JP2004116691A - 動力伝動用ベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】ウレタン配合物と相溶性が良く、経時的に成形品の外観が良好で、しかも、長期に亘り騒音の発生や摩耗を低減可能なポリウレタン製ベルトを提供する。
【解決手段】背部に心線13を埋設し、背面にはコグ14が突設されており、そしてベルトの長手方向に沿った突状部12より構成されたVベルト10のような伝動ベルトにあって、前記ベルト本体を、脂肪酸の炭素数が14〜20のトリグリセライドを主成分とした混合物からなる植物性油脂を、ポリウレタン組成物100質量部に対して0.5〜7質量部の割合配合したポリウレタン配合物でベルト本体を構成する。前記植物性油脂として具体的にはパーム油がある。
【選択図】 図2
【解決手段】背部に心線13を埋設し、背面にはコグ14が突設されており、そしてベルトの長手方向に沿った突状部12より構成されたVベルト10のような伝動ベルトにあって、前記ベルト本体を、脂肪酸の炭素数が14〜20のトリグリセライドを主成分とした混合物からなる植物性油脂を、ポリウレタン組成物100質量部に対して0.5〜7質量部の割合配合したポリウレタン配合物でベルト本体を構成する。前記植物性油脂として具体的にはパーム油がある。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウレタン配合物と相溶性が良く、経時的に成形品の外観が良好で、しかも、長期に亘り騒音の発生や摩耗を低減可能なポリウレタン製ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
動力伝動用などに用いられるベルトとしてVベルトや歯付ベルトなどが従来から提供されているが、ベルトの材料にゴムよりも強度が高いポリウレタン組成物を用いたポリウレタン製ベルトがある。ポリウレタン製ベルトはゴム製ベルトに比べて外観性に優れることから、トランスルーセントのハウジングを用いたOA機器や自転車など意匠性が要求される分野で好適に用いられている。
【0003】
このようなポリウレタン製ベルトにおいて、走行時に発生する騒音を低減させるために、ポリウレタン組成物に滑剤を配合して表面の摩擦係数の低減を図る試みがなされている。この滑剤としては、従来、脂肪族アミド、芳香族アミド、パラフィン、グラファイト、二硫化モリブデンなどを添加することが知られていたが、近年、高い低騒音効果と耐屈曲疲労性を満たし得る脂肪酸グリセリドを添加することが提案されている。
【0004】
脂肪酸グリセリドとしては、それを主成分とする油脂が挙げられる。油脂は大別すると動物性油脂、植物性油脂に分けられ、更に原料、採油方法等により細かく分類される。このような油脂を添加したポリウレタン製ベルトとして、本出願人は先の出願にて、動物性油脂であるラード(豚脂)を添加した伝動ベルトを提案した。また特開2001−263427号公報(特許文献1参照)では、牛脂を添加した伝動ベルトが開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−263427号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ラードや牛脂は、ポリウレタンに均一に分散させて配合することが困難であるといった問題があった。またブリードしたラードや牛脂がベルト表面で白色化して見栄えが悪くなることから、外観が良好であるというポリウレタン製ベルト本来の特徴をいかせないといった問題もあった。一方、白色化を抑えるべく、滑剤の配合量を減少させれば効果の持続力に劣り、走行時の騒音低減という本来の目的を達成することができない。
【0007】
また、油脂は天然資源ゆえに、同一種であっても、生育条件によりある範囲で組成、成分が変化するという性質を有するが、特に動物の場合は食餌から油脂を摂取する為に、含有脂肪酸の組成の変化が著しいといった特徴が挙げられる。ラードは豚由来の動物性油脂であり、牛脂もまた牛由来の動物性油脂であることから、脂肪酸組成の安定さにかけるといった問題がある。
【0008】
油脂の性状は脂肪酸成分により大きく変化することから、ポリウレタン製ベルトの滑剤選定において、油脂の脂肪酸組成はベルト設計上重要な位置を占める。脂肪酸組成による性状の変化とは、例えば低級脂肪酸グリセリドをポリウレタン組成物に配合した場合、表面にブリードが発生し易く表面摩擦係数の低減効果が高い反面、スリップし易く、また滑剤の持続効果が低いといった問題がある。一方、高級脂肪酸グリセリドを配合した場合は、長期間にわたる走行においても騒音抑制効果が高いといった効果がある。油脂は天然資源ゆえに複数の脂肪酸が混合された構成であることから、その主成分となる脂肪酸が性質を左右するといえる。
【0009】
上記知見をもとに、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、特定の油脂を配合することで、ウレタン組成物と混合性が良く、経時的に成形品の外観が良好で、しかも、長期に亘り騒音の発生や摩耗を低減可能なポリウレタン製ベルトを提供するに至るものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち、本願請求項1記載の発明は、動力伝動用ベルトにおいて、脂肪酸の炭素数が14〜20のトリグリセライドを主成分とした混合物からなる植物性油脂を配合したポリウレタン配合物でベルト本体を構成したことを特徴とするものである。炭素数が14〜20のトリグリセライドを主成分とした植物性油脂を配合されてなるので油脂が表面にブリードし難く、またラードや牛脂に比べて低い融点を有するためベルト表面で経時的に白色化して見栄えが悪くなることを防ぐ効果がある。また植物性油脂は脂肪酸組成が安定しているために、得られるベルト品質が安定するといった効果がある。
