JP2004121925A - ジメチルエーテルの水蒸気改質用触媒および該触媒を用いた水素含有ガスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ジメチルエーテルの水蒸気改質反応において、低温でも高い活性と選択性を示す新規触媒を開発し、小型装置にて容易に高い水素濃度の混合ガスを製造する方法を提供する。
【解決手段】銅および亜鉛を含有する前駆体混合物にガリウムおよびシリカを含有するゼオライトを混合したジメチルエーテル水蒸気改質用触媒を用いる。
【選択図】 無し
【解決手段】銅および亜鉛を含有する前駆体混合物にガリウムおよびシリカを含有するゼオライトを混合したジメチルエーテル水蒸気改質用触媒を用いる。
【選択図】 無し
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はジメチルエーテルの水蒸気改質に使用される触媒および該触媒を用いた水素含有ガスの製造法に関する。
水素ガスはアンモニア合成、各種有機化合物の水素化、石油精製、脱硫等の化学工業用あるいは半導体や冶金の雰囲気ガス、ガラス製造等に広く使用されている。また、最近は自動車等の動力源となる燃料電池用の原料としても注目されており、水素ガス需要の大幅な拡大が期待されている。
【0002】
【従来の技術】
水素ガスの製造法としては、例えば、ナフサ、天然ガスや石油液化ガス等の炭化水素類の水蒸気改質法が知られている。この方法は原料の脱硫が必要なこと、反応温度が800〜1000℃と非常に高いこと等の欠点を有する。
また、メタノールを原料とした水蒸気改質法もよく知られており、脱硫が不要で反応温度が低い等の利点を有し、近年注目され、小規模から大規模まで多数の設備が設置されている。
【0003】
最近、ジメチルエーテルを原料とする水蒸気改質法による水素ガスの製造法が注目されている。ジメチルエーテルはクリーンな燃料として自動車および発電用途として期待されており、常温において約2気圧程度で容易に液化するため、貯蔵や運搬等液化プロパンガスと同等の取り扱いが可能である。
ジメチルエーテルは現在、メタノールの脱水反応によって製造されており、高価ではあるが、合成ガスからの直接合成法が開発されるに至って、安価に、かつ、大量に供給できる可能性が生じている。
【0004】
ジメチルエーテルの水蒸気改質反応は(1)式および(2)式の2段反応で進行するものと考えられている。
CH3OCH3+ H2O = 2CH3OH − 23.5kJ/mol (1)
CH3OH + H2O = CO2 + 3H2 − 49.5kJ/mol(2)
また、上記の主反応の他に(3)式のシフト反応や(4)式のメタネーション反応などにより少量の一酸化炭素やメタンが副生する。
CO2 + H2= CO + H2O − 41.17kJ/mol(3)
CO + 3H2= CH4+ H2O + 206.2kJ/mol(4)
これらの反応により副生した一酸化炭素やメタンは高純度水素に精製する際に除去しにくく、極力少ない方が好ましい。熱力学平衡から、低温ほど、また水蒸気(S)とジメチルエーテル(D)のモル比(以下、S/D比と記す)が大きいほど改質ガス中の副生物濃度を低くさせることができる。
ジメチルエーテルの水蒸気改質反応は(2)式のみのメタノール改質反応に比べて化学量論上は2倍量の水素を生成させることが可能であるが、(1)式の水和反応が吸熱反応であるため、より高温での反応条件が必要である。従って、より低温においても高活性を示す触媒があれば、外熱供給システムを小型化することが可能となり、熱効率も上げることができる。
【0005】
ジメチルエーテルの水蒸気改質反応に使用される触媒としては、例えば、銅、亜鉛、アルミニウムの酸化物を含有する触媒、銅、亜鉛、アルミニウムの酸化物を含有する触媒とゼオライトやシリカ−アルミナの混合触媒、銅触媒とγ−アルミナ、ゼオライト、シリカ−アルミナを物理混合した触媒等が提案されている。しかしながら、従来知られているジメチルエーテルの水蒸気改質用触媒では耐熱性や活性が十分でなく、そのまま反応に使用することができない。
例えば、銅、亜鉛、アルミニウムの酸化物を含有する触媒はジメチルエーテル水蒸気改質反応に使用することができるが、この場合、反応熱により触媒成分である銅、亜鉛のシンタリングや触媒粒子の粉化等により、短時間でその活性が低下する(例えば特許文献1参照)。また、耐熱性を高めるためにアルミニウム酸化物を添加した銅、亜鉛を含有する触媒に、ゼオライトやシリカ−アルミナを混合した触媒が知られているが、この触媒も350℃以上の反応環境では耐久性が十分でない(例えば特許文献2参照)。さらに、銅触媒とγ−アルミナ、ゼオライト、シリカ−アルミナを物理混合した触媒では反応率が高いものの、一酸化炭素や残存メタノール等の副生物濃度が高く、燃料電池用に使用する場合には、生成する一酸化炭素のため、電極が被毒され、電極寿命を短縮させる(例えば特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】
米国特許第5,498,370号明細書
【特許文献2】
