JP2004117084A - 電気化学測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電気化学応答は電気二重層容量の影響を誤差要因として含んでしまうため、応答加速電流により電気化学応答を促進させ、高精度な測定を可能とする電気化学測定装置を提供する。
【解決手段】被験液30を含む作用電極2と参照電極3間の電気容量成分と抵抗成分とを用いて、被験液に対する電気化学応答により両電極間に発生する電位差の実測値から、その電位差の安定値を予測する。更に前記被験液に対する電気化学応答の誤差要因となる前記電気容量成分の電荷量を算出し、応答加速電流を印加することにより応答を早め、高精度な応答測定を可能とする。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は少なくとも作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液の特性を測定する電気化学測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からPH計やORP計等の電気化学測定装置は、各電極を被験液に浸漬したときに被験液に対する電気化学応答として電極間に発生する電位差や、電極に流れる電流を測定することにより、被験液中に溶存する特定物質の検出や、被験液の濃度又は濃度比を検出している。しかし、被験液と反応する各電極表面には、空中や被験液中において汚れや酸化膜が形成され、特にこの酸化膜には電気二重層容量と呼ばれる電気容量成分が発生する。この電気二重層容量は、被験液に対する電気化学応答において作用電極と参照電極間に発生した電圧により徐々に充電されるため、電気化学応答の応答速度は遅くなり、過渡応答状態での測定時間が長引くことになる。更に被験液の種類によっては電極表面の酸化膜が増大又は減少するため、電気二重層容量も変化し誤差要因が大きくなるため、測定精度の低下を招く原因となっていた。この酸化膜を取り除くために測定の度に電極表面の研磨や、水又は薬液による洗浄処理が行なわれていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−185871号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述のような研磨や洗浄を行なっても、電極表面には直ぐに酸化膜が形成されてしまい、電気化学応答は前記電気二重層容量の誤差要因を多く含んだ結果となってしまう。
【0005】
本発明は前述の従来技術の問題点を解決するものであり、電気化学応答を促進させ、高精度な測定を可能とする電気化学測定装置を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差を測定する電気化学測定装置において、被験液を介して前記作用電極と前記参照電極間の抵抗成分と電気容量成分とを測定する成分測定手段と、前記被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差の実測値と、前記成分測定手段により測定した抵抗成分と電気容量成分とから、前記被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差の安定値を予測する予測測定手段とを有する電気化学測定装置を提供する。
【0007】
また本発明は、作用電極、参照電極及び対電極を有し、被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流値を測定する電気化学測定装置において、被験液を介して前記作用電極と対電極間の抵抗成分と電気容量成分とを測定する成分測定手段と、前記被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流の実測値と、前記成分測定手段により測定した抵抗成分と電気容量成分とから、前記被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流の安定値を予測する予測測定手段とを有する電気化学測定装置を提供する。
【0008】
また前記成分測定手段は、被験液を介して作用電極と参照電極間のインダクタンス成分を更に測定する。
【0009】
また前記成分測定手段は、被験液を介して作用電極と対電極間のインダクタンス成分を更に測定する。
【0010】
また本発明は、前記予測測定手段により予測した安定値と、前記成分測定手段により測定した電気容量成分とから、この電気容量成分に充電される電荷量を算出する算出手段と、この電荷量を充電し、前記被験液に対する作用電極の電気化学応答の応答レベルを向上させるための電流である応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定し、この応答加速電流を作用電極、参照電極及び対電極との間に印加するための応答加速手段とを有する。
【0011】
また本発明は、前記予測測定手段により予測した安定値と、前記成分測定手段により測定した電気容量成分とから、この電気容量成分に充電される電荷量を算出する算出手段と、この電荷量を充電し、前記被験液に対する作用電極の電気化学応答の応答レベルを向上させるための電流である応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定し、この応答加速電流を作用電極と対電極との間に印加するための応答加速手段とを有する。
【0012】
また本発明は、作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差を測定する電気化学測定装置において、被験液を介して前記作用電極と前記参照電極間のインピーダンス値を測定するインピーダンス測定手段と、前記インピーダンス測定手段により測定したインピーダンス値と、予め複数段階に設定したインピーダンス評価範囲とを比較することにより、前記被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答の応答レベルを判定する応答レベル判定手段と、前記作用電極と前記参照電極、及び前記対電極との間に応答加速電流を印加する応答加速手段とを有し、前記応答レベル判定手段により判定された応答レベルにより、前記応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定する電気化学測定装置を提供する。
【0013】
また本発明は、作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流値を測定する電気化学測定装置において、被験液を介して前記作用電極と前記対電極間のインピーダンス値を測定するインピーダンス測定手段と、前記インピーダンス測定手段により測定したインピーダンス値と、予め複数段階に設定したインピーダンス評価範囲とを比較することにより、前記被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答の応答レベルを判定する応答レベル判定手段と、前記作用電極と前記対電極との間に応答加速電流を印加する応答加速手段とを有し、前記応答レベル判定手段により判定された応答レベルにより、前記応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定する電気化学測定装置を提供する。
【0014】