【0011】
また本願請求項2記載の発明は、請求項1記載の動力伝動用ベルトにおいて、ポリウレタン組成物100質量部に対して、植物性油脂を0.5〜7質量部の割合で配合することを特徴とするものである。配合量を前記範囲とすることで、ベルト物性と滑剤効果を充足させたベルトが得られる。
【0012】
また本願請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の動力伝動用ベルトにおいて、植物性油脂がパーム油であることを特徴とするものである。パーム油はラードや牛脂と良く似た脂肪酸組成を有するものの、常温において半固体状態であってベルトの表面で白色化することがなく、ウレタン配合物との混合性が良好で、滑剤効果を長期間にわたって呈することが可能である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
図1に本発明に係る歯付ベルト1を示す。歯付ベルト1はベルト長手方向に沿って複数の歯部2と、該ベルト本体のベルトピッチライン上に補強用心体である心線3をスパイラル状に埋設した背部4からなるベルト本体で構成される。尚、上記歯部2の表面には必要に応じて基布が貼着されている。
【0014】
ここで、ベルト本体を構成するポリウレタン配合物は液状のウレタン原料を注型、加熱することによって得られるが、一般に成形方法としては、ポリオール、触媒、鎖延長剤、顔料等を混合したプレミックス液と、イソシアネート成分を含有する溶液とを混合し、これを注型して硬化反応させるワンショット法と、予めイソシアネートとポリオールを反応させて、イソシアネートの一部をポリオールで変性したプレポリマーと硬化剤を混合して注型し、架橋反応させるプレポリマー法があるが、本発明ではプレポリマー法を好ましく採用している。
【0015】
イソシアネートとしては限定されるものではないが、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、またそれらの変性体が使用可能である。具体的には、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)そしてイソホロンジイソシアネート(IPDI)などが例示できるが、中でもTDI及びMDIが好ましく用いられる。
【0016】
ポリオールとしては、エステル系ポリオール、エーテル系ポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、及びこれらの混合ポリオール等が挙げられる。エーテル系ポリオールとしては、ポリエチレンエーテルグリコール(PEG)、ポリプロピレンエーテルグリコール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)などがあり、またエステル系ポリオールとしては、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHA)、ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)などが例示できる。なかでも、耐湿性や耐水性に優れると共に強靭な物性とヒステリシスロスの小さい特性を有する成形品が得られるポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)が好適に用いられる。
【0017】
硬化剤としては、1級アミン、2級アミン、3級アミンであるアミン化合物が用いられ、具体的には1,4−フェニレンジアミン、2,6−ジアミノトルエン、1,5−ナフタレンジアミン、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,3´−ジクロロ−4,4´−ジアミノジフェニルメタン(以下MOCAと記す)、3,3´−ジメチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、1−メチル−3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−ジアミノベンゼン、1−メチル3,5´−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、4−4´−メチレン−ビス−(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)、4,4´−メチレン−ビス−(オルト−クロロアニリン)、4,4´−メチレン−ビス―(2,3−ジクロロアニリン)、トリメチレングリコールジ−パラ−アミノベンゾエート、4,4´−メチレン−ビス−(2,6−ジエチルアニリン)、4,4´−メチレン−ビス−(2,6−ジイソプロピルアニリン)、4,4´−メチレン−ビス−(2−メチル−6−イソプロピルアニリン)、4,4´−ジアミノジフェニルスルホンなどが利用できる。アミン系硬化剤の配合量としては、アミン系硬化剤中のNH2のモル数とイソシアネート中のNCOのモル数の比であるα値(NH2/NCO)が1付近になるように、好ましくは0.90〜1.10の範囲になるように設定するのがよい。一般にα値は0.95付近が硬化物の物性が最も良好であり、α値が上記の範囲から外れると、硬化物の物性が低下する傾向がみられる。