特開平9−118501号公報
【特許文献3】
特開2001−96159号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上、従来技術で述べたように、ジメチルエーテルを水蒸気改質し、水素を製造する場合には、一般に350〜450℃の反応温度が必要であり、エネルギーコストを考えた場合、より低温での熱供給に対して高活性を示す触媒が求められる。
また、燃料電池用に水素を製造する場合、ガス空間速度(以下、GHSVと記す)が大きい場合においてもより高い活性を示す触媒があれば、改質反応器のみならず燃料電池を含む装置全体の小型化につながる。
本発明が解決しようとする課題は、上記した現状における問題点を解決するため、ジメチルエーテルの水蒸気改質反応において、低温でも高い活性と選択性を示す新規触媒を開発し、小型装置にて容易に高い水素濃度の混合ガスを製造する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述のように、ジメチルエーテルと水蒸気を原料とするジメチルエーテル水蒸気改質用触媒として、銅、亜鉛などの酸化物触媒とゼオライト、アルミナシリケート、シリカアルミナ、γ−アルミナなどの固体酸触媒を組み合わせた、種々の混合触媒が提案されている。
例えば、固体酸触媒としてゼオライトを用いた例は、これまでにも報告されているが,そのタイプや物性、成分組成、さらには、銅、亜鉛などの酸化触媒との混合比などについて詳細に検討した例はない。
【0009】
一般にゼオライトは天然ゼオライトと合成ゼオライトに分けられる。合成ゼオライトは、水熱合成法により合成される結晶質アルミノケイ酸塩で、構造としては「Si」が4個の「OSi」と結合したテクトケイ酸塩の一種であり、通常は「Si」の一部が「Al」に同型置換したアルミノケイ酸塩である。一方、「Al」以外の原子(例えばホウ素、ガリウム、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、鉄、マンガン、亜鉛など)で置換した新しいタイプのゼオライトも合成できるようになり、「ゼイライト様化合物」や「メタロシリケート」などと呼ばれ、市販品として商品化されているものもある((株)シーエムシーより出版の「機能
性ゼオライトの合成と応用」および三共出版の「新しい触媒化学」より引用)。
【0010】
本発明者は、ジメチルエーテル水蒸気改質反応に好適な、銅および亜鉛とゼオライトを含む混合触媒について鋭意検討を重ねた結果、アルミニウムの一部あるいはすべてをガリウムで置換した合成ゼオライトであるガリウムシリケートとの混合触媒が、低温においても高い活性を示す優れた触媒であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、銅および亜鉛を含有する前駆体混合物にゼオライトを混合して調製するジメチルエーテル水蒸気改質用触媒において、該ゼオライトがガリウムおよびシリカを含有するゼオライトであることを特徴とする、(1)および(2)に示すジメチルエーテルの水蒸気改質用触媒および当該触媒を使用した水素含有ガスの製造方法に関する。
(1)銅および亜鉛を含有する前駆体混合物にゼオライトを混合して調製するジメチルエーテル水蒸気改質用触媒において、該ゼオライトがガリウムおよびシリカを含有するゼオライトであることを特徴とする、ジメチルエーテル水蒸気改質用触媒。
(2)(1)に記載の触媒の存在下で、ジメチルエーテルと水蒸気を反応させ水素を製造することを特徴とする、水素含有ガスの製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の触媒は、銅および亜鉛を含有する前駆体混合物に、ガリウムおよびシリカを含有するゼオライトを混合して調製する。
この銅および亜鉛を含有する前駆体混合物は、各金属成分を含有する沈殿物を含むスラリー状混合物である。各金属成分を含有する沈殿物は、当該金属を含有する化合物を処理することで得られ、原料としては、この沈殿物を焼成したときに酸化物に変化し得る金属化合物が用いられる。
【0013】
銅化合物としては、例えば酢酸銅等の有機酸の水溶性塩、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅等の無機酸の水溶性塩等が使用できる。亜鉛化合物としては、例えば酢酸亜鉛等の有機酸の水溶性塩、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛等の無機酸の水溶性塩や酸化亜鉛等が使用できる。
【0014】
これらの金属塩の水溶液に沈殿剤を作用させることにより、当該金属を含有する沈殿物を得ることができる。沈殿剤には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の水溶性アルカリ化合物が用いられる。なお、酸化亜鉛を使用する際には、水中に分散させ、炭酸ガスと接触させることにより、炭酸亜鉛の沈殿物を得ることができる。
【0015】
