JP4138502B2 - 電気化学的インピーダンス測定方法および電気化学的インピーダンス測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池ないしキャパシタを評価するための電気化学的インピーダンスの測定方法および電気化学的インピーダンスの測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電池の内部状態を調査する手段として電気化学的インピーダンスの測定が行われており、より高精度で再現性の高い方法が望まれている。
【0003】
電気化学的インピーダンスの測定方法としては、基準となる正弦波電圧ないし正弦波電流を電池等の試料に印加した時に、試料に流れる電流波形および試料に発生する電圧波形を測定し、インピーダンスZ=電圧V/電流Iの関係から試料の電気化学的インピーダンスZを求める方法が知られている。
【0004】
電気化学的インピーダンスを測定するための測定周波数の範囲は、10kHz〜100kHz程度から10mHz〜0.1mHz程度までであることが多い。測定時間は、各々の周波数においてその1周期分の時間が必要となる。測定時間を短縮する観点から、特に測定周波数が低いときは、1周期分の測定データに基づいて電気化学的インピーダンスZを求めている。
【0005】
図9は、従来のインピーダンス測定装置によって電池に印加される印加電圧を示す波形図である。多くの場合、周波数の間隔は対数目盛りで10等分/10倍程度を選ぶが、わかり易くするため10倍あたり2等分で測定した例をあげている。
【0006】
図9に示す例では高周波側から低周波側に周波数を順次切替えている。また0.1Hz未満の周波数領域では、全て1周期分の測定データに基づいて電気化学的インピーダンスZを求めている。
【0007】
このような電圧、電流のデータを取り込んでフーリエ変換を行う。そして、各周波数の基本波成分の電圧と電流との比に基づいてインピーダンスを求める。
【0008】
その周波数におけるインピーダンスを複素平面上にプロットした図を一般的にCole−Coleプロットと呼び、一般的な電気化学的インピーダンスの測定結果を表現する方法として定着している。電気化学的インピーダンスの測定器としては、solartron社の製品などがよく知られている。
【0009】
特表2002−525586号公報には、ノイズを抑圧するために複数周期分の測定データに基づいて電気化学的インピーダンスを測定する測定方法が開示されている。
【0010】
この様にして取得された電気化学的インピーダンスの周波数特性に基づいて電池等の電気化学的挙動を解析すると、劣化または充放電に起因する内部抵抗の変化の様子を把握することが出来る。
【0011】
【特許文献1】
特表2002−525586号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら前述した従来の方法では、測定しようとする電池の電極反応が遅い場合には、測定周波数を切替える時に電圧、電流が過渡的に変化するため、測定周波数を切替える前の状態に依存して電気化学的インピーダンスの測定結果が変化する。その結果、測定結果が本来の電気化学的インピーダンスを表さなくなるという問題がある。
【0013】
例えば、測定周波数を上げながら測定する場合と、測定周波数を下げながら測定する場合とで、過渡変化を開始する状態が違うため測定結果が異なるという問題がある。
【0014】
特に、低周波数領域において測定時間を短縮するために測定時間を測定周波数の1周期にしていると、測定結果が本来の電気化学的インピーダンスを表さなくなる現象が顕著に現れるという問題がある。
【0015】
前述した特表2002−525586号公報に開示されている複数周期分の測定データを平均化する方法によってもこの問題を根本的には解決することはできない。
【0016】