【0018】
そして上記原料には、脂肪酸の炭素数が14〜20のトリグリセライドを主成分とした混合物からなる植物性油脂を配合する。炭素数が14〜20の脂肪酸としては具体的には、ミリスチン酸、パルチミン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸が例示できる。低級脂肪酸は分子量が小さいためにウレタンに配合すると早期にブリードアウトが発生し、滑剤効果の持続性に乏しいといった問題があるが、脂肪酸の炭素数が14〜20のトリグリセライドを主成分とした混合物からなる植物性油脂を配合することで持続性のある滑剤効果が期待できる。
【0019】
また上記植物性油脂はラードや牛脂と比べて融点が低いため、ベルトの表面での白色化を抑制することが可能である。また、植物性油脂は動物性油脂と比較して脂肪酸組成の安定性に優れることから、得られるベルト品質が安定するといった効果がある。
【0020】
これらの要素を満たすものとして具体的にはパーム油が挙げられる。パーム油は油ヤシの果肉から圧搾法で採油したヤシ系油脂であって、その脂肪酸組成はパルチミン酸とオレイン酸をそれぞれ約40%含有し、ラードや牛脂とよく似た組成を有する。またウレタンとの相溶性がよく、油脂が均一に分散するといった特徴があり、ヨウ素価が43〜60、融点は27〜50°Cである。
【0021】
尚、上記油脂はウレタン組成物100質量部に対して0.5〜7質量部配合することが好ましい。油脂が0.5質量部未満であると、滑剤の配合による滑性向上の効果を十分に得ることが難しい。また配合量が7質量部を超えると、ポリウレタン弾性体の物性が低下し、ひいてはポリウレタン製ベルトの寿命が低下するなどの悪影響がでるおそれがある。
【0022】
上記各成分以外の他に、可塑剤、顔料、消泡剤、充填材、触媒、安定剤等の添加剤を配合することができる。可塑剤としては、一般にはフタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、リン酸トリクレジル(TCP)、塩素系パラフィン、フタル酸ジアルキルなどが利用できる。
【0023】
また触媒としては、酸触媒である有機カルボン酸化合物が利用され、具体的にはアゼライン酸、オレイン酸、セバシン酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸、安息香酸、トルイル酸などの芳香族カルボン酸が用いられる。その他に、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチレンジアミンに代表されるアミン化合物、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンマーカプチドに代表される有機金属化合物が適宜用いられる。
【0024】
次に、ウレタン原料の準備工程を記す。
前記イソシアネートとポリオールと予め反応させたウレタンプレポリマーに上記油脂と必要に応じて消泡剤、可塑剤を配合したA液を調整し、50〜85℃にて保管する。油脂は融点以上の状態で用いることが好ましい。また、硬化剤をその融点以上の雰囲気温度下にて完全に溶解させたB液を準備する。尚、触媒をウレタン原料に配合する場合はB液に予め攪拌混合しておくことが好ましい。
【0025】
ベルト成形方法としては従来の製造方法と同じく、金型に心線をスパイラルに巻きつけた状態で、上記A液、B液を攪拌混合して金型内に注入し、一定条件下で加熱して架橋させることによってベルトスリーブを作製し、その後所定幅にカットすることによってベルトを製造することができる。
【0026】
心線3は、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維等のフィラメント群を撚り合わせた撚糸コードである。撚糸コードは、トータルが100〜3,000デニールとなるよう調節することが好ましい。トータルデニールが100未満の場合には、心線のモジュラス、強力が低くなり過ぎ、また3,000を越えると、心線の径が太くなるためベルトの厚みが増し、屈曲疲労性が悪くなる。上撚り、下撚りの撚り係数、そして諸撚り、片撚り等の撚り構成は使用目的に応じ、任意に設定可能である。
【0027】
心線3には接着処理を施すことが望ましい。接着処理剤としては、シランカップリング剤、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、RFL溶液、そしてゴム糊等からなる接着剤を1段階もしくは多段階処理する手法がある。具体的に例示すると、RFL溶液で処理する方法、エポキシまたはイソシアネート化合物で前処理した後にRFL溶液で処理する方法、エポキシまたはイソシアネート化合物を配合したRFL溶液で処理する方法、更にこれらの処理に加えて、ゴム糊でオーバーコートする方法などが挙げられる。尚、本発明においては、ベルト本体がウレタン配合物で構成されていることから、イソシアネート化合物を含有する接着剤で処理すると高い接着効果が期待できる。この効果は1段階処理しただけでも効果が研著である。