また本発明は、作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差を測定する電気化学測定装置において、前記被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差の一定時間後の変化量を測定するデータ変化量測定手段と、前記データ変化量測定手段により測定した変化量と、予め複数段階に設定したデータ変化量評価範囲とを比較することにより応答レベルを判定する応答レベル判定手段と、前記作用電極と前記参照電極、及び前記対電極との間に応答加速電流を印加する応答加速手段とを有し、前記応答レベル判定手段により判定された応答レベルにより、前記応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定する電気化学測定装置を提供する。
【0015】
また本発明は、作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流値を測定する電気化学測定装置において、前記被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極間に流れる電流値の一定時間後の変化量を測定するデータ変化量測定手段と、前記データ変化量測定手段により測定した変化量と、予め複数段階に設定したデータ変化量評価範囲とを比較することにより応答レベルを判定する応答レベル判定手段と、前記作用電極と前記対電極との間に応答加速電流を印加する応答加速手段とを有し、前記応答レベル判定手段により判定された応答レベルにより、前記応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定する電気化学測定装置を提供する。
【0016】
更に前記応答加速手段は、応答加速電流に代えて、応答を加速させる電圧である応答加速電圧の印加電圧値と印加時間との内少なくとも一方を設定し、この応答加速電圧を作用電極と参照電極との内少なくとも一方と、対電極との間に印加する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の電気化学測定装置は、作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差を測定する電気化学測定装置において、被験液を介して前記作用電極と前記参照電極間の抵抗成分と電気容量成分とを測定する成分測定手段と、前記被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差の実測値と、前記成分測定手段により測定した抵抗成分と電気容量成分とから、前記被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差の安定値を予測する予測測定手段とを有することにより、容易に誤差要因を補正し、短い測定時間で精度良く安定値を求めることができる。
【0018】
また本発明の電気化学測定装置は、作用電極、参照電極及び対電極を有し、被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流値を測定する電気化学測定装置において、被験液を介して前記作用電極と対電極間の抵抗成分と電気容量成分とを測定する成分測定手段と、前記被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流の実測値と、前記成分測定手段により測定した抵抗成分と電気容量成分とから、前記被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流の安定値を予測する予測測定手段とを有することにより、容易に誤差要因を補正し、短い測定時間で精度良く安定値を求めることができる。
【0019】
また前記成分測定手段は、被験液を介して作用電極と参照電極間のインダクタンス成分を更に測定することにより、電極表面の平坦率の低い電極や内部が多孔質性である電極の影響、又は磁性体を含む被験液の影響を補正することが可能である。
【0020】
また前記成分測定手段は、被験液を介して作用電極と対電極間のインダクタンス成分を更に測定することにより、電極表面の平坦率の低い電極や内部が多孔質性である電極の影響、又は磁性体を含む被験液の影響を補正することが可能である。
【0021】
また本発明の電気化学測定装置は、前記予測測定手段により予測した安定値と、前記成分測定手段により測定した電気容量成分とから、この電気容量成分に充電される電荷量を算出する算出手段と、この電荷量を充電し、前記被験液に対する作用電極の電気化学応答の応答レベルを向上させるための電流である応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定し、この応答加速電流を作用電極、参照電極及び対電極との間に印加するための応答加速手段とを有することにより、補正に必要な応答加速電流の適正値を求めることができ、高精度な測定が可能である。
【0022】
また本発明の電気化学測定装置は、前記予測測定手段により予測した安定値と、前記成分測定手段により測定した電気容量成分とから、この電気容量成分に充電される電荷量を算出する算出手段と、この電荷量を充電し、前記被験液に対する作用電極の電気化学応答の応答レベルを向上させるための電流である応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定し、この応答加速電流を作用電極と対電極との間に印加するための応答加速手段とを有することにより、補正に必要な応答加速電流の適正値を求めることができ、高精度な測定が可能である。
【0023】
また本発明の電気化学測定装置は、作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差を測定する電気化学測定装置において、被験液を介して前記作用電極と前記参照電極間のインピーダンス値を測定するインピーダンス測定手段と、前記インピーダンス測定手段により測定したインピーダンス値と、予め複数段階に設定したインピーダンス評価範囲とを比較することにより、前記被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答の応答レベルを判定する応答レベル判定手段と、前記作用電極と前記参照電極、及び前記対電極との間に応答加速電流を印加する応答加速手段とを有し、前記応答レベル判定手段により判定された応答レベルにより、前記応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定することにより、被験液を介して作用電極と参照電極間のインピーダンス値を測定するだけで、印加すべき応答加速電流を簡便に求め、補正することが可能である。
【0024】
また本発明の電気化学測定装置は、作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流値を測定する電気化学測定装置において、被験液を介して前記作用電極と前記対電極間のインピーダンス値を測定するインピーダンス測定手段と、前記インピーダンス測定手段により測定したインピーダンス値と、予め複数段階に設定したインピーダンス評価範囲とを比較することにより、前記被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答の応答レベルを判定する応答レベル判定手段と、前記作用電極と前記対電極との間に応答加速電流を印加する応答加速手段とを有し、前記応答レベル判定手段により判定された応答レベルにより、前記応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定することにより、被験液を介して作用電極と対電極間のインピーダンス値を測定するだけで、印加すべき応答加速電流を簡便に求め、補正することが可能である。
【0025】