本発明の目的は、測定制御の簡素化を図り、測定時間の増加を抑圧しつつ、電気化学的インピーダンスを正確に測定することができる電気化学的インピーダンス測定方法および電気化学的インピーダンス測定装置を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電気化学的インピーダンス測定方法は、測定試料の電気化学的インピーダンスを測定する電気化学的インピーダンス測定方法であって、所定の周波数に従って周期的に変化する第1信号を1周期分以上前記測定試料に印加しながら前記周期的に変化する第1信号を印加された前記測定試料に発生する電圧と前記測定試料を流れる電流とを検出する印加検出工程と、第1周期目以降における第1時刻において検出された前記電圧および前記電流と、前記第1時刻よりも1周期前の第2時刻に検出された前記電流および前記電圧との間の差が所定の割合以下になったか否かを判定する判定工程と、前記差が前記所定の割合以下になったと判定されたときに、前記周期的に変化する信号の印加を開始した第3時刻から前記差が前記所定の割合以下になった前記第1時刻までの時間を表す最短収束時間を算出する算出工程と、前記算出工程の後で、他の周波数に従って周期的に変化する第2信号を、第4時刻から前記最短収束時間に基づいた所定の時間だけ経過した第5時刻まで前記測定試料に印加する印加工程と、前記第5時刻の1周期前の第6時刻までの間に前記測定試料に発生した電圧と前記測定試料を流れた電流とを検出する検出工程と、
前記検出工程において検出された前記電圧および前記電流に基づいて前記測定試料のインピーダンスを測定するインピーダンス測定工程とを包含することを特徴とする。
【0022】
本発明に係る電気化学的インピーダンス測定装置は、測定試料の電気化学的インピーダンスを測定する電気化学的インピーダンス測定装置であって、所定の周波数に従って周期的に変化する第1信号を1周期分以上前記測定試料に印加しながら前記周期的に変化する第1信号を印加された前記測定試料に発生する電圧と前記測定試料を流れる電流とを検出する印加検出手段と、第1周期目以降における第1時刻において検出された前記電圧および前記電流と、前記第1時刻よりも1周期前の第2時刻に検出された前記電流および前記電圧との間の差が所定の割合以下になったか否かを判定する判定手段と、前記差が前記所定の割合以下になったと判定されたときに、前記周期的に変化する信号の印加を開始した第3時刻から前記差が前記所定の割合以下になった前記第1時刻までの時間を表す最短収束時間を算出する算出手段と、他の周波数に従って周期的に変化する第2信号を、前記第1時刻よりも後の第4時刻から前記最短収束時間に基づいた所定の時間だけ経過した第5時刻まで前記測定試料に印加する印加手段と、前記第5時刻の1周期前の第6時刻までの間に前記測定試料に発生した電圧と前記測定試料を流れた電流とを検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された前記電圧および前記電流に基づいて前記測定試料のインピーダンスを測定するインピーダンス測定手段とを具備することを特徴とする。
【0033】
【発明の実施の形態】
実施の形態に係る電気化学的インピーダンス測定方法においては、他の周波数に従って周期的に変化する第2信号を、第4時刻から前記最短収束時間に基づいた所定の時間だけ経過した第5時刻まで前記測定試料に印加する印加工程と、前記第5時刻の1周期前の第6時刻までの間に前記測定試料に発生した電圧と前記測定試料を流れた電流とを検出する検出工程と、前記検出工程において検出された前記電圧および前記電流に基づいて前記測定試料のインピーダンスを測定するインピーダンス測定工程とを包含している。このため、所定の周波数に従って周期的に変化する第1信号が印加される測定試料の電圧および電流の測定結果に基づいて、他の周波数に従って周期的に変化する第2信号が印加される測定試料のインピーダンスを簡素な制御によって正確に測定することができる。
【0034】
この実施の形態においては、前記第5時刻は、前記第4時刻から前記最短収束時間に所定の周期を加えた時間だけ経過した時刻であることが好ましい。
【0035】
前記所定の周期は、1周期であることが好ましい。
【0036】
前記第1信号の周波数および前記第2信号の周波数は、0.1ヘルツ(Hz)よりも低くなっていることが好ましい。
【0037】
前記第1信号および前記第2信号は、正弦波電圧と正弦波電流とのいずれかであることが好ましい。
【0038】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0039】
(比較例1)
図1は、比較例1に係るインピーダンス測定装置100の構成を示すブロック図である。インピーダンス測定装置100は、電圧信号印加器2を備えている。電圧信号印加器2は、周期的に変化する電圧信号をn周期分(nは2以上の整数)測定試料6に印加する。測定試料は、例えば電池によって構成されている。
【0040】
インピーダンス測定装置100には、インピーダンス測定器1が設けられている。インピーダンス測定器1は、n周期のうち最初の1周期の間を除いた期間のうちの1周期分の間に測定試料6に発生した電圧の波形および測定試料6を流れた電流の波形に基づいて測定試料6の電気化学的インピーダンスを測定する。