【0028】
前記コードは、スピニングピッチ、即ち心線の巻き付けピッチを心線径以上かつ心線径の4倍以下とすることが好ましい。しかし、これは限定されるものでなく、ベルト用途に応じて可変である。
【0029】
さらに、背部4の表面や、ベルト歯部2からベルト溝部にかけての表面には、基布を積層するようにしても良い。基布は、織物、編物、不織布等から選択される繊維基材であって、基布を構成する繊維素材としては、公知公用のものが使用できるが、例えば綿、麻等の天然繊維や、金属繊維、ガラス繊維等の無機繊維、そしてポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフロルエチレン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリアミド等の有機繊維が挙げられる。また織物の場合、その織りを限定するものではなく、平織、綾織、朱子織等に製織した基布を用いることが可能である。
【0030】
基布は無処理のまま用いても良いが、公知技術に従ってディップ処理及びコート処理を施すことも可能である。熱硬化性ウレタン及びイソシアネートをトルエン、メチルエチルケトン等の溶剤に溶解させた処理液(ディップ液)に繊維基材を浸漬させ、コート液を一定の厚みでラミネートして繊維基材に接着処理を施す。コート液はディップ液とほぼ等しい組成を有する処理液だが、ディップ液と比べて熱硬化性ウレタンの割合が多く、粘度が高い。
【0031】
尚、上記歯付ベルトは本発明の実施の一形態であって、これに限定されるものではない。例えば、Vベルト、Vリブドベルト等の伝動ベルトも、本発明の技術範囲に含まれるものである。
【0032】
図2に本発明に係るVベルト10を示す。ポリウレタン製Vベルト10は、背部に心線13を埋設し、必要に応じて背面にはコグ14が突設されており、そしてベルトの長手方向に沿った突状部12を有するものである。
【0033】
【実施例】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
実施例1〜3,比較例1
公知技術に従いポリウレタン配合物を成形することによって、ポリウレタン製Vベルト(製品名「ポリマックスベルト5M775」)を作製した。ここで、ベルトを構成するポリウレタン配合物として、PTMG−TDIプレポリマー(UNIROYAL社製商品名「アジプレンL−100」)100質量部、アミン系硬化剤(MOCA)12質量部、可塑剤(DOP)30質量部、消泡剤(シリコン化合物)0.2質量部、そして表1に示す質量部の滑剤をそれぞれ配合したものを用いた。また各滑剤の脂肪酸組成を表1に示す。尚、DOPに各油脂を攪拌混合した際、実施例では25℃で溶解したのに対して比較例では40℃で油脂が溶解した。
【0034】
そして前記ベルトを直径26.5mmの駆動プーリと直径50.5mmの従動プーリの間に懸架し、ミスアライメント1°、回転数3600rpm、初期軸荷重118N(12kgf)、負荷0.26kWの条件で500時間の走行試験を実施し、ベルト走行時の発音を測定した。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
また該ベルトを走行試験し、スリップ率を測定した。走行試験は、直径26.5mmの駆動プーリと直径50.5mmの従動プーリの間にベルトを懸架し、回転数3600rpm、初期軸荷重118N(12kgf)で、負荷を0.05kWから0.35kWまで変化させて行なった。結果を表1に併記する。
【0037】
表1より、実施例、比較例ともに走行時の発音が無く、また摩耗量が少なく耐久性が高いものであった。またスリップ率についても、滑剤による滑性効果によりベルト表面の摩擦係数が低下していることが確認される。尚、実施例1は油脂の配合量が特定割合より少なく、滑剤効果が充分ではない。一方、実施例3は油脂の配合量が特定割合より多く、滑剤効果は充分なもののベルト物性の低下が見られる。
【0038】
さらに、上記の実施例1及び比較例1のポリウレタン樹脂配合物で作製したVベルトをそれぞれ室温で1年間保管し、経時的なベルト外観の変化を目視で観察した。結果を表1に示す。実施例のものは1年経過後も外観は良好であったが、比較例のものでは、1週間経過後にブリードした滑剤がベルト表面で一部白化しているのが確認され、1年経過後にはベルト表面全体が白色化しているのが観察された。以上のように実施例のベルトは長期間にわたり外観が良好であるといった特徴を有する。
【0039】
【発明の効果】
上記のように本発明に係る請求項1記載の動力伝動用ベルトは、構成成分を特定した植物性油脂を配合したポリウレタン配合物でベルト本体を構成することで、経時的に成形品の外観が良好で、しかも、長期に亘り騒音の発生や摩耗を低減可能なポリウレタン製ベルトを提供できるものである。
【0040】
また請求項2の発明は、ポリウレタン組成物に対して、上記植物性油脂を特定割合で配合することで、滑剤の効果が充分発揮できるとともに、ポリウレタン製ベルトの物性を損なうことがない。
【0041】