また本発明の電気化学測定装置は、作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差を測定する電気化学測定装置において、前記被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差の一定時間後の変化量を測定するデータ変化量測定手段と、前記データ変化量測定手段により測定した変化量と、予め複数段階に設定したデータ変化量評価範囲とを比較することにより応答レベルを判定する応答レベル判定手段と、前記作用電極と前記参照電極、及び前記対電極との間に応答加速電流を印加する応答加速手段とを有し、前記応答レベル判定手段により判定された応答レベルにより、前記応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定することにより、インピーダンス測定をすることなく、被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差を測定するだけで、応答加速電流を簡便に求め、補正することが可能である。
【0026】
また本発明の電気化学測定装置は、作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流値を測定する電気化学測定装置において、前記被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極間に流れる電流値の一定時間後の変化量を測定するデータ変化量測定手段と、前記データ変化量測定手段により測定した変化量と、予め複数段階に設定したデータ変化量評価範囲とを比較することにより応答レベルを判定する応答レベル判定手段と、前記作用電極と前記対電極との間に応答加速電流を印加する応答加速手段とを有し、前記応答レベル判定手段により判定された応答レベルにより、前記応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定することにより、インピーダンス測定をすることなく、被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流値を測定するだけで、応答加速電流を簡便に求め、補正することが可能である。
【0027】
更に前記応答加速手段は、応答加速電流に代えて、応答を加速させる電圧である応答加速電圧の印加電圧値と印加時間との内少なくとも一方を設定し、この応答加速電圧を作用電極と参照電極との内少なくとも一方と、対電極との間に印加することにより、電圧でも同様に補正でき、電気化学応答の応答レベルを上げることができる。
【0028】
【実施例】
本発明の第1実施例は、被験液を含む作用電極と参照電極間の電気容量成分と抵抗成分とを用いて、被験液に対する電気化学応答により両電極間に発生する電位差の実測値から、その電位差の安定値を予測する。更に前記被験液に対する電気化学応答の誤差要因となる前記電気容量成分の電荷量を算出し、応答加速電流を印加して予め充電することにより応答を早め、高精度な応答測定を可能とする。
【0029】
図1に第1実施例の電気化学測定装置Aの測定時の外観図を示す。センサ部Bには対電極1と作用電極2及び参照電極3とを有し、更に電気化学測定装置Aには測定結果を表示する表示部12を有し、被験液30に浸漬した3つの電極の内、作用電極2と参照電極3間の応答により発生する電位差を測定することにより、被験液30中に溶存する特定物質の検出や、被験液30の濃度又は濃度比を検出するものである。
【0030】
図2は第1実施例の機能構成ブロック図である。対電極1と作用電極2、及び参照電極3とが、スイッチ群を切り換えることにより測定モードを切り換えるモード切換部4に接続される。このモード切換部4は、応答加速モード、インピーダンス測定モード、応答測定モードの3つのモードを切り換えるべく次のように接続される。すなわち、応答加速モードのときは、対電極1と作用電極2、及び参照電極3とが応答加速印加電源5に接続される。またインピーダンス測定モードのときは、作用電極2と参照電極3とがインピーダンス測定回路6に接続され、対電極1はどこにも接続せず回路上切断する。更に応答測定モードのときは、作用電極2と参照電極3とが増幅器7に接続され、対電極1はどこにも接続せず回路上切断する。
【0031】
更にインピーダンス測定回路6と増幅器7とが、アナログデータからディジタルデータに変換するA/Dコンバータ8に接続されている。このA/Dコンバータ8と、モード切換部4と応答加速電流印加電源5がマイコン9に接続され制御される。このマイコン9は応答印加電流の印加時間や予測測定のための電位差測定時間等を計時するタイマー10と、装置に電力を供給する電源11と。表示部12と、予め予測式やデータ推移評価範囲等を記憶してあるメモリ13に接続している。
【0032】
第1実施例の電気化学測定装置Aの動作を図3に示すメインフローチャート、図4の予測測定による応答補正を示すサブルーチン、及び図5の応答補正グラフにより詳述する。
【0033】
まず図示しない電源スイッチにより電気化学測定装置Aの電源をオンすると、ステップS1においてマイコン9によりモード切換部4を制御し、作用電極2と参照電極3をインピーダンス測定回路6に接続し、対電極1を回路上切断した状態にスイッチ群を自動で切り換え、作用電極2と参照電極3間のインピーダンス値を測定する。次にステップS2において、両電極が被験液30中に浸漬されたかどうかの液体検出判定をインピーダンス値により行なう。すなわち、両電極が空気中にある場合、両電極間はほぼ絶縁状態であり、インピーダンス値は無限大の値を示すことから、両電極は被験液30に浸漬していないと判断し、NOに進み再び両電極間のインピーダンス値を測定し液体検出判定を繰り返す。
【0034】
また、ステップS2においてインピーダンス値がある一定値以下になった場合、両電極が被験液30に浸漬されたと判断しYESに進み、ステップS3において、マイコン9内で応答補正回数nをカウントする応答補正カウンタをn=1とする。続くステップS4において、第1次応答補正として後述する予測測定による応答補正を行なう。補正が終了すると、ステップS5において応答補正カウンタをn=n+1として、ステップS6に進み第2次応答補正として、前記ステップS4と同様に予測測定による応答補正を行なう。補正が終了するとステップS7において、被験液30に対する作用電極2と参照電極3間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差Vが0かどうかを判断する。V=0でない場合NOに進み、両電極はまだ被験液30中にあるとして再びステップS5に戻る。またV=0であった場合YESに進み、測定が終了し両電極が被験液30から取り出されたと判断し、自動で電源をオフする。
【0035】
本実施例においては、図3のメインフローチャートのステップS4及びステップS6に示した第1次及び第2次応答補正は同じ処理として、図4の予測測定による応答補正を示すサブルーチンと、図5に示す応答補正グラフとを用いて詳述する。ここでは、ステップS6に示す、応答補正回数がn回目の第2次応答補正を例とする。
【0036】
前述の図3に示すメインフローチャートのステップS5において、応答補正カウンタがn回目をカウントすると、図4のサブルーチンに示す予測測定による応答補正に入り、ステップS10において、モード切換部4をマイコン9により制御し、作用電極2と参照電極3とをインピーダンス測定回路6から増幅器7に接続を切り換え、且つ対電極1を回路上切断することにより応答測定モードに切り換える。更にメモリ13に予め記憶してある応答測定間隔Δtを読み込み、続くステップS11において、作用電極2と参照電極3間に発生する電位差Vnを計測すると共に、タイマー10をオンしΔtの計測を開始する。