沈殿調製時の金属塩水溶液の濃度は0.2〜3モル/リットル、好ましくは0.5〜2モル/リットルである。金属塩に対する沈殿剤の量は、化学等量の1〜2倍、好ましくは1.1〜1.6倍である。また、沈殿調製時の温度は20〜90℃、好ましくは35〜85℃である。本発明による触媒の組成は銅/亜鉛の原子比で0.2〜12、好ましくは0.5〜10である。
【0016】
本発明の銅および亜鉛を含有する前駆体混合物は、(1)上述の方法で得られた沈殿物を混合する、(2)一方の金属の沈殿物存在下で他の金属を沈殿させる、(3)両金属を同時に沈殿させる等の各種方法で得られる。銅および亜鉛の沈殿物を含有するスラリーは、共沈殿法で調製されたものが好ましく、例えば銅および亜鉛を含む水溶液と炭酸アルカリのような沈殿剤で沈殿させる方法、銅の沈殿スラリーに酸化亜鉛を分散させ、炭酸ガスにより炭酸化する方法等で調製することができる。
【0017】
このようにして得られた銅および亜鉛を含むスラリー状混合物は通常純水等で洗浄する。原料に硫酸塩を使用した場合には希薄アルカリ水溶液等で洗浄することが好ましい。以上の方法により調製して得られた洗浄後のスラリー状混合物は、乾燥し、焼成する。乾燥温度は50〜150℃で、焼成は空気中180℃〜800℃、好ましくは200〜600℃で行われる。このようにして得られた乾燥粉あるいは焼成粉は粉砕し、ガリウムおよびシリカを含有するゼオライト、即ち、ガリウムシリケートの粉末とよく混合させる。混合スラリーの乾燥粉にガリウムシリケートを混合した場合は、その後焼成する。また、未乾燥の混合スラリーにガリウムシリケートを混合後、乾燥および焼成してもよい。
【0018】
本発明で用いられるガリウムシリケートは、Si/Gaモル比が1〜80であり、好ましくは、5〜50である。銅および亜鉛を含有する前駆体とガリウムシリケートとの混合比は焼成粉としての銅および亜鉛を含有する前駆体重量に対し、1〜90重量%、好ましくは10〜80重量%であることが望ましい。このようにして得られた触媒は大きさを揃えて錠剤成型し、粒径を揃えて粉砕する等して、使用することができる。また、必要に応じてバインダーを添加して、押し出し成型体やマルメライザーなどによる球状体として使用することもできる。ガリウムシリケートと焼成粉とを混合したものは水に懸濁させ、必要に応じてアルミナゾルなどのバインダーを添加して担体や担体構造物に担持することができる。ガリウムシリケートと乾燥粉を混合したものについても同様に担体や担体構造物に担持することができ、担持後、乾燥してそのまま、あるいは焼成後使用することができる。
【0019】
触媒の使用にあたっては、水蒸気改質反応を行わせる前に、水素や一酸化炭素含有ガスによって還元処理を行うことが望ましい。ジメチルエーテルと水蒸気を反応させる水蒸気改質反応では水蒸気/ジメチルエーテル比(S/D)は3〜10、好ましくは3〜6である。反応温度は150〜500℃、好ましくは200〜400℃で、圧力は常圧が好ましい。単位触媒当たりの水蒸気およびジメチルエーテルのGHSVは、300〜20000(1/h)、好ましくは500〜10000(1/h)である。
【0020】
【実施例】
次に、実施例および比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
<触媒の調製>
比較例触媒1
炭酸水素アンモニウム140.4gを1186mlのイオン交換水と共に5リットルの丸底フラスコに入れ溶解し、40℃に保持した。また、硝酸銅(5水塩)219.6gをイオン交換水1290mlに溶解し、40℃とした溶液を前述の炭酸水素アンモニウム溶液へ注加した。続いて同溶液に、酸化亜鉛49.35gをイオン交換水500mlに分散したスラリーを加え、直ちに炭酸ガスを6L/hの流速で吹き込んだ。1時間後、80℃へ昇温し、30分保持した。炭酸ガスは2時間で停止し、60℃まで冷却した。濾過、洗浄後、80℃で乾燥し、380℃で焼成した。この焼成粉を粉砕し、グラファイト3重量%を加えて、混合し、6mmφ×5mmhの円柱形状に打錠成型した。そして、18〜35メッシュに粉砕、整粒した。このようにして酸化銅および酸化亜鉛を主成分とする比較例触媒1を得た。表1に本触媒の主要な調製条件を示す。
【0021】
実施例触媒1
比較例触媒1と同様の手法で調製した焼成粉とエヌ・イーケムキャット(株)製の
ガリウムシリケート(プロトン型、Si/Gaモル比15)を30/70の重量比で、乾式でよく混合し、この混合粉体を6mmφ×5mmhの円柱形状に打錠成型したものを18〜30メッシュに粉砕、整粒した。このようにして、酸化銅および酸化亜鉛とガリウムシリケートを主成分とする実施例触媒1を得た。表1に本触媒の主要な調製条件を示す。
【0022】
実施例触媒2
比較例触媒1と同様の手法で調製した焼成粉とエヌ・イーケムキャット(株)製の
ガリウムシリケート(プロトン型、Si/Gaモル比15)を50/50の重量比で、乾式でよく混合し、この混合粉体を6mmφ×5mmhの円柱形状に打錠成型したものを18〜30メッシュに粉砕、整粒した。このようにして、酸化銅および酸化亜鉛とガリウムシリケートを主成分とする実施例触媒2を得た。表1に本触媒の主要な調製条件を示す。
【0023】
実施例触媒3