【0041】
このように構成されたインピーダンス測定装置100の動作を説明する。図2は比較例1に係るインピーダンス測定方法の手順を示すフローチャートであり、図3はインピーダンス測定装置100によって測定される測定試料6に印加される印加電圧を示す波形図であり、図4はインピーダンス測定装置100によって測定される測定試料6に印加される印加電圧と測定電流とによって形成されるリサージュ図形を示すグラフである。
【0042】
まず、正弦波状に変化する電圧信号を2周期分電圧信号印加器2が測定試料6に印加する(ステップS1)。正弦波状に変化する電圧信号の測定周波数は、0.1ヘルツ(Hz)よりも低くなっている。
【0043】
次に、インピーダンス測定器1は、第2周期目に測定試料6に発生した電圧の波形および測定試料6を流れた電流の波形に基づいて測定試料6のインピーダンスを測定する(ステップS2)。
【0044】
そして、すべての測定周波数において測定が終了したか否かを判断する(ステップS3)。すべての測定周波数において測定が終了していないと判断したときは(ステップS3においてNO)、電圧信号印加器2は、測定試料6に印加すべき電圧信号の測定周波数を低周波側に切り替える(ステップS4)。その後、ステップS1へ戻る。すべての測定周波数において測定が終了したと判断したときは(ステップS3においてYES)、インピーダンス測定方法の処理を終了する。
【0045】
図3に示される測定試料6に印加された印加電圧のパターンを、前述した図9に示される従来の印加電圧パターンと比較すると、図3の印加電圧パターンにおいては、測定周波数を切り替えた時の過渡変化が2周期目では生じていない。
【0046】
このことをさらにわかり易くするために、横軸に電圧、縦軸に電流をとったリサージュ図形を図4に示す。測定周波数を切り替える時は、切り替える前の周波数での電圧電流のラインから切り替えた後の周波数での電圧電流のラインに徐々に変化している様子がわかる。
【0047】
測定周波数を切り替えた時の過渡変化を含む1周期目の測定データに基づいて電気化学的インピーダンスを測定した結果と、過渡変化を含まない2周期目の測定データに基づいて電気化学的インピーダンスを測定した結果とを表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1からわかるように、1周期目の測定データに基づいて測定された電気化学的インピーダンスには過渡変化の影響が現れている。従って、測定されたインピーダンスは本来のインピーダンスからの誤差を多く含んでいる。
【0050】
フーリエ変換における歪を抑圧する方法として、ハニング窓やブラックマンハリス窓などの窓関数を測定結果に乗算する方法が知られている。しかしながら、サンプリング測定データが1周期分しかない場合にはかえって歪を生じる結果となる。従って、これが原因となってインピーダンスの測定結果を狂わせる。このため、この方法を使用することは、この場合は不適当である。
【0051】
このように電気化学的インピーダンスを測定する際には、測定周波数を切り替える時に発生する過渡変化が、測定周期に対して無視できない期間存在し、このような過渡変化がインピーダンスの測定結果に悪影響をおよぼす。これを防ぐには、過渡変化が生じている期間における測定データを用いないこと、若しくは過渡変化が生じている期間を無視することができるぐらい長時間にわたって一定周波数の正弦波振幅を印加し続け、そのときの測定データに基づいてインピーダンスを測定することの2つが考えられる。
【0052】
しかしながら、後者は1Hz以下といったような低周波領域を測定する電気化学インピーダンス測定においては測定に時間がかかりすぎると言う問題を抱えている。後者の方法によれば、場合によってはインピーダンスを測定するために数時間〜数日を要することになる。
【0053】
過渡変化が生じる期間を予測することができない場合に、過渡変化による悪影響を避ける簡便法として、2周期にわたって試料に正弦波電圧ないし正弦波電流を印加し、2周期目の測定データに基づいてインピーダンスを測定することにより過渡変化の影響を避けることが出来る。
【0054】
また測定周波数を切り替える間隔を細かくすると、切り替える直前の周波数における測定データの最終値と次の周波数における測定データの初期値とがほぼ一致することから過渡変化の影響を避けることは可能である。しかしながら、測定に更に時間がかかると言う問題がある。