【0037】
ステップS12において、モード切換部4をマイコン9により制御し、作用電極2と参照電極3とをインピーダンス測定回路6に接続し、且つ対電極1を回路上切断することによりインピーダンス測定モードへ切り換える。続くステップS13において被験液30を含む作用電極2と参照電極3間のインピーダンス値及び位相角を測定し、更にこのインピーダンス値と位相角とからステップS14において、被験液30を含む作用電極2と参照電極3間の電気容量成分Cと抵抗成分Rとを算出する。
【0038】
ステップS15において、ステップS10と同様にモード切換部4により応答測定モードに切り換え、ステップS16においてタイマー10の設定時間Δt経ったか判断される。経っていなければNOに進み計時を継続し、Δt経ったらYESに進みステップS17において、作用電極2と参照電極3間の電位差V’nを計測し、タイマー10を自動的にオフする。つまり電位差V’nは電位差Vnから一定時間Δt後の電位差を示している。
【0039】
次にステップS18において、作用電極2と参照電極3とが被験液30に浸漬され、被験液30に対する両電極間の電気化学応答により発生した電位差の測定を開始してから、前記電位差V’n測定までのトータル応答時間Tを求める。図5の補正グラフに示すとおり、このトータル応答時間Tは、前記Δtと後述する応答加速電流印加時間tとの繰り返しであることから、応答補正回数nにより次式で求められる。すなわち、T=n・Δt+(n−1)・tにより求まる。
【0040】
以上により算出した、被験液30を含む作用電極2と参照電極3間の電気容量成分Cと抵抗成分R、及び両電極間に発生した電位差V’nとトータル応答時間Tとから、ステップS19において、両電極間に発生した電位差の安定値Vsを予測する次の予測式により安定値Vsを算出する。予測式はVs=V’n/(1−e(−T/C・R))で表される。
【0041】
ステップS20において、両電極間に発生した電位差Vn及びV’nが前記予測した安定値Vsに達しているかどうか、予め設定しておいた許容範囲ΔVsにより判断する。電位差VnとV’n共に許容範囲内、すなわち、Vn≦Vs±ΔVs且つV’n≦Vs±ΔVsを満たした場合YESに進み、ステップS21において、電位差V’nを表示部12に表示し、図3のメインフローチャートに戻る。
【0042】
また、電位差VnとV’nの内少なくとも一方が許容範囲外であった場合NOに進み、ステップS22において、電位差Vn及びV’nが前記安定値Vsに達する妨げとなる前記電気容量成分Cの電荷量Qを算出する。この電気容量成分Cは主に電極表面に酸化膜が形成されることにより発生する電気二重層容量であり、この電荷量Qを予め充電してしまうことにより応答速度を早めることができる。ここで、前記安定値Vsに達するまでに充電される電荷量はQ=C(Vs−V’n)で表される。
【0043】
更にステップS23において、この電荷量Qを充電し応答速度を早めるために、作用電極2及び参照電極3に印加する電流を応答加速電流とすると、電荷量Qは印加電流値iと印加時間tとの積、Q=i・tで表されることから、予め印加時間tを設定しておくことにより、自動的に印加電流値iが求まり、応答加速電流が設定される。
【0044】
ステップS24において、この応答加速電流を作用電極2と参照電極3とに印加するために、マイコン9によりモード切換部4を制御し、作用電極2と参照電極3とを増幅器7から応答加速印加電源5に接続を切り換え、且つ対電極1も応答加速印加電源5に接続することにより応答加速モードに切り換える。続くステップS25において、応答加速電流印加電源5とタイマー10とを前記設定に従いマイコン9により制御し、対電極1から被験液30を介して作用電極2と参照電極3とに応答加速電流を印加する。
【0045】
ステップS26において印加時間tに達したかどうか判断し、達していなければNOに進み印加を続け、印加時間tに達したらYESに進み、ステップS27において応答加速電流の印加を終了する。その後ステップS21において電位差V’nを表示部12に表示して図3のメインフローチャートに戻る。
【0046】
これにより応答の妨げとなる電気容量成分Cを充電して応答を早め、高精度な応答測定が可能となる。
【0047】
本発明の第2実施例は、前述の第1実施例において図3のメインフローチャートに示したステップS4の第1次応答補正を、図4に示した予測測定による応答補正に代えて、図6に示すデータ変化量評価による応答補正としたものであり、その他の構成及び動作は第1実施例と同じものである。
【0048】
このデータ変化量評価による応答補正は、応答測定により発生した電位差の一定時間毎の実測値から変化量を算出し、予め複数段階に設定してあるデータ変化量評価範囲と比較して応答レベルを判定し、これに対応した応答加速電流を印加して応答を補正することにより、高精度な応答測定を可能とするものである。
【0049】
第2実施例の動作を図6のデータ変化量評価による応答補正を示すサブルーチンと図7に示す応答補正グラフを含めて詳述する。
【0050】
前述の図3に示すメインフローチャートのステップS3において、カウンタn=1として、図6のサブルーチンに示すデータ変化量評価による応答補正に入る。ステップS30において、モード切換部4をマイコン9で制御し、作用電極2と参照電極3とを増幅器7に接続し、かつ対電極1をどこにも接続せず回路上切断することにより応答測定モードへ切り換え、更にメモリ13に予め記憶してある応答測定間隔Δtを読み込み、続くステップS31において、作用電極2と参照電極3間に発生する電位差Vnを計測すると共に、タイマー10をオンし、Δtの計測を開始する。
【0051】
ステップS32で設定時間Δt経ったか判断し、経ってなければNOに進み計時を継続し、Δt経ったらYESに進みステップS33において、電位差Vn測定からΔt後の電位差V’nを計測すると、タイマー10は自動的にオフされる。次にステップS34において、Δt間の電位差変化量ΔV=|V’n−Vn|を算出する。
【0052】
ステップS35において、メモリ13に予め記憶してあるΔVminを読み込む。ΔVminは、一般的な電気化学測定装置が正常な応答レベルであれば、測定開始からΔt間に最低限変化する電位差を経験則により予め設定したものである。よってステップS36において、図7の応答補正グラフに示すとおり、このΔVminとΔVとを比較することにより、データ変化量評価が必要な応答レベルかどうか判断される。すなわちΔVがΔVmin以上の値であれば、応答は正常範囲であり、データ変化量評価は必要ないと判断されYESに進み、ステップS37において実測値V’nを表示部12に表示し、図3のメインルーチンに戻る。
【0053】
また、ΔVがΔVminより小さい場合、応答は正常ではないと判断されNOに進み、このデータ変化量ΔVと、予め経験則により複数段階に場合分けしたデータ変化量評価範囲とを比較することにより、被験液30を含む作用電極2と参照電極3間の応答レベルを判別する。すなわちステップS38において、データ変化量評価範囲をメモリ13から読み込み、ステップS39において前記ΔVと比較し、ΔVがどの評価範囲に入るか、つまりどの程度の応答レベルかを判断する。
【0054】
比較はデータ変化量評価範囲で設定してある1段階毎に行ない、範囲外であればNOに進み、ステップS45で次の段階を指定し比較を継続する。また、ΔVがある評価範囲に入った場合、応答レベルが判断されYESに進み、ステップS40において、この応答レベルを正常に戻すために、インピーダンス評価範囲に対応して設定されている応答加速電流値をメモリ13より読み込む。メモリ13には予めデータ変化量評価範囲の段階毎に、印加時間tを一定とした応答加速電流値が設定されているため、応答レベルが判定されると自動で応答加速電流が設定される。