また請求項3の発明は、植物性油脂としてパーム油を用いることで、主原料との相溶性が良く、経時的に成形品の外観が良好で、滑性を付与する効果を長期に亘って維持することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る歯付ベルトの断面斜視図である。
【図2】本発明に係るVベルトの断面斜視図である。
【符号の説明】
1 歯付ベルト
2 歯部
3 心線
4 背部
10 Vベルト
12 突状部
13 心線
14 コグ
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウレタン配合物と相溶性が良く、経時的に成形品の外観が良好で、しかも、長期に亘り騒音の発生や摩耗を低減可能なポリウレタン製ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
動力伝動用などに用いられるベルトとしてVベルトや歯付ベルトなどが従来から提供されているが、ベルトの材料にゴムよりも強度が高いポリウレタン組成物を用いたポリウレタン製ベルトがある。ポリウレタン製ベルトはゴム製ベルトに比べて外観性に優れることから、トランスルーセントのハウジングを用いたOA機器や自転車など意匠性が要求される分野で好適に用いられている。
【0003】
このようなポリウレタン製ベルトにおいて、走行時に発生する騒音を低減させるために、ポリウレタン組成物に滑剤を配合して表面の摩擦係数の低減を図る試みがなされている。この滑剤としては、従来、脂肪族アミド、芳香族アミド、パラフィン、グラファイト、二硫化モリブデンなどを添加することが知られていたが、近年、高い低騒音効果と耐屈曲疲労性を満たし得る脂肪酸グリセリドを添加することが提案されている。
【0004】
脂肪酸グリセリドとしては、それを主成分とする油脂が挙げられる。油脂は大別すると動物性油脂、植物性油脂に分けられ、更に原料、採油方法等により細かく分類される。このような油脂を添加したポリウレタン製ベルトとして、本出願人は先の出願にて、動物性油脂であるラード(豚脂)を添加した伝動ベルトを提案した。また特開2001−263427号公報(特許文献1参照)では、牛脂を添加した伝動ベルトが開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−263427号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ラードや牛脂は、ポリウレタンに均一に分散させて配合することが困難であるといった問題があった。またブリードしたラードや牛脂がベルト表面で白色化して見栄えが悪くなることから、外観が良好であるというポリウレタン製ベルト本来の特徴をいかせないといった問題もあった。一方、白色化を抑えるべく、滑剤の配合量を減少させれば効果の持続力に劣り、走行時の騒音低減という本来の目的を達成することができない。
【0007】
また、油脂は天然資源ゆえに、同一種であっても、生育条件によりある範囲で組成、成分が変化するという性質を有するが、特に動物の場合は食餌から油脂を摂取する為に、含有脂肪酸の組成の変化が著しいといった特徴が挙げられる。ラードは豚由来の動物性油脂であり、牛脂もまた牛由来の動物性油脂であることから、脂肪酸組成の安定さにかけるといった問題がある。
【0008】
油脂の性状は脂肪酸成分により大きく変化することから、ポリウレタン製ベルトの滑剤選定において、油脂の脂肪酸組成はベルト設計上重要な位置を占める。脂肪酸組成による性状の変化とは、例えば低級脂肪酸グリセリドをポリウレタン組成物に配合した場合、表面にブリードが発生し易く表面摩擦係数の低減効果が高い反面、スリップし易く、また滑剤の持続効果が低いといった問題がある。一方、高級脂肪酸グリセリドを配合した場合は、長期間にわたる走行においても騒音抑制効果が高いといった効果がある。油脂は天然資源ゆえに複数の脂肪酸が混合された構成であることから、その主成分となる脂肪酸が性質を左右するといえる。
【0009】
上記知見をもとに、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、特定の油脂を配合することで、ウレタン組成物と混合性が良く、経時的に成形品の外観が良好で、しかも、長期に亘り騒音の発生や摩耗を低減可能なポリウレタン製ベルトを提供するに至るものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち、本願請求項1記載の発明は、動力伝動用ベルトにおいて、脂肪酸の炭素数が14〜20のトリグリセライドを主成分とした混合物からなる植物性油脂を配合したポリウレタン配合物でベルト本体を構成したことを特徴とするものである。炭素数が14〜20のトリグリセライドを主成分とした植物性油脂を配合されてなるので油脂が表面にブリードし難く、またラードや牛脂に比べて低い融点を有するためベルト表面で経時的に白色化して見栄えが悪くなることを防ぐ効果がある。また植物性油脂は脂肪酸組成が安定しているために、得られるベルト品質が安定するといった効果がある。
【0011】
また本願請求項2記載の発明は、請求項1記載の動力伝動用ベルトにおいて、ポリウレタン組成物100質量部に対して、植物性油脂を0.5〜7質量部の割合で配合することを特徴とするものである。配合量を前記範囲とすることで、ベルト物性と滑剤効果を充足させたベルトが得られる。
【0012】