比較例触媒1と同様の手法で調製した焼成粉とエヌ・イーケムキャット(株)製のガ
リウムシリケート(プロトン型、Si/Gaモル比15)を70/30の重量比で、乾式でよく混合し、この混合粉体を6mmφ×5mmhの円柱形状に打錠成型したものを18〜30メッシュに粉砕、整粒した。このようにして、酸化銅および酸化亜鉛とガリウムシリケートを主成分とする実施例触媒3を得た。表1に本触媒の主要な調製条件を示す。
【0024】
実施例触媒4
比較例触媒1と同様の手法で調製した焼成粉とエヌ・イーケムキャット(株)製のガ
リウムシリケート(プロトン型、Si/Gaモル比40)を70/30の重量比で、乾式でよく混合し、この混合粉体を6mmφ×5mmhの円柱形状に打錠成型したものを18〜30メッシュに粉砕、整粒した。このようにして、酸化銅および酸化亜鉛とガリウムシリケートを主成分とする実施例触媒4を得た。表1に本触媒の主要な調製条件を示す。
【0025】
比較例触媒2
比較例触媒1と同様の手法で調製した焼成粉とエヌ・イーケムキャット(株)製の
チタンシリケート(プロトン型、Si/Tiモル比50)を70/30の重量比で乾式でよく混合し、この混合粉体を6mmφ×5mmhの円柱形状に打錠成型したものを18〜30メッシュに粉砕、整粒した。このようにして、酸化銅および酸化亜鉛とチタンシリケートを主成分とする比較例触媒2を得た。表1に本触媒の主要な調製条件を示す。
【0026】
比較例触媒3
比較例触媒1と同様の手法で調製した焼成粉とエヌ・イーケムキャット(株)製の
マンガンシリケート(プロトン型、Si/Mnモル比25)を70/30の重量比で乾式でよく混合し、この混合粉体を6mmφ×5mmhの円柱形状に打錠成型したものを18〜30メッシュに粉砕、整粒した。このようにして、酸化銅および酸化亜鉛とマンガンシリケートを主成分とする比較例触媒3を得た。表1に本触媒の主要な調製条件を示す。
【0027】
比較例触媒4
比較例触媒1と同様の手法で調製した焼成粉とエヌ・イーケムキャット(株)製の
鉄シリケート(プロトン型、Si/Feモル比25)を70/30の重量比で乾式でよく混合し、この混合粉体を6mmφ×5mmhの円柱形状に打錠成型したものを18〜30メッシュに粉砕、整粒した。このようにして、酸化銅および酸化亜鉛と鉄シリケートを主成分とする比較例触媒4を得た。表1に本触媒の主要な調製条件を示す。
【0028】
比較例触媒5
比較例触媒1と同様の手法で調製した焼成粉とエヌ・イーケムキャット(株)製の
コバルトシリケート(プロトン型、Si/Coモル比25)を70/30の重量比で乾式でよく混合し、この混合粉体を6mmφ×5mmhの円柱形状に打錠成型したものを18〜30メッシュに粉砕、整粒した。このようにして、酸化銅および酸化亜鉛とコバルトシリケートを主成分とする比較例触媒5を得た。表1に本触媒の主要な調製条件を示す。
【0029】
表1 各触媒の調製条件
触媒名 メタロシリケート Si/Metal(モル比) 混合比
───────────────────────────────────
実施例触媒1 H+Ga−シリケート 15 30/70
実施例触媒2 H+Ga−シリケート 15 50/50
実施例触媒3 H+Ga−シリケート 15 70/30
実施例触媒4 H+Ga−シリケート 40 70/30
比較例触媒1 ― ― ―
比較例触媒2 H+Ti−シリケート 50 70/30
比較例触媒3 H+Mn−シリケート 25 70/30
比較例触媒4 H+Fe−シリケート 25 70/30
比較例触媒5 H+Co−シリケート 25 70/30
───────────────────────────────────
【0030】
<水素の製造>
実施例1〜4
固定床流通反応装置の反応管に触媒1〜4を2.2ml充填し、窒素および水素混合ガスにて水素還元を行った。還元条件はGHSV1360/hr、反応温度220℃にて水素濃度を徐々に増加させ、15%に到達したところで、9.5時間流通させた。その後、反応温度250℃、水素濃度を最終的に100%とし、還元を終了させた。
触媒活性は、上記のようにして還元した触媒層に、スチーム/ジメチルエーテル比(S/D)5/1、総GHSV6000/hrで原料を供給し、常圧、触媒層温度200〜500℃で反応し評価した。なお、触媒活性の評価結果を示す表2−1、2−2、表3において、出口ガス組成中のCH4、CO、H2以外の主な成分はジメチルエーテルとCO2であり、該組成は水蒸気を除く成分のモル%である。各成分のガス組成およびジメチルエーテルの反応率を表2に示す。
【0031】
【0032】
比較例1〜5
実施例1〜4と同様の評価方法にて行い、反応後のガスはガスクロマトグラフィーにより分析した。各成分のガス組成およびジメチルエーテルの反応率を表3に示す。
【0033】
【0034】
【発明の効果】
