接触させる際の空間速度は、SV=5〜15/hrの範囲内であることが好ましい。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0029】
[実施例1]
精製したメタクリル酸メチル(純度99.9質量%、酸価0.003mgKOH/g以下、水分180ppm)99質量%とアクリル酸メチル1質量%の混合物100質量部に対して、n−オクチルメルカプタン(ELF ATOCHEMNORTH AMERICA INC製、沸点199℃、純度99.5質量%)0.26質量部と2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬(株)製のV−60、沸点98℃、純度99重量%)0.003質量部とを混合した原料を、液相部の重合温度135℃、重合反応器気相部の圧力0.5MPaに制御された攪拌混合下の完全混合型重合反応器に連続的に供給し、連続塊状重合を行った。
【0030】
重合反応器内の液相部はダブルヘリカルリボン翼により撹拌混合した。液相部における平均滞留時間は4時間とした。重合反応器気相部は外部にジャケットを設けてその中に冷却水を流して、重合反応器の気相部内壁面温度を60℃、気相部中心温度を60℃に冷却した。なお、この圧力におけるメタクリル酸メチルの沸点は170℃である。
【0031】
続いて、液相部から重合反応液を重合反応器の底部より抜き出し、連続的に脱揮押出機に供給して、未反応メタクリル酸メチルを含む揮発物を分離除去し重合体を得た。単位時間当たりの重合反応器に供給する原料量と、脱揮押出機先端から得られる重合体量から求めた重合反応器における重合体転化率は、59質量%であった。
【0032】
上記運転を連続的に行った時に分離除去された揮発物をコンデンサーによって液化し液化揮発物を得た。その液化揮発物を一時的にタンクに回収し、キャピラリガスクロマトグラフィー及び他の分析機器を用いて分析したところ、重合性成分の組成は、メタクリル酸メチル97質量%およびアクリル酸メチル3質量%であった。また、水分は480ppm、酸価0.02mgKOH/gであった。液化揮発物100質量部に対して10質量%トリエチレンテトラミン水溶液0.1質量部、即ち、液化揮発物100質量部に対してトリエチレンテトラミン0.01質量部の割合で添加し、40℃で2時間攪拌しながら保持した。
【0033】
次いで液化揮発物に100質量部の純水を添加し、攪拌、静置後、水層と分離した上層の液化揮発物を1.3kPa減圧下で単蒸留を行い、94質量%の回収率で回収した。この精製液化揮発物を更にスチレン系弱塩基性陰イオン交換樹脂(Rohm and Haas製 Amberlite IRA96SB)を充填したイオン交換樹脂塔を用い、空間速度SV=10/hrで連続的に1パス処理し、残存する酸性成分を除去した。得られた液化揮発物を前述の分析法と同じ方法にて分析したところ、単量体の組成は、メタクリル酸メチル97質量%およびアクリル酸メチル3質量%であった。また、水分は200ppm、酸価0.002mgKOH/gであった。
【0034】
この処理された液化揮発物を30質量%含む原料を調整して、連続的に使用して6ヵ月間、連続塊状重合を行った。6ヵ月後に重合反応器内部を観察した結果、腐食は認められず異常重合体の付着も認められなかった。
【0035】
[比較例1]
弱塩基性イオン交換樹脂との接触を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして連続塊状重合した。重合反応器内部の一部に腐食が見られ、周辺に異常重合体の付着が認められた。
【0036】
[比較例2]
トリエチレンテトラミンの添加を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして連続塊状重合した。重合反応器内部の一部に腐食が見られ、周辺に異常重合体の付着が認められた。
【0037】
【発明の効果】
本発明によって、従来長時間連続運転を行うプロセスにおける重合反応器内の腐食と異常重合体の付着とを防止する連続塊状または連続溶液重合方法が得られる。

Claims (2)

  1. メタクリル酸エステル、重合開始剤及び連鎖移動剤を含む原料を連続的に重合反応器に供給し、連続塊状重合または連続溶液重合させて重合反応液とし、続いてその重合反応液を連続的に脱揮押出機に供給して、メタクリル酸エステルを含む揮発物を脱揮して重合体を製造し、脱揮した揮発物を液化して再び原料として使用するメタクリル系重合体の製造方法において、液化した揮発物100質量部当たり第1級もしくは第2級のアミノ基含有化合物または塩基性化合物0.001〜0.8質量部を添加して30〜70℃の範囲内で保持した後、弱塩基性イオン交換樹脂に接触させてから再び原料として使用することを特徴とするメタクリル系重合体の製造方法。
  2. 重合反応器が液相部と気相部とを有し、重合反応器の気相部内壁面温度が気相部圧力におけるメタクリル酸エステルの沸点以下であることを特徴とする請求項1に記載のメタクリル系重合体の製造方法。
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