また本願請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の動力伝動用ベルトにおいて、植物性油脂がパーム油であることを特徴とするものである。パーム油はラードや牛脂と良く似た脂肪酸組成を有するものの、常温において半固体状態であってベルトの表面で白色化することがなく、ウレタン配合物との混合性が良好で、滑剤効果を長期間にわたって呈することが可能である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
図1に本発明に係る歯付ベルト1を示す。歯付ベルト1はベルト長手方向に沿って複数の歯部2と、該ベルト本体のベルトピッチライン上に補強用心体である心線3をスパイラル状に埋設した背部4からなるベルト本体で構成される。尚、上記歯部2の表面には必要に応じて基布が貼着されている。
【0014】
ここで、ベルト本体を構成するポリウレタン配合物は液状のウレタン原料を注型、加熱することによって得られるが、一般に成形方法としては、ポリオール、触媒、鎖延長剤、顔料等を混合したプレミックス液と、イソシアネート成分を含有する溶液とを混合し、これを注型して硬化反応させるワンショット法と、予めイソシアネートとポリオールを反応させて、イソシアネートの一部をポリオールで変性したプレポリマーと硬化剤を混合して注型し、架橋反応させるプレポリマー法があるが、本発明ではプレポリマー法を好ましく採用している。
【0015】
イソシアネートとしては限定されるものではないが、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、またそれらの変性体が使用可能である。具体的には、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)そしてイソホロンジイソシアネート(IPDI)などが例示できるが、中でもTDI及びMDIが好ましく用いられる。
【0016】
ポリオールとしては、エステル系ポリオール、エーテル系ポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、及びこれらの混合ポリオール等が挙げられる。エーテル系ポリオールとしては、ポリエチレンエーテルグリコール(PEG)、ポリプロピレンエーテルグリコール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)などがあり、またエステル系ポリオールとしては、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHA)、ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)などが例示できる。なかでも、耐湿性や耐水性に優れると共に強靭な物性とヒステリシスロスの小さい特性を有する成形品が得られるポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)が好適に用いられる。
【0017】
硬化剤としては、1級アミン、2級アミン、3級アミンであるアミン化合物が用いられ、具体的には1,4−フェニレンジアミン、2,6−ジアミノトルエン、1,5−ナフタレンジアミン、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,3´−ジクロロ−4,4´−ジアミノジフェニルメタン(以下MOCAと記す)、3,3´−ジメチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、1−メチル−3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−ジアミノベンゼン、1−メチル3,5´−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、4−4´−メチレン−ビス−(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)、4,4´−メチレン−ビス−(オルト−クロロアニリン)、4,4´−メチレン−ビス―(2,3−ジクロロアニリン)、トリメチレングリコールジ−パラ−アミノベンゾエート、4,4´−メチレン−ビス−(2,6−ジエチルアニリン)、4,4´−メチレン−ビス−(2,6−ジイソプロピルアニリン)、4,4´−メチレン−ビス−(2−メチル−6−イソプロピルアニリン)、4,4´−ジアミノジフェニルスルホンなどが利用できる。アミン系硬化剤の配合量としては、アミン系硬化剤中のNH2のモル数とイソシアネート中のNCOのモル数の比であるα値(NH2/NCO)が1付近になるように、好ましくは0.90〜1.10の範囲になるように設定するのがよい。一般にα値は0.95付近が硬化物の物性が最も良好であり、α値が上記の範囲から外れると、硬化物の物性が低下する傾向がみられる。
【0018】
そして上記原料には、脂肪酸の炭素数が14〜20のトリグリセライドを主成分とした混合物からなる植物性油脂を配合する。炭素数が14〜20の脂肪酸としては具体的には、ミリスチン酸、パルチミン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸が例示できる。低級脂肪酸は分子量が小さいためにウレタンに配合すると早期にブリードアウトが発生し、滑剤効果の持続性に乏しいといった問題があるが、脂肪酸の炭素数が14〜20のトリグリセライドを主成分とした混合物からなる植物性油脂を配合することで持続性のある滑剤効果が期待できる。