本発明によるジメチルエーテルの水蒸気改質用触媒は、従来の触媒に比較して低温活性に著しく優れており、副生成物であるメタン、メタノールを生成せず、一酸化炭素の生成濃度も極めて低い。即ち、銅および亜鉛を含有する前駆体混合物にガリウムシリケートを混合した本ジメチルエーテル改質用触媒を用いれば、低温下で、小型装置にて容易に高い水素濃度の混合ガスを製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明はジメチルエーテルの水蒸気改質に使用される触媒および該触媒を用いた水素含有ガスの製造法に関する。
水素ガスはアンモニア合成、各種有機化合物の水素化、石油精製、脱硫等の化学工業用あるいは半導体や冶金の雰囲気ガス、ガラス製造等に広く使用されている。また、最近は自動車等の動力源となる燃料電池用の原料としても注目されており、水素ガス需要の大幅な拡大が期待されている。
【0002】
【従来の技術】
水素ガスの製造法としては、例えば、ナフサ、天然ガスや石油液化ガス等の炭化水素類の水蒸気改質法が知られている。この方法は原料の脱硫が必要なこと、反応温度が800〜1000℃と非常に高いこと等の欠点を有する。
また、メタノールを原料とした水蒸気改質法もよく知られており、脱硫が不要で反応温度が低い等の利点を有し、近年注目され、小規模から大規模まで多数の設備が設置されている。
【0003】
最近、ジメチルエーテルを原料とする水蒸気改質法による水素ガスの製造法が注目されている。ジメチルエーテルはクリーンな燃料として自動車および発電用途として期待されており、常温において約2気圧程度で容易に液化するため、貯蔵や運搬等液化プロパンガスと同等の取り扱いが可能である。
ジメチルエーテルは現在、メタノールの脱水反応によって製造されており、高価ではあるが、合成ガスからの直接合成法が開発されるに至って、安価に、かつ、大量に供給できる可能性が生じている。
【0004】
ジメチルエーテルの水蒸気改質反応は(1)式および(2)式の2段反応で進行するものと考えられている。
CH3OCH3+ H2O = 2CH3OH − 23.5kJ/mol (1)
CH3OH + H2O = CO2 + 3H2 − 49.5kJ/mol(2)
また、上記の主反応の他に(3)式のシフト反応や(4)式のメタネーション反応などにより少量の一酸化炭素やメタンが副生する。
CO2 + H2= CO + H2O − 41.17kJ/mol(3)
CO + 3H2= CH4+ H2O + 206.2kJ/mol(4)
これらの反応により副生した一酸化炭素やメタンは高純度水素に精製する際に除去しにくく、極力少ない方が好ましい。熱力学平衡から、低温ほど、また水蒸気(S)とジメチルエーテル(D)のモル比(以下、S/D比と記す)が大きいほど改質ガス中の副生物濃度を低くさせることができる。
ジメチルエーテルの水蒸気改質反応は(2)式のみのメタノール改質反応に比べて化学量論上は2倍量の水素を生成させることが可能であるが、(1)式の水和反応が吸熱反応であるため、より高温での反応条件が必要である。従って、より低温においても高活性を示す触媒があれば、外熱供給システムを小型化することが可能となり、熱効率も上げることができる。
【0005】
ジメチルエーテルの水蒸気改質反応に使用される触媒としては、例えば、銅、亜鉛、アルミニウムの酸化物を含有する触媒、銅、亜鉛、アルミニウムの酸化物を含有する触媒とゼオライトやシリカ−アルミナの混合触媒、銅触媒とγ−アルミナ、ゼオライト、シリカ−アルミナを物理混合した触媒等が提案されている。しかしながら、従来知られているジメチルエーテルの水蒸気改質用触媒では耐熱性や活性が十分でなく、そのまま反応に使用することができない。
例えば、銅、亜鉛、アルミニウムの酸化物を含有する触媒はジメチルエーテル水蒸気改質反応に使用することができるが、この場合、反応熱により触媒成分である銅、亜鉛のシンタリングや触媒粒子の粉化等により、短時間でその活性が低下する(例えば特許文献1参照)。また、耐熱性を高めるためにアルミニウム酸化物を添加した銅、亜鉛を含有する触媒に、ゼオライトやシリカ−アルミナを混合した触媒が知られているが、この触媒も350℃以上の反応環境では耐久性が十分でない(例えば特許文献2参照)。さらに、銅触媒とγ−アルミナ、ゼオライト、シリカ−アルミナを物理混合した触媒では反応率が高いものの、一酸化炭素や残存メタノール等の副生物濃度が高く、燃料電池用に使用する場合には、生成する一酸化炭素のため、電極が被毒され、電極寿命を短縮させる(例えば特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】
米国特許第5,498,370号明細書
【特許文献2】
特開平9−118501号公報
【特許文献3】
特開2001−96159号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上、従来技術で述べたように、ジメチルエーテルを水蒸気改質し、水素を製造する場合には、一般に350〜450℃の反応温度が必要であり、エネルギーコストを考えた場合、より低温での熱供給に対して高活性を示す触媒が求められる。
また、燃料電池用に水素を製造する場合、ガス空間速度(以下、GHSVと記す)が大きい場合においてもより高い活性を示す触媒があれば、改質反応器のみならず燃料電池を含む装置全体の小型化につながる。