【0055】
ステップS41において、モード切換部4をマイコン9により制御し、作用電極2と参照電極3とを増幅器7から応答加速電流印加電源5に接続を切り換え、且つ対電極1も応答加速電流印加電源5に接続することにより応答加速モードに切り換える。続くステップS42において、予め設定されている応答加速電流の一定印加時間tを計時するタイマー10をセットすると共に、対電極1から被験液30を介して作用電極2と参照電極3に応答加速電流を印加する。
【0056】
ステップS43において一定印加時間tに達したかどうか判断し、達していなければNOに進み印加を続け、一定印加時間tに達したらYESに進み、ステップS44において応答加速電流の印加を終了し、ステップS37において電位差V’nを表示部12に表示し、図3のメインフローチャートに戻る。
【0057】
更に第2実施例においては、作用電極2と参照電極3との間に発生した電位差の実測値による応答レベル評価を、電圧値をパラメータとしたデータ変化量評価範囲と比較することにより行なったが、後述するポーラログラフ式やクーロメトリ式に代表される電極間の電流を測定する電気化学測定装置においても、作用電極2に流れる電流の実測値による応答レベル評価を、電流値をパラメータとしたデータ変化量評価範囲と比較することにより評価可能である。
【0058】
本発明の第3実施例は、前述の第1実施例において図3のメインフローチャートに示したステップS4の第1次応答補正を、図4に示した予測測定による応答補正に代えて、図8に示すインピーダンス値評価による応答補正としたものであり、その他の構成及び動作は第1実施例と同じものである。
【0059】
このインピーダンス値評価による応答補正は、被験液30を含む作用電極2と参照電極3間のインピーダンス値と予め複数段階に設定してあるインピーダンス値評価範囲とを比較して応答レベルを判定し、これに対応した応答加速電流を印加して応答を補正することにより、高精度な応答測定を可能とするものである。
【0060】
第3実施例の動作を図8のインピーダンス評価による応答補正を示すサブルーチンと図9及び図10に示すグラフを含めて詳述する。図9は、被験液30を含む作用電極2と参照電極3間のインピーダンス値と、被験液30に対する両電極の電気化学応答により発生する電位差との関係を示すグラフであり、図10は前記インピーダンス値と、前記電気化学応答を補正するのに必要な応答加速電流値との関係を示す。
【0061】
前述の図3に示すメインフローチャートのステップS3において、カウンタn=1として、図8のサブルーチンに示すインピーダンス評価による応答補正に入る。ステップS51において、測定モードは既にインピーダンス測定モードであるため、そのまま被験液30を含む作用電極2と参照電極3間のインピーダンス値ΔIを測定する。ステップS52において、予め経験則により複数段階に場合わけしたインピーダンス評価範囲をメモリ13より読み込み、ステップS53において前記インピーダンス値ΔIと前記インピーダンス評価範囲とを比較し、インピーダンス値ΔIがどの評価範囲に入るか、つまりどの程度の応答レベルかを判断する。
【0062】
比較はインピーダンス評価範囲で設定してある1段階毎に行ない、範囲外であればNOに進み、ステップS59で次の段階を指定し比較を継続する。また、インピーダンス値ΔIがインピーダンス評価範囲のある段階に入り、応答レベルが判定された場合YESに進み、ステップS54において、この応答レベルを正常に戻すために、インピーダンス評価範囲に対応して設定されている応答加速電流値をメモリ13より読み込む。メモリ13には予めインピーダンス評価範囲の段階毎に、印加時間tを一定とした応答加速電流値が設定されており、応答レベルが判定されると自動で応答加速電流が設定される。
【0063】
図9に示すようにインピーダンス値が大きくなるほど、被験液30に対する作用電極2と参照電極3間の電気化学応答により発生する電位差が小さくなってしまうため、これを補正する応答加速電流値は図10に示すとおり大きくなるように設定している。
【0064】
ステップS55において、モード切換部4をマイコン9により制御し、作用電極2と参照電極3とをインピーダンス測定回路6から応答加速電流印加電源5に接続を切り換え、且つ対電極1も応答加速電流印加電源5に接続することにより応答加速モードに切り換える。続くステップS56において、予め設定されている応答加速電流の一定印加時間tを計時するタイマー10をセットすると共に、対電極1から被験液30を介して作用電極2と参照電極3に応答加速電流を印加する。ステップS57において一定印加時間tに達したかどうか判断し、達していなければNOに進み印加を続け、一定印加時間tに達したらYESに進み、ステップS58において応答加速電流の印加を終了し、図3のメインフローチャートに戻る。
【0065】
本発明の第4実施例は、前述の第1実施例において図4に示した予測測定による応答補正の別の処理手順として、図11のフローチャート及び図12の応答補正グラフにより詳述するものである。その他の構成及び動作は第1実施例と同じものである。
【0066】
第1実施例の図4により示した予測測定による応答補正においては、応答測定モードにより作用電極2と参照電極3間に発生する電位差を測定している時間Δtの間に、応答測定モードからインピーダンス測定モードに切り換え、被験液30を含む作用電極2と参照電極3間の電気容量成分Cと抵抗成分Rとを測定することにより、両電極間に発生する電位差の安定値を予測した。
【0067】
本実施例において、図11により示す予測測定による応答補正では、応答測定前段において、予め設定されたインピーダンス測定時間t’で、被験液30を含む作用電極2と参照電極3間のインピーダンス値及び位相角とを測定し、後段に応答測定時間Δtにより応答測定を行ない、安定値を予測していくものである。
【0068】
図3に示すメインフローチャートのステップS5において、応答補正カウンタがn回目をカウントすると、ステップS70において、被験液30を含む作用電極2と参照電極3間のインピーダンス値と位相角とを測定し、更にこのインピーダンス値と位相角とからステップS71において、被験液30を含む両電極間の電気容量成分Cと抵抗成分Rとを算出する。
【0069】
ステップS72においてマイコン9によりモード切換部4を制御し、作用電極2と参照電極3とをインピーダンス測定回路6から増幅器7に接続を切り換え、且つ対電極1はどこにも接続せず回路上切断することにより応答測定モードに切り換え、更にメモリ13に予め記憶してある応答測定間隔Δtを読み込み、続くステップS73において、作用電極2と参照電極3間に発生する電位差Vnを計測すると共に、タイマー10をオンし、Δtの計測を開始する。
【0070】
ステップS74において設定時間Δt経ったか判断し、経ってなければNOに進み計時を継続し、Δt経ったらYESに進みステップS75において、電位差Vn測定からΔt後の電位差V’nを計測すると、タイマー10は自動的にオフされる。
【0071】
次にステップS76において、作用電極2と参照電極3とが被験液30に浸漬することにより応答を開始してから前記電位差V’n測定までのトータル応答時間Tを求める。図12の応答補正グラフに示すとおり、このトータル応答時間Tは、前記応答測定間隔Δtと前記インピーダンス測定時間t’、及び前記応答加速電流印加時間tとの繰り返しであることから、応答補正回数nにより次式で求められる。すなわち、T=n・(Δt+t’)+(n−1)・tにより求まる。