【0019】
また上記植物性油脂はラードや牛脂と比べて融点が低いため、ベルトの表面での白色化を抑制することが可能である。また、植物性油脂は動物性油脂と比較して脂肪酸組成の安定性に優れることから、得られるベルト品質が安定するといった効果がある。
【0020】
これらの要素を満たすものとして具体的にはパーム油が挙げられる。パーム油は油ヤシの果肉から圧搾法で採油したヤシ系油脂であって、その脂肪酸組成はパルチミン酸とオレイン酸をそれぞれ約40%含有し、ラードや牛脂とよく似た組成を有する。またウレタンとの相溶性がよく、油脂が均一に分散するといった特徴があり、ヨウ素価が43〜60、融点は27〜50°Cである。
【0021】
尚、上記油脂はウレタン組成物100質量部に対して0.5〜7質量部配合することが好ましい。油脂が0.5質量部未満であると、滑剤の配合による滑性向上の効果を十分に得ることが難しい。また配合量が7質量部を超えると、ポリウレタン弾性体の物性が低下し、ひいてはポリウレタン製ベルトの寿命が低下するなどの悪影響がでるおそれがある。
【0022】
上記各成分以外の他に、可塑剤、顔料、消泡剤、充填材、触媒、安定剤等の添加剤を配合することができる。可塑剤としては、一般にはフタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、リン酸トリクレジル(TCP)、塩素系パラフィン、フタル酸ジアルキルなどが利用できる。
【0023】
また触媒としては、酸触媒である有機カルボン酸化合物が利用され、具体的にはアゼライン酸、オレイン酸、セバシン酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸、安息香酸、トルイル酸などの芳香族カルボン酸が用いられる。その他に、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチレンジアミンに代表されるアミン化合物、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンマーカプチドに代表される有機金属化合物が適宜用いられる。
【0024】
次に、ウレタン原料の準備工程を記す。
前記イソシアネートとポリオールと予め反応させたウレタンプレポリマーに上記油脂と必要に応じて消泡剤、可塑剤を配合したA液を調整し、50〜85℃にて保管する。油脂は融点以上の状態で用いることが好ましい。また、硬化剤をその融点以上の雰囲気温度下にて完全に溶解させたB液を準備する。尚、触媒をウレタン原料に配合する場合はB液に予め攪拌混合しておくことが好ましい。
【0025】
ベルト成形方法としては従来の製造方法と同じく、金型に心線をスパイラルに巻きつけた状態で、上記A液、B液を攪拌混合して金型内に注入し、一定条件下で加熱して架橋させることによってベルトスリーブを作製し、その後所定幅にカットすることによってベルトを製造することができる。
【0026】
心線3は、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維等のフィラメント群を撚り合わせた撚糸コードである。撚糸コードは、トータルが100〜3,000デニールとなるよう調節することが好ましい。トータルデニールが100未満の場合には、心線のモジュラス、強力が低くなり過ぎ、また3,000を越えると、心線の径が太くなるためベルトの厚みが増し、屈曲疲労性が悪くなる。上撚り、下撚りの撚り係数、そして諸撚り、片撚り等の撚り構成は使用目的に応じ、任意に設定可能である。
【0027】
心線3には接着処理を施すことが望ましい。接着処理剤としては、シランカップリング剤、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、RFL溶液、そしてゴム糊等からなる接着剤を1段階もしくは多段階処理する手法がある。具体的に例示すると、RFL溶液で処理する方法、エポキシまたはイソシアネート化合物で前処理した後にRFL溶液で処理する方法、エポキシまたはイソシアネート化合物を配合したRFL溶液で処理する方法、更にこれらの処理に加えて、ゴム糊でオーバーコートする方法などが挙げられる。尚、本発明においては、ベルト本体がウレタン配合物で構成されていることから、イソシアネート化合物を含有する接着剤で処理すると高い接着効果が期待できる。この効果は1段階処理しただけでも効果が研著である。
【0028】
前記コードは、スピニングピッチ、即ち心線の巻き付けピッチを心線径以上かつ心線径の4倍以下とすることが好ましい。しかし、これは限定されるものでなく、ベルト用途に応じて可変である。
【0029】
さらに、背部4の表面や、ベルト歯部2からベルト溝部にかけての表面には、基布を積層するようにしても良い。基布は、織物、編物、不織布等から選択される繊維基材であって、基布を構成する繊維素材としては、公知公用のものが使用できるが、例えば綿、麻等の天然繊維や、金属繊維、ガラス繊維等の無機繊維、そしてポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフロルエチレン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリアミド等の有機繊維が挙げられる。また織物の場合、その織りを限定するものではなく、平織、綾織、朱子織等に製織した基布を用いることが可能である。