本発明が解決しようとする課題は、上記した現状における問題点を解決するため、ジメチルエーテルの水蒸気改質反応において、低温でも高い活性と選択性を示す新規触媒を開発し、小型装置にて容易に高い水素濃度の混合ガスを製造する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述のように、ジメチルエーテルと水蒸気を原料とするジメチルエーテル水蒸気改質用触媒として、銅、亜鉛などの酸化物触媒とゼオライト、アルミナシリケート、シリカアルミナ、γ−アルミナなどの固体酸触媒を組み合わせた、種々の混合触媒が提案されている。
例えば、固体酸触媒としてゼオライトを用いた例は、これまでにも報告されているが,そのタイプや物性、成分組成、さらには、銅、亜鉛などの酸化触媒との混合比などについて詳細に検討した例はない。
【0009】
一般にゼオライトは天然ゼオライトと合成ゼオライトに分けられる。合成ゼオライトは、水熱合成法により合成される結晶質アルミノケイ酸塩で、構造としては「Si」が4個の「OSi」と結合したテクトケイ酸塩の一種であり、通常は「Si」の一部が「Al」に同型置換したアルミノケイ酸塩である。一方、「Al」以外の原子(例えばホウ素、ガリウム、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、鉄、マンガン、亜鉛など)で置換した新しいタイプのゼオライトも合成できるようになり、「ゼイライト様化合物」や「メタロシリケート」などと呼ばれ、市販品として商品化されているものもある((株)シーエムシーより出版の「機能
性ゼオライトの合成と応用」および三共出版の「新しい触媒化学」より引用)。
【0010】
本発明者は、ジメチルエーテル水蒸気改質反応に好適な、銅および亜鉛とゼオライトを含む混合触媒について鋭意検討を重ねた結果、アルミニウムの一部あるいはすべてをガリウムで置換した合成ゼオライトであるガリウムシリケートとの混合触媒が、低温においても高い活性を示す優れた触媒であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、銅および亜鉛を含有する前駆体混合物にゼオライトを混合して調製するジメチルエーテル水蒸気改質用触媒において、該ゼオライトがガリウムおよびシリカを含有するゼオライトであることを特徴とする、(1)および(2)に示すジメチルエーテルの水蒸気改質用触媒および当該触媒を使用した水素含有ガスの製造方法に関する。
(1)銅および亜鉛を含有する前駆体混合物にゼオライトを混合して調製するジメチルエーテル水蒸気改質用触媒において、該ゼオライトがガリウムおよびシリカを含有するゼオライトであることを特徴とする、ジメチルエーテル水蒸気改質用触媒。
(2)(1)に記載の触媒の存在下で、ジメチルエーテルと水蒸気を反応させ水素を製造することを特徴とする、水素含有ガスの製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の触媒は、銅および亜鉛を含有する前駆体混合物に、ガリウムおよびシリカを含有するゼオライトを混合して調製する。
この銅および亜鉛を含有する前駆体混合物は、各金属成分を含有する沈殿物を含むスラリー状混合物である。各金属成分を含有する沈殿物は、当該金属を含有する化合物を処理することで得られ、原料としては、この沈殿物を焼成したときに酸化物に変化し得る金属化合物が用いられる。
【0013】
銅化合物としては、例えば酢酸銅等の有機酸の水溶性塩、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅等の無機酸の水溶性塩等が使用できる。亜鉛化合物としては、例えば酢酸亜鉛等の有機酸の水溶性塩、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛等の無機酸の水溶性塩や酸化亜鉛等が使用できる。
【0014】
これらの金属塩の水溶液に沈殿剤を作用させることにより、当該金属を含有する沈殿物を得ることができる。沈殿剤には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の水溶性アルカリ化合物が用いられる。なお、酸化亜鉛を使用する際には、水中に分散させ、炭酸ガスと接触させることにより、炭酸亜鉛の沈殿物を得ることができる。
【0015】
沈殿調製時の金属塩水溶液の濃度は0.2〜3モル/リットル、好ましくは0.5〜2モル/リットルである。金属塩に対する沈殿剤の量は、化学等量の1〜2倍、好ましくは1.1〜1.6倍である。また、沈殿調製時の温度は20〜90℃、好ましくは35〜85℃である。本発明による触媒の組成は銅/亜鉛の原子比で0.2〜12、好ましくは0.5〜10である。
【0016】
本発明の銅および亜鉛を含有する前駆体混合物は、(1)上述の方法で得られた沈殿物を混合する、(2)一方の金属の沈殿物存在下で他の金属を沈殿させる、(3)両金属を同時に沈殿させる等の各種方法で得られる。銅および亜鉛の沈殿物を含有するスラリーは、共沈殿法で調製されたものが好ましく、例えば銅および亜鉛を含む水溶液と炭酸アルカリのような沈殿剤で沈殿させる方法、銅の沈殿スラリーに酸化亜鉛を分散させ、炭酸ガスにより炭酸化する方法等で調製することができる。