【0055】
また、測定しようとする周波数をインピーダンス測定装置自身が発振しているため、未知の周波数解析と異なり、インピーダンス測定装置自身が1周期を把握することができる。この結果、測定点数、サンプリング周波数もインピーダンス測定において最適になるように設定することができる。従って、1周期分の測定データに基づいて測定する方法が、測定時間を短縮しつつ、安定した測定を行う上で現実的である。尚、過渡変化が起こっているか否かは1周期前の測定データを比較することで容易に判別することが可能である。
【0056】
電池等の電気化学素子以外のLCR部品のインピーダンス測定においては、反応が秒や分といった長い時間の単位で進行することがないため、前述したような1Hz以下の低い周波数領域までインピーダンスを測定する必要が無い。このため、インピーダンス測定装置の周波数の下限は数十Hz〜数百Hz以上に設計されている。この場合には、数周期あるいはそれより長い周期に渡って測定を行っても測定時間に与える影響は少ない。
【0057】
以上、2周期分の測定データのうちの最後の1周期分の測定データを使う例をあげたが、本発明はこれに限定されない。2周期分以上の測定データから最初の1周期分の測定データを差し引いた残りの測定データを使っても同様の効果が得られることは言うまでもないし、2周期分以上の測定データのうちの最後の1周期分の測定データを使っても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0058】
以上のように比較例1によれば、n周期のうち最初の1周期の間を除いた期間のうちの1周期分の間に測定試料6に発生した電圧の波形および測定試料6を流れた電流の波形に基づいて測定試料6のインピーダンスを測定するインピーダンス測定工程を包含している。このため、測定試料6のインピーダンスを測定するための電圧および電流は、測定試料6に印加する信号の周波数を切り替えたときに発生する過渡的な変化の影響を受けることがない。その結果、測定試料6のインピーダンスを正確に測定することができる。
【0059】
なお、測定試料6が電池である例を説明したが、本発明はこれに限定されない。測定試料6は、キャパシタであってもよい。
【0060】
(比較例2)
図5は、比較例2に係るインピーダンス測定装置100Aの構成を示すブロック図である。前述した図1に示すインピーダンス測定装置100の構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付している。従って、これらの構成要素の詳細な説明は省略する。
【0061】
インピーダンス測定装置100Aは、電圧信号印加器2を備えている。電圧信号印加器2は、正弦波状に変化する電圧信号を1周期分以上測定試料6に印加する。
【0062】
インピーダンス測定装置100Aには、電圧電流検出器3が設けられている。電圧電流検出器3は、電圧信号印加器2によって正弦波状に変化する電圧信号を印加された測定試料6に発生する電圧と測定試料6を流れる電流とを検出する。
【0063】
インピーダンス測定装置100Aは、判定器4を備えている。判定器4は、第1周期目以降における第1時刻において電圧電流検出器3によって検出された電圧および電流と、第1時刻よりも1周期前の第2時刻において電圧電流検出器3によって検出された電流および電圧との間の差が所定の割合以下になったか否かを判定する。
【0064】
インピーダンス測定装置100Aには、インピーダンス測定器1が設けられている。インピーダンス測定器1は、判定器4によって前記電流および電圧との差が所定の割合以下になったと判定されたときに、第2時刻から第1時刻までの1周期分の検出電圧および検出電流に基づいて測定試料6のインピーダンスを測定する。
【0065】
このように構成されたインピーダンス測定装置100Aの動作を説明する。図6は、比較例2に係るインピーダンス測定方法の手順を示すフローチャートである。
【0066】
まず、インピーダンスの測定を終了する終了周波数を設定する(ステップS11)。次に、測定周波数を切り替えるときにおける測定周波数の間の間隔を設定する(ステップS12)。そして、これから測定する測定周波数を設定する(ステップS13)。
【0067】
次に、電圧信号印加器2は、ステップS13において設定された測定周波数を有する正弦波状の電圧信号を測定試料6に印加する(ステップS14)。その後、電圧電流検出器3は、電圧信号印加器2によって正弦波状に変化する電圧信号を印加された測定試料6に発生する電圧と測定試料6を流れる電流とを検出する(ステップS15)。