【0072】
以上により算出した、被験液30を含む作用電極2と参照電極3間の電気容量成分Cと抵抗成分R、及び両電極間に発生した電位差V’nとトータル応答時間Tとから、ステップS77において、両電極間に発生した電位差の安定値Vsを予測する次の予測式により安定値Vsを算出する。予測式はVs=V’n/(1−e(−T/C・R))で表される。
【0073】
ステップS78において、被験液30を含む作用電極2と参照電極3間のインピーダンスを測定していた時間t’間に変化した電位差を補正する。図12の応答補正グラフに示すように、まず、1回のインピーダンス測定及び応答測定のトータル時間T’=t’+Δtであることから、このT’間の電位差変化量ΔVを、前記電気容量成分Cと前記抵抗成分R、及び前記安定値Vsとを含めた次式より求める。式は、ΔV=Vs(1−e(−T’/C・R))である。
【0074】
更にステップS79において、インピーダンス測定開始直後の両電極間に発生した電位差Vaを算出する。すなわち、Va=V’n−ΔVにより求められる。
【0075】
ステップS80において、両電極間に発生した電位差Va及びV’nが前記予測した安定値Vsに達しているかどうか、予め設定しておいた許容範囲ΔVsにより判断する。電位差VnとV’n共に許容範囲内、すなわち、Vn≦Vs±ΔVs且つV’n≦Vs±ΔVsを満たした場合YESに進み、ステップS81において、電位差V’nを表示部12に表示し、更にステップS82において再びインピーダンス測定モードへ切り換えて、図3のメインフローチャートに戻る。
【0076】
また、電位差VaとV’nの内少なくとも一方が許容範囲外であった場合NOに進み、ステップS83において、電位差Va及びV’nが前記安定値Vsに達する妨げとなる前記電気容量成分Cの電荷量Qを算出する。この電気容量成分Cは主に電極表面に酸化膜が形成されることにより発生する電気二重層容量であり、この電荷量Qを予め充電してしまうことにより応答速度を早めることができる。ここで、前記安定値Vsに達するまでに充電される電荷量はQ=C(Vs−V’n)で表される。
【0077】
更にステップS84において、この電荷量Qを充電し応答速度を早めるために、作用電極2及び参照電極3に印加する電流を応答加速電流とすると、電荷量Qは印加電流値iと印加時間tとの積、Q=i・tで表されることから、予め印加時間tを設定しておくことにより、自動的に印加電流値iが求まり、応答加速電流が設定される。
【0078】
ステップS85において、この応答加速電流を作用電極2と参照電極3とに印加するために、マイコン9によりモード切換部4を制御し、作用電極2と参照電極3とを増幅器7から応答加速印加電源5に接続を切り換え、且つ対電極1も応答加速印加電源5に接続することにより応答加速モードに切り換える。続くステップS86において、応答加速電流印加電源5とタイマー10とを前記設定に従いマイコン9により制御し、対電極1から被験液30を介して作用電極2と参照電極3とに応答加速電流を印加する。
【0079】
ステップS87において印加時間tに達したかどうか判断し、達していなければNOに進み印加を続け、印加時間tに達したらYESに進み、ステップS88において応答加速電流の印加を終了する。その後ステップS81に戻り電位差V’nを表示部12に表示し、更にステップS82において再びインピーダンス測定モードに切り換えて、図3のメインフローチャートに戻る。
【0080】
これにより応答の妨げとなる電気容量成分Cを充電して応答を早め、高精度な応答測定が可能となる。
【0081】
なお、第1から第4実施例において、被験液30とを含む作用電極2と参照電極3間のインピーダンス値の測定、又はインピーダンス値と位相角との測定では、モード切換部4をマイコン9で制御し、作用電極2と参照電極3とをインピーダンス測定回路6に接続し、且つ対電極1をどこにも接続せず回路上切断することにより測定した。しかし、被験液30を含む対電極1と参照電極3間のインピーダンス値と位相角とを測定し、次いで被験液30を含む対電極1と参照電極3間のインピーダンス値と位相角とを測定し、更にこの2つを合成することにより被験液30を含む作用電極2と参照電極3間のインピーダンス値と位相角とを算出しても良い。
【0082】
また、ガルバニ式電気化学測定に代表される、作用電極2と参照電極3間に発生した電位差を測定する電気化学測定装置での応答補正の例を示したが、図10の機能構成ブロック図に示すような、公知のポーラログラフ式やクーロメトリ式に代表される電流測定タイプ、すなわち、参照電極3の電位を基準電位として、ポテンショスタット22を用いて作用電極2と対電極1間の電位を制御し、基準電位と等しくなるよう定電位としたときに、作用電極2に流れる電流値を測定する電気化学測定装置においても、前述した第1から第4実施例で示した応答補正を行なうことができる。ただし、インピーダンス値の測定、又はインピーダンス値と位相角との測定については、被験液30を含む対電極1と作用電極2間において行ない、応答加速電流も対電極1から作用電極2に印加する。
【0083】
なお、応答加速電流の設定に関しては、印加電流値を設定して印加時間は予め一定の時間を用いたが、逆に、印加電流値を予め一定としておき、印加時間を設定することも可能である。
【0084】
また、応答加速電流に代えて応答加速電圧を印加することも可能である。この応答加速電圧に関しても、前述の応答加速電流の設定と同様に、印加時間を一定として印加電圧値を設定しても良いし、印加電圧値を一定として印加時間を設定しても良い。
【0085】
なお、結果表示に関しては電位差V’nを表示したが、算出した両電極間に発生する電位差の安定値Vsを表示しても良いし、また、電位差V’n又は安定値Vsから換算されるPH値やORP値等、被験液30の特性を表示しても良い。
【0086】
【発明の効果】
本発明の電気化学測定装置は、作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差を測定する電気化学測定装置において、被験液を介して前記作用電極と前記参照電極間の抵抗成分と電気容量成分とを測定する成分測定手段と、前記被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差の実測値と、前記成分測定手段により測定した抵抗成分と電気容量成分とから、前記被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差の安定値を予測する予測測定手段とを有することにより、容易に誤差要因を補正し、短い測定時間で精度良く安定値を求めることができる。
【0087】
また本発明の電気化学測定装置は、作用電極、参照電極及び対電極を有し、被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流値を測定する電気化学測定装置において、被験液を介して前記作用電極と対電極間の抵抗成分と電気容量成分とを測定する成分測定手段と、前記被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流の実測値と、前記成分測定手段により測定した抵抗成分と電気容量成分とから、前記被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流の安定値を予測する予測測定手段とを有することにより、容易に誤差要因を補正し、短い測定時間で精度良く安定値を求めることができる。
【0088】