【0017】
このようにして得られた銅および亜鉛を含むスラリー状混合物は通常純水等で洗浄する。原料に硫酸塩を使用した場合には希薄アルカリ水溶液等で洗浄することが好ましい。以上の方法により調製して得られた洗浄後のスラリー状混合物は、乾燥し、焼成する。乾燥温度は50〜150℃で、焼成は空気中180℃〜800℃、好ましくは200〜600℃で行われる。このようにして得られた乾燥粉あるいは焼成粉は粉砕し、ガリウムおよびシリカを含有するゼオライト、即ち、ガリウムシリケートの粉末とよく混合させる。混合スラリーの乾燥粉にガリウムシリケートを混合した場合は、その後焼成する。また、未乾燥の混合スラリーにガリウムシリケートを混合後、乾燥および焼成してもよい。
【0018】
本発明で用いられるガリウムシリケートは、Si/Gaモル比が1〜80であり、好ましくは、5〜50である。銅および亜鉛を含有する前駆体とガリウムシリケートとの混合比は焼成粉としての銅および亜鉛を含有する前駆体重量に対し、1〜90重量%、好ましくは10〜80重量%であることが望ましい。このようにして得られた触媒は大きさを揃えて錠剤成型し、粒径を揃えて粉砕する等して、使用することができる。また、必要に応じてバインダーを添加して、押し出し成型体やマルメライザーなどによる球状体として使用することもできる。ガリウムシリケートと焼成粉とを混合したものは水に懸濁させ、必要に応じてアルミナゾルなどのバインダーを添加して担体や担体構造物に担持することができる。ガリウムシリケートと乾燥粉を混合したものについても同様に担体や担体構造物に担持することができ、担持後、乾燥してそのまま、あるいは焼成後使用することができる。
【0019】
触媒の使用にあたっては、水蒸気改質反応を行わせる前に、水素や一酸化炭素含有ガスによって還元処理を行うことが望ましい。ジメチルエーテルと水蒸気を反応させる水蒸気改質反応では水蒸気/ジメチルエーテル比(S/D)は3〜10、好ましくは3〜6である。反応温度は150〜500℃、好ましくは200〜400℃で、圧力は常圧が好ましい。単位触媒当たりの水蒸気およびジメチルエーテルのGHSVは、300〜20000(1/h)、好ましくは500〜10000(1/h)である。
【0020】
【実施例】
次に、実施例および比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
<触媒の調製>
比較例触媒1
炭酸水素アンモニウム140.4gを1186mlのイオン交換水と共に5リットルの丸底フラスコに入れ溶解し、40℃に保持した。また、硝酸銅(5水塩)219.6gをイオン交換水1290mlに溶解し、40℃とした溶液を前述の炭酸水素アンモニウム溶液へ注加した。続いて同溶液に、酸化亜鉛49.35gをイオン交換水500mlに分散したスラリーを加え、直ちに炭酸ガスを6L/hの流速で吹き込んだ。1時間後、80℃へ昇温し、30分保持した。炭酸ガスは2時間で停止し、60℃まで冷却した。濾過、洗浄後、80℃で乾燥し、380℃で焼成した。この焼成粉を粉砕し、グラファイト3重量%を加えて、混合し、6mmφ×5mmhの円柱形状に打錠成型した。そして、18〜35メッシュに粉砕、整粒した。このようにして酸化銅および酸化亜鉛を主成分とする比較例触媒1を得た。表1に本触媒の主要な調製条件を示す。
【0021】
実施例触媒1
比較例触媒1と同様の手法で調製した焼成粉とエヌ・イーケムキャット(株)製の
ガリウムシリケート(プロトン型、Si/Gaモル比15)を30/70の重量比で、乾式でよく混合し、この混合粉体を6mmφ×5mmhの円柱形状に打錠成型したものを18〜30メッシュに粉砕、整粒した。このようにして、酸化銅および酸化亜鉛とガリウムシリケートを主成分とする実施例触媒1を得た。表1に本触媒の主要な調製条件を示す。
【0022】
実施例触媒2
比較例触媒1と同様の手法で調製した焼成粉とエヌ・イーケムキャット(株)製の
ガリウムシリケート(プロトン型、Si/Gaモル比15)を50/50の重量比で、乾式でよく混合し、この混合粉体を6mmφ×5mmhの円柱形状に打錠成型したものを18〜30メッシュに粉砕、整粒した。このようにして、酸化銅および酸化亜鉛とガリウムシリケートを主成分とする実施例触媒2を得た。表1に本触媒の主要な調製条件を示す。
【0023】
実施例触媒3
比較例触媒1と同様の手法で調製した焼成粉とエヌ・イーケムキャット(株)製のガ
リウムシリケート(プロトン型、Si/Gaモル比15)を70/30の重量比で、乾式でよく混合し、この混合粉体を6mmφ×5mmhの円柱形状に打錠成型したものを18〜30メッシュに粉砕、整粒した。このようにして、酸化銅および酸化亜鉛とガリウムシリケートを主成分とする実施例触媒3を得た。表1に本触媒の主要な調製条件を示す。
【0024】
実施例触媒4
比較例触媒1と同様の手法で調製した焼成粉とエヌ・イーケムキャット(株)製のガ