【0068】
そして、判定器4は、第1周期目以降における第1時刻において電圧電流検出器3によって検出された電圧および電流と、第1時刻よりも1周期前の第2時刻において電圧電流検出器3によって検出された電流および電圧との間の差が所定の割合以下になったか否かを判定する(ステップS16)。
【0069】
電流および電圧との間の差が所定の割合以下になっていないと判断されたときは(ステップS16においてNO)、ステップS14へ戻る。電流および電圧との間の差が所定の割合以下になったと判断されたときは(ステップS16においてYES)、電圧電流検出器3は、第2時刻から第1時刻までの1周期分の検出電圧および検出電流を抽出してインピーダンス測定器1へ供給する(ステップS17)。
【0070】
そして、インピーダンス測定器1は、電圧電流検出器3から供給された第2時刻から第1時刻までの1周期分の検出電圧および検出電流に基づいて測定試料6のインピーダンスを計算する(ステップS18)。
【0071】
次に、現在の測定周波数が測定終了周波数と等しくなっているか否かを判断する(ステップS19)。現在の測定周波数が測定終了周波数と等しくなっていないと判断されたときは(ステップS19においてNO)、測定周波数を切り替える。そして、ステップS13へ戻る。現在の測定周波数が測定終了周波数と等しくなっていると判断されたときは(ステップS19においてYES)。インピーダンス測定を終了する。
【0072】
比較例2に係るインピーダンス測定方法は、比較例1において前述した図4で示したリサージュ図形の重なりを判定することによって、正弦波の印加時間を可変する機能を有している。ここでのリサージュ図形の重なりの程度は、1周期前の測定に対して誤差がある割合以下になったことを判定しても良いし、測定の要求精度によってその割合を可変しても良い。好ましくは、誤差が10%以下になったか否かを判定してインピーダンス測定を行うと測定精度に対する影響を小さくすることができる。
【0073】
前述した比較例1において過渡変化に対する収束時間が不明であるため、2周期分の正弦波電圧信号を印加し、最後の1周期分の測定データを測定に用いるとした。
【0074】
しかしながら、被測定物である測定試料6における過渡応答の時定数が測定周期よりも長い場合は、過渡変化が1周期以内に収束しない。また、比較例1において前述した方法は、1周期分の測定データに基づいて測定する従来の測定方法に比べて2倍の時間がかかる。
【0075】
例えば、測定周波数を切り替えながらインピーダンスを測定した場合、最低測定周波数が1mHzであって、周波数切り替えステップが10倍あたりlogスケールで等間隔に10ステップであれば、測定周波数は、1mHz、1.259mHz、1.585mHz・・・となり、仮に10kHzまで測定した場合には、それぞれの測定周波数において1周期分の測定時間が必要であるとしても、正弦波電圧信号を印加するための時間だけで原理上1.35時間かかる計算になる。
【0076】
このことを比較例1に係る測定方法において行えば、正弦波電圧信号を印加するための時間は、2.7時間必要である。被測定物である測定試料6の材料、測定試料6の構成部材の違いによるインピーダンス特性、測定試料6の劣化の度合いおよび劣化のばらつきを調べようとした場合など、測定試料6に対しては多種類の測定が必要である。従って、これらの測定時間を短くすることが強く望まれる。
【0077】
また、本来過渡変化が収束すれば、収束したときから1周期分の測定データに基づいて電気化学インピーダンスを測定しても問題は生じない。このため、比較例2に係るインピーダンス測定方法によれば、過渡変化の収束時間がわからない場合であっても、電気化学的インピーダンスを速やかにかつ正確に測定することができる。
【0078】
また、比較例2に係るインピーダンス測定方法を採用することにより、測定データに再現性(周期性)が無い場合に、強引に1周期目の測定データをもとにインピーダンスを測定するようなことは無くなる。
【0079】
以上述べたように比較例2によれば、従来の方法の問題点であった測定の再現性、正確性といった問題を解決することができると共に、比較例1に述べた方法に比べ、電気化学インピーダンスの測定精度、再現性は保ちつつ、最大で50%近く測定時間を短縮することができるという効果を得ることができる。
【0080】
(実施の形態)