また前記成分測定手段は、被験液を介して作用電極と参照電極間のインダクタンス成分を更に測定することにより、電極表面の平坦率の低い電極や内部が多孔質性である電極の影響、又は磁性体を含む被験液の影響を補正することが可能である。
【0089】
また前記成分測定手段は、被験液を介して作用電極と対電極間のインダクタンス成分を更に測定することにより、電極表面の平坦率の低い電極や内部が多孔質性である電極の影響、又は磁性体を含む被験液の影響を補正することが可能である。
【0090】
また本発明の電気化学測定装置は、前記予測測定手段により予測した安定値と、前記成分測定手段により測定した電気容量成分とから、この電気容量成分に充電される電荷量を算出する算出手段と、この電荷量を充電し、前記被験液に対する作用電極の電気化学応答の応答レベルを向上させるための電流である応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定し、この応答加速電流を作用電極、参照電極及び対電極との間に印加するための応答加速手段とを有することにより、補正に必要な応答加速電流の適正値を求めることができ、高精度な測定が可能である。
【0091】
また本発明の電気化学測定装置は、前記予測測定手段により予測した安定値と、前記成分測定手段により測定した電気容量成分とから、この電気容量成分に充電される電荷量を算出する算出手段と、この電荷量を充電し、前記被験液に対する作用電極の電気化学応答の応答レベルを向上させるための電流である応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定し、この応答加速電流を作用電極と対電極との間に印加するための応答加速手段とを有することにより、補正に必要な応答加速電流の適正値を求めることができ、高精度な測定が可能である。
【0092】
また本発明の電気化学測定装置は、作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差を測定する電気化学測定装置において、被験液を介して前記作用電極と前記参照電極間のインピーダンス値を測定するインピーダンス測定手段と、前記インピーダンス測定手段により測定したインピーダンス値と、予め複数段階に設定したインピーダンス評価範囲とを比較することにより、前記被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答の応答レベルを判定する応答レベル判定手段と、前記作用電極と前記参照電極、及び前記対電極との間に応答加速電流を印加する応答加速手段とを有し、前記応答レベル判定手段により判定された応答レベルにより、前記応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定することにより、被験液を介して作用電極と参照電極間のインピーダンス値を測定するだけで、印加すべき応答加速電流を簡便に求め、補正することが可能である。
【0093】
また本発明の電気化学測定装置は、作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流値を測定する電気化学測定装置において、被験液を介して前記作用電極と前記対電極間のインピーダンス値を測定するインピーダンス測定手段と、前記インピーダンス測定手段により測定したインピーダンス値と、予め複数段階に設定したインピーダンス評価範囲とを比較することにより、前記被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答の応答レベルを判定する応答レベル判定手段と、前記作用電極と前記対電極との間に応答加速電流を印加する応答加速手段とを有し、前記応答レベル判定手段により判定された応答レベルにより、前記応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定することにより、被験液を介して作用電極と対電極間のインピーダンス値を測定するだけで、印加すべき応答加速電流を簡便に求め、補正することが可能である。
【0094】
また本発明の電気化学測定装置は、作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差を測定する電気化学測定装置において、前記被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差の一定時間後の変化量を測定するデータ変化量測定手段と、前記データ変化量測定手段により測定した変化量と、予め複数段階に設定したデータ変化量評価範囲とを比較することにより応答レベルを判定する応答レベル判定手段と、前記作用電極と前記参照電極、及び前記対電極との間に応答加速電流を印加する応答加速手段とを有し、前記応答レベル判定手段により判定された応答レベルにより、前記応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定することにより、インピーダンス測定をすることなく、被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差を測定するだけで、応答加速電流を簡便に求め、補正することが可能である。
【0095】
また本発明の電気化学測定装置は、作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流値を測定する電気化学測定装置において、前記被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極間に流れる電流値の一定時間後の変化量を測定するデータ変化量測定手段と、前記データ変化量測定手段により測定した変化量と、予め複数段階に設定したデータ変化量評価範囲とを比較することにより応答レベルを判定する応答レベル判定手段と、前記作用電極と前記対電極との間に応答加速電流を印加する応答加速手段とを有し、前記応答レベル判定手段により判定された応答レベルにより、前記応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定することにより、インピーダンス測定をすることなく、被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流値を測定するだけで、応答加速電流を簡便に求め、補正することが可能である。
【0096】
更に前記応答加速手段は、応答加速電流に代えて、応答を加速させる電圧である応答加速電圧の印加電圧値と印加時間との内少なくとも一方を設定し、この応答加速電圧を作用電極と参照電極との内少なくとも一方と、対電極との間に印加することにより、電圧でも同様に補正でき、電気化学応答の応答レベルを上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の電気化学測定装置の測定時外観図である。
【図2】第1実施例の機能構成ブロック図である。
【図3】第1実施例の動作を示すメインフローチャートである。
【図4】第1実施例において示す、予測測定による応答補正のサブフローチャートである。
【図5】第1実施例の応答補正グラフである。
【図6】第2実施例において示す、データ変化量評価による応答補正のサブフローチャートである。
【図7】第2実施例の応答補正グラフである。
【図8】第3実施例において示す、インピーダンス評価による応答補正のサブフローチャートである。
【図9】作用電極と参照電極間インピーダンス値と両電極間に発生する電位差の関係を示すグラフである。
【図10】作用電極と参照電極間インピーダンス値と応答加速電流値の関係を示すグラフである。
【図11】第4実施例において示す、別の予測測定による応答補正のサブフローチャートである。
【図12】第4実施例の応答補正グラフである。