【0030】
基布は無処理のまま用いても良いが、公知技術に従ってディップ処理及びコート処理を施すことも可能である。熱硬化性ウレタン及びイソシアネートをトルエン、メチルエチルケトン等の溶剤に溶解させた処理液(ディップ液)に繊維基材を浸漬させ、コート液を一定の厚みでラミネートして繊維基材に接着処理を施す。コート液はディップ液とほぼ等しい組成を有する処理液だが、ディップ液と比べて熱硬化性ウレタンの割合が多く、粘度が高い。
【0031】
尚、上記歯付ベルトは本発明の実施の一形態であって、これに限定されるものではない。例えば、Vベルト、Vリブドベルト等の伝動ベルトも、本発明の技術範囲に含まれるものである。
【0032】
図2に本発明に係るVベルト10を示す。ポリウレタン製Vベルト10は、背部に心線13を埋設し、必要に応じて背面にはコグ14が突設されており、そしてベルトの長手方向に沿った突状部12を有するものである。
【0033】
【実施例】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
実施例1〜3,比較例1
公知技術に従いポリウレタン配合物を成形することによって、ポリウレタン製Vベルト(製品名「ポリマックスベルト5M775」)を作製した。ここで、ベルトを構成するポリウレタン配合物として、PTMG−TDIプレポリマー(UNIROYAL社製商品名「アジプレンL−100」)100質量部、アミン系硬化剤(MOCA)12質量部、可塑剤(DOP)30質量部、消泡剤(シリコン化合物)0.2質量部、そして表1に示す質量部の滑剤をそれぞれ配合したものを用いた。また各滑剤の脂肪酸組成を表1に示す。尚、DOPに各油脂を攪拌混合した際、実施例では25℃で溶解したのに対して比較例では40℃で油脂が溶解した。
【0034】
そして前記ベルトを直径26.5mmの駆動プーリと直径50.5mmの従動プーリの間に懸架し、ミスアライメント1°、回転数3600rpm、初期軸荷重118N(12kgf)、負荷0.26kWの条件で500時間の走行試験を実施し、ベルト走行時の発音を測定した。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
また該ベルトを走行試験し、スリップ率を測定した。走行試験は、直径26.5mmの駆動プーリと直径50.5mmの従動プーリの間にベルトを懸架し、回転数3600rpm、初期軸荷重118N(12kgf)で、負荷を0.05kWから0.35kWまで変化させて行なった。結果を表1に併記する。
【0037】
表1より、実施例、比較例ともに走行時の発音が無く、また摩耗量が少なく耐久性が高いものであった。またスリップ率についても、滑剤による滑性効果によりベルト表面の摩擦係数が低下していることが確認される。尚、実施例1は油脂の配合量が特定割合より少なく、滑剤効果が充分ではない。一方、実施例3は油脂の配合量が特定割合より多く、滑剤効果は充分なもののベルト物性の低下が見られる。
【0038】
さらに、上記の実施例1及び比較例1のポリウレタン樹脂配合物で作製したVベルトをそれぞれ室温で1年間保管し、経時的なベルト外観の変化を目視で観察した。結果を表1に示す。実施例のものは1年経過後も外観は良好であったが、比較例のものでは、1週間経過後にブリードした滑剤がベルト表面で一部白化しているのが確認され、1年経過後にはベルト表面全体が白色化しているのが観察された。以上のように実施例のベルトは長期間にわたり外観が良好であるといった特徴を有する。
【0039】
【発明の効果】
上記のように本発明に係る請求項1記載の動力伝動用ベルトは、構成成分を特定した植物性油脂を配合したポリウレタン配合物でベルト本体を構成することで、経時的に成形品の外観が良好で、しかも、長期に亘り騒音の発生や摩耗を低減可能なポリウレタン製ベルトを提供できるものである。
【0040】
また請求項2の発明は、ポリウレタン組成物に対して、上記植物性油脂を特定割合で配合することで、滑剤の効果が充分発揮できるとともに、ポリウレタン製ベルトの物性を損なうことがない。
【0041】
また請求項3の発明は、植物性油脂としてパーム油を用いることで、主原料との相溶性が良く、経時的に成形品の外観が良好で、滑性を付与する効果を長期に亘って維持することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る歯付ベルトの断面斜視図である。
【図2】本発明に係るVベルトの断面斜視図である。
【符号の説明】
1 歯付ベルト
2 歯部
3 心線
4 背部
10 Vベルト
12 突状部
13 心線
14 コグ
Claims (3)
- 脂肪酸の炭素数が14〜20のトリグリセライドを主成分とした混合物からなる植物性油脂を配合したポリウレタン配合物でベルト本体を構成したことを特徴とする動力伝動用ベルト。
- ポリウレタン組成物100質量部に対して、植物性油脂を0.5〜7質量部の割合で配合した請求項1記載の動力伝動用ベルト。
- 植物性油脂が、パーム油である請求項2記載の動力伝動用ベルト。
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