図7は、実施の形態に係るインピーダンス測定装置100Bの構成を示すブロック図である。比較例2において図5を参照して前述したインピーダンス測定装置100Aの構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付している。従って、これらの構成要素の詳細な説明は省略する。
【0081】
インピーダンス測定装置100Bは、電圧信号印加器2Bを備えている。電圧信号印加器2Bは、所定の周波数に従って周期的に変化する第1正弦波電圧信号を1周期分以上測定試料6に印加する。
【0082】
インピーダンス測定装置100Bには、電圧電流検出器3Bが設けられている。電圧電流検出器3Bは、周期的に変化する第1正弦波電圧信号を印加された測定試料6に発生する電圧と測定試料6を流れる電流とを検出する。
【0083】
インピーダンス測定装置100Bは、判定器4を備えている。判定器4は、第1周期目以降における第1時刻において検出された電圧および電流と、第1時刻よりも1周期前の第2時刻に検出された電流および電圧との間の差が所定の割合以下になったか否かを判定する。
【0084】
インピーダンス測定装置100Bには、最短収束時間算出器5が設けられている。最短収束時間算出器5は、前記電流および電圧との間の差が所定の割合以下になったと判定されたときに、周期的に変化する信号の印加を開始した第3時刻から前記電流および電圧との間の差が所定の割合以下になった第1時刻までの時間を表す最短収束時間を算出する。
【0085】
このように構成されたインピーダンス測定装置100Bの動作を説明する。図8は、実施の形態に係るインピーダンス測定方法の手順を示すフローチャートである。
【0086】
まず、電圧信号印加器2Bは、所定の周波数に従って周期的に変化する第1正弦波電圧信号を1周期分以上測定試料6に印加する(ステップS31)。そして、電圧電流検出器3Bは、周期的に変化する第1正弦波電圧信号を印加された測定試料6に発生する電圧と測定試料6を流れる電流とを検出する(ステップS32)。
【0087】
次に、判定器4は、第1周期目以降における第1時刻において検出された電圧および電流と、第1時刻よりも1周期前の第2時刻に検出された電流および電圧との間の差が所定の割合以下になったか否かを判定する(ステップS33)。前記電流および電圧との間の差が所定の割合以下になっていないと判定されたときは(ステップS33においてNO)、ステップS31へ戻る。
【0088】
前記電流および電圧との間の差が所定の割合以下になったと判定されたときは(ステップS33においてYES)、最短収束時間算出器5は、周期的に変化する信号の印加を開始した第3時刻から前記電流および電圧との間の差が所定の割合以下になった第1時刻までの時間を表す最短収束時間を算出する(ステップS34)。
【0089】
そして、電圧信号印加器2Bは、他の周波数に従って周期的に変化する第2電圧信号を、第4時刻から、最短収束時間算出器5によって算出された最短収束時間に基づいた所定の時間だけ経過した第5時刻まで測定試料6に印加する(ステップS35)。次に、電圧電流検出器3Bは、第5時刻の1周期前の第6時刻までの間に測定試料6に発生した電圧と測定試料6を流れた電流とを検出する(ステップS36)。
【0090】
その後、インピーダンス測定器1は、ステップS36において検出された電圧および電流に基づいて測定試料6のインピーダンスを測定する(ステップS37)。
【0091】
前述した比較例2においては過渡応答の収束時間を各々の周波数において測定した。しかしながら、測定試料が同じであって測定周波数だけ変える場合は、収束時間を予め予測することができる。従って、最初に過渡応答時間を測定することにより以降の切り替えた周波数においては1周期+最短収束時間の間だけ正弦波電圧または正弦波電流を印加し、最後の1周期分の電流ないし電圧に基づいてインピーダンスを測定することで、測定制御の簡素化を図りながらインピーダンスを求めることができ、比較例2よりも簡単に本発明の効果を得ることが出来る。
【0092】
このように実施の形態によれば、電気化学インピーダンスの測定において周波数を上げながら測定する場合と、周波数を下げながら測定する場合とで、過渡変化を開始する状態が異なるため測定結果が異なるという問題を解決し、測定時間の増加を抑圧しつつ、正確で再現性の高い電気化学インピーダンスの測定が可能になる。
【0093】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、測定制御の簡素化を図り、測定時間の増加を抑圧しつつ、電気化学的インピーダンスを正確に測定することができる電気化学的インピーダンス測定方法および電気化学的インピーダンス測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 比較例1に係るインピーダンス測定装置の構成を示すブロック図