【図13】ポーラログラフ式電気化学測定装置の機能構成ブロック図である。
【符号の説明】
1  対電極
2  作用電極
3  参照電極
4  モード切換部
5  応答加速電流印加電源
6  インピーダンス測定回路
7  増幅器
8  A/Dコンバータ
9  マイコン
10 タイマー
11 電源
12 表示部
13 メモリ
21 電流検出器
22 ポテンショスタット
23 設定電位可変装置
30 被験液

Claims (11)

  1. 作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差を測定する電気化学測定装置において、
    被験液を介して前記作用電極と前記参照電極間の抵抗成分と電気容量成分とを測定する成分測定手段と、
    前記被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差の実測値と、前記成分測定手段により測定した抵抗成分と電気容量成分とから、前記被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差の安定値を予測する予測測定手段とを有することを特徴とする電気化学測定装置。
  2. 作用電極、参照電極及び対電極を有し、被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流値を測定する電気化学測定装置において、
    被験液を介して前記作用電極と対電極間の抵抗成分と電気容量成分とを測定する成分測定手段と、
    前記被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流の実測値と、前記成分測定手段により測定した抵抗成分と電気容量成分とから、前記被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流の安定値を予測する予測測定手段とを有することを特徴とする電気化学測定装置。
  3. 前記成分測定手段は、被験液を介して作用電極と参照電極間のインダクタンス成分を更に測定することを特徴とする請求項1記載の電気化学測定装置。
  4. 前記成分測定手段は、被験液を介して作用電極と対電極間のインダクタンス成分を更に測定することを特徴とする請求項2記載の電気化学測定装置。
  5. 前記予測測定手段により予測した安定値と、前記成分測定手段により測定した電気容量成分とから、この電気容量成分に充電される電荷量を算出する算出手段と、
    この電荷量を充電し、前記被験液に対する作用電極の電気化学応答の応答レベルを向上させるための電流である応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定し、この応答加速電流を作用電極、参照電極及び対電極との間に印加するための応答加速手段とを有することを特徴とする請求項1記載の電気化学測定装置。
  6. 前記予測測定手段により予測した安定値と、前記成分測定手段により測定した電気容量成分とから、この電気容量成分に充電される電荷量を算出する算出手段と、
    この電荷量を充電し、前記被験液に対する作用電極の電気化学応答の応答レベルを向上させるための電流である応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定し、この応答加速電流を作用電極と対電極との間に印加するための応答加速手段とを有することを特徴とする請求項2記載の電気化学測定装置。
  7. 作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差を測定する電気化学測定装置において、
    被験液を介して前記作用電極と前記参照電極間のインピーダンス値を測定するインピーダンス測定手段と、
    前記インピーダンス測定手段により測定したインピーダンス値と、予め複数段階に設定したインピーダンス評価範囲とを比較することにより、前記被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答の応答レベルを判定する応答レベル判定手段と、
    前記作用電極と前記参照電極、及び前記対電極との間に応答加速電流を印加する応答加速手段とを有し、前記応答レベル判定手段により判定された応答レベルにより、前記応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定することを特徴とする電気化学測定装置。
  8. 作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流値を測定する電気化学測定装置において、
    被験液を介して前記作用電極と前記対電極間のインピーダンス値を測定するインピーダンス測定手段と、
    前記インピーダンス測定手段により測定したインピーダンス値と、予め複数段階に設定したインピーダンス評価範囲とを比較することにより、前記被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答の応答レベルを判定する応答レベル判定手段と、
    前記作用電極と前記対電極との間に応答加速電流を印加する応答加速手段とを有し、前記応答レベル判定手段により判定された応答レベルにより、前記応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定することを特徴とする電気化学測定装置。
  9. 作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差を測定する電気化学測定装置において、
    前記被験液に対する作用電極と参照電極間の電気化学応答により両電極間に発生する電位差の一定時間後の変化量を測定するデータ変化量測定手段と、
    前記データ変化量測定手段により測定した変化量と、予め複数段階に設定したデータ変化量評価範囲とを比較することにより応答レベルを判定する応答レベル判定手段と、
    前記作用電極と前記参照電極、及び前記対電極との間に応答加速電流を印加する応答加速手段とを有し、前記応答レベル判定手段により判定された応答レベルにより、前記応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定することを特徴とする電気化学測定装置。
  10. 作用電極、参照電極及び対電極とを有し、被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極に流れる電流値を測定する電気化学測定装置において、
    前記被験液に対する作用電極と対電極間の電気化学応答により作用電極間に流れる電流値の一定時間後の変化量を測定するデータ変化量測定手段と、
    前記データ変化量測定手段により測定した変化量と、予め複数段階に設定したデータ変化量評価範囲とを比較することにより応答レベルを判定する応答レベル判定手段と、
    前記作用電極と前記対電極との間に応答加速電流を印加する応答加速手段とを有し、前記応答レベル判定手段により判定された応答レベルにより、前記応答加速電流の印加電流値と印加時間との内少なくとも一方を設定することを特徴とする電気化学測定装置。
  11. 前記応答加速手段は、応答加速電流に代えて、応答を加速させる電圧である応答加速電圧の印加電圧値と印加時間との内少なくとも一方を設定し、この応答加速電圧を作用電極と参照電極との内少なくとも一方と、対電極との間に印加することを特徴とする請求項5乃至10記載の電気化学測定装置。
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