リウムシリケート(プロトン型、Si/Gaモル比40)を70/30の重量比で、乾式でよく混合し、この混合粉体を6mmφ×5mmhの円柱形状に打錠成型したものを18〜30メッシュに粉砕、整粒した。このようにして、酸化銅および酸化亜鉛とガリウムシリケートを主成分とする実施例触媒4を得た。表1に本触媒の主要な調製条件を示す。
【0025】
比較例触媒2
比較例触媒1と同様の手法で調製した焼成粉とエヌ・イーケムキャット(株)製の
チタンシリケート(プロトン型、Si/Tiモル比50)を70/30の重量比で乾式でよく混合し、この混合粉体を6mmφ×5mmhの円柱形状に打錠成型したものを18〜30メッシュに粉砕、整粒した。このようにして、酸化銅および酸化亜鉛とチタンシリケートを主成分とする比較例触媒2を得た。表1に本触媒の主要な調製条件を示す。
【0026】
比較例触媒3
比較例触媒1と同様の手法で調製した焼成粉とエヌ・イーケムキャット(株)製の
マンガンシリケート(プロトン型、Si/Mnモル比25)を70/30の重量比で乾式でよく混合し、この混合粉体を6mmφ×5mmhの円柱形状に打錠成型したものを18〜30メッシュに粉砕、整粒した。このようにして、酸化銅および酸化亜鉛とマンガンシリケートを主成分とする比較例触媒3を得た。表1に本触媒の主要な調製条件を示す。
【0027】
比較例触媒4
比較例触媒1と同様の手法で調製した焼成粉とエヌ・イーケムキャット(株)製の
鉄シリケート(プロトン型、Si/Feモル比25)を70/30の重量比で乾式でよく混合し、この混合粉体を6mmφ×5mmhの円柱形状に打錠成型したものを18〜30メッシュに粉砕、整粒した。このようにして、酸化銅および酸化亜鉛と鉄シリケートを主成分とする比較例触媒4を得た。表1に本触媒の主要な調製条件を示す。
【0028】
比較例触媒5
比較例触媒1と同様の手法で調製した焼成粉とエヌ・イーケムキャット(株)製の
コバルトシリケート(プロトン型、Si/Coモル比25)を70/30の重量比で乾式でよく混合し、この混合粉体を6mmφ×5mmhの円柱形状に打錠成型したものを18〜30メッシュに粉砕、整粒した。このようにして、酸化銅および酸化亜鉛とコバルトシリケートを主成分とする比較例触媒5を得た。表1に本触媒の主要な調製条件を示す。
【0029】
表1 各触媒の調製条件
触媒名 メタロシリケート Si/Metal(モル比) 混合比
───────────────────────────────────
実施例触媒1 H+Ga−シリケート 15 30/70
実施例触媒2 H+Ga−シリケート 15 50/50
実施例触媒3 H+Ga−シリケート 15 70/30
実施例触媒4 H+Ga−シリケート 40 70/30
比較例触媒1 ― ― ―
比較例触媒2 H+Ti−シリケート 50 70/30
比較例触媒3 H+Mn−シリケート 25 70/30
比較例触媒4 H+Fe−シリケート 25 70/30
比較例触媒5 H+Co−シリケート 25 70/30
───────────────────────────────────
【0030】
<水素の製造>
実施例1〜4
固定床流通反応装置の反応管に触媒1〜4を2.2ml充填し、窒素および水素混合ガスにて水素還元を行った。還元条件はGHSV1360/hr、反応温度220℃にて水素濃度を徐々に増加させ、15%に到達したところで、9.5時間流通させた。その後、反応温度250℃、水素濃度を最終的に100%とし、還元を終了させた。
触媒活性は、上記のようにして還元した触媒層に、スチーム/ジメチルエーテル比(S/D)5/1、総GHSV6000/hrで原料を供給し、常圧、触媒層温度200〜500℃で反応し評価した。なお、触媒活性の評価結果を示す表2−1、2−2、表3において、出口ガス組成中のCH4、CO、H2以外の主な成分はジメチルエーテルとCO2であり、該組成は水蒸気を除く成分のモル%である。各成分のガス組成およびジメチルエーテルの反応率を表2に示す。
【0031】
【0032】
比較例1〜5
実施例1〜4と同様の評価方法にて行い、反応後のガスはガスクロマトグラフィーにより分析した。各成分のガス組成およびジメチルエーテルの反応率を表3に示す。
【0033】
【0034】
【発明の効果】
本発明によるジメチルエーテルの水蒸気改質用触媒は、従来の触媒に比較して低温活性に著しく優れており、副生成物であるメタン、メタノールを生成せず、一酸化炭素の生成濃度も極めて低い。即ち、銅および亜鉛を含有する前駆体混合物にガリウムシリケートを混合した本ジメチルエーテル改質用触媒を用いれば、低温下で、小型装置にて容易に高い水素濃度の混合ガスを製造することができる。
Claims (2)
- 銅および亜鉛を含有する前駆体混合物にゼオライトを混合して調製するジメチルエーテル水蒸気改質用触媒において、該ゼオライトがガリウムおよびシリカを含有するゼオライトであることを特徴とする、ジメチルエーテル水蒸気改質用触媒。
- 請求項1に記載の触媒の存在下で、ジメチルエーテルと水蒸気を反応させ水素を製造することを特徴とする、水素含有ガスの製造方法。
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