【図2】 比較例1に係るインピーダンス測定方法の手順を示すフローチャート
【図3】 比較例1に係るインピーダンス測定装置によって測定される電池に印加される印加電圧を示す波形図
【図4】 比較例1に係るインピーダンス測定装置によって測定される電池に印加される印加電圧と測定電流とによって形成されるリサージュ図形を示すグラフ
【図5】 比較例2に係るインピーダンス測定装置の構成を示すブロック図
【図6】 比較例2に係るインピーダンス測定方法の手順を示すフローチャート
【図7】 実施の形態に係るインピーダンス測定装置の構成を示すブロック図
【図8】 実施の形態に係るインピーダンス測定方法の手順を示すフローチャート
【図9】 従来のインピーダンス測定装置によって電池に印加される印加電圧を示す波形図
Claims (6)
- 測定試料の電気化学的インピーダンスを測定する電気化学的インピーダンス測定方法であって、
所定の周波数に従って周期的に変化する第1信号を1周期分以上前記測定試料に印加しながら前記周期的に変化する第1信号を印加された前記測定試料に発生する電圧と前記測定試料を流れる電流とを検出する印加検出工程と、
第1周期目以降における第1時刻において検出された前記電圧および前記電流と、前記第1時刻よりも1周期前の第2時刻に検出された前記電流および前記電圧との間の差が所定の割合以下になったか否かを判定する判定工程と、
前記差が前記所定の割合以下になったと判定されたときに、前記周期的に変化する信号の印加を開始した第3時刻から前記差が前記所定の割合以下になった前記第1時刻までの時間を表す最短収束時間を算出する算出工程と、
前記算出工程の後で、他の周波数に従って周期的に変化する第2信号を、第4時刻から前記最短収束時間に基づいた所定の時間だけ経過した第5時刻まで前記測定試料に印加する印加工程と、
前記第5時刻の1周期前の第6時刻までの間に前記測定試料に発生した電圧と前記測定試料を流れた電流とを検出する検出工程と、
前記検出工程において検出された前記電圧および前記電流に基づいて前記測定試料のインピーダンスを測定するインピーダンス測定工程とを包含することを特徴とする電気化学的インピーダンス測定方法。 - 前記第5時刻は、前記第4時刻から前記最短収束時間に所定の周期を加えた時間だけ経過した時刻である、請求項1記載の電気化学的インピーダンス測定方法。
- 前記所定の周期は、1周期である、請求項2記載の電気化学的インピーダンス測定方法。
- 前記第1信号の周波数および前記第2信号の周波数は、0.1ヘルツ(Hz)よりも低くなっている、請求項1記載の電気化学的インピーダンス測定方法。
- 前記第1信号および前記第2信号は、正弦波電圧と正弦波電流とのいずれかである、請求項1記載の電気化学的インピーダンス測定方法。
- 測定試料の電気化学的インピーダンスを測定する電気化学的インピーダンス測定装置であって、
所定の周波数に従って周期的に変化する第1信号を1周期分以上前記測定試料に印加しながら前記周期的に変化する第1信号を印加された前記測定試料に発生する電圧と前記測定試料を流れる電流とを検出する印加検出手段と、
第1周期目以降における第1時刻において検出された前記電圧および前記電流と、前記第1時刻よりも1周期前の第2時刻に検出された前記電流および前記電圧との間の差が所定の割合以下になったか否かを判定する判定手段と、
前記差が前記所定の割合以下になったと判定されたときに、前記周期的に変化する信号の印加を開始した第3時刻から前記差が前記所定の割合以下になった前記第1時刻までの時間を表す最短収束時間を算出する算出手段と、
他の周波数に従って周期的に変化する第2信号を、前記第1時刻よりも後の第4時刻から前記最短収束時間に基づいた所定の時間だけ経過した第5時刻まで前記測定試料に印加する印加手段と、
前記第5時刻の1周期前の第6時刻までの間に前記測定試料に発生した電圧と前記測定試料を流れた電流とを検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された前記電圧および前記電流に基づいて前記測定試料のインピーダンスを測定するインピーダンス測定手段とを具備することを特徴とする電気化学的インピーダンス測定装置。
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